説明

封止樹脂組成物及び発光素子

【課題】硬化物が、シリコーン樹脂と同等の耐熱性、耐光性及び柔軟性を有し、エポキシ樹脂の屈折率を上回る1.57以上の屈折率を有する封止樹脂組成物を提供する。
【解決手段】封止樹脂組成物が、屈折率1.55以上の高屈折率アクリル系又はメタクリル系モノマーと、無官能フルオレン化合物を含有する。高屈折率アクリル系又はメタクリル系モノマー及び無官能フルオレン化合物が、それぞれ9,9-ビスフェニルフルオレン骨格を有する態様が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、発光素子を封止する樹脂組成物及びこの樹脂組成物で封止した発光素子モジュールに関する。
【技術分野】
【0002】
発光ダイオード(LED:Light Emission Diode)等の発光素子は、低消費電力、小型、軽量等の特徴を有し、それを樹脂封止したものは各種表示灯等に用いられているが、近年青色LED、白色LEDが開発され、高輝度化も進んだことから、液晶表示パネル用のバックライト用光源、照明用光源、信号灯等への応用が急速に進み、自動車のヘッドライトへの応用も開発されている。
【0003】
従来、LED等の発光素子の封止樹脂としては、ビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が主に用いられてきた。しかしながら、LEDの高輝度化に伴い、このエポキシ樹脂は耐熱性と耐光性(特に、UVや青色光に対する耐光性)が不十分となり、高輝度LEDやUV発光LED等においては、LEDから発光されるUV光や熱によって封止樹脂が変色し、これに起因してLEDモジュールの輝度が経時劣化するという問題がある。この問題を解決すべく改良型の高透明性のエポキシ樹脂等が開発されているが、未だ十分な耐熱や耐光性を得るには至っていない。また、エポキシ樹脂は硬いため、熱応力により、LEDモジュールにおいて配線が断線したり、電極と配線との接合部が剥がれるといった問題が起こる。
【0004】
これに対し、最近、ゲルタイプのシリコーン樹脂が、耐熱や耐光性に優れ、柔軟性にも優れている点から、高輝度タイプLEDに用いられるようになっている。しかし、ゲルタイプのシリコーン樹脂は、ヒドロシリル化反応を利用した2液混合型の硬化性樹脂であるため、混合してからポットライフ以内に使用しなくてはらないという時間的制約がある。
【0005】
また、ゲルタイプのシリコーン樹脂は、その屈折率がエポキシ樹脂より小さいため、LEDモジュールにおける光の取出効率が劣るという欠点がある。即ち、高輝度LEDモジュールでは、屈折率が高いサファイヤ基板(屈折率1.76)にLEDチップを下向きに配置し、サファイヤ基板側から光を取り出す方式が主流となっている。ここで、サファイヤ基板から封止樹脂へと光を効率よく取り出すためには、封止樹脂の屈折率はサファイヤの屈折率1.76に近い方が良い。しかしながら、封止樹脂に使用されるシリコーン樹脂の屈折率は、ジメチルシリコーン樹脂が屈折率1.41であり、フェニル基を導入することで屈折率を高めたジフェニルジメチル系やフェニルメチル系のシリコーン樹脂でも1.51程度にすぎない。屈折率を上げるために過度にフェニル基を導入すると、粘度が高くなりすぎて充填に不適切なものとなり、硬化物の柔軟性も損なわれる。そのため、シリコーン樹脂の屈折率は、いずれもエポキシ樹脂の屈折率1.53〜1.57よりも低い。したがって、シリコーン樹脂は、耐熱性、耐光性、柔軟性のメリットを優先させるため、光の取出効率を犠牲にして使用されているのが実情といえる。
【0006】
一方、樹脂中に高屈折率の微粒子を添加することで、樹脂全体の屈折率を上げる試みがある(特許文献1)。ここで、高屈折率の微粒子としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛などが検討されている。しかしながら、実際にこれらの微粒子を添加することで、屈折率を所望の値にまで高めようとすると、少なくとも10〜40体積%という高い割合で充填する必要があり、そのような高い充填率では高度な透明性を得られず、また充填時に適正な流動性を得ることもできない。これに対しては、シングルナノサイズと呼ばれる超微粒子を用いることで、高い充填率でも高度な透明性を得ようとする試みがある。しかしながら、シングルナノサイズの超微粒子は凝集力が極めて強いため、2次凝集粒子を形成させることなく均一に分散させることはきわめて困難である。実際、このような微粒子を添加することで屈折率を上げる手法はいまだ実用化されていない。したがって、高輝度LEDモジュールでは、依然として、屈折率を犠牲にしても、ゲルタイプのシリコーン樹脂が単独で用いられる場合が多い。
【0007】
【特許文献1】特開2004-15063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来技術に対し、本発明は、硬化物が、シリコーン樹脂と同等の耐熱性、耐光性及び柔軟性を有し、エポキシ樹脂の屈折率を上回る1.57以上の屈折率を有する封止樹脂組成物を提供すること、及びその封止樹脂組成物で封止した発光素子モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、アクリル系又はメタクリル系モノマー(以降、(メタ)アクリル系モノマーという)には、硬化物の屈折率が1.55以上と高く、耐熱性や耐光性にも優れたものがあるが、柔軟性に欠けるところ、この(メタ)アクリル系モノマーに重合反応しない無官能フルオレン化合物を配合すると、硬化物がゲル状となって柔軟性が改善され、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、屈折率1.55以上の高屈折率(メタ)アクリル系モノマーと、無官能フルオレン化合物を含有する封止樹脂組成物を提供する。
【0011】
特に、高屈折率(メタ)アクリル系モノマーと無官能フルオレン化合物がそれぞれ9,9-ビスフェニルフルオレン骨格を有する態様を提供し、その製造方法として、水酸基を有する9,9-ビスフェノールフルオレン化合物に、アクリル酸又はメタクリル酸と飽和脂肪酸とを(順次又は同時)エステル化反応させ、9,9-ビスフェノールフルオレン化合物の多官能アクリレート、単官能アクリレート及び無官能化合物の混合物を生成し、該混合物を原料とする方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、かかる封止樹脂組成物の硬化物や、かかる封止樹脂組成物で封止されている発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の封止樹脂組成物によれば、チタニア等の高屈折率超微粒子を含有させなくても、硬化物の屈折率を1.57以上とすることができ、従来のエポキシ樹脂やシリコーン樹脂よりも屈折率が高く、透明性に優れた硬化物を提供することができる。さらに、この硬化物は、硬度ショアA硬度が90以下と低く、柔軟性があり、熱応力緩和性がある。このため、LEDモジュール等の発光素子モジュールに熱応力を与えない。したがって、熱による発光素子モジュールの劣化や断線の問題を低減することができる。
【0014】
また、本発明の樹脂組成物は、二液混合型ではなく、可使時間(ポットライフ)の制約がない。さらに、本発明の樹脂組成物は、熱又はUVで容易に硬化する。したがって、使い勝手がよい。
【0015】
本発明の封止樹脂の製造方法によれば、アクリル系又はメタクリル系モノマー及び無官能フルオレン化合物が、それぞれ9,9-ビスフェニルフルオレン骨格を有する本発明の樹脂組成物の態様を、経済的に、簡便に製造することができる。
【0016】
さらに本発明の発光素子モジュールによれば、封止樹脂の屈折率が高く、透明性に優れているから、発光素子からの光の取り出し効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明の封止樹脂組成物は、高屈折率(メタ)アクリル系モノマーと無官能フルオレン化合物を含有する。(メタ)アクリル系モノマーの屈折率は、その硬化物の屈折率に強く影響するため、本発明では、屈折率1.55以上の高屈折率(メタ)アクリル系モノマーを使用する。これにより、本発明の封止樹脂組成物は、その硬化物の屈折率が1.57以上、好ましくは1.59以上、通常1.57〜1.60となる。
【0019】
ここで、屈折率は、ナトリウムD線(589nm)、25℃における値をいう。
【0020】
本発明で使用する高屈折率(メタ)アクリル系モノマーとしては、式1の化合物をあげることができる。
【0021】
【化1】

(式中、
A:アクリロイル基又はメタクリロイル基
X:クミルフェニル、ビフェニル、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、テルフェニル、フルオレン、カルバゾール、又はナフタレン、アントラセン等の多環式芳香族炭化水素基を骨格に有する基、
Y:-O-、-O-(CH2CH2O)n-、-O-(CH2(CH3)CHO)- (n=1〜5)又は
-O-(CH2CH2O)n1-(CH2(CH3)CHO)n2- (n1+n2=1〜5)
m=1〜6 )
【0022】
式1の高屈折率(メタ)アクリル系モノマーは、一種又は複数種を合わせて使用することができる。
【0023】
式1の高屈折率(メタ)アクリル系モノマーの中でも屈折率が高い点から、フルオレン基含有(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。フルオレン基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、多官能モノマーと単官能モノマーのいずれを使用してもよく、双方を使用してもよい。多官能モノマーとしては、次の式2A、式2Bの9,9-ビスフェニルフルオレン骨格を有する(メタ)アクリル系モノマーが有用である。
【0024】
【化2A】




【0025】
【化2B】

(式2A、式2B中、
X:存在しないか、又は-(CH2CH2O)n若しくは-(CH2CH2O)n(CH2CH(OH)CH2O)- (n=1〜5)
R:アクリロイル基又はメタクリロイル基。但し、式2Bでは任意の位置の2つまでのRが飽和脂肪酸残基であってもよい。
R1:水素原子又はメチル基 )
【0026】
このフルオレン基含有(メタ)アクリル系モノマーの市販品としては、次の式2Cの9,9-ビス(4-(2-アクリロイルエトキシ)フェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)、BPEF-A)(硬化前屈折率1.614)を使用することができる。
【0027】
【化2C】

【0028】
一方、フルオレン基含有(メタ)アクリル系モノマーのうち単官能モノマーとしては、上述の式2Bにおいて任意の位置の3つのRが飽和脂肪酸残基に置き換えられたものを使用することができる。また、次式3の化合物が有用である。
【0029】
【化3】

(式3中、
X:存在しないか、又は-(CH2CH2O)n若しくは-(CH2CH2O)n(CH2CH(OH)CH2O)- (n=1〜5)
R:アクリロイル基又はメタクリロイル基
R1 :水素原子又はメチル基
R2 :炭素数2〜5の飽和脂肪酸残基 )
【0030】
このような単官能モノマーは、次のエステル化スキームに示すように、対応する9,9-ビスフェニルフルオレン骨格を有するフェノール類、若しくはそのアルキレンオキサイド付加物を原料化合物(式4A)として、これと等モルの(メタ)アクリル酸と等モルの飽和脂肪酸を酸触媒の存在下でエステル化反応させることにより得ることができる。このエステル化反応は、(メタ)アクリル酸と飽和脂肪酸とを順次反応させてもよいし、同時に反応させてもよい。これにより、原料化合物(式4A)の両方のOH基末端が(メタ)アクリロイル基となった2官能モノマー(式4B)と、一方の末端が(メタ)アクリロイル基となり、他方の末端が飽和脂肪酸残基となった単官能モノマー(式4C)と両方の末端とも飽和脂肪酸残基となった無官能化合物(式4D)の3種ができることとなる。これら3種の生成割合は、それぞれの反応速度により確率論的に決定されるが、それぞれの反応速度が略等しいとすると、式4Bと式4Cと式4Dの化合物の生成比率は、1:2:1となる。
【0031】
この3種のモノマーの混合物は、必要に応じて、3種のモノマーを分離精製して用いてもよいが、そのまま本発明の封止樹脂組成物の原料モノマーないし原料化合物として使用してもよい。したがって、原料化合物(式4A)と(メタ)アクリル酸と飽和脂肪酸とを同時に又は順次に反応させることにより、2官能モノマー(式4B)と単官能モノマー(式4C)と無官能化合物(式4D)の混合物を得、それを本発明の封止樹脂組成物の原料として使用することが、本発明の封止樹脂組成物を経済的に有利に製造する方法となる。






























【0032】
【化4】

【0033】
高屈折率(メタ)アクリル系モノマーの好ましい例としては、上述のフルオレン骨格を有するモノマーの他に、ナフタレンジ(メタ)アクリレート、アントラセンジ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーや、N−ビニルカルバゾール、N−エトキシアクリロイルカルバゾール、式5に示すパラクミルフェノキシアクリレート、式6に示すオルソフェニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート等の単官能モノマー等をあげることができる。市販品としては、東亞合成社製のパラクミルフェノキシアクリレート(式5)、商品名アロニックスM110(モノマー屈折率1.564、粘度125mPa)や、同じく東亞合成社製のオルソフェニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(式6)、試料名TO1463(モノマー屈折率1.5785、粘度125mPa)等がある。




【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
一般に、高屈折率(メタ)アクリル系モノマーの硬化物は硬い。硬化物には、式1のYで示されるエチレンオキサイドの付加モル数(n)を大きくすることである程度の柔軟性を付与することができるが、付加モル数(n)を大きくすると、同時に屈折率も低下してしまうため、所望の柔軟性と屈折率を同時に達成することは困難である。そこで、本発明では、無官能フルオレン化合物を配合し、所望の柔軟性と高屈折率とを同時に達成する。
【0037】
本発明において、無官能フルオレン化合物とは、(メタ)アクリル系モノマーに対して反応性をもたないフルオレン化合物をいう。無官能フルオレン化合物は、(メタ)アクリル系モノマーの重合ネットワークに組み込まれることはなく、(メタ)アクリル系モノマーのネットワークに対して媒体となる。したがって、(メタ)アクリル系モノマーと無官能フルオレン化合物を含有する本発明の封止樹脂組成物の硬化物がゲル状となり、柔軟性を有するものとなる。
【0038】
また、無官能フルオレン化合物は屈折率が高い。したがって、これを(メタ)アクリル系モノマーに配合した本発明の封止樹脂組成物の硬化物の屈折率を1.57〜1.60と高くすることが可能となる。
【0039】
無官能フルオレン化合物としては、非揮発性で、(メタ)アクリル系モノマーと相溶性が高く、屈折率1.6以上のものが好ましい。
【0040】
好ましい無官能フルオレン化合物としては、前述のスキーム中の式4Dの化合物をあげることができる。そのなかでも、4位のR1がOH基又はそのエチレンオキサイド付加物であるビスフェノールフルオレン類の脂肪酸エステル類が好適である。
【0041】
このビスフェノールフルオレン類の脂肪酸エステル類は、対応するビスフェノールフルオレン類、もしくはそのエチレンオキサイド付加物等と飽和脂肪酸とを酸触媒下において脱水エステル化反応させることで容易に合成することができる。あるいは、飽和脂肪酸の代わりに対応する飽和脂肪酸クロライドを用いても良い。
【0042】
ビスフェノールフルオレン類及びそのエチレンオキサイド付加物の具体例としては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどを挙げることができる。
【0043】
一方、飽和脂肪酸の具体例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、イソブタン酸、ブチル酸、イソ吉草酸、吉草酸、カプロン酸、イソカプロン酸、エナント酸、カプリル酸等の総炭素数1〜8の低級飽和脂肪酸類が好ましい。飽和脂肪酸の総炭素数が8を超えると屈折率が小さくなるので好ましくない。
【0044】
本発明の封止樹脂組成物には、粘度調整の点から、必要に応じて希釈モノマーを配合することができる。希釈モノマーは、粘度1000mPa以下、さらには200mPa以下のものが好ましい。即ち、高屈折率(メタ)アクリル系モノマーとして、その粘度が低いものを選定することで、封止樹脂組成物の粘度を低くすることもある程度は可能である。しかしながら、高屈折率(メタ)アクリル系モノマーの多くは高粘稠液体(粘度100万mPa以上)か、若しくは室温で固体であり、封止材に適する粘度(30万mPa以下)のものは、式5又は6に示したモノマー等に限られる。そこで、本発明の封止樹脂組成物においては、その粘度を封止材に適する粘度とするために、必要に応じて希釈モノマーを配合する。
【0045】
希釈モノマーとしては、硬化物の屈折率が所期の数値、即ち、屈折率1.57以上となる限り、屈折率1.55未満の低屈折率のモノマーも加えることもできる。ただし、その配合量は30重量%未満とすることが好ましい。
【0046】
希釈モノマーとしては、多官能モノマーと単官能モノマーのいずれか、又は双方を混合して用いることができる。
【0047】
ここで、多官能の希釈モノマーの代表的なものを例示すれば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオールなどのアルキレンジオール類のジアクリレート類もしくはそれらのジメタクリレート類、ビスフェノールAのEO付加物のジアクリレート類、ビスフェノールAのPO付加物のジアクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO又はPO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等がある。
【0048】
単官能の希釈モノマーの代表的なものとしては、スチレン、フェノールEO変性アクリレート(EO付加モル数1〜5)、フェノールPO変性アクリレート(PO付加モル数1〜5)、メチルフェニルEO変性アクリレートEO付加モル数1〜5)、メチルフェニルPO変性アクリレート(PO付加モル数1〜5)、ノニルフェニルEO変性アクリレート(EO付加モル数1〜5)、ノニルフェニルPO変性アクリレート(PO付加モル数1〜5)、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート等のアクリレート類、及びそれらのメタクリレート類等である。中でも、分子内にフェニル基を持つモノマーは、屈折率が高いことから好ましい。
【0049】
高屈折率(メタ)アクリル系モノマー、無官能フルオレン化合物、及び必要に応じて使用する希釈モノマーの好ましい配合比率は、希釈モノマーも含めた(メタ)アクリル系モノマーの総和が3〜90重量%であり、無官能フルオレン化合物が97〜10重量%である。ただし、希釈モノマーの配合比率は、30重量%以下とすることが好ましい。
【0050】
また、希釈モノマーも含めた(メタ)アクリル系モノマーのうち、3〜50重量%は多官能モノマーとすることが好ましい。多官能モノマーが50重量%を超えると、硬化物に十分な柔軟性を付与することができず、反対に3重量%未満だと、硬化物が高温時に流動化してしまうので好ましくない。なお、多官能モノマーとするのは、高屈折率(メタ)アクリル系モノマーと希釈モノマーのいずれか一方でもよく、双方でもよい。
【0051】
多官能モノマーにおける官能基の数は、特に制限はなく、2〜6とすることができるが、通常は、柔軟性の点から、2官能モノマーを主体とし、3官能以上のモノマーを補助的に使用することが好ましい。
【0052】
本発明の封止樹脂組成物は、硬化物の屈折率をさらに高くするため、高屈折率の超微粒子を含有することができる。高屈折率の超微粒子としては、屈折率が1.6以上の透明な超微粒子あるいはその分散物が好ましく、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物の超微粒子をあげることができる。
【0053】
超微粒子の表面は、疎水性処理が施されることが好ましい。これにより、本発明の封止樹脂組成物における超微粒子の分散性を向上させることができる。
【0054】
超微粒子のサイズは、直径が小さいほど透明性が高く、レイリー散乱を抑制するため、平均直径で20nm以下とし、好ましくは、シングルナノサイズと呼ばれる9nm以下とする。
【0055】
超微粒子の配合量は、本発明の封止樹脂組成物100体積部に対して、20体積部以下が好ましい。
【0056】
本発明の封止樹脂組成物は、必要に応じて重合開始剤、重合禁止剤、充填剤、光安定剤等の種々の添加剤を含有することができる。
【0057】
フルオレン骨格を有する多官能モノマーを10重量%以上配合している場合には、重合開始剤を配合しなくても本発明の封止樹脂組成物は熱重合させることができる。しかし、短時間に硬化させたい場合や、UV光で硬化させたい場合などには、重合開始剤が必要となる。その場合、重合開始剤としては市販のパーオキサイド類、アゾ化合物類などのラジカル性硬化剤やUV硬化剤などを使用することができる。また、その配合量は、樹脂組成物全量(100重量部)に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.3〜1重量部がより好ましい。
【0058】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メトキノン、BHT等を25〜1000ppm程度添加すればよい。
【0059】
充填剤としては、アエロゾルに代表される酸化珪素微粒子等のチクソトロピー性を付与するための充填剤、着色染料、YAG蛍光体等のLEDの発光波長を変換する充填剤、その他種々の充填剤を含有することができる。充填剤の配合量は、封止樹脂組成物の全量(100重量部)に対して、20重量部以下が好ましい。
【0060】
本発明の封止樹脂組成物は、高屈折率(メタ)アクリル系モノマー、無官能フルオレン化合物、及び必要に応じて、希釈モノマー、高屈折率の超微粒子、種々の添加剤を常法により混合撹拌し、均一に分散させることにより液状組成物として得ることができる。特に、高屈折率(メタ)アクリル系多官能モノマー及び単官能モノマーと無官能フルオレン化合物との混合物として、前述のエステル化スキームにより得た、多官能モノマーと単官能モノマーと無官能化合物の混合物を使用することが有利である。
【0061】
この封止樹脂組成物は、温度80〜150℃の加熱又はUV照射により硬化させることができる。また、LED、光ディスク、レーザー等の発光素子の光学封止用硬化性樹脂組成物として好適に使用できるものとなる。したがって、本発明は、本発明の封止樹脂組成物の硬化物や、その硬化物で封止されている発光素子を包含する。ここで、封止されている発光素子としては、ベアチップが封止されているものだけでなく、基板や配線等も封止されている発光素子モジュールを包含する。
【実施例】
【0062】
本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、以下の実施例において、粘度、屈折率、カットオフ波長、耐熱性試験、ショアA硬度、耐光性試験は、それぞれ次のように測定した。
・粘度:E型粘度計を用い、25℃にて測定した。
・屈折率:アッペの屈折率計(ナトリウムD線(585nm)、25℃)を用いて測定した。硬化物シートの場合には、屈折率の測定にあたり、マッチングオイルを使用した。
・カットオフ波長:透過スペクトルを測定し、カットオフ波長を求めた。なお、カットオフ波長は、青色LEDの発光波長である440±20nmより十分低いことが実用上求められる。
・耐熱性試験:硬化物シートを試料片とし、150℃の空気雰囲気下で96時間おく耐熱性試験を行い、その前後の透明性の変化の有無を目視で調べた。
・ショアA硬度:ASTM D2240に基づき、タイプAデュロメータを用いて硬化物シートのショアA硬度(室温)を測定した。
・耐光性試験(UV含む):UVスポットキュア(ウシオ電機)を10時間照射した(120mW/cm2)。
・耐光性試験(UV含まず):UVスポットキュア(ウシオ電機)を、UVカットフィルター(350nm以下の光を遮断)で10時間照射した(200mW/cm2)。
【0063】
実施例1
(1)無官能フルオレン化合物の合成
9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(JFEケミカル(株)製、商品名:BPEF)の87.7g(0.2モル)とプロピオン酸の32.6g(0.44モル)を250mLのトルエンに溶解し、冷却管、撹拌装置、温度計を有する1Lのガラス製反応容器に仕込んだ。この反応装置に窒素ガスを流しながら、オイルバスを用いて外部より100℃に加熱した。これに濃硫酸0.8mLを加え、エステル化反応を開始した。反応により生成した水は、トルエンとの共沸により、順次系外へ排出した。5時間後、FT-IRにより反応がほぼ完了したことを確認した。次に、115℃まで温度を上昇させ、さらに一時間反応させた。この時点で、生成水の排出は認められなくなり、トルエンのみが留出するようになったので、反応を停止した。
【0064】
反応生成物は、無水炭酸ナトリウムを用いて中和し、飽和食塩水で数回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを充填したカラムを通して脱水・ろ過した。得られたトルエン溶液をノルマルヘキサン中へ再沈させ、沈殿物をろ過、乾燥させ、目的とする、9,9-ビス(4-(2-プロピオノイルエトキシ)フェニル)フルオレンを得た。この生成物は融点が100℃の白色粉末であった。またFT-IRと液体クロマトグラフィーにより、アクリロイル基のない無官能フルオレン化合物であることを確認した。屈折率を測定したところ、1.6073であった。
【0065】
(2)封止樹脂組成物とその硬化物シートの製造
高屈折率(メタ)アクリル系多官能モノマーとして9,9-ビス(4-(2-アクリロイルエトキシ)フェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、商品名:BPEF-A、屈折率1.6145)10重量部を使用し、高屈折率(メタ)アクリル系単官能モノマーとしてパラクミルフェノキシアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM110、屈折率1.5542)30重量部を使用し、無官能フルオレン化合物として(1)で得た9,9-ビス(4-(2-プロピオノイルエトキシ)フェニル)フルオレン60重量部を使用し、これらの混合物に光開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製、D-1173)の1重量部を配合し、実施例の封止樹脂組成物を得た。さらに、封止樹脂組成物をPETフィルムに挟んだ状態で紫外線照射し、0.5mm厚の硬化物シートを得た。
【0066】
実施例2
高屈折率(メタ)アクリル系単官能モノマーとして、パラクミルフェノキシアクリレートに代えて2-(2-アクリロイルオキシエトキシ)ビフェニル(東亞合成(株)製、試料名TO-1463、屈折率1.5785)を用いた以外は実施例1と同様に封止樹脂組成物とその硬化物シートを得た。
【0067】
実施例3
高屈折率(メタ)アクリル系多官能モノマーとして、パラクミルフェノキシアクリレートに代えて2-(2-アクリロイルオキシエトキシ)ビフェニル(東亞合成(株)製、試料名TO-1463、屈折率1.5785)を30g使用し、希釈モノマーとして2,2-ビス(4-(アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(新中村化学工業(株)製、商品名=NKエステルA-BPE-4、屈折率=1.5365)を10g用いた以外は実施例1と同様に封止樹脂組成物とその硬化物シートを得た。
【0068】
比較例1
無官能フルオレン化合物を使用することなく、その分、9,9-ビス(4-(2-アクリロイルエトキシ)フェニル)フルオレンを増加して使用した以外は実施例1と同様に封止樹脂組成物とその硬化物シートを得た。
【0069】
比較例2
高屈折率(メタ)アクリル系単官能モノマーとしてパラクミルフェノキシアクリレートに代えて2-(2-アクリロイルオキシエトキシ)ビフェニル(東亞合成(株)製、試料名TO-1463、屈折率1.5785)を用いた以外は比較例1と同様に封止樹脂組成物とその硬化物シートを得た。
【0070】
評価(実施例1〜3,比較例1,2)
実施例1〜3、及び比較例1,2の各封止樹脂組成物について、粘度と屈折率を測定した。また、透過スペクトルを測定し、カットオッフ波長を求めた。さらに、硬化物シートの屈折率、硬度、耐熱性を測定した。結果を表1に示す。




















【0071】
【表1】

表注
(*1)9,9-ビス(4-(2-アクリロイルエトキシ)フェニル)フルオレン (大阪ガスケミカル(株)製、商品名:BPEF-A、屈折率1.6145)
(*2)2,2-ビス(4-(アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン (新中村化学工業(株)製、商品名=NKエステルA-BPE-4、屈折率1.5365)
(*3)パラクミルフェノキシアクリレート (東亞合成(株)製、商品名:アロニックスMl10、屈折率1.5542)
(*4)2-(2-アクリロイルオキシエトキシ)ビフェニル (東亞合成(株)製、商品名:TO-1463、屈折率1.5785)
(*5)9,9-ビス(4-(2-プロピオノイルエトキシ)フェニル)フルオレン (実施例1(1)で合成、屈折率1.6073)

【0072】
表1から、無官能フルオレン化合物を使用しない比較例1,2は硬化物の硬度が高く、柔軟性に劣るが、実施例1〜3の硬化物は、屈折率が1.59以上と高いにもかかわらず、ショアA硬度が低く、柔軟性に優れていること、また、比較例1,2の硬化物と同様に透明性に優れていることがわかる。
【0073】
実施例4
(1)多官能、単官能、無官能の混合フルオレン化合物の合成(A)
9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(JFEケミカル(株)製、商品名:BPFE)の87.7g(0.2モル)とプロピオン酸の8.15g(0.11モル)とアクリル酸の7.93g(0.11モル)、及びメトキノンの0.1gを250mLのトルエンに溶解し、冷却管、撹拌装置、温度計を有するlLのガラス製反応容器に仕込んだ。この反応装置に窒素ガスを流しながら、オイルバスを用いて外部より100℃に加熱した。これに濃硫酸0.8mLを加え、エステル化反応を開始した。反応により生成した水は、トルエンとの共沸により順次系外へ排出した。5時間後、FT-IRにより反応がほぼ完了したことを確認した。次に、115℃まで温度を上昇させ、さらに一時間反応させた。この時点で、生成水の排出は認められなくなり、トルエンのみが留出するようになったので、反応を停止した。反応生成物は、無水炭酸ナトリウムを用いて中和し、飽和食塩水で数回洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムを充填したカラムを通して脱水・ろ過した。得られたトルエン溶液をノルマルヘキサン中へ再沈させ、沈殿物をろ過、乾燥させ、目的とする、9,9-ビス(4-(2-アクリロイルエトキシ)フェニル)フルオレン、9-(4-(2-プロピオノイルエトキシ)フェニル)9-(4-(2-アクリロイルエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-プロピオノイルエトキシ)フェニル)フルオレンの混合物を得た。この混合物は白色の粉末であった。また、FT-IRと液体クロマトグラフィーにより、この混合物の二官能:単官能:無官能の比率は約1:2:1であることがわかった。
【0074】
(2)封止樹脂組成物とその硬化物シートの製造
上述の(1)で得た混合フルオレン化合物100重量部に、光開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製、D-1173)の1重量部を配合し、等量のトルエンを加えて粘稠液体の封止樹脂組成物を得た。これを長方形の型に流し込み、減圧乾燥させてシート状に成型し、紫外線を照射して硬化物シートを得た。
【0075】
実施例1と同様に評価したところ、硬化物の屈折率が比較例1と同等以上に高く、かつ硬化物のショアA硬度は82に抑えられていた。
【0076】
実施例5
実施例4(1)で得た混合フルオレン化合物70重量部に、トルエンは配合せず、単官能アクリル系モノマーであるパラクミルフェノキシアクリレート(東亞合成工業(株)製、商品名:アロニックスM110、モノマー屈折率1.564)を30重量部配合し、実施例1と同様にして封止樹脂組成物とその硬化物シートを得、それを評価した。この封止樹脂組成物は、やや高粘度ではあるが、注入封止が可能な組成物であった。硬化物の屈折率は1.612と高く、ショアA硬度は80であった。
【0077】
実施例6
実施例5の封止樹脂組成物と硬化物シートに対して、さらに低粘度化と低硬度化を図るため、実施例4(1)で得た混合フルオレン化合物40重量部に、単官能アクリル系モノマーであるパラクミルフェノキシアクリレート(東亞合成工業(株)製、商品名:アロニックスM110、モノマー屈折率1.564)を60重量部配合し、実施例1と同様にして封止樹脂組成物とその硬化物シートを得、それを評価した。その結果、この封止樹脂組成物は粘度が5000mPaと低かった。硬化物の屈折率は1.58以上と高く、ショアA硬度は70まで低下した。
【0078】
実施例7
架橋密度を上げ、より強靭な硬化物を得る目的で、実施例4(1)の混合フルオレン化合物60重量部に、二官能フルオレンアクリル系モノマーである9,9-ビス(4-(2-アクリロイルエトキシ)フェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、商品名:BPEF-A、屈折率1.6145)10重量部と、単官能アクリル系モノマーであるパラクミルフェノキシアクリレート(東亞合成工業(株)製、商品名:アロニックスM110、モノマー屈折率1.564)30重量部を配合し、実施例1と同様にして封止樹脂組成物とその硬化物シートを得、それを評価した。
【0079】
実施例8
架橋密度を下げ、より柔軟な硬化物を得る目的で、実施例4(1)の混合フルオレン化合物20重量部に、単官能アクリル系モノマーであるパラクミルフェノキシアクリレート(東亞合成工業(株)製、商品名:アロニックスM110、モノマー屈折率1.564)30重量部と、実施例1(1)の無官能フルオレン化合物50重量部を配合し実施例1と同様にして封止樹脂組成物とその硬化物シートを得、それを評価した。
【0080】
これにより、屈折率を低下させること無く、硬化物のショアA硬度を61まで低下させることができた。
【0081】
実施例9
(1)多官能、単官能、無官能の混合フルオレン化合物の合成(B)
プロピオン酸とアクリル酸のモル比率を7:3とした以外は、実施例4(1)の合成例と同様にして、9,9-ビス(4-(2-アクリロイルエトキシ)フェニル)フルオレン、9-(4-(2-プロピオノイルエトキシ)フェニル)9-(4-(2-アクリロイルエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-プロピオノイルエトキシ)フェニル)フルオレンの混合物を得た。この混合物は白色の粉末であった。FT-IRと液体クロマトグラフィーの結果から、この混合物の二官能:単官能:無官能の比率は約1:4:5であることがわかった。
【0082】
(2)封止樹脂組成物とその硬化物シートの製造
上述の(1)で得た混合フルオレン化合物の70重量部に、単官能アクリル系モノマーであるパラクミルフェノキシアクリレート(東亞合成工業(株)製、商品名:アロニックスM110、モノマー屈折率1.564)を30重量部配合し、実施例1と同様にして封止樹脂組成物とその硬化物シートを得、それを評価した。この硬化物の屈折率は1.607と高く、ショアA硬度は72であった。
【0083】
実施例10
(1)多官能、単官能、無官能の混合フルオレン化合物の合成(C)
プロピオン酸とアクリル酸のモル比率を9:1とした以外は、実施例4(1)の合成例と同様にして、9,9-ビス(4-(2-アクリロイルエトキシ)フェニル)フルオレン、9-(4-(2-プロピオノイルエトキシ)フェニル)9-(4-(2-アクリロイルエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-プロピオノイルエトキシ)フェニル)フルオレンの混合物を得た。この混合物は白色の粉末であった。FT-IRと液体クロマトグラフィーの結果から、この混合物の二官能:単官能:無官能の比率は約0.1:1.9:8であることがわかった。
【0084】
(2)封止樹脂組成物とその硬化物シートの製造
上述の(1)で得た混合フルオレン化合物の70重量部に、二官能のフルオレンアクリル系モノマーである9,9-ビス(4-(2-アクリロイルエトキシ)フェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、商品名:BPEF-A、屈折率1.6145)5重量部と、単官能のアクリル系モノマーであるパラクミルフェノキシアクリレート(東亞合成工業(株)製、商品名:アロニックスM110、モノマー屈折率1.564)を25重量部配合し、実施例1と同様にして封止樹脂組成物とその硬化物シートを得、それを評価した。この硬化物の屈折率は1.613と高く、ショアA硬度は63であった。
【0085】
以上の実施例4〜10の結果を表2に示す。
【0086】
【表2】

表注
(*1)9,9-ビス(4-(2-アクリロイルエトキシ)フェニル)フルオレン (大阪ガスケミカル(株)製、商品名:BPEF-A、屈折率1.6145)
(*3)パラクミルフェノキシアクリレート (東亞合成(株)製、商品名:アロニックスMl10、屈折率1.5542)
(*5)9,9-ビス(4-(2-プロピオノイルエトキシ)フェニル)フルオレン (実施例1(1)合成例、屈折率1.6073)
(*6)実施例4(1)の混合フルオレン化合物
(*7)実施例9(1)の混合フルオレン化合物
(*8)実施例10(1)の混合フルオレン化合物
【0087】
実施例11〜13
実施例1の封止樹脂組成物と同様のモノマー混合物(即ち、9,9-ビス(4-(2-アクリロイルエトキシ)フェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、商品名:BPEF-A、屈折率1.6145)10重量%、パラクミルフェノキシアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM110、屈折率1.5542)30重量%、9,9-ビス(4-(2-プロピオノイルエトキシ)フェニル)フルオレン60重量%)の2gに、チタニアゾル(チタニア固形分:20重量%、媒体MEK、チタニア粒子粒径=5〜15nm、日本触媒工業株式会社製)を2g又は4g(チタニア換算で20wt%又は40wt%)添加し、十分に撹拌した。その後、エバポレーターにてMEKを留去し、チタニアのナノ粒子を含有した粘稠な樹脂組成物を得た。この樹脂組成物に光開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製、D-1173)を1重量%配合し、実施例11〜13の封止樹脂組成物を得た。また、チタニアゾルを添加しないモノマー混合物にも同様に光開始剤を配合し、封止樹脂組成物を得た。各封止樹脂組成物をPETフィルムに挟んだ状態で紫外線照射し、0.5mm厚の硬化物シートを得た。得られた封止樹脂組成物と硬化物シートについて、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。

























【0088】
【表3】

(*1)9,9-ビス(4-(2-アクリロイルエトキシ)フェニル)フルオレン (大阪ガスケミカル(株)製、商品名:BPEF-A、屈折率1.6145)
(*3)パラクミルフェノキシアクリレート (東亞合成(株)製、商品名:アロニックスMl10、屈折率1.5542)
(*5)9,9-ビス(4-(2-プロピオノイルエトキシ)フェニル)フルオレン (実施例1(1)合成例、屈折率1.6073)

【0089】
実施例14
表3の実施例11,実施例12,実施例13の封止樹脂組成物を60℃に加熱しながら粘度を低下させ、直径5mmの半球状の凹み形状を有する透明な鋳型に流し込み、次いで、その上にLEDチップ基部を、チップ部が封止樹脂組成物に接するように下向きに配置し、UVスポットライトにて、下からの積算光量1J/m2照射して硬化させた。それを室温に冷却後、鋳型から取り出すことにより透明な半球状のドームを有するLEDモジュールを得た。このモジュールの総発光量を積分球を用いて測定したところ、それぞれ37、39、41ルーメンであり、LEDチップ基部自身の17ルーメンに対して2.17、2.29、2.41倍に増大していた。これにより、本発明の封止樹脂組成物を用いると、LEDの光取り出し効率が極めて向上することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の樹脂組成物は、LED、光ディスク、レーザー等の発光素子の光学封止用樹脂組成物として有用であり、特に高輝度LEDの封止樹脂組成物として有用である。
【0091】
また、本発明の樹脂組成物を用いて封止した発光素子は、フラットパネルのバックライ
ト、信号機、広告看板の照明、自動車のヘッドライト等種々の分野で使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率1.55以上の高屈折率アクリル系又はメタクリル系モノマーと、無官能フルオレン化合物を含有する封止樹脂組成物。
【請求項2】
硬化物の屈折率が1.57以上となる請求項1記載の封止樹脂組成物。
【請求項3】
高屈折率アクリル系又はメタクリル系モノマーがフルオレン骨格を有する請求項1又は2記載の封止樹脂組成物。
【請求項4】
高屈折率アクリル系又はメタクリル系モノマー及び無官能フルオレン化合物が、それぞれ9,9-ビスフェニルフルオレン骨格を有する請求項3記載の封止樹脂組成物。
【請求項5】
屈折率1.6以上の超微粒子を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の封止樹脂組成物。
【請求項6】
水酸基を有する9,9-ビスフェノールフルオレン化合物に、アクリル酸又はメタクリル酸と飽和脂肪酸とをエステル化反応させ、9,9-ビスフェノールフルオレン化合物の多官能アクリレート、単官能アクリレート及び無官能化合物の混合物を生成し、該混合物を原料とする封止樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の封止樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の封止樹脂組成物で封止されている発光素子。

【公開番号】特開2008−120980(P2008−120980A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309635(P2006−309635)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】