成膜装置及びメンテナンス方法
【課題】シリコン膜を成膜する際に生じるポリシランを含む副生成物を、非成膜時に迅速かつ簡便に処理することが可能な成膜装置を提供すること。
【解決手段】本発明の成膜装置は、CVD法を用いて、真空中で基板Wにシリコン膜を成膜する成膜室11と、前記成膜室内にオゾン含有ガスを導入可能な第一オゾン含有ガス供給手段180と、を少なくとも備え、シリコン膜の成膜を終了した状態にある前記成膜室内に前記オゾン含有ガスを導入することにより、前記シリコン膜の成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化させること、を特徴とする。
【解決手段】本発明の成膜装置は、CVD法を用いて、真空中で基板Wにシリコン膜を成膜する成膜室11と、前記成膜室内にオゾン含有ガスを導入可能な第一オゾン含有ガス供給手段180と、を少なくとも備え、シリコン膜の成膜を終了した状態にある前記成膜室内に前記オゾン含有ガスを導入することにより、前記シリコン膜の成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化させること、を特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及びメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の太陽電池は単結晶シリコン(Si)型および多結晶シリコン型で大半を占めているが、Siの材料不足などが懸念されており、近年では、製造コストが低く、材料不足のリスクが小さい薄膜Si層が形成された薄膜太陽電池の需要が高まっている。さらに、従来型のa−Si(アモルファスシリコン)層のみの薄膜太陽電池に加え、最近ではa−Si層とμc−Si(微結晶シリコン)層を積層することにより変換効率の向上を図るタンデム型薄膜太陽電池の要求が高まっている。
【0003】
この薄膜太陽電池の薄膜シリコン層(半導体層)の成膜にはプラズマCVD装置を用いることが多く、プラズマCVD装置としては、枚葉式PE−CVD(プラズマCVD)装置、インライン型PE−CVD装置、バッチ式PE−CVD装置などが存在する。
【0004】
しかしながら、タンデム型薄膜太陽電池の製造上の問題点は、微結晶シリコン(μc−Si)発電層をCVD法を用いて成膜する際に同時に生成される副生成物である、多量のポリシラン粉の取り扱いにある。
ポリシラン粉は茶褐色粉末であり、可燃性を有するため、その取り扱いには注意を必要とする。また、成膜室内において連続して基板の成膜を行うと、副生成物が成膜室内の各所に付着する。その副生成物がその後の成膜時に基板上に付着したりすると薄膜太陽電池としての変換効率が低下してしまうなどの問題が生じる。
【0005】
従来は、静電気防止、副生成物の飛散防止のため、成膜室のメンテナンス(クリーニング)前に副生成物に水(水蒸気)を吹き付けていた(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この方法では、水(水蒸気)で副生成物がドロドロになり、除去しづらい。また、水を使うために、メンテナンス後のチャンバの立ち上げに時間がかかる、等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−1554号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、シリコン膜を成膜する際に生じるポリシランを含む副生成物を、非成膜時に迅速かつ簡便に処理することが可能な成膜装置を提供することを第一の目的とする。
また、本発明は、シリコン膜を成膜する際に生じるポリシランを含む副生成物を、非成膜時に迅速かつ簡便に処理することが可能なメンテナンス方法を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の成膜装置は、CVD法を用いて、真空中で基板にシリコン膜を成膜する成膜室と、前記成膜室内にオゾン含有ガスを導入可能な第一オゾン含有ガス供給手段と、を少なくとも備え、前記成膜室内に前記オゾン含有ガスを導入することにより、前記シリコン膜の成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化させること、を特徴とする。
本発明の請求項2に記載の成膜装置は、請求項1において、前記基板を、被成膜面が重力方向と略並行を成すように保持可能に構成されたキャリアを、さらに備えていることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の成膜装置は、請求項2において、複数の前記キャリアが並列に配置可能に構成されるとともに、前記成膜室において、前記複数のキャリアに保持された複数の前記基板に同時に成膜を行うこと、を特徴とする。
本発明の請求項4に記載の成膜装置は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記成膜室に第一開閉部を介して固定され、真空排気可能な仕込・取出室と、前記仕込・取出室内にオゾン含有ガスを導入可能な第二オゾン含有ガス供給手段と、をさらに備え、前記仕込・取出室内に前記オゾン含有ガスを導入することにより、該仕込・取出室内に存在する前記副生成物を酸化させること、を特徴とする。
本発明の請求項5に記載の成膜装置は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記成膜室において、酸化した前記副生成物に対して窒素ガスを噴射可能な複数の窒素ガス噴射機構を有する窒素ガス供給管と、該窒素ガス供給管に前記窒素ガスを供給する窒素ガス供給源と、をさらに備え、前記窒素ガス噴射機構には、前記窒素ガスを噴射する噴射口が形成されていること、を特徴とする。
本発明の請求項6に記載の成膜装置は、請求項5において、前記噴射口は、前記窒素ガス供給管に対して回転しながら前記窒素ガスを噴射すること、を特徴とする。
本発明の請求項7に記載の成膜装置は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、前記成膜室において、前記シリコン膜として、薄膜太陽電池の微結晶シリコン膜からなる発電層を成膜することを特徴とする。
本発明の請求項8に記載のメンテナンス方法は、CVD法を用いて、真空の成膜空間において基板にシリコン膜の成膜を終了した後に、前記成膜空間内にオゾン含有ガスを導入して、前記シリコン成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化すること、を特徴とする。
本発明の請求項9に記載のメンテナンス方法は、請求項8において、前記成膜空間が減圧状態において、前記副生成物の酸化を行うことを特徴とする。
本発明の請求項10に記載のメンテナンス方法は、請求項8又は9において、前記成膜空間を大気解放する前に、前記副生成物の酸化を行うことを特徴とする。
本発明の請求項11に記載のメンテナンス方法は、請求項7乃至10のいずれかにおいて、前記成膜空間において連続して前記シリコン膜を成膜する際に、成膜と成膜の間において、前記副生成物の酸化を行うこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の成膜装置では、シリコン膜の成膜を終了した状態にある成膜室内にオゾン含有ガスを導入することにより、シリコン膜の成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化させている。本発明では、ポリシランを含む副生成物をオゾン含有ガスによって酸化させており、従来のように水を使わないので、成膜室の立ち上げを早くすることができる。また、前記副生成物の酸化物は白粉状をなし、可燃性を有しないため、該酸化物を例えばバキュームクリーナーを用いて容易に除去することができる。このように本発明の成膜装置では、シリコン膜の成膜に際して生成する副生成物を、迅速かつ簡便に処理することが可能である。
また、本発明のメンテナンス方法では、シリコン膜の成膜を終了した状態にある成膜空間内にオゾン含有ガスを導入して、シリコン成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化させている。本発明では、ポリシランを含む副生成物をオゾン含有ガスによって酸化させており、従来のように水を使わないので、成膜空間の立ち上げを早くすることができる。また、前記副生成物の酸化物は白粉状をなし、可燃性を有しないため、該酸化物を例えばバキュームクリーナー等を用いて容易に除去することができる。このように本発明のメンテナンス方法では、シリコン膜の成膜に際して生成する副生成物を、迅速かつ簡便に処理することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態における薄膜太陽電池製造装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態における成膜室の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における成膜室の別の角度からの斜視図である。
【図5】本発明の実施形態における成膜室の側面図である。
【図6】本発明の実施形態における成膜室の透視図(斜視図)である。
【図7】本発明の実施形態における成膜室の透視図(側面図)である。
【図8】本発明の実施形態における成膜室の透視図(仕込・取出室側から見た正面図)である。
【図9】本発明の実施形態における窒素ガス噴射機構の斜視図である。
【図10】図9のA−A線に沿う断面図である。
【図11】本発明の実施形態における窒素ガス噴射機構の正面図である。
【図12】本発明の実施形態における電極ユニットの斜視図である。
【図13】本発明の実施形態における電極ユニットの別の角度からの斜視図である。
【図14】本発明の実施形態における電極ユニットの一部分解斜視図である。
【図15】本発明の実施形態における電極ユニットのカソードユニットおよびアノードユニットの部分断面図である。
【図16】本発明の実施形態における仕込・取出室の斜視図である。
【図17】本発明の実施形態における仕込・取出室の別の角度からの斜視図である。
【図18】本発明の実施形態におけるプッシュ−プル機構の概略構成図である。
【図19】本発明の実施形態における基板脱着室の斜視図である。
【図20】本発明の実施形態における基板脱着室の正面図である。
【図21】本発明の実施形態における基板収容カセットの斜視図である。
【図22】本発明の実施形態におけるキャリアの斜視図である。
【図23】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(1)である。
【図24】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(2)である。
【図25】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(3)である。
【図26】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(4)である。
【図27】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(5)である。
【図28】本発明の実施形態におけるプッシュ−プル機構の動きを示す説明図(1)である。
【図29】本発明の実施形態におけるプッシュ−プル機構の動きを示す説明図(2)である。
【図30】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(6)である。
【図31】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(7)である。
【図32】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(8)であり、基板が電極ユニットに挿入されたときの概略断面図である。
【図33】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(9)である。
【図34】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(10)である。
【図35】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(11)であり、基板が電極ユニットにセットされたときの部分断面図である。
【図36】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(12)である。
【図37】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(13)である。
【図38】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(14)である。
【図39】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(15)である。
【図40】大気中に取り出し放置したポリシランのIRスペクトルを示す図である。
【図41】オゾン含有ガスの導入時間と、成膜室内圧力との関係を示す図である。
【図42】ポリシランをオゾン含有ガスで酸化させたシリコン酸化物のIRスペクトルを示す図である。
【図43】本発明の実施形態における薄膜太陽電池製造装置の別の態様を示す概略構成図である。
【図44】本発明の実施形態における薄膜太陽電池製造装置の別の配置方法を示す概略構成図である。
【図45】本発明の実施形態における薄膜太陽電池製造装置のさらに別の配置方法を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の成膜装置及びメンテナンス方法の好適な実施の形態について説明する。
なお、以下の説明では、成膜装置として、CVD法を用いて薄膜太陽電の発電層を成膜する薄膜太陽電池製造装置を例に挙げて説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
まず、本発明の成膜装置を用いて製造される薄膜太陽電池について説明する。
【0012】
(薄膜太陽電池)
図1は薄膜太陽電池の断面図である。図1に示すように、薄膜太陽電池100は、表面を構成する基板Wと、基板W上に設けられた透明導電膜からなる上部電極101と、アモルファスシリコンで構成されたトップセル102と、トップセル102と後述するボトムセル104との間に設けられた透明導電膜からなる中間電極103と、マイクロクリスタルシリコンで構成されたボトムセル104と、透明導電膜からなるバッファ層105と、金属膜からなる裏面電極106とが積層されている。つまり、薄膜太陽電池100は、a−Si/マイクロクリスタルSiタンデム型太陽電池となっている。このようなタンデム構造の薄膜太陽電池100では、短波長光をトップセル102で、長波長光をボトムセル104でそれぞれ吸収することで発電効率の向上を図ることができる。
【0013】
トップセル102のp層(102p)、i層(102i)、n層(102n)の3層構造がアモルファスシリコンで形成されている。また、ボトムセル104のp層(104p)、i層(104i)、n層(104n)の3層構造がマイクロクリスタルシリコンで構成されている。
【0014】
このように構成した薄膜太陽電池100は、太陽光に含まれる光子というエネルギー粒子がi層に当たると光起電力効果により、電子と正孔(hole)が発生し、電子はn層、正孔はp層に向かって移動する。この光起電力効果により発生した電子を上部電極101と裏面電極106により取り出して、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0015】
また、トップセル102とボトムセル104との間に中間電極103を設けることにより、トップセル102を通過してボトムセル104に到達する光の一部が中間電極103で反射して再びトップセル102側に入射するため、セルの感度特性が向上し、発電効率の向上に寄与する。
【0016】
また、ガラス基板W側から入射した太陽光は、各層を通過して裏面電極106で反射さ
れる。薄膜太陽電池100には光エネルギーの変換効率を向上させるために、上部電極1
01に入射した太陽光の光路を伸ばすプリズム効果と光の閉じ込め効果を目的としたテク
スチャ構造を採用している。
【0017】
(薄膜太陽電池製造装置)
図2は薄膜太陽電池製造装置(成膜装置)の概略構成図である。図2に示すように、薄膜太陽電池製造装置10は、複数の基板Wに対して同時にマイクロクリスタルシリコンで構成されたボトムセル104(半導体層)をCVD法を用いて成膜可能な成膜室11と、成膜室11に搬入される成膜処理前基板W1と、成膜室11から搬出された成膜処理後基板W2と、を同時に収容可能な仕込・取出室13と、キャリア21(図19参照)に対して基板W(成膜処理前基板W1および成膜処理後基板W2)を脱着する基板脱着室15と、基板Wをキャリア21から脱着するための基板脱着ロボット(駆動機構)17と、基板Wを別の処理工程との搬送のために収容する基板収容カセット(搬送手段)19と、を備えている。なお、本実施形態では成膜室11、仕込・取出室13および基板脱着室15で構成される基板成膜ライン16が4つ設けられている。また、基板脱着ロボット17は床面に敷設されたレール18上を移動できるようになっており、全ての基板成膜ライン16への基板Wの受け渡しを1台の基板脱着ロボット17でできるようになっている。さらに、成膜室11と仕込・取出室13とで構成されるプロセスモジュール14は一体化されており、トラックに積載可能な大きさで形成されている。
【0018】
図3〜図5は成膜室の概略構成図であり、図3は斜視図、図4は図3とは別の角度からの斜視図、図5は側面図である。図3〜図5に示すように、成膜室11は箱型に形成されている。成膜室11の仕込・取出室13と接続される側面23には、基板Wが搭載されたキャリア21が通過可能なキャリア搬出入口24が3箇所形成されている。また、キャリア搬出入口24にはキャリア搬出入口24を開閉するシャッタ(第一開閉部)25が設けられている。シャッタ25を閉止したときには、キャリア搬出入口24は気密性を確保して閉止される。側面23と対向する側面27には基板Wに成膜を施すための電極ユニット31が3基取り付けられている。電極ユニット31は、成膜室11から着脱可能に構成されている。また、成膜室11の側面下部に形成された貫通孔28には成膜室11内を真空排気するための排気管29が接続されており、排気管29には真空ポンプ30が設けられている。
【0019】
ここで、本実施形態の薄膜太陽電池製造装置10(成膜装置)では、前記成膜室内にオゾン(O3 )含有ガスを導入可能な第一オゾン含有ガス供給手段180を備えている。そして、装置のメンテナンス時において、前記成膜室11内に前記オゾン含有ガスを導入することにより、シリコン膜、特に微結晶シリコン(μc−Si)からなる薄膜(ボトムセル104のp層(104p)、i層(104i)、n層(104n))の成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化させ、シリコン酸化物とする。
【0020】
図5〜図7に示すように、成膜室11には、成膜室11にオゾン含有ガスを導入する第一オゾン含有ガス供給手段180が設けられている。第一オゾン含有ガス供給手段180は、外部に設けられたオゾン含有ガス供給源188と、オゾン含有ガス供給源188と成膜室11との間に配されたオゾン含有ガス導入管189と、を備えている。
成膜室11内に堆積した副生成物の除去などのために定期的にメンテナンスする必要があるが、メンテナンス時において、第一オゾン含有ガス供給手段180によりオゾン含有ガスを成膜室11内に供給することにより、成膜室11内に堆積している副生成物(ポリシラン)をオゾン含有ガスにより酸化することができる。
【0021】
この副生成物であるポリシランは、茶褐色粉末で可燃性を有するため、取り扱いに注意を必要とするが、ポリシランの酸化物であるシリコン酸化物は白色粉末をなし、可燃性を有しないため、例えばバキュームクリーナー等を用いて容易に除去することができる。このように本発明の成膜装置では、シリコン膜の成膜に際して生成する副生成物を、迅速かつ簡便に処理することが可能である。また、従来のように水を使わないので、メンテナンス終了後に成膜室11の立ち上げを早くすることができる。
【0022】
また、図6〜図8に示すように、成膜室11には、成膜室11に窒素ガスを噴射する窒素ガス供給手段150が設けられている。窒素ガス供給手段150は、外部に設けられた窒素ガス供給源158と、窒素ガス供給源158と成膜室11との間に配された窒素ガス導入管159と、窒素ガス導入管159に接続される窒素ガス供給配管151と、を備えている。
【0023】
窒素ガス供給配管151は、成膜室11内に敷設されており、成膜室11内の上方に窒素ガスを噴射するための第1供給配管151aおよび第2供給配管151bと、成膜室11内の下方に窒素ガスを噴射するための第3供給配管151cおよび第4供給配管151dと、を有している。
【0024】
第1供給配管151aは、成膜室11の上面に設けられた接続フランジ152から延設され、成膜室11内の上方において、キャリア21の進行方向に沿って配設されている。
【0025】
第2供給配管151bは、第1供給配管151aと同じく成膜室11の上面に設けられた接続フランジ153から延設され、成膜室11内の上方において、キャリア21の進行方向に沿って配設されている。また、第2供給配管151bは、第1供給配管151aと略同一高さに配されており、電極ユニット31を介して第1供給配管151aと対向する位置に配されている。
【0026】
第3供給配管151cは、成膜室11の上面に設けられた接続フランジ155から電極フランジ31と干渉しない位置を成膜室11の下部へ向かって延設され、成膜室11内の下方において、キャリア21の進行方向に沿って配設されている。
【0027】
第4供給配管151dは、第3供給配管151cと同じく成膜室11の上面に設けられた接続フランジ155から電極フランジ31と干渉しない位置を成膜室11の下部へ向かって延設され、成膜室11内の下方において、キャリア21の進行方向に沿って配設されている。また、第4供給配管151dは、電極ユニット31を介して第3供給配管151cと対向する位置に配されている。
【0028】
第1供給配管151a〜第4供給配管151dには、窒素ガスを所望の方向へ噴射可能な窒素ガス噴射機構170が適宜配設されている。
【0029】
図9は窒素ガス噴射機構170の斜視図であり、図10は図9のA−A線に沿う断面図であり、図11は窒素ガス噴射機構170の正面図である。
図9〜図11に示すように、窒素ガス噴射機構170は、第1供給配管151a〜第4供給配管151dの軸方向に対して略垂直方向に延設された第1配管171と、該第1配管171と軸方向を共通にするとともに第1配管171に対して回転可能に接続された第2配管172と、該第2配管172と軸方向が直交するように接続された第3配管173と、該第3配管173の軸方向両端部に配され噴射口175を有する噴射口部材176と、を備えている。また、二つの噴射口部材176には、噴射口175とは異なる窒素ガス排出孔177がそれぞれ形成されている。なお、第1配管171と第2配管172との間には、ベアリング178が介装されている。
【0030】
ここで、窒素ガス噴射機構170に設けられた二つの噴射口175,175の噴射方向は、異なる方向を向くように配設されている。また、窒素ガス噴射機構170に設けられた二つの窒素ガス排出孔177,177の噴射方向も、異なる方向を向くように配設されている。
【0031】
そして、これら噴射口175および窒素ガス排出孔177は、窒素ガスが噴射されたときに、第1配管171に対して第2配管172がベアリング178を介して回転するように、つまり回転モーメントが生じるように形成されている。
【0032】
このように窒素ガス噴射機構170が構成されることで、窒素ガス供給源158から窒素ガスが供給されると、窒素ガスは噴射口175および窒素ガス排出孔177から噴射される。同時に、窒素ガスは噴射口175および窒素ガス排出孔177からそれぞれ異なる方向に噴射されるため、第2配管172、第3配管173および噴射口部材176が第1配管171に対して回転する。つまり、噴射口175が第1供給配管151a〜第4供給配管151dの軸方向に直交する軸方向を中心に、言い換えれば第1配管171の軸方向を中心に円を描くように回転しながら窒素ガスを噴射するため、窒素ガスを広範囲に亘って噴射することが可能となる。
【0033】
したがって、噴射口175が電極ユニット31や成膜室11の内壁における副生成物(パーティクル)が付着しやすい位置に指向するように窒素ガス噴射機構170を適宜配置することで、効果的にパーティクルを処理することができる。
【0034】
なお、噴射口175の噴射方向が異なっていれば、必ずしも窒素ガス排出孔177を設ける必要はない。逆に、窒素ガス排出孔177が回転モーメントを生じさせる位置に形成されていれば、必ずしも噴射口175の噴射方向を異なる方向に向けなくてもよい。さらに、本実施形態では一つの窒素ガス噴射機構170に噴射口175が2個設けられた場合で説明したが、噴射口175は1個であってもよく、また、3個以上設けてもよい。
【0035】
図12〜図15は電極ユニット31の概略構成図であり、図12は斜視図、図13は図12とは別の角度からの斜視図、図14は電極ユニット31の一部分解斜視図、図15はカソードユニットおよびアノードユニットの部分断面図である。図12〜図15に示すように、電極ユニット31は、成膜室11の側面27に形成された3箇所の開口部26に着脱可能構成されている(図4参照)。電極ユニット31は、下部に車輪61が設けられており床面上を移動可能に構成されている。また、車輪61が取り付けられた底板部62には側板部63が鉛直方向に立設されている。この側板部63は、成膜室11の側面27の開口部26を閉塞する大きさを有している。
【0036】
図14に示すように、車輪61付の底板部62は、電極ユニット31と分離・接続可能な台車構造としてもよい。このように分離可能な台車構造とすることで、電極ユニット31を成膜室11に接続した後は、台車を分離し、共通の台車として、他の電極ユニット31の移動に使用できる。
【0037】
つまり、側板部63が成膜室11の壁面の一部を成している。側板部63の一方の面(成膜室11の内部を向く面)65には、成膜を施す際に基板Wの両面に位置するアノードユニット90とカソードユニット68とが設けられている。本実施形態の電極ユニット31には、カソードユニット68を挟んで両側に離間してアノードユニット90がそれぞれ配置されており、一つの電極ユニット31で2枚の基板Wを同時に成膜できるようになっている。したがって、基板Wは、被成膜面が重力方向と略並行を成すような状態でカソードユニット68の両面側にそれぞれ対向配置され、2つのアノードユニット90は、各基板Wの厚さ方向外側に各基板Wとそれぞれ対向した状態で配置されている。なお、アノードユニット90は、板状のアノード67とアノードユニット90に内蔵されたヒータHとで構成されている。
【0038】
また、側板部63の他方の面69には、アノードユニット90を駆動させるための駆動装置71と、成膜を施す際にカソードユニット68のカソード中間部材76に給電するためのマッチングボックス72と、が取り付けられている。さらに、側板部63には、カソードユニット68に成膜ガスを供給する配管用の接続部(不図示)が形成されている。
【0039】
アノードユニット90には、基板Wの温度を制御する温度制御手段として、ヒータHが内蔵されている。また、2つのアノードユニット90,90は側板部63に設けられた駆動装置71により、互いに近接・離反する方向(水平方向)に移動可能に構成され、基板Wとカソードユニット68との離間距離を制御可能にしている。具体的には、基板Wの成膜を施す際には2つのアノードユニット90,90がカソードユニット68方向に移動して基板Wと当接し、さらに、カソードユニット68に近接する方向に移動して基板Wとカソードユニット68との離隔距離を所望の距離に調節する。その後、成膜を行い、成膜終了後にアノードユニット90,90が互いに離反する方向に移動して、基板Wを電極ユニット31から容易に取り出すことができるように構成されている。
【0040】
さらに、アノードユニット90は、駆動装置71にヒンジ(不図示)を介して取りつけられており、電極ユニット31を成膜室11から引き抜いた状態で、アノードユニット90(アノード67)のカソードユニット68側の面67Aが側板部63の一方の面65と略平行になるまで回動できる(開く)ようになっている。つまり、アノードユニット90は平面視において略90°回動できるようになっている(図11参照)。
【0041】
カソードユニット68は、シャワープレート75(=カソード)、カソード中間部材76、排気ダクト79、浮遊容量体82を有している。
【0042】
カソードユニット68には、アノードユニット90(アノード67)に対向する面にそれぞれ小孔(不図示)が複数形成されたシャワープレート75が配置されており、成膜ガスを基板Wに向かって噴出できるようになっている。さらに、シャワープレート75,75は、マッチングボックス72と接続されたカソード(高周波電極)である。2枚のシャワープレート75,75の間には、マッチングボックス72と接続されたカソード中間部材76が設けられている。すなわち、シャワープレート75は、カソード中間部材76の両側面に、このカソード中間部材76と電気的に接続された状態で配置されている。カソード中間部材76とシャワープレート(カソード)75は導電体で形成され、高周波はカソード中間部材76を介してシャワープレート(カソード)75に印加される。このため、2枚のシャワープレート75,75には、プラズマ発生のための同電位・同位相の電圧が印加される。
【0043】
カソード中間部材76はマッチングボックス72と図示しない配線により接続されている。カソード中間部材76とシャワープレート75との間には空間部77が形成されており、ガス供給装置(不図示)よりこの空間部77に成膜ガスが供給されるようになっている。空間部77は、カソード中間部材76で分離され、それぞれのシャワープレート75,75毎に対応して別々に形成され、各シャワープレート75,75から放出されるガスが独立して制御されるように構成されている。すなわち、空間部77は、ガス供給路の役割を有している。この実施形態にあっては、空間部77がそれぞれのシャワープレート75、75毎に対応して別々に形成されているので、カソードユニット68は、2系統のガス供給路を有していることになる。
【0044】
また、カソードユニット68の周縁部には略全周に亘って中空状の排気ダクト79が設けられている。排気ダクト79には、成膜空間81の成膜ガスや副生成物(パーティクル)を排気するための排気口80が形成されている。具体的には、成膜を施す際の基板Wとシャワープレート75との間に形成される成膜空間81に面して排気口80が形成されている。排気口80はカソードユニット68の周縁部に沿って複数形成されており、全周に亘って略均等に排気できるように構成されている。また、カソードユニット68の下部における排気ダクト79の成膜室11内へ向いた面83には開口部(不図示)が形成されており、排気した成膜ガスなどを成膜室11内へ排出できるようになっている。成膜室11内へ排出されたガスは成膜室11の側面下部に形成された貫通孔28に設けられた排気管29より外部へ排気されるようになっている。また、排気ダクト79とカソード中間部材76との間には、誘電体および/もしくは積層空間を有する浮遊容量体82が設けられている。排気ダクト79は、接地電位に接続されている。排気ダクト79は、カソード75およびカソード中間部材76からの異常放電を防止するためのシールド枠としても機能する。
【0045】
さらに、カソードユニット68の周縁部には、排気ダクト79の外周部からシャワープレート75(=カソード)の外周部に至る部位を覆うようにマスク78が設けられている。このマスク78は、キャリア21に設けられた後述する挟持部59の挟持片59A(図22、図35参照)を被覆するとともに、成膜を施す際に狭持片59Aと一体となって成膜空間81の成膜ガスやパーティクルを排気ダクト79に導くためのガス流路Rを形成している。すなわち、キャリア21(狭持片59A)とシャワープレート75との間、および排気ダクト79との間にガス流路Rが形成されている。
【0046】
このような電極ユニット31を設けることにより、一つの電極ユニット31で、基板Wが挿入されるアノードユニット90とカソードユニット68との隙間が2箇所形成される。したがって、2枚の基板Wを一つの電極ユニット31で同時に成膜することができる。
【0047】
また、アノードユニット90とカソードユニット68との間に基板Wが配され、アノードユニット90(アノード67)は、基板Wと当接するとともに、基板Wとカソードユニット68との離隔距離を調整するために移動可能に構成したため、基板Wに薄膜Si層をプラズマCVD法により成膜する際には、基板Wとカソードユニット68との隙間を5〜15mm程度に設定しなければならないが、アノード67を移動可能にすることで、成膜前後にアノード67とカソードユニット68との離隔距離を調節できる。したがって、基板Wの出し入れを容易にすることができる。また、基板Wを出し入れする際に基板Wがアノード67またはカソードユニット68に接触して損傷するのを防止することができる。さらに、アノード67と基板Wとを当接させることができるため、基板WをヒータHで加熱しながら成膜するが、そのヒータHの熱を効果的に基板Wに伝熱することができる。したがって、高品質な成膜を施すことができる。
【0048】
さらに、電極ユニット31を成膜室11から着脱可能に構成したため、電極ユニット31のカソードユニット68およびアノードユニット90は堆積した副生成物の除去などのために定期的にメンテナンスする必要があるが、容易にメンテナンスを行うことができる。また、予備の電極ユニット31を用意しておけば、成膜室11から電極ユニット31をメンテナンスで取り外しても予備の電極ユニット31を代わりに取り付けることで、製造ラインを停止させずにメンテナンスをすることができる。したがって、生産効率を向上することができる。結果として、低レートの半導体層を基板Wに成膜する際にも、高スループットを実現することができる。
【0049】
図2に戻り、成膜室11と仕込・取出室13との間、および、仕込・取出室13と基板脱着室15との間をキャリア21が移動できるように移動レール37が成膜室11〜基板脱着室15間に敷設されている。なお、移動レール37は成膜室11と仕込・取出室13との間で分離され、キャリア搬出入口24はシャッタ25を閉じることで密閉可能である。
【0050】
図16、図17は仕込・取出室13の概略構成図であり、図16は斜視図、図17は図16とは別の角度からの斜視図である。図16、図17に示すように、仕込・取出室13は、箱型に形成されている。側面33は成膜室11の側面23と気密性を確保して接続されている。側面33には3つのキャリア21が挿通可能な開口部32が形成されている。側面33と対向する側面34は基板脱着室15に接続されている。側面34には基板Wが搭載されたキャリア21が通過可能なキャリア搬出入口35が3箇所形成されている。キャリア搬出入口35には気密性を確保できるシャッタ(第二開閉部)36が設けられている。なお、移動レール37は仕込・取出室13と基板脱着室15との間で分離され、キャリア搬出入口35はシャッタ36を閉じることで密閉可能である。
【0051】
また、仕込・取出室13には、キャリア21を移動レール37に沿って成膜室11と仕込・取出室13との間を移動させるためのプッシュ−プル機構38が設けられている。図18に示すように、このプッシュ−プル機構38は、キャリア21を係止するための係止部48と、係止部48の両端に設けられ、移動レール37と略平行に配されたガイド部材49と、係止部48をガイド部材49に沿って移動させるための移動装置50と、を備えている。
【0052】
さらに、仕込・取出室13内において、成膜処理前基板W1および成膜処理後基板W2を同時に収容させるために、キャリア21を平面視において移動レール37の敷設方向と略直交する方向に所定距離移動させるための移動機構(不図示)が設けられている。そして、仕込・取出室13の側面下部41には仕込・取出室13内を真空排気するための排気管42が接続されており、排気管42には真空ポンプ43が設けられている。
【0053】
さらに、本実施形態の薄膜太陽電池製造装置10(成膜装置)では、図17に示すように、仕込・取出室13には、仕込・取出室13にオゾン含有ガスを噴射する第二オゾン含有ガス供給手段190が設けられている。第二オゾン含有ガス供給手段190は、外部に設けられたオゾン含有ガス供給源198と、オゾン含有ガス198と仕込・取出室13との間に配されたオゾン含有ガス導入管199と、を備えている。
仕込・取出室13における基板Wの仕込・取出時において、基板W、特に成膜処理後基板W2に堆積した副生成物がこぼれ落ち、基仕込・取出室13内に堆積する。
【0054】
成膜室11の場合と同様に、メンテナンス時において、第二オゾン含有ガス供給手段190によりオゾン含有ガスを仕込・取出室13内に供給することにより、仕込・取出室13内に存在している副生成物(ポリシラン)をオゾン含有ガスにより酸化することができる。ポリシランの酸化物であるシリコン酸化物は白色粉末をなし、例えばバキュームクリーナー等を用いて容易に除去することができる。従来のように水を使わないので、メンテナンス終了後に仕込・取出室13の立ち上げを早くすることができる。
【0055】
図19、図20は基板脱着室の概略構成図であり、図19は斜視図、図20は正面図である。図19、図20に示すように、基板脱着室15は、フレーム枠状に形成されており、仕込・取出室13の側面34に接続されている。基板脱着室15では、移動レール37に配されているキャリア21に対して成膜処理前基板W1を取り付けることができ、成膜処理後基板W2をキャリア21から取り外すことができるようになっている。基板脱着室15にはキャリア21が3個並列配置できるように構成されている。
【0056】
基板脱着ロボット17は、駆動アーム45を有しており(図2参照)、駆動アーム45の先端に基板Wを吸着できるようになっている。また、駆動アーム45は基板脱着室15に配されたキャリア21と基板収容カセット19との間を駆動できるようになっており、基板収容カセット19から成膜処理前基板W1を取り出し、基板脱着室15に配されたキャリア(第一キャリア)21に成膜処理前基板W1を取り付ける作業、および成膜処理後基板W2を基板脱着室15に戻ってきたキャリア(第二キャリア)21から取り外し、基板収容カセット19へ搬送することができるようになっている。
【0057】
図21は基板収容カセット19の斜視図である。図21に示すように、基板収容カセット19は、箱型に形成されており、基板Wを複数枚収容可能な大きさを有している。基板Wは被成膜面を水平方向と略並行を成すようにした状態で上下方向に複数枚積層して収容できるようになっている。また、基板収容カセット19の下部にはキャスター47が設けられており、別の処理装置へと移動できるようになっている。なお、基板収容カセット19において、基板Wの被成膜面を重力方向と略並行を成すようにした状態で左右方向に複数枚収容できるようにしてもよい。
【0058】
図22はキャリアの斜視図である。図22に示すように、キャリア21は、基板Wを取り付けることができる額縁状のフレーム51が2個形成されている。つまり、一つのキャリア21に基板Wを2枚取り付けることができるようになっている。2個のフレーム51,51は、その上部において連結部材52により一体化されている。また、連結部材52の上方には移動レール37に載置される車輪53が設けられており、移動レール37上を車輪53が転がることで、キャリア21が移動できるようになっている。また、フレーム51の下部には、キャリア21が移動する際に基板Wの揺れを抑制するためにフレームホルダ54が設けられており、フレームホルダ54の先端は各室の底面上に設けられた断面凹状のレール部材55に嵌合されている。なお、レール部材55は平面視において移動レール37に沿う方向に配されている。フレームホルダ54を複数のローラで構成すれば、より安定した搬送が可能となる。
【0059】
フレーム51はそれぞれ、周縁部57と挟持部59を有している。フレーム51に形成された開口部56に基板Wの被成膜面が露出されるようになっており、開口部56の周縁部57において、挟持部59が基板Wを両側から挟持して固定できるようになっている。そして、基板Wを挟持している挟持部59は、バネなどによる付勢力が働いている。また、挟持部59は基板Wの表面WO(被成膜面)および裏面WU(背面)に当接する狭持片59A,59Bを有しているが(図35参照)、この挟持片59A,59Bの離隔距離はバネなどを介して可変可能、つまり、アノードユニット90(アノード67)の移動に応じて狭持片59Aが狭持片59Bに対して近接・離反する方向に沿って移動可能に構成されている(詳細は後述する)。ここで、このキャリア21は、一つの移動レール37上に1個(1対(2枚)の基板を保持できる1個のキャリア)取り付けられている。つまり、一組の薄膜太陽電池製造装置10には3個(3対6枚基板保持)のキャリア21が取り付けられている。
【0060】
そして、本実施形態の薄膜太陽電池製造装置10では、上述した成膜室11、仕込・取出室13および基板脱着室15とで構成される基板成膜ライン16が4つ配置構成されているため、24枚の基板Wを略同時に成膜することができるようになっている。
【0061】
(薄膜太陽電池の製造方法)
次に、本実施形態の薄膜太陽電池製造装置10を用いて、基板Wに成膜する方法を説明する。なお、この説明においては一つの基板成膜ライン16の図面を用いるが、他の三つの基板成膜ライン16も略同一の流れで基板を成膜する。
図23に示すように、成膜処理前基板W1を複数枚収容した基板収容カセット19を所定の位置に配置する。
【0062】
図24に示すように、基板脱着ロボット17の駆動アーム45を動かして、基板収容カセット19から成膜処理前基板W1を一枚取り出し、成膜処理前基板W1を基板脱着室15に設置されているキャリア21に取り付ける。このとき、基板収容カセット19に水平方向に配置された成膜処理前基板W1を、鉛直方向に向きを変えてキャリア21に取り付ける。この動作をもう一度繰り返し、一つのキャリア21に2枚の成膜処理前基板W1を取り付ける。さらに、この動作を繰り返して、基板脱着室15に設置されている残り二つのキャリア21にも成膜処理前基板W1をそれぞれ取り付ける。つまり、この段階で成膜処理前基板W1を6枚取り付ける。
【0063】
図25に示すように、成膜処理前基板W1が取り付けられた3個のキャリア21を移動レール37に沿って略同時に移動させ、仕込・取出室13内に収容する。仕込・取出室13にキャリア21を収容した後、仕込・取出室13のキャリア搬出入口35のシャッタ36を閉じる。その後、仕込・取出室13の内部を、真空ポンプ43を用いて真空状態に保持する。
【0064】
図26に示すように、3個のキャリア21を平面視において移動レール37が敷設された方向と直交する方向に移動機構を用いてそれぞれ所定距離(半ピッチ)移動させる。なお、この所定距離とは一つのキャリア21が隣接する移動レール37,37間に位置する距離である。
【0065】
図27に示すように、成膜室11のシャッタ25を開状態にし、成膜室11で成膜が終了した成膜処理後基板W2が取り付けられたキャリア21Aを仕込・取出室13にプッシュ−プル機構38を用いて移動させる。このとき、キャリア21とキャリア21Aとが平面視において交互に並列するようになっている。そして、この状態を所定時間保持することで成膜処理後基板W2に蓄熱されている熱が成膜処理前基板W1に伝熱される。つまり、成膜前基板W1が加熱される。
【0066】
ここで、プッシュ−プル機構38の動きを説明する。なお、ここでは成膜室11に位置しているキャリア21Aを仕込・取出室13へ移動させる際の動きを説明する。
図28に示すように、プッシュ−プル機構38の係止部48に成膜処理後基板W2が取り付けられたキャリア21Aを係止する。そして、係止部48に取り付けられている移動装置50の移動アーム58を揺動させる。このとき移動アーム58の長さは可変する。すると、キャリア21Aが係止された係止部48はガイド部材49に案内されるように移動し、図29に示すように、仕込・取出室13内へと移動する。つまり、キャリア21Aが成膜室11から仕込・取出室13へと移動される。このように構成することで、成膜室11内にキャリア21Aを駆動させるための駆動源が不要になる。なお、上述した動きの逆の動きをさせることで、仕込・取出室13のキャリアを成膜室11へ移動させることができる。
【0067】
図30に示すように、キャリア21およびキャリア21Aを移動機構により移動レール37と直交する方向に移動し、処理前基板W1を保持したキャリア21が移動レール37に沿う位置まで移動させる。
【0068】
このとき、成膜処理後基板W2が取り付けられたキャリア21Aおよび成膜処理前基板W1が取り付けられたキャリア21が仕込・取出室13に配置している状態、つまり、成膜室11内にキャリア(基板)が無い状態において、窒素ガス供給手段150により窒素ガスを成膜室11内に噴射する。
【0069】
具体的には、成膜室11内にキャリア(基板)が無い状態でシャッタ25を一旦閉じる。その後、窒素ガス供給源158から窒素ガスを窒素ガス導入管159に供給する。窒素ガスは、窒素ガス導入管159を経由して、窒素ガス供給管151に供給される。そして、窒素ガスを窒素ガス噴射機構170の噴射口175から噴射することにより電極ユニット31や成膜室11の内壁に付着している副生成物(及び/又は、該副生成物の酸化物)を吹き飛ばして、成膜室11の下部へ滞留させる。略同時に、真空ポンプ30を駆動して成膜室11内の排気を行い、該副生成物(及び/又は、該副生成物の酸化物)を除去する。
【0070】
なお、成膜室11内に窒素ガスを噴射することで、例えば、成膜室11内の圧力を約10Paから大気圧もしくは大気圧付近(大気圧以下)まで上昇させながら、略同時に副生成物の除去を行うように構成すればよい。また、真空ポンプ30による排気は、窒素ガスの噴射開始と略同時に始めてもよいし、窒素ガスを噴射開始してから所定時間経過後に始めてもよいし、成膜室11内の圧力が所定圧力(例えば、100Pa)以上になった段階で始めてもよいし、成膜室11内の圧力が最終圧になってから始めてもよい。
また、窒素ガスの噴射と真空ポンプ30による排気とを複数回繰り返してもよい。この際、真空ポンプ30による排気を行いながら間欠的に窒素ガスの噴射を複数回繰り返してもよい。
【0071】
ここで、噴射口175が第1配管171の軸方向を中心に円を描くように回転しながら窒素ガスを噴射するため、窒素ガスを広範囲に亘って噴射することができる。つまり、各所に付着した副生成物(及び/又は、該副生成物の酸化物)を効果的に吹き飛ばして、処理することができる。
【0072】
この窒素ガスの噴射は、バッチごとに行ってもよいし、数バッチごとに定期的に行ってもよい。
【0073】
図31に示すように、プッシュ−プル機構38を用いて処理前基板W1を保持したキャリア21を成膜室11に移動させ、移動完了後にシャッタ25を閉状態にする。なお、成膜室11は真空状態が保持されている。このとき、キャリア21に取り付けられた成膜処理前基板W1は、成膜室11内において、アノードユニット90とカソードユニット68の間に表面WOが重力方向と略並行を成すように鉛直方向に沿った状態で挿入される(図32参照)。
【0074】
図32、図33に示すように、電極ユニット31の2つのアノードユニット90を駆動装置71により互いに近接する方向に移動させて、アノードユニット90(アノード67)と成膜処理前基板W1の裏面WUとを当接させる。
【0075】
図34に示すように、さらに駆動装置71を駆動させると、アノード67に押されるように成膜処理前基板W1がカソードユニット68側に向かって移動する。そして、成膜処理前基板W1とカソードユニット68のシャワープレート75との隙間が所定距離(成膜距離)になるまで移動させる。なお、この成膜処理前基板W1とカソードユニット68のシャワープレート75との隙間(成膜距離)は5〜15mmで、例えば5mm程度である。
【0076】
このとき、成膜処理前基板W1の表面WO側に当接しているキャリア21の挟持部59の狭持片59Aは成膜処理前基板W1(アノードユニット90)の移動に伴って変位するようになっている。なお、アノードユニット90がカソードユニット68から離反する方向に向かって移動した際には、狭持片59Aにはバネなどの復元力が作用して狭持片59B側に向かって変位するようになっている。この時、成膜前基板W1は、アノード67と挟持片59Aで挟持される。
【0077】
成膜処理前基板W1がカソードユニット68側に向かって移動すると、狭持片59Aがマスク78に当接し、この時点でアノードユニット90の移動が停止する(図35参照)。
【0078】
ここで、図35に示すように、マスク78は狭持片59Aの表面と基板Wの外縁部を覆うように形成されているとともに、狭持片59Aもしくは基板Wの外縁部と密接可能に形成されている。すなわち、マスク78と、狭持片59Aもしくは基板Wの外縁部との合わせ面はシール面の役割を有しており、これらマスク78と、狭持片59Aもしくは基板Wの外縁部との間から成膜ガスがアノード67側にほとんど漏れないようになっている。これにより、成膜ガスが広がる範囲が制限され、不要な範囲が成膜されることを抑制することができる。これによりクリーニング範囲を狭くすること、およびクリーニング頻度を減少させることができ、装置の稼働率が向上する。
【0079】
また、成膜処理前基板W1の移動は、基板Wの外縁部がマスク78に当接することによって停止することになるので、マスク78とシャワープレート75、および排気ダクト79との間隙、つまり、ガス流路Rの厚さ方向の流路高さは、成膜処理前基板W1とカソードユニット68との隙間が所定距離となるように設定されている。
【0080】
別の形態として、マスクを排気ダクト79へ弾性体を介して取り付けることによって、基板Wとシャワープレート75(=カソード)の距離は駆動機構71のストロークによって任意に変更することもできる。上記では、マスク78と基板Wが当接する場合を記載したが、成膜ガスの通過を制限するような微少な間隔を空けてマスク78と基板Wが配置されてもよい。
【0081】
このような状態でカソードユニット68のシャワープレート75から成膜ガスを噴出させるとともに、マッチングボックス72を起動させてカソードユニット68のシャワープレート(=カソード)75に電圧を印加することで、成膜空間81にプラズマを発生させ、成膜処理前基板W1の表面WOに成膜を施す。このとき、アノード67に内蔵されているヒータHにより成膜処理前基板W1が所望の温度に加熱される。
【0082】
ここで、アノードユニット90は成膜処理前基板W1が所望の温度に達すると加熱を停止する。しかしながら、カソードユニット68に電圧が印加されることによって成膜空間81にプラズマが発生する。時間の経過に伴い、プラズマからの入熱によりアノードユニット90が加熱を停止しても成膜処理前基板W1の温度が所望の温度よりも上昇してしまう虞がある。この場合、アノードユニット90を、温度上昇しすぎた成膜処理前基板W1を冷却するための放熱板として機能させることもできる。したがって、成膜処理前基板W1は成膜処理時間の時間経過に関わらず所望の温度に保持される。
なお、一度の成膜処理工程で複数の層を成膜する際には、供給する成膜ガス材料を所定時間毎に切り替えることで実施することができる。
【0083】
成膜中および成膜後に、カソードユニット68の周縁部に形成された排気口80より成膜空間81のガスや副生成物を排気するとともに、排気されたガスは、ガス流路Rを介してカソードユニット68の周縁部の排気ダクト79から開口部(カソードユニット68の下部における排気ダクト79の成膜室11内へ向いた面83に形成された開口部)を通過させて、成膜室11の側面下部に形成された貫通孔28に設けられた排気管29から外部へと排気する。
成膜室11内の全ての電極ユニット31において、上述した処理と同じ処理を実行するため6枚の基板に対して同時に成膜を施すことができる。また、電極ユニット31や成膜室11の内壁に副生成物が付着しても、窒素ガス供給手段150により副生成物を吹き飛ばして成膜室11の下部へ移動させることができるため、成膜中に副生成物が基板W1の表面WOに付着するのを確実に防止することができる。
【0084】
そして、成膜が終了したら、駆動装置71により2つのアノードユニット90を互いに離反する方向に移動させ、成膜処理後基板W2およびフレーム51(狭持片59A)をもとの位置に戻す(図33、図35参照)。さらにアノードユニット90を離反する方向に移動させることで、成膜処理後基板W2とアノードユニット90とが離反する(図32参照)。
【0085】
図36に示すように、成膜室11のシャッタ25を開状態にし、キャリア21を仕込・取出室13へプッシュ−プル機構38を用いて移動させる。このとき仕込・取出室13は排気され、次に成膜される成膜処理前基板W1を取り付けたキャリア21Bが既に位置している。そして、仕込・取出室13内で成膜処理後基板W2に蓄熱されている熱を成膜処理前基板W1へ伝熱し、成膜処理後基板W2の温度を下げる。なお、窒素ガスをバッチごとに噴射する場合は、シャッタ25を閉状態にし、再度窒素ガス供給手段150により窒素ガスを成膜室11内に噴射する。
【0086】
図37に示すように、キャリア21Bが成膜室11内へと移動した後、移動機構によりキャリア21を移動レール37上に配置される位置まで戻す。
【0087】
図38に示すように、シャッタ25を閉状態にし、成膜処理後基板W2が所定温度まで低下した後に、シャッタ36を開状態にして、キャリア21を基板脱着室15へと移動させる。
【0088】
図39に示すように、基板脱着室15において成膜処理後基板W2を基板脱着ロボット17によりキャリア21から取り外し、基板収容カセット19へと搬送する。全ての成膜処理後基板W2の取り外しが完了したら、基板収容カセット19を次工程の場所まで移動させることで、処理が終了する。
【0089】
本実施形態の薄膜太陽電池製造装置10によれば、成膜室11に搬入される成膜処理前の基板W1が保持されたキャリア21と成膜室11から搬出された成膜処理後の基板W2が保持されたキャリア21(21A)とを仕込・取出室13に同時に収容させることができるため、仕込・取出室13の真空排気工程を減らすことができる。したがって、生産性を向上することができる。さらに、仕込・取出室13において、成膜処理前の基板W1と成膜処理後の基板W2とが同時に収容されると、成膜処理後の基板W2に蓄熱されている熱が成膜処理前の基板W1に伝熱され、熱交換が行われる。つまり、成膜処理前の基板W1を成膜室11に収容した後に通常実施する加熱工程、および、成膜処理後の基板W2を仕込・取出室13から搬出する前に通常実施する冷却工程を省略することができる。結果として、生産性を向上することができるとともに、従来の加熱工程・冷却工程に用いていた設備を取り止めることができるため、製造コストを低減することができる。
【0090】
また、仕込・取出室13において、成膜処理前の基板W1を保持したキャリア21および成膜処理後の基板W2を保持したキャリア21(21A)をそれぞれ複数個同時に収容することができるため、複数の基板Wを同時に成膜することができ、生産性を向上することができる。また、仕込・取出室13において、成膜室11に搬入される複数のキャリア21と成膜室11から搬出された複数のキャリア21(21A)を同時に収容することができるため、仕込・取出室13の真空排気工程をさらに減らすことができ、生産性をさらに向上させることができる。
【0091】
また、基板Wの被成膜面が重力方向と略並行を成すように鉛直方向に立てた状態で、薄膜太陽電池製造装置10内の移動および成膜処理ができるように構成したため、薄膜太陽電池製造装置10内を基板Wが移動するのに必要な面積を縮小することができ、装置を小型化できるとともに、従来と同じ設置面積の中に多くの装置を配置することができる。したがって、同時に成膜することができる基板Wの枚数を増加させることができ、生産性を向上することができる。また、基板Wを鉛直方向に立てた状態で成膜すると、成膜時に発生する副生成物(パーティクル)が基板Wの成膜面上に堆積するのを抑制することができる。したがって、基板Wに高品質な半導体層を成膜することができる。
【0092】
また、窒素ガス供給手段150により、噴射口175を回転させながら窒素ガスを広範囲に噴射させて成膜室11内の各所に付着した副生成物を吹き飛ばして成膜室11内の所望の位置(例えば、底面)に移動させることができる。したがって、基板Wに対して連続的に成膜を行っても、副生成物が基板Wの表面WOに付着するのを防止することができ、薄膜太陽電池としての変換効率の低下を防ぐことができる。
【0093】
また、キャリア21が、複数(2枚)の基板Wを保持できるようにしたため、一つのキャリア21において複数の基板Wを同時に成膜することができ、生産性をさらに向上することができる。さらに、成膜室11に複数のキャリア21を同時に搬送できるため、さらに処理速度を上げることができる。
【0094】
また、一つの仕込・取出室13に対して一つの成膜室11が連接されてなるプロセスモジュール14を複数(4組)備え、このプロセスモジュール14を並列配置させたため、同時に成膜できる基板Wの枚数をさらに増加させることができるため、低レートの膜を基板Wに成膜する際にも、高スループットを実現することができる。また、プロセスモジュール14として装置を一体化することで、製造ラインを工場などに構築する際の装置の設置時間(製造ラインの立ち上げ時間)を短縮することができる。さらに、成膜室11のメンテナンスをする際に、プロセスモジュール14毎にメンテナンスを行うことで、製造ライン全体を停止させる必要がなくなる。したがって、メンテナンス時の生産効率の低下を最小限に抑えることができる。
【0095】
さらに、基板脱着室15において、キャリア21に成膜処理前の基板W1を取り付ける作業及びキャリア21から成膜処理後の基板W2を取り外す作業を行う基板脱着ロボット17を備えたため、キャリア21に対しての基板Wの脱着を効率よく行うことができ、生産性の向上に寄与することができる。
【0096】
そして、基板Wを収容するとともに、別の処理工程へ搬送可能に構成された基板収容カセット19を備えたため、別の処理工程に対しての基板Wの搬送を効率よく行うことができるため、生産性の向上に寄与することができる。
【0097】
(メンテナンス方法)
次に、このような薄膜太陽電池製造装置10(成膜装置)のメンテナンス方法について説明する。
上述したように、成膜室11内において連続して基板にシリコン薄膜、特に微結晶シリコン(μc−Si)からなる薄膜(ボトムセル104のp層(104p)、i層(104i)、n層(104n))の成膜を行うと、成膜時に生成されるポリシランを含む粉状の副生成物が成膜室11内の各所に付着する。その副生成物がその後の成膜時に基板W上に付着したりすると薄膜太陽電池としての変換効率が低下してしまうなどの問題が生じる。
【0098】
そこで、定期的に、成膜室11内の副生成物を除去するなどのメンテナンスが必要となってくるが、副生成物であるポリシランは、茶褐色粉末で可燃性を有するため、メンテナンスにおいてその取り扱いに注意を必要とする。例えば、従来は静電気防止、飛散防止のために、成膜室のメンテナンス前に副生成物に水(水蒸気)を吹き付けていたが、この方法では、副生成物がドロドロになるため除去しづらかったり、水を使うために、メンテナンス後の成膜室の再立ち上げに時間がかかる、等の問題があった。
【0099】
これに対し、本発明では、成膜室11(成膜空間)内にオゾン(O3 )含有ガスを導入して、該オゾン含有ガスによって副生成物を酸化させている。
ポリシランの酸化物であるシリコン酸化物は白色粉末状をなし、可燃性を有しないため、例えばバキュームクリーナー等を用いて容易に除去することができる。また、従来のように水を使わないので、成膜室11の立ち上げを早くすることができる。このように本発明のメンテナンス方法では、シリコン膜の成膜に際して生成する副生成物を安全、迅速かつ簡便に処理することが可能である。
以下、順に説明する。なお、本実施形態のメンテナンスは、例えば成膜室において連続して前記シリコン膜を成膜する際に、成膜と成膜の間において行うことが好ましい。
【0100】
(a)まず、上述したような一連の成膜プロセスが終了した後、真空ポンプ30を駆動して成膜室11(成膜空間)のガスを排気する。
(b)また、成膜室11から成膜処理後基板W2を取り出す。
具体的には、成膜室11のシャッタ25を開状態にし、キャリア21を仕込・取出室13へプッシュ−プル機構38を用いて移動させる。仕込・取出室13内で成膜処理後基板W2の温度を下げる。成膜処理後基板W2が所定温度まで低下した後に、キャリア21を基板脱着室15へと移動させる。基板脱着室15において成膜処理後基板W2を基板脱着ロボット17によりキャリア21から取り外す。
(c)成膜室11内の圧力が例えば1Pa以下程度の減圧状態になったら、排気用のポンプ(真空ポンプ30)をオフにする。なお、本実施形態において、副生成物の酸化は、成膜室11を大気開放する前、成膜空間が減圧状態において行う。
【0101】
(d)そして、第一オゾン含有ガス供給手段180によりオゾン含有ガスを成膜室11内に導入する。
具体的には、成膜室11内にキャリア(基板)が無い状態でシャッタ25を一旦閉じる。その後、オゾン含有ガス供給源188からオゾン含有ガスをオゾン含有ガス導入管189に供給する。オゾン含有ガスは、オゾン含有ガス導入管189を経由して、成膜室11内に供給される。そして、オゾン含有ガスを導入することにより電極ユニット31や成膜室11の内壁に付着しているが褐色粉末状の副生成物(ポリシラン)を酸化させ、白粉状のシリコン酸化物とする。
【0102】
オゾン含有ガスは、オゾン(O3 )の他、例えば酸素、空気、窒素、ヘリウム等のガスを含有する。
オゾン含有ガス中、オゾン(O3 )の濃度としては、特に限定されるものではないが、例えば、1〜10[%]程度とする。
オゾン含有ガスの流量としては、特に限定されるものではないが、例えば、1〜50[slm]とする。
また、オゾン含有ガス導入時の成膜室内圧力としては、特に限定されるものではないが、例えば、1[Pa]〜副生成物の酸化終了までとする。
【0103】
(e)副生成物(ポリシラン)の酸化が終了したら、真空ポンプ30を駆動して成膜室11内のオゾン含有ガスを排気する。
副生成物の酸化が終了したかどうかは、茶褐色粉末をなす副生成物(ポリシラン)が、白色粉末(シリコン酸化物)にすべて変化したことで知ることができる。
なお、副生成物の酸化が十分に進まない場合には、該副生成物に着火源を近づけることにより酸化を促進させてもよい。
(f)その後、成膜室11のシャッタ25を開状態にし、成膜室11を大気解放するとともに、成膜室内圧力を大気圧に戻す。
【0104】
(g)最後に、成膜室11を開放しクリーニングを行い、副生成物の酸化物を除去する。このクリーニングの方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化物粉末をバキュームクリーナー等により吸引除去する方法等が挙げられる。また、真空ポンプ30を駆動して成膜室11内の排気を行い、該酸化物を除去してもよい。
以上のような方法によれば、副生成物を、安全、迅速かつ簡便に処理することが可能である。また、従来のように水を使わないので、メンテナンス終了後の成膜室11の再立ち上げを早くすることができる。
【0105】
また、成膜室11と同様に、仕込・取出室13においても、第二オゾン含有ガス供給手段190によりオゾン含有ガスを仕込・取出室13内に供給することにより、基板Wの仕込・取出時において基板W、特に成膜処理後の基板W2からこぼれ落ちて、仕込・取出室13内に存在する副生成物(ポリシラン)をオゾン含有ガスにより酸化することが好ましい。ポリシランの酸化物であるシリコン酸化物は例えばバキュームクリーナーを用いて容易に除去することができる。従来のように水を使わないので、メンテナンス終了後に仕込・取出室13の立ち上げを早くすることができる。
【0106】
(実験例)
ここで、CVD法を用いてシリコン膜を形成する際に、副生成物として生成されるポリシラン、及び、該ポリシランをオゾン含有ガスで酸化させた酸化物について、IR測定を行った実験例について説明する。
図40は、大気に取り出し放置したポリシラン粉のIRスペクトルである。図40から明らかなように、ポリシランの酸化は進んでいるが、活性なSiH結合の吸収の存在が確認される。これは、ポリシランの酸化が十分にすすんでおらず、ポリシラン粉末に可燃性が残っていることを示している。
【0107】
一方、成膜室内にオゾン含有ガスを導入し、ポリシランを酸化させた。
成膜終了後、減圧状態(大気開放前)にある成膜室内に、オゾン含有ガスを導入した。図41は、オゾン含有ガス導入時間と、成膜室内圧力との関係を示す図である。オゾン含有ガス導入時の成膜室内の圧力は、1[Pa]〜ポリシランの酸化終了までとした。
図42は、ポリシランをオゾン含有ガスで酸化させたシリコン酸化物のIRスペクトルである。図40、図42から明らかなように、活性なSiH結合の吸収が無くなっている。これは、ポリシランをオゾン含有ガスにより酸化させることにより、ポリシランが完全に酸化物になっており、可燃性を有していないことを示している。
これにより、可燃性を有するポリシランを、オゾン含有ガスを用いて酸化させることにより、可燃性がなくなり、副生成物を安全に処理することができることが確認された。
【0108】
以上、本発明の成膜装置及びメンテナンス方法について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0109】
例えば、本実施形態では一つの成膜室に一つの仕込・取出室を連接した場合の説明をしたが、一つの大きな仕込・取出室113に対して複数の成膜室11を並列配置させて連接したプロセスモジュール114を設け、その仕込・取出室113内をキャリアが移動できるようにしてもよい(図43参照)。このように構成することで、仕込・取出室113内をキャリアに取り付けられた基板が移動できるため、各成膜室で異なる成膜材料を供給できるようにすることで、基板に成膜材料の異なる複数の層をより効率よく成膜することができる。
【0110】
また、薄膜太陽電池製造装置の配置構成を図44のようにしてもよい。この例では基板脱着ロボット17に、成膜室11、仕込・取出室13、基板脱着室15からなるモジュールが放射状に設置される。このように構成することで、基板脱着ロボットがレール上を移動する時間を無くすことができる。つまり、基板脱着ロボットの動作時間を短縮して、タクトタイムを短縮することができる。
【0111】
また、薄膜太陽電池製造装置の配置構成を図45のようにしてもよい。この例では基板脱着ロボット17の両側に、成膜室11、仕込・取出室13、基板脱着室15からなるモジュールが設置される。このように構成することで、省スペース、かつ、基板脱着ロボットの動作時間の短縮を図ることができる。
【0112】
また、本実施形態では一台の基板脱着ロボットを配置して基板の脱着をするように構成したが、二台の基板脱着ロボットを配置し、一方を基板の取り付け専用とし、他方を基板の取り外し専用としてもよい。また、一台の基板脱着ロボットに二本の駆動アームを設け、二枚の基板を同時に取り付け、取り外しをするように構成してもよい。
【0113】
さらに、本実施形態では、窒素ガス供給手段150として第1供給配管151a〜第4供給配管151dを設けた場合の説明をしたが、第3供給配管151cおよび第4供給配管151dは設けなくてもよい。つまり、少なくとも窒素ガスが成膜室11内における基板Wが配される位置の上方に噴射可能に構成されていればよい。このように構成すること
により、基板Wの成膜時に基板Wの表面WOに付着する可能性が一番高い副生成物、つまり、基板Wの上方に位置する部材(電極ユニット31など)に付着している副生成物に対して、確実に窒素ガスを噴射することができる。したがって、副生成物が基板Wの表面WOに付着するのをより確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、CVD法を用いて基板にシリコン膜を成膜する成膜装置及びメンテナンス方法について広く適用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 薄膜太陽電池製造装置(成膜装置)、11 成膜室、13 仕込・取出室、14 基板成膜モジュール、15 基板脱着室、17 基板脱着ロボット(駆動機構)、19 基板収容カセット(搬送手段)、21 キャリア(第一キャリア、第二キャリア)、25 シャッタ(第一開閉部)、31 電極ユニット、36 シャッタ(第二開閉部)、104 ボトムセル(所望の膜)、W 基板、W1 成膜処理前の基板、W2 成膜処理後の基板、150 窒素ガス供給手段、151 窒素ガス供給配管(供給管)、158 窒素ガス供給源、170 窒素ガス噴射機構、171 第1配管、172 第2配管、173 第3配管、175 噴射口、176 噴射口部材、177 窒素ガス排出孔、180 第一オゾン含有ガス供給手段、190 第二オゾン含有ガス供給手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及びメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の太陽電池は単結晶シリコン(Si)型および多結晶シリコン型で大半を占めているが、Siの材料不足などが懸念されており、近年では、製造コストが低く、材料不足のリスクが小さい薄膜Si層が形成された薄膜太陽電池の需要が高まっている。さらに、従来型のa−Si(アモルファスシリコン)層のみの薄膜太陽電池に加え、最近ではa−Si層とμc−Si(微結晶シリコン)層を積層することにより変換効率の向上を図るタンデム型薄膜太陽電池の要求が高まっている。
【0003】
この薄膜太陽電池の薄膜シリコン層(半導体層)の成膜にはプラズマCVD装置を用いることが多く、プラズマCVD装置としては、枚葉式PE−CVD(プラズマCVD)装置、インライン型PE−CVD装置、バッチ式PE−CVD装置などが存在する。
【0004】
しかしながら、タンデム型薄膜太陽電池の製造上の問題点は、微結晶シリコン(μc−Si)発電層をCVD法を用いて成膜する際に同時に生成される副生成物である、多量のポリシラン粉の取り扱いにある。
ポリシラン粉は茶褐色粉末であり、可燃性を有するため、その取り扱いには注意を必要とする。また、成膜室内において連続して基板の成膜を行うと、副生成物が成膜室内の各所に付着する。その副生成物がその後の成膜時に基板上に付着したりすると薄膜太陽電池としての変換効率が低下してしまうなどの問題が生じる。
【0005】
従来は、静電気防止、副生成物の飛散防止のため、成膜室のメンテナンス(クリーニング)前に副生成物に水(水蒸気)を吹き付けていた(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この方法では、水(水蒸気)で副生成物がドロドロになり、除去しづらい。また、水を使うために、メンテナンス後のチャンバの立ち上げに時間がかかる、等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−1554号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、シリコン膜を成膜する際に生じるポリシランを含む副生成物を、非成膜時に迅速かつ簡便に処理することが可能な成膜装置を提供することを第一の目的とする。
また、本発明は、シリコン膜を成膜する際に生じるポリシランを含む副生成物を、非成膜時に迅速かつ簡便に処理することが可能なメンテナンス方法を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の成膜装置は、CVD法を用いて、真空中で基板にシリコン膜を成膜する成膜室と、前記成膜室内にオゾン含有ガスを導入可能な第一オゾン含有ガス供給手段と、を少なくとも備え、前記成膜室内に前記オゾン含有ガスを導入することにより、前記シリコン膜の成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化させること、を特徴とする。
本発明の請求項2に記載の成膜装置は、請求項1において、前記基板を、被成膜面が重力方向と略並行を成すように保持可能に構成されたキャリアを、さらに備えていることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の成膜装置は、請求項2において、複数の前記キャリアが並列に配置可能に構成されるとともに、前記成膜室において、前記複数のキャリアに保持された複数の前記基板に同時に成膜を行うこと、を特徴とする。
本発明の請求項4に記載の成膜装置は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記成膜室に第一開閉部を介して固定され、真空排気可能な仕込・取出室と、前記仕込・取出室内にオゾン含有ガスを導入可能な第二オゾン含有ガス供給手段と、をさらに備え、前記仕込・取出室内に前記オゾン含有ガスを導入することにより、該仕込・取出室内に存在する前記副生成物を酸化させること、を特徴とする。
本発明の請求項5に記載の成膜装置は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記成膜室において、酸化した前記副生成物に対して窒素ガスを噴射可能な複数の窒素ガス噴射機構を有する窒素ガス供給管と、該窒素ガス供給管に前記窒素ガスを供給する窒素ガス供給源と、をさらに備え、前記窒素ガス噴射機構には、前記窒素ガスを噴射する噴射口が形成されていること、を特徴とする。
本発明の請求項6に記載の成膜装置は、請求項5において、前記噴射口は、前記窒素ガス供給管に対して回転しながら前記窒素ガスを噴射すること、を特徴とする。
本発明の請求項7に記載の成膜装置は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、前記成膜室において、前記シリコン膜として、薄膜太陽電池の微結晶シリコン膜からなる発電層を成膜することを特徴とする。
本発明の請求項8に記載のメンテナンス方法は、CVD法を用いて、真空の成膜空間において基板にシリコン膜の成膜を終了した後に、前記成膜空間内にオゾン含有ガスを導入して、前記シリコン成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化すること、を特徴とする。
本発明の請求項9に記載のメンテナンス方法は、請求項8において、前記成膜空間が減圧状態において、前記副生成物の酸化を行うことを特徴とする。
本発明の請求項10に記載のメンテナンス方法は、請求項8又は9において、前記成膜空間を大気解放する前に、前記副生成物の酸化を行うことを特徴とする。
本発明の請求項11に記載のメンテナンス方法は、請求項7乃至10のいずれかにおいて、前記成膜空間において連続して前記シリコン膜を成膜する際に、成膜と成膜の間において、前記副生成物の酸化を行うこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の成膜装置では、シリコン膜の成膜を終了した状態にある成膜室内にオゾン含有ガスを導入することにより、シリコン膜の成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化させている。本発明では、ポリシランを含む副生成物をオゾン含有ガスによって酸化させており、従来のように水を使わないので、成膜室の立ち上げを早くすることができる。また、前記副生成物の酸化物は白粉状をなし、可燃性を有しないため、該酸化物を例えばバキュームクリーナーを用いて容易に除去することができる。このように本発明の成膜装置では、シリコン膜の成膜に際して生成する副生成物を、迅速かつ簡便に処理することが可能である。
また、本発明のメンテナンス方法では、シリコン膜の成膜を終了した状態にある成膜空間内にオゾン含有ガスを導入して、シリコン成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化させている。本発明では、ポリシランを含む副生成物をオゾン含有ガスによって酸化させており、従来のように水を使わないので、成膜空間の立ち上げを早くすることができる。また、前記副生成物の酸化物は白粉状をなし、可燃性を有しないため、該酸化物を例えばバキュームクリーナー等を用いて容易に除去することができる。このように本発明のメンテナンス方法では、シリコン膜の成膜に際して生成する副生成物を、迅速かつ簡便に処理することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態における薄膜太陽電池製造装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態における成膜室の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における成膜室の別の角度からの斜視図である。
【図5】本発明の実施形態における成膜室の側面図である。
【図6】本発明の実施形態における成膜室の透視図(斜視図)である。
【図7】本発明の実施形態における成膜室の透視図(側面図)である。
【図8】本発明の実施形態における成膜室の透視図(仕込・取出室側から見た正面図)である。
【図9】本発明の実施形態における窒素ガス噴射機構の斜視図である。
【図10】図9のA−A線に沿う断面図である。
【図11】本発明の実施形態における窒素ガス噴射機構の正面図である。
【図12】本発明の実施形態における電極ユニットの斜視図である。
【図13】本発明の実施形態における電極ユニットの別の角度からの斜視図である。
【図14】本発明の実施形態における電極ユニットの一部分解斜視図である。
【図15】本発明の実施形態における電極ユニットのカソードユニットおよびアノードユニットの部分断面図である。
【図16】本発明の実施形態における仕込・取出室の斜視図である。
【図17】本発明の実施形態における仕込・取出室の別の角度からの斜視図である。
【図18】本発明の実施形態におけるプッシュ−プル機構の概略構成図である。
【図19】本発明の実施形態における基板脱着室の斜視図である。
【図20】本発明の実施形態における基板脱着室の正面図である。
【図21】本発明の実施形態における基板収容カセットの斜視図である。
【図22】本発明の実施形態におけるキャリアの斜視図である。
【図23】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(1)である。
【図24】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(2)である。
【図25】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(3)である。
【図26】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(4)である。
【図27】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(5)である。
【図28】本発明の実施形態におけるプッシュ−プル機構の動きを示す説明図(1)である。
【図29】本発明の実施形態におけるプッシュ−プル機構の動きを示す説明図(2)である。
【図30】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(6)である。
【図31】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(7)である。
【図32】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(8)であり、基板が電極ユニットに挿入されたときの概略断面図である。
【図33】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(9)である。
【図34】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(10)である。
【図35】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(11)であり、基板が電極ユニットにセットされたときの部分断面図である。
【図36】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(12)である。
【図37】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(13)である。
【図38】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(14)である。
【図39】本発明の実施形態における薄膜太陽電池の製造方法の過程を示す説明図(15)である。
【図40】大気中に取り出し放置したポリシランのIRスペクトルを示す図である。
【図41】オゾン含有ガスの導入時間と、成膜室内圧力との関係を示す図である。
【図42】ポリシランをオゾン含有ガスで酸化させたシリコン酸化物のIRスペクトルを示す図である。
【図43】本発明の実施形態における薄膜太陽電池製造装置の別の態様を示す概略構成図である。
【図44】本発明の実施形態における薄膜太陽電池製造装置の別の配置方法を示す概略構成図である。
【図45】本発明の実施形態における薄膜太陽電池製造装置のさらに別の配置方法を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の成膜装置及びメンテナンス方法の好適な実施の形態について説明する。
なお、以下の説明では、成膜装置として、CVD法を用いて薄膜太陽電の発電層を成膜する薄膜太陽電池製造装置を例に挙げて説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
まず、本発明の成膜装置を用いて製造される薄膜太陽電池について説明する。
【0012】
(薄膜太陽電池)
図1は薄膜太陽電池の断面図である。図1に示すように、薄膜太陽電池100は、表面を構成する基板Wと、基板W上に設けられた透明導電膜からなる上部電極101と、アモルファスシリコンで構成されたトップセル102と、トップセル102と後述するボトムセル104との間に設けられた透明導電膜からなる中間電極103と、マイクロクリスタルシリコンで構成されたボトムセル104と、透明導電膜からなるバッファ層105と、金属膜からなる裏面電極106とが積層されている。つまり、薄膜太陽電池100は、a−Si/マイクロクリスタルSiタンデム型太陽電池となっている。このようなタンデム構造の薄膜太陽電池100では、短波長光をトップセル102で、長波長光をボトムセル104でそれぞれ吸収することで発電効率の向上を図ることができる。
【0013】
トップセル102のp層(102p)、i層(102i)、n層(102n)の3層構造がアモルファスシリコンで形成されている。また、ボトムセル104のp層(104p)、i層(104i)、n層(104n)の3層構造がマイクロクリスタルシリコンで構成されている。
【0014】
このように構成した薄膜太陽電池100は、太陽光に含まれる光子というエネルギー粒子がi層に当たると光起電力効果により、電子と正孔(hole)が発生し、電子はn層、正孔はp層に向かって移動する。この光起電力効果により発生した電子を上部電極101と裏面電極106により取り出して、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0015】
また、トップセル102とボトムセル104との間に中間電極103を設けることにより、トップセル102を通過してボトムセル104に到達する光の一部が中間電極103で反射して再びトップセル102側に入射するため、セルの感度特性が向上し、発電効率の向上に寄与する。
【0016】
また、ガラス基板W側から入射した太陽光は、各層を通過して裏面電極106で反射さ
れる。薄膜太陽電池100には光エネルギーの変換効率を向上させるために、上部電極1
01に入射した太陽光の光路を伸ばすプリズム効果と光の閉じ込め効果を目的としたテク
スチャ構造を採用している。
【0017】
(薄膜太陽電池製造装置)
図2は薄膜太陽電池製造装置(成膜装置)の概略構成図である。図2に示すように、薄膜太陽電池製造装置10は、複数の基板Wに対して同時にマイクロクリスタルシリコンで構成されたボトムセル104(半導体層)をCVD法を用いて成膜可能な成膜室11と、成膜室11に搬入される成膜処理前基板W1と、成膜室11から搬出された成膜処理後基板W2と、を同時に収容可能な仕込・取出室13と、キャリア21(図19参照)に対して基板W(成膜処理前基板W1および成膜処理後基板W2)を脱着する基板脱着室15と、基板Wをキャリア21から脱着するための基板脱着ロボット(駆動機構)17と、基板Wを別の処理工程との搬送のために収容する基板収容カセット(搬送手段)19と、を備えている。なお、本実施形態では成膜室11、仕込・取出室13および基板脱着室15で構成される基板成膜ライン16が4つ設けられている。また、基板脱着ロボット17は床面に敷設されたレール18上を移動できるようになっており、全ての基板成膜ライン16への基板Wの受け渡しを1台の基板脱着ロボット17でできるようになっている。さらに、成膜室11と仕込・取出室13とで構成されるプロセスモジュール14は一体化されており、トラックに積載可能な大きさで形成されている。
【0018】
図3〜図5は成膜室の概略構成図であり、図3は斜視図、図4は図3とは別の角度からの斜視図、図5は側面図である。図3〜図5に示すように、成膜室11は箱型に形成されている。成膜室11の仕込・取出室13と接続される側面23には、基板Wが搭載されたキャリア21が通過可能なキャリア搬出入口24が3箇所形成されている。また、キャリア搬出入口24にはキャリア搬出入口24を開閉するシャッタ(第一開閉部)25が設けられている。シャッタ25を閉止したときには、キャリア搬出入口24は気密性を確保して閉止される。側面23と対向する側面27には基板Wに成膜を施すための電極ユニット31が3基取り付けられている。電極ユニット31は、成膜室11から着脱可能に構成されている。また、成膜室11の側面下部に形成された貫通孔28には成膜室11内を真空排気するための排気管29が接続されており、排気管29には真空ポンプ30が設けられている。
【0019】
ここで、本実施形態の薄膜太陽電池製造装置10(成膜装置)では、前記成膜室内にオゾン(O3 )含有ガスを導入可能な第一オゾン含有ガス供給手段180を備えている。そして、装置のメンテナンス時において、前記成膜室11内に前記オゾン含有ガスを導入することにより、シリコン膜、特に微結晶シリコン(μc−Si)からなる薄膜(ボトムセル104のp層(104p)、i層(104i)、n層(104n))の成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化させ、シリコン酸化物とする。
【0020】
図5〜図7に示すように、成膜室11には、成膜室11にオゾン含有ガスを導入する第一オゾン含有ガス供給手段180が設けられている。第一オゾン含有ガス供給手段180は、外部に設けられたオゾン含有ガス供給源188と、オゾン含有ガス供給源188と成膜室11との間に配されたオゾン含有ガス導入管189と、を備えている。
成膜室11内に堆積した副生成物の除去などのために定期的にメンテナンスする必要があるが、メンテナンス時において、第一オゾン含有ガス供給手段180によりオゾン含有ガスを成膜室11内に供給することにより、成膜室11内に堆積している副生成物(ポリシラン)をオゾン含有ガスにより酸化することができる。
【0021】
この副生成物であるポリシランは、茶褐色粉末で可燃性を有するため、取り扱いに注意を必要とするが、ポリシランの酸化物であるシリコン酸化物は白色粉末をなし、可燃性を有しないため、例えばバキュームクリーナー等を用いて容易に除去することができる。このように本発明の成膜装置では、シリコン膜の成膜に際して生成する副生成物を、迅速かつ簡便に処理することが可能である。また、従来のように水を使わないので、メンテナンス終了後に成膜室11の立ち上げを早くすることができる。
【0022】
また、図6〜図8に示すように、成膜室11には、成膜室11に窒素ガスを噴射する窒素ガス供給手段150が設けられている。窒素ガス供給手段150は、外部に設けられた窒素ガス供給源158と、窒素ガス供給源158と成膜室11との間に配された窒素ガス導入管159と、窒素ガス導入管159に接続される窒素ガス供給配管151と、を備えている。
【0023】
窒素ガス供給配管151は、成膜室11内に敷設されており、成膜室11内の上方に窒素ガスを噴射するための第1供給配管151aおよび第2供給配管151bと、成膜室11内の下方に窒素ガスを噴射するための第3供給配管151cおよび第4供給配管151dと、を有している。
【0024】
第1供給配管151aは、成膜室11の上面に設けられた接続フランジ152から延設され、成膜室11内の上方において、キャリア21の進行方向に沿って配設されている。
【0025】
第2供給配管151bは、第1供給配管151aと同じく成膜室11の上面に設けられた接続フランジ153から延設され、成膜室11内の上方において、キャリア21の進行方向に沿って配設されている。また、第2供給配管151bは、第1供給配管151aと略同一高さに配されており、電極ユニット31を介して第1供給配管151aと対向する位置に配されている。
【0026】
第3供給配管151cは、成膜室11の上面に設けられた接続フランジ155から電極フランジ31と干渉しない位置を成膜室11の下部へ向かって延設され、成膜室11内の下方において、キャリア21の進行方向に沿って配設されている。
【0027】
第4供給配管151dは、第3供給配管151cと同じく成膜室11の上面に設けられた接続フランジ155から電極フランジ31と干渉しない位置を成膜室11の下部へ向かって延設され、成膜室11内の下方において、キャリア21の進行方向に沿って配設されている。また、第4供給配管151dは、電極ユニット31を介して第3供給配管151cと対向する位置に配されている。
【0028】
第1供給配管151a〜第4供給配管151dには、窒素ガスを所望の方向へ噴射可能な窒素ガス噴射機構170が適宜配設されている。
【0029】
図9は窒素ガス噴射機構170の斜視図であり、図10は図9のA−A線に沿う断面図であり、図11は窒素ガス噴射機構170の正面図である。
図9〜図11に示すように、窒素ガス噴射機構170は、第1供給配管151a〜第4供給配管151dの軸方向に対して略垂直方向に延設された第1配管171と、該第1配管171と軸方向を共通にするとともに第1配管171に対して回転可能に接続された第2配管172と、該第2配管172と軸方向が直交するように接続された第3配管173と、該第3配管173の軸方向両端部に配され噴射口175を有する噴射口部材176と、を備えている。また、二つの噴射口部材176には、噴射口175とは異なる窒素ガス排出孔177がそれぞれ形成されている。なお、第1配管171と第2配管172との間には、ベアリング178が介装されている。
【0030】
ここで、窒素ガス噴射機構170に設けられた二つの噴射口175,175の噴射方向は、異なる方向を向くように配設されている。また、窒素ガス噴射機構170に設けられた二つの窒素ガス排出孔177,177の噴射方向も、異なる方向を向くように配設されている。
【0031】
そして、これら噴射口175および窒素ガス排出孔177は、窒素ガスが噴射されたときに、第1配管171に対して第2配管172がベアリング178を介して回転するように、つまり回転モーメントが生じるように形成されている。
【0032】
このように窒素ガス噴射機構170が構成されることで、窒素ガス供給源158から窒素ガスが供給されると、窒素ガスは噴射口175および窒素ガス排出孔177から噴射される。同時に、窒素ガスは噴射口175および窒素ガス排出孔177からそれぞれ異なる方向に噴射されるため、第2配管172、第3配管173および噴射口部材176が第1配管171に対して回転する。つまり、噴射口175が第1供給配管151a〜第4供給配管151dの軸方向に直交する軸方向を中心に、言い換えれば第1配管171の軸方向を中心に円を描くように回転しながら窒素ガスを噴射するため、窒素ガスを広範囲に亘って噴射することが可能となる。
【0033】
したがって、噴射口175が電極ユニット31や成膜室11の内壁における副生成物(パーティクル)が付着しやすい位置に指向するように窒素ガス噴射機構170を適宜配置することで、効果的にパーティクルを処理することができる。
【0034】
なお、噴射口175の噴射方向が異なっていれば、必ずしも窒素ガス排出孔177を設ける必要はない。逆に、窒素ガス排出孔177が回転モーメントを生じさせる位置に形成されていれば、必ずしも噴射口175の噴射方向を異なる方向に向けなくてもよい。さらに、本実施形態では一つの窒素ガス噴射機構170に噴射口175が2個設けられた場合で説明したが、噴射口175は1個であってもよく、また、3個以上設けてもよい。
【0035】
図12〜図15は電極ユニット31の概略構成図であり、図12は斜視図、図13は図12とは別の角度からの斜視図、図14は電極ユニット31の一部分解斜視図、図15はカソードユニットおよびアノードユニットの部分断面図である。図12〜図15に示すように、電極ユニット31は、成膜室11の側面27に形成された3箇所の開口部26に着脱可能構成されている(図4参照)。電極ユニット31は、下部に車輪61が設けられており床面上を移動可能に構成されている。また、車輪61が取り付けられた底板部62には側板部63が鉛直方向に立設されている。この側板部63は、成膜室11の側面27の開口部26を閉塞する大きさを有している。
【0036】
図14に示すように、車輪61付の底板部62は、電極ユニット31と分離・接続可能な台車構造としてもよい。このように分離可能な台車構造とすることで、電極ユニット31を成膜室11に接続した後は、台車を分離し、共通の台車として、他の電極ユニット31の移動に使用できる。
【0037】
つまり、側板部63が成膜室11の壁面の一部を成している。側板部63の一方の面(成膜室11の内部を向く面)65には、成膜を施す際に基板Wの両面に位置するアノードユニット90とカソードユニット68とが設けられている。本実施形態の電極ユニット31には、カソードユニット68を挟んで両側に離間してアノードユニット90がそれぞれ配置されており、一つの電極ユニット31で2枚の基板Wを同時に成膜できるようになっている。したがって、基板Wは、被成膜面が重力方向と略並行を成すような状態でカソードユニット68の両面側にそれぞれ対向配置され、2つのアノードユニット90は、各基板Wの厚さ方向外側に各基板Wとそれぞれ対向した状態で配置されている。なお、アノードユニット90は、板状のアノード67とアノードユニット90に内蔵されたヒータHとで構成されている。
【0038】
また、側板部63の他方の面69には、アノードユニット90を駆動させるための駆動装置71と、成膜を施す際にカソードユニット68のカソード中間部材76に給電するためのマッチングボックス72と、が取り付けられている。さらに、側板部63には、カソードユニット68に成膜ガスを供給する配管用の接続部(不図示)が形成されている。
【0039】
アノードユニット90には、基板Wの温度を制御する温度制御手段として、ヒータHが内蔵されている。また、2つのアノードユニット90,90は側板部63に設けられた駆動装置71により、互いに近接・離反する方向(水平方向)に移動可能に構成され、基板Wとカソードユニット68との離間距離を制御可能にしている。具体的には、基板Wの成膜を施す際には2つのアノードユニット90,90がカソードユニット68方向に移動して基板Wと当接し、さらに、カソードユニット68に近接する方向に移動して基板Wとカソードユニット68との離隔距離を所望の距離に調節する。その後、成膜を行い、成膜終了後にアノードユニット90,90が互いに離反する方向に移動して、基板Wを電極ユニット31から容易に取り出すことができるように構成されている。
【0040】
さらに、アノードユニット90は、駆動装置71にヒンジ(不図示)を介して取りつけられており、電極ユニット31を成膜室11から引き抜いた状態で、アノードユニット90(アノード67)のカソードユニット68側の面67Aが側板部63の一方の面65と略平行になるまで回動できる(開く)ようになっている。つまり、アノードユニット90は平面視において略90°回動できるようになっている(図11参照)。
【0041】
カソードユニット68は、シャワープレート75(=カソード)、カソード中間部材76、排気ダクト79、浮遊容量体82を有している。
【0042】
カソードユニット68には、アノードユニット90(アノード67)に対向する面にそれぞれ小孔(不図示)が複数形成されたシャワープレート75が配置されており、成膜ガスを基板Wに向かって噴出できるようになっている。さらに、シャワープレート75,75は、マッチングボックス72と接続されたカソード(高周波電極)である。2枚のシャワープレート75,75の間には、マッチングボックス72と接続されたカソード中間部材76が設けられている。すなわち、シャワープレート75は、カソード中間部材76の両側面に、このカソード中間部材76と電気的に接続された状態で配置されている。カソード中間部材76とシャワープレート(カソード)75は導電体で形成され、高周波はカソード中間部材76を介してシャワープレート(カソード)75に印加される。このため、2枚のシャワープレート75,75には、プラズマ発生のための同電位・同位相の電圧が印加される。
【0043】
カソード中間部材76はマッチングボックス72と図示しない配線により接続されている。カソード中間部材76とシャワープレート75との間には空間部77が形成されており、ガス供給装置(不図示)よりこの空間部77に成膜ガスが供給されるようになっている。空間部77は、カソード中間部材76で分離され、それぞれのシャワープレート75,75毎に対応して別々に形成され、各シャワープレート75,75から放出されるガスが独立して制御されるように構成されている。すなわち、空間部77は、ガス供給路の役割を有している。この実施形態にあっては、空間部77がそれぞれのシャワープレート75、75毎に対応して別々に形成されているので、カソードユニット68は、2系統のガス供給路を有していることになる。
【0044】
また、カソードユニット68の周縁部には略全周に亘って中空状の排気ダクト79が設けられている。排気ダクト79には、成膜空間81の成膜ガスや副生成物(パーティクル)を排気するための排気口80が形成されている。具体的には、成膜を施す際の基板Wとシャワープレート75との間に形成される成膜空間81に面して排気口80が形成されている。排気口80はカソードユニット68の周縁部に沿って複数形成されており、全周に亘って略均等に排気できるように構成されている。また、カソードユニット68の下部における排気ダクト79の成膜室11内へ向いた面83には開口部(不図示)が形成されており、排気した成膜ガスなどを成膜室11内へ排出できるようになっている。成膜室11内へ排出されたガスは成膜室11の側面下部に形成された貫通孔28に設けられた排気管29より外部へ排気されるようになっている。また、排気ダクト79とカソード中間部材76との間には、誘電体および/もしくは積層空間を有する浮遊容量体82が設けられている。排気ダクト79は、接地電位に接続されている。排気ダクト79は、カソード75およびカソード中間部材76からの異常放電を防止するためのシールド枠としても機能する。
【0045】
さらに、カソードユニット68の周縁部には、排気ダクト79の外周部からシャワープレート75(=カソード)の外周部に至る部位を覆うようにマスク78が設けられている。このマスク78は、キャリア21に設けられた後述する挟持部59の挟持片59A(図22、図35参照)を被覆するとともに、成膜を施す際に狭持片59Aと一体となって成膜空間81の成膜ガスやパーティクルを排気ダクト79に導くためのガス流路Rを形成している。すなわち、キャリア21(狭持片59A)とシャワープレート75との間、および排気ダクト79との間にガス流路Rが形成されている。
【0046】
このような電極ユニット31を設けることにより、一つの電極ユニット31で、基板Wが挿入されるアノードユニット90とカソードユニット68との隙間が2箇所形成される。したがって、2枚の基板Wを一つの電極ユニット31で同時に成膜することができる。
【0047】
また、アノードユニット90とカソードユニット68との間に基板Wが配され、アノードユニット90(アノード67)は、基板Wと当接するとともに、基板Wとカソードユニット68との離隔距離を調整するために移動可能に構成したため、基板Wに薄膜Si層をプラズマCVD法により成膜する際には、基板Wとカソードユニット68との隙間を5〜15mm程度に設定しなければならないが、アノード67を移動可能にすることで、成膜前後にアノード67とカソードユニット68との離隔距離を調節できる。したがって、基板Wの出し入れを容易にすることができる。また、基板Wを出し入れする際に基板Wがアノード67またはカソードユニット68に接触して損傷するのを防止することができる。さらに、アノード67と基板Wとを当接させることができるため、基板WをヒータHで加熱しながら成膜するが、そのヒータHの熱を効果的に基板Wに伝熱することができる。したがって、高品質な成膜を施すことができる。
【0048】
さらに、電極ユニット31を成膜室11から着脱可能に構成したため、電極ユニット31のカソードユニット68およびアノードユニット90は堆積した副生成物の除去などのために定期的にメンテナンスする必要があるが、容易にメンテナンスを行うことができる。また、予備の電極ユニット31を用意しておけば、成膜室11から電極ユニット31をメンテナンスで取り外しても予備の電極ユニット31を代わりに取り付けることで、製造ラインを停止させずにメンテナンスをすることができる。したがって、生産効率を向上することができる。結果として、低レートの半導体層を基板Wに成膜する際にも、高スループットを実現することができる。
【0049】
図2に戻り、成膜室11と仕込・取出室13との間、および、仕込・取出室13と基板脱着室15との間をキャリア21が移動できるように移動レール37が成膜室11〜基板脱着室15間に敷設されている。なお、移動レール37は成膜室11と仕込・取出室13との間で分離され、キャリア搬出入口24はシャッタ25を閉じることで密閉可能である。
【0050】
図16、図17は仕込・取出室13の概略構成図であり、図16は斜視図、図17は図16とは別の角度からの斜視図である。図16、図17に示すように、仕込・取出室13は、箱型に形成されている。側面33は成膜室11の側面23と気密性を確保して接続されている。側面33には3つのキャリア21が挿通可能な開口部32が形成されている。側面33と対向する側面34は基板脱着室15に接続されている。側面34には基板Wが搭載されたキャリア21が通過可能なキャリア搬出入口35が3箇所形成されている。キャリア搬出入口35には気密性を確保できるシャッタ(第二開閉部)36が設けられている。なお、移動レール37は仕込・取出室13と基板脱着室15との間で分離され、キャリア搬出入口35はシャッタ36を閉じることで密閉可能である。
【0051】
また、仕込・取出室13には、キャリア21を移動レール37に沿って成膜室11と仕込・取出室13との間を移動させるためのプッシュ−プル機構38が設けられている。図18に示すように、このプッシュ−プル機構38は、キャリア21を係止するための係止部48と、係止部48の両端に設けられ、移動レール37と略平行に配されたガイド部材49と、係止部48をガイド部材49に沿って移動させるための移動装置50と、を備えている。
【0052】
さらに、仕込・取出室13内において、成膜処理前基板W1および成膜処理後基板W2を同時に収容させるために、キャリア21を平面視において移動レール37の敷設方向と略直交する方向に所定距離移動させるための移動機構(不図示)が設けられている。そして、仕込・取出室13の側面下部41には仕込・取出室13内を真空排気するための排気管42が接続されており、排気管42には真空ポンプ43が設けられている。
【0053】
さらに、本実施形態の薄膜太陽電池製造装置10(成膜装置)では、図17に示すように、仕込・取出室13には、仕込・取出室13にオゾン含有ガスを噴射する第二オゾン含有ガス供給手段190が設けられている。第二オゾン含有ガス供給手段190は、外部に設けられたオゾン含有ガス供給源198と、オゾン含有ガス198と仕込・取出室13との間に配されたオゾン含有ガス導入管199と、を備えている。
仕込・取出室13における基板Wの仕込・取出時において、基板W、特に成膜処理後基板W2に堆積した副生成物がこぼれ落ち、基仕込・取出室13内に堆積する。
【0054】
成膜室11の場合と同様に、メンテナンス時において、第二オゾン含有ガス供給手段190によりオゾン含有ガスを仕込・取出室13内に供給することにより、仕込・取出室13内に存在している副生成物(ポリシラン)をオゾン含有ガスにより酸化することができる。ポリシランの酸化物であるシリコン酸化物は白色粉末をなし、例えばバキュームクリーナー等を用いて容易に除去することができる。従来のように水を使わないので、メンテナンス終了後に仕込・取出室13の立ち上げを早くすることができる。
【0055】
図19、図20は基板脱着室の概略構成図であり、図19は斜視図、図20は正面図である。図19、図20に示すように、基板脱着室15は、フレーム枠状に形成されており、仕込・取出室13の側面34に接続されている。基板脱着室15では、移動レール37に配されているキャリア21に対して成膜処理前基板W1を取り付けることができ、成膜処理後基板W2をキャリア21から取り外すことができるようになっている。基板脱着室15にはキャリア21が3個並列配置できるように構成されている。
【0056】
基板脱着ロボット17は、駆動アーム45を有しており(図2参照)、駆動アーム45の先端に基板Wを吸着できるようになっている。また、駆動アーム45は基板脱着室15に配されたキャリア21と基板収容カセット19との間を駆動できるようになっており、基板収容カセット19から成膜処理前基板W1を取り出し、基板脱着室15に配されたキャリア(第一キャリア)21に成膜処理前基板W1を取り付ける作業、および成膜処理後基板W2を基板脱着室15に戻ってきたキャリア(第二キャリア)21から取り外し、基板収容カセット19へ搬送することができるようになっている。
【0057】
図21は基板収容カセット19の斜視図である。図21に示すように、基板収容カセット19は、箱型に形成されており、基板Wを複数枚収容可能な大きさを有している。基板Wは被成膜面を水平方向と略並行を成すようにした状態で上下方向に複数枚積層して収容できるようになっている。また、基板収容カセット19の下部にはキャスター47が設けられており、別の処理装置へと移動できるようになっている。なお、基板収容カセット19において、基板Wの被成膜面を重力方向と略並行を成すようにした状態で左右方向に複数枚収容できるようにしてもよい。
【0058】
図22はキャリアの斜視図である。図22に示すように、キャリア21は、基板Wを取り付けることができる額縁状のフレーム51が2個形成されている。つまり、一つのキャリア21に基板Wを2枚取り付けることができるようになっている。2個のフレーム51,51は、その上部において連結部材52により一体化されている。また、連結部材52の上方には移動レール37に載置される車輪53が設けられており、移動レール37上を車輪53が転がることで、キャリア21が移動できるようになっている。また、フレーム51の下部には、キャリア21が移動する際に基板Wの揺れを抑制するためにフレームホルダ54が設けられており、フレームホルダ54の先端は各室の底面上に設けられた断面凹状のレール部材55に嵌合されている。なお、レール部材55は平面視において移動レール37に沿う方向に配されている。フレームホルダ54を複数のローラで構成すれば、より安定した搬送が可能となる。
【0059】
フレーム51はそれぞれ、周縁部57と挟持部59を有している。フレーム51に形成された開口部56に基板Wの被成膜面が露出されるようになっており、開口部56の周縁部57において、挟持部59が基板Wを両側から挟持して固定できるようになっている。そして、基板Wを挟持している挟持部59は、バネなどによる付勢力が働いている。また、挟持部59は基板Wの表面WO(被成膜面)および裏面WU(背面)に当接する狭持片59A,59Bを有しているが(図35参照)、この挟持片59A,59Bの離隔距離はバネなどを介して可変可能、つまり、アノードユニット90(アノード67)の移動に応じて狭持片59Aが狭持片59Bに対して近接・離反する方向に沿って移動可能に構成されている(詳細は後述する)。ここで、このキャリア21は、一つの移動レール37上に1個(1対(2枚)の基板を保持できる1個のキャリア)取り付けられている。つまり、一組の薄膜太陽電池製造装置10には3個(3対6枚基板保持)のキャリア21が取り付けられている。
【0060】
そして、本実施形態の薄膜太陽電池製造装置10では、上述した成膜室11、仕込・取出室13および基板脱着室15とで構成される基板成膜ライン16が4つ配置構成されているため、24枚の基板Wを略同時に成膜することができるようになっている。
【0061】
(薄膜太陽電池の製造方法)
次に、本実施形態の薄膜太陽電池製造装置10を用いて、基板Wに成膜する方法を説明する。なお、この説明においては一つの基板成膜ライン16の図面を用いるが、他の三つの基板成膜ライン16も略同一の流れで基板を成膜する。
図23に示すように、成膜処理前基板W1を複数枚収容した基板収容カセット19を所定の位置に配置する。
【0062】
図24に示すように、基板脱着ロボット17の駆動アーム45を動かして、基板収容カセット19から成膜処理前基板W1を一枚取り出し、成膜処理前基板W1を基板脱着室15に設置されているキャリア21に取り付ける。このとき、基板収容カセット19に水平方向に配置された成膜処理前基板W1を、鉛直方向に向きを変えてキャリア21に取り付ける。この動作をもう一度繰り返し、一つのキャリア21に2枚の成膜処理前基板W1を取り付ける。さらに、この動作を繰り返して、基板脱着室15に設置されている残り二つのキャリア21にも成膜処理前基板W1をそれぞれ取り付ける。つまり、この段階で成膜処理前基板W1を6枚取り付ける。
【0063】
図25に示すように、成膜処理前基板W1が取り付けられた3個のキャリア21を移動レール37に沿って略同時に移動させ、仕込・取出室13内に収容する。仕込・取出室13にキャリア21を収容した後、仕込・取出室13のキャリア搬出入口35のシャッタ36を閉じる。その後、仕込・取出室13の内部を、真空ポンプ43を用いて真空状態に保持する。
【0064】
図26に示すように、3個のキャリア21を平面視において移動レール37が敷設された方向と直交する方向に移動機構を用いてそれぞれ所定距離(半ピッチ)移動させる。なお、この所定距離とは一つのキャリア21が隣接する移動レール37,37間に位置する距離である。
【0065】
図27に示すように、成膜室11のシャッタ25を開状態にし、成膜室11で成膜が終了した成膜処理後基板W2が取り付けられたキャリア21Aを仕込・取出室13にプッシュ−プル機構38を用いて移動させる。このとき、キャリア21とキャリア21Aとが平面視において交互に並列するようになっている。そして、この状態を所定時間保持することで成膜処理後基板W2に蓄熱されている熱が成膜処理前基板W1に伝熱される。つまり、成膜前基板W1が加熱される。
【0066】
ここで、プッシュ−プル機構38の動きを説明する。なお、ここでは成膜室11に位置しているキャリア21Aを仕込・取出室13へ移動させる際の動きを説明する。
図28に示すように、プッシュ−プル機構38の係止部48に成膜処理後基板W2が取り付けられたキャリア21Aを係止する。そして、係止部48に取り付けられている移動装置50の移動アーム58を揺動させる。このとき移動アーム58の長さは可変する。すると、キャリア21Aが係止された係止部48はガイド部材49に案内されるように移動し、図29に示すように、仕込・取出室13内へと移動する。つまり、キャリア21Aが成膜室11から仕込・取出室13へと移動される。このように構成することで、成膜室11内にキャリア21Aを駆動させるための駆動源が不要になる。なお、上述した動きの逆の動きをさせることで、仕込・取出室13のキャリアを成膜室11へ移動させることができる。
【0067】
図30に示すように、キャリア21およびキャリア21Aを移動機構により移動レール37と直交する方向に移動し、処理前基板W1を保持したキャリア21が移動レール37に沿う位置まで移動させる。
【0068】
このとき、成膜処理後基板W2が取り付けられたキャリア21Aおよび成膜処理前基板W1が取り付けられたキャリア21が仕込・取出室13に配置している状態、つまり、成膜室11内にキャリア(基板)が無い状態において、窒素ガス供給手段150により窒素ガスを成膜室11内に噴射する。
【0069】
具体的には、成膜室11内にキャリア(基板)が無い状態でシャッタ25を一旦閉じる。その後、窒素ガス供給源158から窒素ガスを窒素ガス導入管159に供給する。窒素ガスは、窒素ガス導入管159を経由して、窒素ガス供給管151に供給される。そして、窒素ガスを窒素ガス噴射機構170の噴射口175から噴射することにより電極ユニット31や成膜室11の内壁に付着している副生成物(及び/又は、該副生成物の酸化物)を吹き飛ばして、成膜室11の下部へ滞留させる。略同時に、真空ポンプ30を駆動して成膜室11内の排気を行い、該副生成物(及び/又は、該副生成物の酸化物)を除去する。
【0070】
なお、成膜室11内に窒素ガスを噴射することで、例えば、成膜室11内の圧力を約10Paから大気圧もしくは大気圧付近(大気圧以下)まで上昇させながら、略同時に副生成物の除去を行うように構成すればよい。また、真空ポンプ30による排気は、窒素ガスの噴射開始と略同時に始めてもよいし、窒素ガスを噴射開始してから所定時間経過後に始めてもよいし、成膜室11内の圧力が所定圧力(例えば、100Pa)以上になった段階で始めてもよいし、成膜室11内の圧力が最終圧になってから始めてもよい。
また、窒素ガスの噴射と真空ポンプ30による排気とを複数回繰り返してもよい。この際、真空ポンプ30による排気を行いながら間欠的に窒素ガスの噴射を複数回繰り返してもよい。
【0071】
ここで、噴射口175が第1配管171の軸方向を中心に円を描くように回転しながら窒素ガスを噴射するため、窒素ガスを広範囲に亘って噴射することができる。つまり、各所に付着した副生成物(及び/又は、該副生成物の酸化物)を効果的に吹き飛ばして、処理することができる。
【0072】
この窒素ガスの噴射は、バッチごとに行ってもよいし、数バッチごとに定期的に行ってもよい。
【0073】
図31に示すように、プッシュ−プル機構38を用いて処理前基板W1を保持したキャリア21を成膜室11に移動させ、移動完了後にシャッタ25を閉状態にする。なお、成膜室11は真空状態が保持されている。このとき、キャリア21に取り付けられた成膜処理前基板W1は、成膜室11内において、アノードユニット90とカソードユニット68の間に表面WOが重力方向と略並行を成すように鉛直方向に沿った状態で挿入される(図32参照)。
【0074】
図32、図33に示すように、電極ユニット31の2つのアノードユニット90を駆動装置71により互いに近接する方向に移動させて、アノードユニット90(アノード67)と成膜処理前基板W1の裏面WUとを当接させる。
【0075】
図34に示すように、さらに駆動装置71を駆動させると、アノード67に押されるように成膜処理前基板W1がカソードユニット68側に向かって移動する。そして、成膜処理前基板W1とカソードユニット68のシャワープレート75との隙間が所定距離(成膜距離)になるまで移動させる。なお、この成膜処理前基板W1とカソードユニット68のシャワープレート75との隙間(成膜距離)は5〜15mmで、例えば5mm程度である。
【0076】
このとき、成膜処理前基板W1の表面WO側に当接しているキャリア21の挟持部59の狭持片59Aは成膜処理前基板W1(アノードユニット90)の移動に伴って変位するようになっている。なお、アノードユニット90がカソードユニット68から離反する方向に向かって移動した際には、狭持片59Aにはバネなどの復元力が作用して狭持片59B側に向かって変位するようになっている。この時、成膜前基板W1は、アノード67と挟持片59Aで挟持される。
【0077】
成膜処理前基板W1がカソードユニット68側に向かって移動すると、狭持片59Aがマスク78に当接し、この時点でアノードユニット90の移動が停止する(図35参照)。
【0078】
ここで、図35に示すように、マスク78は狭持片59Aの表面と基板Wの外縁部を覆うように形成されているとともに、狭持片59Aもしくは基板Wの外縁部と密接可能に形成されている。すなわち、マスク78と、狭持片59Aもしくは基板Wの外縁部との合わせ面はシール面の役割を有しており、これらマスク78と、狭持片59Aもしくは基板Wの外縁部との間から成膜ガスがアノード67側にほとんど漏れないようになっている。これにより、成膜ガスが広がる範囲が制限され、不要な範囲が成膜されることを抑制することができる。これによりクリーニング範囲を狭くすること、およびクリーニング頻度を減少させることができ、装置の稼働率が向上する。
【0079】
また、成膜処理前基板W1の移動は、基板Wの外縁部がマスク78に当接することによって停止することになるので、マスク78とシャワープレート75、および排気ダクト79との間隙、つまり、ガス流路Rの厚さ方向の流路高さは、成膜処理前基板W1とカソードユニット68との隙間が所定距離となるように設定されている。
【0080】
別の形態として、マスクを排気ダクト79へ弾性体を介して取り付けることによって、基板Wとシャワープレート75(=カソード)の距離は駆動機構71のストロークによって任意に変更することもできる。上記では、マスク78と基板Wが当接する場合を記載したが、成膜ガスの通過を制限するような微少な間隔を空けてマスク78と基板Wが配置されてもよい。
【0081】
このような状態でカソードユニット68のシャワープレート75から成膜ガスを噴出させるとともに、マッチングボックス72を起動させてカソードユニット68のシャワープレート(=カソード)75に電圧を印加することで、成膜空間81にプラズマを発生させ、成膜処理前基板W1の表面WOに成膜を施す。このとき、アノード67に内蔵されているヒータHにより成膜処理前基板W1が所望の温度に加熱される。
【0082】
ここで、アノードユニット90は成膜処理前基板W1が所望の温度に達すると加熱を停止する。しかしながら、カソードユニット68に電圧が印加されることによって成膜空間81にプラズマが発生する。時間の経過に伴い、プラズマからの入熱によりアノードユニット90が加熱を停止しても成膜処理前基板W1の温度が所望の温度よりも上昇してしまう虞がある。この場合、アノードユニット90を、温度上昇しすぎた成膜処理前基板W1を冷却するための放熱板として機能させることもできる。したがって、成膜処理前基板W1は成膜処理時間の時間経過に関わらず所望の温度に保持される。
なお、一度の成膜処理工程で複数の層を成膜する際には、供給する成膜ガス材料を所定時間毎に切り替えることで実施することができる。
【0083】
成膜中および成膜後に、カソードユニット68の周縁部に形成された排気口80より成膜空間81のガスや副生成物を排気するとともに、排気されたガスは、ガス流路Rを介してカソードユニット68の周縁部の排気ダクト79から開口部(カソードユニット68の下部における排気ダクト79の成膜室11内へ向いた面83に形成された開口部)を通過させて、成膜室11の側面下部に形成された貫通孔28に設けられた排気管29から外部へと排気する。
成膜室11内の全ての電極ユニット31において、上述した処理と同じ処理を実行するため6枚の基板に対して同時に成膜を施すことができる。また、電極ユニット31や成膜室11の内壁に副生成物が付着しても、窒素ガス供給手段150により副生成物を吹き飛ばして成膜室11の下部へ移動させることができるため、成膜中に副生成物が基板W1の表面WOに付着するのを確実に防止することができる。
【0084】
そして、成膜が終了したら、駆動装置71により2つのアノードユニット90を互いに離反する方向に移動させ、成膜処理後基板W2およびフレーム51(狭持片59A)をもとの位置に戻す(図33、図35参照)。さらにアノードユニット90を離反する方向に移動させることで、成膜処理後基板W2とアノードユニット90とが離反する(図32参照)。
【0085】
図36に示すように、成膜室11のシャッタ25を開状態にし、キャリア21を仕込・取出室13へプッシュ−プル機構38を用いて移動させる。このとき仕込・取出室13は排気され、次に成膜される成膜処理前基板W1を取り付けたキャリア21Bが既に位置している。そして、仕込・取出室13内で成膜処理後基板W2に蓄熱されている熱を成膜処理前基板W1へ伝熱し、成膜処理後基板W2の温度を下げる。なお、窒素ガスをバッチごとに噴射する場合は、シャッタ25を閉状態にし、再度窒素ガス供給手段150により窒素ガスを成膜室11内に噴射する。
【0086】
図37に示すように、キャリア21Bが成膜室11内へと移動した後、移動機構によりキャリア21を移動レール37上に配置される位置まで戻す。
【0087】
図38に示すように、シャッタ25を閉状態にし、成膜処理後基板W2が所定温度まで低下した後に、シャッタ36を開状態にして、キャリア21を基板脱着室15へと移動させる。
【0088】
図39に示すように、基板脱着室15において成膜処理後基板W2を基板脱着ロボット17によりキャリア21から取り外し、基板収容カセット19へと搬送する。全ての成膜処理後基板W2の取り外しが完了したら、基板収容カセット19を次工程の場所まで移動させることで、処理が終了する。
【0089】
本実施形態の薄膜太陽電池製造装置10によれば、成膜室11に搬入される成膜処理前の基板W1が保持されたキャリア21と成膜室11から搬出された成膜処理後の基板W2が保持されたキャリア21(21A)とを仕込・取出室13に同時に収容させることができるため、仕込・取出室13の真空排気工程を減らすことができる。したがって、生産性を向上することができる。さらに、仕込・取出室13において、成膜処理前の基板W1と成膜処理後の基板W2とが同時に収容されると、成膜処理後の基板W2に蓄熱されている熱が成膜処理前の基板W1に伝熱され、熱交換が行われる。つまり、成膜処理前の基板W1を成膜室11に収容した後に通常実施する加熱工程、および、成膜処理後の基板W2を仕込・取出室13から搬出する前に通常実施する冷却工程を省略することができる。結果として、生産性を向上することができるとともに、従来の加熱工程・冷却工程に用いていた設備を取り止めることができるため、製造コストを低減することができる。
【0090】
また、仕込・取出室13において、成膜処理前の基板W1を保持したキャリア21および成膜処理後の基板W2を保持したキャリア21(21A)をそれぞれ複数個同時に収容することができるため、複数の基板Wを同時に成膜することができ、生産性を向上することができる。また、仕込・取出室13において、成膜室11に搬入される複数のキャリア21と成膜室11から搬出された複数のキャリア21(21A)を同時に収容することができるため、仕込・取出室13の真空排気工程をさらに減らすことができ、生産性をさらに向上させることができる。
【0091】
また、基板Wの被成膜面が重力方向と略並行を成すように鉛直方向に立てた状態で、薄膜太陽電池製造装置10内の移動および成膜処理ができるように構成したため、薄膜太陽電池製造装置10内を基板Wが移動するのに必要な面積を縮小することができ、装置を小型化できるとともに、従来と同じ設置面積の中に多くの装置を配置することができる。したがって、同時に成膜することができる基板Wの枚数を増加させることができ、生産性を向上することができる。また、基板Wを鉛直方向に立てた状態で成膜すると、成膜時に発生する副生成物(パーティクル)が基板Wの成膜面上に堆積するのを抑制することができる。したがって、基板Wに高品質な半導体層を成膜することができる。
【0092】
また、窒素ガス供給手段150により、噴射口175を回転させながら窒素ガスを広範囲に噴射させて成膜室11内の各所に付着した副生成物を吹き飛ばして成膜室11内の所望の位置(例えば、底面)に移動させることができる。したがって、基板Wに対して連続的に成膜を行っても、副生成物が基板Wの表面WOに付着するのを防止することができ、薄膜太陽電池としての変換効率の低下を防ぐことができる。
【0093】
また、キャリア21が、複数(2枚)の基板Wを保持できるようにしたため、一つのキャリア21において複数の基板Wを同時に成膜することができ、生産性をさらに向上することができる。さらに、成膜室11に複数のキャリア21を同時に搬送できるため、さらに処理速度を上げることができる。
【0094】
また、一つの仕込・取出室13に対して一つの成膜室11が連接されてなるプロセスモジュール14を複数(4組)備え、このプロセスモジュール14を並列配置させたため、同時に成膜できる基板Wの枚数をさらに増加させることができるため、低レートの膜を基板Wに成膜する際にも、高スループットを実現することができる。また、プロセスモジュール14として装置を一体化することで、製造ラインを工場などに構築する際の装置の設置時間(製造ラインの立ち上げ時間)を短縮することができる。さらに、成膜室11のメンテナンスをする際に、プロセスモジュール14毎にメンテナンスを行うことで、製造ライン全体を停止させる必要がなくなる。したがって、メンテナンス時の生産効率の低下を最小限に抑えることができる。
【0095】
さらに、基板脱着室15において、キャリア21に成膜処理前の基板W1を取り付ける作業及びキャリア21から成膜処理後の基板W2を取り外す作業を行う基板脱着ロボット17を備えたため、キャリア21に対しての基板Wの脱着を効率よく行うことができ、生産性の向上に寄与することができる。
【0096】
そして、基板Wを収容するとともに、別の処理工程へ搬送可能に構成された基板収容カセット19を備えたため、別の処理工程に対しての基板Wの搬送を効率よく行うことができるため、生産性の向上に寄与することができる。
【0097】
(メンテナンス方法)
次に、このような薄膜太陽電池製造装置10(成膜装置)のメンテナンス方法について説明する。
上述したように、成膜室11内において連続して基板にシリコン薄膜、特に微結晶シリコン(μc−Si)からなる薄膜(ボトムセル104のp層(104p)、i層(104i)、n層(104n))の成膜を行うと、成膜時に生成されるポリシランを含む粉状の副生成物が成膜室11内の各所に付着する。その副生成物がその後の成膜時に基板W上に付着したりすると薄膜太陽電池としての変換効率が低下してしまうなどの問題が生じる。
【0098】
そこで、定期的に、成膜室11内の副生成物を除去するなどのメンテナンスが必要となってくるが、副生成物であるポリシランは、茶褐色粉末で可燃性を有するため、メンテナンスにおいてその取り扱いに注意を必要とする。例えば、従来は静電気防止、飛散防止のために、成膜室のメンテナンス前に副生成物に水(水蒸気)を吹き付けていたが、この方法では、副生成物がドロドロになるため除去しづらかったり、水を使うために、メンテナンス後の成膜室の再立ち上げに時間がかかる、等の問題があった。
【0099】
これに対し、本発明では、成膜室11(成膜空間)内にオゾン(O3 )含有ガスを導入して、該オゾン含有ガスによって副生成物を酸化させている。
ポリシランの酸化物であるシリコン酸化物は白色粉末状をなし、可燃性を有しないため、例えばバキュームクリーナー等を用いて容易に除去することができる。また、従来のように水を使わないので、成膜室11の立ち上げを早くすることができる。このように本発明のメンテナンス方法では、シリコン膜の成膜に際して生成する副生成物を安全、迅速かつ簡便に処理することが可能である。
以下、順に説明する。なお、本実施形態のメンテナンスは、例えば成膜室において連続して前記シリコン膜を成膜する際に、成膜と成膜の間において行うことが好ましい。
【0100】
(a)まず、上述したような一連の成膜プロセスが終了した後、真空ポンプ30を駆動して成膜室11(成膜空間)のガスを排気する。
(b)また、成膜室11から成膜処理後基板W2を取り出す。
具体的には、成膜室11のシャッタ25を開状態にし、キャリア21を仕込・取出室13へプッシュ−プル機構38を用いて移動させる。仕込・取出室13内で成膜処理後基板W2の温度を下げる。成膜処理後基板W2が所定温度まで低下した後に、キャリア21を基板脱着室15へと移動させる。基板脱着室15において成膜処理後基板W2を基板脱着ロボット17によりキャリア21から取り外す。
(c)成膜室11内の圧力が例えば1Pa以下程度の減圧状態になったら、排気用のポンプ(真空ポンプ30)をオフにする。なお、本実施形態において、副生成物の酸化は、成膜室11を大気開放する前、成膜空間が減圧状態において行う。
【0101】
(d)そして、第一オゾン含有ガス供給手段180によりオゾン含有ガスを成膜室11内に導入する。
具体的には、成膜室11内にキャリア(基板)が無い状態でシャッタ25を一旦閉じる。その後、オゾン含有ガス供給源188からオゾン含有ガスをオゾン含有ガス導入管189に供給する。オゾン含有ガスは、オゾン含有ガス導入管189を経由して、成膜室11内に供給される。そして、オゾン含有ガスを導入することにより電極ユニット31や成膜室11の内壁に付着しているが褐色粉末状の副生成物(ポリシラン)を酸化させ、白粉状のシリコン酸化物とする。
【0102】
オゾン含有ガスは、オゾン(O3 )の他、例えば酸素、空気、窒素、ヘリウム等のガスを含有する。
オゾン含有ガス中、オゾン(O3 )の濃度としては、特に限定されるものではないが、例えば、1〜10[%]程度とする。
オゾン含有ガスの流量としては、特に限定されるものではないが、例えば、1〜50[slm]とする。
また、オゾン含有ガス導入時の成膜室内圧力としては、特に限定されるものではないが、例えば、1[Pa]〜副生成物の酸化終了までとする。
【0103】
(e)副生成物(ポリシラン)の酸化が終了したら、真空ポンプ30を駆動して成膜室11内のオゾン含有ガスを排気する。
副生成物の酸化が終了したかどうかは、茶褐色粉末をなす副生成物(ポリシラン)が、白色粉末(シリコン酸化物)にすべて変化したことで知ることができる。
なお、副生成物の酸化が十分に進まない場合には、該副生成物に着火源を近づけることにより酸化を促進させてもよい。
(f)その後、成膜室11のシャッタ25を開状態にし、成膜室11を大気解放するとともに、成膜室内圧力を大気圧に戻す。
【0104】
(g)最後に、成膜室11を開放しクリーニングを行い、副生成物の酸化物を除去する。このクリーニングの方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化物粉末をバキュームクリーナー等により吸引除去する方法等が挙げられる。また、真空ポンプ30を駆動して成膜室11内の排気を行い、該酸化物を除去してもよい。
以上のような方法によれば、副生成物を、安全、迅速かつ簡便に処理することが可能である。また、従来のように水を使わないので、メンテナンス終了後の成膜室11の再立ち上げを早くすることができる。
【0105】
また、成膜室11と同様に、仕込・取出室13においても、第二オゾン含有ガス供給手段190によりオゾン含有ガスを仕込・取出室13内に供給することにより、基板Wの仕込・取出時において基板W、特に成膜処理後の基板W2からこぼれ落ちて、仕込・取出室13内に存在する副生成物(ポリシラン)をオゾン含有ガスにより酸化することが好ましい。ポリシランの酸化物であるシリコン酸化物は例えばバキュームクリーナーを用いて容易に除去することができる。従来のように水を使わないので、メンテナンス終了後に仕込・取出室13の立ち上げを早くすることができる。
【0106】
(実験例)
ここで、CVD法を用いてシリコン膜を形成する際に、副生成物として生成されるポリシラン、及び、該ポリシランをオゾン含有ガスで酸化させた酸化物について、IR測定を行った実験例について説明する。
図40は、大気に取り出し放置したポリシラン粉のIRスペクトルである。図40から明らかなように、ポリシランの酸化は進んでいるが、活性なSiH結合の吸収の存在が確認される。これは、ポリシランの酸化が十分にすすんでおらず、ポリシラン粉末に可燃性が残っていることを示している。
【0107】
一方、成膜室内にオゾン含有ガスを導入し、ポリシランを酸化させた。
成膜終了後、減圧状態(大気開放前)にある成膜室内に、オゾン含有ガスを導入した。図41は、オゾン含有ガス導入時間と、成膜室内圧力との関係を示す図である。オゾン含有ガス導入時の成膜室内の圧力は、1[Pa]〜ポリシランの酸化終了までとした。
図42は、ポリシランをオゾン含有ガスで酸化させたシリコン酸化物のIRスペクトルである。図40、図42から明らかなように、活性なSiH結合の吸収が無くなっている。これは、ポリシランをオゾン含有ガスにより酸化させることにより、ポリシランが完全に酸化物になっており、可燃性を有していないことを示している。
これにより、可燃性を有するポリシランを、オゾン含有ガスを用いて酸化させることにより、可燃性がなくなり、副生成物を安全に処理することができることが確認された。
【0108】
以上、本発明の成膜装置及びメンテナンス方法について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0109】
例えば、本実施形態では一つの成膜室に一つの仕込・取出室を連接した場合の説明をしたが、一つの大きな仕込・取出室113に対して複数の成膜室11を並列配置させて連接したプロセスモジュール114を設け、その仕込・取出室113内をキャリアが移動できるようにしてもよい(図43参照)。このように構成することで、仕込・取出室113内をキャリアに取り付けられた基板が移動できるため、各成膜室で異なる成膜材料を供給できるようにすることで、基板に成膜材料の異なる複数の層をより効率よく成膜することができる。
【0110】
また、薄膜太陽電池製造装置の配置構成を図44のようにしてもよい。この例では基板脱着ロボット17に、成膜室11、仕込・取出室13、基板脱着室15からなるモジュールが放射状に設置される。このように構成することで、基板脱着ロボットがレール上を移動する時間を無くすことができる。つまり、基板脱着ロボットの動作時間を短縮して、タクトタイムを短縮することができる。
【0111】
また、薄膜太陽電池製造装置の配置構成を図45のようにしてもよい。この例では基板脱着ロボット17の両側に、成膜室11、仕込・取出室13、基板脱着室15からなるモジュールが設置される。このように構成することで、省スペース、かつ、基板脱着ロボットの動作時間の短縮を図ることができる。
【0112】
また、本実施形態では一台の基板脱着ロボットを配置して基板の脱着をするように構成したが、二台の基板脱着ロボットを配置し、一方を基板の取り付け専用とし、他方を基板の取り外し専用としてもよい。また、一台の基板脱着ロボットに二本の駆動アームを設け、二枚の基板を同時に取り付け、取り外しをするように構成してもよい。
【0113】
さらに、本実施形態では、窒素ガス供給手段150として第1供給配管151a〜第4供給配管151dを設けた場合の説明をしたが、第3供給配管151cおよび第4供給配管151dは設けなくてもよい。つまり、少なくとも窒素ガスが成膜室11内における基板Wが配される位置の上方に噴射可能に構成されていればよい。このように構成すること
により、基板Wの成膜時に基板Wの表面WOに付着する可能性が一番高い副生成物、つまり、基板Wの上方に位置する部材(電極ユニット31など)に付着している副生成物に対して、確実に窒素ガスを噴射することができる。したがって、副生成物が基板Wの表面WOに付着するのをより確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、CVD法を用いて基板にシリコン膜を成膜する成膜装置及びメンテナンス方法について広く適用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 薄膜太陽電池製造装置(成膜装置)、11 成膜室、13 仕込・取出室、14 基板成膜モジュール、15 基板脱着室、17 基板脱着ロボット(駆動機構)、19 基板収容カセット(搬送手段)、21 キャリア(第一キャリア、第二キャリア)、25 シャッタ(第一開閉部)、31 電極ユニット、36 シャッタ(第二開閉部)、104 ボトムセル(所望の膜)、W 基板、W1 成膜処理前の基板、W2 成膜処理後の基板、150 窒素ガス供給手段、151 窒素ガス供給配管(供給管)、158 窒素ガス供給源、170 窒素ガス噴射機構、171 第1配管、172 第2配管、173 第3配管、175 噴射口、176 噴射口部材、177 窒素ガス排出孔、180 第一オゾン含有ガス供給手段、190 第二オゾン含有ガス供給手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CVD法を用いて、真空中で基板にシリコン膜を成膜する成膜室と、
前記成膜室内にオゾン含有ガスを導入可能な第一オゾン含有ガス供給手段と、を少なくとも備え、
前記成膜室内に前記オゾン含有ガスを導入することにより、前記シリコン膜の成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化させること、を特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記基板を、被成膜面が重力方向と略並行を成すように保持可能に構成されたキャリアを、さらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
複数の前記キャリアが並列に配置可能に構成されるとともに、
前記成膜室において、前記複数のキャリアに保持された複数の前記基板に同時に成膜を行うこと、を特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記成膜室に第一開閉部を介して固定され、真空排気可能な仕込・取出室と、
前記仕込・取出室内にオゾン含有ガスを導入可能な第二オゾン含有ガス供給手段と、をさらに備え、
前記仕込・取出室内に前記オゾン含有ガスを導入することにより、該仕込・取出室内に存在する前記副生成物を酸化させること、を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項5】
前記成膜室において、酸化した前記副生成物に対して窒素ガスを噴射可能な複数の窒素ガス噴射機構を有する窒素ガス供給管と、該窒素ガス供給管に前記窒素ガスを供給する窒素ガス供給源と、をさらに備え、
前記窒素ガス噴射機構には、前記窒素ガスを噴射する噴射口が形成されていること、を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項6】
前記噴射口は、前記窒素ガス供給管に対して回転しながら前記窒素ガスを噴射すること、を特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記成膜室において、前記シリコン膜として、薄膜太陽電池の微結晶シリコン膜からなる発電層を成膜することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項8】
CVD法を用いて、真空の成膜空間において基板にシリコン膜を成膜した後に、
前記成膜空間内にオゾン含有ガスを導入して、前記シリコン成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化すること、を特徴とするメンテナンス方法。
【請求項9】
前記成膜空間が減圧状態において、前記副生成物の酸化を行うことを特徴とする請求項8に記載のメンテナンス方法。
【請求項10】
前記成膜空間を大気解放する前に、前記副生成物の酸化を行うことを特徴とする請求項8又は9に記載のメンテナンス方法。
【請求項11】
前記成膜空間において連続して前記シリコン膜を成膜する際に、成膜と成膜の間において、前記副生成物の酸化を行うこと、を特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載のメンテナンス方法。
【請求項1】
CVD法を用いて、真空中で基板にシリコン膜を成膜する成膜室と、
前記成膜室内にオゾン含有ガスを導入可能な第一オゾン含有ガス供給手段と、を少なくとも備え、
前記成膜室内に前記オゾン含有ガスを導入することにより、前記シリコン膜の成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化させること、を特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記基板を、被成膜面が重力方向と略並行を成すように保持可能に構成されたキャリアを、さらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
複数の前記キャリアが並列に配置可能に構成されるとともに、
前記成膜室において、前記複数のキャリアに保持された複数の前記基板に同時に成膜を行うこと、を特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記成膜室に第一開閉部を介して固定され、真空排気可能な仕込・取出室と、
前記仕込・取出室内にオゾン含有ガスを導入可能な第二オゾン含有ガス供給手段と、をさらに備え、
前記仕込・取出室内に前記オゾン含有ガスを導入することにより、該仕込・取出室内に存在する前記副生成物を酸化させること、を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項5】
前記成膜室において、酸化した前記副生成物に対して窒素ガスを噴射可能な複数の窒素ガス噴射機構を有する窒素ガス供給管と、該窒素ガス供給管に前記窒素ガスを供給する窒素ガス供給源と、をさらに備え、
前記窒素ガス噴射機構には、前記窒素ガスを噴射する噴射口が形成されていること、を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項6】
前記噴射口は、前記窒素ガス供給管に対して回転しながら前記窒素ガスを噴射すること、を特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記成膜室において、前記シリコン膜として、薄膜太陽電池の微結晶シリコン膜からなる発電層を成膜することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項8】
CVD法を用いて、真空の成膜空間において基板にシリコン膜を成膜した後に、
前記成膜空間内にオゾン含有ガスを導入して、前記シリコン成膜中に生成したポリシランを含む副生成物を酸化すること、を特徴とするメンテナンス方法。
【請求項9】
前記成膜空間が減圧状態において、前記副生成物の酸化を行うことを特徴とする請求項8に記載のメンテナンス方法。
【請求項10】
前記成膜空間を大気解放する前に、前記副生成物の酸化を行うことを特徴とする請求項8又は9に記載のメンテナンス方法。
【請求項11】
前記成膜空間において連続して前記シリコン膜を成膜する際に、成膜と成膜の間において、前記副生成物の酸化を行うこと、を特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載のメンテナンス方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
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【図23】
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【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【公開番号】特開2011−168870(P2011−168870A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36453(P2010−36453)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
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