説明

密閉型圧縮機

【課題】圧縮機構より出たオイルが回転子に設けられた冷媒通路を通る際に再びオイルと冷媒が混ざり合うことを防止し、圧縮機外へのオイル吐出量を抑制できる密閉型圧縮機を提供すること。
【解決手段】回転子3bの上部に回転子環状外周壁100と、圧縮機構2から排出されたオイル6が通るために回転子環状外周壁100の下部に回転子外側通路103とを備え、回転子外側通路出口103aがバランスウエイト24に位置しており、回転子外側通路出口103aから排出されたオイル6が固定子コイル部104に向かう構成にすることにより、冷媒ガスとオイル6の気液分離効果を向上させることにより、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務用または家庭用、あるいは乗り物用の冷凍空調、あるいはヒートポンプ式の給湯システムなどに用いられる密閉型圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の密閉型圧縮機の冷媒ガスの流れとオイル分離の方式についてについて図面を参照にしながら説明する。
【0003】
図3は特許文献1に記載された従来の密閉型圧縮機の縦断面図を示すものである。密閉容器1内に圧縮機構2、この圧縮機構2の下方に設けた圧縮機構2を駆動するための電動機3と、この電動機3の回転力を圧縮機構2に伝達するためのクランク軸4とを備え、密閉容器1内の下部に設けたオイル溜め20のオイル6を、クランク軸4を通じてクランク軸4の軸受部66や圧縮機構2の摺動部に供給する給油機構7とを備えている。
【0004】
これによって、オイル6は給油機構7によって重力に逆らって軸受部66や圧縮機構2の摺動部に強制給油されて、円滑な動作を確保しながら、圧縮機構2で圧縮した冷媒ガスを密閉容器1内の電動機3の部分を通して電動機3を冷却した後、密閉容器1外に吐出するようにしており、軸受部66や圧縮機構2の摺動部に供給した後のオイルが供給圧や重力によって下方に移動しオイル溜め20に自然回収されるようにすることが出来る。
【0005】
しかし、冷媒ガスは常時オイルと接触してこれを随伴させ、密閉容器から冷凍サイクルに供給される際にオイルを持ち込んでしまい、冷凍サイクル中での配管圧力損失や凝縮器や蒸発器などの熱交換器での熱交換効率の低下をもたらす問題がある。
【0006】
この問題を解消するのに従来、圧縮機構から密閉容器内に吐出した冷媒ガスが電動機を通ってこの電動機を冷却しながら密閉容器外に吐出されるまでの冷媒ガスの通路を、オイルの衝突分離や遠心分離が繰り返し生じるように設計し、密閉容器外に吐出される冷媒ガスにオイルが随伴しないように下記のような構成としている。
【0007】
圧縮機構2から吐出される冷媒ガスが、圧縮機構上部の容器内吐出室31、この容器内吐出室31から圧縮機構2の下部に連通させる圧縮機構連通路32、この圧縮機構連通路32から回転子上部室33まで続くように通路カバーで囲われた連通路34、回転子上部室33と回転子下部室35を順次経て電動機の下に至り、さらに固定子3aの下部と上部とを連通させるように固定子3aまたは固定子3aと密閉容器1との間に設けられた固定子通路37を通って連通路34外まわりの固定子上部室38に抜けた後、密閉容器1の固定子上部室38の位置以上の部分に設けられた外部吐出口39を通って密閉容器1外に吐出されるようにする容器内冷媒ガス通路経路を設けるなどしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−280252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の技術において圧縮機構より出たオイルは別経路を通ったオイルを含んだ冷媒と回転子上部室で混ざると同時に衝突分離や遠心分離が行われる。しかし、回転子に設けられ
た冷媒通路を通る際に再びオイルと冷媒が混ざり合うという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、前記従来の課題を改善するもので、オイルと冷媒の再混合を防止し、圧縮機外へのオイル吐出量を抑制できる密閉型圧縮機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために本発明の密閉型圧縮機は、回転子外周側に通路を設け、この通路の回転子下部出口をバランスウエイト部に設けるものである。
【0012】
本実施の形態によれば、回転子上部に環状外周壁があることで、分離したオイルは環状外周壁内側下部に集まり、このオイルが回転子外周側に設けられた通路を通ることで冷媒との再混合を抑制し、回転子下部出口をバランスウエイト部にすることで、オイル出口を冷媒の出口より下部にすることができ、冷媒との再混合を抑制することで気液分離効果が向上し圧縮機外へのオイル吐出量を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の回転子外側通路を採用することにより、冷媒とオイルの分離を効果的に行い、圧縮機外へのオイル吐出を抑制した密閉型圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における回転子及びオイル、冷媒経路概略図
【図2】本発明の実施の形態1を示す密閉型圧縮機の縦断面図
【図3】従来の密閉型圧縮機の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、下部にオイル溜めを有する密閉容器内に、圧縮機構とその下方に設けた電動機とをクランク軸により連結し、オイル溜めのオイルがクランク軸内部に設けた軸方向貫通穴を介して軸軸受部や圧縮機構摺動部に供給される給油機構とを備え、回転子上部に環状外周壁が設けられ、圧縮機構から出たオイル混合冷媒が回転子通路を通り一度圧縮機下部へ向かい密閉容器内壁と固定子の間を通り密閉容器外に吐出する密閉型圧縮機で、従来の回転子通路とは別に環状外周壁近傍に位置する回転子外側通路を設け、回転子外側通路出口より出たオイルが固定子コイル部へ排出されるような位置にするものである。
【0016】
これにより、回転子上部室において冷媒と分離し遠心力によって回転子環状外周壁内壁へ集まったオイルが回転子外側通路を通り回転子下部へ到達し、このときのオイルは従来よりも冷媒を含んでいない状態であり、回転子外側通路出口より固定子コイル部へ排出されることにより固定子コイル部へ衝突して更なる気液分離効果を得るものであり、圧縮機外へのオイル吐出量を抑制することができる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明における回転子外側通路出口が回転子通路出口及び分離板より下方にくることにより、回転子通路出口から排出され分離版に衝突し外周方向へ排出された冷媒と回転子外周側通路から排出されたオイルが混ざらないようにするものであり、圧縮機外へのオイル吐出量を抑制することができる。
【0018】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の回転子外側通路出口をバランスウエイト位置に配するものであり、バランスウエイト位置に配することで、分離版に衝突した冷媒の排出方向と相対方向にオイルを排出することができ、冷媒とオイルが混ざらないようにするものであり、圧縮機外へのオイル吐出量を抑制することができる。
【0019】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施例によ
って本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における密閉型圧縮機の回転子周りのオイル及び冷媒の流れ図を示すものである。
【0021】
図1において、オイルの流れ102を黒矢印、冷媒の流れ101を白矢印で示しており、回転子3bに回転子環状外周壁100と回転子外側通路103を構成している。
【0022】
以上のように構成された密閉型圧縮機について、以下その動作、作用を説明する。
【0023】
まず、回転子上部室へ排出されたオイル6は遠心力により回転子環状外周壁100の下部へと集まり回転子外側通路を通り回転子下部へと運ばれ固定子コイル部へ排出される。回転子上部室へ排出された冷媒は回転子通路を通り回転子下部へと排出される。
【0024】
以上のように、本実施の形態においては、回転子環状外周壁100の壁際に回転子外側通路を配置し回転子外側通路出口から出るオイルが固定子コイル部へ排出されるように構成することにより、従来よりもオイルと冷媒の気液分離効果を向上させることとなり、圧縮機外へのオイル吐出量を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように、本発明にかかる密閉型圧縮機は、圧縮機外へのオイル吐出量を抑制することでサイクル全体の効率を向上させることで、HFC系冷媒、HCFC系冷媒および自然冷媒である二酸化炭素を用いた空調用圧縮機やヒートポンプ式給湯機用圧縮機などの用途に適用できるため、省エネルギーの観点からも実用を期待できる。
【符号の説明】
【0026】
1 密閉容器
2 圧縮機構
3 電動機
3a 固定子
3b 回転子
4 クランク軸
6 オイル
7 給油機構
20 オイル溜め
24 バランスウエイト
31 容器内吐出室
32 圧縮機構連通路
33 回転子上部室
34 連通路
35 回転子下部室
37 固定子通路
38 固定子上部室
39 外部吐出口
100 回転子環状外周壁
101 冷媒の流れ
102 オイルの流れ
103 回転子外側通路
103a 回転子外側通路出口
104 固定子コイル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器内に圧縮機構と、この圧縮機構の下方に設けた圧縮機構を駆動するための電動機と、この電動機の回転力を圧縮機構部に伝達するためのクランク軸と、密閉容器内の下部に設けたオイル溜めのオイルがクランク軸を通じてクランク軸の軸受部や圧縮機構部摺動部に供給される給油機構とを備え、回転子上部に環状外周壁が設けられており、圧縮機構から出たオイルが回転子通路を通り一度圧縮機下部へ向かい密閉容器内壁と固定子の間を通り密閉容器外に吐出する密閉型圧縮機において、従来の回転子通路とは別に環状外周壁近傍に位置する回転子外側通路を設け、回転子外側通路出口より出たオイルが固定子コイル部へ排出されるような位置になることを特徴とした密閉型圧縮機。
【請求項2】
前記回転子外側通路出口が回転子通路出口及び分離板より下方にくることを特徴とした、請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【請求項3】
前記回転子外側通路出口をバランスウエイト位置に配する、請求項1または2に記載の密閉型圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−7474(P2012−7474A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141182(P2010−141182)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】