説明

差動ドライバー回路の高速コモンモードフィードバック制御装置

出力バッファを迅速に安定化するシステム及び方法。差動駆動回路は、差動入力信号を受け取り、該入力信号に基づいて差動出力を生成する増幅段を備える。差動出力は、通常は電源の2分の1の値に基づいた対応するコモンモード(CM)電圧レベルを有する。コモンモード・フィードバックバッファ(CMFB)段は、CM電圧レベルの変化を検出し、当該CM電圧レベルを、超高速バス周波数に基づく超高速整定時間内の所望の値に回復させる。CMFB段は、単一のデバイスだけを備えたトポロジーを利用する。1つの実施形態において、この単一デバイスは、トランスインピーダンス段として利用されるNMOSトランジスタである。回路バイアス段及びCMFB段内のシャントキャパシタによって安定性が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路に関し、より詳細には、高速安定化出力バッファ用の効率的な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
極めて高速のネットワーク及びコンピュータバスにより帯域幅に対する需要が増え続けている。この需要を満足するため、差動信号を利用することにより高速シリアルバスアーキテクチャが改善されている。差動信号は、2つの別個の配線上で送られる2つの相補的信号を用いて情報を電気的に送信する。この技術は、オーディオ信号伝送などのアナログ信号と、周辺コンポーネントインターフェース(PCI)Expressシリアルリンクインタフェース及びユニバーサルシリアルバス(USB)インタフェース内などのデジタル信号との両方に用いることができる。
【0003】
差動信号の1つの利点は、受信器インタフェースが2つの送信データ信号間の差分を読み取り、接地に対する線電圧の影響を受けないので、送信器と受信器との間の接地電位差に関して許容差を含むことである。また、差動信号は、シングルエンドシステムの2倍の耐ノイズ性を提供するので、低電圧のモバイル電子デバイスと共に用いられる。差分信号は、線経路又は信号トレースの数を低減するのを助け、消費電力を低減する助けとなる。
差分信号は、差動ペアを含む差動増幅器又は差動駆動回路によって送信器と受信器との間で駆動される。相補型金属酸化膜半導体(CMOS)差動ペア上の入力デバイスが全てNMOS(N形金属酸化膜半導体)トランジスタであり、負荷がインダクタ又は抵抗の何れかである場合、コモンモード・フィードバックバッファ(CMFB)又はループもしくは増幅器は必要ではない。このタイプの差動ペアの出力抵抗は、インダクタ又は抵抗の低抵抗により下げられるので、このケースではCMFBは必要とされない。
しかしながら、NMOS又はPMOSトランジスタなどの高インピーダンストランスコンダクタに、PMOS又はNMOSトランジスタなどの高インピーダンス電流源をロードする場合には、CMBFが必要となる。トランスコンダクタのバイアス電流と負荷のバイアス電流との間の小さな差分は、出力ノードの高抵抗を乗じたときに大きな電圧振幅を誘起する可能性がある。
安定し予測可能な出力信号を得るために、第1に、CMFBは、コモンモード出力信号を固定であるが任意に選択された基準電圧に中心配置する必要がある。最大出力電圧振幅については、供給電圧の2分の1の値が好ましい。第2に、CMFBの帯域幅は、差動増幅器の帯域幅よりも大きくなければならない。この必要条件により、差動増幅器が高周波数入力信号に関しても予測可能な安定した出力応答を有することが確実になる。第3に、CMFBのコモンモード入力電圧範囲は、差動増幅器の差動出力範囲よりも大きいことが必要である。また、第4に、CMFBの差動入力範囲は、差動増幅器の差動出力範囲よりも大きくなければならない。
低電圧差分信号(LVDS)を利用する従来の通信バスプロトコルは、イネーブルCMFBが数百μ秒以内に整定されることを必要とする。LVDSと類似の技術を利用した新規のバスインタフェースは、バス上でより高い周波数を必要とする。従って、CMFBは、対応する差動データ転送速度を維持するために、数ナノ秒のようなより高速な速度で整定する必要がある。CMFBのこの新規の整定時間要件は、電流設計によっては適合されない。典型的には遙かに緩慢な整定時間により、信号安定性問題を解消するのに役立つ。電流回路トポロジーを維持するために、新規の速度に到達するのにかなりのパワーを必要とする可能性がある。しかしながら、帯域幅が制限され、出力に結合できる未知の負荷に関して安定性問題が生じる。
上記の点を考慮して、高速安定化出力バッファ用の効率的な方法及びシステムが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
出力バッファを迅速に安定化するシステム及び方法。1つの実施形態において、差動駆動回路は、差動入力信号を受け取り、該入力信号に基づいて差動出力を生成する増幅段を備える。差動出力は、所定の基準コモンモード(CM)電圧レベルに基づいて対応するCM電圧レベルを有する。コモンモード・フィードバックバッファ(CMFB)段は、所定の基準CM電圧レベルからのCM電圧レベルの変化を検出し、当該CM電圧レベルを、所定の高速バス周波数に基づく超高速整定時間内の基準CM電圧レベルに回復させる。CMFB段は、単一のデバイスだけを備えたトポロジーを利用する。1つの実施形態において、この単一デバイスは、トランスインピーダンス段として利用されるNMOSトランジスタである。他の実施形態は、単一CMOSトランジスタ又は単一バイポーラ接合トランジスタを利用することができる。回路バイアス段及びCMFB段内のシャントキャパシタによって安定性が提供される。
【0005】
また、通信バス上にシリアルデータを極めて迅速に提供する方法も企図される。差動出力データは、通常は電源の値の2分の1である関連するコモンモード(CM)電圧レベでルでバス上に伝送される。この方法は、CM電圧レベルの変化を検出する段階と、CM電圧レベルを、所定の高速バス周波数に対応する回復時間内の所望の値にまで回復させる段階と、を含む。
【0006】
これら及び他の実施形態は、以下の説明及び添付図面を参照すると理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】差分信号を利用する通信バスの1つの実施形態を例示する一般図である。
【図2】コモンモードフィードバックを備えた差動駆動回路の1つの実施形態を例示する一般図である。
【図3】高速差動データ転送速度のコモンモードフィードバックを備えた差動駆動回路の1つの実施形態を例示する一般図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、種々の修正及び代替形態が可能であるが、各図面においては特定の実施形態が例証として示されており、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、図面及びこれに対する詳細な説明は、開示された特定の形態に本発明を限定するものではなく、その反対に、添付の請求項によって定義される本発明の精神及び範囲内にある全ての修正物、均等物、及び代替物を保護するものとする点は理解されたい。
【0009】
以下の説明において、本発明の理解を完全にするために多数の詳細事項が記載されている。しかしながら、当業者であれば、これらの特定の詳細事項がなくとも本発明を実施できる点は理解されたい。場合によっては、本発明を曖昧にするのを避けるために、公知の回路、構造、及び技術は詳細には示されていない。
【0010】
図1を参照すると、差分信号を利用する通信バス100の1つの実施形態が図示されている。この実施形態は、外部の送信器110及び受信器120内で共に必要とされる、機能ブロック、制御ロジック、回路、及びインタフェースの全ての実施例を含んではいない。図示の実施形態は、簡単な例証を目的としている。
【0011】
コモン接地信号法に対する代替形態は、差動電圧信号法であり、ここでは各ビットは、第1のペア信号+112と信号−114、及び第2のペア出力+122と出力−124など、接地絶縁されたペア線間の電圧レベル差により表される。通信バス100は、1つの線とコモン接地との間の電圧を利用していない。シリアルポート信号変換器に平行線は、入力信号102を送給することができる。シリアライザ/デシリアライザ(SerDes)と呼ばれる回路を用いて、入力信号102に入力データを供給することができる。SerDesは、一般に高速通信で使用される機能ブロックのペアである。これらのブロックは、シリアルデータとパラレルインタフェースとの間のデータを各方向に変換する。差分信号法は、各信号に加わる容量性及び誘導性作用の両方を制限し、外部電気干渉に起因して信号が損なわれる傾向を抑制し、これによりシリアルネットワークの実用上の距離を有意に改善することができる。
【0012】
送信器110は、信号+112と信号−114との間の差動電圧信号を駆動するために差動増幅器を含むことができる。同様に、受信器120は、出力+122と出力−124との間の差動電圧信号を駆動するために差動増幅器を含むことができる。信号経路112、114、122、及び124は、接地基準と電気的にコモンではない場合がある。
【0013】
これらの線上で電圧信号と接地との間のあらゆる関係を断ち切ると、信号電圧に加わる唯一の大きな容量は、キャパシタ130a〜130bなど、2つの信号線間に存在するクロスカップルキャパシタンスとすることができる。本明細書で使用されるように、参照数字とその後に続く文字により表される要素は、数字単独で総称することができる。例えば、キャパシタ130aから130dは、キャパシタ130で総称的に表すことができる。接地基準を介した2つの信号線間の容量経路は直列の2つのキャパシタンスであるので、信号線と接地基準との間のキャパシタンスは、作用がかなり小さい可能性がある。例えば、信号+112から接地基準までの経路は、キャパシタ134を含む。次に、接地基準から信号−114までの継続経路はキャパシタ132を含む。この経路は、キャパシタ132及び134の直列組み合わせを含み、直列容量値は常に個々のキャパシタンスの何れかよりも小さい。
【0014】
更に、信号線112及び114と外部源による接地基準との間に誘起されるあらゆるノイズ電圧は無視することができる。この理由は、ノイズ電圧が信号線112及び114の両方に同等に誘起される可能性が高く、受信器120は、信号+112又は信号−114と接地基準との間の電圧ではなく、信号112及び114間の差動電圧にのみ応答することができるためである。通信バス100は、より長い配線距離及びAC電力配線からの電気的干渉のより高い電位が存在する産業用途においてコモン接地基準以外のネットワークにおいてより広く用いることができる。
【0015】
信号112及び114に対する高周波プロトコルを提供するのに使用される設計パラメータは、広範囲の用途で有用になるように標準化する必要がある。開放型システム間相互参照モデル(OSIモデル)は、階層化通信及びコンピュータネットワークプロトコル設計の要約説明である。これは、開放型システム間相互参照(OSI)構想の一部として策定された。そのほとんどの基本形式では、OSIモデルは、ネットワークアーキテクチャを7つの階層に分けており、該階層には、上から下に、アプリケーション層、プレゼンテーション層、セッション層、トランスポート層、ネットワーク層、データリンク層、及び物理層がある。
【0016】
1つの階層は、概念的に類似した機能の集合であり、その上の層にサービスを提供し、その下の層からサービスを受け取る。例えば、ネットワークにわたるエラー無し通信を提供する層は、その上のアプリケーションにより必要とされるパスを提供すると共に、次の下側層を呼び出して、パスのコンテンツを構成するパケットを送信及び受信する。
【0017】
物理層は、デバイスの電気的及び物理的仕様を定義する。詳細には、物理層は、デバイスと物理的媒体との間の関係を定義する。この関係は、ピンのレイアウト、電圧、ケーブル仕様、ハブ、リピータ、ネットワークアダプタ、又はその他を含むことができる。
【0018】
データリンク層は、ネットワークエンティティ間でデータを転送し、物理層で生じる可能性があるエラーを検出し場合によっては修正するための機能的手続き的手段を提供する。ネットワーク層は、トランスポート層により要求されるサービス品質を維持しながら、転送元から1つ又はそれ以上のネットワークを介して宛先に可変長データシーケンスを転送するための機能的手続き的手段を提供する。
【0019】
より高い周波数及びより高いデータスループットの要求を満足する通信バス100の最新のネットワークアーキテクチャを策定することができる。例えば、1つの実施として、Standard Microsystems Corpによって提供されるMedia Local Bus(MLB)が物理層及びリンク層用に策定されている。MLBは、コモンハードウェアインタフェース及びソフトウェア・アプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)ライブラリを標準化するよう特別に設計された、プリント基板上(on−PCB)又はチップ間通信バスである。この標準化により、最小限の労力で、1つ又はそれ以上のアプリケーションがネットワークデータにアクセスすること、又は他のアプリケーションと通信することを可能にすることができる。MLBはまた、既存のネットワークアーキテクチャから次世代アーキテクチャへの簡単な移行経路を提供するよう設計される。MLBは、同期ストリームデータ、非同期パケットデータ、制御メッセージデータ、及びアイソクロナスデータ伝送を含む、全てのネットワークデータ伝送法をサポートする。
【0020】
ネットワーク帯域幅は、ネットワーク媒体の実際の周波数限界を指す。シリアル通信において、帯域幅は、バイナリビット/送信語のようなデータ量と、データ速度すなわち語数/秒との積とすることができる。ネットワーク帯域幅の標準測定単位はビット/秒すなわちbpsである。
【0021】
シリアルデータは、1つの実施形態において、信号+112のように、全てのデータビットを同じ配線チャンネルを通って送信器110から受信器120に伝送することを必要とするので、ネットワーク配線上で潜在的に高周波信号を必要とする。語長に応じて32ビット又は64ビットと、パリティチェック及び信号同期に必要な他のビットの両方のデータは、毎秒数千回の速度で更新することができる。シリアルデータネットワーク周波数は、電波領域に入り始めており、簡単な配線がアンテナとして機能し始めて、誘導性及び容量性リアクタンスによりペア線が伝送線として機能し始める。これらの寄生特性は、信号伝送を歪め、速度を遅延させる可能性がある。
【0022】
上述のような最新のネットワークアーキテクチャの高速要件は、安定性を大きく損なうことなくこれらの高周波数に適合することなどの設計上の課題をもたらす。特に、コモンモードフィードバックバッファ(CMFB)を備えた差動駆動回路の設計には、最大の注意を払う必要がある。例えば、高速の寄生特性に加えて、1つの実施形態において、信号線112及び114は、複数の駆動回路又は送信器110に結合することができる。特定の送信器110は、線112及び114上への信号の駆動を待機することができ、従って、少なくともCMFB段内の回路は、トライステート出力を提供するためにターンオフされる。線112及び114上の差動出力の駆動許可を受け取ると、この特定の送信器110の少なくともCMFB段内の回路は、イネーブルにされた時間から、信号ライン112及び114のコモンモード電圧レベルを提供するような整定状態への到達時間までの極めて迅速な応答を必要とする場合がある。1つの実施形態において、この高速応答は、最新のネットワークアーキテクチャに起因して、これまでの数百マイクロ秒の値から僅か数ナノマイクロ秒まで短縮することができる。
【0023】
ここで図2を参照すると、コモンモードフィードバックを備えた差動駆動回路200の一般的な図の1つの実施形態が示される。図1を再度参照すると、駆動回路200は、送信器110又は受信器120の出力回路内で利用することができる。駆動回路200の簡易図は、当業者にはよく知られた多くの既知の回路トポロジー及び技術により実施することができる。1つの実施形態において、コモンモード基準電圧信号Vcmref234がフィードバック増幅器230に供給される。また、Vcm232のような、コモンモードノードの電圧レベルをフィードバック増幅器230に供給することができる。コモンモードノードは、1つの実施形態では1キロオームのような同じ値を有することができる2つの直列抵抗210及び220の間にある。電流源202は、対応する回路に電流を供給し、カレントミラー又は他のトポロジーにより実施することができる。入力信号202は、スイッチ204及び206を介して電流源202からどのノードに電流を供給するかを決定するのに用いることができ、スイッチ204及び206は、既知のトランジスタトポロジーにより実施することができる。
【0024】
従来の設計では、増幅器230、抵抗210及び抵抗220により形成されるコモンモードフィードバックループ又はCMFBは、出力線212及び214上の差動データ転送速度よりも遙かに遅くなるように設計されており、多くの安定性問題を解消する助けとなる。駆動回路200がイネーブルにされた時間から、時間ノード232が所定のコモンモード電圧レベルに整定される時間まで測定された典型的な整定時間は、数百マイクロ秒である。
【0025】
しかしながら、上記で概略的に説明されたMLBのような最新の通信バスアーキテクチャは、5ナノ秒以内の整定時間のように、CMFBにより遙かに迅速な速度を必要とする。例えば、駆動回路200は、CMFBを介して線212及び214又はバス上のコモンモード電圧を制御し、イネーブル時には、CMFBは5ns以内に整定することを必要とする。フィードバック増幅器230用の従来の回路は通常、5個又はそれ以上のトランジスタを必要としており、駆動回路設計において大きな占有面積を占める。また、フィードバック増幅器230の現在の実装においてかなりのパワーが使用されない限り、出力に付加することができる未知の負荷に関して帯域幅は制限され、安定性問題が生じることになる。
【0026】
ここで図3を参照すると、高速差動データ転送速度に対するコモンモードフィードバックを備えた差動駆動回路300の1つの実施形態が図示される。再度図1を参照すると、駆動回路300は、送信器110又は受信器120の出力回路内で利用することができる。駆動回路段としても機能する入力又は増幅段380は、PMOSトランジスタ312及びNMOSトランジスタ320を含む。トランジスタ312及び320の両方は、差動入力信号とすることができる入力信号を受け取り、線382及び384上に差動出力を生成する。1つの実施形態において、トランジスタ312及び320は、Hブリッジの半部分とすることができ、ここで他の半部分は簡単にするために図示されておらず、Hブリッジは、当該技術分野でよく知られている。コモンモード・フィードバックバッファ(CMFB)段370は、トランジスタ段として構成されるNMOSトランジスタ350、トランジスタ350のゲート端子上にある抵抗352及びキャパシタ354、並びに抵抗210及び220を含む。
【0027】
駆動回路300の残りの回路は、バイアス及び安定化の目的で用いることができる。電流源302及び310は、当業者には公知のあらゆるトポロジーにより実装することができる。これらの電流源及びPMOSトランジスタ304、並びにPMOSトランジスタ306及び308により実施される電流ミラーは、所定の電流値をその下の回路に提供する。PMOSトランジスタ306及び308の出力ドレインにより供給される電流値は、これらのトランジスタのトランジスタ幅のようなサイズに基づいて互いの整数倍とすることができる。1つの実施形態において、PMOSトランジスタは、PMOSトランジスタ306の幅の4倍とすることができ、従って、PMOSトランジスタ308は、トランジスタ206よりも4倍多くの電流を供給する。
【0028】
MLB仕様のような、超高速ネットワークバスアーキテクチャにより必要とされる高速応答を得るために、単一デバイスのトランスインピーダンス段を用いて、コモンモード電圧を制御することができる。1つの実施形態において、単一デバイスのトランスインピーダンス段は、トランジスタ350のような単一NMOSトランジスタを利用する。別の実施形態において、PMOSトランジスタ又はバイポーラ接合トランジスタを利用することができる。他の実施形態において、他の単一のトランジスタ構成を利用して、高速ネットワークバスアーキテクチャにより必要とされる高速応答を提供することができる。NMOSトランジスタ350並びに抵抗210及び220の組み合わせは、駆動回路300にCMFB回路を提供する。イネーブルにされると、NMOSトランジスタ350のゲート端子は、直列抵抗352を通じて抵抗210及び220の中心でコモンモード電圧Vcm372を検知する。
【0029】
トランジスタ350のゲート端子の電圧ポテンシャルは、トランジスタ350のゲート−ソースターンオン電圧Vgsに維持される。しかしながら、このVgs値は、駆動回路300にとって望ましいコモンモード電圧ではない場合がある。従って、レプリカ回路を用いて、抵抗210及び220の中心で所望のコモンモード電圧レベルVcmref370を提供するようにすることができる。この値から僅かな変動が存在する可能性があり、従って、このノード電圧はVcm372として表される点に留意されたい。1つの実施形態において、レプリカ回路は、NMOSトランジスタ360、電流シンク332、338、及び340、並びに電流源304、306、及び308の組み合わせを含む。このレプリカ回路を用いて、直列抵抗を通る十分な電流を生成し、抵抗210及び220間のノードにおける電圧レベルVcm372を提供する電圧低下をもたらすことができる。
【0030】
このレプリカ回路は、直流電流を生成し、高速応答を必要としない。従って、レプリカ回路は、よく知られた従来の電圧フィードバックトポロジーにより実施することができる。トランジスタ350及び360は、極めて類似の幾何学的幅及びチャンネル長、ターンオン閾値電圧レベル、及びその他など、互いに一致することが必要ではなくてもよい。一致したトランジスタ350及び360の接地基準リターンは、電流シンク332、338、及び340の接地基準から分離される点に留意されたい。トランジスタ350及び360は、接地基準Vsspwr374を利用し、電流シンクは接地基準Vss376を利用する。
【0031】
トランジスタ350を通る電流は、数ミリアンペアのような極めて大きな量に達する可能性があり、接地ピンVsspwr374に対し有意な電圧低下をもたらす可能性がある。PMOSトランジスタ306及び308を含む電流ミラーは、PMOSトランジスタ304と組み合わせると、その後に電流引き込みの量を増大させることができ、トランジスタ360のドレイン端子は、電圧及び電流の両方の増大を生じることができる。従って、トランジスタ350により生成される接地ピンVsspwr374に対しての有意な電圧低下は、トランジスタ360により検知することができる。これに応じて、抵抗334の両端の電圧低下が増大する可能性があり、シングルエンドの差動増幅器330は、駆動回路300のNMOSトランジスタのVgs値よりも大きな電圧を出力することができ、電流シンク340は、より強くターンオンし、より多くの電流を引き込むことができる。次に、抵抗352の両端の電圧低下が増大する可能性があり、これによりVcm232の電圧レベルは、ノードVssを基準とした所望のコモンモード電圧レベルVcmref370に類似した値に低下させて戻すことができる。この補償は、CMFBのイネーブル時間よりも時間を要す可能性があり、数ナノ秒とすることができるが、エラーは、20mVの範囲のようにかなり小さくなる。
【0032】
理想的には、増幅器は、所与の周波数範囲に対してほぼ一定のゲインを有し、該ゲインは、更に高い周波数でロールオフする。フィードバック増幅器の過渡応答及び周波数応答は、当該増幅器の極位置特性に関連付けられる。非理想的な増幅器は通常、1つよりも多い極を有する。駆動回路300のレプリカ回路により提供される負のフィードバックは、駆動回路300に振動を引き起こす正のフィードバックの意図しない生成を回避し、オーバーシュート及びリンギングを制御するために、周波数補償を必要とする場合がある。
【0033】
極は、統合抵抗及び容量リアクタンスに起因して増幅が3db低下する周波数応答曲線のポイントである。最終的に、各極は、90°の相遅れをもたらし、或いは、出力信号は、このポイントにて入力信号よりも90°遅延する。増幅器のゲイン段内のキャパシタンスにより、出力信号は、生成される各極において入力信号よりも90°だけ遅れるようになる。極分割は、周波数の最も低い極(通常は入力極)を低周波数に移行させ、次の周波数の極(通常は出力極)を高周波数に移行させることを意図してキャパシタが導入されるタイプの周波数補償である。この極移行は、増幅器の安定性を向上させ、速度低下の代償としてステップ応答を改善させる。
【0034】
図3の駆動回路は2つの極を有することができる。第1の極は、トランジスタ350のゲート−ソース寄生キャパシタンスにより部分的に提供され、第2の極は、トランジスタ350の出力すなわちドレイン端子に結合されたキャパシタ318により提供される。抵抗352の両端にキャパシタ354を配置すると、トランジスタ350のゲート−ソース寄生キャパシタンスにより形成される極、並びにトランジスタ350のオン状態抵抗並びに抵抗352、210、及び220により形成される直列抵抗が相殺される。出力がディスエーブルにされたときにこのノードを接続解除することができないので、キャパシタ354は、抵抗210及び220の中心に接続することができず、出力ノード上の左側に追加のキャパシタンスを有することは望ましくない。
【0035】
駆動回路300は、ダイオード接続のNMOSトランジスタ350を含むことにより差動増幅器に高速整定CMFBを提供することができ、ドレイン端子は、トランジスタ320のオン状態抵抗、抵抗220、及び抵抗352を介してゲート端子に接続される。駆動回路300の安定性は、説明したレプリカ回路及びキャパシタ354により提供することができる。
【0036】
上記の実施形態についてかなり詳細に説明してきたが、当業者であれば、上記開示を深く理解すれば、多数の変形形態及び修正形態が明らかになるであろう。以下の請求項は、このような変形形態及び修正形態を全て包含するものとして解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0037】
110:送信器
120:受信器
210及び220:抵抗
300:差動駆動回路
312:PMOSトランジスタ
320:NMOSトランジスタ
350:NMOSトランジスタ
352:抵抗
354:キャパシタ
370:コモンモード・フィードバックバッファ(CMFB)段
380:入力又は増幅段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関連する所定のコモンモード(CM)電圧レベルを有する差動出力を生成するよう構成された駆動回路段と、
唯一のnmosトランジスタから成る前記駆動回路段に結合されたコモンモード・フィードバックバッファ(CMFB)と、
を備えた差動駆動回路において、
そこにおいてnmosトランジスタが、ゲート端子を介して予め定められたCM電圧レベルおよびCMノード電圧レベルの違いを検出し、予め定められたCM電圧レベルにドレイン端子を介してCMノード電圧レベルを回復するよう構成される、nmosトランジスタ。
【請求項2】
CMFBステージの唯一のnmosトランジスタは、ダイオードを接続されたトランジスタであり、前記駆動回路段内の入力nmosトランジスタのオン抵抗に結合されたドレイン端子を有するトランジスタであり、前記オン抵抗は前記CMノードに結合される第1の抵抗に結合されており、前記トランジスタが第2のレジスタに連結するゲート端子であり、そこにおいて、第2のレジスタは、前記CMノードに連結し、
第1の接地基準に結合されたソース端子を有する、請求項1に記載の差動駆動回路。
【請求項3】
前記差動駆動回路は更に、前記第1の接地基準に結合されたソース端子を有するレプリカトランジスタを含むバイアス段を更に備え、前記レプリカトランジスタは、前記唯一のnmonトランジスタの一致するトランジスタ特性を有する、請求項2に記載の差動駆動回路。
【請求項4】
前記バイアス段が更に、前記レプリカトランジスタに供給するよりも前記唯一のnmonトランジスタにより大きな電流量を供給するよう構成された電流源用回路を含む、請求項3に記載の差動駆動回路。
【請求項5】
前記バイアス段は更に、
前記nmosレプリカトランジスタ及び前記電流源を介して前記CMFB段により所定の電流引き出し閾値を検出し、
前記所定の電流引き出し閾値の検出に応答して、前記CMノードの電圧レベルを前記所定のCM電圧レベルにまで回復させる、
ように構成される、請求項4に記載の差動駆動回路。
【請求項6】
前記バイアス段は更に、同じ基準レベル値であるが前記第1の接地基準と異なる第2の接地基準に結合された電流シンク用の回路を含む、請求項4に記載の差動駆動回路。
【請求項7】
前記CMFB段は更に、前記第2のレジスタを短絡しているコンデンサから成り、そこにおいて、コンデンサが、前記の唯一のnmosトランジスタのソースに通じるゲート寄生静電容量によって形成されるポールをキャンセルする、請求項4に記載の差動駆動回路。
【請求項8】
CMFBステージは更に、前記差動の出力および前記CMノードの第1の差動の信号および前記CMノード間の第2のレジスタ間の第3のレジスタと前記入力nmosトランジスタのドレイン端子とを具備し、そこにおいて、第3のレジスタは、前記第1のレジスタと同じインピーダンスを有する、請求項7に記載の差動駆動回路。
【請求項9】
関連する予め定められた一般のモード(CM)電圧レベルを有する差動の出力を生成するように構成される送信機と;
差動の出力を受信するように構成されるレシーバと;
送信機の差動の出力をレシーバに連結している一つ以上のデータ・ラインから成るバスを備え;
送信機は、唯一のnmosトランジスタを備える一般のモード・フィードバック・バッファ(CMFB)から形成され、そこにおいて、唯一のnmosトランジスタは、ゲート端子を介して予め定められたCM電圧レベルおよびCMノード電圧レベルの違いを検出し;
予め定められたCM電圧レベルにドレイン端子を介してCMノード電圧レベルを回復する、バス通信システム。
【請求項10】
CMFBステージの唯一のnmosトランジスタは、ダイオードを接続されたトランジスタであり、
前記ドライバ段の中で入力nmosトランジスタのon−resistanceに連結し、on−resistanceが、前記CMノードに連結する第1のレジスタに連結するドレイン端子と、
前記CMノードに連結する第2のレジスタに連結するゲート端子と、
そして、第1の接地基準に連結するソース端子を備える、請求項9に記載のバス通信システム。
【請求項11】
差動駆動装置が、前記第1の接地基準に連結するソース端子を有するレプリカnmosトランジスタを含むバイアス・ステージから形成され、レプリカnmosトランジスタは、前記の唯一のnmosトランジスタのマッチしているトランジスタ特性を有する、請求項10に記載のバス通信システム。
【請求項12】
電流源用の回路が設けられたバイアス・ステージで、前記レプリカnmosトランジスタより前記唯一のnmosトランジスタに対するより大きな電流量を供給するように構成される、請求項11に記載のバス通信システム。
【請求項13】
バイアス・ステージが、CMFB段階までに前記レプリカnmosトランジスタおよび前記電流源を介して予め定められた電流閾値を検出し; 予め定められた電流閾値を検出することに応答して、予め定められたCM電圧レベルにCMノード電圧レベルを回復するよう構成される、請求項12に記載のバス通信システム。
【請求項14】
バイアス・ステージが、第1の接地基準と異なる第2の接地基準に連結する電流シンク用の回路から構成される、請求項12に記載のバス通信システム。
【請求項15】
前記第2のレジスタを短絡しているコンデンサを含むCMFBステージで、コンデンサは、前記わずか1つのnmosトランジスタのソースに通じるゲート寄生静電容量によって形成されるポールをキャンセルする、請求項12に記載のバス通信システム。
【請求項16】
CMFBステージが、前記差動の出力および前記CMノードの第1の差動の信号および前記CMノード間の第2のレジスタ間の第3のレジスタと前記入力nmosトランジスタのドレイン端子とを備え、第3のレジスタは、前記第1のレジスタと同じインピーダンスを有する、請求項15に記載のバス通信システム。
【請求項17】
関連する予め定められた一般のモード(CM)電圧レベルを有する差動の出力を生成し;
一般のモード・フィードバック・バッファ(CMFB)ステージの中でわずか1つのnmosトランジスタのゲート端子を介して予め定められたCM電圧レベルおよびCMノード電圧レベルの違いを検出し;
ドレイン端子を介して、前記唯一のnmosトランジスタを、CMノードの電圧レベルを予め定められたCM電圧レベルに回復する、差動の信号を駆動する方法。
【請求項18】
CMFBステージの唯一のnmosトランジスタは、ダイオードを接続されたトランジスタであり、前記駆動回路段内の入力nmosトランジスタのオン抵抗に結合されたドレイン端子を有するトランジスタであり、前記オン抵抗が前記CMノードに結合される第1の抵抗に結合されており、前記トランジスタが、前記CMノードに連結している第2のレジスタに連結するゲート端子と、第1の接地基準に結合されたソース端子を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の接地基準に結合されたソース端子を有するレプリカnmosトランジスタを更に備え、該レプリカnmosトランジスタが、前記唯一のnmosトランジスタの一致するトランジスタ特性を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記レプリカnmosトランジスタに供給するよりも前記唯一のnmosトランジスタにより大きな電流量を供給する段階を更に含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−518968(P2012−518968A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552125(P2011−552125)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025208
【国際公開番号】WO2010/099183
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(500361180)スタンダード マイクロシステムズ コーポレーション (14)
【Fターム(参考)】