説明

導電性弾性ローラ、導電性弾性ローラの製造方法及び電子写真装置

【課題】電子写真装置に用いられる導電性弾性ローラであって、軸芯体に接着剤が塗布されていないにかかわらず、発泡ゴム層が強固に固定されており、かつ、その製造にあたり該軸芯体の発泡ゴムチューブへの圧入や発泡ゴム層の表面の研磨を容易に行うことが可能であり、その結果、硬度ムラ、抵抗周ムラが無い導電性弾性ローラを提供する。
【解決手段】無電解ニッケルメッキされた軸芯体が、少なくとも発泡剤及び加硫剤が配され、ゴム原料がアクリルニトリルブタジエンゴム及びエピクロルヒドリンゴムからなる発泡ゴム層原料組成物が円筒状に押し出され、マイクロ波により加硫発泡され、かつ、発泡後のゴムチューブの内径(真円として)が圧入される軸芯体の外径の80%±10%であり、圧入された軸芯体に対するチューブ内面の摺動抵抗が0.6N・m以上0.9N・m以下であることにより上記課題は達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において、使用される導電性弾性ローラ及びその製造方法に関し、更には該導電性弾性ローラを転写ローラとした電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターなど、電子写真方式の画像形成装置には、帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等に種々の導電性弾性ローラが用いられている。これらのローラの弾性層に導電性を付与するのに、弾性層原料であるゴム材料にカーボンブラックなどの導電剤を加える方法、あるいは弾性層自体をアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性のゴム材料で形成する方法がある。これらのローラは電子写真感光体(感光ドラム)に対して荷重が加えられた状態で接触しており、また、その使用目的からして長時間通電されている。そのため、導電性(例えば、抵抗値)の変動が小さいゴム材料が望ましいこと、また、製造方法の問題等から転写ローラや帯電ローラではアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム等が広く使用されている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
これらのローラに用いるゴム材料は、加硫剤、発泡剤、充填剤などを混練した原料組成物を用い、金型、押出し機などで未加硫の円筒状成形体とした後、この未加硫の円筒状成形体を加熱により加硫・発泡させて円筒状の発泡体にされる。その後、円筒状の発泡体に軸芯体を圧入し、外径を円筒研磨してローラ形状にして導電性弾性ローラとする手法が用いられている。なお、押出し成形による場合は加硫・発泡後に所定の長さに切断される。また、金型による成形では一次加硫・発泡を金型内で実施されることが多い。
【0004】
円筒状の発泡体に軸芯体を圧入する方法については幾つか知られている(例えば、特許文献3〜5)。すなわち、円筒状の発泡体の径方向断面積を軸心体の径方向断面積の80%以上100%未満とする(特許文献3)、円筒状の発泡体と軸芯体の界面の空隙量や形状を規定する(特許文献4)、あるいは円筒状の発泡体の内面の表面粗さRaを20μm以上100μm以下とし、かつ該円筒状の発泡体の内径を軸芯体の外径の50%以上98%以下とし、さらに円筒状の発泡体の内面に液状接着剤を塗布する(特許文献5)などである。
【0005】
しかしながら、いずれの場合も発泡体の形状に着目しているのみで、ゴム原料の組成によっては円筒状の発泡体(発泡ゴム層)を軸芯体に強固に固定できず、軸芯体圧入時や外形を整えるための研磨時に該発泡ゴム層に歪みが生じる場合があった。また、接着剤の使用は作業面や環境面、並びに経済面の観点からも好ましくない。
【特許文献1】特開平11−065269号公報
【特許文献2】特開2003−064224号公報
【特許文献3】特開2003−323064号公報
【特許文献4】特開2003−323065号公報
【特許文献5】特開2004−237618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、電子写真装置に用いられる導電性弾性ローラであって、軸芯体に接着剤が塗布されていないにかかわらず、発泡ゴム層が強固に固定されており、かつ、その製造にあたり該軸芯体の発泡ゴムチューブへの圧入や発泡ゴム層の表面の研磨を容易に行うことが可能であり、その結果、硬度ムラ、抵抗周ムラが無い導電性弾性ローラを提供すること、該導電性弾性ローラの製造方法を提供すること及び該導電性弾性ローラを転写ローラとして組み込んでなる、良好な画像を得ることが可能な電子写真装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、導電性弾性ローラの軸芯体及び発泡ゴム層について鋭意検討し、まず、軸芯体の表面がニッケルメッキされていること及び発泡ゴム層として用いる発泡ゴムチューブが原料や発泡工程を特定することが重要であることを見出し、さらに検討して、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記構成により達成される。
【0009】
(1)発泡ゴムチューブに軸芯体が圧入されて発泡ゴム層が形成された導電性弾性ローラであって、
該軸芯体が無電解ニッケルメッキされており、
発泡ゴムチューブが、ゴム原料に少なくとも発泡剤及び加硫剤が配され、該ゴム原料がアクリルニトリルブタジエンゴム及びエピクロルヒドリンゴムからなる発泡ゴム層原料組成物が円筒状に押し出され、マイクロ波により加硫発泡されたものであり、かつ、該発泡ゴムチューブの内径(真円として)が圧入される軸芯体の外径の80%±10%であり、
そして、軸芯体に対するチューブ内面の摺動抵抗が0.6N・m以上0.9N・m以下である
ことを特徴とする導電性弾性ローラ。
【0010】
(2)マイクロ波による加硫発泡が、有効照射区間が2m以下であり、出力を1.0kW以上2.0kW以下としたマイクロ波加硫炉中で行われている上記導電性弾性ローラ。
【0011】
(3)発泡ゴムチューブに軸芯体が圧入されて発泡ゴム層が形成された導電性弾性ローラの製造方法であって、少なくとも下記工程からなることを特徴とする導電性弾性ローラの製造方法:
アクリルニトリルブタジエンゴム及びエピクロルヒドリンゴムからなるゴム原料に少なくとも発泡剤及び加硫剤を配して発泡ゴム層原料組成物を調製する工程;
発泡ゴム層原料組成物を円筒状に押し出し、発泡ゴム層原料組成物チューブを作成する工程;
発泡ゴム層原料組成物チューブを、有効照射区間が2m以下であり、出力を1.0kW以上2.0kW以下としたマイクロ波加硫炉中で発泡加硫して、内径(真円として)が圧入する軸芯体の外径の80%±10%である発泡ゴムチューブを得る工程;
発泡ゴムチューブを切断する工程;及び
切断した発泡ゴムチューブ内に表面を無電解ニッケルメッキした軸芯体を圧入する工程。
【0012】
(4)軸芯体に対する発泡ゴムチューブ内面の摺動抵抗が0.6N・m以上0.9N・m以下である上記導電性弾性ローラの製造方法。
【0013】
(5)転写ローラが、アクリルニトリルブタジエンゴム及びエピクロルヒドリンゴムからなるゴム原料に少なくとも発泡剤及び加硫剤が配された発泡ゴム層原料組成物が円筒状に押し出された後に、マイクロ波により加硫発泡された、内径(真円として)が圧入される軸芯体の外径の80%±10%である発泡ゴムチューブに、無電解ニッケルメッキ表面を有する軸芯体が圧入されて製造された、該軸芯体に対する発泡ゴムチューブ内面の摺動抵抗が0.6N・m以上0.9N・m以下である導電性弾性ローラであることを特徴とする電子写真装置。
【0014】
(6)マイクロ波による加硫発泡が、有効照射区間が2m以下であり、出力を1.0kW以上2.0kW以下としたマイクロ波加硫炉中で行われている上記電子写真装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、軸芯体が接着剤を塗布されていなくても、発泡ゴム層が強固に固定されており、かつ、その製造にあたり、軸芯体の圧入や必要により行われる発泡ゴム層表面の研磨を容易に行うことが可能であり、その結果、硬度ムラ、抵抗周ムラが無い導電性弾性ローラが提供される。
【0016】
また、該導電性ローラは電子写真装置用ローラ、特に転写ローラとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明をさらに詳しく、実施をするための最良の形態について説明する。
【0018】
図1に、本発明の導電性弾性ローラの一例の斜視図を示す。
【0019】
本発明の導電性弾性ローラは、少なくとも表面が無電解ニッケルメッキされた導電性軸芯体1の周りに、導電性の発泡ゴム層2が形成されたものである。この発泡ゴム層表面には電子写真装置のローラとして必要な機能を与えるために、表面層が形成されていても構わない。
【0020】
本発明において、導電性の発泡ゴム層は、アクリロニトリルブタジエンゴム及びエピクロルヒドリンゴムからなるゴム原料に少なくとも発泡剤及び加硫剤が配され、円筒状に押し出され、次いで加硫発泡されて、発泡ゴムチューブとされ、該発泡ゴムチューブがローラ長に切断されたものが、軸芯体に被せられて形成されたものである。なお、アクリルニトリルブタジエンゴムやエピクロルヒドリンゴムはイオン導電性を有しているので、該発泡ゴム層は導電性を発揮するが、導電性が不足したり、導電性を安定させたりするために、他の導電性物質を配することが好ましい。
【0021】
本発明では、ゴム原料として、アクリロニトリルブタジエンゴム及びエピクロルヒドリンゴムを併用する。その他、ポリスチレン系高分子材料、ポリオレフィン系高分子材料、ポリエステル系高分子材料、ポリウレタン系高分子材料、RVCなどの熱可塑性エラストマー、アクリル系樹脂、スチレン酢酸ビニル共重合体等の高分子材料を必要により混合しても用いることができる。なお、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムの混合割合は、質量比で1/99から99/1の範囲が適当である。
【0022】
本発明では、発泡ゴム層形成のために発泡剤を使用する。その発泡剤として、アゾジカルボンアミド(ADCA)系、ジニトロソペンタメチレンテトラアミン(DPT)系、p−トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)系、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)系等の有機発泡剤が使用可能であり、これらを単独で、あるいは混合して用いる。なお、発泡剤は、発泡ゴム層が必要とする弾性度を達成するために適宜の量とするが、ゴム原料100質量部に対して1質量部以上20質量部以下が適当である。
【0023】
また、発泡剤の分解温度は、尿素、酸化亜鉛等を発泡助剤として加えて低下させることもできる。この発泡助剤としては、尿素系化合物;酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物;サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする化合物などが挙げられ、発泡剤に対応して選択して使用する。
【0024】
加硫剤としては、硫黄、金属酸化物等が使用可能であり、特に硫黄が好ましい。なお、加硫剤は、発泡ゴム層が必要とする弾性度及び強度を達成するために適宜の量とするが、ゴム原料100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下が適当である。
【0025】
また、本発明では、加硫剤とともに加硫促進剤を使用することが好ましい。かかる加硫促進剤としては各種知られているが、チアゾール系加硫促進剤やチウラム系加硫促進剤を使用することができる。そして、チアゾール系加硫促進剤とチウラム系加硫促進剤を併用するとCセット性に効果があることが一般的に知られているので、併用することが好ましい。
【0026】
チアゾール系加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等があるが、チウラム系加硫促進剤との併用に賞用されるジベンゾチアジルジスルフィドが好ましい。また、チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。スコーチ性に優れたテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドを使用することが好ましい。なお、その他のチアゾール系加硫促進剤及びチウラム系加硫促進剤においても使用条件を整えることで使用可能である。
【0027】
加硫剤として硫黄を使用することが好ましいのであるが、これは、通常の加硫剤としての効果の外、導電性軸芯体との化学的な相互作用により、より密着性を向上させる効果もある。
【0028】
また、本発明では、発泡剤及び加硫剤と共に、カーボンブラック等の導電剤、炭酸カルシウム等の充填剤、老化防止剤を必要により配合することが可能である。
【0029】
導電剤として、公知の導電性物質を用いることが可能である。例えば、電子導電剤として、導電性カーボンブラック、TiO2、SnO2、ZnO、SnO2とSbO3の固溶体等の金属酸化物、Cu、Agなどの金属粉末等、また、イオン導電剤として、LiCIO4、NaSCNなどが挙げられ、ゴム原料に単独で若しくは複数を添加し分散させる。なお、その種類、使用量は、必要な導電性から適宜に決定する。また、発泡ゴム層の導電性を得るために、ゴム原料の主鎖あるいは側鎖に極性を有する官能基を導入することによっても可能である。
【0030】
なお、電子導電剤としては、少量の使用で十分な導電性を得ることができることから導電性カーボンブラックを使用することが好ましく、その使用量は通常上記ゴム原料100質量部に対して5質量部以上95質量部以上が適当である。
【0031】
本発明では、軸芯体は導電性がある棒状あるいは円筒状の金属製あるいは樹脂製のものであり、その表面には無電解ニッケルメッキが施されていることが必要である。なお、軸芯体の強度等から金属製であることが好ましく、金属としては、鉄、鋼、鋳鉄、無錆鋼、真鍮、銅等が使用可能であるが、これら金属はゴム原料の加硫に使用される硫黄や過酸化物に対して抵抗性がないので、無電解ニッケルメッキを表面にして用いられる。また、メッキの種類としては、無電解ニッケルメッキの外、クロムメッキ、スズメッキ等も挙げられることができるが、コスト面並びに発泡ゴム層との密着性において、該無電解ニッケルメッキが特に好ましい。なお、加硫剤が硫黄であると発泡ゴム層との密着性がさらに向上する。
【0032】
軸芯体の外径としては、導電性弾性ローラの使用目的により適宜決めればよく、例えば、転写ローラとする場合は、2mm以上20mm以下、好ましくは3mm以上15mm以下、さらに好ましくは4mm以上10mm以下が適当である。なお、外径が8mm以上であるような場合は、2mmから3mmの範囲の厚みを有する円筒状であることで軽量化することもできる。
【0033】
本発明の導電性弾性ローラは、以下のようにして製造できる。
【0034】
本発明では、まず、発泡ゴムチューブを製造する。製造に用いる加硫発泡装置の概要を図2に示す。
【0035】
すなわち、上記した発泡ゴム層原料組成物が、バンバリーミキサー、ニーダー等の密閉式混練機で混練された後、オープンロール、リボン成形分出し機によりリボン状に成形され、押出機11に投入され、円筒状に押し出され、未加硫未発泡である発泡ゴム層原料組成物チューブとされる。
【0036】
押出機11により形成された、未加硫未発泡である発泡ゴム層原料組成物チューブはマイクロ波加熱による加硫装置(マイクロ波加硫装置、UHF)12に導入される。このUHF12で未加硫未発泡である発泡ゴム層原料組成物チューブは加熱され、発泡と加硫が行われる。このUHF12の加熱区間(マイクロ波の有効照射区間)が2m以下であることが好ましい。加熱区間が2mを超えても加硫発泡には問題ないが、装置が大きくなるだけであり、設置場所をとることや経済性が悪くなることから好ましくない。UHF12の出力は1.0kW以上2.0kW以下が適当である。UHF12の出力が1.0kW未満では未加硫未発泡である発泡ゴム層原料組成物チューブが十分に加硫・発泡が行われず、また、2.0kWを超えると加熱が早すぎ、加硫や発泡が行き過ぎて、コントロールがうまく行えず、チューブの円筒状が保たれない。また、発泡ゴム層原料組成物が発火する危険性もある。
【0037】
UHF12で加硫発泡された発泡ゴム層原料組成物チューブは、UHF12に続く熱風加硫装置(HAV)13に搬送され、加硫が完結されて、発泡ゴムチューブとされる。なお、HAV13に送られる熱風の温度は、発泡ゴム層原料組成物の組成、発泡倍率、加硫度等により異なるが、通常100℃以上250℃以下とするのが適当である。また、送風量についても、発泡ゴム層原料組成物の組成、発泡倍率、加硫度等により適宜に設定する。なお、製造される発泡ゴムチューブの厚みとしては、製造する導電性弾性ローラの使用目的、軸芯体を挿入後の表面研磨の有無等により変わるが、通常2mm以上20mm以下、好ましくは3mm以上15mm以下、特に好ましくは4mm以上12mm以下である。
【0038】
加硫発泡が完結した発泡ゴムチューブは、引取機14により引き取られ、次いで、定着切断機15に送られ、所定長さに切断される。
【0039】
次いで、所定長さに切断された発泡ゴムチューブは、必要により引き取り、切断等で生じた歪みが取り除かれた後に、表面が無電解ニッケルメッキされた軸芯体が圧入され、本発明の導電性弾性ローラが製造される。ここで、発泡ゴムチューブの内径(真円として)は圧入される軸芯体の外径の80%±10%であることが肝要である。発泡ゴムチューブの内径がかかる範囲にあるときに、圧入された軸芯体と発泡ゴム層間の密着性が良好となる。発泡ゴムチューブがこの範囲を超える径のものであるときは、軸芯体との密着性が不足し、使用中あるいは必要により行う加工中に発泡ゴム層に歪みが発生するので好ましくない。また、この範囲より小さい場合は軸芯体圧入に際し、発泡ゴム層に歪みを発生させるので好ましくない。
【0040】
得られた導電性弾性ローラにおいて、軸芯体に対する発泡ゴムチューブ内面の摺動抵抗、すなわち、軸芯体と発泡ゴム層間の密着強度が0.6N・m以上0.9N・m以下であることが必須である。この摺動抵抗が0.6N・m未満では軸芯体と発泡ゴム層の密着性が不足し、使用中あるいは必要により行う加工中に発泡ゴム層に歪みが発生するので好ましくない。また、0.9N・mを超えると発泡ゴム層中の硫黄と無電解ニッケルメッキとの反応が多く進行したことになる。そのような場合は導電性弾性ローラの保管中あるいは使用中に軸芯体を腐食させ、軸芯体強度の低下、軸芯体と発泡ゴム層間の接着性低下、発泡ゴム層表面への凹凸発生等の不具合が発生しやすくなるので、やはり好ましくない。
【0041】
発泡ゴムチューブを製造するラインについて、具値的な例を示すと、押出機11を除くUHF12から定尺切断機15までは、全長約13mであり、順にUHF12は約4m、HAV13は約6m、引取機14と定尺切断機15は併せて約1mであり、それらの間は0.1m以上1.0mの間隔が取られている。そして、UHF12内には表面がフッ素樹脂で被覆されたメッシュ状ベルトが設けられており、その上で押出機からの未加硫未発泡ゴム層原料組成物チューブが搬送と加硫発泡が行われる。また、UHF12内のマイクロ波の照射領域は2m以下とされている。また、UHF12内で加硫発泡した発泡ゴム層用原料組成物チューブは表面がフッ素樹脂で被覆されたコロに乗せられHAV13に搬送されるが、HAV13内もフッ素樹脂で被覆されたコロの上を搬送される。ここでフッ素樹脂を被覆したベルトやコロを使用するのは、加硫発泡が完了していない発泡ゴム層用原料組成物チューブがベルトやコロに付着し、チューブ表面を剥落させたり、歪みを生じさせたりしないようにするためである。
【0042】
所定長さに切断された発泡ゴムチューブに軸芯体が圧入され、ローラ状の成形体とされたものは、そのままで導電性弾性ローラとして使用可能であるが、好ましくは、発泡ゴム層表面が砥石で研磨されたり、砥粒でブラストされたりして、ローラ径や表面を使用目的に応じた大きさや表面粗さとされる。
【0043】
ここで表面の研磨は、例えば、研磨砥石を備えた研磨機に上記のようにして製造された発泡ゴム層が形成された導電性弾性ローラをセットし、研磨砥石の回転速度を2000rpmとし、その送り速度を500m/minとして行うことができる。この研磨の際、発泡ゴム層と軸芯体の密着強度が0.6N・m未満であると発泡ゴム層が剥がれたりして均一な研磨が行えない。
【0044】
上記のようにして製造された本発明の導電性弾性ローラは、さらに、その使用目的に応じた表面状態にするために、樹脂層を形成することも可能である。
【0045】
次いで、本発明の導電性弾性ローラを転写ローラ等に組み込んだ画像形成装置について説明する。
【0046】
図3は、プロセスカートリッジを使用する電子写真方式の画像成形装置の例を示す概略構成図である。
【0047】
該画像形成装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体(感光ドラム)21を備えている。感光ドラム21は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム21は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/secで回転駆動される。
【0048】
感光ドラム21の表面は、接触帯電部材としての帯電ローラ22によって均一に帯電される。帯電ローラ22は、感光ドラム21に接触配置されており、感光ドラム21の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ22には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム21表面は、暗部電位Vd(例えば、−600V)に一様に帯電される。帯電後の感光ドラム21表面は、レーザスキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザ光23、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム21表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl、例えば−150V)が形成される。
【0049】
その静電潜像は、現像装置24の現像ローラ24aに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナーが付着され、トナー像として反転現像される。
【0050】
一方、給紙部から給搬送されてきた紙等の転写材27が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム21と転写ローラ26との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム21上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材27は、転写バイアス印加電源により転写ローラ26に印加された転写バイアスによって、トナー像が転写される。このとき、転写材27に転写されないで感光ドラム21表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置29によって除去される。
【0051】
転写部Tを通った転写材27は、感光ドラム21から分離されて定着装置30へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体外部に排出される。
【0052】
ここで、帯電ローラ、現像ローラ及び転写ローラとして、本発明の導電性弾性ローラは使用され、特に転写ローラとして有用である。
【0053】
本発明において重要な評価項目である、軸芯体に対する発泡ゴムチューブの内面と摺動抵抗(発泡ゴム層と軸芯体の密着度)の測定は下記の方法で行ったものである。
【0054】
〔回転トルク〕
すなわち、発泡ゴムチューブに軸芯体を圧入した後、発泡ゴム層の歪みが緩和されるまで、23℃、55%RHのN/N環境下に48時間に置いた導電性弾性ローラをクランプにて挟持する。その後、軸芯体にモーターを取り付け、モーターを回転させる。導電性弾性ローラの挟持はモーターの回転により発泡ゴム層とクランプとの間で滑って回らないが、挟持による変形が軸新体荷まで及ばない程度としておくことが必要である。モーターを回転させたときにかかる負荷を杉崎計器株式会社製のすべりトルク検知器「Ceder DI−12」(商品名)にて測定する。そして、軸新体が発泡ゴム層に対して滑り始める時点の負荷を測定し、軸芯体に対する発泡ゴムチューブの内面と摺動抵抗(発泡ゴム層と軸芯体の密着度)を回転トルク(N・m)として示す。
【0055】
また、導電性弾性ローラの発泡ゴム層の硬度ムラ及び電気抵抗ムラについても下記により評価する。
【0056】
〔硬度ムラ〕
得られた導電性弾性ローラの発泡ゴム層表面の任意の場所を周方向に90°毎に4箇所、アスカーC型の硬度計(4.9N荷重)でアスカーC硬さを測定する。得られた値の最大値と最小値の硬さの差を求め、硬度ムラの程度を表す指標とする。すなわち、硬さの差が0の時は全くムラがないことを意味し、硬さの差が0に近いほどムラがなく好ましいことを意味する。
【0057】
〔電気抵抗ムラ〕
得られた導電性弾性ローラを、23℃、55%RHのN/N環境下で48時間置いた後、軸芯体の端部に各4.9Nの荷重が掛かるようにして、外径30mmのアルミニウム製のドラムに圧着し、アルミニウム製ドラムを30rpmで回転させ、それにつれて導電性弾性ローラも従動回転させる。その状態で、軸芯体とアルミドラム間に2kVの電圧を印加して、電気抵抗を連続して導電性弾性ローラ一回転分を測定する。次いで、測定された電気抵抗の最大値と最小値の対数値を求め、その差を電気抵抗ムラの指標とする。なお、この差は1.2未満であることが好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこの転写ローラのみに限定されるものではなく、帯電ローラ、現像ローラにも展開可能である。
【0059】
なお、各実施例及び比較例で使用したゴム材料は以下の通りである。
・NBR:アクリロニトリルブタジエンゴム「ニポール DN401LL」(商品名、日本ゼオン株式会社製)
・GECO:エピクロルヒドリンゴム「ハイドリン G3106」(商品名、日本ゼオン株式会社製)
・DM:ジベンゾチアジルジスルフィド「ノクセラー DM−P」(商品名、チアゾール系加硫促進剤、大内新興化学工業株式会社製)
・TOT:テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド「ノクセラー TOT−N」(商品名、チウラムジスルフィド系加硫促進剤、大内新興化学工業株式会社製)
・硫黄:硫黄「サルファックス PMC」(商品名、鶴見化学工業株式会社製)
・ADCA:アゾジカルボンアミド「ビニホール AC」(商品名、永和化成工業株式会社製)
【0060】
実施例1〜4
原料ゴムとして、NBR 80質量部及びGECO 20質量部を用い、これに、発泡剤としてADCA 4.0質量部、加硫剤として硫黄 1.5質量部及び加硫促進剤としてDM 1.5質量部とTOT 2.0質量部をバンバリーミキサーにて混練した後、オープンロールとリボン成形分出し機によりリボン状に成形して発泡ゴム層原料組成物を得た。
【0061】
次いで、図2に示すような加硫発泡装置を用い、この発泡ゴム層原料組成物を押出機に投入し、チューブ状に押し出した。この発泡ゴム層原料組成物チューブをフッ素樹脂がコートされたメッシュ状ベルトに載せ、マイクロ波出力が1.0kWから2.0kWに調整されているUHFに導入し、加硫発泡した。なお、このときの発泡ゴム層原料組成物チューブのUHF中への導入速度は2.5m/minであった。また、マイクロ波が当てられている距離(照射有効区間)は1.8mであった。
【0062】
UHFで加硫発泡した発泡ゴムチューブを、さらに、フッ素樹脂をコートしたコロで搬送し、熱風にて温度180℃に保たれたHAVに導入して、加硫を完結させた。なお、HAVの長さは6mであった。次いで、HAVを出た発泡ゴムチューブを引取機にて引き取り、さらに、切断機にて、長さ250mmに切断して、発泡ゴム層用長さの発泡ゴムチューブとした。なお、押出機のダイスを適宜変更して加硫発泡後のチューブでの内径が軸芯体外径(6mm)の80%±10%になるようにした。また、発泡後のチューブ外径は約20mmとした(発泡ゴムチューブの厚み約7.5mm)。
【0063】
切断した発泡ゴムチューブに、表面に無電解ニッケルメッキ層を有する径6mmの鉄製の軸芯体を圧入し、次いで、表面を研磨し、次いで両端を突っ切り、外径17mmの導電性弾性ローラを作製した。得られた導電性弾性ローラの硬度ムラ及び電気抵抗ムラを測定した。一方、表面研磨する前の導電性弾性ローラをN/N環境(23℃、55%RH)に48時間置いたもので、軸芯体と発泡ゴム層の摺動抵抗を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0064】
比較例1〜6
UHFのマイクロ波の出力あるいは得られる発泡ゴムチューブの内径が表2になるようにする他は実施例1〜4と同様にして、発泡ゴムチューブを作製し、軸芯体を圧入して導電性ゴムローラを作製した。なお、比較例5においては、該ゴムチューブ内径を軸芯体外径の65%に設定したため、軸芯体を発泡ゴムチューブに圧入できなかった。得られた導電性ゴムローラについて実施例1〜4と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
導電性軸心体の外径に対し、圧入される発泡ゴムチューブの内径が80%±10%である時、また、UHFのマイクロ波出力が1.0kW以上2.0kW以下である時、得られる導電性弾性ローラの軸芯体と発泡ゴム層の摺動抵抗が回転トルクで0.6N・m以上0.9N・mとなり、かつ該ローラの硬度ムラ、抵抗ムラも良好となっている。
【0067】
比較例5及び6に見られるように、導電性軸心体の外径に対し、圧入される発泡ゴムチューブの内径が80%±10%の範囲外である時、軸芯体が圧入うまくできなかったり、圧入できてもローラの硬度ムラや電気抵抗ムラが見られたりする。また、UHFのマイクロ波出力が1.0kW未満である時、加硫発泡がうまく行われず、比較例1では全く加硫が行われなかった。また、発泡加硫が行われた時でも、比較例2に見られるように軸芯体と発泡ゴム層との摺動抵抗が不足し、ローラの硬度ムラや電気抵抗ムラが見られる。さらに、UHFのマイクロ波出力を2.0kW超とすると、比較例3及び4に見られるように加硫発砲が進みすぎ、得られる導電性弾性ローラの軸芯体と発泡ゴム層の摺動抵抗が不足し、ローラの硬度ムラ、抵抗ムラが見られる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る導電性弾性ローラの一例の斜視図である。
【図2】本発明に係る加硫発泡装置の模式図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の模式図である。
【符号の説明】
【0069】
1 軸芯体
2 発泡ゴム層
11 押出機
12 マイクロ波加硫装置(UHF)
13 熱風加硫装置(HAV)
14 引取機
15 定尺切断機
21 電子写真感光体(感光ドラム)
22 帯電装置
23 露光手段
24 現像装置
24a 現像ローラ
25 トナー
26 転写ローラ
27 記録媒体
28 クリーニングブレード
29 廃トナー容器
30 定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ゴムチューブに軸芯体が圧入されて発泡ゴム層が形成された導電性弾性ローラであって、
該軸芯体が無電解ニッケルメッキされており、
発泡ゴムチューブが、ゴム原料に少なくとも発泡剤及び加硫剤が配され、該ゴム原料がアクリルニトリルブタジエンゴム及びエピクロルヒドリンゴムからなる発泡ゴム層原料組成物が円筒状に押し出され、マイクロ波により加硫発泡されたものであり、かつ、該発泡ゴムチューブの内径(真円として)が圧入される軸芯体の外径の80%±10%であり、
そして、軸芯体に対するチューブ内面の摺動抵抗が0.6N・m以上0.9N・m以下である
ことを特徴とする導電性弾性ローラ。
【請求項2】
マイクロ波による加硫発泡が、有効照射区間が2m以下であり、出力を1.0kW以上2.0kW以下としたマイクロ波加硫炉中で行われていることを特徴とする請求項1に記載の導電性弾性ローラ。
【請求項3】
発泡ゴムチューブに軸芯体が圧入されて発泡ゴム層が形成された導電性弾性ローラの製造方法であって、少なくとも下記工程からなることを特徴とする導電性弾性ローラの製造方法:
アクリルニトリルブタジエンゴム及びエピクロルヒドリンゴムからなるゴム原料に少なくとも発泡剤及び加硫剤を配して発泡ゴム層原料組成物を調製する工程;
発泡ゴム層原料組成物を円筒状に押し出し、発泡ゴム層原料組成物チューブを作成する工程;
発泡ゴム層原料組成物チューブを、有効照射区間が2m以下であり、出力を1.0kW以上2.0kW以下としたマイクロ波加硫炉中で発泡加硫して、内径(真円として)が圧入する軸芯体の外径の80%±10%である発泡ゴムチューブを得る工程;
発泡ゴムチューブを切断する工程;及び
切断した発泡ゴムチューブ内に表面を無電解ニッケルメッキした軸芯体を圧入する工程。
【請求項4】
軸芯体に対する発泡ゴムチューブ内面の摺動抵抗が0.6N・m以上0.9N・m以下であることを特徴とする請求項3に記載の導電性弾性ローラの製造方法。
【請求項5】
転写ローラが、アクリルニトリルブタジエンゴム及びエピクロルヒドリンゴムからなるゴム原料に少なくとも発泡剤及び加硫剤が配された発泡ゴム層原料組成物が円筒状に押し出された後に、マイクロ波により加硫発泡された、内径(真円として)が圧入される軸芯体の外径の80%±10%である発泡ゴムチューブに、無電解ニッケルメッキ表面を有する軸芯体が圧入されて製造された、該軸芯体に対する発泡ゴムチューブ内面の摺動抵抗が0.6N・m以上0.9N・m以下である導電性弾性ローラであることを特徴とする電子写真装置。
【請求項6】
マイクロ波による加硫発泡が、有効照射区間が2m以下であり、出力を1.0kW以上2.0kW以下としたマイクロ波加硫炉中で行われていることを特徴とする請求項5に記載の電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−271659(P2007−271659A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93610(P2006−93610)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】