説明

天井走行搬送装置

【課題】気流の影響によらず、容易に搬送物を載置位置に載置する。
【解決手段】走行機構17がレール11に沿ってポート43上に移動する。昇降機構13が懸垂ベルト14を繰り出すことによって、FOUP21が降下する。距離センサ31が降下距離を測定し、FOUP21が位置決めピン23近傍まで降下したと判断した場合、風向風速センサ25が水平方向に関する風向及び流速を測定し、重量センサ30がFOUP21の重量を測定する。次に、ズレ量記憶部が参照されて位置ズレ量が推定され、この位置ズレ量に基づいて、水平移動機構12によって昇降機構13が水平方向に移動する。そして、再度昇降機構13が懸垂ベルト14を繰り出すことによって、FOUP21は降下して、FOUP21の位置決めピン23と位置決め穴とが重ね合う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物を昇降可能に保持しつつ、天井に敷設された軌道を走行する天井走行搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造設備においては、半導体ウェハが収納されたFOUP(Front Opening Unified Pod)を昇降可能なグリッパによって把持しつつ、天井に敷設された軌道を走行することで種々の半導体製造装置間を移動する搬送台車を備えた天井走行搬送装置が用いられている。半導体製造装置は、軌道の直下に近接して配置されており、当該半導体製造装置においてFOUPの載置位置であるポートが軌道の直下に位置するようになっている。したがって、かかる搬送装置の搬送台車は、これから搬送を行うFOUPをグリッパによって把持した後、グリッパを上昇させることによってFOUPを回収することができる。FOUPを回収した搬送台車は、次の工程を行う他の半導体製造装置まで軌道を走行する。そして、搬送台車は、製造装置のポート上で停止し、FOUPを把持しているグリッパを降下させて、当該ポートにFOUPを載置することができる。
【0003】
このとき、搬送物は載置位置に位置ズレのない状態で正確に載置しないと、装置内で処理できなくなる場合があるために、搬送台車を装置上の正確な位置で停止させる必要がある。
【0004】
このような位置ズレを解消する搬送システムとして特許文献1のように、位置補正器と補正シートとを備えたものがある。位置補正器は、FOUPと同形状をしており、内部に直下を撮像するCCDカメラを備えている。補正シートは、円の一部が欠損した形状の認識マークを描いたプレートであり、FOUPの載置位置であるポート上に設けられている。この搬送システムは、位置ズレのない場合に得られる基準画像を記憶している。CCDカメラが撮像した画像と基準画像とを重合することで、搬送台車の位置ズレを補正する。
【0005】
【特許文献1】特開2005−170544号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この搬送システムは、クリーンルーム内に設置される。クリーンルームは、製造工程ごとにドアや窓などで区切られていることが多く、それぞれのクリーンルーム内の気圧が異なることがある。このとき、ドアや窓を開くことにより、気圧の高いクリーンルームから気圧の低いクリーンルームへ向かう気流が発生する。ドアや窓の近傍に設置された半導体製造装置のポートに搬送物を載置する際には、グリッパに把持された搬送物がこの気流に流されて位置ズレを起こしやすい。
【0007】
特許文献1に記載の搬送システムでは、例えば、ドアや窓を開けていない状態で位置ズレ補正を行っている場合において、ドアや窓を開くことにより気流が発生してしまうと、グリッパに把持された搬送物が流されているため、位置ズレ補正した位置からさらに位置ズレが生じてしまう。このように、位置ズレ補正後に気流が発生した場合には、位置ズレ補正の効果が得られないため、搬送物を装置上に正確に載置することが困難となる。
【0008】
本発明の主たる目的は、気流の影響によらず、正確に搬送物を載置位置に載置することができる天井走行搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明の天井走行搬送装置は、天井に敷設された軌道と、前記軌道上に設置されており、搬送物を把持可能な把持機構を有する搬送台車と、前記搬送台車に前記軌道上を走行させて、前記搬送台車を水平方向に関して載置位置まで移動させる走行機構と、前記走行機構が前記搬送台車を水平方向に関して前記載置位置まで移動させた後に、前記把持機構を鉛直方向に関して前記載置位置まで移動させる昇降機構と、前記昇降機構が前記把持機構を移動させる際に前記把持機構を水平方向に移動させる水平補正機構と、水平方向に関して発生した気流の流速を測定する前記搬送台車に固定された流速測定手段と、前記流速測定手段が測定した流速を有する気流が前記流速測定手段が固定された位置に発生しているときに前記昇降機構が前記把持機構を鉛直方向に関して前記載置位置まで移動させた場合の前記把持機構の第1位置と、前記流速測定手段が固定された位置に水平方向に関して気流が発生していないときに前記昇降機構が前記把持機構を鉛直方向に関して前記載置位置まで移動させた場合の前記把持機構の第2位置との水平方向に関するズレ量及びズレ方向を推定するズレ量推定手段と、前記ズレ量推定手段が推定した前記ズレ方向に関して前記ズレ量推定手段が推定した前記ズレ量だけ前記把持機構を移動させるように前記水平補正機構を制御する補正制御手段とを備えている。
【0010】
この天井走行搬送装置によれば、流速測定手段が測定した流速に基づいて、把持機構の水平方向に関するズレ量及びズレ方向を推定している。これにより、気流の影響によらず、正確に搬送物を載置位置に載置することができる。
【0011】
また、本発明の天井走行搬送装置は、前記流速測定手段が固定された位置に発生する気流の流速に関連付けて、当該流速を有する気流が前記流速測定手段が固定された位置に発生しているときの前記第1位置と、前記第2位置との水平方向に関するズレ量及びズレ方向を記憶しているズレ量記憶手段をさらに備えており、前記ズレ量推定手段は、前記流速測定手段が測定した流速に関連付けて、前記ズレ量記憶手段が記憶した前記ズレ量及び前記ズレ方向を推定値として決定することが好ましい。これによると、あらかじめズレ量及びズレ方向を記憶しておくことにより、搬送物を載置しようとするたびにズレ量及びズレ方向を算出したりする必要がないため、迅速に搬送物を載置位置に載置することができる。
【0012】
さらに、本発明の天井走行搬送装置は、前記搬送物の重量を取得する重量取得手段と、前記流速測定手段が固定された位置に発生する気流の流速及び前記搬送物の重量に関連付けて、前記搬送物が当該重量を有しており且つ当該流速を有する気流が前記流速測定手段が固定された位置に発生しているときの前記第1位置と、前記第2位置との水平方向に関するズレ量及びズレ方向を記憶しているズレ量記憶手段とをさらに備えており、前記ズレ量推定手段は、前記流速測定手段が測定した流速及び前記重量取得手段が取得した前記搬送物の重量に関連付けて、前記ズレ量記憶手段が記憶した前記ズレ量及び前記ズレ方向を推定値として決定することが好ましい。これによると、重量取得手段が搬送物の重量を取得して、その重量を考慮してズレ量を推定している。これにより、搬送物の重量の違いによらず、正確に搬送物を載置位置に載置することができる。
【0013】
加えて、本発明の天井走行搬送装置は、前記搬送物の重量を取得する重量取得手段と、前記昇降機構が前記把持機構を降下させた距離を取得する距離取得手段と、前記流速測定手段が固定された位置に発生する気流の流速、前記搬送物の重量及び前記把持機構の降下距離に関連付けて、前記搬送物が当該重量を有しており、前記把持機構が当該降下距離だけ降下しており且つ当該流速を有する気流が前記流速測定手段が固定された位置に発生しているときの前記第1位置と、前記第2位置との水平方向に関するズレ量及びズレ方向を記憶しているズレ量記憶手段とをさらに備えており、前記ズレ量推定手段は、前記流速測定手段が測定した流速、前記重量取得手段が取得した前記搬送物の重量及び前記距離取得手段が取得した距離に関連付けて、前記ズレ量記憶手段が記憶した前記ズレ量及び前記ズレ方向を推定値として決定することが好ましい。これによると、距離取得手段が把持機構の降下距離を取得して、その降下距離を考慮してズレ量を推定している。これにより、降下距離の違いによらず、正確に搬送物を載置位置に載置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る天井走行搬送装置であるOHT(Over head Hoist Transport)の概略構成を示す斜視図である。
【0015】
本実施形態に係るOHT1は、半導体デバイスの製造設備において半導体ウェハが収納されたFOUP(Front Opening Unified Pod)21を搬送する搬送装置である。図1に示すように、OHT1は、天井に敷設されたレール11と、FOUP21を保持しつつレール11に懸垂状態で支持案内されて走行する搬送台車10とを備えている。レール11の直下近傍には、複数の半導体製造装置40(例えば、半導体ウェハ処理装置、保管装置等:図1においては1台の半導体製造装置40のみを示している)が配置されている。
【0016】
搬送台車10は、走行機構17、水平移動機構12(水平補正機構)、昇降機構13、懸垂ベルト14、把持機構15、グリッパ16、風向風速センサ25(流速測定手段)、重量センサ30(重量取得手段)及び距離センサ31(距離取得手段)を有している。
【0017】
走行機構17は、レール11に沿って走行可能となっており、水平移動機構12とレール11との間に設置されている。走行機構17は、水平移動機構12をレール11に沿って移動させる。水平移動機構12の下方には、昇降機構13が設置されている。水平移動機構12は、走行機構17を介してレール11から吊り下げられており、昇降装置13を水平方向に関して移動させる。昇降機構13には、4本の懸垂ベルト14が設置されている。昇降機構13は、懸垂ベルト14を巻き上げたり繰り出したりする。懸垂ベルト14の下端には、把持機構15が固定されており、懸垂ベルト14が巻き上げられると把持機構15が上昇し、懸垂ベルト14が繰り出されると把持機構15が下降する。把持機構15において、レール11に沿った前後方向(方向D1)に関して互いに対向する一対の側面には、グリッパ16が設置されている。グリッパ16は、FOUP21を把持したり、把持しているFOUP21を解離したりする。
【0018】
把持機構15の上面には、風向風速センサ25及び距離センサ31が設置されており、把持機構15の内部には重量センサ30が設置されている。
【0019】
風向風速センサ25は、軸26、本体27及びプロペラ28から構成されている。軸26の一端は、把持機構15の上面に接続されており、他端は、本体27に接続されている。本体27は、軸26に回転可能に接続されており、その先端にプロペラ28が接続されている。風向風速センサ25は、水平方向に関して発生した気流によって本体27が回転して、プロペラ28が気流の風向に対して対向する。これより、気流の風向を電気信号として取得する。また、気流の流速によってプロペラ28の回転速度が変化する。これにより、気流の流速を電気信号として取得する。これら測定した気流の風向及び流速から取得された電気信号は、後述する制御装置19に伝送される。
【0020】
重量センサ30は、把持機構15内に設置されており、グリッパ16によって把持されているFOUP21の重量を電気信号として制御装置19に伝送する。
【0021】
距離センサ31は、把持機構15の上面に固定されており、昇降機構13の下面との距離である把持機構15の降下距離を測定している。そして、この測定した距離を電気信号として制御装置19に伝送する。
【0022】
半導体製造装置40は、開口42から装置内部へ半導体ウェハの取り込み及び取り出しを行うための中継場所、すなわちFOUP21の載置位置となるポート43を備えており、このポート43はレール11の直下に位置するようになっている。ポート43の上面は水平であり、位置決めテーブル22が固定されている。FOUP21は位置決めテーブル22上に載置される。位置決めテーブル22は平板状の部材であり、その上面には上方に向かって突出する3本の位置決めピン23が固定されている。一方、図2に示されているように、FOUP21の下面は平坦であり、3つの位置決め穴24が形成されている。位置決め穴24は、図2のように凹型の形状を有していてもよいし、FOUP21の底板を貫通する貫通孔であってもよい。
【0023】
3本の位置決めピン23と3つの位置決め穴24とは互いに対応し合っている。2本の位置決めピン23同士の水平方向に関する位置関係は、2つの位置決め穴24の水平方向に関する位置関係と同じである。つまり、水平方向に関して3本の位置決めピン23と3つの位置決め穴24とを重ね合わせることができる。
【0024】
次に、OHT1の電気的構成について図3を参照して説明する。OHT1は、制御装置19を有している。制御装置19は、プロセッサユニット、メモリ及びバス等の各種ハードウェアと、メモリ等の記憶装置に記憶されたプログラムからなるソフトウェアとから構成されている。メモリには、後述する位置情報記憶部19a、移動制御部19b、ズレ量記憶部19c(ズレ量記憶手段)、ズレ量推定部19d(ズレ量推定手段)及び補正制御部19e(補正制御手段)として機能するようにハードウェアを動作させるためのプログラムが記憶されている。かかるプログラムに沿ってプロセッサユニット等のハードウェアが動作することにより、位置情報記憶部19a、移動制御部19b、ズレ量記憶部19c、ズレ量推定部19d及び補正制御部19eが実現する。なお、制御部19は汎用のコンピュータにソフトウェアをインストールすることによって構築されてもよいし、はじめから位置情報記憶部19a、移動制御部19b、ズレ量記憶部19c、ズレ量推定部19d及び補正制御部19eの機能に特化した装置として実現されていてもよい。
【0025】
位置情報記憶部19aは、OHT1によって搬送されたFOUP21の位置決め穴24と位置決めピン23とがちょうど嵌合するように位置決めテーブル22上にFOUP21が載置される水平位置及び鉛直位置を示す位置データを記憶している。かかる位置データはオペレータが手動、もしくはOHT1が自動で調整したりして取得されたものである。
【0026】
移動制御部19bは、位置情報記憶部19aが記憶している位置データに基づいて、走行機構17が水平移動機構12をレール11に沿って移動させたり、昇降機構13が懸垂ベルト14を巻き上げたり繰り出したりするのを制御する。また、把持機構15がFOUP21を把持したり、把持しているFOUP21を解離したりするのを制御する。
【0027】
ここで、移動制御部19bが、位置情報記憶部19aが記憶している位置データに基づいて、昇降機構13が懸垂ベルト14を繰り出すよう制御している場合において、位置決めピン23と位置決め穴24とが嵌合しないことがある。これは、以下のような理由による。つまり、半導体製造装置40の内部には図示しないファンが設けられている。このファンの駆動により、内部から開口42を介して外部すなわちポート43に向かって水平方向に関して気流が発生する。この気流によって、把持機構15は風向に向かって流れる。この状態でFOUP21を載置しようとすると、水平方向に関して気流が発生していない場合に比べて、把持機構15が流されている距離だけFOUP21の位置決め穴24と位置決めピン23とに位置ズレが生じてしまうからである。
【0028】
そこで、本発明においては、あらかじめ気流によって把持機構15が流されている距離すなわち位置ズレ量を測定している。気流による把持機構15の位置ズレ量の測定方法について、図4を参照して説明する。図4は、気流による把持機構15の位置ズレ量を測定する試験設備の正面図である。
【0029】
試験設備50は、OHT1、載置台36及び送風機35を備えている。載置台36は、ポート43と同等の高さを有している。OHT1は、載置台36の上面から所定距離(ポート43における位置決めピン23の高さ)だけ離した状態でFOUP21を保持する。送風機35は、所望の流速の気流を発生させるものである。この設備において、送風機35から把持機構15へ向かって気流を発生することにより、気流による把持機構15の位置ズレ量を測定する。
【0030】
次に、測定条件について説明する。気流の発生方向は、図4中右方向である把持機構15にグリッパ16が設置されている側面方向(以後、X方向と称す)及び図4中紙面方向(以後、Y方向と称す)の2通りからとする。気流の流速は、0、0.36、0.65、0.88、1.05m/sの5通りとする。ここで、気流の流速とは風向風速センサ25によって測定された流速とする。把持機構15の上面と昇降機構13の下面との距離は、2.5、0.5mの2通りとする。グリッパ16が把持しているFOUP21の重量は、FOUP21を把持していないグリパ16のみの状態の重量、FOUP21内に半導体ウェハを収納していない状態の重量、FOUP21内に半導体ウェハを収納している状態の重量の3通りとする。これらの測定条件で測定した測定結果を表1に示す。なお、昇降機構13の下面との距離を2.5、0.5mの2通りとしているのは、半導体製造装置によって載置位置が異なるからである。
【0031】
【表1】

【0032】
表1より距離、重量及び風向に応じた流速を横軸及び位置ズレ量を縦軸とした近似曲線が求められ、この近似曲線から位置ズレ量を算出することができる。例えば、FOUP21内に半導体ウェハが収納してあり、昇降機構13によって把持機構15を2.5m降下させた位置が載置位置である場合、気流の流速が0.88m/sであると、X方向に0.8mm、Y方向に1.9mmだけ位置ズレする。
【0033】
図3に戻って、ズレ量記憶部19cは、前述した表1のデータを記憶している。ズレ量推定部19dは、ズレ量記憶部19cが記憶しているデータを参照して、風向風速センサ25が測定した風向及び流速、重量センサ30が測定したFOUP21の重量、並びに距離センサ31が測定した距離にしたがって、X及びY方向の位置ズレ量を推定する。補正制御部19eは、ズレ量推定部19dが推定した位置ズレ量に基づいて、水平移動機構12が昇降機構13を水平方向に移動させるのを制御する。これにより位置ズレを解消することができ、水平方向に関して3本の位置決めピン23と3つの位置決め穴24とを重ね合わせることができる。
【0034】
具体的に、FOUP21がポート43に載置されるまでの動作について説明する。まず。位置情報記憶部19aが記憶している位置データに基づいて、走行機構17がレール11に沿ってポート43上に移動する。そして、昇降機構13が懸垂ベルト14を繰り出すことによって、FOUP21が降下する。距離センサ31が降下距離を測定し、FOUP21が位置決めピン23近傍まで降下したと判断した場合、風向風速センサ25が水平方向に関する風向及び流速を測定し、重量センサ30がFOUP21の重量を測定する。次に、ズレ量記憶部19cが参照されて位置ズレ量が推定され、この位置ズレ量に基づいて、水平移動機構12によって昇降機構13が水平方向に移動する。そして、再度昇降機構13が懸垂ベルト14を繰り出すことによって、FOUP21は降下して、FOUP21の位置決めピン23と位置決め穴24とが重ね合う。こうして、FOUP21は、ポート43上に正確に載置される。
【0035】
このOHT1によれば、風向風速センサ25が測定した流速に基づいて、把持機構15の水平方向に関するズレ量及びズレ方向を推定している。これにより、気流の影響によらず、正確にFOUP21をポート43に載置することができる。
【0036】
また、ズレ量記憶部19cによってズレ量及びズレ方向を記憶していることによって、FOUP21を載置しようとするたびにズレ量及びズレ方向を推定する必要がないため、迅速にFOUP21をポート43に載置することができる。
【0037】
さらに、重量センサ30がFOUP21の重量を測定して、その重量を考慮してズレ量を推定しているため、FOUP21の重量の違いによらず、正確にFOUP21をポート43に載置することができる。
【0038】
加えて、距離センサ31が把持機構15の降下距離を測定して、その降下距離を考慮してズレ量を推定しているため、降下距離の違いによらず、正確にFOUP21をポート43に載置することができる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、本実施形態において、距離センサ31によって把持機構15の降下距離を測定していたが、距離センサ31に限らず懸垂ベルト14の巻き上げられた長さもしくは繰り出された長さを測定して、把持機構15の降下距離を測定してもよい。
【0040】
また、本実施の形態においては、FOUP21内には、半導体ウェハが収納されていたが、半導体ウェハに限らず、ディスク基板、液晶基板及び電子基板などいかなるものが収納されていてもよい。
【0041】
さらに、本実施の形態においては、重量センサ30及び距離センサ31を備えていたが、あらかじめ各装置において載置されるFOUP21の重量や把持機構15の降下距離を制御部19に記憶させておけば、重量センサ30及び距離センサ31を備えている必要はない。
【0042】
加えて、本実施の形態においては、風向風速センサ25によって水平方向に関する気流の風向及び流速を測定していたが、風向風速センサ25に限らず、風速センサを複数備えることによって、気流の風向及び流速を測定してもよい。例えば、図5のように把持機構15の4面の側面全てに風速センサ125を備えて、これらから風向及び流速を測定してもよい。このとき、風速センサ125は、風車式、熱線式、ピトー管式など種々の風速センサが挙げられる。
【0043】
また、本実施の形態においては、半導体製造装置40の内部から発生する気流について説明したが、半導体製造装置40の内部から発生する気流に限らず、クリーンルーム間の気圧の違いによってクリーンルームの開閉扉近傍に生じる気流など、把持機構15の周囲で生じる種々の気流に関して本発明を適用することができる。
【0044】
加えて、本実施の形態において、ズレ量推定部19dは、ズレ量記憶部19cが記憶しているデータを参照して、風向風速センサ25が測定した風向及び流速、重量センサ30が測定したFOUP21の重量、並びに距離センサ31が測定した距離にしたがって、X及びY方向の位置ズレ量を推定していたが、ズレ量記憶部19cを備えずに、図6に示すように、モデルを作成して、理論的に算出してもよい。例えば、重力Mg及び気流による風圧Fから、FOUP21の気流による移動軌跡の接線である重力Mgのサイン成分及び風圧Fのコサイン成分はつりあう。そして、この重力Mgのサイン成分及び風圧Fのコサイン成分から位置ズレ量δを算出するモデル関数を導出して、位置ズレ量を算出してもよい。このモデル関数によれば、風向風速センサ25が測定した風向及び流速、重量センサ30が測定したFOUP21の重量、並びに距離センサ31が測定した距離を代入することにより、位置ズレ量を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係る搬送システムの構成を示す斜視図である。
【図2】図1のFOUPに形成された位置決め穴と位置決めテーブルに固定された位置決めピンとの位置関係を示す斜視図である。
【図3】制御部の内部ブロック図である。
【図4】気流による把持機構の位置ズレ量を測定する試験設備の正面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る搬送システムの変形例の構成を示す斜視図である。
【図6】気流による把持機構の位置ズレ量を算出する変形例の説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 OHT
10 搬送台車
11 レール
12 水平移動機構
13 昇降機構
15 把持機構
17 走行機構
19d ズレ量推定部
19e 補正制御部
21 FOUP
25 風向風速センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に敷設された軌道と、
前記軌道上に設置されており、搬送物を把持可能な把持機構を有する搬送台車と、
前記搬送台車に前記軌道上を走行させて、前記搬送台車を水平方向に関して載置位置まで移動させる走行機構と、
前記走行機構が前記搬送台車を水平方向に関して前記載置位置まで移動させた後に、前記把持機構を鉛直方向に関して前記載置位置まで移動させる昇降機構と、
前記昇降機構が前記把持機構を移動させる際に前記把持機構を水平方向に移動させる水平補正機構と、
水平方向に関して発生した気流の流速を測定する前記搬送台車に固定された流速測定手段と、
前記流速測定手段が測定した流速を有する気流が前記流速測定手段が固定された位置に発生しているときに前記昇降機構が前記把持機構を鉛直方向に関して前記載置位置まで移動させた場合の前記把持機構の第1位置と、前記流速測定手段が固定された位置に水平方向に関して気流が発生していないときに前記昇降機構が前記把持機構を鉛直方向に関して前記載置位置まで移動させた場合の前記把持機構の第2位置との水平方向に関するズレ量及びズレ方向を推定するズレ量推定手段と、
前記ズレ量推定手段が推定した前記ズレ方向に関して前記ズレ量推定手段が推定した前記ズレ量だけ前記把持機構を移動させるように前記水平補正機構を制御する補正制御手段とを備えていることを特徴とする天井走行搬送装置。
【請求項2】
前記流速測定手段が固定された位置に発生する気流の流速に関連付けて、当該流速を有する気流が前記流速測定手段が固定された位置に発生しているときの前記第1位置と、前記第2位置との水平方向に関するズレ量及びズレ方向を記憶しているズレ量記憶手段をさらに備えており、
前記ズレ量推定手段は、前記流速測定手段が測定した流速に関連付けて、前記ズレ量記憶手段が記憶した前記ズレ量及び前記ズレ方向を推定値として決定することを特徴とする請求項1に記載の天井走行搬送装置。
【請求項3】
前記搬送物の重量を取得する重量取得手段と、
前記流速測定手段が固定された位置に発生する気流の流速及び前記搬送物の重量に関連付けて、前記搬送物が当該重量を有しており且つ当該流速を有する気流が前記流速測定手段が固定された位置に発生しているときの前記第1位置と、前記第2位置との水平方向に関するズレ量及びズレ方向を記憶しているズレ量記憶手段とをさらに備えており、
前記ズレ量推定手段は、前記流速測定手段が測定した流速及び前記重量取得手段が取得した前記搬送物の重量に関連付けて、前記ズレ量記憶手段が記憶した前記ズレ量及び前記ズレ方向を推定値として決定することを特徴とする請求項1に記載の天井走行搬送装置。
【請求項4】
前記搬送物の重量を取得する重量取得手段と、
前記昇降機構が前記把持機構を降下させた距離を取得する距離取得手段と、
前記流速測定手段が固定された位置に発生する気流の流速、前記搬送物の重量及び前記把持機構の降下距離に関連付けて、前記搬送物が当該重量を有しており、前記把持機構が当該降下距離だけ降下しており且つ当該流速を有する気流が前記流速測定手段が固定された位置に発生しているときの前記第1位置と、前記第2位置との水平方向に関するズレ量及びズレ方向を記憶しているズレ量記憶手段とをさらに備えており、
前記ズレ量推定手段は、前記流速測定手段が測定した流速、前記重量取得手段が取得した前記搬送物の重量及び前記距離取得手段が取得した距離に関連付けて、前記ズレ量記憶手段が記憶した前記ズレ量及び前記ズレ方向を推定値として決定することを特徴とする請求項3に記載の天井走行搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−177340(P2008−177340A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9070(P2007−9070)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】