太陽電池パネルの製造方法
【課題】低コスト、高発電効率、軽量であって一般家庭用途への適用が容易であり、しかもパネルの基材に樹脂材料を使用することもできる太陽電池パネルの製造方法及び薄膜シリコンの製造方法を提供すること。
【解決手段】この太陽電池パネル1の製造方法は、基材2上に直接又はバッファ3層を介して第1〜第3非晶質膜4,7,8を製膜する工程と、製膜工程を繰り返して第2非晶質膜7を積層する工程と、第1非晶質薄膜4に金属11をドープする工程と、金属11ドープ後の第1非晶質膜4をアニール処理して金属11を核とする多結晶又は準単結晶部11aを生成する工程と、を有する。
【解決手段】この太陽電池パネル1の製造方法は、基材2上に直接又はバッファ3層を介して第1〜第3非晶質膜4,7,8を製膜する工程と、製膜工程を繰り返して第2非晶質膜7を積層する工程と、第1非晶質薄膜4に金属11をドープする工程と、金属11ドープ後の第1非晶質膜4をアニール処理して金属11を核とする多結晶又は準単結晶部11aを生成する工程と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルの製造方法に係り、特にシリコン薄膜を積層することにより、高効率かつ低コストに太陽電池パネルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化・砂漠化・化石燃料の枯渇等に対する懸念が世界的に問題となっている。そのため、クリーンエネルギーの開発と利用が全人類的な緊急課題とされている。クリーンエネルギーの代表的なものとして、例えば、風力発電・燃料電池・バイオマス発電・太陽光発電等が考えられている。
【0003】
中でも、太陽光発電は、太陽光という無尽蔵かつクリーンで安定したエネルギー源を利用するものであり、家庭用分野、産業用分野において有効なクリーンエネルギーとして期待が高まっている。
【0004】
太陽光発電は、太陽光を太陽電池パネルに照射することにより、その光エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。太陽電池パネルの材料としてはシリコン(Si)が用いられることが多く、一般に、結晶型シリコン(c−Si)と非結晶型シリコン(a−Si)とに大別される。結晶型シリコンは、さらに単結晶型シリコンと多結晶型シリコンとに分類される。また、非結晶型シリコンはアモルファスシリコンとも呼ばれる。
【0005】
単結晶型シリコンは、シリコン原子が結晶構造を有し、かつその面方位が一様なシリコン材料である。単結晶型シリコンは、高純度単結晶シリコンインゴット(バルク)をスライスして得られる材料であり、発電効率は一般に20%前後と高い。しかし、材料コストが非常に高価であり一般用途に用いるのが難しく、軍事用途や宇宙用途として用いられることが多い。また、スライスによってパネルを形成するため、シリコン厚さが数100μm程度と厚くなり、それに伴ってパネル全体の重量も重くなってしまうという問題を有している。
【0006】
多結晶型シリコンは、単結晶型と同様にシリコン原子が結晶構造を有しているが、その各結晶粒表面の面方位が一様でない(多様な)シリコン材料である。この多結晶型シリコンには、シリコンインゴット(バルク)から得られるものと薄膜形成により得られるものとがある。バルクから得られるもの(バルク多結晶型シリコン)は、単結晶シリコンよりも低コストではあるが、発電効率も低い(15%前後)。
【0007】
このバルク多結晶型シリコンは、単結晶型シリコンに用いられる高純度単結晶シリコンインゴットの両端部分、すなわち面方位が一様とならず単結晶材料の特性を満足しない部分を再度溶融冷却し、それをスライスして得られる。シリコンインゴットのうち、通常は廃棄される部分、すなわち単結晶型シリコン太陽電池材料や半導体材料として使用不可能な特性未達部分を使用するので、材料コストとしては比較的安価である。しかし、近年のシリコン材料形成技術・半導体製造効率向上に伴い、特性不良部分が少なくなってきており、バルク多結晶型シリコンの材料の確保が困難になってきているという問題がある。
【0008】
一方、薄膜形成により得られるもの(薄膜多結晶型シリコン)は、バルク型多結晶型シリコンよりもさらに低コストであるが、発電効率もさらに低くなってしまう(10%前後)。薄膜多結晶型シリコンは、ガラス等の基材の表面にCVD(Chemical Vapor Deposition)等の薄膜形成技術によって薄膜シリコンが形成されたものである。形成された薄膜シリコンは非結晶質であるので、この薄膜シリコンに700℃程度のアニーリング(熱処理)を行うことにより、多結晶化する。
【0009】
薄膜多結晶型シリコンでは、薄膜形成技術により形成されたサブミクロン〜数μmの厚さのシリコン薄膜を使用するので、太陽電池パネルを薄く軽く形成することができるという利点がある。一方で、高温でのアニーリングが必要となり、パネルの基材には、耐熱性の高い、一般的に高価なガラス等の材料しか使えないという問題もある。
【0010】
アモルファスシリコンは、基材表面に薄膜形成技術によりアモルファス薄膜シリコンが形成されたものである。すなわち、上記の薄膜多結晶型シリコンにおいて、アニーリング処理前の状態のものがアモルファスシリコンである。
【0011】
アモルファスシリコンは、薄膜シリコンであるので、パネルを薄く軽く形成することが可能である。また、材料にシリコンインゴットを使用する必要がなく、アニーリング処理も必要がないことから、薄膜多結晶型シリコンよりもさらに安価に製造することが可能である。材料確保についても心配する必要がない。
【0012】
しかし、シリコンが非結晶型であることから、発電効率は多結晶型のものよりさらに低くなってしまうという問題がある(8%前後)。また、非結晶のアモルファスを安定化するためにはSi分子の未結合手に水素(H)分子を結合させる必要があり、一般にモノシランガス(SiH4)を用いたPlasmaCVDにより薄膜形成を行う。
【0013】
なお、太陽電池パネルの材料に単結晶型シリコンを用いたものとして、例えば特許文献1に記載のもの、多結晶型シリコンを用いたものとして、例えば特許文献2,3に記載のもの、アモルファスシリコンを用いたものとして、例えば特許文献4に記載のものがある。
【0014】
【特許文献1】特開2002−076382号公報
【特許文献2】特開2006−210395号公報
【特許文献3】特開2006−100339号公報
【特許文献4】特開2002−124689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記のように、太陽電池パネルのシリコン材料としては多様な形態が存在し、単結晶型、バルク多結晶型、薄膜多結晶型、アモルファスの順に低コストかつ低効率となる。つまり、単結晶型のものを用いると、高効率であるがコストが非常に高くなってしまい、一方、アモルファスのものを用いると、低コストであるが発電効率が低くなってしまうという問題がある。
【0016】
さらに、バルク材の単結晶型・多結晶型のものは、シリコンパネルが厚く、重量も重いという問題があり、一方、薄膜による多結晶型・アモルファス型のものは、薄く軽く形成することができるものの、基材に耐熱性の高いガラス等の材料を使用する必要があり、結果としてガラス重量のため太陽電池パネル全体の重量はやはり重いものとなってしまう。
【0017】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたもので、低コスト、高発電効率、軽量であって一般家庭用途への適用が容易であり、しかもパネルの基材に樹脂材料を使用することもできる太陽電池パネルの製造方法及び薄膜シリコンの製造方法を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明の例示的側面としての太陽電池パネルの製造方法は、基材上に直接又はバッファ層を介して非晶質シリコン薄膜を製膜する工程と、製膜工程を繰り返して非晶質シリコン薄膜を積層する工程と、非晶質シリコン薄膜に金属をドープする工程と、金属ドープ後の非晶質シリコン薄膜をアニール処理して金属を核とする大粒径の多結晶又は準単結晶を生成する工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
非晶質シリコン薄膜に金属をドープしているので、アニール処理を行った場合にその金属を核として結晶化させることにより、大粒径の多結晶又は準単結晶を生じさせることができる。そして、金属ドープ後の非晶質シリコン薄膜をアニール処理して金属を核とする大粒径の多結晶又は準単結晶を生成するので、この製造方法によって製造された太陽電池パネルは、低コスト、軽量、高発電効率を実現することができる。また、製膜された非晶質シリコン薄膜を積層しているので、全体の厚さを調整して厚くすることもでき、太陽光の吸収率を向上して発電効率を向上させることができる。
【0020】
ここで、準単結晶とは、単結晶と非結晶との中間的な構造であって、例えば(100)面の優先面方位を有し略均一な粒径で略規則的に配列された結晶である。すなわち、非晶質膜が「準単結晶化される」とは、核を中心として一定の大きさに成長した準単結晶が規則的に配列された状態になることをいう。その準単結晶自体は、単結晶シリコンと同等の発電効率を達成可能であり、非晶質膜が準単結晶化されると、薄膜自体の発電特性が多結晶シリコンより優れたものとなる(T.Noguchi, S.Usui, D.P.Gosain and Y.Ikeda, Mate.Res.Soc.Symp.Proc.,Vol.557, p.213 (1999))。
【0021】
準単結晶生成後の非晶質シリコン薄膜上に積層された非晶質シリコン薄膜をアニール処理して準単結晶をエピタキシャル成長させる工程を更に有してもよい。また、大粒径の多結晶生成後の非晶質シリコン薄膜上に積層された非晶質シリコン薄膜をアニール処理して大粒径の多結晶を成長させる工程を更に有してもよい。
【0022】
準単結晶や大粒径の多結晶を積層方向、すなわち厚さ方向にエピタキシャル成長させるので、この製造方法によって製造された太陽電池パネルの厚さ方向における電気抵抗値を低減することができる。したがって、より一層高発電効率に寄与することができる。
【0023】
アニール処理が、赤外線ヒータ等を用いた高温短時間(RTA)熱処理とその熱処理後のレーザ照射処理とを含んでもよい。
【0024】
赤外線ヒータ等を用いた熱処理後に、その冷却過程において金属核の周囲に結晶欠陥を生じる場合がある。この結晶欠陥は、例えば核を中心として放射状に延びるいわゆる「巣」のような態様を呈し、発電効率の低下を招いている。しかし、その熱処理後にレーザ照射によるアニール処理を行うので、結晶欠陥を除去又は減少させることができ、発電効率の低下を防止することができる。なお、赤外線ヒータ等を用いた熱処理は、例えば、真空環境下で行われてもよいし、強磁場環境下で行われてもよい。
【0025】
なお、非晶質シリコン薄膜(Ni等の金属がドープされていないもの。)に対して赤外線ヒータによる高温短時間熱処理を行うことにより、ガラス基材上への良好な結晶ポリシリコン薄膜の形成を可能とした報告がされている。(H.J.Kim, D.H.Shin, Digest of IMID/IDMC ’06, 29−1, p.533(2006))。この方法は、大面積のシリコン薄膜形成にも対応することができるので、量産的に有望な技術であり、この点で高温短時間熱処理を行うことの利点が発揮される。
【0026】
また、Niのドープによりシリコンの結晶化が促進され、処理の低温化も可能であることは、既に報告がある(例えば、K. Makihira and T. Asano, Technical Digest of AM−LCD’899, TFTp1−1, p.85 (1999))。
【0027】
なお、上記の製膜工程、積層工程、金属ドープ工程、アニール処理工程の順序は、以下のように様々な順序が考えられ、いずれもそれぞれ独自の有利な効果を有している。すなわち、
1)基材上に第1層製膜→第1層金属ドープ→第1層アニール処理(多結晶又は準単結晶生成)→第2層製膜→第2層金属ドープ→第2層アニール処理(エピタキシャル成長)、以下、第3層以降も製膜→金属ドープ→アニール処理を順次繰り返しつつ積層していく方法である。各層に対して確実に金属ドープとアニール処理を行うことができるので、エピタキシャル成長の効率を向上させることができる。
【0028】
2)基材上に第1層製膜→第1層金属ドープ→アニール処理(多結晶又は準単結晶生成)→第2層製膜→第2層金属ドープ→第3層製膜→第3層金属ドープ、以下、第3層以降も製膜→金属ドープを順次繰り返して積層し、最終層の金属ドープ終了後に全層に対するアニール処理を一括して行う方法である。アニール処理を繰り返して行う必要がないので、工程削減が可能となる。この際、いわゆる低温プロセスと呼ばれるレーザアニールよりも、いわゆる高温プロセスと呼ばれる熱処理の方が、より深層にまでアニールの効果を到達させ易く、特に、比較的厚い薄膜であって、例えば膜厚100nm以上の場合に好適である。
【0029】
3)基材上に第1層製膜→第1層金属ドープ→アニール処理(多結晶又は準単結晶生成)→第2層製膜→第3層製膜、以下、第3層以降も製膜のみ繰り返して積層し、最終層の製膜後に全層に対する金属ドープ及びアニール処理を一括して行う方法である。金属ドープもアニール処理も繰り返して行わずに最後に一括して行うので、より一層の工程削減が可能となる。最終層に対してドープされた金属は、その後のアニール処理によって下層にまで拡散していく。この際、いわゆる低温プロセスと呼ばれるレーザアニールよりも、いわゆる高温プロセスと呼ばれる熱処理の方が、より深層にまでアニールの効果を到達させ易いのは、上記同様である。
【0030】
非晶質シリコン薄膜の製膜方法としては、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタ法(スパッタリング)を適用することが可能である。スパッタ法により製膜する場合は基材が高温環境下に晒されないので、耐熱性の低い樹脂等の材料を基材に適用することができる。
【0031】
アニール処理としては、固体YAGレーザ(波長532nm)、エキシマレーザ(波長308nm)又は波長300nm〜波長600nmの範囲の半導体(ダイオード)レーザ等のレーザを用いるレーザアニールや赤外線ヒータを用いる熱処理等が適用可能である。赤外線ヒータは真空環境下又は強磁場環境下で用いられることが望ましい。主に紫外域であるエキシマレーザに比較して波長の長い固体YAGレーザ(例えば、第2高調波発振により可視光域の光出力を可能にする。)を用いれば深層までアニール処理することができ、一方、エキシマレーザを用いてアニール処理することにより、表面層のみをアニール処理することもできる。
【0032】
なお、ドープする金属としては、例えばニッケル(Ni)が考えられる。また、基材としては、樹脂を用いることもできるし、ガラスを用いることもできる。樹脂の場合は、軽量化に寄与することができるが、アニール処理において高温プロセスを用いる場合は、ガラス基材の方が適している。もちろん、基材側から太陽光を導入する場合は基材が透明であることが望ましいが、基材の反対側、すなわち最終層側から太陽光を導入する場合は基材が不透明であってもよい。バッファ層の材料としては、二酸化ケイ素(SiO2)又はSiNを含んだSiO2層が望ましい。
【0033】
上記の第1層及び最終層は、膜厚30nm以下が望ましい。そして、その第1層及び最終層は、いずれかがN+層又はP+層として機能する。そのN+層には、砒素イオン又は燐イオン等の正イオンがイオンドープされ、P+層には、臭素イオン等の正イオンがイオンドープされることが望ましい。
【0034】
N+層とP+層とを除く各層、すなわち第2層〜最終直前層は、200nm〜500nmの膜厚が望ましい。
【0035】
第1層の外側又は最終層の外側の少なくともいずれか一方に金属層を設け、この金属層を反射膜又は反射防止膜として機能させれば、導入した太陽光を第2層〜最終直前層間に閉じ込めるようにして繰り返し通過させることができる。それにより太陽光吸収率を向上させて発電効率を向上させることができる。
【0036】
第2層〜最終直前層のうちのいずれかの層をシリコンカーボン(SiC)層とし、いずれかの層をシリコンゲルマニウム(SiGe)層とすることが望ましい。すなわち、SiC層が主に紫外光成分の光を吸収し、SiGe層が主に赤外光成分の光を吸収するので、各層が吸収する光の波長が異なり効率よく発電を行うことができる。
【0037】
もちろん、第2層〜最終直前層までのうち、いずれかの層を多結晶又は準単結晶化させずに非晶質のままとして、この太陽電池パネルを多結晶又は準単結晶シリコンと非晶質シリコンとのタンデム型太陽電池パネルとすることもできる。
【0038】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、シリコン薄膜の製膜によって太陽電池パネルを製造するので、太陽電池パネルを薄く軽いものとすることができる。もちろん積層数の調整によって膜厚を厚く調整することもできる。
【0040】
シリコン薄膜の製膜によって太陽電池パネルを製造することから、材料にシリコンインゴットを使用する必要がない。したがって、パネルを低コストに製造することができ、しかも材料確保の心配もない。
【0041】
製膜された非晶質シリコン薄膜に金属ドープしてアニール処理することにより、薄膜中のシリコンを結晶化(多結晶又は準単結晶化)することができる。したがって、非晶質シリコン薄膜による太陽電池パネルに比較して非常に高い発電効率を得ることができる。その結果、薄く、軽く、低コストで、かつ高発電効率の太陽電池パネルとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法について、図面を用いて説明する。なお、この太陽電池パネルの製造方法を10段階に分類し、各々図1〜図10に示して説明する。
【0043】
図1は、この太陽電池パネル1(図9参照)の製造方法の第1段階を示す断面図であって、基材2上にバッファ層3を形成する工程を示している。基材2は、非晶質シリコン薄膜を製膜する際の基板となる部材であって、例えばガラスが用いられる。しかしながら、基材2に高い耐熱性が要求されない場合は、樹脂を基材2として使用することができる。それにより、太陽電池パネル1を軽量化することができる。
【0044】
本実施の形態においては、太陽光Sを基材2側(図中矢印X参照)から導入するため、基材2には透明材料を使用する。しかし、シリコン薄膜の形成順序を設計変更することにより、太陽光Sを非晶質シリコン薄膜側(図中矢印Y参照)から導入するように太陽電池パネル1を構成すれば、基材2には不透明材料を使用することも可能である。したがって、このような場合、基材2に不透明樹脂や金属板を用いることができる。
【0045】
バッファ層3は、その上部に製膜される非晶質シリコン薄膜と基材2とが直接接触しないようにするための絶縁層であり、基材2から非晶質シリコン薄膜へのコンタミネーションを防止する機能を有する。バッファ層3の材料としては、例えば二酸化ケイ素(SiO2)が用いられ、スパッタリングやCVD等により基材2上に薄膜形成される。また、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極をバッファ層3として使用してもよい。本実施の形態においては、太陽光Sを基材2側から導入するので、このバッファ層3も透明である必要がある。
【0046】
図2は、太陽電池パネル1の製造方法の第2段階を示す断面図であって、バッファ層3上に第1層としての第1の非晶質シリコン薄膜(以下、第1非晶質膜という。)4を製膜する工程を示している。第1非晶質膜はシリコンを材料とする薄膜であって、例えばモノシランガス(SiH4)やジシランガス(Si2H6)を用いたCVDやスパッタリングによって製膜される。第1非晶質膜4の膜厚としては40nm以下が望ましく、30nm程度がより望ましい。
【0047】
この製膜工程によって製膜された第1非晶質膜4は、結晶構造を有さず非晶質(すなわちアモルファス)の構造を有している。CVDとしては、例えばPlasma CVD、Plasma Enhanced CVD、Thermal CVD(UHV CVDを含む。)等が用いられる。
【0048】
ただし、CVDは、その方式によっては450℃〜800℃程度の高温環境下で製膜を行う必要があり、基材2に高い耐熱性が必要とされる場合がある。また、CVDの方式によってはSi分子の未結合手に結合した水素(H)分子を除去するための脱水素工程が必要となる。この脱水素工程においては、第1非晶質膜4を500℃程度の高温でアニールすることが必要であるため、やはり基材2に一定レベル(200度以上)の耐熱性が必要となる。
【0049】
したがって、余り耐熱性の高くない樹脂等を基材2として用いる場合は、製膜にスパッタリングを用いる方が望ましい。スパッタリングにおいては、室温下での製膜が可能であり、また、高温のアニール工程も必要ない。したがって、基材2に耐熱性の低い材料を用いても問題がない。
【0050】
ここで、スパッタリングに使用するスパッタガスにアルゴン(Ar)ガスを用いると、一般に、第1非晶質膜4中に一定量のArが取り込まれてしまい、後述するレーザアニール工程において第1非晶質膜4に表面荒れ等の損傷を与える可能性がある。したがって、スパッタガスとしては、コストの点ではArが好ましいものの、高品質の膜を得るにはキセノン(Xe)ガスを用いることがより望ましい。Xeは、膜中に取り込まれるが、一般にその含有量は少ない。
【0051】
したがって、スパッタガスとしては、キセノン(Xe)ガスを用いることが望ましい。Xeは、膜中に取り込まれるが、一般にその含有量は少ない。
【0052】
図3は、太陽電池パネル1の製造方法の第3段階を示す断面図であって、第1非晶質膜4に第1の正イオン5をドープする工程を示している。この第1の正イオン5は、第1非晶質膜4中でドナーとして機能するイオンであり、例えば砒素イオン(As+)や燐イオン(P+)が用いられる。
【0053】
イオンドーピングは、イオン注入機やイオンシャワーによって行われ、そのドープ条件は例えば、5keV、2e15/cm2〜6e16/cm2である。この第1の正イオン5のドーピングにより、第1非晶質膜4はN+層としての機能を発揮する。
【0054】
図4は、太陽電池パネル1の製造方法の第4段階を示す断面図であって、第1非晶質膜4に金属11をドープする工程を示している。この金属11は、後述するアニール処理において結晶化(多結晶化又は準単結晶化。)の基点となる「核」として機能するものである。金属11としては、ニッケル(Ni)の適用が好ましいが、もちろん他の金属であってもよい。
【0055】
金属ドープの方法にはプリント方式やスパッタ方式などがあり、含有金属としてはNiが結晶化には有利ではあるが、Al,CuやCoも結晶化促進に有利である。図5は、太陽電池パネル1の製造方法の第5段階を示す断面図であって、第1非晶質膜4をレーザアニール(アニール処理)する工程を示している。図14は、そのレーザアニール工程を示す斜視図である。ここでは、レーザ光6の光源として、波長308nmのキセノンクロライド(XeCl)エキシマレーザを使用する。なお、この太陽電池パネル1の製造方法の第5段階については、参考文献1(特開平10−41234号公報)及び参考文献2(特開2001−93854号公報)においても紹介されている。
【0056】
レーザアニール工程は、第1非晶質膜4をレーザによってアニールし、その非晶質を高品質の多結晶化又はより好ましくは準単結晶化させるための工程である。第1非晶質膜4の表面に長方形スリット状に成形したレーザ光6をパルス照射させつつ、第1非晶質膜4とレーザ光6とを相対移動させ、第1非晶質膜4の表面全体にレーザ光6が照射されるようにする。
【0057】
ライン上の細い形状の長方形状や正方形に近い形状の長方形状のビーム照射(例えば、20〜50nsの短パルス照射のものや150〜200nsの長パルス照射のもの)により形成することができる。例えば、ここではレーザ光6のビーム形状を、第1非晶質膜4上で縦400μm×横200mmの長方形スリット状とする。また各パルス照射の1回の照射時間を30nsとし、パルス照射ごとのオーバーラッピングを99%とする。
【0058】
すなわち、第1非晶質膜4の表面上でレーザ光6が毎回パルス照射するように構成する。それにより、例えば、第1非晶質膜4の表面の任意の点は合計時間にして、30ns×100=3μsの照射を受けることとなる(レーザは、線状(実際は幅がある)の形でも矩形でもよく、走査シフトしてもしなくてもよいが、ここでは線状のビームの例を示す。)。
【0059】
このレーザアニールによって、図15(a)に示すように、第1非晶質膜4に、例えば(100)面の優先面方位を有する準単結晶部11aが、金属11を核として形成される(T.Noguchi, S.Usui, D.P.Gosain and Y.Ikeda, Mate.Res.Soc.Symp.Proc.,Vol.557, p.213 (1999))。この準単結晶部11aは、他の非晶質部(アモルファス部)11bに比較して、非常に高い発電効率を示すものとなっている。
【0060】
アニール条件(レーザ光6の強度、照射時間、オーバーラッピング等)の変更によってアニール処理の程度を変化させることができ、アニール処理を充分行えば、図15(b)に示すように、準単結晶部11aを成長させて非晶質部11bを略消滅させることができる。この準単結晶部11aの優先面方位としては(100)面を例として説明するが、もちろん(111)面や他の結晶面であってもよい。なお、高品質な擬似結晶部又は準単結晶部11aの大きさとしては、直径又は一辺が200μm程度以上であることが望ましい。
【0061】
もちろん、アニール処理としては、上記のレーザアニール処理の他に、真空環境下での赤外線ヒータによる熱処理や強磁場環境下での赤外線ヒータによる熱処理等も適用することができる。このような、高温短時間(RTA)の熱処理によるアニールの効果は深層部分にまで到達するので、例えば、積層後の非晶質膜を一括してアニール処理するような場合に適している。
【0062】
ただし、熱処理によってアニール処理を行った場合、図15(b)に示すように、金属11の核を中心として放射状の結晶欠陥11cを生じる場合がある。この結晶欠陥11cが電子の円滑な移動を阻害して太陽電池パネル1の発電効率を低下させる原因として考えられるので、熱処理によるアニールを行った後に、更にこの結晶欠陥11cを除去するためにレーザアニールを行うことも望ましい。
【0063】
ここで、準単結晶部11aとは、既に述べたが、例えば(100)面(もちろん(111)面等他の結晶面であってもよい。)の優先面方位を有する高品質の多結晶を含めての結晶化相である。単結晶においては、材料全域に亘って1つの優先面方位を有するが、このアニール処理によって生成された準単結晶部11aは、1つの準単結晶部11a内での優先面方位は一定であるが、隣接する準単結晶部11aどうしの間では、優先面方位が同じであるとは限らないが整合に近い位置になっている。
【0064】
その準単結晶部11a自体は、単結晶シリコンと同等又はそれに近い発電効率を達成可能であり、非晶質膜が疑似単結晶化されると、薄膜自体の発電特性が多結晶シリコンより優れたものとなる。
【0065】
なお、図16に、レーザ光のエネルギー(横軸)とシリコンによるその吸収率(縦軸)との関係をXeClエキシマレーザと固体YAGレーザとで比較したグラフを示す。図中、実線は単結晶シリコンによる吸収、破線は多結晶シリコンによる吸収、一点鎖線は非晶質シリコンによる吸収を示している。
【0066】
UV領域であるXeClエキシマレーザのエネルギーは可視光(緑)領域である固体YAGレーザのエネルギーよりも高く、かつシリコンによる吸収率も高い。すなわち、XeClエキシマレーザは、膜厚の薄い薄膜を効率よくアニールするのに適している。このレーザアニール工程によって、レーザ光6の高いエネルギーが膜厚20nm程度の第1非晶質膜4において吸収され、効率よく疑似単結晶化を行うことができる。吸収率が高いので、アニールに伴う熱が基材2に影響することが殆どない。また、基材2が透明である場合にはレーザ光6を透過するので、より一層影響は少なくなる。
【0067】
図6は、太陽電池パネル1の製造方法の第6段階を示す断面図であって、XeClエキシマレーザによるレーザアニール処理によって疑似単結晶化された第1非晶質膜4上に第2の非晶質シリコン薄膜(以下、第2非晶質膜という。)7を製膜する工程を示している。この第1非晶質膜4の直上に製膜される第2非晶質膜7が第2層である。
【0068】
第2非晶質膜7も第1非晶質膜4と同様にシリコンを材料とする薄膜であって、CVDやスパッタ等の製膜方法により製膜される。また、基材2に耐熱性の低い樹脂を用いる場合には、高温環境下でのCVDや脱水素工程を必要としないスパッタリングにより製膜することが望ましい点についても第1非晶質膜4と同様である。
【0069】
なお、この製膜工程においては、膜厚が200nm以上500nm以下となるように第2非晶質膜7を製膜する。それにより、後述するように、積層の繰り返し回数をなるべく少なくして製造効率を高めつつ、固体YAGレーザでのレーザアニール工程において、第2非晶質膜7の表面部分から深層部分まで充分にアニールし、疑似単結晶化を行うことができる。
【0070】
図7は、太陽電池パネル1の製造方法の第7段階を示す断面図であって、第2非晶質膜7に金属11をドープする工程を示している。この金属11は、この第2非晶質膜7のアニール処理において大粒径の多結晶化又は準単結晶化の基点となる「核」として機能するものである。金属11としては、ニッケル(Ni)の適用が好ましいが、もちろん他の金属であってもよい。
【0071】
なお、第2非晶質膜7に金属11をドープした方が、多結晶化又は準単結晶化の容易の観点から好ましいが、第1非晶質膜4において既に準単結晶部11aが存在しているので、本工程を省略することも可能である。すなわち、第2非晶質膜7に金属11をドープしなくても、そのアニール処理によって第1非晶質膜4上の準単結晶部11aを第2非晶質膜7側へとエピタキシャル成長させることは可能である。
【0072】
含有金属はNiが結晶化には有利ではあるが、Al,CuやCoも結晶化促進に有利である。
【0073】
図8は、太陽電池パネル1の製造方法の第8段階を示す断面図であって、第2非晶質膜7をレーザアニール(アニール処理)する工程を示している。ここでは、レーザ光6aの光源として、波長532nmの固体YAGレーザを使用する。
【0074】
レーザアニール工程は、第2非晶質膜7をレーザによってアニールし、第1非晶質膜4上の準単結晶部11aを第2非晶質膜7側にエピタキシャル成長させるための工程である。そのため、第2非晶質膜7の表面に長方形スリット状に成形したレーザ光6aをパルス照射させつつ、第2非晶質膜7とレーザ光6aとを相対移動させ、第2非晶質膜7の表面全体にレーザ光6aが照射されるようにする。
【0075】
例えば、レーザ光6aのビーム形状を、第2非晶質膜7上で縦40μm×横200mmの長方形スリット状とする。また各パルス照射の1回の照射時間を長くし、パルス照射ごとのオーバーラッピングを95%とする。この第2非晶質膜7上へのレーザ光6aの照射の様子は、図14に示すものと略同様であるので、図示は省略する。
【0076】
このレーザアニールによって、第1非晶質膜4上の準単結晶部11aが第2非晶質膜7側へとエピタキシャル成長する。具体的には、第1非晶質膜4中に形成された準単結晶部11aからエピタキシーが生じ、その準単結晶部11aから膜厚方向に向けて結晶が成長する。この際、第2非晶質膜7にも金属11がドープされていれば、第2非晶質膜7内においてもその金属11を核とする準単結晶部11aの形成が行われる。したがって、その第2非晶質膜7内での準単結晶部11aの形成と第1非晶質膜4内の準単結晶部11aからのエピタキシャル成長との相乗効果により、第2非晶質膜7の準単結晶化がより一層効率よく迅速に行われる。もちろん、第2非晶質膜7内に金属11がドープされていなくても、第1非晶質膜4内の準単結晶部11aからのエピタキシャル成長は実現される。
【0077】
第2非晶質膜7の膜厚は200nm以上500nm以下とされ、第1非晶質膜4の膜厚20nm程度に比べ厚いものとなっている。したがって、吸収率の高いXeClエキシマレーザを用いてレーザアニール工程を行うと、第2非晶質膜7の表面部分のみがアニールされ、その深層部分にまでアニールされない(図16参照)。その結果、深層部分が準単結晶化されず、第1非晶質膜4内の準単結晶部11aからのエピタキシーが生じない。
【0078】
しかし、XeClエキシマレーザよりも吸収率の低い固体YAGレーザや半導体(ダイオード)レーザを用いてレーザアニール工程を行うことにより、第2非晶質膜7の表面部分のみですべてのレーザエネルギーが吸収されてしまうことなく、深層部分にまでレーザエネルギーが到達する。したがって、表面部分から深層部分までの膜厚方向全域に亘って、充分な疑似単結晶化を行うことができる。言い換えれば、固体YAGレーザによって深層部分にまで充分な疑似単結晶化を行うことができるので、第2非晶質膜7の1回の製膜厚さを200nm以上500nm以下と厚くすることができる。
【0079】
もちろん、この第8段階におけるレーザアニール処理を、赤外線ヒータを用いた熱処理に変更することができるのは、上記の第5段階と同様である。いずれのアニール処理を選択するかは、膜厚(すなわち、アニール処理を到達させるべき深さ。)、基材の材質(すなわち、耐熱性。)、工程効率(すなわち、積層後一括アニール処理とするか否か。)、結晶欠陥11cの存否等の状況に応じて適宜判断すべきである。
【0080】
この第7段階における第2非晶質膜7の製膜工程と、第8段階における固体YAGレーザによるレーザアニール工程とを交互に繰り返す(繰り返し工程)。すなわち、第1非晶質膜4上に第2非晶質膜7を製膜し、固体YAGレーザによるレーザアニールが完了した後に、再度その上に第2非晶質膜7を積層して製膜し、固体YAGレーザによるレーザアニール処理を行う。
【0081】
積層した第2非晶質膜7を固体YAGレーザによってレーザアニールすると、その下層側の第2非晶質膜7が既に準単結晶化しているので、その下層側の第2非晶質膜7からのエピタキシーが生じる。したがって、積層した上層側の第2非晶質膜7においても膜厚方向に準単結晶が成長し、膜厚方向全域に亘って準単結晶化する。
【0082】
このように、200nm以上500nm以下の膜厚の第2非晶質膜7を順次積層していき、最終的に、第2非晶質膜7の積層体が2μm程度の膜厚となるようにする。そのため、この繰り返し工程の繰り返し数は少なくとも4回以上となる。200nm以上500nm以下の膜厚の第2非晶質膜7を順次繰り返して積層することにより、固体YAGレーザにより膜厚方向全域に亘る準単結晶化を行いつつ、積層体全体としての厚さを大きく確保(2μm程度)することができる。また、その第2非晶質膜7の1回の製膜厚さを200nm以上500nm以下と厚くすることができるので、繰り返し回数を低減することができ、太陽電池パネル1の製造効率を向上させることができる。
【0083】
なお、アモルファス薄膜太陽電池の場合に行われるのと同様に、この第2非晶質膜7の積層体に4属の元素をドープさせ(例えば、膜厚方向にそれぞれ異なる4属元素をドープさせ。)、そのバンドギャップの値を制御して、より一層発電効率を向上させることができる。すなわち、積層体のうちの一部の第2非晶質膜7をシリコンとカーボンとの結合材料(SiC)とすることにより、太陽光エネルギーのうち主に紫外光成分を高効率に光電変換することができるようになる。さらに、積層体のうちの他の一部の第2非晶質膜7をシリコンとゲルマニウムとの結合材料(SiGe)とすることにより、太陽光エネルギーのうち主に赤外光成分を高効率に光電変換することができるようになる。
【0084】
例えば、第1非晶質膜4に近い側の第2非晶質膜7をシリコンカーボン(SiC)とし、遠い側(すなわち、第3非晶質膜8に近い側。)の第2非晶質膜7をシリコンゲルマニウム(SiGe)とすることにより、基材2側から導入される太陽光Sを紫外光成分から赤外光成分に至るまで非常に効率的に捕捉することができ、高い発電効率を得ることができる。なお、積層された第2非晶質膜7のうち、最上層のものが最終直前層である。
【0085】
図9は、太陽電池パネル1の製造方法の第9段階を示す断面図であって、固体YAGレーザによるレーザアニール処理によって準単結晶化された第2非晶質膜7の積層体上に最終層としての第3の非晶質シリコン薄膜(以下、第3非晶質膜という。)8を製膜する工程を示している。
【0086】
第3非晶質膜8も第1非晶質膜4と同様にシリコンを材料とする薄膜であって、CVDやスパッタ等の製膜方法により製膜される。また、基材2に耐熱性の低い樹脂を用いる場合には、高温環境下でのCVDや脱水素工程を必要としないスパッタリングにより製膜することが望ましい点についても第1非晶質膜4と同様である。なお、この第3非晶質膜8は、第1非晶質膜4と同様に膜厚30nm以下であることが望ましく、20nm程度であることがより望ましい。
【0087】
図10は、太陽電池パネル1の製造方法の第10段階を示す断面図であって、第3非晶質膜8に第2の正イオン9をドープする工程を示している。この第2の正イオン9は、第3非晶質膜8中でアクセプタとして機能するイオンであり、例えば臭素イオン(B+)が用いられる。
【0088】
イオンドーピングは、イオン注入機やイオンシャワーによって行われ、そのドープ条件は例えば、5keV、1e16/cm2である。この第2の正イオン9のドーピングにより、第3非晶質膜8はP+層としての機能を発揮する。
【0089】
図11は、太陽電池パネル1の製造方法の第11段階を示す断面図であって、第3非晶質膜8に金属11をドープする工程を示している。この金属11は、この第3非晶質膜8のアニール処理において結晶化(多結晶化又は準単結晶化。)の基点となる「核」として機能するものである。金属11としては、ニッケル(Ni)の適用が好ましいが、もちろん他の金属であってもよい。
【0090】
なお、第3非晶質膜8に金属11をドープした方が、多結晶化又は準単結晶化の容易の観点から好ましいが、第1非晶質膜4において既に準単結晶部11aが存在しているので、本工程を省略することも可能である。すなわち、第3非晶質膜8に金属11をドープしなくても、そのアニール処理によって第1非晶質膜4上の準単結晶部11aからのエピタキシャル成長が第3非晶質膜8にまで及ぶこととなる。
【0091】
含有金属はNiが結晶化には有利ではあるが、Al,CuやCoも結晶化促進に有利である。
【0092】
図12は、太陽電池パネル1の製造方法の第12段階を示す断面図であって、第3非晶質膜8をレーザアニールする工程を示している。ここでは、レーザ光6bの光源として、レーザ光6aと同様に波長532nmの固体YAGレーザを使用する。
【0093】
レーザアニール工程は、第3非晶質膜8をレーザによってアニールし、第1非晶質膜4上の準単結晶部11aを第2非晶質膜7を介して第3非晶質膜8側にエピタキシャル成長させるための工程である。そのため、第3非晶質膜8の表面に長方形スリット状に成形したレーザ光6bをパルス照射させつつ、第3非晶質膜8とレーザ光6bとを相対移動させ、第3非晶質膜8の表面全体にレーザ光6bが照射されるようにする。ここで、レーザ光6bのビーム形状、パルス照射の1回の照射時間、パルス照射ごとのオーバーラッピング等については、第2非晶質膜7におけるレーザアニールの場合と略同様であるので、詳細は省略する。
【0094】
このレーザアニールによって、第1非晶質膜4上の準単結晶部11aが第2非晶質膜7を介して第3非晶質膜8側へとエピタキシャル成長する。具体的には、第1非晶質膜4中に形成された準単結晶部11aからエピタキシーが生じ、その準単結晶部11aから膜厚方向に向けて結晶が成長し、第2非晶質膜7及び第3非晶質膜8も準単結晶化する。この際、第3非晶質膜8にも金属11がドープされていれば、第3非晶質膜8内においてもその金属11を核とする準単結晶部11aの形成が行われる。したがって、その第3非晶質膜8での準単結晶部11aの形成と第1非晶質膜4内の準単結晶部11aからのエピタキシャル成長との相乗効果により、第3非晶質膜8の準単結晶化がより一層効率よく迅速に行われる。もちろん、第3非晶質膜8内に金属11がドープされていなくても、第1非晶質膜4内の準単結晶部11aからのエピタキシャル成長は実現される。
【0095】
なお、第2非晶質膜7のレーザアニール工程において固体YAGレーザを用いているので、この第3非晶質膜8のレーザアニール工程においても固体YAGレーザを用いた方が、レーザを変更する必要がないので製造工程が簡単となる。しかし、第3非晶質膜8の膜厚は30nm以下であるので、もちろんXeClエキシマレーザによっても充分にアニール及び疑似単結晶化が可能である。また、レーザアニールに代えて赤外線ヒータを用いた熱処理を適用することができるのは、もちろんである。
【0096】
図13は、太陽電池パネル1の製造方法の第13段階(最終段階)を示す断面図であって、第3非晶質膜8上に金属層10を形成して太陽電池パネル1を構成する工程を示している。
【0097】
この金属層10は、基材2側から導入された太陽光Sを反射するためのものである。第1、第2及び第3非晶質膜4,7,8を通過した太陽光Sを透過させたり吸収したりせずに反射させて、再び第3、第2及び第1非晶質膜8,7,4側へと通過させることにより、一層の発電効率の向上に寄与するものである。
【0098】
金属層10としては、アルミニウムの他、様々な金属を用いることができるが、もちろん反射率が高い方が望ましい。この金属層10も、スパッタリングにより形成することが可能である。
【0099】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。もちろん、上記したように、第2非晶質膜7及び第3非晶質膜8への金属11のドープ工程を省略することも可能である。
【0100】
また、各非晶質膜4,7,8へのアニール処理をそれぞれ別々に行うのでなく、各非晶質膜4,7,8をすべて製膜した後に、一括してアニール処理を行うことも可能である。その際、金属11のドープも各非晶質膜4,7,8の製膜後、一括アニール処理前に一括して行えば、工程削減に寄与することができる。アニール処理時にドープされた金属11は、第3非晶質膜8側から第1非晶質膜4側へと移動するので問題はない。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第1段階を示す断面図であって、基材上にバッファ層を形成する工程を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第2段階を示す断面図であって、バッファ層上に第1の非晶質シリコン薄膜を製膜する工程を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第3段階を示す断面図であって、第1の非晶質シリコン薄膜に第1の正イオンをドープする工程を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第4段階を示す断面図であって、第1の非晶質シリコン薄膜に金属をドープする工程を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第5段階を示す断面図であって、第1の非晶質シリコン薄膜をレーザアニールする工程を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第6段階を示す断面図であって、第1の非晶質シリコン薄膜上に第2の非晶質シリコン薄膜を製膜する工程を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第7段階を示す断面図であって、第2の非晶質シリコン薄膜に金属をドープする工程を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第8段階を示す断面図であって、第2の非晶質シリコン薄膜をレーザアニールする工程を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第9段階を示す断面図であって、第2の非晶質シリコン薄膜の積層体上に第3の非晶質シリコン薄膜を製膜する工程を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第10段階を示す断面図であって、第3の非晶質シリコン薄膜に第2の正イオンをドープする工程を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第11段階を示す断面図であって、第3の非晶質シリコン薄膜に金属をドープする工程を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第9段階を示す断面図であって、第3の非晶質シリコン薄膜をレーザアニールする工程を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第10段階を示す断面図であって、第3の非晶質シリコン薄膜上に金属層を形成する工程を示す図である。
【図14】図4のレーザアニール工程を示す斜視図である。
【図15】図4のレーザアニール工程によって、第1の非晶質シリコン薄膜に(100)面を例とする優先方位を有する準単結晶が形成された様子を示す斜視図であり、(a)は、準単結晶が生成された直後の状態を示し、(b)は、準単結晶が充分成長した状態を示す。
【図16】レーザ光のエネルギー(横軸)とシリコンによるその吸収率(縦軸)との関係をXeClエキシマレーザと固体YAGレーザとで比較したグラフである。
【符号の説明】
【0102】
X,Y:矢印
S:太陽光
1:太陽電池パネル
2:基材
3:バッファ層
4:第1の非晶質シリコン薄膜(第1非晶質膜)
5:第1の正イオン
6,6a,6b:レーザ光
7:第2の非晶質シリコン薄膜(第2非晶質膜)
8:第3の非晶質シリコン薄膜(第3非晶質膜)
9:第2の正イオン
10:金属層
11:金属
11a:準単結晶部
11b:非晶質部(アモルファス部)
11c:結晶欠陥
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルの製造方法に係り、特にシリコン薄膜を積層することにより、高効率かつ低コストに太陽電池パネルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化・砂漠化・化石燃料の枯渇等に対する懸念が世界的に問題となっている。そのため、クリーンエネルギーの開発と利用が全人類的な緊急課題とされている。クリーンエネルギーの代表的なものとして、例えば、風力発電・燃料電池・バイオマス発電・太陽光発電等が考えられている。
【0003】
中でも、太陽光発電は、太陽光という無尽蔵かつクリーンで安定したエネルギー源を利用するものであり、家庭用分野、産業用分野において有効なクリーンエネルギーとして期待が高まっている。
【0004】
太陽光発電は、太陽光を太陽電池パネルに照射することにより、その光エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。太陽電池パネルの材料としてはシリコン(Si)が用いられることが多く、一般に、結晶型シリコン(c−Si)と非結晶型シリコン(a−Si)とに大別される。結晶型シリコンは、さらに単結晶型シリコンと多結晶型シリコンとに分類される。また、非結晶型シリコンはアモルファスシリコンとも呼ばれる。
【0005】
単結晶型シリコンは、シリコン原子が結晶構造を有し、かつその面方位が一様なシリコン材料である。単結晶型シリコンは、高純度単結晶シリコンインゴット(バルク)をスライスして得られる材料であり、発電効率は一般に20%前後と高い。しかし、材料コストが非常に高価であり一般用途に用いるのが難しく、軍事用途や宇宙用途として用いられることが多い。また、スライスによってパネルを形成するため、シリコン厚さが数100μm程度と厚くなり、それに伴ってパネル全体の重量も重くなってしまうという問題を有している。
【0006】
多結晶型シリコンは、単結晶型と同様にシリコン原子が結晶構造を有しているが、その各結晶粒表面の面方位が一様でない(多様な)シリコン材料である。この多結晶型シリコンには、シリコンインゴット(バルク)から得られるものと薄膜形成により得られるものとがある。バルクから得られるもの(バルク多結晶型シリコン)は、単結晶シリコンよりも低コストではあるが、発電効率も低い(15%前後)。
【0007】
このバルク多結晶型シリコンは、単結晶型シリコンに用いられる高純度単結晶シリコンインゴットの両端部分、すなわち面方位が一様とならず単結晶材料の特性を満足しない部分を再度溶融冷却し、それをスライスして得られる。シリコンインゴットのうち、通常は廃棄される部分、すなわち単結晶型シリコン太陽電池材料や半導体材料として使用不可能な特性未達部分を使用するので、材料コストとしては比較的安価である。しかし、近年のシリコン材料形成技術・半導体製造効率向上に伴い、特性不良部分が少なくなってきており、バルク多結晶型シリコンの材料の確保が困難になってきているという問題がある。
【0008】
一方、薄膜形成により得られるもの(薄膜多結晶型シリコン)は、バルク型多結晶型シリコンよりもさらに低コストであるが、発電効率もさらに低くなってしまう(10%前後)。薄膜多結晶型シリコンは、ガラス等の基材の表面にCVD(Chemical Vapor Deposition)等の薄膜形成技術によって薄膜シリコンが形成されたものである。形成された薄膜シリコンは非結晶質であるので、この薄膜シリコンに700℃程度のアニーリング(熱処理)を行うことにより、多結晶化する。
【0009】
薄膜多結晶型シリコンでは、薄膜形成技術により形成されたサブミクロン〜数μmの厚さのシリコン薄膜を使用するので、太陽電池パネルを薄く軽く形成することができるという利点がある。一方で、高温でのアニーリングが必要となり、パネルの基材には、耐熱性の高い、一般的に高価なガラス等の材料しか使えないという問題もある。
【0010】
アモルファスシリコンは、基材表面に薄膜形成技術によりアモルファス薄膜シリコンが形成されたものである。すなわち、上記の薄膜多結晶型シリコンにおいて、アニーリング処理前の状態のものがアモルファスシリコンである。
【0011】
アモルファスシリコンは、薄膜シリコンであるので、パネルを薄く軽く形成することが可能である。また、材料にシリコンインゴットを使用する必要がなく、アニーリング処理も必要がないことから、薄膜多結晶型シリコンよりもさらに安価に製造することが可能である。材料確保についても心配する必要がない。
【0012】
しかし、シリコンが非結晶型であることから、発電効率は多結晶型のものよりさらに低くなってしまうという問題がある(8%前後)。また、非結晶のアモルファスを安定化するためにはSi分子の未結合手に水素(H)分子を結合させる必要があり、一般にモノシランガス(SiH4)を用いたPlasmaCVDにより薄膜形成を行う。
【0013】
なお、太陽電池パネルの材料に単結晶型シリコンを用いたものとして、例えば特許文献1に記載のもの、多結晶型シリコンを用いたものとして、例えば特許文献2,3に記載のもの、アモルファスシリコンを用いたものとして、例えば特許文献4に記載のものがある。
【0014】
【特許文献1】特開2002−076382号公報
【特許文献2】特開2006−210395号公報
【特許文献3】特開2006−100339号公報
【特許文献4】特開2002−124689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記のように、太陽電池パネルのシリコン材料としては多様な形態が存在し、単結晶型、バルク多結晶型、薄膜多結晶型、アモルファスの順に低コストかつ低効率となる。つまり、単結晶型のものを用いると、高効率であるがコストが非常に高くなってしまい、一方、アモルファスのものを用いると、低コストであるが発電効率が低くなってしまうという問題がある。
【0016】
さらに、バルク材の単結晶型・多結晶型のものは、シリコンパネルが厚く、重量も重いという問題があり、一方、薄膜による多結晶型・アモルファス型のものは、薄く軽く形成することができるものの、基材に耐熱性の高いガラス等の材料を使用する必要があり、結果としてガラス重量のため太陽電池パネル全体の重量はやはり重いものとなってしまう。
【0017】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたもので、低コスト、高発電効率、軽量であって一般家庭用途への適用が容易であり、しかもパネルの基材に樹脂材料を使用することもできる太陽電池パネルの製造方法及び薄膜シリコンの製造方法を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明の例示的側面としての太陽電池パネルの製造方法は、基材上に直接又はバッファ層を介して非晶質シリコン薄膜を製膜する工程と、製膜工程を繰り返して非晶質シリコン薄膜を積層する工程と、非晶質シリコン薄膜に金属をドープする工程と、金属ドープ後の非晶質シリコン薄膜をアニール処理して金属を核とする大粒径の多結晶又は準単結晶を生成する工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
非晶質シリコン薄膜に金属をドープしているので、アニール処理を行った場合にその金属を核として結晶化させることにより、大粒径の多結晶又は準単結晶を生じさせることができる。そして、金属ドープ後の非晶質シリコン薄膜をアニール処理して金属を核とする大粒径の多結晶又は準単結晶を生成するので、この製造方法によって製造された太陽電池パネルは、低コスト、軽量、高発電効率を実現することができる。また、製膜された非晶質シリコン薄膜を積層しているので、全体の厚さを調整して厚くすることもでき、太陽光の吸収率を向上して発電効率を向上させることができる。
【0020】
ここで、準単結晶とは、単結晶と非結晶との中間的な構造であって、例えば(100)面の優先面方位を有し略均一な粒径で略規則的に配列された結晶である。すなわち、非晶質膜が「準単結晶化される」とは、核を中心として一定の大きさに成長した準単結晶が規則的に配列された状態になることをいう。その準単結晶自体は、単結晶シリコンと同等の発電効率を達成可能であり、非晶質膜が準単結晶化されると、薄膜自体の発電特性が多結晶シリコンより優れたものとなる(T.Noguchi, S.Usui, D.P.Gosain and Y.Ikeda, Mate.Res.Soc.Symp.Proc.,Vol.557, p.213 (1999))。
【0021】
準単結晶生成後の非晶質シリコン薄膜上に積層された非晶質シリコン薄膜をアニール処理して準単結晶をエピタキシャル成長させる工程を更に有してもよい。また、大粒径の多結晶生成後の非晶質シリコン薄膜上に積層された非晶質シリコン薄膜をアニール処理して大粒径の多結晶を成長させる工程を更に有してもよい。
【0022】
準単結晶や大粒径の多結晶を積層方向、すなわち厚さ方向にエピタキシャル成長させるので、この製造方法によって製造された太陽電池パネルの厚さ方向における電気抵抗値を低減することができる。したがって、より一層高発電効率に寄与することができる。
【0023】
アニール処理が、赤外線ヒータ等を用いた高温短時間(RTA)熱処理とその熱処理後のレーザ照射処理とを含んでもよい。
【0024】
赤外線ヒータ等を用いた熱処理後に、その冷却過程において金属核の周囲に結晶欠陥を生じる場合がある。この結晶欠陥は、例えば核を中心として放射状に延びるいわゆる「巣」のような態様を呈し、発電効率の低下を招いている。しかし、その熱処理後にレーザ照射によるアニール処理を行うので、結晶欠陥を除去又は減少させることができ、発電効率の低下を防止することができる。なお、赤外線ヒータ等を用いた熱処理は、例えば、真空環境下で行われてもよいし、強磁場環境下で行われてもよい。
【0025】
なお、非晶質シリコン薄膜(Ni等の金属がドープされていないもの。)に対して赤外線ヒータによる高温短時間熱処理を行うことにより、ガラス基材上への良好な結晶ポリシリコン薄膜の形成を可能とした報告がされている。(H.J.Kim, D.H.Shin, Digest of IMID/IDMC ’06, 29−1, p.533(2006))。この方法は、大面積のシリコン薄膜形成にも対応することができるので、量産的に有望な技術であり、この点で高温短時間熱処理を行うことの利点が発揮される。
【0026】
また、Niのドープによりシリコンの結晶化が促進され、処理の低温化も可能であることは、既に報告がある(例えば、K. Makihira and T. Asano, Technical Digest of AM−LCD’899, TFTp1−1, p.85 (1999))。
【0027】
なお、上記の製膜工程、積層工程、金属ドープ工程、アニール処理工程の順序は、以下のように様々な順序が考えられ、いずれもそれぞれ独自の有利な効果を有している。すなわち、
1)基材上に第1層製膜→第1層金属ドープ→第1層アニール処理(多結晶又は準単結晶生成)→第2層製膜→第2層金属ドープ→第2層アニール処理(エピタキシャル成長)、以下、第3層以降も製膜→金属ドープ→アニール処理を順次繰り返しつつ積層していく方法である。各層に対して確実に金属ドープとアニール処理を行うことができるので、エピタキシャル成長の効率を向上させることができる。
【0028】
2)基材上に第1層製膜→第1層金属ドープ→アニール処理(多結晶又は準単結晶生成)→第2層製膜→第2層金属ドープ→第3層製膜→第3層金属ドープ、以下、第3層以降も製膜→金属ドープを順次繰り返して積層し、最終層の金属ドープ終了後に全層に対するアニール処理を一括して行う方法である。アニール処理を繰り返して行う必要がないので、工程削減が可能となる。この際、いわゆる低温プロセスと呼ばれるレーザアニールよりも、いわゆる高温プロセスと呼ばれる熱処理の方が、より深層にまでアニールの効果を到達させ易く、特に、比較的厚い薄膜であって、例えば膜厚100nm以上の場合に好適である。
【0029】
3)基材上に第1層製膜→第1層金属ドープ→アニール処理(多結晶又は準単結晶生成)→第2層製膜→第3層製膜、以下、第3層以降も製膜のみ繰り返して積層し、最終層の製膜後に全層に対する金属ドープ及びアニール処理を一括して行う方法である。金属ドープもアニール処理も繰り返して行わずに最後に一括して行うので、より一層の工程削減が可能となる。最終層に対してドープされた金属は、その後のアニール処理によって下層にまで拡散していく。この際、いわゆる低温プロセスと呼ばれるレーザアニールよりも、いわゆる高温プロセスと呼ばれる熱処理の方が、より深層にまでアニールの効果を到達させ易いのは、上記同様である。
【0030】
非晶質シリコン薄膜の製膜方法としては、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタ法(スパッタリング)を適用することが可能である。スパッタ法により製膜する場合は基材が高温環境下に晒されないので、耐熱性の低い樹脂等の材料を基材に適用することができる。
【0031】
アニール処理としては、固体YAGレーザ(波長532nm)、エキシマレーザ(波長308nm)又は波長300nm〜波長600nmの範囲の半導体(ダイオード)レーザ等のレーザを用いるレーザアニールや赤外線ヒータを用いる熱処理等が適用可能である。赤外線ヒータは真空環境下又は強磁場環境下で用いられることが望ましい。主に紫外域であるエキシマレーザに比較して波長の長い固体YAGレーザ(例えば、第2高調波発振により可視光域の光出力を可能にする。)を用いれば深層までアニール処理することができ、一方、エキシマレーザを用いてアニール処理することにより、表面層のみをアニール処理することもできる。
【0032】
なお、ドープする金属としては、例えばニッケル(Ni)が考えられる。また、基材としては、樹脂を用いることもできるし、ガラスを用いることもできる。樹脂の場合は、軽量化に寄与することができるが、アニール処理において高温プロセスを用いる場合は、ガラス基材の方が適している。もちろん、基材側から太陽光を導入する場合は基材が透明であることが望ましいが、基材の反対側、すなわち最終層側から太陽光を導入する場合は基材が不透明であってもよい。バッファ層の材料としては、二酸化ケイ素(SiO2)又はSiNを含んだSiO2層が望ましい。
【0033】
上記の第1層及び最終層は、膜厚30nm以下が望ましい。そして、その第1層及び最終層は、いずれかがN+層又はP+層として機能する。そのN+層には、砒素イオン又は燐イオン等の正イオンがイオンドープされ、P+層には、臭素イオン等の正イオンがイオンドープされることが望ましい。
【0034】
N+層とP+層とを除く各層、すなわち第2層〜最終直前層は、200nm〜500nmの膜厚が望ましい。
【0035】
第1層の外側又は最終層の外側の少なくともいずれか一方に金属層を設け、この金属層を反射膜又は反射防止膜として機能させれば、導入した太陽光を第2層〜最終直前層間に閉じ込めるようにして繰り返し通過させることができる。それにより太陽光吸収率を向上させて発電効率を向上させることができる。
【0036】
第2層〜最終直前層のうちのいずれかの層をシリコンカーボン(SiC)層とし、いずれかの層をシリコンゲルマニウム(SiGe)層とすることが望ましい。すなわち、SiC層が主に紫外光成分の光を吸収し、SiGe層が主に赤外光成分の光を吸収するので、各層が吸収する光の波長が異なり効率よく発電を行うことができる。
【0037】
もちろん、第2層〜最終直前層までのうち、いずれかの層を多結晶又は準単結晶化させずに非晶質のままとして、この太陽電池パネルを多結晶又は準単結晶シリコンと非晶質シリコンとのタンデム型太陽電池パネルとすることもできる。
【0038】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、シリコン薄膜の製膜によって太陽電池パネルを製造するので、太陽電池パネルを薄く軽いものとすることができる。もちろん積層数の調整によって膜厚を厚く調整することもできる。
【0040】
シリコン薄膜の製膜によって太陽電池パネルを製造することから、材料にシリコンインゴットを使用する必要がない。したがって、パネルを低コストに製造することができ、しかも材料確保の心配もない。
【0041】
製膜された非晶質シリコン薄膜に金属ドープしてアニール処理することにより、薄膜中のシリコンを結晶化(多結晶又は準単結晶化)することができる。したがって、非晶質シリコン薄膜による太陽電池パネルに比較して非常に高い発電効率を得ることができる。その結果、薄く、軽く、低コストで、かつ高発電効率の太陽電池パネルとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法について、図面を用いて説明する。なお、この太陽電池パネルの製造方法を10段階に分類し、各々図1〜図10に示して説明する。
【0043】
図1は、この太陽電池パネル1(図9参照)の製造方法の第1段階を示す断面図であって、基材2上にバッファ層3を形成する工程を示している。基材2は、非晶質シリコン薄膜を製膜する際の基板となる部材であって、例えばガラスが用いられる。しかしながら、基材2に高い耐熱性が要求されない場合は、樹脂を基材2として使用することができる。それにより、太陽電池パネル1を軽量化することができる。
【0044】
本実施の形態においては、太陽光Sを基材2側(図中矢印X参照)から導入するため、基材2には透明材料を使用する。しかし、シリコン薄膜の形成順序を設計変更することにより、太陽光Sを非晶質シリコン薄膜側(図中矢印Y参照)から導入するように太陽電池パネル1を構成すれば、基材2には不透明材料を使用することも可能である。したがって、このような場合、基材2に不透明樹脂や金属板を用いることができる。
【0045】
バッファ層3は、その上部に製膜される非晶質シリコン薄膜と基材2とが直接接触しないようにするための絶縁層であり、基材2から非晶質シリコン薄膜へのコンタミネーションを防止する機能を有する。バッファ層3の材料としては、例えば二酸化ケイ素(SiO2)が用いられ、スパッタリングやCVD等により基材2上に薄膜形成される。また、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極をバッファ層3として使用してもよい。本実施の形態においては、太陽光Sを基材2側から導入するので、このバッファ層3も透明である必要がある。
【0046】
図2は、太陽電池パネル1の製造方法の第2段階を示す断面図であって、バッファ層3上に第1層としての第1の非晶質シリコン薄膜(以下、第1非晶質膜という。)4を製膜する工程を示している。第1非晶質膜はシリコンを材料とする薄膜であって、例えばモノシランガス(SiH4)やジシランガス(Si2H6)を用いたCVDやスパッタリングによって製膜される。第1非晶質膜4の膜厚としては40nm以下が望ましく、30nm程度がより望ましい。
【0047】
この製膜工程によって製膜された第1非晶質膜4は、結晶構造を有さず非晶質(すなわちアモルファス)の構造を有している。CVDとしては、例えばPlasma CVD、Plasma Enhanced CVD、Thermal CVD(UHV CVDを含む。)等が用いられる。
【0048】
ただし、CVDは、その方式によっては450℃〜800℃程度の高温環境下で製膜を行う必要があり、基材2に高い耐熱性が必要とされる場合がある。また、CVDの方式によってはSi分子の未結合手に結合した水素(H)分子を除去するための脱水素工程が必要となる。この脱水素工程においては、第1非晶質膜4を500℃程度の高温でアニールすることが必要であるため、やはり基材2に一定レベル(200度以上)の耐熱性が必要となる。
【0049】
したがって、余り耐熱性の高くない樹脂等を基材2として用いる場合は、製膜にスパッタリングを用いる方が望ましい。スパッタリングにおいては、室温下での製膜が可能であり、また、高温のアニール工程も必要ない。したがって、基材2に耐熱性の低い材料を用いても問題がない。
【0050】
ここで、スパッタリングに使用するスパッタガスにアルゴン(Ar)ガスを用いると、一般に、第1非晶質膜4中に一定量のArが取り込まれてしまい、後述するレーザアニール工程において第1非晶質膜4に表面荒れ等の損傷を与える可能性がある。したがって、スパッタガスとしては、コストの点ではArが好ましいものの、高品質の膜を得るにはキセノン(Xe)ガスを用いることがより望ましい。Xeは、膜中に取り込まれるが、一般にその含有量は少ない。
【0051】
したがって、スパッタガスとしては、キセノン(Xe)ガスを用いることが望ましい。Xeは、膜中に取り込まれるが、一般にその含有量は少ない。
【0052】
図3は、太陽電池パネル1の製造方法の第3段階を示す断面図であって、第1非晶質膜4に第1の正イオン5をドープする工程を示している。この第1の正イオン5は、第1非晶質膜4中でドナーとして機能するイオンであり、例えば砒素イオン(As+)や燐イオン(P+)が用いられる。
【0053】
イオンドーピングは、イオン注入機やイオンシャワーによって行われ、そのドープ条件は例えば、5keV、2e15/cm2〜6e16/cm2である。この第1の正イオン5のドーピングにより、第1非晶質膜4はN+層としての機能を発揮する。
【0054】
図4は、太陽電池パネル1の製造方法の第4段階を示す断面図であって、第1非晶質膜4に金属11をドープする工程を示している。この金属11は、後述するアニール処理において結晶化(多結晶化又は準単結晶化。)の基点となる「核」として機能するものである。金属11としては、ニッケル(Ni)の適用が好ましいが、もちろん他の金属であってもよい。
【0055】
金属ドープの方法にはプリント方式やスパッタ方式などがあり、含有金属としてはNiが結晶化には有利ではあるが、Al,CuやCoも結晶化促進に有利である。図5は、太陽電池パネル1の製造方法の第5段階を示す断面図であって、第1非晶質膜4をレーザアニール(アニール処理)する工程を示している。図14は、そのレーザアニール工程を示す斜視図である。ここでは、レーザ光6の光源として、波長308nmのキセノンクロライド(XeCl)エキシマレーザを使用する。なお、この太陽電池パネル1の製造方法の第5段階については、参考文献1(特開平10−41234号公報)及び参考文献2(特開2001−93854号公報)においても紹介されている。
【0056】
レーザアニール工程は、第1非晶質膜4をレーザによってアニールし、その非晶質を高品質の多結晶化又はより好ましくは準単結晶化させるための工程である。第1非晶質膜4の表面に長方形スリット状に成形したレーザ光6をパルス照射させつつ、第1非晶質膜4とレーザ光6とを相対移動させ、第1非晶質膜4の表面全体にレーザ光6が照射されるようにする。
【0057】
ライン上の細い形状の長方形状や正方形に近い形状の長方形状のビーム照射(例えば、20〜50nsの短パルス照射のものや150〜200nsの長パルス照射のもの)により形成することができる。例えば、ここではレーザ光6のビーム形状を、第1非晶質膜4上で縦400μm×横200mmの長方形スリット状とする。また各パルス照射の1回の照射時間を30nsとし、パルス照射ごとのオーバーラッピングを99%とする。
【0058】
すなわち、第1非晶質膜4の表面上でレーザ光6が毎回パルス照射するように構成する。それにより、例えば、第1非晶質膜4の表面の任意の点は合計時間にして、30ns×100=3μsの照射を受けることとなる(レーザは、線状(実際は幅がある)の形でも矩形でもよく、走査シフトしてもしなくてもよいが、ここでは線状のビームの例を示す。)。
【0059】
このレーザアニールによって、図15(a)に示すように、第1非晶質膜4に、例えば(100)面の優先面方位を有する準単結晶部11aが、金属11を核として形成される(T.Noguchi, S.Usui, D.P.Gosain and Y.Ikeda, Mate.Res.Soc.Symp.Proc.,Vol.557, p.213 (1999))。この準単結晶部11aは、他の非晶質部(アモルファス部)11bに比較して、非常に高い発電効率を示すものとなっている。
【0060】
アニール条件(レーザ光6の強度、照射時間、オーバーラッピング等)の変更によってアニール処理の程度を変化させることができ、アニール処理を充分行えば、図15(b)に示すように、準単結晶部11aを成長させて非晶質部11bを略消滅させることができる。この準単結晶部11aの優先面方位としては(100)面を例として説明するが、もちろん(111)面や他の結晶面であってもよい。なお、高品質な擬似結晶部又は準単結晶部11aの大きさとしては、直径又は一辺が200μm程度以上であることが望ましい。
【0061】
もちろん、アニール処理としては、上記のレーザアニール処理の他に、真空環境下での赤外線ヒータによる熱処理や強磁場環境下での赤外線ヒータによる熱処理等も適用することができる。このような、高温短時間(RTA)の熱処理によるアニールの効果は深層部分にまで到達するので、例えば、積層後の非晶質膜を一括してアニール処理するような場合に適している。
【0062】
ただし、熱処理によってアニール処理を行った場合、図15(b)に示すように、金属11の核を中心として放射状の結晶欠陥11cを生じる場合がある。この結晶欠陥11cが電子の円滑な移動を阻害して太陽電池パネル1の発電効率を低下させる原因として考えられるので、熱処理によるアニールを行った後に、更にこの結晶欠陥11cを除去するためにレーザアニールを行うことも望ましい。
【0063】
ここで、準単結晶部11aとは、既に述べたが、例えば(100)面(もちろん(111)面等他の結晶面であってもよい。)の優先面方位を有する高品質の多結晶を含めての結晶化相である。単結晶においては、材料全域に亘って1つの優先面方位を有するが、このアニール処理によって生成された準単結晶部11aは、1つの準単結晶部11a内での優先面方位は一定であるが、隣接する準単結晶部11aどうしの間では、優先面方位が同じであるとは限らないが整合に近い位置になっている。
【0064】
その準単結晶部11a自体は、単結晶シリコンと同等又はそれに近い発電効率を達成可能であり、非晶質膜が疑似単結晶化されると、薄膜自体の発電特性が多結晶シリコンより優れたものとなる。
【0065】
なお、図16に、レーザ光のエネルギー(横軸)とシリコンによるその吸収率(縦軸)との関係をXeClエキシマレーザと固体YAGレーザとで比較したグラフを示す。図中、実線は単結晶シリコンによる吸収、破線は多結晶シリコンによる吸収、一点鎖線は非晶質シリコンによる吸収を示している。
【0066】
UV領域であるXeClエキシマレーザのエネルギーは可視光(緑)領域である固体YAGレーザのエネルギーよりも高く、かつシリコンによる吸収率も高い。すなわち、XeClエキシマレーザは、膜厚の薄い薄膜を効率よくアニールするのに適している。このレーザアニール工程によって、レーザ光6の高いエネルギーが膜厚20nm程度の第1非晶質膜4において吸収され、効率よく疑似単結晶化を行うことができる。吸収率が高いので、アニールに伴う熱が基材2に影響することが殆どない。また、基材2が透明である場合にはレーザ光6を透過するので、より一層影響は少なくなる。
【0067】
図6は、太陽電池パネル1の製造方法の第6段階を示す断面図であって、XeClエキシマレーザによるレーザアニール処理によって疑似単結晶化された第1非晶質膜4上に第2の非晶質シリコン薄膜(以下、第2非晶質膜という。)7を製膜する工程を示している。この第1非晶質膜4の直上に製膜される第2非晶質膜7が第2層である。
【0068】
第2非晶質膜7も第1非晶質膜4と同様にシリコンを材料とする薄膜であって、CVDやスパッタ等の製膜方法により製膜される。また、基材2に耐熱性の低い樹脂を用いる場合には、高温環境下でのCVDや脱水素工程を必要としないスパッタリングにより製膜することが望ましい点についても第1非晶質膜4と同様である。
【0069】
なお、この製膜工程においては、膜厚が200nm以上500nm以下となるように第2非晶質膜7を製膜する。それにより、後述するように、積層の繰り返し回数をなるべく少なくして製造効率を高めつつ、固体YAGレーザでのレーザアニール工程において、第2非晶質膜7の表面部分から深層部分まで充分にアニールし、疑似単結晶化を行うことができる。
【0070】
図7は、太陽電池パネル1の製造方法の第7段階を示す断面図であって、第2非晶質膜7に金属11をドープする工程を示している。この金属11は、この第2非晶質膜7のアニール処理において大粒径の多結晶化又は準単結晶化の基点となる「核」として機能するものである。金属11としては、ニッケル(Ni)の適用が好ましいが、もちろん他の金属であってもよい。
【0071】
なお、第2非晶質膜7に金属11をドープした方が、多結晶化又は準単結晶化の容易の観点から好ましいが、第1非晶質膜4において既に準単結晶部11aが存在しているので、本工程を省略することも可能である。すなわち、第2非晶質膜7に金属11をドープしなくても、そのアニール処理によって第1非晶質膜4上の準単結晶部11aを第2非晶質膜7側へとエピタキシャル成長させることは可能である。
【0072】
含有金属はNiが結晶化には有利ではあるが、Al,CuやCoも結晶化促進に有利である。
【0073】
図8は、太陽電池パネル1の製造方法の第8段階を示す断面図であって、第2非晶質膜7をレーザアニール(アニール処理)する工程を示している。ここでは、レーザ光6aの光源として、波長532nmの固体YAGレーザを使用する。
【0074】
レーザアニール工程は、第2非晶質膜7をレーザによってアニールし、第1非晶質膜4上の準単結晶部11aを第2非晶質膜7側にエピタキシャル成長させるための工程である。そのため、第2非晶質膜7の表面に長方形スリット状に成形したレーザ光6aをパルス照射させつつ、第2非晶質膜7とレーザ光6aとを相対移動させ、第2非晶質膜7の表面全体にレーザ光6aが照射されるようにする。
【0075】
例えば、レーザ光6aのビーム形状を、第2非晶質膜7上で縦40μm×横200mmの長方形スリット状とする。また各パルス照射の1回の照射時間を長くし、パルス照射ごとのオーバーラッピングを95%とする。この第2非晶質膜7上へのレーザ光6aの照射の様子は、図14に示すものと略同様であるので、図示は省略する。
【0076】
このレーザアニールによって、第1非晶質膜4上の準単結晶部11aが第2非晶質膜7側へとエピタキシャル成長する。具体的には、第1非晶質膜4中に形成された準単結晶部11aからエピタキシーが生じ、その準単結晶部11aから膜厚方向に向けて結晶が成長する。この際、第2非晶質膜7にも金属11がドープされていれば、第2非晶質膜7内においてもその金属11を核とする準単結晶部11aの形成が行われる。したがって、その第2非晶質膜7内での準単結晶部11aの形成と第1非晶質膜4内の準単結晶部11aからのエピタキシャル成長との相乗効果により、第2非晶質膜7の準単結晶化がより一層効率よく迅速に行われる。もちろん、第2非晶質膜7内に金属11がドープされていなくても、第1非晶質膜4内の準単結晶部11aからのエピタキシャル成長は実現される。
【0077】
第2非晶質膜7の膜厚は200nm以上500nm以下とされ、第1非晶質膜4の膜厚20nm程度に比べ厚いものとなっている。したがって、吸収率の高いXeClエキシマレーザを用いてレーザアニール工程を行うと、第2非晶質膜7の表面部分のみがアニールされ、その深層部分にまでアニールされない(図16参照)。その結果、深層部分が準単結晶化されず、第1非晶質膜4内の準単結晶部11aからのエピタキシーが生じない。
【0078】
しかし、XeClエキシマレーザよりも吸収率の低い固体YAGレーザや半導体(ダイオード)レーザを用いてレーザアニール工程を行うことにより、第2非晶質膜7の表面部分のみですべてのレーザエネルギーが吸収されてしまうことなく、深層部分にまでレーザエネルギーが到達する。したがって、表面部分から深層部分までの膜厚方向全域に亘って、充分な疑似単結晶化を行うことができる。言い換えれば、固体YAGレーザによって深層部分にまで充分な疑似単結晶化を行うことができるので、第2非晶質膜7の1回の製膜厚さを200nm以上500nm以下と厚くすることができる。
【0079】
もちろん、この第8段階におけるレーザアニール処理を、赤外線ヒータを用いた熱処理に変更することができるのは、上記の第5段階と同様である。いずれのアニール処理を選択するかは、膜厚(すなわち、アニール処理を到達させるべき深さ。)、基材の材質(すなわち、耐熱性。)、工程効率(すなわち、積層後一括アニール処理とするか否か。)、結晶欠陥11cの存否等の状況に応じて適宜判断すべきである。
【0080】
この第7段階における第2非晶質膜7の製膜工程と、第8段階における固体YAGレーザによるレーザアニール工程とを交互に繰り返す(繰り返し工程)。すなわち、第1非晶質膜4上に第2非晶質膜7を製膜し、固体YAGレーザによるレーザアニールが完了した後に、再度その上に第2非晶質膜7を積層して製膜し、固体YAGレーザによるレーザアニール処理を行う。
【0081】
積層した第2非晶質膜7を固体YAGレーザによってレーザアニールすると、その下層側の第2非晶質膜7が既に準単結晶化しているので、その下層側の第2非晶質膜7からのエピタキシーが生じる。したがって、積層した上層側の第2非晶質膜7においても膜厚方向に準単結晶が成長し、膜厚方向全域に亘って準単結晶化する。
【0082】
このように、200nm以上500nm以下の膜厚の第2非晶質膜7を順次積層していき、最終的に、第2非晶質膜7の積層体が2μm程度の膜厚となるようにする。そのため、この繰り返し工程の繰り返し数は少なくとも4回以上となる。200nm以上500nm以下の膜厚の第2非晶質膜7を順次繰り返して積層することにより、固体YAGレーザにより膜厚方向全域に亘る準単結晶化を行いつつ、積層体全体としての厚さを大きく確保(2μm程度)することができる。また、その第2非晶質膜7の1回の製膜厚さを200nm以上500nm以下と厚くすることができるので、繰り返し回数を低減することができ、太陽電池パネル1の製造効率を向上させることができる。
【0083】
なお、アモルファス薄膜太陽電池の場合に行われるのと同様に、この第2非晶質膜7の積層体に4属の元素をドープさせ(例えば、膜厚方向にそれぞれ異なる4属元素をドープさせ。)、そのバンドギャップの値を制御して、より一層発電効率を向上させることができる。すなわち、積層体のうちの一部の第2非晶質膜7をシリコンとカーボンとの結合材料(SiC)とすることにより、太陽光エネルギーのうち主に紫外光成分を高効率に光電変換することができるようになる。さらに、積層体のうちの他の一部の第2非晶質膜7をシリコンとゲルマニウムとの結合材料(SiGe)とすることにより、太陽光エネルギーのうち主に赤外光成分を高効率に光電変換することができるようになる。
【0084】
例えば、第1非晶質膜4に近い側の第2非晶質膜7をシリコンカーボン(SiC)とし、遠い側(すなわち、第3非晶質膜8に近い側。)の第2非晶質膜7をシリコンゲルマニウム(SiGe)とすることにより、基材2側から導入される太陽光Sを紫外光成分から赤外光成分に至るまで非常に効率的に捕捉することができ、高い発電効率を得ることができる。なお、積層された第2非晶質膜7のうち、最上層のものが最終直前層である。
【0085】
図9は、太陽電池パネル1の製造方法の第9段階を示す断面図であって、固体YAGレーザによるレーザアニール処理によって準単結晶化された第2非晶質膜7の積層体上に最終層としての第3の非晶質シリコン薄膜(以下、第3非晶質膜という。)8を製膜する工程を示している。
【0086】
第3非晶質膜8も第1非晶質膜4と同様にシリコンを材料とする薄膜であって、CVDやスパッタ等の製膜方法により製膜される。また、基材2に耐熱性の低い樹脂を用いる場合には、高温環境下でのCVDや脱水素工程を必要としないスパッタリングにより製膜することが望ましい点についても第1非晶質膜4と同様である。なお、この第3非晶質膜8は、第1非晶質膜4と同様に膜厚30nm以下であることが望ましく、20nm程度であることがより望ましい。
【0087】
図10は、太陽電池パネル1の製造方法の第10段階を示す断面図であって、第3非晶質膜8に第2の正イオン9をドープする工程を示している。この第2の正イオン9は、第3非晶質膜8中でアクセプタとして機能するイオンであり、例えば臭素イオン(B+)が用いられる。
【0088】
イオンドーピングは、イオン注入機やイオンシャワーによって行われ、そのドープ条件は例えば、5keV、1e16/cm2である。この第2の正イオン9のドーピングにより、第3非晶質膜8はP+層としての機能を発揮する。
【0089】
図11は、太陽電池パネル1の製造方法の第11段階を示す断面図であって、第3非晶質膜8に金属11をドープする工程を示している。この金属11は、この第3非晶質膜8のアニール処理において結晶化(多結晶化又は準単結晶化。)の基点となる「核」として機能するものである。金属11としては、ニッケル(Ni)の適用が好ましいが、もちろん他の金属であってもよい。
【0090】
なお、第3非晶質膜8に金属11をドープした方が、多結晶化又は準単結晶化の容易の観点から好ましいが、第1非晶質膜4において既に準単結晶部11aが存在しているので、本工程を省略することも可能である。すなわち、第3非晶質膜8に金属11をドープしなくても、そのアニール処理によって第1非晶質膜4上の準単結晶部11aからのエピタキシャル成長が第3非晶質膜8にまで及ぶこととなる。
【0091】
含有金属はNiが結晶化には有利ではあるが、Al,CuやCoも結晶化促進に有利である。
【0092】
図12は、太陽電池パネル1の製造方法の第12段階を示す断面図であって、第3非晶質膜8をレーザアニールする工程を示している。ここでは、レーザ光6bの光源として、レーザ光6aと同様に波長532nmの固体YAGレーザを使用する。
【0093】
レーザアニール工程は、第3非晶質膜8をレーザによってアニールし、第1非晶質膜4上の準単結晶部11aを第2非晶質膜7を介して第3非晶質膜8側にエピタキシャル成長させるための工程である。そのため、第3非晶質膜8の表面に長方形スリット状に成形したレーザ光6bをパルス照射させつつ、第3非晶質膜8とレーザ光6bとを相対移動させ、第3非晶質膜8の表面全体にレーザ光6bが照射されるようにする。ここで、レーザ光6bのビーム形状、パルス照射の1回の照射時間、パルス照射ごとのオーバーラッピング等については、第2非晶質膜7におけるレーザアニールの場合と略同様であるので、詳細は省略する。
【0094】
このレーザアニールによって、第1非晶質膜4上の準単結晶部11aが第2非晶質膜7を介して第3非晶質膜8側へとエピタキシャル成長する。具体的には、第1非晶質膜4中に形成された準単結晶部11aからエピタキシーが生じ、その準単結晶部11aから膜厚方向に向けて結晶が成長し、第2非晶質膜7及び第3非晶質膜8も準単結晶化する。この際、第3非晶質膜8にも金属11がドープされていれば、第3非晶質膜8内においてもその金属11を核とする準単結晶部11aの形成が行われる。したがって、その第3非晶質膜8での準単結晶部11aの形成と第1非晶質膜4内の準単結晶部11aからのエピタキシャル成長との相乗効果により、第3非晶質膜8の準単結晶化がより一層効率よく迅速に行われる。もちろん、第3非晶質膜8内に金属11がドープされていなくても、第1非晶質膜4内の準単結晶部11aからのエピタキシャル成長は実現される。
【0095】
なお、第2非晶質膜7のレーザアニール工程において固体YAGレーザを用いているので、この第3非晶質膜8のレーザアニール工程においても固体YAGレーザを用いた方が、レーザを変更する必要がないので製造工程が簡単となる。しかし、第3非晶質膜8の膜厚は30nm以下であるので、もちろんXeClエキシマレーザによっても充分にアニール及び疑似単結晶化が可能である。また、レーザアニールに代えて赤外線ヒータを用いた熱処理を適用することができるのは、もちろんである。
【0096】
図13は、太陽電池パネル1の製造方法の第13段階(最終段階)を示す断面図であって、第3非晶質膜8上に金属層10を形成して太陽電池パネル1を構成する工程を示している。
【0097】
この金属層10は、基材2側から導入された太陽光Sを反射するためのものである。第1、第2及び第3非晶質膜4,7,8を通過した太陽光Sを透過させたり吸収したりせずに反射させて、再び第3、第2及び第1非晶質膜8,7,4側へと通過させることにより、一層の発電効率の向上に寄与するものである。
【0098】
金属層10としては、アルミニウムの他、様々な金属を用いることができるが、もちろん反射率が高い方が望ましい。この金属層10も、スパッタリングにより形成することが可能である。
【0099】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。もちろん、上記したように、第2非晶質膜7及び第3非晶質膜8への金属11のドープ工程を省略することも可能である。
【0100】
また、各非晶質膜4,7,8へのアニール処理をそれぞれ別々に行うのでなく、各非晶質膜4,7,8をすべて製膜した後に、一括してアニール処理を行うことも可能である。その際、金属11のドープも各非晶質膜4,7,8の製膜後、一括アニール処理前に一括して行えば、工程削減に寄与することができる。アニール処理時にドープされた金属11は、第3非晶質膜8側から第1非晶質膜4側へと移動するので問題はない。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第1段階を示す断面図であって、基材上にバッファ層を形成する工程を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第2段階を示す断面図であって、バッファ層上に第1の非晶質シリコン薄膜を製膜する工程を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第3段階を示す断面図であって、第1の非晶質シリコン薄膜に第1の正イオンをドープする工程を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第4段階を示す断面図であって、第1の非晶質シリコン薄膜に金属をドープする工程を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第5段階を示す断面図であって、第1の非晶質シリコン薄膜をレーザアニールする工程を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第6段階を示す断面図であって、第1の非晶質シリコン薄膜上に第2の非晶質シリコン薄膜を製膜する工程を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第7段階を示す断面図であって、第2の非晶質シリコン薄膜に金属をドープする工程を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第8段階を示す断面図であって、第2の非晶質シリコン薄膜をレーザアニールする工程を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第9段階を示す断面図であって、第2の非晶質シリコン薄膜の積層体上に第3の非晶質シリコン薄膜を製膜する工程を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第10段階を示す断面図であって、第3の非晶質シリコン薄膜に第2の正イオンをドープする工程を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第11段階を示す断面図であって、第3の非晶質シリコン薄膜に金属をドープする工程を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第9段階を示す断面図であって、第3の非晶質シリコン薄膜をレーザアニールする工程を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る太陽電池パネルの製造方法の第10段階を示す断面図であって、第3の非晶質シリコン薄膜上に金属層を形成する工程を示す図である。
【図14】図4のレーザアニール工程を示す斜視図である。
【図15】図4のレーザアニール工程によって、第1の非晶質シリコン薄膜に(100)面を例とする優先方位を有する準単結晶が形成された様子を示す斜視図であり、(a)は、準単結晶が生成された直後の状態を示し、(b)は、準単結晶が充分成長した状態を示す。
【図16】レーザ光のエネルギー(横軸)とシリコンによるその吸収率(縦軸)との関係をXeClエキシマレーザと固体YAGレーザとで比較したグラフである。
【符号の説明】
【0102】
X,Y:矢印
S:太陽光
1:太陽電池パネル
2:基材
3:バッファ層
4:第1の非晶質シリコン薄膜(第1非晶質膜)
5:第1の正イオン
6,6a,6b:レーザ光
7:第2の非晶質シリコン薄膜(第2非晶質膜)
8:第3の非晶質シリコン薄膜(第3非晶質膜)
9:第2の正イオン
10:金属層
11:金属
11a:準単結晶部
11b:非晶質部(アモルファス部)
11c:結晶欠陥
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に直接又はバッファ層を介して非晶質シリコン薄膜を製膜する工程と、
該製膜工程を繰り返して前記非晶質シリコン薄膜を積層する工程と、
該非晶質シリコン薄膜に金属をドープする工程と、
前記金属ドープ後の非晶質シリコン薄膜をアニール処理して該金属を核とする多結晶又は準単結晶を生成する工程と、を有する太陽電池パネルの製造方法。
【請求項2】
前記準単結晶生成後の非晶質シリコン薄膜上に積層された前記非晶質シリコン薄膜をアニール処理して該準単結晶をエピタキシャル成長させる工程を更に有する請求項1に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【請求項3】
前記多結晶生成後の非晶質シリコン薄膜上に積層された前記非晶質シリコン薄膜をアニール処理して該多結晶をエピタキシャル成長させる工程を更に有する請求項1に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【請求項4】
前記アニール処理が、高温短時間熱処理とその熱処理後のレーザ照射処理とを含む請求項1又は請求項2に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【請求項1】
基材上に直接又はバッファ層を介して非晶質シリコン薄膜を製膜する工程と、
該製膜工程を繰り返して前記非晶質シリコン薄膜を積層する工程と、
該非晶質シリコン薄膜に金属をドープする工程と、
前記金属ドープ後の非晶質シリコン薄膜をアニール処理して該金属を核とする多結晶又は準単結晶を生成する工程と、を有する太陽電池パネルの製造方法。
【請求項2】
前記準単結晶生成後の非晶質シリコン薄膜上に積層された前記非晶質シリコン薄膜をアニール処理して該準単結晶をエピタキシャル成長させる工程を更に有する請求項1に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【請求項3】
前記多結晶生成後の非晶質シリコン薄膜上に積層された前記非晶質シリコン薄膜をアニール処理して該多結晶をエピタキシャル成長させる工程を更に有する請求項1に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【請求項4】
前記アニール処理が、高温短時間熱処理とその熱処理後のレーザ照射処理とを含む請求項1又は請求項2に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−283105(P2008−283105A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127738(P2007−127738)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(593036165)西華産業株式会社 (10)
【出願人】(504145308)国立大学法人 琉球大学 (100)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(593036165)西華産業株式会社 (10)
【出願人】(504145308)国立大学法人 琉球大学 (100)
【Fターム(参考)】
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