説明

手袋からの繊維成分及び塩化ビニル系樹脂成分を分離回収するリサイクルシステム及び分離回収方法並びに再生塩化ビニル系樹脂

【課題】繊維製原手の表面に塩化ビニル系樹脂が被覆された手袋、又は、表面に異物が付着した該手袋をリサイクルするため、該手袋から塩化ビニル系樹脂を、高い精度で、効率良く分離、回収出来る点にある。
【解決手段】手袋の粉砕の大きさを規制するスクリーン10を設置した衝撃式粉砕機1と、前記衝撃式粉砕機1にて粉砕された粉砕物から繊維成分を分離するための分離機16と、前記分離機16にて繊維成分が分離された粉砕物の粉砕の大きさを規制するスクリーンを設置した剪断式粉砕機と、前記剪断式粉砕機にて粉砕された粉砕物を繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とに分離するための分離機とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維を織る又は編んで構成された繊維製原手の外表面のうちの少なくとも一部に塩化ビニル系樹脂を被覆して樹脂被覆層を備えた手袋から、繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とを分離回収する、即ち、分離してそれぞれの成分を回収するリサイクルシステム及び分離回収方法に関し、更に、自動車メーカー、家電メーカー又は機械部品メーカー等において使用され、手袋の表面に金属粉や潤滑油等の異物が付着した使用済みの前記構成の手袋から、塩化ビニル系樹脂と繊維成分とを分離するとともに金属粉や金属片、油分等を含む異物を分離除去し、塩化ビニル系樹脂からなる合成樹脂を再生原料として再資源化するために該塩化ビニル系樹脂を分離回収するリサイクルシステム及び分離回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製原手の表面に塩化ビニル系樹脂が被覆された手袋として、例えば編み手袋の外表面に塩化ビニル系樹脂を1層又は2層以上の複数層で被覆し、使用感や作業性が改良された手袋が知られている。これら塩化ビニル系樹脂が被覆された手袋の中には、自動車メーカーや家電メーカー、機械部品メーカー等において使用され、手袋の表面に金属粉や金属片、潤滑油、ごみ等の異物が付着して廃棄されるものがあるが、近年、廃棄物の減量、埋め立て処分量の削減等の観点から、リサイクルの要求や使用済み手袋の回収要請が高まってきている。また、製造工程から発生する不具合品、デザイン等の変更品、長期在庫品の処分品などで発生する異物の付着していない塩化ビニル樹脂被覆手袋の廃棄物についても、編み手袋からなる繊維素材と塩化ビニル樹脂に代表される表層の合成樹脂被覆層の分離が非常に難しいため、これら塩化ビニル樹脂が被覆された手袋の廃棄物は再資源化できず、大部分が埋立処理、焼却処理等で処理されていた。しかし、塩化ビニル系樹脂で被覆された手袋の焼却処理は、焼却炉排ガス対策の問題や焼却炉寿命短縮等の問題があるため、埋立処理せざるを得ず、埋め立て処理場スペースの減少とともに処理費が上昇し、処理困難な状況に遭遇している。そのため、この問題を解決するための有効な塩化ビニル製手袋の再利用方法や塩化ビニル製手袋中の繊維成分(編み手袋成分)と塩化ビニル系樹脂成分とを分離して再資源化する方法が望まれていた。
一方、手袋のリサイクルについては、プラスチック廃棄物を分別後、熱分解して油化し、燃料とする廃棄物処理システム(特許文献1)が挙げられるが、手袋を粉砕分離し、手袋を構成する合成樹脂をマテリアル・リサイクルする試みは行われていないのが現状であった。
ところで、自動車内装材を始めとするプラスチック材料として繊維成分と合成樹脂材料が複合された複合材料が使用されているが、複合材料からなる自動車用内装材において、構成する繊維成分と合成樹脂材料を分離するためのダスト分離装置が公知である(特許文献2、特許文献3)が、編み手袋の外表面に塩化ビニル系樹脂やウレタン樹脂を被覆した手袋、更に、表面に異物が付着した塩化ビニル系樹脂が被覆された手袋をリサイクルする試みは行われていなかった。
【特許文献1】特開平8−94797号公報
【特許文献2】特許第3410973号公報
【特許文献3】特開2002−219447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとしている課題は、繊維製原手の表面に塩化ビニル系樹脂が被覆された手袋、又は、表面に異物が付着した前記手袋をリサイクルするため、繊維製原手を構成する繊維成分に塩化ビニル系樹脂を被覆した手袋から塩化ビニル系樹脂を、高い精度で、効率良く分離、回収出来るリサイクルシステム及び方法を提案し、塩化ビニル系樹脂を再生原料として再資源化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
繊維製原手の外表面のうちの少なくとも一部に塩化ビニル系樹脂を被覆した手袋から、繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とを分離回収するリサイクルシステムであって、
手袋の粉砕の大きさを規制するスクリーンを設置した衝撃式粉砕機と、前記衝撃式粉砕機にて粉砕された粉砕物から繊維成分を分離するための分離機と、前記分離機にて繊維成分が分離された粉砕物の粉砕の大きさを規制するスクリーンを設置した剪断式粉砕機と、前記剪断式粉砕機にて粉砕された粉砕物を繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とに分離するための分離機とを備えることを特徴とする、手袋からの繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とを分離回収するリサイクルシステムである。
【0005】
前記2つの分離機のいずれもが、繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とを風力により分離する風力分離機からなることが好ましい。
【0006】
前記衝撃式粉砕機及び前記剪断式粉砕機の少なくとも一方を複数台設けることによって、分離精度を高めることができる。
【0007】
前記複数台設けられた各粉砕機にて粉砕された粉砕物を風力分離する風力分離機を備えることによって、分離効率を高めることができる。
【0008】
前記剪断式粉砕機にて粉砕されてから前記分離機又は前記風力分離機にて分離されて回収した粉砕物を、篩上に滞留させて該粉砕物の表面に付着した繊維成分を塩化ビニル系樹脂成分から擦り落として分離する振動篩を備えることによって、繊維成分を効率よく分離させることができる。
【0009】
前記衝撃式粉砕機にて粉砕されてから前記分離機又は前記風力分離機にて分離されて回収した粉砕物を、篩上に滞留させて該粉砕物の表面に付着した異物を擦り落とす振動篩を備えることによって、粉砕物の表面に付着した異物を擦り落とすことができる。
【0010】
前記風力分離機が、上部に真空吸引口を設け、下部を空気補給口を設けた縦円筒形の分離塔内に、円形板を、その周囲に前記分離筒内壁との間に通気間隙が存するように水平に支持し、前記円形板上の中心部に空気輸送管によって前記剪断式粉砕機にて粉砕された粉砕物を搬入し、該粉砕物中の塩化ビニル系樹脂成分を前記円形板の周縁部から落下させるとともに繊維成分を空気補給口から入って分離塔内を上昇する空気流に乗せて真空吸引口に吸引させるようにしたダスト分離装置であることが好ましい。
【0011】
前記衝撃式粉砕機が、粉砕の大きさを規制する、パンチングメタル又は格子の目開きが4mm以上25mm以下であるスクリーンを設置したスイングハンマクラッシャ型であることが好ましい。
【0012】
前記剪断式粉砕機が、粉砕の大きさを規制する、パンチングメタル又は格子の目開きが0.5mm以上12mm以下であるスクリーンを設置した剪断式粉砕機であることが好ましい。
【0013】
前記振動篩の篩の目開きが0.5mm以上12mm以下であることが好ましい。
【0014】
前記振動篩の篩上に、吸引ダクトに接続した吸引フードを設けて、該篩上に残留する繊維成分及びごみ成分を真空吸引して分離してもよい。
【0015】
前記繊維製原手を構成する繊維素材が、木綿であり、油分を吸着できるものであることを特徴としている。
【0016】
前記手袋に付着した異物が、金属粉、金属片、油分の少なくとも1つを含むものである。
【0017】
前記粉砕物の表面に付着した異物を擦り落とす振動篩が、円型振動篩であることを特徴としている。
【0018】
請求項1〜15のいずれかに記載のリサイクルシステムを用いて手袋から繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とを分離回収する分離回収方法とすることもできる。
【0019】
本発明に係る再生塩化ビニル系樹脂は、前記分離回収方法により手袋から分離回収された塩化ビニル系樹脂成分からなるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、手袋を衝撃式粉砕機で粉砕し、その粉砕物を分離機にて分離して回収した塩化ビニル系樹脂を主成分とした粉砕物を剪断式粉砕機にて粉砕した後、分離機にて分離する構成とすることによって、手袋を構成する塩化ビニル系樹脂成分と繊維成分とを、高精度かつ確実に分離することができるため、回収された塩化ビニル系樹脂成分を効率的にマテリアルリサイクルすることができる。また、分離機として風力分離機を用いることによって、塩化ビニル系樹脂成分と繊維成分との分離を効率よく行うことができる。また、粉砕物の表面に付着した繊維成分を塩化ビニル系樹脂成分から擦り落とす振動篩を設けることによって、塩化ビニル系樹脂成分と繊維成分との分離を精度良く行うことができる。また、異物を擦り落とす振動篩を設けることによって、使用済み手袋に付着した金属粉や金属片、油分、ごみ等の異物も分離除去することができる。前記金属粉又は前記金属片がアルミニウムであると、そのアルミニウムを手袋から確実に分離させることができ、好ましい。また、油分からなる異物は油分を吸着できる繊維成分に吸着され、塩化ビニル系樹脂から分離できる。更に、本発明により分離回収された合成樹脂である塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル製床材、遮音シートなど塩化ビニル製品に再生使用出来るため、塩化ビニル系樹脂原料を回収して再生利用する上で有用である。尚、本発明の衝撃式粉砕機と剪断式粉砕機とを入れ替える、つまり手袋を剪断式粉砕機にて粉砕し、その粉砕物を分離機にて分離して回収した塩化ビニル系樹脂を主成分とした粉砕物を衝撃式粉砕機にて粉砕した後、分離機にて塩化ビニル系樹脂成分と繊維成分とを分離する構成では、衝撃式粉砕機で樹脂の温度が上昇してしまい、繊維が絡まった樹脂成分が溶融して固まってしまうことや、一定量の処理を行った後に、繊維成分が切断されずにスクリーンの上に溜まってしまい、粉砕できなくなることがあり、分離させることができない不都合が発生する。
衝撃粉砕機が、スイングハンマクラッシャ型粉砕機であると、手袋を大きい衝撃力により効率良く粉砕できることから、粉砕機に投入する手袋は、粉砕機の投入口から投入可能な大きさであればよく、あらかじめ小さいサイズに切断するなどの手間がかからず、分離回収を生産性よく行うことができる。
また、衝撃式粉砕機及び剪断式粉砕機の少なくとも一方を複数台設けて、衝撃式粉砕機又は剪断式粉砕機又は両粉砕機にて2回以上繰り返し粉砕することによって、分離精度を高めることができる。この場合、衝撃式粉砕機及び剪断式粉砕機の両方とも複数設ける場合に比べて、一方のみの粉砕機を複数設ける場合の方が分離精度を低下させることなく、回収効率を向上することができ、それらの中でも、衝撃式粉砕機が1台で剪断式粉砕機が複数台設ける場合が、分離精度及び回収効率の両方の面で優れており、好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を更に詳しく説明する。
本発明において、図1は、被処理対象物である作業用手袋(作業用でなくてもよい)3を示し、以下で説明するように、繊維製原手の一種である編み手袋3aの外表面の全域(一部でもよい)に、熱可塑性樹脂である塩化ビニル系樹脂3bを被覆して構成したものである。
本発明のリサイクルシステムでは、本発明の目的を達成する範囲の繊維含有量の作業用手袋であれば、特に、繊維含有量について制約は無いが、一般的な作業用手袋における塩化ビニル系樹脂に対する繊維の含有量が15〜25%のものが、良好にリサイクルできる。前記繊維製原手は、編んで構成したものの他、織って構成したもの(織物)や不織布などから構成したものであってもよい。
【0022】
本発明で使用する塩化ビニル系樹脂が被覆された作業用手袋3とは、前記したように、手袋製造時に生じる不具合品やリニューアル時に廃棄される物等を含むが、特に、自動車メーカーや家電メーカー、機械部品メーカー等において使用され、手袋の表面に金属粉や金属片、潤滑油、ごみ等の異物が付着して廃棄された使用後に廃棄される使用済み手袋である。塩化ビニル樹脂被覆作業用手袋3の基材である編み手袋3aの繊維素材については、木綿、麻、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、羊毛、絹が、一般的に使用されているが、木綿とポリエステルの混紡品であってもよい。中でも、木綿を使用したものは、肌触りがよく、かつ、吸湿性に優れ、前記潤滑油を良好に吸収することができる利点があるだけでなく、安価であることから最も汎用に使用されている。一方、作業用手袋の樹脂被覆層3bを構成する素材としては、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、天然ゴム又はアクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等の合成ゴムが知られているが、中でも塩化ビニル系樹脂で被覆された作業用手袋については、塩化ビニル系樹脂を1層又は複数層積層して、滑り止め機能を付与した物や装着性、耐油性、耐引き裂き性、耐磨耗性等を改善した手袋が使用されている。樹脂被覆層3bが、塩化ビニル系樹脂からなる塩化ビニル系樹脂が被覆された作業用手袋3においては、編み手袋3aを形成する繊維成分を精度良く分離すれば、回収される樹脂は、塩化ビニル系樹脂であるため、加工性が高く、リサイクルも容易である。
【0023】
一方、これら作業用手袋3の製造方法については、主に常温から100℃程度に加温した際に、流動性を有するペーストゾルに浸漬するディップコーティング法又はスプレーコーティング法で製造されるが、さらに、押出成形した押出フィルムまたはシートを二次加工して製造されるなどの製法も採られている。
本発明の塩化ビニル系樹脂が被覆された作業用手袋3のリサイクル方法及びシステムの要旨とするところは、編み手袋3aからなる繊維成分を樹脂成分から分離除去するものであり、さらに、作業用手袋3の表面に付着した金属紛、金属片、油分、ごみ等の内、少なくとも1つの異物が付着した手袋においても、これら異物を除去するとともに、該粉砕物を篩選別して編み手袋3aからなる繊維成分を分離除去し、再生原料としてリサイクルすること及びリサイクルするための方法にある。
【0024】
作業用手袋3から、繊維製原手を構成する繊維製素材からなる繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とを分離回収するシステムについて説明すれば、図3に示すように、作業用手袋3を衝撃式粉砕機で粉砕した後、その粉砕物を風力分離機にて繊維成分を風力分離する。続いて、繊維成分が分離された粉砕物を剪断式粉砕機にて粉砕し、その粉砕物を風力分離機にて繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とに分離することを基本としている。ここでは、風力分離機を示しているが、風力以外のもの、例えばサイクロン、空気ジグ選別機等の比重選別による分離機であってもよい。具体的には、作業用手袋3を、図4及び図9において示すように、第1粉砕工程の衝撃式粉砕機1で粉砕した後、第1風力分離工程にて繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とに風力分離する。次に、図5及び図9に示すように、前記風力分離された塩化ビニル系樹脂を主成分とする粉砕物を第2粉砕工程の剪断式粉砕機23で粉砕した後、第2風力分離工程にて繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とに風力分離する。前記第2風力分離工程にて風力分離された塩化ビニル系樹脂を主成分とする粉砕物を、図8に示す篩選別工程の振動篩37にて篩選別し、篩の目を通過した塩化ビニル系樹脂成分の粉砕物を回収することになる。そして、前記第1風力分離工程の後に、第1風力分離工程で分離された塩化ビニル系樹脂を主成分とする粉砕物を、図7で示す振動篩33の篩上に所定時間滞留させるように粉砕物を供給して、粉砕物の表面に付着した異物を擦り落とす第1篩選別工程を設けて実施することが更に好ましい。この第1篩選別工程を設ける場合には、第2風力分離工程から回収した樹脂成分を処理する篩選別工程を、第2篩選別工程として説明することになる。
【0025】
具体的に説明すれば、図2、図4及び図9に示すように、先ず、第1粉砕工程では、衝撃粉砕機を使用して作業用手袋3を粉砕する。本発明で使用する衝撃式粉砕機は、衝撃力を得るために高速で回転体を回転し、回転体に装着したハンマ(回転刃)により粉砕する粉砕機であり、ハンマの形状によりリングハンマクラッシャとスイングハンマクラッシャに分類され、例えば、図2に示し、以下で説明するが、ハンマからなる回転刃9の複数を回転して粉砕するスイングハンマクラッシャ1である。このスイングハンマクラッシャ1は、上端に作業用手袋3を投入する投入口2を設け、回転軸11の円周に複数の円板からなる回転体8を一体回転自在に設け、この回転体8の外周縁に周方向に沿って所定間隔を隔てて設置された4本の回転ポール13に4つのハンマ(回転刃)9の一端をそれぞれ回転自在に連結して、回転軸11の回転により4つのハンマ(回転刃)9を回転駆動させ、被処理物に衝撃を与え、その衝撃力により粉砕して下部に設けた粉砕物回収部1bを介して下方へ粉砕物を案内するように構成したものであり、ハンマクラッシャの1つである。このスイングハンマクラッシャ1は、回転体8の円周に一端を固定して回転自由に設置された複数(ここでは4つであるが、何個でもよい)の回転刃9を回転軸11の回転により生じる遠心力により回転軸11に対して鉛直方向に開いて回転駆動させ、被処理物に衝撃を与え、その衝撃力により粉砕するものである。このスイングハンマクラッシャ1で作業用手袋3を粉砕した場合、被処理物である作業用手袋3を粉砕するとともに、編み手袋3aからなる繊維層(繊維成分)が被覆樹脂層(樹脂成分)から剥離されて、作業用手袋3の粉砕物を回収できるようになっている。作業用手袋3をスイングハンマクラッシャ1で粉砕する場合、該スイングハンマクラッシャ1には、通常、パンチングメタル又は格子からなるスクリーン10が設置され、該スクリーン10の開口径を選択することにより、所望の粒径の粉砕物を回収することができる。また、設置されるスクリーンの開口径で粉砕物の大きさをコントロールでき、被処理物の滞留時間を制御することができる。
【0026】
前記のようにスイングハンマクラッシャ1は、ハンマ(回転刃)9の一端が回転ポール13に懸架されているだけで回転不能に固定されていないため、材料(作業用手袋3)を投入して粉砕する際に、作業用手袋3の粉砕物や繊維成分からなる綿状ゴミが回転刃9に引っ掛かって負荷がかかった場合、回転刃9が逃げて、許容負荷以上の負荷がかかり難い点に特徴が有る。詳述すれば、ハンマ(回転刃)9は、回転体8の軸方向に対し直角で、かつ、互いに所定間隔、例えば5mm程度の間隔を開けて配置され、ハンマ(回転刃)9は高速回転する回転軸11に取り付けられた複数の円板からなる回転体を貫通するように配置された4本の固定用ポール13の軸心回りにその回転刃9の一端を貫通して懸架され、回転自在に連結されたものである。回転刃の形状としては、板状に形成すると共に、例えば、これら複数の回転刃を2枚1組として、且つ、互いに所定間隔を開けて配置するように形成したものを用いることもできる。このように作業用手袋3を粉砕して繊維成分を分離する場合、スイングハンマクラッシャの中でも、刃の形状を最適な物に容易に交換して変更しやすいこと、刃の回転数が高いこと等の理由により、その一機種としてバルツ型粉砕機が本発明の実施に好適である。
特に、スイングハンマクラッシャ1は、通常、スクリーン10が設置され、高速でハンマからなる回転刃9を回転して粉砕するため、衝撃式粉砕機の一種であるハンマクラッシャに対して、被処理物に与える衝撃頻度が高い点が特徴である。その回転数は、1000rpm以上1800rpm以下である場合、粉砕効率が高く、望ましい態様である。すなわち、スイングハンマクラッシャ1で作業用手袋3を粉砕した場合、ハンマからなる回転刃9により被処理物に衝撃を与えることで、繊維成分が植設された樹脂被覆材を叩いて砕くため、繊維成分と樹脂被覆層3bの樹脂成分の分離を効率的に行うことができる点に特徴を有する。
スイングハンマクラッシャ1には、吸引用エアダクト4をその所定の部位、例えば、図2及び図4に示すように、粉砕された粉砕物がスクリーン10の開口を通過して落下する粉砕機内部7に設け、このスイングハンマクラッシャ1の内部7を輸送ブロワー12に接続した前記吸引用エアダクト4から吸引することによって、粉砕により生じた作業用手袋3の粉砕物6,14を吸引回収することができ、更に、パンチングメタル又は格子からなるスクリーン10を通過する粉砕物の通過速度を前記吸引用エアダクト4による吸引力により向上させることで、処理速度を向上させ、粉砕機内部における被処理物の詰まり、付着を防止する作用を併せ持たせることができる。
【0027】
前記作業用手袋3の粉砕は、粉砕物の大きさを規制するパンチングメタルからなるスクリーン10を設置したスイングハンマクラッシャ1を用いることにより、所望の大きさの粉砕物を得ることができ、該粉砕物の粒径が4mm以上25mm以下、好ましくは、5mm以上15mm以下に粉砕することが好ましい。この粉砕物の粒径が4mm以上25mm以下の場合、粉砕する過程での基材繊維と被覆塩化ビニル樹脂の剥離を効率良く行うことができる。更に、粉砕物の粒径を5mm以上15mm以下となるように選択すると、作業用手袋3の粉砕効率が高く、スイングハンマクラッシャ1で粉砕処理される過程で、繊維成分が樹脂成分から十分に剥離されるためより好ましい。なお、スクリーン10の各開口の形状は、円形が最も一般的であるが、特に限定は無く、楕円形、矩形、その他どのような形でも良い。
【0028】
次に、前述したように、第1風力分離工程に移る。つまり、スイングハンマクラッシャ1で粉砕した該粉砕物6,14を風力分離し、風力分離により分離粉砕物受け槽17(図4参照)に塩化ビニル系樹脂を主成分とする粉砕物6aを回収し、前記粉砕物6a以外の粉砕物である繊維成分22aを配管15、ブロワー18、サイクロンセパレータ19を介して繊維成分回収袋21に回収する。続いて、第2粉砕工程に移り、図5に示すように、前記粉砕物6aを剪断式粉砕機23の投入口2へ投入し、剪断式粉砕機23で粉砕した後、第2風力分離工程のダスト分離装置16にて風力分離された塩化ビニル系樹脂を主成分とする粉砕物6bを分離粉砕物回収受け槽17に回収し、前記粉砕物6b以外の粉砕物である繊維成分22bを配管15、ブロワー18、サイクロンセパレータ19を介して繊維成分回収袋21に回収する。そして、回収された前記粉砕物6bを、図8に示す篩選別工程の振動篩37にて篩選別することによって、作業用手袋3から繊維成分22dと塩化ビニル系樹脂成分6d,6eとを確実に分離回収することができる。前記剪断式粉砕機23の下方に、粉砕物の大きさを規制するパンチングメタル又は格子からなるスクリーン10を設置して該粉砕物の粒径が0.5mm以上12mm以下、好ましくは2mm以上7mm以下に粉砕することが望ましい。これは、該粉砕物の粒径を0.5mm以上12mm以下とすれば、繊維成分がスクリーン上に溜まって粉砕効率が著しく低下するという問題が生じ難く、また、回収樹脂と繊維成分からなる綿状ゴミの分離が良好となるためである。中でも、2mm以上7mm以下に粉砕すると、樹脂粉砕物と繊維成分からなる綿状ゴミの分離性が良く、粉砕効率が高いため、より好ましい。粉砕物粒径の調整は、粉砕機に設置するスクリーン10の開口の大きさを選択することにより達成される。なお、スクリーン10の各開口の形状は、スイングハンマクラッシャ1の場合と同様、円形が最も一般的であるが、特に限定は無く、楕円形、矩形、その他どのような形でも良い。
また、作業用手袋3のスイングハンマクラッシャ1での第1粉砕工程、及び剪断式粉砕機23での第2粉砕工程における粉砕は、順次、作業用手袋3の粉砕物の粒径が細かくなるようにスクリーン10を選択して粉砕することが、繊維成分からなる綿状ゴミの分離性が向上するため好ましい。
【0029】
本発明の作業用手袋3をリサイクルするにあたって、第1風力分離工程及び第2風力分離工程で使用される風力分離機は、公知の風力分離機を使用することができる。その風力分離機としては、分級装置の機構を有する乾式の装置を応用して、使用されているものが大半である。例えば日刊工業社出版「粉体機器・装置ハンドブック」に記載されている風力分級装置の項に記載されているように、分級装置のメカニズムにより、重力分級、慣性分級、遠心分級の3者に分類されている。重力分級としては、水平流型、垂直流型、ジグザグ型が挙げられ、また、慣性分級としては、直線型、曲線型、ルーバー型が挙げられ、また、遠心分級としては、サイクロン、ファントンゲレン、クラシクロン、ディスパーション、セパレータ、ミクロプレックスが挙げられ、遠心分級機として回転羽根付きの遠心分級機も示されている。これらの中でも、重量分級の1種に位置づけられる特許文献2又は特許文献3に示されるダスト分離装置16を使用することが、繊維成分の分離精度が高いため好ましい。尚、ここでは2つのダスト分離装置16,16を用いているが、1つのダスト分離装置16を共用してもよい。
前述のダスト分離装置16は、自動車内装材等の廃棄物を粉砕することによってできる破砕チップと綿状ゴミとの混合物を分離することを目的として開発された風力分離機である。図6のダスト分離装置16の縦断面図に示したように、ダスト分離装置16は、縦円筒形胴部の上部に真空吸引口26を設け下部を漏斗状に形成された漏斗部に空気補給口30を設けた分離塔内に円形板27をその周囲に分離塔内壁との間に通気間隙29が存するように水平に支持し、該円形板27上の中心部に空気輸送管31によって、編み手袋3aを形成する繊維成分と樹脂被覆層3bからなる樹脂成分の混合物からなる作業用手袋3の2種類の粉砕物6,14を搬入させる。そうすると、前記2つの粉砕物のうちの粉砕物14が搬入されることにより更に散らばってなる軽い綿状繊維成分22となり、この綿状繊維成分22が、空気補給口30から入って分離塔内を上昇する空気流に乗って舞い上がり真空吸引口26に吸引され、図4、図5に示されるように、配管15、ブロワー18を介してサイクロンセパレーター19に送られる。また粉砕物6,14中の被覆樹脂成分を主成分とする粉砕物6は重いため舞い上がることなく円形板27の周縁部から落下し該分離塔の内壁面を滑り落ち分離粉砕物受け槽17に粉砕物6aとして落下回収される。このダスト分離装置16では、円形板支持具28を調整することで円形板27が上下動して、通気間隙29の大きさを調節可能であるので、作業用手袋3の粉砕物6,14の大きさや比重、或いは一方の粉砕物14を構成する綿状繊維成分22の性状に合わせて両者の分離が容易に行われ得るように最適な通気間隙29を設定することができる。即ちこの通気間隙29を適宜設定することによって該ダスト分離装置中を上昇する気流の速度を簡単に調節できるので、分離粉砕物回収受け槽17に落下した樹脂粉砕物6の状況を見ながら該円形板27の高さを調節することによって常に好ましい分離状態が得られる。さらに、前記ダスト分離装置16は、樹脂粉砕物中に僅かに繊維成分からなる綿状ゴミが混入する分離レベルにする、かつ、連続的に、綿状ゴミ類を効率良く分離するのに適した風力分離機である。また、図6に示される(H)と(D)は、のダスト分離装置16の下部の漏斗部を除いた直胴部の縦円筒形の高さ(H)と横方向の直径(D)である。図4に示す20は、空気排出口である。
【0030】
図5に示す様に、ダスト分離装置16には、図4と同様に、吸気用エアダクト4に一端が接続された輸送ブロワー12の他端に接続された空気輸送配管31を経て前記剪断式粉砕機23にて粉砕された粉砕物が輸送されるが、この供給される風量に対してブロワー18によって真空吸引口26から排出される風量は、図6に示しているように、空気輸送管31の先端から円形板27上の中心部に搬入した該粉砕物6,14が、分離塔内を流動し相対的に重成分である被覆樹脂粉砕物6が円形板27の周囲に設けた通気間隙29から降下してダスト分離装置16下部の空気補給口30から排出され、一方、相対的に軽成分である基材繊維、つまり繊維成分を主成分とする粉砕物14を構成する綿状繊維成分22は、分離塔内部を上昇する空気流に乗せて分離塔上部真空吸引口29から排出するよう同等量又は、若干排出量を多く調整することが好ましい。
前記剪断式粉砕機23は、図5に示すように、固定刃24と、この固定刃24に対向して設けられ、複数の刃部からなる駆動回転自在な回転刃25と、回転刃25の下方に配置されるスクリーン10とを備え、スクリーン10の開口を通過した粉砕物が、粉砕物回収部1b、吸引用ダクト4(図2参照)、空気輸送管31を通してダスト分離装置16に供給されるようになっている。
【0031】
本発明の好ましい態様の一つとして、図9に示すように、第1篩選別工程を設ける態様について詳述する。作業用手袋3の廃材又は手袋製造時に生じる不具合品やリニューアル時に廃棄される物等は、図9に示すように、まず、第1粉砕工程でスイングハンマクラッシャ(衝撃式粉砕機)1で粉砕された後、第1風力分離工程においてダスト分離装置16で、編み手袋3aを形成する繊維成分22を風力分離した後、表面に付着している異物除去を行う第1篩選別工程で篩選別し(図7参照)、図5に示すように、第2粉砕工程において剪断式粉砕機23で粉砕処理し、繊維成分22からなる綿状ゴミが分離された粉砕物6bに分離される。このようなシステムとすることにより、繊維成分の分離効率を向上するものである。また、図7、図9に示すように、分離効率は少し低下するが、前記第1篩選別工程で篩選別しないで、第2粉砕工程において剪断式粉砕機23で粉砕処理してもよい。前記吸引用エアダクト4が接続される剪断式粉砕機23に導入されて粉砕処理された粉砕物は、第2風力分離工程で綿状になった繊維成分22bが、サイクロンセパレータ19を介して繊維成分回収袋21に回収される。この時に、編み手袋3aを形成する繊維が、木綿製である場合、塩化ビニル系樹脂粉砕物と繊維成分からなる綿状物の分離性が高いため、良好に風力分離される。そして、回収された(被覆樹脂)粉砕物6bは、図8に示すように、第2篩選別工程にて篩選別し、被覆樹脂粉砕物6dを得ることができる。
【0032】
第1粉砕工程及び第1風力分離工程を通過して回収された作業用手袋3の(被覆樹脂)粉砕物6aは、図7に示すように、第1篩選別工程において、振動篩33により作業用手袋3の表面に付着した金属紛、金属片、油分、ごみ等の異物が分離除去される。これら異物の中でもアルミニウムの金属粉や金属片は、振動篩の篩下に振るい落として除去されるため好ましい。また、該粉砕物6aは、振動篩上において互いに隣り合う粉砕物が擦れ合わされることにより、油分からなる異物は繊維成分に吸着され、塩化ビニル系樹脂から分離される。この場合、繊維製原手を構成する素材としては、木綿であり、油分を吸着できることが好ましい。また、この間、粉砕物の外表面に付着し、前記分離塔では取れなかった綿状物も、互いに隣り合う粉砕物が擦れ合うことによって更に落とされる。第1篩選別工程において使用される篩メッシュ40の目開きは、0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。0.5mm以上5mm以下であれば、作業用手袋3に付着した異物が被覆樹脂粉砕物6aに混入し難く、良好に分離されるためである。更に、第1風力分離工程及び第2風力分離工程で、繊維成分を分離除去すると、前記異物の、繊維成分(22a、22b)への絡まりや付着での被覆樹脂粉砕物(6a、6b)への混入が防止され、その結果、前記異物の分離効率が向上することとなる。
【0033】
第1篩選別工程で使用される振動篩としては、円型振動篩、共振式振動篩、振動モーター式振動篩、電磁式振動篩、ジャイロシフター等の面内運動式振動篩が挙げられるが、中でも、円型振動篩は作業性、分離性の点から好ましい。具体的には、図7に示すように、第1風力分離工程で回収した(被覆樹脂)粉砕物6aを、輸送用ブロアー5とサイクロンセパレーター19を配管Kで接続して円型振動篩33に搬送し、篩メッシュ40上に滞留させると共に、振動バネ34を駆動して振動させて篩メッシュ40の下部に付着異物を通過させ、分離粉砕物回収受け槽17Aに被覆樹脂粉砕物6cを回収し、篩メッシュ40を通過した付着異物35は回収槽17Bに回収するように構成することによって、良好に付着異物35も分離できる。また、図8に示す、第2篩選別工程で使用される振動篩37についても、前記円型振動篩、共振式振動篩、振動モーター式振動篩、電磁式振動篩、ジャイロシフター等の面内運動式振動篩を使用できるが、縦振動のない水平旋回運動で振動する振動篩を用いて被処理物を水平方向に移動しつつ篩で分離することにより細長い粉砕物が立って篩を通過することを抑制することができ、分離精度を向上できるため好ましい。また、特許文献3で開示され、図8で示すように、ダスト分離装置16の空気補給口30の下方に、水平旋回運動で振動する振動篩37を一端が揺動自在に連結された一対の支持アーム39,39の他端を連結して設置し、被処理物を水平方向に移動しつつ、篩メッシュ40上で被覆樹脂粉砕物6bを処理し、篩下に通過した被覆樹脂粉砕物6dを篩通過物回収箱48にて回収すると共に、篩上に吸引フード50を設けて繊維成分22dを吸引して、繊維成分22dを分離した樹脂被覆層粉砕物6dを精度よく回収するように構成することも好ましい。
ダスト分離装置16の空気補給口30より落下して回収された粉砕物6bは、ダスト分離装置16の下部に設置した振動篩37に落下、底部に篩メッシュ40を貼り付けて出口側Eが開口した箱枠38上に滞留させ、水平方向に該篩メッシュ40を設置した箱枠38と共に振動させることにより粉砕物6bを出口側に順次送る。この箱枠38は、モーター41の駆動軸に大径プーリ43を介してベルト42を駆動させ、前記駆動軸とほぼ平行になるように配設され、一端に小径プーリ45、他端にL字型の屈曲部が設けられたクランク軸44を取着し、モーター41の駆動により水平方向に振動させるものであり、この間、このようにして篩メッシュ40の目開きより小さい粉砕物6dは、メッシュを通過して篩通過物回収箱48に回収されると共に、篩メッシュ40の目開きより大きい粉砕物6eは、篩メッシュ40上に滞留し、出口側Eに送られ、上方に設置された吸引フード50により上部側から吸引される空気流に軽い綿状ゴミ類や繊維成分22dは舞い上がり吸引フード50の吸取り口46に吸引され、一方、粉砕物は重いため舞い上がることなく出口側Eに排出される。この操作により出口側Eより排出され篩上残留物回収箱49で回収された、樹脂被覆層3bの粉砕物6eは、綿状繊維成分22dが除かれる。又、前記回収された粉砕物6eを、再度、第2粉砕工程にリターンして処理すれば、回収率を向上することができる。
【0034】
前記吸引フード50の吸取り口46と篩メッシュ40との間隔又は篩メッシュ40の網目の大きさは、作業用手袋3の粉砕物によって、それぞれ効率的に樹脂成分と繊維成分との分離が行われるように適宜所定量に設定される。吸取口部46は上下動して前記吸引フード50と篩メッシュ40との間隔は、吸取り口高さ調整ボルト51により調整され、自在に変更できるようになっていることにより、被覆樹脂粉砕物6bと綿状繊維成分22bとの分離が正常に行われるよう所定の位置に設定される。また、篩メッシュ40の目開きは、被覆樹脂粉砕物6bの大きさを考慮して、第2粉砕工程で使用される剪断式粉砕機23のスクリーン10の開口径に合わせて調整することが好ましい。更に、振動篩37は、一般に、ダスト分離装置16と直列に組み合わせて使用されるが、粉砕物の状態によっては、別工程にする、或いは、複数の篩を多段に組み合わせて構成して使用することも可能である。
【0035】
また、図8で示したように、第2篩選別工程で篩選別し、篩を通過した粉砕物6dを回収することにより、粒度が調整された粉砕物を回収でき、更に、繊維成分の破片も分離、除去されるため、分離精度を向上することができる。その篩の目開きとしては、0.5mm以上12mm以下、好ましくは1mm以上7mm以下である。篩の目開きが0.5mm以上12mm以下であれば、篩選別して回収した樹脂粉砕物中への繊維成分の混入が生じ難く、精度良く分離された粉砕物を回収することができるため、好ましい。また、1mm以上7mm以下であれば、分離精度を確保するための粉砕を効率的に行うことができるため、さらに好ましい。また、篩で選別することにより、粒度の大きい樹脂粉砕物及び繊維破片は篩上に残るため、再度、繰り返し第2粉砕工程に戻して、剪断粉砕、風力分離、篩選別することにより、被覆樹脂粉砕物の回収率を向上することができる。
【0036】
また、被覆樹脂粉砕物6と繊維成分22の分離精度を向上するために、剪断粉砕機23で剪断粉砕して風力分離して回収した(被覆樹脂)粉砕物6bを振動篩37で篩選別して回収した粉砕物6dを、更に、剪断粉砕してダスト分離装置による風力分離、篩選別を繰り返し処理すれば、より有効である。作業用手袋3の被覆樹脂成分を剪断粉砕機23で繰り返し粉砕処理する場合、該剪断粉砕機23に設置するスクリーン10の開口径と篩メッシュ40の目開きを漸次、小さい物に変更することにより、該樹脂成分を剪断粉砕機23のスクリーン10上で滞留させることができ、該樹脂粉砕物に、繰り返し、図5に示す剪断式粉砕機23を構成する回転刃25による剪断を加えて、付着した繊維成分を分離することにより分離精度を向上することができる。
【0037】
また、被覆樹脂粉砕物6と繊維成分22の分離精度をさらに向上するためには、例えば、衝撃式粉砕機を複数台設け、剪断式粉砕機を1台設けて実施したり、又、これとは反対に衝撃式粉砕機を1台で剪断式粉砕機を複数台設けて実施することになる。この場合、各粉砕機にて粉砕された粉砕物を風力分離する風力分離機を備えさせることになる。又、図10及び図11に示すように、衝撃式粉砕機及び剪断式粉砕機をそれぞれ複数(図では2台であるが、3台以上でもよい)設けて実施することもできる。図10では、作業用手袋を2台の衝撃式粉砕機により粉砕してから、風力分離機にて風力分離し、その風力分離された粉砕物を2台の剪断式粉砕機により粉砕してから、風力分離機にて風力分離している。図11では、風力分離機を衝撃式粉砕機及び剪断式粉砕機のそれぞれに対して同数の2台設けて、合計4台とし、衝撃式粉砕機により粉砕する度に風力分離し、最後(2台目)の風力分離機にて風力分離した粉砕物を剪断式粉砕機により粉砕する度に風力分離して、最後(2台目)の風力分離機にて風力分離して分離作業を終了するものである。
前記のように一方の粉砕機のみを複数台設ける場合には、両方の粉砕機を複数台設ける場合に比べて、分離精度を低下させずに(落とさずに)回収効率を向上することができるが、特に衝撃式粉砕機を1台で剪断式粉砕機を複数台設けた場合が、分離精度及び回収効率の点において有利になり、好ましい。
【0038】
ところで、作業用手袋3を粉砕、風力分離、篩選別する時に発生する粉塵や繊維成分からなる埃は、作業環境を汚染しないように、各工程は吸引用エアダクト4を接続し、輸送ブロワー12で作業用手袋3の粉砕物を搬送するように構成してクローズド系システムで処理することが好ましい。また、排気されるエアは、集塵装置を設置して、集塵装置を介して粉塵を回収することが更に好ましい。また、作業用手袋3の粗粉砕物や剪断式粉砕機23で粉砕された作業用手袋3の粉砕物は、次工程にベルトコンベアを使用して搬送する方法又は空気輸送する方法を取れば、連続処理が可能となる。上記2つの輸送方法の内、ベルトコンベアを使用する方法は、設備費の点で有利であり、一方、空気輸送する場合は、粉砕機投入口上部にサイクロンセパレーターを設置して粉砕機に被処理物を導入できるように輸送ラインを構成することで達成される。
【0039】
ペーストゾルディップコーティング方式での塩化ビニル系樹脂が被覆された作業用手袋3を製造する製造方法について説明する。
作業用手袋3は、例えば、手型に被せた編み手袋3a本体(繊維製原手と言う)を塩化ビニルペーストの塗布又は浸漬によって塩化ビニルペーストの浸漬膜3bを形成し、80〜150℃で加熱、ゲル化して樹脂被覆層3bが形成される。塩化ビニル樹脂被覆作業用手袋3は、通常、複数回、塩化ビニルペーストの塗布又は浸漬により、塩化ビニルペースト被覆層3bが積層して形成される。
また、作業用手袋3における、樹脂被覆層3bを形成するための塩化ビニル系ペースト樹脂は、以下に示す比率で配合し、使用することが好ましく、更に、(a)〜(d)を配合した塩化ビニル系樹脂ペーストに、希釈剤、増粘剤、吸湿剤、抗酸化剤、滑剤、加工性改良剤、紫外線吸収剤、消泡剤(気泡防止剤)、界面活性剤等の添加剤を選択して添加することもできる。
(a)塩化ビニル系ペースト樹脂 100重量部
(b)可塑剤 50〜150重量部
(c)安定剤 1〜10重量部
(d)顔料 1〜10重量部
前記塩化ビニル系ペースト樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系共重合体を含むものである。
ここで使用される可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ−イソノニルフタレート、リン酸エステル系、塩素化パラフィン、トリメリット酸エステル、エポキシ化大豆油などの単独又は混合して使用されるが、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)を使用することが加工性の点から好ましい。
また、安定剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸Ca−Zn、ステアリン酸Ba−Zn、Pb系金属石鹸、有機錫系安定剤が公知であるが、ステアリン酸Ca−Znを使用することが好ましい。顔料としては、酸化チタン、アルミニウム金属粉、アルミ箔粉末、マイカ等が挙げられる。
【実施例1】
【0040】
以下に実施例により更に詳細に説明するが、この発明に係わる実施例に限定されるものではない。
材料として、表面に金属異物や油の汚れが付着した使用済み塩化ビニル系樹脂被覆作業用手袋(木綿製編み手袋に塩化ビニル樹脂を被覆した手袋;繊維含有量22.0%)を用い、5cm幅に裁断した手袋を5Kg使用した。これを、10mmの開口径のパンチングメタルからなるスクリーン10を設置したスイングハンマクラッシャ1(尾上機械社製バルツ型粉砕機)で粉砕し、スクリーン10を通過して粉砕物が落下集積するスイングハンマクラッシャ1下部に吸引用エアダクト4を接続して、粉砕物をダスト分離装置16(直胴部H:700mm、直胴部直径D:900mm)に供給して風力分離するとともに、ダスト分離装置16の分離塔下部から落下集積した被覆樹脂粉砕物3.88Kgをバットに回収した。同時に、ダスト分離装置16の上部真空吸引口からブロワーにより吸引した繊維成分は、サイクロンセパレーター19の下部に設置した繊維成分回収袋21に1Kgの綿状繊維成分を回収した(図4参照)。次に、該分離装置16の下部より回収した被覆樹脂粉砕物6aを円型振動篩33(図7参照)に搬送し、目開き2mmの篩で処理した後、篩上の被覆樹脂粉砕物6cを3mmの開口径のパンチングメタルからなるスクリーンを設置した三力製作所製一軸剪断式粉砕機23(FS−1、図5参照)に投入して粉砕し、スクリーン10を通過して粉砕物が落下集積する剪断式粉砕機23下部に吸引用エアダクト4を接続して、粉砕物をダスト分離装置16(直胴部H:700mm、直胴部直径D:900mm)に供給して風力分離するとともに、ダスト分離装置16の分離塔下部から落下集積した被覆樹脂粉砕物6bをバットに3.50Kg回収した。同時に、ダスト分離装置16の上部真空吸引口からブロワーにより吸引した繊維成分は、サイクロンセパレーター19の下部に設置した繊維成分回収袋21に0.25Kgの綿状繊維成分22bを回収した(図5参照)。次に、該分離装置16の下部より回収した被覆樹脂粉砕物6bを3mmの目開きの篩を設置した振動篩37で処理し、篩上に250g、篩下に(被覆樹脂)粉砕物6dを3.25Kg(回収率65%)回収した(図8参照)。回収した(被覆樹脂)粉砕物6dには、アルミニウム金属粉等から成る金属異物の混入はなく、油分の付着も認められなかった。回収した被覆樹脂粉砕物6dをTHFに24時間かけて溶解して1%溶液とした後に、200メッシュ金網で濾過し、100℃×1時間乾燥して算出した回収被覆樹脂粉砕物6d中の繊維含有量は、0.53%であった。また、円型振動篩の篩下から、約7gのアルミニウム金属粉からなる異物を含む樹脂成分が回収された。
【実施例2】
【0041】
材料として、塩化ビニル樹脂被覆作業用手袋(木綿製編み手袋に塩化ビニル樹脂を被覆した手袋)の工程不良品(手袋の表面に金属異物や油の汚れが付着していないもの;繊維含有量22.0%)を用い、裁断せずに5Kgを使用した。実施例1と同様にして処理し、被覆樹脂粉砕物6bをバットに3.48Kg回収した。次に、該分離装置16の下部より回収した被覆樹脂粉砕物6bを3mmの目開きの篩を使用し、図8に示すように構成した振動篩出口側上部に吸引ダクト47を設置した振動篩37で処理し、篩上の繊維成分を吸引除去し、篩上に235g、篩下に被覆樹脂粉砕物6dを3.20Kg(回収率64%)回収した。回収した被覆樹脂粉砕物6dを実施例1と同様にして求めた回収被覆樹脂粉砕物6d中の繊維含有量は、0.43%であった。また、円型振動篩の篩下からは、約10gの樹脂成分が回収された。
【実施例3】
【0042】
実施例1と同様に、材料として、表面に金属異物や油の汚れが付着した使用済み塩化ビニル系樹脂被覆作業用手袋(木綿製編み手袋に塩化ビニル樹脂を被覆した手袋;繊維含有量22.0%)を5cm幅に裁断した物を5Kg使用した。これを、8mmの開口径のパンチングメタルからなるスクリーン10を設置したスイングハンマクラッシャ1(尾上機械社製バルツ型粉砕機)で粉砕し、スクリーン10を通過して粉砕物が落下集積するスイングハンマクラッシャ1下部に吸引用エアダクト4を接続して、粉砕物をダスト分離装置16(直胴部H:700mm、直胴部直径D:900mm)に供給して風力分離するとともに、ダスト分離装置16の分離塔下部から落下集積した被覆樹脂粉砕物3.93Kgをバットに回収した。同時に、ダスト分離装置16の上部真空吸引口からブロワーにより吸引した繊維成分は、繊維成分回収袋21をサイクロンセパレーター19の下部に設置して0.78Kgの綿状繊維成分を回収した。次に、該分離装置16の下部より回収した被覆樹脂粉砕物6aを目開き2mmの篩を設置した振動篩で処理し、篩下に約15gの金属粉からなる異物を含む樹脂成分が回収された。次に、篩上の被覆樹脂粉砕物6cを3mmの開口径のパンチングメタルからなるスクリーンを設置した三力製作所製一軸剪断式粉砕機23(FS−1)に投入して粉砕し、スクリーン10を通過して粉砕物が落下集積する剪断式粉砕機23下部に吸引用エアダクト4を接続して、粉砕物をダスト分離装置16(直胴部H:700mm、直胴部直径D:900mm)に供給して風力分離するとともに、ダスト分離装置16の分離塔下部から落下集積した被覆樹脂粉砕物6bをバットに3.62Kg回収した。同時に、ダスト分離装置16の上部真空吸引口からブロワーにより吸引した繊維成分は、繊維成分回収袋21をサイクロンセパレーター19の下部に設置して0.29Kgの綿状繊維成分22bを回収した。次に、該分離装置16の下部に3mmの目開きの篩を設置した振動篩37を配置し、該分離装置16の下部から落下回収された被覆樹脂粉砕物6bを処理し、篩上に320g、篩下に被覆樹脂粉砕物6dを3.22Kg(回収率64%)回収した。回収した被覆樹脂粉砕物6dには、アルミニウム金属粉から成る異物は認められなかった。また、回収した被覆樹脂粉砕物6dを実施例1と同様にして求めた回収被覆樹脂粉砕物6d中の繊維含有量は、0.52%であった。
【実施例4】
【0043】
材料として、塩化ビニル系樹脂被覆作業用手袋(木綿製編み手袋に塩化ビニル樹脂を被覆した手袋)の工程不良品(手袋の表面に金属異物や油の汚れが付着していないもの;繊維含有量22.0%)を用い、5cm幅に裁断した手袋を5Kg使用した。これを、10mmの開口径のパンチングメタルからなるスクリーンを設置したスイングハンマクラッシャ1(尾上機械社製バルツ型粉砕機)で粉砕し、スクリーン10を通過して粉砕物が落下集積するスイングハンマクラッシャ1下部に吸引用エアダクト4を接続して、粉砕物をサイクロンセパレーター19の下部に定量的に回収した。次に、該粉砕物を図12に示す横型風力選別機(日本専機 (株)AN−500型)52に供給して風力分離した。横型風力選
別機(日本専機 (株)AN−500型)52の投入口53から粉砕物を振動フィーダー55
を駆動して供給し、シロッコファン56の回転数を制御して風量を調整して風力分離し、排出口54A、排出口54Bからそれぞれ、粒度の大きい被覆樹脂粉砕物4.12Kg、綿状繊維成分を多く含む粒度の細かい被覆樹脂粉砕物0.73Kgを受け槽57A、受け槽57Bに回収した。次に、供給口53に最も近い排出口54Aから受け槽57Aに回収した被覆樹脂粉砕物は、3mmの開口径のパンチングメタルからなるスクリーン10を設置した三力製作所製一軸剪断式粉砕機23(FS−1)に投入して粉砕し、スクリーン10を通過して粉砕物が落下集積する剪断式粉砕機23下部に吸引用エアダクト4を接続して、粉砕物をサイクロンセパレーター19の下部に定量的に回収した。更に、該粉砕物を図12に示す横型風力選別機(日本専機 (株)AN−500型)に供給して再度、風力分離
し、53A、53Bからそれぞれ、粒度の大きい被覆樹脂粉砕物3.39Kg、綿状繊維成分を多く含む粒度の細かい被覆樹脂粉砕物0.61Kgを回収した。次に、該横型風力分離機の排出口53Aより回収した被覆樹脂粉砕物を3mmの目開きの篩を設置した振動篩で処理し、篩上に1.20Kg、篩下に2.19Kgの被覆樹脂粉砕物(回収率43.8%)を回収した。排出口53Aより回収した被覆樹脂粉砕物を実施例1と同様にして求めた回収被覆樹脂粉砕物中の繊維含有量は、3.15%であった。
(比較例1)
材料として、表面に金属異物や油の汚れが付着した使用済み塩化ビニル系樹脂被覆作業用手袋(木綿製編み手袋に塩化ビニル樹脂を被覆した手袋;繊維含有量22.0%)を用い、5cm幅に裁断した手袋を5Kg使用した。これを、10mmの開口径のパンチングメタルからなるスクリーン10を設置したスイングハンマクラッシャ1(尾上機械社製バルツ型粉砕機)で粉砕し、スクリーン10を通過して粉砕物が落下集積するスイングハンマクラッシャ1下部に吸引用エアダクト4を接続して、粉砕物をサイクロンセパレーター19の下部に定量的に回収した。次に、3mmの開口径のパンチングメタルからなるスクリーン10を設置した三力製作所製一軸剪断式粉砕機23(FS−1)に投入して粉砕し、スクリーン10を通過して粉砕物が落下集積する剪断式粉砕機23下部に吸引用エアダクト4を接続して、粉砕物をサイクロンセパレーター19の下部に定量的に回収した。回収した樹脂粉砕物を振動篩3mmの目開きの篩を設置した振動篩で処理した結果、篩上に2.63Kg、篩下に被覆樹脂粉砕物を2.18Kg(回収率43.6%)回収した。回収した被覆樹脂粉砕物には、アルミニウム金属粉の異物の混入が認められ、また、回収した被覆樹脂粉砕物を実施例1と同様にして求めた回収被覆樹脂粉砕物中の繊維含有量は、4.33%であり、回収した塩化ビニル被覆樹脂成分中には綿状繊維成分の混入も認められ、分離精度が悪かった。また、剪断式粉砕機23での粉砕に要した時間は、実施例1に対して2倍以上かかり、効率が低下する結果となった。
(比較例2)
材料として、表面に金属異物や油の汚れが付着した使用済み塩化ビニル系樹脂被覆作業用手袋(木綿製編み手袋に塩化ビニル樹脂を被覆した手袋;繊維含有量22.0%)を用い、5cm幅に裁断した手袋を5Kg使用した。実施例1と同じようにして、5mmの開口径のパンチングメタルからなるスクリーン10を設置したスイングハンマクラッシャ1(尾上機械社製バルツ型粉砕機)で粉砕し、スクリーン10を通過して粉砕物が落下集積するスイングハンマクラッシャ1下部に吸引用エアダクト4を接続して、粉砕物をダスト分離装置16(直胴部H:700mm、直胴部直径D:900mm)に供給して風力分離するとともに、ダスト分離装置16の分離塔下部から落下集積した被覆樹脂粉砕物4.11Kgをバットに回収した。同時に、ダスト分離装置16の上部真空吸引口からブロワーにより吸引した繊維成分は、繊維成分回収袋21をサイクロンセパレーター19の下部に設置して275gの綿状繊維成分を回収した。次に、該分離装置16の下部より回収した被覆樹脂粉砕物6aを5mmの目開きの篩を設置した振動篩で処理し、篩上に1.47Kg、篩下に被覆樹脂粉砕物6dを2.64Kg(回収率52.8%)回収した。回収した被覆樹脂粉砕物を実施例1と同様にして求めた回収被覆樹脂粉砕物中の繊維含有量は、5.57%であり、回収した塩化ビニル被覆樹脂成分中には繊維成分が付着したものが多く混合しており、分離精度が悪かった。
(比較例3)
材料として、表面に金属異物や油の汚れが付着した使用済み塩化ビニル系樹脂被覆作業用手袋(木綿製編み手袋に塩化ビニル樹脂を被覆した手袋;繊維含有量22.0%)を用い、実施例1と同じようにして、10mmの開口径のパンチングメタルからなるスクリーン10を設置したスイングハンマクラッシャ1(尾上機械社製バルツ型粉砕機)で粉砕し、スクリーン10を通過して粉砕物が落下集積するスイングハンマクラッシャ1下部に吸引用エアダクト4を接続して、粉砕物をダスト分離装置16(直胴部H:700mm、直胴部直径D:900mm)に供給して風力分離するとともに、ダスト分離装置16の分離塔下部から落下集積した被覆樹脂粉砕物3.88Kg(回収率77.5%)をバットに回収した。同時に、ダスト分離装置16の上部真空吸引口からブロワーにより吸引した繊維成分は、繊維成分回収袋21をサイクロンセパレーター19の下部に設置して1kgの綿状繊維成分を回収した。ダスト分離装置16の分離塔下部から回収した被覆樹脂粉砕物について、実施例1と同様にして求めた回収被覆樹脂粉砕物中の繊維含有量は、9.15%であり、回収した塩化ビニル被覆樹脂成分中には繊維成分が付着したものが多く混合しており、分離精度が悪かった。
(比較例4)
材料として、表面に金属異物や油の汚れが付着した使用済み塩化ビニル系樹脂被覆作業用手袋(木綿製編み手袋に塩化ビニル樹脂を被覆した手袋;繊維含有量22.0%)を用い、これを、10mmの開口径のパンチングメタルからなるスクリーン10を設置した三力製作所製一軸剪断式粉砕機23(FS−1)に投入して粉砕し、スクリーン10を通過して粉砕物が落下集積する剪断式粉砕機23下部に吸引用エアダクト4を接続して、粉砕物をダスト分離装置16(直胴部H:700mm、直胴部直径D:900mm)に供給して風力分離するとともに、ダスト分離装置16の分離塔下部から落下集積した被覆樹脂粉砕物6bをバットに4.81kg回収した。同時に、ダスト分離装置16の上部真空吸引口からブロワーにより吸引した繊維成分は、サイクロンセパレーター19の下部に設置した繊維成分回収袋21に0.14kgの綿状繊維成分22bを回収した。次に、3mmの開口径のパンチングメタルからなるスクリーン10を設置したスイングハンマクラッシャ1(尾上機械社製バルツ型粉砕機)で、実施例1におけるスイングハンマクラッシャ1(尾上機械社製バルツ型粉砕機)での粉砕時間の2倍の時間をかけて粉砕し、スクリーン10を通過して粉砕物が落下集積するスイングハンマクラッシャ1下部に吸引用エアダクト4を接続して、粉砕物をダスト分離装置16(直胴部H:700mm、直胴部直径D:900mm)に供給して風力分離したが、ダスト分離装置16の分離塔下部から落下集積し手回収された被覆樹脂粉砕物は、0.22Kgであった。同時に、ダスト分離装置16の上部真空吸引口からブロワーにより吸引した繊維成分は、サイクロンセパレーター19の下部に設置した繊維成分回収袋21に0.18kgの綿状繊維成分を回収した。ダスト分離装置16の分離塔下部及び上部真空吸引口から回収した回収物の量がスイングハンマクラッシャ1に投入した粉砕物6bに対してあまりにも少なかったので、スイングハンマクラッシャ1を停止後、スイングハンマクラッシャ1の内部を確認したところ、3mmの開口径のパンチングメタルからなるスクリーン10上に3.80kg(回収率76.0%)残留しており、その樹脂温度は高く、70℃以上になっていた。また、実施例1と同様にして求めたスイングハンマクラッシャ1の内部に残留した樹脂中の繊維含有量は、9.14%であった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、編み手袋3aからなる繊維成分に塩化ビニル系樹脂を被覆した作業用手袋3の廃製品及び製造工程で発生する端材や廃材のリサイクル方法及びリサイクル装置に関し、作業用手袋から塩化ビニル系樹脂成分と繊維成分とを分離除去するとともに、作業用手袋の表面に付着した金属紛、金属片、油分、ごみ等の異物も除去した粉砕物を高精度に分離回収し、再生原料として再資源化を可能にする。また、本発明の方法により回収された塩化ビニル系樹脂からなる被覆樹脂粉砕物は、分離精度が高いため、遮音材、遮音シートや床マット、クッションマット等の床材の原料として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の処理対象である作業用手袋の構成を示す斜視図である。
【図2】衝撃式粉砕機の排出側下部に接続した吸引用エアダクトの構成を示す概略説明図である。
【図3】本発明の処理対象である作業用手袋を粉砕、風力分離して繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とを分離回収するための最も基本的な第1の作業工程を示すブロック図である。
【図4】本発明の処理対象である作業用手袋を、第1粉砕工程と第1風力分離工程とで粉砕、風力分離するための具体的構成を示す説明図である。
【図5】本発明の処理対象である作業用手袋を、第1粉砕工程と第1風力分離工程にて処理した後に、第2粉砕工程と第2風力分離工程にて、粉砕、風力するための具体的構成を示す説明図である。
【図6】本発明の作業用手袋の粉砕分離処理に採用されるダスト分離装置の分離塔の1例を示す拡大縦断面図である。
【図7】本発明の処理対象である作業用手袋を、第1粉砕工程と第1風力分離工程にて粉砕、風力分離した後に、該作業用手袋に付着したアルミ等の金属粉からなる異物を除去する方法の具体的構成を示す説明図である。
【図8】本発明の処理対象である作業用手袋を粉砕、風力分離した後に、第2篩選別工程にて篩選別する方法の基本的構成を示す説明図である。
【図9】本発明の処理対象である作業用手袋を粉砕、風力分離して繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とを分離回収するための第2の作業工程を示すブロック図である。
【図10】本発明の処理対象である作業用手袋を粉砕、風力分離して繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とを分離回収するための第3の作業工程を示すブロック図である。
【図11】本発明の処理対象である作業用手袋を粉砕、風力分離して繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とを分離回収するための第4の作業工程を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施例4に使用した横型風力選別機の概念を示す側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 スイングハンマクラッシャ(衝撃式粉砕機)
1b 粉砕物回収部
2 投入口
3 作業用手袋
3a 編み手袋(繊維製原手)
3b 樹脂被覆層
4 吸引用エアダクト
5 輸送用ブロアー
6,6a〜6e 粉砕物
7 粉砕機内部
8 回転体
9 ハンマ又は回転刃
10 スクリーン
11 回転軸
12 輸送ブロワー
13 回転ポール
14 粉砕物
15 配管
16 ダスト分離装置
17A,B 回収槽
18 ブロワー
19 サイクロンセパレータ
21 繊維成分回収袋
22 繊維成分
22a,22b,22d 繊維成分
23 剪断式粉砕機
24 固定刃
25 回転刃
26 真空吸引口
27 円形板
28 円形板支持具
29 通気間隙
30 空気補給口
31 空気輸送管
33 円型振動篩
34 振動バネ
35 付着異物
37 振動篩
38 出口側
39 支持アーム
40 篩メッシュ
41 モーター
42 ベルト
43 大径プーリ
44 クランク軸
45 小径プーリ
46 吸取口部
47 吸引ダクト
48 篩通過物回収箱
49 篩上残留物回収箱
50 吸引フード
51 調整ボルト
52 横型風力選別機
53 供給口
53A 排出口
54A,54B 排出口
55 振動フィーダー
56 シロッコファン
57A,57B 槽
E 出口側又は振動篩出口側
H 胴部
K 管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製原手の外表面のうちの少なくとも一部に塩化ビニル系樹脂を被覆した手袋から、繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とを分離回収するリサイクルシステムであって、
手袋の粉砕の大きさを規制するスクリーンを設置した衝撃式粉砕機と、前記衝撃式粉砕機にて粉砕された粉砕物から繊維成分を分離するための分離機と、前記分離機にて繊維成分が分離された粉砕物の粉砕の大きさを規制するスクリーンを設置した剪断式粉砕機と、前記剪断式粉砕機にて粉砕された粉砕物を繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とに分離するための分離機とを備えることを特徴とする、手袋からの繊維成分及び塩化ビニル系樹脂成分を分離回収するリサイクルシステム。
【請求項2】
前記2つの分離機のいずれもが、繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とを風力により分離する風力分離機からなる請求項1記載のリサイクルシステム。
【請求項3】
前記衝撃式粉砕機及び前記剪断式粉砕機の少なくとも一方を複数台設けてなる請求項1又は2記載のリサイクルシステム。
【請求項4】
前記複数台設けられた各粉砕機にて粉砕された粉砕物を風力分離する風力分離機を備えてなる請求項3記載のリサイクルシステム。
【請求項5】
前記剪断式粉砕機にて粉砕されてから前記分離機又は前記風力分離機にて分離されて回収した粉砕物を、篩上に滞留させて該粉砕物の表面に付着した繊維成分を塩化ビニル系樹脂成分から擦り落として分離する振動篩を備えてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載のリサイクルシステム。
【請求項6】
前記衝撃式粉砕機にて粉砕されてから前記分離機又は前記風力分離機にて分離されて回収した粉砕物を、篩上に滞留させて該粉砕物の表面に付着した異物を擦り落とす振動篩を備えてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載のリサイクルシステム。
【請求項7】
前記風力分離機が、上部に真空吸引口を設け、下部を空気補給口を設けた縦円筒形の分離塔内に、円形板を、その周囲に前記分離筒内壁との間に通気間隙が存するように水平に支持し、前記円形板上の中心部に空気輸送管によって前記剪断式粉砕機にて粉砕された粉砕物を搬入し、該粉砕物中の塩化ビニル系樹脂成分を前記円形板の周縁部から落下させるとともに繊維成分を空気補給口から入って分離塔内を上昇する空気流に乗せて真空吸引口に吸引させるようにしたダスト分離装置であることを特徴とする請求項2又は4又は5又は6記載のリサイクルシステム。
【請求項8】
前記衝撃式粉砕機が、粉砕の大きさを規制する、パンチングメタル又は格子の目開きが4mm以上25mm以下であるスクリーンを設置したスイングハンマクラッシャ型である請求項1〜7のいずれか1項に記載のリサイクルシステム。
【請求項9】
前記剪断式粉砕機が、粉砕の大きさを規制する、パンチングメタル又は格子の目開きが0.5mm以上12mm以下であるスクリーンを設置した剪断式粉砕機である請求項1〜8のいずれか1項に記載のリサイクルシステム。
【請求項10】
前記振動篩の篩の目開きが0.5mm以上12mm以下であることを特徴とする請求項5又は6記載のリサイクルシステム。
【請求項11】
前記振動篩の篩上に、吸引ダクトに接続した吸引フードを設けて、該篩上に残留する繊維成分及びごみ成分を真空吸引して分離することを特徴とする請求項5又は10記載のリサイクルシステム。
【請求項12】
前記繊維製原手を構成する繊維素材が、木綿であり、油分を吸着できるものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のリサイクルシステム。
【請求項13】
前記手袋に付着した異物が、金属粉、金属片、油分の少なくとも1つを含むものである請求項1〜12のいずれかに記載のリサイクルシステム。
【請求項14】
前記粉砕物の表面に付着した異物を擦り落とす振動篩が、円型振動篩である請求項6記載のリサイクルシステム。
【請求項15】
請求項1〜15のいずれかに記載のリサイクルシステムを用いて手袋から繊維成分と塩化ビニル系樹脂成分とを分離回収する分離回収方法。
【請求項16】
請求項15に記載の分離回収方法により手袋から分離回収された塩化ビニル系樹脂成分からなることを特徴とする再生塩化ビニル系樹脂。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−117837(P2007−117837A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311299(P2005−311299)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】