対象物検出方法及び対象物検出プログラム
【課題】画像内に含まれる目的の対象物を検出する速度を向上させる。
【解決手段】標準パターンの領域を、任意の点である領域分割中心点から放射線状に2つ以上の領域に分割し、分割領域ごとに領域分割中心点から最大距離にある標準パターン画素位置を標準パターン代表点として選定する。被判定パターンの領域を、標準パターン代表点選定ステップと同じ条件で領域分割中心点を用いて2つ以上の領域に分割し、分割領域ごとに領域分割中心点から最大距離にある被判定パターン画素位置を被判定パターン代表点として選定する。対応する分割領域における標準パターン代表点の座標と被判定パターン代表点の座標の位置的差異を求め、すべての分割領域において位置的差異が予め定められた範囲内であるときに被判定パターンは目的の対象物であると判定する。
【解決手段】標準パターンの領域を、任意の点である領域分割中心点から放射線状に2つ以上の領域に分割し、分割領域ごとに領域分割中心点から最大距離にある標準パターン画素位置を標準パターン代表点として選定する。被判定パターンの領域を、標準パターン代表点選定ステップと同じ条件で領域分割中心点を用いて2つ以上の領域に分割し、分割領域ごとに領域分割中心点から最大距離にある被判定パターン画素位置を被判定パターン代表点として選定する。対応する分割領域における標準パターン代表点の座標と被判定パターン代表点の座標の位置的差異を求め、すべての分割領域において位置的差異が予め定められた範囲内であるときに被判定パターンは目的の対象物であると判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等で撮像した画像を画像処理することによって目的の対象物を検出する対象物検出方法、及び、その対象物検出方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ等で撮像した画像の情報を処理して対象物を検出する技術は、産業界の様々な分野で利用されている。
例えば、産業用ロボットにおいては、カメラで撮像した画像の情報を処理して対象物を検出し、対象物の位置のずれを求め、ロボットの位置を補正する手段がとられている。
【0003】
また、半導体製造における測長SEM(走査型電子顕微鏡)を用いた寸法測定工程においては、ウエハ上に形成されたアライメントマーク周辺をカメラで撮像した画像の情報を処理してアライメントマークを検出し、アライメントマークの位置を求め、ウエハの位置ずれを補正する処理が行なわれている。
【0004】
このような対象物検出のための画像処理では、主にパターンマッチングが用いられる。
例えば特許文献1には、予め対象物の画像を登録しておき、実際の作業において対象物を含む画像を撮像し、その画像と登録画像との相関値を計算し、その値によって対象物の有無や位置を検出するパターンマッチングについての記載がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、対象物の検出処理に用いられていたパターンマッチングは、予め登録した対象物の標準パターンを、被判定パターンを含む実際の画像上で移動させ、標準パターンと被判定パターンの一致度が大きい位置を検出する処理であった。このようなパターンマッチングによる対象物検出方法は、取り扱う情報量が多く、対象物の検出に時間がかかるという問題があった。
本発明の目的は、検出速度の改善であり、高速に対象物を検出できる対象物検出方法及び対象物検出プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる対象物検出方法は、標準パターンを含む標準パターン画像の領域を、任意の点である領域分割中心点から放射線状に2つ以上の領域に分割し、分割領域ごとに上記領域分割中心点から最大距離にある標準パターン画素位置を標準パターン代表点として選定する標準パターン代表点選定ステップと、被判定パターンを含む被判定パターン画像の領域を、上記標準パターン代表点選定ステップと同じ条件で上記領域分割中心点を用いて2つ以上の領域に分割し、分割領域ごとに上記領域分割中心点から最大距離にある被判定パターン画素位置を被判定パターン代表点として選定する被判定パターン代表点選定ステップと、対応する分割領域における上記標準パターン代表点の座標と上記被判定パターン代表点の座標の位置的差異を求め、すべての分割領域において上記位置的差異が予め定められた範囲内であるときに上記被判定パターンは目的の対象物であると判定する対象物判定ステップと、を含む。
【0007】
被判定パターン代表点選定ステップにおける標準パターン代表点選定ステップと同じ条件とは、両代表点選定ステップで、領域分割中心点の設定方法や、領域の分割の方法が同じであることが意味する。したがって、両代表点選定ステップで、領域分割中心点の座標が同一である場合もあるし、互いに異なっている場合もある。
【0008】
本発明の対象物検出方法において、上記標準パターン代表点選定ステップ及び上記被判定パターン代表点選定ステップは、上記パターンの中心又は重心を上記領域分割中心点とする例を挙げることができる。
ここで、パターンの中心とは、パターンを構成する画素位置を表す、2つの変数が対になった複数の画素座標について、変数ごとに最大値と最小値を足して2で割って求めた値の点を言う。また、パターンの重心とは、パターンを構成する画素位置を表す、2つの変数が対になった複数の画素座標に対して変数ごとに平均値を求めた値の点を言う。
【0009】
また、上記標準パターン代表点選定ステップ及び上記被判定パターン代表点選定ステップは、上記分割領域のうち、予め指定された第1分割領域については上記代表点の選定処理を行なわないようにしてもよい。
【0010】
また、上記標準パターン代表点選定ステップ及び上記被判定パターン代表点選定ステップの一方又は両方は、上記パターンの輪郭部分の画素情報のみを用いて上記代表点を選定するようにしてもよい。パターンの輪郭部分の画素情報はエッジ抽出処理によって求めることができる。ただし、この局面は、これらの代表点選定ステップで、標準パターン又は被判定パターンを構成する全ての画素情報を用いて代表点を選定することを排除するものではない。
なお、この局面において、これらの代表点選定ステップは、標準パターン又は被判定パターンの中心又は重心を領域分割中心点とするときには、パターンの輪郭部分の画素情報のみを用いて領域分割中心点を求めてもよいし、パターンの全画素情報を用いて領域分割中心点を求めてもよい。
【0011】
さらに、この局面において、上記パターンの輪郭部分の画素情報のみを用いて上記代表点を選定する上記代表点選定ステップは、上記分割領域のうち、予め指定された第2分割領域については上記領域分割中心点から最小距離にあるパターン画素位置を上記代表点として選定するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の対象物検出方法において、標準パターン代表点選定ステップは、実際の画像情報を処理することなく、標準パターンの設計データに基づいて予め選定された標準パターン画素位置を上記標準パターン代表点として設定するようにしてもよい。
領域分割中心点の設定方法、分割領域の設定方法が決定されていれば、作業者は、標準パターンに対して選定される標準パターン代表点の座標位置を設計データに基づいて容易に選定することができる。
【0013】
上記標準パターン及び上記被判定パターンの一例は、半導体ウエハの位置合せに用いられるアライメントマークである。
【0014】
本発明にかかる対象物検出プログラムは、本発明の対象物検出方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の対象物検出方法は、標準パターン代表点選定ステップで求められた標準パターン代表点と、被判定パターン代表点選定ステップで求められた被判定パターン代表点とを用いて、対象物判定ステップで被判定パターンが目的の対象物であるか否かの判定を行なうので、従来のパターンマッチングと比較して処理する情報量が少なくなり、高速に対象物を検出できる。さらに、本発明の対象物検出方法は、標準パターンに応じた情報を予め登録しておく場合には、標準パターン代表点の情報を登録しておけばよいので、標準パターンの全情報を登録しておくことに比較して、登録する情報量が少なくなる。
【0016】
本発明の対象物検出方法において、標準パターン代表点選定ステップ及び被判定パターン代表点選定ステップは、上記パターンの中心又は重心を上記領域分割中心点とするようにすれば、本発明の各ステップをコンピュータに実行させる際に、オペレータが領域分割中心点を設定することなく、標準パターン及び被判定パターンに適した領域分割中心点を自動で設定することができる。
【0017】
また、標準パターン代表点選定ステップ及び被判定パターン代表点選定ステップは、上記分割領域のうち、予め指定された第1分割領域については代表点の選定処理を行なわないようにすれば、標準パターン及び被判定パターンに適した代表点の選定が可能になる。
【0018】
また、標準パターン代表点選定ステップ及び被判定パターン代表点選定ステップの一方又は両方は、パターンの輪郭部分の画素情報のみを用いて代表点を選定するようにすれば、パターンを構成する全ての画像情報を用いる場合に比べて情報処理時間を短縮することができる。
【0019】
さらに、この局面において、パターンの輪郭部分の画素情報のみを用いて代表点を選定する代表点選定ステップは、分割領域のうち、予め指定された第2分割領域については領域分割中心点から最小距離にあるパターン画素位置を代表点として選定するようにすれば、標準パターン又は被判定パターンに適した代表点の選定が可能になる。
【0020】
また、本発明の対象物検出方法において、標準パターン代表点選定ステップは、実際の画像情報を処理することなく、標準パターンの設計データに基づいて予め選定された標準パターン画素位置を標準パターン代表点として設定するようにすれば、標準パターンに対して領域分割中心点から最大距離にある標準パターン画素位置の選定処理を行なう時間を省略することができる。
【0021】
本発明対象物検出プログラムは、本発明の対象物検出方法の各ステップをコンピュータに実行させるようにしたので、コンピュータを用いて本発明の対象物検出方法を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一実施例を説明するためのフローチャートである。
【図2】標準パターンを示す図である。
【図3】標準パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線を図示した図である。
【図4】図3にさらに標準パターン代表点を図示した図である。
【図5】ウエハ上のアライメントマーク周辺を撮像した2つの被判定パターンを含む被判定パターン画像を示す図である。
【図6】第1被判定パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに第1被判定パターン代表点を図示した図である。
【図7】第2被判定パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに第2被判定パターン代表点を図示した図である。
【図8】丸みを帯びた2つの被判定パターンを含む被判定パターン画像を示す図である。
【図9】丸みを帯びた第1被判定パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに第1被判定パターン代表点を図示した図である。
【図10】丸みを帯びた第2被判定パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに第2被判定パターン代表点を図示した図である。
【図11】標準パターンの他の例と、その標準パターンの領域を4分割するための領域分割中心点及び線ならびに標準パターン代表点を示す図である。
【図12】標準パターンの他の例と、その標準パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに標準パターン代表点を示す図であって標準パターン代表点が選定されない分割領域を含む図である。
【図13】図3の標準パターンに対してエッジ検出処理を行なった結果を示す図である。
【図14】図13の標準パターン輪郭部分の領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに標準パターン代表点を示す図である。
【図15】標準パターンの他の例の標準パターン輪郭部分と、その輪郭部分の領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに標準パターン代表点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
半導体装置の製造工程における測長SEMを用いた寸法測定工程でウエハの位置ずれ補正に用いられるアライメントマークの検出を例とし本発明の一実施例を説明する。
寸法測定工程において、ウエハは測長SEMのXYステージに搬送される。このとき、ウエハの配置位置に微小な程度でずれが生じているので、アライメントマークを基準にしてずれを補正する。ウエハは、XYステージに搬送される際、オリフラやノッチと呼ばれる切欠きを用いて位置合せされるので、ウエハの配置位置のずれに関して、回転方向のずれは少なく、大半はX方向、Y方向のずれとなる。
【0024】
図1は、一実施例を説明するためのフローチャートである。図2は、標準パターンを示す図である。図3は、標準パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線を図示した図である。図4は、図3にさらに標準パターン代表点を図示した図である。図5は、ウエハ上のアライメントマーク周辺を撮像した、2つの被判定パターンを含む被判定パターン画像を示す図である。図6は、第1被判定パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに第1被判定パターン代表点を図示した図である。図7は、第2被判定パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに第2被判定パターン代表点を図示した図である。
図1から図7を参照してこの実施例を説明する。
【0025】
ステップS1:アライメントマークの標準パターンを含む標準パターン画像の情報を読み込む。
ステップS2:標準パターン画像に対して2値化処理を行なってアライメントマークの標準パターンを抽出する。ここで、2値化処理とは、各画素の明るさを一定の基準値に基づいて黒色と白色の2つの値に変換する処理のことである。図2に、2値化処理後に抽出された標準パターン1の領域を示す。
【0026】
ステップS3:ステップS2で抽出した標準パターン1の領域を分割するための領域分割中心点G1を設定する。この実施例では標準パターン1の重心を領域分割中心点G1とした。図3に標準パターン1の領域の領域分割中心点G1(重心)を黒丸で示す。なお、図3において、領域分割中心点G1を明確に表現できるように、図2では黒塗りで表現された標準パターン1の領域はシボ(ドットパターン)で表現されている。
【0027】
ステップS4:領域分割中心点G1から放射線状に標準パターン1の領域を分割する。ここでは、図3に示すように、領域分割中心点G1を通る4本の直線で標準パターン1の領域を8つの分割領域A1−1〜A1−8に分割した。
【0028】
ステップS5:各分割領域A1−1〜A1−8について、領域分割中心点G1から最も離れた位置の標準パターン1の画素を標準パターン代表点T1−1〜T1−8として求める。図4で、標準パターン代表点T1−1〜T1−8となる画素の位置は白抜きの丸印で図示されている。
【0029】
ステップS6:標準パターン代表点T1−1〜T1−8とされた画素の位置情報を代表点情報として保存する。この実施例では、領域分割中心点G1を原点としたXY座標を想定して代表点の座標情報を保存する。なお、この実施例では、領域分割中心点を原点としたXY座標を想定したが、領域分割中心点以外の点を原点としたXY座標を想定して標準パターン代表点の座標情報を保存しても構わない。また、XY座標を想定するのではなく、領域分割中心点又はそれ以外の点を原点(極)とした極座標を想定して標準パターン代表点の座標情報を保存しても構わない。
【0030】
ステップS7:ウエハ上のアライメントマーク周辺を撮像した被判定パターン画像の情報を読み込む。
ステップS8:被判定パターン画像に対して、2値化処理及びラベリング処理を行なって被判定パターンを抽出する。ステップS1では、アライメントマークの標準パターン1のみが含まれた標準パターン画像の情報が読み込まれたが、ステップS8では、アライメントマーク周辺を撮像した被判定パターン画像が読み込まれているので、被判定パターン画像には目的の対象物(アライメントマーク)以外のパターン情報も含まれている可能性がある。例えば、図5に示した被判定パターン画像4には、第1被判定パターン2と第2被判定パターン3が含まれている。
ラベリング処理とは、各画素にグループ属性を付加する処理で、画像内に複数のパターンが存在する場合、各パターンの領域を識別する手法として非常に有効である。
以後のステップS10からステップS14は、ステップS8で抽出した被判定パターンごとに行なわれる。
【0031】
ステップS9:最初の被判定パターンを選択する。ここでは第1被判定パターン2を選択した。
ステップS10:第1被判定パターン2の領域を分割するための領域分割中心点G2を設定する。ステップS3で標準パターン1の重心を領域分割中心点G1としたので、このステップS10でも領域分割中心点G2を第1被判定パターン2の重心とする。図6に第1被判定パターン2の領域分割中心点G2を黒丸で示す。なお、図6において、領域分割中心点G2を明確に表現できるように、図5では黒塗りで表現された第1被判定パターン2の領域及び第2被判定パターン3の領域はシボ(ドットパターン)で表現されている。
【0032】
ステップS11:領域分割中心点G2から放射線状に第1被判定パターン2の領域を分割する。図6に示すように、ステップS4で標準パターン1の領域を分割したのと同様に、領域分割中心点G2を通る4本の直線で第1被判定パターン2の領域を8つの分割領域A2−1〜A2−8に分割した。
【0033】
ステップS12:各分割領域A2−1〜A2−8について、領域分割中心点G2から最も離れた位置の第1被判定パターン2の画素を第1被判定パターン代表点T2−1〜T2−8として求める。図6で、第1被判定パターン代表点T2−1〜T2−8となる画素の位置は白抜きの丸印で図示されている。
【0034】
ステップS13:標準パターン代表点T1−1〜T1−8の座標と、第1被判定パターン代表点T2−1〜T2−8の座標の位置的差異を対応する分割領域ごとに求める。第1被判定パターン代表点T2−1〜T2−8の座標は、ステップS6で登録した標準パターン代表点T1−1〜T1−8の座標に対する原点に合わせて求められる。例えば、標準パターン代表点T1−1〜T1−8の座標情報が領域分割中心点G1を原点とするXY座標を想定して登録されている場合、第1被判定パターン代表点T2−1〜T2−8の座標は、領域分割中心点G2を原点とするXY座標を想定して求められる。そして、対応する分割領域ごとに標準パターン代表点と第1被判定パターン代表点の位置的差異が求められる。
【0035】
ステップS14:第1被判定パターン2が目的の対象物であるか否かを判定する。具体的には、すべての分割領域において上記位置的差異が予め定められた範囲内であるか否かを判定する。ここで、予め定められた範囲は例えば10画素の範囲である。図4と図6を参照すると、領域分割中心点G1に対する標準パターン代表点T1−1〜T1−8の位置と、領域分割中心点G2に対する第1被判定パターン代表点T2−1〜T2−8の位置は、どの分割領域でも明らかに異なっており、標準パターン代表点と第1被判定パターン代表点の位置的差異は予め定められた範囲内にはない。したがって、第1被判定パターン2は目的の対象物(アライメントマーク)ではないと判定される(No)。ステップS15に進む。
【0036】
ステップS15:未処理の被判定パターンがあるかが判断される。第2被判定パターン3に対する処理が行なわれていないので(Yes)、ステップS16に進む。なお、未処理の被判定パターンがないときには(No)、処理が終了される。
【0037】
ステップS16:次の被判定パターンを選択する。ここでは第2被判定パターン3が選択される。そしてステップS10に戻る。
【0038】
ステップS10:選択された第2被判定パターン3の領域を分割するための領域分割中心点G3を設定する。ここでも領域分割中心点G3を第2被判定パターン3の重心とする。図7に第2被判定パターン3の領域分割中心点G3を黒丸で示す。なお、図7において、領域分割中心点G3を明確に表現できるように、図5では黒塗りで表現された第1被判定パターン2の領域及び第2被判定パターン3の領域はシボで表現されている。
【0039】
ステップS11:領域分割中心点G3から放射線状に第2被判定パターン3の領域を分割する。図7に示すように、ステップS4で標準パターン1の領域を分割したのと同様に、領域分割中心点G3を通る4本の直線で第2被判定パターン3の領域を8つの分割領域A3−1〜A3−8に分割した。
【0040】
ステップS12:各分割領域A3−1〜A3−8について、領域分割中心点G3から最も離れた位置の第2被判定パターン3の画素を第2被判定パターン代表点T3−1〜T3−8として求める。図7で、第2被判定パターン代表点T3−1〜T3−8となる画素の位置は白抜きの丸印で図示されている。
【0041】
ステップS13:標準パターン代表点T1−1〜T1−8の座標と、第2被判定パターン代表点T3−1〜T3−8の座標の位置的差異を対応する分割領域ごとに求める。第2被判定パターン代表点T3−1〜T3−8の座標は、ステップS6で登録した標準パターン代表点T1−1〜T1−8の座標に対する原点に合わせて求められる。そして、対応する分割領域ごとに標準パターン代表点と第2被判定パターン代表点の位置的差異が求められる。
【0042】
ステップS14:第2被判定パターン3が目的の対象物であるか否かを判定する。図4と図7を参照すると、領域分割中心点G1に対する標準パターン代表点T1−1〜T1−8の位置と、領域分割中心点G3に対する第2被判定パターン代表点T3−1〜T3−8の位置は、どの分割領域でも同じ又はほぼ同じであり、標準パターン代表点と第2被判定パターン代表点の位置的差異は予め定められた範囲内にある。したがって、第2被判定パターン3は目的の対象物(アライメントマーク)であると判定される(Yes)。そして処理が終了される。
【0043】
この実施例では、標準パターン代表点T1−1〜T1−8と、被判定パターン代表点T2−1〜T2−8,T3−1〜T3−8とを用いて、被判定パターンが目的の対象物であるか否かの判定を行なうので、従来のパターンマッチングと比較して処理する情報量が少ない。したがって、高速に対象物を検出できる。
さらに、予め登録される標準パターンに応じた情報は、標準パターン代表点T1−1〜T1−8の情報なので、標準パターンの全情報を登録しておくことに比較して、登録する情報量が少ない。
【0044】
この実施例は、被判定パターン2,3について、第1被判定パターン2に対する判定処理を先に行なっているが、複数の被判定パターンに対する判定処理の順番は特に制限はなく、第2被判定パターン3に対する判定処理を先に行なってもよい。この場合、ステップS14で第2被判定パターン3が目的の対象物(アライメントマーク)であると判定された時点(Yes)で処理が終了し、第1被判定パターン2に対する判定処理は行なわれない。ただし、複数の被判定パターンのうちのいずれかの被判定パターンについて目的の対象物であると判定されたときであっても、未処理の被判定パターンが残っているときには未処理の被判定パターンについて判定処理を行なうようにしてもよい。この場合、複数の被判定パターンについて目的の対象物であると判定されたときであって、1つの被判定パターンのみを目的の対象物として選定したいときには、上記位置的差異の合計値がより小さい被判定パターンを目的の対象物とすればよい。
【0045】
また、この実施例は、選択された被判定パターンについて、領域分割中心点の設定、領域分割、被判定パターン代表点の選定、代表点の位置的差異の算出及び目的の対象物であるか否かの判定(ステップS10〜S14)の一連の処理を行なった後、目的の対象物が得られない場合には次の被判定パターンについて上記一連の処理を行なっている。これに対し、本発明は、複数の被判定パターンについてそれぞれ被判定パターン代表点が求められた後、各被判定パターンについて目的の対象物であるか否かの判定が行なわれるようにしてもよい。
【0046】
なお、カメラと撮像対象の距離などに起因して、撮像された画像の倍率が変化する可能性がある場合は、ステップS12で被判定パターン代表点を選定した後、被判定パターン代表点情報に補正を行なってステップS13で位置的差異を算出することが好ましい。
具体的な代表点情報の補正方法としては、例えば、図4に示した標準パターン代表点T1−1と領域分割中心点G1との距離と、第1被判定パターン2で標準パターン代表点T1−1に対応する第1被判定パターン代表点T2−1と分割領域中心点G2との距離が等しくなるように第1被判定パターン2の領域を変倍し、また、第2被判定パターン3で標準パターン代表点T1−1に対応する第2被判定パターン代表点T3−1と分割領域中心点G3との距離が等しくなるように第2被判定パターン3の領域を変倍して、被判定パターン代表点T2−1〜T2−8,T3−1〜T3−8の座標情報を補正すればよい。
【0047】
また、この被判定パターン代表点の座標位置補正のために変倍した後に被判定パターンについて、X座標又はY座標に関し、標準パターンの最小座標値と最大座標値の差と、変倍後の被判定パターンの最小座標値と最大座標値の差が予め定められた値以上であるとき、例えば10画素以上であるときには、その被判定パターンに対してステップS14の判定処理を省略するようにしてもよい。
【0048】
ところで、半導体装置の製造工程で写真製版工程やエッチング工程により形成されるアライメントマークやその他のパターンは、図8に示すように丸みを帯びた形状になることがある。この場合、アライメントマークについて、予め登録されている標準パターン代表点の座標と全く等しくなる被判定パターンを検出することはできないが、前述の通り、標準パターン代表点の座標と被判定パターン代表点の座標を比較して、その位置的差異が予め設定された範囲内であれば、被判定パターンが目的の対象物であると判定するので、アライメントマークを検出することができる。
【0049】
図9に、丸みを帯びた第1被判定パターン2に対する、第1被判定パターン2の領域を8分割するための領域分割中心点G2及び線、ならびに第1被判定パターン代表点T2−1〜T2−8を示す。図10に、丸みを帯びた第2被判定パターン3に対する、第2被判定パターン3の領域を8分割するための領域分割中心点G3及び線、ならびに第2被判定パターン代表点T3−1〜T3−8を示す。
【0050】
図9、図10に示すように、被判定パターン2,3が丸みを帯びた場合であっても、第2被判定パターン3については、図4の標準パターン代表点T1−1〜T1−8に対して、ほぼ同じ位置に第2被判定パターン代表点T3−1〜T3−8を得ることができるので、第2被判定パターン3は目的の対象物(アライメントマーク)であると判定される。
【0051】
上記の実施例では、標準パターンの領域及び被判定パターンの領域を8分割したが、検出対象物のパターン形状によって分割領域の数や位置を定めてもよい。分割領域の数は2つ以上であればよい。標準パターンを用いて一例を説明する。
例えば図11に示すように、標準パターン5に対して、標準パターン5の重心を領域分割中心点G5として標準パターン5の領域を4つの分割領域A5−1〜A5−4に分割して、4つの標準パターン代表点T5−1〜T5−4を得るようにしても構わない。
【0052】
また、複数の分割領域のうち、いずれかの分割領域で代表点が選定されなくてもよい。
例えば図12に示すように、標準パターン5に対して、標準パターン5の領域を8つの分割領域A5−1〜A5−8に分割し、分割領域A5−2,A5−4,A5−6,A5−8については代表点が選定されず、分割領域A5−1,A5−3,A5−5,A5−7について標準パターン代表点T5−1,T5−3,T5−5,T5−7が選定されるようにしてもよい。
【0053】
上記実施例は、標準パターン代表点又は被判定パターン代表点の選定処理において、標準パターン又は被判定パターンの全ての画素を対象にして選定処理を行なったが、標準パターン又は被判定パターンの輪郭部分の画素情報のみで代表点の選定処理を行なっても同等の結果が得られる。この場合、標準パターン又は被判定パターンの全ての画素を対象にして代表点の選定処理を行なうよりも、高速に代表点の選定処理が行なえる利点がある。標準パターンを用いて一例を説明する。
パターンの輪郭部分の画素情報は、一般的にエッジ検出と呼ばれる、画像の明るさの変化によりパターンの輪郭を算出する方法で求めることができる。
【0054】
図13は、図2に示した標準パターン1に対してエッジ検出処理を行なった結果を示す図である。
標準パターン1に対してエッジ検出処理が行なわれることにより、標準パターン輪郭部分1aが得られる。
【0055】
図14は、図13の標準パターン輪郭部分1aの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに標準パターン代表点を示す図である。ここでは標準パターン輪郭部分1aの重心を領域分割中心点G1aとし、図3を参照して説明した領域分割と同じ条件で標準パターン輪郭部分1aの領域を8つの分割領域A1a−1〜A1a−8に分割した。これにより、標準パターン代表点T1a−1〜T1a−8が得られる。領域分割中心点G1aに対する標準パターン代表点T1a−1〜T1a−8の位置は、領域分割中心点G1に対する標準パターン代表点T1−1〜T1−8の位置と同じである(図4及び図14を参照。)。
【0056】
また、パターンの輪郭部分を用いて代表点の選定処理を行なう場合、領域分割中心点から最も近い画素位置を代表点として選定することもできる。
また、分割領域ごとに代表点の求め方が異なってもよい。
【0057】
例えば図15に示すように、図12に示した標準パターン5に対して標準パターン輪郭部分5aを求める。標準パターン輪郭部分5aの重心を領域分割中心点G5aとし、8つの分割領域A5a−1〜A5a−8のうち、分割領域A5a−1,A5a−3,Aa5−5,A5a−7については領域分割中心点G5aから最大距離にある標準パターン輪郭部分5aの画素位置を標準パターン代表点T5a−1,T5a−3,T5a−5,T5a−7として選定する。分割領域A5a−2,A5a−4,A5a−6,A5a−8については領域分割中心点G5aから最小距離にある標準パターン輪郭部分5aの画素位置を標準パターン代表点T5a−2,T5a−4,T5a−6,T5a−8として選定する。
このように、領域分割中心点から最も離れた位置の画素座標を代表点として選定する分割領域と、領域分割中心点から最も近い位置の画素座標を代表点として選定する分割領域とが混在していても構わない。
【0058】
上記実施例において、標準パターン代表点の情報は、図1のフローチャートのステップS1〜S5に従って、標準パターンの画像情報を用いて求められたが、標準パターン代表点の情報は設計データに基づいて求められるようにしてもよい。
例えば、図2に示した標準パターン1について、標準パターン1の重心を領域分割中心点とすること(領域分割中心点の設定方法)、図3に示したように標準パターン1の重心を領域分割中心点として標準パターン1の領域を8つの分割領域に分割すること(分割領域の設定方法)が決定されていれば、作業者は、標準パターン1に対して選定される標準パターン代表点T1−1〜T1−8(図4参照。)の座標位置を設計データに基づいて容易に選定することができる。
【0059】
上記で説明した実施例の各ステップは、各ステップを処理するためのプログラムを作製し、コンピュータを用いてそのプログラムを実行させることによって実現できる。
【0060】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、上記実施例の説明において図を用いたが、本発明の各ステップにおいて作図が必要なわけではない。
また、上記実施例は、アライメントマークを目的の対象物としているが、本発明の目的の対象物は、アライメントマークに限定されず、どのようなパターン形状であってもよい。
また、標準パターンは、作図されたものであってもよいし、撮像されたものであってもよい。被判定パターンも、作図されたものであってもよいし、撮像されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、半導体製造における寸法測定などの工程でのウエハの位置合わせ作業など、撮像した画像や作図された画像の中に含まれる特定のパターン形状を検出する作業に適用できる。
【符号の説明】
【0062】
1,5 標準パターン
1a,5a 標準パターンの輪郭部分
2,3 被判定パターン
4 被判定パターン画像
A1−1〜A1−8,A5−1〜A5−8 標準パターンに対する分割領域
A2−1〜A2−8,A3−1〜A3−8 被判定パターンに対する分割領域
A1a−1〜A1a−8,A5a−1〜A5a−8 標準パターンの輪郭部分に対する分割領域
G1,G5 標準パターンに対する領域分割中心点
G1a,G5a 標準パターンの輪郭部分に対する領域分割中心点
G2,G3 被判定パターンに対する領域分割中心点
T1−1〜T1−8,T5−1,T5−3,T5−5,T5−7 標準パターン代表点
T1a−1〜T1a−8,T5a−1〜T5a−8 標準パターン代表点
T2−1〜T2−8,T3−1〜T3−8 被判定パターン代表点
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2008−234261号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等で撮像した画像を画像処理することによって目的の対象物を検出する対象物検出方法、及び、その対象物検出方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ等で撮像した画像の情報を処理して対象物を検出する技術は、産業界の様々な分野で利用されている。
例えば、産業用ロボットにおいては、カメラで撮像した画像の情報を処理して対象物を検出し、対象物の位置のずれを求め、ロボットの位置を補正する手段がとられている。
【0003】
また、半導体製造における測長SEM(走査型電子顕微鏡)を用いた寸法測定工程においては、ウエハ上に形成されたアライメントマーク周辺をカメラで撮像した画像の情報を処理してアライメントマークを検出し、アライメントマークの位置を求め、ウエハの位置ずれを補正する処理が行なわれている。
【0004】
このような対象物検出のための画像処理では、主にパターンマッチングが用いられる。
例えば特許文献1には、予め対象物の画像を登録しておき、実際の作業において対象物を含む画像を撮像し、その画像と登録画像との相関値を計算し、その値によって対象物の有無や位置を検出するパターンマッチングについての記載がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、対象物の検出処理に用いられていたパターンマッチングは、予め登録した対象物の標準パターンを、被判定パターンを含む実際の画像上で移動させ、標準パターンと被判定パターンの一致度が大きい位置を検出する処理であった。このようなパターンマッチングによる対象物検出方法は、取り扱う情報量が多く、対象物の検出に時間がかかるという問題があった。
本発明の目的は、検出速度の改善であり、高速に対象物を検出できる対象物検出方法及び対象物検出プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる対象物検出方法は、標準パターンを含む標準パターン画像の領域を、任意の点である領域分割中心点から放射線状に2つ以上の領域に分割し、分割領域ごとに上記領域分割中心点から最大距離にある標準パターン画素位置を標準パターン代表点として選定する標準パターン代表点選定ステップと、被判定パターンを含む被判定パターン画像の領域を、上記標準パターン代表点選定ステップと同じ条件で上記領域分割中心点を用いて2つ以上の領域に分割し、分割領域ごとに上記領域分割中心点から最大距離にある被判定パターン画素位置を被判定パターン代表点として選定する被判定パターン代表点選定ステップと、対応する分割領域における上記標準パターン代表点の座標と上記被判定パターン代表点の座標の位置的差異を求め、すべての分割領域において上記位置的差異が予め定められた範囲内であるときに上記被判定パターンは目的の対象物であると判定する対象物判定ステップと、を含む。
【0007】
被判定パターン代表点選定ステップにおける標準パターン代表点選定ステップと同じ条件とは、両代表点選定ステップで、領域分割中心点の設定方法や、領域の分割の方法が同じであることが意味する。したがって、両代表点選定ステップで、領域分割中心点の座標が同一である場合もあるし、互いに異なっている場合もある。
【0008】
本発明の対象物検出方法において、上記標準パターン代表点選定ステップ及び上記被判定パターン代表点選定ステップは、上記パターンの中心又は重心を上記領域分割中心点とする例を挙げることができる。
ここで、パターンの中心とは、パターンを構成する画素位置を表す、2つの変数が対になった複数の画素座標について、変数ごとに最大値と最小値を足して2で割って求めた値の点を言う。また、パターンの重心とは、パターンを構成する画素位置を表す、2つの変数が対になった複数の画素座標に対して変数ごとに平均値を求めた値の点を言う。
【0009】
また、上記標準パターン代表点選定ステップ及び上記被判定パターン代表点選定ステップは、上記分割領域のうち、予め指定された第1分割領域については上記代表点の選定処理を行なわないようにしてもよい。
【0010】
また、上記標準パターン代表点選定ステップ及び上記被判定パターン代表点選定ステップの一方又は両方は、上記パターンの輪郭部分の画素情報のみを用いて上記代表点を選定するようにしてもよい。パターンの輪郭部分の画素情報はエッジ抽出処理によって求めることができる。ただし、この局面は、これらの代表点選定ステップで、標準パターン又は被判定パターンを構成する全ての画素情報を用いて代表点を選定することを排除するものではない。
なお、この局面において、これらの代表点選定ステップは、標準パターン又は被判定パターンの中心又は重心を領域分割中心点とするときには、パターンの輪郭部分の画素情報のみを用いて領域分割中心点を求めてもよいし、パターンの全画素情報を用いて領域分割中心点を求めてもよい。
【0011】
さらに、この局面において、上記パターンの輪郭部分の画素情報のみを用いて上記代表点を選定する上記代表点選定ステップは、上記分割領域のうち、予め指定された第2分割領域については上記領域分割中心点から最小距離にあるパターン画素位置を上記代表点として選定するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の対象物検出方法において、標準パターン代表点選定ステップは、実際の画像情報を処理することなく、標準パターンの設計データに基づいて予め選定された標準パターン画素位置を上記標準パターン代表点として設定するようにしてもよい。
領域分割中心点の設定方法、分割領域の設定方法が決定されていれば、作業者は、標準パターンに対して選定される標準パターン代表点の座標位置を設計データに基づいて容易に選定することができる。
【0013】
上記標準パターン及び上記被判定パターンの一例は、半導体ウエハの位置合せに用いられるアライメントマークである。
【0014】
本発明にかかる対象物検出プログラムは、本発明の対象物検出方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の対象物検出方法は、標準パターン代表点選定ステップで求められた標準パターン代表点と、被判定パターン代表点選定ステップで求められた被判定パターン代表点とを用いて、対象物判定ステップで被判定パターンが目的の対象物であるか否かの判定を行なうので、従来のパターンマッチングと比較して処理する情報量が少なくなり、高速に対象物を検出できる。さらに、本発明の対象物検出方法は、標準パターンに応じた情報を予め登録しておく場合には、標準パターン代表点の情報を登録しておけばよいので、標準パターンの全情報を登録しておくことに比較して、登録する情報量が少なくなる。
【0016】
本発明の対象物検出方法において、標準パターン代表点選定ステップ及び被判定パターン代表点選定ステップは、上記パターンの中心又は重心を上記領域分割中心点とするようにすれば、本発明の各ステップをコンピュータに実行させる際に、オペレータが領域分割中心点を設定することなく、標準パターン及び被判定パターンに適した領域分割中心点を自動で設定することができる。
【0017】
また、標準パターン代表点選定ステップ及び被判定パターン代表点選定ステップは、上記分割領域のうち、予め指定された第1分割領域については代表点の選定処理を行なわないようにすれば、標準パターン及び被判定パターンに適した代表点の選定が可能になる。
【0018】
また、標準パターン代表点選定ステップ及び被判定パターン代表点選定ステップの一方又は両方は、パターンの輪郭部分の画素情報のみを用いて代表点を選定するようにすれば、パターンを構成する全ての画像情報を用いる場合に比べて情報処理時間を短縮することができる。
【0019】
さらに、この局面において、パターンの輪郭部分の画素情報のみを用いて代表点を選定する代表点選定ステップは、分割領域のうち、予め指定された第2分割領域については領域分割中心点から最小距離にあるパターン画素位置を代表点として選定するようにすれば、標準パターン又は被判定パターンに適した代表点の選定が可能になる。
【0020】
また、本発明の対象物検出方法において、標準パターン代表点選定ステップは、実際の画像情報を処理することなく、標準パターンの設計データに基づいて予め選定された標準パターン画素位置を標準パターン代表点として設定するようにすれば、標準パターンに対して領域分割中心点から最大距離にある標準パターン画素位置の選定処理を行なう時間を省略することができる。
【0021】
本発明対象物検出プログラムは、本発明の対象物検出方法の各ステップをコンピュータに実行させるようにしたので、コンピュータを用いて本発明の対象物検出方法を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一実施例を説明するためのフローチャートである。
【図2】標準パターンを示す図である。
【図3】標準パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線を図示した図である。
【図4】図3にさらに標準パターン代表点を図示した図である。
【図5】ウエハ上のアライメントマーク周辺を撮像した2つの被判定パターンを含む被判定パターン画像を示す図である。
【図6】第1被判定パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに第1被判定パターン代表点を図示した図である。
【図7】第2被判定パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに第2被判定パターン代表点を図示した図である。
【図8】丸みを帯びた2つの被判定パターンを含む被判定パターン画像を示す図である。
【図9】丸みを帯びた第1被判定パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに第1被判定パターン代表点を図示した図である。
【図10】丸みを帯びた第2被判定パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに第2被判定パターン代表点を図示した図である。
【図11】標準パターンの他の例と、その標準パターンの領域を4分割するための領域分割中心点及び線ならびに標準パターン代表点を示す図である。
【図12】標準パターンの他の例と、その標準パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに標準パターン代表点を示す図であって標準パターン代表点が選定されない分割領域を含む図である。
【図13】図3の標準パターンに対してエッジ検出処理を行なった結果を示す図である。
【図14】図13の標準パターン輪郭部分の領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに標準パターン代表点を示す図である。
【図15】標準パターンの他の例の標準パターン輪郭部分と、その輪郭部分の領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに標準パターン代表点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
半導体装置の製造工程における測長SEMを用いた寸法測定工程でウエハの位置ずれ補正に用いられるアライメントマークの検出を例とし本発明の一実施例を説明する。
寸法測定工程において、ウエハは測長SEMのXYステージに搬送される。このとき、ウエハの配置位置に微小な程度でずれが生じているので、アライメントマークを基準にしてずれを補正する。ウエハは、XYステージに搬送される際、オリフラやノッチと呼ばれる切欠きを用いて位置合せされるので、ウエハの配置位置のずれに関して、回転方向のずれは少なく、大半はX方向、Y方向のずれとなる。
【0024】
図1は、一実施例を説明するためのフローチャートである。図2は、標準パターンを示す図である。図3は、標準パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線を図示した図である。図4は、図3にさらに標準パターン代表点を図示した図である。図5は、ウエハ上のアライメントマーク周辺を撮像した、2つの被判定パターンを含む被判定パターン画像を示す図である。図6は、第1被判定パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに第1被判定パターン代表点を図示した図である。図7は、第2被判定パターンの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに第2被判定パターン代表点を図示した図である。
図1から図7を参照してこの実施例を説明する。
【0025】
ステップS1:アライメントマークの標準パターンを含む標準パターン画像の情報を読み込む。
ステップS2:標準パターン画像に対して2値化処理を行なってアライメントマークの標準パターンを抽出する。ここで、2値化処理とは、各画素の明るさを一定の基準値に基づいて黒色と白色の2つの値に変換する処理のことである。図2に、2値化処理後に抽出された標準パターン1の領域を示す。
【0026】
ステップS3:ステップS2で抽出した標準パターン1の領域を分割するための領域分割中心点G1を設定する。この実施例では標準パターン1の重心を領域分割中心点G1とした。図3に標準パターン1の領域の領域分割中心点G1(重心)を黒丸で示す。なお、図3において、領域分割中心点G1を明確に表現できるように、図2では黒塗りで表現された標準パターン1の領域はシボ(ドットパターン)で表現されている。
【0027】
ステップS4:領域分割中心点G1から放射線状に標準パターン1の領域を分割する。ここでは、図3に示すように、領域分割中心点G1を通る4本の直線で標準パターン1の領域を8つの分割領域A1−1〜A1−8に分割した。
【0028】
ステップS5:各分割領域A1−1〜A1−8について、領域分割中心点G1から最も離れた位置の標準パターン1の画素を標準パターン代表点T1−1〜T1−8として求める。図4で、標準パターン代表点T1−1〜T1−8となる画素の位置は白抜きの丸印で図示されている。
【0029】
ステップS6:標準パターン代表点T1−1〜T1−8とされた画素の位置情報を代表点情報として保存する。この実施例では、領域分割中心点G1を原点としたXY座標を想定して代表点の座標情報を保存する。なお、この実施例では、領域分割中心点を原点としたXY座標を想定したが、領域分割中心点以外の点を原点としたXY座標を想定して標準パターン代表点の座標情報を保存しても構わない。また、XY座標を想定するのではなく、領域分割中心点又はそれ以外の点を原点(極)とした極座標を想定して標準パターン代表点の座標情報を保存しても構わない。
【0030】
ステップS7:ウエハ上のアライメントマーク周辺を撮像した被判定パターン画像の情報を読み込む。
ステップS8:被判定パターン画像に対して、2値化処理及びラベリング処理を行なって被判定パターンを抽出する。ステップS1では、アライメントマークの標準パターン1のみが含まれた標準パターン画像の情報が読み込まれたが、ステップS8では、アライメントマーク周辺を撮像した被判定パターン画像が読み込まれているので、被判定パターン画像には目的の対象物(アライメントマーク)以外のパターン情報も含まれている可能性がある。例えば、図5に示した被判定パターン画像4には、第1被判定パターン2と第2被判定パターン3が含まれている。
ラベリング処理とは、各画素にグループ属性を付加する処理で、画像内に複数のパターンが存在する場合、各パターンの領域を識別する手法として非常に有効である。
以後のステップS10からステップS14は、ステップS8で抽出した被判定パターンごとに行なわれる。
【0031】
ステップS9:最初の被判定パターンを選択する。ここでは第1被判定パターン2を選択した。
ステップS10:第1被判定パターン2の領域を分割するための領域分割中心点G2を設定する。ステップS3で標準パターン1の重心を領域分割中心点G1としたので、このステップS10でも領域分割中心点G2を第1被判定パターン2の重心とする。図6に第1被判定パターン2の領域分割中心点G2を黒丸で示す。なお、図6において、領域分割中心点G2を明確に表現できるように、図5では黒塗りで表現された第1被判定パターン2の領域及び第2被判定パターン3の領域はシボ(ドットパターン)で表現されている。
【0032】
ステップS11:領域分割中心点G2から放射線状に第1被判定パターン2の領域を分割する。図6に示すように、ステップS4で標準パターン1の領域を分割したのと同様に、領域分割中心点G2を通る4本の直線で第1被判定パターン2の領域を8つの分割領域A2−1〜A2−8に分割した。
【0033】
ステップS12:各分割領域A2−1〜A2−8について、領域分割中心点G2から最も離れた位置の第1被判定パターン2の画素を第1被判定パターン代表点T2−1〜T2−8として求める。図6で、第1被判定パターン代表点T2−1〜T2−8となる画素の位置は白抜きの丸印で図示されている。
【0034】
ステップS13:標準パターン代表点T1−1〜T1−8の座標と、第1被判定パターン代表点T2−1〜T2−8の座標の位置的差異を対応する分割領域ごとに求める。第1被判定パターン代表点T2−1〜T2−8の座標は、ステップS6で登録した標準パターン代表点T1−1〜T1−8の座標に対する原点に合わせて求められる。例えば、標準パターン代表点T1−1〜T1−8の座標情報が領域分割中心点G1を原点とするXY座標を想定して登録されている場合、第1被判定パターン代表点T2−1〜T2−8の座標は、領域分割中心点G2を原点とするXY座標を想定して求められる。そして、対応する分割領域ごとに標準パターン代表点と第1被判定パターン代表点の位置的差異が求められる。
【0035】
ステップS14:第1被判定パターン2が目的の対象物であるか否かを判定する。具体的には、すべての分割領域において上記位置的差異が予め定められた範囲内であるか否かを判定する。ここで、予め定められた範囲は例えば10画素の範囲である。図4と図6を参照すると、領域分割中心点G1に対する標準パターン代表点T1−1〜T1−8の位置と、領域分割中心点G2に対する第1被判定パターン代表点T2−1〜T2−8の位置は、どの分割領域でも明らかに異なっており、標準パターン代表点と第1被判定パターン代表点の位置的差異は予め定められた範囲内にはない。したがって、第1被判定パターン2は目的の対象物(アライメントマーク)ではないと判定される(No)。ステップS15に進む。
【0036】
ステップS15:未処理の被判定パターンがあるかが判断される。第2被判定パターン3に対する処理が行なわれていないので(Yes)、ステップS16に進む。なお、未処理の被判定パターンがないときには(No)、処理が終了される。
【0037】
ステップS16:次の被判定パターンを選択する。ここでは第2被判定パターン3が選択される。そしてステップS10に戻る。
【0038】
ステップS10:選択された第2被判定パターン3の領域を分割するための領域分割中心点G3を設定する。ここでも領域分割中心点G3を第2被判定パターン3の重心とする。図7に第2被判定パターン3の領域分割中心点G3を黒丸で示す。なお、図7において、領域分割中心点G3を明確に表現できるように、図5では黒塗りで表現された第1被判定パターン2の領域及び第2被判定パターン3の領域はシボで表現されている。
【0039】
ステップS11:領域分割中心点G3から放射線状に第2被判定パターン3の領域を分割する。図7に示すように、ステップS4で標準パターン1の領域を分割したのと同様に、領域分割中心点G3を通る4本の直線で第2被判定パターン3の領域を8つの分割領域A3−1〜A3−8に分割した。
【0040】
ステップS12:各分割領域A3−1〜A3−8について、領域分割中心点G3から最も離れた位置の第2被判定パターン3の画素を第2被判定パターン代表点T3−1〜T3−8として求める。図7で、第2被判定パターン代表点T3−1〜T3−8となる画素の位置は白抜きの丸印で図示されている。
【0041】
ステップS13:標準パターン代表点T1−1〜T1−8の座標と、第2被判定パターン代表点T3−1〜T3−8の座標の位置的差異を対応する分割領域ごとに求める。第2被判定パターン代表点T3−1〜T3−8の座標は、ステップS6で登録した標準パターン代表点T1−1〜T1−8の座標に対する原点に合わせて求められる。そして、対応する分割領域ごとに標準パターン代表点と第2被判定パターン代表点の位置的差異が求められる。
【0042】
ステップS14:第2被判定パターン3が目的の対象物であるか否かを判定する。図4と図7を参照すると、領域分割中心点G1に対する標準パターン代表点T1−1〜T1−8の位置と、領域分割中心点G3に対する第2被判定パターン代表点T3−1〜T3−8の位置は、どの分割領域でも同じ又はほぼ同じであり、標準パターン代表点と第2被判定パターン代表点の位置的差異は予め定められた範囲内にある。したがって、第2被判定パターン3は目的の対象物(アライメントマーク)であると判定される(Yes)。そして処理が終了される。
【0043】
この実施例では、標準パターン代表点T1−1〜T1−8と、被判定パターン代表点T2−1〜T2−8,T3−1〜T3−8とを用いて、被判定パターンが目的の対象物であるか否かの判定を行なうので、従来のパターンマッチングと比較して処理する情報量が少ない。したがって、高速に対象物を検出できる。
さらに、予め登録される標準パターンに応じた情報は、標準パターン代表点T1−1〜T1−8の情報なので、標準パターンの全情報を登録しておくことに比較して、登録する情報量が少ない。
【0044】
この実施例は、被判定パターン2,3について、第1被判定パターン2に対する判定処理を先に行なっているが、複数の被判定パターンに対する判定処理の順番は特に制限はなく、第2被判定パターン3に対する判定処理を先に行なってもよい。この場合、ステップS14で第2被判定パターン3が目的の対象物(アライメントマーク)であると判定された時点(Yes)で処理が終了し、第1被判定パターン2に対する判定処理は行なわれない。ただし、複数の被判定パターンのうちのいずれかの被判定パターンについて目的の対象物であると判定されたときであっても、未処理の被判定パターンが残っているときには未処理の被判定パターンについて判定処理を行なうようにしてもよい。この場合、複数の被判定パターンについて目的の対象物であると判定されたときであって、1つの被判定パターンのみを目的の対象物として選定したいときには、上記位置的差異の合計値がより小さい被判定パターンを目的の対象物とすればよい。
【0045】
また、この実施例は、選択された被判定パターンについて、領域分割中心点の設定、領域分割、被判定パターン代表点の選定、代表点の位置的差異の算出及び目的の対象物であるか否かの判定(ステップS10〜S14)の一連の処理を行なった後、目的の対象物が得られない場合には次の被判定パターンについて上記一連の処理を行なっている。これに対し、本発明は、複数の被判定パターンについてそれぞれ被判定パターン代表点が求められた後、各被判定パターンについて目的の対象物であるか否かの判定が行なわれるようにしてもよい。
【0046】
なお、カメラと撮像対象の距離などに起因して、撮像された画像の倍率が変化する可能性がある場合は、ステップS12で被判定パターン代表点を選定した後、被判定パターン代表点情報に補正を行なってステップS13で位置的差異を算出することが好ましい。
具体的な代表点情報の補正方法としては、例えば、図4に示した標準パターン代表点T1−1と領域分割中心点G1との距離と、第1被判定パターン2で標準パターン代表点T1−1に対応する第1被判定パターン代表点T2−1と分割領域中心点G2との距離が等しくなるように第1被判定パターン2の領域を変倍し、また、第2被判定パターン3で標準パターン代表点T1−1に対応する第2被判定パターン代表点T3−1と分割領域中心点G3との距離が等しくなるように第2被判定パターン3の領域を変倍して、被判定パターン代表点T2−1〜T2−8,T3−1〜T3−8の座標情報を補正すればよい。
【0047】
また、この被判定パターン代表点の座標位置補正のために変倍した後に被判定パターンについて、X座標又はY座標に関し、標準パターンの最小座標値と最大座標値の差と、変倍後の被判定パターンの最小座標値と最大座標値の差が予め定められた値以上であるとき、例えば10画素以上であるときには、その被判定パターンに対してステップS14の判定処理を省略するようにしてもよい。
【0048】
ところで、半導体装置の製造工程で写真製版工程やエッチング工程により形成されるアライメントマークやその他のパターンは、図8に示すように丸みを帯びた形状になることがある。この場合、アライメントマークについて、予め登録されている標準パターン代表点の座標と全く等しくなる被判定パターンを検出することはできないが、前述の通り、標準パターン代表点の座標と被判定パターン代表点の座標を比較して、その位置的差異が予め設定された範囲内であれば、被判定パターンが目的の対象物であると判定するので、アライメントマークを検出することができる。
【0049】
図9に、丸みを帯びた第1被判定パターン2に対する、第1被判定パターン2の領域を8分割するための領域分割中心点G2及び線、ならびに第1被判定パターン代表点T2−1〜T2−8を示す。図10に、丸みを帯びた第2被判定パターン3に対する、第2被判定パターン3の領域を8分割するための領域分割中心点G3及び線、ならびに第2被判定パターン代表点T3−1〜T3−8を示す。
【0050】
図9、図10に示すように、被判定パターン2,3が丸みを帯びた場合であっても、第2被判定パターン3については、図4の標準パターン代表点T1−1〜T1−8に対して、ほぼ同じ位置に第2被判定パターン代表点T3−1〜T3−8を得ることができるので、第2被判定パターン3は目的の対象物(アライメントマーク)であると判定される。
【0051】
上記の実施例では、標準パターンの領域及び被判定パターンの領域を8分割したが、検出対象物のパターン形状によって分割領域の数や位置を定めてもよい。分割領域の数は2つ以上であればよい。標準パターンを用いて一例を説明する。
例えば図11に示すように、標準パターン5に対して、標準パターン5の重心を領域分割中心点G5として標準パターン5の領域を4つの分割領域A5−1〜A5−4に分割して、4つの標準パターン代表点T5−1〜T5−4を得るようにしても構わない。
【0052】
また、複数の分割領域のうち、いずれかの分割領域で代表点が選定されなくてもよい。
例えば図12に示すように、標準パターン5に対して、標準パターン5の領域を8つの分割領域A5−1〜A5−8に分割し、分割領域A5−2,A5−4,A5−6,A5−8については代表点が選定されず、分割領域A5−1,A5−3,A5−5,A5−7について標準パターン代表点T5−1,T5−3,T5−5,T5−7が選定されるようにしてもよい。
【0053】
上記実施例は、標準パターン代表点又は被判定パターン代表点の選定処理において、標準パターン又は被判定パターンの全ての画素を対象にして選定処理を行なったが、標準パターン又は被判定パターンの輪郭部分の画素情報のみで代表点の選定処理を行なっても同等の結果が得られる。この場合、標準パターン又は被判定パターンの全ての画素を対象にして代表点の選定処理を行なうよりも、高速に代表点の選定処理が行なえる利点がある。標準パターンを用いて一例を説明する。
パターンの輪郭部分の画素情報は、一般的にエッジ検出と呼ばれる、画像の明るさの変化によりパターンの輪郭を算出する方法で求めることができる。
【0054】
図13は、図2に示した標準パターン1に対してエッジ検出処理を行なった結果を示す図である。
標準パターン1に対してエッジ検出処理が行なわれることにより、標準パターン輪郭部分1aが得られる。
【0055】
図14は、図13の標準パターン輪郭部分1aの領域を8分割するための領域分割中心点及び線ならびに標準パターン代表点を示す図である。ここでは標準パターン輪郭部分1aの重心を領域分割中心点G1aとし、図3を参照して説明した領域分割と同じ条件で標準パターン輪郭部分1aの領域を8つの分割領域A1a−1〜A1a−8に分割した。これにより、標準パターン代表点T1a−1〜T1a−8が得られる。領域分割中心点G1aに対する標準パターン代表点T1a−1〜T1a−8の位置は、領域分割中心点G1に対する標準パターン代表点T1−1〜T1−8の位置と同じである(図4及び図14を参照。)。
【0056】
また、パターンの輪郭部分を用いて代表点の選定処理を行なう場合、領域分割中心点から最も近い画素位置を代表点として選定することもできる。
また、分割領域ごとに代表点の求め方が異なってもよい。
【0057】
例えば図15に示すように、図12に示した標準パターン5に対して標準パターン輪郭部分5aを求める。標準パターン輪郭部分5aの重心を領域分割中心点G5aとし、8つの分割領域A5a−1〜A5a−8のうち、分割領域A5a−1,A5a−3,Aa5−5,A5a−7については領域分割中心点G5aから最大距離にある標準パターン輪郭部分5aの画素位置を標準パターン代表点T5a−1,T5a−3,T5a−5,T5a−7として選定する。分割領域A5a−2,A5a−4,A5a−6,A5a−8については領域分割中心点G5aから最小距離にある標準パターン輪郭部分5aの画素位置を標準パターン代表点T5a−2,T5a−4,T5a−6,T5a−8として選定する。
このように、領域分割中心点から最も離れた位置の画素座標を代表点として選定する分割領域と、領域分割中心点から最も近い位置の画素座標を代表点として選定する分割領域とが混在していても構わない。
【0058】
上記実施例において、標準パターン代表点の情報は、図1のフローチャートのステップS1〜S5に従って、標準パターンの画像情報を用いて求められたが、標準パターン代表点の情報は設計データに基づいて求められるようにしてもよい。
例えば、図2に示した標準パターン1について、標準パターン1の重心を領域分割中心点とすること(領域分割中心点の設定方法)、図3に示したように標準パターン1の重心を領域分割中心点として標準パターン1の領域を8つの分割領域に分割すること(分割領域の設定方法)が決定されていれば、作業者は、標準パターン1に対して選定される標準パターン代表点T1−1〜T1−8(図4参照。)の座標位置を設計データに基づいて容易に選定することができる。
【0059】
上記で説明した実施例の各ステップは、各ステップを処理するためのプログラムを作製し、コンピュータを用いてそのプログラムを実行させることによって実現できる。
【0060】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、上記実施例の説明において図を用いたが、本発明の各ステップにおいて作図が必要なわけではない。
また、上記実施例は、アライメントマークを目的の対象物としているが、本発明の目的の対象物は、アライメントマークに限定されず、どのようなパターン形状であってもよい。
また、標準パターンは、作図されたものであってもよいし、撮像されたものであってもよい。被判定パターンも、作図されたものであってもよいし、撮像されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、半導体製造における寸法測定などの工程でのウエハの位置合わせ作業など、撮像した画像や作図された画像の中に含まれる特定のパターン形状を検出する作業に適用できる。
【符号の説明】
【0062】
1,5 標準パターン
1a,5a 標準パターンの輪郭部分
2,3 被判定パターン
4 被判定パターン画像
A1−1〜A1−8,A5−1〜A5−8 標準パターンに対する分割領域
A2−1〜A2−8,A3−1〜A3−8 被判定パターンに対する分割領域
A1a−1〜A1a−8,A5a−1〜A5a−8 標準パターンの輪郭部分に対する分割領域
G1,G5 標準パターンに対する領域分割中心点
G1a,G5a 標準パターンの輪郭部分に対する領域分割中心点
G2,G3 被判定パターンに対する領域分割中心点
T1−1〜T1−8,T5−1,T5−3,T5−5,T5−7 標準パターン代表点
T1a−1〜T1a−8,T5a−1〜T5a−8 標準パターン代表点
T2−1〜T2−8,T3−1〜T3−8 被判定パターン代表点
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2008−234261号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準パターンの領域を、任意の点である領域分割中心点から放射線状に2つ以上の領域に分割し、分割領域ごとに前記領域分割中心点から最大距離にある標準パターン画素位置を標準パターン代表点として選定する標準パターン代表点選定ステップと、
被判定パターンの領域を、前記標準パターン代表点選定ステップと同じ条件で前記領域分割中心点を用いて2つ以上の領域に分割し、分割領域ごとに前記領域分割中心点から最大距離にある被判定パターン画素位置を被判定パターン代表点として選定する被判定パターン代表点選定ステップと、
対応する分割領域における前記標準パターン代表点の座標と前記被判定パターン代表点の座標の位置的差異を求め、すべての分割領域において前記位置的差異が予め定められた範囲内であるときに前記被判定パターンは目的の対象物であると判定する対象物判定ステップと、を含んだ対象物検出方法。
【請求項2】
前記標準パターン代表点選定ステップ及び前記被判定パターン代表点選定ステップは、前記パターンの中心又は重心を前記領域分割中心点とする請求項1に記載の対象物検出方法。
【請求項3】
前記標準パターン代表点選定ステップ及び前記被判定パターン代表点選定ステップは、前記分割領域のうち、予め指定された第1分割領域については前記代表点の選定処理を行なわない請求項1又は2に記載の対象物検出方法。
【請求項4】
前記標準パターン代表点選定ステップ及び前記被判定パターン代表点選定ステップの一方又は両方は、前記パターンの輪郭部分の画素情報のみを用いて前記代表点を選定する請求項1から3のいずれか一項に記載の対象物検出方法。
【請求項5】
前記パターンの輪郭部分の画素情報のみを用いて前記代表点を選定する前記代表点選定ステップは、前記分割領域のうち、予め指定された第2分割領域については前記領域分割中心点から最小距離にあるパターン画素位置を前記代表点として選定する請求項4に記載の対象物検出方法。
【請求項6】
標準パターン代表点選定ステップは、実際の画像情報を処理することなく、前記標準パターンの設計データに基づいて予め選定された標準パターン画素位置を前記標準パターン代表点として設定する請求項1から5のいずれか一項に記載の対象物検出方法。
【請求項7】
前記標準パターン及び前記被判定パターンは、半導体ウエハの位置合せに用いられるアライメントマークである請求項1から6のいずれか一項に記載の対象物検出方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の各ステップをコンピュータに実行させるための対象物検出プログラム。
【請求項1】
標準パターンの領域を、任意の点である領域分割中心点から放射線状に2つ以上の領域に分割し、分割領域ごとに前記領域分割中心点から最大距離にある標準パターン画素位置を標準パターン代表点として選定する標準パターン代表点選定ステップと、
被判定パターンの領域を、前記標準パターン代表点選定ステップと同じ条件で前記領域分割中心点を用いて2つ以上の領域に分割し、分割領域ごとに前記領域分割中心点から最大距離にある被判定パターン画素位置を被判定パターン代表点として選定する被判定パターン代表点選定ステップと、
対応する分割領域における前記標準パターン代表点の座標と前記被判定パターン代表点の座標の位置的差異を求め、すべての分割領域において前記位置的差異が予め定められた範囲内であるときに前記被判定パターンは目的の対象物であると判定する対象物判定ステップと、を含んだ対象物検出方法。
【請求項2】
前記標準パターン代表点選定ステップ及び前記被判定パターン代表点選定ステップは、前記パターンの中心又は重心を前記領域分割中心点とする請求項1に記載の対象物検出方法。
【請求項3】
前記標準パターン代表点選定ステップ及び前記被判定パターン代表点選定ステップは、前記分割領域のうち、予め指定された第1分割領域については前記代表点の選定処理を行なわない請求項1又は2に記載の対象物検出方法。
【請求項4】
前記標準パターン代表点選定ステップ及び前記被判定パターン代表点選定ステップの一方又は両方は、前記パターンの輪郭部分の画素情報のみを用いて前記代表点を選定する請求項1から3のいずれか一項に記載の対象物検出方法。
【請求項5】
前記パターンの輪郭部分の画素情報のみを用いて前記代表点を選定する前記代表点選定ステップは、前記分割領域のうち、予め指定された第2分割領域については前記領域分割中心点から最小距離にあるパターン画素位置を前記代表点として選定する請求項4に記載の対象物検出方法。
【請求項6】
標準パターン代表点選定ステップは、実際の画像情報を処理することなく、前記標準パターンの設計データに基づいて予め選定された標準パターン画素位置を前記標準パターン代表点として設定する請求項1から5のいずれか一項に記載の対象物検出方法。
【請求項7】
前記標準パターン及び前記被判定パターンは、半導体ウエハの位置合せに用いられるアライメントマークである請求項1から6のいずれか一項に記載の対象物検出方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の各ステップをコンピュータに実行させるための対象物検出プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−232851(P2011−232851A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100743(P2010−100743)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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