説明

封止装置及び封止方法

【課題】プランジャの構成を簡素な状態に保ちながら、プランジャを加熱して、カル部近傍の封止用材料の硬化を促進可能とする。
【解決手段】封止用材料(樹脂タブレット160)を溶融させ、金型104に構成されたキャビティ118に注入して、キャビティ118に配置された基板102にある被封止品を封止する封止装置100において、樹脂タブレットが配置される金型104のポット142の側面にあるポケット144に敷設されたコイル148と、ポット142内で移動可能に配置されて樹脂タブレット160を押圧すると共に、コイル148に流れる交流電流で誘導加熱されるプランジャ150と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスファ成形による封止装置及び封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の電子部品の実装分野では、トランスファ成形と呼ばれる封止手法が採用されている。この手法は、金型のポットに封止用材料を配置後、プランジャにより、封止用材料をカル部に対して押圧する。そして、溶融した封止用材料を、金型のカル部、ランナ、ゲートを介して被封止品の配置されたキャビティに注入するものであり、一度に多くの被封止品を封止できるという利点がある。
【0003】
しかし、金型を加熱するためのヒータは、金型内のみに配置されていて、プランジャの部分には熱源がない。このため、封止用材料が溶融する際にプランジャから熱を奪うとプランジャは金型よりも温度が低くなってしまい、プランジャに当接するカル部の封止用材料の硬化に時間がかかっていた。これに対して、特許文献1では、プランジャ内部に電熱ヒータを内蔵してプランジャを加熱して、カル部の封止用材料の硬化を促進することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭59−31397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術にあっては、プランジャ内部に電熱ヒータを組み込むため、プランジャの構造が複雑となる。すなわち、プランジャの加工性の問題や高コストといった問題だけでなく、可動するプランジャから配線を引き出すので配線が断線し故障しやすいといった問題が生じる可能性がある。
【0006】
更に、プランジャは、封止用材料を注入する際に高い圧力をかけるため、その注入圧に耐えうる構造を確保している必要がある。この点で、特許文献1に記載されたプランジャの構造にあっては高い圧力に耐えうるか否かが問題となるおそれがあった。
【0007】
本発明では、上記問題点を解決すべく、プランジャの構成を簡素な状態に保ちながら、プランジャを加熱して、カル部近傍の封止用材料の硬化を促進可能な封止装置及び封止方法を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、溶融した封止用材料を、金型に構成されたキャビティに注入して、該キャビティに配置された被封止品を封止する封止装置において、前記封止用材料が配置される前記金型のポットの側面に敷設されたコイルと、前記ポット内で移動可能に配置されて前記封止用材料を押圧すると共に、前記コイルに流れる交流電流で誘導加熱されるプランジャと、を備えることにより、上記課題を解決するものである。
【0009】
本発明においては、プランジャを誘導加熱することで、プランジャ自体を発熱源としている。このため、プランジャ自体は簡素な構成とすることができると共に、プランジャに当接するカル部近傍の封止用材料を効果的に加熱することができる。
【0010】
ここで、誘導加熱のためのコイルは、プランジャが移動可能とされるポットの側面に敷設されている。このため、プランジャの構成や、従来用いられてきた金型等を大きく設計変更せずに用いることが可能である。同時に、プランジャの耐久性も落とすことなく、長寿命化が可能である。更に、コイルに交流電流を流すことで生じる誘導加熱を用いるので、熱量の制御が容易で、プランジャの高温化や封止用材料の高速加熱が可能である。
【0011】
又、前記プランジャの、前記交流電流で誘導加熱される部分に対して前記封止用材料の配置される位置の反対側の位置に、断熱部が設けられている場合には、誘導加熱でプランジャに生じた熱が封止用材料の反対側に逃げていくことを遮断して、効率的に封止用材料を加熱することができる。
【0012】
又、前記コイルの外周に断熱材を備える場合には、誘導加熱でプランジャに発生した熱やコイル自身に発生した熱が金型へ伝わるのを遮断することができるので、金型の温度上昇を防ぐことができる。
【0013】
又、前記プランジャが前記カル部に最接近している状態で前記コイルに前記交流電流を流して前記プランジャを誘導加熱する制御手段を備える場合には、キャビティ内の封止用材料に対してはプランジャからの熱の影響を最小限とすることができるので、既存の封止装置における樹脂注入工程の条件を変えずに、封止品の取り出しまでの時間を短くすることができる。すなわち、既存の工程制御を流用できるので、工程開発に費用がかからず、低コストで、生産性を向上させることができる。
【0014】
又、前記プランジャが前記ポット内の下限位置から前記カル部に最接近する位置まで移動している状態で、該プランジャが該ポット内の下限位置に置かれた状態で、更に前記前記封止用材料が該ポットに配置される以前の状態且つ前記金型が型開きされている状態で若しくは更に該封止用材料が該ポットに配置されている状態で前記コイルに前記交流電流を流して前記プランジャを誘導加熱する制御手段を備える場合には、封止品の取り出しまでの時間を更に短縮することができるので、より生産性を向上させることができる。
【0015】
なお、本発明は、溶融した封止用材料を、金型に構成されたキャビティに注入して、該キャビティに配置された被封止品を封止する封止方法において、前記金型のポットの側面に敷設されたコイルに交流電流を流す工程と、該交流電流で、該ポット内で移動可能に配置されて前記封止用材料を押圧するプランジャを誘導加熱する工程と、を含むことを特徴とする封止方法とも捉えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プランジャの構成を簡素な状態に保ちながら、プランジャを加熱して、カル部近傍の封止用材料の硬化が促進可能となる。このため、大きな設計変更をせずに、封止品の品質を保ちつつ、封止用材料の硬化時間の短縮により、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1〜第3実施形態に係る封止装置の要部を模式的に示した断面図
【図2】本発明の主に第1実施形態に係るポットとプランジャ部分の模式図
【図3】本発明の第1実施形態に係る樹脂硬度と時間との関係を示した図
【図4】本発明の第2実施形態に係る樹脂硬度と時間との関係を示した図
【図5】本発明の第3実施形態に係る樹脂硬度と時間との関係を示した図
【図6】本発明の第4、第5実施形態に係るポットとプランジャ部分の模式図
【図7】本発明の第6、第7実施形態に係るプランジャの模式図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を用いて本発明の第1実施形態の一例について詳細に説明する。なお、図1は、封止装置の概略をその機能に着目して模式的に示したものであり、実際の装置の具体的構成とは必ずしも一致していない。
【0019】
最初に、封止装置の構成について図1を用いて説明する。
【0020】
封止装置100は、封止用材料(樹脂タブレット160)を溶融させ、金型104に構成されたキャビティ118に注入して、キャビティ118に配置された基板102にある被封止品を封止するトランスファ成形装置である。
【0021】
金型104は、上型106と下型108とを備える。上型106と下型108の内部には、それぞれを加熱するための図示されていないカートリッジヒータが埋設されており、本実施形態では一定の温度(例えば約175度)に保たれている。なお、本発明では、必ずしも金型104の温度を一定に保つ必要はない。
【0022】
上型106には、基板102が配置される第1、第2凹部114、116、基板102を封止(樹脂封止)するキャビティ118の一部(上部キャビティ120)、及びカル部136が設けられている。そして、上型106は、図示せぬ取付けブロック、支持プレート等を介して固定プラテンに取り付けられている。
【0023】
カル部136は、図1で示す如く、溶融した封止用材料をランナ138等を介してキャビティ118に導くためのものであり、本実施形態では上型106に直径20mm程度の円錐台形状の窪みで設けられている。カル部136は、一定のバッファボリュームを確保する機能も有している。このため、カル部136の厚みはキャビティ118の厚みに比べて数倍の厚みを有する。
【0024】
下型108には、キャビティ118の一部(下部キャビティ122)、ランナ138、ゲート140、及びポット142が形成されている。下型108は、図示せぬ取付けブロック、支持プレート等を介して可動プラテンに固定されている。そして、可動プラテンは図示せぬプレス装置と連結され、プレス装置を駆動することによって、上型106に対して下型108を接近・離反を可能として、金型104の型閉じ、型締め及び型開きを行う。尤も、本発明においては、上型106、下型108のいずれが可動であってもよい。
【0025】
ポット142は、円形の穴として下型108に形成されている(本実施形態ではφ10mm〜φ20mm程度)。ポット142の側面には凹形状に形成されたポケット144が設けられている。ポケット144は、樹脂タブレット160がポット142内に配置された際に、樹脂タブレット160の下側にくるプランジャ150の先端近傍外周を囲むような位置(図1でのY方向の位置)に設けられる。即ち、本実施形態では、樹脂タブレット160が15mm程度の長さなので、ポット142の上端から15mmよりも低いY方向位置にポケット144が設けられている。これは、プランジャ150がポット142内の下限位置に置かれた状態で封止用材料の誘導加熱を効率的に行うためである。このポケット144の内側には、リング形状の断熱材146が配置され、更にその内側にコイル148が敷設される。なお、コイル148は下型108と絶縁させるため、その表面には絶縁被覆等が施されている。コイル148には、交流電流(高周波電流)が流される。なお、必ずしも断熱材146を用いる必要はない。しかし、断熱材146を用いることで、誘導加熱でプランジャ150に発生した熱やコイル148自身に発生した熱が金型104へ伝わるのを遮断することができるので、金型104の温度上昇を防ぐことができる。なお、コイル148の外側における誘導加熱による温度上昇を抑制するため、断熱材146やポケット144周辺は、透磁率の低い材質で構成することが好ましい。
【0026】
ポット142の内側には、円柱形状のプランジャ150が移動可能に配置される。ここで、コイル148の内径D2はポット142の内径D1よりも大きい。このため、ポット142の内径D1とほぼ同じ外径のプランジャ150が配置されてもコイル148との間には隙間Gが設けられて、コイル148とプランジャ150とは非接触の状態が保たれる。このため、コイル148がプランジャ150の動きを規制することもなく、且つプランジャ150によってコイル148が破損することも防止されている。
【0027】
プランジャ150は、加熱部152と断熱部154とベース部156とを備えて、一体とされている。即ち、プランジャ150自体は簡素で高い注入圧に耐えうる構成とされている。加熱部152は、超硬(タングステンカーバイド)や工具鋼などの金属で形成されている。このため、コイル148に交流電流が流れることで、コイル148の内側に配置されるプランジャ150が誘導加熱されて、自身が発熱源となる。加熱部152は、樹脂タブレット160をポット142に配置した状態(図2(A))と樹脂タブレット160を押圧して加熱部152の先端がカル部136に最接近した状態(図2(C))の両方で、コイル148によって誘導加熱されるような長さLを備えている。なお、コイルと加熱部とは図2(B)や図2(D)のような配置を取ってもよい。
【0028】
断熱部154は、少なくとも一部分が加熱部152を構成する金属よりも熱伝導率が低い材質(本実施形態ではセラミック)で構成されている。断熱部154は、加熱部152の下側に配置される。即ち、断熱部154は、プランジャ150において、交流電流で誘導加熱される部分(加熱部152)に対して樹脂タブレット160の配置される位置の反対側の位置に設けられている。そのため、断熱部154は、加熱部152からベース部156へ伝わる熱を断熱して、ベース部156側へ拡散する熱も積極的にカル部136に伝導させることができるので、封止用材料の効率的な加熱が実現できる。断熱部154の材質としては、必ずしもセラミックに限定されない。例えば、加熱部152よりも熱伝導率の低い金属で断熱部154を構成してもよい。なお、本発明では必ずしも断熱部154を設ける必要はない。
【0029】
ベース部156は、断熱部154の下側に配置される。ベース部156から断熱部154を介して加熱部152に、樹脂タブレット160をカル部136側に押圧する力が伝えられる。ベース部156の材質は、加熱部152と同一であってもよい。
【0030】
次に、本実施形態における樹脂封止の手順を説明する。
【0031】
トランスファ成形の工程は、マシンタイム工程、樹脂注入工程、樹脂硬化工程、からなる工程で1サイクルをなしている。マシンタイム工程は、金型104を型開きして既に封止された封止品を取り出し、金型104をクリーニングし、新しい基板102を下型108上に、封止用材料(樹脂タブレット160)をポット142に、それぞれ配置し、型閉じ、型締めを行う工程である。樹脂注入工程は、封止用材料を溶融して、封止品を封止するキャビティ118に注入する工程である。樹脂硬化工程は、封止品を取り出せる硬度になるまで封止用材料を硬化させる工程である。なお、封止用材料として用いられる熱硬化性樹脂は、熱が与えられることで溶融しその後硬化する性質を持つので、封止用材料に与えられる温度が高い程、硬化に要する時間は短くなる。従って、硬化時間を短くするためにはできるだけ金型104を高温に設定すべきだが、ある温度以上にしてしまうと封止用材料を注入している途中で封止用材料が硬化してしまい封止不良となる。このため、金型104は使用する封止用材料に適した温度に設定する。以下に、樹脂封止工程の1サイクルのうち、樹脂注入工程を中心に図1を用いて説明する。
【0032】
最初に、プランジャ150がポット142内の下限位置に置かれた状態で、ポット142内に樹脂タブレット160が当接配置されて、型閉じ、型締め後に、プランジャ150が上昇する。
【0033】
次に、樹脂タブレット160はプランジャ150の上昇により上昇・押圧されながら、金型104及びプランジャ150から伝達される熱で溶融する。そして溶融した封止用材料はカル部136、ランナ138及びゲート140を介して圧送され、基板102を封止するキャビティ118内に注入される。
【0034】
キャビティ118への封止用材料の注入完了後、即ち、プランジャ150がカル部136に最接近して上型106と下型108によって型締めされた状態のままで、コイル148に交流電流が流されてプランジャ150が誘導加熱される(数秒から数十秒間)。ここで、コイル148へ流す交流電流の通電から熱の発生までのタイムラグを考慮すれば、多少早めにコイル148へ交流電流を流したり、中断したりするのが好ましい。その際にコイル148へ流す交流電流の大きさは、オンオフ的でも、連続的に変化させるのも、自在に行うことができる。なお、コイル148に交流電流を流すことを制御するのは、封止装置100の図示せぬ制御部が行う。
【0035】
コイル148に交流電流を流すのを止めた後、封止用材料が硬化した段階で型開きし、封止された封止品が取り出される。
【0036】
本実施形態による樹脂の硬度の様子を図3に示す。符号H1の破線が本実施形態における樹脂硬度の様子を表し、符号Rの実線がプランジャを誘導加熱しない従来の樹脂硬度の様子を表す。なお、ここでの樹脂硬度の様子は、樹脂硬化時間を律速するカル部136の封止用材料を対象としている。
【0037】
図3によれば、本実施形態では、例えば、封止装置100の図示せぬ制御部で、樹脂注入工程t1の完了時T1にコイル148に交流電流を流してプランジャ150を誘導加熱することにより、従来の樹脂硬化工程では硬化完了にかかっていた時間t2を時間t3に短くできる。即ち、樹脂硬化工程は時間t4(=t2−t3)だけ短縮することができる。なお、時間t4は、樹脂注入工程の開始から封止品取り出し可能硬度までの従来例に比べた時間短縮分と言うこともできる。
【0038】
本実施形態においては、プランジャ150を誘導加熱することで、プランジャ150自体を発熱源としている。このため、プランジャ150自体は簡素な構成とすることができると共に、プランジャ150に当接するカル部136近傍の封止用材料を効果的に加熱することができる。そして、誘導加熱のためのコイル148は、プランジャ150が移動可能とされるポット142の側面に敷設されている。このため、プランジャ150の構成や、従来用いられてきた金型104等を大きく設計変更せずに用いることが可能である。同時に、プランジャ150の耐久性も落とすことなく、長寿命化が可能である。又、可動するプランジャ150から配線を引き出す必要もないので、配線が断線する等の故障が生じる問題も発生しない。更に、コイル148に交流電流を流すことで生じる誘導加熱を用いるので、熱量の制御が容易で、プランジャ150の高温化や封止用材料の高速加熱も可能である。
【0039】
又、プランジャ150に、交流電流で誘導加熱される加熱部152に対して樹脂タブレット160の配置される位置の反対側の位置に断熱部154が設けられているので、誘導加熱でプランジャ150に生じた熱がベース部156に逃げていくことを遮断して、効率的にカル部136の樹脂を加熱することができる。
【0040】
又、コイル148の外周に断熱材146を備えているので、誘導加熱でプランジャ150に発生した熱やコイル148自身に発生した熱が金型104へ伝わるのを遮断することができるので、金型104の温度上昇を防ぐことができる。
【0041】
又、樹脂注入工程が完了した時点でプランジャ150を誘導加熱しているため、キャビティ118への注入完了までは従来の樹脂封止工程と同じである。即ち、樹脂タブレット160を溶融させてキャビティ118に注入後に、コイル148に交流電流を流してプランジャ150を誘導加熱することにより、プランジャ150で発生する熱はキャビティ118内の注入工程の封止用材料にほとんど影響を与えていない。このため、既存の封止装置における樹脂注入工程を変えずに、樹脂注入工程が完了した時点から封止品の取り出しまでの時間を短くすることができる。即ち、キャビティ118に関しては従来の封止品を封止する工程をそのままで使用できるので、従来の製造ノウハウをそのまま継承でき、高い品質の封止品を製造できる。同時に、工程変更の費用を最小限に抑えることができ、低コストで、樹脂封止工程を高速化することができる。即ち、既存の工程を流用できるので、工程開発に費用がかからず、低コストで、生産性を向上させることができる。
【0042】
従って、本実施形態によれば、プランジャ150の構成を簡素な状態に保ちながら、プランジャ150を加熱して、カル部136近傍の封止用材料の硬化が促進可能となる。このため、大きな設計変更をせずに封止品の品質を保ちつつ、封止用材料の硬化時間の短縮により、生産性を向上させることができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態の一例を示す。本実施形態による樹脂の硬度の様子を図4に示す。符号H2の破線が本実施形態における樹脂硬度の様子を表し、符号Rの実線がプランジャを誘導加熱しない従来の樹脂硬度の様子を表す。本実施形態は封止装置の構造については第1実施形態と同じであるが、樹脂封止工程が異なる。以下、樹脂注入工程を中心に図1を用いて説明する。
【0044】
最初に、プランジャ150がポット142内の下限位置に置かれた状態で、ポット142内に樹脂タブレット160が当接配置される。型閉じ、型締め後に、樹脂タブレット160の下方に配置されたプランジャ150が上昇する。それと同時に、コイル148に交流電流が流されてプランジャ150が誘導加熱される(数秒から数十秒間)。ここで、コイル148へ流す交流電流の通電から熱の発生までのタイムラグを考慮すれば、多少早めにコイル148へ交流電流を流したり、中断したりするのが好ましい。その際にコイル148へ流す交流電流の大きさは、オンオフ的でも、連続的に変化させるのも、自在に行うことができる。なお、コイル148に交流電流を流すことを制御するのは、封止装置100の図示せぬ制御部が行う。
【0045】
次に、樹脂タブレット160はプランジャ150の上昇により上昇・押圧されながら、金型104から伝達される熱及びプランジャ150自体で発生される熱で溶融する。そして溶融した封止用材料はカル部136、ランナ138及びゲート140を介して圧送され、基板102を封止するキャビティ118内に注入される。
【0046】
封止用材料が硬化した段階で型開きし、封止された封止品が取り出される。
【0047】
本実施形態では、実質的には樹脂注入工程の途中(時刻T2)から誘導加熱によってプランジャ150自体で発生される熱で封止用材料の溶融が早まるため、注入中の封止用材料が硬化しないような条件に調整を行う必要が出てくる。しかし、樹脂注入工程を開始してから樹脂硬化するまでの時間t5は、従来の樹脂硬化工程完了までの時間t1+t2に比べて短縮されて、短縮時間t6は、第1実施形態の樹脂硬化短縮時間t4より長い。これは誘導加熱されたプランジャ150自体で発生される熱によってもカル部136近傍の封止用材料の加熱を行うので、更に樹脂硬化時間が短縮されることによる。即ち、第1実施形態よりも更に生産性を向上させることができる。
【0048】
本実施形態では、樹脂タブレット160を配置したと同時に、プランジャ150の誘導加熱をしていたが、プランジャ150を上昇させていく途中(プランジャ150がポット142内の下限位置からカル部136に最接近する位置まで移動している状態)でプランジャ150の誘導加熱をしても構わない。
【0049】
次に、本発明の第3実施形態の一例を示す。本実施形態による樹脂の硬度の様子を図5に示す。符号H3の破線が本実施形態における樹脂硬度の様子を表し、符号Rの実線がプランジャを誘導加熱しない従来の樹脂硬度の様子を表す。本実施形態は封止装置の構造については第1実施形態と同じであるが、樹脂封止工程が異なる。以下、樹脂注入工程を中心に図1を用いて説明する。
【0050】
最初に、コイル148に交流電流を流して、プランジャ150を誘導加熱させて(数秒から数十秒間)、金型104と同じ温度、又はそれよりも高温とする。なお、コイル148に交流電流を流すことを制御するのは、封止装置100の図示せぬ制御部が行う。
【0051】
次に、プランジャ150がポット142内の下限位置に置かれた状態で、ポット142内に樹脂タブレット160が配置されて、型閉じ、型締め後に、プランジャ150が上昇する。
【0052】
次に、樹脂タブレット160はプランジャ150の上昇により上昇・押圧されながら、金型104及びプランジャ150から伝達されてくる熱で溶融する。そして溶融した封止用材料はカル部136、ランナ138及びゲート140を介して圧送され、封止品を封止するキャビティ118内に注入される。なお、プランジャ150の上昇中(封止用材料の圧送中)は、プランジャ150の誘導加熱をそのまま続けてもよいし、弱めてもよい。又、封止用材料の圧送が完了するまでに、プランジャ150の誘導加熱を中断してもよい。ここで、コイル148へ流す交流電流の通電から熱の発生までのタイムラグを考慮すれば、多少早めにコイル148へ交流電流を流したり、中断したりするのが好ましい。その際にコイル148へ流す交流電流の大きさは、オンオフ的でも、連続的に変化させるのも、自在に行うことができる。
【0053】
封止用材料が硬化した段階で型開きし、封止された封止品が取り出される。
【0054】
本実施形態においても、基本的には第2実施形態と同様に、注入中の封止用材料が硬化しないような条件に調整を行う必要がある。しかし、樹脂注入工程の開始(時刻T3)には既にプランジャ150が誘導加熱されて金型104と同じ温度、又はそれよりも高温とされていることにより、樹脂注入工程を開始してから樹脂硬化するまでの時間t7は、従来の樹脂硬化工程完了までの時間t1+t2に比べて短縮されて、その短縮時間t8は、第2実施形態の樹脂硬化短縮時間t6よりも更に長い。つまり、更に樹脂硬化時間が短縮されることになる。即ち、第2実施形態よりも更に生産性を向上させることができる。
【0055】
本発明について、上記実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0056】
上記実施形態においては、樹脂タブレット160がポット142内に配置された際に、コイル148が樹脂タブレット160の下側にくるプランジャ150の先端外周を囲むような位置(図1ではY方向の位置)に設けられ、且つ加熱部152の長さLが、加熱部152の先端のカル部136への最接近の際にもコイル148によって誘導加熱されるような長さであったが、本発明はこのような組み合わせに限定されるものではない。
【0057】
例えば、図6(A)に示す第4実施形態の如く、加熱部252の長さL1が、加熱部252の先端がカル部236に最接近した際には、コイル248によって誘導加熱されない長さL1としてもよい。この場合には、樹脂タブレットをポット242に配置する前、若しくは配置したと同時に、プランジャ250を誘導加熱する第2、第3実施形態で示した制御を行うことができる。同時に、加熱部252の長さL1が少ないので、熱容量が少ない分だけ第2、第3実施形態に比べてプランジャ250の目標温度(例えば金型104の設定温度もしくはそれ以上の温度)への誘導加熱を高速に達成することができる。
【0058】
又、例えば、図6(B)に示す第5実施形態の如く、ポット342の上端の近傍にコイル348が敷設されていてもよい。この場合には、溶融した封止用材料を注入後にプランジャ350を誘導加熱する第1実施形態で示した制御を行うことができる。加えて、加熱部352の長さL2を少なくできるので、熱容量が少ない分だけ第1実施形態に比べてプランジャ350の目標温度(例えば金型104の設定温度もしくはそれ以上の温度)への誘導加熱を高速に達成することができる。又、本実施形態でも、注入前や注入中にプランジャ350を誘導加熱してもよい。
【0059】
又、上記実施形態においては、プランジャがそれぞれ層状の加熱部と断熱部とベース部とを備えていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、断熱部を備えていなくてもよい。断熱部がなくても、プランジャが加熱されることで、本発明の相応の作用効果を有するからである。
【0060】
又、例えば、図7(A)に示す第6実施形態の如く、プランジャ450において、加熱部452とベース部456とが断熱部454の接続部分454Aで一部接続された態様で予め一体に成形されて、且つ断熱部454では、接続部分454Aの周囲部分454Bに加熱部452よりも熱伝導率の低い材料を配置させてもよい。この場合には、加熱部452とベース部456とが予め一体で、且つ加熱部452にかかる力を接続部分454Aと周囲部分454Bで支えるので、断熱部454で相応の断熱効果を有するとともに、上記実施形態よりも耐久性の高いプランジャ450を実現することができる。
【0061】
若しくは、図7(B)に示す第7実施形態の如く、プランジャ550において、加熱部552とベース部556とが断熱部554の接続部分554Aで一部接続された態様で予め一体に成形されて、且つ断熱部554では、その接続部分554Aの周囲部分554Bに空隙が設けられていてもよい。この場合には、第6実施形態の如く、加熱部552とベース部556とが予め一体なので、相応に耐久性の高いプランジャ550を実現することができる。そして、周囲部分554Bは空隙であるので熱伝導率が極めて低いため、第6実施形態よりも優れた断熱効果を発揮することができる。
【0062】
又、上記実施形態においては、封止用材料は熱硬化性樹脂としていたが、本発明はこれに限定されず、封止用材料は樹脂に限らず、他の熱硬化性を備える材料でも構わない。
【符号の説明】
【0063】
100…封止装置
102…基板
104…金型
106、106B、106D、206、306…上型
108、108B、108D、208、308…下型
118…キャビティ
120…上部キャビティ
122…下部キャビティ
136、136B、136D、236、336…カル部
138、138B、138D、238、338…ランナ
140…ゲート
142、142B、142D、242、342…ポット
144…ポケット
146、146B、146D、246、346…断熱材
148、148B、148D、248、348…コイル
150、250、350、450、550…プランジャ
152、152B、152D、252、352、452、552…加熱部
154、154B、154D、254、354、454、554…断熱部
156、156B、156D、256、356、456、556…ベース部
160、160B…樹脂タブレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融した封止用材料を、金型に構成されたキャビティに注入して、該キャビティに配置された被封止品を封止する封止装置において、
前記封止用材料が配置される前記金型のポットの側面に敷設されたコイルと、
前記ポット内で移動可能に配置されて前記封止用材料を押圧すると共に、前記コイルに流れる交流電流で誘導加熱されるプランジャと、
を備えることを特徴とする封止装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記プランジャの、前記交流電流で誘導加熱される部分に対して前記封止用材料の配置される位置の反対側の位置に、断熱部が設けられている
ことを特徴とする封止装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、更に、
前記コイルの外周に断熱材を備える
ことを特徴とする封止装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記プランジャが前記カル部に最接近している状態で前記コイルに前記交流電流を流して前記プランジャを誘導加熱する制御手段を備える
ことを特徴とする封止装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記プランジャが前記ポット内の下限位置から前記カル部に最接近する位置まで移動している状態で前記コイルに前記交流電流を流して前記プランジャを誘導加熱する制御手段を備える
ことを特徴とする封止装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記プランジャが前記ポット内の下限位置に置かれた状態で前記コイルに前記交流電流を流して前記プランジャを誘導加熱する制御手段を備える
ことを特徴とする封止装置。
【請求項7】
請求項6において、更に、
前記封止用材料が該ポットに配置される以前の状態且つ前記金型が型開きされている状態で前記コイルに前記交流電流を流して前記プランジャを誘導加熱する制御手段を備える
ことを特徴とする封止装置。
【請求項8】
請求項6において、更に、
前記封止用材料が前記ポットに配置されている状態で前記コイルに前記交流電流を流して前記プランジャを誘導加熱する制御手段を備える
ことを特徴とする封止装置。
【請求項9】
溶融した封止用材料を、金型に構成されたキャビティに注入して、該キャビティに配置された被封止品を封止する封止方法において、
前記金型のポットの側面に敷設されたコイルに交流電流を流す工程と、
該交流電流で、該ポット内で移動可能に配置されて前記封止用材料を押圧するプランジャを誘導加熱する工程と、
を含むことを特徴とする封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−25570(P2011−25570A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174706(P2009−174706)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】