説明

感光性接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法

【課題】 ウェハの搬送エラーを改善できる感光性接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】 ベースポリマーと、光重合性化合物と、熱硬化性成分と、を含有する感光性接着剤組成物であって、該感光性接着剤組成物からなる厚さ50μmの接着剤層を厚さ400μmの5インチシリコンウェハに貼り付け、露光及び現像した後、ホットプレートにて150℃で10分間、オーブンにて150℃で2.5時間、ホットプレートにて180℃で3時間、及び、ホットプレートにて260℃で5分間加熱硬化した場合の反り量が100μm以下である、感光性接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の高性能化、高機能化に伴い、種々の形態を有する半導体パッケージが提案されている。半導体パッケージにおいて、半導体素子と半導体素子搭載用支持基材とを接着するための接着剤には、低応力性、低温接着性、耐湿信頼性、耐はんだリフロー性に加えて、半導体パッケージの機能、形態及び組立てプロセスの簡略化の手法によっては、パターン形成可能な感光性の機能を兼ね備えることが求められる場合がある。感光性とは、光を照射した部分が化学的に変化し、水溶液や有機溶剤に不溶化又は可溶化する機能である。
【0003】
この感光性を有する感光性接着剤を用いれば、フォトマスクを介して露光し、現像液を用いてパターン形成するという工程を経て、高精細な接着剤パターンを形成することができる。
【0004】
このようなパターン形成性を持つ感光性接着剤を構成する材料としては、これまで、耐熱性を特徴とする、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミド酸)あるいはポリイミド樹脂をベースとした材料が使用されていた(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−290501号公報
【特許文献2】特開2001−329233号公報
【特許文献3】特開平11−24257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、近年、半導体素子等の小型化・薄型化が進んでいる。半導体素子等の小型化・薄型化に伴い、ウェハも薄型化が進んでいる。同時に、低コストな半導体素子を得るため、ウェハサイズの大型化が進んでいる。これらの傾向(ウェハの薄型化、ウェハサイズの大型化)のため、ウェハは変形しやすく、取り扱いが難しくなってきている。そのため、従来の感光性接着剤組成物を用いた場合、薄いウェハや大きなサイズのウェハでは、搬送エラー、組立工程での歩留まりの低下、あるいは信頼性を損なうという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ウェハの搬送エラーを改善できる感光性接着剤組成物、並びに、これを用いたフィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、ベースポリマーと、光重合性化合物と、熱硬化性成分と、を含有する感光性接着剤組成物であって、該感光性接着剤組成物からなる厚さ50μmの接着剤層を厚さ400μmの5インチシリコンウェハに貼り付け、露光及び現像した後、ホットプレートにて150℃で10分間、オーブンにて150℃で2.5時間、ホットプレートにて180℃で3時間、及び、ホットプレートにて260℃で5分間加熱硬化した場合の反り量が100μm以下である、感光性接着剤組成物を提供する。
【0009】
本発明の感光性接着剤組成物において、上記光重合性化合物は、官能基当量が250〜1300である光重合性化合物を含むことが好ましい。
【0010】
かかる感光性接着剤組成物によれば、上記構成を有することにより、ウェハの搬送エラーを改善することができる。
【0011】
さらに、本発明は、ベースポリマーと、光重合性化合物と、熱硬化性成分と、を含有する感光性接着剤組成物であって、上記光重合性化合物が、官能基当量が250〜1300である光重合性化合物を含む、感光性接着剤組成物を提供する。
【0012】
かかる感光性接着剤組成物によれば、上記構成を有することにより、ウェハの搬送エラーを改善することができる。
【0013】
従来の感光性接着組成物は、上述したウェハの搬送エラーの問題のほか、熱時において接着剤や被着体からのガスの発生、硬化収縮による応力の発生、接着剤の弾性率の低下などによりはく離しやすいという問題があった。
【0014】
これに対し、本発明の感光性接着剤組成物においては、官能基当量が上記範囲内である光重合性化合物を用いることにより、熱時の優れた接着性を達成することができる。また、本発明の感光性接着剤組成物においては、官能基当量が上記範囲内である光重合性化合物を用いることにより、上記の条件で測定される反り量を十分に低減することができ、薄いウェハや大きなサイズのウェハであっても、搬送エラー、組立工程での歩留まり、及び信頼性をより確実に改善することができる。
【0015】
本発明の感光性接着剤組成物において、上記官能基当量が250〜1300である光重合性化合物は、下記一般式(1)、(4)又は(5)で表される化合物であることが好ましい。
【化1】



[式中、n及びmはそれぞれ0以上、且つ、n+m=3〜30となる数を示す。]
【化2】



[式中、p及びqはそれぞれ0以上、且つ、p+q=4〜30となる数を示す。]
【化3】



[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、r、s、t及びuはそれぞれ0以上、且つ、r+s+t+u=3〜30となる数を示す。]
【0016】
上記一般式(1)、(4)又は(5)で表される光重合性化合物を用いることにより、上記の条件で測定される反り量をより十分に低減することができ、薄いウェハや大きなサイズのウェハであっても、搬送エラー、組立工程での歩留まり、及び信頼性をより確実に改善することができる。また、上記一般式(1)、(4)又は(5)で表される光重合性化合物を用いることにより、熱時のより優れた接着性を達成することができる。尚、上記一般式(5)の(CO)と(CO)の順序は任意である。
【0017】
本発明の感光性接着剤組成物において、上記光重合性化合物は、5%質量減少温度が150℃以上である光重合性化合物を含むことが好ましい。5%質量減少温度が150℃以上である光重合性化合物を用いることにより、熱時のガスの発生を低減でき、信頼性を向上することができる。
【0018】
さらに、本発明は、ベースポリマーと、光重合性化合物と、熱硬化性成分と、を含有する感光性接着剤組成物であって、上記光重合性化合物が、下記一般式(1)、(4)又は(5)で表される化合物を含む、感光性接着剤組成物を提供する。
【化4】


[式中、n及びmはそれぞれ0以上、且つ、n+m=3〜30となる数を示す。]
【化5】



[式中、p及びqはそれぞれ0以上、且つ、p+q=4〜30となる数を示す。]
【化6】



[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、r、s、t及びuはそれぞれ0以上、且つ、r+s+t+u=3〜30となる数を示す。]
【0019】
上記一般式(1)、(4)又は(5)で表される光重合性化合物を用いることにより、反り量をより十分に低減することができ、薄いウェハや大きなサイズのウェハであっても、搬送エラー、組立工程での歩留まり、及び信頼性をより確実に改善することができる。さらに、熱時のより優れた接着性を達成することができる。尚、上記一般式(5)の(CO)と(CO)の順序は任意である。
【0020】
本発明の感光性接着剤組成物において、上記ベースポリマーは、主鎖にイミド基を有するポリマーを含むことが好ましい。ベースポリマーとして主鎖にイミド基を有するポリマーを用いることにより、より優れた熱時接着性を得ることができる。
【0021】
本発明の感光性接着剤組成物において、上記熱硬化性成分が、エポキシ化合物及び硬化剤を含むことが好ましい。熱硬化性成分としてエポキシ化合物及び硬化剤を用いることにより、より優れた熱時接着性を得ることができる。
【0022】
本発明はまた、上記本発明の感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなるフィルム状接着剤を提供する。かかるフィルム状接着剤は、上記本発明の感光性接着剤組成物からなるものであるため、ウェハの搬送エラーを改善することができる。
【0023】
本発明はまた、基材と、該基材の一方の面上に設けられた上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える接着シートを提供する。かかる接着シートは、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を備えるものであるため、ウェハの搬送エラーを改善することができる。
【0024】
本発明はまた、上記本発明のフィルム状接着剤とダイシングシートとを積層した構造を有する接着シートを提供する。かかる接着シートは、上述した本発明の接着シートの効果が得られるとともに、ダイシングシートを備えることにより、ダイボンドフィルムとしての機能とダイシングシートとしての機能とを併せ持ち、半導体装置組み立てプロセスの効率化に寄与する。
【0025】
本発明はまた、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層を露光し、露光後の接着剤層をアルカリ現像液により現像処理することにより形成される、接着剤パターンを提供する。
【0026】
本発明はまた、半導体ウェハと、該半導体ウェハの一方の面上に設けられた上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える接着剤層付半導体ウェハを提供する。
【0027】
本発明はまた、上記本発明の感光性接着剤組成物によって半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する半導体装置を提供する。
【0028】
本発明は更に、上記本発明の感光性接着剤組成物を用いて、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着する工程を有する半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ウェハの搬送エラーを改善できる感光性接着剤組成物、並びに、これを用いたフィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のフィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明の接着シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明の接着シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【図5】本発明の接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図である。
【図6】図5のIV−IV線に沿った端面図である。
【図7】本発明の接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図8】図7のV−V線に沿った端面図である。
【図9】本発明の接着剤パターンの他の一実施形態を示す上面図である。
【図10】図9のVI−VI線に沿った端面図である。
【図11】本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図12】反り量の測定方法を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0032】
本発明の感光性接着剤組成物は、ベースポリマーと、光重合性化合物と、熱硬化性成分と、を含有し、該感光性接着剤組成物からなる厚さ50μmの接着剤層を厚さ400μmの5インチシリコンウェハに貼り付け、露光及び現像した後、ホットプレートにて150℃で10分間、オーブンにて150℃で2.5時間、ホットプレートにて180℃で3時間、及び、ホットプレートにて260℃で5分間加熱硬化した場合の反り量が100μm以下であるものである。以下、各成分について説明する。
【0033】
ベースポリマーは、アルカリ可溶性基を有するポリマーであることが好ましい。アルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、及び、フェノール性水酸基などが挙げられ、中でもアルカリ性水溶液に対する高い溶解性を付与できる点で、カルボキシル基であることが好ましい。これにより、アルカリ現像液によるパターン形成性を確保できる。ベースポリマーとしては、これらのアルカリ可溶性基を末端又は側鎖に有する樹脂又は化合物を用いることが好ましい。
【0034】
上記アルカリ可溶性基を有するポリマーは、ガラス転移温度(以下、「Tg」という)が150℃以下の熱可塑性樹脂であることが好ましい。Tgは、0〜120℃の範囲にあることがより好ましく、40〜100℃の範囲にあることが特に好ましい。感光性接着剤組成物は、樹脂のTg付近で良好な貼付性を有するため、Tgが室温に近いほど、低温で貼付けることが可能である。一方で、Tgが室温付近にあると安定性の点から好ましくない。
【0035】
上記の通り、熱可塑性樹脂のTgは、150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることが特に好ましい。このような熱可塑性樹脂を用いることにより、露光後に、半導体ウェハ等の被着体に、より低い温度で貼り付けることが可能なフィルム状接着剤を得ることができる。Tgの下限は必ずしも限定されないが、20℃以上であることが好ましく、40℃以上であることが特に好ましい。Tgが150℃を超えると、本発明の感光性接着剤組成物をフィルム状にしたときに、シリコンウェハ等の被着体への貼り付け温度、及び露光後の圧着温度が高くなり、熱応力による反りの発生等、周辺部材にダメージを与えやすくなる傾向にある。また、Tgが20℃未満であると、本発明の感光性接着剤組成物をフィルム状にしたときに、フィルム表面の粘着性が強くなる傾向にあり、取り扱い性が悪くなる傾向にある。なお、上記のTgとは、粘弾性測定装置(レオメトリック社製)を用いてフィルムとして測定したときのtanδのピーク温度(主分散温度)である。
【0036】
上記熱可塑性樹脂は、アルカリ可溶性基、具体的にはカルボキシル基やフェノール性水酸基等を有する樹脂であれば、特に限定されない。ベースとなる樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、又はそれらの共重合体、それらの前駆体(ポリアミド酸)の他、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、重量平均分子量が2万〜100万の(メタ)アクリル共重合体などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、耐熱性の点からポリイミド樹脂が好ましい。上記ポリイミド樹脂は、現像性の点から、酸価が80〜180mg/KOHの範囲内であることが好ましい。更に上記ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂であり、上記ジアミンが下記式(2)又は(3)で表される芳香族ジアミンを含むことが、接着性の点で好ましい。
【0037】
【化7】



【0038】
【化8】



【0039】
このようなポリイミド樹脂を用いることにより、アルカリ現像液に対する現像性に優れる感光性接着剤組成物を得ることができる。なお、ポリイミド樹脂は、1種を単独で又は必要に応じて2種以上を混合(ブレンド)して使用することができる。
【0040】
感光性接着剤組成物において、ベースポリマーの含有量は、感光性接着剤組成物の固形分全量を基準として10〜90質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。ベースポリマーの含有量が10質量%未満であると、成膜性が低下する傾向があり、90質量%を超えると、パターン形成性、接着強度が低下する傾向がある。
【0041】
光重合性化合物としては、反り低減の観点から、官能基当量が250〜1300である光重合性化合物を用いることが好ましい。また、応力緩和性と熱時の接着性を両立させる観点から、官能基当量が250〜650である光重合性化合物を用いることが好ましく、優れた応力緩和性と熱時の優れた接着性を両立させる観点から、官能基当量が250〜580である光重合性化合物を用いることがより好ましい。官能基当量とは、官能基1個あたりの分子量(光重合性化合物の分子量を官能基数で除した値)である。官能基当量が上記範囲内である光重合性化合物は、例えば、末端に官能基を有し、かつ、分子内に長鎖の主鎖を有する化合物、または分子内に長鎖の側鎖や枝分かれした嵩高い側鎖を有する化合物などが挙げられる。上記のような光重合性化合物を用いた場合、光や熱による硬化反応によって形成された架橋構造が疎になる。末端に官能基を有し、かつ、分子内に長鎖の主鎖を有する化合物を用いた場合、官能基が末端にあるため反応点間が長くなり、これにより応力が緩和される傾向にある。また、長い側鎖、嵩高い側鎖がある化合物を用いた場合、硬化後において、長い側鎖、嵩高い側鎖が存在することで、それらの回りに空間が生じ、密な部分と疎な部分が生じる。これにより、応力が緩和される傾向にある。このため、官能基当量が250〜1300である光重合性化合物を含む感光性接着剤組成物は応力緩和性に優れ、反りを低減できる。
【0042】
一般的に、官能基当量の数値が高いほど、硬化反応によって形成される架橋構造は疎になり応力緩和性は向上するが、応力緩和性とトレードオフの関係にある熱時の優れた接着性は低下する傾向にある。また、官能基数が少ない場合も同様である。本発明において、応力緩和性と熱時の優れた接着性を両立させる観点から、上記光重合性化合物の官能基数が2以上であることが好ましい。これにより、応力緩和性に優れ、かつ、熱時の優れた接着性を有する感光性接着剤組成物を得ることができる。
【0043】
官能基当量が250〜1300である光重合性化合物は、下記一般式(1)、(4)又は(5)で表される化合物であることが好ましく、下記一般式(1)で表される化合物(メタクリレート)であることが特に好ましい。
【0044】
【化9】



【0045】
【化10】



【0046】
【化11】



【0047】
式(1)中、n及びmはそれぞれ0以上の数である。また、n及びmは、n+m=3〜30となる数であり、n+m=4〜17となる数であることがより好ましい。n+mの数値が大きいほど、応力緩和性に優れ、反りを低減できる傾向にある。しかしながら、n+mの数値が大きいほど接着強度は低下する傾向にある。一方、n+mの数値が小さいほど、応力緩和性は低下し、反りが生じやすくなるが、接着強度は向上する傾向にある。n+mの数値が上記範囲内であることにより、反りの低減と接着強度の向上を高水準で両立させることができ、その中でも特にn+m=10の場合が、応力緩和性と、接着強度とのバランスがよく、好ましい。
【0048】
式(4)中、p及びqはそれぞれ0以上の数である。また、p及びqは、p+q=4〜30となる数であり、p+q=4〜17となる数であることがより好ましい。p+qの数値が大きいほど、応力緩和性に優れ、反りを低減できる傾向にある。しかしながら、p+qの数値が大きいほど接着強度は低下する傾向にある。一方、p+qの数値が小さいほど、応力緩和性は低下し、反りが生じやすくなるが、接着強度は向上する傾向にある。p+qの数値が上記範囲内であることにより、反りの低減と接着強度の向上を高水準で両立させることができ、その中でも特にp+q=10の場合が、応力緩和性と、接着強度とのバランスがよく、好ましい。
【0049】
式(5)中、Rは水素原子又はメチル基である。また、式(5)中、r、s、t及びuはそれぞれ0以上の数である。また、r、s、t及びuは、r+s+t+u=3〜30となる数であり、r+s+t+u=4〜17となる数であることがより好ましい。r+s+t+uの数値が大きいほど、応力緩和性に優れ、反りを低減できる傾向にある。しかしながら、r+s+t+uの数値の数値が大きいほど接着強度は低下する傾向にある。一方、r+s+t+uの数値の数値が小さいほど、応力緩和性は低下し、反りが生じやすくなるが、接着強度は向上する傾向にある。r+s+t+uの数値が上記範囲内であることにより、反りの低減と接着強度の向上を高水準で両立させることができ、その中でも特にr+s+t+u=9の場合が、応力緩和性と、接着強度とのバランスがよく、好ましい。尚、上記一般式(5)の(CO)と(CO)の順序は任意である。
【0050】
また、光重合性化合物としては、紫外線や電子ビームなどの光の照射により重合及び/又は硬化する化合物であれば特に制限は無く、上記一般式(1)、(4)又は(5)で表される化合物以外の光重合性化合物も使用可能である。
【0051】
本発明で使用する光重合性化合物は、5%質量減少温度が150℃以上であることが好ましい。光重合性化合物の5%質量減少温度が150℃以上であることにより、熱時のガスの発生を低減でき、信頼性を向上することができる。
【0052】
光重合性化合物の具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、ペンテニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、ウレタンアクリレート若しくはウレタンメタクリレート、及び尿素アクリレート等が挙げられる。これらの光重合性化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
光重合性化合物の分子量は、2000以下であることが好ましく、100〜1800の範囲にあることがより好ましい。分子量が2000を超えると、感光性接着剤組成物のアルカリ水溶液への溶解性が低下する傾向にあり、また、フィルム状接着剤のタック性が低下して、低温で半導体ウェハ等の被着体に貼付けることが困難となる傾向にある。一方で、分子量の低い光重合性化合物は、組立工程の熱によりガス化する恐れがある。
【0054】
感光性接着剤組成物において、光重合性化合物の含有量は、ベースポリマー100質量部に対して20〜200質量部であることが好ましく、30〜100質量部であることがより好ましい。光重合性化合物の含有量が200質量部を超えると、光重合性化合物の重合により熱溶融時の流動性が低下し、熱圧着後の接着性が低下する傾向にある。一方、光重合性化合物の含有量が20質量部未満であると、露光後の耐溶剤性が低くなり、パターンを形成するのが困難となる傾向にある。
【0055】
熱硬化性成分は、熱により架橋反応を起こし得る反応性化合物から構成される成分である。熱硬化性成分としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの中でも、高温において優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びビスマレイミド樹脂が好ましく、作業性、生産性の点からエポキシ樹脂が特に好ましい。これらの熱硬化性成分は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
上記エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものがより好ましく、硬化性や硬化物特性の点から、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が特に好ましい。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、これらのエポキシ樹脂には、不純物イオンであるアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特に塩素イオンや加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止のために好ましい。
【0057】
上記エポキシ樹脂を使用する場合、熱硬化性成分は、エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられる。これらの中でも、フェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。このような化合物としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジェンクレゾールノボラック、ジシクロペンタジェンフェノールノボラック、キシリレン変性フェノールノボラック、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、テトラキスフェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ポリ−p−ビニルフェノール、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、数平均分子量が400〜1500の範囲内のものが好ましい。これにより、半導体装置組立加熱時に、半導体素子又は装置等の汚染の原因となる加熱時のアウトガスを抑制できる。
【0058】
感光性接着剤組成物において、熱硬化性成分の含有量は、ベースポリマー100質量部に対して5〜100質量部であることが好ましく、10〜50質量部であることがより好ましい。この含有量が5質量部未満であると、耐熱性が低下する傾向があり、100質量部を超えると、フィルム形成性が低下する傾向がある。
【0059】
本発明の感光性接着剤組成物は、更に光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤は、光照射によって遊離ラジカルを生成する化合物である。光重合開始剤は、感度を良くする観点から、300〜500nmに吸収帯を有するものが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
感光性接着剤組成物において、光重合開始剤の含有量は、特に制限されないが、ベースポリマー100質量部に対して通常0.01〜30質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。上記含有量の範囲内とすることにより、光重合開始剤が多いほど、露光量が少なくても良好なパターンを形成できることと、その一方で、光重合開始剤が多いと感度が高くなり過ぎ、取り扱いが不便になることのバランスを取ることができる。
【0061】
感光性接着剤組成物は、接着強度を向上させる等の目的で、適宜カップリング剤を含有していてもよい。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤等が挙げられるが、中でもシランカップリング剤が高い接着力を付与できる点で好ましい。
【0062】
カップリング剤を用いる場合、その使用量は、ベースポリマー100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、0.1〜20質量部であることがより好ましい。使用量が50質量部を超えると、感光性接着剤組成物の保存安定性が低下する傾向にある。
【0063】
感光性接着剤組成物は、適宜フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、ほう酸アルミ、セラミック等の非金属無機フィラー、ゴム系フィラー等の有機フィラーなどが挙げられる。これらの中でも特にシリカフィラーが好ましい。
【0064】
上記フィラーは所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、非金属無機フィラーは、フィルム状接着剤に低熱膨張性、低吸湿性を付与する目的で添加され、有機フィラーは、フィルム状接着剤に靭性を付与する目的で添加される。これら非金属無機フィラー又は有機フィラーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。フィラーを用いた場合の混合、混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル、ジェットミル等の分散機を、適宜組み合わせて行うことができる。
【0065】
フィラーを用いる場合、その使用量は、ベースポリマー100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。使用量の下限は特に制限はないが、一般に5質量部である。フィラーの使用量が100質量部を超えると、UV透過性が悪くなる傾向があり、また、接着性が低下する傾向がある。
【0066】
本発明の感光性接着剤組成物は、該感光性接着剤組成物からなる厚さ50μmの接着剤層を厚さ400μmの5インチシリコンウェハに貼り付け、露光及び現像した後、ホットプレートにて150℃で10分間、オーブンにて150℃で2.5時間、ホットプレートにて180℃で3時間、及び、ホットプレートにて260℃で5分間の加熱を順次行って硬化させた場合の反り量が100μm以下となるものである。ここで、反り量は以下の方法で測定されるものである。
【0067】
図12は、反り量の測定方法を示す模式断面図である。図12に示すように、感光性接着剤組成物からなる接着剤層1(厚さ50μm)を、シリコンウェハ8(5インチ径、厚さ400μm)に貼り付けて接着剤層付半導体ウェハ20を作製し、露光及び現像を行った後、ホットプレートにて150℃で10分間、オーブンにて150℃で2.5時間、ホットプレートにて180℃で3時間、及び、ホットプレートにて260℃で5分間の加熱を順次行って接着剤層1を硬化させる。得られたサンプルについて、接着剤層1の両端の高さが一致するように置いた状態で、非接触膜厚計(キーエンス社製「高精度形状測定システム KS−1100」(商品名))を用いて接着剤層1の表面の高低差の最大値を測定し、これを反り量Lとする。
【0068】
上記反り量は、上述したベースポリマー、光重合性化合物、熱硬化性成分、及び、必要に応じて光重合開始剤、フィラー等を配合し、それらの種類、及び配合比を調整することで達成することができる。
【0069】
本発明によれば、薄いウェハ又はサイズの大きなウェハなどを用いた場合にも、搬送エラー、歩留まり低下(再接着の際の濡れ性低下)の発生を抑制でき、且つ、熱時の接着性に優れた感光性接着剤組成物を得ることができる。特に、本発明の感光性接着剤組成物によれば、(i)露光後の良好な再接着性、(ii)半導体装置または電子部品を組み立てる際に、被着体のはく離を抑制できる安定した接着性、(iii)露光及び加熱硬化後の十分な耐熱性、及び、(iv)高い信頼性、という優れた特性を達成することができ、半導体装置または電子部品に好適に使用することができる。
【0070】
本発明のフィルム状接着剤は、上記本発明の感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなるものである。また、本発明の接着シートは、基材と、該基材の一方の面上に設けられた上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備えるものである。
【0071】
図1は、本発明のフィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すフィルム状接着剤1は、上記接着剤組成物をフィルム状に成形したものである。
【0072】
図2は、本発明の接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。図2に示す接着シート100は、基材3と、これの一方の面上に設けられたフィルム状接着剤(接着剤層)1とから構成される。図3は、本発明に係る接着シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。図3に示す接着シート110は、基材3と、これの一方面上に設けられたフィルム状接着剤(接着剤層)1とカバーフィルム2とから構成される。
【0073】
フィルム状接着剤1は、上記感光性接着剤組成物を構成する各成分を有機溶媒中で混合し、必要に応じて混合液を混練してワニスを調製し、基材3上にこのワニスの層を形成させ、加熱によりワニス層を乾燥した後に基材3を除去する方法で得ることができる。このとき、基材3を除去せずに、接着シート100、110の状態で保存及び使用することもできる。
【0074】
上記の混合及び混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行うことができる。ワニス層の乾燥は、乾燥中に熱硬化性成分が十分には反応しない温度で、且つ、溶媒が十分に揮散する条件で行う。具体的には、通常60〜180℃で、0.1〜90分間加熱することによりワニス層を乾燥する。乾燥前の上記ワニス層の好ましい厚みは1〜100μmである。この厚みが1μm未満であると、接着固定機能が損なわれる傾向にあり、100μmを超えると、後述する残存揮発分が多くなる傾向にある。得られたワニス層の好ましい残存揮発分は10質量%以下である。この残存揮発分が10質量%を超えると、組立加熱時の溶媒揮発による発泡が原因で、接着剤層内部にボイドが残存し易くなり、耐湿信頼性が損なわれる傾向にあり、また、加熱時に発生する揮発成分による周辺材料、あるいは部材を汚染する可能性も高くなる傾向がある。なお、上記の残存揮発成分の測定条件は次の通りである。すなわち、50mm×50mmサイズに切断したフィルム状接着剤について、初期の質量をM1とし、このフィルム状接着剤を160℃のオーブン中で3時間加熱した後の質量をM2とし、〔(M2−M1)/M1〕×100=残存揮発分(%)とした時の値である。
【0075】
また、上記の熱硬化性成分が十分には反応しない温度とは、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社製「DSC−7型」(商品名))を用いて、サンプル量:10mg、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときの反応熱のピーク温度以下の温度である。
【0076】
ワニスの調製に用いる有機溶媒、すなわちワニス溶剤は、材料を均一に溶解又は分散できるものであれば、特に制限はない。例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。これらの中でも、残存揮発分の点、均一な溶解性、分散性の点からN−メチル−ピロリジノンが特に好ましい。
【0077】
基材3は、上記の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルムを基材3として用いることができる。基材3としてのフィルムは2種以上組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。
【0078】
また、本発明のフィルム状接着剤1とダイシングシートとを積層し、接着シートとすることもできる。上記ダイシングシートは、基材上に粘着剤層を設けたシートであり、上記の粘着剤層は、感圧型又は光硬化型のどちらでも良い。また、上記の基材はエキスパンド可能な基材が好ましい。このような接着シートとすることにより、ダイボンドフィルムとしての機能とダイシングシートとしての機能を併せ持つダイシング・ダイボンド一体型接着シートが得られる。
【0079】
上記のダイシング・ダイボンド一体型接着シートとして具体的には、図4に示すように、基材フィルム7、粘着剤層6及び本発明のフィルム状接着剤1がこの順に形成されてなる接着シート120が挙げられる。
【0080】
図5は、本発明に係る接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図であり、図6は図5のIV−IV線に沿った端面図である。図5、6に示す接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8と、これの一方面上に設けられた上記感光性接着剤組成物からなるフィルム状接着剤(接着剤層)1と、を備える。
【0081】
接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8上に、フィルム状接着剤1を加熱しながらラミネートすることにより得られる。フィルム状接着剤1は、上記感光性接着剤組成物からなるフィルムであるため、例えば、室温(25℃)〜150℃程度の低温で半導体ウェハ8に貼付けることが可能である。このフィルム状接着剤(接着剤層)1は、パターンを有することが可能であり、また、露光後の再接着性に優れる。
【0082】
本発明の接着剤パターンは、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層をフォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層をアルカリ水溶液により現像処理することにより形成することができる。また、本発明の接着剤パターンは、被着体上に積層された上記フィルム状接着剤からなる接着剤層を、直接描画露光技術を用いて直接パターンを描画露光し、露光後の接着剤層を現像処理することにより形成されるものでもよい。
【0083】
上記接着剤パターンの形状は特に限定されないが、例えば、貫通穴が設けられた正方形又は円状のパターン、額縁状のパターンの他、棒状、四角、丸状の形状等が挙げられる。これにより、スペーサーとしても好適に使用できる。
【0084】
パターン形成方法については特に限定されないが、例えば以下のような方法が挙げられる。フィルム状にした感光性接着剤組成物を、シリコンウェハ等の被着体上にロールで加圧することにより積層する。積層時の温度は、好ましくは20〜150℃である。その上にフォトマスクを載せ、高精度平行露光機(ミカサ株式会社製)を用いて、露光量:100〜1000mJ/cmの条件で露光した後(紫外線を照射した後)、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)1.0〜5.0質量%溶液を用いてスプレー現象する。好ましくはテトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%溶液を用いるのが好ましい。また、上記のパターン形成時のライン幅は0.01mm〜20mmの範囲内であることが好ましい。
【0085】
接着剤パターンを形成する基板(被着体)は、特に限定されるものではなく、例えば、有機基板、半導体ウェハ、半導体素子、インターポーザーもしくはマザーボードと呼ばれるようなフレキシブル基板やリジッド基板、リードフレーム、有機物もしくは無機物等で構成される絶縁基板、アクリル樹脂、上述の基材3、ガラス等の透明基板等が挙げられる。
【0086】
図7、図9は、本発明の接着剤パターンの一実施形態を示す上面図であり、図8は図7のV−V線に沿った端面図であり、図10は図9のVI−VI線に沿った端面図である。図7、8、9、10に示す接着剤パターン1a及び1bは、被着体としての半導体ウェハ8上において、略正方形の辺に沿ったパターン又は正方形のパターンを有するように形成されている。
【0087】
接着剤パターン1a及び1bは、感光性接着剤組成物からなる接着剤層1を被着体としての半導体ウェハ8上に形成して接着剤層付半導体ウェハ20を作製し、接着剤層1をフォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層1をアルカリ現像液により現像処理することにより形成される。また、これにより、接着剤パターン1a,1bが形成された接着剤層付半導体ウェハ20a,20bが得られる。
【0088】
本発明の半導体装置は、上記本発明の感光性接着剤組成物を用いて被着体に接着された半導体チップを有する。
【0089】
ここで、半導体素子等の部品と支持部材とを接合するために、本実施形態のフィルム状接着剤を好適に使用することができる。半導体素子、基板、又はガラス等の透明基板等の部品にフィルム状接着剤を用いて、接着剤層を露光及び現像によりパターン化した後、さらに半導体素子、基板、又はガラス等の透明基板等の支持部材に再熱圧着し、フィルム状接着剤を熱硬化、又は光硬化によって接着強度を向上させ、信頼性の高い装置を得ることができる。また、上記の接着された部分は、ダイシング等によって裁断され、個片化することもできる。
【0090】
半導体装置としては、特に限定されることはなく、例えば、半導体素子等をパッケージングした半導体パッケージ、固体撮像素子を用いたカメラモジュール又はカメラセンサー、貫通穴が設けられている半導体装置等が挙げられる。
【0091】
図11は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図11に示す半導体装置200において、半導体素子12は本発明のフィルム状接着剤1を介して半導体素子搭載用支持部材13に接着され、半導体素子12の接続端子(図示せず)はワイヤ14を介して外部接続端子(図示せず)と電気的に接続され、封止材15によって封止されている。
【0092】
図11に示す半導体装置(半導体パッケージ)は、例えば、図9に示す半導体ウェハ20bを破線Dに沿ってダイシングし、ダイシング後のフィルム状接着剤付き半導体素子を半導体素子搭載用支持部材13に加熱圧着して両者を接着させ、その後、ワイヤボンディング工程、必要に応じて封止材による封止工程等の工程を経ることにより得ることができる。上記加熱圧着における加熱温度は、通常、20〜250℃であり、荷重は、通常、0.01〜20kgfであり、加熱時間は、通常、0.1〜300秒間である。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
(ポリイミドP1の合成)
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、3,5−ジアミノ安息香酸(分子量152.2、以下「DABA」と略す)1.89g、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「D−400」(商品名)、分子量452.4)15.21g、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学社製「LP−7100」(商品名)、分子量248.5)0.39g、及び、N−メチル−2−ピロリジノン(以下「NMP」と略す)116gを仕込んだ。次いで、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(分子量326.3、以下「ODPA」と略す)16.88gを、上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、該フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、更に室温で5時間攪拌した。次に、該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン70gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させた。得られた沈殿物を真空乾燥機で乾燥し、ポリイミド樹脂(以下「ポリイミドP1」という)を得た。
【0095】
(ポリイミドP2の合成)
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に5,5’−メチレン−ビス(アントラニリックアシッド)(以下「MBAA」と略す、分子量286.28)2.15g、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「ED400」(商品名)、分子量433)15.59g、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学製「LP−7100」(商品名)、分子量348.4)2.26g、及び、NMP80gを仕込んだ。次いで、ODPA 17gをNMP40gに溶解した溶液を、反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドP1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP2」という。)を得た。
【0096】
(実施例1)
ポリイミドP1、光重合性化合物としてのエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学社製「BPE−500」(商品名))及びウレタンアクリレート(東亜合成社製「M313」(商品名))、光重合開始剤としてのビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「I−819」(商品名))、熱硬化性樹脂としてのビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成社製「YDF−8170」(商品名))、上記エポキシ樹脂の硬化剤としてのα,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン(「TrisP−PA」(商品名)、本州化学社製)、並びに、シリカフィラー(日本アエロジル社製「R972」(商品名))を、下記表1に示す組成(単位:質量部)となるように、NMP中で均一に混合して、フィルム状接着剤形成用のワニス(感光性接着剤組成物)を調製した。このワニスを、離型用シリコーンで表面処理したPETフィルム上に塗布し、オーブン中にて80℃で20分間、次いで120℃で20分間乾燥して、PETフィルム上に厚さ50μmの接着剤層が形成されてなる接着シートを得た。
【0097】
(実施例2〜15及び比較例1〜6)
下記表1〜4に示す材料及び組成とした以外は実施例1と同様にして、実施例2〜15及び比較例1〜6の接着シートを作製した。
【0098】
なお、表1〜4に示す材料の内容は下記のものを意味する。
BPE−80N:新中村化学社製、一般式(1)で表されるエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(n+m=2.3)、官能基当量=226、5%質量減少温度=320℃
BPE−100:新中村化学社製、一般式(1)で表されるエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(n+m=2.6)、官能基当量=239.5、5%質量減少温度=330℃
BPE−200:新中村化学社製、一般式(1)で表されるエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(n+m=4)、官能基当量=270、5%質量減少温度=340℃
BPE−500:新中村化学社製、一般式(1)で表されるエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(n+m=10)、官能基当量=402.5、5%質量減少温度=350℃以上
BPE−900:新中村化学社製、一般式(1)で表されるエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(n+m=17)、官能基当量=556.7、5%質量減少温度=350℃以上
BPE−1300N:新中村化学社製、一般式(1)で表されるエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(n+m=30)、官能基当量=843、5%質量減少温度=350℃以上
【0099】
ABE−300:新中村化学社製、一般式(4)で表されるエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(p+q=3)、官能基当量=233、5%質量減少温度=350℃以上
A−BPE−4:新中村化学社製、一般式(4)で表されるエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(p+q=4)、官能基当量=256、5%質量減少温度=350℃以上
A−BPE−10:新中村化学社製、一般式(4)で表されるエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(p+q=10)、官能基当量=388、5%質量減少温度=350℃以上
A−BPE−20:新中村化学社製、一般式(4)で表されるエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(p+q=20)、官能基当量=608、5%質量減少温度=350℃
A−BPE−30:新中村化学社製、一般式(4)で表されるエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(p+q=30)、官能基当量=828、5%質量減少温度=310℃
AB1206PE:新中村化学社製、一般式(5)で表されるプロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(r+s=12、t+u=6)、官能基当量=256、5%質量減少温度=330℃
【0100】
MIS−115:綜研化学社製、アクリルポリマー
M313:東亜合成社製、ウレタンアクリレート、官能基当量=約160、5%質量減少温度=350℃以上
YDF−8170:東都化成社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
TrisP−PA:本州化学社製、トリスフェノール化合物(α,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン)
R972:日本アエロジル社製、疎水性フュームドシリカ(平均粒径:約16nm)
I819:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド
【0101】
【表1】



【0102】
【表2】



【0103】
【表3】



【0104】
【表4】



【0105】
作製した接着シートについて、以下に示す方法により、パターン形成性、接着力、反り、及び、搬送エラーを評価した。評価結果は表5〜8にまとめて示す。
【0106】
(1)パターン形成性
接着シートを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)に、ロールと支持体とを有する装置(株式会社ラミーコーポレーション製「HOTDOG 12DX」(商品名))を用いて、温度:50℃、線圧:4kgf/cm、送り速度:0.5m/minの条件で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてラミネートした。次に、接着シートのPETフィルム上にフォトマスク(3mm×3mmの正方形のネガ型フォトマスク)を載せ、高精度平行露光機(ミカサ株式会社製)を用い、PETフィルム側から露光量:1000mJ/cmの条件で紫外線を照射した。PETフィルムをはく離し、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%溶液を用いて1.5kgf/cmの圧力でスプレー現像した。現像後、水洗し、パターン形成(ライン幅1mm)されているかを確認し、パターン形成されていた場合を「A」、パターン形成されていなかった場合を「B」として評価した。
【0107】
(2)せん断接着力
接着シートを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)に、ロールと支持体とを有する装置(株式会社ラミーコーポレーション製「HOTDOG 12DX」(商品名))を用いて、温度:50℃、線圧:4kgf/cm、送り速度:0.5m/minの条件で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてラミネートした。次に、高精度平行露光機(ミカサ株式会社製)を用いて、PETフィルム側から露光量:1000mJ/cmの条件で紫外線を照射した。露光直後(1分以内)、80℃のホットプレートに1分間放置した。その後、PETフィルムをはく離し、接着剤層上に感圧型のダイシングテープをラミネートした。その後、ダイサーを用いてシリコンウェハを接着剤層とともに3mm×3mmサイズに裁断して、接着剤層が積層されたシリコンチップを得た。この接着剤層付きシリコンチップを10mm×10mm×0.55mm厚のガラス基板上に、接着剤層がシリコンチップとガラス基板に挟まれる向きで載せ、120℃の熱盤上で500gf、10秒の条件で熱圧着した。その後、160℃のオーブン中で3時間加熱し、接着剤層を加熱硬化させた。得られたサンプルについて、Dage社製の接着力試験機「Dage−4000」(商品名)を用いて、260℃の熱盤上に20秒間放置後、測定速度:50μm/秒、測定高さ:50μmの条件でシリコンチップ側にせん断方向の外力を加えたときの最大応力を260℃におけるせん断接着力として測定した。
【0108】
(3)反り
接着シートを、シリコンウェハ(5インチ径、厚さ400μm)に、ロールと支持体とを有する装置(株式会社ラミーコーポレーション製「HOTDOG 12DX」(商品名))を用いて、温度:50℃、線圧:4kgf/cm、送り速度:0.5m/minの条件で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてラミネートした。次に、高精度平行露光機(ミカサ株式会社製)を用いて、PETフィルム側から露光量:1000mJ/cmの条件で紫外線を照射した。露光直後(1分以内)、80℃のホットプレートに1分間放置した。その後、PETフィルムをはく離し、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%溶液を用いて1.5kgf/cmの圧力でスプレー現像した。現像後、水でよく洗い、スピン乾燥(回転数:4000rpm、乾燥時間:30秒間)を行った。その後、150℃で10分間ホットプレートを用いて加熱し、次いで150℃で2.5時間オーブンを用いて加熱し、次いで180℃で3時間ホットプレートを用いて加熱し、更に260℃で5分間ホットプレートを用いて加熱した。得られたサンプルについて、図12を用いて先に説明したように、反り量Lを非接触膜厚計(キーエンス社製「KS−1100」(商品名))を用いて測定した。
【0109】
(4)搬送エラー
上記反り量の測定に用いたサンプルを、スピン現像機(ミクロ技研製「高圧スピン現像機」)の支持体で吸着し、吸着エラーの発生の有無を確認することで、搬送エラーを評価した。吸着エラーが生じなかった場合を「A」、吸着エラーが生じた場合を「B」として評価した。
【0110】
【表5】



【0111】
【表6】



【0112】
【表7】



【0113】
【表8】



【0114】
表5〜8に示した結果から明らかなように、実施例の接着シートは、反り量がいずれも少なく、搬送エラーが発生せず、作業性が優れていることが確認された。一方、比較例の接着シートは、パターン形成性は良好であるものの、反り量が100μmを超え、搬送エラーが発生し、作業性に劣ることが確認された。
【符号の説明】
【0115】
1…フィルム状接着剤(接着剤層)、1a,1b…接着剤パターン、2…カバーフィルム、3…基材フィルム(基材)、6…粘着剤層、7…基材フィルム、8…半導体ウェハ、12…半導体素子、13…半導体素子搭載用支持部材、14…ワイヤ、15…封止材、20,20a,20b…接着剤層付半導体ウェハ、100,110,120…接着シート、200…半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースポリマーと、光重合性化合物と、熱硬化性成分と、を含有する感光性接着剤組成物であって、
該感光性接着剤組成物からなる厚さ50μmの接着剤層を厚さ400μmの5インチシリコンウェハに貼り付け、露光及び現像した後、ホットプレートにて150℃で10分間、オーブンにて150℃で2.5時間、ホットプレートにて180℃で3時間、及び、ホットプレートにて260℃で5分間加熱硬化した場合の反り量が100μm以下である、感光性接着剤組成物。
【請求項2】
ベースポリマーと、光重合性化合物と、熱硬化性成分と、を含有する感光性接着剤組成物であって、
前記光重合性化合物が、官能基当量が250〜1300である光重合性化合物を含む、感光性接着剤組成物。
【請求項3】
前記官能基当量が250〜1300である光重合性化合物が、下記一般式(1)、(4)又は(5)で表される化合物である、請求項2記載の感光性接着剤組成物。
【化1】



[式中、n及びmはそれぞれ0以上、且つ、n+m=3〜30となる数を示す。]
【化2】



[式中、p及びqはそれぞれ0以上、且つ、p+q=4〜30となる数を示す。]
【化3】



[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、r、s、t及びuはそれぞれ0以上、且つ、r+s+t+u=3〜30となる数を示す。]
【請求項4】
前記ベースポリマーが、主鎖にイミド基を有するポリマーを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項5】
前記熱硬化性成分が、エポキシ化合物及び硬化剤を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項6】
ベースポリマーと、光重合性化合物と、熱硬化性成分と、を含有する感光性接着剤組成物であって、
前記光重合性化合物が、下記一般式(1)、(4)又は(5)で表される化合物を含む、感光性接着剤組成物。
【化4】



[式中、n及びmはそれぞれ0以上、且つ、n+m=3〜30となる数を示す。]
【化5】



[式中、p及びqはそれぞれ0以上、且つ、p+q=4〜30となる数を示す。]
【化6】



[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、r、s、t及びuはそれぞれ0以上、且つ、r+s+t+u=3〜30となる数を示す。]
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなるフィルム状接着剤。
【請求項8】
基材と、該基材の一方の面上に設けられた請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える接着シート。
【請求項9】
請求項7記載のフィルム状接着剤とダイシングシートとを積層した構造を有する接着シート。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層を露光し、露光後の接着剤層をアルカリ現像液により現像処理することにより形成される、接着剤パターン。
【請求項11】
半導体ウェハと、該半導体ウェハの一方の面上に設けられた請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える接着剤層付半導体ウェハ。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物によって半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する半導体装置。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物を用いて、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着する工程を有する半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−261026(P2010−261026A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88922(P2010−88922)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】