説明

安定性の優れた低誘電正接樹脂ワニスおよびそれを用いた配線板材料

【課題】低誘電正接な多層プリント配線板の製造に使用される低誘電正接樹脂ワニスの低粘度化とワニスの保存安定性の両立を図り、最終的に低誘電正接な多層プリント配線板の生産性の向上を図る。
【解決手段】重量平均分子量1000以下の熱硬化性モノマー(A)、重量平均分子量5,
000以上の高分子量体(B)、ハロゲン系難燃剤(C)、酸化ケイ素フィラー(D)、有機溶媒(E)を含有するワニスであって前記、(C)成分と(D)成分の平均粒径がともに0.2〜3.0μmである低誘電正接樹脂ワニス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高周波信号に対応して誘電正接の低い絶縁層を形成するための低誘電正接樹脂ワニスとそれを用いて作製されるプリプレグ、積層板、プリント配線板、多層プリント配線基板等の配線板材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PHS、携帯電話等の情報通信機器の信号帯域、コンピューターのCPUクロックタイムはGHz帯に達し、高周波数化が進行している。電気信号の伝送損失は、誘電損失と導体損失と放射損失の和で表され、電気信号の周波数が高くなるほど誘電損失、導体損失、放射損失は大きくなる関係にある。伝送損失は電気信号を減衰させ、電気信号の信頼性を損なうので、高周波信号を取り扱う配線基板においては誘電損失、導体損失、放射損失の増大を抑制する工夫が必要である。誘電損失は、回路を形成する絶縁体の比誘電率の平方根、誘電正接及び使用される信号の周波数の積に比例する。そのため、絶縁体として比誘電率及び誘電正接の小さな絶縁材料を選定することによって誘電損失の増大を抑制することができる。
【0003】
代表的な低誘電率、低誘電正接材料を以下に示す。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂は、比誘電率及び誘電正接がともに低いため、古くから高周波信号を扱う基板材料に使用されている。これに対して、有機溶剤によるワニス化が容易で、成型温度、硬化温度が低く、取り扱い易い、非フッ素系の低誘電率、低誘電正接の絶縁材料も種々検討されてきた。例えば、特許文献1に記載のポリブタジエン等のジエン系ポリマーをガラスクロスに含浸して過酸化物で硬化した例がある。また、特許文献2に記載のように、ノルボルネン系付加型重合体にエポキシ基を導入し、硬化性を付与した環状ポリオレフィンの例がある。特許文献3に記載のように、シアネートエステル、ジエン系ポリマー及びエポキシ樹脂を加熱してBステージ化した例がある。特許文献4記載のポリフェニレンオキサイド、ジエン系ポリマー及びトリアリルイソシアネートからなる変性樹脂の例もある。
【0004】
特許文献5記載のアリル化ポリフェニレンエーテル及びトリアリルイソシアネート等からなる樹脂組成物の例や、特許文献6記載のポリエーテルイミドと、スチレン、ジビニルベンゼン又はジビニルナフタレンとをアロイ化した例がある。更に、特許文献7記載のジヒドロキシ化合物とクロロメチルスチレンからウイリアムソン反応で合成した、例えばビス(ビニルベンジル)エーテルとノボラックフェノール樹脂からなる樹脂組成物の例がある。また、特許文献8、特許文献9、特許文献10記載の全炭化水素骨格の多官能スチレン化合物を架橋成分として用いる例など多数が挙げられる。
【0005】
更に前述の低誘電率、低誘電正接絶縁材料には、低誘電率、低誘電正接性を有するフィラー、難燃剤等を添加することにより、誘電特性の一層の改善を図るとともに難燃性等の特性を付与することが開示されている。その例として1、2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、1、2−ビス(テトラブロモフタルイミド)エタンと多官能スチレン化合物を複合化した特許文献11がある。また、硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物に1、2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタンを添加した特許文献12、特許文献13、特許文献14、ポリスチレンに1、2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタンを添加した特許文献15を挙げることができる。
【0006】
【特許文献1】特開平08−208856号公報
【特許文献2】特開平10−158337号公報
【特許文献3】特開平11−124491号公報
【特許文献4】特開平09−118759号公報
【特許文献5】特開平09−246429号公報
【特許文献6】特開平05−156159号公報
【特許文献7】特開平05−078552号公報
【特許文献8】特開2002−249531号公報
【特許文献9】特開2003−012710号公報
【特許文献10】特開2003−105036号公報
【特許文献11】特開2003−342311号公報
【特許文献12】特開2000−043041号公報
【特許文献13】特開2000−043042号公報
【特許文献14】特開2000−198113号公報
【特許文献15】特開平09−031275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の1つは、低誘電率、低誘電正接なプリント配線板、多層プリント配線板の生産性の向上を目的としてプリプレグの製造過程で使用される低誘電正接樹脂ワニスの安定化を図ることである。従来から低誘電正接樹脂組成物にはフィラー、難燃剤等の不溶成分を添加する例が報告されていたがワニス化した際の不溶成分の沈澱に対する対策は十分なされていなかった。
【0008】
本発明の他の目的は高周波領域の誘電特性が優れた硬化物を得ることができる保存安定性の優れた低誘電正接樹脂ワニスを提供し、更にそれを用いたプリプレグ、積層板、プリント配線板、多層プリント配線板等の配線基板材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1)重量平均分子量1、000以下の熱硬化性モノマー(A)、重量平均分子量5、000以上の高分子量体(B)、下記(式1)または(式2)で表される難燃剤(C)、酸化ケイ素フィラー(D)、有機溶媒(E)を含有するワニスであって前記、(C)成分と(D)成分の平均粒径がともに0.2〜3.0μmである低誘電正接樹脂ワニス。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
(2)前記(B)成分がポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン残基を有するエラストマーの混合物である前記(1)に記載の低誘電正接樹脂ワニス。
(3)前記(A)成分が下記(一般式1)で表される多官能スチレン化合物である前記(1)または(2)に記載の低誘電正接樹脂ワニス。
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、Rは炭化水素骨格を表し、Rは同一または異なっている水素または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R、R、Rは同一または異なっている水素または炭素数1〜6の炭化水素基を表し、mは1〜4の整数、nは2以上の整数を表す。)
(4)前記(A)成分が下記(一般式2)で表されるビスマレイミド化合物である前記(1)または(2)に記載の低誘電正接樹脂ワニス。
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、Rは同一または異なっている炭素数1〜4の炭化水素基を表し、pは1〜4の整数を表す。)
(5)前記(A)成分が前記(一般式1)および(一般式2)で表される化合物の混合物である前記(1)または(2)に記載の低誘電正接樹脂ワニス。
(6)前記(B)成分が熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有する前記(2)〜(5)の何れかに記載の低誘電正接樹脂ワニス。
(7)前記(1)〜(6)の何れかに記載の低誘電正接樹脂ワニスを有機または無機のクロス、不織布、フィルムに塗布、乾燥してなるプリプレグ。
(8)前記(7)に記載のプリプレグを1枚以上用いて、積層体の片面または両面に導体層を設置し、硬化してなる積層板。
(9)前記(8)に記載の積層板において導体箔の硬化プリプレグに接している面の10点平均表面粗さが1〜3μmであることを特徴とする積層板。
(10)前記(8)または(9)に記載の積層板の導体層に配線加工を施してなるプリント配線板。
(11)前記(10)に記載のプリント配線板を(7)に記載のプリプレグを用いて多層化接着したことを特徴とする多層プリント配線板。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低誘電正接樹脂ワニスの保存安定性と低粘度化の両立が可能となり、効率的に安定して低誘電正接プリント配線板、多層プリント配線板用プリプレグを製造することができる。本発明の低誘電正接樹脂ワニスから最終的に作製される積層板、プリント配線板、多層プリント配線板はその絶縁層の誘電特性が優れているため、高周波信号を利用する各種電子機器の配線材料として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態の1つは、平均粒径0.2〜3.0μmの前記(式1)または(式2)で表される特定構造の難燃剤((C)成分)と酸化ケイ素フィラー((D)成分)を樹脂組成物に添加して樹脂系の誘電正接を低減するとともにワニスの保存安定性を増すことである。
【0019】
酸化ケイ素フィラー(D)および前記特定構造の難燃剤(C)の誘電正接は低く、これを樹脂系に添加することによって系全体の誘電正接を低減することができることは公知の事実である。しかし、酸化ケイ素フィラー(D)および前記特定構造の難燃剤(C)は有機溶媒に不溶であるため通常ワニスに分散して用いられることから両成分の粒径が大きいとプリプレグ等を作製する塗工作業中に両成分の沈澱が生じ易くなる。このような沈澱が生じた場合、塗工作業開始直後と作業終了時のプリプレグに含まれる酸化ケイ素フィラー(D)および前記特定構造の難燃剤(C)の含有量に差が生じることが判明した。
【0020】
同様の現象は、ワニスの保管時にも生じ、保存後のワニスでは酸化ケイ素フィラー(D)および前記特定構造の難燃剤(C)が沈澱してしまい、設計仕様から外れたワニス組成でプリプレグを作製してしまう恐れもあった。酸化ケイ素フィラー(D)および前記特定構造の難燃剤(C)の含有量が設計仕様から外れることは、最終的な製品のプリント配線板、多層プリント配線板の電気特性、難燃性を変動させるので避けねばならない。ワニス粘度にも依存するが、塗工作業に適するワニス粘度0.1〜1P・sのワニスでは両成分の平均粒径を0.2〜3.0μmとすることで、酸化ケイ素フィラー(D)および前記特定構造の難燃剤(C)の急速な沈澱を防止することができる。上記の平均粒径とすることにより、8〜24時間の作業時間、保存期間が確保されることを確認した。これによりワニスの保存安定性が改善され、低誘電正接プリント配線板、多層プリント配線板を安定して製造できるようになった。
【0021】
更に検討の結果、本発明の粒径範囲の酸化ケイ素フィラー(D)および前記特定構造の難燃剤(C)を含有するワニスにおいては再攪拌による不溶成分の再分散性が優れており、沈澱が生じたワニスの再生が容易であることが判明した。ワニスの再生の観点からも本領域の粒径を有する酸化ケイ素フィラー(D)および前記特定構造の難燃剤(C)の適用が効果的であった。沈澱の防止という観点からは更に粒径を小さくすることが有効であるが、粒径制御、製造コスト等の点で課題が残る。
【0022】
酸化ケイ素フィラー(D)には樹脂との密着性を改善するために表面処理を施すことが好ましい。処理剤の例としてはシラン系化合物が挙げられ、具体的にはジメチルビニルメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p‐スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルジエトキシシラン、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β‐(アミノエチル)−γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β‐(アミノエチル)−γ‐アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を例示することができる。
【0023】
これら処理剤は単独または複合化して用いても良い。これらの処理剤の効果は酸化ケイ素フィラー(D)の表面を改質し、樹脂との密着性を増してフィラーと樹脂との界面で生じる微細な剥離とそれにともなう剥離部分への不純物の侵入を防止することである。これにより誘電正接を一層低減することができ、更に吸湿時のハンダ耐熱性等の熱特性の改善も図られる。本発明の範囲の微細な酸化ケイ素フィラーは表面積が大きいため前記処理剤の効果が特に大きい。表面処理は樹脂組成物中に前記処理剤を添加して行ってもよく、あらかじめ表面処理を施した酸化ケイ素フィラーを使用してもよい。表面処理剤の添加量は、その残渣が誘電正接の増加を招くので、酸化ケイ素フィラー(D)の添加による誘電正接低減効果が現れる範囲でできる限り少ないことが望ましい。具体的には、本発明の粒径範囲の酸化ケイ素フィラー(D)100重量部に対して0.5〜2重量部の範囲が好ましい。
【0024】
一方、本発明で用いられる特定構造の難燃剤(C)においては、酸化ケイ素フィラー(D)のような表面処理剤の必要はない。即ち、誘電正接の増大を招く表面処理剤の添加を必要としないため、特定構造の難燃剤(C)を酸化ケイ素フィラー(D)とともに併用することによって樹脂系の一層の低誘電正接化がなされる。本発明によれば平均粒径0.2〜3μmの酸化ケイ素フィラー(D)と特定構造の難燃剤(C)を併用することによって低誘電正接樹脂ワニスの安定性を確保できる。それとともに最終的に本ワニスから作製されるプリント配線板、多層プリント配線板の絶縁層の誘電正接の低減が効果的になされる。
【0025】
本発明に用いられる熱硬化性モノマーとしては、重量平均分子量1、000以下の化合物が好ましい。なお、本発明における重量平均分子量とはGPC(Gel Permeation Chromatography)により測定したポリスチレン換算値を指す。このポリスチレン換算値の範囲の熱硬化性モノマーを用いれば、種々の高分子量体、オリゴマー、モノマー、その他添加剤との組み合わせが容易になる。更に樹脂組成物の特性においては成型加工時の溶融流動性が増し、比較的低温での成型加工が可能となるほか成型時の樹脂組成物の流動性をその配合量によって容易に調整することができるようになる。また、硬化物の特性としては、その他の成分との配合比によって架橋密度を広い範囲で調整することができ、これにより熱特性、機械特性を容易に調製することが可能となる。
【0026】
誘電損失低減の観点からは、その硬化物の誘電正接が極めて低い特開2004−87639号公報記載の複数のスチレン基を有する全炭化水素骨格の多官能スチレン化合物が熱硬化性モノマー(A)として特に好ましい。全炭化水素骨格の多官能スチレン化合物の例としては、1、2−ビス(p−ビニルフェニル)エタン、1、2−ビス(m−ビニルフェニル)エタン、1−(p−ビニルフェニル)−2−(m−ビニルフェニル)エタン、ビス(p−ビニルフェニル)メタン、ビス(m−ビニルフェニル)メタン、p−ビニルフェニル−m−ビニルフェニルメタン、1、4−ビス(p−ビニルフェニル)ベンゼン、1、4−ビス(m−ビニルフェニル)ベンゼン、1−(p−ビニルフェニル)−4−(m−ビニルフェニル)ベンゼン、1、3−ビス(p−ビニルフェニル)ベンゼン、1、3−ビス(m−ビニルフェニル)ベンゼン、1−(p−ビニルフェニル)−3−(m−ビニルフェニル)ベンゼン、1、6−ビス(p−ビニルフェニル)ヘキサン、1、6−ビス(m−ビニルフェニル)ヘキサン、1−(p−ビニルフェニル)−6−(m−ビニルフェニル)ヘキサン、及び側鎖にビニル基を有するジビニルベンゼン重合体(オリゴマー)等が挙げられ、これらは単独あるいは二種類以上の混合物として使用される。
【0027】
一方、熱硬化性モノマー(A)として(一般式2)に示した特定構造のビスマレイミド化合物を使用した場合においては、そのワニス粘度を特異的に低減できる。更に(一般式2)に示した特定構造のビスマレイミド化合物を含有する樹脂組成物の硬化物は、前記多官能スチレン化合物には及ばないものの、他のビスマレイミド化合物を用いた硬化物と比較して誘電正接が低いという特徴があることが判明した。これは本発明のビスマレイミド化合物の芳香環に導入したアルキル置換基(R)の立体障害によって分子内の回転運動が抑制され、誘電正接の増大が抑制されているためであると考えられる。
【0028】
本発明の特定構造を有するビスマレイミド化合物の例としては、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3、5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−n−ブチル−4−マレイミドフェニル)メタン等が上げられる。
【0029】
本発明において用いられる(一般式2)で表される特定構造のビスマレイミド化合物を架橋成分とする低誘電正接樹脂ワニスは、そのワニス粘度が、先の(一般式1)で表される多官能スチレン化合物を架橋成分とする低誘電正接ワニスの約1/6と小さい。高濃度且つ低粘度なワニスは、膜厚制御が容易で成膜性も優れているので塗工作業の効率化の点で好ましい。また、粘度が低いことから、ろ過によるワニス中の異物の除去が容易でありろ過作業の効率化の点でも好ましい。このような低粘度な低誘電正接樹脂ワニスでは通常、配合したフィラー、難燃剤の沈澱が生じ、ワニスの安定性の点で問題を生じる。しかし、本発明では粒径0.2〜3μmの微細な酸化ケイ素フィラー(D)と特定構造の難燃剤(C)を使用することによって低誘電正接樹脂ワニス中の酸化ケイ素フィラー(D)と特定構造の難燃剤(C)の著しい沈澱を防止するものである。なお、本発明では熱硬化性モノマー(A)として(一般式1)の多官能スチレン化合物、(一般式2)のビスマレイミド化合物を複合化して用いてもよく、更に第三の熱硬化性成分を要求特性に応じて添加してもよい。これによりワニスの粘度やプリント配線板、多層プリント配線板の絶縁層の誘電特性や導体層との接着力等を使用目的に合わせて調整することができる。
【0030】
高分子量体(B)は重量平均分子量5、000以上であることが好ましい。高分子量体(B)との複合化により、プリプレグにおいてはハンドリングの際に基材から低分子量成分が脱落することを防止することができる。また、硬化後の樹脂組成物の強度または伸びを改善することができることから最終的な製品であるプリント配線板、多層プリント配線板のハンドリング性、導体箔との接着性を改善することができる。
【0031】
本発明における高分子量体(B)の種類には基本的に制限はないが、前述の熱硬化性モノマー(A)とワニス状態において相溶性を有することが、作業性の観点から好ましい。
【0032】
高分子量体(B)の例としては、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ジビニルベンゼン、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、N−(ビニルフェニル)マレイミドの単独または共重合体、置換気を有しても良いポリフェニレンエーテル、脂環構造を有するポリオレフィン等を例として挙げることができる。中でも誘電特性と機械的強度、耐熱性の観点からはポリフェニレンエーテル系樹脂が好ましい。更にポリフェニレンエーテル系樹脂と全炭化水素骨格のスチレン残基を有するエラストマーとを複合化した系では、樹脂硬化物の比誘電率、誘電正接を一層低減し、更に導体配線との接着力の向上が効果的になされるので好ましい。
【0033】
重量平均分子量5、000以上のスチレン残基を有するエラストマーと複合化するのが好ましいポリフェニレンエーテル系樹脂の例として、2、6−ジメチルフェノールを酸化カップリング重合により重合した一般的な熱可塑性ポリフェニレンエーテル(以下、PPEと略す)がある。そのほか、特開平9−246429号公報記載の無水マレイン酸変性PPE、アリル変性PPE、特開2003−160662号公報、特開2003−252983号公報、特開2005−60635号公報記載の比較的分子量の小さな熱硬化性PPEを例として挙げることができる。誘電正接の低減の観点からは熱可塑性高分子PPEの使用が好ましい。スチレン残基を有するエラストマーとしてはスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン等のスチレン誘導体と1、3−ブタジエン、イソプレン等のジエン化合物とのブロック共重合体、その水添化物を例として挙げることができる。
【0034】
本発明における有機溶媒(E)は、熱硬化性モノマー(A)、高分子量体(B)を溶解することができるものが好ましい。有機溶媒(E)の例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、クロロホルム等を挙げることができ、これらの溶媒は複合化して用いても良い。
【0035】
本発明において各成分の配合比率は、低誘電正接樹脂ワニスおよび最終製品であるプリント配線板、多層プリント配線板に求める特性によって適宜調製することができるが、一般的には以下の組成範囲内で使用することが好ましい。
【0036】
熱硬化性モノマー(A)と高分子量体(B)の配合比は、熱硬化性モノマー(A)が5重量部から95重量部、高分子量成分(B)は95重量部から5重量部の範囲から任意に選択される。より好ましい範囲は熱硬化性モノマー(A)は50重量部から95重量部、高分子量体(B)は50重量部から5重量部の範囲であり、更に好ましい範囲は硬化性モノマー(A)が50重量部から80重量部、高分子量体(B)が50重量部から20重量部である。この組成範囲において硬化物の耐溶剤性、強度、成膜性、接着性等を調整することが望ましい。
【0037】
本発明の特定構造の難燃剤(C)と酸化ケイ素フィラー(D)の配合量は、熱硬化性モノマー(A)と高分子量体(B)の総量を100重量部として難燃剤(C)が10重量部から150重量部である。また、酸化ケイ素フィラー(D)が10重量部から150重量部の範囲で難燃性、誘電特性、熱膨張特性等の求める特性に合わせて調製することが望ましい。更に、難燃剤(C)と酸化ケイ素フィラー(D)の総量は成形性の観点から200重量部を超えないことが好ましい。
【0038】
有機溶媒(E)の添加量は溶媒、熱硬化性モノマー、高分子量体の種類によって異なるが、ワニス粘度を0.1〜1P・s、より好ましくは0.1〜0.5P・sになるように調製することが、作業性の観点から好ましい。この粘度範囲において特定構造の難燃剤(C)、酸化ケイ素フィラー(E)の沈澱を抑制することができる。なお、低誘電正接樹脂ワニスの粘度を上げることによって前述の沈澱の発生を一層抑制することが、粘度上昇によりワニス内の異物を除去するためのろ過作業の効率が低下する。また、僅かな溶媒の揮発によりワニスが固化する等の新たな問題が発生する場合があることからワニス粘度は前記の粘度範囲とすることが望ましい。
【0039】
本発明の低誘電正接樹脂ワニスは、有機または無機のクロス、不織布、フィルムに塗布、乾燥してプリプレグとして使用することができる。無機系のクロス、不織布としてはSiO(Qガラス)、SiO−Al−B−KO−NaO系(Dガラス)、SiO−CaO−Al−B−MgO−KO−NaO−TiO系(NEガラス)、SiO−CaO−Al−MgO−KO−NaO系(Tガラス)、SiO−CaO−Al−B−MgO−KO−NaO系(Eガラス)製クロス、不織布を例として挙げることができる。有機系クロス、不織布、フィルムとしては液晶ポリマー、アラミド、PTFE等のクロス、不織布、フィルムを例として挙げることができる。
【0040】
なお、本発明の低誘電正接樹脂ワニスは、導体箔に塗布、乾燥して樹脂付き導体箔(例えば銅箔上に樹脂層を形成したRCC、Resin Clad Copper)として使用することもできる。プリプレグやRCCの乾燥温度は、ワニスに使用する有機溶媒の種類、樹脂層の厚さ等により異なるが、例えば溶媒としてトルエンを使用した場合には、80℃〜130℃で30分〜90分程度乾燥することが好ましい。
【0041】
本発明のプリプレグは、電解銅箔、圧延銅箔等の導体箔を重ね、加熱プレス加工することによって、表面に導体層を有する積層板を作製することができる。本発明の積層板に用いる導体箔の好ましい形状としては、エッチング加工性の観点から9〜36μmの厚さが好ましく、導体損失低減の観点から表面粗さが1〜3μm程度であることが好ましい。本発明に用いられる導体箔は、酸化ケイ素フィラーと同様に表面処理を施すことによって樹脂層との接着力を増すことができる。
【0042】
本発明の低誘電正接樹脂ワニスには、硬化温度、保存安定性の調製、外観検査の簡便化等のために着色剤、重合開始剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤等を更に添加しても良い。これら添加成分の添加量は最終製品であるプリント配線板、多層プリント配線板への伝送特性、耐熱性等の要求特性の許容範囲内で任意に選定することができる。具体的には熱硬化性モノマー(A)と高分子量体(B)の総量を100重量部として各添加剤を0.0005重量部から10重量部の範囲で用いることが好ましく、更に好ましくは各添加剤の総量が10重量部以下であることが望ましい。
【0043】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。表1、図1に本発明の実施例と比較例の組成及び粘度、ワニスの安定性の指標として求めた沈澱量の関係を示す。以下に実施例、比較例に使用した試薬の名称、合成方法、ワニスの調製方法及び硬化物の評価方法を示す。
【0044】
〔熱硬化性モノマー1:1、2−ビス(ビニルフェニル)エタン(BVPE)の合成〕
500mlの三口フラスコにグリニャール反応用粒状マグネシウム(関東化学製)5.36g(220mmol)を取り、滴下ロート、窒素導入管及びセプタムキャップを取り付けた。窒素気流下、スターラーによってマグネシウム粒を撹拌しながら、系全体をドライヤーで加熱脱水した。乾燥テトラヒドロフラン300mlをシリンジに取り、セプタムキャップを通じて注入した。溶液を−5℃に冷却した後、滴下ロートを用いてビニルベンジルクロライド(東京化成製)30.5g(200mmol)を約4時間かけて滴下した。滴下終了後0℃で20時間撹拌を続けた。
【0045】
反応終了後、反応溶液をろ過して残存マグネシウムを除き、エバポレーターで濃縮した。濃縮溶液をヘキサンで希釈して、3.6%塩酸水溶液で1回、純水で3回洗浄して、次いで硫酸マグネシウムで脱水した。脱水溶液をシリカゲル(和光純薬製ワコーゲルC300)/ヘキサンのショートカラムに通して精製し、最後に真空乾燥により目的のBVPEを得た。得られたBVPEは1、2−ビス(p−ビニルフェニル)エタン(p−p体、固体)、1、2−ビス(m−ビニルフェニル)エタン(m−m体、液体)、1−(p−ビニルフェニル)−2−(m−ビニルフェニル)エタン(m−p体、液体)の混合物で収率は90%であった。
【0046】
H−NMRにより構造を調べたところ文献値と一致した(6H−ビニル:α−2H(6.7)、β−4H(5.7、5.2);8H−アロマティック(7.1〜7.4);4H−メチレン(2.9))。得られたBVPEを熱硬化性モノマー1として用いた。
【0047】
1)熱硬化性モノマー2:ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(BMI−5100、大和化成工業株式会社製)
2)熱硬化性モノマー3:ビス(4−マレイミドフェニル)メタン(BMI−1000、大和化成工業株式会社製)
3)高分子量体1:熱可塑性高分子ポリフェニレンエーテル(YPX100F、三菱瓦斯化学株式会社製)
4)高分子量体2:水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(タフテックH1051、旭化成工業株式会社製)
5)フィラー:球形酸化ケイ素フィラー、平均粒径0.5μm(株式会社アドマテックス製)
6)難燃剤1:1、2−ビス(ベンタブロモフェニル)エタン、平均粒径1.5μm
難燃剤2:1、2−ビス(テトラブロモフタルイミド)エタン、平均粒径2.0μm
難燃剤3(比較剤):1、2−ビス(ベンタブロモフェニル)エタン、平均粒径5.5μm(SYTEX8010、アルベマール日本株式会社製)
7)硬化触媒:25B;2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(日本油脂株式会社製)
8)表面処理剤:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)
9)ガラスクロス:NEガラス系ガラスクロス、厚さ100μm(日東紡績株式会社製)
10)銅箔:表面処理付き電界銅箔、10点平均表面粗さ2.0μm、厚さ18μm(株式会社日鉱マテリアルズ製)
〔ワニスの調製方法〕
所定量の熱硬化性モノマー、高分子量成分、フィラー、難燃剤、表面処理剤及び硬化触媒をMEK/クロロホルムまたはMEK/トルエン混合溶媒に溶解、分散することによって低誘電正接樹脂ワニスを作製した。
【0048】
〔硬化物(樹脂板)の作製方法〕
低誘電正接樹脂ワニスをPETフィルムに塗布して乾燥した後、これを剥離して鉄製の厚さ1.5mmのスペーサ内に充填し、真空プレスによって加圧、加熱して硬化物を得た。硬化条件は室温から2MPaに加圧し、一定速度(6℃/分)で昇温し、180℃で100分加熱硬化した。
【0049】
〔プリプレグの作成方法〕
低誘電正接ワニスにガラスクロスを浸漬した後、一定速度で垂直に引き上げて、80℃/30分の条件で乾燥してプリプレグを作製した。ガラスクロスに対する低誘電正接樹脂組成物の付着量は約53重量%であった。
【0050】
〔積層板の作成方法〕
上記で作製したプリプレグの上下面を銅箔でサンドイッチして、室温から圧力4MPa加圧し、速度6℃/分で昇温して180℃/100分加熱硬化して積層板を得た。
【0051】
〔比誘電率及び誘電正接の測定〕
空洞共振法(8722ES型ネットワークアナライザー、アジレント・テクノロジー株式会社製;空洞共振器、株式会社関東電子応用開発製)によって、10GHzの値を測定した。試料は1.5x1.5x80mmの大きさに切り出して用いた。
【0052】
〔低誘電正接ワニスの保存安定性〕
直径18mm、高さ40mmのサンプル管に8mLの低誘電正接樹脂ワニスを入れ、密封して24時間静置した。その後、保存安定性の指標として沈殿物の堆積厚(mm)を測定した。
【0053】
〔粘度の測定〕
E型粘度計を用いて25℃におけるワニス粘度を観測した。
【0054】
【表1】

【0055】
〔比較例1〜3〕
平均粒径5.5μmの難燃剤含有する低誘電正接樹脂ワニスの粘度と沈澱量の関係を表1および図1に示した。ワニス粘度の低下にともない沈澱の発生量が著しく増加することが確認された。これにより粒径の大きな難燃剤を使用した場合、作業性の改善を目的としたワニス粘度の低減とワニスの保存安定性の両立は困難であることが判明した。
〔実施例1〜6〕
平均粒径1.5μm、1.8μmの難燃剤を含有する低誘電正接樹脂ワニスの粘度と沈澱量の関係を表1および図1に示した。これにより難燃剤の粒径を小さくすることによってワニス粘度の低下にともなう沈澱の増加を抑制できることが確認された。難燃剤の小径化によってワニス粘度の低減と保存安定性の両立がなされた。
〔実施例7〕
表2に熱硬化性モノマーとして一般的なビスマレイミド樹脂(BMI−1000)を配合した系の特性を示した。本発明では低誘電正接な難燃剤、酸化ケイ素フィラー、ポリフェニレンエーテル、ゴム成分と複合化することによってビスマレイミド単独硬化物(比誘電率;3.2、誘電正接;0.016)に比べて比誘電率、誘電正接が低減されることが確認された。
〔実施例8〕
表2に熱硬化性モノマーとして本発明の特定構造のビスマレイミド化合物(BMI−5100)を配合した系の特性を示した。本発明の特定構造のビスマレイミドを配合したことにより、実施例7に比較してワニス粘度が1/10に低減し、比誘電率、誘電正接も大幅に改善されることが確認された。
〔実施例9〕
表2に熱硬化性モノマーとして本発明の多官能スチレン化合物(BVPE)を配合した系の特性を示した。実施例8に比較してワニス粘度はやや高いものの、誘電特性の点では一層優れた特性を有することが確認された。
〔実施例10〕
表2に熱硬化性モノマーとして本発明の特定構造のビスマレイミド化合物(BMI−5100)と多官能スチレン化合物を(BVPE)を配合した系の特性を示した。ワニス粘度、誘電特性ともに実施例8と実施例9との中間的な値が確認されており、両熱硬化性モノマーを複合化することによって誘電特性およびワニス粘度の調製が可能であることが判明した。
【0056】
【表2】

【0057】
〔実施例11〕
実施例9の低誘電正接樹脂ワニスをガラスクロスに含浸してプリプレグを作製した。本プリプレグを銅箔でサンドイッチして積層板を作成した。銅箔をエッチングして積層板の絶縁層を構成するガラス/樹脂硬化物の誘電特性を評価したところ10GHzにおける比誘電率は3.2、誘電正接は0.0021と優れた特性を示した。優れた誘電特性を有する本発明のプリプレグ、積層板を用いて作製されるプリント配線板、多層プリント配線板は高周波伝送特性が優れていることが示唆された。
〔実施例12〕
以下に本発明の多層プリント配線板の作成例を図2を用いて説明する。
【0058】
(A)実施例11で得た積層板の片面にフォトレジスト(日立化成製HS425)をラミネートして全面に露光した。次いで残る銅表面にフォトレジスト(日立化成製HS425)をラミネートしてテストパターンを露光し、未露光部分のフォトレジストを1%炭酸ナトリウム液で現像した。
【0059】
(B)硫酸5%、過酸化水素5%のエッチング液で露出した銅箔をエッチング除去して、積層板の片面に導体配線を形成した。
【0060】
(C)3%水酸化ナトリウム溶液で残存するフォトレジストを除去し、片面に配線を有するプリント配線板を得た。同様にして2枚のプリント配線板を作製した。
【0061】
(D)二枚のプリント配線板の配線側の面に実施例11のプリプレグを挟み、真空下、加熱、加圧して多層化した。加熱条件は120℃/30分、150℃/30分、180℃/100分、プレス圧力4MPaの多段階加熱とした。
【0062】
(E)作製した多層板の両面の外装銅にフォトレジスト(日立化成製HS425)をラミネートしてテストパターンを露光し、未露光部分のフォトレジストを1%炭酸ナトリウム液で現像した。
【0063】
(F)硫酸5%、過酸化水素5%のエッチング液で露出した銅箔をエッチング除去し、3%水酸化ナトリウム溶液で残存するフォトレジストを除去して外装配線を形成した。
【0064】
(G)内層配線と外装配線を接続するスルーホールをドリル加工で形成した。
【0065】
(H)穴あけ後の多層板をめっき触媒のコロイド溶液に浸して、スルーホール内、基板表面に触媒を付与した。
【0066】
(I)めっき触媒の活性化処理の後、無電解めっき(日立化成製CUST2000)により、約1μmの種膜を設けた。
【0067】
(J)フォトレジスト(日立化成製HN920)を多層板の両面にラミネートした。
【0068】
(K)スルーホール部及び多層板の端部をマスクして露光後、3%炭酸ナトリウムで現像して開孔部を設置した。
【0069】
(L)多層板の端部に電極を設置して電解めっきによってスルーホール部分にめっき銅を約18μm形成した。
【0070】
(M)電極部分を切断除去し、残存するフォトレジストを5%水酸化ナトリウム水溶液で除去した。
【0071】
(N)硫酸5%、過酸化水素5%のエッチング液に配線基板を浸して約1μmエッチングして種膜を除去し多層プリント配線板を作製した。本多層プリント配線板を200℃のハンダリフロー槽に10分間、288℃ハンダ槽に1分保持したが、樹脂界面、配線の剥離等は生じなかった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ワニス粘度と沈澱発生量の関係を表すグラフである。
【図2】多層配線板作製時のプロセスを現わすフロー図である。
【符号の説明】
【0073】
1…電解銅箔、2…プリプレグ硬化基板、3…フォトレジスト、4…プリプレグ、5…内層配線、6…外層配線、7…スルーホール、8…めっき触媒、9…種膜、10…開孔部、11…電極、12…めっき銅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量1000以下の熱硬化性モノマー(A)、重量平均分子量5000以上の高分子量体(B)、下記(式1)または(式2)で表される難燃剤(C)、酸化ケイ素フィラー(D)、有機溶媒(E)を含有するワニスであって前記、(C)成分と(D)成分の平均粒径が0.2〜3.0μmであることを特徴とする低誘電正接樹脂ワニス。
【化1】

【化2】

【請求項2】
前記(B)成分がポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン残基を有するエラストマーの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の低誘電正接樹脂ワニス。
【請求項3】
前記(A)成分が下記(一般式1)で表される多官能スチレン化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の低誘電正接樹脂ワニス。
【化3】

(式中、Rは炭化水素骨格を表し、Rは同一または異なっている水素または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R、R、Rは同一または異なっている水素または炭素数1〜6の炭化水素基を表し、mは1〜4の整数、nは2以上の整数を表す。)
【請求項4】
前記(A)成分が下記(一般式2)で表されるビスマレイミド化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の低誘電正接樹脂ワニス。
【化4】

(式中、Rは同一または異なっている炭素数1〜4の炭化水素基を表し、pは1〜4の整数を表す。)
【請求項5】
前記(A)成分が前記(一般式1)で表される化合物および(一般式2)で表される化合物の混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の低誘電正接樹脂ワニス。
【請求項6】
前記(B)成分が熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有することを特徴とする請求項2〜5の何れかに記載の低誘電正接樹脂ワニス。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の低誘電正接樹脂ワニスを有機または無機のクロス、不織布又はフィルムに塗布、乾燥してなることを特徴とするプリプレグ。
【請求項8】
請求項7に記載のプリプレグを1枚以上用いて、該プリプレグの片面または両面に導体層を設置し、硬化してなることを特徴とする積層板。
【請求項9】
請求項8に記載の積層板において、導体箔の硬化プリプレグに接している面の10点平均表面粗さが1〜3μmであることを特徴とする積層板。
【請求項10】
請求項8または9に記載の積層板の導体層に配線加工を施してなることを特徴とするプリント配線板。
【請求項11】
請求項10に記載のプリント配線板を請求項7に記載のプリプレグを用いて多層化接着したことを特徴とする多層プリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−99893(P2007−99893A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291211(P2005−291211)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】