説明

多相信号を生成するための方法、回路及びシステム

【課題】位相誤差を補償しながら設定可能な位相オフセットで多相信号を生成するための方法等を提供する。
【解決手段】一実施形態において、回路は、第1の周波数及び第1の位相を有する第1の周期信号を生成する第1のLC型電圧制御発振器(LCVCO)と、第2の周波数及び第2の位相を有する第2の周期信号を生成する第2のLCVCOとを有し、第2の位相は、90度オフセットで第1の位相に対してオフセットされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、多相信号を生成することに係る。
【背景技術】
【0002】
夫々の位相は異なるが同じ共有周波数を有して生成される複数のクロック信号は、しばしば集合的に、多相信号と呼ばれる。多相信号の具体例の1つは多相クロック(又は多相クロック信号)である。多相クロックは、例えば、同じ周波数を保ちながらタイミングの精度を改善するために、多くの用途において使用されている。一例として、多相直交クロックの4つの構成クロック信号の夫々の間の公称の位相オフセットは90度である。すなわち、多相直交クロックのクロック信号のうち第1のクロック信号は、名目上、零度位相を有するよう選ばれ、第2のクロック信号は、第1のクロック信号に対して公称90度の位相オフセットを有し、第3のクロック信号は、第2のクロック信号に対して公称90度の位相オフセット(従って、第1のクロック信号に対しては180度の位相オフセット)を有し、第4のクロック信号は、第3のクロック信号に対して公称90度の位相オフセット(従って、第1のクロック信号に対しては270度の位相オフセット)を有する。他の例として、多相差動クロックの2つのクロック信号の間の位相オフセットは、名目上、180度である。
【0003】
クロック及びデータ回復(CDR(clock and data recovery))回路又はシステムは、入来データの周波数で動作することを回避するよう一般的に多相クロックを用いる回路又はシステムの1つの一般的な例である。すなわち、多相クロックにより入来データをサンプリングすることによって、クロックの周波数は、入来データの周波数と一致する必要はない(例えば、n相クロックの夫々の構成クロック信号は、入来データのn分の1以下の周波数を有してよい。)。CDR回路は、一般的に、入来するデータ信号をサンプリングし、その入来データ信号からクロックを取り出し、サンプリングされたデータをリタイムするために使用される。位相ロックループ(PLL)に基づくCDR回路は、従来タイプのCDR回路である。一例として、従来のPLLに基づくCDRにおいて、位相検出器は、シリアル入力データストリームからの入力データビットと電圧制御発振器(VCO)からのクロック信号との間の位相を比較する。入力データとクロックとの間の位相差に応じて、位相検出器は、入来データの周波数と一致するようにVCOによって生成されるクロック信号の周波数又は位相の増大(例えば、“UP”信号の結果として)又は減少(例えば、“DN”信号の結果として)を最終的にもたらす信号を生成する。電荷ポンプは、UP信号及びDN信号に従ってループフィルタへ又は該ループフィルタからの電流を駆動する。ループフィルタは、UP信号及びDN信号に基づいてループフィルタへ又は該ループフィルタから駆動された電流に基づき、VCOのための制御電圧VCTRLを生成する。まさに記載されるループは、当該ループが生成するクロックの位相とともに入力データストリームの位相を追跡するフィードバック制御システムとして働く。ループのダイナミクスは、概して、(主にループフィルタにおいて)開ループ零及び極の位置並びに開ループゲインによって決定される。
【0004】
高性能用途において、VCOは、一般的に、並列構造において配置されたインダクタ及びキャパシタから成るLCタンクを中心に構築される。このようなVCOは、広くLCVCOと呼ばれている。LCVCOは、固定周波数及び可変周波数動作のために構成されてよく、後者はバラクタ(可変キャパシタ)の使用により達成される。LCVCOは、一般的に、2つの主たる段、すなわち、ゲイン段及びLCタンクを有する。さらに、LCVCOは、一般的に、高周波において優れた位相ノイズ及びジッタ性能を有する。
【0005】
しかし、LCVCOにより複数のクロック位相を生成することに伴う1つの問題は、1つのLCタンクが2つの相補的なクロック位相(零及び180度)しか生成することができないことであり、従って、通常は、2つのLCタンクが互いに結合されて、2つの結合されたLCVCOのうちの1つによって生成されるクロック信号において所望の位相シフト(例えば、直交クロックの場合には、90度)を生じさせる。非90度位相オフセットが望まれる又は必要とされる用途の一例は、データサンプリング相がデータのアイ(eye)の中心に対してユーザ制御される必要があるところの光通信システムにおける位相調整仕様にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の問題を鑑み、本発明の実施形態は、位相誤差を補償しながら設定可能なオフセットで多相信号を生成するための方法、回路及びシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、多相信号生成のための方法を提供する。方法は、第1のLCタンクを有する第1のLC型電圧制御発振器によって、前記第1のLCタンクの発振周波数に基づき第1の周波数及び第1の位相を有する第1の周期信号を生成し、
第2のLCタンクを有する第2のLC型電圧制御発振器によって、前記第2のLCタンクの発振周波数に基づき第2の周波数及び第2の位相を有する第2の周期信号を生成し、
第1の遅延バッファによって、第1の遅延信号を生成するよう第1の位相オフセットだけ前記第1の周期信号を遅延させ、
第2の遅延バッファによって、第2の遅延信号を生成するよう第2の位相オフセットだけ前記第2の周期信号を遅延させ、
前記第2の周期信号の第2の周波数及び第2の位相を調整するよう前記第1の遅延信号に基づき前記第2のLCタンクの発振周波数を変調し、前記第1の周期信号の第1の周波数及び第1の位相を調整するよう前記第2の遅延信号に基づき前記第1のLCタンクの発振周波数を変調し、前記第2の位相は所定のオフセットだけ前記第1の位相に対してオフセットされる。
【0008】
本発明の実施形態は、多相信号生成のための回路を提供する。回路は、第1のLCタンクを有し、該第1のLCタンクの発振周波数に基づき第1の周波数及び第1の位相を有する第1の周期信号を生成するよう構成される第1のLC型電圧制御発振器と、
第2のLCタンクを有し、該第2のLCタンクの発振周波数に基づき第2の周波数及び第2の位相を有する第2の周期信号を生成するよう構成される第2のLC型電圧制御発振器と、
第1の遅延信号を生成するよう第1の位相オフセットだけ前記第1の周期信号を遅延させ、且つ、前記第2の周期信号の第2の周波数及び第2の位相を調整する前記第1の遅延信号に基づき前記第2のLCタンクの発振周波数を変調するよう構成される第1の遅延バッファと、
第2の遅延信号を生成するよう第2の位相オフセットだけ前記第2の周期信号を遅延させ、且つ、前記第1の周期信号の第1の周波数及び第1の位相を調整する前記第2の遅延信号に基づき前記第1のLCタンクの発振周波数を変調するよう構成される第2の遅延バッファと
を有し、
前記第2の位相は、所定のオフセットだけ前記第1の位相に対してオフセットされる。
【0009】
本発明の実施形態は、多相信号生成のためのシステムを提供する。システムは、第1のLCタンクの発振周波数に基づき第1の周波数及び第1の位相を有する第1の周期信号を生成する手段と、
第2のLCタンクの発振周波数に基づき第2の周波数及び第2の位相を有する第2の周期信号を生成する手段と、
第1の遅延信号を生成するよう第1の位相オフセットだけ前記第1の周期信号を遅延させる手段と、
第2の遅延信号を生成するよう第2の位相オフセットだけ前記第2の周期信号を遅延させる手段と、
前記第2の周期信号の第2の周波数及び第2の位相を調整するよう前記第1の遅延信号に基づき前記第2のLCタンクの発振周波数を変調し、前記第1の周期信号の第1の周波数及び第2の位相を調整するよう前記第2の遅延信号に基づき前記第1のLCタンクの発振周波数を変調する手段と
を有し、
前記第2の位相は、所定のオフセットだけ前記第1の位相に対してオフセットされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、位相誤差を補償しながら設定可能なオフセットで多相信号をするための方法、回路及びシステムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】2つの結合されたLCVCOを有する多相直交クロック生成のための回路、装置又はシステムの例を表す。
【図2A】インピーダンスが測定されるクロック周波数の関数として、図1のLCVCOの1つの例となるLCタンクのインピーダンスの大きさを表す。
【図2B】インピーダンスが測定されるクロック周波数の関数として、図1のLCVCOの1つの例となるLCタンクのインピーダンスの対応する位相角度を表す。
【図2C】図1の2つの結合されたLCVCOの一方の例となる等価回路表現を表す。
【図2D】図1の2つの結合されたLCVCOの他方の例となる等価回路表現を表す。
【図2E】図1の2つの結合されたLCVCOのLCタンクにおける電流と電圧との間の位相及び大きさの関係の例を表す。
【図3】パッシブRCフィルタを夫々有する2つの結合されたLCVCOを有する多相直交クロック生成のための回路の例を表す。
【図4】2つのLCVCO、2つの位相検出器及び2つの遅延ブロックを有する多相クロック生成のための回路の例を表す。
【図5A】図4の位相検出器における使用に適したギルバートセルの例を表す。
【図5B】図4の位相検出器における使用に適したギルバートセルの例を表す。
【図5C】図5A又は図5Bのギルバートセルへ入力される差分信号間の位相オフセットの関数として、図5A又は図5Bのギルバートセルから出力される差分信号の例を表す。
【図6】図4の回路の等価シンボル表現の例を表す。
【図7A】インピーダンスが測定されるクロック周波数の関数として、図4のLCVCOの1つの例となるLCタンクのインピーダンスの大きさ及び位相角度を表す。
【図7B】図4の2つの結合されたLCVCOのLCタンクにおける電流と電圧との間の位相及び大きさの関係の例を表す。
【図7C】図4の2つの結合されたLCVCOのLCタンクにおける電流と電圧との間の位相及び大きさの関係の例を表す。
【図8】非90度位相シフトのために構成される場合に、図4の2つの結合されたLCVCOのLCタンクにおける電流と電圧との間の位相及び大きさの関係の例を表す。
【図9】多相クロック信号を生成する方法の例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特定の実施形態は、多相周期信号を生成するための電子回路、装置、機器、システム又は方法、より具体的には、様々な信号通信システムにおいて使用される多相クロック信号に関する。一例として、特定の実施形態は、CDR回路又はシステムにおいて使用される多相クロック信号を生成するための電子回路、装置、機器、システム又は方法に関する。特定の実施形態において、回路、装置、機器、システム又は方法は、2又はそれ以上の多相生成LCVCOを結合することによって、実施される。特定の実施形態は、多相生成LCVCOの間の制御可能な又は設定可能な位相オフセットを可能にするよう構成されてよい。さらに、特定の実施形態は、多相生成LCVCOにおける不整合により引き起こされる又は結合により引き起こされる位相誤差を補償する。特定の実施形態は、高速な回路又は通信システム(例えば、毎秒2.5、5、10又は20ギガビット(Gb/s)以上のクロック周波数又はデータビットレートを有する。)において利用されてよい。
【0013】
以下の記載において、特定の実施形態は、信号通信システムにおいて使用される四相クロック信号を生成する実施を参照して記載される。なお、他の実施形態は、4よりも多い構成クロック信号及び夫々の位相を有する多相クロック信号、90度よりも大きい又は小さい増分において互いに対してオフセットされる夫々の位相を構成クロック信号が有する多相クロック信号(すなわち、非直交クロック信号)、及び一般的に他の周期信号を含む他の多相信号を生成することにおいて、適用可能であってよい。さらに、ここで使用されるように、「若しくは」、「又は」及び「あるいは」は、それら自体の意味に加えて、「及び」、「並びに」及び「且つ」を暗示することがある。すなわち、「若しくは」、「又は」及び「あるいは」は、明示的に述べられるか又は暗に示されない限り、必ずしも「及び」、「並びに」及び「且つ」を除外しない。
【0014】
上述されたように、単一のLCVCOにより複数のクロック位相を生成することに伴う1つの問題は、1つのLCタンクが2つの相補的なクロック位相(例えば、零及び180度)しか生成しないことであり、従って、通常は、2つのLCタンクが互いに結合されて、例えば四相直交クロックが生成されるように所望の位相シフト(例えば、90度)を生じさせる。図1は、制御電圧VCTRLに基づき多相直交クロックを生成する回路又はシステム100の例を表す。1つの例となる適用において、制御電圧VCTRLは、上記のもののようなCDR回路におけるループフィルタから受け取られる。回路100は、第1のLCVCO102と、第2のLCVCO104とを有する。第1のLCVCO102は、インダクタ106並びにバラクタ110及び112(バラクタは可変キャパシタであり、通常は、電圧制御されるキャパシタである。)を有する第1のLCタンクを有する。同様に、第2のLCVCO104は、インダクタ108並びにバラクタ114及び116を有する第2のLCタンクを有する。第1のLCVCO102は、バイアス電流I及びIを夫々生成するバイアス電流源152及び154をさらに有し、一方、第2のLCVCO104は、バイアス電流I及びIを夫々生成するバイアス電流源156及び158をさらに有する。第1のLCVCO102及び第2のLCVCO104の夫々は、名目上同じ周波数で動作するが、異なる位相において共振する。第1のLCVCO102及び第2のLCVCO104の夫々は、本質的に、正帰還構成において交差結合されている差動対又は差動対の組を有する。
【0015】
より具体的に、第1のLCVCO102は、第1のトランジスタ118を有する第1の差動対を有する。第1のトランジスタ118の入力(例えば、ゲート電圧)は、第1の差動対の第2のトランジスタ120の出力(例えば、ドレイン)に電気的に接続されている。さらに、第2のトランジスタ120の入力(例えば、ゲート電圧)は、第1の差動対の第1のトランジスタ118の出力(例えば、ドレイン)に電気的に接続されている。第1のLCVCO102は、第1のトランジスタ122を有する第2の差動対をさらに有する。第1のトランジスタ122の入力(例えば、ゲート電圧)は、第2の差動対の第2のトランジスタ124の出力(例えば、ソース)に電気的に接続されている。第2のトランジスタ124の出力は、さらに、第1の差動対の第2のトランジスタ120の出力に電気的に接続されており、それにより、それらの出力は、その場合に出力ノード138に出力される共通電圧を共有する。さらに、第2のトランジスタ124の入力(例えば、ゲート電圧)は、第2の差動対の第1のトランジスタ122の出力(例えば、ソース)に電気的に接続されている。第1のトランジスタ122の出力は、さらに、第1の差動対の第1のトランジスタ118の出力に電気的に接続されており、それにより、それらの出力は、出力ノード136に出力される共通電圧を共有する。インダクタ106は、出力ノード136及び138の間に接続されている。
【0016】
同様に、第2のLCVCO104は、第1のトランジスタ126を有する第1の差動対を有する。第1のトランジスタ126の入力は、第1の差動対の第2のトランジスタ128の出力に電気的に接続されている。さらに、第2のトランジスタ128の入力は、第1の差動対の第1のトランジスタ126の出力に電気的に接続されている。第2のLCVCO104は、第1のトランジスタ130を有する第2の差動対をさらに有する。第1のトランジスタ130の入力は、第2の差動対の第2のトランジスタ132の出力に電気的に接続されている。第2のトランジスタ132の出力は、さらに、第1の差動対の第2のトランジスタ128の出力に電気的に接続されており、それにより、それらの出力は、その場合に出力ノード142に出力される共通電圧を共有する。さらに、第2のトランジスタ132の入力は、第2の差動対の第1のトランジスタ130の出力に電気的に接続されている。第1のトランジスタ130の出力は、さらに、第1の差動対の第1のトランジスタ126の出力に電気的に接続されており、それにより、それらの出力は、出力ノード140に出力される共通電圧を共有する。インダクタ108は、出力ノード140及び142の間に接続されている。図示される実施においては、後述されるトランジスタ118、120、126及び128並びにトランジスタ144、146、148及び150の夫々は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、より具体的には、nチャネルMOSFET(nMOSFET)であり、一方、トランジスタ122、124、130及び132はpチャネルMOSFET(pMOSFET)である。
【0017】
回路100は、構成要素であるLCVCO102及び104の対称性により、名目上、直角位相において発振し、従って、2つのLCVCO102及び104の構成要素における如何なる不整合も、夫々のLCVCO102及び104における2つのLCタンクの間の所望の位相オフセット(90度)をずらすことがある。特に、LCVCO102は、周波数ωoscで発振し、零度の公称位相を有するクロック周波数fclk(ここで、ωosc=2π×fclk)にある出力ノード136での第1のクロック信号Clkと、Clkに対して180度の公称位相を有するクロック周波数fclkにある出力ノード138での第2のクロック信号Clk180とを出力する。同様に、LCVCO104は、名目上、周波数ωoscで発振し、Clkに対して90度の公称位相を有するクロック周波数fclkにある出力ノード140での第3のクロック信号Clk90と、Clkに対して270度の公称位相を有するクロック周波数fclkにある出力ノード142での第4のクロック信号Clk270とを出力する。集合的に、クロック信号Clk、Clk90、Clk180及びClk270は、理想的な動作、状態及び構成の下で、四相直交クロックを構成する。図1が表すように、LCVCO102から出力されるクロック信号Clk及びClk180は、夫々、LCVCO104のトランジスタ144及び146の入力(例えば、ゲート)に送られる。同様に、LCVCO104から出力されるクロック信号Clk90及びClk270は、夫々、LCVCO102のトランジスタ148及び150の入力(例えば、ゲート)に送られる。加えて、第1のLCVCO102及び第2のLCVCO104は、共通ノード又はトレース134に更に結合されている。
【0018】
図2Aは、LCVCO102及び104の夫々における各LCタンクの発振の周波数ωに対する各LCタンクのインピーダンスZの大きさのプロットを表す。図2Bは、LCVCO102及び104の夫々における各LCタンクの発振の周波数ωに対する各LCタンクのインピーダンスの位相角度φのプロットを表す。図中、ωoscは、各LCタンクの発振の実際の周波数を表す。図2A及び2Bにおいて図示されるように、第1のLCVCO102と第2のLCVCO104との間の結合は、LCVCO102及び104の夫々における各LCタンクが各LCタンクの共振周波数ωとは異なる周波数ωoscで発振する点で、夫々のLCタンクにおいて歪み(strain)を引き起こす。結果として、LCVCO102及び104の夫々における各LCタンクの実効クオリティファクタQは小さくなる。
【0019】
図2C及び2Dは、夫々、LCVCO102及び104の挙動の特性を示す等価回路表現を表し、一方、図2Eは、回路100の電圧及び電流のフェーザ図を表す。より具体的に、図2Eは、図1の2つの結合されたLCVCOのLCタンクにおける電流及び電圧の間の位相及び大きさの関係の一例を表し、電流が電圧と同じ位相を有さないことを示す。また、この例は、LCタンクがωではなくωoscで動作することを示す。図2C、2D及び2Eにおいて、iT0は、インダクタ106からのインダクタンス並びにバラクタ110及び112のキャパシタンスを含むノード136及び138での全てのキャパシタンスから得られるLCVCO102のLCタンクの電流であり、iT90は、インダクタ108からのインダクタンス並びにバラクタ114及び116のキャパシタンスを含むノード140及び142での全てのキャパシタンスから得られるLCVCO104のLCタンクの電流であり、Vは、LCVCO102のノード136及び138(Clk及びClk180)の間の差動電圧であり、V90は、LCVCO104のノード140及び142(Clk90及びClk270)の間の差動電圧であり、ig0は、LCVCO102のトランジスタ118及び120の電流の間の電流差であり、ig90は、LCVCO104のトランジスタ126及び128の間の電流の間の電流差であり、gは、LCVCO102及び104の第1の差動対の相互コンダクタンス(I及びIに依存する。)であり(このとき、先と同じく、LCVCO102の第1の差動対は、結合されたトランジスタ118及び120によって形成され、LCVCO104の第1の差動対は、結合されたトランジスタ126及び128によって形成される。)、ic0は、LCVCO102のトランジスタ148及び150の電流の間の電流差であり、ic90は、LCVCO104のトランジスタ146及び144の電流の間の電流差であり、gは、LCVCO102及び104の第3の差動対の相互コンダクタンス(I及びIに依存する。)である(このとき、LCVCO102の第3の差動対は、結合されたトランジスタ148及び150によって形成され、LCVCO104の第3の差動対は、結合されたトランジスタ144及び146によって形成される。)。
【0020】
結合された第1のLCVCO102及び第2のLCVCO104のノイズ特性は、同等の単一の非結合LCVCOのノイズ特性よりも悪い。さらに、回路100は、バイアス電流I及びIの大きさに対する発振周波数ωの依存性により、接地及び電源ノイズに対するより高い感度を有する。さらに、インダクタ106及び108の間の如何なる構成要素又はバイアス電流不整合、又は基板若しくは磁気結合も、LCタンク間、ひいては、それらが出力するクロック信号Clk、Clk90、Clk180及びClk270の間の位相誤差又はスキューをもたらしうる。回路100の他の欠点は、回路トポロジが、クロック信号Clk、Clk90、Clk180及びClk270の間の制御可能な位相オフセットを可能にしないことである。すなわち、クロック信号Clk、Clk90、Clk180及びClk270の位相は、固定値で、この特定の例においては、公称90度の増加オフセットにおいて、オフセットされる。
【0021】
回路100等に対する従来の解決法又は改善は、結合の前に、パッシブ回路、通常は、全通過RCフィルタを挿入することを伴う。この一例が図3に表される。より具体的に、図3は、全通過RCフィルタがLCVCO102及び104の夫々の出力ノードの間に、すなわち、LCVCO102の出力ノード136及び138の間と、LCVCO104の出力ノード140及び142の間とに結合されている回路300を表す。より具体的に、図3において、LCVCO102は、図3が表すように接続された抵抗160及び162並びにキャパシタ164及び166により実施されるRCフィルタを有する。同様に、LCVCO104は、図3が表すように接続された抵抗168及び170並びにキャパシタ172及び174により実施されるRCフィルタを有する。ノード176、178、180及び182において夫々生成される、結果として得られる信号V、V、V及びVは、次いで、夫々、トランジスタ144、146、148及び150の入力(例えば、ゲート)に送られ、さらに2つのLCVCO102及び104を結合する。LCVCO102及び104における全通過フィルタの構成要素の適切な値(例えば、抵抗及びキャパシタ160、162、164、166、168、170、172、174の抵抗値及びキャパシタンス値)によれば、夫々の位相シフトされた結合電圧信号V/V及びV/Vは、夫々のLCタンク電圧信号Clk90/Clk270(LCVCO104によって生成される。)及びClk/Clk180(LCVCO102によって生成される。)と同相である。なお、図1の回路100と同様に、回路300は、90度以外の、2つのLCVCO102及び104のLCタンクの間の制御可能な位相シフトを与える如何なる手段も有さない。さらに、回路300は、LCVCO102及び104の間の好ましくないタンク結合又は構成要素の不整合により引き起こされる位相誤差を補正する如何なる手段も有さない。
【0022】
図4は、多相周期信号、より具体的に、多相クロック信号を生成する特定の実施形態に従う回路400の例を表す。特定の実施形態において、回路400は、多相生成LCVCOの間の制御可能な又は設定可能な位相オフセットを可能にするよう構成されてよい。さらに、特定の実施形態は、多相生成LCVCOにおける不整合により引き起こされる又は結合により引き起こされる位相誤差を補償する。特定の実施形態において、回路400は、第1のLCVCO402及び第2のLCVCO404を有する。特定の実施形態において、第1のLCVCO402は、インダクタ406並びにバラクタ410及び412を有する第1のLCタンクを有する。同様に、第2のLCVCO404は、インダクタ408並びにバラクタ414及び416を有する第2のLCタンクを有する。第1のLCVCO402は、バイアス電流I及びIを夫々生成するバイアス電流源418及び420をさらに有し、第2のLCVCO404は、バイアス電流I及びIを夫々生成するバイアス電流源422及び424をさらに有する。特定の実施形態において、第1のLCVCO402及び第2のLCVCO404の夫々は、名目上、同じ周波数で動作するが、異なる位相で共振する。第1のLCVCO402及び第2のLCVCO404の夫々は、NMOS差動対及びPMOS対を有する。一実施形態において、PMOS対は差動対であってよいが、図4に表される実施形態では、それは差動対ではなく、交差結合されたトランジスタの組として実施されている。
【0023】
1つの例となる実施形態において、第1のLCVCO402は、第1のトランジスタ426を有する第1のNMOS差動対を有する。第1のトランジスタ426の入力(例えば、ゲート電圧)は、第1の差動対の第2のトランジスタ428の出力(例えば、ドレイン)に電気的に接続されている。さらに、第2のトランジスタ428の入力(例えば、ゲート電圧)は、第1の差動対の第1のトランジスタ426の出力(例えば、ドレイン)に電気的に接続されている。第1のLCVCO402は、第1のトランジスタ430を有する第2のPMOS交差結合対をさらに有してよい。第1のトランジスタ430の入力(例えば、ゲート電圧)は、第2の交差結合対の第2のトランジスタ432の出力(例えば、ソース)に電気的に結合されている。第2のトランジスタ432の出力は、さらに、第1の差動対の第2のトランジスタ428の出力に電気的に結合されており、それにより、それらの出力は、その場合に出力ノード434に出力される共通電圧を共有する。さらに、PMOS対の第2のトランジスタ432の入力(例えば、ゲート電圧)は、第2の対の第1のトランジスタ430の出力(例えば、ソース)に電気的に結合されている。第1のトランジスタ430の出力は、さらに、第1の差動対の第1のトランジスタ426の出力に電的に接続されており、それにより、それらの出力は、出力ノード436に出力される共通電圧を共有する。インダクタ406は、出力ノード434及び436の間に接続されている。
【0024】
同様に、第2のLCVCO404は、第1のトランジスタ438を有する第1のNMOS差動対を有してよい。第1のトランジスタ438の入力は、第1の差動対の第2のトランジスタ440の出力に電気的に接続されている。さらに、第2のトランジスタ440の入力は、第1の差動対の第1のトランジスタ438の出力に電気的に接続されている。第2のLCVCO404は、第1のトランジスタ442を有する第2のPMOS対をさらに有してよい。第1のトランジスタ442の入力は、第2の対の第2のトランジスタ444の出力に電気的に接続されている。第2のトランジスタ444の出力は、さらに、第1の差動対の第2のトランジスタ440の出力に電気的に接続されており、それにより、それらの出力は、その場合に出力ノード446に出力される共通電圧を共有する。さらに、第2の対の第2のトランジスタ444の入力は、第2の対の第1のトランジスタ440の出力に電気的に接続されている。第1のトランジスタ442の出力は、さらに、第1の差動対の第1のトランジスタ438の出力に電気的に接続されており、それにより、それらの出力は、出力ノード448に出力される共通電圧を共有する。インダクタ408は、出力ノード446及び448の間に接続されている。図示される実施形態においては、トランジスタ426、428、438及び440の夫々はnMOSFETであり、一方、トランジスタ430、432、442及び444の夫々はpMOSFETである。
【0025】
特定の実施形態において、LCVCO402及び404におけるLCタンクは、2つのLCVCO402及び404から出力されるクロック信号の位相の間で所望の位相オフセットを達成するようLCタンクの夫々の発振の共振周波数を変調するために、遅延ブロックを介して結合される。遅延ブロックは、1つの例となる実施形態では、90度の公称遅延を有する。図示される実施形態においては、LCVCO404から夫々出力される第1のクロック信号V90及び第2のクロック信号V270の位相の間の位相オフセットは、LCVCO402から夫々出力される第1のクロック信号V及び第2のクロック信号V180の位相に対して夫々90度である。すなわち、この例では、回路400は、夫々出力ノード436、448、434及び446で、夫々零、90、180及び270度を有するクロック信号V、V90、V180及びV270を生成するように、直角位相で発振する。特定の実施形態において、第1のLCVCO402からのクロック信号V及びV180は、第1の位相検出器450及び第1の遅延バッファ454に入力される。特定の実施形態において、第2のLCVCO404からのクロック信号V90及びV270は、第2の位相検出器452及び第2の遅延バッファ456に入力される。特定の実施形態において、第1の遅延バッファ454は、公称90度位相シフトによってクロック信号V及びV180を遅延させて、それらの信号の遅延されたものV0d及びV180dを生成する(すなわち、遅延信号V0d及びV180dは、夫々、90度及び270度の位相を有するべきである。)。同様に、特定の実施形態において、第2の遅延バッファ456は、公称90度位相シフトによってクロック信号V90及びV270を遅延させて、それらの信号の遅延されたものV90d及びV270dを生成する(すなわち、遅延信号V90d及びV270dは、夫々、180度及び零度の位相を有するべきである。)。
【0026】
図示される実施形態においては、第1のLCVCO402は、NMOSトランジスタ458及び460をさらに有する。それらの入力(ゲート)電圧V90d及びV270dは、夫々、第2の遅延バッファ456の出力から受ける遅延信号である。それらの出力信号V90d及びV270dは、さらに、第2の位相検出器452に入力される。同様に、図示される実施形態においては、第2のLCVCO404は、NMOSトランジスタ462及び464をさらに有する。それらの入力(ゲート)電圧V180d及びV0dは、夫々、第1の遅延バッファ454の出力から受ける遅延信号である。それらの出力信号V180d及びV0dは、さらに、第1の位相検出器450に入力される。
【0027】
特定の実施形態において、第1の位相検出器450は、第1のLCタンクから出力される信号V及びV180の公称差動対と、第1の遅延バッファ454から出力される公称差動信号の遅延された組V0d及びV180dとの間の位相オフセットを検出又は決定する。同様に、第2の位相検出器452は、第2のLCタンクから出力される信号V90及びV270の公称差動対と、第2の遅延バッファ456から出力される公称差動信号の遅延された組V90d及びV270dとの間の位相オフセットを検出又は決定する。
【0028】
1つの例となる実施形態において、位相検出器450は、乗算ミキサセル、より具体的には、ギルバートセル(Gilbert cell)を有する。その例が図5Aによって表される。同様に、1つの例となる実施形態において、位相検出器452は、乗算ミキサセル、より具体的には、ギルバートセルを有する。その例が図5Bに表される。参照により、ギルバートセルは電子乗算ミキサである。ギルバートセルの出力電流Ioutは、2つの公称入力差動対の(差動)ベース電流の厳密な乗算である。図5の実施例では、V及びV180は、集合的に、第1の差分信号に相当し、一方、V0d及びV180dは、集合的に、第2の差分信号に相当する。同様に、図5Bの実施例では、V90及びV270は、集合的に、第1の差分信号に相当し、一方、V90d及びV270dは、集合的に、第2の差分信号に相当する。図5A及び5Bの実施例では、第2の差分信号は、第1の差分信号の位相に対して90度の所望の位相オフセット(又は遅延)を有する(他の実施形態では、所望の位相オフセットは、必要に応じて、90度よりも小さいか、又はそれよりも大きくてよい。)。図5Cは、位相検出器450及び452から夫々出力される
(外1)

の値を、夫々の第1の公称差動入力信号(位相検出器450に係るV及びV180並びに位相検出器452に係るV90及びV270)と第2の公称差動入力信号(位相検出器450に係るV0d及びV180d並びに位相検出器452に係るV90d及びV270d)との間の位相オフセットΔφの関数として表す。
【0029】
設定可能なスキュー制御信号Isk90及びIsk0が本例において零に等しいように設定されるとすると、第1及び第2の局所ループ(このとき、第1の局所ループは位相検出器450及び遅延バッファ454を有し、第2の局所ループは位相検出器452及び遅延バッファ456を有する。)は、夫々の第1の公称差動入力信号(位相検出器450に係るV及びV180並びに位相検出器452に係るV90及びV270)と第2の公称差動入力信号(位相検出器450に係るV0d及びV180d並びに位相検出器452に係るV90d及びV270d)との間の遅延差が90度である場合に、安定する(すなわち、第1の位相検出器450は零電流
(外2)


を出力し、第2の位相検出器452は、零電流
(外3)


を出力する。)。このような条件は、例えば、位相検出器450及び452の特性に起因して、より具体的には、位相検出器450及び452がギルバートセルとして実施されるので、V0、V0d、V90及びV90dが直交している場合に満足される。
【0030】
特定の実施形態において、位相検出器450及び452の出力、すなわち、差動信号Iout1及びIout2は、夫々、次いで、加算器458及び460(又は簡単な正味加算回路)に入力される。加算器458及び460は、夫々、設定可能なベースバンド電流ISK90及びISK0(それらの一方又は両方は、零又は設定可能な非零の値に設定されてよい。)を出力信号Iout1及びIout2に加える。加算器458及び460によって出力される和信号Isum1及びIsum2は、夫々、次いで、夫々の和信号Isum1及びIsum2を平均するよう、キャパシタ462及び464によって低域通過フィルタをかけられる。当然、代替の実施形態では、他の低域通過フィルタリング又は平均化スキーム又は技術が利用されてよい。さらに、幾つかの代替の実施形態では、加算器458及び460は真タック存在しなくても、又は単にバイパスされてもよい。
【0031】
特定の実施形態において、フィルタ処理された(平均化された)和信号Isum1及びIsum2は、次いで、夫々の遅延バッファへの入力と夫々の遅延バッファの出力との間で90度又は他の所望の位相オフセットを達成するよう遅延バッファの遅延を調整するために、夫々、遅延バッファ454及び456へフィードバックとして入力される。
【0032】
図6は、図4の回路400の挙動の特性を示す等価回路表現を表す。より具体的に、ig0は、第1のLCVCO402のトランジスタ426及び428を通る電流の間の電流差であり、ig90は、第2のLCVCO404のトランジスタ438及び440を通る電流の間の電流差であり、iT0は、インダクタ406のインダクタンス並びにバラクタ410及び412のキャパシタンスを含むノード436及び434での全てのキャパシタンスから得られる第1のLCVCO402のLCタンクの電流であり、iT90は、インダクタ408のインダクタンス並びにバラクタ414及び416のキャパシタンスを含むノード448及び446での全てのキャパシタンスから得られる第2のLCVCO404のLCタンクの電流であり、gは、第1のNMOS差動対、すなわち、第1のLCVCO402の結合されたトランジスタ426及び428を有するNMOS差動対並びに第2のLCVCO404の結合されたトランジスタ438及び440を有するNMOS差動対、の夫々の相互コンダクタンス(I及びIに依存する。)であり、gは、第2のNMOS差動対、すなわち、第1のLCVCO402の結合されたトランジスタ458及び460を有するNMOS差動対並びに第2のLCVCO404の結合されたトランジスタ462及び464を有するNMOS差動対、の夫々の相互コンダクタンス(I及びIに依存する。)である。さらに、ic0=−g×V90d及びic90=g×V0dである。
【0033】
図7Aは、LCVCO402及び404の夫々における各LCタンクの発振の周波数ωに対する各LCタンクのインピーダンスZの大きさのプロットと、LCVCO402及び404の夫々における各LCタンクの発振の周波数ωに対する各LCタンクのインピーダンスの位相角度φのプロットとを表す。図7Aにおいて示されるように、第1のLCVCO402と第2のLCVCO404との間の磁気結合又は構成要素の不整合に起因する非90度位相シフトは、LCVCO402及び404の夫々における各LCタンクを、異なる共振周波数、夫々ω01及びω02で発振させうる。構成要素の不整合又は磁気結合を補償するよう、制御信号Isk90及びIsk0は非零値に駆動され、それにより、2つのLCタンク電圧の間の位相αと、図7A並びに図7B及び7Cのフェーザ図に示される夫々の電流とを保ちながら、2つのLCタンク電圧の間で所望の90度位相シフト(又は他の所望の位相シフト)が得られる。図7B及び7Cは、LCVCO402及び404のLCタンクにおける電流及び電圧の間の位相及び大きさの関係を表している。このように、LCVCO402及び404におけるLCタンクは両方ともωoscで動作する。ωoscは、上述されたように(構成要素の不整合又は磁気結合に起因して)、LCVCO402及び404におけるLCタンクの共振周波数ω01及びω02とは異なる。
【0034】
特定の実施形態において、LCVCO402及び404におけるLCタンクの間で所望の非90度位相シフトを達成するよう、制御信号Isk90及びIsk0は、極性が反対で大きさが等しい非零値に駆動される。この例は、図8に示されるフェーザ図によって表される。すなわち、(例えば、ユーザによって)制御信号Isk90及びIsk0の値を選択することによって、遅延バッファ454及び456の遅延は、夫々の遅延バッファ454及び456によって出力される遅延信号が、夫々の遅延バッファへの夫々の入力信号に対して所望の非90度位相オフセット(例えば、90度よりも大きい又は小さい)を有するように、設定されてよい。特定の実施形態において、所望の位相αを生じさせる制御信号Isk90及びIsk0の値を決定するよう、回路400は較正されなければならないことがあり、あるいは、何らかの外部フィードバックが設けられてよい。
【0035】
このように、回路400の特定の実施形態を含む特定の実施形態は、多相生成LCVCOの制御可能な位相遅延を可能にする。さらに、特定の実施形態は、多相生成LCVCOにおける不整合により引き起こされる又は結合により引き起こされる位相誤差を補償する。さらに、回路400は、個々のLCタンクを適切な位相遅延に遅延ロックすることによって、より多くのLCVCO及び夫々のLCタンクへと一般化されてよい。
【0036】
図9は、多相クロック信号を生成する方法の例を表す。特定の実施形態において、第1のLCタンクを有する第1のLCVCOは、第1のLCタンクの発振周波数に基づき、第1の周波数及び第1の位相を有する第1の周期信号を生成してよい(901)。特定の実施形態において、第2のLCタンクを有する第2のLCVCOは、第2のLCタンクの発振周波数に基づき、第2の周波数及び第2の位相を有する第2の周期信号を生成してよい(902)。特定の実施形態において、第1の遅延バッファは、第1の遅延信号を生成するよう、第1の位相オフセットだけ第1の周期信号を遅延させてよい(903)。特定の実施形態において、第2の遅延バッファは、第2の遅延信号を生成するよう、第2の位相オフセットだけ第2の周期信号を遅延させてよい(904)。図6の例において表されるように、第1の遅延バッファ454は、第1のLCVCO402からの第1の周期信号を遅延させ、第1の遅延信号を第2のLCVCO404の入力に送信し、第2の遅延バッファ456は、第2のLCVCO104からの第2の周期信号を遅延させ、第2の遅延信号を第1のLCVCO402の入力に送信する。特定の実施形態において、第1の遅延信号は、第2の周期信号の第2の周波数及び第2の位相を調整するよう第2のLCタンクの発振周波数を変調してよく、第2の遅延信号は、第1の周期信号の第1の周波数及び第1の位相を調整するよう第1のLCタンクの発振周波数を変調してよい(905)。さらに、幾つかの実施形態において、第1の位相検出器(図6の450)は、第1の周期信号及び第1の遅延信号に基づき第1の位相オフセットを決定してよく、第2の位相検出器(図6の452)は、第2の周期信号及び第2の遅延信号に基づき第2の位相オフセットを決定してよい。幾つかの実施形態において、第1の加算器(図6の458)は、第1の設定可能な電流(図6のIsk90)に基づき第1の位相オフセットを調整してよく、第2の加算器(図6の460)は、第2の設定可能な電流(図6のIsk0)に基づき第2の位相オフセットを調整してよい。一実施形態において、第1の位相オフセット及び第2の位相オフセットは、さらに、低域通過フィルタ(図6の462及び464)によってフィルタをかけられてよい。
【0037】
本開示は、特定の順序において起こるよう図9の方法又は処理の特定のステップを記載及び図示するが、本開示は、何らかの適切な順序において繰り返し又は連続して起こる図9の方法の如何なる適切なステップも考える。さらに、本開示は、図9の方法の特定のステップを実行する特定の構成要素を記載及び図示するが、本開示は、図9の方法の如何なる適切なステップも実行する如何なる適切な構成要素の如何なる適切な組み合わせも考える。
【0038】
本開示は、当業者が理解する本開示における実施例に対する全ての変更、置換、変形、代替及び修正を包含する。同様に、必要に応じて、添付の特許請求の範囲は、当業者が理解する本開示における実施例に対する全ての変更、置換、変形、代替及び修正を包含する。
【0039】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0040】
(付記1)
第1のLCタンクを有する第1のLC型電圧制御発振器によって、前記第1のLCタンクの発振周波数に基づき第1の周波数及び第1の位相を有する第1の周期信号を生成し、
第2のLCタンクを有する第2のLC型電圧制御発振器によって、前記第2のLCタンクの発振周波数に基づき第2の周波数及び第2の位相を有する第2の周期信号を生成し、
第1の遅延バッファによって、第1の遅延信号を生成するよう第1の位相オフセットだけ前記第1の周期信号を遅延させ、
第2の遅延バッファによって、第2の遅延信号を生成するよう第2の位相オフセットだけ前記第2の周期信号を遅延させ、
前記第2の周期信号の第2の周波数及び第2の位相を調整するよう前記第1の遅延信号に基づき前記第2のLCタンクの発振周波数を変調し、前記第1の周期信号の第1の周波数及び第1の位相を調整するよう前記第2の遅延信号に基づき前記第1のLCタンクの発振周波数を変調し、前記第2の位相は所定のオフセットだけ前記第1の位相に対してオフセットされる、
方法。
【0041】
(付記2)
第1の位相検出器によって、前記第1の周期信号及び前記第1の遅延信号に基づき前記第1の位相オフセットを決定し、
第2の位相検出器によって、前記第2の周期信号及び前記第2の遅延信号に基づき前記第2の位相オフセットを決定する
付記1に記載の方法。
【0042】
(付記3)
第1の加算器によって、第1の設定可能な電流に基づき前記第1の位相オフセットを調整し、
第2の加算器によって、第2の設定可能な電流に基づき前記第2の位相オフセットを調整する
付記2に記載の方法。
【0043】
(付記4)
前記第1の周波数は、前記第2の周波数に一致する、
付記1に記載の方法。
【0044】
(付記5)
前記第1の周期信号は、第1の第1周期信号及び第2の第1周期信号を有する差分信号であり、前記第1の第1周期信号及び前記第2の第1周期信号は、180度だけオフセットされている夫々の位相を有し、
前記第2の周期信号は、第1の第2周期信号及び第2の第2周期信号を有する差分信号であり、前記第1の第2周期信号及び前記第2の第2周期信号は、180度だけオフセットされている夫々の位相を有する、
付記1に記載の方法。
【0045】
(付記6)
前記第1の位相オフセットは90度であり、
前記第2の位相オフセットは90度である、
付記1に記載の方法。
【0046】
(付記7)
前記所定のオフセットは90度である、
付記1に記載の方法。
【0047】
(付記8)
非90度の所定の位相オフセットを達成するよう、前記第1の設定可能な電流及び前記第2の設定可能な電流は、大きさが等しく、符号が逆である、
付記3に記載の方法。
【0048】
(付記9)
前記第1の位相検出器はギルバートセルを有し、
前記第2の位相検出器はギルバートセルを有する、
付記2に記載の方法。
【0049】
(付記10)
第1のLCタンクを有し、該第1のLCタンクの発振周波数に基づき第1の周波数及び第1の位相を有する第1の周期信号を生成するよう構成される第1のLC型電圧制御発振器と、
第2のLCタンクを有し、該第2のLCタンクの発振周波数に基づき第2の周波数及び第2の位相を有する第2の周期信号を生成するよう構成される第2のLC型電圧制御発振器と、
第1の遅延信号を生成するよう第1の位相オフセットだけ前記第1の周期信号を遅延させ、且つ、前記第2の周期信号の第2の周波数及び第2の位相を調整する前記第1の遅延信号に基づき前記第2のLCタンクの発振周波数を変調するよう構成される第1の遅延バッファと、
第2の遅延信号を生成するよう第2の位相オフセットだけ前記第2の周期信号を遅延させ、且つ、前記第1の周期信号の第1の周波数及び第1の位相を調整する前記第2の遅延信号に基づき前記第1のLCタンクの発振周波数を変調するよう構成される第2の遅延バッファと
を有し、
前記第2の位相は、所定のオフセットだけ前記第1の位相に対してオフセットされる、
回路。
【0050】
(付記11)
前記第1の周期信号及び前記第1の遅延信号に基づき前記第1の位相オフセットを決定するよう構成される第1の位相検出器と、
前記第2の周期信号及び前記第2の遅延信号に基づき前記第2の位相オフセットを決定するよう構成される第2の位相検出器と
をさらに有する付記10に記載の回路。
【0051】
(付記12)
第1の設定可能な電流に基づき前記第1の位相オフセットを調整するよう構成される第1の加算器と、
第2の設定可能な電流に基づき前記第2の位相オフセットを調整するよう構成される第2の加算器と
をさらに有する付記11に記載の回路。
【0052】
(付記13)
前記第1の周波数は、前記第2の周波数に一致する、
付記10に記載の回路。
【0053】
(付記14)
前記第1の周期信号は、第1の第1周期信号及び第2の第1周期信号を有する差分信号であり、前記第1の第1周期信号及び前記第2の第1周期信号は、180度だけオフセットされている夫々の位相を有し、
前記第2の周期信号は、第1の第2周期信号及び第2の第2周期信号を有する差分信号であり、前記第1の第2周期信号及び前記第2の第2周期信号は、180度だけオフセットされている夫々の位相を有する、
付記10に記載の回路。
【0054】
(付記15)
前記第1の位相オフセットは90度であり、
前記第2の位相オフセットは90度である、
付記10に記載の回路。
【0055】
(付記16)
前記所定のオフセットは90度である、
付記10に記載の回路。
【0056】
(付記17)
非90度の所定の位相オフセットを達成するよう、前記第1の設定可能な電流及び前記第2の設定可能な電流は、大きさが等しく、符号が逆である、
付記12に記載の回路。
【0057】
(付記18)
前記第1の位相検出器はギルバートセルを有し、
前記第2の位相検出器はギルバートセルを有する、
付記11に記載の回路。
【0058】
(付記19)
第1のLCタンクの発振周波数に基づき第1の周波数及び第1の位相を有する第1の周期信号を生成する手段と、
第2のLCタンクの発振周波数に基づき第2の周波数及び第2の位相を有する第2の周期信号を生成する手段と、
第1の遅延信号を生成するよう第1の位相オフセットだけ前記第1の周期信号を遅延させる手段と、
第2の遅延信号を生成するよう第2の位相オフセットだけ前記第2の周期信号を遅延させる手段と、
前記第2の周期信号の第2の周波数及び第2の位相を調整するよう前記第1の遅延信号に基づき前記第2のLCタンクの発振周波数を変調し、前記第1の周期信号の第1の周波数及び第2の位相を調整するよう前記第2の遅延信号に基づき前記第1のLCタンクの発振周波数を変調する手段と
を有し、
前記第2の位相は、所定のオフセットだけ前記第1の位相に対してオフセットされる、
システム。
【符号の説明】
【0059】
100,300,400 回路
102,402 第1のLC型電圧制御発振器(LCVCO)
104,404 第2のLC型電圧制御発振器(LCVCO)
450,452 位相検出器
452,454 遅延バッファ
458,460 加算器
Clk,Clk90,Clk180,Clk270 クロック信号
clk クロック周波数
,I バイアス電流
インピーダンス
ωosc 発振周波数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のLCタンクを有する第1のLC型電圧制御発振器によって、前記第1のLCタンクの発振周波数に基づき第1の周波数及び第1の位相を有する第1の周期信号を生成し、
第2のLCタンクを有する第2のLC型電圧制御発振器によって、前記第2のLCタンクの発振周波数に基づき第2の周波数及び第2の位相を有する第2の周期信号を生成し、
第1の遅延バッファによって、第1の遅延信号を生成するよう第1の位相オフセットだけ前記第1の周期信号を遅延させ、
第2の遅延バッファによって、第2の遅延信号を生成するよう第2の位相オフセットだけ前記第2の周期信号を遅延させ、
前記第2の周期信号の第2の周波数及び第2の位相を調整するよう前記第1の遅延信号に基づき前記第2のLCタンクの発振周波数を変調し、前記第1の周期信号の第1の周波数及び第1の位相を調整するよう前記第2の遅延信号に基づき前記第1のLCタンクの発振周波数を変調し、前記第2の位相は所定のオフセットだけ前記第1の位相に対してオフセットされる、
方法。
【請求項2】
第1の位相検出器によって、前記第1の周期信号及び前記第1の遅延信号に基づき前記第1の位相オフセットを決定し、
第2の位相検出器によって、前記第2の周期信号及び前記第2の遅延信号に基づき前記第2の位相オフセットを決定する
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の加算器によって、第1の設定可能な電流に基づき前記第1の位相オフセットを調整し、
第2の加算器によって、第2の設定可能な電流に基づき前記第2の位相オフセットを調整する
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の周期信号は、第1の第1周期信号及び第2の第1周期信号を有する差分信号であり、前記第1の第1周期信号及び前記第2の第1周期信号は、180度だけオフセットされている夫々の位相を有し、
前記第2の周期信号は、第1の第2周期信号及び第2の第2周期信号を有する差分信号であり、前記第1の第2周期信号及び前記第2の第2周期信号は、180度だけオフセットされている夫々の位相を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
非90度の所定の位相オフセットを達成するよう、前記第1の設定可能な電流及び前記第2の設定可能な電流は、大きさが等しく、符号が逆である、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
第1のLCタンクを有し、該第1のLCタンクの発振周波数に基づき第1の周波数及び第1の位相を有する第1の周期信号を生成するよう構成される第1のLC型電圧制御発振器と、
第2のLCタンクを有し、該第2のLCタンクの発振周波数に基づき第2の周波数及び第2の位相を有する第2の周期信号を生成するよう構成される第2のLC型電圧制御発振器と、
第1の遅延信号を生成するよう第1の位相オフセットだけ前記第1の周期信号を遅延させ、且つ、前記第2の周期信号の第2の周波数及び第2の位相を調整する前記第1の遅延信号に基づき前記第2のLCタンクの発振周波数を変調するよう構成される第1の遅延バッファと、
第2の遅延信号を生成するよう第2の位相オフセットだけ前記第2の周期信号を遅延させ、且つ、前記第1の周期信号の第1の周波数及び第1の位相を調整する前記第2の遅延信号に基づき前記第1のLCタンクの発振周波数を変調するよう構成される第2の遅延バッファと
を有し、
前記第2の位相は、所定のオフセットだけ前記第1の位相に対してオフセットされる、
回路。
【請求項7】
第1のLCタンクの発振周波数に基づき第1の周波数及び第1の位相を有する第1の周期信号を生成する手段と、
第2のLCタンクの発振周波数に基づき第2の周波数及び第2の位相を有する第2の周期信号を生成する手段と、
第1の遅延信号を生成するよう第1の位相オフセットだけ前記第1の周期信号を遅延させる手段と、
第2の遅延信号を生成するよう第2の位相オフセットだけ前記第2の周期信号を遅延させる手段と、
前記第2の周期信号の第2の周波数及び第2の位相を調整するよう前記第1の遅延信号に基づき前記第2のLCタンクの発振周波数を変調し、前記第1の周期信号の第1の周波数及び第2の位相を調整するよう前記第2の遅延信号に基づき前記第1のLCタンクの発振周波数を変調する手段と
を有し、
前記第2の位相は、所定のオフセットだけ前記第1の位相に対してオフセットされる、
システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−231460(P2012−231460A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−89978(P2012−89978)
【出願日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】