成膜装置及び基板処理装置
【課題】複数の処理部を順番に通過させ、複数種類の処理ガスを順番に供給すると共にプラズマ処理を行うにあたり、基板に均一な成膜処理を行うこと。
【解決手段】回転テーブルにおける基板載置領域側の面にプラズマ生成用のガスを供給するガス供給部と、プラズマ生成用のガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの中央部から外周部に亘って伸びるように当該回転テーブルにおける基板載置領域側の面に対向して設けられたアンテナと、を備えるように装置を構成する。そして、前記アンテナは、前記基板載置領域における回転テーブルの中央部側との離間距離が、前記基板載置領域における回転テーブルの外周部側との離間距離よりも3mm以上大きくなるように配置する。
【解決手段】回転テーブルにおける基板載置領域側の面にプラズマ生成用のガスを供給するガス供給部と、プラズマ生成用のガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの中央部から外周部に亘って伸びるように当該回転テーブルにおける基板載置領域側の面に対向して設けられたアンテナと、を備えるように装置を構成する。そして、前記アンテナは、前記基板載置領域における回転テーブルの中央部側との離間距離が、前記基板載置領域における回転テーブルの外周部側との離間距離よりも3mm以上大きくなるように配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に複数種類の処理ガスを順番に供給して成膜処理を行う成膜装置及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下「ウエハ」と言う)などの基板に対して例えばシリコン酸化膜(SiO2)などの薄膜の成膜を行う手法の一つとして、互いに反応する複数種類の処理ガスを基板の表面に順番に供給して反応生成物を積層するALD(Atomic Layer Deposition)法が挙げられる。このALD法を用いて成膜処理を行う成膜装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、真空容器内に設けられた回転テーブル上に複数枚の基板を周方向に並べると共に、例えば回転テーブルに対向するように配置された複数のガス供給部に対して回転テーブルを相対的に回転させることにより、これら基板に対して各処理ガスを順番に供給する装置が知られている。
【0003】
ところで、ALD法では、通常のCVD(Chemical Vapor Deposition)法と比べて、ウエハの加熱温度(成膜温度)が例えば300℃程度と低いので、例えば処理ガス中に含まれている有機物などが薄膜中に不純物として取り込まれてしまう場合がある。そこで、例えば特許文献2に記載されているように、薄膜の成膜と共にプラズマを用いた改質処理を行うことにより、このような不純物を薄膜から取り除くこと、あるいは低減させることができると考えられる。
【0004】
しかし回転テーブル上でプラズマを形成して前記改質処理を行う場合、回転テーブルの中心部側と外周部側との間で速度が異なる。つまり、ウエハの面内で前記回転テーブルの中心部側と回転テーブルの外周側との間でプラズマに曝される時間が異なる。その結果としてウエハの面内で均一な処理を行うことが難しく、膜厚の均一性が低くなってしまうおそれがあるという問題がある。特許文献2の発明についても膜厚の均一性を高める手法について記載されているが、より高い均一性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−239102
【特許文献2】特開2011−40574
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、複数の処理部を順番に通過させ、複数種類の処理ガスを順番に供給すると共にプラズマ処理を行うにあたり、基板に均一な処理を行うことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成膜装置は、真空容器内にて、基板載置領域に基板を載置した回転テーブルを回転させることにより前記基板を公転させて複数の処理部を順番に通過させ、これにより複数種類の処理ガスを順番に供給するサイクルを行って基板に成膜処理を行う成膜装置において、
前記回転テーブルにおける基板載置領域側の面にプラズマ生成用のガスを供給するガス供給部と、
前記プラズマ生成用のガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの中央部から外周部に亘って伸びるように当該回転テーブルにおける基板載置領域側の面に対向して設けられたアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記基板載置領域における回転テーブルの中央部側との離間距離が、前記基板載置領域における回転テーブルの外周部側との離間距離よりも3mm以上大きくなるように配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の具体的な態様としては例えば下記の通りである。
(1)前記アンテナを回転テーブルの面に対して平行に見たときに、回転テーブルの中央部側が高くなるように折れ曲がった形状または湾曲した形状である。
(2)前記アンテナは、上下方向に伸びる軸の周りにコイル状に巻かれた構造であり、少なくとも最下部のアンテナ部分における回転テーブルとの離間距離が既述のように記載されたように設定されている。
(3)前記アンテナを支持する支持部と、この支持部を介してアンテナの上下方向の傾きを調整するための傾き調整機構を備えたことを特徴とする。
(4)前記傾き調整機構は、アンテナの傾きを調整するための駆動機構を備えている。
(5)入力された成膜処理の種別に応じてアンテナの傾きを決定し、決定された傾きになるように前記駆動機構を制御する制御部を備えている。
(6)前記アンテナは、複数の直線部分と、直線部分同士を連結する節部分と、からなり、前記節部分にて折り曲げることができるように構成されている。
【0009】
本発明の基板処理装置は、真空容器内にて、基板載置領域に基板を載置した回転テーブルを回転させることにより前記基板を公転させて複数の処理部を順番に通過させ、これにより複数種類の処理ガスを順番に供給するサイクルを行って基板にガス処理を行う基板処理装置において、
前記回転テーブルにおける基板載置領域側の面にプラズマ生成用のガスを供給するガス供給部と、
前記プラズマ生成用のガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの中央部から外周部に亘って伸びるように当該回転テーブルにおける基板載置領域側の面に対向して設けられたアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記基板載置領域における回転テーブルの中央部側との離間距離が、前記基板載置領域における回転テーブルの外周部側との離間距離よりも3mm以上大きくなるように配置されていることを特徴とする基板処理装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転テーブルの中央部から外周部に亘って伸びるように当該回転テーブルの基板載置領域に対向するプラズマ形成用のアンテナが設けられ、前記アンテナの基板載置領域における回転テーブルの中央部側の離間距離が、回転テーブルの外周部側の離間距離よりも大きい。従って、回転テーブルに載置された基板の前記回転テーブルの中心部側は比較的弱い強度のプラズマに比較的長い時間曝され、前記回転テーブルの外周部側は比較的強い強度のプラズマに比較的短い時間曝される。その結果として基板の面内に均一性高く成膜などの処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態の成膜装置の縦断側面図である。
【図2】前記成膜装置の概略断面斜視図である。
【図3】前記成膜装置の横断平面図である。
【図4】前記成膜装置を構成するプラズマ生成部の縦断側面図である。
【図5】前記プラズマ生成部の縦断正面図である。
【図6】前記プラズマ生成部の分解斜視図である。
【図7】ウエハとアンテナとの位置関係を説明する説明図である。
【図8】前記成膜装置に形成されるガス流を示す説明図である。
【図9】前記プラズマ生成部により発生するプラズマの模式図である。
【図10】プラズマ生成部を構成するアンテナの他の例を示す側面図である。
【図11】前記アンテナのさらに他の例を示す側面図である。
【図12】第2の実施の形態に係るプラズマ生成部の斜視図である。
【図13】前記第2の実施形態のプラズマ生成部の縦断側面図である。
【図14】前記第2の実施形態のプラズマ生成部の縦断側面図である。
【図15】第3の実施形態に係るプラズマ生成部の斜視図である。
【図16】前記第3の実施形態のプラズマ生成部の縦断側面図である。
【図17】前記第3の実施形態のプラズマ生成部の縦断側面図である。
【図18】第4の実施形態に係るプラズマ生成部の斜視図である。
【図19】前記第4の実施形態の成膜装置を構成する制御部のブロック図である。
【図20】評価試験で用いたアンテナの側面図である。
【図21】評価試験で用いたアンテナの側面図である。
【図22】評価試験で用いたアンテナの側面図である。
【図23】評価試験で用いたアンテナの上面図である。
【図24】評価試験で用いたアンテナの上面図である。
【図25】評価試験の結果を示すグラフ図である。
【図26】評価試験の結果を示すグラフ図である。
【図27】評価試験の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の実施の形態の成膜装置1について、図1〜図3を参照して説明する。図1、図2、図3は夫々成膜装置1の縦断側面図、概略断面斜視図、横断平面図である。この成膜装置1は、ALD法によりウエハWの表面に反応生成物を積層して薄膜を成膜すると共に、この薄膜に対してプラズマ改質を行う。成膜装置1は概ね円形状の扁平な真空容器11と、真空容器11内に水平に設けられた円形の回転テーブル2と、を備えている。真空容器11の周囲は大気雰囲気であり、成膜処理中にその内部空間は真空雰囲気とされる。天板12と、真空容器11の側壁及び底部をなす容器本体13とにより構成されている。図1中11aは、真空容器11内を気密に保つためのシール部材であり、13aは容器本体13の中央部を塞ぐカバーである。
【0013】
回転テーブル2は、回転駆動機構14に接続され、回転駆動機構14によりその中心軸周りに周方向に回転する。回転テーブル2の表面側(一面側)には、前記回転方向に沿って5つの基板載置領域である凹部21が形成されており、この凹部21に基板であるウエハWが載置される。そして、回転テーブル2の回転により凹部21のウエハWが前記中心軸周りに公転する。図中15はウエハWの搬送口である。図3中16は搬送口15を開閉自在なシャッタである(図2では省略している)。各凹部21の底面には図示しない3つの孔が回転テーブル2の厚さ方向に形成されており、この孔を介して昇降自在な不図示の昇降ピンが回転テーブル2の表面にて突没し、ウエハWの搬送機構と凹部21との間でウエハWの受け渡しを行う。
【0014】
回転テーブル2上には、当該回転テーブル2の外周から中心へ向かって伸びる棒状の第1の処理ガスノズル31、分離ガスノズル32、第2の処理ガスノズル33、プラズマ発生用ガスノズル34及び分離ガスノズル35が、この順で時計回りに配設されている。これらのガスノズル31〜35の下方には、ノズル長さ方向に沿って多数の吐出口30が形成されている。
【0015】
第1の処理ガスノズル31は、Si(シリコン)を含むBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン、SiH2(NH−C(CH3)3)2)ガスを吐出し、第2の処理ガスノズル33は、O3(オゾン)ガスを吐出する。プラズマ発生用ガスノズル34は、例えばAr(アルゴン)ガスとO2ガスとの混合ガス(Ar:O2=100:0.5〜100:20程度の体積比)を吐出する。分離ガスノズル32、35は、N2(窒素)ガスを吐出する。
【0016】
真空容器11の天板12は、下方に突出する扇状の2つの突状部36を備え、突状部36は周方向に間隔をおいて形成されている。前記分離ガスノズル32、35は、夫々突状部36にめり込むと共に、当該突状部36を周方向に分割するように設けられている。前記第1の処理ガスノズル31、第2の処理ガスノズル33は、各突状部36から離れて設けられている。
【0017】
第1の処理ガスノズル31の下方領域は、Si含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1をなし、第2の処理ガスノズル33の下方領域は、ウエハWに吸着したSi含有ガスとO3ガスとを反応させるための第2の処理領域P2をなす。突状部36、36の下方は分離領域D、Dとして構成されている。成膜処理時に分離ガスノズル32、34から前記分離領域Dに供給されたN2ガスが、当該分離領域Dを周方向に広がり、回転テーブル2上でBTBASガスとO3ガスとが混合されることを防ぎ、これらのガスを後述の排気口23、24へと押し流す。
【0018】
図中22は回転テーブル2の外周側の下方に設けられるリング部材であり、フッ素系のクリーニングガスを真空容器11内に通流させた時に当該クリーニングガスから真空容器11の内壁を保護する。リング部材22の上面には排気口23、24が開口しており、各排気口23、24は、各々真空ポンプなどの真空排気手段2Aに接続されている。排気口23は第1の処理ガスノズル31からのBTBASガスを排気し、排気口24は第2の処理ガスノズル33からのO3ガス及びプラズマ発生用ガスノズル34から供給された前記混合ガスを排気する。また各排気口23、24から分離ガスノズル32、35から供給されたN2ガスが排気される。図2中25はリング部材22の上面に設けられた溝部であり、排気口24に向かう上記の各ガスをガイドする。
【0019】
回転テーブル2の中心部領域37にN2ガスが供給され、天板12において、円形に下方に突出した突状部38に形成された流路39を介して、このN2ガスが回転テーブル2の径方向外側に供給されて、前記中心部領域37での各ガスの混合が防がれる。突状部39の外周には突状部36、36の内周が接続されている。また、図示は省略しているが、カバー13a内及び回転テーブル2の裏面側にもN2ガスが供給され、処理ガスがパージされるようになっている。
【0020】
真空容器11の底部、即ち回転テーブル2の下方には回転テーブル2から離れた位置にヒータ17が設けられている。ヒータ17の回転テーブル2への輻射熱により回転テーブル2が昇温し、凹部21に載置されたウエハWが加熱される。図中17aはヒータ17表面に成膜されることを防ぐためのシールドである。
【0021】
次に、成膜装置1に設けられたプラズマ生成部4について図4〜図6も参照しながら説明する。図4はプラズマ生成部4を回転テーブル2の径方向に沿って見た縦断側面図であり、図5はプラズマ生成部4を回転テーブル2の回転中心側から外周側に見た縦断正面図である。図6は、プラズマ生成部4の各部の分解斜視図である。
【0022】
プラズマ生成部4は、前記天板12の厚さ方向に貫通した開口部41に設けられている。開口部41は既述のプラズマ発生用ガスノズル34の上方側(詳しくはこのプラズマ発生用ガスノズル34よりも僅かに回転テーブル2の回転方向上流側の位置からこのノズル34の前記回転方向下流側の分離領域Dよりも僅かにノズル34側に寄った位置まで)における領域に形成されている。当該開口部41は平面視概ね扇形に形成されており、回転テーブル2の回転中心よりも若干外側位置から回転テーブル2の外縁よりも外側位置に亘って形成されている。この開口部41には、天板12の上端縁から下端縁に向かって当該開口部41の開口径が段階的に小さくなるように、例えば上下に段部42、43が周方向に亘って形成されている。
【0023】
プラズマ生成部4は、アンテナ44と、ファラデーシールド51と、絶縁部材59と、放電部をなす筐体61とを備えている。筐体61は、例えば石英などの誘電体により構成された透磁体(磁力を透過させる材質)であり、前記開口部41を塞ぐように平面視概ね扇状に形成されており、図3に示す扇の外形線のなす角は例えば68°である。筐体61は、その厚さが例えば20mmである扇状の水平板62を備えている。この水平板62の周縁部が上方に突出して側壁63を形成し、この側壁63及び水平板62により凹部64が形成されている、側壁63の上縁部は周方向に亘って水平に伸び出してフランジ部65を形成している。この筐体61を開口部41内に落とし込むと、フランジ部65と下段側の段部43とが互いに係止する。図4中66はフランジ部65と段部43をシールするOリングである。60はフランジ部65上に設けられるリング部材であり、上段側の段部44に係止され、フランジ部65をOリング66に押圧して、真空容器11内を気密に保つ。
【0024】
水平板62の下方には当該水平板62の周縁部に沿って突起部67が形成されている。この突起部67は、当該突起部67と水平板62と回転テーブル2とに囲まれるプラズマ形成領域(放電空間)68にN2ガス及びO3ガスが流入することを阻止し、これらのガスのプラズマが互いに反応してNOxガスが生成することを防ぐ。また、この突起部67は前記Oリング66が、プラズマに曝されてパーティクルが発生しないように、プラズマがプラズマ形成領域68からOリング66に至るまでの距離を長くし、当該シール部材66に至るまでにプラズマが失活しやすくする役割も有している。
【0025】
前記プラズマ発生用ガスノズル34は、突起部67に設けられた切り欠きを介して前記プラズマ形成領域68に進入している。プラズマ発生用ガスノズル34の吐出口30は、当該回転方向上流側から流れるO3ガスやN2ガスのプラズマ形成領域68への進入を防ぐことができるように、回転テーブル2の回転方向上流側の斜め下方に向かって開口している。なお、他のガスノズルの吐出口30は鉛直下方に向けて開口している。前記プラズマ発生用ガスは、前記排気口24に吸引され、プラズマ形成領域68の外周側及び回転方向下流側から当該領域68の外部へ排出される。
【0026】
回転テーブル2の表面及びウエハWの表面からプラズマ形成領域68の天井部(水平板62)までの高さは例えば4〜60mmこの例では30mmである。突起部67の下端と回転テーブル2の上面との間の離間寸法は、0.5〜4mmこの例では2mmである。この突起部67の幅寸法及び高さ寸法は、夫々例えば10mm及び28mmである。
【0027】
前記筐体61の凹部64内には、電界遮蔽部材である前記ファラデーシールド51が設けられている。ファラデーシールド51は金属板(銅(Cu)板または銅板にニッケル(Ni)膜及び金(Au)膜を下側からメッキした板材)により構成されている。ファラデーシールド51は前記凹部64の水平板62に積層される底板52と、底板52の外周端から周方向に亘って上方側に伸びる垂直板53と、を備えておりており、上側が開放された箱状に形成されている。また、回転テーブル2の回転中心部から外周部側へファラデーシールド51を見たとき、ファラデーシールド51から各々右側、左側へ伸び出す縁板54、54が設けられており、各縁板54は前記垂直板53の上端に設けられている。各縁板54は天板12の開口部41の縁部に設けられる図示しない導電性部材に接続され、この導電性部材を介してファラデーシールド51は接地されている。ファラデーシールド51の各部の厚み寸法は例えば1mmである。
【0028】
ファラデーシールド51の底板52には多数のスリット55が設けられている。各スリット55は後述のアンテナ44を構成するコイル状に巻回された金属線の伸長方向と直交するように伸び、当該金属線の伸長方向に沿って間隔をおいて配列されており、その配列方向は回転テーブル2の径方向に引き延ばされた八角形状をなしている。各図では簡略して示しているが、実際にはスリットは150個以上形成される。スリット55の幅寸法は1〜5mm例えば2mm程度であり、スリット55、55間の離間寸法が1〜5mm例えば2mm程度である。また、スリット55に囲まれるように底板52には前記八角形状の開口部56が形成されている。開口部56とスリット55との離間距離は例えば2mmである。
【0029】
ファラデーシールド51は、高周波が印加されるアンテナ44の周囲に発生する電界及び磁界(電磁界)のうち電界成分がウエハWに下方に向かうことを阻止してウエハWの内部に形成された電気配線の電気的なダメージを防ぐ一方で、スリット55を介して磁界成分を下方に通過させて前記プラズマ形成領域68にプラズマを形成する。また、前記開口部56の役割は、スリット55と同様に磁界成分を通過させることである。
【0030】
ファラデーシールド51の底板52上には、当該底板52を覆うように板状の前記絶縁部材59が積層されている。この絶縁部材59はアンテナ44とファラデーシールド51とを絶縁するために設けられ、例えば石英により構成され、その厚み寸法が例えば2mmである。なお、この絶縁部材59は板状に形成することに限られず、上側が開口した箱状に形成してもよい。
【0031】
続いてアンテナ44について説明する。このアンテナ44は例えば銅の表面をニッケルメッキ及び金メッキの順で被覆した中空の金属線により構成されている。そして、アンテナ44は、この金属線を3重に巻回して上下に積層したコイル型電極45を備えるように構成されており、当該コイル型電極45の両端部は、上側へ向かって引き上げられている。この引き上げられた部分を被支持端部46、46と記載する。金属線の内部空間は、図示しない流通機構により当該金属線を冷却するための冷却水が流通し、高周波印加時の放熱が抑制されるように構成されている。
【0032】
前記被支持端部は46、46は各々矩形状の接続部材71、71を介して例えば銅からなるバスバー72、72の一端に固定されることにより支持されている。各バスバー72、72の他端は天板12上を天板12の外側へ向かって伸び、整合器73を介して周波数が例えば13.56MHzの高周波電源74に接続されている。バスバー72及び接続部材71は導電路をなし、高周波電源74からの高周波電力をコイル型電極45に供給することができる。それによって上記のように当該コイル型電極45の周囲に誘導電界及び誘導磁界が形成され、プラズマ形成領域68に誘導結合プラズマが形成されて放電状態となる。
【0033】
アンテナ44の前記コイル型電極45は前記絶縁部材59上に設けられ、その周囲はファラデーシールド51の垂直板53に囲まれている。このコイル型電極45の構成について更に説明する。コイル型電極45は平面で見て回転テーブル2の径方向に引き延ばされた概ね八角形状に巻回されている。この八角形状の角部は直線部分同士を連結し、屈曲した節部40をなしている。そして、コイル型電極45は、筐体61、ファラデーシールド51及び絶縁部材59を介して回転テーブル2に対向して設けられ、コイル型電極45は、図4に示すようにウエハW上において回転テーブル2の回転中心部側の端部から回転テーブル2の外周部側の端部に至るまで形成されている。それによって、その下方にプラズマを形成して、ウエハW全体がプラズマ処理されるようになっている。
【0034】
既述のように回転テーブル2が回転すると、前記回転中心部側に比べて前記外周部側では周速度が速くなるため、ウエハWの面内において外周部側では回転中心部側に比べてプラズマに曝される時間が短い。そこで、図4に示すように、側面から見てアンテナ44のコイル型電極45は前記節部40にて屈曲され、前記回転中心部側の方が外周部側に比べて高い山型に形成されており、外周部側から回転中心部側に向かうに従って回転テーブル2からの離間距離が大きくなるように構成されている。つまり、コイル型電極45の回転中心部側は外周部側に比べてウエハWまでの離間距離が大きく、ウエハWに到達するまでの磁界成分の減衰量が大きい。従ってプラズマ形成領域68において、前記回転中心部側は外周部側に比べて、プラズマの強度が弱くなる。
【0035】
図4中のh1は、絶縁部材59の表面においてウエハWの前記回転中心部から外周部に向かう径方向の中央部に重なる位置からコイル型電極45までの高さを示しており、この例では2mm〜10mmである。また、図4中のh2は絶縁部材59の表面から前記回転中心部側のコイル型電極45の端部までの高さを示しており、この例では4mm〜15mmである。アンテナ44の各部の高さ位置はこの例に限定されない。図7は、コイル型電極45を側面から見たときの凹部21に載置されたウエハWとコイル型電極45との位置関係を示している。図中h3は、基板載置領域である凹部21即ちウエハWにおける回転テーブル2の回転中心部側の端部と、外周部側の端部との各々からコイル型電極45に至るまでの離間距離の差を表している。このh3が3mm以上になるように、コイル型電極45を形成することで上記のようにプラズマ強度の分布を制御し、ウエハWの面内に均一性高く処理を行うことができる。
【0036】
また、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部70が設けられており、この制御部70のメモリ内には後述の成膜処理及び改質処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは、後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体から制御部70内にインストールされる。
【0037】
次に、上述実施の形態の作用について各ガスの流れを示す図8を参照しながら説明する。先ず、シャッタ16を開いた状態で回転テーブル2を間欠的に回転させながら、図示しない搬送アームにより搬送口15を介して回転テーブル2上に例えば5枚のウエハWを載置する。次いで、シャッタ16を閉じ、真空排気手段2Aにより真空容器11内を引き切りの状態にすると共に、回転テーブル2を例えば120rpmで時計回りに回転させながらヒータ17によりウエハWを例えば300℃に加熱する。
【0038】
続いて、処理ガスノズル31、33から夫々Si含有ガス及びO3ガスを吐出すると共に、プラズマ発生用ガスノズル34からArガス及びO2ガスの混合ガスを例えば5slmで吐出する。また、分離ガスノズル32、35及び突状部39からN2ガスを各々所定の流量で吐出する。そして、真空排気手段2Aにより真空容器11内を予め設定した処理圧力例えば133Paに調整する。また、アンテナ44に対して、例えば1500Wの高周波電力を供給する。
【0039】
プラズマ発生用ガスノズル34から吐出したプラズマ発生用ガスは、筐体61の突起部67の下方側に衝突し、前記上流側から筐体61の下方のプラズマ形成領域68に流入しようとする前記O3ガスやN2ガスをこの領域68の外側へと追い出す。そして、このプラズマ発生用ガスは、突起部67により回転テーブル2の回転方向下流側へと押し戻されて行く。この時、既述の各ガス流量に設定すること及び突起部67を設けたことにより、プラズマ形成領域68は、真空容器11内の他の領域よりも例えば10Pa程度陽圧となり、これによってもプラズマ形成領域68へのO3ガスやN2ガスの侵入が阻止される。また、突状部38から供給されるN2ガスについても、このように陽圧になったプラズマ形成領域68への進入が抑えられ、当該領域68を避けるように回転テーブル2の周縁部へと流れる。更に、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間においてN2ガスを供給しているので、図8に示すように、Si含有ガスとO3ガス及びプラズマ発生用ガスとが互いに混合しないように各ガスが排気されることとなる。
【0040】
ウエハWの表面では、回転テーブル2の回転によって第1の処理領域P1においてSi含有ガスが吸着し、次いで第2の処理領域P2においてウエハW上に吸着したSi含有ガスが酸化され、シリコン酸化膜(SiO2)の分子層が1層あるいは複数層形成される。ここでプラズマ生成部4を模式的に示した図9も参照しながら説明する。高周波電源74から供給される高周波電力により、アンテナ44のコイル型電極45の周囲に電界及び磁界が発生する。既述のように発生した電界は、ファラデーシールド51により反射あるいは吸収されることにより、プラズマ形成領域68への到達が阻害される。一方、磁界はファラデーシールド51のスリット55及び筐体61を透過し、回転テーブル2上へ供給されてプラズマ発生用ガスノズル34から吐出されたプラズマ発生用ガスを活性化し、イオンやラジカルなどのプラズマPが生成する。
【0041】
既述のように、アンテナ44のコイル型電極45は回転テーブル2の外周部側から回転中心部側に向かうに従って回転テーブル2からの距離が大きくなるように構成されているので、前記回転中心部側ほど回転テーブル2に到達するまでの磁界の減衰量が大きい。従って回転テーブル2の表面に形成されるプラズマPは前記外周部側から中心部側に向かうに従ってその強度が小さくなる。その結果として、ウエハWにおいて前記外周部側ほど、プラズマ強度が大きい雰囲気を比較的高い速度で通過し、前記回転中心部側ほどプラズマ強度が小さい雰囲気を比較的低い速度で通過する。
【0042】
そして、このように形成されたプラズマPにより、ウエハW表面に形成されたシリコン酸化膜が改質される。具体的には例えばシリコン酸化膜から有機物などの不純物が放出されたり、シリコン酸化膜内の元素が再配列されてシリコン酸化膜の緻密化(高密度化)が図られる。そして、シリコン酸化膜表面にはSi含有ガスの吸着サイトとなるOH基が均一性高く形成されると共に、ウエハW表面のO3ガスによりウエハW表面を構成するSi(シリコン)の酸化が均一性高く進行する。
【0043】
回転テーブル2の回転が続けられ、このように各ウエハWにおいてSi含有ガスの吸着、O3ガスによるウエハW表面の酸化、プラズマPによる酸化シリコンの改質処理が順次繰り返され、SiO2分子がウエハWに積層される。所望の膜厚のSiO2膜が形成されると、各ガスの供給が停止し、ウエハWは搬入時とは逆の動作で装置から搬出される。
【0044】
上述の成膜装置1では、回転テーブル2の外周部側よりも回転中心部側の高さが高くなるように、側面視折り曲げられたコイル型電極45からなるアンテナ44が設けられている。回転テーブル2が回転するときに外周部側が回転中心部側に比べて周速度が大きいため、プラズマ形成領域68のプラズマPに曝される時間が短くなるが、このようにアンテナ44を構成して回転中心部側のプラズマ強度を外周部側に比べて抑えることで、ウエハWの面内に均一性高いプラズマ処理を行うことができ、均一性高いSiO2膜を成膜することができる。
【0045】
アンテナ44のコイル型電極45は、図10に示すように側面から見て弓状に湾曲し、前記回転テーブル2の外周部側よりも回転中心部側が高くなるように形成してもよく、図11に示すように側面から見て直線状に金属線が伸びるようにコイル型電極45が形成されていてもよい。これらのようにコイル型電極45を形成した場合も、既述のように回転中心部側が外周部側よりもウエハWから離れるように設定される。
【0046】
(第2の実施形態)
続いて第2の実施形態について、第1の実施形態との差異点を中心に説明する。図12は第2の実施形態のプラズマ生成部8の斜視図であり、図13及び図14はこのプラズマ生成部8の側面図である。このプラズマ生成部8では、回転テーブル2の外周部側の絶縁部材59上に側面視L字型の角度調整用部材81が設けられており、前記L字の垂直部82はファラデーシールド51の垂直板53に固定されている。前記L字の水平部83の下側には切り欠き84が形成されており、コイル型電極45の前記外周部側の最下段の金属線がこの切り欠き84を通過し、絶縁部材59と水平部83との間に挟み込まれている。そして、図13、図14に示すようにこの切り欠き84を通過する金属線を軸としてアンテナ44が回動自在に構成され、この回動軸は回転テーブル2の径方向に直交する水平軸である。
【0047】
各バスバー72にはスリット85が形成され、接続部材71はこのスリット85に対応したピン86を備えており、スリット85の任意の位置で当該ピン86を固定することができ、それによって、前記コイル型電極45を、回転テーブル2の中心部側の高さが外周部側の高さよりも高くなるように水平面に対して任意の角度位置で固定することができると共に、例えば1°刻みで前記角度を変更することができる。つまり、前記角度調整用部材81は、支持部であるバスバー72を介してアンテナ44の上下方向の傾きを調整する傾き調整機構をなす。
【0048】
この場合にもウエハWにおける回転中心部側、外周部側のアンテナ44に対する離間距離の差h3が既述の範囲内に収まるように設定される。そして当該範囲内において、ユーザはウエハWに対して行う処理、例えばウエハWに形成する膜厚や回転テーブル2の回転速度に応じてこのコイル型電極45の角度を変更する。そして、回転テーブル2の径方向に沿ったウエハWの径方向のプラズマ分布を適切にして、ウエハWの面内に均一な処理を行うことができる。
【0049】
(第3の実施形態)
この第3の実施形態のプラズマ生成部9は、第2の実施形態と同様にアンテナ44の上下方向の傾きを調整する。図15はプラズマ生成部9の斜視図であり、図16及び図17は当該プラズマ生成部9の側面図である。このアンテナ44には各々ブロック状に形成された4つの間隔調整部材91及び引き上げ部材92が設けられている。これらの間隔調整部材91及び引き上げ部材92には上下方向に各々間隔をおいて3つの孔が設けられており、アンテナ44を構成する金属線は、これらの孔に差し込まれて巻回されることにより、前記コイル型電極45を形成しており、アンテナ44の角度を変更するにあたり各段の金属線が互いに接触することが防がれるようになっている。この間隔調整部材91は他の実施形態のアンテナ44に使用してもよい。
【0050】
第2の実施形態と同様にファラデーシールド51には角度調整用部材81が設けられ、アンテナ44はその角度が調整自在に構成される。前記引き上げ部材92は、コイル型電極45の回転テーブル2の中心部側に配置されており、引き上げ部材92の上側には上方へ伸びるロッド93が接続されている。ロッド93は引き上げ部材92に対して前記アンテナ44の回動軸に並行する軸回りに回動自在に構成され、アンテナ44の角度を変えたときにアンテナ44に加わる圧力を抑えることができる。ロッド93の先端から当該ロッド93の長さ方向に伸びるように長ネジ94が設けられている。
【0051】
筐体61のフランジ部65の回転方向上流側と回転方向下流側との間を橋渡しするように橋状部材95が設けられており、この橋状部材95は筐体61に対して固定されている。この橋状部材95の上側には垂直に伸びる1対の脚部96と脚部96の上端同士を接続する水平部97とを備えた支持台98が設けられている。橋状部材95及び支持台98の前記水平部97には各々上下方向に貫通孔95a、98aが設けられており、各貫通孔95a、98aは互いに重なるように設けられている。貫通孔95a、98aには各々ロッド93、長ネジ94が貫通している。図中99、99は水平部97に対して長ネジ94を固定するためのナットである。
【0052】
図16、17に示すように、長ネジ94は、ナット99、99により水平部97に対して任意の高さ位置に取り付けることができ、この取り付ける位置に応じて上記のコイル型電極45の前記回転中心部側が持ち上がり、前記高さの差h3、即ちアンテナ44の水平面に対する角度を自在に調整できるようになっている。また、バスバー72、72はそのように角度を任意に変更するために可撓性を有する薄板により構成されている。
【0053】
前記水平部97上にはリニアゲージ101が、支持部材100により支持されて設けられている。リニアゲージ101は、測定本体部102と測定本体部102から鉛直下方に向かって伸びる筒部103と筒部103内から鉛直下方に伸びる昇降軸104とを備えている。前記筒部103に対して昇降軸104は昇降自在に構成され、昇降軸104の先端は、前記長ネジ94の先端に接触している。また、測定本体部102は不図示の表示部に接続されており、この昇降軸104の先端位置と、筒部103の所定の高さ位置例えば筒部103の先端位置との間の離間距離h4を測定し、前記表示部に表示できるように構成されている。
【0054】
予め所望のSiO2膜の膜厚及び回転テーブル2の回転速度ごとに適切な前記離間距離h4を求めておく。そして、上記の成膜処理を開始する前にこれら処理条件に応じて前記高さh4が適切な値になるように変更する。これによってウエハWの面内に、より均一性の高い成膜処理を行うことができる。
【0055】
(第4の実施形態)
第3の実施形態との差異点を中心に図18を参照しながら第4の実施形態のプラズマ生成部10の構成を説明する。このプラズマ生成部10の水平部97上には駆動機構111が設けられている。駆動機構111は下方に伸びる昇降軸112を昇降させる。昇降軸112の下端は、ロッド93に接続されており、ロッド93の昇降に応じてアンテナ44の水平面に対する角度が自在に変更できる。昇降軸112の下端の高さは制御部70から送信される制御信号によって制御され、それによって例えば図中にθ1で示す水平面に対するアンテナ44の傾きが制御される。
【0056】
図19は、前記制御部70の構成を示すブロック図である。図中113はバス、114はCPU、115はプログラム格納部でありプログラム116を格納する。117はウエハWに形成するSiO2膜の膜厚(nm)と、前記SiO2膜を形成するために回転テーブルが回転する1分間あたりの回転数(rpm)と、前記アンテナ傾きθ1との対応関係が格納されたテーブルである。118は例えばキーボードやタッチパネル等により構成される入力部であり、ユーザは所望の膜厚及び前記回転数をこの入力部118から設定する。
【0057】
プログラム116は、第1の実施形態と同様に成膜装置1の各部の動作を制御する他に入力部118から設定された設定に基づいて駆動機構111の動作を制御する。具体的に入力部118から、前記膜厚及び回転数を入力すると、テーブルからこれらの入力値に対応するアンテナ傾きθ1が読み出され、この読み出された傾きθ1になるように駆動機構111が動作してアンテナ44が傾けられる。そして、第1の実施形態で説明したように成膜処理が開始され、設定した回転数で回転テーブル2が回転し、アンテナ44の傾きに応じた分布でプラズマが形成され、設定した膜厚のSiO2膜が得られる。これら一連の工程はプログラム116により制御される。このように装置を構成しても上記の各実施形態と同様にウエハWの面内に均一性高い処理を行うことができる。膜厚と回転数と傾きθ1との関係は予め測定することにより求めておく。
【0058】
また、既述の例では、Si含有ガスとO3ガスとを用いてシリコン酸化膜を成膜する例について説明したが、例えば第1の処理ガス及び第2の処理ガスとして夫々Si含有ガスとアンモニア(NH3)ガスとを用いて窒化シリコン膜を成膜しても良い。この場合には、プラズマを発生させるための処理ガスとしては、アルゴンガス及び窒素ガスまたはアンモニアガスなどが用いられる。
更に、例えば第1の処理ガス及び第2の処理ガスとして夫々TiCl2(塩化チタン)ガスとNH3(アンモニア)ガスとを用いて窒化チタン(TiN)膜を成膜しても良い。この場合には、ウエハWとしてはチタンからなる基板が用いられ、プラズマを発生させるためのプラズマ生成ガスとしては、アルゴンガス及び窒素ガスなどが用いられる。
【0059】
また、3種類以上の処理ガスを順番に供給して反応生成物を積層するようにしても良い。具体的には、例えばSr(THD)2(ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト)やSr(Me5Cp)2(ビスペンタメチルシクロペンタジエニエルストロンチウム)等のSr原料と、例えばTi(OiPr)2(THD)2(チタニウムビスイソプロポキサイドビステトラメチルヘプタンジオナト)やTi(OiPr)(チタニウムテトライソプロポキサイド)等のTi原料と、をウエハWに供給した後、ウエハWにO3ガスを供給して、SrとTiとを含む酸化膜であるSTO膜からなる薄膜を積層しても良い。
【0060】
上記の装置では、分離領域Dにガスノズル32、35からN2ガスを供給したが、この分離領域Dとしては、各処理領域P1、P2間を区画する壁部を設けて、ガスノズル32、35を配置しなくてもよい。また、上記のようにファラデーシールド51を設けて電界を遮蔽することが好ましいが、このファラデーシールド51を設けずに処理を行ってもよい。
【0061】
筐体61を構成する材質としては、石英に代えて、アルミナ(Al2O3)、イットリアなどの耐プラズマエッチング材を用いても良いし、例えばパイレックスガラス(登録商標)などの耐熱ガラスの表面にこれら耐プラズマエッチング材をコーティングしても良い。即ち、筐体61はプラズマに対する耐性が高く、且つ磁界を透過する材質(誘電体)により構成すれば良い。また、ファラデーシールド51の上方に板状の絶縁部材59を配置して、当該ファラデーシールド51とアンテナ44とを絶縁しているが、この絶縁部材59を配置する代わりに、例えばアンテナ44を石英などの絶縁材により被覆するようにしても良い。
【0062】
既述の実施形態ではSiを含むガスとO3ガスとをウエハWにこの順番で供給して反応生成物を成膜した後、プラズマ生成部4により当該反応生成物の改質を行う例について説明したが、反応生成物を成膜する時に用いられるO3ガスをプラズマ化しても良い。即ち、ガスノズル33を設けずに上記のガスノズル34からO3ガスを供給し、プラズマ形成領域68で、Siの酸化とSiO2の改質とを行ってもよい。
【0063】
上記の実施形態では、反応生成物の成膜と当該反応生成物の改質処理とを交互に行ったが、反応生成物を例えば70層(およそ10nmの膜厚)程度積層した後、これら反応生成物の積層体に対して改質処理を行っても上記と同様の効果が得られる。具体的には、Si含有ガス及びO3ガスを供給して反応生成物の成膜処理を行っている間はアンテナ44への高周波電力の供給を停止する。そして、積層体の形成後、これらSi含有ガス及びO3ガスの供給を停止してアンテナ44へ高周波電力を供給して、ウエハWにプラズマ処理を行うことができる。
【0064】
また、上記の例では基板処理装置の一実施形態として成膜装置1について示したが、このような成膜装置として構成することには限られず例えばエッチング装置として基板処理装置を構成してもよい。具体的には、上記のプラズマ生成部4を回転テーブル2の周方向に2箇所設けて各箇所で上記のプラズマ処理が行えるように装置を構成する。各プラズマ生成部4により形成されるプラズマ形成領域68を第1のプラズマ形成領域、第2のプラズマ形成領域とする。第1のプラズマ形成領域に設けられるガスノズル34からは、例えばポリシリコン膜をエッチングするためのBr(臭素)系のエッチングガスを供給し、第2のプラズマ形成領域に設けられるガスノズル34からは、シリコン酸化膜をエッチングするための例えばCF系のエッチングガスを供給する。
【0065】
ウエハW上には、例えばポリシリコン膜とシリコン酸化膜とが交互に複数層に亘って積層されると共に、この積層膜の上層側に、ホールや溝についてパターニングされたレジスト膜が形成されている。このウエハWに対して前記基板処理装置を用いてプラズマエッチング処理を行うと、例えば第1のプラズマ形成領域において、レジスト膜を介して積層膜の上層側のポリシリコン膜がエッチングされる。次いで、第2のプラズマ形成領域において、このポリシリコン膜の下層側のシリコン酸化膜がレジスト膜を介してエッチングされ、こうして回転テーブル2の回転により、共通のレジスト膜を介して積層膜が上層側から下層側に向かって順番にエッチングされていく。このエッチング装置においても成膜装置1と同様にプラズマによる処理量をウエハWの面内で揃えることができるので、ウエハWの面内で均一性高い処理を行うことができる。また、そのように第1のプラズマ形成領域及び第2のプラズマ形成領域を形成した場合、各領域のガスノズル34から異なるガスを回転テーブル2に供給して、各領域でウエハWの表面の改質処理を行ってもよい。
【0066】
(評価試験1)
アンテナ44のコイル型電極45の形状を各々変更した成膜装置1を用いて上記した手順でウエハWにSiO2膜を成膜し、前記ウエハWにおいて回転テーブル2の外周部から回転中心部に向かう直径上の複数の位置でSiO2膜の膜厚の測定を行った。成膜処理に用いたウエハWの表面には膜が形成されておらず、ウエハW全体がシリコンにより構成されている。前記コイル型電極45は各実施形態と同様に3重に金属線を巻回し、平面形状が八角形になるように5種類作成しているが、各々上下方向への屈曲度合いを変更している。各アンテナ44を44A〜44Eとして表記する。
【0067】
図20はアンテナ44Aの概略側面、図21はアンテナ44Bの概略側面、図22はアンテナ44C〜44Eの概略側面を夫々示しており、これら図20〜22では左側が回転テーブル2の中心部側、右側が外周部側である。また、図23はアンテナ44Aのコイル型電極45の概略上面を示し、図24はアンテナ44B〜44Eのコイル型電極45の上面を示している。各図23、24では上側が前記回転中心部側、下側が外周部側である。
【0068】
アンテナ44Aは、側面から見て前記回転中心部側から外周部側に至るまで、最下段の金属線が絶縁部材59に接している。図23にはT1〜T4でコイルの上段側の金属線の表面のポイントを各々示しており、これらのポイントT1〜T4の絶縁部材59からの高さはいずれも30mmである。アンテナ44Bは、アンテナ44Aのコイル型電極45の回転中心部側、外周部側を夫々上方、下方に向けて折り曲げたように構成されている。これらの折り曲げ位置としては夫々コイル型電極45の回転中心部側の端部(アンテナ先端部とする)、外周部側の端部(アンテナ根本部とする)から夫々50mmである。前記絶縁部材59からアンテナ先端部の下端までの高さh5は6mmであり、コイルの下端の金属線において、アンテナ根本部側の折り曲げ位置からアンテナ根本部の下端までの高さh6は2mmである。また、図23に示すポイントT1〜T8の絶縁部材59からの高さは順に34m、34mm、30mm、30mm、30mm、32mm、35mm、36mmである。図中59A、59Bは台座であり、回転中心部側、外周部側に夫々配置され、コイル型電極45の下部を支持している。各台座59A、59Bは石英により構成されており、その高さは2mmである。
【0069】
アンテナ44C〜44Eはアンテナ44Bと略同様に構成されているが、コイル型電極45の回転中心部側がより高く引き上げられるように屈曲されている。また、台座59Aの高さを4mmとしている。以下にアンテナ44Bとのその他の差異点を説明する。アンテナ44Cでは前記高さh5は10mmであり、ポイントT1〜T8の絶縁部材59からの高さは順に37m、37mm、30mm、30mm、35mm、34mm、34mm、35mmである。アンテナ44Dでは前記h5は8mm、ポイントT1〜T8の前記各高さはアンテナ44Cと同じである。アンテナ44Eの前記h5は9.5mmであり、ポイントT1〜T8の前記各高さはアンテナ44Cと同じである。
【0070】
図25はこの評価試験1の結果を使用したアンテナ毎に示したグラフである。縦軸はウエハWの各測定位置におけるSiO2の膜厚(nm)、横軸は測定位置を示している。この測定位置については、上記のウエハWの直径において、回転テーブル2の回転中心部側の端部からの距離(mm)を示している。すなわち、測定位置が0mm、150mm、300mmとして表すポイントは、夫々ウエハWの前記回転中心部側の端部、ウエハWの中心、回転テーブル2の外周部側の端部である。このグラフよりアンテナ44Aを用いた処理では、前記回転中心部側の膜厚が、前記外周部側の膜厚に比べて小さく、これらの膜厚の差が比較的大きい。しかし、アンテナ44B〜44Eを用いた処理では、これらの膜厚の差が低減されており、均一性高い処理が行われていることが分かる。これは、アンテナ44Aを用いた場合、前記回転中心部側ではプラズマの強度が強すぎて吸着サイトの形成が大きく抑えられてしまったが、アンテナ44B〜44Eを用いることで、当該回転中心部側のプラズマの強度が弱められ、吸着サイトがウエハWの面内に均一性高く分布したためであると考えられる。
【0071】
この評価試験1で、アンテナ44A〜44Eを夫々用いた処理の各測定位置の膜厚の平均値は、順に9.24nm、9.29nm、9.28nm、9.34nm、9.35nmであり、各処理で大きな差は見られなかった。ただし、これらの処理について均一性(=(測定値の最大値−測定値の最小値)/(平均値×2)×100)を算出したところ、アンテナ44A〜44Eを夫々用いた処理で、順に0.40、0.25、0.21、0.22、0.20であった。つまり、アンテナ44Aを用いた処理が最も膜厚の均一性が低く、アンテナ44Eを用いた処理が最も膜厚の均一性が高かった。
【0072】
(評価試験2)
ウエハWとして、表面に酸化膜が用いられていることを除いて評価試験1と同様の実験を行った。図26はこの評価試験2の結果を示したグラフである。評価試験1の結果と同様にアンテナ44Aによる処理では回転中心部側の膜厚が、外周部側の膜厚に比べて小さくなっており、これらの膜厚の差が比較的大きい。しかしアンテナ44B〜44Eを用いた処理では、これら回転中心部側の膜厚と外周部側の膜厚との差が低減されている。また、アンテナ44A〜44Eを用いた処理の各測定位置における膜厚の平均値は、順に7.52nm、7.67nm、7.73nm、7.60nm、7.68nmであり、各処理で大きな差は見られなかったが前記均一性については、0.80、0.42、0.58、0.39、0.20となった。つまり、アンテナ44Aを用いた処理が最も膜厚の均一性が低く、アンテナ44Eを用いた処理が最も膜厚の均一性が高かった。
【0073】
(評価試験3)
処理ガスノズル31からSi含有ガスの供給を行わないことを除いて評価試験1と同様に処理を行い、ウエハW表面のSiが酸化されることによって形成されるSiO2膜の膜厚の測定を行った。図27はこの評価試験3の結果を示したグラフである。このグラフより、アンテナ44Aによる処理では回転中心部側の膜厚が外周部側の膜厚に比べて大きい。即ち外周部側よりも中心部側の方がプラズマの強度が強く酸化が大きく進行している。アンテナ44B〜44Eを用いた処理においても回転中心部側の膜厚が外周部側の膜厚に比べて大きいが、アンテナ44Aの結果に比べて回転中心部側の膜厚が小さく、当該回転中心部側の膜厚と外周部側の膜厚との差が小さくなっている。つまりアンテナ44B〜44Eを用いた場合、アンテナ44Aを用いる場合に比べて中心部側のプラズマの強度が弱まり、ウエハWに均一性高い酸化処理が行われていることが分かる。
【0074】
アンテナ44A〜44Eを用いた処理の各測定位置における膜厚の平均値は、順に3.46nm、3.32nm、3.25nm、3.32nm、3.31nmであり、各処理で大きな差は見られなかった。しかし、算出した均一性は、アンテナ44A〜44Eを用いた場合、夫々6.40、4.39、3.22、4.07、3.56であった。つまり、アンテナ44Aを用いた処理が最も膜厚の均一性が低く、アンテナ44Cを用いた処理が最も膜厚の均一性が高かった。
【0075】
この評価試験1〜3の結果から、アンテナ44の回転中心部側を外周部側よりも回転テーブル2から離れるように折り曲げることで、プラズマの分布を制御し、ウエハWに均一性高い処理を行うことができることが分かる。従って、本発明の効果が示された。
【符号の説明】
【0076】
1 成膜装置
11 真空容器
12 天板
31、33 処理ガスノズル
34 プラズマ発生用ガスノズル
44 アンテナ
45 コイル型電極
51 ファラデーシールド
59 絶縁部材
61 筐体
70 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に複数種類の処理ガスを順番に供給して成膜処理を行う成膜装置及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下「ウエハ」と言う)などの基板に対して例えばシリコン酸化膜(SiO2)などの薄膜の成膜を行う手法の一つとして、互いに反応する複数種類の処理ガスを基板の表面に順番に供給して反応生成物を積層するALD(Atomic Layer Deposition)法が挙げられる。このALD法を用いて成膜処理を行う成膜装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、真空容器内に設けられた回転テーブル上に複数枚の基板を周方向に並べると共に、例えば回転テーブルに対向するように配置された複数のガス供給部に対して回転テーブルを相対的に回転させることにより、これら基板に対して各処理ガスを順番に供給する装置が知られている。
【0003】
ところで、ALD法では、通常のCVD(Chemical Vapor Deposition)法と比べて、ウエハの加熱温度(成膜温度)が例えば300℃程度と低いので、例えば処理ガス中に含まれている有機物などが薄膜中に不純物として取り込まれてしまう場合がある。そこで、例えば特許文献2に記載されているように、薄膜の成膜と共にプラズマを用いた改質処理を行うことにより、このような不純物を薄膜から取り除くこと、あるいは低減させることができると考えられる。
【0004】
しかし回転テーブル上でプラズマを形成して前記改質処理を行う場合、回転テーブルの中心部側と外周部側との間で速度が異なる。つまり、ウエハの面内で前記回転テーブルの中心部側と回転テーブルの外周側との間でプラズマに曝される時間が異なる。その結果としてウエハの面内で均一な処理を行うことが難しく、膜厚の均一性が低くなってしまうおそれがあるという問題がある。特許文献2の発明についても膜厚の均一性を高める手法について記載されているが、より高い均一性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−239102
【特許文献2】特開2011−40574
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、複数の処理部を順番に通過させ、複数種類の処理ガスを順番に供給すると共にプラズマ処理を行うにあたり、基板に均一な処理を行うことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成膜装置は、真空容器内にて、基板載置領域に基板を載置した回転テーブルを回転させることにより前記基板を公転させて複数の処理部を順番に通過させ、これにより複数種類の処理ガスを順番に供給するサイクルを行って基板に成膜処理を行う成膜装置において、
前記回転テーブルにおける基板載置領域側の面にプラズマ生成用のガスを供給するガス供給部と、
前記プラズマ生成用のガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの中央部から外周部に亘って伸びるように当該回転テーブルにおける基板載置領域側の面に対向して設けられたアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記基板載置領域における回転テーブルの中央部側との離間距離が、前記基板載置領域における回転テーブルの外周部側との離間距離よりも3mm以上大きくなるように配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の具体的な態様としては例えば下記の通りである。
(1)前記アンテナを回転テーブルの面に対して平行に見たときに、回転テーブルの中央部側が高くなるように折れ曲がった形状または湾曲した形状である。
(2)前記アンテナは、上下方向に伸びる軸の周りにコイル状に巻かれた構造であり、少なくとも最下部のアンテナ部分における回転テーブルとの離間距離が既述のように記載されたように設定されている。
(3)前記アンテナを支持する支持部と、この支持部を介してアンテナの上下方向の傾きを調整するための傾き調整機構を備えたことを特徴とする。
(4)前記傾き調整機構は、アンテナの傾きを調整するための駆動機構を備えている。
(5)入力された成膜処理の種別に応じてアンテナの傾きを決定し、決定された傾きになるように前記駆動機構を制御する制御部を備えている。
(6)前記アンテナは、複数の直線部分と、直線部分同士を連結する節部分と、からなり、前記節部分にて折り曲げることができるように構成されている。
【0009】
本発明の基板処理装置は、真空容器内にて、基板載置領域に基板を載置した回転テーブルを回転させることにより前記基板を公転させて複数の処理部を順番に通過させ、これにより複数種類の処理ガスを順番に供給するサイクルを行って基板にガス処理を行う基板処理装置において、
前記回転テーブルにおける基板載置領域側の面にプラズマ生成用のガスを供給するガス供給部と、
前記プラズマ生成用のガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの中央部から外周部に亘って伸びるように当該回転テーブルにおける基板載置領域側の面に対向して設けられたアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記基板載置領域における回転テーブルの中央部側との離間距離が、前記基板載置領域における回転テーブルの外周部側との離間距離よりも3mm以上大きくなるように配置されていることを特徴とする基板処理装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転テーブルの中央部から外周部に亘って伸びるように当該回転テーブルの基板載置領域に対向するプラズマ形成用のアンテナが設けられ、前記アンテナの基板載置領域における回転テーブルの中央部側の離間距離が、回転テーブルの外周部側の離間距離よりも大きい。従って、回転テーブルに載置された基板の前記回転テーブルの中心部側は比較的弱い強度のプラズマに比較的長い時間曝され、前記回転テーブルの外周部側は比較的強い強度のプラズマに比較的短い時間曝される。その結果として基板の面内に均一性高く成膜などの処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態の成膜装置の縦断側面図である。
【図2】前記成膜装置の概略断面斜視図である。
【図3】前記成膜装置の横断平面図である。
【図4】前記成膜装置を構成するプラズマ生成部の縦断側面図である。
【図5】前記プラズマ生成部の縦断正面図である。
【図6】前記プラズマ生成部の分解斜視図である。
【図7】ウエハとアンテナとの位置関係を説明する説明図である。
【図8】前記成膜装置に形成されるガス流を示す説明図である。
【図9】前記プラズマ生成部により発生するプラズマの模式図である。
【図10】プラズマ生成部を構成するアンテナの他の例を示す側面図である。
【図11】前記アンテナのさらに他の例を示す側面図である。
【図12】第2の実施の形態に係るプラズマ生成部の斜視図である。
【図13】前記第2の実施形態のプラズマ生成部の縦断側面図である。
【図14】前記第2の実施形態のプラズマ生成部の縦断側面図である。
【図15】第3の実施形態に係るプラズマ生成部の斜視図である。
【図16】前記第3の実施形態のプラズマ生成部の縦断側面図である。
【図17】前記第3の実施形態のプラズマ生成部の縦断側面図である。
【図18】第4の実施形態に係るプラズマ生成部の斜視図である。
【図19】前記第4の実施形態の成膜装置を構成する制御部のブロック図である。
【図20】評価試験で用いたアンテナの側面図である。
【図21】評価試験で用いたアンテナの側面図である。
【図22】評価試験で用いたアンテナの側面図である。
【図23】評価試験で用いたアンテナの上面図である。
【図24】評価試験で用いたアンテナの上面図である。
【図25】評価試験の結果を示すグラフ図である。
【図26】評価試験の結果を示すグラフ図である。
【図27】評価試験の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の実施の形態の成膜装置1について、図1〜図3を参照して説明する。図1、図2、図3は夫々成膜装置1の縦断側面図、概略断面斜視図、横断平面図である。この成膜装置1は、ALD法によりウエハWの表面に反応生成物を積層して薄膜を成膜すると共に、この薄膜に対してプラズマ改質を行う。成膜装置1は概ね円形状の扁平な真空容器11と、真空容器11内に水平に設けられた円形の回転テーブル2と、を備えている。真空容器11の周囲は大気雰囲気であり、成膜処理中にその内部空間は真空雰囲気とされる。天板12と、真空容器11の側壁及び底部をなす容器本体13とにより構成されている。図1中11aは、真空容器11内を気密に保つためのシール部材であり、13aは容器本体13の中央部を塞ぐカバーである。
【0013】
回転テーブル2は、回転駆動機構14に接続され、回転駆動機構14によりその中心軸周りに周方向に回転する。回転テーブル2の表面側(一面側)には、前記回転方向に沿って5つの基板載置領域である凹部21が形成されており、この凹部21に基板であるウエハWが載置される。そして、回転テーブル2の回転により凹部21のウエハWが前記中心軸周りに公転する。図中15はウエハWの搬送口である。図3中16は搬送口15を開閉自在なシャッタである(図2では省略している)。各凹部21の底面には図示しない3つの孔が回転テーブル2の厚さ方向に形成されており、この孔を介して昇降自在な不図示の昇降ピンが回転テーブル2の表面にて突没し、ウエハWの搬送機構と凹部21との間でウエハWの受け渡しを行う。
【0014】
回転テーブル2上には、当該回転テーブル2の外周から中心へ向かって伸びる棒状の第1の処理ガスノズル31、分離ガスノズル32、第2の処理ガスノズル33、プラズマ発生用ガスノズル34及び分離ガスノズル35が、この順で時計回りに配設されている。これらのガスノズル31〜35の下方には、ノズル長さ方向に沿って多数の吐出口30が形成されている。
【0015】
第1の処理ガスノズル31は、Si(シリコン)を含むBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン、SiH2(NH−C(CH3)3)2)ガスを吐出し、第2の処理ガスノズル33は、O3(オゾン)ガスを吐出する。プラズマ発生用ガスノズル34は、例えばAr(アルゴン)ガスとO2ガスとの混合ガス(Ar:O2=100:0.5〜100:20程度の体積比)を吐出する。分離ガスノズル32、35は、N2(窒素)ガスを吐出する。
【0016】
真空容器11の天板12は、下方に突出する扇状の2つの突状部36を備え、突状部36は周方向に間隔をおいて形成されている。前記分離ガスノズル32、35は、夫々突状部36にめり込むと共に、当該突状部36を周方向に分割するように設けられている。前記第1の処理ガスノズル31、第2の処理ガスノズル33は、各突状部36から離れて設けられている。
【0017】
第1の処理ガスノズル31の下方領域は、Si含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1をなし、第2の処理ガスノズル33の下方領域は、ウエハWに吸着したSi含有ガスとO3ガスとを反応させるための第2の処理領域P2をなす。突状部36、36の下方は分離領域D、Dとして構成されている。成膜処理時に分離ガスノズル32、34から前記分離領域Dに供給されたN2ガスが、当該分離領域Dを周方向に広がり、回転テーブル2上でBTBASガスとO3ガスとが混合されることを防ぎ、これらのガスを後述の排気口23、24へと押し流す。
【0018】
図中22は回転テーブル2の外周側の下方に設けられるリング部材であり、フッ素系のクリーニングガスを真空容器11内に通流させた時に当該クリーニングガスから真空容器11の内壁を保護する。リング部材22の上面には排気口23、24が開口しており、各排気口23、24は、各々真空ポンプなどの真空排気手段2Aに接続されている。排気口23は第1の処理ガスノズル31からのBTBASガスを排気し、排気口24は第2の処理ガスノズル33からのO3ガス及びプラズマ発生用ガスノズル34から供給された前記混合ガスを排気する。また各排気口23、24から分離ガスノズル32、35から供給されたN2ガスが排気される。図2中25はリング部材22の上面に設けられた溝部であり、排気口24に向かう上記の各ガスをガイドする。
【0019】
回転テーブル2の中心部領域37にN2ガスが供給され、天板12において、円形に下方に突出した突状部38に形成された流路39を介して、このN2ガスが回転テーブル2の径方向外側に供給されて、前記中心部領域37での各ガスの混合が防がれる。突状部39の外周には突状部36、36の内周が接続されている。また、図示は省略しているが、カバー13a内及び回転テーブル2の裏面側にもN2ガスが供給され、処理ガスがパージされるようになっている。
【0020】
真空容器11の底部、即ち回転テーブル2の下方には回転テーブル2から離れた位置にヒータ17が設けられている。ヒータ17の回転テーブル2への輻射熱により回転テーブル2が昇温し、凹部21に載置されたウエハWが加熱される。図中17aはヒータ17表面に成膜されることを防ぐためのシールドである。
【0021】
次に、成膜装置1に設けられたプラズマ生成部4について図4〜図6も参照しながら説明する。図4はプラズマ生成部4を回転テーブル2の径方向に沿って見た縦断側面図であり、図5はプラズマ生成部4を回転テーブル2の回転中心側から外周側に見た縦断正面図である。図6は、プラズマ生成部4の各部の分解斜視図である。
【0022】
プラズマ生成部4は、前記天板12の厚さ方向に貫通した開口部41に設けられている。開口部41は既述のプラズマ発生用ガスノズル34の上方側(詳しくはこのプラズマ発生用ガスノズル34よりも僅かに回転テーブル2の回転方向上流側の位置からこのノズル34の前記回転方向下流側の分離領域Dよりも僅かにノズル34側に寄った位置まで)における領域に形成されている。当該開口部41は平面視概ね扇形に形成されており、回転テーブル2の回転中心よりも若干外側位置から回転テーブル2の外縁よりも外側位置に亘って形成されている。この開口部41には、天板12の上端縁から下端縁に向かって当該開口部41の開口径が段階的に小さくなるように、例えば上下に段部42、43が周方向に亘って形成されている。
【0023】
プラズマ生成部4は、アンテナ44と、ファラデーシールド51と、絶縁部材59と、放電部をなす筐体61とを備えている。筐体61は、例えば石英などの誘電体により構成された透磁体(磁力を透過させる材質)であり、前記開口部41を塞ぐように平面視概ね扇状に形成されており、図3に示す扇の外形線のなす角は例えば68°である。筐体61は、その厚さが例えば20mmである扇状の水平板62を備えている。この水平板62の周縁部が上方に突出して側壁63を形成し、この側壁63及び水平板62により凹部64が形成されている、側壁63の上縁部は周方向に亘って水平に伸び出してフランジ部65を形成している。この筐体61を開口部41内に落とし込むと、フランジ部65と下段側の段部43とが互いに係止する。図4中66はフランジ部65と段部43をシールするOリングである。60はフランジ部65上に設けられるリング部材であり、上段側の段部44に係止され、フランジ部65をOリング66に押圧して、真空容器11内を気密に保つ。
【0024】
水平板62の下方には当該水平板62の周縁部に沿って突起部67が形成されている。この突起部67は、当該突起部67と水平板62と回転テーブル2とに囲まれるプラズマ形成領域(放電空間)68にN2ガス及びO3ガスが流入することを阻止し、これらのガスのプラズマが互いに反応してNOxガスが生成することを防ぐ。また、この突起部67は前記Oリング66が、プラズマに曝されてパーティクルが発生しないように、プラズマがプラズマ形成領域68からOリング66に至るまでの距離を長くし、当該シール部材66に至るまでにプラズマが失活しやすくする役割も有している。
【0025】
前記プラズマ発生用ガスノズル34は、突起部67に設けられた切り欠きを介して前記プラズマ形成領域68に進入している。プラズマ発生用ガスノズル34の吐出口30は、当該回転方向上流側から流れるO3ガスやN2ガスのプラズマ形成領域68への進入を防ぐことができるように、回転テーブル2の回転方向上流側の斜め下方に向かって開口している。なお、他のガスノズルの吐出口30は鉛直下方に向けて開口している。前記プラズマ発生用ガスは、前記排気口24に吸引され、プラズマ形成領域68の外周側及び回転方向下流側から当該領域68の外部へ排出される。
【0026】
回転テーブル2の表面及びウエハWの表面からプラズマ形成領域68の天井部(水平板62)までの高さは例えば4〜60mmこの例では30mmである。突起部67の下端と回転テーブル2の上面との間の離間寸法は、0.5〜4mmこの例では2mmである。この突起部67の幅寸法及び高さ寸法は、夫々例えば10mm及び28mmである。
【0027】
前記筐体61の凹部64内には、電界遮蔽部材である前記ファラデーシールド51が設けられている。ファラデーシールド51は金属板(銅(Cu)板または銅板にニッケル(Ni)膜及び金(Au)膜を下側からメッキした板材)により構成されている。ファラデーシールド51は前記凹部64の水平板62に積層される底板52と、底板52の外周端から周方向に亘って上方側に伸びる垂直板53と、を備えておりており、上側が開放された箱状に形成されている。また、回転テーブル2の回転中心部から外周部側へファラデーシールド51を見たとき、ファラデーシールド51から各々右側、左側へ伸び出す縁板54、54が設けられており、各縁板54は前記垂直板53の上端に設けられている。各縁板54は天板12の開口部41の縁部に設けられる図示しない導電性部材に接続され、この導電性部材を介してファラデーシールド51は接地されている。ファラデーシールド51の各部の厚み寸法は例えば1mmである。
【0028】
ファラデーシールド51の底板52には多数のスリット55が設けられている。各スリット55は後述のアンテナ44を構成するコイル状に巻回された金属線の伸長方向と直交するように伸び、当該金属線の伸長方向に沿って間隔をおいて配列されており、その配列方向は回転テーブル2の径方向に引き延ばされた八角形状をなしている。各図では簡略して示しているが、実際にはスリットは150個以上形成される。スリット55の幅寸法は1〜5mm例えば2mm程度であり、スリット55、55間の離間寸法が1〜5mm例えば2mm程度である。また、スリット55に囲まれるように底板52には前記八角形状の開口部56が形成されている。開口部56とスリット55との離間距離は例えば2mmである。
【0029】
ファラデーシールド51は、高周波が印加されるアンテナ44の周囲に発生する電界及び磁界(電磁界)のうち電界成分がウエハWに下方に向かうことを阻止してウエハWの内部に形成された電気配線の電気的なダメージを防ぐ一方で、スリット55を介して磁界成分を下方に通過させて前記プラズマ形成領域68にプラズマを形成する。また、前記開口部56の役割は、スリット55と同様に磁界成分を通過させることである。
【0030】
ファラデーシールド51の底板52上には、当該底板52を覆うように板状の前記絶縁部材59が積層されている。この絶縁部材59はアンテナ44とファラデーシールド51とを絶縁するために設けられ、例えば石英により構成され、その厚み寸法が例えば2mmである。なお、この絶縁部材59は板状に形成することに限られず、上側が開口した箱状に形成してもよい。
【0031】
続いてアンテナ44について説明する。このアンテナ44は例えば銅の表面をニッケルメッキ及び金メッキの順で被覆した中空の金属線により構成されている。そして、アンテナ44は、この金属線を3重に巻回して上下に積層したコイル型電極45を備えるように構成されており、当該コイル型電極45の両端部は、上側へ向かって引き上げられている。この引き上げられた部分を被支持端部46、46と記載する。金属線の内部空間は、図示しない流通機構により当該金属線を冷却するための冷却水が流通し、高周波印加時の放熱が抑制されるように構成されている。
【0032】
前記被支持端部は46、46は各々矩形状の接続部材71、71を介して例えば銅からなるバスバー72、72の一端に固定されることにより支持されている。各バスバー72、72の他端は天板12上を天板12の外側へ向かって伸び、整合器73を介して周波数が例えば13.56MHzの高周波電源74に接続されている。バスバー72及び接続部材71は導電路をなし、高周波電源74からの高周波電力をコイル型電極45に供給することができる。それによって上記のように当該コイル型電極45の周囲に誘導電界及び誘導磁界が形成され、プラズマ形成領域68に誘導結合プラズマが形成されて放電状態となる。
【0033】
アンテナ44の前記コイル型電極45は前記絶縁部材59上に設けられ、その周囲はファラデーシールド51の垂直板53に囲まれている。このコイル型電極45の構成について更に説明する。コイル型電極45は平面で見て回転テーブル2の径方向に引き延ばされた概ね八角形状に巻回されている。この八角形状の角部は直線部分同士を連結し、屈曲した節部40をなしている。そして、コイル型電極45は、筐体61、ファラデーシールド51及び絶縁部材59を介して回転テーブル2に対向して設けられ、コイル型電極45は、図4に示すようにウエハW上において回転テーブル2の回転中心部側の端部から回転テーブル2の外周部側の端部に至るまで形成されている。それによって、その下方にプラズマを形成して、ウエハW全体がプラズマ処理されるようになっている。
【0034】
既述のように回転テーブル2が回転すると、前記回転中心部側に比べて前記外周部側では周速度が速くなるため、ウエハWの面内において外周部側では回転中心部側に比べてプラズマに曝される時間が短い。そこで、図4に示すように、側面から見てアンテナ44のコイル型電極45は前記節部40にて屈曲され、前記回転中心部側の方が外周部側に比べて高い山型に形成されており、外周部側から回転中心部側に向かうに従って回転テーブル2からの離間距離が大きくなるように構成されている。つまり、コイル型電極45の回転中心部側は外周部側に比べてウエハWまでの離間距離が大きく、ウエハWに到達するまでの磁界成分の減衰量が大きい。従ってプラズマ形成領域68において、前記回転中心部側は外周部側に比べて、プラズマの強度が弱くなる。
【0035】
図4中のh1は、絶縁部材59の表面においてウエハWの前記回転中心部から外周部に向かう径方向の中央部に重なる位置からコイル型電極45までの高さを示しており、この例では2mm〜10mmである。また、図4中のh2は絶縁部材59の表面から前記回転中心部側のコイル型電極45の端部までの高さを示しており、この例では4mm〜15mmである。アンテナ44の各部の高さ位置はこの例に限定されない。図7は、コイル型電極45を側面から見たときの凹部21に載置されたウエハWとコイル型電極45との位置関係を示している。図中h3は、基板載置領域である凹部21即ちウエハWにおける回転テーブル2の回転中心部側の端部と、外周部側の端部との各々からコイル型電極45に至るまでの離間距離の差を表している。このh3が3mm以上になるように、コイル型電極45を形成することで上記のようにプラズマ強度の分布を制御し、ウエハWの面内に均一性高く処理を行うことができる。
【0036】
また、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部70が設けられており、この制御部70のメモリ内には後述の成膜処理及び改質処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは、後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体から制御部70内にインストールされる。
【0037】
次に、上述実施の形態の作用について各ガスの流れを示す図8を参照しながら説明する。先ず、シャッタ16を開いた状態で回転テーブル2を間欠的に回転させながら、図示しない搬送アームにより搬送口15を介して回転テーブル2上に例えば5枚のウエハWを載置する。次いで、シャッタ16を閉じ、真空排気手段2Aにより真空容器11内を引き切りの状態にすると共に、回転テーブル2を例えば120rpmで時計回りに回転させながらヒータ17によりウエハWを例えば300℃に加熱する。
【0038】
続いて、処理ガスノズル31、33から夫々Si含有ガス及びO3ガスを吐出すると共に、プラズマ発生用ガスノズル34からArガス及びO2ガスの混合ガスを例えば5slmで吐出する。また、分離ガスノズル32、35及び突状部39からN2ガスを各々所定の流量で吐出する。そして、真空排気手段2Aにより真空容器11内を予め設定した処理圧力例えば133Paに調整する。また、アンテナ44に対して、例えば1500Wの高周波電力を供給する。
【0039】
プラズマ発生用ガスノズル34から吐出したプラズマ発生用ガスは、筐体61の突起部67の下方側に衝突し、前記上流側から筐体61の下方のプラズマ形成領域68に流入しようとする前記O3ガスやN2ガスをこの領域68の外側へと追い出す。そして、このプラズマ発生用ガスは、突起部67により回転テーブル2の回転方向下流側へと押し戻されて行く。この時、既述の各ガス流量に設定すること及び突起部67を設けたことにより、プラズマ形成領域68は、真空容器11内の他の領域よりも例えば10Pa程度陽圧となり、これによってもプラズマ形成領域68へのO3ガスやN2ガスの侵入が阻止される。また、突状部38から供給されるN2ガスについても、このように陽圧になったプラズマ形成領域68への進入が抑えられ、当該領域68を避けるように回転テーブル2の周縁部へと流れる。更に、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間においてN2ガスを供給しているので、図8に示すように、Si含有ガスとO3ガス及びプラズマ発生用ガスとが互いに混合しないように各ガスが排気されることとなる。
【0040】
ウエハWの表面では、回転テーブル2の回転によって第1の処理領域P1においてSi含有ガスが吸着し、次いで第2の処理領域P2においてウエハW上に吸着したSi含有ガスが酸化され、シリコン酸化膜(SiO2)の分子層が1層あるいは複数層形成される。ここでプラズマ生成部4を模式的に示した図9も参照しながら説明する。高周波電源74から供給される高周波電力により、アンテナ44のコイル型電極45の周囲に電界及び磁界が発生する。既述のように発生した電界は、ファラデーシールド51により反射あるいは吸収されることにより、プラズマ形成領域68への到達が阻害される。一方、磁界はファラデーシールド51のスリット55及び筐体61を透過し、回転テーブル2上へ供給されてプラズマ発生用ガスノズル34から吐出されたプラズマ発生用ガスを活性化し、イオンやラジカルなどのプラズマPが生成する。
【0041】
既述のように、アンテナ44のコイル型電極45は回転テーブル2の外周部側から回転中心部側に向かうに従って回転テーブル2からの距離が大きくなるように構成されているので、前記回転中心部側ほど回転テーブル2に到達するまでの磁界の減衰量が大きい。従って回転テーブル2の表面に形成されるプラズマPは前記外周部側から中心部側に向かうに従ってその強度が小さくなる。その結果として、ウエハWにおいて前記外周部側ほど、プラズマ強度が大きい雰囲気を比較的高い速度で通過し、前記回転中心部側ほどプラズマ強度が小さい雰囲気を比較的低い速度で通過する。
【0042】
そして、このように形成されたプラズマPにより、ウエハW表面に形成されたシリコン酸化膜が改質される。具体的には例えばシリコン酸化膜から有機物などの不純物が放出されたり、シリコン酸化膜内の元素が再配列されてシリコン酸化膜の緻密化(高密度化)が図られる。そして、シリコン酸化膜表面にはSi含有ガスの吸着サイトとなるOH基が均一性高く形成されると共に、ウエハW表面のO3ガスによりウエハW表面を構成するSi(シリコン)の酸化が均一性高く進行する。
【0043】
回転テーブル2の回転が続けられ、このように各ウエハWにおいてSi含有ガスの吸着、O3ガスによるウエハW表面の酸化、プラズマPによる酸化シリコンの改質処理が順次繰り返され、SiO2分子がウエハWに積層される。所望の膜厚のSiO2膜が形成されると、各ガスの供給が停止し、ウエハWは搬入時とは逆の動作で装置から搬出される。
【0044】
上述の成膜装置1では、回転テーブル2の外周部側よりも回転中心部側の高さが高くなるように、側面視折り曲げられたコイル型電極45からなるアンテナ44が設けられている。回転テーブル2が回転するときに外周部側が回転中心部側に比べて周速度が大きいため、プラズマ形成領域68のプラズマPに曝される時間が短くなるが、このようにアンテナ44を構成して回転中心部側のプラズマ強度を外周部側に比べて抑えることで、ウエハWの面内に均一性高いプラズマ処理を行うことができ、均一性高いSiO2膜を成膜することができる。
【0045】
アンテナ44のコイル型電極45は、図10に示すように側面から見て弓状に湾曲し、前記回転テーブル2の外周部側よりも回転中心部側が高くなるように形成してもよく、図11に示すように側面から見て直線状に金属線が伸びるようにコイル型電極45が形成されていてもよい。これらのようにコイル型電極45を形成した場合も、既述のように回転中心部側が外周部側よりもウエハWから離れるように設定される。
【0046】
(第2の実施形態)
続いて第2の実施形態について、第1の実施形態との差異点を中心に説明する。図12は第2の実施形態のプラズマ生成部8の斜視図であり、図13及び図14はこのプラズマ生成部8の側面図である。このプラズマ生成部8では、回転テーブル2の外周部側の絶縁部材59上に側面視L字型の角度調整用部材81が設けられており、前記L字の垂直部82はファラデーシールド51の垂直板53に固定されている。前記L字の水平部83の下側には切り欠き84が形成されており、コイル型電極45の前記外周部側の最下段の金属線がこの切り欠き84を通過し、絶縁部材59と水平部83との間に挟み込まれている。そして、図13、図14に示すようにこの切り欠き84を通過する金属線を軸としてアンテナ44が回動自在に構成され、この回動軸は回転テーブル2の径方向に直交する水平軸である。
【0047】
各バスバー72にはスリット85が形成され、接続部材71はこのスリット85に対応したピン86を備えており、スリット85の任意の位置で当該ピン86を固定することができ、それによって、前記コイル型電極45を、回転テーブル2の中心部側の高さが外周部側の高さよりも高くなるように水平面に対して任意の角度位置で固定することができると共に、例えば1°刻みで前記角度を変更することができる。つまり、前記角度調整用部材81は、支持部であるバスバー72を介してアンテナ44の上下方向の傾きを調整する傾き調整機構をなす。
【0048】
この場合にもウエハWにおける回転中心部側、外周部側のアンテナ44に対する離間距離の差h3が既述の範囲内に収まるように設定される。そして当該範囲内において、ユーザはウエハWに対して行う処理、例えばウエハWに形成する膜厚や回転テーブル2の回転速度に応じてこのコイル型電極45の角度を変更する。そして、回転テーブル2の径方向に沿ったウエハWの径方向のプラズマ分布を適切にして、ウエハWの面内に均一な処理を行うことができる。
【0049】
(第3の実施形態)
この第3の実施形態のプラズマ生成部9は、第2の実施形態と同様にアンテナ44の上下方向の傾きを調整する。図15はプラズマ生成部9の斜視図であり、図16及び図17は当該プラズマ生成部9の側面図である。このアンテナ44には各々ブロック状に形成された4つの間隔調整部材91及び引き上げ部材92が設けられている。これらの間隔調整部材91及び引き上げ部材92には上下方向に各々間隔をおいて3つの孔が設けられており、アンテナ44を構成する金属線は、これらの孔に差し込まれて巻回されることにより、前記コイル型電極45を形成しており、アンテナ44の角度を変更するにあたり各段の金属線が互いに接触することが防がれるようになっている。この間隔調整部材91は他の実施形態のアンテナ44に使用してもよい。
【0050】
第2の実施形態と同様にファラデーシールド51には角度調整用部材81が設けられ、アンテナ44はその角度が調整自在に構成される。前記引き上げ部材92は、コイル型電極45の回転テーブル2の中心部側に配置されており、引き上げ部材92の上側には上方へ伸びるロッド93が接続されている。ロッド93は引き上げ部材92に対して前記アンテナ44の回動軸に並行する軸回りに回動自在に構成され、アンテナ44の角度を変えたときにアンテナ44に加わる圧力を抑えることができる。ロッド93の先端から当該ロッド93の長さ方向に伸びるように長ネジ94が設けられている。
【0051】
筐体61のフランジ部65の回転方向上流側と回転方向下流側との間を橋渡しするように橋状部材95が設けられており、この橋状部材95は筐体61に対して固定されている。この橋状部材95の上側には垂直に伸びる1対の脚部96と脚部96の上端同士を接続する水平部97とを備えた支持台98が設けられている。橋状部材95及び支持台98の前記水平部97には各々上下方向に貫通孔95a、98aが設けられており、各貫通孔95a、98aは互いに重なるように設けられている。貫通孔95a、98aには各々ロッド93、長ネジ94が貫通している。図中99、99は水平部97に対して長ネジ94を固定するためのナットである。
【0052】
図16、17に示すように、長ネジ94は、ナット99、99により水平部97に対して任意の高さ位置に取り付けることができ、この取り付ける位置に応じて上記のコイル型電極45の前記回転中心部側が持ち上がり、前記高さの差h3、即ちアンテナ44の水平面に対する角度を自在に調整できるようになっている。また、バスバー72、72はそのように角度を任意に変更するために可撓性を有する薄板により構成されている。
【0053】
前記水平部97上にはリニアゲージ101が、支持部材100により支持されて設けられている。リニアゲージ101は、測定本体部102と測定本体部102から鉛直下方に向かって伸びる筒部103と筒部103内から鉛直下方に伸びる昇降軸104とを備えている。前記筒部103に対して昇降軸104は昇降自在に構成され、昇降軸104の先端は、前記長ネジ94の先端に接触している。また、測定本体部102は不図示の表示部に接続されており、この昇降軸104の先端位置と、筒部103の所定の高さ位置例えば筒部103の先端位置との間の離間距離h4を測定し、前記表示部に表示できるように構成されている。
【0054】
予め所望のSiO2膜の膜厚及び回転テーブル2の回転速度ごとに適切な前記離間距離h4を求めておく。そして、上記の成膜処理を開始する前にこれら処理条件に応じて前記高さh4が適切な値になるように変更する。これによってウエハWの面内に、より均一性の高い成膜処理を行うことができる。
【0055】
(第4の実施形態)
第3の実施形態との差異点を中心に図18を参照しながら第4の実施形態のプラズマ生成部10の構成を説明する。このプラズマ生成部10の水平部97上には駆動機構111が設けられている。駆動機構111は下方に伸びる昇降軸112を昇降させる。昇降軸112の下端は、ロッド93に接続されており、ロッド93の昇降に応じてアンテナ44の水平面に対する角度が自在に変更できる。昇降軸112の下端の高さは制御部70から送信される制御信号によって制御され、それによって例えば図中にθ1で示す水平面に対するアンテナ44の傾きが制御される。
【0056】
図19は、前記制御部70の構成を示すブロック図である。図中113はバス、114はCPU、115はプログラム格納部でありプログラム116を格納する。117はウエハWに形成するSiO2膜の膜厚(nm)と、前記SiO2膜を形成するために回転テーブルが回転する1分間あたりの回転数(rpm)と、前記アンテナ傾きθ1との対応関係が格納されたテーブルである。118は例えばキーボードやタッチパネル等により構成される入力部であり、ユーザは所望の膜厚及び前記回転数をこの入力部118から設定する。
【0057】
プログラム116は、第1の実施形態と同様に成膜装置1の各部の動作を制御する他に入力部118から設定された設定に基づいて駆動機構111の動作を制御する。具体的に入力部118から、前記膜厚及び回転数を入力すると、テーブルからこれらの入力値に対応するアンテナ傾きθ1が読み出され、この読み出された傾きθ1になるように駆動機構111が動作してアンテナ44が傾けられる。そして、第1の実施形態で説明したように成膜処理が開始され、設定した回転数で回転テーブル2が回転し、アンテナ44の傾きに応じた分布でプラズマが形成され、設定した膜厚のSiO2膜が得られる。これら一連の工程はプログラム116により制御される。このように装置を構成しても上記の各実施形態と同様にウエハWの面内に均一性高い処理を行うことができる。膜厚と回転数と傾きθ1との関係は予め測定することにより求めておく。
【0058】
また、既述の例では、Si含有ガスとO3ガスとを用いてシリコン酸化膜を成膜する例について説明したが、例えば第1の処理ガス及び第2の処理ガスとして夫々Si含有ガスとアンモニア(NH3)ガスとを用いて窒化シリコン膜を成膜しても良い。この場合には、プラズマを発生させるための処理ガスとしては、アルゴンガス及び窒素ガスまたはアンモニアガスなどが用いられる。
更に、例えば第1の処理ガス及び第2の処理ガスとして夫々TiCl2(塩化チタン)ガスとNH3(アンモニア)ガスとを用いて窒化チタン(TiN)膜を成膜しても良い。この場合には、ウエハWとしてはチタンからなる基板が用いられ、プラズマを発生させるためのプラズマ生成ガスとしては、アルゴンガス及び窒素ガスなどが用いられる。
【0059】
また、3種類以上の処理ガスを順番に供給して反応生成物を積層するようにしても良い。具体的には、例えばSr(THD)2(ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト)やSr(Me5Cp)2(ビスペンタメチルシクロペンタジエニエルストロンチウム)等のSr原料と、例えばTi(OiPr)2(THD)2(チタニウムビスイソプロポキサイドビステトラメチルヘプタンジオナト)やTi(OiPr)(チタニウムテトライソプロポキサイド)等のTi原料と、をウエハWに供給した後、ウエハWにO3ガスを供給して、SrとTiとを含む酸化膜であるSTO膜からなる薄膜を積層しても良い。
【0060】
上記の装置では、分離領域Dにガスノズル32、35からN2ガスを供給したが、この分離領域Dとしては、各処理領域P1、P2間を区画する壁部を設けて、ガスノズル32、35を配置しなくてもよい。また、上記のようにファラデーシールド51を設けて電界を遮蔽することが好ましいが、このファラデーシールド51を設けずに処理を行ってもよい。
【0061】
筐体61を構成する材質としては、石英に代えて、アルミナ(Al2O3)、イットリアなどの耐プラズマエッチング材を用いても良いし、例えばパイレックスガラス(登録商標)などの耐熱ガラスの表面にこれら耐プラズマエッチング材をコーティングしても良い。即ち、筐体61はプラズマに対する耐性が高く、且つ磁界を透過する材質(誘電体)により構成すれば良い。また、ファラデーシールド51の上方に板状の絶縁部材59を配置して、当該ファラデーシールド51とアンテナ44とを絶縁しているが、この絶縁部材59を配置する代わりに、例えばアンテナ44を石英などの絶縁材により被覆するようにしても良い。
【0062】
既述の実施形態ではSiを含むガスとO3ガスとをウエハWにこの順番で供給して反応生成物を成膜した後、プラズマ生成部4により当該反応生成物の改質を行う例について説明したが、反応生成物を成膜する時に用いられるO3ガスをプラズマ化しても良い。即ち、ガスノズル33を設けずに上記のガスノズル34からO3ガスを供給し、プラズマ形成領域68で、Siの酸化とSiO2の改質とを行ってもよい。
【0063】
上記の実施形態では、反応生成物の成膜と当該反応生成物の改質処理とを交互に行ったが、反応生成物を例えば70層(およそ10nmの膜厚)程度積層した後、これら反応生成物の積層体に対して改質処理を行っても上記と同様の効果が得られる。具体的には、Si含有ガス及びO3ガスを供給して反応生成物の成膜処理を行っている間はアンテナ44への高周波電力の供給を停止する。そして、積層体の形成後、これらSi含有ガス及びO3ガスの供給を停止してアンテナ44へ高周波電力を供給して、ウエハWにプラズマ処理を行うことができる。
【0064】
また、上記の例では基板処理装置の一実施形態として成膜装置1について示したが、このような成膜装置として構成することには限られず例えばエッチング装置として基板処理装置を構成してもよい。具体的には、上記のプラズマ生成部4を回転テーブル2の周方向に2箇所設けて各箇所で上記のプラズマ処理が行えるように装置を構成する。各プラズマ生成部4により形成されるプラズマ形成領域68を第1のプラズマ形成領域、第2のプラズマ形成領域とする。第1のプラズマ形成領域に設けられるガスノズル34からは、例えばポリシリコン膜をエッチングするためのBr(臭素)系のエッチングガスを供給し、第2のプラズマ形成領域に設けられるガスノズル34からは、シリコン酸化膜をエッチングするための例えばCF系のエッチングガスを供給する。
【0065】
ウエハW上には、例えばポリシリコン膜とシリコン酸化膜とが交互に複数層に亘って積層されると共に、この積層膜の上層側に、ホールや溝についてパターニングされたレジスト膜が形成されている。このウエハWに対して前記基板処理装置を用いてプラズマエッチング処理を行うと、例えば第1のプラズマ形成領域において、レジスト膜を介して積層膜の上層側のポリシリコン膜がエッチングされる。次いで、第2のプラズマ形成領域において、このポリシリコン膜の下層側のシリコン酸化膜がレジスト膜を介してエッチングされ、こうして回転テーブル2の回転により、共通のレジスト膜を介して積層膜が上層側から下層側に向かって順番にエッチングされていく。このエッチング装置においても成膜装置1と同様にプラズマによる処理量をウエハWの面内で揃えることができるので、ウエハWの面内で均一性高い処理を行うことができる。また、そのように第1のプラズマ形成領域及び第2のプラズマ形成領域を形成した場合、各領域のガスノズル34から異なるガスを回転テーブル2に供給して、各領域でウエハWの表面の改質処理を行ってもよい。
【0066】
(評価試験1)
アンテナ44のコイル型電極45の形状を各々変更した成膜装置1を用いて上記した手順でウエハWにSiO2膜を成膜し、前記ウエハWにおいて回転テーブル2の外周部から回転中心部に向かう直径上の複数の位置でSiO2膜の膜厚の測定を行った。成膜処理に用いたウエハWの表面には膜が形成されておらず、ウエハW全体がシリコンにより構成されている。前記コイル型電極45は各実施形態と同様に3重に金属線を巻回し、平面形状が八角形になるように5種類作成しているが、各々上下方向への屈曲度合いを変更している。各アンテナ44を44A〜44Eとして表記する。
【0067】
図20はアンテナ44Aの概略側面、図21はアンテナ44Bの概略側面、図22はアンテナ44C〜44Eの概略側面を夫々示しており、これら図20〜22では左側が回転テーブル2の中心部側、右側が外周部側である。また、図23はアンテナ44Aのコイル型電極45の概略上面を示し、図24はアンテナ44B〜44Eのコイル型電極45の上面を示している。各図23、24では上側が前記回転中心部側、下側が外周部側である。
【0068】
アンテナ44Aは、側面から見て前記回転中心部側から外周部側に至るまで、最下段の金属線が絶縁部材59に接している。図23にはT1〜T4でコイルの上段側の金属線の表面のポイントを各々示しており、これらのポイントT1〜T4の絶縁部材59からの高さはいずれも30mmである。アンテナ44Bは、アンテナ44Aのコイル型電極45の回転中心部側、外周部側を夫々上方、下方に向けて折り曲げたように構成されている。これらの折り曲げ位置としては夫々コイル型電極45の回転中心部側の端部(アンテナ先端部とする)、外周部側の端部(アンテナ根本部とする)から夫々50mmである。前記絶縁部材59からアンテナ先端部の下端までの高さh5は6mmであり、コイルの下端の金属線において、アンテナ根本部側の折り曲げ位置からアンテナ根本部の下端までの高さh6は2mmである。また、図23に示すポイントT1〜T8の絶縁部材59からの高さは順に34m、34mm、30mm、30mm、30mm、32mm、35mm、36mmである。図中59A、59Bは台座であり、回転中心部側、外周部側に夫々配置され、コイル型電極45の下部を支持している。各台座59A、59Bは石英により構成されており、その高さは2mmである。
【0069】
アンテナ44C〜44Eはアンテナ44Bと略同様に構成されているが、コイル型電極45の回転中心部側がより高く引き上げられるように屈曲されている。また、台座59Aの高さを4mmとしている。以下にアンテナ44Bとのその他の差異点を説明する。アンテナ44Cでは前記高さh5は10mmであり、ポイントT1〜T8の絶縁部材59からの高さは順に37m、37mm、30mm、30mm、35mm、34mm、34mm、35mmである。アンテナ44Dでは前記h5は8mm、ポイントT1〜T8の前記各高さはアンテナ44Cと同じである。アンテナ44Eの前記h5は9.5mmであり、ポイントT1〜T8の前記各高さはアンテナ44Cと同じである。
【0070】
図25はこの評価試験1の結果を使用したアンテナ毎に示したグラフである。縦軸はウエハWの各測定位置におけるSiO2の膜厚(nm)、横軸は測定位置を示している。この測定位置については、上記のウエハWの直径において、回転テーブル2の回転中心部側の端部からの距離(mm)を示している。すなわち、測定位置が0mm、150mm、300mmとして表すポイントは、夫々ウエハWの前記回転中心部側の端部、ウエハWの中心、回転テーブル2の外周部側の端部である。このグラフよりアンテナ44Aを用いた処理では、前記回転中心部側の膜厚が、前記外周部側の膜厚に比べて小さく、これらの膜厚の差が比較的大きい。しかし、アンテナ44B〜44Eを用いた処理では、これらの膜厚の差が低減されており、均一性高い処理が行われていることが分かる。これは、アンテナ44Aを用いた場合、前記回転中心部側ではプラズマの強度が強すぎて吸着サイトの形成が大きく抑えられてしまったが、アンテナ44B〜44Eを用いることで、当該回転中心部側のプラズマの強度が弱められ、吸着サイトがウエハWの面内に均一性高く分布したためであると考えられる。
【0071】
この評価試験1で、アンテナ44A〜44Eを夫々用いた処理の各測定位置の膜厚の平均値は、順に9.24nm、9.29nm、9.28nm、9.34nm、9.35nmであり、各処理で大きな差は見られなかった。ただし、これらの処理について均一性(=(測定値の最大値−測定値の最小値)/(平均値×2)×100)を算出したところ、アンテナ44A〜44Eを夫々用いた処理で、順に0.40、0.25、0.21、0.22、0.20であった。つまり、アンテナ44Aを用いた処理が最も膜厚の均一性が低く、アンテナ44Eを用いた処理が最も膜厚の均一性が高かった。
【0072】
(評価試験2)
ウエハWとして、表面に酸化膜が用いられていることを除いて評価試験1と同様の実験を行った。図26はこの評価試験2の結果を示したグラフである。評価試験1の結果と同様にアンテナ44Aによる処理では回転中心部側の膜厚が、外周部側の膜厚に比べて小さくなっており、これらの膜厚の差が比較的大きい。しかしアンテナ44B〜44Eを用いた処理では、これら回転中心部側の膜厚と外周部側の膜厚との差が低減されている。また、アンテナ44A〜44Eを用いた処理の各測定位置における膜厚の平均値は、順に7.52nm、7.67nm、7.73nm、7.60nm、7.68nmであり、各処理で大きな差は見られなかったが前記均一性については、0.80、0.42、0.58、0.39、0.20となった。つまり、アンテナ44Aを用いた処理が最も膜厚の均一性が低く、アンテナ44Eを用いた処理が最も膜厚の均一性が高かった。
【0073】
(評価試験3)
処理ガスノズル31からSi含有ガスの供給を行わないことを除いて評価試験1と同様に処理を行い、ウエハW表面のSiが酸化されることによって形成されるSiO2膜の膜厚の測定を行った。図27はこの評価試験3の結果を示したグラフである。このグラフより、アンテナ44Aによる処理では回転中心部側の膜厚が外周部側の膜厚に比べて大きい。即ち外周部側よりも中心部側の方がプラズマの強度が強く酸化が大きく進行している。アンテナ44B〜44Eを用いた処理においても回転中心部側の膜厚が外周部側の膜厚に比べて大きいが、アンテナ44Aの結果に比べて回転中心部側の膜厚が小さく、当該回転中心部側の膜厚と外周部側の膜厚との差が小さくなっている。つまりアンテナ44B〜44Eを用いた場合、アンテナ44Aを用いる場合に比べて中心部側のプラズマの強度が弱まり、ウエハWに均一性高い酸化処理が行われていることが分かる。
【0074】
アンテナ44A〜44Eを用いた処理の各測定位置における膜厚の平均値は、順に3.46nm、3.32nm、3.25nm、3.32nm、3.31nmであり、各処理で大きな差は見られなかった。しかし、算出した均一性は、アンテナ44A〜44Eを用いた場合、夫々6.40、4.39、3.22、4.07、3.56であった。つまり、アンテナ44Aを用いた処理が最も膜厚の均一性が低く、アンテナ44Cを用いた処理が最も膜厚の均一性が高かった。
【0075】
この評価試験1〜3の結果から、アンテナ44の回転中心部側を外周部側よりも回転テーブル2から離れるように折り曲げることで、プラズマの分布を制御し、ウエハWに均一性高い処理を行うことができることが分かる。従って、本発明の効果が示された。
【符号の説明】
【0076】
1 成膜装置
11 真空容器
12 天板
31、33 処理ガスノズル
34 プラズマ発生用ガスノズル
44 アンテナ
45 コイル型電極
51 ファラデーシールド
59 絶縁部材
61 筐体
70 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内にて、基板載置領域に基板を載置した回転テーブルを回転させることにより前記基板を公転させて複数の処理部を順番に通過させ、これにより複数種類の処理ガスを順番に供給するサイクルを行って基板に成膜処理を行う成膜装置において、
前記回転テーブルにおける基板載置領域側の面にプラズマ生成用のガスを供給するガス供給部と、
前記プラズマ生成用のガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの中央部から外周部に亘って伸びるように当該回転テーブルにおける基板載置領域側の面に対向して設けられたアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記基板載置領域における回転テーブルの中央部側との離間距離が、前記基板載置領域における回転テーブルの外周部側との離間距離よりも3mm以上大きくなるように配置されていることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記アンテナを回転テーブルの面に対して平行に見たときに、回転テーブルの中央部側が高くなるように折れ曲がった形状または湾曲した形状であることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記アンテナは、上下方向に伸びる軸の周りにコイル状に巻かれた構造であり、少なくとも最下部のアンテナ部分における回転テーブルとの離間距離が請求項1に記載されたように設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記アンテナを支持する支持部と、この支持部を介してアンテナの上下方向の傾きを調整するための傾き調整機構を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記傾き調整機構は、アンテナの傾きを調整するための駆動機構を備えていることを特徴とする請求項4記載の成膜装置。
【請求項6】
入力された成膜処理の種別に応じてアンテナの傾きを決定し、決定された傾きになるように前記駆動機構を制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項5記載の成膜装置。
【請求項7】
前記アンテナは、複数の直線部分と、直線部分同士を連結する節部分と、からなり、前記節部分にて折り曲げることができるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項8】
真空容器内にて、基板載置領域に基板を載置した回転テーブルを回転させることにより前記基板を公転させて複数の処理部を順番に通過させ、これにより複数種類の処理ガスを順番に供給するサイクルを行って基板にガス処理を行う基板処理装置において、
前記回転テーブルにおける基板載置領域側の面にプラズマ生成用のガスを供給するガス供給部と、
前記プラズマ生成用のガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの中央部から外周部に亘って伸びるように当該回転テーブルにおける基板載置領域側の面に対向して設けられたアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記基板載置領域における回転テーブルの中央部側との離間距離が、前記基板載置領域における回転テーブルの外周部側との離間距離よりも3mm以上大きくなるように配置されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項1】
真空容器内にて、基板載置領域に基板を載置した回転テーブルを回転させることにより前記基板を公転させて複数の処理部を順番に通過させ、これにより複数種類の処理ガスを順番に供給するサイクルを行って基板に成膜処理を行う成膜装置において、
前記回転テーブルにおける基板載置領域側の面にプラズマ生成用のガスを供給するガス供給部と、
前記プラズマ生成用のガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの中央部から外周部に亘って伸びるように当該回転テーブルにおける基板載置領域側の面に対向して設けられたアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記基板載置領域における回転テーブルの中央部側との離間距離が、前記基板載置領域における回転テーブルの外周部側との離間距離よりも3mm以上大きくなるように配置されていることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記アンテナを回転テーブルの面に対して平行に見たときに、回転テーブルの中央部側が高くなるように折れ曲がった形状または湾曲した形状であることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記アンテナは、上下方向に伸びる軸の周りにコイル状に巻かれた構造であり、少なくとも最下部のアンテナ部分における回転テーブルとの離間距離が請求項1に記載されたように設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記アンテナを支持する支持部と、この支持部を介してアンテナの上下方向の傾きを調整するための傾き調整機構を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記傾き調整機構は、アンテナの傾きを調整するための駆動機構を備えていることを特徴とする請求項4記載の成膜装置。
【請求項6】
入力された成膜処理の種別に応じてアンテナの傾きを決定し、決定された傾きになるように前記駆動機構を制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項5記載の成膜装置。
【請求項7】
前記アンテナは、複数の直線部分と、直線部分同士を連結する節部分と、からなり、前記節部分にて折り曲げることができるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項8】
真空容器内にて、基板載置領域に基板を載置した回転テーブルを回転させることにより前記基板を公転させて複数の処理部を順番に通過させ、これにより複数種類の処理ガスを順番に供給するサイクルを行って基板にガス処理を行う基板処理装置において、
前記回転テーブルにおける基板載置領域側の面にプラズマ生成用のガスを供給するガス供給部と、
前記プラズマ生成用のガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの中央部から外周部に亘って伸びるように当該回転テーブルにおける基板載置領域側の面に対向して設けられたアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記基板載置領域における回転テーブルの中央部側との離間距離が、前記基板載置領域における回転テーブルの外周部側との離間距離よりも3mm以上大きくなるように配置されていることを特徴とする基板処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2013−84730(P2013−84730A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223067(P2011−223067)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]