説明

対物レンズユニット、対物レンズアクチュエータモジュール

【課題】基板厚の異なる2つの光ディスクに対して光源からの光を集光する際に発生する球面収差をより好適に補正できる対物レンズユニット及び対物レンズアクチュエータモジュールを提供する。
【解決手段】半導体レーザからの光をBD3及びHD4に選択的に集光する対物レンズユニット100であって、HD4の開口数の範囲において、BD3とHD4との中間の基板厚を有する光ディスクに対して半導体レーザからの光を集光する非球面形状と、HD4の開口数の範囲より外縁側かつBD3の開口数の範囲において、BD3に対して半導体レーザからの光を集光する非球面形状と、を有する対物レンズ1と、HD4の開口数の範囲において、透過光に対して略(j/k)λの位相差を与える液晶素子2と、を備え、液晶素子2は、BD3又はHD4に半導体レーザからの光を集光する際、前記位相差の符号を変えて、当該位相差を加えるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルーレイ又はHD−DVD等の光ディスク装置における対物レンズユニット、対物レンズアクチュエータモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CDやDVDなどの光ディスクは、音楽やビデオの再生を主に行うメディアとして普及していた。今日では、当該光ディスクは、ダビングやビデオレコーディングなどの記録可能メディアとしても、幅広く普及している。さらに、2011年に、地上波アナログテレビ放送からデジタルテレビ放送への全面移行が行われるため、大画面の薄型ディスプレイの普及が加速している。そのため、ハイビジョン動画記録のニーズが高まっている。これにより、Blu−Ray Disc(以下、BDと称する。)やHDDVD(High Definition DVD;以下、HDと称する。)などの大容量光ディスクにおいて記録可能型媒体が発売されるとともに、再生用ビデオコンテンツも増えてきている。
【0003】
BDには、開口数(NA)0.85の対物レンズにより、波長405nmの青紫色半導体レーザから出射された光が集光される。BDで用いられる光源波長(405nm)は、DVDで用いられる光源波長(650nm)の約0.6倍となっている。また、BDに光源からの光を集光する対物レンズの開口数(0.85)は、DVDに光源からの光を集光する対物レンズの開口数(0.6)の1.4倍となっている。そのため、BDの記録容量は1層あたり25GBであり、DVDの約5倍の記憶容量を有する。
【0004】
一方で、BDの透明基板の厚さは0.1mmであり、DVDの透明基板の厚さ0.6mmよりかなり薄くなっている。透明基板は、ディスク傾きによって発生する収差が、開口数の増大に伴って増大することを抑えるため、ほこりや汚れの付着を防ぐ。
【0005】
このように、BDは、DVDに比べて、記録密度が非常に高く、透明基板の厚さが非常に薄くなっている。このため、BDの製造においては、DVDとは異なる製造プロセス及び製造装置が必要となる。そして、設備投資を含めた製造コスト増大の問題が指摘されていた。このため、DVDと同じ製造装置で製造できるBD規格、及び、当該BD規格と並存可能なHD規格が作成された。そして、基本的には互換性のないBD及びHDの2種類の光ディスクが同時期に開発、発売された。
HDの光源としては、BDと同じ405nmの青紫色半導体レーザを用いる。また、HDに光源からの光を集光する対物レンズの開口数は0.65である。また、HDの透明基板の厚さは0.6mmである。そして、HDの記録容量は1層あたり15GBである。
【0006】
これら2種類の光ディスクの並存による市場の混乱を防ぐため、BD及びHDに対応する光ディスク装置の開発が行われている。一般に、BD・HD互換光ディスク装置は、BD専用レンズ、HD専用レンズ、レンズアクチュエータを搭載している(例えば、特許文献1)。特許文献1では、回転型のレンズアクチュエータにDVD専用レンズとCD専用レンズとを搭載している。そして、レンズアクチュエータの回転によりDVD専用レンズとCD専用レンズとを切り替える。これにより、赤色半導体レーザからの光をDVD又はCDに集光する。
【0007】
今日、CD・DVD互換再生用光ピックアップには、赤色半導体レーザと、波長780nmの赤外半導体レーザとが搭載されている。CD−Rでは、赤色半導体レーザ光の反射率が著しく低下して再生することができない。そのため、CDの再生には、赤外半導体レーザが用いられる。そして、CD・DVD互換再生用光ピックアップでは、CDとDVDとでは、再生に用いる光源波長が異なることを利用した互換再生方式が用いられている。しかし、DVD再生用光ピックアップの開発当初では、CD−Rの再生が必須とされていなかったため、赤色半導体レーザのみを用いるDVDとCDの互換再生方式が検討されていた。したがって、DVD再生用光ピックアップの開発当初に検討された赤色半導体レーザのみを用いるDVDとCDの互換再生方式の技術を応用することにより、青色半導体レーザのみを用いるBDとHDの互換再生方式を開発できる可能性がある。
【0008】
例えば、特許文献2では、赤色半導体レーザから出射された光束の一部を0次光として透過させ、赤色半導体レーザから出射された光束の一部を1次回折光として透過させるホログラム素子を対物レンズと一体に構成している。そして、ホログラム素子と一体化された対物レンズが0次光をDVDに集光し、ホログラム素子と一体化された対物レンズが1次回折光をCDに集光するように、ホログラム素子の回折パターンを設計している。具体的には、ホログラム素子は、CDとDVDとの基板厚差によって生じる球面収差を補正するように、赤色半導体レーザから出射された光束の一部を1次回折光として透過させる。これにより、1つの波長で基板厚とNAの異なる2種類の光ディスクの再生互換を実現している。
【0009】
また、特許文献3では、赤色半導体レーザ光源とコリメータレンズとの間隔を可変となるように構成している。そして、CDとDVDとで、赤色半導体レーザ光源とコリメータレンズとの間隔を変えることにより、対物レンズに入射する光の発散度合いを変えて、CDとDVDとの基板厚の違いによる球面収差を補正している。
【0010】
また、特許文献4では、CDに集光するために必要なNAの範囲における対物レンズの形状をDVDとCDとの中間の基板厚に最適に集光するように形成し、CDに集光するために必要なNAの範囲より外縁側のDVDに集光するために必要なNAの範囲内における対物レンズの形状をDVDに最適に集光するように形成している。
【0011】
また、特許文献5では、収差補正用素子として液晶を用いている。そして、液晶により、収差補正と光量制御を同時に行っている。
【0012】
また、特許文献6では、液晶を用いた収差補正用素子を対物レンズアクチュエータに搭載している。そして、液晶を駆動する半導体素子をアクチュエータと一体として搭載し、半導体素子の駆動信号をアクチュエータの弾性支持ワイヤを介して導通している。これにより、信号線数を削減している。
【0013】
また、特許文献7では、CDのNA範囲内の対物レンズの面形状と、CDのNA範囲より外縁側且つDVDのNA範囲内の対物レンズの面形状とを異なる非球面形状としている。さらに、当該対物レンズに輪帯状の位相シフタを組み合わせている。これにより、1枚の対物レンズを用いて、波長780nmのレーザ光をCDに集光するとともに、波長650nmのレーザ光をDVDに集光している。
【特許文献1】特開平9−198677号公報
【特許文献2】特開平7−98431号公報
【特許文献3】特開平9−17023号公報
【特許文献4】特開平9−184975号公報
【特許文献5】特開2005−257821号公報
【特許文献6】特開2007−102891号公報
【特許文献7】特開平10−255305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1乃至6に記載の技術をBD/HD互換に適用すると、以下の問題が生じる。
例えば、特許文献1に記載の技術をBD/HD互換に適用すると、BD専用の対物レンズとHD専用の対物レンズを切り替えて用いることになる。そのため、2つのレンズをアクチュエータに搭載することとなり、可動部の重量が重くなり、オートフォーカスやトラッキングの追従性能が低下する。これにより、転送速度の高速化が阻害される。また、トラッキング動作とレンズ切り替えの回転動作とを兼用させるアクチュエータの場合、トラッキングに伴うレンズ移動の軌跡が円弧状になる。そのため、回折素子などを用いて光検出器に光を分割して集光する場合、光検出器上の集光スポットが位置ずれしてしまうなどの問題が生じる。さらに、アクチュエータのサイズが大きくなるため、スリム型ドライブなどに必要な小型化を図ることができない。
【0015】
また、特許文献2に記載の技術をBD/HD互換に適用すると、常時、BD用の集光スポットとHD用の集光スポットとが発生することとなる。そのため、何れのディスクを再生する場合にも、再生していないディスクのための集光スポットが不要な迷光として存在することとなる。さらに、2層ディスクを再生する場合、さらにたくさんの迷光を発生させてしまう。これら迷光により、予期しない干渉効果などが発生し、再生信号に外乱が混入する可能性がある。さらに、BD再生時ではHD用スポット光量の分が損失となり、HD再生時ではBD用スポット光量の分が損失となる。そのため、光の利用効率が低減するという問題がある。
【0016】
また、特許文献3に記載の技術をBD/HD互換に適用すると、コリメータレンズの可動量などの光学設計を十分精密に行えば、BDとHDとの基板厚差による球面収差を補正することができる。しかし、BDとHDのNAは、CDとDVDのNAより大きい。そして、球面収差はNAの4乗に比例するため、BDとHDの基板厚差による球面収差は、CDとDVDに比べて、非常に大きい。そのため、BDとHDの基板厚差による球面収差を補正するようにコリメータレンズを移動させた状態で、トラッキング動作のために対物レンズをコリメータレンズの光軸から相対的に移動させると、コマ収差が大きくなってしまう。
【0017】
また、特許文献4に記載の技術をBD/HD互換に適用すると、BD及びHDを再生するために使用される光源波長は共に青紫色波長であり、BDとHDのNA比が大きいため、残留収差が大きくなるという問題がある。
【0018】
また、特許文献5に記載の技術をBD/HD互換に適用すると、補正すべき収差量が非常に大きいため、液晶を駆動する電極の本数を多くする必要があると共に、変化させる位相差を非常に大きくする必要がある。輪帯状の透明電極の本数を多くすると、当該透明電極から引き出される配線の本数が多くなり、有効光束径内における位相差発生に寄与できない領域が大きくなるという問題がある。また、透明電極の本数を多くするために透明電極の幅を狭くすると、製造が困難となる上に、十分な電圧印加特性を得られないことが懸念される。さらに、変化させる位相差を大きくするために、液晶層を厚くすると応答性が遅くなるとともに、消費電力が増大するという問題がある。
【0019】
また、特許文献6では、弾性支持ワイヤから液晶への導通がフレキシブルプラスティックケーブル(FPC)を介して行われている。そのため、アクチュエータ可動部の重量が大きくなってしまうという問題がある。
【0020】
また、特許文献7に記載の技術は、波長の異なる2つの光源光を基板厚の異なる2つの光ディスクにそれぞれ集光するための技術である。そのため、1つの光源からの光を基板厚の異なる2つの光ディスクに集光する場合には、特許文献7に記載の技術を利用することができない。
【0021】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、基板厚の異なる2つの光ディスクに対して光源からの光を集光する際に発生する球面収差をより好適に補正できる対物レンズユニット及び対物レンズアクチュエータモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明にかかるレンズユニットは、第1の基板厚を有する第1の光ディスクと、前記第1の基板厚より厚い第2基板厚を有する第2の光ディスクとに、光源からの光を選択的に集光する対物レンズユニットであって、前記第1の光ディスクの第1の開口数よりも小さい前記第2の光ディスクの第2の開口数の範囲において、前記第1の基板厚と前記第2の基板厚との中間の基板厚を有する光ディスクに対して前記光源からの光を集光する非球面形状と、前記第2の開口数の範囲より外縁側かつ前記第1の開口数の範囲において、第1の光ディスクに対して前記光源からの光を集光する非球面形状と、前記第2の開口数の範囲において、透過光に対して略(j/k)λ(ただし、kはk≧2を満たす自然数、jは、|j|≦k/2を満たす整数、λは、前記光源の波長)の位相差を与える輪帯領域と、を備え、前記輪帯領域は、前記第1の光ディスクに前記光源からの光を集光する場合と、前記第2の光ディスクに前記光源からの光を集光する場合とで、前記位相差の符号を変えて、当該位相差を加えるものである。
【0023】
本発明においては、1つの光源からの光を基板厚の異なる2つの光ディスクに集光する場合に、2つの光ディスクの中間の基板厚の光ディスクに対して光源からの光を集光する非球面形状を備えることにより、基板厚の異なる2つの光ディスクにおいて発生する球面収差の絶対値が同じになるようにし、当該球面収差の符号のみが異なるようにする。さらに、基板厚の異なる光ディスクに光源からの光を集光する場合に、当該2つの光ディスク間で、輪帯領域により与える位相差の符号を変える。これにより、基板厚の異なる2つの光ディスクの球面収差を1つの輪帯領域によって補正することができる。例えば、輪帯領域を液晶素子により形成する場合、液晶素子に形成する透明電極の単一の電極パターンにより、基板厚の異なる2つの光ディスクに発生する球面収差を補正することができる。
【0024】
また、輪帯領域は、透過光に対して(j/k)λの位相差を与えることにより、基板厚の異なる2つのディスクに発生する球面収差を低減することができる。例えば、(1/2)λ((j/k)λにおいて、k=2、j=1)の位相差を与える輪帯領域を液晶素子の表面や対物レンズの表面に形成することにより、基板厚の異なる2つの光ディスクに発生する球面収差を(1/2)λ以内に抑えることができる。この場合、透明電極に電圧が印加されて駆動された液晶素子は、(1/2)λ以下に抑えられた球面収差を補正するだけでよい。
【0025】
また、前記輪帯領域は、前記対物レンズユニットを構成する光学素子の表面に形成された段差形状であって、k=2であることが好ましい。
【0026】
これにより、輪帯領域によって透過光に加えられる位相差は±(1/2)λとなる。即ち、透過光の位相シフトは、±(1/2)λである。
位相シフトは、波動性のある光波の位相を変化させることである。また、位相シフトが強度分布の変化を伴わない場合、波長の整数倍の位相シフトであって、可干渉距離以内の位相シフトは、透過光に位相差を生じない。そして、(+1/2)−(−1/2)=1より、+(1/2)λの位相シフトと−(1/2)λの位相シフトとの位相シフトの差は1λである。そのため、+(1/2)λの位相シフトを与えることは、−(1/2)λの位相シフトを与えることと等価である。
【0027】
さらに、基板厚の異なる2つの光ディスクの中間の基板厚の光ディスクに光源からの光を集光する非球面形状を有する場合、基板厚の異なる2つの光ディスクに光源からの光を集光する際に発生する球面収差は、絶対値が等しく、符号が異なる。そして、絶対値が等しく符号が異なる球面収差に対しては、+(1/2)λの位相シフトも−(1/2)λの位相シフトも実質的に等価である。そのため、透過光に対して(1/2)λの位相シフトを与える輪帯領域により、基板厚の異なる2つの光ディスクに発生する球面収差を等しく低減することができる。
そして、上述の(1/2)λの位相シフトの符号の反転には、液晶素子の透明電極に印加する電圧の符号を反転させて、加える位相差の符号を反転させる機能は必要ない。
【0028】
さらに、前記対物レンズユニットは、前記第2の開口数の範囲において、前記第1の基板厚と前記第2の基板厚との中間の基板厚を有する光ディスクに対して前記光源からの光を集光する非球面形状と、前記第2の開口数の範囲より外縁側かつ前記第1の開口数の範囲において、第1の光ディスクに対して前記光源からの光を集光する非球面形状と、を有する対物レンズと、前記対物レンズと一体的に構成される液晶素子と、を備え、前記輪帯領域は、前記液晶素子の前記第2の開口数の範囲に形成された複数の輪帯状の透明電極であって、前記第1の光ディスクに前記光源からの光を集光する場合と、前記第2の光ディスクに前記光源からの光を集光する場合とで、前記透明電極に印加する電圧が異なることが好ましい。
【0029】
これにより、位相シフトを液晶素子により発生させることができる。そのため、位相シフトの大きさが±(1/2)λに限定されず、より細かい位相シフト段差を与えることができる。そして、より好適な収差補正を行うことができる。
【0030】
さらに、また、前記輪帯領域は、前記対物レンズユニットを構成する光学素子の表面に形成され、透過光に対して(1/2)λの位相差を発生させる段差形状であるとともに、前記液晶素子の前記第2の開口数の範囲に形成された複数の輪帯状の透明電極であり、前記第1の光ディスクに前記光源からの光を集光する場合と、前記第2の光ディスクに前記光源からの光を集光する場合とで、前記透明電極に印加する電圧が異なることが好ましい。
【0031】
これにより、(1/2)λの位相差を発生させる段差形状と液晶素子とを組み合わせて位相シフトを発生させることができる。そのため、液晶素子で発生させる位相シフト量を小さくすることができる。また、段差形状のみでは、発生させる位相シフトが(1/2)λに限定されてしまうが、液晶素子を組み合わせることにより、より細かい位相シフト段差を与えることができる。
【0032】
例えば、(1/4)λ以上(1/2)λ未満の位相シフト、(3/8)λの位相シフトを発生させることも可能となる。段差形状により(1/2)λの位相シフトを発生させ、液晶素子により−(1/4)λの位相シフトを発生させると、1/2−1/4=3/8より、(3/8)λの位相シフトを発生させることができる。そして、液晶素子により発生させる位相シフト量を−(1/4)λ以上(1/4)λ未満とすることができ、液晶素子により発生させる位相シフトの範囲を狭くすることができる。
【0033】
そして、液晶素子により発生させる位相シフトの範囲を狭くすることが可能になると、印加する電圧の信号本数を減らすことができる。そのため、対物レンズユニットを対物レンズユニットアクチュエータモジュールに搭載する際における配線数を削減することができる。
【0034】
また、光軸の半径位置を0%、前記第2の開口数の範囲の外縁の半径位置を100%とした場合において、80%以上100%以内の半径位置に、隣接内側電極より電極幅が広い前記透明電極が位置することが好ましい。
【0035】
球面収差を含む波面収差の形状(W(ρ))は、W(ρ)=W40ρ+W20ρで表される。ここで、ρは、対物レンズの有効径を「1」として規格化した動径半径座標である。また、W40は、球面収差を表すサイデルの収差係数である。また、W20は、デフォーカス量を表すサイデルの収差係数である。デフォーカス量は、光ディスクに集光するスポットの焦点位置を変えることにより変化する。そのため、デフォーカス量は、実際上、フォーカスサーボのオフセットを可変させることにより制御することができる。
【0036】
そして、液晶素子により位相シフトを発生させて上述の波面収差の形状を有する波面収差を補正する場合、光軸を中心として同心円状に区分された輪帯毎に異なる位相差を透過光に発生させる。これにより、所望するPeak to Peak値(以下、P−P値と称する。)のWlimitの範囲内となるように波面収差の形状が折りたたまれるように、波面収差を補正する。このとき、波面収差の形状の傾きが大きいほど、液晶素子に形成する透明電極の幅が狭くなる。透明電極の幅が狭いと、液晶素子に透明電極を形成するのが難しくなる。また、透明電極からの漏れ電界によって、所望の位相分布からの誤差が発生しやすくなる。
【0037】
そこで、波面収差の形状の傾きの最大値が最も小さくなるように、デフォーカス量を制御することが望ましい。これにより、透明電極の電極幅をなるべく広くすることができる。波面収差の形状の傾きは、上述のW(ρ)を1次微分することにより得られる。従って、上述のW(ρ)の1次微分により得られる値の絶対値の最大値が最小となるデフォーカス量において、透明電極の電極幅をなるべく広くすることができる。そして、W(ρ)の1次微分により得られる値の絶対値の最大値が最小となる場合、波面収差の形状は、光軸の半径位置を0%、第2の開口数の範囲の外縁の半径位置を100%とした場合において、80%以上100%以内の半径位置に極値がある形状となる。波面収差が極値となる位置において、波面収差の形状の傾きが最も小さい。そのため、波面収差が極値となる位置において、透明電極の電極幅も当該位置近傍で最も広く、極大となる。換言すれば、80%以上100%以内の半径位置に、隣接する内側の電極より幅の広い電極が少なくとも1つ存在することになる。従って、80%以上100%以内の半径位置に隣接内側電極より電極幅が広い透明電極が位置する場合、透明電極の最短電極幅をなるべく広くすることができる。
【0038】
通常、収差補正量をなるべく小さくするため、波面収差のRMS(Root Mean Square)値が最小となるようにデフォーカス量を制御する。このとき、W20=−W40であり、ρ=(√2)/2≒0.7より、波面収差のRMS値が最小となるデフォーカス量が得られる場合の波面収差が極値となる位置は、約70%の半径位置である。従って、波面収差のRMS値が最小となる場合、約70%の半径位置に、電極幅が極大の透明電極が位置する。
よって、70%の半径位置に電極幅が極大の透明電極が位置する場合よりも、80%以上100%未満の半径位置に電極幅が極大の透明電極が位置する場合の方が、透明電極の最短電極幅をなるべく広くすることができる。
【0039】
また、液晶素子と対物レンズとの間の軸ずれに対する残留収差は、波面収差の1次微分と軸ずれとの積に比例する。透明電極の電極幅をなるべく広くするデフォーカス量では、波面収差の1次微分の最大値が最小となっている。従って、そのため、透明電極の電極幅をなるべく広くするデフォーカス量において、軸ずれに対する残留収差は最小となる。従って、透明電極の電極幅を広くすると、液晶素子と対物レンズとの間に軸ずれが生じた場合のコマ収差の発生を最小限に抑えることができる。換言すれば、80%以上100%未満の半径位置に隣接内側電極より電極幅が広い透明電極が位置する場合、軸ずれによる残留収差の発生を低減することができる。
【0040】
さらに、また、前記液晶素子には、異なる電圧が印加される複数本の前記透明電極が形成されており、前記透明電極は、同じ電圧が印加される複数の輪帯からなり、前記輪帯は、一部が欠失されてなる端部を有し、前記内側の輪帯の端部と、当該内側の輪帯と同じ電圧を印加する外側の輪帯の端部とが略半径方向に沿って引き出し配線により順次接続され、前記複数本の透明電極の前記引き出し配線が互いに重なり合わないように配置されていることが好ましい。
【0041】
これにより、同じ電圧を印加する複数の輪帯状の電極を1本の透明電極とすることができる。そして、引き出し配線の本数を透明電極に印加する電圧数とすることができる。よって、引き出し配線の領域を最小限に抑えることができ、液晶素子の収差補正性能の低下を防ぐことができる。
【0042】
また、前記段差形状は、前記対物レンズの前記第2の開口数の範囲の非球面形状を有する表面に形成されていることが好ましい。
または、前記段差形状は、前記液晶素子の表面に形成されていることが好ましい。
【0043】
さらに、前記液晶素子は、当該液晶素子を駆動する半導体素子と一体的に、前記対物レンズユニットに搭載されることが好ましい。
具体的には、前記半導体素子は、前記液晶素子のガラス基板の表面に形成されていることが好ましい。
【0044】
さらに、また、前記液晶素子は、2層の液晶層を有し、一方の前記液晶層の配向方向と他方の前記液晶層の配向方向とは、互いに直交しており、前記液晶素子と前記対物レンズとの間に、1/4波長板が前記液晶素子と一体的に配置されていることが好ましい。
【0045】
また、前記2層の液晶層は、3枚のガラス基板の間に挟持されており、前記3枚のガラス基板のうち中央のガラス基板は、一辺側が他のガラス基板より延出した延出部を有し、前記延出部の両面を挟むように接続されたフレキシブル基板によって、前記延出部の両面が電気的に接続されていることが好ましい。
【0046】
また、本発明に係る対物レンズアクチュエータモジュールは、上述の対物レンズユニットを光ディスクに対して少なくとも垂直方向及び光ディスクの半径方向に駆動する対物レンズアクチュエータモジュールであって、前記対物レンズユニットを弾性的に支持する複数の弾性支持ワイヤを備え、一部の前記弾性支持ワイヤを介して、前記対物レンズユニットを前記垂直方向及び前記半径方向に駆動するためのアクチュエータ駆動信号に重畳して、前記半導体素子を駆動させるための半導体駆動信号を前記半導体素子に入力するとともに、前記一部の弾性支持ワイヤ以外の弾性支持ワイヤを介して、電源電圧とグラウンドを前記半導体素子に導通するものである。
【0047】
また、前記複数本の透明電極の引き出し配線は、前記液晶素子において、前記光源からの光が入射する円形領域において一の半径方向に沿って配置されており、前記一の半径方向は、前記対物レンズユニットが駆動される光ディスクの半径方向と略同じであることが好ましい。
【発明の効果】
【0048】
本発明により、基板厚の異なる2つの光ディスクに対して光源からの光を集光する際に発生する球面収差をより好適に補正できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
実施例1.
図1は、本発明の実施例1にかかる対物レンズユニット100の一例を示したものである。図1(a)に、BD3(第1の光ディスク)に平行光5、6を集光する対物レンズユニット100を示し、図1(b)に、HD4(第2の光ディスク)に平行光5、6を集光する対物レンズユニット100を示す。
対物レンズユニット100は、対物レンズ1(光学素子)、液晶素子2(光学素子)等を備えている。液晶素子2は、対物レンズ1の光源側に配置されている。また、液晶素子2は、対物レンズ1と一体的に構成されている。そして、後述するアクチュエータ9(対物レンズアクチュエータモジュール)により、対物レンズ1と液晶素子2とが一体となって動作される。
【0050】
対物レンズ1は、BD/HD共通領域7と、BD専用領域8とを有している。BD/HD共通領域7は、対物レンズ1の光軸からHD4への集光に必要なNA(第2の開口数)の範囲である。また、BD専用領域8は、BD/HD共通領域7の外縁側であって、BD3への集光に必要なNA(第1の開口数)の範囲である。
なお、BD3のNAは、0.85であり、HD4のNAは、0.65である。
【0051】
対物レンズ1は、非球面レンズである。具体的には、対物レンズ1のBD/HD共通領域7におけるレンズ面形状は、BD3の基板厚と、HD4の基板厚との中間の基板厚の光ディスクに対して最適に平行光6を集光する非球面形状となっている。例えば、BD3の基板厚は0.1mmであり、HD4の基板厚は0.6mmであるため、対物レンズ1のBD/HD共通領域7におけるレンズ面形状は、基板厚0.35mmの光ディスクに対して最適に平行光6を集光する非球面形状を有する。
また、対物レンズ1のBD専用領域8におけるレンズ面形状は、BD3に対して最適に平行光5を集光する非球面形状となっている。
【0052】
そして、液晶素子2が駆動されていない場合、BD/HD共通領域7を透過する平行光6をBD3に集光すると、基板厚差誤差−0.25mmに相当する球面収差が生じる。なお、基板厚差誤差は、0.1−0.35=−0.25より求められる。BD専用領域8を透過する平行光5は、収差を発生することなく、BD3に集光する。
一方、液晶素子2が駆動されていない場合、BD/HD共通領域7を透過する平行光6をHD4に集光すると、基板厚差誤差0.25mmに相当する球面収差が生じる。なお、基板厚差誤差は、0.6−0.35=0.25より求められる。
そのため、本発明の実施例1では、液晶素子2を駆動することにより、BD/HD共通領域7を透過する平行光6が、BD3及びHD4に良好に集光するような位相差を平行光6に生じさせる。具体的には、液晶素子2は、BD/HD共通領域7において、透過光に対して略(j/k)λ(ただし、kはk≧2を満たす自然数、jは、|j|≦k/2を満たす整数、λは、半導体レーザ(光源)の波長)の位相差を与える輪帯領域を有している。より具体的には、輪帯領域とは、液晶素子2に輪帯状の透明電極が形成される領域である。
なお、HD4に対してBD専用領域8を透過する平行光5を集光する場合、HD4とBD3との基板厚差0.5mmに相当する球面収差が発生している。基板厚差0.5mmに相当する球面収差は非常に大きいため、集光スポットの周辺に拡散する。そのため、信号再生に影響を及ぼさない。
【0053】
図2に、対物レンズ1を用いてBD3を再生する際にBD/HD共通領域7を透過する平行光6に生じる波面収差を表すグラフを示す。図2のグラフにおいて、縦軸が収差を表し、横軸は規格化動径半径を表す。規格化動径半径とは、対物レンズ1の光軸からBD/HD共通領域7の外縁までの距離を「1」とした場合における対物レンズ1の光軸からの距離(半径)を表す。また、図2のグラフにおいて、ひし形のプロットはデフォーカス−0.0125mm、四角のプロットはデフォーカス−0.015mm、三角のプロットはデフォーカス−0.018mm、バツ印のプロットはデフォーカス−0.02mm、米印のプロットはデフォーカス−0.0225mm、をそれぞれ示す。
図2に示すように、デフォーカスを変えることにより、発生する波面収差の大きさが変わる。具体的には、デフォーカス−0.0125mmのとき、波面収差が最も小さい。また、デフォーカスの値が大きくなるにつれて、波面収差も大きくなっている。
なお、対物レンズ1を用いてHD4を再生する際にBD/HD共通領域7を透過する平行光6に生じる波面収差は、対物レンズ1を用いてBD3を再生する際にBD/HD共通領域7を透過する平行光6に生じる波面収差の符号が反転したものである。これは、対物レンズ1のBD/HD共通領域7の面形状が、BD3とHD4の中間の基板厚に対して良好に集光する非球面形状となっているためである。したがって、対物レンズ1を用いてHD4を再生する際にBD/HD共通領域7を透過する平行光6に生じる波面収差の形状は、図2に示す波面収差の形状に対して上下対称な形状となる。
【0054】
波面収差を輪帯状の透明電極を有する液晶素子により一定のPeak to Peak値(以下、P−P値と称する。)となるように補正する場合、図2に示す波面収差の形状の傾きが大きいほど、液晶素子に形成する透明電極の幅が狭くなる。透明電極の幅が狭いと製造が困難になるため、透明電極の幅は広い方がよい。従って、図2に示す波面収差の形状の傾きが小さい方がよい。3次球面収差に対して最良像点を与えるデフォーカスは、開口の最外周において波面収差値が軸上と等しくなる形状である。そのため、図2において、デフォーカス−0.0125mmが、最良像点を与えるデフォーカスに近い。デフォーカス−0.0125mmの場合、補正すべき収差の補正量は最も小さいが、最外周の規格化動径半径1付近での波面収差の形状の傾きが大きい。そして、図2に示す波面収差の形状の中で、波面収差の形状の最大傾きが最も小さくなっているのは、デフォーカス−0.02mmの場合である。デフォーカス−0.02mmの場合、規格化動径半径1における波面傾斜と、規格化動径半径0.8以下における波面傾斜とがほぼ等しくなっている。そして、図2における波面収差の形状の最大傾きが小さいデフォーカスに対して、収差補正を行った方が、収差補正量は大きいものの、最短電極幅を最も広くすることができる。
【0055】
図3に示す表は、各デフォーカスにおける波面収差の形状の最大傾き、当該最大傾きにおいてP−P値0.1λとなる最短電極幅(以下、規格化最短電極幅と称する。)、電極分割数、波面収差が極値となる規格化動径半径位置(以下、波面収差極値半径位置と称する。)、BD/HD共通領域7における補正後のHD及びBDのRMS波面収差を関係付けて示している。なお、λは、光の波長である。最大波面傾きは、半径あたりの位相変化量を波長単位で示している。また、規格化最短電極幅は、動径半径で規格化した輪帯幅を示している。
【0056】
図3に示すように、規格化最短電極幅が最も広いのは、図2におけるデフォーカス−0.02mmの波面である。また、デフォーカス−0.02mmの補正後のRMS波面収差は、BDにおいて約0.021λであり、HDにおいて約0.028λである。また、デフォーカス−0.02mmにおける波面収差極値半径位置は約0.9であり、ほぼ、0.8と1.0との中間である。換言すれば、小さいNAで再生する光ディスクの必要な再生NA範囲の80%から100%の範囲内に極値がある。また、波面収差極値半径位置が約0.8及び約1となるのは、デフォーカス−0.01524mm及びデフォーカス−0.02646の場合である。そして、デフォーカス−0.01524mmから−0.02646の範囲では、デフォーカス−0.0125mmよりも、規格化最短電極幅が広くなっている。従って、波面収差の極値が規格化動径半径0.8から1.0の範囲にある収差を補正する場合には、液晶素子2に形成する透明電極の幅を広くすることができる。そして、BD/HD互換における収差の補正量は多いため液晶素子2に形成する透明電極の幅が狭くなりがちだが、波面収差極値半径位置が0.8から1.0となるデフォーカスにおいて発生する収差の補正を行うことにより、BD/HD互換に使用される液晶素子2に形成される透明電極の幅を広くすることができる。
【0057】
具体的には、図2において最も収差が小さくなるデフォーカスは−0.0125mmであり、デフォーカス−0.0125mmにおける波面収差極値半径位置は約0.7であるが、波面収差極値半径位置が約0.8(デフォーカス−0.01524mm)である場合における規格化最短電極幅は0.008以上となり、波面収差極値半径位置が約0.7である場合における規格化最短電極幅(約0.006)の1.3倍となる。従って、規格化最短電極幅を広くすることができ、液晶素子2の製造における歩留まりの改善を図ることができる。例えば、有効光束径が3mmφの対物レンズにおいては、規格化最短電極幅が約0.006の場合、電極幅は9μmとなり、規格化最短電極幅が約0.008の場合、電極幅は12μmとなる。液晶素子2の製造上、電極幅が9μmの透明電極の形成は難しいが、電極幅が12μmの透明電極の形成は比較的容易であり、量産に耐える歩留まりの改善を実現することができる。
【0058】
図4(a)に、デフォーカス−0.0125mmにおいて発生する球面収差の波面を示し、図4(b)に、図4(a)に示す球面収差のP−P値を0.1λとするような輪帯状の電極パターンを有する液晶素子2により加えられる液晶補正位相差を示し、図4(c)に、図4(b)に示す液晶補正位相差を有する液晶素子2により補正された球面収差の波面を示す。また、図4(a)乃至(c)における縦軸は収差(Aberration)を示す。また、図4(a)における横軸は、対物レンズ1の光軸からHD4のNAの範囲(BD/HD共通領域7)の外縁までの距離を「1」とした場合の規格化動径半径(Radius)を示す。また、図4(b)、(c)における横軸は、対物レンズ1の光軸からBD3のNAの範囲(BD専用領域8)の外縁までの距離を「1」とした場合の規格化動径半径(Radius)を示す。
【0059】
一方、図5(a)に、デフォーカス−0.02mmにおいて発生する球面収差の波面を示し、図5(b)に、図5(a)に示す球面収差のP−P値を0.1λとするような輪帯状の電極パターンを有する液晶素子2により加えられる液晶補正位相差を示し、図5(c)に、図5(b)に示す液晶補正位相差を有する液晶素子2により補正された球面収差の波面を示す。また、図5(a)乃至(c)における縦軸は収差(Aberration)を示す。また、図5(a)における横軸は、対物レンズ1の光軸からHD4のNAの範囲(BD/HD共通領域7)の外縁までの距離を「1」とした場合の規格化動径半径(Radius)を示す。また、図5(b)、(c)における横軸は、対物レンズ1の光軸からBD3のNAの範囲(BD専用領域8)の外縁までの距離を「1」とした場合の規格化動径半径(Radius)を示す。
なお、図4及び図5においては、BD3を再生する場合に発生する球面収差を示すが、前述の通り、HD4を再生する場合に発生する球面収差は、BD3を再生する場合に発生する球面収差の符号を反転させたものに等しい。従って、以下の記載は、HD4を再生する場合に発生する球面収差を低減する場合にも適用可能である。
【0060】
図4(b)と図5(b)を比較すると、図5(b)の方が、液晶素子2に形成する透明電極の電極数が増えているが、最短の電極幅は広くなっていることがわかる。
なお、補正前の球面収差のP−P値が1λを超える場合、当該球面収差を補正するために必要と計算された位相差から、波長λの整数倍に等しい位相差を差し引いて、液晶素子2が加える位相差を決定している。これにより、液晶素子2により加えられる位相差を±(1/2)λ以内に抑えている。波長λの整数倍の位相差は、当該位相差がレーザ光の可干渉距離以内であれば、位相差がないのと等価である。そのため、波長λの整数倍の位相差を差し引いても、液晶素子2が加える位相差の効力に変化はない。また、球面収差を補正するために必要と計算された位相差から波長λの整数倍の位相差を差し引いて液晶素子2が加える位相差を決定することにより、図5(b)に示すように、液晶素子2が加える位相差に、同じ位相差を加える領域が複数生じる。換言すれば、液晶素子2において、同じ電圧を共通に印加する領域が生じる。これにより、液晶素子2において加える位相差のダイナミックレンジを狭くでき、印加する電圧数を少なくすることができる。
【0061】
また、図4(b)では、中心を除いて、規格化動径半径が0.55である場合の透明電極の幅が最も広い。図5(b)では、中心を除いて、規格化動径半径が0.65である場合の透明電極の幅が最も広い。図4(b)及び図5(b)の横軸は、BD3のNA範囲(対物レンズ1の光軸からBD専用領域8の外縁までの距離)を「1」とした場合の規格化動径半径を示すため、HD4のNA範囲の規格化動径半径に換算するには、NA比(0.85/0.65)で割り算すればよい。従って、透明電極の幅が最も広いのは、図4(b)では0.72、図5(b)では0.85となる。よって、液晶素子2のHD4のNA範囲の80%以上100%以下の半径位置において、透明電極の幅が極大となる。
【0062】
本発明においては、電極最短幅を広くする分、液晶素子2に形成される透明電極の電極数が多くなる。通常、特許文献5に示す従来例のように、液晶素子2に形成される透明電極を電源に接続するため、当該透明電極を液晶素子2の外縁に向かって、各透明電極の輪帯に略垂直に引き出す。しかし、本発明のように、透明電極の電極数が多い場合、引き出し配線の領域が広くなってしまい、収差補正性能が低下してしまう。そこで、本発明では、同じ電圧を印加する複数の輪帯状の透明電極を接続して1本とし、且つ、異なる電圧を印加する透明電極と重ならないように、引き出し配線を配置している。図6(a)に、5本の異なる電圧を印加する透明電極があり、1本の透明電極が同じ電圧を印加する複数の輪帯からなる場合における本発明の電極の配置を示す。また、図6(b)に、図6(a)における5本の透明電極のうち1本の透明電極の配置を示す。図6に示すように、1本の透明電極は、内側の輪帯から外側の輪帯までが略とぐろ状に接続されている。より具体的には、全ての輪帯は、一部が欠失された略輪形状を有している。そのため、全ての輪帯は、欠失されてなる端部を有している。そして、内側の輪帯の端部と、当該内側の輪帯と同じ電圧を印加する外側の輪帯の端部とが略半径方向に沿って引き出し線により順次接続されている。これにより、複数の同じ電圧を印加する輪帯が1本の透明電極として略とぐろ状に接続される。また、図6(a)に示すように、5本の略とぐろ状の透明電極の引き出し配線が互いに重なり合わないように配置されている。
【0063】
なお、図6は、透明電極の配置を模式的に示すものであり、透明電極の幅や間隔は実物とは異なる。そして、図6のように透明電極を配置することにより、5種類の電圧であれば5本の配線だけで引き出し配線を配置することができる。従って、透明電極の電極数が多くても、引き出し配線の領域を最小限に抑えることができる。これにより、液晶素子2の収差補正性能の低下を防ぐことができる。
ただし、透明電極の電気抵抗が配線の長さに比べて大きい場合は、配線の長さによる電圧降下を考慮して、透明電極の配置を補正する。
【0064】
図7、図8に、実際の設計例における透明電極の配線を示す。図7は、従来のように透明電極の各輪帯に対して1本ずつ引き出し配線を配置した場合の全体図と引き出し配線の領域の拡大図を示す。また、図8は、本発明における引き出し配線方法により引き出し配線を配置した場合の全体図と引き出し配線の領域の拡大図を示す。図7、図8を比較すると、図8の引き出し配線領域は、図7に比べて大幅に減っていることがわかる。引き出し配線がない理想的な液晶素子によって収差補正した場合、RMS波面収差は、0.028λとなる。一方、図7に示すように引き出し配線を配置した場合、RMS波面収差は、0.082λとなる。そして、図8に示すように引き出し配線を配置した場合、RMS波面収差は、0.053λとなり、マレシャル基準を満たす。
【0065】
次に、本発明に用いる液晶素子2について、図9、図10、図11を参照しながら説明する。図9に、液晶素子2の断面図を示す。また、図10に、液晶素子2の斜視図を示す。また、図11に、液晶素子2の分解図を示す。
液晶素子2は、図9乃至図11に示すように、ガラス基板201、202、203、液晶層204、205、透明電極206、207、208、209、封止材210、211、212、213などを有している。
【0066】
ガラス基板201、202は、略同一の面形状を有しており、略矩形形状となっている。また、ガラス基板203は、略矩形形状に形成されており、一辺側がガラス基板201、202よりも延出した延出部を有している。そして、液晶層204、205は、それぞれ、ガラス基板201とガラス基板203との間、ガラス基板202とガラス基板203との間に挟持されている。具体的には、液晶層204は、液晶が、ガラス基板201、203、封止材210、212により形成される空間に封入されてなる。また、液晶層205は、液晶が、ガラス基板202、203、封止材211、213により形成される空間に封入されてなる。
また、液晶層204、205は、液晶層204の配向方向と液晶層205の配向方向とが互いに直行するように、ガラス基板201、202、203の間に挟持されている。
【0067】
ガラス基板201、202、203の液晶層204、205に面した面上には、透明電極206、207、208、209が配置されている。
また、図10、図11に示すように、ガラス基板201、202上に配置される透明電極206、209は、異方性導電性接着剤214、215によりガラス基板203上に配置された電極2071、2081にそれぞれ導通されている。なお、図10、図11では、電極2071、2081を模式的に示している。
そして、全ての電極配線は、ガラス基板203の両面の図示しない端子部、後述するFPC(フレキシブルプラスティックケーブル)218などを介して外部と接続される。
【0068】
なお、図10及び図11には、簡略化のため、透明電極206、207、208、209の電極パターンを模式的に示す。実際には、透明電極206、207の一方、及び、透明電極208、209の一方が、図6に示すように、略とぐろ形状となるように配置される。また、透明電極206、207の他方、及び、透明電極208、209の他方、即ち、略とぐろ形状に配置されない透明電極は、バイアス電圧を加える一様な単一の電極構造に形成される。又は、透明電極206、207の他方、及び、透明電極208、209の他方は、BD/HD互換における球面収差とは異なる収差を補正するための電極として用いることができる。なお、液晶層204、205は、配向方向に平行な一方向の光に対してのみ収差補正機能を有する。そのため、透明電極206、207の一方、及び、透明電極208、209の一方は、同じ電極パターンで配置される必要がある。また、透明電極206、207の他方、及び、透明電極208、209の他方は、同じ電極パターンで配置されることが望ましい。
【0069】
光ディスクのピックアップ光学系においては、半導体レーザ(光源)から対物レンズへの光路中にビームスプリッタを配置し、光ディスクの反射光を光検出器に導く。記録用のピックアップ光学系においては、ビームスプリッタとして偏光ビームスプリッタを使用する。また、偏光ビームスプリッタと対物レンズとの間に1/4波長板を配置する。これにより、半導体レーザから出射された光を略100%に近い効率で偏光ビームスプリッタを透過させることができる。また、光ディスクの反射光をほぼ100%に近い効率で偏光ビームスプリッタにおいて反射させることができる。これにより、無偏光のビームスプリッタを用いる場合より光利用効率を高くすることができる。
【0070】
このようなピックアップ光学系においては、偏光ビームスプリッタから1/4波長板までの光路において、光ディスクへの入射光の偏光方向と、光ディスクの反射光の偏光方向とが直交することとなる。そのため、液晶素子が偏光ビームスプリッタと1/4波長板との間に配置された場合、当該液晶素子は、入射光と反射光の何れか一方に対してのみ収差補正性能を有することとなる。ここで、光ディスク上において収差が発生するため、入射光の収差を補正しなければ、ピックアップ光学系の収差を十分に補正することができない。そのため、通常、液晶素子は、入射光に対して収差補正機能を有するように配置される。しかし、反射光の収差を補正しないと、焦点ずれやトラッキング信号の劣化を生じる。これにより、安定なサーボ制御を阻害する可能性がある。特に、BD/HD互換においては、収差の補正量が通常の基板厚誤差補正に比べて大きいため、反射光の収差の影響が深刻である。
【0071】
上述のような場合に、2層の液晶層204、205を有する液晶素子2を用いると、入射光だけでなく反射光に対しても収差補正を行うことができる。液晶層204と液晶層205は、配向方向が直行しており、また、透明電極206、207の一方、及び、透明電極208、209の一方は、同じ電極パターンで配置されているため、入射光及び反射光の両方に対して収差補正性能を有する。
【0072】
また、BD3、HD4共に、2層ディスクの規格を有する。2層ディスクのBD3と2層ディスクのHD4との互換を行う場合、上述のBD/HD互換における球面収差の補正以外に、通常の球面収差を補正する必要がある。そのため、透明電極206、207の他方、及び、透明電極208、209の他方の電極パターンを、通常の球面収差を補正するための電極パターンとすることが好ましい。2層ディスク規格のBD3の場合、層間隔は25μmであるため、当該層間隔により発生する球面収差のP−P値は0.8λ程度である。従って、透明電極206、207の他方、及び、透明電極208、209の他方の電極パターンは、BD/HD互換における球面収差を補正するための細かい電極パターンではなく、従来の電極パターンであってもよい。
【0073】
また、2層の液晶層204、205を有する液晶素子2を用いる場合、ピックアップ光学系に1/4波長板を設けることが必須である。1/4波長板は、液晶素子2の対物レンズ1側に配置されてもよいし、液晶素子2の偏光ビームスプリッタ側に配置されてもよい。しかし、2層の液晶層204、205に作用する透明電極間(透明電極206、207の一方、及び、透明電極208、209の一方)に位置ずれがある場合には、液晶素子2の対物レンズ1側に配置されることが好ましい。これにより、液晶素子2を透過する際に光が直線偏光となる。この場合、図9に示すガラス基板201及びガラス基板202のうち対物レンズ1側となる方を1/4波長板とすればよい。1/4波長板として波長以下の周期構造による構造異方性を有するものを用いれば、ガラス基板上の誘電体格子のパターニングにより実用することもできる。
【0074】
次に、本発明の実施例1にかかる対物レンズユニット100を駆動するアクチュエータ9について、図12、図13、図14を参照しながら説明する。
図12は、液晶素子2の配線を示す斜視図である。図12(a)に、液晶素子2の表面を示し、図12(b)に、液晶素子2の裏面を示す。
図13は、アクチュエータ9に搭載した場合における液晶素子2の配線を表す概略図である。
また、図14は、アクチュエータ9の概略構成を示す斜視図である。
【0075】
図12に示すように、液晶素子2のガラス基板203上には、液晶ドライバICチップ217(半導体素子)が実装されている。通常、ICチップは、フレキシブルプラスティックケーブル(FPC)に搭載されることにより、ガラス基板上に搭載される。しかし、FPCのサイズ、重量により、液晶素子をアクチュエータに搭載した際に、可動部が重量増大化、大型化してしまう。これにより、アクチュエータの性能が劣化する。そのため、本発明では、ガラス基板203上に、液晶ドライバICチップ217を異方性導電性接着剤などにより接続する。
【0076】
ガラス基板203の液晶ドライバICチップ217が搭載された面の裏側の面には、複数のボンディングパッド219が接続されている。
そして、ガラス基板203の延出部の両面を挟むように接続されたFPC218(フレキシブル基板)によって、延出部の両面が電気的に接続されている。具体的には、ガラス基板203の両面に接続された液晶ドライバICチップ217やボンディングパッド219などの電極はFPC218により接続されている。
また、液晶素子2とアクチュエータ配線とは、ボンディングパッド219を介して接続される。
【0077】
そして、図13、図14に示すように、液晶素子2は、ボンディングパッド219、アクチュエータ配線を介して、複数本の弾性支持ワイヤ91と接続されている。また、対物レンズ1と液晶素子2とは、レンズホルダ95により内蔵されている。そして、弾性支持ワイヤ91は、対物レンズ1と液晶素子2を一体的に支持している。
具体的には、図14に示すように、液晶素子2と対物レンズ1とは、アクチュエータコイル92、93、94と接続されている。そして、一部の弾性支持ワイヤ91は、アクチュエータコイル92、93、94にアクチュエータ駆動信号を入力する。また、他の弾性支持ワイヤ91は、アクチュエータコイル92、93、94に電源電圧(Vcc)、グランド(GND)を接続する。これにより、アクチュエータ9が、弾性支持ワイヤ91を介して、アクチュエータコイル92、93、94を駆動し、液晶素子2と対物レンズ1を一体的に駆動する。なお、アクチュエータ駆動信号には、対物レンズユニット100を少なくとも光ディスクに対して垂直方向及び光ディスクの半径方向に駆動するための駆動信号が含まれる。
【0078】
また、図13に示すように、液晶ドライバICチップ217は、一部の弾性支持ワイヤ91を介して、電源電圧(Vcc)、グランド(GND)と接続される。また、駆動電圧情報のシリアルデータ信号(Data)、クロック信号(Clock)、制御信号(CONT)などの液晶ドライバICチップ217を駆動するための半導体駆動信号は、500kHz以上の高周波信号であるため、フォーカスやトラッキング、レンズチルトなどのアクチュエータ駆動信号の駆動帯域に比べて十分高い。そのため、シリアルデータ信号(Data)、クロック信号(Clock)、制御信号(CONT)などの半導体駆動信号は、他の弾性支持ワイヤ91を介して、アクチュエータ駆動信号(AF+、AF−、TR+、TR−、Tilt+、Tilt−)に重畳されて、液晶ドライバICチップ217に入力される。
【0079】
また、透明電極の引き出し配線220は、液晶素子2において、半導体レーザからの光が入射する円形領域において一の半径方向に沿って配置されている。そして、図14に示すように、当該一の半径方向は、対物レンズユニット100がアクチュエータ9によって駆動される光ディスクの半径方向(図14で示すトラッキング方向)と略同じとなっている。
【0080】
以上に説明した本発明の実施例1にかかる対物レンズユニット100は、BD3とBD3より厚いHD4とに、半導体レーザからの光を選択的に集光する対物レンズユニット100であって、HD4の開口数の範囲において、BD3の基板厚とHD4の基板厚との中間の基板厚を有する光ディスクに対して半導体レーザからの光を集光する非球面形状と、HD4の開口数の範囲より外縁側かつBD3の開口数の範囲において、BD3に対して半導体レーザからの光を集光する非球面形状と、を有する対物レンズ1と、HD4の開口数の範囲において、透過光に対して略(j/k)λ(ただし、kはk≧2を満たす自然数、jは、|j|≦k/2を満たす整数、λは、前記光源の波長)の位相差を与える輪帯領域を有する液晶素子2と、を備え、液晶素子2は、BD3に半導体レーザからの光を集光する場合と、HD4に半導体レーザからの光を集光する場合とで、当該位相差の符号を変えるものである。
【0081】
実施例1においては、1つの半導体レーザからの光を基板厚の異なるBD3及びHD4に集光する場合に、BD3とHD4との中間の基板厚の光ディスクに対して半導体レーザからの光を集光する非球面形状を備えることにより、基板厚の異なるBD3とHD4において発生する球面収差の絶対値が同じになるようにし、当該球面収差の符号のみが異なるようにする。さらに、基板厚の異なるBD3及びHD4に半導体レーザからの光を集光する場合に、BD3とHD4との間で、液晶素子2により与える位相差の符号を変える。これにより、基板厚の異なるBD3及びHD4の球面収差を1つの液晶素子によって補正することができる。具体的には、液晶素子2に形成する透明電極の単一の電極パターンにより、基板厚の異なるBD3及びHD4に発生する球面収差を補正することができる。
【0082】
また、位相シフトを液晶素子2により発生させることができる。そのため、位相シフトの大きさが限定されず、より細かい位相シフト段差を与えることができる。そして、より好適な収差補正を行うことができる。
【0083】
また、光軸の半径位置を0%、HD4の開口数の範囲の外縁の半径位置を100%とした場合において、80%以上100%以内の半径位置に、隣接内側電極より電極幅が広い透明電極が位置する。
【0084】
球面収差を含む波面収差の形状(W(ρ))は、W(ρ)=W40ρ+W20ρで表される。ここで、ρは、対物レンズの有効径を「1」として規格化した動径半径座標である。また、W40は、球面収差を表すサイデルの収差係数である。また、W20は、デフォーカス量を表すサイデルの収差係数である。デフォーカス量は、光ディスクに集光するスポットの焦点位置を変えることにより変化する。そのため、デフォーカス量は、実際上、フォーカスサーボのオフセットを可変させることにより制御することができる。
【0085】
そして、液晶素子により位相シフトを発生させて上述の波面収差の形状を有する波面収差を補正する場合、光軸を中心として同心円状に区分された輪帯毎に異なる位相差を透過光に発生させる。これにより、所望するP−P値のWlimitの範囲内となるように波面収差の形状が折りたたまれるように、波面収差を補正する。このとき、波面収差の形状の傾きが大きいほど、液晶素子に形成する透明電極の幅が狭くなる。透明電極の幅が狭いと、液晶素子に透明電極を形成するのが難しくなる。また、透明電極からの漏れ電界によって、所望の位相分布からの誤差が発生しやすくなる。
【0086】
そこで、波面収差の形状の傾きの最大値が最も小さくなるように、デフォーカス量を制御することが望ましい。これにより、透明電極の電極幅をなるべく広くすることができる。波面収差の形状の傾きは、上述のW(ρ)を1次微分することにより得られる。従って、上述のW(ρ)の1次微分により得られる値の絶対値の最大値が最小となるデフォーカス量において、透明電極の電極幅をなるべく広くすることができる。そして、W(ρ)の1次微分により得られる値の絶対値の最大値が最小となる場合、波面収差の形状は、光軸の半径位置を0%、第2の開口数の範囲の外縁の半径位置を100%とした場合において、80%以上100%以内の半径位置に極値がある形状となる。波面収差が極値となる位置において、波面収差の形状の傾きが最も小さい。そのため、波面収差が極値となる位置において、透明電極の電極幅も当該位置近傍で最も広く、極大となる。換言すれば、80%以上100%以内の半径位置に、隣接する内側の電極より幅の広い電極が少なくとも1つ存在することになる。従って、80%以上100%以内の半径位置に隣接内側電極より電極幅が広い透明電極が位置する場合、透明電極の最短電極幅をなるべく広くすることができる。
【0087】
また、液晶素子2と対物レンズ1との間の軸ずれに対する残留収差は、波面収差の1次微分と軸ずれとの積に比例する。透明電極の電極幅をなるべく広くするデフォーカス量では、波面収差の1次微分の最大値が最小となっている。従って、そのため、透明電極の電極幅をなるべく広くするデフォーカス量において、軸ずれに対する残留収差は最小となる。従って、透明電極の電極幅を広くすると、液晶素子2と対物レンズ1との間に軸ずれが生じた場合のコマ収差の発生を最小限に抑えることができる。換言すれば、80%以上100%未満の半径位置に隣接内側電極より電極幅が広い透明電極が位置する場合、軸ずれによる残留収差の発生を低減することができる。
【0088】
さらに、液晶素子2には、異なる電圧が印加される複数本の透明電極が形成されており、透明電極は、同じ電圧が印加される複数の輪帯からなり、当該輪帯は、一部が欠失されてなる端部を有し、内側の輪帯の端部と、当該内側の輪帯と同じ電圧を印加する外側の輪帯の端部とが略半径方向に沿って引き出し配線により順次接続され、複数本の透明電極の引き出し配線が互いに重なり合わないように配置されている。
【0089】
これにより、同じ電圧を印加する複数の輪帯状の電極を1本の透明電極とすることができる。そして、引き出し配線の本数を透明電極に印加する電圧数とすることができる。よって、引き出し配線の領域を最小限に抑えることができ、液晶素子2の収差補正性能の低下を防ぐことができる。
【0090】
実施例2.
図15に、本発明の実施例2にかかる対物レンズユニット101の一例を示す。図15(a)に、BD3に平行光5、6を集光する対物レンズユニット101を示し、図15(b)に、HD4に平行光5、6を集光する対物レンズユニット101を示す。実施例2では、対物レンズ1A、液晶素子2Aの構成のみが実施例1と異なるため、同一の構成については、同一の符号を示すとともに、その説明を省略する。
【0091】
対物レンズユニット101は、対物レンズ1A、液晶素子2A等を備えている。液晶素子2Aは、対物レンズ1Aの光源側に配置されている。また、液晶素子2Aは、対物レンズ1Aと一体的に構成されている。そして、アクチュエータ9により、対物レンズ1Aと液晶素子2Aとが一体となって動作される。
【0092】
対物レンズ1Aは、BD/HD共通領域7と、BD専用領域8とを有している。対物レンズ1Aは、非球面レンズである。具体的には、対物レンズ1AのBD/HD共通領域7におけるレンズ面形状は、BD3の基板厚と、HD4の基板厚との中間の基板厚の光ディスクに対して最適に平行光6を集光する非球面形状となっている。例えば、BD3の基板厚は0.1mmであり、HD4の基板厚は0.6mmであるため、対物レンズ1AのBD/HD共通領域7におけるレンズ面形状は、基板厚0.35mmの光ディスクに対して最適に平行光6を集光する非球面形状を有する。
また、対物レンズ1AのBD専用領域8におけるレンズ面形状は、BD3に対して最適に平行光5を集光する非球面形状となっている。
【0093】
さらに、対物レンズ1Aの表面には、透過光に対して(1/2)λの位相差を発生させる段差形状が形成されている。具体的には、対物レンズ1AのBD/HD共通領域7における面形状は、輪帯状の溝部10が形成されている。溝部10の深さは、当該溝部10を透過する光の位相を、当該溝部10を透過しない光(当該溝部10の外側を透過する光)より(1/2)λだけ進めるような深さとなっている。即ち、溝部10は、当該溝部10の内側を透過する光と外側を透過する光の間に(1/2)λの位相差を発生させる。具体的には、溝部10の深さは、λ/(2(n−1))で与えられる深さとなっている。なお、nは、対物レンズ1Aの硝材の屈折率である。
【0094】
図16に示すグラフを参照しながら、対物レンズ1Aの溝部10の影響について説明する。
図16(a)は、BD3を再生する際の波面収差を示し、図16(b)は、HD4を再生する際の波面収差を示す。また、図16において、縦軸は収差を示し、横軸は動径半径を示す。
対物レンズ1AのBD/HD共通領域7におけるレンズ面形状は、BD3とHD4の中間の基板厚0.35mmの光ディスクに対して最適に平行光6を集光する非球面形状を有する。そのため、図16に示すように、BD3を再生する際の波面収差と、HD4を再生する際の波面収差とは、波面形状が等しく、符号のみが反転した波面収差となる。具体的には、BD3を再生する際の波面収差と、HD4を再生する際の波面収差は、0.35mmの光ディスクとBD3及びHD4との基板厚差0.25mmに基づく球面収差の波面形状を有している。
【0095】
そして、上述のように、波長λの整数倍の位相差は、当該位相差がレーザ光の可干渉距離以内であれば、位相差がないのと等価である。そのため、実施例1の場合と同様に、補正すべき収差、即ち、0.35mmの光ディスクとBD3及びHD4との基板厚差0.25mmに基づく球面収差から、波長λの整数倍に等しい位相差を差し引いて、液晶素子2が加える位相差を決定すればよい。図16において、補正すべき収差から波長λの整数倍に等しい位相差を差し引くことによる波面収差の変化を黒矢印で示す。図16に示すように、補正すべき収差から波長λの整数倍に等しい位相差を差し引くことにより、補正すべき収差の大きさを1λ以下とすることができる。
【0096】
さらに、ここで、対物レンズ1AのBD/HD共通領域7における面形状に設けられた溝部10は、当該溝部10の内側を透過する光と外側を透過する光の間に(1/2)λの位相差を発生させる。そのため、溝部10により、(1/2)λだけ、補正すべき収差を低減することができる。図16に、溝部10による波面収差の変化を白矢印で示す。
【0097】
具体的には、図16(a)において、BD3を再生する際に発生する波面収差をマイナス方向に(1/2)λだけシフトさせる場合、図16(b)においても、同様に、HD4を再生する際に発生する波面収差をマイナス方向に(1/2)λだけシフトする。そのため、HD4を再生する際に発生する波面収差を増大させることとなる。しかし、HD4を再生する際に発生する波面収差を(1/2)λだけ増大させたことにより、さらに1λだけ、HD4を再生する際に発生する波面収差から差し引くことができる。そして、結果として、HD4を再生する際に発生する波面収差を(1/2)λだけ低減することができる。
結果として、対物レンズ1AのBD/HD共通領域7に設けた溝部10により、BD3及びHD4を再生する際に発生する波面収差のp−p値を(1/2)λ以下とすることができる。そして、(1/2)λ以下となるように低減された当該波面収差を液晶素子2Aを用いて補正する。
【0098】
図17(a)に、対物レンズ1AのBD/HD共通領域7に設けた溝部10の段差形状により加えられる位相差を示し、図17(b)に、(1/2)λ以下の波面収差のP−P値を0.1λとするような輪帯状の電極パターンを有する液晶素子2Aにより加えられる液晶補正位相差を示す。また、図17(a)、(b)における縦軸は収差(Aberration)を示す。また、図17(a)における横軸は、対物レンズ1Aの光軸からHD4のNAの範囲(BD/HD共通領域7)の外縁までの距離を「1」とした場合の規格化動径半径(Radius)を示す。また、図17(b)における横軸は、対物レンズ1Aの光軸からBD3のNAの範囲(BD専用領域8)の外縁までの距離を「1」とした場合の規格化動径半径(Radius)を示す。
【0099】
図17(b)と図5(b)とを比較すると、実施例2にかかる液晶素子2Aに形成される透明電極の幅は、実施例1の液晶素子2と変わらない。しかし、図17(b)の位相差を発生させるために液晶素子2Aの透明電極が印加する電圧は5レベルであり、図5(b)の位相差を発生させるために液晶素子2の透明電極が印加する電圧の10レベルの半分となっている。そのため、実施例2にかかる液晶素子2Aに形成する透明電極の本数を、実施例1にかかる液晶素子2に形成する透明電極の本数の半分にすることができる。従って、対物レンズ1AのBD/HD共通領域7に溝部10を形成することにより、液晶素子2Aに形成する透明電極の本数を減らすことができる。なお、対物レンズ1Aの溝部10と液晶素子2Aにより補正された結果得られる波面収差は、図5(c)と同じである。
【0100】
そして、液晶素子2Aに形成する透明電極の本数を減らすことができることにより、引き出し配線の本数も減らすことができる。これにより、引き出し配線の領域を低減することができ、収差補正性能の低下を防ぐことができる。
【0101】
なお、対物レンズ1AのBD/HD共通領域7に形成される溝部10を、液晶素子2Aのガラス基板201、202に形成してもよい。液晶素子2Aのガラス基板201、202の表面に誘電体材料を蒸着、スパッタリングすることなどにより、液晶素子2Aのガラス基板201、202の表面に溝部10を形成することができる。
対物レンズ1Aをプラスティック素材により形成する場合、対物レンズ1Aに溝部10を設けることは、比較的容易である。しかし、対物レンズ1Aをガラス素材により形成すると、成形温度が高いため、金型材料として超鋼などの硬い材料が必要となり、困難となる。このような場合に、液晶素子2Aのガラス基板201、202の表面に溝部10を形成すると、対物レンズ1Aとしてガラスモールドレンズなどを用いても、容易に、補正すべき収差を(1/2)λ以下とすることができる。
【0102】
また、図17(b)では、BD3を再生する際に液晶素子2Aが加える液晶補正位相差を示したが、HD4を再生する際には、図17(b)と同じ波形で符号が反転した位相差を加えればよい。
【0103】
また、図17(b)では、中心を除いて、規格化動径半径が0.65である場合の透明電極の幅が最も広い。図17(b)の横軸は、BD3のNA範囲(対物レンズ1の光軸からBD専用領域8の外縁までの距離)を「1」とした場合の規格化動径半径を示すため、HD4のNA範囲の規格化動径半径に換算するには、NA比(0.85/0.65)で割り算すればよい。従って、図17(b)において、透明電極の幅が最も広いのは、0.85となる。よって、液晶素子2AのHD4のNA範囲の80%以上100%以下の半径位置において、内側隣接電極より透明電極の幅が広くなる。
【0104】
図18に、実施例2の液晶素子2Aの透明電極の実際の配線を示す全体図と、引き出し配線の領域の拡大図を示す。
実施例2にかかる液晶素子2Aでは、対物レンズ1Aに設けられた溝部10により、透明電極の本数が、実施例1にかかる液晶素子2より減っている。そのため、図8と図18を比較すると、図18の方が、引き出し配線の領域が図8に比べて小さくなっている。図18に示す透明電極の配線を有する液晶素子2Aを用いた場合のRMS波面収差は0.033λとなり、図8に示す透明電極を有する液晶素子2を用いた場合のRMS波面収差0.053λよりもさらに小さくなっている。
【0105】
以上に説明した本発明の実施例2にかかる対物レンズユニット101によれば、実施例1にかかる対物レンズユニット100と同様の効果が得られることは勿論のこと、対物レンズ1Aに設けられた溝部10により、透過光に±(1/2)λの位相差を与えることができる。+(1/2)λの位相シフトを与えることは、−(1/2)λの位相シフトを与えることと等価である。
【0106】
さらに、対物レンズ1Aは、基板厚の異なるBD3とHD4の中間の基板厚の光ディスクに半導体レーザからの光を集光する非球面形状を有するので、基板厚の異なるBD3とHD4に半導体レーザからの光を集光する際に発生する球面収差は、絶対値が等しく、符号が異なる。そして、絶対値が等しく符号が異なる球面収差に対しては、+(1/2)λの位相シフトも−(1/2)λの位相シフトも実質的に等価である。そのため、透過光に対して(1/2)λの位相シフトを与える溝部10により、BD3及びHD4に発生する球面収差を等しく低減することができる。
そして、上述の(1/2)λの位相シフトの符号の反転には、液晶素子2Aの透明電極に印加する電圧の符号を反転させて、加える位相差の符号を反転させる機能は必要ない。
【0107】
さらに、位相シフトを液晶素子2Aにより発生させることができる。そのため、位相シフトの大きさが±(1/2)λに限定されず、より細かい位相シフト段差を与えることができる。そして、より好適な収差補正を行うことができる。
【0108】
さらに、また、(1/2)λの位相差を発生させる対物レンズ1Aの溝部10と液晶素子2Aとを組み合わせて位相シフトを発生させることができる。そのため、液晶素子2Aで発生させる位相シフトの範囲を狭くすることができる。また、対物レンズ1Aの溝部10のみでは、発生させる位相シフトが(1/2)λに限定されてしまうが、液晶素子2Aを組み合わせることにより、より細かい位相シフト段差を与えることができる。
【0109】
そして、液晶素子2Aにより発生させる位相シフトの範囲を狭くすることが可能になると、印加する電圧の信号本数を減らすことができる。そのため、対物レンズユニット101をアクチュエータ9に搭載する際における配線数を削減することができる。
【0110】
実施例3
図19に、本発明の実施例3にかかる対物レンズユニット102の一例を示す。図19(a)に、BD3に平行光5、6を集光する対物レンズユニット102を示し、図19(b)に、HD4に平行光5、6を集光する対物レンズユニット102を示す。実施例3では、対物レンズ1B、液晶素子2Bの構成のみが実施例1と異なるため、同一の構成については、同一の符号を示すとともに、その説明を省略する。
【0111】
対物レンズユニット102は、対物レンズ1B、液晶素子2B等を備えている。液晶素子2Bは、対物レンズ1Bの光源側に配置されている。また、液晶素子2Bは、対物レンズ1Bと一体的に構成されている。そして、アクチュエータ9により、対物レンズ1Bと液晶素子2Bとが一体となって動作される。
【0112】
対物レンズ1Bは、BD/HD共通領域7と、BD専用領域8とを有している。対物レンズ1Bは、非球面レンズである。具体的には、対物レンズ1BのBD/HD共通領域7におけるレンズ面形状は、BD3の基板厚と、HD4の基板厚との中間の基板厚の光ディスクに対して最適に平行光6を集光する非球面形状となっている。例えば、BD3の基板厚は0.1mmであり、HD4の基板厚は0.6mmであるため、対物レンズ1BのBD/HD共通領域7におけるレンズ面形状は、基板厚0.35mmの光ディスクに対して最適に平行光6を集光する非球面形状を有する。
また、対物レンズ1BのBD専用領域8におけるレンズ面形状は、BD3に対して最適に平行光5を集光する非球面形状となっている。
【0113】
液晶素子2Bのガラス基板201又はガラス基板202のいずれか一方の表面には、透過光に対して(1/2)λの位相差を発生させる段差形状が形成されている。具体的には、液晶素子2Bのガラス基板201又はガラス基板202の何れか一方には、輪帯状の凹凸形状216が形成されている。凹凸形状216の段差は、当該凹部を透過する光の位相を、当該凸部を透過する光より(1/2)λだけ進めるような段差となっている。即ち、凹凸形状216は、当該凹部を透過する光と凸部を透過する光の間に(1/2)λの位相差を発生させる。具体的には、凹凸形状216の段差は、λ/(2(n−1))で与えられる段差となっている。なお、nは、対物レンズ1Bの硝材の屈折率である。
【0114】
そして、液晶素子2Bに設けられた凹凸形状216は、実施例2にかかる対物レンズ2に設けられた溝部10と同様の効果を有する。即ち、液晶素子2Bに設けられた凹凸形状216は、当該凹部を透過する光と当該凸部を透過する光の間に(1/2)λの位相差を発生させる。そのため、液晶素子2Bに設けた凹凸形状216により、BD3及びHD4を再生する際に発生する波面収差のp−p値を(1/2)λ以下とすることができる。そして、(1/2)λ以下となるように低減された当該波面収差を、液晶素子2Bを透明電極によって駆動することにより補正する。
【0115】
具体的には、液晶素子2Bに、(1/2)λ以下の波面収差のP−P値を0.1λとするような輪帯状の電極パターンを形成する。換言すれば、液晶素子2Bが、図17(b)に示す液晶補正位相差を加えるように、液晶素子2Bに透明電極を形成する。
【0116】
そのため、実施例3にかかる液晶素子2Bに形成される透明電極の本数は、実施例1にかかる透明電極の本数の半分にすることができる。従って、液晶素子2Bに凹凸形状216を形成することにより、液晶素子2Bに形成する透明電極の本数を減らすことができる。なお、液晶素子2Bにより補正された結果得られる波面収差は、図5(c)と同じである。
【0117】
そして、液晶素子2Bに形成する透明電極の本数を減らすことができることにより、引き出し配線の本数も減らすことができる。これにより、引き出し配線の領域を低減することができ、収差補正性能の低下を防ぐことができる。
【0118】
液晶素子2Bの凹凸形状216は、フォトレジストや紫外線硬化樹脂などの2Pにより形成されてもよい。また、液晶素子2Bの対物レンズ1B側に、1/4波長板221が設けられている。1/4波長板221として波長以下の周期構造による構造異方性を有するものを用いれば、ガラス基板上の誘電体格子のパターニングにより実用することができる。これにより、入射光だけでなく反射光に対しても収差補正を行うことができる。なお、液晶素子2Bへの印加電圧を切り替えることにより、BD3とHD4とで共に収差を補正できることは、もちろんである。
【0119】
以上に説明した本発明の実施例3にかかる対物レンズユニット101によれば、実施例1にかかる対物レンズユニット100と同様の効果が得られることは勿論のこと、液晶素子2Bに設けられた凹凸形状216により、透過光に±(1/2)λの位相差を与えることができる。+(1/2)λの位相シフトを与えることは、−(1/2)λの位相シフトを与えることと等価である。
【0120】
さらに、対物レンズ1Aは、基板厚の異なるBD3とHD4の中間の基板厚の光ディスクに半導体レーザからの光を集光する非球面形状を有するので、基板厚の異なるBD3とHD4に半導体レーザからの光を集光する際に発生する球面収差は、絶対値が等しく、符号が異なる。そして、絶対値が等しく符号が異なる球面収差に対しては、+(1/2)λの位相シフトも−(1/2)λの位相シフトも実質的に等価である。そのため、透過光に対して(1/2)λの位相シフトを与える凹凸形状216により、BD3及びHD4に発生する球面収差を等しく低減することができる。
そして、上述の(1/2)λの位相シフトの符号の反転には、液晶素子2Bの透明電極に印加する電圧の符号を反転させて、加える位相差の符号を反転させる機能は必要ない。
【0121】
さらに、液晶素子2Bを駆動することにより位相シフトを発生させることができる。そのため、位相シフトの大きさが±(1/2)λに限定されず、より細かい位相シフト段差を与えることができる。そして、より好適な収差補正を行うことができる。
【0122】
さらに、また、(1/2)λの位相差を発生させる凹凸形状216と液晶素子2Bとを組み合わせて位相シフトを発生させることができる。そのため、液晶素子2Bで発生させる位相シフトの範囲を狭くすることができる。また、凹凸形状216のみでは、発生させる位相シフトが(1/2)λに限定されてしまうが、液晶素子2Bを組み合わせることにより、より細かい位相シフト段差を与えることができる。
【0123】
そして、液晶素子2Bにより発生させる位相シフトの範囲を狭くすることが可能になると、印加する電圧の信号本数を減らすことができる。そのため、対物レンズユニット102をアクチュエータ9に搭載する際における配線数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の実施例1にかかる対物レンズユニットの一例を示したものである。
【図2】本発明にかかる対物レンズによりBDを再生する際の波面収差とデフォーカスとの関係を示すグラフである。
【図3】図2に示す波面収差を補正する液晶素子のデフォーカスと最短電極幅の関係を示す表である。
【図4】デフォーカス−0.0125mmにおける球面収差の波面収差を示すグラフ(図4(a))、液晶素子により加える位相差を示すグラフ(図4(b))、補正後の波面収差を示すグラフ(図4(c))である。
【図5】デフォーカス−0.02mmにおける球面収差の波面収差を示すグラフ(図4(a))、液晶素子により加える位相差を示すグラフ(図4(b))、補正後の波面収差を示すグラフ(図4(c))である。
【図6】本発明にかかる液晶素子における引き出し配線の配置を説明する模式図である。
【図7】従来の引き出し配線方法を用いた場合における電極設計例を示す図である。
【図8】本発明にかかる引き出し配線方法を用いた場合における電極設計例を示す図である。
【図9】本発明にかかる液晶素子を示す断面図である。
【図10】本発明にかかる液晶素子を示す斜視図である。
【図11】本発明にかかる液晶素子を示す分解図である。
【図12】本発明にかかる液晶素子の配線を示す斜視図である。
【図13】本発明の液晶素子をアクチュエータに搭載した場合における液晶素子の配線を説明する概略図である。
【図14】本発明にかかるアクチュエータの概略構成を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施例2にかかる対物レンズユニットの一例を示したものである。
【図16】本発明の実施例2にかかる対物レンズの溝部により加えられる位相差及び液晶素子により加えられる位相差を説明するグラフである。
【図17】本発明の実施例2にかかる対物レンズの溝部により加えられる位相差を説明するグラフ(図17(a))、液晶素子により加えられる位相差を説明するグラフ(図17(b))である。
【図18】本発明にかかる引き出し配線方法を用いるとともに、実施例2にかかる溝部により(1/2)λの位相差を加えた場合における電極設計例を示す図である。
【図19】本発明の実施例3にかかる対物レンズユニットの一例を示したものである。
【符号の説明】
【0125】
1、1A、1B 対物レンズ(光学素子)
2、2A、2B 液晶素子(光学素子)
3 BD(第1の光ディスク)
4 HD(第2の光ディスク)
9 アクチュエータ(対物レンズアクチュエータモジュール)
91 弾性支持ワイヤ
10 溝部(段差形状)
100、101、102 対物レンズユニット
201、202、203 ガラス基板
204、205 液晶層
206、207、208、209 透明電極
216 凹凸形状(段差形状)
217 液晶ドライブICチップ(半導体素子)
218 FPC(フレキシブル基板)
221 1/4波長板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板厚を有する第1の光ディスクと、前記第1の基板厚より厚い第2基板厚を有する第2の光ディスクとに、光源からの光を選択的に集光する対物レンズユニットであって、
前記第1の光ディスクの第1の開口数よりも小さい前記第2の光ディスクの第2の開口数の範囲において、前記第1の基板厚と前記第2の基板厚との中間の基板厚を有する光ディスクに対して前記光源からの光を集光する非球面形状と、
前記第2の開口数の範囲より外縁側かつ前記第1の開口数の範囲において、第1の光ディスクに対して前記光源からの光を集光する非球面形状と、
前記第2の開口数の範囲において、透過光に対して略(j/k)λ(ただし、kはk≧2を満たす自然数、jは、|j|≦k/2を満たす整数、λは、前記光源の波長)の位相差を与える輪帯領域と、を備え、
前記輪帯領域は、前記第1の光ディスクに前記光源からの光を集光する場合と、前記第2の光ディスクに前記光源からの光を集光する場合とで、前記位相差の符号を変えて、当該位相差を加える対物レンズユニット。
【請求項2】
前記輪帯領域は、前記対物レンズユニットを構成する光学素子の表面に形成された段差形状であって、k=2である請求項1に記載の対物レンズユニット。
【請求項3】
前記対物レンズユニットは、
前記第2の開口数の範囲において、前記第1の基板厚と前記第2の基板厚との中間の基板厚を有する光ディスクに対して前記光源からの光を集光する非球面形状と、前記第2の開口数の範囲より外縁側かつ前記第1の開口数の範囲において、第1の光ディスクに対して前記光源からの光を集光する非球面形状と、を有する対物レンズと、
前記対物レンズと一体的に構成される液晶素子と、
を備え、
前記輪帯領域は、前記液晶素子の前記第2の開口数の範囲に形成された複数の輪帯状の透明電極であって、
前記第1の光ディスクに前記光源からの光を集光する場合と、前記第2の光ディスクに前記光源からの光を集光する場合とで、前記透明電極に印加する電圧が異なる請求項1に記載の対物レンズユニット。
【請求項4】
前記輪帯領域は、前記対物レンズユニットを構成する光学素子の表面に形成され、透過光に対して(1/2)λの位相差を発生させる段差形状であるとともに、前記液晶素子の前記第2の開口数の範囲に形成された複数の輪帯状の透明電極であり、
前記第1の光ディスクに前記光源からの光を集光する場合と、前記第2の光ディスクに前記光源からの光を集光する場合とで、前記透明電極に印加する電圧が異なる請求項3に記載の対物レンズユニット。
【請求項5】
光軸の半径位置を0%、前記第2の開口数の範囲の外縁の半径位置を100%とした場合において、80%以上100%以内の半径位置に、隣接内側電極より電極幅が広い前記透明電極が位置する請求項3又は4に記載の対物レンズユニット。
【請求項6】
前記液晶素子には、異なる電圧が印加される複数本の前記透明電極が形成されており、
前記透明電極は、同じ電圧が印加される複数の輪帯からなり、
前記輪帯は、一部が欠失されてなる端部を有し、
前記内側の輪帯の端部と、当該内側の輪帯と同じ電圧を印加する外側の輪帯の端部とが略半径方向に沿って引き出し配線により順次接続され、
前記複数本の透明電極の前記引き出し配線が互いに重なり合わないように配置されている請求項3乃至5の何れか一項に記載の対物レンズユニット。
【請求項7】
前記段差形状は、前記対物レンズの前記第2の開口数の範囲の非球面形状を有する表面に形成されている請求項4に記載の対物レンズユニット。
【請求項8】
前記段差形状は、前記液晶素子の表面に形成されている請求項4に記載の対物レンズユニット。
【請求項9】
前記液晶素子は、当該液晶素子を駆動する半導体素子と一体的に、前記対物レンズユニットに搭載される請求項3乃至8の何れか一項に記載の対物レンズユニット。
【請求項10】
前記半導体素子は、前記液晶素子のガラス基板の表面に形成されている請求項9に記載の対物レンズユニット。
【請求項11】
前記液晶素子は、2層の液晶層を有し、一方の前記液晶層の配向方向と他方の前記液晶層の配向方向とは、互いに直交しており、
前記液晶素子と前記対物レンズとの間に、1/4波長板が前記液晶素子と一体的に配置されている請求項3乃至10の何れか一項に記載の対物レンズユニット。
【請求項12】
前記2層の液晶層は、3枚のガラス基板の間に挟持されており、
前記3枚のガラス基板のうち中央のガラス基板は、一辺側が他のガラス基板より延出した延出部を有し、
前記延出部の両面を挟むように接続されたフレキシブル基板によって、前記延出部の両面が電気的に接続されている請求項11に記載の対物レンズユニット。
【請求項13】
請求項9又は10に記載の対物レンズユニットを光ディスクに対して少なくとも垂直方向及び光ディスクの半径方向に駆動する対物レンズアクチュエータモジュールであって、
前記対物レンズユニットを弾性的に支持する複数の弾性支持ワイヤを備え、
一部の前記弾性支持ワイヤを介して、前記対物レンズユニットを前記垂直方向及び前記半径方向に駆動するためのアクチュエータ駆動信号に重畳して、前記半導体素子を駆動させるための半導体駆動信号を前記半導体素子に入力するとともに、前記一部の弾性支持ワイヤ以外の弾性支持ワイヤを介して、電源電圧とグラウンドを前記半導体素子に導通する対物レンズアクチュエータモジュール。
【請求項14】
前記複数本の透明電極の引き出し配線は、前記液晶素子において、前記光源からの光が入射する円形領域において一の半径方向に沿って配置されており、
前記一の半径方向は、前記対物レンズユニットが駆動される光ディスクの半径方向と略同じである請求項13に記載の対物レンズアクチュエータモジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2009−176348(P2009−176348A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12133(P2008−12133)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】