説明

天井走行搬送装置

【課題】搬送台車の走行方向前方にある障害物の検知、及び搬送台車の下方にある障害物の検知を低コストで実現する。
【解決手段】搬送台車20に、搬送台車20の走行方向前方に位置する前方監視領域及び下方に位置する下方監視領域を含む領域をスキャニングすることができるセンサ30を設ける。そして、選択部は、搬送台車20が走行している際には、センサ30によるスキャニング領域のうち前方監視領域を選択し、搬送台車20が搬送物であるFOUP80の回収作業又は載置作業を行っている際には、下方監視領域を選択する。監視部は、選択部によって選択された監視領域内の障害物を監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物を昇降可能に保持しつつ、天井に敷設された軌道を走行する天井走行搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造設備においては、半導体ウェーハが収納されたFOUP(Front Opening Unified Pod)を昇降可能なグリッパによって把持しつつ、天井に敷設された軌道を走行することで種々の半導体製造装置間を移動する搬送台車を備えた天井走行搬送装置が用いられている。半導体製造装置の本体は、軌道の直下に近接して配置されており、当該半導体製造装置のポートが軌道の直下に位置するようになっている。したがって、かかる搬送装置の搬送台車は、これから搬送を行うFOUPが載置されている半導体製造装置のポート上で停止し、グリッパを降下させてFOUPを把持した後、グリッパを上昇させることによってFOUPを回収することができる。FOUPを回収した搬送台車は、次の工程を行う他の半導体製造装置まで走行する。また、搬送台車は、製造装置のポート上で停止し、FOUPを把持しているグリッパを降下させて、当該ポートにFOUPを載置することができる。
【0003】
上述のような天井走行搬送装置の搬送台車には、軌道を走行する際に走行方向前方の障害物を検知するために、その走行方向前方に向かって光線を出射すると共に反射光を受光する前方監視センサが走行方向前面に設けられている(特許文献1参照)。また、搬送台車には、搬送台車の下方の障害物を検知するために、搬送台車の下方をスキャニングする光線を出射すると共に反射光を受光する下方監視センサが設けられている(特許文献2参照)。これにより、半導体製造装置のポート上からのFOUPの回収、又はポート上へのFOUPの載置を行う際に、グリッパの昇降経路内の障害物との接触を防止することができる。
【特許文献1】特開2002−132347号公報(図2)
【特許文献2】特開2001−213588号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、天井走行搬送装置の搬送台車には、走行方向前方の障害物を検知するための前方監視センサや、搬送台車の下方の障害物を検知するための下方監視センサ等、多数のセンサを設ける必要がある。これにより、搬送台車の構成が複雑となり、コストが増大するという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、搬送台車の走行方向前方にある障害物の検知、及び搬送台車の下方にある障害物の検知を低コストで実現可能な天井走行搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の天井走行搬送装置は、天井に敷設された軌道と、前記軌道に案内されつつ走行すると共に、搬送物を把持自在な把持機構、及び前記把持機構を前記搬送物の載置箇所まで降下自在な昇降機構を有する搬送台車とを備えている天井走行搬送装置である。そして、前記搬送台車に設けられており、鉛直であり且つ前記搬送台車の走行方向に平行であると共に前記昇降機構によって昇降される前記把持機構の経路に重ならない仮想平面内に光線を出射すると共に反射光を受光するセンサと、前記センサが受光した反射光に基づいて、前記光線の出射方向にある障害物を監視する監視手段と、前記センサによる前記光線の出射方向を選択すること、及び前記センサによる前記光線の出射方向は変更せずに前記監視手段による監視領域を選択することの少なくともいずれか一方により、前記搬送台車が走行している際には、前記搬送台車の走行方向前方にある障害物を監視する状態とし、前記把持機構が前記昇降機構により昇降される際には、前記搬送台車の下方にある障害物を監視する状態とする選択手段とを備えている。
【0007】
この構成によると、選択手段がセンサを制御し、搬送台車が走行している際には、搬送台車の走行方向前方に光線が出射され、把持機構が昇降される際には、搬送台車の下方に光線が出射されるようにし、監視手段が、光線の出射方向を監視する。または、センサからの光線が搬送台車の走行方向前方及び搬送台車の下方を含む方向に常に出射され(光線の出射方向が順次切り換えられる場合も含む)、選択手段が監視手段を制御し、搬送台車が走行している際には、搬送台車の走行方向前方に出射された光線の出射方向を監視し、把持機構が昇降される際には、搬送台車の下方に出射された光線の出射方向を監視する。これにより、1台のセンサによって、搬送台車が走行している際には、走行方向前方にある障害物の検知を行い、把持機構が昇降される際には、搬送台車の下方にある障害物の検知を行うことができる。よって、搬送台車の走行方向前方にある障害物の検知、及び搬送台車の下方にある障害物の検知を低コストで実現することができる。
【0008】
本発明の天井走行搬送装置では、前記センサが、前記仮想平面内で走査する光線を出射し、前記選択手段が、前記センサによる前記光線の走査領域を選択する、または前記センサによる前記光線の走査領域は変更せずに前記監視手段による監視領域を選択することが好ましい。
【0009】
この構成によると、選択手段がセンサを制御し、搬送台車が走行している際には、光線の走査領域が搬送台車の走行方向前方に位置し、把持機構が昇降される際には、光線の走査領域が搬送台車の下方に位置するようにし、監視手段が、光線の走査領域を監視する。または、センサから出射される光線の走査領域が搬送台車の走行方向前方及び搬送台車の下方を含んでおり、選択手段が監視手段を制御し、搬送台車が走行している際には、搬送台車の走行方向前方の走査領域を監視し、把持機構が昇降される際には、搬送台車の下方の走査領域を監視する。したがって、監視手段が、一方向に出射された光線の出射方向を監視する場合に比べて、広い範囲を監視することができる。
【0010】
本発明の天井走行搬送装置は、前記監視手段が、前記搬送台車が走行している際に、前記光線の走査領域のうち前記搬送台車が通過する経路内の障害物を監視することが好ましい。この構成によると、搬送台車走行時に、搬送台車の通過経路以外の障害物まで検知してしまうのを防ぐことができる。
【0011】
本発明の天井走行搬送装置は、前記監視手段が、前記把持機構が前記昇降機構により昇降される際に、前記光線の走査領域のうち前記把持機構が昇降する経路に沿う領域内の障害物を監視することが好ましい。この構成によると、把持機構昇降時に、把持機構の昇降経路に沿う領域以外の障害物まで検知してしまうのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施の形態に係る天井走行搬送装置であるOHT(Over head Hoist Transport)の概略構成を示す斜視図である。
【0013】
本実施の形態に係るOHT1は、半導体デバイスの製造設備において半導体ウェーハが収納されたFOUP(Front Opening Unified Pod)80を搬送する搬送装置である。図1に示すように、OHT1は、天井に敷設された軌道10と、FOUP80を保持しつつ軌道10に懸垂状態で支持案内されて走行する搬送台車20とを備えている。軌道10の直下近傍には、複数の半導体製造装置90(例えば、ウェーハ処理装置、保管装置等:図1においては1台の半導体製造装置90のみを示している)の本体91が配置されている。そして、各半導体製造装置の本体91内への半導体ウェーハの取り込み及び取り出しを行うための中継場所となるポート92が軌道10の直下に位置するようになっている。
【0014】
搬送台車20は、把持機構22、昇降機構24、及び位置調整機構26を備えている。把持機構22は、グリッパ22aによってFOUP80を把持できるようになっている。昇降機構24は、ケース25内に配置された図示しないモータによって、先端に把持機構22が取り付けられた懸垂ベルト24aの送り出しや巻上げを行う。位置調整機構26は、昇降機構24をケース25ごと水平面内で移動させることができる機構である。
【0015】
なお、本実施の形態においては、昇降機構24のケース25は、図1に示すように、略直方体の外形形状を有している。より詳細には、その上方部は鉛直な4つの側面に囲まれており、その下方部は搬送台車20の走行方向(図1中矢印で示す方向)前方及び後方に当たる2つの側面に囲まれている。また、4つの側面に囲まれている上方部は下方部に比べて、軌道10に対して半導体製造装置90の本体91とは反対側(以下の説明において、「手前側」と称する)に若干突出している。
【0016】
また、図1においては、懸垂ベルト24aが途中まで送り出されている状態が示されているが、本実施の形態においては、把持機構22がFOUP80を把持している場合に、懸垂ベルト24aが最上部まで巻き上げられた際には、FOUP80が昇降機構24のケース25で囲まれた領域内に納まるようになっている。
【0017】
上述のような構成により、OHT1では、軌道10に支持された搬送台車20が複数の半導体製造装置90間を走行し、ポート92上からのFOUP80の回収作業やポート92上へのFOUP80の載置作業を行う。具体的には、例えば、把持機構22によってFOUP80を把持している搬送台車20が、目的の半導体製造装置90のポート92上にFOUP80を載置する場合には、まず、当該ポート92上で停止し、位置調整機構26によってFOUP26を把持している把持機構22とポート92との位置合わせを行うことで載置位置を微調整した後、最上部まで巻き上げられた懸垂ベルト24aを逐次巻き下ろし、FOUP80をポート92上に降ろす。そして、把持機構22がグリッパ22aを開放しFOUP80をポート92上に載置する。FOUP80の載置作業終了後、搬送台車20は、懸垂ベルト24aを巻き上げ、把持機構22が最上部に達した時点で、次の目的地に向かって走行する。なお、かかる搬送台車20の走行やFOUP80の回収・載置作業は、OHTコントローラ70(図3参照)により制御される。
【0018】
また、搬送台車20には、いずれも反射型のセンサである5つのセンサ30、51〜54が設けられている。これらのセンサ30、51〜54は、いずれもセンサ制御部40(図3参照)によって制御される。図1に示すように、センサ30は、ケース25の上方部の手前側に突出した箇所における走行方向前方の下端に設けられている。また、センサ51〜54は、ケース25における搬送台車20の走行方向前方の面25aに設けられている。より詳細には、センサ51、54は、面25aにおける上端部近傍、及び下端部近傍にそれぞれ設けられている。センサ52は、面25aにおける幅方向に関して半導体製造装置90側(すなわち、軌道10に関して上述の「手前側」とは反対側であり、以下の説明において、「奥側」と称する)端部近傍に設けられている。センサ53は、面25aの下方部における手前側端部近傍に設けられている。
【0019】
ここで、搬送台車20を走行方向前方から見た図である図2を参照しつつ、ケース25の面25aに設けられた4つのセンサ51〜54について、より詳細に説明する。センサ51〜54は、いずれも搬送台車20の走行方向前方に向かって光線を出射する発光素子(図示せず)と反射光を受光する受光素子(図示せず)とからなり、出射した光線の照射領域内にある検出物体を障害物として検知することができるようになっている。なお、センサ51〜54から出射される光線は、図示しないレンズを通過する等によって、円錐状に広がるようになっている。
【0020】
センサ51〜54から出射される光線の照射範囲は、図2において破線で囲まれた領域となる。すなわち、面25aの上端部近傍及び下端部近傍に設けられたセンサ51、54から出射される光線は、搬送台車20の幅方向(図2中左右方向)に長い長円錐となっており、その照射領域の搬送台車20の幅方向に沿う長さは、面25aの上辺及び下辺の長さにそれぞれほぼ一致している。また、面25aの奥側(図2中右方)端部近傍に設けられたセンサ52、及び面25aの下方部における手前側(図2中左方)端部近傍に設けられたセンサ53から出射される光線は、いずれも搬送台車20の上下方向に長い長円錐となっている。そして、センサ52の照射領域の上下方向に沿う長さは、面25aの奥側の辺の長さにほぼ一致しており、センサ53の照射領域の上下方向に沿う長さは、面25aの下方部における手前側の辺の長さにほぼ一致している。
【0021】
したがって、図2に示すように、センサ51〜54による照射領域は、搬送台車20の走行方向前面である面25aにおける外周端部近傍のうち、上方部の手前側端部を除く箇所に対応する部分となる。
【0022】
次に、図3を参照しつつ、センサ30について説明する。図3に示すように、センサ30は、レーザ光線を出射する発光素子31aと反射光を受光する受光素子31bとを備えている。そして、発光素子31aから出射されたレーザ光線は、ハーフミラー37によって反射され、反射ミラー32に導かれるようになっている。また、発光素子31aから出射された後、検出物体によって反射された反射光は、ハーフミラー37を透過して、受光素子31bに導かれるようになっている。
【0023】
また、反射ミラー32は、モータドライバ34によって駆動されるモータ33によって回転するようになっており、発光素子31aから出射されたレーザ光線は、反射ミラー32の回転に伴って走査される。すなわち、センサ30は、スキャニングセンサとなっている。さらに、モータ33には、その回転量を検出するエンコーダ33aが取り付けられており、エンコーダ33aの出力値により反射ミラー32の角度、すなわち反射ミラー32で反射されるレーザ光線の出射角度を検知することができるようになっている。
【0024】
ここで、搬送台車20を手前側から見た図である図4を参照しつつ、センサ30のスキャニング範囲について説明する。センサ30は、鉛直であり且つ搬送台車の走行方向に平行であると共に、昇降機構24によって昇降される把持機構22の経路よりも手前側に位置する仮想平面内に光線を出射する。本実施の形態においては、図4に示すように、センサ30から出射された光線は、搬送台車20の走行方向(図中矢印で示す方向)前方及び下方を含む180°の範囲内でスキャニングされる。すなわち、センサ30から図4中右上方に向かって出射された光線は、図4中左下方に向かって出射される位置まで時計回りに180°スキャニングされ、その後、図4中右上方に向かって出射される位置まで反時計回りに180°スキャニングされる。センサ30は、搬送台車20が運行されている間は、このようなスキャニング動作を絶えず繰り返している。なお、以下の説明においては、最も上方に向かって出射される図4中右上方の位置からの角度を「出射角度」と称する。
【0025】
そして、後で詳述するセンサ制御部40の制御により、搬送台車20が走行している際には、スキャニング領域のうち搬送台車20が通過する経路(図4中一点鎖線で挟まれた領域:以降、「前方監視領域」と称する)内の障害物を監視する状態とされる。一方、把持機構22が昇降機構24によりポート92まで降下される際には、スキャニング領域のうち把持機構22が昇降する経路に沿う領域、より詳細には、ケース25の上方部の手前側に突出した箇所の下方に位置する領域(図4中二点鎖線で挟まれた領域:以降、「下方監視領域」と称する)内の障害物を監視する状態とされる。なお、図4に示すように、前方監視領域に出射される光線の出射角度θは、0°≦θ≦αであり、下方監視領域に出射される光線の出射角度θは、β≦θ≦180°である。
【0026】
なお、図2に示すように、前方監視領域(図中一点鎖線で囲まれた領域)は、ケース25の面25aの上方部における手前側(図中左側)端部近傍に対応している。そして、その上下方向に沿う長さは、面25aの上方部における手前側の辺の長さにほぼ一致している。また、上述のように、面25aに設けられたセンサ51〜54による照射領域は、面25aにおける外周端部近傍のうち、上方部の手前側端部を除く箇所に対応する部分である。したがって、センサ51〜54の照射領域及びセンサ30の前方監視領域によって、面25aすなわち搬送台車20の通過領域における外周端部近傍のほぼ全域において障害物を検知することができるようになっている。
【0027】
図3に戻って、発光素子31aは、発振回路35に接続されており、発振回路35から供給された高周波パルス信号に基づいて高周波パルス光を出射するようになっている。また、受光素子31bは、アンプ36に接続されており、受光素子31bで受光した反射光に関する出力信号は、アンプ36で増幅されるようになっている。
【0028】
ここで、センサ30、51〜54を制御するセンサ制御部40について説明する。図3に示すように、センサ制御部40は、OHTコントローラ70、エンコーダ33a、モータドライバ34、発振回路35、アンプ36、及びセンサ51〜54と接続されている。そして、センサ制御部40は、選択部41、距離テーブル記憶部43、距離算出部45、及び監視部47を備えている。
【0029】
選択部41は、OHTコントローラ70から送信される搬送台車20の運行に関する情報に基づいて、センサ30、51〜54を制御する。具体的には、OHTコントローラ70から搬送台車20が走行している旨の情報が伝達されている間は、センサ30によって監視される領域として前方監視領域を選択し、センサ30、51〜54によって、搬送台車20が通過する領域における外周端部近傍が監視される状態とする。また、搬送台車20が停止しており、FOUP80の回収作業又は載置作業を行っている旨の情報が伝達された際には、センサ30によって監視される領域として下方監視領域を選択し、昇降する把持機構22の経路の手前側が監視される状態とする。
【0030】
距離テーブル記憶部43には、センサ30から出射される光線の出射角度θiと監視距離Liとを関係付ける距離テーブルが記憶されている。すなわち、図4に示すように、例えば、前方監視領域内に光線が出射される場合であって、その出射角度がθnである際には、当該出射角度で出射された光線が前方監視領域内を通過する距離Lnが監視距離として記憶されている。同様に、下方監視領域内に出射される光線の出射角度に対応する監視距離も記憶されている。また、前方監視領域でも下方監視領域でもない領域に出射される場合、すなわち、α<θi<βである場合の監視距離Liは0と記憶されている。
【0031】
ここで、光線が前方監視領域内に出射される場合の監視距離Liの最大値は、走行状態の搬送台車20が停止するまでに必要な長さ以上となっている。一方、下方監視領域内に出射される場合の監視距離Liの最大値は、センサ30からポート92までの長さよりも若干短くなっている。なお、センサ30からポート92までの長さが半導体製造装置90ごとに異なる場合には、半導体製造装置90ごとに下方監視領域の監視距離Liの最大値が設定される。OHTコントローラ70から、どの半導体製造装置90に対するFOUP80の回収・載置作業を行うかの情報を取得し、それに応じて下方監視領域の監視距離Liの最大値が決定される。
【0032】
距離算出部45は、センサ30によって検出物体が検出された場合に、検出物体までの距離を算出する。具体的には、発振回路35から発光素子31aに供給されたパルス信号と、アンプ36によって増幅された受光素子31bからの出力信号とを比較する。そして、発光素子31aから出射され検出物体で反射された後受光素子31bに至るまでの往復距離に応じて受光素子31bの出力信号に生じる位相遅れに基づいて、検出物体までの距離Lを算出する。
【0033】
監視部47は、センサ30、51〜54が受光した反射光に基づいて、センサ30の監視領域内及び/又はセンサ51〜54の照射領域内の障害物を監視する。ここで、例えば、センサ30の監視領域が前方監視領域であり、出射される光線の出射角度がθn(図4参照)である際にセンサ30が検出物体を検出した場合について考える。このとき、監視部47は、距離算出部45によって算出された検出物体までの距離Lと、距離テーブル記憶部43に記憶されている出射角度θnにおける監視距離Lnとを比較する。そして、距離Lが監視距離Lnよりも長い場合には、検出物体が前方監視領域の外にある、すなわち前方監視領域内に障害物は無いと判断する。一方、距離Lが監視距離Ln以下の場合には、検出物体が前方監視領域内にある、すなわち前方監視領域内に搬送台車20の走行の障害となる障害物があると判断する。また、監視部47は、センサ51〜54が受光した反射光の光量が所定値を超えた場合に、センサ51〜54の照射領域内に障害物があると判断する。
【0034】
なお、監視部47によって、センサ30の監視領域内及び/又はセンサ51〜54の照射領域内に障害物があると判断された場合には、OHTコントローラ70にその旨を伝達するための検知信号が送信される。
【0035】
次に、図5を参照しつつ、センサ制御部40で行われる処理手順について説明する。なお、センサ制御部40での処理は、搬送台車20が運行されている間は常に行われるものである。
【0036】
まず、OHTコントローラ70から送信される情報に基づいて、搬送台車20がポート92からのFOUP80の回収作業、又はFOUP80のポート92への載置作業を行っているか否かの判断を行う(S1)。回収・載置作業を行っていないと判断した場合には(S1:NO)、選択部41がセンサ30によって監視される領域として前方監視領域を選択し、センサ30、51〜54によって障害物を監視する状態とする(S2)。そして、センサ30、センサ51〜54の出力信号に基づいて、走行する搬送台車20が通過する領域における外周端部近傍に障害物があるか否かを判断する(S3)。
【0037】
ここで、障害物がないと判断した場合には(S3:NO)、S1に戻って、回収・載置作業を行っているか否かの判断を再度行う。一方、障害物があると判断した場合には(S3:YES)、その旨をOHTコントローラ70に伝達するための検知信号を出力する(S4)。このとき、OHTコントローラ70は、搬送台車20を減速又は停止させるように制御する。これにより、例えば、当該搬送台車20の走行方向前方に、他の搬送台車20が停止している場合等であっても、搬送台車20同士の衝突を防ぐことができる。なお、S4において検知信号を出力した後は、S1に戻って、回収・載置作業を行っているか否かの判断を再度行う。
【0038】
さらに、S1において、回収・載置作業を行っていると判断した場合には(S1:YES)、選択部41がセンサ30によって監視される領域として下方監視領域を選択する(S5)。そして、センサ30の出力信号に基づいて、昇降する把持機構22の経路の手前側に障害物があるか否かを判断する(S6)。
【0039】
ここで、障害物がないと判断した場合には(S6:NO)、後述するS7の手順を省略して、S8に進む。一方、障害物があると判断した場合には(S6:YES)、その旨をOHTコントローラ70に伝達するための検知信号を出力する(S7)。このとき、OHTコントローラ70は、把持機構22の昇降を停止させるように制御する。これにより、例えば、FOUP80を把持した状態で降下する把持機構22の下方に人が侵入した場合等であっても、FOUP80と人との接触を防ぐことができる。なお、本実施の形態のように、昇降する把持機構22の経路に障害物が最も接近する恐れがある手前側を監視することで、効率よく監視を行うことができる。
【0040】
その後、OHTコントローラ70から送信される情報に基づいて、搬送台車20の回収・載置作業が終了したか否かを判断する(S8)。ここで、未だ回収・載置作業中であると判断した場合には(S8:NO)、S6に戻って、下方監視領域に障害物があるか否かの判断が再度行われる。一方、回収・載置作業が終了したと判断した場合には(S8:YES)、S1に戻って、回収・載置作業を行っているか否かの判断を再度行う。
【0041】
以上のように、本実施の形態のOHT1では、搬送台車20に設けられたセンサ30は、鉛直であり且つ搬送台車20の走行方向に平行であると共に、昇降機構24によって昇降される把持機構22の経路よりも手前側に位置する仮想平面内に光線を出射する。そして、選択部41の制御により、搬送台車20が走行している際には、搬送台車20の走行方向前方を監視する前方監視領域がセンサ30による監視領域として選択される。また、ポート92からのFOUP80の回収作業、又はFOUP80のポート92への載置作業を行う際には、搬送台車20の下方を監視する下方監視領域がセンサ30の監視領域として選択される。したがって、前方監視領域を監視するセンサと下方監視領域を監視するセンサとを別個に備える必要はなく、これらの領域を一台のセンサ30によって監視することができる。よって、搬送台車20の走行方向前方にある障害物の検知、及び搬送台車20の下方にある障害物の検知を低コストで実現することができる。
【0042】
また、本実施の形態のOHT1では、センサ30は、スキャニングセンサであり、選択部41は、センサ30によるスキャニング領域に含まれる前方監視領域及び下方監視領域から、監視部47による監視領域を選択する。したがって、例えば、監視部47が、一方向のみに出射された光の出射方向を監視する場合に比べて、広い範囲を監視することができる。
【0043】
さらに、本実施の形態のOHT1では、監視部47は、搬送台車20が走行している際には、搬送台車20が通過する領域における外周端部近傍を監視する。よって、搬送台車20の通過経路以外の障害物まで検出してしまうのを防ぐことができる。
【0044】
加えて、本実施の形態のOHT1では、監視部47は、搬送台車20がFOUP80の回収・載置作業を行っている際には、センサ30によるスキャニング領域のうち、把持機構22が昇降する経路に沿う領域を監視する。よって、把持機構22の昇降経路に沿う領域以外の障害物を検出してしまうのを防ぐことができる。
【0045】
以上、本発明の好適な一実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。
【0046】
例えば、上述の実施の形態では、センサ30が、搬送台車20が運行されている間は、前方監視領域及び下方監視領域を含む範囲内で常にスキャニングを行っており、選択部41が、前方監視領域及び下方監視領域のうち、監視部47により監視される領域を選択する場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、選択部41は、モータドライバ34を制御することによって、センサ30によるスキャニング領域を選択するようにしてもよい。具体的には、搬送台車20が走行している際には、選択部41は、センサ30が0°≦θ≦αの範囲でスキャニングを行うように制御する。そして、監視部47は、センサ30によるスキャニング領域のうち、搬送台車20が通過する領域内の障害物を監視する。一方、搬送台車20が回収・載置作業を行っている際には、選択部41は、センサ30がβ≦θ≦180°の範囲でスキャニングを行うように制御する。そして、監視部47は、センサ30によるスキャニング領域のうち、把持機構22の昇降経路に沿う領域内の障害物を監視する。
【0047】
また、上述の実施の形態では、センサ30が180°の範囲内でスキャニングを行うスキャニングセンサである場合について説明したが、これに限られない。センサ30のスキャニング範囲は、180°の範囲には限定されず、前方監視領域及び下方監視領域を含んでいればよい。また、センサ30は、スキャニングセンサでなくてもよく、搬送台車20の走行方向前方及び下方に光線を出射することができればよい。
【0048】
また、上述の実施の形態では、監視部47が、搬送台車20が走行している際には、搬送台車20が通過する領域における外周端部近傍を監視する場合について説明したが、これには限定されない。例えば、搬送台車20が通過する領域全体を監視するようにしてもよい。さらに、搬送台車20が通過する領域よりも若干広い領域を監視するようにしてもよい。
【0049】
加えて、上述の実施の形態では、監視部47が、搬送台車20が回収・載置作業を行っている際には、センサ30によるスキャニング領域のうち、把持機構22が昇降する経路に沿う領域を監視する場合について説明したが、これには限定されない。回収・載置作業時の監視領域は、センサ30を中心とする扇型の領域であってもよい。
【0050】
また、上述の実施の形態では、半導体ウェーハを処理して半導体デバイスの製造を行う半導体製造設備に設けられたOHT1について説明したが、本発明の適用はこれには限定されない。例えば、工程内や工程間において処理対象物を搬送して処理を加えながら最終製品とする施設の搬送装置に加えて、電子部品や機械部品、化学品、食品、書類等の搬送物を搬送する全業種の搬送装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態に係るOHTの概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す搬送台車を走行方向前方から見た図である。
【図3】図1に示すセンサ及び当該センサを制御するセンサ制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す搬送台車を手前側から見た図である。
【図5】センサ制御部で行われる処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 OHT(天井走行搬送装置)
10 軌道
20 搬送台車
22 把持機構
24 昇降機構
30 センサ
40 センサ制御部
41 選択部(選択手段)
47 監視部(監視手段)
92 ポート(載置箇所)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に敷設された軌道と、前記軌道に案内されつつ走行すると共に、搬送物を把持自在な把持機構、及び前記把持機構を前記搬送物の載置箇所まで降下自在な昇降機構を有する搬送台車とを備えている天井走行搬送装置であり、
前記搬送台車に設けられており、鉛直であり且つ前記搬送台車の走行方向に平行であると共に前記昇降機構によって昇降される前記把持機構の経路に重ならない仮想平面内に光線を出射すると共に反射光を受光するセンサと、
前記センサが受光した反射光に基づいて、前記光線の出射方向にある障害物を監視する監視手段と、
前記センサによる前記光線の出射方向を選択すること、及び前記センサによる前記光線の出射方向は変更せずに前記監視手段による監視領域を選択することの少なくともいずれか一方により、前記搬送台車が走行している際には、前記搬送台車の走行方向前方にある障害物を監視する状態とし、前記把持機構が前記昇降機構により昇降される際には、前記搬送台車の下方にある障害物を監視する状態とする選択手段とを備えていることを特徴とする天井走行搬送装置。
【請求項2】
前記センサが、前記仮想平面内で走査する光線を出射し、
前記選択手段が、前記センサによる前記光線の走査領域を選択する、または前記センサによる前記光線の走査領域は変更せずに前記監視手段による監視領域を選択することを特徴とする請求項1に記載の天井走行搬送装置。
【請求項3】
前記監視手段が、前記搬送台車が走行している際に、前記光線の走査領域のうち前記搬送台車が通過する経路内の障害物を監視することを特徴とする請求項2に記載の天井走行搬送装置。
【請求項4】
前記監視手段が、前記把持機構が前記昇降機構により昇降される際に、前記光線の走査領域のうち前記把持機構が昇降する経路に沿う領域内の障害物を監視することを特徴とする請求項2または3に記載の天井走行搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−137738(P2008−137738A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323197(P2006−323197)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】