説明

差圧測定器の校正システム及び差圧測定器の校正方法

【課題】差圧測定器を効率的に校正可能な差圧測定器の校正システムを提供する。
【解決手段】差圧測定器3の校正システム40であって、圧力発生装置4によって複数の設定値の圧力を加えられた第1の圧力測定器1が検出した圧力の複数の検出値、及び圧力発生装置4によって複数の設定値の圧力を加えられた第2の圧力測定器2が検出した圧力の複数の検出値を収集する収集回路41と、複数の設定値と、第1の圧力測定器1が検出した複数の検出値と、の差に基づき、第1の圧力測定器1が検出する圧力の検出値の第1の補正式を決定する第1の補正式決定部45aと、複数の設定値と、第2の圧力測定器2が検出した複数の検出値と、の差に基づき、第2の圧力測定器2が検出する圧力の検出値の第2の補正式を決定する第2の補正式決定部45bと、を備える、差圧測定器の校正システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力測定技術に係り、差圧測定器の校正システム及び差圧測定器の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調システムにおいては、パイプ内を流れる流体の流量を、流量測定バルブで測定し、管理している。流量測定バルブは、弁の上流及び下流における圧力の差圧と、弁の開き具合と、を測定し、これらを所定の算出式に代入することにより、気体の流量を算出している(例えば、特許文献1参照。)。差圧の測定には、2つの圧力測定器を備える差圧測定器が用いられている。正確な差圧を測定するためには、差圧測定器が備える2つの圧力測定器を正確に校正する必要がある。個々の圧力測定器の校正には、設定値に近似する大きさの圧力を付与可能な校正装置が用いられている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−115271号公報
【特許文献2】特開平8−68713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
差圧測定器に含まれる個々の圧力測定器の校正は、迅速且つ正確になされることが望まれている。そこで、本発明は、少なくとも第1の圧力測定器及び第2の圧力測定器を備える差圧測定器を効率的に校正可能な差圧測定器の校正システム及び差圧測定器の校正方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、(a)第1の圧力測定器及び第2の圧力測定器を備える差圧測定器の校正システムであって、(b)圧力発生装置によって複数の設定値の圧力を加えられた第1の圧力測定器が検出した圧力の複数の検出値、及び第1の圧力測定器に圧力を加える圧力発生装置と同一の圧力発生装置によって複数の設定値の圧力を加えられた第2の圧力測定器が検出した圧力の複数の検出値を収集する収集回路と、(c)複数の設定値と、第1の圧力測定器が検出した複数の検出値と、の差に基づき、第1の圧力測定器が検出する圧力の検出値の第1の補正式を決定する第1の補正式決定部と、(d)複数の設定値と、第2の圧力測定器が検出した複数の検出値と、の差に基づき、第2の圧力測定器が検出する圧力の検出値の第2の補正式を決定する第2の補正式決定部と、を備える、差圧測定器の校正システムが提供される。
【0006】
本発明の態様によれば、(a)第1の圧力測定器及び第2の圧力測定器を備える差圧測定器の校正方法であって、(b)同一の圧力発生装置を用いて、第1及び第2の圧力測定器に複数の設定値の圧力を加えることと、(c)第1の圧力測定器が検出した圧力の複数の検出値を収集することと、(d)第2の圧力測定器が検出した圧力の複数の検出値を収集することと、(e)複数の設定値と、第1の圧力測定器が検出した複数の検出値と、の差に基づき、第1の圧力測定器が検出する圧力の検出値の第1の補正式を決定することと、(f)複数の設定値と、第2の圧力測定器が検出した複数の検出値と、の差に基づき、第2の圧力測定器が検出する圧力の検出値の第2の補正式を決定することと、を含む、差圧測定器の校正方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、差圧測定器を効率的に校正可能な差圧測定器の校正システム及び差圧測定器の校正方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る校正システムの模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る第1の圧力測定器の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る圧力発生装置の模式図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る校正システムの模式図である。
【図5】本発明の比較例1に係る校正システムの模式図である。
【図6】本発明の比較例2に係る校正システムの模式図である。
【図7】本発明の比較例に係る圧力の設定値の組み合わせを示す第1の表である。
【図8】本発明の実施の形態に係る圧力の設定値を示す第1の表である。
【図9】本発明の比較例に係る圧力の設定値の組み合わせを示す第2の表である。
【図10】本発明の実施の形態に係る圧力の設定値を示す第2の表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、第1の実施の形態に係る第1の圧力測定器1及び第2の圧力測定器2を備える差圧測定器3の校正システム40は、圧力発生装置4によって複数の設定値の圧力を加えられた第1の圧力測定器1が検出した圧力の複数の検出値、及び第1の圧力測定器1に圧力を加える圧力発生装置4と同一の圧力発生装置4によって複数の設定値の圧力を加えられた第2の圧力測定器2が検出した圧力の複数の検出値を収集する収集回路41を備える。さらに、第1の実施の形態に係る校正システム40は、複数の設定値と、第1の圧力測定器1が検出した複数の検出値と、の差に基づき、第1の圧力測定器1が検出する圧力の検出値の第1の補正式を決定する第1の補正式決定部45aと、複数の設定値と、第2の圧力測定器2が検出した複数の検出値と、の差に基づき、第2の圧力測定器2が検出する圧力の検出値の第2の補正式を決定する第2の補正式決定部45bと、を備える。
【0011】
図2に示すように、第1の圧力測定器1は、導入孔11及び空気孔31dが設けられたケース31aと、ケース31a内に配置されたダイアフラム31fと、を備える。ケース31aの内部は、ダイアフラム31fによって、導入孔11が設けられた側の空間と、空気孔31dが設けられた側の空間と、に仕切られている。導入孔11が設けられた側のケース31a内の空間には、導入孔11から、第1の圧力測定器1の圧力測定対象の気体又は液体である流体が導入される。
【0012】
空気孔31dが設けられた側のケース31a内の空間には、空気孔31dを覆うように、半導体静圧センサ31cが配置されている。シリコンチップからなる静圧センサ31cは、ダイアフラムからなる感圧部と、感圧部に設けられた歪ゲージと、を備える。歪ゲージは、シリコンからなるダイアフラムに不純物イオンを注入することにより形成される。歪ゲージには、リード端子31bが接続されている。
【0013】
静圧センサ31cの感圧部のダイアフラム31fと対向する面には、導入孔11から導入された流体の圧力が、ダイアフラム31f及び封入液31eを介して加えられる。また、静圧センサ31cの感圧部の空気孔31dと対向する面には、大気圧が加えられる。これにより、静圧センサ31cの感圧部は、両面に加わる圧力の差圧に従って変形する。静圧センサ31cの感圧部が変形すると、感圧部に設けられた歪ゲージも変形し、電気抵抗値が変化する。したがって、リード端子31bを介して、静圧センサ31cの感圧部に設けられた歪ゲージの電気抵抗値を測定することにより、静圧センサ31cに加わる圧力を測定することが可能である。
【0014】
なお、図2においては、第1の圧力測定器1が感圧素子としてダイアフラムを備える静圧センサ31cを有する例を示したが、第1の圧力測定器1は、圧電体や、薄膜トランジスタからなる感圧素子を備えていてもよい。
【0015】
図1に示す第2の圧力測定器2は、図2に示した第1の圧力測定器1と同様の構成を有するが、これに限定されず、第2の圧力測定器2についても、圧電体や、薄膜トランジスタからなる感圧素子を備えていてもよい。
【0016】
図1に示す圧力発生装置4は、パイプ15、16及び減圧弁6を介して、高圧流体供給源5から高圧の流体の供給を受ける。圧力発生装置4は、例えば図2に示すように、パイプ16中の流体の圧力を設定値に調整する圧力調整部21と、圧力調整部21で圧力を調整された流体の圧力の実測値を検出する圧力検出部22と、設定値と実測値との差に基づき、圧力調整部21にフィードバック制御をかける比較制御部23と、を備える。このような構成を備えることにより、圧力発生装置4は、パイプ17から、設定値に近似する圧力の流体を放出する。
【0017】
図1に示すように、パイプ17は途中で二手に分岐しており、一方は第1の圧力測定器1の図2に示した導入孔11に、他方は図1に示す第2の圧力測定器2の導入孔に接続される。これにより、圧力発生装置4で発生した圧力が、第1の圧力測定器1と、第2の圧力測定器2と、の両方にほぼ同時に加えられる。
【0018】
第1の実施の形態に係る校正システム40は、圧力発生装置4で発生させる圧力の設定値を制御する外部機器制御部43をさらに備える。外部機器制御部43は、図2に示した圧力発生装置4の圧力調整部21を制御する。ここでは、例として、圧力発生装置4で発生させる圧力の設定値が、100kPa、500kPa、及び800kPaであるとする。また、図1に示す外部機器制御部43は、圧力発生装置4に発生させた圧力の設定値100kPa、500kPa、及び800kPaを、設定値記憶装置44に保存する。
【0019】
収集回路41は、設定値100kPa、500kPa、及び800kPaの圧力を受けた第1の圧力測定器1が検出した圧力の検出値を、第1の圧力測定器1に接続されたASIC等からなる第1の出力回路33aから収集し、ランダムアクセスメモリ等を備える検出値記憶装置42に保存する。また、収集回路41は、設定値100kPa、500kPa、及び800kPaの圧力を受けた第2の圧力測定器2が検出した圧力の検出値を、第2の圧力測定器2に接続されたASIC等からなる第2の出力回路33bから収集し、検出値記憶装置42に保存する。
【0020】
したがって、検出値記憶装置42には、設定値100kPaに対する第1の圧力測定器1による圧力の検出値、設定値500kPaに対する第1の圧力測定器1による圧力の検出値、設定値800kPaに対する第1の圧力測定器1による圧力の検出値、設定値100kPaに対する第2の圧力測定器2による圧力の検出値、設定値500kPaに対する第2の圧力測定器2による圧力の検出値、及び設定値800kPaに対する第2の圧力測定器2による圧力の検出値が保存される。
【0021】
第1の補正式決定部45aは、設定値記憶装置44に保存されている圧力の設定値と、検出値記憶装置42に保存されている第1の圧力測定器1による圧力の検出値と、を比較し、第1の圧力測定器1による圧力の検出値の第1の補正式を算出する。例えば、第1の圧力測定器1による圧力の検出値が設定値よりも1%高い場合、第1の補正式決定部45aは、第1の圧力測定器1による圧力の検出値を1%低くする第1の補正式を算出する。第1の補正式決定部45aは、算出した第1の補正式を、差圧測定器3の第1の出力回路33aが備える第1の補正情報記憶装置34aに書き込む。これにより、差圧測定器3は、第1の実施の形態に係る校正システム40による校正後、配管等に設置され、第1の圧力測定器1が検出した圧力の検出値を、第1の補正情報記憶装置34aに保存されている第1の補正式で補正して、第1の圧力測定器1による圧力の補正された検出値を出力する。
【0022】
なお、第1の補正式決定部45aは、第1の圧力測定器1が検出した圧力の検出値に乗じる第1の補正係数を算出し、算出した第1の補正係数を、差圧測定器3の第1の補正情報記憶装置34aに書き込んでもよい。この場合、差圧測定器3は、第1の実施の形態に係る校正システム40による校正後、第1の圧力測定器1が検出した圧力の検出値に第1の補正係数を乗じて、第1の圧力測定器1による圧力の補正された検出値を出力する。
【0023】
第2の補正式決定部45bは、設定値記憶装置44に保存されている圧力の設定値と、検出値記憶装置42に保存されている第2の圧力測定器2による圧力の検出値と、を比較し、第2の圧力測定器2による圧力の検出値の第2の補正式を算出する。第2の補正式決定部45bは、算出した第2の補正式を、差圧測定器3の第2の出力回路33bが備える第2の補正情報記憶装置34bに書き込む。これにより、差圧測定器3は、第1の実施の形態に係る校正システム40による校正後、配管等に設置され、第2の圧力測定器2が検出した圧力の検出値を、第2の補正情報記憶装置34bに保存されている第2の補正式で補正して、第2の圧力測定器2による圧力の補正された検出値を出力する。
【0024】
なお、第2の補正式決定部45bは、第2の圧力測定器2が検出した圧力の検出値に乗じる第2の補正係数を算出し、算出した第2の補正係数を、差圧測定器3の第2の出力回路33bが備える第2の補正情報記憶装置34bに書き込んでもよい。この場合、差圧測定器3は、第1の実施の形態に係る校正システム40による校正後、第2の圧力測定器2が検出した圧力の検出値に第2の補正係数を乗じて、第2の圧力測定器2による圧力の補正された検出値を出力する。
【0025】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る校正システム40を用いれば、1つの圧力発生装置4を用いて、差圧測定器3の第1の圧力測定器1が検出する圧力の検出値と、第2の圧力測定器2が検出する圧力の検出値と、を校正することが可能となる。これにより、仮に圧力発生装置4が発生させる圧力の値が、設定値に対して誤差を有していたとしても、第1の圧力測定器1による圧力の補正された検出値と、第2の圧力測定器2による圧力の補正された検出値と、の差を算出する際に、当該誤差が消去される。そのため、第1の実施の形態に係る校正システム40で校正された差圧測定器3を用いれば、校正時の圧力発生装置4の精度に影響されずに、正確な差圧を検出することが可能となる。
【0026】
(第2の実施の形態)
図4に示す第2の実施の形態に係る校正システム140は、差圧測定器3の第1の補正情報記憶装置34aに第1の実施の形態で説明した第1の補正式が保存され、第2の補正情報記憶装置34bに第2の補正式が保存された後、差圧測定器3によって測定される差圧の精度を判定する機能を有し、図1に示した第1の実施の形態に係る校正システム40の構成要件に加えて、設定差圧算出部52、検出差圧算出部51、及び精度判定部53をさらに備える。
【0027】
図4に示す設定差圧算出部52は、設定値記憶装置44に保存されている圧力の設定値どうしの組み合わせに基づいて、差圧の設定値を算出する。例えば設定差圧算出部52は、設定値100kPaの圧力どうしの組み合わせによる差圧の設定値0kPaと、設定値800kPaの圧力及び設定値500kPaの圧力の組み合わせによる差圧の設定値300kPaと、設定値800kPaの圧力及び設定値100kPaの圧力の組み合わせによる差圧の設定値700kPaと、を算出する。
【0028】
差圧測定器3の第1の補正情報記憶装置34aに第1の補正式が保存され、第2の補正情報記憶装置34bに第2の補正式が保存された後、収集回路41は、設定値100kPa、500kPa、及び800kPaの圧力を受けた第1の圧力測定器1が検出した圧力の第1の補正式で補正された検出値を、第1の出力回路33aから収集し、検出値記憶装置42に保存する。また、収集回路41は、設定値100kPa、500kPa、及び800kPaの圧力を受けた第2の圧力測定器2が検出した圧力の第2の補正式で補正された検出値を、第2の出力回路33bから収集し、検出値記憶装置42に保存する。
【0029】
検出差圧算出部51は、検出値記憶装置42に保存されている、第1の圧力測定器1による圧力の補正された検出値と、第2の圧力測定器2による圧力の補正された検出値と、の組み合わせに基づいて、設定差圧算出部52が算出した差圧の設定値に対応する差圧の検出値を算出する。例えば、検出差圧算出部51は、設定値100kPaに対する第1の圧力測定器1による圧力の補正された検出値と、設定値100kPaに対する第2の圧力測定器2による圧力の補正された検出値と、の組み合わせに基づいて、差圧の設定値0kPaに対応する差圧の検出値を算出する。また、検出差圧算出部51は、設定値800kPaに対する第1の圧力測定器1による圧力の補正された検出値と、設定値500kPaに対する第2の圧力測定器2による圧力の補正された検出値と、の組み合わせに基づいて、差圧の設定値300kPaに対応する差圧の検出値を算出する。さらに、検出差圧算出部51は、設定値800kPaに対する第1の圧力測定器1による圧力の補正された検出値と、設定値100kPaに対する第2の圧力測定器2による圧力の補正された検出値と、の組み合わせに基づいて、差圧の設定値700kPaに対応する差圧の検出値を算出する。
【0030】
精度判定部53は、差圧の設定値と、差圧の検出値と、を比較し、第1及び第2の補正式を有する差圧測定器3の精度を判定する。例えば、差圧の設定値と、差圧の検出値と、の差異が、所定の閾値以内であれば、精度判定部53は、第1及び第2の補正式を有する差圧測定器3の精度は所定の基準を満たすと判定する。これに対し、差圧の設定値と、差圧の検出値と、の差異が、所定の閾値より大であれば、精度判定部53は、第1及び第2の補正式を有する差圧測定器3の所定の基準を満たさないと判定する。したがって、第2の実施の形態に係る校正システム140を用いれば、差圧測定器3が第1及び第2の補正式を有したことにより、所望の測定精度を得たか否かを判定することが可能となる。
【0031】
(比較例1)
図5に示すように、比較例1に係る校正システム240は、第1の圧力発生装置204Aによって複数の設定値の圧力を加えられた第1の圧力測定器1が検出した圧力の複数の検出値と、第1の圧力発生装置204Aとは異なる第2の圧力発生装置204Bによって複数の設定値の圧力を加えられた第2の圧力測定器2が検出した圧力の複数の検出値を収集する収集回路241を備える。
【0032】
第1の圧力発生装置204A及び第2の圧力発生装置204Bのそれぞれの構成は、例えば図2で説明した第1の実施の形態に係る圧力発生装置4と同様である。図5に示す第1の圧力発生装置204Aで発生した圧力は、パイプ217Aを介して、第1の圧力測定器1に加えられる。また、第2の圧力発生装置204Bで発生した圧力は、パイプ217Bを介して、第2の圧力測定器2に加えられる。
【0033】
比較例1に係る外部機器制御部243は、第1の圧力発生装置204A及び第2の圧力発生装置204Bのそれぞれで複数回発生させる圧力の設定値を制御する。ここでは、例として、第1の圧力発生装置204Aで発生させる圧力の設定値は、100kPa、500kPa、及び800kPaであるとする。また、第2の圧力発生装置204Bで発生させる圧力の設定値も、100kPa、500kPa、及び800kPaであるとする。さらに、外部機器制御部243は、第1の圧力発生装置204A及び第2の圧力発生装置204Bに発生させた圧力の設定値を、設定値記憶装置244に保存する。
【0034】
比較例1に係る収集回路241は、第1の圧力発生装置204Aから100kPa、500kPa、及び800kPaの設定値の圧力を受けた第1の圧力測定器1が検出した圧力の検出値を、第1の出力回路33aから収集し、検出値記憶装置242に保存する。また、収集回路241は、第2の圧力発生装置204Bから100kPa、500kPa、及び800kPaの設定値の圧力を受けた第2の圧力測定器2が検出した圧力の検出値を、第2の出力回路33bから収集し、検出値記憶装置242に保存する。
【0035】
比較例1に係る第1の補正式決定部245aは、設定値記憶装置244に保存されている圧力の設定値と、検出値記憶装置242に保存されている第1の圧力測定器1による圧力の検出値と、を比較し、第1の圧力測定器1による圧力の検出値の比較例1に係る第1の補正式を算出する。第1の補正式決定部245aは、算出した比較例1に係る第1の補正式を、差圧測定器3の第1の出力回路33aが備える第1の補正情報記憶装置34aに書き込む。これにより、差圧測定器3は、比較例1に係る校正システム240による校正後、配管等に設置され、第1の圧力測定器1が検出した圧力の検出値を、第1の補正情報記憶装置34aに保存されている比較例1に係る第1の補正式で補正して、第1の圧力測定器1による圧力の補正された検出値を出力する。
【0036】
第2の補正式決定部245bは、設定値記憶装置244に保存されている圧力の設定値と、検出値記憶装置242に保存されている第2の圧力測定器2による圧力の検出値と、を比較し、第2の圧力測定器2による圧力の検出値の比較例1に係る第2の補正式を算出する。第2の補正式決定部245bは、算出した比較例1に係る第2の補正式を、差圧測定器3の第2の出力回路33bが備える第2の補正情報記憶装置34bに書き込む。これにより、差圧測定器3は、比較例1に係る校正システム240による校正後、配管等に設置され、第2の圧力測定器2が検出した圧力の検出値を、第2の補正情報記憶装置34bに保存されている比較例1に係る第2の補正式で補正して、第2の圧力測定器2による圧力の補正された検出値を出力する。
【0037】
ここで、第1の圧力発生装置204Aの精度と、第2の圧力発生装置204Bの精度と、の間に差がある場合、第1の圧力測定器1による圧力の補正された検出値と、第2の圧力測定器2による圧力の補正された検出値と、の差を算出する際に、精度の差が消去されない。そのため、比較例1に係る校正システム240で校正された差圧測定器3を用いると、校正時の第1の圧力発生装置204Aの精度と、第2の圧力発生装置204Bの精度と、の差に影響され、正確な差圧を検出することが困難となり得る。
【0038】
(比較例2)
図6に示す比較例2に係る校正システム340は、差圧測定器3の第1の補正情報記憶装置34aに比較例1に係る第1の補正式が保存され、第2の補正情報記憶装置34bに比較例1に係る第2の補正式が保存された後、差圧測定器3によって測定される差圧の精度を判定する機能を有し、図5に示した比較例1に係る校正システム240の構成要件に加えて、設定差圧算出部252、検出差圧算出部251、及び精度判定部253をさらに備える。
【0039】
比較例2において、第1の圧力発生装置204Aで発生させる圧力の設定値は、1回目が100kPa、2回目及び3回目が800kPaであるとする。また、第2の圧力発生装置204Bで発生させる圧力の設定値は、1回目が100kPa、2回目が500kPa、3回目が100kPaであるとする。
【0040】
比較例2に係る設定差圧算出部252は、第1の圧力発生装置204Aで発生させる1回目の圧力の設定値100kPaと、第2の圧力発生装置204Bで発生させる1回目の圧力の設定値100kPaと、の差圧の設定値0kPaを算出する。また、設定差圧算出部252は、第1の圧力発生装置204Aで発生させる2回目の圧力の設定値800kPaと、第2の圧力発生装置204Bで発生させる2回目の圧力の設定値500kPaと、の差圧の設定値300kPaを算出する。さらに、設定差圧算出部252は、第1の圧力発生装置204Aで発生させる3回目の圧力の設定値800kPaと、第2の圧力発生装置204Bで発生させる3回目の圧力の設定値100kPaと、の差圧の設定値700kPaを算出する。
【0041】
第1の補正情報記憶装置34aに比較例1に係る第1の補正式が保存され、第2の補正情報記憶装置34bに比較例1に係る第2の補正式が保存された後、収集回路241は、1回目が100kPa、2回目及び3回目が800kPaである設定値の圧力を受けた第1の圧力測定器1が検出した圧力の第1の補正式で補正された検出値を、第1の出力回路33aから収集し、検出値記憶装置42に保存する。また、収集回路41は、1回目が100kPa、2回目が500kPa、3回目が100kPaである設定値の圧力を受けた第2の圧力測定器2が検出した圧力の第2の補正式で補正された検出値を、第2の出力回路33bから収集し、検出値記憶装置42に保存する。
【0042】
比較例2に係る検出差圧算出部251は、設定値100kPaに対する第1の圧力測定器1による1回目の圧力の検出値と、設定値100kPaに対する第2の圧力測定器2による1回目の圧力の検出値と、の組み合わせに基づいて、差圧の設定値0kPaに対応する差圧の検出値を算出する。また、検出差圧算出部251は、設定値800kPaに対する第1の圧力測定器1による2回目の圧力の検出値と、設定値500kPaに対する第2の圧力測定器2による2回目の圧力の検出値と、の組み合わせに基づいて、差圧の設定値300kPaに対応する差圧の検出値を算出する。さらに、検出差圧算出部251は、設定値800kPaに対する第1の圧力測定器1による3回目の圧力の検出値と、設定値100kPaに対する第2の圧力測定器2による3回目の圧力の検出値と、の組み合わせに基づいて、差圧の設定値700kPaに対応する差圧の検出値を算出する。
【0043】
精度判定部253は、差圧の設定値と、差圧の検出値と、を比較し、比較例1に係る第1及び第2の補正式を有する差圧測定器3の精度を判定する。以上説明したように、比較例2に係る校正システム340を用いると、差圧測定器3の精度を判定する際に、第1の圧力発生装置204Aで発生させる圧力の設定値と、第2の圧力発生装置204Bで発生させる圧力の設定値と、を複雑に組み合わせる必要があり得る。
【0044】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施の形態及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、図6に示す比較例2に係る校正システム340では、図7に示すような差圧を得るために、第1の圧力発生装置204A及び第2の圧力発生装置204Bのそれぞれが9回、合計すれば18回、圧力を発生させる必要がある。これに対し、図4に示す第2の実施の形態に係る校正システム140を用いれば、図8に示すように、単一の圧力発生装置4が7回のみ、圧力を発生させれば、図7に示した圧力の組み合わせと同じ圧力の組み合わせによる差圧を、図1に示す設定差圧算出部52及び検出差圧算出部51が算出する。したがって、図4に示す第2の実施の形態に係る校正システム140を用いれば、差圧測定器3による圧力の検出回数を減らすことが可能となる。
【0045】
また、図6に示す比較例2に係る校正システム340では、図9に示すような9種類の差圧の設定値を得るために、第1の圧力発生装置204A及び第2の圧力発生装置204Bのそれぞれが9回、合計すれば18回、圧力を発生させる必要がある。これに対し、図4に示す第2の実施の形態に係る校正システム140を用いれば、図10に示すように、単一の圧力発生装置4が5回のみ、圧力を発生させればよい。以上説明したような圧力の検出回数の削減は、差圧測定器の高精度な調整を行う際に、静圧の組み合わせが複雑化したり、静圧の測定数が増えたりした場合に、より効果を発揮する。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0046】
1 第1の圧力測定器
2 第2の圧力測定器
3 差圧測定器
4 圧力発生装置
5 高圧流体供給源
6 減圧弁
11 導入孔
15、16、17、217A、217B パイプ
21 圧力調整部
22 圧力検出部
23 比較制御部
31a ケース
31b リード端子
31c 半導体静圧センサ
31d 空気孔
31e 封入液
31f ダイアフラム
33a 第1の出力回路
33b 第2の出力回路
34a 第1の補正情報記憶装置
34b 第2の補正情報記憶装置
40、140、240、340 校正システム
41、241 収集回路
42、242 検出値記憶装置
43、243 外部機器制御部
44、244 設定値記憶装置
45a、245a 第1の補正式決定部
45b、245b 第2の補正式決定部
51、251 検出差圧算出部
52、252 設定差圧算出部
53、253 精度判定部
204A 第1の圧力発生装置
204B 第2の圧力発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の圧力測定器及び第2の圧力測定器を備える差圧測定器の校正システムであって、
圧力発生装置によって複数の設定値の圧力を加えられた前記第1の圧力測定器が検出した前記圧力の複数の検出値、及び前記圧力発生装置によって前記複数の設定値の圧力を加えられた前記第2の圧力測定器が検出した前記圧力の複数の検出値を収集する収集回路と、
前記複数の設定値と、前記第1の圧力測定器が検出した前記複数の検出値と、の差に基づき、前記第1の圧力測定器が検出する圧力の検出値の第1の補正式を決定する第1の補正式決定部と、
前記複数の設定値と、前記第2の圧力測定器が検出した前記複数の検出値と、の差に基づき、前記第2の圧力測定器が検出する圧力の検出値の第2の補正式を決定する第2の補正式決定部と、
を備える、差圧測定器の校正システム。
【請求項2】
前記圧力の複数の設定値の組み合わせに基づき、差圧の設定値を算出する設定差圧算出部と、
前記第1の圧力測定器が検出し、前記第1の補正式で補正された前記圧力の複数の検出値、及び前記第2の圧力測定器が検出し、前記第2の補正式で補正された前記圧力の複数の検出値の組み合わせに基づき、差圧の検出値を算出する検出差圧算出部と、
前記差圧の設定値と、前記差圧の検出値と、の差に基づき、前記差圧測定器の測定精度を判定する精度判定部と、
を更に備える、請求項1に記載の差圧測定器の校正システム。
【請求項3】
前記差圧測定器が第1及び第2の補正情報記憶装置を備え、
前記第1の補正式決定部が、前記第1の補正式を前記差圧測定器の前記第1の補正情報記憶装置に書き込み、
前記第2の補正式決定部が、前記第2の補正式を前記差圧測定器の前記第2の補正情報記憶装置に書き込む、
請求項1又は2に記載の差圧測定器の校正システム。
【請求項4】
前記第1の補正式決定部が、前記第1の圧力測定器が検出する圧力の検出値に乗じられる第1の補正係数を算出し、
前記第2の補正式決定部が、前記第2の圧力測定器が検出する圧力の検出値に乗じられる第2の補正係数を算出する、
請求項1又は2に記載の差圧測定器の校正システム。
【請求項5】
前記差圧測定器が第1及び第2の補正情報記憶装置を備え、
前記第1の補正式決定部が、前記第1の補正係数を前記差圧測定器の前記第1の補正情報記憶装置に書き込み、
前記第2の補正式決定部が、前記第2の補正係数を前記差圧測定器の前記第2の補正情報記憶装置に書き込む、
請求項4に記載の差圧測定器の校正システム。
【請求項6】
第1の圧力測定器及び第2の圧力測定器を備える差圧測定器の校正方法であって、
同一の圧力発生装置を用いて、前記第1及び第2の圧力測定器に複数の設定値の圧力を加えることと、
前記第1の圧力測定器が検出した前記圧力の複数の検出値を収集することと、
前記第2の圧力測定器が検出した前記圧力の複数の検出値を収集することと、
前記複数の設定値と、前記第1の圧力測定器が検出した前記複数の検出値と、の差に基づき、前記第1の圧力測定器が検出する圧力の検出値の第1の補正式を決定することと、
前記複数の設定値と、前記第2の圧力測定器が検出した前記複数の検出値と、の差に基づき、前記第2の圧力測定器が検出する圧力の検出値の第2の補正式を決定することと、
を含む、差圧測定器の校正方法。
【請求項7】
前記圧力の複数の設定値の組み合わせに基づき、差圧の設定値を算出することと、
前記第1の圧力測定器が検出し、前記第1の補正式で補正された前記圧力の複数の検出値、及び前記第2の圧力測定器が検出し、前記第2の補正式で補正された前記圧力の複数の検出値の組み合わせに基づき、差圧の検出値を算出することと、
前記差圧の設定値と、前記差圧の検出値と、の差に基づき、前記差圧測定器の測定精度を判定することと、
を更に含む、請求項6に記載の差圧測定器の校正方法。
【請求項8】
前記差圧測定器が第1及び第2の補正情報記憶装置を備え、
前記第1の補正式を前記差圧測定器の前記第1の補正情報記憶装置に書き込むことと、
前記第2の補正式を前記差圧測定器の前記第2の補正情報記憶装置に書き込むことと、
を更に含む、請求項6又は7に記載の差圧測定器の校正方法。
【請求項9】
前記第1の補正式を決定することにおいて、前記第1の圧力測定器が検出する圧力の検出値に乗じられる第1の補正係数が算出され、
前記第2の補正式を決定することにおいて、前記第2の圧力測定器が検出する圧力の検出値に乗じられる第2の補正係数が算出される、
請求項6又は7に記載の差圧測定器の校正方法。
【請求項10】
前記差圧測定器が第1及び第2の補正情報記憶装置を備え、
前記第1の補正係数を前記差圧測定器の前記第1の補正情報記憶装置に書き込むことと、
前記第2の補正係数を前記差圧測定器の前記第2の補正情報記憶装置に書き込むことと、
を更に含む、請求項9に記載の差圧測定器の校正方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の圧力測定器に複数の設定値の圧力を加えることにおいて、前記第1及び第2の圧力測定器に複数の設定値の圧力を同時に加える、請求項6乃至10のいずれか1項に記載の差圧測定器の校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−247296(P2012−247296A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118997(P2011−118997)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】