説明

幹細胞侵入防止薬

本発明は、フタレイン系色素化合物を有効成分とする骨髄由来の血管幹細胞又は炎症性細胞の血管壁侵入防止剤、血管再狭窄防止剤、血管炎又は心筋炎の予防又は治療剤、及びフタレイン系色素化合物を含有する樹脂で被覆するか又は当該樹脂で作製された血管治療用器具等に関する。
本発明の薬剤を用いれば、血管形成術等により生じる血管の再狭窄を効果的に防止することができ、また、有効な予防法や治療法の無い血管炎、心筋炎、動脈硬化病変の進展と崩壊、微小血管性虚血性疾患等が防止可能である。また、本発明の血管治療用器具を用いて血管形成術等の医学的処置を行うことにより、血管再狭窄の発生を効果的に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、血液中を流れている骨髄由来の血管幹細胞又は炎症性細胞の血管壁又は心臓などの臓器への侵入を防止することにより、血管形成術やバイパス術後の再狭窄、血管狭窄等を伴う各種血管病変及びそれに伴う虚血性疾患の予防又は治療に有用な薬剤及び当該薬剤を被覆した血管治療用器具に関する。
【背景技術】
近年、血管形成術やバイパス術等に基づく機械的血管損傷により、血管壁、特に内膜が肥厚し、再狭窄が発生することが、臨床的にも動物実験でも確認され問題となっている。従来、斯かる再狭窄は、中膜に存在している平滑筋細胞が内膜内へ遊走増殖し、膠原繊維化して引き起こされると考えられ、これまでに抗血液凝固剤や血小板凝集抑制剤、細胞増殖抑制剤等の薬剤が臨床で検討されてきたが、いずれも十分な効果は得られていないのが現状である。
また、血管壁内膜の肥厚や管腔狭窄を伴う血管病によって、しばしば高血圧症、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、四肢の壊死が引き起こされる。斯かる血管病としては、例えば川崎病、大動脈炎症候群、動脈硬化性病変(プラーク)等が知られている。
炎症性増殖性血管病である川崎病は、日本人に多く、幼児や小児に発病するという特徴を有し、冠動脈瘤が高率に生じ、続いて狭窄がおこり狭心症や心筋梗塞を発症する悲劇的な疾患である(Kawasaki T:Kawasaki Disease Nankoudou Co,Tokyo,1988,p68−70;Kato H:J Pediatr 1986,108:923−928)。冠動脈瘤は血管壁の炎症による破壊でおこり、狭窄は内膜をふくむ高度の線維性肥厚による(Uchida Y:Coronary Angioscopy,Futura Publishing Co,NY,2000,P125−129;Ishikawa H:Circulation 1991,84(Suppl II):15)と考えられているが、有効な予防法や治療法は知られていない。
炎症性増殖性血管病である大動脈炎症候群は、日本人の女性に多く発病する予防法や根治的治療法が無い血管病である。血管炎は太い血管のほとんどに起こり、冠動脈、大動脈、肺動脈、脳動脈、頚動脈などの狭窄を引き起こす。炎症は、外膜を主座とし、内膜肥厚が起こる。しかしながら、内膜肥厚や狭窄の機序は不明であり(Ishikawa K:Circulation 1978,57:27−30)、やはり有効な予防法や治療法は知られていない。
また、同様の血管炎として、巨細胞動脈炎、拘縮性関節炎に伴う動脈炎などがある(Barkley BH:Circulation 1973,43:1014)。
動脈硬化性病変(プラーク)は、内膜の線維性肥厚と脂質の沈着により狭窄が起こると考えられ、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性末梢動脈症を引き起こす。
また、冠微小循環障害による狭心症は、閉経期の女性に多く発病するが、この疾患では、冠細動脈の中膜の平滑筋が増加し肥厚が起こっていることや内皮機能障害があることが明らかにされている(Cannon ROI:Am J Cardiol,1988,61:1335−1349;Mohri M:Lancet,1998,351:1165−1169;Rosono JM:J Am Coll Cardiol,1996,28:1500−1505)。しかしながら、中膜平滑筋細胞がなぜ増加するのかそして肥厚がなぜ起こるのかについては不明であり、また、その予防法や治療法は確立されていない。
マクロファージや樹状細胞等の炎症性細胞も骨髄由来の分化細胞であるが、これらが血管壁内に侵入し、動脈硬化の進展に関与していることは以前からよく知られていた。最近では、流血中に存在する血管幹細胞が内腔から内膜に侵入し、血管形成術やバイパス術に伴う再狭窄や動脈硬化性病変の一因となっていることが明らかにされている(Sata M:Nature Medicine 2002,8(4):403−409)。人工血管移植に伴う再狭窄にも血管幹細胞の侵入が関与していることが明らかにされている(Shimizu K:Nature Medicine 2001,7:738−741)。また、本発明者らは、血管幹細胞がベータアクチン陽性であることを見出した。血管幹細胞である根拠としては、CD34、factor 8、vimentinなどにも陽性であり、血管を構築している各種細胞に分化する能力を有しているからである(内田 康美:血管2002,26:22)。さらに、本発明者は血管幹細胞が神経幹細胞であることを示すGFAP(glial fibrillary acid protein)陽性であること、また、それが血管壁や心筋内にも侵入することも見出している。そして、バルーンやステントなどによる血管形成術における再狭窄においては、当該血管幹細胞が、1)血管内腔から内膜への侵入のみでなく、2)外膜に存在する毛細血管から外に遊走し、外膜側から中膜と内弾性板を貫き内膜に侵入し、3)肥厚した内膜に形成された新生血管から遊走し、アルファアクチン陽性化、ついで、膠原線維となり再狭窄を引き起こす。そして、1)の外膜からの侵入が主体を演じていることを報告している(Uchida Y et al:Circulation J,2002,66(Suppl I):273)。
また、炎症が動脈硬化に関係し、それには、骨髄由来の幹細胞が炎症性細胞に分化し関与することも示唆され(Ehara S:Ciculation J 2002,66(Suppl I):142;Libby P:Circulation J 2002,66(Suppl I):32−33)、本発明者らにおいても、犬の血管炎モデルにおいて、外膜からのベータアクチン陽性幹細胞が内膜に侵入し、内膜肥厚を惹起することを見出している(特開2003−79647号公報)。更に、本発明者らは、冠微小血管性虚血モデルを犬で作成することに成功し、このモデルでは、臨床におけると同様、細動脈中膜平滑筋の著明な増加がみられ、それは外膜からのベータアクチン陽性幹細胞の侵入によることも見出している。
このように、最近では、血管再狭窄や血管肥厚、狭窄を伴う血管病等には、血管幹細胞や炎症性細胞の血管壁への侵入が、深く関係していると考えられる。
本発明は、血管幹細胞や炎症性細胞の血管壁や心臓などの臓器への侵入を防止することにより、血管形成術やバイパス術後の再狭窄、炎症による血管狭窄等の各種血管病変の予防又は治療に有用な薬剤を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明者らは斯かる実情に鑑み、血管外膜に容易に浸透し、血管幹細胞や炎症性細胞の血管壁内への侵入を防止する作用を有する化合物を探索した結果、現在、臨床検査試薬として用いられているフタレイン系色素化合物に血管幹細胞や樹状細胞等の血管壁への侵入を抑制し、狭窄や再狭窄を抑制する効果があることを見出した。そしてまた、これらの色素化合物を含む樹脂で被覆するか又は当該樹脂で作製された薬剤溶出ステント等を作成して、それを血管内に挿入することにより、効果的に再狭窄等を防止できることを見出した。
すなわち本発明は、フタレイン系色素化合物を有効成分とする骨髄由来の血管幹細胞又は炎症性細胞の血管壁侵入防止剤を提供するものである。
また本発明は、上記色素化合物を有効成分とする血管再狭窄防止剤、血管炎又は心筋炎の予防又は治療剤、微小血管性虚血性心疾患の予防又は治療剤、血管新生病の予防又は治療剤、神経系幹細胞由来細胞による増殖性疾患の予防又は治療剤、移植片の拒絶反応防止剤、臓器移植に伴う動脈硬化防止剤を提供するものである。
また本発明は、上記色素化合物を含有する樹脂で被覆してなる血管治療用器具を提供するものである。
また本発明は、上記色素化合物を含有する樹脂で作製された血管治療用器具を提供するものである。
また本発明は、上記血管治療用器具を用いることを特徴とする経皮経管的動静脈形成術又は動静脈バイパス術を提供するものである。
また本発明は、患者に、上記血管治療用器具を用いた医学的処置を施行することを特徴とする血管再狭窄の防止方法を提供するものである。
また本発明は、患者に、上記色素化合物を投与することを特徴とする炎症性血管心臓病の処置方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
図1は、バルーンによる犬冠動脈形成術に伴う細胞侵入に対するフェノールスルホンフタレインの防止効果を示す図である(術後1週間目、アザン染色。400倍。目盛り:10μm)。
(A):形成術非施行部位。M:中膜、A:外膜、矢頭:内弾性板。
(B):形成術施行部位。 M:中膜、A:外膜、矢印:侵入している多数の細胞。
(C):形成術後フェノールスルホンフタレイン投与部位。M:中膜、A:外膜、細胞の侵入はほとんど見られない。
図2は、バルーンによる冠動脈形成術に伴う内膜肥厚による狭窄に対するフェノールスルホンフタレインの防止効果を示す図である(施行4週間目、アザン染色。400倍)。
(A):フェノールスルホンフタレイン非投与例。M:中膜、A:外膜、I:肥厚した内膜、矢印:内弾性板。
(B):フェノールスルホンフタレイン投与例。M:中膜、A:外膜、矢印:内弾性板、内膜肥厚はごく軽度。
図3は、フェノールスルホンフタレインを投与しなかった例の肥厚内膜における血管幹細胞の各種免疫染色像を示す図である(1000倍)。
A:骨髄由来であることを示すCD34陽性細胞。
B:神経幹細胞であることを示すGFAP陽性細胞。
C:繊維芽細胞であることを示すvimentin陽性細胞。
E−G:幼若平滑筋細胞であることを示すbeta−SM actin陽性細胞。
H:成熟平滑筋細胞であることを示すalpha−SM actin陽性細胞。
図4は、フェノールスルホンフタレイン含有光重合型樹脂製ステントを示す図である(目盛り:1mm)。
A:2:内径0.8mmのステント。
B:拡張用バルーンカテーテルにステントをかぶせたもの
1:バルーンカテーテル、3:ガイドワイヤー
図5は、有孔バルーンカテーテルの模式図である。
1:圧力供給手段、2:薬剤供給手段、3:穿刺用針、4:連結手段、5:バルーン、6:噴出細孔、7:ガイドワイヤー
【発明を実施するための最良の形態】
本発明薬剤の有効成分であるフタレイン系色素化合物としては、例えばフェノールスルホンフタレイン、ブロモスルホフタレイン、フェノールフタレイン等が挙げられ、このうち、腎臓排泄能検査用の臨床的薬として日常用いられているフェノールスルホンフタレイン、肝臓排泄能検査用の臨床検査試薬として日常用いられているブロモスルホフタレインが特に好ましい。
斯かる本発明の色素化合物は、後記実施例に示すように、機械的血管損傷や炎症に起因する骨髄由来の血管幹細胞又は樹状細胞等の炎症性細胞の血管壁(外膜、中膜及び内膜)への侵入を抑制する作用を有し、これに基づく血管の狭窄や再狭窄を抑制する効果を発揮する。従って、本発明の色素化合物は血管幹細胞又は炎症性細胞の血管壁への侵入防止剤となり得る。ここで、骨髄由来の炎症性細胞としては、樹状細胞、マクロファージ等が挙げられる。
斯かる作用を有する本発明色素化合物を投与することにより、幹細胞の内側への侵入とその過程で生じる中膜破壊、平滑筋細胞から膠原線維への形質変換及び内膜の肥厚が抑制され、更に新生血管の形成が抑制される。従って、本発明の色素化合物は、血管形成術やバイパス術等に基づく、内膜肥厚やそれによる血管再狭窄を有効に防止する血管再狭窄防止剤となり得、また、膠原線維による、過剰な血管新生に起因する増殖性網膜症、先天性動静脈瘻の増悪化や栄養血管新生による固形腫瘍の増殖促進等の炎症性、代謝性、先天性の増殖促進血管新生などによる血管増殖性疾患の予防又は治療剤として有用である。例えば、川崎病、大動脈症候群、巨細胞動脈炎、拘縮性関節炎に伴う動脈炎などの血管炎、動脈硬化性病変(プラーク)、心筋炎、冠微小循環障害を含む微小血管性虚血性心疾患、モヤモヤ病、糖尿病性網膜症などの微小血管新生病等の予防又は治療剤となり得る。
また、移植血管の動脈硬化にも幹細胞の侵入が関係していることが報告されており(SaiharaA:Nature Medicine,2001,7(4):382−383)、幹細胞は、臓器移植における拒絶反応にも、関与していると考えられることから、本発明の色素化合物は、臓器移植等における移植片の拒絶反応防止剤となり得、更にはこれに伴う動脈硬化症の予防又は治療剤となり得る。
更に、上記血管幹細胞は、神経幹細胞であることを示すGFAP(glial fibrillary acid protein)陽性であることから、本発明の色素化合物は、グリオーマ等の神経系幹細胞由来細胞による増殖性疾患治療剤ともなり得る。
本発明の薬剤は、フタレイン系色素化合物を単独、又は二種以上を併用して用いることができる。
また、本発明の色素化合物が有する血管幹細胞等の血管壁内侵入防止作用は、同様の薬理効果を有するとされている、分子内に基−SOを有するスルホン酸系アゾ色素、例えばエバンスブルー、トリパンブルー、トリパンレッド等を組み合わせて用いると、当該作用が増強され、好ましい。
ここで、本発明の色素化合物とスルホン酸系アゾ色素との配合比は、重量比で1:0.1〜1:100、特に1:0.5〜1:1が好ましい。
また更に、公知の免疫抑制剤、免疫調整薬、コラーゲン合成阻害薬、抗癌剤等を組み合わせることにより、血管幹細胞等の血管壁内侵入防止作用を更に増強させることができる。ここで用いられる免疫抑制剤としてはシロリムス、パクリタキセル、タクロリムス、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、グスペリムス、ミゾリビン、トラニラスト、ペミロラスト等が挙げられ、好ましくはシロリムス、パクリタキセル、タクロリムス挙げられる。免疫調整剤としてはレフルノミド、インターフェロン等が挙げられ、コラーゲン合成阻害剤としてはハルフギノン等が挙げられ、抗癌剤としてはアクチノマイシン等が挙げられる。
尚、本発明色素化合物と上記免疫抑制剤等との配合比は、重量比で1:0.01〜1:10、特に1:0.1〜1:1が好ましい。
本発明の色素化合物と上記の薬剤を併用して用いる場合には、単一の製剤中に含まれるように調製されてもよく、それぞれを別個の製剤として調製し、それらを併用するものでもよい。
本発明の薬剤は、製薬上許容し得る担体と共に注射若しくは経直腸等の非経口投与又は固形若しくは液体形態での経口投与のための製薬組成物として処方することができる。
注射剤は、液剤(無菌水又は非水溶液)、乳剤及び懸濁剤の形態とすることができ、これらに用いられる非水担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルとしては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、オレイン酸エチル等の注射可能な有機酸エステルが挙げられる。また、該組成物には防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤等の補助剤を適宜配合することができる。
また、経口投与製剤としては、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形製剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、油性若しくは水性懸濁剤等の液剤を例示できる。
斯かる薬剤は、これらの投与形態のうち、注射剤として用いるのが好ましく、静脈内投与、動脈内投与、グラフト内局所投与、有孔バルーンカテーテルによる加圧局所投与等が更に好ましく、特に図5に示すような有孔バルーンカテーテル(特願2002−190235号)を用いて投与するのが好ましい。
本発明の薬剤の投与量は、投与される成分の性状、投与経路、所望の処置期間及びその他の要因によって左右されるが、一般に色素成分として一日当り約0.1〜100mg/kg、特に約0.2〜10mg/kgが好ましい。また、所望によりこの一日量を2〜4回に分割して投与することもできる。
本発明の血管治療用器具としては、一般に血管形成術に用いられる治療器具の表面をフタレイン系色素化合物の1種又は2種以上を含有する樹脂で被覆コーティングしてなるもの、或いは当該色素含有樹脂を材料として作製された治療器具が挙げられる。
樹脂としては、進展性、屈曲性、透湿性を有して皮膜作成に適し、且つ生体内に適用しても支障がないものならば特に限定されるものではなく、生分解性材料、難生分解性材料、或いはこれらの混合物の何れでもよい。生物学的に難分解性の材料としては、例えばポリオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、SEBS、SIS、ポリオレフィン共重合体等)、アクリル系樹脂(例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリブチルアクリレート等)、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース、ポリカーボネート、ナイロン、シリコーン樹脂、天然ゴムラテックス、ポリビニルアルコール、ポリプロラクトン、ポリビニルアセトアミド等が挙げられ、生分解性材料としては、例えばポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸/ポリグリコール酸共重合体、ポリ燐酸、ポリグルタミン酸、コラーゲン、ゼラチン、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、フィブリン、アルギン酸、キチン、キトサン、フィブロイン及びこれらの塩等が挙げられる。このうち、特にポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ燐酸又はこれらとポリイソプレン等との混合物が好ましい。
上記樹脂をコーティングするために用いられる治療用器具としては、血管治療用に用いられ、血管内に留置することができるものであればその材質や形状は特に限定されるものではない。材質としては、生分解性(自己吸収性)、難分解性のいずれでもよく、例えば、ステンレススチール、ニッケル・チタン合金、タンタリューム等の金属やセラミックス等の他、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化エチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、カーボンナノシート、カーボンナノチューブ等の難生分解性材料やポリ乳酸、ポリ燐酸、ポリグリコール酸、ポリリンゴ酸、ポリα−アミノ酸等の生分解性材料が挙げられる。
また、斯かる素材に、ウレタンジメタクリレート等の光重合性樹脂を混合して製造された光重合型の材料を用いることもでき、これを用いれば、血管内に入れた後特定の波長の光を照射することにより樹脂が硬化し、血管内腔を広げることができる。
また形状は、血管内壁に安定的に留置するに足る強度を有するものであれば特に限定されず、例えば網状体で構成される円筒状等の形状が好適に挙げられる。
斯かる本発明の血管治療用器具としては、具体的には、例えばステント、ステントグラフト、カテーテル、バルーン、人工血管等が挙げられ、このうち特にステント及び人工血管が好ましい。尚、ステントの形状は、コイル状、網筒状のいずれでもよく、剛性ステント、屈曲性ステントのいずれであってもよい。
色素含有樹脂の上記治療器具への被覆は、通常アルコール類、エーテル類、ジクロロメタン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等のような有機溶媒に樹脂を溶解し、これに色素を混合して、室温又は必要に応じて加熱下で溶解させて色素含有樹脂溶液とし、これに治療器具を浸漬するか又は色素含有樹脂溶液を治療器具に噴霧することによりコーティングし、次いで乾燥し、滅菌することにより行われる。尚、コーティングは、治療器具を挿入直後から色素が遊出し、且つ長時間の溶出を持続させることを目的として、一度コーティングした後に、更に色素溶液或いは色素含有高分子溶液をコーティングして多層コーティングとするのが好ましい。例えば、二層コーティングとする場合には、最初に樹脂としてポリ乳酸/ポリグリコール酸共重合体(例えば、PLGA7510(Wako社))を用いた色素含有樹脂溶液でコーティングして持続溶出層(内層)を形成し、更に樹脂としてポリ乳酸(例えば、PLA0010(Wako社))を用いた色素含有樹脂溶液でコーティングして急速溶出層(外層)を形成することが挙げられ、三層コーティングとする場合には、内層には樹脂としてポリ乳酸/ポリグリコール酸共重合体(例えば、PLGA7510(Wako社))を用いた色素含有樹脂溶液を、中層にはポリブチルアクリレートを用いた色素含有樹脂溶液を、外層にはポリ乳酸(例えば、PLA0010(Wako社))を用いた色素含有樹脂溶液を用いてコーティングしたものが好適に挙げられる(ここでいう内層とは、ステント側を云う)。
色素含有樹脂液における色素化合物の含有量は、再狭窄防止効果の点から、0.5〜50%、特に10〜20%とするのが好ましい。
また、器具自体を色素含有樹脂で作製する場合、例えば、ステントを作製する場合には、上記の色素含有樹脂溶液にポリエチレンチューブ等を浸し、樹脂が硬化した後、当該チューブを抜き去ることにより行えばよい。尚、当該樹脂溶液には、上記したウレタンジメタクリレート等の光重合性樹脂を混合したものを用いるのが好ましい。
斯くして得られる本発明の血管治療用器具を用いて、経皮経管的動静脈形成術(冠動脈形成術、末梢動脈形成術、脳動脈形成術等)、動静脈バイパス移植手術(冠動脈バイパス術、末梢動脈バイパス術等)等の医学的処置を行うことにより、当該処置後の血管再狭窄の発生を有効に防止することができる。
【実施例】
実施例1 薬剤注入器を具備した有孔バルーンカテーテルによる局所投与実験
フェノールスルホンフタレインやブロモスルホフタレインは組織親和性が極めて強く、取り扱い中に、皮膚、衣類や医療器具などに付着すると、それを取り除くことが極めて困難であり、臨床的に用いる場合には、外部に漏れないようにすることが必須である。そこで、投与の際に外部に漏れないように、閉鎖回路で投与できる装置が必要である。そこで、先に特許を申請してある外部に触れることのない状態で経皮的に血管内の局所に選択的に投与できる有孔バルーンカテーテル(図5参照、特願2002−190235号)を用いた。
(A)冠動脈形成術に伴う幹細胞侵入防止実験
(1)実験方法
ネンブタール麻酔ビーグル犬を用いた。気管挿管をおこない、空気により人工呼吸を行った。ついで、右総頚動脈に8フレンチのシースを挿入した。それを介し8フレンチの誘導カテーテルを挿入し、冠動脈造影を行った。ついで、臨床で用いられている外径3mm、長さ20mmの冠動脈形成術用バルーンカテーテルを挿入し、バルーンを9気圧で膨らませ冠動脈前下行枝の遠位部から中間部を拡張せしめた。これにより、血管壁が損傷される。次いで、前述の5%フェノールスルホンフタレイン0.5ml、ないしは5%ブロモスルホフタレイン0.5mlを入れた注射筒を取り付けた有孔バルーンカテーテルをガイドワイヤー先導で拡張部位に挿入し、3気圧で血管壁内に注入した。注入終了後、カテーテルを抜去し、頚部挿入部を縫合し、抗生物質を投与した。覚醒後、1週間ないしは1ヶ月間飼育し、再度、冠動脈造影を行い、心臓を摘出しホルマリン固定を行い、拡張部位の顕微鏡標本を作製した。ついで、アザン染色や各種の免疫染色を行った。
流血中の幹細胞が、血管平滑筋ベータアクチン陽性であり、血管形成術に伴う再狭窄に重要な関与をしていることを本発明者は既に見出していいる(Uchida Y:Circulation J 2002,66(Suppl 1):273)。そこで、免疫染色を行い、幹細胞の内膜、中膜、外膜において、最も分布密度の高い部位における単位面積(250x250um)当たりの数をかぞえ、薬剤投与群とバルーンにより拡張せしめ生理食塩水0.5ml注入のみを行った非投与群(対照群)とで比較し、Student t test P<0.05をもって有意差ありとした。
(2)成績
図1に、バルーンによる拡張1週間目の冠動脈断面を示す。対照例では外膜側から内膜にむけて多数の細胞浸潤が見られる。一方、フェノールスルホンフタレイン局所投与例では見られない。
図2に、拡張4週間目の冠動脈断面像を示す。対照例では著明な内膜肥厚による狭窄がみられるが、フェノールスルホンフタレイン投与例では内膜肥厚による狭窄はごくわずかである。また、細胞浸潤もあまり見られない。
図3に、骨髄由来であることを示すCD34陽性細胞や幼若平滑筋細胞であることを示すベータアクチン陽性細胞の外膜からの侵入や新生血管からの侵入を示す。
表1に冠動脈内膜、中膜、外膜における幹細胞密度を示す。
非投与群では、外膜における分布密度が最も大であった。このことは、外膜からの侵入が重要であることを示す。フェノールスルホンフタレイン及びブロモスルホフタレインによりいずれの層においても幹細胞密度は非投与群より有意に少なかった。このことは、これら薬剤に侵入阻害作用が有ることを示す。
さらに、炎症細胞である樹状細胞をCD40抗体を用い免疫染色を行った。その結果、表1に示すごとく、フェノールスルホンフタレイン及びブロモスルホフタレインにより侵入が阻害されることが判明した。
表2に冠動脈造影による狭窄度を示す。フェノールスルホンフタレイン群とブロモスルホンフタレイン群により狭窄は有意に抑制された。


(B)異物の冠動脈外膜投与による炎症性狭窄実験
(1)実験方法
麻酔ビーグル犬を用い、空気による人工呼吸下で、左第5肋間を切開し、心臓を露出せしめた。ついで、左冠動脈前下行枝中間部の外膜周辺にタルク粉末を投与した。これにより炎症が発生する。ついで、開胸部を閉塞し、薬剤内臓注射筒を具備する有孔バルーンを用い、(A)における実験と同じ条件でフェノールスルホンフタレインを注入した。麻酔から覚醒後、飼育し、1ヵ月後冠動脈造影を行い、心臓を摘出しホルマリン固定した。タルク投与部の顕微鏡標本を作製し、ベータアクチン染色を行い、ベータアクチン陽性細胞、すなわち、幹細胞密度を調べた。
(2)成績
表3にベータアクチン陽性細胞密度を示す。フェノールスルホンフタレイン投与群では、非投与群とくらべ、陽性細胞密度は有意に少なかった。また、表4に示すごとく、狭窄度も有意に少であった。


実施例2 フェノールスルホンフタレイン及びブロモスルホフタレインのヒト血管平滑筋細胞増殖抑制作用や抗血栓作用
エバンスブルーには血管平滑筋細胞増殖抑制作用や抗血栓作用があることを木発明者もそれをヒト冠動脈平滑筋細胞で証明した(国際公開第01/93871号パンフレット)。また、それは、細胞周期のG1を抑制することによることも証明した(同パンフレット)。フェノールスルホンフタレインやブロモスルホフタレインに同様の作用があるか否かを検討した。
(A)血管平滑筋細胞及び内皮細胞増殖に対する作用
(1)実験方法
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUBEC)1×10/cmをMCDB−104,10%FBS,ECGF(100ng/ml),EGF(10ng/ml),heparin(100ng/ml)を含む培地に蒔き、フェノールスルホンフタレインないしはブロモスルホフタレインを加え、3日間培養し、細胞数を数え、薬剤を加えない場合と比較した。同様にして、ヒト冠動脈平滑筋細胞1×10/cmをMCDB−104,10%FBS,EGF(10ng/ml)を含む培地3日間培養し、細胞数を数えた。
(2)成績
表5に示すごとく、フェノールスルホンフタレイン及びブロモスルホフタレインには、ヒト血管内皮細胞及び血管平滑筋細胞増殖に対する抑制作用は全く認められなかった。

(B)動脈血栓に対する作用
(1)実験方法
麻酔犬にフェノールスルホンフタレインないしはブロモスルホフタレイン10mg/kg(臨床で腎機能検査に用いられる量の100倍)を静脈投与し、右総頚動脈をドッターバルーンカテーテルにより内膜障害を作成し、30分後、総頚動脈を摘出し、そこに存在する血栓の湿重量を測定し、対照群のそれと比較した。
(2)成績
表6に示すごとく、フェノールスルホンフタレイン及びブルモスルフォフタレインには血栓形成抑制作用は認められなかった。

以上のことから、フェノールスルホンフタレイン及びブロモスルホフタレインには血管平滑筋細胞増殖抑制作用も抗血栓作用も無いことが判明した。
したがって、これら薬剤による再狭窄防止作用の機序は血管平滑筋増殖抑制作用によるのではなく、また、抗血栓作用によるのでもなく、幹細胞侵入遊走抑制作用によるものと判断される。
実施例3 フェノールスルホンフタレイン含有樹脂を用いた薬剤溶出ステントの作成
幹細胞の血管壁への侵入は4週間以上持続して起こっていることが判明している。したがって、幹細胞の侵入を完全に防止するには、4週間以上持続的に局所に溶出する仕組みを編み出す必要がある。そこで、この条件を満たす局所留置用のステントの開発を試みた。
(A)薬剤含有樹脂被覆ステント
(1)一層薬剤溶出ステント
樹脂:ポリ乳酸であるPLA0010、ポリ乳酸/ポリグリコール酸共重合体であるPLGA5010及びPLGA7510、ポリビニールアルコール、ポリプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリビニルアセトアミド、ゼラチン、ヒアルロン酸。
薬剤:フェノールスルホンフタレイン、ブロモスルホフタレイン、フェノールスルホンフタレインとエバンスブルーとの合剤。
溶媒:ジクロロメタン、シクロヘキサン、水、エタノール。
ステント:市販の冠動脈用ステント(PSステント、NIRステント、テルモステント)。
薬剤含有液に市販のステントを拡張せしめた状態で5分間浸し、ついで乾燥せしめた。
(2)多層薬剤溶出ステント
薬剤を長時間溶出させるステントの作成である。
(イ)二層薬剤溶出ステント
内層用樹脂:ポリ乳酸であるPLA0010、ポリ乳酸/ポリグリコール酸共重合体であるPLGA7510及びPLGA5010(Wako):薬剤:フェノールスルホンフタレイン、ブロモスルフォンフタレイン、フェノールスルホンフタレインとエバンスブルー。
溶媒:ジクロロメタン、シクロヘキサンのいずれか。
外層用樹脂:ポリビニールアルコール、ポリ乳酸であるPLA0010、薬剤:スルフォンフタレイン、ブロモスルホフタレイン、フェノールスルホンフタレインとエバンスブルー。溶媒としてジクロロメタン、シクロヘキサンのいずれか。
ステント:市販の冠動脈用ステント(PSステント、NIRステント、テルモステント)。
(ロ)三層薬剤溶出ステント
内層用樹脂:ポリ乳酸/ポリグリコール酸共重合体であるPLGA7510。薬剤:フェノールスルホンフタレイン、ブロモスルホフタレイン。溶媒:ジクロロメタン、シクロヘキサンのいずれか。
中層用樹脂:ポリ乳酸/ポリグリコール酸共重合体であるPLGA5010、ポリ燐酸、シリコンのいずれか。
外層用樹脂:ポリ乳酸であるPLA0010.薬剤:フェノールスルホンフタレイン、ブロモスルフォンフタレイン、フェノールスルホンフタレインとエバンスブルーのいずれか。
溶媒:ジクロロメタン、シクロヘキサンのいずれか。
ステント:市販の冠動脈用ステント(PSステント、NIRステント、テルモステント)。
(B)自己吸収型(生分解性)薬剤溶出ステント
含有薬剤を漸次溶出しつつ、ステント自体が自然にとけて消失するステントである。
ステント素材:PLGA5010ないしはPLGA7510、とポリイソプレンとの合剤。
薬剤:フェノールスルホンフタレイン、ブロモスルホフタレイン。
溶媒:ジクロロメタン、シクロヘキサン。
(C)光重合性自己吸収型薬剤溶出性ステント
柔軟性を有する部分的自己吸収性薬剤溶出ステントであり、細く折りたたんで挿入できる。血管内に入れた後特定の波長の光を照射すると、硬くなり血管内腔を広げることができるステントである。ごく細い血管にも用いられる。
ステント素材:PLA0010、PLGA5010、PLGA7510、のいずれかと光重合性樹脂であるウレタンジメタクリレートとの合剤。
薬剤:フェノールスルホンフタレイン、ブロモスルホフタレイン、両者のいずれかとエバンスブルー。
溶媒:ジクロロメタンまたはシクロヘキサン。
作成法:
PLA0010、PLGA5010、ないしはPLGA7510、ウレタンジメタアクリレート、フェノールスルホンフタレイン、ジクロロメタンを混合比1:0.5:0.25:4で混合した溶液に外径0.2mm、0.8mm、1.5mmのポリエチレンチューブを5分間浸し乾燥せしめる。これを3回反復する。乾燥後、チューブを抜去するとステントができる。血管内に挿入後、石英ファイバーを介し、光を照射すると硬化する。
図4にその実例を示す。Aは内径0.8mmであり、従来のステントでは挿入できず再狭窄を予防できない1mm以下の血管にも留置できる。Bはそれを拡張用バルーンカテーテルに装着したものである。その他のステントについては薬剤溶出実験の表7に示す。
(D)薬剤溶出実験
作成した薬剤含有ステントを25℃の恒温槽内の生理食塩水10ml入り容器に入れ、薬剤の溶出状態を観察した。フェノールスルホンフタレインは赤色、ブロモスルホフタレインは青紫に着色する。表7に薬剤溶出の程度、溶出持続日数、ステントの自己崩壊の有無を示す。

(E)冠動脈への薬剤溶出ステント挿入実験
(1)実験方法
ネンブタール麻酔ビーグル犬を用い空気による人工呼吸下で、右総頚動脈より8フレンチの誘導カテーテルを挿入し、左冠動脈を造影した。ついで、薬剤溶出ステント(内層:50%フェノールスルホンフタレイン含有PLGA7510、外層:50%フェノールスルホンフタレイン含有PLA0010被覆)を左回旋枝に挿入し、9気圧で拡張せしめ留置した。麻酔より覚醒後飼育し、1ヵ月後、再度造影を行い、ステント挿入部位の最も狭窄の強い部位の狭窄度を計測し、薬剤で被覆しないステントを挿入した非溶出ステント群のそれと比較した。ついで、心臓を摘出しホルマリン固定した。ステント挿入部位の顕微鏡標本を作製し、血管平滑筋ベータアクチンを染色し、内膜、中膜、外膜において最も密度の高い部位の幹細胞の単位面積当たりの密度を調べ、薬剤で被覆しないステントを挿入した非溶出ステント群のそれと比較した。
(2)成績
表8にベーターアクチン陽性幹細胞の密度を示す。密度は、溶出ステント群で有意に少なかった。また、表9に示したごとく、狭窄度も有意に小であった。


【産業上の利用可能性】
本発明の薬剤を用いれば、狭心症、心筋梗塞、末梢血管閉塞症、脳血管障害などの血行障害に対する血管形成術や自己血管や人工血管移植術により生じる血管の再狭窄を効果的に防止することができる。また、有効な予防法や治療法の無い血管炎に伴う狭窄や瘤形成、動脈硬化病変の進展と崩壊、微小血管性虚血性疾患等が防止可能であり、また局所投与が難しい血管新生病、グリオーマなど神経系増殖性疾患にあっては、動静脈内投与によっても防止が期待され、臨床上きわめて有用である。
また、本発明の血管治療用器具は、長期間留置することが可能であり、これを用いて血管形成術(冠動脈形成術、末梢動静脈形成術、脳動静脈形成術等)や血管バイパス術(冠動脈バイパス術、末梢動静脈バイパス術等)等の医学的処置を行うことにより、血管再狭窄の発生を効果的に防止することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フタレイン系色素化合物を有効成分とする骨髄由来の血管幹細胞又は炎症性細胞の血管壁侵入防止剤。
【請求項2】
フタレイン系色素化合物を有効成分とする血管再狭窄防止剤。
【請求項3】
フタレイン系色素化合物を有効成分とする血管炎又は心筋炎の予防又は治療剤。
【請求項4】
血管炎が、川崎病、大動脈炎症候群、巨細胞動脈炎、拘縮性関節炎に伴う動脈炎又は動脈硬化性病変(プラーク)である請求項3記載の予防又は治療剤。
【請求項5】
フタレイン系色素化合物を有効成分とする微小血管性虚血性疾患の予防又は治療剤。
【請求項6】
フタレイン系色素化合物を有効成分とする血管新生病の予防又は治療剤。
【請求項7】
血管新生病が、モヤモヤ病又は糖尿病性網膜症である請求項6記載の予防又は治療剤。
【請求項8】
フタレイン系色素化合物を有効成分とする神経系幹細胞由来細胞による増殖性疾患の予防又は治療剤。
【請求項9】
フタレイン系色素化合物を有効成分とする移植片の拒絶反応防止剤。
【請求項10】
フタレイン系色素化合物を有効成分とする臓器移植に伴う動脈硬化症の予防又は治療剤。
【請求項11】
更にスルホン酸系アゾ色素を含むものである請求項1〜10のいずれか1項記載の薬剤。
【請求項12】
更に免疫抑制剤、免疫調整薬、コラーゲン合成阻害薬及び/又は抗癌剤等を含むものである請求項1〜10のいずれか1項記載の薬剤。
【請求項13】
フタレイン系色素化合物が、フェノールスルホンフタレイン又はブロモスルホフタレインである請求項1〜12のいずれか1項記載の薬剤。
【請求項14】
フタレイン系色素化合物を含有する樹脂で被覆してなる血管治療用器具。
【請求項15】
フタレイン系色素化合物を含有する樹脂で作製された血管治療用器具。
【請求項16】
血管治療用器具が人工血管、ステント又はステントグラフトである請求項14又は15記載の血管治療用器具。
【請求項17】
カーボンナノシート、自己吸収性材料及び光重合型材料から選ばれる素材からなるものである請求項14〜16のいずれか1項記載の血管治療用器具。
【請求項18】
フタレイン系色素化合物が、フェノールスルホンフタレイン又はブロモスルホフタレインである請求項14〜17のいずれか1項記載の血管治療用器具。
【請求項19】
フタレイン系色素化合物を含有する樹脂を被覆するか又は当該樹脂で作製された血管治療用器具を用いることを特徴とする経皮経管的動静脈形成術又は動静脈バイパス術。
【請求項20】
患者に、フタレイン系色素化合物を含有する樹脂を被覆するか又は当該樹脂で作製された血管治療用器具を用いた医学的処置を施行することを特徴とする血管再狭窄の防止方法。
【請求項21】
患者に、フタレイン系色素化合物を投与することを特徴とする炎症性血管心臓病の処置方法。

【国際公開番号】WO2004/108129
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566475(P2004−566475)
【国際出願番号】PCT/JP2003/007264
【国際出願日】平成15年6月9日(2003.6.9)
【出願人】(500263437)有限会社 循環器研究所 (3)
【Fターム(参考)】