説明

少なくとも2つの構成要素からなる機能層を作成する方法および装置

機能層を作成する方法において、基材がプロセスチャンバー内に導入される工程と、少なくとも1つのプラズマが、例えばプラズマカスケード発生源のような、少なくとも1つのプラズマ発生源(3)により発生される工程と、前記プラズマ(P)の影響下で、少なくとも1つの第1蒸着材料を前記基材(1)上に蒸着させる工程と、同時に、少なくとも1つの第2材料(6)が、第2の蒸着工程により前記基材に適用される工程と、を備えた方法である。本発明はまた、少なくとも1つのプラズマを発生させる、例えばプラズマカスケード発生源のような少なくとも1つのプラズマ発生源と、蒸着材料を各プラズマ内へ導入する手段と、前記プラズマ発生源と同時に、前記基材上に少なくとも1つの第2蒸着材料を蒸着するように配置された第2蒸着発生源(6)と、を備えた装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PECVD発生源により基材に層を作成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現実に、様々な材料の上に層を形成する必要性が存在する。この場合、層内部において複数の材料が互いに混合されると有効である。本発明は、このような混合された層を作成できる方法および装置を提供することを意図している。
【0003】
本発明によれば、機能層を作成する方法において、基材がプロセスチャンバー内に導入される工程と、少なくとも1つのプラズマが、例えばプラズマカスケード発生源のような、少なくとも1つのプラズマ発生源により発生される工程と、前記プラズマの影響下で、少なくとも1つの蒸着材料を前記基材上に蒸着させる工程と、これと同時に、少なくとも1つの第2材料が、第2の蒸着工程により前記基材に適用される工程と、を備え、他方、前記機能層は、触媒作用を有さない。
【0004】
好ましくはプラズマカスケード発生源として構成されたプラズマ発生源からのプラズマは、蒸着材料を基材に蒸着するために、プラズマを正確に基材に向けさせることができるよう、通常比較的高い流出速度を有する。またプラズマは、実質的に機能層を形成するよう結合するために、前駆物質を化学的に十分活性化させる。この目的のため、プロセスチャンバーの圧力は、各発生源内の圧力と比較して相対的に低く維持できるようになっている。さらに、プラズマ内に形成されるイオンは、基材上への蒸着のために例えばプラズマおよび/または適当な電場により覆われるように、表面に向かって加速されるであろう。異なるプラズマ発生源と蒸着発生源との組合せにより、同時に生じる2つの蒸着工程の結果、互いに異なる材料が混合された混合層を得ることができる。
【0005】
プラズマは、好ましくはプラズマカスケード発生源として構成される少なくとも1つのプラズマ発生源から発生されるので、少なくとも1つの蒸着材料の高い蒸着率を得ることができる。加えて、この発生源の使用により、機能層を製造するために直列的方法を可能とする。結果として、高い割合で比較的多数の機能層を製造することができる。
【0006】
本発明による方法の潜在的用途の一例は、例えばZnS:SiO層への適用である。このような層は、例えば再書き込み可能なDVDの製造に使用される。従来技術によれば、ZnS:SiO層は、スパッタリング工程により製造される。このような製造方法の欠点は、使用されるマスクが極めて早く汚染されることであり、これにより、マスクの定期的な洗浄が必要とされ、これに伴う製造工程中の生産能力の喪失を生じる。加えて、スパッタリングの層への適用は極めて遅い。本発明による方法によれば、例えばZnSは、プラズマ発生源により、ジエチル亜鉛(DEZ)およびHSから蒸着されることができる。SiOは、例えばスパッタリング工程を用いて蒸着されることができる。これに代えて、SiOは、酸素およびシラン、またはTEOSのような液体シリコン前駆体を供給することにより、例えばプラズマカスケード発生源のような第2のプラズマ発生源を用いて蒸着されることができる。
【0007】
本発明による方法の潜在的用途の他の例は、自動車工業用の非反射、耐熱、および/または光学用のフィルターの製造である。自動車の窓を製造するため、自動車の窓の前方および/または後方側面にフィルムを適用する際、フィルムは積層された構造であるのが効果的である。この場合、例えばPET製のフィルムを用いる。本発明による方法によれば、これをPETフィルムに対して適用すれば、層にこの機能性を適用することができる。一つの可能性として、例えば、MgFとTiOとから構成される層の組合せが存在する。広い表面を高い精度でコーティングする際、蒸着率が非常に重要となる。本発明による方法によれば、非常に高い蒸着率を実現することができる。金属層に対するスパッタリング工程とセラミック層に対するカスケードアーク工程との組合せは、適用率において莫大な効果を生ずる。例えばTiOは、チタンジエチルを前駆体として、かつ酸素をプラズマカスケード発生源のプラズマ内へ反応ガスとして適用することにより生成される。
【0008】
本発明の更なる詳細によれば、蒸着材料は、プロセスチャンバー内の少なくとも1つのプラズマ発生源外方のプラズマへ供給される。
【0009】
これにより、蒸着材料が発生源を内面的に汚染することを防止させることができる。この目的のため、例えばこの蒸着材料の少なくとも1つの揮発性混合物は、蒸着の目的のために、プラズマに対して供給されることができる。この場合、機能層の化合物は、機能的材料の揮発性混合物の供給を調整することにより、うまく制御されることができる。適用される要素のガス状混合物の蒸気圧を調整することにより、適用される層の化合物が制御される。この揮発性混合物はまた、蒸着される材料内で分解されることができる前駆材料を含んでいても良い。
【0010】
本発明の更なる詳細によれば、第2の蒸着工程は、スパッタリング、中空陰極スパッタリング、任意的にボートを用いる蒸着、e−ビームのような、PECVD、CVD、PVDからなる組から選択され、任意的にイオンプロセス、イオンめっき、マイクロウェーブ蒸着、ICP(誘導結合プラズマ)、平行板PECVD、任意的にハニカム電極構造、のようなものが組合わされる。
【0011】
これらの蒸着工程のそれぞれは、特殊な用途および材料のための独自の利点を有している。目的とする層によって、プラズマカスケード発生源を使用して行なわれるPECVDに加え、1以上のこれらの工程が設けられることができる。
【0012】
本発明の効果的な詳細によれば、蒸着材料を有する少なくとも1つのスパッタリング電極が、プロセスチャンバー内に配置され、プラズマは、スパッタリング電極の蒸着材料により基材をスパッタリングするように、スパッタリング電極と接触する。
【0013】
これにより、蒸着材料は、上述した利点を保持しつつ基材上に簡単にスパッタリングされることができる。好ましくは、少なくとも1つのスパッタリング電極は、前記少なくとも1つの蒸着材料および他の蒸着される材料のうちの少なくとも一部を含む。この電極内の異なる材料の重量割合を調整することにより、機能層の化学成分をうまく制御することができる。必要に応じて、所望の金属の粉末混合物を開始材料として用いることさえできる。
【0014】
さらに、前記少なくとも1つのスパッタリング電極は、例えば、機能層のキャリア材料のみを含んでも良い。例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、または酸化ジルコニウムが用いられる。無論、意図する運搬体に対応する金属もまた、電極として用いても良い。この際、その材料の蒸着は、酸素を含むガス雰囲気中で行われる。さらに、例えば蒸着される機能的要素のガス状混合物は、例えば電極内に設けられた供給通路を経由して、プラズマ内に供給される。蒸着後、例えば水素流体内など、任意的に特殊なガス環境下において、機能層の後処理のために温度を高める加熱工程が行われる。
【0015】
本発明は、更に基材上に機能層を作成するための装置において、少なくとも1つのプラズマを発生させるプラズマカスケード発生源と、第1蒸着材料を各プラズマ内へ導入する手段と、プロセスチャンバー内において基材が前記プラズマと接触するような位置に基材の少なくとも一部を運搬および/または保持する基材位置決め手段と、前記プラズマカスケード発生源と同時に、前記基材上に少なくとも1つの第2蒸着材料を蒸着するように配置された第2蒸着発生源と、を備え、前記機能層は、触媒活性層を有さない、装置に関する。
【0016】
本装置において、異なる材料からなる機能層は、相対的に迅速に製造されることができ、広い表面上で高い均一性を有することができる。この場合、プラズマカスケード発生源の利用により、上述した利点が提供される。
【0017】
本発明の更なる詳細は、従属請求項に記載されている。本発明は、2つの典型的な実施の形態に基づき、後述する図面を参照して説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1および2は、2以上の材料を含む機能層を製造する装置を示す。図1および2に示す装置は、DC(直流)プラズマカスケード発生源3が取り付けられたPECVDプロセスチャンバー2を有している。このDCプラズマカスケード発生源3は、直流電圧によりプラズマPを発生するようになっている。本装置は、プロセスチャンバー2内においてプラズマ発生源3の流出口4の反対側に設けられ、1つの基材1を支持する基材ホルダー8を有している。
【0019】
図2に示すように、プラズマカスケード発生源3は、発生源チャンバー11内に配置された陰極10と、プロセスチャンバー2方向を向いて発生源3の側部に配置された陽極12とを有している。相対的に狭い通路13およびプラズマ流出口4を介して、発生源チャンバー11はプロセスチャンバー2内に連通している。本装置は、基材1とプラズマ流出口4との間の距離Lが、約200mm乃至約300mmとなるような寸法となるように構成されている。これにより、本装置は相対的に小型化された形状を有している。通路13は、互いに隔離されたカスケードプレート14および陽極12により形成されている。使用の際、プロセスチャンバー2は、相対的に低い圧力、とりわけ50mbar(5kPa)未満、好ましくは5mbar(0.5kPa)未満に保持される。無論、とりわけ使用圧力およびプロセスチャンバーの寸法は、なお蒸着が行えるようになっている必要がある。実際、本実施の形態によるプロセスチャンバー内の使用圧力は、この目的のためには少なくとも約0.1mbar(0.1kPa)必要であることが分かっている。このような使用圧力を得るために必要なポンプ手段は、図示されていない。例えば間に存在するアルゴンのような不活性ガスの燃焼により、発生源3の陰極10と陽極12との間にプラズマが発生される。発生源3内でプラズマが発生されている間、発生源チャンバー11内の圧力はプロセスチャンバー2内の圧力より高くなっている。発生源チャンバー内の圧力は、例えば実質的に大気圧であっても良く、0.5bar(50kPa)乃至1.5bar(150kPa)の範囲にある。プロセスチャンバー2内の圧力は、発生源チャンバー11内の圧力よりかなり低いため、発生したプラズマPの一部は、相対的に狭い通路7を介して、流出口4から基材1の表面と接触するようにプロセスチャンバー2内へ拡がるようにして拡散する。
【0020】
本装置は、発生源3の陽極12内でプラズマPへガスAの流れを供給するガス供給通路7を有している。このガスAは、例えば蒸着される機能材料を有していても良い。また、本装置は、プロセスチャンバー2内に配置されたスパッタリング電極6を有している。図において、スパッタリング電極6は、カスケード発生源3から一定距離を隔てて配置されている。しかしながら、この電極6は、カスケード発生源3の近傍またはこのカスケード発生源3と隣接して配置されていても良い。スパッタリング電極6は、基材上にスパッタリングされる、例えばキャリア材料からなる少なくとも1つの材料Bを含んでいる。このスパッタリング電極6は、使用の際、プラズマ発生源3により発生されるプラズマPが、スパッタリング電極6から基材1上へ材料Bをスパッタリングするように配置されている。この目的のため、スパッタリング電極6は、使用時に発生源3から基材1へ拡がるプラズマPを通すための同心状通路9を有する円筒体からなっている。スパッタリング目的のため、使用の際電極6は、プラズマイオンが電極6にぶつかり、電極材料Bを放出するような電圧の下におかれることができる。加えて、拡がるプラズマPのイオンの本質的に高い運動エネルギーに起因して、プラズマイオンは自然発生的に電極6にぶつかることができる。本実施の形態において、スパッタリング電極6およびガス供給通路7は、互いに分離されて示されている。加えて、ガス供給通路7およびスパッタリング電極は、プラズマPに対して実質的に同じ位置で材料AおよびBを供給するように、例えば一体として構成されることができる。
【0021】
図1および2に示す典型的な実施の形態の使用時に、材料AおよびBは、プロセスチャンバー2内に配置された基材1上に蒸着される。通路7から供給される材料Aは、発生源3から流出するプラズマPに沿って運搬され、基材1上に蒸着される。同時に、電極6からの材料Bは、スパッタリングにより基材1へ供給される。この方法により、材料AおよびBを含む機能層を基材1に対して非常に均一な形で適用することができる。プラズマカスケード発生源は、プラズマを発生させるために直流電圧下で作動するので、機能層は、単純に、蒸着の際に実質的な調節を行なわずに、一定の増加率で成長させることができる。これは、一定の調整が通常要求される場合において、HFプラズマ発生源の使用に勝る利点である。さらに、DCプラズマカスケード発生源3により、相対的に高い蒸着率を達成することができる。材料A、Bを蒸着する間、例えば蒸着の均一性を更に促進するため、基材1にDC、パルスDC、および/またはRFバイアスなどによる特定の電位が加えられる。加えて、基材1は、加熱手段の使用により(図示せず)習慣上知られた特定の処理温度に加熱されることができる。
【0022】
図3は、機能層が適用された織布を製造する装置の第2の典型的な実施の形態を示す。第2の実施の形態において、巻き上げ可能な長いシート状の基材101からなる基材織布上に、2列以上の材料を含む機能層を蒸着させるようになっている。本装置は、基材シート101が巻装された基材供給ローラ110を備えている。この供給ローラ110は、使用の際、シート101をプロセスチャンバー102へ供給するように配置されている。本装置は、プロセスチャンバー102から巻き上げられる基材101を排出する排出ローラを更に備えている。供給ローラ110とプロセスチャンバー102との間に、供給ローラ110から供給される基材101を変形させる一組の協働するローラ112が配置されている。協働する各ローラ112の外周部は、基材シート101と係合し、使用の際にローラ112がシート101にギザギザを入れるように係合歯を有している。任意的に、これらのローラは、例えば自動車用の窓を製造するためのコーティング部を有するフィルムなど平坦な基材織布が要求される場合、本装置内に設けられていなくても良い。このような窓は、フィルムをコーティングした結果、耐熱、反射防止、またはこれと同様の光学フィルタを有している。
【0023】
第2の典型的な実施の形態において、プロセスチャンバー102の両側にプレチャンバー109が配置されている。プロセスチャンバー102は、壁104によりプレチャンバー109から分離されている。プロセスチャンバー102の壁104は、プロセスチャンバー102とプレチャンバー109との間で基材シート101を移送するための通路105を有している。各通路105内において、2つの内側フィードスルーギザギザ状ローラ106が設けられ、ローラ106の外周部に、シート101のギザギザと係合する歯が設けられている。チャンバー102の壁104は、2つの内側フィードスルーギザギザ状ローラ106側へ拡がる旋回する閉鎖蓋108を更に有しており、これらの閉鎖蓋108は、ギザギザ状ローラ106とチャンバー壁104との間で良好な関わりを得るために設けられている。各プレチャンバー109は、チャンバー109を比較的低圧に保持するためのポンプ手段113を有している。また、各チャンバー109の外壁114は、外部からプレチャンバー109内へ基材シート101を移送するための通路115、およびプレチャンバー109内から外部へ基材シート101を移送するための通路115をそれぞれ有している。各通路115内において、互いに向い合って配置された2つの外側フィードスルーギザギザ状ローラ116が配置され、この外周部がシート101のギザギザと係合するようになっている。各プレチャンバー109は、閉鎖蓋108を更に有しており、これらの閉鎖蓋108は、外側フィードスルーギザギザ状ローラ116とチャンバーの外壁114との間で良好な関わりを得るために設けられている。最後に、各プレチャンバー109内に、中間ギザギザローラ117が配置され、この中間ギザギザローラ117は、外側フィードスルーローラ116を内側フィードスルーローラ106に対して機械的に連結する。シート101を外部からプロセスチャンバー102内に導入し、またはその反対に移送するためにフィードスルーローラ106、116により形成されるこの移送通路は、外気がほとんどプロセスチャンバー102に到達しないようにするため、相対的に堅固にシート101と接続している。このようにして、プロセスチャンバー102内の圧力は、外気圧と比較して相対的に低く保持されている。
【0024】
プロセスチャンバー102は、2つのプラズマP、P’をそれぞれ発生するように配置された2つのプラズマカスケード発生源103、103’を有している。また、このカスケード発生源は、使用の際、基材の両表面がプラズマP、P’と接触できるように、これら発生源103、103’は、それぞれプロセスチャンバー102内に供給される基材101の両外側の基材表面を向くように配置されている。各プラズマ発生源103、103’近傍において、蒸着される材料を各プラズマP、P’へ供給するガスシャワーヘッド120がプロセスチャンバー102内に配置されている。さらに、各プラズマ発生源103、103’近傍において、スパッタリング工程中に基材101上に材料を蒸着するための分離スパッタリング発生源121、121’が配置されている。プロセスチャンバー102は、チャンバーを所望の低圧に保持するためのポンプ手段119を更に有している。
【0025】
プロセスチャンバー102内において、各プラズマ発生源103、103’の反対側に、各プラズマ発生源P、P’に沿ってプロセスチャンバー102内へ供給する基材101を導くとともに、それを所望の温度に近づけるためおよび/または所望の温度に保持するための加熱可能な基材位置決めローラ118、118’が配置されている。このような位置決めローラ118、118’およびプラズマ発生源103、103’の構成により、プロセスチャンバー102内の基材シート101の両面に材料を蒸着させることができる。
【0026】
このような第2の実施の形態を実行する際、基材シート101は、供給ローラ110により、ローラの組112へ供給される。この際、シート101は、このローラの組112によりギザギザを形成される。次に、シート101は、図3の右側に示すプレチャンバー109aを介してプロセスチャンバー102内へ導入される。プロセスチャンバー102内において、一方の材料と他方の材料とが、一つの位置決めローラ118近傍でギザギザ状シート101の一側面に蒸着される。当該一方の材料の蒸着は、一のプラズマカスケード発生源103のプラズマPの影響下で行われるのが好ましい。スパッタリング発生源121は、同時に、前記他方の材料を基材シート101上に蒸着することができる。プラズマ発生源103とスパッタリング発生源121とによる材料の蒸着は、所望の化学的および形態的な機能層の特性を得るために、互いに単独で適用させることができる。
【0027】
一方の面に材料を蒸着した後、機能層を他方の面に蒸着するため、基材シート101の他方の面は、他方のプラズマ発生源103’およびスパッタリング発生源121’により同様にして処理される。シート101の処理の際、位置決めローラ118、118’は、シート101が所望の蒸着温度となるように、加熱手段(図示せず)により所望の処理温度とされる。処理の後、シート101は、プロセスチャンバー102から左側のプレチャンバー109bを介して排出され、排出ロール111により巻き取られる。
【0028】
第2の実施の形態は、直列工程によって機能層を製造するのに用いることができ、これは商業的観点から魅力的である。加えて、機能層の構成を上手く制御することができる。カスケード発生源103、103’の使用による利点は、既に述べられているとおりである。機能層を有するギザギザ状のシート101に対しては、追加の処理を容易に行なうことができる。波形またはギザギザを形成する一組のローラ112に代えて、平坦な回転ローラを使用することもできる。シート101に代えて、例えばPETからなるフィルムを用いることもできる。
【0029】
本発明は、上述した実施の形態に限定されないことは言うまでもない。後述する請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、様々な変更が可能である。
【0030】
例えば、基材は、例えば酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、および/または酸化ジルコニウムからなる酸化酸化金属および/または酸化半導体のような、キャリア材料からなっていても良い。また、基材は、キャリア材料を酸化できる材料からなっていても良い。後者の場合において、蒸着は、基材材料の酸化のための酸素を含む環境下で行なわれる。
【0031】
さらに、スパッタリング電極は、例えばプラズマに対して適用される、触媒活性成分の前記揮発性成分を導入する流体供給通路を有していても良い。
【0032】
スパッタリング陰極は、更に様々な態様の構成からなっていても良く、また例えば平面形状、管形状、U字形状、または凹形状をもつ陰極、またはこれらの形状あるいは他の形状を組合わせて構成されていても良い。
【0033】
また、蒸着されるキャリア材料は、基材の材料と同一であっても良く、これと異なっていても良い。
【0034】
さらに、揮発性混合物は、基材を蒸着するためにプロセスチャンバー内へ導入されても良い。加えて、このような揮発性混合物は、蒸着される材料が基材に到達する前に、この蒸着される材料を分解する少なくとも1つの前駆材料を含んでいても良い。この材料の分解は、例えば、自然発生的におよび/またはプラズマの影響下において発生しても良い。
【0035】
さらにまた、蒸着材料の化学材料が5cmを超える長さ、好ましくは10cmを超える長さ、更にとりわけ20cmを超える長さをもち、かつこれらの長さのばらつきは10%未満、とりわけ5%未満、更にとりわけ1%未満となるよう蒸着されても良い。これにより、非常に均一な機能層の構造を得ることができる。
【0036】
さらに、異なる形状からなる基材の異なる形式のものが用いられても良く、例えば様々な材料からなる硬質のおよび/または多孔質の基材が用いられても良い。
【0037】
さらにまた、使用前および使用後にスパッタリング電極を洗浄するために様々な方法が用いられても良く、例えば、時々適切な電圧を用いて電極の極性を反転させても良い。
【0038】
一般にスパッタリングでは、カスケードアークを用いて材料を蒸着させるよりも低い圧力が要求されるが、従来の圧力をかなり下回る圧力でカスケードアークを用いることによりこれら2つの工程をさらに結合することもできる。この目的のため、カスケード発生源内の拡張通路は、比較的狭い直径を有していても良い。発生源の開始の際、より高い開始圧力が用いられても良く、その後圧力が下方修正されても良い。また、蒸着チャンバー内において、いわゆるスキマーが用いられても良く、この場合ポンプの援助により、スキマー両側の圧力差が保持されることができる。スキマーは、プロセスチャンバー内において一種の隔膜または狭窄部である。スパッタリング工程は、例えばスキマーの低圧側に配置されても良く、他方カスケード発生源はスキマーの高圧側に配置されても良い。
【0039】
本発明は、上述した実施の形態に限定されないのは明らかであり、請求の範囲により画定される本発明の枠組み内において様々な変更が可能である。例えば、プラズマカスケード発生源に代えて、異なる形式のプラズマ発生源を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】2以上の材料を含む機能層を製造する装置の、第1の典型的な実施の形態を示す概略断面図。
【図2】図1に示す断面図におけるプラズマカスケード発生源の詳細を示す図。
【図3】本発明の第2の典型的な実施の形態を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能層を作成する方法において、
基材(1、101)が、プロセスチャンバー(2、102)内に導入される工程と、
少なくとも1つのプラズマ(P)が、例えばプラズマカスケード発生源のような、少なくとも1つのプラズマ発生源(3、103)により発生される工程と、
前記プラズマ(P)の影響下で、少なくとも1つの第1蒸着材料(A)を前記基材(1、101)上に蒸着させる工程と、
同時に、少なくとも1つの第2材料(B)が、第2の蒸着工程により前記基材に適用される工程と、を備え、
前記機能層は、触媒作用を有さない、方法。
【請求項2】
前記第1蒸着材料(A)は、前記プロセスチャンバー(2、102)内の前記少なくとも1つのプラズマ発生源(3、103)外方の前記プラズマ(P)へ供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1蒸着材料(A)の少なくとも1つの揮発性混合物が、蒸着のために前記プラズマ(P)に供給される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記揮発性混合物は、少なくとも1つの前駆材料を含み、この前駆材料は、前記材料が前記基材(1、101)に到達する前に、前記プロセスチャンバー(2、102)内で蒸着される前記材料を分解する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の蒸着工程は、スパッタリング、中空陰極スパッタリング、任意的にボートを用いる蒸着、e−ビームのような、PECVD、CVD、PVDからなる組から選択され、任意的にイオンプロセス、イオンめっき、マイクロウェーブ蒸着、ICP(誘導結合プラズマ)、平行板PECVD、任意的にハニカム電極構造、のようなものが組合わされる、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記蒸着材料(A、B)を有する少なくとも1つのスパッタリング電極(6)が、前記プロセスチャンバー(2)内に配置され、
前記プラズマ(P)は、前記スパッタリング電極(6)の前記蒸着材料(A、B)により基材(1)をスパッタリングするように、前記スパッタリング電極(6)と接触する、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記プラズマ(P)は、前記プラズマを前記スパッタリング電極(6)に接触させるように、少なくとも1つのスパッタリング電極(6)の少なくとも1つの通路内を少なくとも部分的に通過する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記スパッタリング電極(6)は、前記基材(1)に対して蒸着される前記蒸着材料(A、B)の圧縮粉末を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記基材(101)は、シート材料からなる、請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記基材(101)は、少なくとも前記基材(101)の異なる部分が常時前記プラズマ(P)と接触するように前記プロセスチャンバー(102)内で移動される、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記蒸着材料が前記プロセスチャンバー(102)内の前記基材(101)に蒸着される間、前記基材(101)は、外部環境から前記プロセスチャンバー(102)内へ供給され、かつ前記プロセスチャンバー(102)から外部環境へ送出される、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記基材(1、101)は、実質的に無孔であり、例えば金属板、合成樹脂シート、または合成樹脂フィルムのような、例えば金属または合成樹脂からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記基材(1、101)は、少なくとも1つのキャリア材料(B)からなる、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記基材(1、101)は、少なくとも1つの金属および/または合金からなる、請求項1乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記基材(1、101)は、波形状をもつ材料からなる、請求項1乃至14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記基材(1、101)は、実質的に多孔である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記蒸着材料(A、B)は、前記蒸着される材料の化学材料が5cmを超える長さ、好ましくは10cmを超える長さ、更にとりわけ20cmを超える長さをもち、かつこれらの長さのばらつきは10%未満、とりわけ5%未満、更にとりわけ1%未満となるよう蒸着される、請求項1乃至16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記基材(1、101)は、例えばDC、パルスDC、および/またはRFバイアスにより、特定の電位に調整されている、請求項1乃至17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記基材(1、101)は、特定の処理温度に調整されている、請求項1乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
基材上に機能層を作成するための装置において、
少なくとも1つのプラズマ(P)を発生させる、例えばプラズマカスケード発生源のような、少なくとも1つのプラズマ発生源(3、103)と、
第1蒸着材料(A)を各プラズマ(P)内へ導入する手段(6、7)と、
プロセスチャンバー(2、102)内において基材(1、101)が前記プラズマ(P)と接触するような位置に基材(1、101)の少なくとも一部を運搬および/または保持する基材位置決め手段(8、118)と、
前記プラズマ発生源と同時に、前記基材(1、101)上に少なくとも1つの第2蒸着材料(B)を蒸着するように配置された第2蒸着発生源と、を備え、
前記機能層は、触媒活性層を有さない、装置。
【請求項21】
前記第2蒸着発生源は、CVD発生源、PVD発生源、PECVD発生源のような、VD発生源からなる、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記第2蒸着発生源は、スパッタリング、中空陰極スパッタリング、任意的にボートを用いる蒸着、e−ビームのような、PECVD、CVD、PVDからなる組から選択された一つの蒸着工程を行なうため、あるいは任意的にイオンプロセス、イオンめっき、マイクロウェーブ蒸着、ICP(誘導結合プラズマ)、平行板PECVD、任意的にハニカム電極構造、を組合わせた蒸着工程を行なうために配置される、請求項20または21に記載の装置。
【請求項23】
前記第2蒸着発生源は、蒸着するための前記蒸着材料(A、B)を含む少なくとも1つのスパッタリング電極(6)を有し、
前記スパッタリング電極は、使用の際、少なくとも1つの前記プラズマ発生源(3)から発生される前記プラズマ(P)が、前記スパッタリング電極(6)から前記基材(1)上へ蒸着材料(A、B)をスパッタするように配置されている、請求項21に記載の装置。
【請求項24】
各スパッタリング電極(6)は、少なくとも1つの前記プラズマ発生源(3)の下流に配置され、
少なくとも1つのスパッタリング電極(6)は、前記プラズマ(P)が前記プラズマ発生源(3)から前記基材(1)へ通過することを許容する少なくとも1つのプラズマ通路を有している、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記スパッタリング電極(6)は、前記プラズマ発生源(3)と接している、請求項23または24に記載の装置。
【請求項26】
プラズマ(P)に対し、蒸着される材料を揮発性状態で供給する少なくとも1つの流体供給路(7、120)を更に備えた、請求項20乃至25のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
前記少なくとも1つのスパッタリング電極(6)は、前記流体供給路を有する、請求項23または26に記載の装置。
【請求項28】
少なくとも2つのプラズマ(P、P’)を発生させる少なくとも2つのプラズマカスケード発生源(103、103’)を更に備え、
これらのプラズマカスケード発生源(103、103’)および前記基材位置決め手段(118、118’)は、使用の際、基材(1、101)の両側が前記プラズマカスケード発生源(103、103’)から前記基材(101)両側の材料を蒸着するように発生された前記プラズマ(P、P’)と接するような位置に設けられている、請求項20に記載の装置。
【請求項29】
基材供給用の基材供給ローラー(110)と、基材排出用の排出ローラー(111)とを更に備え、
前記基材供給ローラー(110)は、プロセスチャンバー(102)への織布および/またはシートのようなものからなる基材が巻装され、
前記排出ローラー(111)は、プロセスチャンバー(102)からの織布および/またはシートのようなものからなる基材が巻装されている、請求項20に記載の装置。
【請求項30】
前記プロセスチャンバー(102)の壁(104)は、前記プロセスチャンバー(102)へ基材(101)を搬入するための、および/または前記プロセスチャンバー(102)から基材(101)を搬出するための、少なくとも1つの通路(105)を有する、請求項20に記載の装置。
【請求項31】
前記プロセスチャンバー壁(104)の少なくとも1つの通路(105)の少なくとも一部は、向い合って配置されたフィードスルーローラ(106)により形成され、このフィードスルーローラ(106)は、使用の際、基材(101)の搬送のためにこれらフィードスルーローラ(106)間に配置される基材(101)の一部と接触する、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記基材供給ローラー(110)からの拡げられた前記基材(101)を変形させる変形手段(112)を更に備えた、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記変形手段(112)は、前記基材(101)に波形状および/またはギザギザ形状を形成する、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記基材(1、101)上へ材料を蒸着するための手段を更に備えた、請求項20に記載の装置。
【請求項35】
前記基材(101)をスパッタリングするための少なくとも1つの分離スパッタリング発生源(121)を更に備えた、請求項20に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−515558(P2007−515558A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546867(P2006−546867)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000876
【国際公開番号】WO2005/061754
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(503007933)オーテーベー、グループ、ベスローテン、フェンノートシャップ (14)
【氏名又は名称原語表記】OTB GROUP B.V.
【Fターム(参考)】