説明

慣性センサモジュール

【課題】 衝撃による圧電振動素子の剥がれを防ぐ。
【解決手段】 音叉形状又はH形状の圧電振動素子と、この圧電振動素子が搭載される圧電振動素子搭載パッドと第一の外部端子とを有する素子搭載部材と、圧電振動素子の周囲を気密の環境に維持するための第一の蓋部材と、素子搭載部材と第一の蓋部材との表面に設けられるポリイミド又はシリコンからなる樹脂部とから構成される慣性センサと、慣性センサと電気的に接続する慣性センサ接続パッドと第二の外部端子とを有し、慣性センサを搭載するモジュール部材と、慣性センサの周囲を気密の環境に維持するための第二の蓋部材と、を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる慣性センサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子機器には圧電振動子や圧電発振器が用いられている。例えば、圧電振動子の代表的なものとして、水晶を用いた種々の水晶振動子が開発されている。
ここで、圧電振動子である水晶振動子について説明する。
水晶振動子は、水晶片に電極が形成された水晶振動素子と、水晶振動素子が搭載される素子搭載部材と、水晶振動素子を気密封止する蓋部材とから主に構成される。
【0003】
この水晶振動子は、水晶片の表裏面において対向するように水晶片に電極が設けられた水晶振動素子を収納し保護する素子搭載部材の形状の違いによって、大きく分けて2種類のものが開発されている。かかる水晶振動子の構成には、一例として、容器となる素子搭載部材に形成された凹部に前記水晶振動素子を搭載し平板状の蓋部材を素子搭載部材に接合した構造の水晶振動子と、平板状のベースと呼ばれる素子搭載部材上に前記水晶振動素子を搭載し凹部を有する蓋部材を素子搭載部材に接合した構造の水晶振動子とがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前者の水晶振動子は、圧電振動素子である水晶振動素子を保護する素子搭載部材として、凹部が形成された素子搭載部材が用いられる。この素子搭載部材は、例えば、セラミックからなる平板を1層目とし、その平板上に、2層目としてセラミックからなる枠を積層して凹部が形成されている。
【0005】
この素子搭載部材は、凹部が設けられる主面上に金属膜からなるメタライズ層が形成されている。また、素子搭載部材は、凹部内に露出する基板上に搭載パッドが設けられている。その搭載パッドには、導電性接着剤を介して水晶片に電極が形成された水晶振動素子が搭載される。
水晶振動素子は、水晶の両主面である表裏面において、互いに向かい合う位置に電極が形成されている。また、水晶片には、これら電極のそれぞれから水晶片の一方の端部まで引回された2つ一対の引回しパターンが形成されている。これら引回しパターンは、互いに向かい合わない位置となるように設けられている。
【0006】
蓋部材は、平板状に形成されており、前記素子搭載部材のメタライズ層と対応する位置に封止材が設けられている。
これにより、水晶振動子は、前記水晶振動素子を搭載した前記素子搭載部材のメタライズ層と前記蓋部材の封止材とを接合することにより形成される。
【0007】
このように構成される水晶振動子に用いられる水晶振動子素子は、例えば、平板状の水晶片に代えて、水晶片が音叉型に形成された水晶振動素子を素子搭載部材に搭載する場合もある。この水晶振動子は、角速度センサとなる慣性センサとして用いることができる。
この場合の電極は、音叉を構成する一方の腕部において、外周面となる4面のうち対向する2面毎に同極同士が設けられ、他方の腕部において、対向する2面に異極電極同士が並ぶように設けられている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
なお、水晶振動子に、少なくとも発振回路を備えた集積回路素子を電気的に接続して構成した圧電発振器が、種々、提案されている。
【0009】
例えば、前記集積回路素子を搭載した容器を前記圧電振動子に機械的・電気的に接続した構造の圧電発振器(例えば、特許文献3参照)、平板状の基板部の両主面に枠部を設けて2つの凹部に圧電振動素子である水晶振動素子と集積回路素子とを搭載した構造の圧電発振器(例えば、特許文献4参照)、圧電振動子の素子搭載部材において凹部が設けられる主面とは反対側の主面に集積回路素子を搭載しつつ四隅から脚状の通電部を設けて外部端子とした構造の圧電発振器(例えば、特許文献5参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−324852号公報
【特許文献2】特開2005−156395号公報
【特許文献3】特開2009−016957号公報
【特許文献4】特開2009−016950号公報
【特許文献5】特開2009−016949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、近年では、電子機器の小型化に伴い、その電子機器に搭載される電子部品も小型化されてきている。電子部品である圧電振動子及び圧電発振器も例外ではなく、小型化されてきている。
このような状況において、素子搭載部材に搭載される水晶振動素子等の圧電振動素子は、従来よりも小型に形成されることとなるが、圧電効果による圧電振動素子の振動を阻害しないように保持することは困難になってきている。
【0012】
例えば、圧電振動子及び圧電発振器において、内部に備える圧電振動素子を落下による衝撃に耐えられるようにするには、導電性接着剤の塗布量を多くする必要があるが、この導電性接着剤の塗布量を多くすると、圧電振動素子の振動部分に導電性接着剤が入り込んでしまい、振動漏れの原因となる恐れがある。
また、導電性接着剤の塗布量を少なくすると、搭載パッドから圧電振動素子が剥がれる恐れがある。振動漏れを起こさない程度の量で導電性接着剤を用いた場合、落下による衝撃は、圧電振動素子が導電性接着剤から剥がれるか、又は、硬化した導電性接着剤が搭載パッドから剥がれることにより、衝撃によるエネルギーが吸収されると考察される。したがって、導電性接着剤による圧電振動素子の素子搭載部材への搭載が困難になってきている。
【0013】
そこで、本発明は、衝撃による圧電振動素子の剥がれを防ぐ慣性センサモジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明は、慣性センサモジュールであって、音叉形状又はH形状の圧電振動素子と、この圧電振動素子が搭載される圧電振動素子搭載パッドと第一の外部端子とを有する素子搭載部材と、前記圧電振動素子の周囲を気密の環境に維持するための第一の蓋部材から構成される慣性センサと、前記素子搭載部材と第一の蓋部材との表面に設けられるポリイミド又はシリコンからなる樹脂部と、前記慣性センサと電気的に接続する慣性センサ接続パッドと第二の外部端子とを有し、前記慣性センサを搭載するモジュール部材と、を備えて構成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記慣性センサの第一の外部端子が前記樹脂部より露出しており、前記慣性センサの前記第一の外部端子と前記モジュール部材の慣性センサ接続パッドとワイヤーボンディングにより電気的に接続しても良い。
【0016】
また、本発明は、慣性センサと電気的に接続し、少なくとも発振回路を有する集積回路素子を備えても良い。
また、本発明は、前記慣性センサの周囲を気密の環境に維持するため前記モジュール部材に接合される第二の蓋部材を備えても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明の慣性センサモジュールによれば、慣性センサの構成要素である素子塔載部材と蓋部材とが接合された状態でポリイミド又はシリコンからなる樹脂部がその周囲を被覆しており、樹脂部を挟んで慣性センサがモジュール部材に搭載される。これにより、本発明の慣性センサモジュールは、樹脂部が落下等による衝撃を吸収して、慣性センサ内の圧電振動素子の素子塔載部材からの剥がれを防ぐことができる。
【0018】
また、本発明の慣性センサモジュールは、慣性センサの第一の外部端子が樹脂部より露出しており、慣性センサの第一の外部端子と前記モジュール部材の慣性センサ接続パッドとワイヤーボンディングにより電気的に接続されているので、樹脂部が衝撃により変形しても、慣性センサとモジュール部材との電気的接続を維持させることができる。
【0019】
また、また、本発明の慣性センサモジュールは、慣性センサと電気的に接続し、少なくとも発振回路を有する集積回路素子を備えることにより、外部からの衝撃が加わっても、内部の圧電振動素子が剥がれることがないので、安定した動作を行う発振器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る慣性センサモジュールの一例を示す分解斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】慣性センサの一例を示す分解斜視図である。
【図4】(a)は図3のB−B断面図であり、(b)は慣性センサに外部端子を除いて樹脂部が被覆された状態の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る慣性センサモジュールの一例を示す模式図である。
【図6】本発明の第三の実施形態に係る慣性センサモジュールの一例を示す模式図である。
【図7】本発明の第四の実施形態に係る慣性センサモジュールの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明に用いる図面では、説明を明確にするために、一部誇張して記載した構成が示されている。また、各実施形態の説明において、同一要素には同一符号を記載し、重複した説明を省略する。
【0022】
(第一の実施形態)
図1は本発明の第一の実施形態に係る慣性センサモジュールの一例を示す分解斜視図である。図2は図1のA−A断面図である。図3は慣性センサの一例を示す分解斜視図である。図4(a)は図3のB−B断面図であり、(b)は慣性センサに外部端子を除いて樹脂部が被覆された状態の一例を示す模式図である。
なお、図4(a)は、図の複雑さを回避するために、慣性センサモジュール100の構成を簡略して図示している。
図1に示すように、本発明の第一の実施形態に係る慣性センサモジュール101は、慣性センサ100、樹脂部110、モジュール部材120A、第二の蓋部材130とから主に構成されている。
なお、モジュールとは、少なくとも電子部品を他の部材に搭載した構造の物をいう。
【0023】
ここで、図3及び図4(a)に示すように、慣性センサ100は、素子搭載部材10A、圧電振動素子20、第一の蓋部材30とから構成されている。
【0024】
図3に示すように、圧電振動素子20は、例えば、水晶からなり音叉構造となっている。
例えば、圧電振動素子20は、基部21とこの基部21の両端から平行に延出する2つ一対の四角柱状の腕部22とで音叉構造を形成している。また、圧電振動素子20は、基部21と腕部22とに導電性膜からなる配線パターン23が設けられている。
【0025】
配線パターン23は、励振電極部23Aと搭載端子部23Bと引回しパターン23Cとを有する。例えば、配線パターン23は、腕部22、22において、同極となる導電性膜が互いに向かい合うように設けられる励振電極部23Aを有する。また、配線パターン23は、基部21において、異極となる導電性膜が並んで設けられる搭載端子部23Bを有する。さらに、配線パターン23は、同極となる励振電極部23Aと搭載端子部23Bとを電気的に接続する引回しパターン23Cを有する。
【0026】
図3及び図4(a)に示すように、素子搭載部材10Aは、例えばセラミックからなり、一方の主面に凹部11Aを有し平面視四角形に形成されている。この素子搭載部材10Aは、凹部11A内に2つ一対の圧電振動素子搭載パッドPが設けられ、凹部11Aが設けられた主面とは反対側の主面の四隅に第一の外部端子Gが設けられている。
これら4つの第一の外部端子Gのうち所定の2つの第一の外部端子Gは、内部配線(図示せず)を介して圧電振動素子搭載パッドPと電気的に接続されている。
また、素子搭載部材10Aの凹部11Aが形成されている一方の主面には、後述する蓋部材30を接合するための金属膜Mが設けられている。
【0027】
図3及び図4(a)に示すように、第一の蓋部材30は、例えば、平板状に形成されており、一方の主面に封止材31が設けられている。この封止材31は、素子搭載部材10Aに設けられる金属膜Mと対向するように設けられている。
【0028】
このように構成される慣性センサ100は、素子搭載部材10Aの圧電振動素子搭載パッドPに導電性接着剤Dを介して圧電振動素子20を搭載し、第一の蓋部材30で素子搭載部材10Aの凹部11Aを気密封止して形成される。
例えば、慣性センサ100を製造する場合は、まず、圧電振動素子搭載パッドPに導電性接着剤Dを塗布した状態にして、この導電性接着剤Dに圧電振動素子20の搭載端子部23Bを接着させる。このようにして、圧電振動素子20を素子搭載部材10Aに搭載する。その後、第一の蓋部材30を素子搭載部材10Aに接合する。ここで、第一の蓋部材30の封止材31を素子搭載部材10の凹部11Aを塞ぐように金属膜Mに接触させて、真空雰囲気中で加熱処理を行う。これにより、第一の蓋部材30は、素子搭載部材10Aに接合され、圧電振動素子の周囲を気密の環境に維持する。このようにして慣性センサ100は製造される。
【0029】
なお、圧電振動素子20を音叉型構造として説明したが、これに限定されず、H型の圧電振動素子を用いても良い。
H型構造の圧電振動素子は、例えば、基部とこの基部の両端から平行に延出する2つ一対の四角柱状の励振腕部と、これら励振腕部とは反対の方向に基部から延出する2つ一対の検出腕部でH型構造を形成している。また、この圧電振動素子は、これら検出腕部の間であって基部から延出する固定部を備えており、基部、励振腕部、検出腕部、固定部に金属膜からなる配線パターンが形成されている。
【0030】
配線パターンは、励振腕部において、同極となる金属膜が互いに向かい合うように設けられる励振電極部を有する。また、配線パターンは、検出腕部において、同極となる金属膜が互いに向かい合いつつ異極同士が並ぶように設けられる検出電極部を有する。また、配線パターンは、これら励振電極部を固定部の端部まで引回しつつ、検出電極部を固定部の端部まで引回し、引回された端部が搭載端子部となっている。
なお、所定の大きさとは、圧電振動素子の振動を阻害しない領域内に収まる大きさをいう。このように構成しても、圧電振動素子は、慣性センサ素子として機能することとなる。
【0031】
図4(a)及び(b)に示すように、樹脂部110は、可撓性を有するポリイミド又はシリコンからなり、接合された素子搭載部材10Aと第一の蓋部材30との外側に全体を被覆するように設けられている。
つまり、樹脂部110は、素子搭載部材10Aに設けられている第一の外部端子Gを除いて、慣性センサ100の外表面に設けられる。
例えば、樹脂部110は、以下のようにして慣性センサ100に設けられる。まず、樹脂部110が感光性のポリイミドからなる場合、硬化していないポリイミドを慣性センサ100の全外表面に付着させ、光を当てて硬化させる。その後、第一の外部端子Gの部分にかかるポリイミドをエッチングにより除去して、第一の外部端子Gを露出させる。
【0032】
また、例えば、樹脂部110がシリコンからなる場合、硬化していないシリコンを慣性センサ100の全外表面に付着させ、硬化させる。その後、第一の外部端子Gの部分にかかるシリコンをエッチングにより除去して第一の外部端子Gを露出させる。
なお、樹脂部110は、シート状に加工されたポリイミド又はシリコンを用いても良い。この場合、シート状に加工されたポリイミド又はシリコンを、第一の外部端子Gを除いて慣性センサ100の全外表面に貼り付ける。
このように、樹脂部110は、容易に慣性センサ100に設けることができる。
【0033】
図1及び図2に示すように、モジュール部材120Aは、例えば、一方の主面に凹部121Aを有し、この凹部121A内に慣性センサ100と電気的に接続する慣性センサ接続パッドSPが設けられ、他方の主面に第二の外部端子G2が設けられている。また、モジュール部材120Aは、凹部121Aが設けられる一方の主面に金属膜M2が設けられている。この金属膜M2は、後述する第二の蓋部材130を接合する際に用いられる。
【0034】
なお、樹脂部110が被覆された慣性センサ100は、接合材(図示せず)によりモジュール部材120Aの凹部121A内に接合される。このとき、慣性センサ100は、外部端子Gをモジュール部材120Aの凹部121Aの開口側を向くようにしてモジュール部材120Aに接合される。
【0035】
また、モジュール部材120Aは、凹部121A内に慣性センサ100が搭載され、慣性センサ100の第一の外部端子Gと慣性センサ接続パッドSPとが電気的に接続される。
ここで、慣性センサ100の第一の外部端子Gと慣性センサ接続パッドSPとは、ワイヤーボンディングにより接続される。つまり、金属線Lの一方の端部を慣性センサ100の第一の外部端子Gに接続し、この金属線Lの他方の端部をモジュール部材120Aの慣性センサ接続パッドSPに接続する。これにより、慣性センサ100の第一の外部端子Gと慣性センサ接続パッドSPとが電気的に接続される。
【0036】
なお、モジュール部材120Aの各慣性センサ接続パッドSPは、内部配線(図示せず)を介して、それぞれの第二の外部端子G2と電気的に接続している。
【0037】
第二の蓋部材130は、例えば、平板状に形成されており、一方の主面に封止材131が設けられている。この封止材131はモジュール部材120Aに設けられる金属膜M2と対向するように設けられている。
第二の蓋部材130は、モジュール部材120Aと接合することで慣性センサ100の周囲を気密の環境に維持する。
例えば、第二の蓋部材130は、凹部121A内に慣性センサ100を搭載したモジュール部材120Aの金属膜M2に、封止材131を重ねた状態で加熱されることでモジュール部材120Aに接合される。
【0038】
このように、本発明の第一の実施形態に係る慣性センサモジュール101は、慣性センサ100が、樹脂部110を介してモジュール部材120Aに搭載されることにより、モジュール部材120Aに衝撃が加わっても、樹脂部110が可撓性により撓むため、内部の慣性センサ100内に設けられた圧電振動素子20に係る衝撃を小さくすることができる。
これにより、本発明の第一の実施形態に係る慣性センサモジュール101は、外部から衝撃が加わっても、内部の圧電振動素子20にかかる衝撃が緩和され、圧電振動素子20が素子搭載部材10Aから剥がれるのを防ぐことができる。
【0039】
(第二の実施形態)
次に、本発明の第二の実施形態に係る慣性センサモジュールについて説明する。
図5は、本発明の第二の実施形態に係る慣性センサモジュールの一例を示す模式図である。なお、図5は、図の複雑さを回避するために、慣性センサ100の構成を簡略して図示している。
図5に示すように、本発明の第二の実施形態に係る慣性センサモジュール102は、気密封止されている慣性センサ100に集積回路素子140が電気的に接続されている点で第一の実施形態と異なる。
本発明の第二の実施形態に係る慣性センサモジュール102は、慣性センサ100、樹脂部110、モジュール部材120B、第二の蓋部材130、集積回路素子140とから主に構成されている。
【0040】
なお、慣性センサ100は、第一の実施形態と同様に、素子搭載部材10Aと、圧電振動素子20と蓋部材30とから主に構成されている。
【0041】
集積回路素子140は、少なくとも発振回路を備えており、慣性センサ100の圧電振動素子20と電気的に接続されている。
例えば、集積回路素子140は、回路形成面に圧電振動素子20からの発振出力を生成する発振回路等が設けられており、この発振回路で生成された出力信号は後述するモジュール部材120Bの第二の外部端子G2を介して慣性センサモジュール102の外へ出力される。発振回路で生成される出力信号は、例えば、クロック信号等の基準信号として利用される。
集積回路素子140は、後述するモジュール部材120Bの第2の凹部121C内に露出した基板部122Bに形成された集積回路素子搭載パッドICPに半田等の導電性接合材を介して搭載されている。
【0042】
図5に示すように、モジュール部材120Bは、基板部122B、第1の枠部123B、第2の枠部124Bとで主に構成されている。このモジュール部材120Bは、基板部122Bの一方の主面に第1の枠部123Bが設けられて、第1の凹部121Bが形成されている。また、モジュール部材120Bの他方の主面に第2の枠部124Bが設けられて、第2の凹部121Cが形成されている。
なお、モジュール部材120Bは、第1の凹部121B内に樹脂部110が被覆された慣性センサ100が搭載され、第2の凹部121C内に集積回路素子140が搭載されるようになっている。
【0043】
なお、このモジュール部材120Bを構成する基板部122B、第一の枠部123B、第2の枠部124Bは、例えば、アルミナセラミックス、ガラス−セラミック等のセラミック材料を複数積層することよって形成されている。また、基板部122Bは、セラミック材が積層した構造となっている。
【0044】
第1の凹部121B内で露出した基板部122Bの一方の主面には、2個一対の慣性センサ搭載パッドSPが設けられている。
また、図5に示すように、第2の凹部121C内で露出した基板部122Bの主面には、複数の集積回路素子搭載パッドICPと2個一対の圧電振動素子測定用パッド(図示せず)が設けられている。基板部122Bは、その内層に内部配線(図示せず)が設けられている。
【0045】
また、図5に示すように、第2の枠部124の主面には、第二の外部端子G2が設けられている。
つまり、基板部122Bの集積回路素子搭載パッドICPが設けられている主面と平行となる第2の枠部124Bの主面の4隅には、それぞれ第二の外部端子G2が設けられている。
【0046】
ここで、所定の一つの集積回路素子搭載パッドICPは、所定の一つの第二の外部端子G2である電源電圧パッドと所定の内部配線を介して接続されている。これにより、電源電圧パッド(所定の一つの外部端子G2)には、電源電圧が印加されることになる。
【0047】
また、それぞれの慣性センサ搭載パッドSPは、他の所定の内部配線を介して所定の集積回路素子搭載パターンICPと電気的に接続されている。
なお、圧電振動素子測定用パッドは、慣性センサ搭載パッドSPと他の内部配線を介して接続されている。
この圧電振動素子測定用パッドは、第1の凹部121B内に搭載されている慣性センサ100の圧電振動素子20の発振周波数やクリスタルインピーダンス等の特性を測定するために用いられる。
【0048】
したがって、このように第二の実施形態に係る慣性センサモジュール102を構成したので、ポリイミド又はシリコンからなる樹脂部を介して、慣性センサ100がモジュール部材120Bに搭載されることにより、モジュール部材120Aに衝撃が加わっても、樹脂部110が可撓性により撓み、内部の慣性センサ100内に設けられた圧電振動素子20にかかる衝撃を小さくすることができる。
これにより、本発明の第二の実施形態に係る慣性センサモジュール102は、外部から衝撃が加わっても、内部の圧電振動素子20にかかる衝撃が小さいため、圧電振動素子20が素子搭載部材10Aから剥がれるのを防ぐことができる。
【0049】
(第三の実施形態)
次に、本発明の第三の実施形態に係る慣性センサモジュールについて説明する。
図6は、本発明の第三の実施形態に係る慣性センサモジュールの一例を示す模式図である。なお、図6は、図の複雑さを回避するために、慣性センサ100の構成を簡略して図示している。
図6に示すように、本発明の第三の実施形態に係る慣性センサモジュール103は、慣性センサ100と集積回路素子140とが搭載されるモジュール部材120Cの構造が異なる点で第二の実施形態と異なる。
【0050】
モジュール部材120Cは、基板部122Cと、第1の枠部123Cと、第2の枠部124Cとから構成されている。このモジュール部材120Cは、平板状の基板部122Cの一方の主面に第1の枠部123Cが設けられ、この第1の枠部123Cに第2の枠部124Cが設けられた構造となっている。
第1の枠部123Cは、2つの四角形の環状部が一体となった形状となっており、これら枠状体の外側に位置する部分に第2の枠部124Cが設けられる。
【0051】
モジュール部材120Cには、この第1の枠部123Cと基板部122Cとで形成される第1の凹部121D内と第2の凹部121Eにおいて、第1の凹部121D内に樹脂部110が被覆された慣性センサ100が設けられ、第2の凹部121E内に集積回路素子140が搭載される。
【0052】
また、モジュール部材120Cは、第1の凹部121Dを形成する第1の枠部123Cに慣性センサ搭載パッドSPが設けられており、第2の凹部121E内に露出する基板部122Cに集積回路素子140を搭載するための集積回路素子搭載パッドICPが設けられている。
また、モジュール部材120Cは、第1の枠部123Cが設けられる主面とは反対側の主面の四隅に第二の外部端子G2が設けられている。
【0053】
なお、所定の慣性センサ搭載パッドSPは、所定の集積回路素子搭載パッドICPと内部配線(図示せず)を介して電気的に接続している。
また、各第二の外部端子G2は、所定の集積回路素子搭載パッドICPと内部配線(図示せず)を介して電気的に接続している。
【0054】
ここで、モジュール部材120Cは、第2の凹部121E内に集積回路素子140が導電性接合材を介して集積回路素子搭載パッドICPに接合され、第1の凹部121D内であって、樹脂部110が被覆された慣性センサ100が接合材(図示せず)を介して搭載される。
【0055】
したがって、このように第三の実施形態に係る慣性センサモジュール103を構成したので、ポリイミド又はシリコンからなる樹脂部を介して、慣性センサ100がモジュール部材120Cに搭載されるので、モジュール部材120Cに衝撃が加わっても、樹脂部110が可撓性により撓み、内部の慣性センサ100内に設けられた圧電振動素子20に係る衝撃を小さくすることができる。
これにより、本発明の第三の実施形態に係る慣性センサモジュール103は、外部から衝撃が加わっても、内部の圧電振動素子20にかかる衝撃が小さいため、圧電振動素子20が素子搭載部材10Aから剥がれるのを防ぐことができる。
【0056】
(第四の実施形態)
次に、本発明の第四の実施形態に係る慣性センサモジュールについて説明する。
図7は、本発明の第四の実施形態に係る慣性センサモジュールの一例を示す模式図である。なお、図7は、図の複雑さを回避するために、慣性センサ100の構成を簡略して図示している。
図7に示すように、本発明の第四の実施形態に係る慣性センサモジュール104は、第一の実施形態に係る慣性センサモジュール101に、別途、容器160に収納された集積回路素子140と電気的に接続している点で第二の実施形態と異なる。
【0057】
前記容器160は、平板状の基板部122Dとこの基板部122Dの一方の主面に設けられる壁部123Dとから主に構成されており、この基板部122Dと壁部123Dとが一体で形成されて凹部121Fが設けられている。
この容器160は、内部に内部配線(図示せず)が設けられ、また、壁部123Dで囲まれた基板部12D上には、集積回路素子搭載パッドICPが設けられている。また、基板部122Dの主面と平行となる壁部123Dの主面には、容器側接続パッドSSPが設けられている。さらに、壁部123Dが設けられている主面とは反対側の主面に、別途、容器側外部端子YGが設けられている。
【0058】
所定の集積回路素子搭載パッドICPは、内部配線(図示せず)を介して容器側接続パッドSSPと電気的に接続している。また、所定の他の集積回路素子搭載パッドICPは、内部配線(図示せず)を介して容器側外部端子YGと電気的に接続している。
【0059】
このように構成される本発明の第四の実施形態に係る慣性センサモジュール104は、容器160の慣性センサ接続パッドSSPと慣性センサモジュール101の第二の外部端子G2とを通電可能な接合材Sにより接合することで構成される。
【0060】
したがって、このように第四の実施形態に係る慣性センサモジュール104を構成しても、第二の実施形態と同様の効果を奏する。
【0061】
なお、前記の実施の形態は一例であって、本発明を限定するものではない。例えば、慣性センサの構成要素である素子塔載部材が凹部を有する構成としつつ平板状の蓋部材で凹部を気密封止する構成としたがこれに限定されず、素子塔載部材を平板状に構成しつつ凹部有する蓋部材でその凹部を気密封止する構成としてもよい。
【0062】
また、一方の主面に凹部を有するモジュール部材において、このモジュール部材の第二の外部端子G2側に集積回路素子搭載パッドを設け、この集積回路素子搭載パッドに集積回路素子を導電性接合材を介して接合した構造の慣性センサモジュールとしても良い。
また、このような慣性センサモジュールにおいて、モジュール部材の第二の外部端子に、集積回路素子よりも厚みを有する導電材等で脚状部を形成した構造の慣性センサモジュールとしても良い。
また、慣性センサには、角速度センサと加速度センサとを含むため、本発明の慣性センサモジュールに、角速度センサ又は加速度センサを用いても良い。
【0063】
また、圧電振動素子20を構成する圧電素材として水晶を用いた場合を説明したが、他の圧電素材として、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムまたは、圧電セラミックスを圧電素材として用いた圧電振動素子でも構わない。
【0064】
また、慣性センサを搭載したモジュール部材内に絶縁性樹脂を充填した構造としても良い。このようにすることで、第二の蓋部材130を不要としつつ、金属線Lが異物と接触するのを防ぐことができる。
また、慣性センサモジュールは、慣性センサの外部端子の位置とモジュール部材の慣性センサ接続パッドの位置とを対応させた状態で用い、この慣性センサをモジュール部材にフリップチップ実装した構造としても良い。このように構成することにより、容易に慣性センサモジュールを製造することができる。
【符号の説明】
【0065】
101、102、103、104 慣性センサモジュール
100 慣性センサ
110 樹脂部
120A、120B、120C モジュール部材
121A、121F 凹部
121B、121D 第1の凹部
121C、121E 第2の凹部
122B、122C、122D 基板部
123B、123C 第1の枠部
123D 壁部
124B、124C 第2の枠部
125 封止用導体膜
126 ロウ材
130 第二の蓋部材
140 集積回路素子
160 容器
10A 素子搭載部材
11A 凹部
20 圧電振動素子
21 基部
22 腕部
23 配線パターン
30 第一の蓋部材
31、131 封止材
P 圧電振動素子搭載パッド
SP 慣性センサ接続パッド
SSP 容器側接続パッド
G 第一の外部端子
G2 第二の外部端子
YG 容器側外部端子
M、M2 金属膜
ICP 集積回路素子搭載パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音叉形状又はH形状の圧電振動素子と、この圧電振動素子が搭載される圧電振動素子搭載パッドと第一の外部端子とを有する素子搭載部材と、前記圧電振動素子の周囲を気密の環境に維持するための第一の蓋部材から構成される慣性センサと、
前記素子搭載部材と第一の蓋部材との表面に設けられるポリイミド又はシリコンからなる樹脂部と、
前記慣性センサと電気的に接続する慣性センサ接続パッドと第二の外部端子とを有し、前記慣性センサを搭載するモジュール部材と、
を備えて構成されることを特徴とする慣性センサモジュール。
【請求項2】
前記慣性センサの第一の外部端子が前記樹脂部より露出しており、
前記慣性センサの前記第一の外部端子と前記モジュール部材の慣性センサ接続パッドとワイヤーボンディングにより電気的に接続していることを特徴とする請求項1に記載の慣性センサモジュール。
【請求項3】
前記慣性センサと電気的に接続し、少なくとも発振回路を有する集積回路素子を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の慣性センサモジュール。
【請求項4】
前記慣性センサの周囲を気密の環境に維持するため前記モジュール部材に接合される第二の蓋部材を備えて構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の慣性センサモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−236956(P2010−236956A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83875(P2009−83875)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】