説明

微細パターン形成用樹脂組成物および微細パターン形成方法

【課題】熱処理により、レジストパターンを円滑に収縮させることができると共に、その後のアルカリ水溶液処理により容易に除去し得る。
【解決手段】樹脂と、この樹脂を架橋させる架橋成分と、溶媒とを含み、レジストパターンを微細化するための微細パターン形成用樹脂組成物であって、上記樹脂が下記式(1)で表される繰り返し単位(I)を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトレジストを用いた微細加工技術に関して、パターニング後に熱処理によりパターンを収縮させる際に用いられる微細パターン形成用樹脂組成物および微細パターン形成方法に関する。さらに詳細には、アルコール溶媒を使用することにより、フォトレジストパターンへの濡れ性が向上し、直径100nm以下のパターンを気泡を巻き込むことなく容易に被覆でき、かつ、該微細パターン形成用樹脂組成物を塗布するに際し、新たに水系の塗布カップや廃液処理設備を導入することなく、下層膜やフォトレジストを塗布時に使用しているカップや廃液処理設備をそのまま使用できる微細パターン形成用樹脂組成物および微細パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の微細化が進むに伴い、その製造方法におけるリソグラフィ工程において、いっそうの微細化が要求されるようになってきている。すなわち、リソグラフィ工程では、現在100nm以下の微細加工が必要になってきており、ArFエキシマレーザー光、F2エキシマレーザー光などの短波長の照射光に対応したフォトレジスト材料を用いて、微細なパターンを形成させる方法が種々検討されている。
このようなリソグラフィ技術においては、露光波長の制約から、微細化に限界は生じているのを免れないので、これまで、この波長限界をこえる微細パターンの形成を可能にするための研究が行なわれてきた。すなわち、ポリメチルメタクリレートなどの電子線用レジストをパターン化し、該レジストパターン上にポジ型レジストを塗布した後、加熱処理して該レジストパターンとポジレジスト層との境界に反応層を設け、ポジ型レジストの非反応部分を除去することにより、レジストパターンを微細化する方法(特許文献1)、下層レジストパターンと上層レジストとの間に酸発生剤や酸による熱架橋を利用して反応層を形成させる方法(特許文献2)、上層レジスト塗布液として、感光性成分を含まず、水溶性樹脂や水溶性架橋剤、あるいはこれらの混合物を水溶性溶媒に溶解した微細パターン形成材料を用いて半導体装置を製造する方法(特許文献3)、基板上に化学増幅型レジストからなる感光層を設け、画像形成露光後、現像処理してレジストパターンを形成させ、このレジストパターン上に、ポリビニルアセタールのような水溶性樹脂やテトラ(ヒドロキシメチル)グリコールウリルのような水溶性架橋剤とアミンのような水溶性含窒素有機化合物と、場合によりフッ素およびケイ素含有界面活性剤とを含む塗膜形成剤を塗布した後、加熱処理してレジストパターンとレジストパターン微細化用塗膜との界面に水不溶性の反応層を形成させ、次いで純水により、レジストパターン微細化用塗膜の非反応部分を除去する方法(特許文献4)などが提案されている。
【0003】
これらの方法は、感光性レジスト(下層レジスト)の波長限界をこえ、微細パターン形成材料(上層レジスト)によるパターンの微細化を簡単に行なうことができるという点で好ましいものであるが、レジストパターンの底部分の不必要な部分まで微細パターン形成材料の架橋を生じたり、裾ひき形状となったり、微細パターン形成材料の断面形状の垂直性が不良になったり、あるいは上層レジストパターンサイズが架橋を起こすための加熱であるミキシングベークによりパターン形状が左右されるなどの問題があり、まだ十分に満足しうるものとはいえない。また、これらのプロセスは10数nm/℃と熱依存性が高く、基板の大型化、パターンの微細化に際し、ウエーハ面内での温度を均一に保つことは困難であるため、得られたパターンの寸法制御性が低下するという問題がある。さらに、上記の水溶性樹脂を用いた微細パターン形成材料は、水への溶解性の制限からドライエッチングに対する耐性が低いという問題がある。半導体デバイスを作成するに際し、レジストパターンをマスクにドライエッチングにより基板上にパターンを転写するが、ドライエッチング耐性が低いとレジストパターンが基板上に精度良く転写できないという問題点がある。
【0004】
そのほか、基板上にフォトレジストパターンを形成した後、それに熱または放射線照射を施し、フォトレジストパターンを流動化させ、パターン寸法を解像限界よりも小さくする、いわゆる熱フロープロセスが提案されている(特許文献5、特許文献6)。
【0005】
しかしながら、この方法では、熱や放射線によるレジストの流動制御が困難であり、品質の一定した製品が得られないという問題がある。さらに、この熱フロープロセスを発展させた方法として、基板上にフォトレジストパターンを形成した後、その上に水溶性樹脂膜を設け、フォトレジストの流動を制御する方法(特許文献7)が提案されているが、この方法で用いられるポリビニルアルコールのような水溶性樹脂は、水による除去時に必要とされる溶解性や経時安定性が不十分であり、残留分を生じるという欠点がある。
【0006】
あるいは、フォトレジストを用いて形成されたレジストパターンを熱収縮させて、微細レジストパターンを形成する際に、レジストパターン上被覆形成剤を設け、熱処理により、レジストパターンを熱収縮させ、水洗により除去し得るレジストパターン微細化用被覆形成剤、およびこのものを用いて効率よく微細レジストパターンを形成させる方法(特許文献8)が提案されているが、この方法ではレジストパターン微細化用被覆形成剤は水系であり、直径100nm以下のコンタクトホール等の微細なパターンへの被覆性が不十分であり、かつ水系であるため塗布時に専用のカップが必要になるためコストアップとなり、さらに、輸送などで低温となる場合、凍結・析出が生じるという問題がある。
上記問題に対処するため、本発明者等は、熱処理により、レジストパターンを円滑に収縮させることができると共に、その後のアルカリ水溶液処理により容易に除去し得る樹脂組成物、およびこれを用いて効率よく微細レジストパターンを形成できる微細パターン形成方法につき出願している(特許文献9)。しかしながら、収縮率をより向上させ、収縮後のパターン形状をより安定させることが求めらているが従来技術では充分でないという問題がある。
【特許文献1】特許第2723260号公報
【特許文献2】特開平6−250379号公報
【特許文献3】特開平10−73927号公報
【特許文献4】特開2001−19860号公報
【特許文献5】特開平1−307228号公報
【特許文献6】特開平4−364021号公報
【特許文献7】特開平7−45510号公報
【特許文献8】特開2003−195527号公報
【特許文献9】WO2005/116776 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、フォトレジストを用いて形成されたレジストパターンを熱処理することにより微細パターンを形成するに際し、該レジストパターン上に塗布され、熱処理により、レジストパターンを円滑により安定して収縮させることができると共に、その後のアルカリ水溶液処理により容易に除去し得る樹脂組成物、およびこれを用いて効率よく微細レジストパターンを形成できる微細パターン形成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の微細パターン形成用樹脂組成物は、樹脂と、この樹脂を架橋させる架橋成分と、溶媒とを含み、レジストパターンを微細化するための微細パターン形成用樹脂組成物であって、上記樹脂が下記式(1)で表される繰り返し単位(I)を含有することを特徴とする。
【化3】

式(1)において、R1は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表し、R2はそれぞれ独立に水素原子または直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜8のアルキル基を表し、該アルキル基は水酸基、オキソ基もしくはアルコキシ基で置換されてもよく、またはR2は相互に結合して環を形成してもよい。
【0009】
本発明の微細パターン形成用樹脂組成物に用いられる樹脂は、上記繰り返し単位(I)と共に、フェノール類に由来する水酸基を側鎖に有する繰り返し単位(II)を含有することを特徴とする。
また、上記樹脂が、下記式(2)で表される繰り返し単位(III)を含有することを特徴とする。
【化4】

式(2)において、R3は水素原子、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシル基を表す。
【0010】
本発明の微細パターン形成用樹脂組成物に用いられる溶媒は炭素数1〜8の1価アルコールであることを特徴とする。
本発明の微細パターン形成方法は、基板上にレジストパターンを形成するパターン形成工程と、このレジストパターン上に上記微細パターン形成用樹脂組成物の被膜を設ける被膜工程と、この被膜工程後の基板を熱処理する工程と、アルカリ水溶液により上記被膜を除去し、水で洗浄する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の微細パターン形成用樹脂組成物は、上記式(1)を繰り返し単位に有する樹脂と、架橋成分と、溶媒とを含有するので、微細なレジストパターンへの塗布特性に優れ、また硬化膜の寸法制御性にも優れている。このため、基板の表面状態の如何にかかわらず、レジストパターンのパターン間隙を実効的に、精度よく微細化することができ、波長限界をこえるパターンを良好かつ経済的に低コストでパターン欠陥の少ない状態で形成することができる。
特に、本発明の微細パターン形成用樹脂組成物は、該樹脂の収縮量が大きく、収縮時の温度依存性が低く、収縮後の形状に優れ、ピッチ依存性が低いため、プロセス変動に対するパターン形成マージンであるプロセスウィンドウが広い。また、エッチング耐性に優れている。
さらに、このようにして形成された微細レジストパターンをマスクとしてドライエッチングすることにより、半導体基板上に精度よくトレンチパターンやホールを形成することができ、微細トレンチパターンやホールを有する半導体装置等を簡単にかつ歩留まりよく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは、熱処理によりレジストパターンを円滑に収縮させることができると共に、その後のアルカリ水溶液処理により容易に除去し得る樹脂組成物について、鋭意研究を重ねた結果、水溶性樹脂ではなくアルコール可溶性な特定の樹脂と架橋成分と溶媒を含有する樹脂組成物を用いることにより、効率よく微細パターンを形成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明の微細パターン形成用樹脂組成物は、樹脂と架橋成分と溶媒とからなる組成物である。該樹脂は下記式(1)で表される繰り返し単位(I)を含有する樹脂であり、この樹脂は重合性不飽和結合を有する単量体を共重合させて得られる。繰り返し単位(I)を生成する単量体は、樹脂を構成する全単量体に対して3〜30モル%、好ましくは8〜12モル%含有する。繰り返し単位(I)が3モル%未満であると樹脂組成物の収縮寸法量が増加せず、30モル%をこえると収縮寸法量が増加しすぎる。
【化5】

式(1)において、R1は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表し、R2はそれぞれ独立に水素原子または直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜8のアルキル基を表し、該アルキル基は水酸基、オキソ基もしくはアルコキシ基で置換されてもよく、またはR2は相互に結合して環を形成してもよい。
【0013】
2の直鎖状、分岐状の炭素数1〜8の水酸基、オキソ基、アルコキシ基の置換基を有してもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ジアセトン基等を挙げることができる。
また、R2が相互に結合して環を形成する例としては、窒素原子と共に環を成し、ピリジン 、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、ピロリジン、ピペリジン、インドール、キノリン、イソキノリンが挙げられる。
【0014】
式(1)で表される繰り返し単位(I)を生成する単量体としては、(メタ)アクリルアミド、NNジメチル(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
これらの中で、NNジメチル(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0015】
本発明で使用できる樹脂は、上記繰り返し単位(I)と共に、フェノール類に由来する水酸基を側鎖に有する繰り返し単位(II)を含むことができる。繰り返し単位(II)は、フェノール性水酸基を側鎖に有する単量体を共重合することにより得られる。
【0016】
フェノール性水酸基を有する単量体としては、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、α−メチル−p−ヒドロキシスチレン、α−メチル−m−ヒドロキシスチレン、α−メチル−o−ヒドロキシスチレン、2−アリルフェノール、4−アリルフェノール、2−アリル−6−メチルフェノール、2−アリル−6−メトキシフェノール、4−アリル−2−メトキシフェノール、4−アリル−2,6−ジメトキシフェノール、4−アリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン等を例示することができ、これらの中で、p−ヒドロキシスチレンまたはα−メチル−p−ヒドロキシスチレンが好ましい。
【0017】
また、フェノール性水酸基を有する単量体として、分子内にアミド基を有する下記式(5)で表される単量体が挙げられる。
【化6】

9およびR11は水素原子またはメチル基を表し、R10は直鎖状または環状の2価の炭化水素基を表す。R10としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(1,3−プロピレン基、1,2−プロピレン基)、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、インサレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、2−プロピリデン基等の飽和鎖状炭化水素基、1,3−シクロブチレン基などのシクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基などのシクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基などのシクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基などのシクロオクチレン基等、炭素数3〜10のシクロアルキレン基などの単環式炭化水素環基、1,4−ノルボルニレン基や2,5−ノルボルニレン基などのノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基や2,6−アダマンチレン基などのアダマンチレン基等の2ないし4環式の炭素数4〜30の炭化水素環基などの架橋環式炭化水素環基を挙げることができる。式(5)で表される単量体としては、p−ヒドロキシメタクリルアニリドが好ましい。
式(5)で表されるフェノール性水酸基を有する単量体由来の繰り返し単位は、共重合体を構成する全繰り返し単位に対して、通常17〜95モル%、好ましくは40〜72モル%である。
【0018】
さらに、共重合後のフェノール性水酸基に変換できる官能基を有する単量体を共重合することもでき、例えば、p−アセトキシスチレン、α−メチル−p−アセトキシスチレン、p−ベンジロキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、p−tert−ブトキシカルボニロキシスチレン、p−tert−ブチルジメチルシロキシスチレン等が挙げられる。これらの官能基含有化合物を用いた場合には、得られた樹脂は、適当な処理、例えば塩酸等を用いた加水分解を行なうことにより、容易に上記官能基をフェノール性水酸基に変換することができる。これらのフェノール性水酸基に変換する前および変換後の単量体由来の繰り返し単位は、樹脂を構成する全繰り返し単位に対して、通常5〜90モル%、好ましくは、10〜80モル%である。
【0019】
これらフェノール性水酸基を有する単量体由来の繰り返し単位は、樹脂を構成する全繰り返し単位に対して、それぞれ上記範囲である。水酸基を有する構成単位が少なすぎると、後述する架橋成分との反応部位が少なすぎ、パターンの収縮を起こすことができず、逆に多すぎると現像時に膨潤を起こしパターンを埋めてしまうおそれがある。
【0020】
本発明で使用できる樹脂は、上記繰り返し単位(I)および繰り返し単位(II)と共に、式(2)で表される繰り返し単位(III)を含有することが好ましい。
【化7】

式(2)において、R3は水素原子、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシル基を表す。
好ましいR3としては、tert−ブチル基、アセトキシ基、1−エトキシエトキシ基、tert−ブトキシル基であり、最も好ましくはtert−ブトキシル基である。
繰り返し単位(III)は、単量体としてスチレン誘導体を重合することにより得られる。好ましい単量体はp−tert−ブトキシスチレンである。
繰り返し単位(III)を生成する単量体由来の繰り返し単位は樹脂を構成する全繰り返し単位に対して、通常0〜80モル%、好ましくは20〜50モル%である。80モル%をこえると現像液に対する溶解性が悪くなる。
【0021】
微細パターン形成用樹脂組成物を構成する樹脂は、上記繰り返し単位(I)、繰り返し単位(II)、および繰り返し単位(III)を含有する樹脂であることが好ましい。各繰り返し単位は対応する単量体を重合させることで得られる。また、繰り返し単位(II)を生成する単量体としては、フェノール性水酸基を有する単量体であり、特に分子内にアミド基を有する式(5)で表される単量体が好ましい。
【0022】
また、上記樹脂には、該樹脂の親水性や溶解性をコントロールする目的で、他の単量体を共重合することができる。他の単量体としては、上記成分以外の単量体であり、このような他の単量体としては、(メタ)アクリル酸アリールエステル類、ジカルボン酸ジエステル類、ニトリル基含有重合性化合物、アミド結合含有重合性化合物、ビニル類、アリル類、塩素含有重合性化合物、共役ジオレフィン等を挙げることができる。具体的には、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどのジカルボン酸ジエステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル;ビニルトルエン等の芳香族ビニル類;tert−ブチル(メタ)アクリレート、4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチル−1−ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有重合性化合物;酢酸ビニルなどの脂肪酸ビニル類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有重合性化合物;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ジメチルブタジエン等の共役ジオレフィン類を用いることができる。これらの化合物は単独でもしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
上記樹脂は、例えば、各単量体の混合物を、ヒドロパーオキシド類、ジアルキルパーオキシド類、ジアシルパーオキシド類、アゾ化合物等のラジカル重合開始剤を使用し、必要に応じて連鎖移動剤の存在下、適当な溶媒中で重合することにより製造することができる。 上記重合に使用される溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の飽和カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン等のアルキルラクトン類;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;2−ブタノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のアルキルケトン類;シクロヘキサノン等のシクロアルキルケトン類;2−プロパノール、1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類等を挙げられる。これらの溶媒は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
また、上記重合における反応温度は、通常、40〜120℃、好ましくは50〜100℃であり、反応時間は、通常、1〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
【0025】
樹脂は、純度が高いことが好ましく、ハロゲン、金属等の不純物の含有量が少ないだけでなく、残留する単量体やオリゴマー成分が既定値以下、例えばHPLCによる分析で0.1質量%以下等であることが好ましい。これによって、樹脂を含有する本発明の微細パターン形成用樹脂組成物としてのプロセス安定性、パターン形状等をさらに改善することができるだけでなく、液中異物や感度等の経時変化がない微細パターン形成用樹脂組成物を提供することができる。
上記のような方法で得られた樹脂の精製方法として、以下の方法が挙げられる。金属等の不純物を除去する方法としては、ゼータ電位フィルターを用いて重合溶液中の金属を吸着させる方法、蓚酸、スルホン酸等の酸性水溶液で重合溶液を洗浄することで金属をキレート状態にして除去する方法等が挙げられる。また、残留する単量体やオリゴマー成分を規定値以下に除去する方法としては、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留する単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外濾過等の溶液状態での精製方法、重合溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留する単量体等を除去する再沈澱法、濾別した樹脂スラリー貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等が挙げられる。また、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0026】
このようにして得られる樹脂の重量平均分子量Mwはゲルパーミエーションクロマト法ポリスチレン換算で通常1,000〜500,000、好ましくは1,000〜50,000、特に好ましくは1,000〜20,000である。分子量が大きすぎると、熱硬化後に現像液で除去することができなくなるおそれがあり、小さすぎると塗布後に均一な塗膜を形成できないおそれがある。
【0027】
本発明に用いられる架橋成分は、下記式(3)で表される基を含む化合物(以下、「架橋成分I」という)、反応性基として2つ以上の環状エーテルを含む化合物(以下、「架橋成分II」という)、または、「架橋成分I」および「架橋成分II」との混合物である。
【化8】

式(3)において、R4およびR5は、水素原子または下記式(4)で表され、R4およびR5の少なくとも1つは下記式(4)で表される。
【化9】

式(4)において、R6およびR7は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6にアルコキシアルキル基、またはR6およびR7が互いに連結した炭素数2〜10の環を表し、R8は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
上記架橋成分は上述した樹脂および/または架橋成分が相互に酸の作用により反応する架橋成分(硬化成分)として作用するものである。
【0028】
式(3)で表される化合物(架橋成分I)は、分子内に官能基としてイミノ基、メチロール基およびメトキシメチル基等を有する化合物であり、(ポリ)メチロール化メラミン、(ポリ)メチロール化グリコールウリル、(ポリ)メチロール化ベンゾグアナミン、(ポリ)メチロール化ウレアなどの活性メチロール基の全部または一部をアルキルエーテル化した含窒素化合物を挙げることができる。ここで、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、またはこれらを混合したものを挙げることができ、一部自己縮合してなるオリゴマー成分を含有していてもよい。具体的にはヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリルなどを例示できる。
市販されている化合物としては、サイメル300、同301、同303、同350、同232、同235、同236、同238、同266、同267、同285、同1123、同1123−10、同1170、同370、同771、同272、同1172、同325、同327、同703、同712、同254、同253、同212、同1128、同701、同202、同207(以上、日本サイテック社製)、ニカラックMW−30M、同30、同22、同24X、ニカラックMS−21、同11、同001、ニカラックMX−002、同730、同750、同708、同706、同042、同035、同45、同410、同302、同202、ニカラックSM−651、同652、同653、同551、同451、ニカラックSB−401、同355、同303、同301、同255、同203、同201、ニカラックBX−4000、同37、同55H、ニカラックBL−60(以上、三和ケミカル社製)などを挙げることができる。好ましくは、式1におけるR1、R2のどちらか一方が水素原子であり、すなわち、イミノ基を含有する架橋成分であるサイメル325、同327、同703、同712、同254、同253、同212、同1128、同701、同202、同207が好ましい。
【0029】
反応性基として2つ以上の環状エーテルを含む化合物(架橋成分II)は、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3',4'−エポキシ−6'−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどのエポキシシクロヘキシル基含有化合物や、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3'−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチレンオキシド(EO)変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、プロピレンオキシド(PO)変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどの分子中にオキセタン環を2個以上有するオキセタン化合物を挙げることができる。
【0030】
これらのうち、架橋成分IIとしては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルが好ましい。
上述した架橋成分は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明における架橋成分の配合量は、樹脂100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは5〜70重量部である。配合量が1重量部未満では硬化が不十分になり、パターンの収縮が起こらないおそれがあり、100重量部をこえると硬化が進みすぎ、パターンが埋まってしまうおそれがある。
また、樹脂および架橋成分の合計量は、後述するアルコール溶媒を含めた樹脂組成物全体に対して、0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%である。水酸基を有する樹脂および架橋成分の合計量が、0.1重量%未満では塗膜が薄くなりすぎパターンエッチ部に膜切れを起こすおそれがあり、30重量%をこえると粘度が高くなりすぎ微細なパターンへ埋め込むことができないおそれがある。
【0032】
本発明に使用できるアルコール溶媒は、樹脂および架橋成分を十分に溶解し、かつフォトレジスト膜上に塗布するに際し、フォトレジスト膜とインターミキシングを起こさない溶媒であれば使用できる。
そのような溶媒としては、炭素数1〜8の1価アルコールであることが好ましい。例えば、1−プロパノール、イソプロバノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、2−メチル−2−ヘプタノール、2−メチル−3−ヘプタノールなどが挙げられ、1−ブタノール、2−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノールが好ましい。これらのアルコール溶媒は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、アルコール溶媒は、全溶媒に対して10重量%以下、好ましくは1重量%以下の水を含むことができる。10重量%をこえると樹脂の溶解性が低下する。より好ましくは、水を含有しない無水アルコール溶媒である。
【0033】
本発明の微細パターン形成用樹脂組成物は、フォトレジスト膜上に塗布するに際し、塗布性を調整する目的で、他の溶媒を混合することもできる。他の溶媒は、フォトレジスト膜を浸食せずに、かつ微細パターン形成用樹脂組成物を均一に塗布する作用がある。
他の溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、水が挙げられる。これらのうち、環状エーテル類、多価アルコールのアルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類、ケトン類、エステル類、水が好ましい。
【0034】
上記、他の溶媒の配合割合は、全溶媒中の30重量%以下であり、好ましくは20重量%以下である。30重量%をこえると、フォトレジスト膜を浸食し、微細パターン形成用樹脂組成物との間にインターミキシングを起こすなどの不具合を発生し、レジストパターンを埋めてしまうおそれがある。なお、水が混合される場合、10重量%以下である。
【0035】
本発明の微細パターン形成用樹脂組成物には、塗布性、消泡性、レベリング性などを向上させる目的で界面活性剤を配合することもできる。
そのような界面活性剤としては、例えばBM−1000、BM−1100(以上、BMケミー社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、同FC−430、同FC−431(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145(以上、旭硝子(株)製)、SH−28PA、同−190、同−193、SZ−6032、SF−8428(以上、東レダウコーニングシリコーン(株)製)などの商品名で市販されているフッ素系界面活性剤を使用することができる。
これらの界面活性剤の配合量は、水酸基を有する樹脂100重量部に対して好ましくは5重量%以下である。
【0036】
上記微細パターン形成用樹脂組成物を用いて、次の方法で微細パターンが形成される。
(1)レジストパターンの形成
スピンコートなどの従来公知の方法により8インチあるいは12インチのシリコンウエハ基板上に反射防止膜(有機膜あるいは無機膜)を形成する。次いで、スピンコートなどの従来公知の方法によりフォトレジストを塗布し、例えば、80℃〜140℃程度、60〜120秒程度の条件でプリベーク(PB)を行なう。その後、g線、i線などの紫外線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、X線、電子線などで露光をし、例えば、80℃〜140℃程度の条件でポストイクスポージャーベーク(PEB)を行なった後、現像し、レジストパターンを形成する。
(2)微細パターンの形成
上記レジストパターンが形成された基板に、スピンコートなどの従来公知の方法により上記本発明の微細パターン形成用樹脂組成物を塗布する。スピンコートのみで溶剤が揮散し被覆膜を形成する場合がある。また、必要に応じて、例えば、80℃〜110℃程度、60〜120秒程度のプリベーク(PB)し、微細パターン形成用樹脂組成物の被覆膜を形成する。
次いで、このレジストパターンを微細パターン形成用樹脂組成物により被覆した基板を熱処理する。熱処理により、フォトレジスト由来の酸がフォトレジストとの界面から微細パターン形成用樹脂組成物層中に拡散し、微細パターン形成用樹脂組成物は架橋反応を起こす。フォトレジスト界面からの架橋反応状態は、微細パターン形成用樹脂組成物の材料、使用されるフォトレジスト、ベーク処理温度およびベーク処理時間により決定される。熱処理温度および熱処理時間は、通常90℃〜160℃程度の温度で、60〜120秒程度で行なわれる。
次いで、微細パターン形成用樹脂組成物の被覆膜を、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)などのアルカリ水溶液などにより現像処理(例えば、60〜120秒程度)して、未架橋の微細パターン形成用樹脂組成物の被覆膜を溶解させて除去する。最後に水で洗浄処理することにより、ホールパターンや楕円パターン、トレンチパターンなどを微細化することができる。
【実施例】
【0037】
以下に本発明をその実施例をもって説明するが、本発明の態様はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。以下、各実施例および比較例に用いた樹脂の合成例等について説明する。
合成例1
【化10】

出発原料としてp−ヒドロキシフェニルメタクリルアニリド(m−1)30.73g、p−tert−ブトキシスチレン(m−2)17.83g、NNジメチルメタアクリルアミド、(m−3)1.43g、およびアゾビスイソブチロニトリル3.80gをイソプロパノール150gに溶解し、還流条件(82℃)にて6時間重合反応を行なった。反応容器を流水にて冷却した後、150gのイソプロパノールを加え、750gのヘキサン中に攪拌しながら投入し、再沈後吸引ろ過を行なった。この後再沈操作(メタノール150g再溶解〜吸引ろ過)を3回繰り返した後、50℃にて真空乾燥した。その結果、p−ヒドロキシフェニルメタクリルアニリド由来の繰り返し単位/tert−ブトキシスチレン由来の繰り返し単位/NNジメチルメタアクリルアミド由来の繰り返し単位=58/32/10(モル比)からなる共重合体121g(収率81%)を得た。繰り返し単位のモル比は、13C−NMR測定により行なった。この共重合体を樹脂P−1とする。
樹脂P−1および以下の各合成例で得た各重合体のMwおよびMnの測定は、東ソー(株)社製GPCカラム(G2000HXL2本、G3000HXL1本、G4000HXL1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶剤テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。測定の結果、樹脂P−1はMw6,500、Mw/Mn1.7であった。
【0038】
合成例2
出発原料をp−ヒドロキシメタクリルアニリド(m−1)、p−tert−ブトキシスチレン(m−2)として合成例1と同様にp−ヒドロキシメタクリルアニリド由来の繰り返し単位/p−tert−ブトキシスチレン由来の繰り返し単位=60/40(モル比)、Mw5,500、Mw/Mn1.5からなる共重合体を得た。この共重合体を樹脂P−2とする。
【0039】
実施例1〜実施例5、比較例1
表1に示す割合で、上記樹脂、架橋成分、アルコール溶媒およびその他添加剤を加え、攪拌羽根を使用して3時間攪拌した後、孔径30nmのフィルターを使用して濾過して、微細パターン形成用樹脂組成物を得た。
各実施例および比較例に用いた架橋成分およびアルコール溶媒を以下に示す。
架橋成分
C−1:ニカラックMX−750(日本カーバイト社製、商品名)
C−2:ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチルー3−オキセタニルメチル)エーテル
アルコール溶媒
S−1:1−ブタノール
S−2:4−メチルー2−ペンタノール
【0040】
得られた微細パターン形成用樹脂組成物を評価するために、レジストパターン付きの評価用基板を以下の方法で作製した。
8インチシリコンウェハ上に下層反射防止膜ARC29A(ブルワーサイエンス社製)をCLEAN TRACK ACT8(東京エレクトロン(株))でスピンコートにより膜厚77nm(PB205℃、60秒)で塗膜を形成した後、JSR ArF AR1244J(JSR株式会社製、脂環族系感放射線性樹脂組成物)のパターニングを実施する。AR1244Jは、同CLEAN TRACK ACT8にてスピンコート、PB(130℃、90秒)、冷却(23℃、30秒)により膜厚210nmの塗布膜を形成し、ArF投影露光装置S306C(ニコン(株))で、NA:0.78、シグマ:0.85、2/3Annの光学条件にて露光(露光量30mJ/cm2)を行ない、同CLEAN TRACK ACT8ホットプレートにてPEB(130℃、90秒)、冷却(23℃、30秒)後、現像カップのLDノズルにて2.38重量%TMAH水溶液を現像液としてパドル現像(60秒間)、超純水にてリンス、次いで4000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライし、評価用基板を得た。この工程で得られた基板を評価用基板Aとする。同一条件で作製した評価用基板Aを複数枚準備した。
得られた評価用基板を走査型電子顕微鏡(日立計測器(株)製S−9360)で100nm径ホールパターン、100nmスペースのマスクパターン(バイアス+30nm/マスク上は130nm径パターン/70nmスペース)に該当するパターンを観察し、レジストパターンのホール径を測定した。
【0041】
レジストパターン付き評価基板を表1記載の実施例において、微細パターン形成用樹脂組成物を以下の方法で評価した。各評価結果をそれぞれ表2に示す。
(1)収縮寸法およびベーク温度依存性の評価
上記評価用基板A上に、表1記載の微細パターン形成用樹脂組成物をCLEAN TRACK ACT8にてスピンコートにて膜厚150nmで塗布した後、レジストパターンと微細パターン形成用樹脂組成物を反応させるため、表1記載の収縮評価ベーク条件でベークを行なった。ついで同CLEAN TRACK ACT8で23℃、30秒の冷却プレートで冷却後、現像カップでLDノズルにて2.38重量%TMAH水溶液を現像液としてパドル現像(60秒間)、超純水にてリンス、次いで4000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライした。この工程で得られた基板を評価用基板Bとする。パターン寸法の収縮測定は、走査型電子顕微鏡(日立計測器(株)製S−9360)で100nm径ホールパターン、100nmスペースのマスクパターン(バイアス+30nm/マスク上は130nm径パターン/70nmスペース)に該当するパターンを観察し、パターンのホール径を測定した。
収縮寸法(nm)=φ1−φ2
φ1:評価用基板Aのレジストパターンホール径(nm)
φ2:評価用基板Bのレジストパターンホール径(nm)
収縮の判定として、収縮が確認され、収縮寸法が20nm以上のときを「〇」、収縮が確認されないもしくはパターンがつぶれてしまっているとき、もしくは収縮寸法が20nm未満のものを「×」とした。
【0042】
(2)不溶物の確認評価
評価用基板Bを走査型電子顕微鏡(日立計測器(株)製S−4800)で100nm径ホールパターン、100nmスペースのマスクパターン(バイアス+30nm/マスク上は130nm径パターン/70nmスペース)に該当するパターンの断面を観察し、開口部底部に不溶物がないとき「〇」、不溶物が観察されたとき「×」とした。
(3)パターン収縮後形状評価
評価用基板Aおよび評価用基板Bにおいて、走査型電子顕微鏡(日立計測器(株)製S−4800)で100nm径ホールパターン、100nmスペースのマスクパターン(バイアス+30nm/マスク上は130nmパターン/70nmスペース)に該当し、かつ同位置に存在するパターンの断面をそれぞれ観察する。断面形状を図1に示す。評価用基板A(図1(a))におけるレジストの膜厚tを100として、基板1からレジストの膜厚t−t'が80をこえる部分でのみ評価用基板B上のパターンに劣化部分t'が認められるものを良好とし(図1(b))、その他は不良とした(図1参照)。評価結果を表2に示す。
【0043】
【表1】

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の微細パターン形成用樹脂組成物は、レジストパターンのパターン間隙を実効的に、精度よく微細化することができ、波長限界をこえるパターンを良好かつ経済的に形成できるので、今後ますます微細化が進行するとみられる集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野で極めて好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】ホールパターンの断面形状
【符号の説明】
【0046】
1 基板
2 ホールパターン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、この樹脂を架橋させる架橋成分と、溶媒とを含み、レジストパターンを微細化するための微細パターン形成用樹脂組成物であって、
前記樹脂が下記式(1)で表される繰り返し単位(I)を含有することを特徴とする微細パターン形成用樹脂組成物。
【化1】

(式(1)において、R1は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表し、R2はそれぞれ独立に水素原子または直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜8のアルキル基を表し、該アルキル基は水酸基、オキソ基もしくはアルコキシ基で置換されてもよく、またはR2は相互に結合して環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記樹脂が、フェノール類に由来する水酸基を側鎖に有する繰り返し単位(II)を含有することを特徴とする請求項1記載の微細パターン形成用樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂が、下記式(2)で表される繰り返し単位(III)を含有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の微細パターン形成樹脂組成物。
【化2】

(式(2)において、R3は水素原子、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシル基を表す。)
【請求項4】
前記溶媒が炭素数1〜8の1価アルコールであることを特徴とする請求項1記載の微細パターン形成用樹脂組成物。
【請求項5】
基板上にレジストパターンを形成するパターン形成工程と、このレジストパターン上に微細パターン形成用樹脂組成物の被膜を設ける被膜工程と、前記被膜工程後の基板を熱処理する工程と、アルカリ水溶液により前記被膜を除去し、水で洗浄する工程とを含む微細パターン形成方法において、前記微細パターン形成用樹脂組成物が請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の微細パターン形成用樹脂組成物であることを特徴とする微細パターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−85989(P2009−85989A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251727(P2007−251727)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】