説明

導電性樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置

【課題】熱伝導性に優れた硬化物を与え、接着強度が良好で、作業性にも優れる導電性樹脂組成物、および、そのような導電性樹脂組成物を用いた信頼性の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ当量が200〜2000の可とう性エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)硬化促進剤と、(D)銀粉と、を必須成分とする導電性樹脂組成物であって、(D)銀粉が、その全量を100質量部としたとき、(d1)不定形銀粉が60質量部以上、(d2)フレーク状銀粉が30質量部以上、を含有してなることを特徴とする導電性樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC、LSIなどの半導体素子(以下、半導体チップまたは単にチップとも称する。)を金属フレームなどへ接着する際に使用される導電性樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC、LSIなどの半導体素子は、リードフレームと称する金属片にマウントし、Au/Si共晶法あるいはダイボンディングペーストと称する接着剤を用いて固定した後、リードフレームのリード部と半導体素子上の電極とを細線ワイヤ(ボンディングワイヤ)により接続し、次いでこれらをパッケージに収納して半導体製品とすることが一般的であった。ボンディングワイヤとリード部または電極との接合は熱圧着によって行われる。
【0003】
しかし、近年、半導体素子は集積度の増大に伴い、半導体装置の動作安定性を確保するために、高熱放散性が求められてきている。一方、大型化が進んでおり、これらを搭載するリードフレームには、コストダウンを図る目的で、銅フレームが、従来の高価な42合金フレームに代わって広く用いられるようになってきた。
【0004】
高熱伝導性で作業性に優れた導電性樹脂組成物を得る為に、高充填導電フィラー含有樹脂組成物の組成に工夫を加えた方法が多数提案されている。例えば、導電粉としてフレーク銀粉に微細球状銀粉を併用して高充填でもタレを少なくして作業性を改善させるもの(例えば、特許文献1参照)、粒子の90体積%以上を特定範囲の粒子径を有する球状銀粉を使用して分散性を向上させたもの(例えば、特許文献2参照)、アスペクト比2以上4.7以下のフレーク状金属粉と球状の有機フィラーを含む樹脂組成物により作業性を向上させたもの(例えば、特許文献3参照)、導電粉が球状(又は略球状)のフィラーと扁平状の混合粉で特定範囲のタップを有するもの(例えは、特許文献4参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−53737号公報
【特許文献2】特開2003−335924号公報
【特許文献3】特開2010−87235号公報
【特許文献4】特開2009−102602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、導電粉を高充填した樹脂組成物では接着強度が低下したり、作業性が低下したりするなどの新たな問題が発生し、未だ満足し得る特性を備えたものは得られていない。
【0007】
本発明はこのような課題に対処してなされたもので、熱伝導性に優れた硬化物を与え、接着強度が良好で、作業性にも優れる導電性樹脂組成物、および、そのような導電性樹脂組成物を用いた信頼性の高い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の配合とした導電粉と低応力エポキシ樹脂を必須成分として含む樹脂組成物が、上記の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の導電性樹脂組成物は、(A)エポキシ当量が200〜2000の可とう性エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)硬化促進剤と、(D)銀粉と、を必須成分とする導電性樹脂組成物であって、前記(D)銀粉が、その全量を100質量部としたとき、(d1)不定形銀粉が60質量部以上、(d2)フレーク状銀粉が30質量部以上、を含有してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性樹脂組成物によれば、熱伝導性に優れた硬化物を与え、接着強度が良好で、作業性にも優れているため、半導体素子の金属フレームなどへの接着に適した樹脂組成物を提供することができる。
【0011】
本発明の半導体装置によれば、上記の特性を有する導電性樹脂組成物を用いて半導体素子を接着しているため、信頼性に優れた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の半導体装置の一例を示す断面図である。
【図2】ダイシェア強度の試験方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の導電性樹脂組成物において、(A)成分であるエポキシ樹脂は、エポキシ当量が200〜2000の範囲の可とう性エポキシ樹脂を主成分として使用するものである。この可とう性エポキシ樹脂の具体例としては、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数2〜9(好ましくは2〜4)のアルキレン基を含むポリオキシアルキレングリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコールなどを含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン、酢酸ビニルもしくは(メタ)アクリル酸エステルなどのラジカル重合性モノマーとの共重合体、共役ジエン化合物の(共)重合体またはその部分水添物の(共)重合体における不飽和炭素結合をエポキシ化したもの、エポキシ基を有するポリエステル樹脂、ウレタン結合やポリカプロラクトン結合を導入したウレタン変性エポキシやポリカプロラクトン変性エポキシ樹脂、ダイマー酸又はその誘導体の分子内にエポキシ基を導入したダイマー酸変性エポキシ樹脂、NBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴム等のゴム成分の分子内にエポキシ基を導入したゴム変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0015】
より具体的な例としては、下記式(1)
【化1】

(式中、Aは−(CH−,Arは置換又は無置換のフェニル基,Bは−CH−又は−C(CH−を表わし、nは1〜10の整数を、mは6〜14の整数を表わす。)で表わされるエポキシ樹脂が挙げられ、具体例としては、ジャパンエポキシレジン社製YL7175−500(エポキシ当量487)、YL7150−1000(エポキシ当量1000)や、ビスフェノールA型変成エポキシ樹脂であるDIC社製EP−4003S(エポキシ当量412)EP−4000S(エポキシ当量260)などが挙げられる。
【0016】
なお、上記可とう性エポキシ樹脂は単独で用いてもよいが、この可とう性エポキシ樹脂に加えて、他のエポキシ樹脂を併用してもよい。併用するエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、いかなるエポキシ樹脂も使用することができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、特殊多官能型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。必要に応じ、上記可とう性エポキシ樹脂の一部を置き替えて併用することができる。この場合、本発明の効果を阻害しないように、併用する他のエポキシ樹脂は、用いるエポキシ樹脂全量中に30質量%以下の量で配合することが好ましく、上記可とう性エポキシ樹脂を主成分としてエポキシ樹脂全量中に70質量%以上含有することが好ましい。
【0017】
また、本発明においては、応力緩和性や密着性などをさらに改善する目的で、(A)成分以外の樹脂成分を配合してもよい。併用可能な樹脂としては、例えば、(A)成分以外のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0018】
このようにエポキシ樹脂以外の他の樹脂を併用する場合、可とう性エポキシ樹脂100質量部に対して、他の樹脂を50質量部まで混合することができる。
【0019】
(B)成分の硬化剤としては、公知のエポキシ樹脂の硬化剤であれば特に限定されるものではないが、ジシアンアミド又はフェノール樹脂が好ましい。硬化剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。なかでも多官能フェノールノボラック樹脂が好ましい。
【0020】
この(B)成分の配合量は、(A)成分であるエポキシ樹脂の合計100質量部に対して、ジシアンジアミドでは0.1〜5質量部の範囲が好ましく、また、多官能フェノールノボラックでは(A)成分であるエポキシ樹脂の合計100質量部に対して、30〜70質量部が好ましい。さらに、これら硬化剤成分に硬化剤としてビスフェノール樹脂を併用することもでき、この場合、ビスフェノール樹脂を(A)成分であるエポキシ樹脂の合計100質量部に対して、0〜20質量部配合することが好ましい。
【0021】
(C)成分の硬化促進剤としては、従来、エポキシ樹脂の硬化促進剤として使用されているものであれば特に制限されることなく使用することができるが、イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤が好ましく、イミダゾール系硬化促進剤であることがより好ましい。
【0022】
イミダゾール系硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−n−プロピルイミダゾール、2−ウンデシル−1H−イミダゾール、2−ヘプタデシル−1H−イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−1H−イミダゾール、4−メチル−2−フェニル−1H−イミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−ウンデシルイミダゾリル−(1′)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−イミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール塩酸塩、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイトなどが挙げられる。
【0023】
また、アミン系硬化促進剤の具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ペンタメチルジエチレントリアミン、アルキル−t−モノアミン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(トリエチレンジアミン)、N,N,N′,N′−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、ジメチルアミノヘキサノールなどの脂肪族アミン類;ピペリジン、ピベラジン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、N,N′,N″−トリス(ジアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、N−アミノエチルピベラジン、トリメチルアミノエチルピベラジン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、N,N′−ジメチルピベラジン、1,8−ジアザビシクロ(4.5.0)ウンデセン−7などの脂環式および複素環式アミン類;o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−キシレンジアミン、ピリジン、ピコリン等の芳香族アミン類;エポキシ化合物付加ポリアミン、マイケル付加ポリアミン、マンニッヒ付加ポリアミン、チオ尿素付加ポリアミン、ケトン封鎖ポリアミン等の変性ポリアミン類;ジシアンジアミド;グアニジン;有機酸ヒドラジド;ジアミノマレオニトリル;アミンイミド;三フッ化ホウ素−ピペリジン錯体;三フッ化ホウ素−モノエチルアミン錯体などが挙げられる。
【0024】
これらの硬化促進剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。なかでも、イミダゾール系硬化促進剤の2−フェニル−4−メチルイミダゾール(2P4MZ)、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ)が好ましい。
【0025】
この(C)成分の硬化促進剤の配合量は、(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲が好ましく、0.2〜7.0質量部の範囲がより好ましい。0.1質量部未満では、十分な硬化促進効果が得られず、10質量部を超えると、硬化促進効果はさほど変わらずに、耐熱性が低下してしまう。
【0026】
(D)成分の銀粉は、樹脂組成物に良好な導電性を付与するための成分であり、(d1)不定形銀粉と(d2)フレーク状銀粉とを含有しており、本発明においては、(D)銀粉100質量部中において、(d1)不定形銀粉を60質量部以上、かつ、(d2)フレーク状銀粉を30質量部以上含むものである。
【0027】
このうち(d1)不定形銀粉は液中還元法で製造される銀粉である。これは、酸に溶解した銀を、アルカリで中和した後、還元剤を加えて液中で還元して微粉末にする方法である。これにより製造された形状は一定ではなく塊状の不定形となる。本発明の(d1)不定形銀粉の数平均粒子径は3〜12μmであり、形状は真球状ではなく、数平均の長径/短径比は1.2〜2.0であることが好ましい。この範囲内であれば熱伝導率が高く接着力の強い導電性樹脂組成物を得ることができる。なお、銀粉の平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置により求める。また、数平均の長径/短径は、銀粉の4000倍の顕微鏡写真から任意の50個の銀粉を抽出し、それぞれの長径および短径を測定して長径/短径平均値を求める。
【0028】
(d2)フレーク状銀粉は数平均粒子径が3〜20μm程度でタップ密度が2.0〜5.0g/cm程度のものであれば市販のものが使用できる。(d2)フレーク状銀粉の数平均粒径が3μm以上であれば、組成物は適度な粘度を有し、平均粒径が20μm以下であれば、組成物の塗付時または硬化時における樹脂成分のブリードが抑制される。(d2)フレーク状銀粉のタップ密度は5.0g/cm以下であれば、組成物は適度な粘度を有し、タップ密度が2.0g/cm以上であれば、組成物の塗付時または硬化時における樹脂成分のブリードが抑制される。
【0029】
この(D)成分である銀粉の配合量は、(A)〜(D)成分の合計100質量部に対して、84〜92質量部の範囲が好ましく、85〜90質量部の範囲がより好ましい。84質量部未満では、高熱伝導率が達成できず、92質量部を超えると、接着強度が低くなる。
【0030】
また、本発明の導電性樹脂組成物には、作業性を改善する目的で、希釈剤を配合することができる。その具体例としては、ジエチレングリコールジエチルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。この希釈剤は、導電性樹脂組成物100質量部に対して、1〜10質量部添加し、25℃における粘度を50〜200Pa・sの範囲とすることが好ましい。
【0031】
この導電性樹脂組成物には、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の組成物に一般に配合される、粘度調整剤、酸無水物などの接着力向上剤、消泡剤、着色剤、難燃剤などを、必要に応じて配合することができる。粘度調整剤としては、例えば酢酸セロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
この導電性樹脂組成物は、上記した(A)可とう性エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)銀粉、および、必要に応じて配合される反応性希釈剤、溶剤などの成分を、高速混合機などを用いて均一に混合した後、ディスパース、ニーダ、三本ロールなどにより混練し、次いで、脱泡することにより、容易に調製することができる。
【0033】
本発明の導電性樹脂組成物は、糸引き性や広がり性が少なく作業性に優れている。また、大型の半導体チップと銅フレームの組み合わせにおいても、熱伝導率が高く、半導体素子にクラックや反りが発生することはなく、接着強度が低下することもない。すなわち、本発明の導電性樹脂組成物は、熱伝導性が高く応力緩和性に優れた硬化物を与え、また、接着強度が大きく、作業性も良好であり、さらに、可使時間が長く、硬化物においてボイドが発生することもない。
【0034】
より具体的な特性としては、導電性樹脂組成物の25℃における粘度が50〜200Pa・sであり、その硬化物の熱伝導率が8W/m・K以上、接着強度が18N以上の範囲を全て満たすことが好ましく、本発明の樹脂組成物はこれを達成可能とするものである。なお、これら特性の試験条件は、実施例中の特性試験の条件によるものである。
【0035】
本発明の半導体装置は、本発明の導電性樹脂組成物により、半導体素子が支持部材上に接着、固定されてなることを特徴とするものであり、例えば、本発明の導電性樹脂組成物を介して半導体素子をリードフレームにマウントし、導電性樹脂組成物を加熱硬化させた後、リードフレームのリード部と半導体素子上の電極とを常温で超音波によるワイヤボンディングにより接続し、次いで、これらを封止用樹脂により封止することにより製造することができる。
【0036】
ここで、ボンディングワイヤとしては、例えば鋼、金、アルミ、金合金、アルミ−シリコンなどからなるワイヤが例示されるが、コストおよびボンディング性の観点からはアルミワイヤが好ましい。また、ボンディングの際の超音波の出力、荷重などの条件は、特に限定されるものではなく、常法の範囲で適宜選択されてよい。 図1は、このようにして得られた本発明の半導体装置の一例を示したものであり、銅フレームなどのリードフレーム1と半導体素子2の間に、本発明の導電性樹脂組成物の硬化物である接着剤層3が介在されている。また、半導体素子2上の電極4とリードフレーム1のリード部5とがボンディングワイヤ6により接続されており、さらに、これらが封止用樹脂7により封止されている。なお、接着剤層3の厚さとしては、10〜30μm程度が好ましい。
【0037】
本発明の半導体装置は、熱伝導性が高く応力緩和性に優れた硬化物を与え、しかも、接着強度が良好で、作業性にも優れる導電性樹脂組成物により、半導体素子が接着固定されているので、高い信頼性を具備している。
【0038】
本発明の導電性樹脂組成物は、半導体素子を半導体素子支持部材上に接着するための接着剤として広く使用することができ、半導体素子の接着剤に適用した場合に特に有用である。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
(実施例1〜6、比較例1〜5)
下記に示す材料を用い、表1に示す配合割合で各成分を十分に混合し、さらに三本ロールで混練して導電性樹脂組成物を調製した。
【0041】
エポキシ樹脂1:式1の可とう性エポキシ樹脂(エポキシ当量 487)
ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名 YL−7175−500
エポキシ樹脂2:ビスフェノールA型骨格可とう性エポキシ樹脂(エポキシ当量 412)
DIC(株)製、商品名 EP−4003S
エポキシ樹脂3:式1の可とう性エポキシ樹脂(エポキシ当量 1000)
ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名 YL−7175−1000
エポキシ樹脂4:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量 180)
DIC(株)製、商品名 EXA−830CTR
フェノール硬化剤1:ビスフェノールF
本州化学社製、商品名 ビスフェノールA
フェノール硬化剤2:フェノールノボラック
明和化成(株)製、商品名 MEH−8000H
フェノール硬化剤3:フェノールノボラック
明和化成(株)製、商品名 MEH−7841−4H
潜在性硬化剤:ジシアンアミド
ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名 DICY7
【0042】
硬化促進剤:イミダゾール
四国化成(株)製、商品名 C11ZA
銀粉1:不定形銀粉(平均粒径 7.2μm、平均長径/平均短径=1.5)
徳力化学(株)製、商品名 シルベストF−201
銀粉2:フレーク状銀粉(平均粒径6.6μm、タップ密度3.3g/m
福田金属箔工業(株)製、商品名 AgC−221A
銀粉3:フレーク状銀粉(平均粒径4.6μm、タップ密度3.5g/m
福田金属箔工業(株)製、商品名 Ag−HWF−6
銀粉4:球状銀粉(平均粒径6.5μm、タップ密度6.5g/m
福田金属箔工業(株)製、商品名 Ag−HWQ−5
希釈剤:ジエチレングリコールジエチルエーテル
関東化学(株)製、商品名 D.G.D.E
【0043】
上記各実施例および各比較例で得られた導電性樹脂組成物について、粘度、チキソ性、接着強度、弾性率、体積抵抗率、熱伝導率、パッケージ信頼性についてそれぞれ調べて評価し、その結果を併せて表1に示した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
(1)粘度(η0.5rpm
東機産業社製のE型粘度計(3°コーン)を用い、25℃、0.5rpmの条件で測定した。
(2)チキソ性
東機産業社製のE型粘度計(3°コーン)を用い、25℃、5rpmの条件で粘度(η5rpm)を測定し、上記(1)で測定された粘度(η0.5rpm)との比 η0.5rpm/η5rpmを算出した。
(3)接着強度
樹脂組成物を銀メッキした銅フレーム上に20μm厚に塗布し、その上に4mm×4mmの半導体チップをマウントし、120℃で2時間加熱硬化させ、沖エンジニアリング社製ダイシェア強度測定器により求めた。ここで、ダイシェア強度測定機による測定概念図を図2に示した。半導体チップ21が、銅フレーム22に樹脂組成物23を介して接着、結合されており、この半導体チップ21の側面から治具24により矢印方向に力を加えて接着強度を求める。
【0047】
(4)弾性率
樹脂組成物をテフロン(登録商標)上に硬化後の厚さ0.25〜0.35mmになるように塗布硬化させた後、5mm×50mmのサンプルとし、DMS(粘弾性スペクトロメータ)にて測定した。
(5)体積抵抗率
樹脂組成物をガラス板上に硬化後の厚さ0.05mmになるように塗布硬化させた後、デジタルマルチメーターにより測定した。
(6)熱伝導率
樹脂組成物をテフロン(登録商標)上に硬化後の厚さ1mmになるように塗布硬化させた後、φ5mmのサンプルとし京都電子産業製 LFA−502により測定した。
(7)パッケージ信頼性
Agメッキ/銅フレーム上に樹脂組成物を20μm厚に塗布し、その上に2mmチップをマウントし、180℃で120分加熱硬化させた後、TCT1000サイクル(−65℃で30sと125℃で30sとを繰り返し行った)後のクラックを観察した。
【0048】
表1からも明らかなように、実施例の導電性樹脂組成物は、高熱伝導で、作業性に優れ、接着強度も良好で、この導電性樹脂組成物を使用して得られた半導体パッケージは信頼性に優れるものであった。
【符号の説明】
【0049】
1…リードフレーム、2…半導体素子、3…接着剤層、4…電極、5…リード部、6…ボンディングワイヤ、7…封止樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ当量が200〜2000の可とう性エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)硬化促進剤と、(D)銀粉と、を必須成分とする導電性樹脂組成物であって、
前記(D)銀粉が、その全量を100質量部としたとき、(d1)不定形銀粉が60質量部以上、(d2)フレーク状銀粉が30質量部以上、を含有してなることを特徴とする導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記可とう性エポキシ樹脂が、次の一般式(1)で示される化合物
【化1】

(式中、Aは−(CH−,Arは置換又は無置換のフェニル基,Bは−CH−又は−C(CH−を表わし、nは1〜10の整数を、mは6〜14の整数を表わす。)であることを特徴とする請求項1記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(d1)不定形銀粉は、数平均粒子径が3〜12μmの非球状形状であって、長径と短径のそれぞれの平均値の比が1.2〜2.0であることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)硬化剤が多官能フェノールノボラックである請求項1乃至3のいずれか1項記載の導電性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の導電性樹脂組成物により、半導体素子が支持部材上に接着、固定されてなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−92201(P2012−92201A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239731(P2010−239731)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】