説明

懸濁システムを含む懸濁媒体膜生物学的反応器システムおよびプロセス

分離サブシステムを有する生物学的反応器と、懸濁システムと、膜操作システムとを備える廃水処理システムが提供される。分離サブシステムは、吸着性物質を混合液とともに生物学的反応器中に維持する構築され、配列される。懸濁システムは生物学的反応器中に配置され、吸着性物質を混合液とともに懸濁状態に維持するように構築され、配列される。膜操作システムは、生物学的反応器の下流に配置され、生物学的反応器から処理済み混合液を受け、膜透過物を排出するように構築されて、配列される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年7月8日付で出願された米国仮特許出願第61/224,000号および2009年6月15日付で出願された米国仮特許出願第61/186,983号に基づく優先権を主張し、それらの出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、廃水処理システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
家庭廃水および産業廃水の効果的な処理は、生活の質の向上および清浄水の保全に関する極めて重要な側面である。約半世紀前までは標準的な慣習であった、廃水を河川、湖、および海洋などの水源に単に排出することに関連する問題は明らかであり、生物学廃棄物および化学廃棄物は、感染症の拡大および発癌性化学物質への曝露を含めて、すべての生命体に対する危険を引き起こす。したがって、廃水処理プロセスは、一般家庭の住民からの汚水を清浄する遍在する自治体の廃水処理施設から、様々な産業用途からの廃水中の特定の汚染物質に対処すべき専用の産業廃水処理プロセスに至るシステムへと発展した。
【0004】
ある特定の処理すべき産業排水流および汚水流には、生物学的抵抗性および生物学的阻害性の有機化合物および無機化合物が存在する。そのような生物学的抵抗性および生物学的阻害性の化合物の処理に対処するために、様々な試みがなされてきた。ある特定のタイプの既知の処理は、生物学的抵抗性および生物学的阻害性の有機化合物を吸着し、その後に除去するための粉末活性炭の使用を含む。
【0005】
それにもかかわらず、粉末活性炭および他の既存の技術を使用することに関連する不利益なしに、生物学的抵抗性および生物学的阻害性の有機化合物および無機化合物を含有する廃水を処理する必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
1つまたは複数の実施形態によると、本発明は、廃水を処理するシステムおよび方法に関する。
【0007】
1つまたは複数の実施形態によると、本発明は、分離サブシステムを有する生物学的反応器と、懸濁システムと、膜操作システムとを備える廃水処理システムに関する。分離サブシステムは、吸着性物質を混合液とともに生物学的反応器中に維持するように構築され、配列される。懸濁システムは、生物学的反応器中に配置され、吸着性物質を混合液とともに懸濁状態に維持するように構築され、配列される。膜操作システムは、生物学的反応器の下流に配置され、生物学的反応器から処理済み混合液を受け、膜透過物を排出するように構築され、配列される。
【0008】
1つまたは複数の実施形態によると、懸濁システムは、ガスリフト懸濁システムを備える。ガスリフト懸濁システムは、生物学的反応器中に配置された少なくとも1つのドラフトチューブと、ドラフトチューブの入口端部に気体を向けるように配置され、寸法設定された1つまたは複数のアパーチャを有する気体導管とを含むことができる。代替的には、ガスリフト懸濁システムは、生物学的反応器中に配置された少なくとも1つのドラフトトラフと、ドラフトトラフの下方部分に気体を向けるように配置され、寸法設定された1つまたは複数のアパーチャを有する気体導管とを含むことができる。
【0009】
1つまたは複数の実施形態によると、懸濁システムは、ジェット懸濁システムを備える。
【0010】
1つまたは複数の実施形態によると、分離サブシステムは、生物学的反応器の出口に配置されたスクリーンを含む。
【0011】
1つまたは複数の実施形態によると、分離サブシステムは、生物学的反応器の出口に近接して配置された沈殿ゾーンを含む。沈殿ゾーンは、吸着性物質が混合液から分離し、生物学的反応器の下方部分において混合液中に沈殿する静止ゾーンを規定するように配置され、寸法設定された第1のバッフルおよび第2のバッフルを含むことができる。さらに、沈殿ゾーンは、生物学的反応器の出口に近接して配置されたスクリーンまたは堰を含むことができる。
【0012】
1つまたは複数の実施形態によると、本発明は、吸着性物質導入源装置が生物学的反応器と連通している廃水処理システムに関する。さらに、センサは、システムのパラメータを測定するように構築され、配列される。さらに、コントローラは、センサと電子通信し、システムの測定されたパラメータに基づいて行為の実行を命令するようにプログラムされる。測定されたパラメータは、1つまたは複数のあらかじめ規定された化合物の濃度であり得る。行為は、生物学的反応器から吸着性物質の少なくとも一部分を除去すること、および/または生物学的反応器に吸着性物質を加えることを含むことができる。
【0013】
1つまたは複数の実施形態によると、本発明は、廃水を処理するための廃水処理システムに関する。本システムは、廃水入口、混合液出口、混合液出口と関連づけられた分離システムをもつ生物学的反応器を含む。本システムはまた、生物学的反応器中に配置された吸着性物質のための懸濁システムと、生物学的反応器の下流に配置され、混合液出口と流体連通する入口、および処理済み排出物出口を有する膜操作システムとを含む。
【0014】
1つまたは複数の実施形態によると、本発明は、廃水を処理するためのプロセスに関する。本プロセスは、生物学的反応器中に混合液を導入することと、混合液とともに生物学的反応器中に吸着性物質を導入することと、吸着性物質による混合液からの汚染物質の吸着を促進する動作条件下で、気体を使用して混合液中に吸着性物質を懸濁させることと、生物学的反応器中に吸着性物質を維持しながら、吸着性物質が実質的にない排出物を、生物学的反応器から膜操作システムに流すことと、を含む。
【0015】
さらなる別の態様、実施形態、ならびにこれらの例示的な態様および実施形態の利点について以下に論じる。さらに、前述の情報も以下の詳細な説明の両方も、様々な態様および実施形態の例を示すものにすぎず、特許請求された態様および実施形態の性質および特徴を理解するための概略または枠組みを提供することを意図するものであることが理解されよう。添付の図面は、例示ならびに様々な態様および実施形態のさらなる理解を提供するために含まれるものであり、本明細書に組み込まれ、一部を構成する。図面は、本明細書の残りの部分とともに、説明され、特許請求された態様および実施形態の原理および動作を説明する。
【0016】
本発明の装置、システムおよび方法について説明し、それに関するすべての添付の図面を参照して、本発明を以下に詳細に説明する。各図は、縮尺通りに描かれたものではなく、様々な図面に図示される同様の各構成要素は、類似する符号で表されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】吸着性物質が懸濁している1つまたは複数のゾーンを含む生物学的反応器を使用する膜生物学的反応器システムの概略図である。
【図2】膜操作システムの上流にある生物学的反応器中で吸着性物質を使用する、廃水の処理のためのシステムの一実施形態の概略図である。
【図3】脱窒素ゾーンを含む、図2に示されたシステムと同様のシステムの第2の実施形態の概略図である。
【図4】生物学的反応器タンクの一部分でのみ吸着性物質が懸濁状態に維持されている別の実施形態の概略図である。
【図5】無酸素ゾーンを含む複数のセクションに分けられた生物学的反応器のさらなる実施形態の概略図である。
【図6】一連の生物学的反応器を使用するさらなる実施形態の概略図であり、生物学的反応器のうちの1つのみにおいて吸着性物質が懸濁状態に維持されている。
【図7】混合液中に吸着性物質を懸濁させるためのジェット懸濁システムを示す、生物学的反応器システムの実施形態である。
【図8】混合液中に吸着性物質を懸濁させるためのジェット懸濁システムを示す、生物学的反応器システムの実施形態である。
【図9】混合液中に吸着性物質を懸濁させるためのジェット懸濁システムを示す、生物学的反応器システムの代替実施形態であり、ソースから取られた混合液は、吸着性物質が除去されている。
【図10】混合液中に吸着性物質を懸濁させるためのジェット懸濁システムを示す、生物学的反応器システムの代替実施形態であり、ソースから取られた混合液は、吸着性物質が除去されている。
【図11】吸着性物質がジェットノズルを通って循環されない、混合液中に吸着性物質を懸濁させるためのジェット懸濁システムを示す代替実施形態である。
【図12】吸着性物質を懸濁状態に維持するために循環を行うためのガスリフト懸濁システムを示す、生物学的反応器のさらなる実施形態である。
【図13A】沈殿ゾーンを示すさらなる実施形態である。
【図13B】沈殿ゾーンを示すさらなる実施形態である。
【図14】膜生物学的反応器システム中の生物学的環境順化の様々な段階における、供給COD濃度(ミリグラムグラム/リットル)と残留排出物COD濃度(オリジナルに対する百分率)とを示すチャートである。
【図15】ジェット懸濁システムの使用を実証する例で使用されるタイプのジェットノズルの一実施形態の概略図である。
【図16】本明細書の別の例で使用されるシステム構成の概略図である。
【図17】図16のシステムを使用する様々な検査条件下で決定されるある特定のノズルスロート速度および液体流量での吸着性物質の懸濁を示すチャートである。
【図18】図16のシステム構成で採用される生物学的反応器の実施形態の上面図および断面図である。
【図19】図16のシステム構成で採用される生物学的反応器の実施形態の上面図および断面図である。
【図20】ガスリフト懸濁システムを使用する本明細書の別の例における、様々なタイプの吸着性物質の動作時間と相関関係にある摩耗を示すチャートである。
【図21】ガスリフト懸濁システムを使用する生物学的反応器の一実施形態の上面図および断面図である。
【図22】図21のガスリフト懸濁システムを使用するフローパターンの概略図である。
【図23】ガスリフト懸濁システムの他の構成を使用する生物学的反応器の一実施形態の上面図および断面図である。
【図24】ガスリフト懸濁システムの様々な構成を使用する生物学的反応器の実施形態の上面図、側断面図および端断面図である。
【図25】ガスリフト懸濁システムの様々な構成を使用する生物学的反応器の実施形態の上面図、側断面図および端断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される場合、「生物学的抵抗性化合物」は、微生物と接触したときに生物学的に分解することが難しい種類の、廃水中の化学的酸素要求量(「COD」)化合物(有機および/または無機)を指す。「生物学的抵抗性化合物」は、穏やかな抵抗性をもつものから高い抵抗性をもつものまで、様々な程度の抵抗性を有し得る。
【0019】
「生物学的阻害性化合物」は、生分解プロセスを阻害するような、廃水中の化合物(有機および/または無機)を指す。
【0020】
「生物学的不安定」とは、人間および動物の排泄物、食品廃棄物などの分解が容易な単純有機物、ならびにアンモニア系化合物およびリン系化合物などの無機物を意味する。
【0021】
「COD」または「化学的酸素要求量」は、有機物の酸化(分解)、ならびにアンモニアおよび亜硝酸塩などの無機化学物質の酸化を引き起こす化学反応中に、酸素を消費する水の能力の測度を指す。COD測度は、生物学的不安定化合物、生物学的阻害性化合物、および生物学的抵抗性化合物を含む。
【0022】
「混合液浮遊物質」または「MLSS」とは、処理される廃水中に存在する、溶解した微生物または他の物質と懸濁した微生物または他の物質の両方を意味する。「混合液有機性浮遊物質」または「MLVSS」とは、MLSS中の活性微生物を意味し、「混合液」とは、廃水とMLSSとの混合物を意味する。
【0023】
本明細書で使用される「吸着材」または「吸着性物質」とは、粒状活性炭(処理すべき廃水中に存在することが分かっているあらかじめ規定された化学種、金属または他の化合物に対する親和性を提供するように処理された粒状活性炭を含む)、粒状鉄系化合物(たとえば、酸化鉄複合材料)、合成樹脂、および粒状アルミノケイ酸複合材料のうちの1つまたは複数を意味する。
【0024】
システムの1つのセクションから別のセクションに、たとえば、懸濁した吸着性物質を含む生物学的反応器から膜操作システムに流れる排出物中の吸着性物質の存在について記載しているコンテキストにおける「実質的にない」または「実質的に防止される」とは、膜操作システムに流れる吸着性物質の量を、その中での膜ろ過プロセスの必要な有効性に悪影響を与えない量に制限することを指す。たとえば、ある特定の実施形態では、「実質的にない」または「実質的に防止される」とは、生物学的反応器あるいは1つまたは複数の生物学的反応ゾーン内の所与のシステム中で使用すべき吸着性物質のあらかじめ規定された量の少なくとも体積の約80%を、さらなる実施形態では少なくとも体積の約90%を、さらに別の実施形態では少なくとも体積の約95%を、さらに別の実施形態では少なくとも体積の約99%を保持することを指す。ただし、当業者には、本明細書の教示に基づいて、これらの割合が単に例示的ものにすぎず、ファクタに応じて変動することができ、ファクタは、使用される(1つまたは複数の)膜のタイプ、それらの耐摩耗性、必要とされる排出水質、所与のシステム中で使用すべき吸着性物質のあらかじめ規定された量、および他のファクタを含むが、それらに限定されるものではないことを理解されたい。
【0025】
本発明は、廃水処理システムおよび方法を対象とする。本明細書で使用される「廃水」とは、生物分解性材料、無機物、バクテリアによって分解できる不安定有機化合物、生物学的抵抗性化合物、および/または生物学的阻害性化合物で汚染され、廃水処理システム中に流れ込む、地表水、地下水、ならびに産業排水源、農業排水源、および水道排水源からの廃水流などのあらゆる水を規定する。
【0026】
産業排水源および水道排水源からの廃水は、一般に、生物学的固形物と、生物学的阻害性および抵抗性の有機物を含む不活性材料および有機物とを含む。生物学的阻害性および抵抗性の有機物の例には、高分子電解質処理化学物質などの合成有機化学物質が含まれる。他の生物学的阻害性および抵抗性の有機物は、ポリ塩化ビフェニル類、多環芳香族炭化水素類、ポリ塩化ジベンゾ−p−ジオキシン、およびポリ塩素化ジベンゾフラン類を含む。環境ホルモン化合物も、有機体中のホルモンシステムに影響を及ぼすことがあり、環境中で発見される生物学的阻害性および抵抗性の有機物のクラスである。環境ホルモン化合物の例には、油を除去するために使用されるノニルフェノールなどのアルキルフェノール類、ならびに17−b−エストラジオール、エストロン、テストステロン、エチニルエストラジオールなどの天然ホルモンおよび避妊薬中に見られる合成ステロイドが含まれる。
【0027】
処理すべき廃水の他の例には、高強度廃水、低強度廃水、および埋立地からの浸出水が含まれる。また、廃水を処理してウィルスを除去することができる。廃水中の汚染の他の例として、難燃剤、溶剤、安定剤、ポリ塩化ビフェニル類(PCB)、ダイオキシン、フラン類;多核芳香族(PNA)、医薬品、石油、石油化学製品、石油化学製品副産物、セルロース、リン、リン化合物および誘導体、ならびに化学肥料、殺虫剤、および除草剤から抽出される、またはそれらを作製するために使用されるような農薬が含まれる。
【0028】
また、産業排水源および水道排水源からの廃水は、水処理プロセス中に生じ、後で除去するのが難しい微量成分化合物を含有し得る。水処理プロセス中に生じる微量成分の例には、特許権が設定されたカチオン樹脂およびアニオン樹脂から放出され得るN−ニトロソジメチルアミン(NDMA)などのニトロソアミン類が含まれる。
【0029】
一般に、廃水処理施設は、湖、河川、および水流などの水域中に安全に放出できるように、水を清浄するために複数の処理ステージを使用する。現在、多くの汚水処理プラントは、機械的手段を使用して大きな物体を除去する予備処理フェーズ(たとえば、バースクリーン)と、砂、粗砂、および石が沈殿する砂または粗砂チャネルを含む。また、いくつかの処理システムは、スキミングのためにある特定の脂肪、グリース、および油を表面に浮かせ、より重い固形物を底に沈殿させ、その後、その固形物を好気性または嫌気性ダイジェスタ内で処理して、バイオマスを分解し、生物学的固形物のレベルを低減する予備ステージを含む。
【0030】
予備処理および/または1次処理後、2次生物学的活性汚泥処理フェーズに廃水を送る。廃水の生物学的処理は広く実用化されている。廃水は、一般に、廃棄活性汚泥とともに処理され、生物学的固形物には、処理タンク内のバクテリアが作用する。活性汚泥プロセスは好気性生物学的処理を含み、好気性生物学的処理は、一般に、曝気タンクに続いて除濁/沈殿タンクにおいて行われる。適切な混合液浮遊物質濃度を維持するために、沈殿した汚泥を曝気タンクに再び循環させて、汚染物質を分解する。過剰なバイオソリッド、たとえば、汚泥の廃棄のために利用できるいくつかの代替例には、焼却、埋立地における廃棄、または毒性成分がない場合には肥料としての使用が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0031】
曝気タンクにおいて、空気または純酸素などの酸素含有ガスを混合液に加える。一般に、空気からの酸素は、廃水フィード内に溶解している有機化合物、またはその中に懸濁している有機化合物を生物学的に酸化するために、バクテリアによって使用される。生物学的酸化は、一般に、有機汚染物質、ならびにアンモニアおよびリン化合物などのいくつかの無機化合物を廃水から除去するために利用できる最も低コストの酸化方法であり、生物学的に処理可能な有機化合物で汚染された廃水のための最も広く使用されている処理システムである。バイオ分解に対して全体的に耐性のある化合物、生物学的阻害性化合物、および/または生物学的抵抗性化合物を含有する廃水は、従来の単純な生物学的廃水処理システムでは適切に処理することができない。これらの化合物には、処理タンク内における水理学滞留時間中のみ、バクテリアが作用し得る。水理学滞留時間は、一般に、十分な生物学的阻害性化合物および/または生物学的抵抗性化合物の生物学的酸化には不十分であるので、これらの難分解化合物のうちの一部は処理または破壊することができず、排出物または過剰な残留汚泥のいずれかの排出の前には、変化しないまたは部分的にのみ処理されて処理システムを通過することができる傾向がある。
【0032】
曝気タンクから排出された混合液は、一般に、除濁/沈殿タンクに入り、そこで、凝縮された混合液浮遊物質を含む汚泥は、重力によって沈殿する。過剰なバイオマスは、離れた廃棄場所に廃棄、すなわち、排出される。ただし、廃水および経済的な必要性に基づいて、いくつかの生物学的酸化システムは、異なる処理方法を使用して排出廃水から固形物を取り除く。除濁/沈殿タンクは、膜操作システムと置換することができ、あるいは溶解/誘導空気浮揚デバイスなどのその他のユニット操作を使用してもよい。除濁/沈殿タンク、オペレーティングシステム、または溶解空気浮揚デバイスから排出された液体は、排出されるか、または排出される前にさらなる処理を施されるかのいずれかである。混合液から除去される固形物は、さらなる処理のために、およびシステム中のバクテリアを適切な濃度に保つために、循環活性汚泥として曝気タンクに戻される。この戻された活性汚泥のなんらかの部分は、混合液中のバクテリアの濃度を制御するために、このリサイクルラインから周期的に除去される。
【0033】
従来の産業生物学的廃水処理プラント技術における1つの最近の進歩は、混合液に粉末活性炭微粒子を加えることを含む。粉末活性炭を利用する生物学的処理システムにおいて、有機物は、活性炭上に吸着され、汚泥滞留時間と同様の水理学滞留時間の間、処理タンクにとどまり、したがって、ある特定の生物学的阻害性または生物学的抵抗性の化合物の除去を向上させる結果となる吸着処理と生物学的処理の両方を施すことができる。これらのプロセスでは、ある特定の有機化合物および無機化合物は、粉末活性炭微粒子の表面に物理的に吸着される。
【0034】
粉末活性炭は、生物学的阻害性および生物学的抵抗性の化合物を吸着し、それにより、これらの汚染物質の濃度が低下した排出物を提供することができるので、従来の生物学的処理プラントで使用されてきた。混合液に粉末活性炭を含むことにより、多くの操作上の利点が提供される。カーボンは、汚染物質のさらなる除去、およびアップセット状態に対する許容度の向上を含む、懸濁媒体生物学的処理システムの利点を提供する。さらに、カーボンにより、生物学的阻害性および生物学的抵抗性の化合物をカーボンの表面に吸着し、従来の生物学的処理システムよりも著しく長い周期の間、生物に曝すことがきるようになり、それにより、固定フィルムシステムと同様の利点を提供することができるようになる。また、カーボンにより、生物学的阻害性有機材を分解する能力がさらに高いバクテリアの特定の菌株が発生できるようになる。カーボンが、循環活性汚泥とともに、曝気タンクに継続的に循環するという事実、すなわち、汚泥滞留時間は、バクテリアが生物学的処理システムの水理学滞留時間よりも長い時間周期の間、カーボンの表面に吸着された生物学的阻害性有機化合物を分解するように作用することができることを意味する。また、このプロセスの結果、カーボンが生物学的に再生され、カーボンは、単純な充填床カーボンろ過システム中で除去することができる量に比べて非常に多くの生物学的阻害性および生物学的抵抗性の化合物を除去することができるようになる。単純な充填床カーボンろ過システムはまた、カーボンの吸着力が衰弱すると、頻繁に交換が必要となったり、カーボンの物理的再生に費用がかかったりすることになる。また、混合液中のカーボンは、ある特定の化合物を吸着し、したがって、従来の生物学的酸化によって処理できない、あるいはバイオ分解に対して全体として耐性がある化合物がない、あるいはそのような化合物の濃度が著しく低い排出物を提供することができる。既知の粉末活性炭システムの1つの例は、商標「PACT(登録商標)」としてSiemens Water Technologiesにより提供されている。
【0035】
しかしながら、有機化合物および無機化合物中の生物学的成長も吸着も、粉末形態の活性炭で生じるので、過剰な固形物の廃棄が必要である。さらに、粉末活性炭は、バイオソリッドの除去とともに処理プロセスから排出され、したがって、継続的に交換しなければならない。
【0036】
汚水はますます、膜生物学的反応器技術を使用して処理されており、それにより、排出物品質が改善され、物理フットプリントを小さくし(単位面積当たり、より多くの廃水を処理することができる)、アップセット状態に対する許容度が高まり、処理が難しい廃水を処理する能力が高まり、様々な他の操作上の利点が提供される。たとえば、高い全溶解固形物を含有する廃水は、従来の除濁/沈殿タンクにおける沈殿問題を経験することがあり、溶解空気浮揚デバイスなどの非常に操作が難しい固形物分離デバイス、または何らかの他の固形物除去システムを必要とする。しかしながら、膜生物学的反応器は、除濁/沈殿タンクシステムによりもたらされる沈殿問題はなくすが、除濁装置を使用する従来のシステムにおいて生じない膜汚染および起泡の問題をしばしば提示する。膜汚染は、混合液浮遊物質中の生物学的生命体の分解、油などの有機物の蓄積、または無機材によるスケーリングにより生じる細胞外高分子化合物によって起こり得る。
【0037】
さらに、現時点では、粉末活性炭添加を伴う膜生物学的反応器は商業的に利用されていない。ろ過に膜を利用する地表水処理システム中において、粉末活性炭がいくらか使用されてきた。しかしながら、膜および粉末活性炭を使用するこれらの地表水処理システムには、カーボンが膜を摩耗する、カーボンが膜を永続的に詰める、および/または汚染するという問題があることが報告されている。
【0038】
排出または再利用の前に処理されなければならない産業廃水は、しばしば、乳化炭化水素を含有し得る油性廃水を含む。油性廃水は、鋼およびアルミニウム産業、化学処理産業、自動車産業、洗濯業、ならびに原油生産および石油精製産業を含むさまざまな産業に由来し得る。上述のように、一定量の非乳化油および他の炭化水素は、浮遊する油を上部からすくい取る1次処理プロセスにおいて除去することができる。しかしなら、生物学的な2次廃水プロセスは、一般に、一部の遊離油であり、概して溶解し乳化した油が存在した廃水から、残留油を取り除くために採用される。1次処理後に残留している典型的な炭化水素は、潤滑油、切削油、タール、グリース、原油、ディーゼル油、ガソリン、灯油、ジェット燃料などを含み得る。これらの炭化水素は、一般に、水を環境中に排出する、または水を産業プロセスにおいて再利用する前に除去されなければならない。政府規則および環境配慮に加えて、残留する炭化水素の効率的な除去はまた、適切に処理された廃水を多くの産業プロセスで利用することができ、原水処理コストをなくし、規則上の排出懸念を低減することができるので有効である。
【0039】
処理されるべき他のタイプの廃水には、医薬品、様々な物品、農業用製品(たとえば、化学肥料、殺虫剤、除草剤)の製造、および紙加工などの他の産業プロセスからの汚染された処理水、ならびに医療廃水が含まれる。
【0040】
油性/産業廃水の処理における膜生物学的反応器の商業的な展開は、膜の油および化学的汚染と関連する保守問題を主な理由にして、発展に非常に時間がかかった。混合液に粉末活性炭が加えられた膜生物学的反応器内で処理された産業/油性廃水の試験は、粉末活性炭を含む従来の生物学的廃水処理システムで観察されるものと同じ処理利点を示した。また、膜生物学的反応器を使用する利点も達成されることを留意されたい。しかしながら、粉末活性炭を加えた膜生物学的反応器と粉末活性炭を加えていない膜生物学的反応器を並べて比較すると、粉末活性炭が含まれる膜生物学的反応器は、活性炭が含まれていない膜生物学的反応器と比較して処理利点があることが実証される。さらに、カーボンが添加されていない膜生物学的反応器は、溶解された有機物および細胞外高分子化合物が膜を汚染するので、操作が大変難しかった。さらに、試験により、粉末活性炭の添加により、非常に実用的な生物学的廃水処理システムが提供されるが、カーボンは、相当な量の膜の摩耗および不可逆汚染という悪影響を有することが実証された。この摩耗および不可逆汚染は著しいので、膜の推定寿命が著しく短くなり、膜の清浄が頻繁になるので、このシステムが操作に非常にコストがかかる結果となるには十分である。
【0041】
本発明のシステムおよび方法は、同じまたはさらなる利点を提供しつつ、粉末活性炭を使用することの悪影響を克服する。
【0042】
図1を参照すると、膜操作システム104の上流にある生物学的反応器システム102を含む廃水処理システム100が概略的に示されている。ある特定の実施形態では、生物学的反応器システム102は、単一の生物学的反応器容器を含む。さらなる実施形態では、生物学的反応器システム102は、複数の生物学的反応器容器と、別々のセクションに分けられた1つの生物学的反応器容器、または、一部または全部が別々のセクションに分けられた複数の生物学的反応器容器を含む。個々の反応器容器または分離されたセクションは、本明細書では、生物学的反応ゾーンとまとめて呼ばれる。本発明による廃水処理操作中、微生物を伴う吸着性物質は、生物学的反応ゾーンのすべて、または生物学的反応ゾーンの総数のサブセット中で懸濁状態に維持される。膜操作システム104は、本明細書に記載される分離サブシステムのうちの1つまたは複数を使用して、吸着性物質が実質的にない状態に維持される。流入廃水流106は、1次処理システム、予備スクリーニングシステムから、あるいは、あらかじめ処理されていない廃水の直接流として導入され得る。さらなる実施形態では、流入廃水流106は、あらかじめ処理された廃水、たとえば、1つまたは複数の上流にある生物学的反応器からの排出物であり得、これらの反応器には、好気性生物学的反応器、嫌気性生物学的反応器、連続流反応器、逐次バッチ反応器、あるいは、有機物およびある特定の実施形態では無機化合物を生物学的に分解することができる任意の数の他のタイプの生物学的処理システムが含まれるが、それらの処理システムに限定されるものではない。
【0043】
(1つまたは複数の)生物学的反応器および/またはある特定の生物学的反応器ゾーンは、好気性生物学的反応器、嫌気性生物学的反応器、連続流反応器、逐次バッチ反応器,散水ろ過機、あるいは、有機物およびある特定の実施形態では無機化合物を生物学的に分解することができる任意の数の他のタイプの生物学的処理システムを含むが様々なタイプの生物学的反応器であり得るが、それらの処理システムに限定されるものではない。
【0044】
さらに、本明細書で使用される(1つまたは複数の)生物学的反応器および/またはある特定の生物学的反応器ゾーンは、懸濁システムと連携して吸着性物質を懸濁させるのに好適な任意のサイズまたは形状のものとすることができる。たとえば、容器は、円形、楕円形、正方形、長方形または任意の不規則形状など、任意の形状の断面領域を有してもよい。いくつかの実施形態では、反応器容器は、吸着性物質の好適な懸濁を促進するために構築または変形させてもよい。
【0045】
図2に、生物学的不安定、生物学的抵抗性、生物学的阻害性、ならびに/あるいは生物学的分解に対して全体的に耐性のある有機化合物および無機化合物の濃度が低減された処理済み排出物を生成するための廃水処理システム200のプロセスフローを概略的に示す。システム200は、一般に、生物学的反応器202と、膜操作システム204とを含む。生物学的反応器202は、廃水を受けるための入口206と、混合液有機性浮遊物質および/または混合液を含む生物学的処理済みの排出物を膜操作システム204に排出するための出口208とを含む。
【0046】
生物学的反応器202は、分散した大量の孔236のある吸着性物質234と、有効量の1つまたは複数の微生物238とを含み、それらは両方とも、混合液中の生物学的不安定ならびにある特定の生物学的抵抗性および/または生物学的阻害性の化合物に対して作用するために、吸着性物質に吸着され、自由に浮遊し、混合液中で吸着性物質から分離している。吸着性粒子または微粒子の外側表面と孔236の壁面とを含む吸着性物質の吸着部位は、最初に、生物学的不安定、生物学的抵抗性、生物学的阻害性、ならびに/あるいは生物学的分解に全体として耐性がある有機化合物および無機化合物の吸着部位として機能する。さらに、吸着性物質の吸着部位上で、微生物238を吸着することができる。これにより、ある特定の生物学的抵抗性および/または生物学的阻害性の化合物が、吸着性物質上に、延長された時間期間の間保持され、生物学的反応器中で分離され、あるいは保持されるという事実に起因して、比例して水力学的滞留時間および汚泥滞留時間を長くすることを必要とせずに、これらのある特定の生物学的抵抗性および/または生物学的阻害性の化合物のより高い分解レベルが可能になる。
【0047】
一般的には、生物学的不安定化合物およびある特定の無機物は、吸着性物質に吸着されない微生物、すなわち、混合液中の浮動性微生物によって比較的迅速に、優先的に分解されることになる。生物学的分解に全体的に耐性がある有機物および無機物、ならびに非常に抵抗性である生物学的抵抗性および生物学的阻害性の化合物を含むある特定の成分は、吸着性物質上に吸着されて保持され、あるいは吸着され、および/または(1つまたは複数の)反応器中の浮動性生物学的物質によって吸着されることがある。最終的には、これら非分解性化合物は、排出物を許容可能なレベルの吸着能力に維持するために吸着材の交換が必要となる時点まで、吸着材上に凝集する。吸着性物質が本発明によるシステム中に維持される間、微生物は成長し、一般に、吸着性物質上に凝集した、特定の流入廃水のうちの少なくともある特定の生物学的抵抗性および/または生物学的阻害性の化合物を分解するのに十分に長く吸着性物質上に保持される。さらに、理論にしばられることを意図するものではないが、微生物は、最終的には、特定の流入廃水中の処理が難しい化合物を分解するのに必要な具体的環境順化により成長した株に成長すると考えられている。さらに時間がたつと、たとえば、数日間から数週間たつと、その間ある特定の生物学的抵抗性、および/または生物学的阻害性化合物を有する吸着性物質がシステム中に維持され、高い度合いの特異性を有する微生物は、第2世代、第3世代、およびさらに後の世代になり、それにより、システムが環境順化するにつれて、特定の流入廃水中に存在する特定の生物学的抵抗性および/または生物学的阻害性の化合物のうちの少なくともいくつかを生物学的分解するための有効性が高まる。これは、図14にも示された残留CODの段階的変化によって示され、図中に、吸着性物質が添加される、膜生物学的反応器システムの環境順化の様々な段階、すなわち、吸着性物質が添加される前の段階A、環境順化期間中の段階B、および環境順化後の段階Cにおける、生物学的抵抗性および生物学的阻害性の化合物の供給濃度(mg/l)と残留している排出物の濃度(オリジナルに対する百分率)とのプロットを示す。
【0048】
様々な流入廃水は、生物学的反応器202中で生じる、生物学に有益なある特定の栄養素が不足していることがある。さらに、ある特定の流入廃水は、過剰に酸性または腐食性であるpHレベルを有することがある。したがって、当業者には明らかなように、反応器202における、生物学的寿命と生物学的酸化を含む関連するアクティビティのための最適な栄養素比およびpHレベルを維持するために、リン、窒素、およびpH調整材料もしくは化学物質を加えることができる。
【0049】
生物学的反応器202からの排出物は、分離サブシステム222を介して、膜操作システム204の入口210に導入される。この輸送された混合液は、生物学的反応器202中で処理済みであり、吸着性物質が実質的にない。膜操作システム204において、廃水は、1つまたは複数の精密ろ過膜または限外ろ過膜を通過し、それにより、浄化および/または3次ろ過の必要性がなくなる、または最小限に抑えられる。膜透過物、すなわち、膜240を通過する液体は、膜操作システム204から、出口212を介して排出される。膜残留物、すなわち、活性汚泥を含む、生物学的反応器202から排出された固形物は、循環活性汚泥ライン214を介して、生物学的反応器202に戻される。
【0050】
生物学的反応器202からの使用済み吸着性物質、たとえば、バイオ分解に対して全体的に耐性のある特定の化合物、生物学的抵抗性化合物、および生物学的阻害性化合物などの汚染物質を吸着する際にもはや有効でない粒状活性炭は、生物学的反応器202の混合液廃棄物排出ポート216を介して除去され得る。また、廃水出口218を循環パイプ214に接続して、たとえば、混合液および/または培地の濃度を制御するために、廃棄すべき循環活性汚泥のうちの一部または全部を進路変更することができる。汚泥は、混合液固形物濃度が、特定の膜生物学的反応器システムの動作を妨げるほど高いポイントまで増加したときに、廃棄活性汚泥とともに装置から排出される。さらに、廃棄活性汚泥とともに循環活性汚泥ラインからではなく、混合液廃棄物排出ポート216を使用して吸着性物質の一部分を取り除き、それにより、生物学的抵抗性化合物、生物学的阻害性化合物、ならびに/あるいは生物学的分解に全体的に耐性のある有機化合物または無機化合物の何らかの部分を取り除くことでき、その結果、排出物中のこれらの生物学的抵抗性化合物、生物学的阻害性化合物、ならびに/あるいは生物学的分解に全体的に耐性のある有機化合物および無機化合物の濃度がより低くなり、膜生物学的反応器中のバイオマスがより安定化する。等価量の新しいまたは再生された吸着性物質を加えることができる。
【0051】
生物学的反応器202の入口206の上流に予備スクリーニングおよび/または分離システム220を設けることができる。この予備スクリーニングおよび/または分離システムは、溶解気泡分離システム、粗スクリーン、あるいはこれらの処理デバイスおよび/または当技術分野で知られるタイプの懸濁物質を分離するための他の予備処理デバイスの組合せを含むことができる。任意選択で、予備スクリーニングおよび/または分離システム220をなくすことができ、あるいは処理される具体的な廃水に応じて他のタイプの予備処理デバイスを含んでもよい。
【0052】
吸着性物質234のうちの少なくとも大部分が、膜操作システム204に入り、望ましくない摩耗を引き起こす、および/または膜240を汚すことを防止するために、分離サブシステム222を設ける。図2に示されるように分離サブシステム222は、生物学的反応器202の出口の近位に配置される。しかしながら、ある特定の実施形態では、生物学的反応器202の下流にある別個の容器中に分離サブシステム222を配置することができる。いずれの場合でも、分離サブシステム222は、膜操作システム204中で吸着材234の少なくとも大部分と膜240とが接触しないようにするための好適な装置および/または構造を含む。分離サブシステム222は、スクリーニング装置、沈殿ゾーン、および/または他の好適な分離装置のうちの1つまたは複数を備えることができる。
【0053】
本発明のある特定の実施形態で使用するための好適なタイプのスクリーンまたはスクリーニング装置は、円筒構造または平坦な構造で、その間に垂直方向、水平方向、または任意の角度を含む様々な角度で配置されたウェッジワイヤスクリーン、金属製またはプラスチック製の開口付きプレート、あるいは織布繊維を含む。さらなる実施形態では、回転ドラムスクリーン、振動スクリーン、またはその他の運動スクリーニング装置など、アクティブなスクリーニング装置を採用することができる。一般に、分離サブシステム222がスクリーニング装置であるシステムの場合、メッシュサイズは、使用される吸着性物質の有効な粒子または微粒子サイズの下限よりも小さい。
【0054】
また、分離サブシステムにおいて、スクリーニング装置の代わりに、またはそれと組み合わせて他のタイプの分離サブシステムを使用することができる。たとえば、以下にさらに記載するように、吸着性物質が重力によって沈殿する沈殿ゾーンを設けることができる。
【0055】
代替実施形態では、または、前述の実施形態と組み合わせて、分離サブシステムは、遠心分離システム(たとえば、ハイドロサイクロン、遠心分離機など)、曝気沈砂池、(誘導式気体浮揚または溶解気体などの)浮揚システム、あるいは他の既知の装置を含むことができる。
【0056】
任意選択で、または生物学的反応器202の出口の近位にある分離サブシステム222と組み合わせて、生物学的反応器202と膜操作システム204との間に分離サブシステムを設けることができる(図示せず)。この代替形態または追加の分離サブシステムは、分離サブシステム222とタイプおよび/または寸法が同じでも、異なっていてもよい。たとえば、ある特定の実施形態では、沈殿ゾーン、クラリファイア、ハイドロサイクロン分離機、遠心分離機、またはこれらの組合せを、生物学的反応器202と膜操作システム204との間に固有のユニット操作として設けてもよい。
【0057】
分離サブシステム222は、元の寸法の吸着性物質が膜操作システムへと通過しないようにするためには非常に効果的であることを留意されたい。ある特定の好ましい実施形態では、分離サブシステム222は、吸着性物質234の実質的に全部が膜操作システム204へと通過することを防止する。しかしながら、システム200の動作中、粒子間衝突、せん断、循環、または固定されたもしくは動いている機器内の粒子の衝突を含む、吸着性物質の摩耗の様々な原因により、分離サブシステム222を用いて効果的に保持されるには小さすぎる微粒子が生成され得る。膜に対する障害と、廃棄に対する吸着性物質の損失を最小限に抑えるために、ある特定の実施形態は、元の寸法の約70パーセントから約80パーセント以内の吸着性物質234の実質的に全部が通過することを防止することができる分離サブシステム222を含む。元の寸法の許容可能な減少率は、たとえば、経済的評価に基づいて、当業者によって決定され得る。寸法を縮小した結果、スクリーニングシステムを通過する微粒子が増加する場合、膜はさらなる摩耗にさらされる。したがって、破損を最小限に抑える吸着性物質に関連するコスト、ならびに元の吸着性物質粒子または微粒子よりもはるかに小さい微粒子の通過を防止することができる分離サブシステムに関連する操作および運転コストと比較して、摩耗と膜の偶発的な交換とのコストに基づいて、吸着性物質の許容可能な減少率は何であるかを決定するために、費用便益分析を使用することができる。さらに、ある特定の実施形態では、吸着性物質の外側表面から過剰なバイオマスを滑落させる、何らかの程度の粒子間衝突、あるいは固定されたまたは動いている機器内の粒子の衝突が望ましい。
【0058】
生物学的反応器202から排出されたスクリーニングされたまたは分離された混合液を、(特定のシステムの設計に応じて)膜操作システム204中にポンプ圧送または重力によって流すことができる。外部の分離サブシステム(図示せず)を使用するシステムでは、外部の微細スクリーニングまたは分離機サブシステムを通過する混合液から分離された吸着性物質が重力によって落ちて、生物学的反応器202に戻るように装置を構成するのが好ましい。
【0059】
システム200中の様々なポイントにおいて、たとえば、吸着性物質源229から廃水に、たとえば、吸着性物質のスラリーを形成するために好適に事前湿潤された粒状活性炭などの吸着性物質を加えることができる。図2に示されるように、1つまたは複数の場所230a、230b、230c、および/または230dにおいて、吸着性物質を導入することができる。たとえば、予備スクリーニングシステム220の下流にある供給流に吸着性物質を加えることができる(たとえば、場所230a)。任意選択で、または組み合わせて、吸着性物質を生物学的反応器202に直接加えることができる(すなわち、場所230b)。ある特定の実施形態では、循環活性汚泥ライン214を介して吸着性物質を導入することができる(たとえば、場所230c)。さらなる実施形態では、吸着性物質を予備スクリーニングシステム220の上流で加えることが望ましいことがあり(たとえば、場所230d)、予備スクリーニングシステム220は、吸着性物質が生物学的反応器202を通過できるようにする、または生物学的反応器202中に流れることができるようにするスクリーニングを含むことによってこの適用例のために特に設計される。混合液は分離サブシステム222を通過し、吸着性物質は、混合液浮遊物質とともに膜操作システム204中に通過することを実質的に防止される。
【0060】
吸着性物質がシステムにとどまって、生物学的抵抗性化合物、生物学的阻害性化合物、ならびに/あるいは生物学的分解に対して全体的に耐性のある有機化合物および無機化合物を含む廃水構成成分に露出するので、吸着性物質の一部または全部は、構成成分を処理するための効果がなくなり、すなわち、吸着能力が低下する。この結果、膜操作システム204に入るこれらの構成成分の濃度がより高くなり、それらは、膜を通過し、膜排出物212とともに排出される。さらに、バクテリア、多糖類、および/または細胞外重合物質によるコーティングにより、吸着性物質の効果をなくすことがある。このコーティング層は、孔部位を遮断し、それにより、生物学的抵抗性化合物、生物学的阻害性化合物、ならびに/あるいは生物学的分解に対して全体的に耐性がある有機化合物および無機化合物がアクセスできないようにし、結果として、吸着を妨げ、生物学的分解を阻害するレベルに達することがある。本発明のある特定の実施形態では、混合液に懸濁している吸着性物質粒子間の衝突、あるいは吸着性物質の懸濁および/または運動に関連するせん断力などの、システムにおける1つまたは複数のメカニズムによって生成されたせん断アクションによって、このコーティングを除去することができる。
【0061】
吸着性物質が、生物学的抵抗性化合物、生物学的阻害性化合物、ならびに/あるいは生物学的分解に対して全体的に耐性がある有機化合物および無機化合物の排出物濃度を低減させるための有効性のすべてまたは一部分が失われたりすると、たとえば、内部に分散した吸着性物質を含有している混合液の一部分を排出することによって、吸着性物質の一部分を廃棄ポート216を介して廃棄することができる。
【0062】
吸着性物質導入装置229を介して、ならびに/あるいは1つまたは複数の好適な追加の場所において、追加の新しいまたは再生された吸着性物質を、上述のようにシステムに導入することができる。システム中の吸着性物質とそれに付随するバイオマスの効果がいつ低減したかを判断するために、入口廃水濃度および排出物廃水COD化合物濃度ならびに/あるいは無機化合物濃度を監視することができる。入口CODと、入口COD濃度によって除算された排出物CODの濃度との差のプロットにより、混合液中の吸着性物質の効果がだんだんと失われていくことがわかる。同じタイプのプロットを使用して、システムの無機物除去能力を監視することができる。供給流から除去されたCODの量は、廃水フィードから除去される生物学的抵抗性および/または生物学的阻害性の有機化合物の相対量を示すことができる。システムのオペレータは、特定の廃水を処理する経験を積むにつれて、この比率が生物学的反応器中の吸着性物質の一部分を除去し、新しい吸着性物質と交換する必要性がある時点をいつ示すかを判断することできるようになる。たとえば、法的要件に準拠する排出物を生成するために、生物学的抵抗性、生物学的阻害性、および/またはバイオ分解に対して全体として耐性のある化合物に関してシステムの求められる効果が回復される。また、特定の有機化合物および無機化合物の濃度に関する排出物のサンプリングおよび分析を使用して、混合液中の吸着性物質およびそれに付随するバイオマスの有効性がいつ低減したか、ならびにいつ部分的交換を開始すべきかを判断することができる。
【0063】
本発明による膜生物学的反応器システム200のオペレータは、特定の有機化合物または無機化合物の排出物濃度が、これらの化合物に関する、施設の許可された排出濃度に近づき始めたときに、吸着性物質の一部を交換し始めることができる。許容された排出濃度は、一般に、たとえば、米国環境保護庁によって規定された国家汚染物質排出除去システム(NPDES)許可プログラム、または特定の州または国家における他の同様の規制団体によって決定されるように、施設の許可によって制限される。オペレータは、特定の廃水をもつこのシステムを操作する経験を得るにつれて、吸着性物質の交換を開始すべきときを予期できるようになる。オペレータが、吸着性物質およびそれに付随するバイオマスの効果が汚染物質の必要な排出物濃度を達成することができなくなっていくと判断したとき、ライン218からの循環活性汚泥を廃棄することによって実行される、過剰なバイオマスの通常の廃棄を終了することができ、過剰なバイオマスおよびそれに伴う吸着性物質は、廃棄ポート216を介して生物学的反応器202から廃棄される。廃棄された物質の量は、混合液浮遊物質を特定の膜生物学的反応器システムに関する最適操作範囲内に維持するためにどれだけ必要かによって決定される。吸着性物質の一部分を交換した後、必要な汚染物質除去効果が回復されたかどうかを決定するために、オペレータによって排出物を監視する。操作経験に基づいて、必要に応じてさらなる交換を行うことができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、システムおよび/またはシステムの個々の装置は、所望に応じてシステムを監視し、調整するためのコントローラを含むことができる。コントローラは、所望の動作条件に応じて、システム内のパラメータのいずれかを指示することができ、それらのパラメータは、たとえば、排出物流に関する政府規則に基づき得る。コントローラは、システムまたは個々の装置内に配置されたセンサまたはタイマによって生成された1つまたは複数の信号に基づいて、各ポテンシャル流に関連するバルブ、フィーダ、またはポンプを調節または調整することができる。コントローラはまた、特定の傾向、たとえばあらかじめ規定された時間期間にわたるシステムの特徴または特性の上昇傾向または下降傾向を示す、センサまたはタイマによって生成された1つまたは複数の信号に基づいて各ポテンシャル流に関連するバルブ、フィーダ、またはポンプを調節または調整することができる。たとえば、排出物流中のセンサは、生物学的抵抗性化合物、生物学的阻害性化合物、および/またはバイオ分解に対して全体的に耐性のある化合物などの汚染物質の濃度があらかじめ規定された値または傾向に達したことを示す信号、あるいは、CODレベルを示す信号を生成することができ、それにより、センサから上流で、センサから下流で、またはセンサにおいて何らかの行為を実行するようにコントローラをトリガする。この行為は、生物学的反応器から吸着性物質を除去すること、新しいまたは再生された吸着性物質を生物学的反応器に加えること、異なるタイプの吸着性物質を加えること、供給入口またはシステム内の別の装置への入口における廃水の流れを調整すること、システム内の別の装置への供給入口または入口の流れを貯蔵タンクに再配向すること、生物学的反応器内において空気流を調整すること、生物学的反応器または他の装置内における滞留時間を調整すること、ならびに生物学的反応器または他の装置内における温度および/またはpHを調節することのうちの任意の1つまたは複数を含むことができる。システム内で実行される任意の1つまたは複数のプロセスの状態または条件の指標または特徴を提供するために、1つまたは複数のセンサを、システムの1つまたは複数の装置またはストリーム内で、またはそれらとともに利用することができる。
【0065】
本発明の1つまたは複数の実施形態のシステムおよびコントローラは、複数の動作モードを有する多目的ユニットを提供し、それにより、複数の入力に応答して本発明の廃水処理システムの効率を高めることができる。たとえば、汎用コンピュータであり得る1つまたは複数のコンピュータシステムを使用して、コントローラを実装することができる。代替的には、コンピュータシステムは、特別にプログラムされた、専用のハードウェア、たとえば、水処理システムのために意図された特定用途向け集積回路(AIC)またはコントローラを含むことができる。
【0066】
コンピュータシステムは、一般に、たとえば、ディスクドライブメモリ、フラッシュメモリデバイス、RAMメモリデバイス、またはデータを記憶するための他のデバイスのうちの任意の1つまたは複数を含むことができる1つまたは複数のメモリデバイスに接続された1つまたは複数のプロセッサを含むことができる。メモリは、一般に、システムの動作中、プログラムおよびデータを記憶するために使用される。たとえば、メモリを使用して、時間期間にわたるパラメータに関係する履歴データならびに操作データを保存することができる。本発明の実施形態を実装するプログラミングコードを含むソフトウェアを、コンピュータ可読および/または書込み可能不揮発性記憶媒体に保存し、次いで、一般に、メモリ中にコピーし、そこで、1つまたは複数のプロセッサによって実行することができる。そのようなプログラミングコードは、複数のプログラミング言語のうちのいずれかで、またはそれらを組合せて書き込むことができる。
【0067】
たとえば、同じデバイス内に組み込まれたコンポーネント間の1つまたは複数のバス、ならびに/あるいは、たとえば、別個の個別デバイス上に常駐するコンポーネント間のネットワークを含むことができる1つまたは複数の相互接続機構によって、コンピュータシステムのコンポーネントを結合することができる。一般に、相互接続機構により、たとえば、システムのコンポーネント間で交換されるべきデータ、命令を通信できるようにする。
【0068】
コンピュータシステムは、1つまたは複数の入力デバイス、たとえば、キーボード、マウス、トラックボール、マイクロフォン、タッチスクリーン、および他のマンマシンインターフェースデバイス、ならびに1つまたは複数の出力デバイス、たとえば、印刷デバイス、ディスプレイスクリーン、またはスピーカーを含むことができる。さらに、コンピュータシステムは、システムのコンポーネントのうちの1つまたは複数によって形成することができるネットワークに加えて、またはそれに代えて、通信ネットワークにコンピュータシステムを接続することができる1つまたは複数のインターフェースを含むことができる。
【0069】
本発明の1つまたは複数の実施形態によると、1つまたは複数の入力デバイスは、システムおよび/またはそのコンポーネントの任意の1つまたは複数のパラメータを測定するためのセンサを含むことができる。代替的には、センサ、ポンプ、または計量バルブもしくは容量供給装置を含むシステムの他のコンポーネントのうちの1つまたは複数を、コンピュータシステムに動作可能に結合された通信ネットワークに接続することができる。1つまたは複数の通信ネットワークを介してコンピュータシステムと通信するために、上記のうちの任意の1つまたは複数を、別のコンピュータシステムまたはコンポーネントに結合することができる。そのような構成により、任意のセンサまたは信号生成デバイスは、データ供給を維持しながら、コンピュータシステムからかなり離れた場所に配置できるようになり、ならびに/あるいは任意のセンサを任意のサブシステムおよび/またはコントローラからかなり離れた場所に配置することが可能になる。そのような通信機構は、ワイヤレスプロトコルを利用する技法を含むが、それには限定されない任意の好適な技法を利用することによって影響を受けることがある。
【0070】
本発明の様々な態様を実施することができるコンピュータシステムの1つのタイプを例としてコンピュータシステムについて記載するが、本発明は、例示されたソフトウェア中で、またはコンピュータシステム上で実装されるように限定されるものではないことを了解されたい。実際には、コントローラ、またはそのコンポーネントもしくはサブセクションは、たとえば、汎用コンピュータシステム上で実装されるのではなく、代替的には、専用のシステムとして、または専用のプログラマブルロジックコントローラ(PLC)として、あるいは、分散制御システム中で実装され得る。さらに、本発明の1つまたは複数の特徴または態様は、ソフトウェア、ハードウェア、またはファームウェア、あるいはそれらの任意の組合せ中に実装できることを了解されたい。たとえば、コントローラによって実行可能なアルゴリズムの1つまたは複数のセグメントは別個のコンピュータ中で実装でき、それらのコンピュータは、1つまたは複数のネットワークを介して通信することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のセンサは、システム200全体の複数の場所に含まれ得、好適なプロセス修正形態をプログラマブルロジック制御膜生物学的反応器システム中で実装するために、手動のオペレータまたは自動制御システムと通信している。1つの実施形態では、システム200は、任意の好適なプログラムされたまたは専用のコンピュータシステム、PLC、あるいは分散制御システムとすることができるコントローラ205を含む。ある特定の有機および/または無機化合物の濃度は、点線接続線によって示されるように、コントローラ205と排出物ライン212との間でも、出口208と入口210との間にある中間排出物ラインとコントローラ205との間でも、操作システム排出物212、または生物学的反応器202の出口208からの排出物で測定することができる。別の実施形態では、揮発性有機化合物の濃度、またはシステムの他の特性もしくは特徴は、入口201、206または210のうちの1つまたは複数において測定することができる。プロセス制御装置の当業者には既知のセンサは、レーザ誘起蛍光に基づくセンサ、あるいは排出物中の有機もしくは無機化合物の濃度、またはシステムの他の特性もしくは特徴を本来の場所でリアルタイムで監視するのに好適な任意の他のセンサを含むことができる。使用することができるセンサは、TriOS Optical Sensors(ドイツ、オルデンブルク)から入手可能なenviroFlu−HCセンサなどの、検出のためにUV蛍光を使用する水中油測定において使用するための浸漬式センサを含む。センサはレンズを含むことができ、レンズは、コーティングされる、あるいはレンズ上で生じる汚染またはフィルムの量を予防または制限するように処理される。システム中の1つまたは複数のセンサは、1つまたは複数の有機および/または無機化合物の濃度があらかじめ規定された濃度を超えたことを示す信号を発生すると、制御システムは、好適なフィードバックアクションまたはフィードフォワードアクションなどの応答性アクションを実装することができ、これらのアクションには、(コントローラ205と廃棄物排出ポート216との間の点線接続線によって示されるように)廃棄物排出ポート216を介して吸着性物質を除去すること、(コントローラ205と吸着性物質導入装置229との間の点線接続線によって示されるように)吸着性物質導入装置229を介して、または他の場所のうちの1つで新しいまたは再生された吸着性物質を加えること、異なるタイプの吸着性物質を加えること、水力学的滞留時間を修正すること、微生物に関する単純なカーボンフードなどの生物学的特徴を修正すること、あるいはリン、窒素、および/またはpH調節化学物質を加えること、および/または上述のまたは当業者には明らかになるであろう他の修正形態を含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0072】
コントローラ205および吸着性物質導入装置229のみが図2に関して示されているが、これらの特徴および様々なフィードバックおよびフィードフォワード能力を、本明細書に記載されるシステムのいずれかに組み込むことができることを留意されたい。さらに、コントローラ205は、廃水フィードポンプおよび懸濁システム232などの他のコンポーネントに電気的に接続することができる。
【0073】
混合液を曝気処理し、生物学的反応器202中の吸着性物質によって処理した後、処理された混合液は分離サブシステム222を通過し、吸着性物質が実質的にない膜操作システム204に輸送される。分離サブシステム222は、吸着性物質が膜操作システム204中へ通過を防止する。生物学的反応器202中に、あるいは膜操作システム204の上流に吸着性物質を維持することによって、本発明の方法およびシステムは、吸着性物質による膜操作システムタンク膜の汚染および/または摩耗の可能性を最小限に抑える、またはなくす。
【0074】
膜操作システム204は、バイオ反応器212からの排出物から、膜操作システムタンク204中の混合液に含まれるバイオマスおよび任意の他の固形物をフィルタ除去するためのろ過膜240を含む。これらの膜240は、中空の繊維膜の形態、または当業者には知られるような他の好適な構成とすることができ、一般に、非常に高価であり、それらの耐用寿命を最大にするために、ダメージからそれらを保護することが非常に望ましい。本発明の方法およびシステムでは、分離サブシステム222により、膜操作システム204中への粒状活性炭、および/または任意の他の固形粒子または微粒子などの吸着性物質の導入が実質的に低減される、またはなくなるので、操作システムタンクの膜の寿命が延長される。
【0075】
出口212は、膜操作システムタンク204からフィルタ除去された排出物を輸送する。循環活性汚泥ライン214は、循環活性汚泥流を、廃水フィード流の処理でさらに使用するために、膜操作システムタンク204から生物学的反応器202に輸送する。過剰な汚泥は、従来の膜生物学的反応器システムと同様に、廃棄ライン218を使用してシステムから廃棄される。
【0076】
生物学的反応器202が曝気タンクのような好気性反応器であり、微生物が好気性微生物であるシステムでは、空気拡散装置または機械的混合システムを使用して、吸着性物質を懸濁状態に維持することができる。以下にさらに詳述するように、本発明の様々な追加の実施形態は、吸着性物質を懸濁状態に維持するために、代替のまたは補助的な懸濁装置またはシステム232を含む。
【0077】
比較的な大きな粒子の吸着性物質を懸濁状態に維持するには、一般に、吸着性物質を使用しない、つまり粉末活性炭を採用する従来技術のシステムよりも非常に大きなエネルギーが必要とされる。それにもかかわらず、本発明にしたがって吸着性物質の粒子を使用する利点は、汚染物質除去率または除去の度合いを高め、それにより、さらなる下流での処理の必要性を最小限に抑える、または不要にすることを含み、システムを動作させるためのエネルギー消費の増加を補って余りある。
【0078】
本発明のある特定の実施形態における懸濁システム232は、吸着性物質234の摩耗を最小限に抑えつつ、吸着性物質234を懸濁状態に維持するため、ジェット混合、機械混合、ジェットエアレーション、粗気泡曝気、および他のタイプの機械的懸濁または空気懸濁のうちの1つまたは複数を利用する。
【0079】
ある特定の実施形態では、吸着性物質234が生物学的反応器202内にあり、何らかの粒子破壊が生じる、たとえば、吸着性物質234の粗表面および/または突起表面の一部が破壊し、粉末、微粉体、針葉、または他のより小さい微粒子となる初期時間期間後、ジェット懸濁システム232によって懸濁状態に維持された吸着性物質234は安定化し、それにより、さらなる破壊またはサイズの低下は、ほとんど、または全く起こらなくなる。
【0080】
本発明の追加の実施形態では、システム中に吸着性物質を導入する前に、吸着性物質の破壊しやすい部分を除去することによって吸着性物質を事前調整し、それにより、分離するのが難しく、膜を摩耗させる得る微粉体およびその他の望ましくないより小さい微粒子の生成を最小限に抑えることができる。たとえば、湿潤または乾燥微粒子タンブラーなどの好適な調整装置中で、事前湿潤とともに、または事前湿潤の前に事前調整を行うことができる。
【0081】
一般に、混合液中の吸着性物質の濃度は、施設の排出要件を満たすように生物学的抵抗性および/または生物学的阻害性の有機化合物または無機化合物の特定の組合せを処理するために、特定のシステムパラメータおよび廃水に基づいて判断される。試験は、(採用される特定の膜生物学的反応器構成に関する通常の範囲内の)典型的な産業混合液浮遊物質濃度、および(総混合液浮遊物質濃度の)約20%の(粒状活性炭などの)吸着性物質濃度で膜生物学的反応器を動作させることは、使用されるスクリーニングシステム上に汚染問題を生成することなし、廃水フィード中に存在する生物学的抵抗性および/または生物学的阻害性の有機化合物を除去するのに適することを示した。より高い濃度の吸着性物質を加えて、生物学的抵抗性化合物、生物学的阻害性化合物、ならびに/あるいは生物学的分解に対して全体的に耐性のある有機化合物または無機化合物の通常の排出物濃度よりも高くし得るプロセスアップセットに対する安全性マージンをさらに高めることができる。この吸着性物質の追加の結果、スクリーニングおよび/または沈殿要件が増加することを留意されたい。利用でき、さらに求められる排出物品質を達成することができる吸着性物質の最低濃度は、経験に基づく、あるいは特定のシステムおよびプロセスに適していると見なされるプロセスアップセットに対する所望の安全性マージンに基づいて、経験的に判断され得る。
【0082】
(生物学的抵抗性、生物学的阻害性など)有機材および無機材を吸着するために、ならびに懸濁媒体膜生物学的反応器を提供するために、膜操作システムタンクの上流で吸着性物質を使用する本発明は、さまざまな異なる構成に適用可能である。さらに、生物学的反応器中に吸着性物質を維持するために、様々な分離デバイスを使用することもできる。当業者には、様々なシステムには、廃水の個々の特徴と、施設が設置される領域とに基づいて、異なる経済的利益があることが理解されよう。
【0083】
最適な処理状態を生成するように制御されるファクタには、サイズ、形状、硬度、比重、沈殿速度、空気流要件、または、混合液中の粒子懸濁に関する、すなわち、粒状活性炭を懸濁媒体として維持するための他の懸濁要件を含む吸着性物質のタイプ、スクリーンバー間隔または開口サイズおよび孔構成、混合液中における吸着性物質の濃度、混合液有機性浮遊物質の濃度、混合液浮遊物質の全濃度、膜操作システムタンクに入る混合液の流量で除算された循環活性汚泥流量の比率、水理学滞留時間および汚泥滞留時間が含まれる。この最適化により、生物学的抵抗性化合物、分解が容易な生物学的酸素要求量化合物(BOD)、生物学的阻害性化合物、生物学的分解に対して全体的に耐性がある有機化合物または無機化合物、ならびに細胞外高分子物質の何らかの部分が、混合液中に懸濁している粒状活性炭などの吸着性物質によって吸着される。
【0084】
本発明の装置の他の利点は、混合液浮遊物質中の微生物を接着することができるサイトを提供することである。プロセスのこの態様は、アップセット状態に応答してより安定性および耐性が増した混合液有機性浮遊物質流を生成し、同様の水力学的滞留時間および汚泥滞留時間で動作する非粒状活性炭強化膜生物学的反応器と比べて、廃水中に存在する有機物の生物学的分解を強化することができる。吸着性物質のポアスペースの内側の、または表面上の微生物源は、アップストリームプロセスアップセットの結果、混合液中に浮遊している生育可能な微生物の一部が失われた場合、シードバクテリア源として作用する。システムに対して、従来のシステムにおいてある特定のバクテリアを消滅させる可能性がある温度ショックまたは毒性化学物質ショックが与えられた場合、ポアスペース内の、または表面上の微生物の一部は生き残り、したがって、吸着材を含まない従来のシステムと比べて、ほんのわずかな回復時間しか必要ではない。たとえば、バクテリアが中温性であるシステムでは、吸着材は、ポアサイト内の何らかのバクテリアが、温度が上昇したことによる温度ショックを与えられた場合にも生き残ることができるようにすることができる。同様に、バクテリアが高温性であるシステムでは、吸着材は、ポアサイト内の何らかのバクテリアが、温度が低下したことによる温度ショックを与えられた場合にも生き残ることができるようにすることができる。これらの環境のどちらにおいても、培地を再環境順化するために必要な時間を大幅に低減することができる。さらに、微生物群の全部または一部分を消滅させるシステムショックが起こった場合には、吸着性物質が存在することにより、微生物群を調節しつつ、不安定汚染物質、抵抗性線物質、および阻害性汚染物質を吸着することができる連続運転が可能になる。
【0085】
様々な利点の結果、廃水フィードに対する混合液の環境順化がより迅速になり、膜の汚染が低減され、供給濃度および流量の変動に対する許容度が改善され、取り扱いがより簡単な油分の少ない性質を用いてより迅速に脱水することができる汚泥と、従来の膜生物学的反応器装置から取得できるものよりも低濃度の有機および無機不純物を有する排出物とが生成される。
【0086】
粉末活性炭の代わりに粒状活性炭などの吸着材を使用することにより、粉末活性炭膜生物学的反応器試験における問題として識別されてきた膜汚染および/または摩耗がなくなる。
【0087】
粉末活性炭の代わりに粒状活性炭を使用することは、重量ベースで効果的にカーボンを使用するものでないが、本発明のシステムおよび方法は、粒状活性炭が膜操作システムに入ることを実質的に防止し、それにより、膜の摩耗および汚染の可能性が最小限に抑えられる、またはなくなる。しかしながら、粉末活性炭の代わりに粒状活性炭を使用した結果、吸着効率が低下するという影響は、活性炭強化膜生物学的反応器装置全体の効率に大幅な影響を与えるものではない。
【0088】
試験は、ある特定の生物学的阻害性有機物および/または生物学的抵抗性化合物の除去の主要なメカニズムが、生物学的抵抗性および生物学的阻害性の化合物が粉末活性炭強化装置中で微生物にさらされる滞留時間の増大に関係することを示した。粒状活性炭などの吸着性物質上に吸着された混合液有機性浮遊物質中の微生物は、これらのある特定の生物学的抵抗性および生物学的阻害性の化合物を分解するためにより長い時間期間がかかる。生物学的分解の増大した滞留時間は、膜生物学的反応器排出物中におけるある特定の生物学的抵抗性および生物学的阻害性の化合物の濃度を低減させる主なファクタであることを示し、所望の結果を達成するために、粉末活性炭のより高い吸着効率は必要とされない。
【0089】
カーボン補助膜生物学的反応器中の粒状活性炭は、生物学的抵抗性化合物、生物学的阻害性化合物、生物学的分解に対して全体的に耐性のある化合物、および細胞外高分子化合物の除去を強化するうえで粉末活性炭強化膜生物学的反応器と同様に、あるいはそれよりも良好に性能を発揮する。また、サイズがより大きいので、(1つまたは複数の)膜操作システムタンクに入る混合液から粒状活性炭を効果的にフィルタ除去、あるいは分離することができる。本発明に従って粒状活性炭を採用することによって、粉末活性炭を使用するときに生じる摩耗をなくす、または大幅に低減することができる。
【0090】
膜生物学的反応器中における粉末活性炭微粒子の使用により、粒状活性炭システムについて上述した同じ利点のいくつかが実証されるが、膜の耐用寿命を許容できないレベルまで低減する、たとえば、典型的な膜保証よりも大幅に少なくし得るので、(1つまたは複数の)膜操作システムタンク中の粉末活性炭微粒子から観察された膜摩耗は許容できない。膜のコストは、膜生物学的反応器システムの全コストの大部分を占めるので、それらの耐用寿命の延長は、膜操作システムの運用コストにおける重要なファクタである。
【0091】
図3に、生物学的脱窒素操作を利用する膜生物学的反応器システム300の代替実施形態を示す。当業者には明らかなように、図2に関して全体的に示される本発明のシステムに、特定の流入廃水によって必要とされる他の特別な生物学的または化学的処理システムを組み込むことができる。図3の実施形態は、図2の実施形態と同様であり、無酸素(低酸素濃度)ゾーン331が加えられている。無酸素ゾーンまたは容器を使用するこの実施形態では、メタノールなどの単純な有機カーボン源または廃水自体の生物化学的酸素要求量含有物は、生物学的有機体よって消費される。吸着性物質334を含んでいる生物学的反応器302と流体連通している無酸素ゾーン331中に廃水306を導入する。無酸素ゾーン331は、ミキサおよび/または曝気デバイス(図示せず)を含むことができる。曝気デバイスが使用されるこの実施形態では、無酸素状態を維持するために溶解酸素濃度が制御される。生物学的反応器302からの排出物は、分離サブシステム322を介して、膜操作システム304の入口310に導入される。膜操作システム304において、廃水は、1つまたは複数の精密ろ過膜または限外ろ過膜を通過し、それにより、浄化および/または3次ろ過の必要性がなくなる、または最小限になる。膜透過物、すなわち、膜340を通過する液体は、膜操作システム304から、出口312を介して排出される。膜残留物、すなわち、活性汚泥を含む、生物学的反応器302から排出された固形物は、循環活性汚泥ライン314を介して無酸素ゾーン331に戻される。生物学的反応器302の混合液廃棄物排出ポート316を介して、使用済み吸着性物質を生物学的反応器302から除去することができる。また、たとえば、混合液および/または培地の濃度を制御するために、廃水出口318を、循環パイプ314に接続して、循環活性汚泥の一部または全部を廃棄のために方向転換することができる。また、混合液廃棄物排出ポート316を使用して、吸着性物質の一部分を除去することもできる。等価量の新しいまたは再生された吸着性物質を加えることができる。
【0092】
図2に記載されたシステムと同様に、複数の場所で吸着性物質334をシステムに加えることができる。好ましい実施形態では、吸着性物質は場所330bで加えられ、無酸素ゾーン331中に通過することができなくなる。
【0093】
図4は、図1に示したシステム100の1つの実施形態である水処理システム400の概略図である。システム400において、生物学的反応器402は、たとえば、バッフル壁403を使用して、複数のセクション402aおよび402bに分割または区画されている。生物学的反応器402の下流に膜操作システム404が配置される。
【0094】
ゾーン402aと402bとの間の液体フローは、下流方向の流れを提供するように設計される。これは、ゾーン402aと402bとの間の積極的な分離を維持し、ゾーン402b中にのみ吸着性物質434を維持するための溢れ堰、潜りオリフィス、および/または様々な分散配管構成を含む構成および/または装置によって達成できるが、それらに限られるものではない。これらの様々な構成は、また、ゾーン402aと402bの間の流量を制御するように設計することができる。当業者には理解されるので、さらなる特定の構成は図示されていない。
【0095】
動作中、流入廃水流406は、生物学的反応器402に、具体的には、生物学的反応器402の第1のゾーン402aに導入される。上述のように、当業者には、生物学的寿命と、第1のゾーン402a中の生物学的酸化を含む関連するアクティビティとについて最適な栄養素比率およびpHレベルを維持するために、リン、窒素、pH調整材または化学物質を加えることができることが明らかになろう。第1のゾーン402a中の微生物は、混合液浮遊物質の生物学的不安定成分の少なくとも一部分を分解することができる。混合液浮遊物質中の単純なカーボン、すなわち、生物学的不安定化合物は、微生物の食料源として機能する。廃水をゾーン402aで処理して、混合液浮遊物質の生物学的不安定成分の実質的に全部を取り除くことができ、またはある特定の実施形態では、混合液浮遊物質の生物学的不安定成分の一部分を生物学的反応ゾーン402b中への通過のために保持することができる。ゾーン402aにおいて、混合液浮遊物質の生物学的不安定成分が、下流で微生物を効率的にサポートするのに不十分なレベルまで低減される実施形態では、特に下流の生物学的反応ゾーン402bにおいて微生物食料源の有効濃度を維持するために、1つまたは複数の制御が実装される。この制御は、たとえば、上流のゾーン402a中における廃水の滞留時間に基づいて、未処理の流入廃水のスリップストリームをゾーン402bに直接流すこと、循環活性汚泥を制御すること、微生物のためのメタノールまたは別の単純なカーボン食料源を導入することとすることができ、あるいは、ゾーン402aにおける間欠的な曝気、またはゾーン402bにおいて健全なバイオマスを促進する他の方法を実施することができる。
【0096】
吸着性物質434は、たとえば、本明細書の例における図7、図8、図9、図10、図11または図12に示されるような本明細書に記載される懸濁システムのうちの1つまたは複数を含むことができる懸濁装置432、あるいは、空気、液体、または空気と液体との混合物を循環させるための任意の好適な従来の装置を使用して、生物学的反応ゾーン402b中で懸濁状態に維持される。これらの従来の装置には、空気拡散気泡発生器、パドル、ミキサ、表面エアレータ、液体循環ポンプ、および当業者に知られているものなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。ある特定の実施形態では、図7、図8、図9、図10、図11または図12とあわせて記載されているもの、あるいは実施例3、実施例4または実施例5に記載されているものなど、吸着性物質434を懸濁状態に維持するために比較的低いエネルギーを消費する懸濁装置432を使用することが望ましく、吸着性物質434を懸濁状態に維持しなければならないゾーン402bの総全体積は、生物学的反応器402の総容量の一部分にすぎないので、効率が低い装置を使用する他の実施形態も好適であることを理解されたい。
【0097】
膜操作システム404への吸着性物質434の通過を実質的に防止するために、スクリーニング/分離システム422がセクション402b中に配置される。ある特定の実施形態では、吸着性物質は、すなわち、ゾーン402bに対応する場所430bでのみ加えられる。
【0098】
実質的に吸着材を含まない1つの生物学的反応器ゾーンと、吸着性物質434を含む1つのゾーンとをもつシステム400が図示されているが、当業者には、より少数のまたはより多数の各タイプのゾーンを採用することができることが明らかであろうことを留意されたい。セクション402b中における吸着性物質434の濃度は、たとえば、図1のシステム中で採用される濃度と同じ濃度であり得、あるいは処理される廃水に応じてより高いまたはより低い濃度を使用してもよい。
【0099】
さらに、生物学的反応器ゾーンを様々な構成で形成することができる。たとえば、角柱生物学的反応器タンクでは、タンクの幅全体に隔壁を設けて、タンクをゾーンに分けることができる。円筒形タンクでは、たとえば、弦として隔壁を設けることができ、または、2つ以上のセクタを形成する、たとえば、半径として複数の壁を設けることができる。
【0100】
1つまたは複数の最終生物学的反応ゾーン中にのみ吸着性物質を有することによって、吸着性物質なしに上流セクション中で生物学的不安定化合物を処理することができ、したがって、システム400の吸着材を含まないゾーンの混合液中に吸着性物質を懸濁させる必要がない。また、これにより、このシステムの上流セクション中に存在するであろう従来の有機微生物によって生物学的に分解できない、少なくともある特定の生物学的抵抗性および/または生物学的阻害性の化合物を生物分解する微生物のコロニーが発展できるようになる。また、当業者には、本発明にしたがって、図6に概略的に示されるような生物学的反応器の分割されたセクションではなく別個のタンク、または生物学的反応器の分割されたセクションと別個の容器との組合せを使用して、システム400と同様のシステムを提供することができることを理解されたい。
【0101】
さらに図4を参照すると、生物学的反応ゾーン402bからの排出物は、スクリーニング/分離システム422を介して、膜操作システム404の入口410に導入される。膜操作システム404において、廃水は、1つまたは複数の精密ろ過膜または限外ろ過膜440を通過し、膜透過物は出口412を介して排出されるが、活性汚泥を含む膜残留物は、循環活性汚泥ライン414を介して生物学的反応ゾーン402aに戻される。
【0102】
生物学的反応ゾーン402bからの使用済み吸着性物質は、混合液廃棄物排出ポート416を介して周期的に除去することができる。また、廃水出口418を循環活性汚泥ライン414に接続して、たとえば、混合液および/または培地の濃度を制御するために、循環活性汚泥の一部または全部を廃棄のために進路変更することができる。また、混合液廃棄物排出ポート416を使用して、吸着性物質の一部分を除去することができる。等価量の新しいまたは再生された吸着性物質を加えてもよい。
【0103】
図5に、複数のゾーン502aおよび502bに分割された生物学的反応器502と、生物学的反応器502に組み込まれる生物学的脱窒素ステップとをもつ、システム400と同様に動作するシステム500を示す。この実施形態では、たとえば、場所530bで加えられた吸着性物質535は、ゾーン502b中に懸濁状態に維持され、無酸素ゾーン531またはゾーン502a中には導入されない。
【0104】
生物学的反応ゾーン502bからの排出物は、スクリーニング/分離システム522を介して、膜操作システム504の入口510に導入される。膜操作システム504では、廃水は、1つまたは複数の精密ろ過膜または限外ろ過膜540を通過し、膜透過物は出口512を介して排出されるが、活性汚泥を含む膜残留物は、循環活性汚泥ライン514を介して無酸素ゾーン531に戻される。
【0105】
生物学的反応ゾーン502bからの使用済み吸着性物質は、混合液廃棄物排出ポート516を介して周期的に除去することができる。また、廃水出口518を循環活性汚泥ライン514に接続して、たとえば、混合液および/または培地の濃度を制御するために、循環活性汚泥の一部または全部を廃棄のために進路変更することができる。また、混合液廃棄物排出ポート516を使用して、吸着性物質の一部分を除去することができる。等価量の新しいまたは再生された吸着性物質を加えてもよい。
【0106】
ある特定の動作条件では、脱窒素プロセスを補助するために、メタノールなどの単純な有機カーボン源を無酸素ゾーンに導入する必要があることがある。代替的には、原廃水の生物学的酸素要求量は、一般に、生物学的有機体による消費のために必要な食料源を提供することができる。
【0107】
さらなる実施形態では、ゾーン502bの下流(図示せず)に、あるいは、ゾーン502aと502bの間に無酸素ゾーンを設けることができる。いずれの場合でも、脱窒素プロセスを補助するために、無酸素ゾーン中の生物学的有機体による消費のための食料源を加える必要がある可能性がある。
【0108】
当業者には、本発明にしたがって、図6に示されるような生物学的反応器の分割されたセクションではなく別個の生物学的反応器、または生物学的反応器の分割されたセクションと別個の反応器の組合せを使用して、システム500と同様のシステムを提供することができることが了解できよう。
【0109】
図6は、水処理システム600の別の実施形態の概略図である。システム600中に、実質的に吸着性物質がない第1の生物学的反応器602aと、たとえば、場所630aおよび630bの一方または両方で加えることができる吸着性物質634の懸濁液を含んでいる第2の生物学的反応器602bとを含む一連の生物学的反応器が設けられる。生物学的反応器602aおよび602bの下流に膜操作システム604が配置される。第2の生物学的反応器602bは、膜操作システム604への吸着性物質の通過を実質的に防止するために、セクション602b中に配置されたスクリーニング/分離システム622を含む。
【0110】
反応器602aと602bとの間の流量は、ゾーン602b中にのみ吸着性物質を維持するために、すなわち、反応器602bから反応器602aへの吸着性物質の逆流を防止するために、下流方向の流れを提供するように設計され、ゾーン602aと602bとの間の流量を制御するように設計することができる。
【0111】
動作中、流入廃水流606は、生物学的反応器602a中に導入される。第1の生物学的反応器602a中の微生物は、混合液浮遊物質中に含有される生物学的不安定化合物の少なくとも一部分を分解することができる。混合液浮遊物質中の単純な有機物は、微生物のための食料源として機能する。部分的に処理された廃水は、導管607を介して生物学的反応器602bへと流れる。また、生物学的反応器602aからの部分的に処理された廃水を、生物学的反応器602bに重力送りする、または当業者に知られる他の手段によって流すことができる。
【0112】
廃水は、混合液浮遊物質の生物学的不安定化合物の実質的に全部を除去するために第1の生物学的反応器602a中で処理され得、あるいは、ある特定の実施形態では、混合液浮遊物質中に含有される生物学的不安定化合物の一部分は保持され、第2の生物学的反応器602bへ通過され得る。混合液浮遊物質中に含まれる生物学的不安定化合物が、第1の生物学的反応器602aにおいて、下流で微生物を効率的にサポートするには十分でないレベルまで低減される実施形態では、特に下流の生物学的反応器602b中で微生物食料源の効果的な濃度を維持するために1つまたは複数の制御が実装される。この制御は、たとえば、上流の生物学的反応器602a中における廃水の滞留時間に基づいて、未処理流入廃水のスリップストリームを生物学的反応器602bに直接流すこと、循環活性汚泥を制御すること、メタノール、または微生物のための他の単純なカーボン食料源を導入すること、あるいは他の好適なフィードバックまたはフィードフォワードアクションとすることができる。
【0113】
吸着性物質634は、たとえば、本明細書の例における図7、図8、図9、図10、図11または図12に示されるような本明細書に記載される懸濁システムのうちの1つまたは複数を含むことができる懸濁装置632、あるいは気体、液体、または気体と液体との混合物を循環させるための任意の好適な従来の装置を使用して、生物学的反応器602b中に懸濁状態で維持される。これらの従来の装置には、空気拡散気泡発生器、パドル、ミキサ、表面エアレータ、液体循環ポンプ、および当業者に知られているものなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。ある特定の実施形態では、図7、図8、図9、図10、図11または図12とあわせて記載されているもの、あるいは実施例3、実施例4または実施例5に記載されているものなど、吸着性物質を懸濁状態に維持するために比較的低いエネルギーを消費する懸濁装置632を使用することが望ましく、ゾーン602bの総体積は、生物学的反応器602aと602bの総合計容量の一部分にすぎないので、効率が低い装置を使用する他の実施形態も好適であることを理解されたい。
【0114】
膜操作システム604への吸着性物質634の通過を実質的に防止するために、スクリーニング/分離システム622が生物学的反応器602b中に配置される。ある特定の例では、吸着性物質634は、たとえば、導管607に結合した場所630aで生物学的反応器602bにのみ、または生物学的反応器602b中に(場所630b)直接加えられる。ある特定の好ましい実施形態では、吸着性物質は、たとえば、スラリーを形成するために生物学的反応器602b中に導入される前に、事前湿潤される。
【0115】
実質的に吸着材のない1つの生物学的反応器と吸着性物質634を含んでいる1つの生物学的反応器とをもつシステム600が示されているが、当業者には、各タイプのより少数のまたはより多数の生物学的反応器、あるいは生物学的反応器のセクションを採用することができることが明らかであろうことを留意されたい。生物学的反応器602b中の吸着性物質の濃度は、たとえば、図1のシステム中で採用される濃度と同じ濃度であり得、あるいは生物学的反応器602b中で処理される部分的に処理された廃水の特徴を含むがそれには限定されないファクタに応じて、より高い濃度を使用してもよい。
【0116】
最終生物学的反応器中にのみ吸着性物質を有することによって、生物学的不安定化合物を、吸着性物質なしに上流の生物学的反応器中で処理することができる。これにより、システムの上流セクション中に存在するであろう従来の有機微生物によって生物学的に酸化できない生物学的不安定有機体を生物分解することができる微生物のコロニーが発展できるようになる。また、当業者には、本発明にしたがって、図4に概略的に示されるような別個の生物学的反応器ではなく生物学的反応器の分割されたセクション、または生物学的反応器の分割されたセクションと別個の反応器との組合せを使用して、システム600と同様のシステムを提供することができることを理解されたい。
【0117】
さらに図6を参照すると、生物学的反応器602bからの排出物は、スクリーニング/分離システム622を介して、膜操作システム604の入口610に導入される。膜操作システム604において、廃水は、1つまたは複数の精密ろ過膜または限外ろ過膜640を通過し、膜透過物は出口612を介して排出されるが、活性汚泥を含む膜残留物は、循環活性汚泥ライン614を介して生物学的反応ゾーン602aに戻される。
【0118】
生物学的反応器602bからの使用済み吸着性物質は、混合液廃棄物排出ポート616を介して周期的に除去することができる。また、廃水出口618を循環パイプ614に接続して、たとえば、混合液および/または培地の濃度を制御するために、循環活性汚泥の一部または全部を廃棄のために進路変更することができる。
【0119】
図7、図8、図9、図10および図11を全体的に参照すると、(MLVSSを有するMLSSを含む)混合液とその中に分散した吸着材とがジェットノズルを介して循環するジェット懸濁システムを含む様々な代替実施形態が示されている。この循環により、吸着材と混合液との緊密混合が行われ、また、生物学的反応器中に吸着材を懸濁状態で維持する乱流が起こる。乱流は、たとえば、ノズルオリフィスに近接する局所的な乱流であり、ジェットノズルから出る流体の渦および回転を生じさせ得る。図7、図8、および図11において、中実の黒いエレメントは吸着性物質を表し、不規則な線状のエレメントは微生物またはバイオマスを表す。
【0120】
図7に、生物学的反応器702内にある懸濁装置732を概略的に示す(説明を明瞭にするために、図7にはその一部分のみを示す)。懸濁装置732は、ポンプ748と気体源760とに流体接続されたジェットノズル744を備える。気体は、好気性生物学的反応器702の場合には酸素含有ガスであり得、あるいは嫌気性生物学的反応器702の場合には酸素を含まないまたは実質的に酸素を含まないガスであり得る。
【0121】
図7に、ならびに図8、図9、および図10について記載されるある特定の追加の実施形態に示される構成は、たとえば、アメリカ合衆国ウィスコンシン州ロスチャイルドのSiemens Water Technologiesから市販されているVari Cant(登録商標)システムを使用して展開することができる。図8、図9、および図10に関して示されるシステムのうちの1つまたは複数については、他のジェットエアレーションシステムを展開することもできる。たとえば、様々なシステムは、アメリカ合衆国アイオワ州シーダーフォールズのFluidyne Corporation、アメリカ合衆国マサチューセッツ州アソネットのKLa Systems、およびアメリカ合衆国オハイオ州デイトンのMixing Sytems Inc.から市販されているジェットエアレーションシステムを含むが、これらに限定されるものではない。
【0122】
図7、図8、図9、図10および図11に関して本明細書に記載されるシステムは、一般に、生物学的反応器タンクの外側にあるポンプを示しているが、当業者には、1つまたは複数のポンプを(1つまたは複数の)タンクの内側に配置し得ることが理解されるであろうことを留意されたい。さらなる実施形態では、有効吸込みを維持するために、ヘッドタンクの内側または外側に1つまたは複数のポンプを設けてもよい。
【0123】
さらに、図7、図8、図9、図10および図11に関して本明細書に記載されるシステムは、一般に、例示を目的として、生物学的反応器タンク中に配置されたジェットノズル全体を示しているが、ある特定の実施形態では、(1つまたは複数の)ジェットノズルの一部分を、少なくともそれらの(1つまたは複数の)出口オリフィスが生物学的反応器タンク中に配置された状態で、生物学的反応器タンクの外側に配置してもよい。
【0124】
ジェットノズル744の液体入口746、および出口オリフィス764、ポンプ装置748の入口752、および出口754は、吸着性物質とMLVSSを含むMLSSとの通過を可能にするように寸法設定され、構成される。したがって、MLSSおよびMLVSSを含む混合液と吸着性物質との混合物は、生物学的反応器702の出口750から、ライン751を介してポンプ装置748の入口752中に引き込まれる。混合物は、ライン755を通って、ポンプ装置748から出口754を介してポンプで排出され、ジェットノズル744と一体の、あるいはそれと流体連通する液体入口746に方向づけられる。
【0125】
同時に、気体760は、ジェットノズル744と一体の、あるいはそれと流体連通している気体吸気口758にライン761を通って方向づけられ、混合チャンバ766に方向づけられ、そこで気体が膨張し、ノズル出口オリフィス764の方向に混合液と分散した吸着性物質の混合流に運動エネルギーを与える。膨張した気体、混合液、および分散した吸着性物質は、流体流の方向に断面積が小さくなり、その中で速度が増すスロート768を通過し、出口オリフィス764から出る。気体、液体、および固形物微粒子の複合流は、生物学的反応器702に強制的に入れられ、吸着性物質の固形物粒子は、生物学的反応器702内の液体乱流に起因して、継続運転下においては懸濁したままになる。
【0126】
次に図8を参照すると、ジェット懸濁システムを含む生物学的反応器の別の実施形態が示されている。具体的には、生物学的反応器802は、吸着性物質を分散させた混合液を循環させるために、生物学的反応器802中に配置された出口オリフィス864を少なくとも有するジェットノズル844を含むジェット懸濁システム832を含む。ジェットノズル844は、吸着性物質を分散させた混合液を循環させて吸着性物質を懸濁状態に維持する乱流を生成するために、ポンプ848に流体接続している。当業者には理解されるように、任意のジェットミキサ、スプレー、または気体入口を必要とせずに吸着性物質を分散させた混合液を方向づけ、排出することができる他のデバイスを、ジェットノズル844として使用することができる。
【0127】
好気性生物学的反応器802には、従来の空気拡散装置などの酸素含有ガス源が設けられる(図示せず)。
【0128】
ジェットノズル844の液体入口846および出口オリフィス864、ならびにポンプ装置848の入口852および出口854は、吸着性物質と揮発性混合液浮遊物質とを含む混合液浮遊物質の通過を可能にするように寸法設定され、構成される。したがって、MLSSおよびMLVSSを含む混合液と吸着性物質との混合物は、生物学的反応器802の出口850から、ライン851を通ってポンプ装置848の入口852に引き込まれる。混合物は、ライン855を通って、出口854を介してポンプ装置848からポンプで排出され、ジェットノズル844と一体の、あるいはそれと流体連通する液体入口846に方向づけられる。ジェットノズル844は、流体流の方向に断面積が小さくなるスロート部分868を含んで、入口オリフィス864から出る混合液および吸着性物質の速度が増す。
【0129】
図9、図10および図11を全体的に参照すると、混合液および/または循環活性汚泥が吸着性物質なしにジェットノズルによって循環するジェット懸濁システムを含む代替実施形態が示されている。この循環により、ジェットノズルの出口で吸着性物質と混合液との緊密混合が行われ、また、生物学的反応器内において吸着性物質を懸濁状態に維持する乱流が起こる。乱流は、たとえば、ノズルオリフィスに近接する局所的な乱流であり、ジェットノズルから出る流体の渦および回転を生じさせ得る。
【0130】
図9に、生物学的反応器902内の、膜操作システム904の上流にある懸濁装置932を含む廃水処理システム900を概略的に示される。懸濁装置932は、ポンプ948に流体接続されたジェットノズル944と、圧縮気体源960とを備える。システム900は、たとえば、生物学的反応器902の出口908で吸着性物質の少なくとも大部分の通過を防止するスクリーニング/分離システム922を含む。
【0131】
ある特定の実施形態では、混合液は、生物学的反応器902の排出物から、導管972、970を通ってポンプ装置948に入口952中に引きこまれ、導管972は、生物学的反応器902の出口908と膜操作システム904の入口910の間にある。さらなる実施形態では、循環活性汚泥は、膜操作システム904からの導管914から、ポンプ装置948の入口952へのライン970中に引き込まれる。さらなる実施形態では、生物学的反応器902からの排出物と膜操作システム904からの循環活性汚泥との複合流は、ポンプへの循環する液体として使用される。排出物からの液体および/または循環活性汚泥は、ライン955を通ってポンプ装置948からポンプで排出され、ジェットノズル944と一体の、あるいはそれと流体連通する液体入口に方向づけられる。同時に、圧縮気体は、ライン961を通ってジェットノズル944と一体の、あるいはそれと流体連通する気体入口に方向づけられ、混合チャンバ966に方向づけられ、そこで圧縮気体960が膨張し、ノズル出口オリフィス964の方向の混合液に運動エネルギーを与える。膨張した気体および混合液は、流体流の方向に断面積が小さくなるスロート968を通過し、その中で速度が増し、出口オリフィス964から出る。気体と液体との混合物ストリームは生物学的反応器902に強制的に入れられ、吸着性物質の固形物粒子は、生物学的反応器902内の乱流に起因して、継続的運転下においては懸濁したままになる。
【0132】
図10に、廃水処理システムの別の実施形態を示し、廃水処理システム1000は、生物学的反応器1002内の、膜操作システム1004の上流にある懸濁装置1032を含む。システム1000は、たとえば、生物学的反応器1002の出口1008で吸着性物質の少なくとも大部分の通過を防止するスクリーニング/分離システム1022を含む。懸濁装置は、混合液を循環させて吸着材を懸濁状態に維持する乱流を生成するためにポンプ1048に流体接続したジェットノズル1044を含む。好気性生物学的反応器1002中には、当業者には明らかになるように、従来の空気拡散装置、または酸素を混合液中に輸送することができる任意の数の他のデバイスなどの酸素含有ガス源も設けられる(図示せず)。
【0133】
システム1000中の液体流は、図9に関して示され、上述されたシステム900の流体流と同様である。したがって、ある特定の実施形態では、混合液は、生物学的反応器1002の排出物から、導管1072、1070を通ってポンプ装置1048の入口1052に引き込まれ、導管1072は、生物学的反応器1002の出口1008と膜操作システム1004の入口1010との間にある。さらなる実施形態では、循環活性汚泥は、膜操作システム1004からの導管1014から、ポンプ装置1048の入口1052へのライン1070中に引き込まれる。さらなる実施形態では、生物学的反応器1002からの排出物と膜操作システム1004からの循環活性汚泥との複合流は、ポンプへと循環する液体として使用される。
【0134】
排出物からの液体および/または循環活性汚泥は、ライン1055を通ってポンプ装置1048からポンプで排出され、ジェットノズル1044と一体の、あるいはそれと流体連通する液体入口に方向づけられる。混合液は、流体流の方向に断面積が小さくなるスロート1068を通過し、その中で速度が増し、出口オリフィス1064から出る。液体ストリームは、生物学的反応器1002に強制的に入れられ、吸着性物質の固形物粒子は、生物学的反応器1002中の乱流に起因して、継続的運転下においては懸濁したままになる。
【0135】
システム900および1000のある特定の実施形態では、ポンプを通る流量が、システムを通る全体的な、すなわち、流入906、1006および排出物912、1012の流量によって表される流量に等しいか、またはそれよりも大きくなるようにシステムの水力学を設計する必要があることがある。
【0136】
図11に、生物学的反応器1102内の懸濁装置1132を概略的に示す(説明のために図11にはその一部分が示される)。懸濁装置1132は、ポンプ1148と流体接続されたジェットノズル1144と、気体源1160とを備える。気体は、好気性生物学的反応器1102の場合には酸素含有ガスであり得、あるいは嫌気性生物学的反応器1102の場合には酸素を含まない、または実質的に酸素を含まない気体であり得る。
【0137】
生物学的反応器1102の出口1150は、吸着性物質の少なくとも大部分の通過を防止するスクリーニング装置1170を含む。スクリーニング装置1170からビルドアップを除去するために、スプレーノズル1172または他の好適な装置が設けられる。スプレーノズル1172は、スクリーニング装置を清浄するために気体および/または液体を方向づけることができる。ある特定の実施形態(図示せず)では、スプレーノズル1172をポンプおよび/または圧縮気体源1160に接続して、スクリーニング装置1170を清浄するために加圧流体を提供することができる。さらなる実施形態では、たとえば、スクリーニング装置1170が、回転スクリーンなどの吸着性物質のビルドアップを防止するアクティブなスクリーニングデバイスであるときには、スプレーノズル1172をなくしてもよい。
【0138】
したがって、MLSSおよびMLVSSを含む、吸着性物質が実質的にない混合液は、生物学的反応器1102の出口1150から、ライン1151を通ってポンプ装置1148の入口1152中に引き込まれる。混合液は、出口1154を介してポンプ装置1148からポンプで排出され、ライン1155を通ってジェットノズル1144と一体の、あるいはそれと流体連通する液体入口1146に方向づけられる。同時に、圧縮気体1160は、ライン1161を通って、ジェットノズル1144と一体の、あるいはそれと流体連通する気体入口1158に方向づけられ、混合チャンバ1166に方向づけられ、そこで圧縮気体が膨張し、ノズル出口オリフィス1164の方向に混合液に運動エネルギーを与える。膨張した気体および混合液は、流体流の方向に断面積が小さくなるスロート1168を通過し、その中で速度が増し、出口オリフィス1164から出る。気体と液体との混合物ストリームは、生物学的反応器1102に強制的に入れられ、吸着性物質の固形物粒子は、生物学的反応器1102中の乱流に起因して、継続運転下においては懸濁状態のままである。
【0139】
本明細書に記載される廃水処理システムのある特定の実施形態では、システムは、1つまたは複数のドラフトチューブ、あるいは1つまたは複数の他の構成を備えることができるガスリフト懸濁システムを含む。1つまたは複数のドラフトチューブは、吸着性物質を懸濁させること、吸着性物質を懸濁状態に維持すること、容器全体で吸着性物質を混合すること、および好気性有機微生物を含み得る容器の環境を曝気することのうちの1つまたは複数を実行するために、生物学的反応器または他の装置などの容器の所望の応用例および容量のためにサイズ設定され、形成することができる。ガスリフト懸濁システムは、配置される容器のサイズおよび形状に基づいて、様々なサイズおよび形状で構築され得る。ガスリフト懸濁システムは、廃水処理システム中に吸着性物質が組み込まれる容器内に配置された1つまたは複数のドラフトチューブを備えることができる。本明細書で使用される場合、「ドラフトチューブ」は、両端で開口し、それにより、容器に配置されたときに流体流のための通路を提供する、1つまたは複数の側壁を有するチューブまたはその他の構造とすることができ、固形物微粒子懸濁液、たとえば、空気または他の気体とともに、廃水または混合液中の吸着性物質と関係する固形物との懸濁液を含むことができる。
【0140】
ドラフトチューブは、廃水処理の典型的な状態において耐摩耗性であり、廃水構成成分に対して耐性がある限り、特定の目的のために好適な任意の材料で構築することができ、ドラフトチューブ内とまわりで起こる乱流に耐えることができる。たとえば、ドラフトチューブは、容器と同じ材料で形成しても、またはガラス繊維強化プラスチックを含むプラスチック、ポリ塩化ビニル(PVC)、またはアクリルなどの他のより軽量で安価な材料で形成してもよい。ドラフトチューブは、容器中に挿入されても、または容器の一部として製造されてもよい。したがって、ドラフトチューブは、現在のシステムを改造するように設計してもよい。ガスリフト懸濁システムは、ドラフトチューブ全体でそのまわりに流れを起こすことができるかぎり、容器の壁上で支持されても、または容器の底部分によって支持されてもよい。代替的には、ガスリフト懸濁システムは、容器内において1つまたは複数のドラフトチューブを保持し、懸架するように構築され、配列された追加の構造によって支持され得る。
【0141】
容器内で吸着性物質を懸濁させる、および/またはあらかじめ選択された操作時間内で動作するなど、所望の応用例にしたがって、個々のドラフトチューブをサイズ設定し、形成することができる。また、容器内で吸着性物質を適度に懸濁させるために、または容器の環境を曝気するために、ドラフトチューブ内で所望のレベルの撹拌を行うようにドラフトチューブをサイズ設定し、形成してもよい。単一のドラフトチューブによって、または所望の容積に実質的に等しい総容積を有する複数のドラフトチューブによって、所望のガスリフト懸濁システムの容積を提供することができる。ガスリフト懸濁システムの容積と容器の容積との具体的な比は、ドラフトチューブ内において吸着性物質を最適に懸濁させるように選択することができる。個々のドラフトチューブは、円形、楕円形、正方形、長方形、または任意の不規則形状などの任意の形状の断面を有することができる。個々のドラフトチューブは、円錐形、長方形、および円筒形などの任意の全体形状を有することができる。1つの実施形態では、ドラフトチューブは円筒形である。長さ、幅および高さなどのドラフトチューブの全体寸法は、容器内において吸着性物質を最適に懸濁させるように選択することができる。たとえば、ドラフトチューブの長さとドラフトチューブの幅または直径との具体的な比は、容器内における吸着性物質の最適な懸濁を達成するように選択することができる。ドラフトチューブは、「トラフ」と称される構造の、容器内の2つの対向する側壁で構成される。ドラフトチューブ中への、および/またはそこからの吸着性物質の流れを補助するように、ドラフトチューブの一端または両端を構築し、配列することができる。たとえば、ドラフトチューブの第1の端部の側壁は、ドラフトチューブの第1の端部に、またはその近くに配置された容器の吸着性物質、廃水、または他の含有物のうちの一部が、ドラフトチューブの側壁を通って入る、または出ることができるようにするために、通路を形成する1つまたは複数の開口を含むことができる。通路を形成する開口は、容器内において吸着性物質が十分に懸濁できるようにするための任意の形状を有することができる。たとえば、開口は、三角形、正方形、半円形としても、不規則形状を有してもよい。複数の通路は、互いに同一とすることができ、ドラフトチューブ中の吸着性物質の流れを均等に分散させるために、ドラフトチューブの第1の端部のまわりに均一に配置され得る。
【0142】
1つまたは複数のドラフトチューブは、容器内において吸着性物質を適度に懸濁させる限り、容器内の任意の好適な場所に配置することができる。たとえば、容器側壁に関して中央に単一のドラフトチューブを配置することができるが、必ずしもそうである必要はない。同様に、単一の容器中にある複数のドラフトチューブは、ランダムに配置しても、あるいは容器側壁に関して均一なパターンで配置してもよい。単一の容器中にある複数のドラフトチューブは、容積または断面積を同一とすることができるが、必ずしもそうである必要はない。たとえば、単一の容器は、さまざまな高さおよび断面積の円筒形、円錐形、および長方形のドラフトチューブを含むことができる。1つの実施形態では、容器は、中央に配置された第1のドラフトチューブと、容器の側壁に隣接して配置された複数の第2のドラフトチューブとを有することができ、第1のドラフトチューブは第1の断面積を有し、第2のドラフトチューブの各々は、第1の断面積よりも小さい第2の断面積を有する。別の実施形態では、容器は、複数の同じドラフトチューブを有する。さらに別の実施形態では、第1のドラフトチューブを第2のドラフトチューブ内に配置してもよい。この実施形態では、ドラフトチューブの底部は、互いに整列していても、あるいは互いにずれていてもよい。
【0143】
別の実施形態では、ドラフトチューブは、吸着性物質の懸濁を促進するためのバッフルを含むことができる。バッフルは、特定のドラフトチューブに好適な任意のサイズおよび形状を有することができる。たとえば、バッフルは、ドラフトチューブの内側表面上に好適に配置されたプレート、またはドラフトチューブ中に配置されたシリンダとすることができる。1つの実施形態では、バッフルは、ドラフトチューブ内の中央に配置された中実または中空のシリンダとすることができる。別の実施形態では、バッフルは、ガスリフト懸濁システム中の1つまたは複数のドラフトチューブの第1の端部または第2の端部に配置されるスカートとすることができる。バッフルは、ドラフトチューブと同じ材料で構築しても、懸濁システムに適合する異なる材料で構築してもよい。
【0144】
ドラフトチューブをその中に置くことができる容器は、ガスリフト懸濁システムと連携して吸着性物質を懸濁させるのに好適な任意のサイズまたは形状とすることができる。たとえば、容器は、円形、楕円形、正方形、長方形、または任意の不規則形状などの任意の形状の断面を有することができる。いくつかの実施形態では、吸着性物質の好適な懸濁を促進するために、容器を構築または修正してもよい。ある特定の実施形態では、ガスリフト懸濁システムに向かう吸着性物質の運動を促進するために、容器の基部に傾斜部分を含むように容器を構築または修正してもよい。傾斜部分は、ガスリフト懸濁システムに向かう吸着性物質の運動を促進するために、容器の基部に関して任意の角度とすることができる。
【0145】
次に図12を参照すると、1つの実施形態による、生物学的反応器1202などの容器内において吸着性物質を懸濁状態に維持するためのガスリフト懸濁システム1232の一例が概略的に示されている。図12において、円形エレメントは気泡を表し、小さい中実エレメントまたはドットは吸着性物質を表し、不規則な線状のエレメントは微生物またはバイオマスを表す。ガスリフト懸濁システム1232は、上述のように容易に吸着性物質をリフトし、吸着性物質を懸濁状態に維持することができるように構成され、配置され、寸法設定された1つまたは複数のドラフトチューブ1292を含む。気体は気体導管1290を通って入り、拡散ノズルまたは拡散器1291を介して、(1つまたは複数の)ドラフトチューブ1292の底部分中へと方向づけられる。ある特定の代替実施形態では、拡散ノズルまたは拡散器1291ではなく、あるいはそれと連携して気体導管1290のアパーチャを介して、(1つまたは複数の)ドラフトチューブ1292の底部分中へと気体を方向づけることができる。導管1290からの気体は、指定された(1つまたは複数の)場所において、粗気泡拡散器と同様の方法で容器または生物学的反応器1202中に導入することができ、混合液中の吸着性物質に接着した微生物と吸着性物質から分離した微生物との支持のための酸素または他の気体の源としても、生物学的反応器1202中において吸着性物質およびバイオマスを懸濁状態に維持するためのリフト力の源としても機能する。具体的には、気体は、ドラフトチューブ1292中に含まれている結果として、上向きリフトを提供する。気泡はドラフトチューブの内側で上昇するので、気体により、チューブの底部において吸引を提供する上向きの流れが生じる。これは、混合液および吸着性物質をチューブを通して引き込み、タンク内で混合液および吸着性物質をリフトして懸濁させるために使用される運動力である。気体の循環により、ドラフトチューブ内に適度なリフトが起こって、タンクの含有物が十分に撹拌された状態を保ち、それにより、吸着性物質の沈殿が最小限に抑えられる。
【0146】
さらに、図12の構成により、他の混合および懸濁システムと比べて極めて低いエネルギー必要量で、適度な混合および懸濁が行わる。たとえば、吸着性物質を使用する生物学的反応器1202中でガスリフトシステム1232が必要とするエネルギーは、代替的な懸濁システムで必要とされるエネルギーの10分の1となり得、生物学的システムのために必要な気体のみを必要とすることがある。
【0147】
ガスリフト懸濁システム1232は、気体源に近接して構成され、配置された複数のドラフトチューブのコンテキストについて図示および記載されるが、生物学的反応器内の1つまたは複数のトラフ、あるいは上述のガスリフト現象を生成する他の好適な構造などの代替的な構造を採用することができる。さらに、図12に示される方向を示す矢印は、流体がシステムを通って流れる1つの可能な方向を例示するものにすぎず、流体は、容器のサイズおよび形状、ドラフトチューブのサイズ、形状および数、ならび空気流量を含む、システムのパラメータに応じて、システムを通って、任意の数の方向に流れることができる。
【0148】
図13Aおよび図13Bに、分離サブシステムの一部分として沈殿ゾーン1382を組み込んでいる本発明の追加の実施形態を示す。図13Aおよび図13Bにおいて、中実の黒いエレメントは吸着性物質を表し、不規則な線状のエレメントは微生物またはバイオマスを表す。生物学的反応器1302は、処理すべき廃水を受けるための入口1306と、膜操作システム(図示せず)に流体接続された出口1308とを含む。沈殿ゾーン1382は、たとえば、静止ゾーンは出口1308に近接しており、沈殿ゾーン1382から離れるように吸着性物質を方向づけるように配置され、寸法設定されたバッフル1380および1381によって全体的に規定される。生物学的反応器1302中のジェットエアレーションまたは他の懸濁システムに起因する乱流は、沈殿ゾーン1382中で実質的に低減されるので、バッフル1380を越えて流れる液体と吸着性物質との複合混合物は、沈殿する。懸濁した生物学的固形物よりも高い密度をする吸着性物質は沈殿し、沈殿ゾーン1382を出るにつれて、沈殿ゾーン1382の外側で懸濁システムによって引き起こされた乱流によって懸濁状態に戻される。また、図13Aに示されるように、出口1308に近接してスクリーニング装置1322が設けられる。スクリーニング装置1322によって遮断された吸着材の量は、沈殿ゾーン1382が隣接することにより最小限に抑えられる。ある特定の好ましい実施形態では、スクリーニング装置1322は、バッフルシステム内の、吸着性物質のほとんどがスクリーンに達する前に混合液から確実に分離する/沈殿するために十分なバッフルからの距離に置かれる。結果として、スクリーニング装置1322は、潜在的にスクリーン表面に接着してスクリーンの閉塞/汚染を加速させる吸着材微粒子をより少なく受けることになる。バッフルシステムと組み合わせてスクリーニングシステムを使用するとき、スクリーンの閉塞/汚染の可能性が大幅に低減され、また、スクリーン清浄の頻度が低減される。
【0149】
しかしながら、ある特定の実施形態では、スクリーニング装置1322をすべてなくすことができることが企図られる。曝気タンクの出口1308のまわりでバッフルを使用することにより、懸濁装置によって与えられる混合エネルギーが低減され、沈殿ゾーン1382を乱流および気泡の上昇がないままとし、それにより、より高密度の吸着材粒子を、排出物洗浄によって、タンクを出る前に混合液と分離することができるようになる。バッフルシステムにより、同時に曝気タンク中の混合ゾーン中に混合液を戻しながら、高密度の吸着性物質を混合液から分離できるようになる。
【0150】
生物学的反応器内の代替的な沈殿ゾーンシステムも企図される。たとえば、前述のスクリーンのうちのいずれかを使用することができ、あるいは以下にさらに詳述するように、スクリーニング装置1322の代わりに堰を使用することができる。
【0151】
沈殿ゾーンをポンプ吸引、混合、またはジェットエアレーションによって提供されるせん断アクションと組み合わせることにより、過剰なバイオマスをそこからせん断された吸着性物質が、混合することなく区域内に沈殿させることができるようになる。吸着性物質は、この区域の底部へと沈殿し、混合液に再び入ることになる。
【0152】
図13Bに、堰1323を有する沈殿ゾーンの別の実施形態を示す。低密度のバイオマスは堰1323を越えて流れ、吸着材は沈殿する。吸着材は、静止ゾーンから滴下するにつれて、混合液浮遊物質および吸着材を含むタンクの撹拌された含有物と混合し、再び懸濁される。
【0153】
吸着性物質廃棄物排出ポートを有する沈殿ゾーンを含む本発明の実施形態では、その廃棄物排出ポートを沈殿ゾーンに近接して配置するのが有利である。これにより、混合液の除去を最小限に抑えつつ、廃棄吸着性物質を除去することができるようになる。
【0154】
本発明のために有用な吸着性物質は、活性炭などの様々なタイプのカーボンを含む。具体的には、粒子のサイズ範囲および密度が、システムのあらかじめ規定された部分における保持が可能となるように選択され、それにより、膜を汚染するおよび/または摩耗させることを実質的に防止することができるので、粒状活性炭が非常に効果的である。
【0155】
粒状活性炭が大きなせん断力および/または粒子間衝突にさらされないシステムでは、木材、ココナツ、バガス、おがくず、泥炭、パルプ廃棄物、または他のセルロースベースの材料から粒状活性炭を製造することができる。1つの好適な例は、14×35の公称メッシュサイズ(米国標準篩系列に基づく)を有するMeadWestvaco Nuchar(登録商標)WV Bである。
【0156】
さらなる実施形態では、具体的には、ポンプおよび/またはジェットノズル中における乱流および/または粒子間衝突によってせん断アクションが生じる実施形態では、より高い硬度値を有する(1つまたは複数の)吸着性物質の使用が望ましい。たとえば、ビチューメンまたは石炭ベースの材料から導出される粒状活性炭が効果的である。特定の実施形態では、粒状活性炭は亜炭から導出される。
【0157】
また、処理プロセスおよび/または化学種とともに修正され、それにより、廃水中のある特定の化学種および/または金属に対する親和性を提供するカーボン材料を用意してもよい。たとえば、比較的高いレベルの水銀を有する廃水中においては、吸着性物質の少なくとも一部分は、ヨウ化カリウムまたは硫黄を含浸された粒状活性炭を含むのが好ましい。特定の金属、他の無機化合物および/または有機化合物に対処するために、他の処理および/または含浸された化学種を用意することができる。
【0158】
さらに、吸着材は、活性炭以外の材料とすることができる。たとえば、鉄系化合物または合成樹脂を、単独であるいは他の吸着性物質と組み合わせて、たとえば、粒状活性炭と組み合わせて、吸着性物質として使用することができる。さらに、ある特定の金属、他の無機化合物、または有機化合物を対象とする活性炭以外の処理された吸着性物質を使用してもよい。たとえば、比較的高いレベルの鉄および/またはマンガンを有する廃水中では、吸着材の少なくとも一部分は、媒体をろ過する粒子状二酸化マンガンを含むことができる。ヒ素を有する廃水中では、吸着材の少なくとも一部分は、粒子状酸化鉄複合材料を含むことができる。鉛または重金属を含む廃水中では、吸着材の少なくとも一部分は、粒状アルミノ−ケイ酸複合材料を含むことができる。
【0159】
1つの実施形態では、所望の比重範囲に基づいて吸着性物質を選択することができる。許容可能なエネルギー消費/コスト範囲内で吸着性物質を懸濁状態に維持するためには、廃水の比重範囲に比較的近い比重が望ましい。一方、分離が材料の沈殿に少なくとも部分的に基づく実施形態では、より高い比重が好適である。一般に、比重は、20°Cの水中で約1.05よりも大きくなるのが好ましい。ある特定の実施形態では、比重は、20°Cの水中で約1.10よりも大きい。ある特定の実施形態では、比重の好適な上限は、20°Cの水中で約2.65である。
【0160】
したがって、十分に懸濁することで、廃水および汚染物質と十分に接触する比重範囲を有する吸着性物質が選択される。さらに、ある特定の実施形態では、比重範囲は、後に続く廃水からの吸着性物質の除去に十分な沈殿特徴を提供する。さらなる実施形態では、吸着性物質の比重の選択は、吸着性物質を懸濁状態に維持するために必要なエネルギーの最小化に基づく。
【0161】
さらに、粒状活性炭などの所望の吸着性物質は、粒子間衝突および他のプロセス効果に起因する微粉体または他の微粒子の生成を最小限に抑える硬度レベルを有する。
【0162】
分離サブシステムが吸着物質を保持し、それにより、膜操作システム中への通過を防止するように設計された吸着性物質のサイズは、膜操作システムに入る吸着性物質および微粉体の量を最小限に抑えるように最適化される。したがって、本発明の方法およびシステムは、活性炭を含む吸着性物質の使用と関連する動作上の利点をさらに提供しつつ、膜に衝突するカーボン粒子または他の粒子状材料による摩耗および汚染を最小限に抑える。
【0163】
吸着性物質の好適な粒子サイズは、選択されたスクリーニング/分離方法、および、処理すべき特定の廃水の必要性を補完するように選択される。ある特定の好ましい実施形態では、吸着性物質の有効粒子サイズの下限は、膜が配置される(1つまたは複数の)膜操作システムタンクに入る混合液の流れから粒子が簡単に分離できるように選択される。一般に、吸着性物質の有効粒子サイズの下限は約0.3ミリメータであり、約99.5重量%を超える吸着性物質は下限を上回り、好ましくは、(米国標準篩系列に基づくメッシュサイズ50からメッシュサイズ8に対応して)約0.3ミリメータの下限から約2.4ミリメータの上限を有し、99.5重量%を超える吸着性物質は下限から上限までの範囲内にあり、ある特定の好ましい実施形態では、(米国標準篩系列に基づくメッシュサイズ50からメッシュサイズ14に対応して)約0.3ミリメータから約1.4ミリメータであり、99.5重量%を超える吸着性物質は下限および上限内にある。約0.5ミリメータから約0.6ミリメータの最小有効粒子サイズをもつ粒状活性炭は、好適な分離システムを用いて混合液から簡単にかつ効率的にスクリーニングすることができ、また、好適な密度の粒状活性炭中のそのような有効サイズは、懸濁状態に経済的に維持できることが実証された。
【実施例】
【0164】
次に、以下の非限定的な実施例によって本発明を説明する。
【0165】
実施例1
約3,785リットル(l)(1,000ガロン(gal))の容量の無酸素セクションをもつ曝気タンクと、市販の膜生物学的反応器システムと等価の膜操作システムとを有する、パイロットスケールのプログラマブルロジック制御された膜生物学的反応器システム(アメリカ合衆国ウィスコンシン州ロスチャイルドのSiemens Water Technologiesから入手可能なPetro(商標)MBR Pilot Unit)を、本発明に記載された粒状活性炭添加に適応するように修正した。曝気タンクから膜操作システムに混合液を輸送するポンプの入口にウェッジワイヤスクリーンを定置した。
【0166】
ベース合成フィードストックは、以下の濃度の有機物/無機物、すなわち、48グラム/リットル(g/l)(48オンス/立法フィート(oz/cf))の酢酸ソーダ、16g/l(16oz/cf)のエチレングリコール、29g/l(29oz/cf)のメタノール、1.9g/l(1.0oz/cf)の水酸化アンモニウム、および0.89g/l(0.89oz/cf)のリン酸を有する水を含んだ。水酸化アンモニウムおよびリン酸は、膜生物学的反応器システム内のバクテリアのための適切な栄養バランス源であった。
【0167】
高濃度の生物学的抵抗性有機化合物および/または生物学的阻害性有機化合物を有するサンプル廃水混合物が調製された。具体的に、サンプル廃水混合物は、以下の濃度の生物学的抵抗性有機化合物および/または生物学的阻害性有機化合物、すなわち、90ミリグラム/リットル(mg/l)(0.09オンス/立法フィート(oz/cf)のEDTA、30ミリグラム/リットル(0.03oz/cf)のフタル酸ジ−n−ブチル、120mg/l(0.12oz/cf)の2,4−ジニトロフェノール、21mg/l(0.021oz/cf)の2,4−ジニトロトルエン、および75mg/lのメチルtert‐ブチルエーテルを含有した。混合物を無酸素タンクに供給した。
【0168】
最初に、粒状活性炭なしに膜生物学的反応器を動作させてベースラインを取得した。粒状活性炭の添加の前には、排出物中の約92%の生物学的抵抗性有機物または生物学的阻害性有機物の化学的酸素要求量(COD)化合物のみが除去され、膜生物学的反応器を完全に環境順化した長期間のバイオ環境順化後には、したがって、(CODとして測定された)これらの化合物の約8%を排出物中に流すことが可能になったことが分かった。
【0169】
粒状活性炭の効率を判断するために、(米国標準篩系列に基づく)14×35の公称メッシュサイズを有する3800グラム(g)(134オンス(oz))のMeadWestvaco Nuchar(登録商標)WV Bを曝気タンクに加え、粒状活性炭を懸濁状態に維持するために過剰な空気を提供して、曝気タンクに空気を供給するブロワを曝気タンクに2124標準リットル/分(slm)(75scfm(scfm))供給するように調整した。曝気タンクに加えられた粒状活性炭の量は、ユニット中の混合液浮遊物質の20パーセントに基づき、約5000mg/l(5oz/cf)となるように決定された。
【0170】
MLVSSの環境順化後、総膜操作システム排出物COD濃度が4%未満となり、したがって、CODとして測定された生物学的抵抗性または生物学的阻害性の有機化合物の96%超の除去を達成した。図14は、膜生物学的反応器システム中の生物学的環境順化の様々な段階における、生物学的抵抗性および生物学的阻害性の化合物の供給濃度(mg/l単位)と残留排出物濃度(オリジナルに対する百分率)とを示すチャートである。具体的には、図14は、粒状活性炭の添加前(段階A)と、環境順化期間(段階B)中と、環境順化(段階B)後との排出物濃度の比較を示す。粒状活性炭がシステムに添加されると、粒状活性炭の吸着能力が1日未満で消耗したので、排出物COD濃度の非常に大幅な初期低下が起こったが、これは図14には示されていない。次いで、供給CODの6.5%程度が処理後に残っているようにシステムを安定化した。これは、カーボンの吸着能力が消耗し、粒状活性炭上のバイオマスがCODとして測定された生物学的阻害性有機化合物を分解するために作用し始めた期間を表した。粒状活性炭の表面上にバクテリアが完全に確立された後、電子顕微鏡評価を用いて確認されたように、取り付けられた成長/固定フィルムシステムの利点が明らかになった。排出物中の残留COD濃度は、供給COD濃度の4%未満まで低下し、生物学的抵抗性または生物学的阻害性の有機化合物の高度に集中された供給の96%よりも高いCOD除去効率が提供された。
【0171】
本発明の方法および装置を使用すると、(1つまたは複数の)膜操作システムタンクの外にカーボンを保つことによって、膜の閉塞および摩耗がなくなる。より大きいサイズのカーボン粒子を使用することによって、カーボン粒子スクリーニングおよび/または分離が可能になる。一方、小さい微粒子サイズの粉末活性炭は、混合液からの効果的なろ過を妨げる。
【0172】
実施例2
圧縮空気源に接続されたロータメータと、ロータメータの出口からメスシリンダの底部に達するチューブまでのチューブとを有する2000ミリリットルメスシリンダを使用して、実験室微粒子懸濁スケール試験を実施した。20g(0.7oz)の完全に乾燥した粒状活性炭をメスシリンダ中に置いた。また、室温の蒸留水をシリンダに加えて微粒子を湿潤した。スパーテルを用いてシリンダの含有成分を混合して、含有物全体を懸濁させ、気泡を除去した。
【0173】
第1の固形物が懸濁するまで、シリンダ中のチューブに、速度を増しながら空気を加え、空気流が記録された。(シリンダの底部に残っているカーボンの量をもとにして)固形物の約50%が懸濁するまで、空気流を増加させ、空気流が記録された。粒状活性炭のすべてが懸濁するまで、空気流をさらに増加させた。最後の空気流が記録された。結果を表1に示す。
【表1】

【0174】
より多くの微粒子を懸濁させるにつれて、微粒子を懸濁させるために必要なエネルギー量が増加した。これらの結果に基づいて、粒子状活性炭を懸濁させるための空気必要量を計算すると、1,000リットルの反応器容積当たり約7,080から約8,500slm(1,000平方フィートの反応器容積当たり約250から約300scfm)となった。対照的に、粒子状活性炭なしに生物学的固形物を懸濁させる業界標準は、1,000リットルの反応器容積当たり約850slm(1,000平方フィートの反応器容積当たり30scfm)である。単純な粗気泡拡散器システムを使用して、粒子状活性炭と生物学的固形物とを懸濁させるための空気必要量は、生物学的固形物だけを懸濁させ、生物学的分解のために必要な酸素を供給するための空気必要量の最大10倍となることがわかった。
【0175】
実施例3
直径1.83メートル(m)(6フィート(ft))で水深2.59m(8.5ft)の縦型円筒形タンクを利用する粒状活性炭懸濁パイロットユニットを用意した。タンクの外壁を通して、タンク床から43.5センチメートル(cm)(17.125インチ(in))の距離にSiemens Water Technologies(アメリカ合衆国ウィスコンシン州ロスチャイルド)の1つのエダクタジェットノズルを設置した。図15に示されるノズルをタンクの中央に向かって水平に方向づけた。50mg/l濃度の粒状活性炭、Mead Westvaco Nuchar WVB 14×35/木材をタンク中に導入した。
【0176】
図15に示されるように、ジェットノズルシステムは、流体入口1546と、圧縮空気入口1558と、出口1564とを備えるジェットノズル1544を含んだ。流体は、入口1546から混合チャンバ1566へと流れた。また、圧縮空気は混合チャンバ1566に入り、そこで膨張し、流体にエネルギーを与えた。空気が膨張するにつれて、流体と空気との混合物がノズルスロート1568へと流れ、そこで混合物の速度が増大した。空気を含有する流体は、出口1564を通りノズル1544から出て、タンクへと入った。
【0177】
様々な液体流量および圧縮空気流量を用いて試験が行われた。液体流は530リットル/分(lpm)から757lpm(140ガロン/分(gpm)から200gpm)の範囲であり、圧縮空気流量は0から850slm(30scfm)の範囲であった。
【0178】
液体流量を587lpm(155gpm)にし、空気流量を850slm(30scfm)にすると、活性炭が懸濁したが、空気流を425slm(15scfm)以下にすると、活性炭はタンクの底部に堆積する結果となった。同様に、液体流量を644lpm(170gpm)にし、空気流量を850slm(30scfm)にすると、活性炭が懸濁したが、空気流量を425slm(15scfm)以下にすると、活性炭はタンクの底部に沈殿する結果となった。液体流が700lpm(185gpm)まで増加させると、空気流量を425slm(15scfm)に低減した時点で活性炭が懸濁する結果となった。
【0179】
ノズルを通る液体の流量を644から700lpm(170から185gpm)まで、10%未満増加させると、粗気泡拡散器システムが必要とする空気と比べて、空気消費量が50%少なくなった。したがって、ジェット懸濁システムは圧縮空気の消費量を、したがって、圧縮空気の使用に関連するエネルギーコストを大幅に低減した。
【0180】
実施例4
粒状活性炭の懸濁を実行するためのジェットノズルの有効性を判断し、下流膜操作システムの膜への粒状活性炭微粒子の通過を最小限に抑えるための構造を実証するために、実施例4を行った。円筒形タンクおよびジェット混合ノズルを使用して、ジェット混合は粒状活性炭を完全に懸濁することができるかどうかを実証した。様々な混合液体流量および気体流量について評価した。
【0181】
図16、図18および図19に示されるように、約7,570l(約2,000gal)のろ過された水道水をレベルLまで満たした直径6フィートの9,085l(2,400gal)スチールタンク1602中にジェット混合/曝気ノズル1644を設置した。
【0182】
この実施例では、様々な液体流量および気体流量で、円筒形タンク中でジェット混合ノズルを使用して、木材ベースのMead Westvaco Nuchar(登録商標)WV−B粒状活性炭と、石炭ベースのNorit Darco(登録商標)MRX粒状活性炭を懸濁させた。Mead Nuchar(登録商標)WV−B粒状活性炭の比重は1.1であり、有効サイズは0.6ミリメータ(0.024in)であったが、一般に、石炭ベースの粒状活性炭よりも比較的軟らかく、Darco(登録商標)MRXの比重は1.5であり、有効サイズは0.7ミリメータ(0.028in)であった。
【0183】
約50mg/l(0.05oz/cf)の木材ベースの粒状活性炭を水に加えた。水中ビデオカメラを使用して、タンク中の混合プロファイルを観察することができるように、低濃度の粒状活性炭を使用した。以下の表2に使用した試験条件の範囲を示す。
【表2】

【0184】
ディスクポンプ1648によってジェット混合/曝気エアレータ1644のノズルに水を供給し、ブロワ1660から圧縮空気を噴出した。可変周波数ドライブ1649および1661は、それぞれの供給速度を調節することができるポンプおよびブロワのモータのスピードをそれぞれ制御した。ディスクポンプ1648の排出ライン中にある磁気式流量計が液体流を監視した。ブロワモータのスピードは、空気流に比例した。
【0185】
図17を参照すると、ジェットノズルのスロート速度は、各試験条件において計算され、液体流量に対して示された。図示のように、木材ベースの粒状活性炭の完全な懸濁を達成するためには、約10.4メートル/秒(34フィート/秒)の最小スロート速度が必要とされた。この速度は、粒状活性炭の比重および最大微粒子サイズに相関し得る。
【0186】
木材ベースの粒状活性炭を用いた試験の完了時に、タンクを廃水し、洗浄し、水を再充填し、約50mg/lの石炭ベースの粒状活性炭を加えた。同様の一連のテストに基づいて、ジェットエアレータが、より密度の高い粒状活性炭を懸濁状態に維持することができたことが観察された。
【0187】
粒状活性炭微粒子が下流膜操作システムの膜に到達することを実質的に防止することが必要なので、曝気/反応器タンクの出口に0.38ミリメータ開口部をもつスロット付きスクリーンを配置して、それにより、直径0.38ミリメータ(0.015in)未満の微粒子までジェットエアレーション循環中に分解された任意の粒状活性炭微粒子は、スクリーンを通過し、膜操作システムに入ることができるようにした。
【0188】
さらに、静止ゾーン、すなわち、粒状活性炭がスクリーンに到達する前に沈殿することができるようにする低乱流のゾーンを使用する曝気/反応器タンク中にあるジェットポンプの吸引の側にスクリーンを置いて、2つの試験を実行した。
【0189】
図18を参照すると、第1の試験では、縦型バッフル1894を使用して、曝気タンク1802中に近位静止ゾーンを作製した。バッフルは、タンクの底部の上0.61m(2ft)から水位の上方まで延長した。この構成では、スクリーン1822はウェッジワイヤスクリーンであり、水がスクリーン1822に到達する前にタンク1802の底部から低乱流ゾーンを通って引かれなければならない静止ゾーンの頂部の近くに、スクリーン1822を装着した。静止ゾーンは、上向き速度が粒状活性炭の沈殿速度よりも小さくなるように、ユニットの計算されたプラグ流よりも40〜50%大きくサイズ設定した。この構成が効果的であるために、微粒子の比重に依存する沈殿速度は上向き速度よりも大きくなければならない。計算された沈殿速度が1.8メートル/秒である活性化された石炭ベースの粒子を使用して試験を実行した。静止ゾーンのプラグ流を仮定すると、上向き速度を、粒状活性炭が沈殿できるようにするのに十分に低く保つためには、少なくとも0.39m(4.2ft)でなければならない。静止ゾーンの実際の断面積は0.73m(7.8ft)であった。
【0190】
さらに図18を参照すると、ポンプに供給するために使用されたタンク1802のノズル1844をタンク床から約15.2cm(6in)に配置した。ウェッジワイヤスクリーン1822がタンクの頂部の近くで懸架され、出口1808と流体連通することができるように、ゴムブーツを使用して、ポリ塩化ビニルパイプをノズル1844に取り付けた。ウェッジワイヤスクリーンは、直径が8.9cm(3.5in)であり、長さが0.91m(3ft)であり、0.38ミリメータ(0.015in)の開口を有した。
【0191】
約18時間の稼働時間の間、700lpm(185gpm)の水流および419slm(14.8scfm)の空気流で混合試験を行った。粒状活性炭は、タンクの乱流部分中でなおも懸濁している粒状活性炭がほとんどない静止ゾーンの下のタンクの床上で観察された。時折、静止ゾーンの下方の床上で回旋アクションが生じ、粒状活性炭の一部がスクリーンに向かって上向きに巻き上げられることになった。
【0192】
ポンプおよびブロワをオフしたとき、スクリーン上に存在する粒状活性炭の一部分が落ちて、スクリーンに強力には接着されていなかったことを示し、残りの粒状活性炭は軽いブラッシングで容易に除去された。
【0193】
図19を参照すると、タンク1902と、縦型バッフル1994と、ノズル1944と、図18に関して説明された等価エレメントと実質的に同一に寸法設定され配置された出口1902と流体連通するスクリーン1922とを使用して、第2のテストを実施した。さらに、上向き流れを分散させるために、第2のバッフル1993を縦型バッフル1994の下方に45度の角度で配置した。静止ゾーンは、スクリーンに到達する粒状活性炭の量を最小限に抑えるための手段を提供した。スクリーン上に経時的に累積し得る任意の粒状活性炭を取り払うために、機械的ワイパー、あるいは水または空気の逆流パルスのいずれかを使用することができる。
【0194】
実施例5
実施例4で使用した同じ木材ベースの粒状活性炭と石炭ベースの粒状活性炭材料とを効率的に懸濁させるために混合するドラフトチューブおよびトラフを使用して、エアリフトポンプシステムの効果を実証するために、実施例5を行った。円筒形タンクおよび長方形タンクを様々な構成で使用した。実施例4の木材ベースの粒状活性炭と石炭ベースの粒状活性炭の両方を使用して摩耗を測定し、混合試験は、より高い密度の石炭ベースの粒状活性炭を使用した。
【0195】
試験データは、円筒形タンク中でも長方形タンク中でも、それらのタンク中の生物学的な呼吸を持続させるために必要な空気流量に匹敵する空気流量を使用すると、ドラフトチューブおよびドラフトトラフ中で粒状活性炭が懸濁できるということを確立した。データはまた、タンクの床の周囲区域から粒状活性炭を移動させて懸濁させる点に関して、一定の空気流量では、より小さいドラフトチューブよりも、より大きい直径のドラフトチューブが効率的であることを示す。
【0196】
粒状活性炭の摩耗の程度を判断するために、直径0.31m(12インチ)でセクション高さ3.7m(12フィート)のアクリルパイプを、150l(5.3gal)の水で2.3m(92インチ)まで満たし、1,500g(53oz)の乾燥粒状活性炭を加えて、約1重量パーセントの濃度にした。直径2.1m(82インチ)で長さ7cm(3インチ)のポリ塩化ビニルパイプをドラフトチューブとして機能させるために、直径0.31m(12インチ)のパイプの中央に固定した。粒状活性炭および水を通過させるために、2.54cm(1インチ)高×1.9cm(0.75インチ)幅の4つのスロットをチューブの底部に設け、1.9cm(0.75インチ)ノズルをドラフトチューブの中央に置いた。
【0197】
約300slm/1000リットルの水(300scfm/1000平方フィートの水)と等価である2,831標準リットル/時(100標準平方フィート/時)の速さで空気をノズルを介して導入した。摩耗を判断するために、フルスケール動作で予想されるより多くの乱流混合を生成するように、この比較的高い空気流量を選択した。第1のサンプルを取得する前に、約10分間にわたって流体を混合させた。
【0198】
水および粒状活性炭のグラブサンプルをアクリルパイプの頂部からとり、20メッシュスクリーンを通してそのサンプルを注ぐことによって、試験中に摩耗を測定した。摩耗の結果として生じたと仮定されるスクリーンを通過した固形物を収集し、乾燥させ、重量を測定した。
【0199】
石炭ベースの粒状活性炭(MRX)よりも木材ベースの粒状活性炭(WV−B)のほうが、粒状活性炭摩耗率が高いという結果が示された。30日間の運転後、木材ベースの粒状活性炭の約10%の摩耗と、石炭ベースの粒状活性炭の約5%の摩耗が観察された。作動している生体反応器中で本発明を実施すると、生物学的プロセスの通常運転中に消耗する固形物によって、この摩耗量が生成されることになる。試験の結果を図20にまとめる。また、プロットは、各データセットに関する標準的な線形回帰分析のためのy交差値およびR値を示す。
【0200】
様々な構成の(1つまたは複数の)ドラフトチューブ、ならびにドラフトチューブの数、タンクの底部からのドラフトチューブの距離、およびドラフトチューブ直径などの変量について試験し、性能に影響を与えることが分かった。
【0201】
1つの構成では、図21を参照すると、直径が0.3m(12in)で高さが1.5m(5ft)の単一のドラフトチューブ2192を直径が1.8m(6ft)のタンク2102の中心に置き、タンクの底部の上方の脚部2195上に配置した。タンク2102を約6,435l(1,700gal)の水で水位Lまで満たし、混合特徴を独力で観察し記録することができるように、十分な石炭ベースの粒状活性炭(400〜1,200g(14.1〜42.3oz))を加えた。ドラフトチューブ壁を貫通し、頂部表面にドリルで開けられたいくつかの直径3.2ミリメータ(0.125in)の孔を有する直径2.54cm(1in)のポリ塩化ビニル製粗気泡拡散器パイプ2190によって空気を供給した。空気流量を141slm(5scfm)から425slm(15scfm)まで変動させ、タンクの底部とドラフトチューブとの間の距離Dは、8.3cm(3.25in)または1.9cm(0.75in)のいずれかであった。
【0202】
この一連の試験に関して使用する場合、用語「衝撃ゾーン」は、粒状活性炭がないドラフトチューブのまわりのタンク床の区域である。
【0203】
他の条件が同じで、ドラフトチューブをタンク床の上8.3cm(3.25in)に配置すると、ドラフトチューブをタンク床の上1.9cm(0.75in)に配置したときよりも衝撃ゾーンが大きくなることが観察された。一般的な条件のためのドラフトチューブの底部とタンク床との間の最適距離は、ルーチンの実験によって判断することができる。
【0204】
加えられた空気の量が2倍に増加しても、衝撃ゾーンのサイズは2倍にはならなかった。425slm(15scfm)で床とドラフトチューブの間の隙間が8.3cm(3.25in)であると、直径約71cm(28in)の、すなわち、ドラフトチューブの外壁を20cm(8in)越える衝撃ゾーンが生成され、観察された衝撃ゾーンは最も大きくなった。
【0205】
同じ量の空気を使用する衝撃ゾーンのサイズを拡張させようとして、ドラフトチューブの底部から水平方向に延びるスカートまたはフランジを加え、ドラフトチューブおよびスカートの全体直径を71cm(28in)まで増大させることによって、図21に示された構成を修正した。すべての他の条件は上述の条件と同じであった。空気流量を141slm(5scfm)から425slm(15scfm)まで変動させた。
【0206】
ドラフトチューブの底部にスカートを加えると、衝撃ゾーンのサイズが増大したことが観察された。425slm(15scfm)の空気流量では、同じ空気流量でスカートがない71cm(28in)の衝撃ゾーンの場合に比べると、112cm(44in)まで、すなわち、スカートの外側縁部を20cm(8in)越えるまで衝撃ゾーンが増大した。衝撃ゾーンは、スカートのサイズに比例して増大した。
【0207】
これらのドラフトチューブ構成は図22に示される流れパターンを生成し、図中、水および懸濁した粒状活性炭がドラフトチューブ2290の入口2296に向かって下に内向きに描かれている。図22には停滞領域も表されている。
【0208】
さらなる実施例では、より小径およびより短いドラフトチューブをより大きいドラフトチューブの内側に配置したが、両方の長さは1.82m(6ft)であり、タンクの底部から約7.6cm(3in)に内側ドラフトチューブを装着し、外側ドラフトチューブは内側ドラフトチューブよりも22.9cm(9in)高い位置に配置された。ポリ塩化ビニルシートは、直径15.3cm(6in)の内側ドラフトチューブの底部から延び、直径71cm(28in)のスカートを生成した。傾斜表面またはランプを形成するために、スカートの頂部縁部に、直径15.3cm(6in)のドラフトチューブの外側表面上約12.7cm(5in)の位置でプラスチックシートを取り付けた。変形されたドラフトチューブを直径1.82m(6フィート)のタンクの中央に置き、空気流量は141slm(5scfm)から425slm(15scfm)まで変動した。
【0209】
同心円チューブは、直径71cm(28in)のフランジスカートをもつ単一のドラフトチューブの衝撃ゾーンに匹敵する約112cm(44in)の衝撃ゾーンを生成した。どちらの構成でも、衝撃ゾーンは約112cm(44in)であった。
【0210】
直径0.31m(12in)のドラフトチューブを単一の直径15.3cm(6in)のドラフトチューブと交換することによって、図21のドラフトチューブ構成を修正した。さらに、空気流量は141slm(5scfm)から425slm(15scfm)の範囲で変動させ、タンクの底部とドラフトチューブとの間隔を8.3cm(3.25in)および6.4cm(2.5in)で試験した。
【0211】
これらの試験の結果は、8.3cm(3.25in)から6.4cm(2.5in)への間隔の変動は、チューブのまわりの衝撃ゾーンの直径を大幅には変化させなかったことを示した。
【0212】
空気流量が2倍に増大しても、衝撃ゾーンのサイズを2倍にはならなかった。最も衝撃ゾーンを生成した条件は、床とドラフトチューブとの間のスペースが8.3cm(3.25in)である425slm(15scfm)である。この構成により、ドラフトチューブの外壁を20cm(8in)越える直径約56cm(22in)である衝撃ゾーンが生成された。
【0213】
上記試験に基づくと、所与の空気流量の場合、試験された範囲およびサイズ内において、より大きい直径のドラフトチューブは、より小さいドラフトチューブよりも粒状活性炭を懸濁させるのにより効果的であると結論付けることができる。直径1.82m(6フィート)のタンク中で粒状活性炭を混合し懸濁させるためには、2つ以上のドラフトチューブが必要とされることが明らかになる。空気流量を増大させると、混合率および衝撃ゾーンのサイズをあるポイントまで増大させるが、空気流量を2倍にしても、衝撃ゾーンは2倍にはならなかった。スカートまたはフランジをもつ、またはもたない、ドラフトチューブの周囲を越えて約20cm(8in)の区域のタンク床には、一貫して粒状活性炭がなかった。(1つまたは複数の)ドラフトチューブ衝撃ゾーンに向かって粒状活性炭を押すために、代替構造および/または補助混合デバイスをタンク中で採用してもよい。
【0214】
他の構成において、図23を参照すると、3つの直径12インチのドラフトチューブ2392をタンク2302中に等間隔に置き、これらのドラフトチューブ2392は、各ドラフトチューブの中央がタンクの中央から0.61m(24in)となり、ドラフトチューブの中央からタンク壁までの距離が約0.31m(12in)となるように互いに固定されている。各ドラフトチューブを、タンク床から約7cm(3in)離して懸架した。
【0215】
それぞれが2つの3.2ミリメータ(0.125in)孔を備える1インチ直径のポリ塩化ビニルパイプを通して、各ドラフトチューブに空気を均一に供給した。3つのドラフトチューブすべてに供給される空気の総量は453slm(16scfm)であった。
【0216】
3つのドラフトチューブに直接隣接して形成された衝撃ゾーンの外側の粒状活性炭の混合および運動を補助するために、孔をもつ2.54cm(1in)ポリ塩化ビニルパイプの水分散システムを製造しタンクの底部に配置した。水が45度の角度で床に向かって方向づけられるように、パイプの向かい合う側部に約32cm(7in)離して孔を穿孔した。分散システムに、遠心ポンプによって、別個の水貯蔵および循環タンクから53lpm(14gpm)で水を供給した。この構成は、膜生体反応器システム中の膜操作システムタンクからの返送水に類似している。第2のポンプおよびバルブは貯蔵タンクに戻る水の流れを制御し、スクリーンを使用して粒状活性炭を試験タンク中に保持した。
【0217】
各ドラフトチューブが、ドラフトチューブの外壁を越えて20cm(8in)延びている区域を清浄し、水分散器システム中の各孔が、長さ31〜41cm(12〜16in)で幅20〜31cm(8〜12in)の区域を清浄したことが観察された。ドラフトチューブの衝撃ゾーンと水分散器との間の区域中では、一部の粒状活性炭はタンク床に沈殿したが、衝撃ゾーンにゆっくりと動き、そこでリフトされ懸濁状態になった。
【0218】
水分散システムのさらなる試験では、排出された水が円形パターンでタンク中で混合するように、水分散器のパイプ中の孔を配向した。
【0219】
水分散器配管の間隔、空気流量、および水流量を含むすべての他の条件を、膜操作システム返送水をタンクに均一に加える3つの直径31cm(12in)で高さ91cm(36in)のドラフトチューブに関して記載したものと同じにした。
【0220】
この試験の結果は、各ドラフトチューブがドラフトチューブの外壁を越えて20cm(8in)延びている区域を清浄したことが示した。さらに、水流は円形パターンで粒状活性炭を混合する際に効果的であった。周囲に3つのドラフトチューブを置く代わりに、1つのドラフトチューブをタンクの中央に置くことよって、タンクの中央における粒状活性炭のビルドアップをなくすことができる。
【0221】
ドラフトチューブの長さが152cm(60in)から91cm(36in)まで低減されたときでさえ、粒状活性炭がタンク中の水位の頂部まで混合されたことが観察された。さらに、返送液体をタンクの底部に加えるために水分散器を使用することは、粒状活性炭を旋回させるためには効果的であった。複数のドラフトチューブをタンクの内部に置くと、各ドラフトチューブのまわりの衝撃ゾーンのサイズは、単一のドラフトチューブのまわりで観察された衝撃ゾーンのサイズと等価、すなわち、ドラフトチューブの外壁を20cm(8in)越えた。
【0222】
他の構成において、図24を参照すると、円形タンクの混合特徴と比較するために、幅0.91m(3ft)、長さ2.1m(7ft)、および深さ2.7m(9ft)の長方形タンク2402を用意して、2.4m(8ft)の水で満たした。上述のようにブロワ、ブロワモータ、および流量計を設定し、動作させた。
【0223】
図24に示されるように、タンク床2405の外側31cm(12in)を、粒状活性炭が水環境中でスライドして進み始める角度となるようにあらかじめ決定された30度の角度で傾斜させた。傾斜壁の30度の角度により、粒状活性炭をドラフトチューブ入口に向かって方向づけた。
【0224】
それぞれが高さ91cm(36in)で、タンクの底部から約12.7cm(5in)離れて支持された3つの直径31cm(12in)のドラフトチューブ2492を、タンク2402の非傾斜部分全体に均等に離隔して配置した。3つの粗気泡拡散器を介してドラフトチューブ中に空気を導入するために、ドラフトチューブの下方に穿孔された開口を有する直径7.6cm(3in)の空気パイプ2490を配置した。空気流量を221slm(7.8scfm)から512slm(18.1scfm)まで変動させた。
【0225】
その範囲内で採用された空気流量で、粒状活性炭を充分に混合した。空気流量が高くなると、混合流がより活発になり、粒状活性炭がタンクの床に残った時間が短くなった。空気添加中、タンクの深さ全体に粒状活性炭が存在することが観察された。
【0226】
他の構成において、今度は図25を参照すると、図24に関して上述された傾斜壁と拡散器とを有するタンク2502が用意され、高さ61cm(24in)で、31cm(12in)離隔し、タンク床の上方6.4cm(2.5in)に配置された2つの平行なバッフル2597を加えて「ドラフトトラフ」2592を形成した。パイプ2590を通る空気流量を、90.6slm(3.2scfm)から331.3slm(11.7scfm)まで変動させた。粒状活性炭は141.6slm(5scfm)よりも高いすべての空気流量においてよく混合および懸濁し、空気流量が141.6slm(5scfm)よりも上まで増大すると、混合率が増加することが観察された。
【0227】
タンク床および拡散器の構成が、ドラフトトラフまたはドラフトチューブがない図24および図25に関して記載された試験と同一である追加の試験において、1133slm(40scfm)においてでさえ、外観上、粒状活性炭の10%未満しか懸濁しないことがわかり、それは、トラフの存在が、粒状活性炭のエネルギー効率的懸濁の非常に重要なファクタであることを示す。
【0228】
別の試験構成では、タンク壁からトラフまでの距離を増大させた。大型の曝気槽では、トラフをより大きな距離だけ離隔できることが経済的に有効となる。トラフ間の間隔を2.1m(7ft)まで延ばすことの有効性を判断するために、試験を実行した。これを判断するために、上述の図25に関する構成をタンク中で90度回転させた。タンクの各端部から91cm(36in)延びた2つの30度傾斜壁を設置した。
【0229】
直径7.6cm(3in)のポリ塩化ビニルパイプの全長91cm(36in)にわたって、均等に離隔した9つの3.2ミリメータ(0.125in)直径の孔を穿孔することによって、粗気泡拡散器を製造した。164slm(5.8scfm)から402slm(14.2scfm)まで空気流量を変動させた。
【0230】
タンクの中央に気泡拡散器を置いた。タンク床の上方6.4cm(2.5in)にある31cm(12in)離隔している長さ91cm(36in)で高さ61cm(24in)の2つの平行なバッフルを使用して、拡散器パイプのまわりの2つの傾斜したタンク壁の間にトラフを作製した。
【0231】
粒状活性炭は、空気流量範囲全体にわたってよく混合し懸濁していることが観察された。粒状活性炭は、傾斜を下に向かってドラフトトラフ中へと流れ、それにより、トラフの間隔は間の床が30度傾斜で最大2.1m(7ft)離隔できることを示した。
【0232】
上述の試験は、ドラフトトラフ設計により、ドラフトトラフに向かって垂直な外壁から延びる30度の傾斜した床または壁を使用して、幅0.91m(3フィート)、長さ2.1m(7フィート)、2.4m(8フィート)容積の水中に粒状活性炭を懸濁させることが成功したことを示した。
【0233】
粒状活性炭を懸濁させるためのエネルギー効率性能をさらに最適化するために、異なる構造のタンク床とともに上述のように91cm(36in)長のトラフを使用して追加試験を実行した。この構成は、全体的に傾斜した床を取り除くことと、外壁からトラフまで床を傾斜させることと、30度から15度まで角度を小さくすることと、30度の角度を維持しながらタンクの各端部上の傾斜した床の長さを91cm(36in)から31cm(12in)まで減少させることとを含んだ。さらに、2つの長さ91cm(36in)のトラフが傾斜した床のないタンクの各端部にあるようにタンクを構成し、試験を実行した。これらの構成の各々において、141slm(5scfm)から425slm(15scfm)まで空気流量を変動させた。
【0234】
パイロット曝気タンクの各端部に2つのドラフトトラフを設置した。91cm(36in)粗気泡拡散器をタンクの各端部に置くことによってトラフを生成した。5つの均等に離隔した3.2ミリメータ(0.125in)の孔を有する7.6cm(3in)のポリ塩化ビニルパイプで拡散器を製造した。壁から約20cm(8in)、すなわち、拡散器の中央から6インチ離して、長さ91cm(36in)で高さ61cm(24in)のバッフルプレートをタンク床から約5.1cm(2in)離して装着した。
【0235】
長方形のパイロットスケール曝気タンク中で実行された試験から、3つの直径31cm(12in)高さ91cm(36in)のドラフトチューブを拡散器の上に加えると、227slm(8scfm)から510slm(18scfm)の空気流量で粒状活性炭が懸濁したことが観察された。しかしながら、このように構成した結果、サポートの近くでタンクの中心に停滞ゾーンが形成する可能性がある。長さ2.1m(7フィート)のドラフトトラフをタンクの中央に置き、床を30度の角度で傾斜させると、141slm(5scfm)を上回る空気流量で、粒状活性炭をタンク中に徹底的に混合し懸濁させる。さらなる試験は、最大2.1m(7ft)離隔したドラフトトラフを用いて適度な混合を取得することができることを示した。
【0236】
ドラフトチューブを使用する上述の構成では、空気流量を増大させると収量漸減となることが明らかになった。空気流量を増大させると、混合率および衝撃ゾーンのサイズが増大した。しかしながら、空気流量を2倍にしても、衝撃ゾーンは2倍にはならなかった。各ドラフトチューブの衝撃ゾーンは、チューブの外側を越えて約20cm(8in)延びることが分かった。この領域を越えると、タンク床の粒状活性炭をドラフトチューブ衝撃ゾーンに向かってその中へと動かすためには、タンク中の材料の補助的な局所混合が必要であった。この混合を達成するために水分散システムを使用した。
【0237】
ドラフトチューブの長さが152cm(60in)から91cm(36in)に低減された場合であっても、タンクの深さ全体に粒状活性炭が懸濁した。ドラフトチューブまたはトラフに向かって30度の角度でタンクの床を傾斜させることは、粒状活性炭の循環させる効果的な方法を提供する。ドラフトトラフおよび傾斜した床を使用すると、長方形に成形されたタンク中において粒状活性炭が完全に混合され、ドラフトチューブを使用するよりも停滞ゾーンが形成されづらくなる。ドラフトトラフは、タンク床から粒状活性炭を上昇させるのに効果的であった。トラフの上方に粒状活性炭を上昇させると、粗気泡拡散器によって生成された混合は、粒状活性炭をタンクの頂部まで上昇させるために十分であった。試験結果は、30度傾斜した表面を利用することによって、トラフの中心が2.1m(7ft)離隔できるようになり、より広い間隔が可能になり得ることを示した。
【0238】
実施例6
上述され、各図面に示された本発明の1つまたは複数の実施形態にしたがって実質的に設計された廃水処理システムは、第1の生物学的反応器と、第1の生物学的反応器の下流に配置された、粒状活性炭を含む第2の生物学的反応器とを備える。生物学的反応器の下流に膜操作システムを配置する。最適性能のための条件を識別するために、および排出物の生物学的酸素要求量の許容可能なレベルと、システムから出る化学的酸素要求量化合物とを提供するために、流量、滞留時間、温度、pHレベル、およびシステム中に存在する粒状活性炭の量などの動作パラメータを調節する。下流方向の流れを提供し、第2の反応器中に粒状活性炭を維持するように、第1の反応器と第2の反応器との間の液体流を制御する。
【0239】
動作中、廃水流は第1の生物学的反応器に導入される。第1の反応器中において最適な栄養素比およびpHレベルを維持するために、リン、窒素、および/またはpH調節材料を必要に応じて加える。第1の反応器中の微生物は、廃水中の生物学的不安定有機体の少なくとも一部分を分解することができ、排出物中の生物学的酸素要求量化合物を許容可能なレベルまで低減する。粒状活性炭を含んでいる第2の生物学的反応器は、廃水中の生物学的抵抗性および生物阻害性の化合物を処理するために使用され、排出物中の化学的酸素要求量化合物を許容可能なレベルまで低減する。
【0240】
粒状活性炭を第2の反応器中に懸濁状態で維持するために、懸濁システムが使用される。膜操作システムを粒状活性炭が実質的にない状態に維持するために、第2の反応器中にスクリーンを配置する。排出物中で測定された生物学的酸素要求量化合物および化学的酸素要求量化合物に基づいて、必要に応じて、粒状活性炭を第2の反応器に加える。
【0241】
第2の反応器からの排出物は、スクリーンを通過した後に膜操作システムに導入される。膜操作システムでは、処理された廃水は、1つまたは複数の膜を通過することになる。膜透過物は、膜操作システムの出口を通って排出されることになる。活性汚泥を含む残留物は、循環活性汚泥ラインを通って第1の反応器に戻されることになる。
【0242】
第2の生物学的反応器からの使用済み粒状活性炭は、混合液廃棄物排出ポートから周期的に除去される。また、たとえば、反応器中の構成成分の濃度を制御するために、破棄のために循環活性汚泥の一部または全部を進路変更するために、廃棄物出口を循環活性汚泥ラインに接続する。
【0243】
システムは、所望に応じて、システムを監視し調節するためのコントローラを含む。コントローラは、所望の動作条件と所望の排出物流の品質とに応じて、システム内のパラメータのいずれかを指示する。コントローラは、システム内に配置されたセンサまたはタイマによって発生された1つまたは複数の信号に基づいて、あるいはあらかじめ規定された時間期間にわたって監視されたシステムの特徴または特性の上向き傾向または下向き傾向に基づいて、各ポテンシャル流に関連するバルブ、フィーダ、またはポンプを調節または調整する。センサは、生物学的抵抗性/阻害性の有機化合物および無機化合物などの汚染物質の濃度が、あらかじめ規定された値または傾向に達したことを示すことができる信号を発生し、それにより、センサから上流で、センサから下流で、またはセンサにおいて、対応するあらかじめ規定されアクションを開始するようにコントローラがトリガされる。このアクションは、粒状活性炭を生物学的反応器に加えることと、異なるタイプの吸着性物質を加えることと、システム内における反応器への廃水の流れを調節することと、システム内における貯蔵タンクへの廃水の流れを再び方向づけることと、生物学的反応器内における空気流を調節することと、生物学的反応器内における滞留時間を調節することと、生物学的反応器内における温度および/またはpHを調節することとのうちのいずれかの1つまたは複数を含むことができる。
【0244】
排出物中であらかじめ規定されたレベルの生物学的酸素要求量化合物および化学的酸素要求量化合物を達成するために、第1の反応器および第2の反応器をそれら自身の液体滞留時間で動作させる。第1の反応器の液体滞留時間と第2の反応器の液体滞留時間との最適比を決定するために、第1の反応器および第2の反応器の液体滞留時間を変動させる。システムの総液体滞留時間は、標準的な単一の生物学的反応器に等しいか、またはそれよりも短く、たとえば、約8時間から12時間となるであろう。好ましい動作モードでは、第1の反応器の液体滞留時間は約4時間から約8時間となり、第2の反応器の液体滞留時間は約4時間となる。一般に、第1の反応器の液体滞留時間は、第2の反応器の液体滞留時間よりも長くなるが、相対的な時間は、処理される廃水のタイプに応じて変動することになる。システムの液体滞留時間および流量を使用して、当技術分野における標準的な実施にしたがって各反応器のサイズを判断する。システムからの排出物は、標準的な単一の生物学的反応器からの排出物と比べると、化学的酸素要求量化合物が少なくとも約10%少なくなるであろう。さらに、好ましい実施形態では、このシステムの使用によって粒状活性炭の再生を達成する。
【0245】
実施例7
複合型活性汚泥/粒状活性炭処理を伴う活性汚泥処理をシミュレートするためのベンチスケールシステムを構築し、試験した。粒状活性炭のない生物学的反応器(第1段階反応器)の下流にある生物学的反応器(第2段階反応器)中で粒状活性炭を使用する効果を判断するために、この試験を実行した。
【0246】
第1段階反応器は、活性汚泥のみを含む4リットル(1.06ガロン)タンクであった。空気流量が370cm/分(23インチ/分)である微気泡拡散器を使用した。第2段階反応器は、活性汚泥および石炭ベースの粒状活性炭(Siemens Water Technologies社のAquaCarb(登録商標)カーボン)を含む3リットル(0.79ガロン)タンクであった。粒状活性炭は、8×30の米国標準メッシュサイズを有した。第2段階反応器中における粒状活性炭の濃度は、20g/l(20oz/cf)であった。粒状活性炭を368slm(13scfm)の空気流量で懸濁状態に維持するために、直径5.1cm(2in)のPVCパイプを備えるドラフトチューブを、直径12.7cm(5in)の第2段階反応器中にセットアップした。第1段階反応器中における混合液浮遊物質濃度は約3,470mg/l(3.5oz/cf)であり、第2段階反応器中における濃度は約16,300mg/l(16.3oz/cf)であった。システムの全体の水理学滞留時間が約14時間である場合、第1段階反応器の水理学滞留時間は約6時間であり、第2段階反応器の水理学滞留時間は約8時間であった。
【0247】
30日間以上にわたってシステムを動作させた。第1段階反応器に入る可溶性CODの平均供給濃度は130mg/l(0.13oz/cf)であり、第1段階反応器の排出物の平均可溶性COD濃度は70mg/l(0.07oz/cf)であり、第2段階反応器のためのフィードであった。第2段階反応器の排出物中で測定された平均可溶性COD濃度は、62mg/l(0.062oz/cf)であった。第2段階反応器による可溶性CODにおけるこの10%超の低減は、粒状活性炭を含まない第1の生物学的反応器の下流に粒状活性炭を含む生物学的反応器を有するシステムにおいて廃水を処理することの実用性を実証する。
【0248】
廃水の効果的な処理を達成するために、第2段階反応器中の分離サブシステムと第2段階反応器の下流にある膜操作システムの使用とを含む、本明細書に記載された本発明の他の態様を、この実施例に記載された装置に適用する。
【0249】
本発明の方法および装置について、上述し、添付の図面に示してきたが、当業者には修正形態が明らかであろう。本発明に関する保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水を処理するための廃水処理システムであって、
吸着性物質を混合液とともに生物学的反応器中に維持するように構築され、配列された分離サブシステムを備える生物学的反応器と、
前記生物学的反応器中に配置され、前記吸着性物質を前記混合液とともに懸濁状態に維持するように構築され、配列された懸濁システムと、
前記生物学的反応器の下流に配置され、前記生物学的反応器から処理済み混合液を受け、膜透過物を排出するように構築され、配列された膜操作システムと、
を備える、廃水処理システム。
【請求項2】
前記懸濁システムが、ガスリフト懸濁システムを備える、請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項3】
前記ガスリフト懸濁システムが、前記生物学的反応器中に配置された少なくとも1つのドラフトチューブと、前記ドラフトチューブの入口端部に気体を向けるように配置され、寸法設定された1つまたは複数のアパーチャを有する気体導管とを備える、請求項2に記載の廃水処理システム。
【請求項4】
前記ガスリフト懸濁システムが、前記生物学的反応器中に配置された少なくとも1つのドラフトトラフと、前記ドラフトトラフの下方部分に気体を向けるように配置され、寸法設定された1つまたは複数のアパーチャを有する気体導管とを備える、請求項2に記載の廃水処理システム。
【請求項5】
前記ドラフトトラフが、前記生物学的反応器中に配置された1対のバッフルによって形成される、請求項4に記載の廃水処理システム。
【請求項6】
前記懸濁システムが、ジェット懸濁システムを備える、請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項7】
前記分離サブシステムが、前記生物学的反応器の出口に配置されたスクリーンを含む、請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項8】
前記分離サブシステムが、前記生物学的反応器の前記出口に近接して配置された沈殿ゾーンを含む、請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項9】
前記沈殿ゾーンは、前記吸着性物質が混合液から分離し、前記生物学的反応器の下方部分において前記混合液中に沈殿する静止ゾーンを規定するように配置され、寸法設定された第1のバッフルおよび第2のバッフルを備える、請求項8に記載の廃水処理システム。
【請求項10】
前記生物学的反応器の前記出口に近接して配置されたスクリーンをさらに備える、請求項8に記載の廃水処理システム。
【請求項11】
前記生物学的反応器の前記出口に近接して配置された堰をさらに備える、請求項8に記載の廃水処理システム。
【請求項12】
前記生物学的反応器と連通する吸着性物質導入源装置と、
前記システムのパラメータを測定するように構築され、配列されたセンサと、
前記センサと電子通信し、前記システムの前記測定されたパラメータに基づいて行為の実行を命令するようにプログラムされたコントローラと、
をさらに備える、請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項13】
前記測定されたパラメータが、1つまたは複数のあらかじめ規定された化合物の濃度である、請求項12に記載の廃水処理システム。
【請求項14】
前記行為が、前記生物学的反応器から前記吸着性物質の少なくとも一部分を除去することを含む、請求項12に記載の廃水処理システム。
【請求項15】
前記行為が、前記生物学的反応器に吸着性物質を加えることを含む、請求項12に記載の廃水処理システム。
【請求項16】
廃水を処理するための廃水処理システムにおいて、
廃水入口、混合液出口、および前記混合液出口と関連づけられた分離サブシステムをもつ生物学的反応器と、
前記生物学的反応器中に配置された吸着性物質のための懸濁システムと、
前記生物学的反応器の下流に配置された膜操作システムであって、
前記混合液出口と流体連通する入口、および
処理済み排出物出口
を有する膜操作システムと、
を備える、廃水を処理するための廃水処理システム。
【請求項17】
前記懸濁システムが、ガスリフト懸濁システムを備える、請求項16に記載の廃水処理システム。
【請求項18】
前記懸濁システムが、ジェット懸濁システムを備える、請求項16に記載の廃水処理システム。
【請求項19】
廃水を処理するためのプロセスであって、
生物学的反応器中に混合液を導入することと、
前記混合液とともに前記生物学的反応器中に吸着性物質を導入することと、
前記吸着性物質による前記混合液からの汚染物質の吸着を促進する動作条件下で、気体を使用して前記混合液中に前記吸着性物質を懸濁させることと、
前記生物学的反応器中に吸着性物質を維持しながら、吸着性物質が実質的にない排出物を、前記生物学的反応器から膜操作システムに流すことと、
を含む、廃水を処理するためのプロセス。
【請求項20】
前記吸着性物質の前記懸濁を促進するために、前記生物学的反応器中において液体を循環させる、請求項19に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図13A】
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【図13B】
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【公表番号】特表2012−529989(P2012−529989A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516194(P2012−516194)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/038644
【国際公開番号】WO2010/147964
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511304464)サウジ アラビアン オイル カンパニー (4)
【出願人】(510002268)シーメンス インダストリー インコーポレイテッド (21)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Industry, Inc.
【住所又は居所原語表記】3333 Old Milton Parkway, Alpharetta, GA 30005−4437, United States of America
【Fターム(参考)】