説明

封止成形体の製造方法、及び封止成形体

【課題】半導体素子等の金型にセットされる部品を、金型内で動かないように固定しておくためのエジェクトピン等により、封止成形体の表面に形成される開口を塞ぐ必要を無くす技術を提供する。
【解決手段】表面に部品が載置された第一樹脂成形体を金型に保持させる保持工程と、保持工程後に、熱可塑性樹脂組成物を金型内に射出することで、第一樹脂成形体と接合されて、第一樹脂成形体とともに部品を覆う第二樹脂成形体を形成する封止工程と、を備える封止成形体の製造方法で封止成形体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止成形体の製造方法、及び封止成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、コンデンサやダイオード等の電子部品を、機械的・電気的な外部環境から保護するための封止技術として、安価で量産性に優れた樹脂封止が知られている。
【0003】
この樹脂封止の方法としては、先ず、基材上に搭載された半導体素子等を金型中にセットしておき、次いで、当該金型中に封止のための樹脂を溶融、射出して、最後に、樹脂を固化させた後、脱型する方法が知られている。
【0004】
半導体素子等の金型にセットされる部品は、封止工程時に金型内で動かないように固定しておく必要がある。エジェクトピン等で固定すると、溶融された樹脂を金型内に射出しても、エジェクトピン等が存在する部分には樹脂は流れ込まない。その結果、封止工程後に金型から封止成形体を取り出すと、封止成形体の表面には、エジェクトピンの存在が原因となる開口が形成される。
【0005】
上記のような、エジェクトピンにより形成される開口は、封止成形体の機械的強度を低下させたり、水等の液体や気体を封止成形体の内部に侵入させやすくしたりする可能性がある。
【0006】
そこで、上記のような、エジェクトピンにより形成される開口を塞ぐ技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−244314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の技術によれば、上記開口を塞ぐことができ、封止成形体の機械的強度等の低下を抑えられる。しかし、特許文献1に記載の技術では、開口を塞ぐために特別な設備が必要になり、封止成形体の製造コストが増大する。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、封止成形体の製造時に、封止成形体の表面に形成される開口による問題を、より簡易な方法で解決する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、表面に部品が載置された第一樹脂成形体を金型に保持させる保持工程と、この保持工程後に、熱可塑性樹脂組成物を金型内に射出することで、第一樹脂成形体と接合されて、第一樹脂成形体とともに部品を覆う第二樹脂成形体を形成する封止工程と、を備える封止成形体の製造方法であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0011】
(1) 表面に部品が載置された第一樹脂成形体を金型に保持させる保持工程と、前記保持工程後に、熱可塑性樹脂組成物を前記金型内に射出することで、前記第一樹脂成形体と接合されて前記第一樹脂成形体とともに前記部品を覆う第二樹脂成形体を形成する封止工程と、を備える封止成形体の製造方法。
【0012】
(2) 前記保持工程は、前記金型に形成された孔に、前記第一樹脂成形体の少なくとも一部又は前記第一樹脂成形体と連結された部材の少なくとも一部を嵌入させることで、前記第一樹脂成形体を前記金型に保持させる(1)に記載の封止成形体の製造方法。
【0013】
(3) 前記第一樹脂成形体は、前記部品を固定するための固定部を有する(1)又は(2)に記載の封止成形体の製造方法。
【0014】
(4) 前記第一樹脂成形体と前記第二樹脂成形体との接合面の一部と、前記接合面の一部の離面である、前記第一樹脂成形体と前記部品との接触面の一部とが、略平行である(1)から(3)のいずれかに記載の封止成形体の製造方法。
【0015】
(5) 前記第一樹脂成形体及び前記第二樹脂成形体は、結晶性熱可塑性樹脂組成物から構成される(1)から(4)のいずれかに記載の封止成形体の製造方法。
【0016】
(6) 前記第一樹脂成形体及び前記第二樹脂成形体が、ともにポリアリーレンサルファイド樹脂から構成され、前記第一樹脂成形体が前記ポリアリーレンサルファイド樹脂の冷結晶化温度未満の金型温度にて成形されたものである(1)から(5)のいずれかに記載の封止成形体の製造方法。
【0017】
(7) 樹脂成形体と、前記樹脂成形体で封止された部品とから構成され、前記樹脂成形体は、第一樹脂成形体と、前記第一樹脂成形体とインサート成形により接合された第二樹脂成形体とから構成され、前記第一樹脂成形体は、前記部品を金型に配置して封止成形する成形時に前記部品を載置する載置部と、前記成形時に前記金型内での前記第一樹脂成形体の位置を保持する保持部とを備える封止成形体。
【0018】
(8) 前記保持部はエジェクトピンと連結可能である(7)に記載の封止成形体。
【0019】
(9) 前記載置部は、前記部品の位置を固定可能である(7)又は(8)に記載の封止成形体。
【0020】
(10) 前記第一樹脂成形体と前記第二樹脂成形体との接合面の一部と、前記接合面の一部の離面である、前記第一樹脂成形体と前記部品との接触面の一部とが、略平行である(7)から(9)のいずれかに記載の封止成形体。
【0021】
(11) 前記第一樹脂成形体及び前記第二樹脂成形体は、結晶性熱可塑性樹脂組成物から構成される(7)から(10)のいずれかに記載の封止成形体。
【0022】
(12) 前記第一樹脂成形体及び前記第二樹脂成形体が、ともにポリアリーレンサルファイド樹脂から構成される(7)から(11)のいずれかに記載の封止成形体。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、第一樹脂成形体を介して部品を金型に保持させるため、従来問題とされていた、部品を固定するためのピン等の存在によって封止成形体の表面に開口が形成されることがない。そして、上記開口を形成させないために必要な第一樹脂成形体は、射出成形法等により製造することが可能であるため、新たな設備を必要としない。したがって、本発明によれば、封止成形体の製造コストを抑制することができる。
【0024】
また、第一樹脂成形体の製造は、特許文献1に記載されるような開口を塞ぐ方法と比較して、短時間で行われる。その結果、本発明によれば、封止成形体の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、封止成形体の一例を模式的に示す図であり、(a)が斜視図であり、(b)は(a)のMM断面図である。
【図2】図2は、第一樹脂成形体を模式的に示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は底面図である。
【図3】図3は、部品が載置部に載置された第一樹脂成形体が、金型に保持された状態を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、第一樹脂成形体の変形例を示す模式図である。
【図5】図5は、二箇所に第一樹脂成形体を備える場合の封止成形体の模式図である。
【図6】図6は、第一実施形態の封止成形体を製造するための金型の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0027】
<封止成形体の製造方法>
本発明の封止成形体の製造方法は、表面に部品が載置された第一樹脂成形体を金型に保持させる保持工程と、保持工程後に、熱可塑性樹脂組成物を上記金型内に射出することで、第一樹脂成形体と接合されて第一樹脂成形体とともに部品を覆う第二樹脂成形体を形成する封止工程と、を備える。
【0028】
通常、本発明の製造方法を実施する前に、封止される部品や、第一樹脂成形体の成形、第二樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂組成物を予め決定する。
【0029】
封止される部品については、特に限定されないが、例えば、シリコーン、ゲルマニウム等の元素半導体を有する半導体チップ、ガリウム−ヒ素、インジウム−リン等の化合物半導体を有する半導体チップ、抵抗器、サーミスタ、コンデンサ等の電子部品を例示することができる。
【0030】
第一樹脂成形体は、第二樹脂成形体と同様に熱可塑性樹脂組成物から構成されることが望ましい。線膨張率の近い材料を選択することにより、封止成形体が熱により膨張し収縮する場合に接合部に大きな応力がかかることを避けることができる。第二樹脂成形体と同じ熱可塑性樹脂組成物を使用してもよいし、異なる熱可塑性樹脂組成物を使用してもよい。以下、説明の便宜のために、第一樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂組成物は、第一熱可塑性樹脂組成物という。
【0031】
第一熱可塑性樹脂組成物は、第二樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂組成物の物性を考慮して決定する。封止工程において形成される第二樹脂成形体と第一樹脂成形体とが一体化するように第一熱可塑性樹脂組成物を決定する必要があるからである。
【0032】
本発明では、封止工程において、第一樹脂成形体と第二樹脂成形体とを一体化するために、金型内で第一樹脂成形体が、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物と接したときに、上記熱可塑性樹脂組成物の有する熱で第一樹脂成形体の、上記熱可塑性樹脂組成物と接した部分が溶け、第一樹脂成形体と第二樹脂成形体とが溶着するように一体化することが好ましい。このためには、第一熱可塑性樹脂組成物として、第二樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂組成物よりも融点の低い、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物に接することにより熱せられる接合部が溶けやすい樹脂組成物を選択することが好ましい。
【0033】
また、上記の、溶着するような一体化のためには、結晶性熱可塑性樹脂組成物を用いることが好ましい。具体的には、第一樹脂成形体及び第二樹脂成形体のいずれもが同種の結晶性熱可塑性樹脂から構成される場合において、第一樹脂成形体に含まれる結晶性熱可塑性樹脂の結晶化度が、第二樹脂成形体に含まれる結晶性熱可塑性樹脂の結晶化度よりも低くなるように、第一樹脂成形体を成形することが好ましい。ここで、結晶化度が低いとは、冷結晶化温度以上の金型温度で製造した成形体中の結晶性熱可塑性樹脂の結晶化度を100としたときに、90以下好ましくは60以下の結晶化度である場合を指す。
【0034】
結晶化度が低くなるように第一樹脂成形体を成形する方法は、特に限定されないが、変性した結晶性熱可塑性樹脂を使用する方法、成形条件を調整する方法が挙げられる。なお、成形方法としては、射出成形、押出成形等の従来公知の成形方法を採用することができる。
【0035】
変性した結晶性熱可塑性樹脂を用いる方法を、ポリブチレンテレフタレート樹脂を例に説明する。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸(テレフタル酸又はそのエステル形成誘導体)と、炭素数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)又はそのエステル形成誘導体を少なくとも重合成分とする。そして、テレフタル酸、1,4−ブタンジオール以外のモノマーに由来する重合成分(本明細書において、「コモノマー成分」という)を含む。コモノマー成分の含有量、コモノマー成分の種類等によって、結晶化度を調整することができる。
【0036】
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分(コモノマー成分)としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸等の炭素数6〜40程度のジカルボン酸、好ましくは炭素数6〜14程度のジカルボン酸)、脂環族ジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等の炭素数8〜12程度のジカルボン酸)、芳香族ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の炭素数8〜14程度のジカルボン酸)、又はそれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。また、ジカルボン酸成分としては、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロテレフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、ハイミック酸等の脂環族ジカルボン酸、テトラブロモフタル酸、テトラブロモテレフタル酸、テトラクロロフタル酸、ヘット酸等のハロゲン含有ジカルボン酸も使用できるとともに、等価な成分としてp−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフェニル酢酸、ヒドロキシナフトエ酸、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸、プロピオラクトン、ブチロラクトン、カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン等を使用してもよい。テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸以外のジカルボン酸成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。さらに、必要に応じて、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸等を併用してもよい。
【0037】
1,4−ブタンジオール以外のジオール成分(コモノマー成分)としては、ブタンジオール以外の炭素数2〜12程度のアルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール等の炭素数2〜10程度の脂肪族グリコール)、ポリオキシアルキレングリコール[アルキレン基の炭素数が2〜4程度であり、複数のオキシアルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジ(オキシエチレン)グリコール、ジ(オキシプロピレン)グリコール、ジ(オキシテトラメチレン)グリコール、トリ(オキシエチレン)グリコール、トリ(オキシプロピレン)グリコール、トリ(オキシテトラメチレン)グリコール等]、両末端にヒドロキシル基を有するポリエステルオリゴマーで構成されたジオール、脂環族ジオール(例えば、シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、水素化ビスフェノールA等)、芳香族ジオール[例えば、ビスフェノールA[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン]、ジエトキシビスフェノールA、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシフェニルエーテル、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、キシレングリコール、ナフタレンジオール等]等の他、ハイドロキノン等が挙げられる。
【0038】
第二樹脂成形体をポリブチレンテレフタレート樹脂組成物で構成する場合、第一熱可塑性樹脂組成物として、融点が20℃以上低いコモノマー成分を共重合したポリブチレンテレフタレートコポリマー樹脂組成物を使用することにより、通常の成形方法でも容易に溶着する。
【0039】
また、成形条件を調整する方法としては、例えば、成形時に成形体を急冷する方法が挙げられる。急冷することで、低結晶化度の成形体を得ることができる。
【0040】
例えばポリアリーレンサルファイド樹脂であるポリフェニレンサルファイド樹脂では、溶融樹脂を冷結晶化温度未満、望ましくはガラス転移温度未満に設定した金型に射出注入する等して成形することにより、低結晶化度の成形体を容易に作成することができる。
【0041】
続いて、第二樹脂成形体を形成するための、熱可塑性樹脂組成物について説明する。本発明において、熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂の種類、添加剤の種類は限定されず、用途等に応じて適宜好ましい樹脂、添加剤を含む熱可塑性樹脂組成物を使用可能である。
【0042】
ただし、第一樹脂成形体と第二樹脂成形体との一体化は、金型内に配置された第一樹脂成形体に溶融状態の熱可塑性樹脂組成物が接したときに、第一熱可塑性樹脂成形体の表面が溶けて、溶着するように進むことが好ましい。このためには、第一熱可塑性樹脂組成物として、結晶性熱可塑性樹脂組成物を採用し、熱可塑性樹脂組成物も第一熱可塑性樹脂組成物と同種の結晶性熱可塑性樹脂組成物から構成されることが好ましい。
【0043】
[保持工程]
以上のようにして、決定された部品、第一熱可塑性樹脂組成物から成形された第一熱可塑性樹脂成形体、熱可塑性樹脂組成物を用いて本発明の封止成形体の製造方法を実施する。図1に示す封止成形体を例に、本発明の封止成形体の製造方法について説明する。なお、図1に示す封止成形体1は、本発明の封止成形体の一例である。
【0044】
図1は、本実施形態の製造方法を説明するための、封止成形体1を模式的に示す図であり、(a)が斜視図であり、(b)は(a)のMM断面図である。(a)に示す通り、封止成形体1は直方体状である。また、(b)に示すように、封止成形体1は部品10と樹脂成形体20とを備える。樹脂成形体20は第一樹脂成形体21と第二樹脂成形体22とを備え、第一樹脂成形体21と第二樹脂成形体22とが部品10を囲むことで、部品10は樹脂成形体20に封止される。
【0045】
図2は第一樹脂成形体21を模式的に示す図であり、図2(a)は斜視図であり、(b)は底面図である。第一樹脂成形体21は、表面の一部に部品10を載置するための面である載置部211と、エジェクトピンと連結して金型内における第一樹脂成形体21の位置を固定するための保持部212と、載置部211の裏面に形成される段差部213とを備える。
【0046】
載置部211は、部品10の位置を固定するための、凸状部である固定部2111を備える。
【0047】
また、段差部213は、載置部211における固定部2111が形成されていない円環状の面の裏面側に存在する第一面2131と上記第一面2131から垂直に延びる第二面2132とから構成される。
【0048】
第一面2131と、載置部211における固定部2111が形成されていない円環状の面とは略平行である。また、第一面2131には粗面が形成されている。
【0049】
図3には、部品10が載置部211に載置された第一樹脂成形体21が、金型2に保持された状態を模式的に示す断面図である。金型2には表面に貫通孔が形成されており、貫通孔にはエジェクトピン3が進退可能に貫通している。
【0050】
エジェクトピン3は、第一樹脂成形体21の保持部212と連結しており、第一樹脂成形体21と連結したエジェクトピン3が貫通孔に嵌入する。
【0051】
[封止工程]
封止工程とは、金型3内に熱可塑性樹脂組成物を射出して第二樹脂成形体22を形成すると同時に第一樹脂成形体21と第二樹脂成形体22とを一体化する工程を指す。例えば、以下のようにして、第一樹脂成形体21と第二樹脂成形体22とが一体化される。
【0052】
先ず、金型2内に射出された溶融状態の熱可塑性樹脂組成物が第一樹脂成形体21と接触する。熱可塑性樹脂組成物の持つ熱は、第一樹脂成形体21の表面を加熱し溶融させる。そして、この第一樹脂成形体21の溶融した部分と溶融状態の熱可塑性樹脂組成物が溶着した状態で、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物が金型2内で固化して第二樹脂成形体22を形成することで、第二樹脂成形体22の形成と同時に、第一樹脂成形体21と第二樹脂成形体22とが一体化する。この一体化により、部品10を封止する樹脂成形体20が形成される。
【0053】
なお、熱可塑性樹脂組成物を射出する条件等は、熱可塑性樹脂組成物の種類等に応じて適宜決定される。
【0054】
<効果>
以上のようにして製造される本発明の封止成形体、本発明の製造方法が奏する効果は以下の通りである。
【0055】
本発明の製造方法によれば、保持工程で部品10が載置された第一樹脂成形体21を金型2に保持させて、封止工程で第二樹脂成形体22を形成すると同時に第一樹脂成形体21と第二樹脂成形体22とを一体化することで、部品10を樹脂成形体20で封止する。ここで、封止工程前に部品10を保持する第一樹脂成形体21は、封止成形体1を構成する部材の一つである。このため、成形後の封止樹脂成形体の表面に、部品10を保持するための部材を除去することにより形成される開口が存在せず、開口を塞ぐための設備や時間を削減することができる。
【0056】
また、本発明は予め第一樹脂成形体21を成形しておく必要があるが、上記の開口を塞ぐ技術と比較して、第一樹脂成形体21の成形は短時間で行うことができる。その結果、封止成形体1の生産性が高まる。
【0057】
本実施形態では、第一樹脂成形体21の載置部211に、部品10の位置を固定するための固定部2111が存在する。このため、第二樹脂成形体22の形成時に部品10が動くことを抑えることができる。なお、本実施形態では、凸状の固定部2111と部品10の凹部とが嵌め合うようになっているが、どのように固定部2111は、部品10の位置を固定できるものであれば、どのような形状であってもよい。
【0058】
本実施形態では、第一面2131と、載置部211における固定部2111が形成されていない円環状の面とは略平行である。部品10が金属等の場合であって、部品10が樹脂材料と比較して膨張や収縮をしにくい場合に、第二樹脂成形体22の形成時に樹脂が大きく膨張及び収縮しても、第一樹脂成形体21と第二樹脂成形体22の接合を強固なまま維持することができる。
【0059】
特に、本実施形態では、第一面2131には粗面が形成されているため、第一樹脂成形体21と第二樹脂成形体22との密着がさらに強固なものとなる。また、粗面は第一樹脂成形体21と第二樹脂成形体22との密着を強くする手段の一例であり、他の手段としては、第一樹脂成形体21の表面であって、第二樹脂成形体の形成時に熱可塑性樹脂組成物と接触する面上に、突起部を設ける方法が挙げられる。突起部は錐体のように断面が三角形であってもよいし、直方体やその他複雑な立体形状を有するものであってもよい。また、突起部は連続して設けられていてもよい。突起部を設けることで、第二樹脂成形体の形成時に、第一樹脂成形体21における熱可塑性樹脂組成物との接触面積が増えて、封止成形体における第一樹脂成形体21と第二樹脂成形体22との密着力が強くなるだけでなく、突起部は溶融状態の熱可塑性樹脂組成物からの熱を突起部の周囲から受けることができ溶融しやすい結果、上記密着力を高める効果もある。
【0060】
特に、封止工程前の第一樹脂成形体21を結晶性熱可塑性樹脂組成物で形成し、第一樹脂成形体21中の結晶性熱可塑性樹脂の結晶化度を、低く抑えることで、封止工程における第二樹脂成形体22との接合がより強固になる。
【0061】
以上、本発明の封止成形体及び本発明の製造方法の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、種々の形態で実施することができる。なお、以下の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0062】
上記第一実施形態では、固定部2111と部品10とが噛み合うようになっているが、固定の必要が無い場合や、特別な固定部を設けなくても固定可能な場合には、図4(a)に示すように、第一樹脂成形体21Aは固定部を有さなくてもよい。
【0063】
また、上記の第一実施形態では、段差部213が設けられているが、例えば、部品と樹脂との熱による膨張率、収縮率が同等の場合には図4(a)に示すように設けなくてもよい。
【0064】
また、上記の第一実施形態では、第一樹脂成形体21は凸状の固定部2111を有するが、図4(b)に示すように凹状の固定部を有する第一樹脂成形体21Bで部品10Bを囲い込むように固定してもよい。
【0065】
また、上記の第一実施形態では、第一樹脂成形体21は一箇所のみに配置されているが、樹脂成形体20が図5に示すように二箇所に分けて第一樹脂成形体21Cを備えるようにしてもよい。
【0066】
金型内に熱可塑性樹脂組成物を供給して封止成形体を得る際、第一樹脂成形体の形状は、図4(a)の21Aのような溶融樹脂と接する部分に固定部が無い場合より、図4(b)の21Bや図5の21Cのように成形品の角部が溶融樹脂により二方向から覆われる形状の方が、角部がより溶着しやすくなり好ましい。
【0067】
また、上記の第一実施形態では、図3に示すような金型2で製造するが、部品10をより安定に固定する等の目的で、図6(a)に示すような金型を用いてもよい、図6(a)に示す金型2Dは、金型2Dの貫通孔に貫通した第二固定部4Dを備える。この第二固定部4Dは進退可能である。この金型2Dを用いて、例えば、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を金型内に流し込み、流れ込んだ溶融状態の熱可塑性樹脂組成物が固化する前に、図6(b)に示すように第二固定部4Dを貫通孔内に引き戻す方法で製造する。
【符号の説明】
【0068】
1 封止成形体
10 部品
20 樹脂成形体
21 第一樹脂成形体
211 載置部
2111 固定部
212 保持部
213 段差部
2131 第一面
2132 第二面
2 金型
3 エジェクトピン
4 第二固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に部品が載置された第一樹脂成形体を金型に保持させる保持工程と、
前記保持工程後に、熱可塑性樹脂組成物を前記金型内に射出することで、前記第一樹脂成形体と接合されて、前記第一樹脂成形体とともに前記部品を覆う第二樹脂成形体を形成する封止工程と、を備える封止成形体の製造方法。
【請求項2】
前記保持工程は、前記金型に形成された孔に、前記第一樹脂成形体の少なくとも一部又は前記第一樹脂成形体と連結された部材の少なくとも一部を嵌入させることで、前記第一樹脂成形体を前記金型に保持させる請求項1に記載の封止成形体の製造方法。
【請求項3】
前記第一樹脂成形体は、前記部品を固定するための固定部を有する請求項1又は2に記載の封止成形体の製造方法。
【請求項4】
前記第一樹脂成形体と前記第二樹脂成形体との接合面の一部と、前記接合面の一部の裏面側に存在する前記第一樹脂成形体と前記部品との接触面の一部とが、略平行である請求項1から3のいずれかに記載の封止成形体の製造方法。
【請求項5】
前記第一樹脂成形体及び前記第二樹脂成形体は、結晶性熱可塑性樹脂組成物から構成される請求項1から4のいずれかに記載の封止成形体の製造方法。
【請求項6】
前記第一樹脂成形体及び前記第二樹脂成形体が、ともにポリアリーレンサルファイド樹脂であり、前記第一樹脂成形体が冷結晶化温度未満の金型温度にて成形されたものである請求項1から5のいずれかに記載の封止成形体の製造方法。
【請求項7】
樹脂成形体と、前記樹脂成形体で封止された部品とから構成され、
前記樹脂成形体は、第一樹脂成形体と、前記第一樹脂成形体とインサート成形により接合された第二樹脂成形体とを備え、
前記第一樹脂成形体は、前記部品を載置する載置部と、成形時に金型内での前記第一樹脂成形体の位置を保持する保持部とを備える封止成形体。
【請求項8】
前記保持部はエジェクトピンと連結可能である請求項7に記載の封止成形体。
【請求項9】
前記載置部は、前記部品の位置を固定可能である請求項7又は8に記載の封止成形体。
【請求項10】
前記第一樹脂成形体と前記第二樹脂成形体との接合面の一部と、前記接合面の一部の裏面側に存在する、前記第一樹脂成形体と前記部品との接触面の一部とが、略平行である請求項7から9のいずれかに記載の封止成形体。
【請求項11】
前記第一樹脂成形体及び前記第二樹脂成形体は、結晶性熱可塑性樹脂組成物から構成される請求項7から10のいずれかに記載の封止成形体。
【請求項12】
前記第一樹脂成形体及び前記第二樹脂成形体が、ともにポリアリーレンサルファイド樹脂から構成される請求項7から11のいずれかに記載の封止成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−62383(P2013−62383A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200011(P2011−200011)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】