説明

感光性樹脂組成物、絶縁膜、保護膜および電子機器

【課題】 本発明の目的は、絶縁膜または保護膜とした際に高弾性率で比較的高い歩留まりを実現でき、かつアルカリ現像性に優れる感光性樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】 本発明の感光性樹脂組成物は、メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂と、感光剤と、前記メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂の配向度を向上する機能を有する配向助剤と、を含むことを特徴とする。本発明の絶縁膜は、上記に記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする。本発明の保護膜は、上記に記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする。本発明の電子機器は、上記に記載の保護膜を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、保護膜、絶縁膜および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜には、耐熱性に優れ、かつ卓越した電気特性、機械特性等を有するポリベンゾオキサゾール樹脂やポリイミド樹脂が用いられてきた。
ここでポリベンゾオキサゾール樹脂やポリイミド樹脂を用いた場合のプロセスを簡略化するために、感光材のジアゾキノン化合物をこれらの樹脂と組み合わせたポジ型感光性樹脂組成物も使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平1−46862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記に記載した従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
従来の半導体素子の表面保護膜および層間絶縁膜は、膜の弾性率が充分に高くなかった。そのため、封止樹脂によって半導体パッケージを作製する際に、封止樹脂に含まれる無機充填材等が表面保護膜等の表面を突き破ったり、半田リフローのプロセスにより膜表面に皺やクラック等が発生したりして、半導体パッケージの歩留まりを低下させる場合があった。一方、高弾性率の膜では、溶剤への溶解性が低いためにアルカリ現像液で良好に現像できない場合があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、絶縁膜または保護膜とした際に高弾性率で比較的高い歩留まりを実現でき、かつアルカリ現像性に優れる感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記(1)〜(12)に記載の本発明により達成される。
(1)メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂と、感光剤と、前記メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂の配向度を向上する機能を有する配向助剤と、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
(2)前記配向助剤は、アルコール類を含むものである上記(1)に記載の感光性樹脂組成物。
(3)前記配向助剤の含有量は、前記感光性樹脂組成物全体の3〜30重量%である上記(1)または(2)に記載の感光性樹脂組成物。
(4)前記メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂は、メソゲン基を有するポリイミド前駆体およびメソゲン基を有するポリベンゾオキサゾール前駆体の少なくとも一方を含むものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(5)前記メソゲン基は、エステル基、シクロヘキセニル基およびビフェニル基の少なくとも1種以上を含むものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(6)上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする絶縁膜。
(7)上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする保護膜。
(8)半導体素子または液晶表示素子の保護膜として用いられるものである上記(7)に記載の保護膜。
(9)保護膜の厚さが、0.1〜50μmである上記(8)に記載の保護膜。
(10)保護膜の弾性率が3.5〜8.0MPaである上記(8)または(9)に記載の保護膜。
(11)上記(7)ないし(10)のいずれかに記載の保護膜を有することを特徴とする電子機器。
(12)上記(6)に記載の絶縁膜を有することを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると絶縁膜または保護膜とした際に高弾性率で比較的高い歩留まりを実現でき、かつアルカリ現像性に優れる感光性樹脂組成物を得ることができる。
また、配向助剤としてアルコール類を用いた場合、特に弾性率の向上効果に優れていた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の感光性樹脂組成物、絶縁膜、保護膜および電子機器について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂と、感光剤と、前記メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂の配向度を向上する機能を有する配向助剤と、を含むことを特徴とする。
本発明の絶縁膜は、上記に記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする。
本発明の保護膜は、上記に記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする。
本発明の電子機器は、上記に記載の保護膜を有することを特徴とする。
【0008】
まず、感光性樹脂組成物について説明する。
前記感光性樹脂組成物は、メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂を含む。これにより、紫外線等の活性照射線を照射により溶解度の差を設けることができ、それによって選択的に樹脂を溶解させることができる。さらに、得られる保護膜等の機械的強度に優れることができる。
【0009】
このメソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂のベースとなる前記アルカリ可溶性樹脂としては、例えばクレゾール型ノボラック樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、メタクリル酸樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等のアクリル系樹脂、水酸基、カルボキシル基等を含む環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。これらの中でもポリアミド系樹脂が好ましく、具体的にはポリベンゾオキサゾール構造およびポリイミド構造の少なくとも一方を有し、かつ主鎖または側鎖に水酸基、カルボキシル基、エーテル基またはエステル基を有する樹脂、ポリベンゾオキサゾール前駆体構造を有する樹脂、ポリイミド前駆体構造を有する樹脂、ポリアミド酸エステル構造を有する樹脂等が挙げられる。このようなポリアミド系樹脂としては、例えば下記式(1)で示されるポリアミド系樹脂を挙げることができる。
【0010】
【化1】

【0011】
一般式(1)で示されるポリアミド系樹脂は、例えばXの構造を有するジアミン、ビス(アミノフェノール)またはジアミノフェノール等から選ばれる化合物と、Yの構造を有するテトラカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物、ジカルボン酸またはジカルボン酸ジクロライド、ジカルボン酸誘導体、ヒドロキシジカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸誘導体等から選ばれる化合物とを反応して得られる。なお、ジカルボン酸の場合には反応収率等を高めるため、1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール等を予め反応させた活性エステルの型のジカルボン酸誘導体を用いてもよい。
この式(1)で示されるポリアミド樹脂を、例えば300〜400℃で加熱すると脱水閉環し、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、または両者の共重合体という形で耐熱性樹脂が得られる。
【0012】
前記式(1)で示されるXは環状化合物基であり、例えばベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族化合物、ビスフェノール類、ピロール類、フラン類等の複素環式化合物等が挙げられ、より具体的には下記式(2)で示されるものを好ましく挙げることができる。
【0013】
【化2】

【0014】
式(1)で示すように、Xには、Rが0〜2個結合される(式(2)において、Rは省略)。
は、水酸基または−O−Rであり、Rが炭素数1〜15の有機基である。Rの具体例としては、ホルミル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーブトキシカルボニル基、フェニル基、ベンジル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。

ここで、Rは、水酸基のアルカリ水溶液に対する溶解性を調節する目的で用いられる。
【0015】
これらの中でも特に好ましいものとしては、式(2−1)、式(2−2)および式(2−3)より選ばれるものであり、これらは2種以上用いても良い。これにより、加工性、膜物性を特に向上することができる。
【0016】
前記式(1)で示されるYは、環状化合物基であり、前記Xと同様のものが挙げられ、例えばベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族化合物、ビスフェノール類、ピロール類、フラン類、ピリジン類等の複素環式化合物等が挙げられ、より具体的には下記式(3)で示されるものを好ましく挙げることができる。
【0017】
【化3】

【0018】
式(1)で示すように、Yには、Rが0〜4個結合される(式(3)において、Rは省略)。
は、水酸基、カルボキシル基、−O−R、−COORであり、それぞれ同じであっても異なっていても良い。Rは炭素数1〜15の有機基である。Rの具体例としては、ホルミル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーブトキシカルボニル基、フェニル基、ベンジル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
但し、Rとして水酸基が無い場合、Rの少なくとも1つはカルボキシル基でなければならない。また、Rとしてカルボキシル基が無い場合、Rの少なくとも1つは水酸基でなければならない。
ここで、Rは、水酸基のアルカリ水溶液に対する溶解性を調節する目的で用いられる。
【0019】
これらの中でも特に好ましいものとしては、式(3−1)、式(3−2)および式(3−3)より選ばれるものであり、これらは2種以上用いても良い。これにより、加工性、膜特性を特に向上することができる。
【0020】
また、前記アルカリ可溶性樹脂のベース樹脂としては、下記式(4)で示されるポリアミド系樹脂を用いても良い。これにより、保存性をより向上することができる。
【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
前記アルカリ可溶性樹脂は、式(4)で示されるポリアミド系樹脂が好ましく、具体的には前記同様のXの構造を有するジアミンまたはビス(アミノフェノール)、ジアミノフェノール等から選ばれる化合物と、前記Yの構造を有するテトラカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物、ジカルボン酸またはジカルボン酸ジクロライド、ジカルボン酸誘導体、ヒドロキシジカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸誘導体等から選ばれる化合物との反応で得られる繰り返し単位(式(4)中の繰り返し単位a部)と、前記Zの構造を有するシリコンジアミンと、前記Yの構造を有するテトラカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物、ジカルボン酸或いはジカルボン酸ジクロライド、ジカルボン酸誘導体、ヒドロキシジカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸誘導体等から選ばれる化合物との反応で得られる繰り返し単位(式(4)中の繰り返し単位b部)とを有する共重合体であることが好ましい。これにより、保存性を向上することができる。
【0024】
前記Zとしては、具体的には式(6)で示される構造を挙げることができる。
【0025】
【化6】

【0026】
一般式(4)で示される構造を含むポリアミド系樹脂のZは、例えばシリコンウエハーのような基板に対して、特に優れた密着性が必要な場合に用いる。この際、式(4)におけるa、bの割合は、特に限定されないが、bの割合が40モル%以下であることが好ましく、特に30モル%以下であることが好ましい。bの使用割合が前記範囲内であると、優れた密着性を維持した状態で、露光部の溶解性およびパターン加工性に優れる。
【0027】
また、上述のポリアミド系樹脂(例えば式(1)または式(4)で示されるポリアミド系樹脂)は、該ポリアミド系樹脂の末端のアミノ基を、アルケニル基またはアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基、または環式化合物基を含む酸無水物を用いてアミドとしてキャップすることが好ましい。これにより、硬化膜の機械特性を向上することができる。このような、アミノ基と反応した後のアルケニル基またはアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基または環式化合物基を含む酸無水物に起因する基としては、例えば式(7)で示されるアルケニル基を有する基、式(8)で示されるアルキニル基を有する基等を挙げることができる。
【0028】
【化7】

【0029】
【化8】

【0030】
これらの中で特に好ましいものとしては、式(7−1)、式(7−7)および式(8−1)より選ばれるものであり、これらは2種以上用いても良い。これにより、特に硬化膜の機械特性を向上することができる。
【0031】
本発明で用いるメソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂は、上述のようなアルカリ可溶性樹脂がメソゲン基を有しているものである。前記メソゲン基は、前記アルカリ可溶性樹脂の側鎖に結合していても、主鎖に結合していても良いが、主鎖に結合していることが好ましい。これにより、得られる保護膜等の膜の機械特性がより向上する。
【0032】
前記メソゲン基が主鎖に結合する場合、例えば前述した式(2−3)、式(2−6)で示されるX構造のAの部分にメソゲン基が取り込まれている構造、式(3−3)、式(3−7)で示されるY構造のAの部分にメソゲン基が取り込まれている構造等が挙げられる。具体的には、式(9)に示すような構造を例示することができる。
【0033】
【化9】

【0034】
前記メソゲン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、エチニル基、ビニル基、n−アルキル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基、ケトン基、エーテル基、エステル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、ビフェニル基、シアノ基等が挙げられる。これらの中でもエステル基、シクロヘキセニル基およびビフェニル基の少なくとも1種以上を含むことが好ましい。これにより、膜の弾性率を特に向上することができる。
【0035】
前記メソゲン基の含有量は、前記メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂全体の1〜40重量%が好ましく、特に5〜30重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると機械特性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えるとアルカリ現像液への溶解性が低下する場合がある。
【0036】
前記メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えばメソゲン基を有するポリイミド前駆体およびメソゲン基を有するポリベンゾオキサゾール前駆体の少なくとも一方を含むものであることが好ましく、より具体的には下記一般式(10)により表すことができる。
【0037】
【化10】

【0038】
前記感光性樹脂組成物は、感光剤を含む。これにより、紫外線等の照射により化学反応を生じアルカリ水溶液に溶解しやすくなり、溶解度の差異を設けることができる。
前記感光剤としては、例えばフェノール化合物と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸または1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸とのエステルが挙げられる。具体的には、式(11)〜式(15)に示すエステル化合物を挙げることができる。これらは2種以上用いても良い。なお、式(11)〜(15)中のQは、水素原子または1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニル基または1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニル基を示す。
【0039】
【化11】

【0040】
【化12】

【0041】
【化13】

【0042】
【化14】

【0043】
【化15】

【0044】
前記感光剤の含有量は、前記感光性樹脂組成物全体の1〜50重量%が好ましく、特に5〜30重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に感度に優れる。
【0045】
前記感光性樹脂組成物は、前記メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂の配向度を向上する機能を有する配向助剤を含むことを特徴とする。これにより、メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂の配向度を向上することができ、それによって得られる保護膜等の機械的強度を向上することができる。
本発明者らは保護膜等の機械的強度を向上させるために、ベースとなるアルカリ可溶性樹脂について検討し、メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂が機械的強度を向上させるのに有効であると推測し実験を行ったが、十分な結果が得られなかった。そこで、その理由について調査し、メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂の配向が不十分であるため、所望の結果が得られないことを見出した。そこで、配向助剤を併用することでメソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂の配向度を向上させ、得られる保護膜等の機械的強度を向上させる手法を検討し、本発明を完成させるに至った。
【0046】
前記配向助剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類、酢酸、酪酸、安息香酸等のカルボン酸類、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−アルキ610、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、アセチルクエン酸トリブチル等が挙げられる。これらの中でもアルコール類が好ましい。これにより、弾性率を特に向上することができる。
【0047】
前記配向助剤の含有量は、特に限定されないが、前記感光性樹脂組成物全体の3〜30重量%が好ましく、特に5〜15重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると弾性率を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると弾性率を向上する効果が低下する場合がある。
【0048】
前記感光性樹脂組成物は、特に限定されないが、さらにフェノール性水酸基を有する化合物を併用することが好ましい。これにより、より高感度にすることができる。さらに、現像時に現像残り(スカム)無く高解像度でパターニングできる。
このような、フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、式(16)〜式(22)で示されるものを挙げることができる。
【0049】
【化16】

【0050】
【化17】

【0051】
【化18】

【0052】
【化19】

【0053】
【化20】

【0054】
【化21】

【0055】
【化22】

【0056】
これらのフェノール性水酸基を有する化合物の中でも、式(16−1)、式(17−1)および式(21−1)より選ばれるものが好ましい。これらは、2種以上用いても良い。これにより、特に感度を向上することができる。
【0057】
前記フェノール性水酸基を有する化合物の含有量は、特に限定されないが、前記メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、特に1〜20重量部が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に感度に優れる。
【0058】
前記感光性樹脂組成物には、必要によりレベリング剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤およびそれらの各反応物等の添加剤を添加することができる。
【0059】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤に溶解し、ワニス状にして使用することが好ましい。溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられ、単独でも混合して用いても良い。
【0060】
次に、絶縁膜、保護膜および電子機器について説明する。
本発明の絶縁膜および保護膜は、例えば下記の工程を経て得ることができる。
上述した感光性組成物を支持体(例えばシリコンウエハー、セラミック基板、アルミ基板等)に塗布する(塗布工程)。塗布量は、半導体素子上に塗布する場合、硬化後の膜の厚さが、例えば0.1〜30μmになるよう塗布する。膜の厚さが前記下限値を下回ると半導体素子の保護(表面)膜としての機能を十分に発揮することが困難となる場合があり、前記上限値を越えると微細な加工パターンを得ることが困難となる場合がある。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等を挙げることができる。
【0061】
次に、例えば60〜130℃でプリベークして塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に化学線を照射する(照射工程)。化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が使用できるが、例えば200〜500nmの波長のものが好ましい。
【0062】
次に、化学線を照射した部分を現像液で溶解除去することによりレリーフパターンを得る(現像工程)。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第1アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第2アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第3アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム塩等のアルカリ類の水溶液およびこれにメタノール、エタノール等のアルコール類の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を好適に使用することができる。現像方法としては、例えばスプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。
【0063】
次に、現像によって形成したレリーフパターンをリンス(洗浄)する(リンス工程)。リンス液としては、例えば蒸留水を使用する。
【0064】
次に、加熱処理を行い、閉環構造(例えばオキサゾール環、イミド環等)を形成し、耐熱性に富む最終パターンを得る(加熱工程)。この加熱工程により、上述の樹脂組成物の硬化物とすることができる。
加熱処理温度は、特に限定されないが、150〜380℃が好ましく、特に280〜380℃が好ましい。
【0065】
このようにして得られた上述の感光性樹脂組成物の硬化物は、硬化物を形成する支持体によって、半導体素子の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート膜、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜、表示装置における素子の層間絶縁膜等として用いることができる。
【0066】
前記保護膜の厚さは、特に限定されないが、0.1〜50μmが好ましく、特に1〜30μmが好ましい。厚さが前記範囲内であると、特に加工性と保護膜の膜物性とのバランスに優れる。
【0067】
また、前記保護膜の弾性率は、特に限定されないが、3.5〜8MPaが好ましく、特に4〜7MPaが好ましい。弾性率が前記範囲内であると、保護膜を薄くしても強度を維持することができる。
【0068】
半導体装置用途として具体的に説明すると、半導体素子上に上述の感光性樹脂組成物の硬化物で構成される膜を形成して得られるパッシベーション膜、半導体素子上に形成されたパッシベーション膜上に上述の感光性樹脂組成物の硬化物で構成される膜を形成して得られるバッファコート膜、半導体素子上に形成された回路上に上述の感光性樹脂組成物の硬化物で構成される膜を形成して得られる層間絶縁膜等を挙げることができる。
【0069】
また、表示装置用途として具体的に説明すると、TFT用層間絶縁膜、TFT素子平坦化膜、カラーフィルター平坦化膜、MVA型液晶表示装置用突起、有機EL素子用陰極隔壁等が挙げられる。その使用方法は、半導体用途に順じ、表示体素子やカラーフィルターを形成した基板上にパターン化された感光性樹脂組成物の硬化物で構成される膜を、上記の方法で形成することによる。表示装置用途、特に層間絶縁膜や平坦化膜には、高い透明性が要求されるが、この感光性樹脂組成物の層を硬化する前に、後露光工程を導入することにより、透明性に優れた膜が得られることもでき、実用上更に好ましい。
【0070】
本発明の電子機器は、上述した保護膜および/または絶縁膜を有するものであり、具体的には半導体装置、液晶表示装置、有機EL素子用装置、多層回路の層間絶縁膜等が挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
1.アルカリ可溶性樹脂の合成
ジフェニルエステル−4,4’−ジカルボン酸4.58g(0.016モル)と1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール4.32g(0.032モル)とを反応させて得られたジカルボン酸誘導体の混合物(0.016モル)と3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル4.65g(0.020モル)とを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N−メチル−2−ピロリドン57.0gを加えて溶解させた。その後オイルバスを用いて75℃にて12時間反応させた。次にN−メチル−2−ピロリドン7gに溶解させた5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物1.31g(0.008モル)を加え、更に12時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/メタノール=3/1(容積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、目的のポリアミド樹脂(A−1、メソゲン基の含有量12重量%)を得た。
【0072】
2.感光剤の合成
1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン51重量部(0.12モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロリド72.5重量部(0.27モル)をテトラヒドロフラン450mlに溶解し、トリエチルアミン28.3重量部(0.28モル)を滴下する。室温で20時間反応させた後、析出したトリエチルアミンの塩酸塩を濾別除去し、イオン交換水10Lに投入し、沈殿物を得た。この沈殿物を凝集し、室温で48時間真空乾燥させた。これを感光剤(B−1)とする。
【0073】
3.感光性樹脂組成物の製造
合成したポリアミド樹脂(A−1)10g(66.7重量%)と、合成した感光剤(B−1)2g(13.3重量%)と、式(16−1)で示されるフェノール性水酸基を有する化合物1g(6.7重量%)と、配向助剤としてn−ペンタノール2g(13.3重量%)と、をN−メチル−2−ピロリドン70gに溶解した後、0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過し、ポジ型感光性樹脂組成物を得た。
【0074】
(実施例2)
配向助剤n−ペンタノールの配合量を少なくして感光性樹脂組成物の配合を下記のようにした以外は、実施例1と同様にした。
合成したポリアミド樹脂(A−1)10g(74.1重量%)とし、合成した感光剤(B−1)2g(14.8重量%)とし、式(16−1)で示されるフェノール性水酸基を有する化合物1g(7.4重量%)とし、配向助剤としてn−ペンタノール0.5g(3.7重量%)とした。
【0075】
(実施例3)
配向助剤n−ペンタノールの配合量を多くして感光性樹脂組成物の配合を下記のようにした以外は、実施例1と同様にした。
合成したポリアミド樹脂(A−1)10g(55.5重量%)とし、合成した感光剤(B−1)2g(11.1重量%)とし、式(16−1)で示されるフェノール性水酸基を有する化合物1g(5.6重量%)とし、配向助剤としてn−ペンタノール5g(27.8重量%)とした。
【0076】
(実施例4)
配向助剤としてn−デカン2g(13.3重量%)を配合した以外は実施例1と同様にした。
【0077】
(実施例5)
配向助剤としてエタノール2g(13.3重量%)を配合した以外は実施例1と同様にした。
【0078】
(実施例6)
アルカリ可溶性樹脂として、実施例1のポリアミド樹脂の合成において、ジフェニルエステル−4,4’−ジカルボン酸4.58g(0.016モル)のところをジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸4.13g(0.016モル)に変えて合成した樹脂(A−2、メソゲン基の含有量7重量%)を用いた以外は実施例1と同様にした。
【0079】
(実施例7)
アルカリ可溶性樹脂として、実施例1のポリアミド樹脂の合成において、ジフェニルエステル−4,4’−ジカルボン酸誘導体の混合物(0.016モル)のところを1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸−1,4−フェニレンエステル7.33g(0.016モル)に、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル4.65g(0.020モル)のところをヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン7.33g(0.020モル)に変えて合成した樹脂(A−3、メソゲン基の含有量10重量%)を用いた以外は実施例1と同様にした。
【0080】
(比較例1)
配向助剤を用いずに感光性樹脂組成物を製造した以外は、実施例1と同様にした。
【0081】
(比較例2)
アルカリ可溶性樹脂として、実施例1のポリアミド樹脂の合成において、ジフェニルエステル−4,4’−ジカルボン酸4.58g(0.016モル)のところをイソフタル酸2.66g(0.016モル)に、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル4.65g(0.020モル)のところをヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン7.33g(0.020モル)に変えて合成した樹脂を用いた以外は実施例1と同様にした。
【0082】
各実施例および各比較例で得られた感光性樹脂組成物および保護膜について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。得られた結果を表1に示す。
1.現像性
各実施例および各比較例で得られたポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で4分間乾燥し、膜の厚さが約5μmの塗膜(保護膜)を得た。この塗膜に凸版印刷(株)製マスク(テストチャートNo.1:幅0.88〜50μmの残しパターン及び抜きパターンが描かれている)を通して高圧水銀灯を用いて紫外光線を照射した。
次に、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に80秒間浸漬することによって露光部を溶解除去した後、純水で30秒間リンスした後、パターンを観察した。各符号は、以下の通りである。
◎:スカム(現像残り)無く、塗膜の露光部を溶解除去できた。
○:スカムが一部残るが、塗膜の露光部を溶解除去できた。
△:スカムが多く残るが、塗膜の露光部を溶解除去できた。
×:塗膜の露光部を、溶解除去できなかった。
【0083】
2.機械特性
各実施例および各比較例で得られたポジ型感光性樹脂組成物を硬化後5μmになるように6インチシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で4分間乾燥し、次にクリーンオーブンを用いて酸素濃度1000ppm以下で、150℃/30分間+320℃/30分間で硬化を行い、硬化膜を得た。得られた硬化膜(10mm幅)を、引張り測定機にて5mm/分の速度にて引張り、測定を行い、引っ張り弾性率を評価した。
【0084】
【表1】

【0085】
表1から明らかなように、実施例1〜5は、現像性に優れ、弾性率が高かった。これにより、封止樹脂によって半導体パッケージを作製する際に、封止樹脂に含まれる無機充填材等が表面保護膜等の表面を突き破ったり、半田リフローのプロセスにより膜表面に皺やクラック等が発生したりするのを防止できることが示唆された。
【0086】
また、各実施例および各比較例で得られた感光性樹脂組成物を半導体素子上に塗布した。この塗布した感光性樹脂組成物を、60〜130℃でプリベークして塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に紫外線を照射した。次に、紫外線照射部を現像液で溶解除去することによりレリーフパターンを得た後、加熱処理を行い、保護膜を得た。保護膜を形成後、チップのダイシング工程、ダイシングしたチップのマウント工程、ワイヤーボンディング工程、半導体の封止成形工程を経て半導体装置を得た。
このようにして得られた半導体装置を搭載した電子機器は、正常に動作した。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の感光性樹脂組成物は、半導体分野または液晶等に代表される表示素子分野において保護膜、絶縁膜等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂と、感光剤と、前記メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂の配向度を向上する機能を有する配向助剤と、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記配向助剤は、アルコール類を含むものである請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記配向助剤の含有量は、前記感光性樹脂組成物全体の3〜30重量%である請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記メソゲン基を有するアルカリ可溶性樹脂は、メソゲン基を有するポリイミド前駆体およびメソゲン基を有するポリベンゾオキサゾール前駆体の少なくとも一方を含むものである請求項1ないし3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記メソゲン基は、エステル基、シクロヘキセニル基およびビフェニル基の少なくとも1種以上を含むものである請求項1ないし4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする絶縁膜。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする保護膜。
【請求項8】
半導体素子または液晶表示素子の保護膜として用いられるものである請求項7に記載の保護膜。
【請求項9】
保護膜の厚さが、0.1〜50μmである請求項8に記載の保護膜。
【請求項10】
保護膜の弾性率が3.5〜8.0MPaである請求項8または9に記載の保護膜。
【請求項11】
請求項7ないし10のいずれかに記載の保護膜を有することを特徴とする電子機器。
【請求項12】
請求項6に記載の絶縁膜を有することを特徴とする電子機器。

【公開番号】特開2008−111929(P2008−111929A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293848(P2006−293848)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】