説明

成形吸音材

【課題】 塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットの回収品及びカーペット製造時に発生する端材からなるカーペット廃材から、道路騒音を低減する吸音材として有効な成形吸音材の効率的な製造方法及びその成形吸音材の施工方法を提供する。
【解決手段】 塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペット廃材を粉砕後、粒径が3mm以下の樹脂裏打ち層を主成分とする粉砕物の含有量が30重量%以下となるように除去した粉砕物(イ)、及び/又は、粒径が1mm以下の微粉の含有量が5重量%以下となるように除去した粉砕物(ロ)と、芯鞘型合成繊維(ハ)及び/又は低融点合成繊維(ニ)を混合して配合物を得、さらに好ましくは、該配合物に水を混合後、高周波又はマイクロ波誘電加熱により加熱、加圧成形して吸音性、耐水性に優れた成形吸音材を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペット類の、使用済み回収品や製造時の端材等をリサイクル活用するために有効なリサイクル素材を使用した成形吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりカーペット製造時には裁断端材が発生し、また、使用済みカーペット類、特に表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットは殆ど建築廃材としてリサイクルされることなく廃棄処分されていた。ところが、近年、地球環境の保護と資源の有効活用の観点から、これらカーペット廃棄物の残材及び端材、リニューアルに伴う廃材の処理が課題となっている。中でも、表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットの1種であるタイルカ−ペットは、現在、その樹脂裏打ち層の9割以上が塩化ビニル系樹脂に依存しており、適正処理及びリサイクル方法の開発が望まれている。
【0003】
このような表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットの大部分は、表面繊維層がナイロン,ポリプロピレン,ポリエステル等の異種素材で構成されており、塩化ビニル系樹脂との複合材料であること、成形体としてもその用途が限られているため、リサイクルがなかなか行われず、その大半がリサイクルすることなく埋立て処分されているのが現状である。
【0004】
一方、高速道路の防音壁、橋梁及びトンネル出入口周辺に使用される吸音材としては、グラスウール、ロックウール、アルミニウム等の繊維状多孔質部材、ポリエステル等の合成繊維からなる不織布、セラミック系、発泡ポリウレタン等の多孔質吸音材が挙げられ、中でも、グラスウールは耐熱性、耐燃焼性、吸音特性に優れるので多く使用されている。これらの多孔質吸音材は内部に連通した空隙を有し、空隙内に音波が入射すると、ファイバーや吸音材空隙内における壁面での粘性摩擦等により、音のエネルギーが材料内に吸収されることによって吸音がなされるものである。また、特定の周波数の吸音性能を向上させる目的で、有孔板などが使用されており、グラスウール、ロックウール等の繊維状多孔質部材を前記有孔板に収めて吸音パネルとして成形したものが、高速道路の防音壁等に組み込まれて用いられている。
【0005】
前記グラスウール、ロックウール等の繊維状多孔質部材を高速道路側壁、橋梁及びトンネル出入口周辺側壁に使用される吸音材とする場合、前記グラスウール、ロックウール等の繊維状多孔質部材は、吸湿性、吸水性が高く、吸湿量または吸水量が増大するほど、吸音性能の低下を招くという問題があった。また、これらの繊維状多孔質部材は、一端、吸水すると、乾燥しにくいため、水分を吸収すると、乾燥速度が遅く、層間剥離を起こしたり、形状の保持が難しくなるという問題があった。このため、前記グラスウール、ロックウール等の繊維状多孔質部材を有孔板に収めて吸音パネルとして用いる場合には、耐水性と飛散防止の目的からテトラフルオロエチレン系の薄膜の袋の中に繊維状多孔質部材が詰め込まれて用いられている。
【0006】
ところで、このテトラフルオロエチレン系の薄膜は、面積が大きいために作業中に破れ易く、一旦雨水が袋の中に滞留し外部に蒸発することができない。その結果、繊維状多孔質部材は水分と自身の自重により、上部よりしだいに垂下沈降現象を惹起し、吸音性能が極めて低下するという問題があった。また、グラスウール、ロックウール等の繊維状多孔質体は、吸音性能には優れているものの、取り付け作業時に部分的に破壊されたり、長期間使用による劣化や走行車両による振動で折れが生じ、ガラス破片等の粉塵が飛散して環境に悪影響を与えるという問題があった。
【0007】
表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットの一種であるタイルカーペットのリサイクル方法については、タイルカーペットの端材又は廃材を粉砕後、表面パイル層からなる繊維成分と樹脂裏打ち層から成る樹脂成分を風力分離して回収し、樹脂材料としてリサイクルする方法である特許文献1がある。タイルカーペットの端材又は廃材は、この方法により、繊維成分と樹脂成分に分離し、該樹脂成分を樹脂材料としてリサイクルするものである。ここで、分離された繊維成分をリサイクルする技術に係わる特許文献2においては、塩化ビニル系樹脂バッキング層を1000μm以下に粉砕したものを使用し、該カーペットの繊維成分やフェルト、パンチカーペット、カーテン等の繊維を20mm以下に粉砕したものを所定の比率で混合し、加熱、溶融、加圧して成形体とするものである。しかしながら、この方法では、塩化ビニル系樹脂バッキング層を1000μm以下に粉砕したものを使用するため、1000μm以下の樹脂を十分に加熱、溶融して成形しなければ、成形体表面に塩化ビニル系樹脂バッキング層の微粉が付着したり、脆い成形体と成るため、低密度で、耐久性のある成形体を作ることは困難であった。
【0008】
ところで、繊維成分と樹脂成分を分離することなくリサイクルする方法として、カーペットの端材又は廃材を粉砕後、成形体とする方法が提案されている。例えば、特許文献3は、カーペットの端材又は廃材を粉砕して粉砕物とし、カーペット廃材の粉砕物の集合体をシートで包囲した状態で加熱加圧成形する熱プレス成形品の提案である。また、特許文献4は、タイルカーペットの端材又は廃材を粉砕後、芯鞘型合成繊維及び/又は低融点合成繊維と混合し、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により加熱、加圧プレスして吸音性を有する成形体を製造する方法である。
【0009】
表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットの端材又は廃材を粉砕して成形体としてリサイクルする場合、特許文献3に示される加熱板に挿んで加熱加圧してプレス成形するプレス成形装置を使用することが一般的であるが、成形に要する時間を短くして効率よく成形することが望まれていた。実際に、加熱板に挿んで加熱加圧するプレス成形装置でプレス成形した場合、成形体表面に存在する樹脂成分の溶融が進み、成形体内部は、成形体表面からの伝熱により加熱溶融することとなるため、成形体内部に対して表面の溶融が進み易く、均一になり難い、また、成形体内部まで溶融するためには成形時間がかかり、効率が上がらないという問題が有った。
【0010】
さらに、加熱板に挿んでプレス成形する成形方法では、厚みの厚い成形品の成形が困難であった。そこで、厚みの厚い物を成形する場合は、一端、プレス成形品を成形した後に、成形品を複数枚積層し、再度、加熱加圧プレスする方法を取らざるを得なかった。又、密度の軽いふかふかした繊維複合物や繊維含有量の多い配合物のプレス成形を行う場合においては、伝熱効率が低く、プレス成形が困難であるという問題があった。
【0011】
すなわち、加熱板に挿んでプレス成形する方法によるプレス成形方法では、厚みが1cm程度に制限され、それ以上の厚みの物は成形する効率が悪く、成形体表面から内部まで均一に溶融した成形体を効率良く製造するためには、伝熱効率を高めるためにプレス成形装置の熱容量を大きくする、或いは、被処理物を直接加熱する方法等の改善を行なう必要が有った。
【0012】
一方、特許文献4は、加熱、加圧成形する効率を上げるため、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱による成形体内部からの加熱を利用することを特徴とし、成形体表面と成形体内部をより均一な状態の成形体を製造する方法である。ところで、このような方法で得られた成形体を車両通行帯で発生する騒音を吸音するための吸音材とする場合、吸音性能の高い成形体とすることと施工上の点からより軽量な吸音材とすることが要求されていた。成形体をより軽量化する方法としては、充填量を減らして同じ体積の成形体とする、特許文献2に示されるような繊維を混合する方法が挙げられるが、充填量を減らすと加熱成形時に該カーペット粉砕物と芯鞘型合成繊維及び/又は低融点合成繊維からなる配合物が熱溶融して所定の厚みの成形体とすることが困難で、その結果、吸音性能が低下するという問題があった。また、該カーペットの繊維成分以外の繊維を混合する場合、均一に混合することが非常に困難で、その結果、均一構造の成形体とすることが困難で、得られた成形体の吸音性能にバラツキが生じるという問題があった。
【0013】
表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットの端材等の廃材を主成分とし、車両騒音に対して優れた吸音性能を有する加熱、加圧プレスにより成形した成形体、すなわち、成形吸音材は、吸音材としての吸音性能を発現するために、成形体の表面は、カーペットの樹脂裏打ち層又は低融点繊維を含む繊維成分の溶融樹脂で厚く覆われない状態、いわゆる、成形吸音材表面に厚い表面スキン層が形成されず、音の反射が少ない構造とすることが必要であった。そのため、カーペットの樹脂裏打ち層成分と表面繊維層成分及び低融点繊維からなる繊維成分が分級しないように均一に混合し、かつ、成形体表面と成形体内部でほぼ均一に溶融した成形体とすること、該カーペット粉砕物と芯鞘型合成繊維及び/又は低融点合成繊維が充分に接着して表面に存在する該カーペット粉砕物の脱落がないように表面性が良好で、かつ、施工時の取扱いや屋外使用に耐え得るための剛性を有する成形体とする必要が有った。
【特許文献1】特開2003−127140号公報
【特許文献2】特開2005−82802号公報
【特許文献3】特開平8−142083号公報
【特許文献4】特開2004−232139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、カーペット廃材、特に、タイルカーペットの廃材、又は製造工程で発生する端材等の廃材を、埋立て処理することなく有効利用し、特定の周波数領域、具体的には、道路交通騒音を吸音するために要求される中音域を含む1000〜6300Hzの音域において優れた吸音性を有し、表面性が良好で、吸水性の低い軽量な成形吸音材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち本発明は、表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットの粉砕物から、粒径が3mm以下の樹脂裏打ち層を主成分とする粉砕物の含有量が30重量%以下となるように除去した粉砕物(イ)と、粒径が1mm以下の微粉の含有量が5重量%以下となるように除去した粉砕物(ロ)から選択される少なくとも1種を60重量%以上95重量%以下とし、鞘部が200℃以下の融点を持つ芯鞘構造を有する合成繊維(ハ)と、200℃以下で溶融する合成繊維(ニ)から選択される少なくとも1種を5重量%以上40重量%以下とし、合計で100重量%となるように混合した配合物を、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により加熱、加圧プレスしてなり、密度が0.1g/cm以上1.0g/cm以下の成形吸音材である。
【0016】
前記(イ)及び/又は(ロ)を得るには、表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットの粉砕物から、振動篩を用いて分離除去するのが好ましい。
【0017】
前記合成繊維(ハ)は、芯部と鞘部の融点差が20℃以上であり、芯部がポリエステル系樹脂又はポリプロピレン系樹脂で構成された繊維であるのが好ましい。
【0018】
また合成繊維(ニ)は、低融点ポリエステル系共重合体繊維、低融点ポリアミド共重合体繊維、ポリエチレン系繊維から選択される1種以上の合成繊維であるのが好ましい。前記(イ)及び/又は(ロ)と、前記合成繊維(ハ)及び/又は前記合成繊維(ニ)の混合物100重量部に対して、0.5重量部以上30重量部以下の水を添加して混合した配合物を、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により加熱、加圧成形してなる成形吸音材とすることができる。
【0019】
さらに、(イ)及び/又は(ロ)を得る場合に、5mm以上30mm以下の開口径を有するパンチングメタル又は格子から成るスクリーンを設置した剪断式粉砕機又は衝撃式粉砕機を用いて調整することもできる。
【0020】
これら成形吸音材を成形する際には、その少なくとも片面に厚みが10μm以上1mm以下の、ポリエステル製不織布又は熱可塑性樹脂フィルムを積層し、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により加熱、加圧プレスして一体成形して成形吸音材とすることができる。
【0021】
上記により得られた成形吸音材は、JIS A1405に準じて測定した1000Hz〜6300Hzでの垂直入射吸音率が、70%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、カーペット廃材、特に、タイルカーペットの廃材、又は製造工程で発生する端材等の廃材を、埋立て処理することなく有効利用し、特定の周波数領域、具体的には、道路交通騒音を吸音するために要求される中音域を含む1000〜6300Hzの音域において優れた吸音性を有し、表面性が良好で、吸水性の低い軽量な成形吸音材を得ることができる。
【0023】
また、得られた成形吸音材の側部をアルミ粘着テープ又はシーリング剤により封止することで、成形吸音材側部からの吸水による成形吸音材の内部からの劣化が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に使用するカーペットは、例えば図1に示すように、表面繊維(パイル)層1と樹脂裏打ち層2とから構成されており、JIS L4406で規定されるものが好ましい。
【0025】
特に、表面繊維(パイル)層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットの中で、代表的な素材であるタイルカーペットの製品形状は、例えば、50cm×50cm、厚み約6mmで、表面繊維層1と樹脂裏打ち層2の厚みがほぼ同じ程度のものが通常使用されている。
【0026】
本発明では、表面繊維(パイル)層を構成する繊維素材としては、ナイロンフィラメント、ポリプロピレンフィラメント、ポリエステルフィラメントで構成された物が好ましく、例えば、該繊維成分がナイロンフィラメントの場合、タイルカーペット全体の5〜30重量%の範囲で、通常、約15重量%を占めるている。
【0027】
本発明で使用するカーペットは、表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットであり、カーペットの製造時に生じる裁断端材屑やリニューアル時に廃棄される物等を含む。
【0028】
樹脂裏打ち層を構成する素材として、塩化ビニル系樹脂、ビチューメン、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられるが、日本で製造されるタイルカーペットの樹脂裏打ち層は、塩化ビニル系樹脂を用いたものが9割以上を占めるが、本発明においても、この塩化ビニル系樹脂にて裏打ちされたカーペットを使用することができる。
【0029】
本発明の成形吸音材としては、表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットの廃材又は端材を粉砕物とした後に、粒径が1mm以下の微粉の含有量が5重量%以下となるように除去した粉砕物(イ)、或いは、粒径が3mm以下の樹脂裏打ち層を主成分とする粉砕物の含有量が30重量%以下となるように除去した粉砕物(ロ)と、鞘部が200℃以下の融点を持ち後述する合成繊維等からなる芯とで形成される芯鞘構造を有する合成繊維(ハ)及び/又は、200℃以下で溶融する合成繊維(ニ)を混合した後に、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により加熱、加圧プレス成形して成形吸音材とすることが好ましい。
【0030】
高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱による誘電加熱で、前記(イ)及び/又は(ロ)と前記合成繊維(ハ)、及び/又は合成繊維(ニ)の混合物を加熱する場合、カーペットの表面繊維層がナイロンフィラメントで構成されている物は、誘電加熱により塩化ビニル系樹脂やナイロンフィラメント等が発熱するため内部発熱効果が高く好ましい。その際、カーペットの表面繊維層を形成する繊維成分は、分離除去することなく使用することが好ましい。
【0031】
本発明では、加熱、加圧する方法として、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により誘電加熱を行うと共に加熱板で加熱してプレス成形を行うことが好ましい。すなわち、高周波誘電加熱により加熱を行う場合、加熱工程と加圧するプレス成形工程を同時に行うか、または、2段階に分けて加熱工程の後に加圧工程を設けて行うこともできる。マイクロ波加熱を行う場合は、通常、金属オーブンが加熱部となるため、加熱工程の後に加圧工程を設けて行う成形方法が取られることとなる。さらに、カーペット粉砕物(イ)及び/又は(ロ)と、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)と混合した配合物に高周波を照射して加熱すると同時に、高周波を照射するための電極板を加熱できる構造とし、該配合物を加熱した電極板で挿んで加熱、加圧プレスする成形方法も成形効率を向上できるため好ましい。加熱、加圧プレスした成形板は、次いで、冷却プレス又は冷却板に接触させる等の冷却装置により冷却後、所定の大きさに切断して製品として回収される。
【0032】
本発明において、鞘部が200℃以下の融点を持つ芯鞘構造を有する合成繊維(ハ)としては、例えば図2に示すように、繊維本体となる芯部6の周囲に被覆材が被覆され、鞘部7を形成する2層構造の繊維であるのが好ましい。芯部6の素材としては、有機繊維や無機繊維で形成することも可能であるが、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(ナイロン系樹脂)、アクリロニトリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の合成繊維により形成されるものが好ましい。芯部6がポリプロピレン繊維で鞘部7が低融点ポリエチレンである複合繊維(ES繊維)及び芯部6がポリエステル繊維で鞘部7が共重合ポリエステル樹脂で構成されたものは、繊度、繊維長、融点が異なる幾種もの物が市販されている。このため、繊度、繊維長、融点の選択幅が広いため、外観性、均一性が良好な成形吸音材を容易に得ることができるため好ましい。さらに、より低融点で鞘部が溶融する合成繊維(ハ)、及び/又は合成繊維(ニ)を使用することによって、より温和な成形加工条件を選択しても成形吸音材の表面から内部をほぼ均一に溶融することができ、成形吸音材の強度を向上することができるのでより好ましい。
【0033】
例えば、鞘部を形成する被覆材として、芯部の素材より20℃以上低い融点、好ましくは30℃以上150℃以下低い融点を持ち、かつ、200℃以下の融点、好ましくは70℃以上170℃以下の融点を持つ材料で形成されるもの、例えば、ポリエステル系共重合体、ポリアミド共重合体、ポリエチレン系樹脂により構成されるものが挙げられる。これら合成繊維(ハ)の芯部と鞘部の重量比率が、30:70〜60:40のものは接着性が高いため好ましい。
【0034】
また、200℃以下で溶融する合成繊維(ニ)としては、低融点ポリエステル系共重合体繊維、低融点ポリアミド共重合体繊維、ポリエチレン系繊維が汎用的に用いることでき、成形性が良好となるため好ましい。
【0035】
カーペット粉砕物(イ)及び/又は(ロ)に対し、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)の配合量は、5重量%以上40重量%以下の範囲であると、カーペット粉砕物との混合状態が良くなり、成形吸音材の均一性が向上するため好ましい。この範囲の配合量であれば、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)同士の過剰な融着が抑制され、コスト的にも有利な成形吸音材を得ることができる。さらに、表面繊維層と合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)、樹脂裏打ち層と合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)の融着性を向上する点から、5〜30重量%を配合することが好ましい。さらに、成形吸音材内部において、繊維成分が空隙を形成し易くなるように、配合量は5〜25重量%をとすることがより好ましい。前記配合量が40重量%を超えると、タイルカーペット等の表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットの粉砕物と前記合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)の混合物全体に占める繊維成分の含有量が50重量%以上と成るため、成形吸音材の吸音特性や強度の低下をもたらす傾向にある。逆に配合量が5重量%未満では、成形性が著しく低下する、或いは、成形吸音材内部でのカーペットの樹脂成分の融着が進み易く、樹脂成分が圧着して空隙が形成され難くなるため、成形吸音材の吸音特性が低下してしまう可能性がある。
【0036】
本発明で使用するポリエステル系樹脂としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2、6−ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4‘−ジカルボキシジフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオールからなる繊維形成性のポリエステルを挙げることができ、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることが好ましい。
【0037】
次に、成形吸音材の表面構造及び空隙の形成状態について説明する。カーペットの粉砕物は、それぞれ、カーペットの表面繊維層を形成する繊維成分がカーペットの樹脂裏打ち層に植設された状態の粉砕物、繊維成分が樹脂裏打ち層と粉砕により切断された樹脂裏打ち層単独の粉砕物、繊維成分単独の粉砕物からなる。ここで、粉砕物から樹脂裏打ち層単独の粉砕物を分離除去することにより、繊維成分がカーペットの樹脂裏打ち層に植設された状態の粉砕物と前記繊維成分単独の粉砕物を多く含むこととなり、さらに、前記合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)を配合し、該混合物を加熱すると、カーペットの粉砕物の樹脂裏打ち層同士が融着する部分とカーペット粉砕物の樹脂裏打ち層と、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)が融着する部分と、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)自体が融着する部分に加え、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)が樹脂裏打ち層に植設された繊維成分と絡まり合い、空気を巻き込んだ状態で熱溶融し、繊維成分と融着する部分が形成される。この内、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)と粉砕物中の樹脂裏打ち層に植設された表面繊維層1が絡まり合い空気を巻き込んで融着する部分と、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)自体が空気を巻き込んで熱溶融する部分が、空隙と呼ぶ部分を形成することになるが、繊維成分がカーペットの樹脂裏打ち層に植設された状態の粉砕物の含有量がアップすることで空隙形成能が向上し、特に、中高音域の吸音特性が改善されることとなる。
【0038】
一方、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)の代わりに粉体やペレットから成るバインダー樹脂を使用した場合、前記合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)と表面繊維層1とが絡まりあって熱融着する部分が無くなり、空隙を形成する部分に粉体やペレットから成るバインダー樹脂が充填され、堅固な構造となってしまう。そのため、粉体やペレットから成るバインダー樹脂を使用するよりも合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)からなる繊維状の低融点繊維を配合することが好ましい。
【0039】
すなわち、カーペットの表面繊維層1を形成する繊維成分と合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)が空気を抱き込んで融着した部分がカーペットの樹脂裏打ち層同士の融着層の間に点在する成形吸音材とすることで、成形吸音材表面及び内部に空隙を設けることとなるため、吸音性能が良好となり好ましい。また、成形吸音材の表面に、カーペットの樹脂裏打ち層を点在させ、その間を繊維成分が空隙を形成して充填される構造と成る成形吸音材とすることで、成形吸音材の表面での音の反射を低減することができる。さらに、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)として、より低融点の繊維を使用した場合、より低温で該混合物の融着が生じるため、密度の小さい成形吸音材も容易に作ることが可能と成り、成形時間を大幅に短縮することができる。
【0040】
ところで、高周波を該混合物に照射して加熱した場合、樹脂裏打ち層に可塑剤を含むものや表面繊維層の構成繊維がナイロン繊維等のポリアミド系樹脂である場合は、前述したように、混合物内部においても加熱が速やかに行われるため、例えば、厚み3cm程度の厚みの厚い成形吸音材もより均一な状態で成形できる。その点で、タイルカーペットは、表面繊維層がナイロン繊維等のポリアミド系樹脂で構成され、さらに、樹脂裏打ち層が可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂で構成されるものが多いため、高周波を該混合物に照射して加熱する加熱、加圧プレス方法で成形すると成形効率が高くなるためより好ましい。
【0041】
合成繊維(ハ)の鞘部及び合成繊維(ニ)の溶融温度が200℃以上である場合は、カーペットの樹脂裏打ち層の溶融温度以上の温度となり、その結果、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)がカーペットの粉砕物を融着する効果が小さくなり、樹脂裏打ち層成分が強固に熱融着した成形吸音材と成ってしまう。また、カーペットの樹脂裏打ち層が塩化ビニル系樹脂で構成されている場合は、200℃以上に加熱して前記合成繊維を溶融させると、塩化ビニル系樹脂の熱分解が開始するため塩化水素ガスが発生する等の問題が生じる。従って、前記合成繊維(ハ)の鞘部及び前記合成繊維(ニ)の溶融温度は、塩化ビニル系樹脂の溶融温度以下である物が好ましく、さらに、溶融温度が70℃以上170℃以下であると、成形加工性が良好で、均一な成形吸音材が得られるため、その結果、良好な吸音性能が得られることと成るため好ましい。
【0042】
前記合成繊維(ハ)及び合成繊維(ニ)の繊維長は、3mm以上60mm以下が好ましく、単繊維繊度は1.5dtex以上7.8dtex以下であるものが好ましい。この範囲の繊維長と繊度を有する低融点で融着する合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)を使用すると、得られる成形吸音材の吸音性能がさらに良好となる。さらに、繊維長が10mm以上55mm以下の物は、繊維の融着による成形吸音材の内部での空隙形成能が大きくなり、また、繊維とタイルカーペット粉砕物の混合を均一に行い易いため、その結果、均一な成形吸音材と成り易い。
【0043】
一方、カーペットの粉砕物は、汎用の粉砕機、例えば、一軸剪断式粉砕機、衝撃式粉砕機、衝撃式粉砕機の一種であるスイングハンマクラッシャ、ロータリーカッター、ハンマミル等の粉砕機を使用すると、容易に粉砕物を得ることができる。これら粉砕機の中でも、粉砕刃が鈍くなった一軸剪断式粉砕機や衝撃式粉砕機の一種であるスイングハンマクラッシャを用いると、繊維成分が膨らんだ粉砕物と成り易く、前記合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)と絡まりが生じ易いため好ましい。
【0044】
また、カーペットの粉砕物の粒径は、5mm以上30mm以下が好ましい。この大きさの粉砕物とすれば、前記合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)との混合が容易となり均一化し易い。さらに、6mm以上10mm以下に粉砕すると、成形吸音材の表面性が良好と成り、カーペットの粉砕物が点在した表面状態となり易いため好ましい。また、カーペットの粉砕物の粒径は、前記粉砕機に、所定の開口径を有するパンチングメタル又は格子からなるスクリーンを設置して粉砕することにより、所望の粒径の粉砕物を得ることができる。
【0045】
次に、このように粉砕して回収された粉砕物から微粉を除いた粉砕物(ロ)を使用すると、得られる成形吸音材表面への微粉の付着がなくなるとともに、成形された成形吸音材の表面性状がより良好となる。ここで、本発明の微粉とは、粒径が1mm以下のものであり、具体的には、1mm以下の細かい樹脂粒子や繊維粉、カーペットの樹脂裏打ち層に含まれる炭酸カルシウム等の無機充填剤が対象となる。これら総表面積の大きい微粉を粉砕物から除いて、その含有量を5重量%以下とすることにより、前記合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)のバインダーとしての融着効率が向上することとなり、吸音板表面に存在する樹脂裏打ち層を主とする粉砕物(イ)の該吸音板表面からの脱落も防止され易くなる。また、粉砕物から前記炭酸カルシウム等の無機充填材を分離除去することにより、得られる成形吸音材表面の親水性を抑えることができる。粉砕物から前記微粉を除く場合は、例えば、目開きが2mm以下の篩を設置した振動篩を用いて粉砕物を処理することで容易に回収することができ、粒径が1mm以下の微粉の含有量が5重量%以下となるような目開きの篩を選定して、篩分離することにより容易に調整される。この際に、前記理由から粉砕物から1mm以下の微粉を完全に分離除去した粉砕物(ロ)を使用することが好ましいが、篩での分離では0.5重量%程度の微粉が含まれるものと成る。
【0046】
一方、粉砕物(ロ)から、さらに、1mmより大きくて3mm以下の樹脂裏打ち層を主成分とする粉砕物を分離除去して回収した粉砕物(イ)は、この操作により樹脂裏打ち層単独の粉砕物が分離され、粉砕物より樹脂裏打ち層の含有量が少ない粉砕物となるため、粉砕物(イ)と粉砕物(ロ)を任意の割合で配合して使用すると、同じ容積であっても軽量な配合物を調整し易くなる。その結果、これら配合物に前記合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)を配合して成形した成形吸音材は、粉砕物(ロ)のみで成形した成形吸音材に対して軽量化し易くなる。粉砕物から3mm以下の樹脂裏打ち層を主成分とする粉砕物の含有量を30重量%以下とする場合、粒径が1mm以下の微粉を除く場合と同様に、例えば、目開きが3mmより大きい篩を設置した振動篩を用いて粉砕物又は粉砕物(ロ)を処理すれば、容易に回収することができる。また、前記した微粉の含有量を5重量%以下に篩で分離する際に、これら粉砕物(イ)及び/又は粉砕物(ロ)と前記合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)を配合した後に、篩で処理するようにしても良い。この様にして調整した粉砕物(イ)及び/又は粉砕物(ロ)と合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)を混合すると、樹脂裏打ち層単独の粉砕物の分級が生じ難く、より均一な配合物とすることができるため好ましい。
【0047】
表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットの廃材又は端材を粉砕物とした後に、粒径が1mm以下の微粉、或いは、粒径が3mm以下の樹脂裏打ち層を分離、除去する方法として、例えば、円型振動篩、共振式振動篩、振動モーター式振動篩、電磁式振動篩、ジャイロシフター等の面内運動式振動篩等の振動篩を用いることができるが、中でも、振動モーター式振動篩を使用することが、作業性、分離性の点から好ましい。
【0048】
一方、このようにして分離した微粉や樹脂裏打ち層を主成分とする粉砕物は、更に、粉砕して篩分離する、或いは、粉砕後に風力分離して粉砕物中に含まれる繊維成分を分離除去することにより、良質な塩化ビニル系樹脂材料として再生利用することができ、その方法として、例えば、特許文献1で示される分離方法を用いることもできる。また、この様にして分離、回収した繊維成分も前記粉砕物(イ)及び/又は粉砕物(ロ)と前記合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)に配合して有効利用することが可能である。
【0049】
尚、カーペットを粉砕後風力分離して回収した繊維成分、バージンのポリエステル系繊維やポリアミド繊維、フェルトや服地を反毛化して回収した反毛繊維を適宜配合しても、得られる成形吸音材を軽量化することが可能であるが、樹脂裏打ち層成分と繊維成分が均一と成り難いため、これらの繊維を添加する場合、繊維の絡み合いを解して混合するため、予め、開繊機等で開繊した物を混合する手立てが必要となる。これに対して、篩分離した粉砕物(イ)及び粉砕物(ロ)は、粒径が揃っていると共に混合時に支障を来す長繊維が含まれていないため、前記合成繊維(ハ)又は合成繊維(ニ)と均一に混合し易く、成形吸音材を成形する際に、粉砕物(イ)の配合量を増して繊維含有量を増やす方法は、均一な混合がより容易に行えるため好ましい。
【0050】
また、成形吸音材を成形する際に、その少なくとも片面に厚みが10μm以上1mm以下の、ポリエステル製不織布又は熱可塑性樹脂フィルムを積層して、加熱、加圧プレスして一体成形すると、得られる成形吸音材の表面性がより改良されるとともに、意匠性も付与できるため好ましい。また、ポリエステル製不織布や熱可塑性樹脂フィルムを袋状にして、成形吸音材を挿入して使用することも可能である。成形吸音材に積層するポリエステル製不織布としては、ニードルパンチフェルト、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、ケミカルボンド不織布が挙げられるが、例えば、目付けが5g/m以上50g/m以下のスパンレース不織布を用いると、吸音特性が低下すること無く、表面性の良好な成形吸音材を得ることができる。更に、プリントされたポリエステル製不織布や熱可塑性樹脂フィルムを用いることで意匠性の付与や色を調整することも可能である。一方、成形吸音材に熱可塑性樹脂フィルムを積層する場合、熱可塑性樹脂フィルムの素材として、例えば、ポリフッ化ビニルやポリフッ化エチレンなどのフッ素樹脂系フィルム、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂の熱可塑性樹脂フィルムが挙げられるが、中でも、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂を使用すると高周波又はマイクロ波加熱時に分解や劣化が生じることなく、得られる成形吸音材の成形性が良く好ましい。これらポリエステル製不織布や熱可塑性樹脂フィルムは、成形吸音材の高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により加熱、加圧プレスして成形する時に、粉砕物(イ)及び/又は粉砕物(ロ)と、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)からなる配合物の少なくとも片面に置いて成形することにより、一体成形された積層体を得ることができ、該ポリエステル製不織布や熱可塑性樹脂フィルムが積層された側を前面側とし、吸音材として使用するものである。
【0051】
また、成形吸音材の少なくとも片面に、ポリエステル製不織布又は熱可塑性樹脂フィルムを積層する場合に、市販の接着剤を使用して積層しても良いが、溶剤系接着剤やエマルジョン系接着剤からなる液状の接着剤を使用する場合は、成形吸音材の成形後に接着剤を塗布して接着積層する必要が生じる。そのため、接着剤としてフィルム状のホットメルト接着剤を、粉砕物(イ)及び/又は粉砕物(ロ)と、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)からなる配合物と該ポリエステル製不織布又は熱可塑性樹脂フィルムの層間に挿入し、引き続き、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により加熱、加圧プレスし、一体成形して成形吸音材とすることがより好ましい。
【0052】
カーペットの粉砕物(イ)及び/又は粉砕物(ロ)と合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)の混合は、後述する混合機を使用して混合すると、容易に均一な混合物を得ることができる。通常、カーペットの粉砕物は色が付いており、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)は白色等カーペットと色が異なる場合が多いため、配合物の色が均一に成るまで混合して取出せば良い。また、カーペットの粉砕物と合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)を混合する場合、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)の綿を、例えば、開繊機等で解して混合すると、より均一な配合物となり易く好ましい。
【0053】
ところで、本発明は、カーペット廃材を利用し、加熱、加圧プレスして吸音材を成形する、中でも、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱による誘電加熱による加熱方法を用いて吸音材とすることを特徴とするものである。誘電加熱を用いた場合、加熱時間が大幅に短縮され、その結果、加熱装置への材料の装填、加熱加圧プレス、冷却、成形吸音材の取出しからなる成形サイクルが大幅に短縮できる。さらに、誘電加熱装置を使用して加熱すると、成形吸音材の内部での発熱による加熱が促進されるため、成形吸音材の表面と成形吸音材の内部の均一性が高く、厚みの厚い成形吸音材が容易に得られることとなる。
【0054】
誘電加熱により加熱する場合、高周波又はマイクロ波を照射した時に成形吸音材の内部で発熱を生じる添加剤を添加することが好ましい。これら添加剤としては、分子内に極性基を有する化合物が挙げられる。この添加剤を添加、又は、配合することにより、誘電体として作用し、成形吸音材の内部まで均一に加熱することができる。このような添加剤として、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール等の芳香族アルコール、酢酸エステル等の脂肪族エステル化合物、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ−イソノニルフタレート、トリメリット酸エステル等の可塑剤として使用される芳香族エステル化合物、塩素を含む塩化ビニル系樹脂又は塩素化オレフィン、分子内にアミド結合を有するナイロン6、ナイロン66及びそれらの共重合体、分子内にウレタン結合を有するポリウレタン化合物、分子内にニトリル基を有するポリアクリロニトリル及びポリアクリロニトリル共重合体、活性炭等のカーボンが挙げられる。中でも、加熱により有機性ガスが生成しない水、芳香族エステル化合物からなる可塑剤を含有する軟質塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂を配合すると、内部加熱が速やかに生じるため好ましい。
【0055】
次に、高周波誘電加熱の加熱プロセスを図3に示す。加熱電極9の間に誘電体である配合物7をはさみ、高周波発生回路11と負荷整合回路12により高周波電圧をかけると、配合物のいたるところで電気的な平衡状態がひずみ、電荷の分離が生じる。周波数が高くなるに従って、誘電体を構成する各分子は、回転・衝突・振動・摩擦などの激しい運動を起こし、このエネルギーが熱と成り誘電体に内部発熱が生じることとなる。高周波誘電加熱は、周波数1MHzから300MHz(波長300m〜1m)の高周波エネルギーの電界作用によって、配合物に原子や分子レベルでの電位的な運動を起こさせることで物質内部から熱を発生させる加熱方式である。現実に使用する周波数としては、4MHz〜80MHzが好ましい。また、囲局部加熱が可能であり、電力半減深度が深いので、配合物が厚くても比較的均一な加熱が可能な点に特徴を有する。
【0056】
また、マイクロ波加熱も誘電加熱の一種であり、周波数300MHz〜300GHz(波長1m〜1mm)のマイクロ波を使用して、高周波誘電加熱と同様に物質内部から加熱する方式である。図4の加熱プロセスに示すように、マイクロ波はマグネトロン13からアイソレーター14で電波の逆行を防止するようにして発生させ、箱体の中に設置した誘電体である配合物16に導波管15を通じてマイクロ波を送り、照射するものである。損失係数の大きい誘電体にマイクロ波を照射すると、マイクロ波はエネルギーを失いながら物質内部を伝播していく。図3及び図4に示すように、このエネルギーは、高周波誘電加熱と同様に誘電体分子の双極子を振動・回転させ、これによって生じる摩擦エネルギーが内部発熱を引き起こすものである。通常使用されるマイクロ波の周波数は2450MHz若しくは915MHzであり、電子レンジ等の家庭用品において、今日では汎用的に使用されている加熱方法である。マイクロ波加熱は、電力半減深度が浅いため配合物が厚かったり、損失係数が高い場合は均一加熱が難しい場合も有るが、形状が複雑であっても均一加熱が比較的容易な点に特徴を有する。
【0057】
すなわち、カーペットの樹脂裏打ち層が可塑剤を含有する塩化ビニル系樹脂で構成されたものや表面繊維層がナイロン繊維で構成されたものは、高周波又はマイクロ波を照射すると、内部発熱による加熱が行われ易いため、表面と内部で均一性が高い成形吸音材となり好ましい。
【0058】
本発明に使用するカーペット樹脂裏打ち層を構成する塩化ビニル系樹脂とは、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルエチレン−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系共重合体を含むものである。また、可塑剤として、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、中でも、ジ−イソノニルフタレート、リン酸エステル系、塩素化パラフィン、トリメリット酸エステル、エポキシ化大豆油などを単独又は混合して含有するものであるが、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)を含むものが最も多く使用されている。また、充填剤として、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸バリュウム、硫酸バリュウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク等の無機充填剤を単独又は混合して含有するが、重質炭酸カルシウムが汎用的に使用される。さらに、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸Ca−Zn、ステアリン酸Ba−Zn、Pb系金属石鹸、有機錫系安定剤の安定剤、カーボンブラック、二酸化チタン等の顔料を含むものである。
【0059】
また、カーペットの粉砕物(イ)及び/又は(ロ)と合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)の混合物に水を添加する、或いは、水を噴霧して均一に混合した後に、高周波を照射すると、内部発熱による加熱がより速やかに生じるため好ましい。水を添加した配合物を加熱すると、水が水蒸気となって空隙を形成する発泡剤としても機能する。また、水を添加することにより、粉砕物と合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)の混合時に、該粉砕物中に含まれる粉塵や埃の飛散を抑制することもできる。一方、水を配合して誘電加熱を行うと、速やかに成形吸音材の内部での発熱が生じるとともに、さらに、誘電体として作用する可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂やポリアミド系樹脂の内部発熱による過昇温を水の蒸発潜熱により防止する作用も期待できるため、成形吸音材の内部における局部的な過昇温やそれに伴う樹脂裏打ち層からなる樹脂成分の熱分解を防止することが可能となる。
【0060】
カーペットの粉砕物(イ)及び/又は粉砕物(ロ)と前記合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)の混合物100重量部に対する水の添加量は、0.5重量部以上30重量部以下であれば、プレス成形時における加熱速度が速くなるため好ましい。さらに、成形性の面から、1重量部以上15重量部以下が好ましい。水を30重量部以上添加すると、カーペットの粉砕物と前記合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)を混合する時にベタベタに成り取り扱い難くなると共に、プレス成形時の加熱において、水蒸気の発生が必要以上に多量と成ってしまう。
【0061】
さらに、水を含有する合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)を使用すると、水を添加する工程を省くことができ、同時に、カーペット粉砕物と合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)の混合物への水の分散性が向上するため、該混合物の混合状態も良好とすることができるため好ましい。カーペット粉砕物(イ)及び/又は粉砕物(ロ)と合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)の混合物を誘電加熱により加熱、加圧してプレス成形すると、加熱板に挿んで加熱、加圧してプレス成形する場合よりも、成形吸音材の内部に存在するカーペットの樹脂裏打ち層の融着が進むため、同じ密度と厚みを有する成形吸音材で比較した場合、より吸音性の良好な成形吸音材を得ることが可能となる。
【0062】
カーペットの粉砕物(イ)及び/又は粉砕物(ロ)と合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)の混合は、加圧ニーダー、リボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェル型ミキサー、横型ブレンダーであるプロシェアミキサー等からなる高速ブレンダーを用いることにより、容易に行うことができる。これらブレンダーの中でも、ブレンダー容器内部で繊維が引っかかり、巻き付きが生じ難い構造のブレンダーを使用することが好ましい。例えば、リボンブレンダーを使用して該混合を行う場合、剪断力をかけずに混合し、さらに、配合物を送風機等で吸引してサイクロンセパレーターにて回収することにより、合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)は十分に開繊されるとともに、これら合成繊維に(イ)及び/又は(ロ)が均一に分散することとなる。その結果、成形吸音材の内部に空隙を容易に確保することとなり、該混合物を木製の型枠にセットして高周波を照射して加熱、加圧成形すると、良好な吸音性を有する成形吸音材を効率良く得ることができる。
【0063】
ところで、本発明の成形吸音材を吸音材用途で使用する場合、該成形吸音材の密度は、成形性の点から0.1g/cm以上1.0g/cm以下が好ましく、さらには、成形吸音材の中高音域、1000〜6300Hzにおける吸音特性の点から0.2g/cm以上0.6g/cm以下が好ましい。また、厚みは成形性、成形吸音材の中高音域、1000〜6300Hzにおける吸音特性の点から10mm以上100mm以下の範囲である。さらに、車両通行帯側部に設置する場合、設置場所のスペースを少なくする目的から薄い方が望ましく、具体的には、20mm以上60mm以下がより好ましい。 (イ)及び/又は(ロ)に、(ハ)及び/又は(ニ)を配合して成形吸音材を成形することで、成形吸音材の密度を調整することが容易となる。道路周辺の騒音を低減するために使用する道路側壁用吸音材としては、50mm以下、好ましくは30mm以下の厚みの薄いものが望まれている。一方、吸音性能については、一般に、厚みが厚く、嵩高いものの方が吸音性能は良好であり、従来使用されているグラスウール板や有機繊維で構成されるフェルトに対して、より厚みを薄くして良好な吸音特性を発現するように、成形吸音材の表面性、均一性、密度を調整することが好ましい。例えば、グラスウールマットやポリエステル不織布からなる多孔質吸音材において、同じ密度の30mmと50mmの厚さの物の1000〜2000Hzでの吸音性を比較すると、厚みが薄い物の方が吸音性能は低くなる。これら多孔質吸音材は、該吸音材の表面から雨水による水がかかると吸音材表面からの吸水が生じ、該吸音材表面に水膜が生じたり、吸音性能を発揮する多孔質吸音材内部に連通した空隙を水が埋め、空隙内への音波の入射が妨げられるとともに、ファイバーや吸音材空隙内における壁面での粘性摩擦等による音のエネルギーが材料内への吸収を防止することとなる。図5に示すのは、厚み30mmのグラスウールマットと成形吸音材を水に浸漬した時の吸水性を示したグラフである。また、図6に示すのは、厚み30mmのグラスウールマットと成形吸音材を水に浸漬後の吸音性の変化を比較したものであり、グラスウールマットは該表面から吸水すると、特に、1000〜6300Hzの周波数領域における吸音性が著しく低下することが判る。
【0064】
一方、本発明の成形吸音材は、加熱成形時に成形体表面に薄い表面スキン層が形成されるものであるため、成形吸音材の表面に雨水がかかっても該成形吸音材の表面を流れ落ちて成形吸音材の表面からの吸水が起こり難く、吸水による吸音性の低下が生じ難い点に特徴を有するものである。このため、成形吸音材は、グラスウールマットや合成繊維不織布等の多孔質吸音材に対して吸水し難く、その結果、吸水に伴う吸音性の低下が生じ難くなる。また、成形吸音材に形成される表面スキン層の厚みについては、0.1mm以上1mm以下が好ましく、中でも0.2mm以上0.6mm以下であれば、耐水性と吸音性のバランスが良好であるためより好ましい。
【0065】
また、成形された成形吸音材を所定の大きさに切断後、該切断面を覆うようにアルミ粘着テープ又はシーリング剤で封止して、金属製型枠20に組み込んで使用することにより、屋外設置後の雨水等による該切断面からの成形吸音材内部への水の浸透を抑制でき、吸水による成形吸音材の破損や崩壊が防止されて吸音性能の低下を抑止することもできる。
【0066】
図7、図8、図9に示すのは、成形吸音材8の表面(図7(A)、図8(A)、図9(A))と断面(図7(B)、図8(B)、図9(B))をデジタルカメラにより接写し、約5倍に拡大した写真の一例である。図7(A)、図8(A)に示す成形吸音材8の表面写真から、該成形吸音材8の表面には微粉がほとんど存在しておらず、かつ、カーペット粉砕物が合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)に良好に分散しているのに対して、図8(A)には多くの微粉が表面に付着していることが観察される。また、図7(B)、図8(B)の成形吸音材8の断面写真から、蜂の巣状に形成された合成繊維(ハ)及び/又は合成繊維(ニ)の連続層の中に、カーペット粉砕物が取り囲まれて存在する様子は、図9(B)と異なる状態であり、カーペット粉砕物が均一に分散した状態で構成されていることが判る。
【0067】
道路側壁に設置して使用される吸音材については、自動車のエンジン音に由来する騒音や自動車走行時に発生する騒音を防止するため、特に、1000Hz〜4000Hzの中音域〜高音域の吸音性能が要求されている。成形して得られた成形吸音材8は、例えば、後述する吸音パネル21を形成し、高速道路等の遮音壁に使用されている統一板の内部に挿入して設置し、使用することも可能であるが、ここでは、車両通行体17側部に設置された側壁23やコンクリート擁壁24等の構造物に設置するための施工例について説明する。
【0068】
図10及び図11に示すのは、成形吸音材8の表面側に通気性を有するメッシュ金網、格子状金網、エキスパンドメタルまたはパンチングメタルをからなる金属18で吸音材表面を覆うとともに、吸音材側部にボルトで固定するための貫通口19が設けられた金属製型枠20A、20Bを固定して作成した吸音パネル21と、該吸音パネル21をホールインアンカー等の固定具22を用いて車両通行体側部に設置された側壁23やコンクリート擁壁24に直接貼り付けて設置する1例である。なお、該通気性を有する金属18と金属製型枠20A、20Bは、組み立て式でも一体型でも成形吸音材8をその内部に挿入して固定可能な構造とすれば良く、その材質はアルミニウム、ステンレス、表面を塗装した鉄、亜鉛鋼板等を用いることができ、吸音パネル21とすることで成形吸音材8を容易に設置可能となる。ここで、成形吸音材8の表面側に通気性を有するメッシュ金網、格子状金網、エキスパンドメタルまたはパンチングメタルをからなる金属18の目開きは、カーペットの粉砕物(イ)及び/又は粉砕物(ロ)の粒径以下とすることが好ましい。このような目開きの金属18を使用することで、雨水等の風雨により成形吸音板8から粉砕物(イ)及び/又は粉砕物(ロ)が脱落することを防止できる。また、カーペットの粉砕物4から微粉を除去した粉砕物(ロ)を用いることにより、より大きい目開きの金属18を使用できるため好ましい。
【0069】
また、図12、図13に示すように、成形吸音材8を新規に設置する車両通行帯17側部の側壁23やコンクリート擁壁24に設置する場合、側壁23やコンクリート擁壁24の車両通行帯17側前面に前記成形吸音材8または前記吸音パネル21をボルト22で固定して設置する、又は、予め側壁23やコンクリート擁壁24の車両通行帯17側前面に設けられた挿入溝25に挿入後、前記吸音パネル21を固定して設置する、或いは、該側壁23やコンクリート擁壁24の前面に接するように金属製支柱26を設置して前記吸音パネル21を該金属製支柱26に固定して使用することが好ましい。この際に、成形吸音材8をステンレス等のメッシュ金網27で包んだ後、側壁23やコンクリート擁壁の車両通行帯17側表面に設けた挿入溝25に挿入した後にボルトで固定して設置するように構成することが好ましい。
【0070】
車両通行帯17の側部に設置される擁壁としては、盛土にモルタルを施工する方法に加え、大型積みブロック工法、補強土壁工法テールアルメ、ラップブロック工法、箱型擁壁工法からなるコンクリート擁壁が挙げられる。これらのコンクリート擁壁の中で、プレキャストコンクリートブロック28を積み上げて施工される擁壁においては、予め、前記吸音パネル21をコンクリートブロック28の前面にボルト止めできるように、ボルトを埋設し、吸音パネル21を嵌め込めるように構成したものを積み上げて施工する方法を取れば、吸音パネル21の設置が容易に行われるため好ましい。前記コンクリート擁壁24の一種である箱型擁壁工法は、プレキャストコンクリートを積み上げて、その内部に約40mmの砕石等からなる中詰材を充填して設置され、耐震性に優れるという特徴を有するものである。この様なコンクリートブロック28を積み上げて施工される箱型擁壁工法においては、プレキャストコンクリートの車両通行帯側表面に、前記吸音パネル21をボルトで固定して嵌め込む構造を有するものとして施工することができるため好ましい。
【0071】
また、本発明の成形吸音材を車両通行帯の側部に設置されたコンクリート製側壁又はコンクリート擁壁、或いは前記コンクリート製側壁又はコンクリート擁壁の金属製支柱に設置するため、成形吸音材の表面側に、通気性を有するメッシュ金網、格子状金網又はパンチングメタルを積層するように構成した金属製型枠に該成形吸音材を挿入して吸音パネルとした後に、コンクリート製側壁又はコンクリート擁壁、或いは、コンクリート製側壁又はコンクリート擁壁の車両通行体側前面に設けられた金属製支柱の何れかにボルトで固定して設置することにより容易に施工することができる。
【0072】
更に、前記成形吸音材の表面側に通気性を有するメッシュ金網、格子状金網又はパンチングメタルが積層するように構成した金属製型枠に該成形吸音材を挿入する、又は、前記成形吸音材を通気性を有するメッシュ金網で包んだ吸音パネルを、車両通行帯の側部に設置されたコンクリート製側壁の車両通行体側前面、コンクリート擁壁の車両通行帯側前面又はコンクリート擁壁の車両通行体側前面に設置された金属製支柱の何れかに設けた側溝に差し込んだ後にボルトで固定して設置することによればより効率的に施工できる。
【実施例】
【0073】
以下に実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0074】
(誘電加熱による配合物のプレス成形)
(実施例1)
表面繊維層がナイロン66で構成された使用済みタイルカーペットを8mmφのパンチングメタルを設置した三力製作所製一軸剪断式粉砕機FS−1にて粉砕し、8mm粉砕品を定量的に回収した。次に、該粉砕物を2mmの目開きの振動篩にて振るい、篩上成分を88%の収率で回収した。(この粉砕物を3mmの篩で処理すると篩下に8.2%の粉砕物が回収された。)この粉砕物80重量部に芯鞘型低融点繊維、テイジンテトロン(TBSバインダー繊維:4.4dtex、51mm)20重量部を加圧ニーダ−に投入し、2分間攪拌して混合して配合物とした後に、水3重量部を添加した。得られた配合物を木枠に投入してマット状とした後に木枠を取り除き、厚みが30mmに成るようにスペーサーを入れて金型に載せ、プレス板を150℃に設定した山本ビニター製20トン高周波誘電加熱プレス装置にて、1.5分間高周波を照射して加熱、8MPaの圧力で加圧後、1分間保持し、プレス成形した。成形後、成形吸音材を取出し、冷却金型に挿んで冷却した。
【0075】
(実施例2)
実施例1と同様にして、使用済みタイルカーペット8mm粉砕品を目開き2mmの篩で処理したもの52重量部と、使用済みタイルカーペット8mm粉砕品を5mmの目開きの振動篩にて分離した篩上の粉砕物を51%の収率で回収した。該粉砕物33重量部と、開繊機にて解した芯鞘型低融点繊維、テイジンテトロン(TBSバインダー繊維:4.4dtex、51mm)15重量部をリボンブレンダーに投入し、3分間攪拌して混合し、配合物を得た。該配合物100重量部に水3部を添加して良く混合し、木枠に投入してマット状とした後に木枠を取り除き、厚みが30mmに成るようにスペーサーを入れて金型に載せ、プレス板を170℃に設定した山本ビニター製20トン高周波誘電加熱プレス装置にて、1.5分間高周波を照射して加熱、8MPaの圧力で加圧後、1分間保持し、プレス成形した。成形後、成形吸音材を取出し、冷却金型に挿んで冷却した。
【0076】
(実施例3)
表面繊維層がナイロン66で構成された使用済みタイルカーペットを8mmφのパンチングメタルを設置した尾上機械製衝撃式粉砕機バルツ15型にて粉砕し、8mm粉砕品を定量的に回収した。使用済みタイルカーペット8mm粉砕品を目開き1.5mmの篩で処理し、篩上成分を89%の収率で回収したもの(この粉砕物を3mmの篩で処理すると篩下に9.9%の粉砕物が回収された。)30重量部と、使用済みタイルカーペット8mm粉砕品を4mmの目開きの振動篩にて分離した篩上の粉砕物を68%の回収率で回収したもの55重量部と、芯鞘型低融点繊維、クラレ製ソフィット(2.2dtex、25mm)15重量部をリボンブレンダーに投入し、3分間攪拌して混合後、昭和電気製集塵機CF0−2200を用いて配合物を回収した。該配合物100重量部に水5部を添加して良く混合し、木枠に投入してマット状とした後に木枠を取り除き、厚みが30mmに成るようにスペーサーを入れて金型に載せ、プレス板を170℃に設定した山本ビニター製20トン高周波誘電加熱プレス装置にて、1.5分間高周波を照射して加熱、8MPaの圧力で加圧後、1分間保圧し、プレス成形した。成形後、成形吸音材を取出し、冷却金型に挿んで冷却した。
【0077】
(実施例4)
実施例1と同様にして、使用済みタイルカーペット8mm粉砕品を目開き0.5mmの篩で処理し、篩上成分を94%の収率で回収したもの(この粉砕物を1mmの篩で処理すると篩下に0.96%の粉砕物が回収された。)85重量部と、芯鞘型低融点繊維、テイジンテトロン(TBSバインダー繊維:4.4dtex、51mm)15重量部をリボンブレンダーに投入し、3分間攪拌して混合後、昭和電気製集塵機CF0−2200を用いて配合物を回収した。該配合物100重量部に水5部を添加して良く混合した。金型の上にポリエステル製不織布(目付け20g/m、厚み0.2mm)と厚さ30μmの酸変性ポリオレフィン系のホットメルト接着剤(ヒロダイン#7586、ヒロダイン製)を敷き、得られた配合物を木枠に投入してマット状として積層した後に木枠を取り除き、厚みが30mmに成るようにスペーサーを入れ、プレス板を170℃に設定した山本ビニター製20トン高周波誘電加熱プレス装置にて、1.5分間高周波を照射して加熱、8MPaの圧力で加圧後、1分間保圧し、プレス成形した。成形後、成形吸音材を取出し、冷却金型に挿んで冷却した。
【0078】
(実施例5)
実施例1と同様にして、使用済みタイルカーペット8mm粉砕品を目開き2mmの篩で処理したもの85重量部と、芯鞘型低融点繊維、テイジンテトロン(TBSバインダー繊維:4.4dtex、51mm)15重量部をリボンブレンダーに投入し、3分間攪拌して混合後、昭和電気製集塵機CF0−2200を用いて配合物を回収した。該配合物100重量部に水5部を添加して良く混合した後に、アクリル樹脂フィルム(株式会社カネカ製サンデュレンフィルム、厚み30μm)の上に、得られた配合物を木枠に投入してマット状として積層した後に木枠を取り除き、厚みが30mmに成るようにスペーサーを入れて金型に載せ、プレス板を170℃に設定した山本ビニター製20トン高周波誘電加熱プレス装置にて、1.5分間高周波を照射して加熱、8MPaの圧力で加圧後、1分間保圧し、プレス成形した。成形後、成形吸音材を取出し、冷却金型に挿んで冷却した。
【0079】
(比較例1)
実施例1と同様の使用済みタイルカーペットを8mmφのパンチングメタルを設置した三力製作所製一軸剪断式粉砕機FS−1にて粉砕し、8mm粉砕品を定量的に回収した。次に、該粉砕物80重量部と芯鞘型低融点繊維、テイジンファイバー製テピルス(1.7dtex、5mm、水分15%含有)23.5重量部を加圧ニーダーで5分間攪拌して混合し、配合物を得た。該配合物を厚みが30mmに成るようにスペーサーを入れて金型に載せ、プレス板を150℃に設定した山本ビニター製200トン高周波誘電加熱プレス装置にて、2.5分間高周波を照射して加熱、8MPaの圧力で加圧後、1分間保圧し、プレス成形した。成形後、成形体を取出し、冷却金型に挟んで冷却した。
【0080】
(比較例2)
表面繊維層がナイロン66で構成された使用済みタイルカーペットを8mmφのパンチングメタルを設置した三力製作所製一軸剪断式粉砕機FS−1にて粉砕し、8mm粉砕品を定量的に回収した。篩を用いた分離操作を行うことなく、厚みが30mmに成るようにスペーサーを入れて金型に載せ、プレス板を170℃に設定した山本ビニター製20トン高周波誘電加熱プレス装置にて、1.5分間高周波を照射して加熱、8MPaの圧力で加圧後、1分間保持し、プレス成形した。成形後、冷却金型に挿んで冷却した。該成形体を冷却プレス装置から取出すと端部から粉砕物がバラバラと崩れ落ち、良好な成形体が得られなかった。
【0081】
(比較例3)
実施例1と同様にして調整した使用済みタイルカーペット8mm粉砕品を篩を用いた分離操作を行うことなく、定量的に回収した。該粉砕品80重量部と芯鞘型低融点繊維、テイジンテトロン(TBSバインダー繊維:4.4dtex、51mm)20重量部を加圧ニーダ−に投入し、2分間攪拌して混合して配合物とした後に、水3重量部を添加した。得られた配合物をフェロ板の上に載せた木枠に投入してマット状とした後に木枠を取り除き、厚みが20mmに成るようにスペーサーを入れ、プレス板を170℃に設定した50トンプレス装置にて25分間加熱、プレス成形した。成形後、成形吸音材を取出し、冷却金型に挿んで冷却した。
【0082】
(比較例4)
実施例1と同様にして調整した使用済みタイルカーペット8mm粉砕品を、2mmの目開きの振動篩にて振るい、篩下に2mm以下の微粉を12重量%の収率で回収した。この微粉80重量部と芯鞘型低融点繊維、テイジンテトロン(TBSバインダー繊維:4.4dtex、51mm)20重量部をリボンブレンダーで3分間攪拌して混合し配合物とした後に、水3重量部を添加した。得られた該配合物を厚み30mmになるようにスペーサーを入れて金型に載せ、プレス板を170℃に設定した山本ビニター製20トン高周波誘電加熱プレス装置にて、1.5分間高周波を照射して加熱、8MPaの圧力で加圧後、1分間保持し、プレス成形した。成形後、冷却金型に挿んで冷却した。加熱、加圧成形後、冷却プレスに挿んで冷却し、成形体を取出した。得られた成形体から吸音性測定用サンプル(直径29mm、厚み30mm)を打ち抜いたところ、12.3重量%の細かい微粉が崩れ落ち、均一なサンプルが取れなかった。
【0083】
得られた成形吸音材は、所定の大きさに打ち抜き、垂直入射吸音性を測定した。その結果を成形吸音材の密度と厚み、表面性の結果とともに表1に示す。
【0084】
(吸音性)
吸音性の測定は、JIS A1405に示される垂直入射吸音率の測定で行い、規定の垂直入射測定器(ブリュル・ケアー社製2マイクロホンインピーダンス測定管4206型)を使用して実施した。吸音率の測定は、500〜6300Hzの音域における1/3オクターブ中心周波数バンドにて測定した。
【0085】
(厚みと密度)
株式会社イイノ製油圧クリッカーで、50mm×50mmの型枠を使用し、成形吸音材をそれぞれ3枚打ち抜いた。各成形吸音材の重量と各辺中央の4個所の厚みを求め、その平均値から厚みと密度を算出して厚みと密度とした。
【0086】
(表面性)
成形吸音材の表面にマスキングテープを貼り付けた後に、テープの上から押圧し、テープを剥がした時のテープ裏面への微粉及びカーペット粉砕品等の付着物の有無を観察した。
【0087】
(吸水性)
得られた成形吸音材を5cm角に切断したサンプルと厚み50mmの株式会社マグ製グラスウールマットBM3250(密度:32Kg/m3)をバーチカルスライサーを用いて5cm角で厚み3cmに切断したものを用意し、その切断面にアルミ粘着テープを貼り付けたものと貼り付けていないものの初期重量を測定した。次に、これらのサンプルを、水に10分、30分、1時間、2.5時間、18時間浸漬後、水から取り出してサンプル表面に付着した水分を拭き取り、その重量変化から吸水量を測定した。その結果を図5に示す。
【0088】
(水への浸漬後の吸音性)
実施例2の成形吸音材8と厚み50mmの株式会社マグ製グラスウールマットBM3250(密度:32Kg/m3)をバーチカルスライサーを用いて厚み3cmに切断したものから直径29mmの円柱形のサンプルを打ち抜き、水に30分、1時間浸漬後の吸音性と水に浸漬していないサンプルの吸音性と比較した。その結果を、図6に示す。
【0089】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明で用いるタイルカーペットの構成を示す概略拡大模式図及び粉砕物の参考図。
【図2】本発明で用いる芯鞘型合成繊維の拡大した一部切欠斜示模式図である。
【図3】高周波誘電加熱装置のプロセスを模式的に示す概略説明図。
【図4】マイクロ波加熱装置のプロセスを模式的に示す概略説明図。
【図5】厚さ3cm、5cm角に切断したサンプルを水に浸漬した際の吸水量を示すグラフである。
【図6】直径29mm、厚さ3cmに打ち抜いたサンプルを水に浸漬後の吸音性を示すグラフである。
【図7】実施例1における成形吸音材8の表面写真(A)と断面写真(B) である。
【図8】実施例2における成形吸音材8の表面写真(A)と断面写真(B) である。
【図9】比較例1における成形吸音材8の表面写真(A)と断面写真(B)である。
【図10】吸音パネルの1例を示す正面図と側面図であり、吸音パネルの側部にボルト締結用の貫通口を設けたものである。
【図11】吸音パネルの1例を示す正面図と側面図であり、吸音パネル4方向の端部にボルト締結用の貫通口を設けたものである。
【図12】車両通行帯側部に設置された側壁に吸音パネルを設置する施工方法の一例を示す説明図である。
【図13】コンクリートブロックの前面に吸音パネルを挿入して施工する方法の1例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0091】
1 表面繊維層
2 樹脂裏打ち層
3 表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペット
4 カーペットの粉砕物
5 芯鞘型合成繊維(ハ)
6 芯部
7 鞘部
8 成形吸音材
9 加熱電極
10 配合物(誘電体)
11 高周波発生回路
12 負荷整合回路
13 マグネトロン(マイクロ波発生装置)
14 アイソレーター(電波の逆行を防止する。)
15 導波管(電波を送る管)
16 配合物(誘電体)
17 車両通行帯
18 通気性を有する金属
19 貫通口
20、20A、20B 金属製型枠
21 吸音パネル
22 固定具
23 側壁
24 コンクリート擁壁
25 挿入溝
26 金属製支柱
27 メッシュ金網
28 コンクリートブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットの粉砕物から、粒径が3mm以下の樹脂裏打ち層を主成分とする粉砕物の含有量が30重量%以下となるように除去した粉砕物(イ)と、粒径が1mm以下の微粉の含有量が5重量%以下となるように除去した粉砕物(ロ)から選択される少なくとも1種を60重量%以上95重量%以下とし、鞘部が200℃以下の融点を持つ芯鞘構造を有する合成繊維(ハ)と、200℃以下で溶融する合成繊維(ニ)から選択される少なくとも1種を5重量%以上40重量%以下とし、合計で100重量%となるように混合した配合物を、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により加熱、加圧プレスしてなり、密度が0.1g/cm以上1.0g/cm以下の成形吸音材。
【請求項2】
表面繊維層を塩化ビニル系樹脂により裏打ちされたカーペットの粉砕物から、振動篩を用いて分離除去することにより、前記(イ)及び/又は(ロ)を得ることを特徴とする請求項1記載の成形吸音材。
【請求項3】
合成繊維(ハ)が、芯部と鞘部の融点差が20℃以上であり、芯部がポリエステル系樹脂又はポリプロピレン系樹脂で構成された繊維である請求項1又は2記載の成形吸音材。
【請求項4】
合成繊維(ニ)が、低融点ポリエステル系共重合体繊維、低融点ポリアミド共重合体繊維、ポリエチレン系繊維から選択される1種以上の合成繊維である請求項1〜請求項3の何れか1項記載の成形吸音材。
【請求項5】
前記(イ)及び/又は(ロ)と、前記合成繊維(ハ)及び/又は前記合成繊維(ニ)の混合物100重量部に対して、0.5重量部以上30重量部以下の水を添加して混合した配合物を、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により加熱、加圧成形する請求項1〜請求項4の何れか1項記載の成形吸音材。
【請求項6】
5mm以上30mm以下の開口径を有するパンチングメタル又は格子から成るスクリーンを設置した剪断式粉砕機又は衝撃式粉砕機を用いて調整することにより(イ)及び/又は(ロ)を得るものである請求項1又は2記載の成形吸音材。
【請求項7】
前記成形吸音材を成形する際に、その少なくとも片面に厚みが10μm以上1mm以下の、ポリエステル製不織布又は熱可塑性樹脂フィルムを積層し、高周波誘電加熱又はマイクロ波加熱により加熱、加圧プレスして一体成形してなる請求項1〜6の何れか1項記載の成形吸音材。
【請求項8】
JIS A1405に準じて測定した1000Hz〜6300Hzでの垂直入射吸音率が、70%以上であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項記載の成形吸音材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−250194(P2008−250194A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94216(P2007−94216)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】