説明

実装精度検査方法及びその検査方法を用いる検査装置

【課題】表示パネルと光学手段との相対的な位置精度を低コストかつ高速に検出できる、実装精度検査方法及びその検査方法を用いる検査装置を提供する。
【解決手段】検査対象となる表示装置は、複数の画素群が配列された表示パネルと、画素群から複数のN(Nは2以上の自然数)視点に向けた画像表示を提供するための光学手段と有する。検査装置は、視点毎に異なる画像信号を有する検査パターンを表示装置に出力する画像出力手段と、表示装置から表示された検査画像の境界線分の傾きと位置を抽出する抽出手段とを備え、抽出手段が抽出した傾きと位置に基づいて表示パネルと光学手段との位置精度を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立体画像を表示する表示装置の実装精度検査方法及びその検査方法を用いる検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人に立体感や奥行きを感じさせる画像を得るには、観察者の左眼と右眼の視点の違い、すなわち右眼で見える物体像と左眼で見える物体像とが異なる両眼視差を利用する方法がある。この両眼視差を利用し、観察者の左右の眼に異なる画像を提示することで、観察者に立体感を感じさせる立体画像を表示する表示装置が開発されている。
【0003】
そのような表示装置として、表示パネルに左眼用及び右眼用の画像を表示する画素を設け、レンチキュラレンズやパララックスバリア等の光学手段により観察者の左右の眼に対応する画像を振分ける方式が知られている。光学手段としては、固定レンズのようなスタティック素子に限らず、液晶レンズや液晶バリア等の電気光学素子を用いることも可能である。また、バックライト等の光源から発する光を左右の眼に時分割に振り分ける光学手段を用いるものもある。視点数としては、観察者の用途や使用状態に応じて2視点から多視点まで様々に選ぶことができる。2視点は立体感を感じる立体視域が制限されるが、3D(3 Dimension)解像度が高いメリットを有する。一方、多視点は3D解像度が低下するものの運動視差の付与や立体視域が拡大できるメリットを有する。
【0004】
ここで、観察者の左右の眼に対応する視点位置に所定の画像を正しく振り分けるには、表示パネルに対する光学手段の位置ずれ量が少ないこと、すなわち表示パネルに対する光学手段の実装精度(以下、表示パネルと光学手段の相対的な位置精度と称す)が重要になる。表示パネルと光学手段との位置がずれると、左右の画像が視点によって入れ替わる逆視現象や左右の画像が相互に混入する現象が発生する。その場合、観察者には立体画像を認識できなくなったり、立体画像が認識できる範囲が狭くなったりする。したがって、観察者に立体感を感じさせる画像を表示する表示装置を製造する場合、表示パネルと光学手段の相対的な位置精度を管理することが重要になる。
【0005】
このような問題に対処するため、従来から様々な実装精度の評価方法が提案されており、一般的には、測長顕微鏡等を用いて表示パネルと光学手段の相対的な位置精度を読み取る方法、あるいはコノスコープ方式やフーリエ方式等の光学特性測定装置により左右の眼に振り分けられる光を検出し、立体画像が認識できる範囲を求める方法等が知られている。
【0006】
しかしながら、これらの評価方法は、いずれも多くの準備時間を要し、操作手順が多く、機材も高価であるため、表示装置の製造過程における検査に適用すると、検査コストが増大する問題がある。
【0007】
また、表示パネル及び光学手段に予めマーカを設け、測長顕微鏡よりも安価な光学系やセンサを用いて該マーカの形状や位置を検出することで、光学手段と表示パネルの相対的な位置精度を検出する方法もある。しかしながら、その方法は、表示パネルと光学手段のマーカを同一焦点で撮影するのが困難であり、表示パネルの高精細化に伴って要求される精度で位置ずれを検出できない問題もある。
【0008】
そこで、高価な機材を用いることなく、所定の検査パターンを観察することで、表示パネルと光学手段の相対的な位置精度を取得できる方法が提案されている。
【0009】
例えば、特許文献1には、検査対象である表示装置に平行直線群を表示させ、レンチキュラレンズアレイを介して観察される色縞を所定の条件に一致させることで、立体視用に表示装置の画面上に配置されたレンチキュラレンズアレイの配置角度を求める配置レンズ諸元の導出方法が提案されている。
【0010】
図21は、特許文献1に記載された表示装置に表示される検査画像の一例を示す模式図である。
【0011】
図21に示すように、特許文献1に記載された技術では、検査対象となる表示装置に間隔が等しい複数の平行な直線から成る平行直線群を表示させる。ここで、表示画面上の左上隅を基準位置O1と定義し、基準位置O1に対して横方向をxp軸、縦方向をyp軸、平行直線群の各直線のyp軸に対する角度θを「直線群角度」と定義する。また、隣接する2本の直線の間隔mを「直線群間隔」と定義し、基準位置O1に最も近い直線のxp軸上における基準位置O1からの距離dxを「水平基準位置」と定義する。このとき、レンチキュラレンズアレイを介して視認される色縞が、例えば色縞の角度とレンチキュラレンズアレイの配置角度とが一致するなどの条件を満たすように、平行直線群の角度θ、直線群間隔m及び水平基準位置dxを調整すれば、レンチキュラレンズアレイの配置基準位置が未知であっても、レンズピッチやレンチキュラレンズアレイの配置角度等の配置レンズ諸元を求めることができる。
【0012】
また、特許文献2には、表示された3次元映像を観察しながらイメージパネルと3次元イメージ形成装置(光学手段)との位置ずれが無いないように整列・固定する3次元映像表示装置の製造方法が提案されている。
【0013】
図22は、特許文献2に記載されたレンズ実装精度の検査原理を示す模式図である。
【0014】
図22に示すように、特許文献2に記載された技術では、2つの画素列から発する光をレンズにより屈折させ、一方の画素列の光が右眼に到達し、他方の画素列の光が左眼に到達するようにすると、両眼の中央に到達する光が無くなり、3次元映像の中央に黒色の帯が現れる。レンズ等の光学手段(3次元イメージ形成装置)とイメージパネルの2つの画素列が位置ずれなく固定されている場合、観測者がイメージパネル中央から所定の観測距離(または所定の焦点距離)だけ離れて観察すると、イメージパネル中央に黒色の帯が縦方向に現れる。特許文献2では、例えば上記黒色帯がパネル中央に位置するようにイメージパネル上に3次元イメージ形成装置を配置している。また、特許文献2には、2つの画素列に異なる画像を表示することで、イメージパネルに対して3次元イメージ形成装置を位置ずれなく配置できることが記載されている。
【0015】
また、特許文献3には、異なる視点用の複数の原画像を合成した合成画像と、該合成画像の上下の少なくとも一方に位置合わせ用の画像を形成し、立体画像の鑑賞位置よりも合成画像に近い位置から、所定の視点画像を抽出する光学手段を介して観察される位置合わせ用画像の情報に基づいて、合成画像と光学手段との位置合わせを行う立体画像表示装置の製造方法が提案されている。
【0016】
図23は、特許文献3に記載された位置合わせ用画像を示す模式図である。
【0017】
図23は、3つの視点用の原画像が垂直方向に分割されて配置された合成画像102の上下に位置合わせ用画像を形成したものであり、この位置合わせ用画像には異なる視点用の原画像に対応して異なる色が配置される。
【0018】
位置合わせ画像を、光学手段を介して立体画像の鑑賞位置よりも合成画像に近い位置で観察すると、異なる色が配置された縞模様として視認される。特許文献3では、この縞の色と位置とを読み取ることで、どの視点の画像を正面の鑑賞位置から見える位置に配置するかを決定している。また、上下に配置した位置合わせ用画像のパターンを合わせることで、異なる視点の画像を合成した合成画像と光学手段の相対的な傾きを検出している。
【0019】
また、特許文献4には、三次元画像再生装置の各部材の相対的な位置ずれや部品精度を検査するための検査装置が提案されている。
【0020】
図24は、特許文献4に記載された検査装置の構成を示すブロック図である。
【0021】
図24に示す検査装置は、ピンホールアレイ509(またはレンチキュラ―シート512)や開口スリット等の光学素子及び液晶ディスプレイ501を備えた三次元画像再生装置500と、三次元画像再生装置500に所定のテストパターンを表示させるための信号処理装置422と、三次元画像再生装置500に表示されたテストパターンを撮影する撮影光学系412と、撮影された検査画像を解析する解析装置513とを備えている。
【0022】
図24に示す検査装置は、複数の画素が2次元に配列された液晶ディスプレイ501にて、画素を任意の周期で点灯させるテストパターンを表示し、該テストパターンを検査画像として撮影し、検査画像を解析することで三次元画像再生装置の各部材の相対的な位置ずれを検出している。例えば、レンチキュラ―シート512のピッチとほぼ等しい画素ピッチでレンチキュラーシート512の谷の位置で点灯させると、1つのレンズで表示できる端の角度の分布が画像幅Wとして測定できる。この幅Wを有する画像は、レンチキュラ―シート512と液晶ディスプレイ501とに相対的な位置ずれがあると、位置ずれを起こす。したがって、この画像の位置ずれ量が所定の基準値内にあるか否かを判定することで、三次元画像再生装置の各部材の相対的な位置ずれ量を検出できる。
【0023】
また、特許文献5には、表示パネルの位置検出用マークとレンチキュラレンズを撮像し、撮像画像から表示パネルとレンチキュラレンズとの相対位置を検出する三次元画像表示装置の製造方法が提案されている。
【0024】
図25は、特許文献5に記載された撮像画像の一例を示す平面図である。
【0025】
特許文献5では、表示パネルにアライメントマーク等の位置検出用マークM1が表示領域の周縁領域にその表示領域を挟むように設けられ、撮像領域が該位置検出用マークM1及びレンチキュラレンズ124aの端部を含む領域R1に設定されている。図25は、この時の撮像画像G1を示している。特許文献5に記載された技術では、撮像画像G1からレンチキュラレンズ124aの谷部b1を検出し、位置検出用マークM1とb1のX軸方向のずれ量a1を算出することで表示パネルとレンチキュラレンズの相対位置を検出している。
【0026】
また、特許文献6には、表示パネルとレンチキュラレンズとが貼り合わされた三次元画像表示装置を、検査用画像を用いて検査する検査装置が提案されている。
【0027】
図26は、特許文献6に記載された検査用画像の一例を示す平面図である。
【0028】
特許文献6では、レンチキュラレンズのレンズピッチP毎に、そのレンズピッチPの中心に位置する画素を一列に点灯させ、更に画素列と直交する直線上に2つの位置検出用マークM1、M2を含む画像を、検査用画像G1として用いている。この検査用画像G1を表示装置に表示させ、検査対象となる複数の検査領域(例えば3×3=9箇所)を撮像し、それぞれの撮像画像から輝度分布を求め、平面方向のずれ量を検出している。
【0029】
また、特許文献7には、複数の観察領域に異なる画像を提供する表示装置の表示パネルと光進行制御部との位置合せを正確に行う製造方法および製造装置が提案されている。
【0030】
図27は、特許文献7に記載された製造装置の概略を示す模式図である。
【0031】
図27に示す製造装置は、8つの観察領域Obに異なる画像を提供する表示装置と、所定の観察領域Obに配置されたカメラ240a,240bとが示されている。特許文献7では、図27に示すように表示装置とカメラ240a,240bとを配置し、所定の観察領域に配置されたカメラ240a,240bで実際に撮影した画像と、そのカメラで撮影されるべき画像との相違が減少するように、光進行制御部を表示パネルに対して位置合せすることで、実際の観察者によって視認される画像を最適なものに近づけている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2007‐65441号公報
【特許文献2】特開2006−79097号公報
【特許文献3】特開2008‐015394号公報
【特許文献4】特開2009−162620号公報
【特許文献5】特開2009−022319号公報
【特許文献6】特開2010−019987号公報
【特許文献7】特開2009−300816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
しかしながら上述した背景技術では以下に記載するような問題がある。
【0034】
特許文献1に記載された技術は、配置レンズの諸元を導出する手法を示しているだけであり、平行直線群の角度調整、間隔調整及び水平基準位置調整では、各視点の左右の画像が入れ替わる上記逆視現象を防止することができない。また、平行直線群の描画処理と、その調整に用いるコントローラが必要であるため、検査装置のコストが増大し、操作時間等も長くなってしまう。
【0035】
特許文献2に記載された技術は、左眼用イメージ窓と右眼用イメージ窓との間に形成される黒色の帯を所定の位置に調整するものであり、例えば黒色の帯がパネル中央に位置するように調整している。しかしながら、黒色の帯の位置がパネル中央に位置するか否かだけでは、イメージパネルに対して3次元イメージ形成装置(光学手段)が相対的に傾いていても位置ずれが無いと見なされてしまう。すなわち、特許文献2に記載された技術では、イメージパネルと3次元イメージ形成装置(光学手段)の相対的な傾きを検出することができない。また、視点数が3以上であり、かつ視点数が奇数のイメージパネルを検査する場合、表示中心に対して左右対称に異なる画像を表示させることができないため、該イメージパネルの検査ができない問題もある。
【0036】
特許文献3に記載された技術は、位置決め画像を配置する合成画像の上下部分が表示領域外であり、合成画像で形成される立体視に異常があっても検査することができない。また、縞の色と配置だけでは、位置決め画像とレンチキュラレンズとの相対位置が視点単位でしか検査できない問題もある。さらに、別途、位置決め画像部分を切断する工程が必要であるため、製造コストが増大し、製造時間も長くなる問題がある。
【0037】
特許文献4に記載された技術は、視点数が2の場合、レンズピッチの谷間に位置する列を点灯するテストパターンでは、表示装置の画面全体が点灯することになるため、表示パネルと光学手段の相対的な位置ずれを読み取れずに検査できない問題がある。
【0038】
特許文献5に記載された技術は、表示パネルの位置検出マークとレンチキュラレンズとの物理的な位置をそのまま読み取り、位置精度を検出するため、所定精度を確保するためには高性能な撮影手段が必要になる。さらに、表示パネルとレンチキュラレンズを同一焦点で撮影するのが困難であるため、検出時間がかかる上に高価な装置が必要となる問題がある。それに加えて、マーク付近の局所的な情報しか得られないため、画面全体の情報を得るのが難しく、例えば非撮影部のレンチキュラレンズに平面的な歪を有する場合は、検出するのが容易ではない。
【0039】
特許文献6に記載された技術は、レンズピッチP毎に検査する手法であり、画面全体の情報を得るには複数の検査領域が必要である。また、各検査領域の撮像画像の輝度分布を算出するため、検査時間がかかるという問題がある。
【0040】
特許文献7に記載された技術は、複数の観察領域に夫々対応する画像によって、光進行制御部と表示パネルを位置合せするものである。そのため、複数の観察領域のうちの少なくとも2つの観察領域で撮影する複数台のカメラ、もしくは複数の観察領域を一度で撮影する特殊なカメラが必要になるため、製造装置のコストが増大する。
【0041】
本発明は上述したような背景技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、表示パネルと光学手段との相対的な位置精度を低コストかつ高速に検出できる、実装精度検査方法及びその検査方法を用いる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0042】
上記目的を達成するため本発明の実装精度検査方法は、表示装置が備える、複数の画素群が配列された表示パネルと、前記画素群から複数のN(Nは2以上の自然数)視点に向けた画像表示を提供するための光学手段との位置精度を検査するための実装精度検査方法であって、
前記視点毎に異なる画像信号を有する検査パターンを表示装置から表示する表示工程と、
前記表示装置に表示された画像を検査画像とし、前記検査画像から前記視点間の境界線分の傾きと位置を抽出する抽出工程と、
を有する方法である。
【0043】
または、表示装置が備える、複数の画素群が配列された表示パネルと、前記画素群から複数のN(Nは2以上の自然数)視点に向けた画像表示を提供するための光学手段との位置精度を検査するための実装精度検査方法であって、
前記視点毎に異なる画像信号を有する検査パターンを表示装置から表示する表示工程と、
前記表示を撮影手段により所定の撮影距離から撮影し、検査画像として取得する撮影工程と、
前記検査画像から、前記視点間の境界線分の傾きと位置を抽出する抽出工程と、
を有する方法である。
【0044】
一方、本発明の検査装置は、複数の画素群が配列された表示パネルと、前記画素群から複数のN(Nは2以上の自然数)視点に向けた画像表示を提供するための光学手段と有する表示装置の前記表示パネルと前記光学手段の位置精度を検査する検査装置であって、
前記視点毎に異なる画像信号を有する検査パターンを前記表示装置に出力する画像出力手段と、
前記表示装置から表示された検査画像の境界線分の傾きと位置を抽出する抽出手段と、
を備え、
前記抽出手段が抽出した傾きと位置に基づいて前記表示パネルと前記光学手段との位置精度を検出する構成である。
【0045】
または、複数の画素群が配列された表示パネルと、前記画素群から複数のN(Nは2以上の自然数)視点に向けた画像表示を提供するための光学手段と有する表示装置の前記表示パネルと前記光学手段の位置精度を検査する検査装置であって、
前記視点毎に異なる画像信号を有する検査パターンを前記表示装置に出力する画像出力手段と、
前記検査パターンを表示する際に現れる境界線分を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影された検査画像の境界線分の傾きと位置を抽出する抽出手段を備え、
前記抽出手段が抽出した傾きと位置に基づいて表示パネルと光学手段との位置精度を検出する構成である。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、表示パネルと光学手段との相対的な位置精度を低コストかつ高速に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の実施の形態の検査方法で用いる表示装置及び撮影手段の配置例を示す模式図である。
【図2】第1の実施の形態の検査原理を示す図であり、同図(A)は表示装置で表示する検査パターンの一例を示す模式図であり、同図(B)は撮影手段で得られる検査画像の一例を示す模式図である。
【図3】N視点用の画素を備えた表示装置から得られる、Nが偶数(N=4)である場合の検査画像の一例を示す模式図である。
【図4】N視点用の画素を備えた表示装置から得られる、Nが奇数(N=5)である場合の検査画像の一例を示す模式図である。
【図5】2視点用画素を備える表示装置の一構成例を示す断面図である。
【図6】第1実施例の検査方法で得られる検査画像の一例を示す模式図である。
【図7】図6に示した検査画像から境界線分の傾きθ及び位置Δxを抽出するための処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図7に示したx方向のサーチ処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】境界線分の位置Δx及び傾きθから表示パネルと光学手段の相対的な位置精度を求める方法を示すグラフである。
【図10】第2実施例の検査方法の処理対象である検査画像の一例を示す模式図である。
【図11】第3実施例の検査方法の処理対象である検査画像の一例を示す模式図である。
【図12】第3実施例の変形例で検査対象となる検査画像の一例を示す模式図である。
【図13】表示装置の光学手段としてレンチキュラレンズを用いたときに形成される立体視域の一例を示す模式図である。
【図14】第2の実施の形態の検査方法で用いる表示装置及び撮影手段の配置例を示す模式図である。
【図15】第2の実施の形態の検査方法で得られる検査画像の一例を示す模式図である。
【図16】撮影距離に対する検査画像の境界線分の傾きθの変化を示すグラフである。
【図17】第4実施例の検査方法で得られる検査画像の一例を示す模式図である。
【図18】本発明の検査装置の一構成例を示すブロック図である。
【図19】本発明の検査装置の他の構成例を示すブロック図である。
【図20】第4の実施の形態の検査装置で得られる検査画像の一例を示す模式図である。
【図21】特許文献1に記載された表示装置に表示される検査画像の一例を示す模式図である。
【図22】特許文献2に記載されたレンズ実装精度の検査原理を示す模式図である。
【図23】特許文献3に記載された位置合わせ用画像を示す模式図である。
【図24】特許文献4に記載された検査装置の構成を示すブロック図である。
【図25】特許文献5に記載された撮像画像の一例を示す平面図である。
【図26】特許文献6に記載された検査用画像の一例を示す平面図である。
【図27】特許文献7に記載された製造装置の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
次に本発明について図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における表示パネルと光学手段の相対的な位置精度の検査方法(実装精度検査方法)について図面を用いて説明する。なお、以下では、同一の要素については同一の符号を付与し、重複する説明は省略する。
【0049】
図1は、第1の実施の形態の検査方法で用いる表示装置及び撮影手段の配置例を示す模式図である。
【0050】
図1に示すように、表示装置1は、複数の画素群が配列された表示パネル2と、画素群から2つ以上の視点画像を形成する光学手段3とを備えており、表示パネル2と光学手段3との間は、上記視点画像を形成するための適切な間隔に設定されている。撮影手段5は表示装置1の表示面を撮影する位置に配置される。本実施形態では、表示装置1に表示された所定の検査パターンを撮影手段5で撮影し、該撮影手段5で撮影された検査画像に基づいて表示装置1の表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度を検出する。
【0051】
表示パネル2には、第1視点用の画像を表示する第1視点用画素41と第2視点用の画像を表示する第2視点用画素42とが、第1の方向8に交互に配列されている。図1では、観察者の左眼の位置43と右眼の位置44とを併せて示している。
【0052】
本実施形態では、光学手段3として、例えばレンチキュラレンズを用いる。レンチキュラレンズは、表示パネル2と対向する一方の面が平面であり、他方の面に半円柱状のレンズ素子である、複数のシリンドリカルレンズ31が配列された構成である。
【0053】
表示パネル2とレンチキュラレンズとは、1つのシリンドリカルレンズ31に対して、第1視点用画素41及び第2視点用画素42から成る1対の画素群が対応する位置で接着固定される。なお、図1では、レンチキュラレンズのレンズ面側(半円柱側)を表示面とする例を示しているが、レンチキュラレンズの平面側を表示面とする構成も可能である。
【0054】
本明細書では、表示装置1及び撮影手段5を含む空間に対して、以下に示すようなXYZ直交座標系を設定する。
【0055】
上述した第1視点用画素41及び第2視点用画素42が配列される方向、すなわち第1の方向8をX軸とし、図の矢印の方向を正方向とする。また、第1の方向8と直交する第2の方向9をY軸とし、図の矢印の方向を正方向とする。さらに、X軸及びY軸の両方に直交する第3の方向10をZ軸とし、図の矢印の方向を正方向とする。この場合、+Z方向は表示パネル2から観察者へ向かう方向であり、観察者は表示装置1の+Z側の表示面を視認する。
【0056】
このようなXYZ軸から成る直交座標系を設定すると、複数のシリンドリカルレンズ31がX軸方向に配列されているため、左眼用の画像と右眼用の画像とがX軸方向で分離されてそれぞれ表示される。第1視点用画素41及び第2視点用画素42から成る各画素群はそれぞれY軸方向へ延伸する形状である。X軸方向における上記画素群の配列周期はシリンドリカルレンズの配列周期と略等しい。したがって、各画素群に対応してシリンドリカルレンズ31がそれぞれ配置される。レンチキュラレンズは、その中心が表示パネル2の中心と一致するように表示パネル2に固定されている。
【0057】
このような構成では、第1視点用画素41から発せられた光はレンチキュラレンズによって屈折され、第1視点の位置43に到達する。同様に、第2視点用画素42から発せられた光はレンチキュラレンズによって屈折され、第2視点の位置44に到達する。したがって、例えば第1視点に左眼が位置し、第2視点に右眼が位置する観察者には、立体感のある良好な立体画像を視認できる。
【0058】
撮影手段5には、画像処理用レンズシステムや一般的なビデオカメラやデジタルカメラ等が用いられる。撮影手段5は、表示パネル2の表示面近傍に焦点が合う、表示装置1に対して+Z方向の位置で固定される。撮影手段5の撮影中心51は、表示装置1の中心11と一致し、理想的には第1視点位置43と第2視点位置44との中間に位置することが望ましい。
【0059】
図2は、第1の実施の形態の検査原理を示す図であり、同図(A)は表示装置で表示する検査パターンの一例を示す模式図であり、同図(B)は撮影手段で得られる検査画像の一例を示す模式図である。
【0060】
図2(A)に示すように、検査パターン7は、例えば第1視点用の第1のパターン7Aと第2視点用の第2のパターン7Bとから構成される。
【0061】
第1のパターン7A及び第2のパターン7Bは、それぞれのパターン全域が所定の色または所定の階調値に設定されたものであり、第1のパターン7Aと第2のパターン7Bとは色または階調値が異なるものとする。例えば第1のパターン7Aを階調値が最大値である全白とし、第2のパターン7Bを階調値が最小値である全黒に設定する。または、第1のパターン7Aを全赤とし、第2のパターン7Bを全青とする等、異なった色に設定してもよい。
【0062】
検査パターン7は、図2(A)の左右方向に隣接して2つのパターンを表示させる形式だけでなく、上下方向に隣接して2つのパターンを表示させる形式、視点数が3以上である場合は該視点数に応じて左右方向または上下方向に隣接して複数のパターンを表示させる形式、上記第1のパターンと第2のパターンが別々に分割された形式等、表示装置1に応じて様々な形式を用いてもよい。
【0063】
図2(B)は、表示パネル2と光学手段3とに相対的な傾きまたは水平方向の位置ずれがあるとき、図2(A)に示した検査パターン7を表示装置1に表示したときの表示画像、すなわち撮影手段5で撮影した画像(検査画像73)の一例を示している。
【0064】
上述したように検査パターン7の第1のパターン7Aと第2のパターン7Bとは異なる色または異なる階調値であるため、検査画像73には、第1のパターン7Aに対応した第1の画像領域75と第2のパターン7Bに対応した第2の画像領域76とが存在し、それらの境界に境界線分74が発生する。この境界線分74の中心は、表示パネル2と光学手段3の位置ずれ量に応じて、検査画像中心71からΔxだけずれた位置に移動する。
【0065】
表示パネル2と光学手段3とに位置ずれが全く無い場合、第1視点用画素からの光と第2視点用画素からの光は均等に振り分けられるため、第1の画像領域75と第2の画像領域76の境界線分74の位置Δxは0となる。しかしながら、表示パネル2に対して光学手段3が位置ずれを起こしている場合、第1視点用画素からの光と第2視点用画素からの光は、位置ずれ量に応じて第1の画像領域75と第2の画像領域76とに振り分けられるため、検査画像中心71からずれた位置Δxに境界線分74が現れる。
【0066】
また、表示パネル2に対して光学手段3が傾いて固定されている場合、すなわち回転ずれを起こしている場合、第1視点用画素からの光と第2視点用画素からの光は回転ずれ量に応じて第1の画像領域75と第2の画像領域76とに振り分けられるため、検査画像7には垂辺に対して傾きを有する境界線分74が発生する。すなわち、図2に示すように、検査画像73には、表示パネル2と光学手段3の位置関係に応じて、傾きθ及び位置(ずれ)Δxを有する境界線分74が現れる。
【0067】
したがって、表示装置1に検査パターン7を表示させ、表示装置1の表示面を撮影手段5で撮影し、撮影手段5で得られた検査画像73の境界線分74の傾きθ及び位置Δxを検出することで、表示パネル2と光学手段3との相対的な位置精度を検出できる。
【0068】
なお、本実施形態では、表示装置1に2つの視点用の画素を備える例を示したが、表示装置1が多視点用の画素を備えている場合、レンチキュラレンズ3の各シリンドリカルレンズ31は、第1視点用画素41〜N視点用画素(Nは2以上の自然数)から成る画素群毎に対応して配置されていればよい。表示装置1が多視点用の画素を備えている場合、Nが偶数の場合と奇数の場合とでは、検出対象となる境界線分が異なる。以下、この点について図3及び図4を用いて説明する。
【0069】
図3は、N視点用の画素を備えた表示装置から得られる、Nが偶数(N=4)である場合の検査画像の一例を示す模式図である。
【0070】
図3(A)は、検査パターン7として、第1視点用画素から第(N−1)視点用画素までの奇数番目の視点用画素に第1のパターン(ここでは全白)を表示させ、第2視点用画素から第N視点用画素までの偶数番目の視点用画素に第1のパターンとは異なる色または階調値を有する第2のパターン(ここでは全黒)を表示させたときの検査画像73の一例を示している。
【0071】
図3(A)に示す検査画像73には、第1の視点用画素に対応して第1のパターンが表示された第1の画像領域81が存在し、第2視点用画素に対応して第2のパターンが表示された第2の画像領域82が存在し、第3視点用画素に対応して第1のパターンが表示された第3の画像領域83が存在し、第4視点用画素に対応して第2のパターンが表示された第4の画像領域84が存在する。
【0072】
上述したように、奇数番目の視点用画素と偶数番目の視点用画素とでは表示する色または階調値は異なるため、図3(A)に示す検査画像73には、各視点用画素間で境界線分が現れる。
【0073】
この場合、検査画像73中心付近の境界線分87を複数の境界線分の代表値に用いて、該境界線分87の傾きθ及び位置Δxを検出することで、表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度を取得すればよい。なお、図3(A)では2つのパターンを用いて境界線分を発生させる例を示したが、第1から第Nまでの各視点用画素には、色または階調値が異なる最大でN通りのパターンを表示させてもよい。すなわち、隣接する視点用画素で表示するパターンの色または階調値が異なっていれば、検査パターンにはどのような画像を用いてもよい。
【0074】
図3(B)は、第1視点用画素から第(N/2)視点画素までを第1の視点グループとして、第1のパターン(ここでは全白)を表示させ、第(N/2+1)視点用画素から第N視点用画素までを第2の視点グループとして第2のパターン(ここでは全黒)を表示させたときの検査画像73の一例を示している。
【0075】
この検査パターンにより、図3(B)に示す検査画像73には、第1の視点グループに対応して第1のパターンが表示された第1の画像領域85と、第2の視点グループに対応して第2のパターンが表示された第2の画像領域86とが現れる。この場合は、各画像領域間の境界線分87の傾きθ及び位置Δxを検出すればよい。
【0076】
このような検査パターンを用いれば、多視点用画素を備える構成でも境界線分の傾きθ及び位置Δxを容易に求めることが可能であり、図2(B)に示した検査画像と同様に境界線分87が得られるため、該境界線分87の傾きθ及び位置Δxの検出アルゴリズムを共通化できるメリットがある。
【0077】
図4は、N視点用の画素を備えた表示装置から得られる、Nが奇数(N=5)である場合の検査画像の一例を示す模式図である。
【0078】
図4(A)は、検査パターン7として、第1視点用画素から第N視点用画素までの奇数番目の視点用画素に第1のパターン(ここでは全黒)を表示させ、第2視点用画素から第(N−1)視点用画素までの偶数番目の視点用画素に第1のパターンとは異なる色または階調値を有する第2のパターン(ここでは全白)を表示させたときの検査画像73の一例を示している。
【0079】
図4(A)に示す検査画像73には、第1の視点用画素に対応して第1のパターンが表示された第1の画像領域91が存在し、第2視点用画素に対応して第2のパターンが表示された第2の画像領域92が存在し、第3視点用画素に対応して第1のパターンが表示された第3の画像領域93が存在し、第4視点用画素に対応して第2のパターンが表示された第4の画像領域94が存在し、第5視点用画素に対応して第1のパターンが表示された第5の画像領域95が存在する。
【0080】
上述したように、奇数番目の視点用画素と偶数番目の視点用画素とでは表示するパターンの色または階調値は異なるため、図4(A)に示す検査画像73には、各視点用画素間で境界線分が現れる。
【0081】
この場合、検査画像73の中心に近い境界線分88及び境界線分89を、複数の境界線分の代表値に用いて、境界線分88及び境界線分89の傾きθ及び位置Δxをそれぞれ検出し、その平均値を算出すればよい。なお、図4(A)では2つのパターンを用いて境界線分を発生させる例を示したが、第1から第Nまでの各視点用画素には、色または階調値が異なる最大でN通りのパターンを表示させてもよい。すなわち、隣接する視点用画素で表示するパターンの色または階調値が異なっていれば、検査パターンはどのような画像でもよい。但し、Nが奇数の場合は、Δx=0が成立しない点に留意する必要がある。
【0082】
図4(B)は、第((N+1)/2)視点用画素に、第1の視点グループとして第1のパターン(ここでは全黒)を表示させ、それ以外の視点用画素に、第2の視点グループとして第2のパターン(ここでは全白)を表示させたときの検査画像73を示している。
【0083】
この検査パターンにより、図4(B)に示す検査画像73には、第1の視点グループに対応して第1のパターンが表示された第1の画像領域96及び第3の画像領域98が存在し、第2の視点グループに対応して第2のパターンが表示された第2の画像領域97が存在する。この場合、各画像領域間の境界線分88及び89の傾きθ及び位置Δxをそれぞれ検出し、その平均値を算出すればよい。
【0084】
このような検査パターンを用いれば、表示装置1が複数の視点用画素を備える場合でも、境界線分の傾きθ及び位置Δxを容易に求めることができる。但し、Nが奇数の場合は、Δx=0が成立しない点に留意する必要がある。
【0085】
ここで、表示装置1として、2視点用画素を備える透過型液晶表示パネルを用いる例を図5に示す。
【0086】
図5は、2視点用画素を備える表示装置の一構成例を示す断面図である。
【0087】
図5に示す表示装置1の表示パネル2は、バックライト28、第1光学フィルム27、第1基板26、液晶層25、第2基板24及び第2光学フィルム23を有する構成である。
【0088】
第1基板26は、TFT等のスイッチング素子を含む複数の画素が設けられ、第1視点用画素41及び第2視点用画素42がX方向8に交互に配置された構成である。第2基板24には、ストライプ状に配置された赤(R)、緑(G)、青(B)の複数のカラーフィルタが設けられている。
【0089】
第1光学フィルム27及び第2光学フィルム23は、偏光板または補償板であり、第1光学フィルム27は第1基板26に貼付され、第2光学フィルム23は第2基板24に貼付されている。
【0090】
表示パネル2は、液晶表示素子以外の表示素子、例えば有機EL、無機EL、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッション素子、CRT等、様々な表示素子を用いてもよい。表示パネル2の駆動方法は、TFT等を用いたアクティブマトリクス方式でもよく、パッシブマトリクス方式でもよい。
【0091】
光学手段3には、上述したレンチキュラレンズ3が用いられる。光学手段3は、1対の第1視点用画素41及び第2視点用画素42から成る画素群に対応して1つのシリンドリカルレンズ31が位置するように、表示パネル2に対して接着層22を介して固定されている。
【0092】
なお、光学手段3には、レンチキュラレンズ3だけでなく、フライアイレンズ、パララックスバリア、プリズムシート等の光を分離する様々な光学素子を用いてもよい。また、光学手段3には、例えば液晶を用いたGRIN(Gradient Index)レンズ、レンズ効果を有する凹凸基板と液晶分子とを組み合わせた液晶レンズ、液晶を用いたスイッチングパララックスバリア等を用いることもできる。
【0093】
光学手段3にレンズ系素子を用いる場合、該光学手段3は表示パネル2の表示面側(+Z方向)に配置される。光学手段3にバリア系素子を用いる場合、該光学手段3は表示パネル2の表示面側(+Z方向)または裏面側(−Z方向)のどちらにも配置可能である。また、光学手段3には、バックライトから発せられた光を左右の眼に時分割に振り分ける光学素子を複数有する光学フィルム等を用いてもよい。その場合、該光学フィルムは表示パネル2の裏面側(−Z方向)に配置すればよい。これらの素子を光学手段3として用いても、上述した検査画像73の境界線分の傾きθ及び位置Δxを検出することで、表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度を取得できる。
【0094】
なお、上記説明では、第1のパターン7A及び第2のパターン7Bを、各々のパターン全域で同一の色または階調値に設定する例を示したが、第1のパターン7A及び第2のパターン7Bには、例えば任意の方向に色や階調値が変化するグラデーションパターンを用いてもよく、該パターン内に異なる画像を含む等、様々な画像を用いてもよい。すなわち、検査画像73から境界線分74を抽出できれば、検査パターン7には、どのような画像を用いてもよい。
【0095】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、検査画像73の境界線分の傾きθ及び位置Δxを検出することで、表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度を取得できる。また、撮影手段5には一般的なビデオカメラやデジタルカメラ等を用いればよく、複数のカメラや特殊なカメラを用いる必要がない。そのため、検査装置のコストが上昇することがない。さらに、境界線分73の傾きθや位置Δxは、複雑な処理を必要とすることなく、容易に求めることができるため、表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度を高速に(短い処理時間で)検出できる。したがって、表示パネルと光学手段との相対的な位置精度を低コストかつ高速に検出できる。
【0096】
以下、第1の実施の形態の実施例について図面を用いて説明する。なお、以下に示す第1実施例〜第3実施例では、表示装置1が2視点用画素を備える例で説明するが、視点数が3以上の構成にも適用可能である。
(第1実施例)
図6は第1実施例の検査方法で得られる検査画像の一例を示す模式図であり、図7は図6に示した検査画像から境界線分の傾きθ及び位置Δxを抽出するための処理手順を示すフローチャートである。
【0097】
図6は、第1視点用画素で全白の第1のパターンを表示し、第2視点用画素で全黒の第2のパターンを表示したときに撮影手段5で得られる検査画像73と、検査画像73から境界線分74の傾きθ及び位置Δxの算出過程で生成される各種のデータとを示している。なお、検査画像73の第1の画像領域75及び第2の画像領域76の輝度の強度は、第1の画像領域75>第2の画像領域76の関係にあるものとする。
【0098】
図6に示す検査画像73において、左上の画像端を基点72として上記XY座標系を適用すると、検査画像73上の各位置は座標(x,y)で表すことができる。ここで、検査画像中心71の座標を(x.cener,y.center)と定義し、基点72から最も離れた右下画像端の座標を(x.max,y.max)と定義する。基点72の座標は(0,0)である。
【0099】
表示装置1が備える画像メモリ(不図示)には、検査画像73の画像データとして、座標位置に対応する輝度LY(x,y)の値が格納されている。図6に示すLY.topは、x=0〜x.maxの輝度LY(x,0)の分布を示し、LY.bottomは、x=0〜x.maxの輝度LY(x,y.max)の分布を示している。また、図6では、LY.topにおける変位点のx座標値をx.topと定義し、LY.bottomにおける変位点のx座標値をx.bottomと定義している。
【0100】
次に、境界線分74の傾きθ及び位置Δxの抽出手順について図7を用いて説明する。
【0101】
図7に示すように、境界線分74の傾きθ及び位置Δxを抽出処理では、まず表示装置1に検査パターン7を表示させ(ステップS1000)、表示装置1の表示面を撮影手段5で撮影し、撮影手段5から境界線分74を含む検査画像73の画像データを取得する(ステップS1010)。
【0102】
次に、LY.topにおける変位点x.topを確定するため、検査画像73の画像データから輝度LY(x,0)の値をx=0〜x.maxまで検索する(x方向のサーチ)。LY.topにおけるx方向のサーチ処理では、まず第1引数から第5引数に対して「0」,「0」,「x.max」,「1」,「1」の値を順次代入する。このLY.topにおけるx方向のサーチ処理について図8を用いて説明する。
【0103】
図8に示すように、LY.topにおけるx方向のサーチ処理では、まず第1引数〜第5引数に対して、引数名「pos」,「start」,「end」,「step」,「target」を割り当てる。引数名の割り当てが終了すると、サーチ範囲を計数するためのカウンタiにサーチの開始座標を示す「start」の値をセットする(ステップS2000)。
【0104】
次に、カウンタiの値とサーチの終了座標を示す「end」の値とを比較し(ステップS2010)、カウンタiの値が「end」の値以上である場合、サーチが失敗したと判定して、戻り値Resultに「エラー」を代入し、x方向のサーチを終了する。
【0105】
カウンタiの値が「end」の値未満である場合、ステップS2020の処理へ移行してy方向のサーチを続行する。
【0106】
ステップS2020では、カウンタiの値にサーチ間隔を示す「step」の値を加算する。そして、LY.topにおける変位点を特定するため、LY(i,pos)とLY(i−step,pos)とを比較し(ステップS2030)、それらの値が一致する場合は、ステップS2010へ戻ってさらにサーチを続行する。
【0107】
LY(i,pos)とLY(i−step,pos)とが一致しない場合は、LY.topにおけるx方向の変位点を検出したと判定し、ステップS2040の処理へ移行する。
【0108】
ステップS2040では、変位点を計数するためのカウンタ「cnt」の値に「1」を加算する。そして、変位点を特定するために、カウンタ「cnt」の値と変位点数を示す「target」とを比較し(ステップS2050)、それらの値が一致しない場合は、ステップS2010の処理へ戻ってx方向のサーチを続行する。「cnt」と「target」の値が一致した場合は、所定数の変位点を検出したと判定し、カウンタiの値を戻り値Resultに代入して、x方向のサーチ処理を終了する。
【0109】
ここで、「target」は、例えば図2(B)や図3(B)で示した境界線分が1本しか存在しない検査画像73の場合は、target=1に設定すればよい。また、図3(A)で示したN視点(偶数)用の表示装置から得られる検査画像73の場合はtarget=N/2に設定すればよい。また、図4(B)に示したN視点(奇数)用の表示装置から得られる検査画像73の場合はtarget=1かつtarget=2を設定し、図4(A)に示したN視点(奇数)用の表示装置から得られる検査画像73の場合はtarget=(N−1)/2かつtarget=(N+1)/2に設定すればよい。
【0110】
図7に示すステップ1040の処理でx方向のサーチ処理が終了すると、戻り値Resultをx.topへ代入し、LY.topにおける変位点のx座標値x.topが確定する。
【0111】
LY.topにおける変位点のx座標値x.topが確定しない場合、すなわち検査画像7からLY.topにおける変位点が検出できない場合、ステップS1041にて戻り値Reslutがエラーであると判定されて異常終了する。ステップS1041にて戻り値Reslutがエラーでないと判定された場合、ステップS1050に移行して、LY.bottomにおける変位点x.bottomを確定するため、輝度LY(x,y.max)の値をx=0〜x.maxまで検索する(x方向のサーチ)。
【0112】
LY.bottomにおけるx方向のサーチ処理では、まず第1引数から第5引数に対して「y.max」,「x.max」,「0」,「1」,「1」の値を順次代入する。そして、ステップS1040と同様の処理を実行することでサーチ結果が代入された戻り値Resultが「x.bottom」に代入されることで、LY.bottomにおける変位点のx座標値x.bottomが確定する。
【0113】
LY.bottomにおける変位点のx座標値x.bottomが確定しない場合、すなわち検査画像7からLY.bottomにおける変位点が検出できない場合、ステップS1051にて戻り値Reslutがエラーであると判定されて異常終了する。ステップS1051にて戻り値Reslutがエラーでないと判定された場合、ステップS1060に移行し、ステップS1040の処理で確定したx.top及びステップS1050の処理で確定したx.bottomの値を用いて境界線分74の傾きθ及び位置Δxを算出する。
【0114】
境界線分74の位置Δxは、Δx=(x.top+x.bottom)/2−x.centerで算出できる。また、境界線分74の傾きθは、θ=arctan(y.max/(x.top−x.bottom)×180/πで算出できる。
【0115】
上述したように、境界線分74の位置Δxが+(プラス)の場合、該境界線分74は検査画像中心71の右側すなわち+X方向に位置し、境界線分74の位置Δxが−(マイナス)の場合、該境界線分74は検査画像中心71の左側すなわち−X方向に位置する。
【0116】
また、境界線分74の傾きθが+(プラス)の場合、該境界線分74は検査画像中心71を含むY軸方向に対して時計方向に傾き、境界線分74の傾きθが−(マイナス)の場合、該境界線分74は反時計方向に傾いている。すなわち、境界線分74の位置Δx及び傾きθの符号(+または−)により、表示パネル2に対する光学手段3の位置ずれ方向や回転方向を検出できる。
【0117】
ところで、境界線分74の位置Δxや傾きθの値は、撮影手段5に用いるCCD等の光電変換素子の解像度や撮影レンズ倍率、検査画像7を表示するディスプレイの解像度や画角サイズ等に依存する。すなわち、境界線分74の位置Δxの値や傾きθの値をそのまま用いても、表示装置1の表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度は得られない。そのため、表示装置1の表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度は、境界線分74の位置Δxや傾きθの値を用いて以下に示す方法で求める。
【0118】
例えば、予め位置精度が異なる表示装置1を複数用意しておき、それぞれの検査画像を取得してΔxを検出し、表示装置1毎の表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度とΔxとの関係を求める方法がある。このようにして得られた位置Δxと実際の位置精度との関係を図9(A)に示す。
【0119】
図9は、境界線分の位置Δx及び傾きθから表示パネルと光学手段の相対的な位置精度を求める方法を示すグラフである。
【0120】
図9(A)に示すように、位置Δxと実際の位置精度とは概ね一次関数で表すことができる。したがって、例えば検査対象の表示装置1の検査画像73から位置Δx1を算出し、図9(B)に示すように該Δx1に所定の係数を乗算すれば、検査対象の表示装置1の表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度を求めることができる。
【0121】
また、予め位置精度が異なる表示装置1を複数用意しておき、それぞれの検査画像を取得してΔxを検出し、例えば図3(A)に示した画像において、画像82または画像83を用いてX方向の画像の幅に対する位置Δxの割合を求め、1つのシリンドリカルレンズに対応する4つの画素のうち、X方向の画素ピッチに上記割合を乗算することで、実際の位置精度に相当する量を算出する方法もある。これらの方法を用いて、表示パネル2と光学手段3の相対的なX方向の位置精度を求めればよい。
【0122】
同様に、境界線分74の傾きθついても、上記x.top及びx.bottomの値に対して上記所定の係数を乗算することで、表示パネル2に対する光学手段3の実際の傾きθを求めるができる。したがって、境界線分74の位置Δx及び傾きθの値より、表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度を検出できる。
【0123】
なお、第1実施例では、境界線分74の位置Δx及び傾きθを定量的に算出し、位置Δx及び傾きθの値から表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度を求める方法を示したが、表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度は、目視で判定することも可能である。例えば、境界線分74を挟んで隣接する第1の画像領域75と第2の画像領域76の配置関係を比較すれば、左右の画像が視点によって入れ替わる逆視現象の発生有無を簡易に判別できる。
【0124】
また、境界線分74の傾きθと位置Δxの許容できる範囲を示す図形を限度見本として検査画像7と同じスケールの透明なシート等を印刷しておき、検査対象の検査画像73と境界線分74の限度見本とを重ね合わせて比較すれば、表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度の良否を目視で簡易に判定できる。
(第2実施例)
図10は、第2実施例の検査方法の処理対象である検査画像の一例を示す模式図である。
【0125】
第2実施例の実装精度検査方法では、第1実施例で示した境界線分74の傾きθ及び位置Δxの抽出手順に、LY.middle及びx.middleを用いた境界線分74の傾きθ及び位置Δxの抽出手順を追加する。
【0126】
LY.middleは、基点72とy.maxのY方向の中間に位置するy.centerにおけるx方向の輝度の分布を示している。第2実施例では、第1実施例で示したx.top及びx.bottomを確定する処理に加えて、第1引数〜第5引数に対して引数名y.center,0,x.max,1,1を付与した後、図8に示した処理を実行することで、LY.middleにおける変位点の座標x.middleも確定する。
【0127】
また、第2実施例では、x.top及びx.bottomを用いて算出したΔxとx.middleとの偏差を求め、境界線分74の直線性を検出する。
【0128】
このように境界線分74の直線性を検出することで、光学手段3の歪みを検出できる。例えば、光学手段3に複数のシリンドリカルレンズ31がX方向に配列されたレンチキュラレンズ3(図1参照)を用いる場合、レンズ主軸がY方向と平行であるか否かを判定できる。
【0129】
表示パネル2にレンチキュラレンズ3を接着固定するとき、不均一な圧力分布を有してレンチキュラレンズ3が接着されると、レンチキュラレンズ3が変形することがある。また、元々レンチキュラレンズ3に光学歪が存在する場合もある。これらの原因により、レンズ主軸がY方向と平行にならず、境界線分74に非線形な傾きが現れることがある。このような場合に本実施例の検査方法は有効である。
【0130】
なお、上記説明では、y.maxの中心であるy.centerにおいてx方向にサーチする処理を追加し、y.centerにおける変位点の座標x.middleを確定する例を示したが、y軸上の複数の位置において、それぞれx方向にサーチする処理を実行し、各y軸上の位置における変位点の座標x.middleを確定し、それらの値とΔxとの偏差を求めれば、境界線分74の直線性をより高い精度で求めることができる。
(第3実施例)
第3実施例の実装精度検査方法は、第1実施例と同様に、表示装置1に第1の視点グループに対応して第1のパターンを表示し、第2の視点グループに対応して第2のパターンを表示して境界線分74の位置Δx及び傾きθを求める第1の工程と、第1の視点グループに対応して第2のパターンを表示し、第2の視点グループに対応して第1のパターンを表示して、境界線分74の位置Δx及び傾きθを求める第2の工程とを有する例である。境界線分74の位置Δx及び傾きθは、各工程で得られた値の平均値を計算することで求める。なお、第2の工程では、必ずしも第1のパターンと第2のパターンとを入れ替えるだけでなく、第1のパターン及び第2のパターンに全く異なるパターンを設定してもよい。
【0131】
図11は、第3実施例の検査方法の処理対象である検査画像の一例を示す模式図である。
【0132】
図11(A)は、検査パターン7として、第1視点用の第1のパターンとして全白を表示し、第2視点用の第2のパターンとして全黒を表示したときに得られる第1の検査画像73の一例を示している。図11(B)は、図11(A)に示した検査パターン7の各視点用のパターンを入れ替えたときに得られる第2の検査画像73の一例を示している。
【0133】
第3実施例では、第1実施例と同様に、第1の検査画像から境界線分74の位置Δx1及び傾きΔθ1を算出し、第2の検査画像から境界線分74の位置Δx2及び傾きΔθ2を算出する。そして、これらの平均値Δx=(Δx1+Δx2)/2、θ=(θ1+θ2)/2を用いて表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度を検出する。
【0134】
第3実施例の検査方法によれば、表示するパターンを入れ替えて2つの検査画像を取得し、各々の境界線分74の位置Δx及び傾きΔθの平均値を求めることで、表示装置1のコントラスト等の光学特性や撮影手段の光感度等の電気光学特性に起因する、境界線分74の位置Δx及び傾きΔθの検出誤差を低減できる。
【0135】
なお、検査パターン7として階調値が異なる2つのパターンを用いる例で説明したが、本実施例は検査パターン7として色が異なる2つのパターンを用いる場合にも適用できる。以下、検査パターン7として色が異なる2つのパターンを用いる変形例について説明する。
【0136】
図12は、第3実施例の変形例で検査対象となる検査画像の一例を示す模式図である。
【0137】
図12(A)は、検査パターン7として、第1視点用の第1のパターンとして青(B)を表示し、第2視点用の第2のパターンとして赤(R)を表示したときに得られる第1の検査画像73の一例を示している。図12(B)は、図12(A)に示した検査パターン7の各視点用のパターンを入れ替えたときに得られる第2の検査画像73の一例を示している。
【0138】
上述したように、表示装置が備える不図示の画像メモリには、検査画像73の画像データとして、座標位置に対応するRGBの色毎の輝度RGB(x,y)の値が格納されている。第3実施例の変形例では、このRGB(x,y)の値を用いて、赤(R)の輝度分布及び青(B)の輝度分布をサーチして変位点を検出する。
【0139】
まず、第1の検査画像を用いて、y.topにおける赤(R)の輝度分布を示すR.topから、その変位点であるR1.topをx方向のサーチ処理により確定し、y.topにおける青(B)の輝度分布を示すB.topから、その変位点であるB1.topをx方向のサーチ処理により確定する。
【0140】
また、第1の検査画像を用いて、y.bottomにおける赤(R)の輝度分布を示すR.Bottomから、その変位点であるR1.bottomをx方向のサーチ処理により確定し、y.bottomにおける青(B)の輝度分布を示すB.Bottomから、その変位点であるB1.bottomをx方向のサーチ処理により確定する。
【0141】
そして、得られたR1.topまたはB1.topのいずれか一方、あるいは両者の平均値x1.topと、R1.bottomまたはB1.bottomのいずれか一方、あるいは両者の平均値x1.bottomとを用いて、境界線分74の位置Δx1及び傾きΔθ1を算出する。
【0142】
同様に、第2の検査画像を用いて境界線分74の位置Δx2及び傾きΔθ2を算出し、これらの平均値Δx=(Δx1+Δx2)/2、θ=(θ1+θ2)/2を算出し、該Δx及びθの値を用いて表示パネル2と光学手段の相対的な位置精度を算出する。
【0143】
本変形例のように、検査パターン7として色が異なる2つのパターンを用いることで、境界線分74の位置Δx及び傾きΔθを安定して得られる効果がある。例えば、表示装置1の表面には外部の照明光や遮蔽物の影等が映り込むことがあるため、検査パターン7として階調値が異なる2つのパターンを用いると、照明光や遮蔽物の影等が検査画像73に映り込むことで、境界線分74の位置Δxや傾きΔθを誤検出する恐れがある。照明光や遮蔽物の影等による影響は、階調値に基づいた輝度情報の変位点を検出するよりも、RGB値に基づいた色度情報の変位点を検出する方が受け難いため、境界線分74を安定して検出できる。そのため、検査画像73から境界線分74の位置Δx及び傾きΔθを安定して得ることができる。
【0144】
なお、本実施形態では、表示装置1と撮影手段5とが観察者により立体視認できる距離で配置される例を示しているが、このような構成では、表示装置1と撮影手段5との距離、または表示装置1や撮影手段5の仕様によっては、境界線分74が不明瞭になるケースが稀に起きる。その場合、輝度の変位点が検出できずに位置Δxや傾きΔθを抽出できないことがある。また、境界線分74の位置Δxや傾きΔθが抽出できても、その抽出した値と実際の表示パネルと光学手段の相対的な位置精度との関係が大きく異なってしまうことがある。
【0145】
本変形例で示した検査パターン7に異なる色を用いる手法では、不明瞭な境界線分74でもRGB(x、y)の変位点を高い精度で検出できる。さらに、検査パターン7の各視点用のパターンを入れ替えて2つの検査画像を取得し、それら2つの検査画像から得られる境界線分74の位置Δx及び傾きΔθの値の平均化するため、境界線分74の位置Δx及び傾きθの検出精度が向上する。
【0146】
さらに、色相が対照な赤(R)と青(B)を検査パターン7として用いることで、検査画像内の領域の境界がより強調されて明確になるため、境界線分74を容易に判別できる。そのため、目視で検査する場合でも検査時間を短縮できる。さらに、検査パターン7の各視点用のパターンを入れ替えて2つの検査画像を提示することで、特定の色情報に基づく観察者への心理的な影響を打ち消すことができる。例えば、上述した不明瞭な境界線分74は、青(B)と赤(R)が混色したマゼンダ(M)として認識される。この場合、マゼンダ(M)は色相が近い赤(R)と同化するため、観察者には赤(R)の領域がより広く感じてしまう。また、検査パターン73の周辺が黒色の場合、観察者には、黒色に明度が近い青(B)の領域が実際の点灯面積よりも広く感じてしまう。このような色による観察者への影響を、2つの検査画像を提示することで打ち消すことができると考えられる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは異なり、目視で立体視認できない撮影距離で取得した検査画像を用いる検査方法について説明する。
【0147】
図13は、表示装置1の光学手段3としてレンチキュラレンズを用いたときに形成される立体視域の一例を示す模式図である。
【0148】
表示パネル2には、X軸方向8に第1視点用画素41L1〜41L3(表示装置1の左側)、41C1〜41C3(表示装置1の中央)及び41R1〜41R3(表示装置1の右側)と、第2視点用画素42L1〜42L3(表示装置1の左側)、42C1〜42C2(表示装置1の中央)及び42R1〜42R3(表示装置1の右側)とが順次配置されている。
【0149】
また、レンチキュラレンズ3は、複数のシリンドリカルレンズ31がX軸方向8に所定のピッチで配列された構成である。シリンドリカルレンズ31L(表示装置1の左側)には、第1視点用画素41L1〜41L3と第2視点用画素42L1〜42L3とが対応し、シリンドリカルレンズ31C(表示装置1の中央)には第1視点用画素41C1〜41C3と第2視点用画素42C1〜42C2とが対応し、シリンドリカルレンズ31R(表示装置1の右側)には第1視点用画素41R1〜41R3と第2視点用画素42R1〜42R3とが対応している。
【0150】
図13に示す1L1,2L1,3L1は、第1視点用画素41L1,41L2,41L3から出射されシリンドリカルレンズ31Lで屈折された光の光路を示し、1L2,2L2,3L2は、第2視点用画素42L1,42L2,42L3から出射されシリンドリカルレンズ31Lで屈折された光の光路を示している。
【0151】
また、図13に示す1C1,2C1,3C1は、第1視点用画素41C1,41C2,41C3から出射されシリンドリカルレンズ31Cで屈折された光の光路を示し、1C2,2C2は、第2視点用画素42C1,42C2から出射されシリンドリカルレンズ31Cで屈折された光の光路を示している。
【0152】
同様に、図13に示す1R1,2R1,3R1は、第1視点用画素41R1,41R2,41R3から出射されシリンドリカルレンズ31Rで屈折された光の光路を示し、1R2,2R2,3R2は、第2視点用画素42R1,42R2,42R3から出射されシリンドリカルレンズ31Rで屈折された光の光路を示している。
【0153】
ここで、光路上を進行する実際の光は、これらの光路に対して時計回りまたは反時計回りに所定の角度の幅を有している。1L1、1C1及び1R1が交わる点を含む領域に第1視点用画像領域47が形成され、1L2、1C2及び1R2が交わる点を含む領域に第2視点用画像領域48が形成される。これら第1視点(左目)用画像領域47及び第2視点(右目)用画像領域48が立体視できる立体視認範囲となる。
【0154】
立体視認範囲が最大となる最適立体視認距離をDopとし、左右眼のY軸方向10と、第1視点用画像領域47及び第2視点用画像領域48との交点に基づいて、最大立体視認距離をDmax、最小立体視認距離をDminとする。49は各視点間のピッチを示しており、以降、視点ピッチと称する。
【0155】
ここで、シリンドリカルレンズ31Lに注目すると、第1視点用画像形成領域47と第2視点用画像形成領域48の形成に寄与する光は、画素41L1及42L1から出射された光1L1,1L2だけである。これを一次光と定義する。また、画素41L1,42L1の隣接画素である画素41L2,42L2から出射され、シリンドリカルレンズ31Lで屈折された光2L1,2L2を二次光と定義する。同様に、画素41L1,42L1の第2の隣接画素である画素41L3,42L3から出射され、シリンドリカルレンズ31Lで屈折された光3L1,3L2を三次光と定義する。
【0156】
シリンドリカルレンズ31C,31Rに関連する光についても、同様に一次光が第1視点と第2視点のそれぞれ画像形成領域47,48の形成に寄与する。
【0157】
図13に示すように、視認距離を最適立体視認距離Dminよりも短くすると、表示装置1の左右側から出射される二次光や三次光等の高次光の影響が顕在化することが分かる。
【0158】
図14は、第2の実施の形態の検査方法で用いる表示装置1及び撮影手段5の配置例を示す模式図である。図14(A)は最適立体視認距離Dminに対して十分に短い距離D1で検査画像を撮影するときの様子を示し、図14(B)は最適立体視認距離Dmin〜Dmax内の距離D2で検査画像を撮影するときの様子を示している。上述した第1の実施の形態は図14(B)に相当する。
【0159】
図15は、図14(A)に示した撮影手段で得られた検査画像の一例を示す模式図である。ここで、表示装置1の表示パネル2と光学手段3の位置精度は第1の実施の形態と同じとする。したがって、図14(B)に示す条件で撮影して得られた検査画像は図2(B)と同じである。
【0160】
図15と図2(B)とを比較すると、第1の画像領域と第2の画像領域とがX軸方向で入れ替わっているのが分かる。また、境界線分の傾きθはY軸方向に対して回転方向が反転している。さらに、境界線分74を形成する第1の画像領域76と第2の画像領域75のX軸方向の幅Pwが狭くなり、これら画像の外側に、それぞれ第2の画像領域75と第1の画像領域76が現れている。これは、幅Pwが上記視点ピッチに依存した大きさであり、撮影距離D1では短撮像距離のため視点ピッチが小さくなることに起因する。
【0161】
このような撮影距離に依存した検査画像の変化について、図14(A)及び図14(B)を用いて説明する。
【0162】
まず、図14(B)では撮影距離D2が最適立体視認距離Dmin〜Dmaxの範囲であるため、撮影手段5の中心から光学手段であるレンチキュラレンズ3の各シリンドリカルレンズの主軸に対してα2,β2の角度を有する線分を引くと、これらの線分に対してレンチキュラレンズの屈折率をスネル法則に適用した屈折角度と、レンズと表示パネル2に配置された各視点用画素とのZ方向の距離に基づいて、対応する画素を割り出すことができる。撮影手段5には、この対応する画素に入力された検査パターンに対応する所定の検査画像が入力される。同様に、表示パネル2のXY平面全体に対してα2,β2以外の角度を有する線分を適用し、対応する画素を割り出すことで、表示画面全体で表示される検査画像を取得できる。図14(B)に示す撮影距離D2では、基本的に図13に示した一次光が支配的となるため、目視した画像と同様に、図2(B)に示した検査画像が得られる。
【0163】
それに対して、図14(A)に示す撮影距離D1では、撮影手段5の中心から各シリンドリカルレンズの主軸に対してα1,β1の角度を有する線分を引くことで、これらの線分に対して対応する画素を割り出すことができる。撮影手段5には、この対応する画素に入力された検査パターンに対応する所定の検査画像が入力される。
【0164】
撮影距離がD1の場合、任意の画素からの二次光や三次光等の高次光が検査画像に寄与するため、図2(B)と同様の検査画像にはならず、例えば撮影距離D1がDminの半分以下の距離では、図15に示したような検査画像が得られる。この撮影距離Dに対する検査画像73の境界線分74の傾きθの変化を図16に示す。
【0165】
図16は、撮影距離に対する検査画像の境界線分の傾きθの変化を示すグラフである。図16において、横軸は撮影距離Dを示し、縦軸は表示装置1の表示画像を撮影した検査画像73における境界線分74の傾きθを示している。
【0166】
図16に示すように、傾きθは、撮影距離DがA〜Bの領域で大きく変化することが分かる。この領域は高次光から一次光への遷移領域であり、安定した検査画像を取得するには困難な領域である。傾きθの撮影距離Dに対する変化量、すなわち微分係数が最小となる撮影距離Dは、大きく分けて2つ存在する。1つは、検査画像が主として高次光で形成される第1の距離54であり、2つめは、検査画像が一次光で形成される第2の距離55である。第1の実施の形態は、第2の距離55で得られる検査画像を用いた例であり、第2の実施の形態は、第1の距離54で得られる検査画像を用いる例である。
【0167】
第1の距離54は、撮影距離Dに対する傾きθの微分係数が最小となる点に設定することが望ましい。図16に示す撮影距離DがAよりも短い距離では、撮影距離に対する傾きθの微分係数の変動が±5%以内で収束する範囲内で任意の撮影距離に設定すればよい。
【0168】
このように撮影距離に設定すると、傾きθの微分係数の変動が±5%以内に収まるため、境界線分74に与える外乱の影響が少なく、境界線分74の傾きθを安定して取得できるメリットがある。このことは第1の実施の形態でも同様である。
【0169】
さらに、撮影距離が短いことで、第1の実施の形態と比較して検査画像の画質が向上するため、このことも境界線分74の傾きθ及び位置Δxの検出精度の向上に寄与する。
【0170】
なお、第1の実施の形態で説明したように、境界線分74の位置Δxや傾きθの値は、撮影手段5に用いるCCD等の光電変換素子の解像度や撮影レンズ倍率、並びに検査画像7を表示するディスプレイの解像度や画角サイズ等に依存する。そのため、第1の実施の形態では、境界線分74の位置Δxや傾きθの値を用いて表示装置1の表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度を求める具体的な手法を示した。
【0171】
第2の実施の形態では、撮影距離Dに応じて光学手段3で拡大される倍率が変化することを利用し、この倍率の逆数を第1の実施の形態で示した方法に適用することで、撮影距離Dに応じた表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度を求めればよい。
【0172】
以下、第2の実施の形態の検査方法の実施例について図面を用いて説明する。
(第4実施例)
第4実施例では、表示装置1に対する撮影手段5の撮影距離DをDmin未満の第2の距離54に設定することで、検査画像73に境界線分74が3つ以上含まれるときの、境界線分74の傾きθ及び位置Δxの算出方法について説明する。
【0173】
図17は、第4実施例の検査方法で得られる検査画像の一例を示す模式図である。
【0174】
図17は、図15に示した検査画像73に対して、第1実施例と同様の手順(図7及び8)で取得した、第1の境界線分77、第2の境界線分78及び第3の境界線分79、並びに各境界線分の傾きθ1,θ2,θ3及び位置Δx1,Δx2,Δx3を示している。
【0175】
図6に示した境界線分74の傾きθ及び位置Δxは、図17に示す境界線分78の傾きθ2と位置Δx2が対応する。したがって、この傾きθ2と位置Δx2の値を用いて、表示パネル2と光学手段3のX方向の相対的な位置精度を検出できる。この場合、図8に示したx方向のサーチのtarget=2となる。
【0176】
本実施例では、視点ピッチの幅が確認できるため、表示装置1の画角が把握できる。例えば|x2.top−x1.top|や|x3.top−x2.top|、または|x2.bottom−x1.bottom|や|x3.bottom−x2.bottom|の値は視点ピッチに依存する。この値のばらつきが表示装置1により大きい場合や、|x2.top−x1.top|と|x2.bottom−x1.bottom|の大きさが異なる場合、光学手段であるシリンドリカルレンズやパララックスバリアのピッチ精度や光学主軸の位置精度のエラーを検出できる。
【0177】
これは、傾きθ1,θ2,θ3の値の違いをモニタすることでも代用することが可能であり、|θ2−θ1|や|θ2−θ3|の値を検査値として管理することもできる。
【0178】
さらに、LY.middleを求めることで境界線分74の線形性を判定する第2実施例で示した概念を第4実施例に適用することも可能である。第2実施例で示したように、境界線分74の直線性を取得することで、光学手段の歪みを検出することが可能になる。
【0179】
また、光学手段が歪みを有する場合、傾きθ1,θ2,θ3の値が大きく異なる場合がある。そのため、|θ2−θ1|や|θ2−θ3|の値を検査値として管理しておけば、このような光学手段の歪みの検出が可能となる。
【0180】
図17は、異なる第1の画像領域と第2の画像領域の輝度が異なる例を示しているが、第4実施例には、第3実施例の変形例で示したような色が異なる検査パターンを用いる場合にも適用できる。また、第4実施例には、図11に示したように第1のパターンと第2のパターンとを入れ替えて、境界線分74の傾きθ及び位置Δxの平均値を用いる方法も適用できる。これらの方法を適用した場合の効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0181】
また、第4実施例では、視点数が2である場合を例にして説明しているが、視点数が3以上のN視点用の画像を表示する場合にも適用することが可能であり、Nが奇数か偶数かによって処理方法が異なることも含めて第1の実施の形態で説明した内容をそのまま適用できる。
【0182】
上述したように、第2の実施の形態では、立体視が困難な短い撮影距離で得られる検査画像を用いて表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度を求めている。そのため、第2の実施の形態では、第1の実施の形態のように検査画像を視認できないが、第1の実施の形態と同様の効果に加えて、以下のようなメリットを有する。
【0183】
第2の実施の形態では、撮影距離が短いため、検査画像の画質が向上する。検査画像から境界線分74を確実に抽出するには、鮮明な検査画像を得ることが重要である。撮影距離が長くなると、鮮明な画像を得るには高性能なレンズ光学系が必要になるため、検査装置のコストが増大する問題がある。本実施形態では低コストで表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度を求めることができる。
【0184】
また、第2の実施の形態では、検査画像から取得できる情報が増大する。第2の実施の形態では、視点ピッチに相当する幅が短くなることで境界線分の数が増大する。そのため、複数の境界線分の傾きθ、位置Δx及び視点ピッチの情報が得られる。これにより、表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度に加えて、光学手段3のピッチ精度や光学主軸位置等で発生する、歪みを検出できる。
【0185】
さらに、第2の実施の形態では、撮影距離が近くなることによる検査装置を小さくできる。検査装置の構成例については後述する第3の実施の形態で説明するが、第2の実施の形態の検査方法を採用した検査装置は、小型化が可能であるため、低コスト化にも貢献する。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では上記第1実施例〜第4実施例で示した方法を用いる検査装置について説明する。
【0186】
図18は本発明の検査装置の一構成例を示すブロック図である。
【0187】
図18に示すように、検査装置210は、検査対象である表示装置1が設置される検査ステージ200と、表示装置1に検査パターン7を表示させるための画像信号を出力する画像出力回路201と、検査ステージ200に対してZ方向10に設置され、表示装置1の表示面を撮影する検査カメラ202と、検査カメラ202で撮影された検査画像73から境界線分の傾き及び位置を検出する検出回路203と、検出回路203による検査結果を表示するモニタ204とを有する構成である。表示装置1に対する検査カメラ202の撮影距離は、各実施例で説明した距離に設定される。
【0188】
検査ステージ200は、表示装置1の端部を押し当てることで該表示装置1を位置決めするための複数の位置決めピンを備え、表示装置1は、位置決めピンを用いて表示中心11と検査カメラ202のX方向8における撮影中心とが一致するように設置される。なお、位置決めピンは、表示装置1が方向6にずれないよう、表示装置1の少なくとも2辺に設けられている。
【0189】
画像出力回路201は、例えば表示装置1に図2(A)で示した検査パターン7を表示させるための画像信号を生成する信号生成回路と該信号生成回路に動作に必要な電力を供給する電源装置とを備え、表示装置1の第1視点用画素41に第1のパターン7Aを表示させ、第2視点用画素42に第2のパターン7Bを表示させるための画像信号を生成する。なお、検査パターン7では、第1のパターン7Aと第2のパターン7Bの位置を入れ替えて表示させることも可能である。
【0190】
検査カメラ202は、検査画像73を撮影するためのレンズ光学系と、撮影素子であるCCDと、CCDで撮影された画像信号を保持するための画像メモリとを備え、該画像メモリで保持された画像信号が、検査画像73として検出回路203へ出力される。
【0191】
検出回路203は、検査カメラ202で撮影された検査画像73から境界線分74の傾きθ及び位置Δxを抽出する。検出回路203は、CPU及び該CPUの処理で必要な記憶装置を備えた処理装置で実現可能であり、所定のプログラムにしたがって図7及び図8に示した処理を実行し、検査画像73から抽出した境界線分74の傾きθ及び位置Δxの値をモニタ204に表示させる。モニタ204へ表示された境界線分74の傾きθ及び位置Δxの値を、予め定めた値と比較することで、表示装置1が備える表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度を求めることができる。なお、検出回路203は、予め設定した傾きθ及び位置Δxの許容精度の値を格納しておき、該許容精度と検査画像73から抽出した傾きθ及び位置Δxの値とを比較し、比較結果をモニタ204へ出力してもよい。
【0192】
また、第4実施例で示したように、短い撮影距離に設定した場合は、θ1,θ2,θ3やΔx1,Δx2,Δx3の値、光学手段3の不均一な歪量を示す|θ2−θ1|や|θ2−θ3|の値、視点ピッチに相当する|x2.top−x1.top|、|x2.top−x1.top|、|x3.top−x2.top|の値等、所要の検査項目に応じて、検査結果を示す絶対値または判定値をモニタ204へ表示させてもよい。
【0193】
さらに、検出回路203を用いずに、検査カメラ202とモニタ204とを接続し、検査画像73を直接モニタ204へ表示してもよい。その場合、モニタ204に表示された境界線分74から、表示装置1が備える表示パネル2と光学手段3の相対的な位置精度を目視により判定すればよい。
【0194】
表示装置1に対する検査カメラ202の撮影距離は、上述した実施例で示した距離に設定されるが、第4実施例で示した撮影距離に設定すれば、検査装置210の小型化、省スペース化が可能であり、高価な検査カメラ202を用いなくても高画質な検査画像を取得できるため検査装置のコストを低減できる。
【0195】
なお、第3の実施の形態で示す検査装置201は、表示装置1が備える表示パネル2と光学手段3の位置精度を検査する工程だけでなく、表示パネル2上に光学手段3を搭載する工程でも用いることが可能である。例えば接着剤や粘着剤を用いて表示パネル2上に光学手段3を固定する場合、本実施形態の検査装置210を用いて検査画像73から境界線分74の傾きθ及び位置Δxを取得し、その結果に基づいて光学手段3の搭載位置を修正した後、表示パネル2に光学手段3を押圧して接着固定する工程に移行すれば、表示パネル2上に光学手段3を高精度で固定できる。その結果、高品質な表示装置1が得られる。
(第4の実施の形態)
図19は本発明の検査装置の他の構成例を示すブロック図である。
【0196】
図19に示すように、第4の実施の形態の検査装置220は、第3の実施の形態で示した検査装置210に移動手段205を追加した構成である。第4の実施の形態の検査装置220は、図17に示した検査画像73に複数の境界線分が現れる場合に用いて好適な構成である。
【0197】
移動手段205は、表示装置1の表示面との平行を保ちつつ、X軸方向8に検査カメラ202を移動させる。この移動軸のY方向(図示せず)中心は表示中心11と一致する。図19に示す検査カメラ202は、表示装置1の視点ピッチの大きさに基づいてX方向8に移動させることができる。
【0198】
図20は、第4の実施の形態の検査装置で得られる検査画像の一例を示す模式図である。
【0199】
図20は、移動手段205によりX軸方向8に移動させつつ、第1実施例で説明した検査方法を用いて検査カメラ202により3点にて撮影された検査画像73の一例を示している。各検査画像73は、境界線分74のY軸方向中心が表示中心11となるように撮影することで取得される。
【0200】
ここで、境界線分の位置Δxがゼロとなるように、移動手段205の中心から移動させたときの量をLx,Cx,Rxとする。このとき、各検査画像73の境界線分74L,74C,74Rからは傾きLθ,Cθ,Rθを抽出できる。
【0201】
Rxは第2の実施の形態における|x2.center−x1.center|に相当し、Lxは|x3.center−x2.center|に相当し、Lθはθ1に相当し,Cθはθ2に相当し,Rθはθ3に相当する。
【0202】
したがって、撮影距離として第2の距離55に設定しても、移動手段205を追加することで、第2の実施の形態で示した効果と同様に、検査画像から取得できる情報が増加する。
【0203】
本実施形態の検査装置によれば、複数の境界線分の傾きθ、位置Δx及び視点ピッチ情報が取得できることで、表示パネル2と光学手段3の位置精度に加えて、光学手段3の歪みも検出できる。
【符号の説明】
【0204】
1 表示装置
2 表示パネル
3 光学手段
5 撮影手段
7 検査パターン
7A 第1のパターン
7B 第2のパターン
11 表示中心
22 接着層
23 第2光学フィルム
24 第2基板
25 液晶層
26 第1基板
27 第1光学フィルム
28 バックライト
31 シリンドリカルレンズ
41 第1視点用画素
42 第2視点用画素
43 左眼の位置
44 右眼の位置
47 第1視点用画像領域
48 第2視点用画像領域
71 検査画像中心
73 検査画像
74、87,88,89 境界線分
75、81、91 第1の画像領域
76、82、92 第2の画像領域
77 第1の境界線分
78 第2の境界線分
79 第3の境界線分
83、93 第3の画像領域
84、94 第4の画像領域
95 第5の画像領域
200 検査ステージ
201 画像出力手段
202 検査カメラ
203 検出回路
204 モニタ
205 移動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置が備える、複数の画素群が配列された表示パネルと、前記画素群から複数のN(Nは2以上の自然数)視点に向けた画像表示を提供するための光学手段との位置精度を検査するための実装精度検査方法であって、
前記視点毎に異なる画像信号を有する検査パターンを表示装置から表示する表示工程と、
前記表示装置に表示された画像を検査画像とし、前記検査画像から前記視点間の境界線分の傾きと位置を抽出する抽出工程と、
を有する実装精度検査方法。
【請求項2】
表示装置が備える、複数の画素群が配列された表示パネルと、前記画素群から複数のN(Nは2以上の自然数)視点に向けた画像表示を提供するための光学手段との位置精度を検査するための実装精度検査方法であって、
前記視点毎に異なる画像信号を有する検査パターンを表示装置から表示する表示工程と、
前記表示を撮影手段により所定の撮影距離から撮影し、検査画像として取得する撮影工程と、
前記検査画像から、前記視点間の境界線分の傾きと位置を抽出する抽出工程と、
を有する実装精度検査方法。
【請求項3】
前記表示工程は、
前記視点毎に異なる画像信号を有する検査パターンを用いて表示する第一の表示工程と、
前記第一の表示工程で用いた前記検査パターンとは異なる映像信号を有する検査パターンを用いて第二の表示工程と、
を有する請求項1または2記載の実装精度検査方法。
【請求項4】
前記表示工程は、
前記N視点のうち、Nが奇数である視点に対して所定の色と階調値からなる画像信号を有する第1のパターンを表示し、Nが偶数である視点に対して前記第1のパターンとは異なる画像信号を有する第2のパターンを表示する請求項1または2記載の実装精度検査方法。
【請求項5】
前記表示工程は、
前記N視点のうち、Nが奇数である視点に対して所定の色と階調値からなる画像信号を有する第1のパターンを表示し、Nが偶数である視点に対して前記第1のパターンとは異なる画像信号を有する第2のパターンを表示する第一の表示工程と、
Nが奇数である視点に対して前記第2のパターンを表示し、Nが偶数である視点に対して前記第1のパターンを表示する第二の表示工程と、
を有する請求項1、2または4記載の実装精度検査方法。
【請求項6】
前記表示工程は、
N視点(Nは偶数)のうち、第1視点から第(N/2)視点を第1の視点グループとし、第(N/2+1)視点から第N視点を第2の視点グループとしたとき、前記2つの視点グループ毎に異なる画像信号を有する検査パターンを表示装置から表示する請求項1または2記載の実装精度検査方法。
【請求項7】
前記表示工程は、
前記第1の視点グループに対して所定の色と階調値からなる画像信号を有する第1のパターンを表示し、前記第2の視点グループに対して前記第1のパターンとは異なる画像信号を有する第2のパターンを表示する第一の表示工程と、
前記第1の視点グループに対して前記第2のパターンを表示し、前記第2の視点グループに対して前記第1のパターンを表示する第二の表示工程と、
を有する請求項6記載の実装精度検査方法。
【請求項8】
前記表示工程は、
N視点(Nは奇数)のうち、第((N+1)/2)視点と、その他の視点とで、異なる画像信号を有する検査パターンを表示装置から表示する請求項1または2記載の実装精度検査方法。
【請求項9】
前記表示工程は、
前記第((N+1)/2)視点に対して1つの画像信号を有する第1のパターンを表示し、前記その他視点に対して前記第1のパターンに対して異なる画像信号を有する第2のパターンを表示する第一の表示工程と、
前記第((N+1)/2)視点に対して前記第2のパターンを表示し、前記その他視点に対して前記第1のパターンを用い表示する第二の表示工程と、
を有する請求項8記載の実装精度検査方法。
【請求項10】
前記抽出工程は、
前記第一の表示工程を経て前記撮影工程で得られた第1の検査画像と、前記第二の表示工程を経て前記撮影工程で得られた第2の検査画像に対して、それぞれの検査画像から、前記視点間の境界線分の傾きと位置を平均化して抽出する請求項3,5,7または9のいずれか1項記載の実装精度検査方法。
【請求項11】
前記抽出工程は、
N視点(Nは偶数)の前記表示工程で得られた検査画像に対して、第(N/2)視点と第(N/2+1)視点間の境界線分の傾きと位置を抽出する請求項6記載の実装精度検査方法。
【請求項12】
前記抽出工程は、
N視点(Nは奇数)の前記表示工程で得られた検査画像に対して、第((N−1)/2)視点と第((N−1)/2+1)視点間の第1の境界線分と、第((N+1)/2)視点と第((N+1)/2+1)視点間の第2の境界線分から、それぞれの境界線分の傾きと位置を平均化して抽出する請求項8記載の実装精度検査方法。
【請求項13】
前記検査パターンは、
前記検査画像の境界線分の傾きと位置を抽出できる画像信号を有する請求項1から12のいずれか1項記載の実装精度検査方法。
【請求項14】
前記撮影工程は、
前記光学手段によって形成された各視点画像のピッチを視点ピッチとしたとき、撮影手段の撮影中心が表示装置の視点ピッチ方向の中心と一致して撮影する請求項2から13のいずれか1項記載の実装精度検査方法。
【請求項15】
前記表示装置と前記撮影手段との撮影距離を、前記表示装置の立体可視域が存在する最小距離よりも短く設定する請求項1から14のいずれか1項記載の実装精度検査方法。
【請求項16】
前記表示装置と前記撮影手段との撮影距離を、前記表示装置の立体可視域が存在する最小距離よりも長く設定する請求項1から14のいずれか1項記載の実装精度検査方法。
【請求項17】
前記撮影距離を、前記境界線分が3つ以上含まれる検査画像を取得できる撮影距離として設定する請求項15または16記載の実装精度検査方法。
【請求項18】
前記光学手段によって形成された各視点画像のピッチを視点ピッチとしたとき、視点ピッチ方向に少なくとも2箇所で境界線分を含む検査画像を取得する請求項16記載の実装精度検査方法。
【請求項19】
前記表示装置と前記撮影手段との撮影距離に対する前記境界線分の傾きの関係において、 傾きの撮影距離に対する微分係数の変動が±5%以内で収束する領域を、前記撮影距離として設定する請求項15または16記載の実装精度検査方法。
【請求項20】
前記表示装置と前記撮影手段との撮影距離に対する前記境界線分の傾きの関係において、傾きの撮影距離に対する微分係数が最小となる撮影距離を、前記撮影距離として設定する請求項15または16記載の実装精度検査方法。
【請求項21】
複数の画素群が配列された表示パネルと、前記画素群から複数のN(Nは2以上の自然数)視点に向けた画像表示を提供するための光学手段と有する表示装置の、前記表示パネルと前記光学手段の位置精度を検査する検査装置であって、
前記視点毎に異なる画像信号を有する検査パターンを前記表示装置に出力する画像出力手段と、
前記表示装置から表示された検査画像の境界線分の傾きと位置を抽出する抽出手段と、
を備え、
前記抽出手段が抽出した傾きと位置に基づいて前記表示パネルと前記光学手段との位置精度を検出する検査装置。
【請求項22】
複数の画素群が配列された表示パネルと、前記画素群から複数のN(Nは2以上の自然数)視点に向けた画像表示を提供するための光学手段と有する表示装置の、前記表示パネルと前記光学手段の位置精度を検査する検査装置であって、
前記視点毎に異なる画像信号を有する検査パターンを前記表示装置に出力する画像出力手段と、
前記検査パターンを表示する際に現れる境界線分を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影された検査画像の境界線分の傾きと位置を抽出する抽出手段を備え、
前記抽出手段が抽出した傾きと位置に基づいて表示パネルと光学手段との位置精度を検出する検査装置。
【請求項23】
前記境界線分を2つ以上撮影できるように、前記撮影手段を前記視点ピッチ方向に移動させる移動手段をさらに有する請求項21または22記載の検査装置。
【請求項24】
前記撮影手段は、
立体可視域が最小となる観察距離よりも小さく、立体可視域が存在しない距離の範囲で、前記表示パネルに対する撮影距離が固定された請求項21または22記載の検査装置。
【請求項25】
請求項1から20のいずれか1項記載の実装精度検査方法を用いる検査装置。
【請求項26】
請求項1から20のいずれか1項記載の実装精度検査方法で検査された表示装置。
【請求項27】
請求項21から24のいずれか1項記載の検査装置を用いた検査工程を備える表示装置の製造方法。
【請求項28】
請求項21から24のいずれか1項記載の検査装置を用いた前記表示パネルと前記光学手段の位置決め工程を備える表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−47882(P2012−47882A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188386(P2010−188386)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(303018827)NLTテクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】