説明

微細加工処理剤、及びそれを用いた微細加工処理方法

【課題】 シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜の積層膜に対して、シリコン酸化膜を選択的に微細加工することが可能な微細加工処理剤、及びそれを用いた微細加工処理方法を提供する。
【解決手段】 本発明の微細加工処理剤は、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜が形成された被処理物の微細加工に用いる微細加工処理剤であって、下記(A)成分又は(B)成分の少なくとも何れか一方と、下記(C)成分と、下記(D)成分とを含み、下記(A)成分又は(B)成分の少なくとも何れか一方と、(C)成分との含有量の合計が、微細加工処理剤の全体量に対し90重量%以下である。
(A)成分:0.01重量%〜20重量%のフッ化水素
(B)成分:0.1重量%〜20重量%のフッ化アンモニウム、又は第四級アンモニウムフロライドの少なくとも何れか一方
(C)1重量%〜80重量%の塩酸、硝酸、硫酸及びリン酸からなる群より選択される少なくとも何れか1種の酸
(D)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、液晶表示装置、マイクロマシン(micro electro mechanical systems;MEMS)デバイス等の製造に於いて、エッチング処理や洗浄処理等に用いる微細加工処理剤及び微細加工処理方法に関し、より詳細には少なくともシリコン窒化膜、及びシリコン酸化膜が積層された構造物に対しエッチング処理や洗浄処理等に用いる微細加工処理剤及び微細加工処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造プロセスに於いて、ウエハ表面に成膜されたシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、ポリシリコン膜、金属膜等を所望の形状にパターニングし、エッチングすることは最も重要なプロセスの一つである。そのエッチング技術の一種であるウェットエッチングに対しては、エッチング対象となる膜のみを選択的にエッチングすることが可能な微細加工処理方法が求められている。
【0003】
前記微細加工処理に於いてシリコン酸化膜をエッチング対象とするものとしては、例えば、バッファードフッ酸やフッ化水素酸を用いる方法が挙げられる。しかし、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜が積層された積層膜に対し、前記バッファードフッ酸やフッ化水素酸を微細加工処理剤として用いると、シリコン窒化膜も同時にエッチングされる。その結果、所望の形状にパターニングすることが困難になる。
【0004】
この様な問題を解決し、シリコン酸化膜のみを選択的にエッチングすることが可能な微細加工処理方法としては、例えばフッ化水素酸にラウリル硫酸アンモニウム等の陰イオン性界面活性剤を添加したものを用いる方法が挙げられる(下記特許文献1参照)。しかし、前記微細加工処理剤では起泡性が極めて大きく、これにより半導体素子の製造プロセスに用いる微細加工処理方法としては適さない。
【0005】
一方、微細加工処理剤を用いてウェットエッチングを行う半導体素子としては、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)が挙げられる。DRAMセルはトランジスタ1個とキャパシタ1個で構成されたものである。このDRAMは過去3年で約4倍の高集積化が進められている。DRAMの高集積化は、主にキャパシタの高集積化によるものである。よって、キャパシタの占有面積を縮小しながら、安定した記憶動作に必要な容量値を確保すべく、キャパシタ面積の増大、キャパシタ絶縁膜の薄膜化及び高誘電率膜の導入が行われている。
【0006】
前記キャパシタ絶縁膜としてはシリコン酸化膜が用いられており、これまではその薄膜化が検討されてきた。しかし、キャパシタの絶縁膜としてのシリコン酸化膜の薄膜化が、1MビットのDRAMで限界に達した。そのため、4MビットのDRAMでは、絶縁膜としてシリコン窒化膜が用いられている。更に高集積化が進むにつれてタンタル酸化膜の適用も開始されている。
【0007】
64Mビット世代のDRAMのキャパシタ構造はシリンダ型である。シリンダ型のキャパシタ下部電極を形成した後、キャパシタ形成のため、成膜されたシリコン酸化膜をウェットエッチングによって除去する場合、従来のエッチング液を使用すると次に述べる問題が生じる。
【0008】
即ち、キャパシタ下部電極を形成した後に、成膜されたシリコン酸化膜をウェットエッチングにより除去する。更に、超純水によるリンスを行い、乾燥させる。この乾燥させる工程で、キャパシタ下部電極の間に存在する水の表面張力により、該下部電極が傾いて互いに付着する"リーニング(leaning)"現象が多発して、2−ビットフェイルを誘発するという問題がある。この為、下記特許文献2では、キャパシタ下部電極間にシリコン窒化膜からなる支持膜を形成する技術が開示されている。また、下記特許文献3には、ビットラインとの絶縁特性を向上させるためにシリコン窒化膜を絶縁膜として成膜する技術が開示され、更に、下記特許文献4には、シリコン窒化膜を後続のシリコン酸化膜のエッチング工程のエッチング停止膜として成膜する技術が開示されている。
【0009】
これらの半導体素子の製造プロセスに於いて従来のエッチング液を用いると、前記特許文献2に於ける支持膜としてのシリコン窒化膜や、特許文献3のシリコン窒化膜、特許文献4のエッチング停止膜としてのシリコン窒化膜がエッチング対象と共にエッチングされるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−328067号公報
【特許文献2】特開2003−297952号公報
【特許文献3】特開平10−98155号公報
【特許文献4】特開2000−22112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、少なくともシリコン酸化膜、及びシリコン窒化膜が積層された積層膜を微細加工する際に、シリコン酸化膜を選択的に微細加工することが可能な微細加工処理剤、及びそれを用いた微細加工処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、微細加工処理剤、及びそれを用いた微細加工処理方法について検討した。その結果、フッ化水素、又はフッ化アンモニウム若しくは第四級アンモニウムフロライドの少なくとも何れか一方を含む水溶液に、一定濃度の酸が添加された微細加工処理剤であると、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜が積層された積層膜に対し、シリコン酸化膜のみを選択的に微細加工できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明に係る微細加工処理剤は、前記の課題を解決する為に、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜が形成された被処理物の微細加工に用いる微細加工処理剤であって、下記(A)成分又は(B)成分の少なくとも何れか一方と、下記(C)成分と、下記(D)成分とを含み、下記(A)成分又は(B)成分の少なくとも何れか一方と、(C)成分との含有量の合計が、微細加工処理剤の全体量に対し90重量%以下である。
(A)成分:0.01重量%〜20重量%のフッ化水素
(B)成分:0.1重量%〜20重量%のフッ化アンモニウム、又は第四級アンモニウムフロライドの少なくとも何れか一方
(C)1重量%〜80重量%の塩酸、硝酸、硫酸及びリン酸からなる群より選択される少なくとも何れか1種の酸
(D)水
【0014】
前記構成によれば、前記(A)成文又は(B)成文の少なくとも何れか一方と、前記(C)成文とを組み合わせた組成にすることにより、シリコン窒化膜に対するシリコン酸化膜のエッチングの選択比(シリコン酸化膜/シリコン窒化膜)を大きくすることができる。その結果、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜が順次積層された被処理物の微細加工に本発明の微細加工処理剤を適用すると、シリコン窒化膜に対してシリコン酸化膜の選択的な微細加工が可能になる。これにより、例えば、半導体素子の製造プロセスに於ける歩留まりの向上が図れる。
【0015】
ここで、前記(C)成分の酸の含有量は1〜80重量%の範囲内にする。下限値を1重量%にすることにより、酸の添加効果を発揮させることができ、シリコン酸化膜の選択的エッチングが可能になる。その一方、上限値を80重量%にすることにより、シリコン酸化膜が微細加工されることで生成する反応生成物が、微細加工処理剤中に溶解するのを促し、当該シリコン酸化膜の微細加工を促進させることができる。また、微細加工処理剤の粘度の上昇も抑え、これにより超純水等のリンス剤による微細加工処理剤の除去性能を向上させることができる。尚、本発明に於ける「微細加工」とは、加工対象となる膜のエッチングや表面のクリーニングを含む意味である。
【0016】
前記シリコン酸化膜は、自然酸化膜、熱シリコン酸化膜、ノンドープシリケートガラス膜、リンドープシリケートガラス膜、ボロンドープシリケートガラス膜、リンボロンドープシリケートガラス膜、TEOS膜又はフッ素含有シリコン酸化膜の何れかであることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る微細加工処理方法は、前記の課題を解決する為に、前記に記載の微細加工処理剤を用いて、シリコン酸化膜を選択的に微細加工するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、前記に説明した手段により、以下に述べるような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が少なくとも積層された積層膜に対し、シリコン酸化膜のみを選択的に微細加工処理することができるので、例えば半導体装置、液晶表示装置、マイクロマシンデバイス等の製造に於いて好適な微細加工を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の一形態について、以下に説明する。
本実施の形態に係る微細加工処理剤は、下記(A)成分又は(B)成分の少なくとも何れか一方と、下記(C)成分と、下記(D)成分とを含む。
(A)成分:0.01重量%〜20重量%のフッ化水素
(B)成分:0.1重量%〜20重量%のフッ化アンモニウム、又は第四級アンモニウムフロライドの少なくとも何れか一方
(C)1重量%〜80重量%の塩酸、硝酸、硫酸及びリン酸からなる群より選択される少なくとも何れか1種の酸
(D)水
【0020】
前記(A)成分であるフッ化水素の含有量は、微細加工処理剤の全体量に対し0.01〜20重量%の範囲内であり、0.1〜10重量%の範囲内であることが好適である。フッ化水素の含有量が0.01重量%未満であると、フッ化水素の濃度制御が困難になる為、シリコン酸化膜に対するエッチレートのバラツキが大きくなる場合がある。また、フッ化水素の含有量が20重量%を超えると、シリコン酸化膜に対するエッチレートが大きくなり過ぎ、エッチングの制御性が低下する。また、フッ化水素ガスの蒸発が顕著になり、微細加工処理剤の取り扱いが困難になる場合がある。
【0021】
前記(B)成分としては、フッ化アンモニウム又は第四級アンモニウムフロライドの少なくとも何れか一方を含んでいればよい。前記第四級アンモニウムフロライドとしては特に限定されず、例えば、テトラメチルアンモニウムフロライド、テトラエチルアンモニウムフロライド、トリエチルメチルアンモニウムフロライド、コリンフロライドなどが挙げられる。
【0022】
前記(B)成分の含有量は、微細加工処理剤の全体量に対し0.1〜20重量%の範囲内であり、0.5〜10重量%の範囲内であることが好適である。(B)成分の含有量が0.1重量%未満であると、微細加工処理剤における(B)成分の濃度制御が困難になり、シリコン酸化膜に対するエッチレートのバラツキが大きくなる場合がある。また、(B)成分の含有量が20重量%を超えると、(B)成分の飽和溶解度に近づくため、微細加工処理剤の液温によっては結晶が析出する恐れがある。
【0023】
前記(C)成分は塩酸、硝酸、硫酸、及びリン酸からなる群より選択される少なくとも何れか1種の酸である。これらの酸のうち、シリコン窒化膜に対するシリコン酸化膜の選択性の観点からは硫酸が好ましい。
【0024】
前記(C)成分の含有量は、微細加工処理剤の全体量に対し1〜80重量%の範囲内であり、40〜70重量%の範囲内であることが好適である。(C)成分の含有量が1重量%未満であると、酸の添加効果を発揮させることができず、シリコン酸化膜の選択的なエッチング等が困難になる場合がある。また、(C)成分の含有量が80重量%を超えると、シリコン酸化膜のエッチングで生成した反応生成物の微細加工処理剤中への溶解が抑制され、シリコン酸化膜のエッチングが阻害される場合がある。また、微細加工処理剤の粘度が大きくなり、超純水等のリンス剤による微細加工処理剤のリンス除去性能が低減する場合もある。
【0025】
前記(A)成分又は(B)成分の少なくとも何れか一方と、(C)成分との含有量の合計は、微細加工処理剤の全体量に対して90重量%以下であり、70重量%以下であることが好適である。(A)成分又は(B)成分の少なくとも何れか一方と、(C)成分との合計含有量を90重量%以下にすることで、シリコン酸化膜がエッチングされた際に生じる反応生成物が微細加工処理剤中に溶解するのを促し、シリコン酸化膜に対するエッチレートのバラツキが抑制することができる。また、微細加工処理剤の粘度の上昇も抑え、これにより超純水等のリンス剤による微細加工処理剤の除去性能を向上させることができる。
【0026】
本実施の形態に係る微細加工処理剤には、第3成分が含有されていてもよい。第3成分としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、微細加工処理剤のpHが2より小さい場合は、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤が好適である。また、微細加工処理剤のpHが2以上の場合は、脂肪族アルコール、脂肪族カルボン酸、ハイドロフルオロアルキルアルコール、ハイドロフルオロアルキルカルボン酸、ハイドロフルオロアルキルカルボン酸塩、脂肪族アミン塩、及び脂肪族スルホン酸からなる群より選択される少なくとも何れか1種が好適である。更に、微細加工処理剤のpHが2以上の場合、微細加工処理剤は固体でもよく、液体でもよい。
【0027】
前記界面活性剤の添加量は、0.001〜0.1重量%の範囲内であることが好適であり、0.003〜0.05重量%の範囲内であることがより好適である。界面活性剤を添加することにより、エッチング処理を施したシリコン窒化膜や半導体基板等の表面の荒れを抑制することができる。更に、従来の微細加工処理剤であると、超高集積化に伴い微細パターンが施された半導体基板表面に局部的に残留しやすく、レジスト間隔が0.5μm程度あるいはそれ以下になると均一的にエッチングすることがより困難である。しかし、界面活性剤を添加した本発明の微細加工処理剤をエッチング液として使用した場合、半導体基板表面への濡れ性が改善され、エッチングの基板面内に於ける均一性が改善される。但し、前記添加量が0.001重量%未満であると、微細加工処理剤の表面張力が十分に低下しない為に、濡れ性の向上効果が不十分になる場合がある。また、前記添加量が0.1重量%を超えると、それに見合う効果が得られないだけでなく、消泡性が悪化してエッチング面に泡が付着し、エッチングむらが生じたり、微細間隙に泡が入り込んでエッチング不良を生じる場合がある。
【0028】
本実施の形態の微細加工処理剤は、その効果を阻害しない範囲内に於いて、界面活性剤以外の添加剤を混合することも可能である。前記添加剤としては、例えば、過酸化水素、キレート剤等が例示できる。
【0029】
本実施の形態に係る微細加工処理剤は、各(A)成分〜(D)成分を任意の順序で混合することにより製造することができる。尚、(B)成分は、その原料が水酸化物である場合は適宜フッ酸を加えて中和し、フッ化物とすることにより得られる。また、水酸化物である原料をフッ酸により中和させることなく、(A)成分であるフッ化水素を少なくとも含む溶液に加えることにより、当該フッ化水素の一部と中和反応をさせ、結果的に溶液中に(B)成分が含んだ態様としてもよい。ここで、(B)成分の原料が水酸化物である場合、その様な水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化トリエチルメチルアンモニウム、又はコリン等のアンモニウムの水酸化物が挙げられる。
【0030】
次に、本実施の形態に係る微細加工処理剤を用いた微細加工処理方法について、ウェットエッチングを例にして説明する。
【0031】
本実施の形態に係る微細加工処理剤は、例えば、基板上にシリコン窒化膜及びシリコン酸化膜が形成された被処理物に対して使用される。具体的には、基板上にシリコン窒化膜及びシリコン酸化膜同一面内に設けられたものや、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜が順次積層された積層膜、あるいはシリコン酸化膜及びシリコン窒化膜が順次積層された積層膜が挙げられる。前記シリコン酸化膜としては、自然酸化膜、熱シリコン酸化膜、ノンドープシリケートガラス膜、リンドープシリケートガラス膜、ボロンドープシリケートガラス膜、リンボロンドープシリケートガラス膜、TEOS膜、フッ素含有シリコン酸化膜等が挙げられる。
【0032】
本実施の形態に係る微細加工処理剤は、種々のウェットエッチング法に採用される。エッチング方法としては、浸漬式やスプレー式等があるが、いずれの方法にも本発明の微細加工処理剤は採用され得る。浸漬式は、エッチング工程での蒸発により微細加工処理剤の組成変化が少ないので好適である。
【0033】
微細加工処理剤をエッチング液として使用した場合のエッチング温度(微細加工処理剤の液温)は、5〜50℃の範囲内であることが好適であり、15〜35℃の範囲内であることがより好適であり、20〜30℃の範囲内であることが更に好適である。前記範囲内であると、微細加工処理剤の蒸発を抑制することができ、組成変化を防止することができる。また、高温度では微細加工処理剤の蒸発によりエッチレートの制御が困難になり、低温度では微細加工処理剤中の成分が結晶化しやすくなり、エッチレートの低下、液中粒子の増加するというデメリットを回避できる。尚、エッチング温度によっては膜毎にエッチレートが変化するので、シリコン酸化膜に対するエッチレートとシリコン窒化膜に対するエッチレートとの差も影響を受ける場合がある。
【0034】
また、本実施の形態の微細加工処理剤に於いては、25℃に於けるシリコン酸化膜に対するエッチレートが1〜10000nm/分の範囲内であることが好適であり、15〜3000nm/分の範囲内であることがより好適である。エッチレートが1nm/分未満であると、エッチング等の微細加工処理に時間を要し、生産効率の低下を招来する場合がある。また、10000nm/分を超えると、エッチング後の膜厚の制御性の低下や基板表面(シリコン酸化膜等の形成面とは反対側の面)の荒れが顕著になり、歩留まりが低下する場合がある。
【実施例】
【0035】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0036】
(シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜に対するエッチレート)
光学式膜厚測定装置(ナノメトリクスジャパン(株)社製、Nanospec6100)を用いてエッチング前後のシリコン酸化膜、及びシリコン窒化膜の膜厚を測定し、エッチングによる膜厚の変化を測定した。3つの異なるエッチング時間に於いて前記測定を繰り返し実施し、エッチレートを算出した。尚、被処理物としては、シリコン窒化膜、又はシリコン酸化膜がそれぞれ基板上に形成されたものを用いた。
【0037】
(実施例1)
フッ化水素(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50重量%)10重量部と、超純水7重量部とを混合した溶液に、(C)成分としての硫酸(三菱化学(株)製、濃度96重量%)83重量部を添加し、攪拌混合した後、混合液を25℃に調温し3時間静置した。これにより、フッ化水素5重量%、硫酸80重量%のエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0038】
次に、前記シリコン窒化膜、又はシリコン酸化膜が形成されたそれぞれの基板を浸漬させ、シリコン酸化膜としてのBPSG膜、及びシリコン窒化膜に対するエッチレートを測定した。更に、エッチレートの選択比(シリコン酸化膜/シリコン窒化膜)を評価した。尚、このときのエッチング液の液温は25℃とした。結果を下記表1に示す。
【0039】
(実施例2〜9)
実施例2〜9に於いては、表1に示す通りに、(A)成分(フッ化水素)の含有量と、(B)成分の含有量及び種類と、(C)成分の含有量及び種類とを変更したこと以外は、前記実施例1と同様にしてエッチング液を調製した。更に、各実施例で得られたエッチング液を用いて、BPSG膜及びシリコン窒化膜に対するエッチレート、エッチレートの選択比(シリコン酸化膜/シリコン窒化膜)を評価した。結果を下記表1に示す。
【0040】
(比較例1、2)
比較例1に於いては、表1に示す通りに(C)成分の酸を添加しなかったこと以外は、前記実施例1と同様にしてエッチング液を調製した。また、比較例2に於いては、表1に示す通りに(C)成分の酸を添加しなかったこと以外は、前記実施例7と同様にしてエッチング液を調製した。更に、各比較例で得られたエッチング液を用いて、実施例1と同様にして、BPSG膜及びシリコン窒化膜に対するエッチレート、エッチレートの選択比(シリコン酸化膜/シリコン窒化膜)を評価した。結果を下記表1に示す。
【0041】
(結果)
下記表1からも明らかな通り、(C)成分である酸が添加されていない比較例1及び2に係るエッチング液では、BPSG膜の選択的なエッチングが抑制されており、シリコン窒化膜に対するシリコン酸化膜のエッチレートの選択比(シリコン酸化膜/シリコン窒化膜)を大きくすることはできなかった。
【0042】
一方、実施例1〜9に係るエッチング液の様に、(A)成分又は(B)成分の少なくとも何れか一方と、(C)成分とを含む組成であると、シリコン酸化膜に対するエッチレートを選択的に大きくすることができ、シリコン窒化膜に対するシリコン酸化膜のエッチレートの選択比(シリコン酸化膜/シリコン窒化膜)が大きくできることが確認された。
【0043】
【表1】

【0044】
(実施例10〜14)
実施例10〜14に於いては、表2に示す通りに、(A)成分(フッ化水素)の含有量と、(B)成分の含有量及び種類と、(C)成分の含有量及び種類とを変更したこと以外は、前記実施例1と同様にしてエッチング液を調製した。更に、各実施例で得られたエッチング液を用いて、実施例1と同様にして、シリコン酸化膜としてのノンドープシリケートガラス膜及びシリコン窒化膜に対するエッチレート、エッチレートの選択比(シリコン酸化膜/シリコン窒化膜)を評価した。結果を下記表2に示す。
【0045】
(比較例3、4)
比較例3に於いては、表2に示す通りに(C)成分を添加しなかったこと以外は、前記実施例10と同様にしてエッチング液を調製した。また、比較例4に於いては、表2に示す通りに(B)成分を添加しなかったこと以外は、前記実施例11と同様にしてエッチング液を調製した。更に、各比較例で得られたエッチング液を用いて、実施例1と同様にして、ノンドープシリケートガラス膜及びシリコン窒化膜に対するエッチレート、エッチレートの選択比(シリコン酸化膜/シリコン窒化膜)を評価した。結果を下記表2に示す。
【0046】
(結果)
下記表2からも明らかな通り、(C)成分である酸が添加されていない比較例3及び4に係るエッチング液では、ノンドープシリケートガラス膜の選択的なエッチングが抑制されており、シリコン窒化膜に対するシリコン酸化膜のエッチレートの選択比(シリコン酸化膜/シリコン窒化膜)を大きくすることはできなかった。
【0047】
一方、実施例10〜14に係るエッチング液の様に、(A)成分又は(B)成分の少なくとも何れか一方と、(C)成分とを含む組成であると、シリコン酸化膜に対するエッチレートを選択的に大きくすることができ、シリコン窒化膜に対するシリコン酸化膜のエッチレートの選択比(シリコン酸化膜/シリコン窒化膜)が大きくできることが確認された。
【0048】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜が形成された被処理物の微細加工に用いる微細加工処理剤であって、
下記(A)成分又は(B)成分の少なくとも何れか一方と、下記(C)成分と、下記(D)成分とを含み、
下記(A)成分又は(B)成分の少なくとも何れか一方と、(C)成分との含有量の合計が、微細加工処理剤の全体量に対し90重量%以下である微細加工処理剤。
(A)成分:0.01重量%〜20重量%のフッ化水素
(B)成分:0.1重量%〜20重量%のフッ化アンモニウム、又は第四級アンモニウムフロライドの少なくとも何れか一方
(C)1重量%〜80重量%の塩酸、硝酸、硫酸及びリン酸からなる群より選択される少なくとも何れか1種の酸
(D)水
【請求項2】
前記シリコン酸化膜は、自然酸化膜、熱シリコン酸化膜、ノンドープシリケートガラス膜、リンドープシリケートガラス膜、ボロンドープシリケートガラス膜、リンボロンドープシリケートガラス膜、TEOS膜又はフッ素含有シリコン酸化膜の何れかである請求項1に記載の微細加工処理剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の微細加工処理剤を用いて、シリコン酸化膜を選択的に微細加工する微細加工処理方法。

【公開番号】特開2011−40576(P2011−40576A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186741(P2009−186741)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000162847)ステラケミファ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】