説明

投射光学系およびプロジェクタ装置

【課題】コンパクトで広角化の要求に対応できる投射光学系を提供する。
【解決手段】 縮小側の第1の像面から拡大側の第2の像面へ投射する投射光学系1であって、14枚のレンズL1〜L14を含む第1の光学系10であって、縮小側から入射した光により当該第1の光学系10の内部に結像される第1の中間像31を当該第1の光学系10よりも拡大側に第2の中間像32として結像する第1の光学系10と、第2の中間像32よりも拡大側に位置する正の屈折力の第1の反射面21aを含む第2の光学系20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ装置の投射光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、投射画面の大画面化を図りつつ、投射装置外の投影空間を縮小するために、反射面を含む結像光学系を採用しつつ、色収差も補正可能な投射光学系およびこのような投射光学系を用いる画像投射装置を実現することが記載されている。そのため、特許文献1には、ライトバルブの投影側にライトバルブの側から第1、第2の光学系を上記順序に配し、第1の光学系は1以上の屈折光学系を含み、正のパワーを有し、第2の光学系はパワーを有する反射面を1以上含み、正のパワーを有し、ライトバルブにより形成された画像を第1及び第2の光学系の光路上に中間像として結像させ、中間像をさらに拡大してスクリーン上に投射することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、所望の変倍比を得つつ、倍率色収差等の諸収差の発生を抑制しコンパクトな構成の変倍光学系を実現する技術が記載されている。特許文献2の変倍光学系は、3つの反射曲面を有する光学ブロックRと、その光学ブロックRよりも縮小側に配置された光学ブロックCとで構成され、光学ブロックCは移動可能な複数のレンズユニットを有し、複数のレンズユニットの移動により変倍を行う。そして、縮小側から拡大側へ光線をトレースするとき、光学ブロックCは光学ブロックRの最も縮小側の光学面(反射面)より拡大側に縮小側共役点の像を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−258620号公報
【特許文献2】特開2004−295107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プレゼンテーション用や学校教育用などの様々な用途において、さらにコンパクトで広角化の要求に対応できる投射光学系が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の1つは、縮小側の第1の像面から拡大側の第2の像面へ投射する投射光学系である。この投射光学系は、複数のレンズを含む第1の光学系であって、縮小側から入射した光により第1の光学系の内部に結像される第1の中間像を第1の光学系よりも拡大側に第2の中間像として結像する第1の光学系と、第2の中間像よりも拡大側に位置する正の屈折力の第1の反射面を含む第2の光学系とを有する。第1の中間像を第1の光学系の内部に結像し、その第1の中間像を第1の光学系の拡大側に第2の中間像として結像することにより、第1の光学系の拡大側のレンズ径を小さくでき、第1の光学系をコンパクトにすることができる。さらに、第1の光学系の内部に第1の中間像を結像させることにより、第1の光学系の射出瞳を第1の反射面の側に近付けることができる。このため、第1の光学系から第1の反射面の空気間隔(光学的距離)を短くでき、第1の反射面を小型化できる。
【0007】
この投射光学系においては、第1の中間像、第2の中間像および第1の反射面で結像される像がそれぞれ反転する。したがって、第1の像面の中心から第2の像面の中心に至る光線が第1の光学系の光軸および第2の光学系の光軸の少なくともいずれかと少なくとも3回交差して第2の像面に至るように投射光学系をデザインできる。
【0008】
第1の像面の中心から第2の像面の中心に至る光線が第1の光学系の光軸および第2の光学系の光軸が共通の場合はその共通の光軸と、光軸がシフトしている場合はそれらの少なくともいずれかと3回交差して第2の像面に至る場合、第1の像面と第1の反射面との間では光線が光軸と2回交差する。したがって、第1の像面と第1の反射面とを光軸に対して同方向に配置できる。すなわち、第1の像面と第1の反射面とを光軸を含む第1の面に対して同方向に配置できる。このため、第1の像面を照明する照明光学系を第1の面に対し第1の反射面と同じ方向に配置することができ、第1の面に対し同じ方向のスペースを照明光学系と第1の反射面とで共有できる。このため、投射光学系および照明光学系を含めたプロジェクタを薄型にできる。
【0009】
この投射光学系は、第1の中間像および第2の中間像の間に配置された絞りを含むことが望ましい。第1の光学系の拡大側のサイズをコンパクトにでき、さらに、第1の光学系と第1の反射面との空気間隔を短縮できるので第1の反射面のサイズもコンパクトにできる。絞りは偏心絞りであることが好ましく、フレアやゴーストの原因となる散乱光を遮断できる。
【0010】
また、第1の光学系の拡大側のレンズサイズを小さくできるので、光軸を中心とした回転対称なレンズを用いても第1の反射面からの光線とレンズとの干渉を抑制でき、第1の光学系と第1の反射面との距離を確保するために第1の光学系の拡大側に負のパワーのレンズを配置しなくてもよい。したがって、第1の光学系の最も拡大側のレンズは正レンズあるいは正のメニスカスレンズであってもよく、さらに、接合レンズであってもよい。
【0011】
さらに、第1の光学系の最も拡大側のレンズおよび第1の反射面の光学的距離dnと、第1の像面および第1の反射面の光学的距離dwとが以下の条件を満たすことが望ましい。
0.1<dn/dw<0.3
第1の光学系に含まれるレンズと第1の反射面との間の空間を小さくできるので、レンズおよび第1の反射面との間の投影光を射出するための開口部が小さくなる。したがって、いっそうコンパクトなプロジェクタを提供でき、開口部から侵入する要因によるレンズおよび反射面の損傷のリスクを低減できる。
【0012】
この投射光学系において、典型的には第1の中間像と第2の中間像とは光軸を挟んで反対側に結像される。第1の光学系は、第1の中間像の縮小側に1または複数の中間像が形成されるものであってもよい。また、第2の光学系は第1の反射面の前後に1または複数の反射面を含んでいてもよい。また、投射光学系は、第2の光学系の拡大側にさらに屈折光学系を含んでいてもよい。
【0013】
本発明の他の態様の1つは、上記の投射光学系と、第1の像面に画像を形成する光変調器とを有するプロジェクタである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る投射光学系を用いたプロジェクタ装置の概略構成を示す図であり、(a)は非テレセントリックな投写光学系を用いたプロジェクタ装置の概略構成を示す図、(b)はテレセントリックな投写光学系を用いたプロジェクタ装置の概略構成を示す図、(c)は異なるテレセントリックな投写光学系を用いたプロジェクタ装置の概略構成を示す図。
【図2】第1の実施形態に係る投射光学系の概略構成を示す図。
【図3】第1の実施形態に係る投射光学系のレンズデータを示す図。
【図4】第1の実施形態に係る投射光学系の諸数値を示す図であり、(a)は基本データを示し、(b)は間隔データを示し、(c)は非球面データを示す。
【図5】第1の実施形態に係る投射光学系の中間像の近傍の平面における光束の状態を示す図であり、(a)は第1の中間像の近傍を示し、(b)は第2の中間像の近傍を示す。
【図6】第2の実施形態に係る投射光学系の概略構成を示す図。
【図7】第2の実施形態に係る投射光学系のレンズデータを示す図。
【図8】第2の実施形態に係る投射光学系の諸数値を示す図であり、(a)は基本データを示し、(b)は間隔データを示し、(c)は非球面データを示し、(d)はズームデータを示す。
【図9】第2の実施形態に係る投射光学系の中間像の近傍の平面における光束の状態を示す図であり、(a)は第1の中間像の近傍を示し、(b)は第2の中間像の近傍を示す。
【図10】第3の実施形態に係る投射光学系の概略構成を示す図。
【図11】第3の実施形態に係る投射光学系のレンズデータを示す図。
【図12】第3の実施形態に係る投射光学系の諸数値を示す図であり、(a)は基本データを示し、(b)は間隔データを示し、(c)は非球面データを示し、(d)はズームデータを示す。
【図13】第3の実施形態に係る投射光学系の中間像の近傍の平面における光束の状態を示す図であり、(a)は第1の中間像の近傍を示し、(b)は第2の中間像の近傍を示す。
【図14】従来の投射光学系を用いたプロジェクタ装置の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、本発明の実施形態に係る典型的な投射光学系を用いたプロジェクタ装置の概略構成を示しており、図1(a)は非テレセントリックな投射光学系を用いたプロジェクタ装置の概略構成を示す図、図1(b)はテレセントリックな投射光学系を用いたプロジェクタ装置の概略構成を示す図、図1(c)は異なるテレセントリックな投射光学系を用いたプロジェクタ装置の概略構成を示す図である。図14に、従来の投射光学系を用いたプロジェクタ装置の概略構成を示している。
【0016】
図1(a)〜図1(c)に示すように、プロジェクタ(プロジェクタ装置)100は、光変調器(ライトバルブ)5と、ライトバルブ5に変調用の照明光を照射する照明光学系90と、ライトバルブ5の像面を縮小側の第1の像面とし、ライトバルブ5により形成された画像を投影光91として拡大側の第2の像面であるスクリーン9に拡大して投射する投射光学系1とを備えている。ライトバルブ5は、LCD、デジタルミラーデバイス(DMD)あるいは有機ELなどの画像を形成できるものであればよく、単板式であっても、各色の画像をそれぞれ形成する方式であってもよい。なお、上記のライトバルブ5は反射型のLDCであっても透過型のLCDであってもよく、透過型の場合の照明光学系90はライトバルブ5に対して投射光学系1の光軸101方向の反対側に配置される。さらに、スクリーン9は、壁面やホワイトボードなどであってもよく、プロジェクタ100はフロントプロジェクタであっても、スクリーンを含むリアプロジェクタであってもよい。なお、ライトバルブ5は、ライトバルブの第1の像面の位置を示す。
【0017】
典型的なライトバルブ5はDMD(デジタルミラーデバイス)を採用した単板式のビデオプロジェクタであり、照明光学系90は、ハロゲンランプなどの白色光源と、円盤型の回転色分割フィルタ(カラーホイール)とを備えて、DMD(パネル、ライトバルブ)5が、赤、緑、青の3原色の画像を時分割で形成するものである。投射光学系1のDMD5の側は、図1(a)に示すようにノンテレセントリックであってもよく、図1(b)に示すようにTIR(Total Internal Reflection)プリズムPrなどを用いてテレセントリ
ックにすることも可能である。なお、DMD方式ではなく液晶方式の場合には、図1(c)に示すようにTIRプリズムPrの代わりに色合成プリズム6を用いることも可能であり、反射型液晶方式の場合には、照明用プリズム若しくはワイヤーグリッドおよび色合成プリズムの両方を用いることも可能である。
【0018】
図1(a)〜図1(c)に示すように、本発明の投射光学系1は、縮小側の第1の像面であるDMD5から拡大側の第2の像面であるスクリーン9へ投射する投射光学系である。投射光学系1は、複数のレンズを含む第1の光学系10であって、縮小側から入射した光により第1の光学系10の内部に結像される第1の中間像31を第1の光学系10よりも拡大側に第2の中間像32として結像する第1の光学系10と、第2の中間像32よりも拡大側に位置する正の屈折力の第1の反射面21aを含む第2の光学系20とを有する。さらに、第1の光学系10は、第1の中間像31を結像させる第1の屈折光学系11と、第1の中間像31を第2の中間像32として結像させる第2の屈折光学系12とを含むように構成できる。
【0019】
この投射光学系1においては、第1の中間像31、第2の中間像32および第1の反射面21aで結像される像がそれぞれ反転する。したがって、DMD5の中心からスクリーン9の中心に至る光線が第1の光学系10および第2の光学系20の共通する光軸101と3回交差してスクリーン9に至るように投射光学系1をデザインできる。
【0020】
DMD5の中心からスクリーン9の中心に至る光線が第1の光学系10および第2の光学系20の共通する光軸101と3回交差してスクリーン9に至る場合、DMD5と第1の反射面21aとの間では光線が光軸101と2回交差する。したがって、DMD5と第1の反射面21aとを光軸101に対して同方向に配置できる。すなわち、DMD5と第1の反射面21aとを光軸101を含む第1の面111に対して同方向の第1の方向111a(下方向)に配置できる。
【0021】
このため、DMD5を照明する照明光学系90を第1の面111に対し第1の反射面21aと同じ第1の方向111aに配置することができる。したがって、図14に示すような従来のプロジェクタ装置200とは異なり、第1の面111に対し同じ第1の方向111aのスペース111sを照明光学系90と第1の反射面21aとで共有できる。このため、投射光学系1および照明光学系90を含めたプロジェクタ100の高さ(厚さ)を、従来のプロジェクタ200の半分以下に薄型化できる。
【0022】
図1(a)〜図1(c)に示すように、本発明の投射光学系1を含むプロジェクタ100は、第1の面111に対して同方向の第1の方向111aのスペース111sに照明光学系90および第1の反射面21aを配置できる。このため、第1の反射面21aが収まる高さ(厚さ)hの中に照明光学系90を収めることができる。また、照明光学系90の厚さが大きい場合であっても、照明光学系90の厚さhの中に第1の反射面21aを収めることができる。
【0023】
第1の実施形態
図2に、第1の実施形態に係る投射光学系1を示している。この投射光学系1は、入射側がテレセントリックの固定焦点型の投射光学系であり、縮小側の第1の像面であるDMD5の側から順に、複数のレンズを含む第1の光学系10と、第1の光学系10から出射された光を拡大側の第2の像面であるスクリーン9に投影する正のパワーの第1の反射面21aを含む第2の光学系(反射光学系)20とを有する。具体的には、第1の光学系10は、14枚のレンズL1〜L14を含み、第2の光学系20は、1枚の非球面形状の第1の反射面21aを含むミラー(凹面鏡)21を含む。本例の投射光学系1は、変倍を行わない単焦点(固定焦点)タイプの光学系であり、第1の光学系10の複数のレンズL1〜L14および第2の光学系20のミラー21により第2の像面であるスクリーン9に投影された光により、第1の像面であるDMD5に形成された画像がスクリーン9に拡大して投射される。
【0024】
この投射光学系1の第1の光学系10は、DMD5から入射した光により第1の光学系10の内部に結像される第1の中間像31を第1の光学系10よりも拡大側に第2の中間像32として結像する。また、第2の光学系20の第1の反射面21aは、第2の中間像32よりも拡大側に配置されている。図2に示した第1の光学系10は鏡面を含まない屈折光学系であり、DMD5により形成された画像を第1の中間像31として結像させる第1の屈折光学系11と、第1の中間像31を第2の中間像32として結像させる第2の屈折光学系12とを含む。なお、第1の光学系10は、適当な位置で光軸101を折り曲げるための鏡面を含んでいてもよい。
【0025】
第1の屈折光学系11は、全体が正の屈折力を備えたレンズ系であり、DMD5の側から順に配置された、両凸の正レンズL1と、DMD5の側に凸の正メニスカスレンズL2と、2枚貼合の第1の接合レンズ(バルサムレンズ、ダブレット)LB1と、ミラー21の側(拡大側)に凸の負メニスカスレンズL5と、ミラー21の側に凸の正メニスカスレンズL6と、DMD5の側(縮小側)に凸の正メニスカスレンズL7と、両凸の樹脂製の正メニスカスレンズL8とから構成されている。第1の接合レンズLB1は、DMD5の側から順に配置された両凸の正レンズL3と、両凹の負レンズL4とから構成されている。負メニスカスレンズL5の両面、すなわちDMD5の側の面S8およびミラー21の側の面S9は非球面である。さらに、正メニスカスレンズL8の両面、すなわちDMD5の側の面S14およびミラー21の側の面S15も非球面である。
【0026】
第1の屈折光学系11の最も拡大側から2番目の正メニスカスレンズL7は、第1の屈折光学系11の中で最も有効径(口径)の大きいレンズであり、第1の屈折光学系11の最大有効径を与えるレンズである。同時に、このレンズL7は、第1の光学系10の中で最も有効径(口径)の大きいレンズであり、第1の光学系10の最大有効径は第1の屈折光学系11の拡大側のレンズにより与えられる。
【0027】
負メニスカスレンズL5のミラー21の側、すなわち負メニスカスレンズL5および正メニスカスレンズL6の間の空間には、第1の中間像31を形成する第1の開口絞りSt1が配置されている。第1の屈折光学系11のDMD5の側には、1枚のガラス製のプリズム(TIRプリズム)Prが配置されており、この投射光学系1に入射する光はテレセントリックまたはそれに近い状態となっている。第1の屈折光学系11は、第1の屈折光学系11よりも拡大側、すなわち第1の屈折光学系11と第2の屈折光学系12との間の空間Sp1に、DMD5により形成された画像を第1の中間像31として結像する。本例の第1の中間像31は、第1の屈折光学系11の最も拡大側の正メニスカスレンズL8から拡大側に空気間隔(距離)3.74mmを隔てて結像される。
【0028】
第2の屈折光学系12は、全体が、第1の屈折光学系11よりも焦点距離が短くパワーの強い正の屈折力を備えたレンズ系であり、DMD5の側から順に配置された、DMD5の側に凸の樹脂製の正メニスカスレンズL9と、両凸の正レンズL10と、2枚貼合の第2の接合レンズLB2と、2枚貼合の第3の接合レンズLB3とから構成されている。第2の接合レンズLB2は、DMD5の側から順に配置された両凸の正レンズL11と、両凹の負レンズL12とから構成されている。第3の接合レンズLB3は、DMD5の側から順に配置されたDMD5の側に凸の負メニスカスレンズL13と、両凸の正レンズL14とから構成されている。正メニスカスレンズL9の両面、すなわちDMD5の側の面S16およびミラー21の側の面S17は非球面である。
【0029】
第2の屈折光学系12の最も縮小側の正メニスカスレンズL9は、第2の屈折光学系12の中で最も有効径(口径)の大きいレンズであり、第2の屈折光学系12の最大有効径を与えるレンズとなる。第2の屈折光学系12のミラー21の側には、第2の中間像32を形成する第2の偏心絞りSt2が配置されている。本例の第2の偏心絞りSt2は開口(円形の開口)の中心が光軸101からずれており、その偏心量は、光軸101を含む第1の面111に対して下方向(第1の方向)111aに1.5mmである。第2の屈折光学系12は、第2の屈折光学系12よりも拡大側、すなわち第2の屈折光学系12および第1の反射面21aの間の空間Sp2に、第2の中間像32を結像する。本例の第2の中間像32は、第2の偏心絞りSt2のミラー21の側に、第2の偏心絞りSt2から空気間隔41.60mmを隔てて結像される。
【0030】
この投射光学系1は、第1の屈折光学系11が第1の光学系10の内部の空間Sp1に第1の中間像31を結像させ、第2の屈折光学系12が第1の光学系10の拡大側で、第2の光学系20の第1の反射面21aの縮小側の空間Sp2に第2の中間像32を結像させる。さらに、第2の光学系20の非球面の反射面21aが第2の中間像32をスクリーン9に投影し、スクリーン9にDMD5の画像を拡大投射する。
【0031】
この投射光学系1においては、第1の光学系10の拡大側に配置された第2の屈折光学系12が第1の光学系10の内部に結像された第1の中間像31を第2の屈折光学系12の拡大側に第2の中間像32として結像する。第1の中間像31と第2の中間像32とは光軸101に対して逆転するので、第2の屈折光学系12を通過する光束は第2の屈折光学系12の光軸101と交差し、第2の屈折光学系12を通過する光束の面積は光軸101の周りに集中しやすい。このため、第1の光学系10の拡大側に位置する第2の屈折光学系12の最大有効開口径を第1の屈折光学系11に対して小さくすることができる。特に、第2の屈折光学系12の広角側のレンズ径を縮小側のレンズ径に対して小さくできる。
【0032】
すなわち、第1の屈折光学系11は、第1の中間像31を光軸101よりも上側半分の一方の領域(第1の領域)101aに結像させ、第2の屈折光学系12は、第1の中間像31の上下左右が反転した第2の中間像32を、領域101aとは反対側、すなわち光軸101よりも下側半分の他方の領域(第2の領域)101bに結像させる。このため、第1の中間像31から第2の中間像32に至る光束は光軸101の周りに集中し、第2の屈折光学系12および第1の反射面21aを小型化できる。
【0033】
さらに、この投射光学系1においては、DMD5に形成される第1の像面の中心からスクリーン9の第2の像面の中心に至る光線110が第1の光学系10および第2の光学系20の共通する光軸101と3回交差してスクリーン9に至る。具体的には、DMD5から射出された光線110は、光軸101に対して下方から投射光学系1に入射し、第1の屈折光学系11の内部で光軸101と交差して光軸101の上側で第1の中間像31として結像される。さらに、光線110は、第2の屈折光学系12の内部で光軸101と交差して光軸101の下側で第2の中間像32として結像される。さらに、光線110は、光軸101の下側で第1の反射面21aにより反射され、光軸101と交差してスクリーン9に投影される。なお、光軸101の上下は相対的な位置関係であり、光軸101に対する上下が入れ替わってもよく、光軸101の左右であってもよい。
【0034】
さらに、第1の光学系10は、内部に第1の中間像31を結像し、その第1の中間像31を拡大側に第2の中間像32として結像するために、拡大側に結像される第2の中間像32のための偏心絞りSt2を第1の光学系10のより拡大側に近い位置、または第1の光学系10よりも拡大側に設けることができる。したがって、第1の反射面21aの縮小側に形成される第2の中間像32と偏心絞りSt2との空気間隔を短くでき、第2の中間像32のサイズに対して第2の中間像32から第1の反射面21aに至る光束の広がりを確保できる。このため、第2の屈折光学系12の拡大側のレンズ径を小さくできるとともに、第1の反射面21aの光軸101を中心とする回転対称な面の径を小さくできる。
【0035】
第1の光学系10の射出瞳および第1の反射面21aの光学的距離EXPと、DMD5および第1の反射面21aの光学的距離dwとが以下の条件(1)を満たすように設計できる。
0.1<EXP/dw<0.6 ・・・(1)
【0036】
第1の光学系10の射出瞳と第1の反射面21aとの間の距離EXPを条件(1)の範囲内とすることにより、第1の光学系10の射出瞳を第1の反射面21aの側に近付けることができるため、第1の反射面21aを小型化できる。条件(1)の上限を超えると、第1の光学系10の拡大側のレンズと第1の反射面21aとの空気間隔が長くなり、第1の反射面21aを小型化することが困難となる。条件(1)の下限を超えると、第1の反射面21aで反射してスクリーン9に向かう光と第2の屈折光学系12との干渉を抑制することが困難となる。条件(1)の上限は、0.4であることが望ましい。また、条件(1)の下限は、0.2であることが望ましく、0.24であることがさらに望ましい。
【0037】
さらに、第2の屈折光学系12の拡大側のレンズ径を小さくできるので、第2の屈折光学系12を、光軸101を中心とする回転対称な面を備えたレンズで形成しても第1の反射面21aで反射してスクリーン9に向かう光と第2の屈折光学系12との干渉を抑制できる。したがって、第2の屈折光学系12と第1の反射面21aとの空気間隔を短くでき、全体がコンパクトで広角化の要求に対応できる投射光学系1を提供できる。
【0038】
このため、この投射光学系1は、第1の光学系10の拡大側、すなわち、最もミラー21の側に配置されたレンズ(本例では正レンズL14)および第1の反射面21aの間の距離dnと、DMD5および第1の反射面21aの間の距離dwとが以下の条件(2)を満たすように設計できる。
0.1<dn/dw<0.3 ・・・(2)
【0039】
第1の光学系10と第1の反射面21aとの間の距離dnを条件(2)の範囲内とすることにより、第1の光学系10と反射面21aとの間の空間Sp2を小さくできるので、第1の光学系10の広角側のレンズ(正レンズL14)および反射面21aの機械的な損傷を抑制しやすい。条件(2)の上限を超えると、広角側のレンズL14および反射面21aの間の空間Sp2が相対的に大きくなり、機械的な損傷を受ける可能性が増す。条件(2)の下限を超えると、空間Sp2が小さくなり、第2の中間像32に第1の反射面21aが接近しすぎて十分な広角化を確保できない。条件(2)の上限は、0.26であることが望ましい。また、条件(2)の下限は、0.15であることが望ましい。
【0040】
さらに、投射光学系1の縮小側のイメージサークルICに対する第1の反射面21aの有効径MDの比を以下の条件(3)にすることができる。
1.0≦MD/IC≦6.0 ・・・(3)
条件(3)の上限は、5.0であってもよく、4.5であることがさらに好ましい。また、条件(3)の下限は、2.0であってもよく、2.5であることがさらに好ましい。イメージサークルICのサイズに対して第1の反射面21aを小さくすることができ、さらにコンパクトな投射光学系1を提供できる。
【0041】
また、投射光学系1の縮小側のイメージサークルICに対する第1の光学系10の最も広角側のレンズ(本例ではレンズL14)の有効径LLDとの比を以下の条件(4)にすることができる。
0.1≦LLD/IC≦2.0 ・・・(4)
条件(4)の上限は、1.5であってもよく、1.0であることがさらに好ましい。また、条件(4)の下限は、0.2であってもよく、0.3であることがさらに好ましい。イメージサークルICのサイズに対して第1の光学系10の最も広角側のレンズ径(有効径)を小さくすることにより、第1の反射面21aで反射された光束(投影光)とレンズとの干渉を抑制でき、さらにコンパクトな投射光学系1を提供できる。
【0042】
さらに、投射光学系1の第1の反射面21aの有効径MDに対する偏心絞りSt2の径STD2との比は以下の条件(5)を満たすことが望ましい。
1.0≦MD/STD2≦30 ・・・(5)
条件(5)の上限は、25であってもよく、20であることが望ましく、18であることがさらに望ましい。また、条件(5)の下限は、2.0であってもよく、3.0であることが望ましく、4.0であることがさらに望ましい。投射光学系1の拡大側に偏心絞りSt2を設けることにより第1の反射面21aの有効径MDを上記の範囲に設定し、有効径MDを小さくすることができる。
【0043】
また、第1の屈折光学系11の最大有効径は、正メニスカスレンズL7の有効径(本例では49.0mm)であり、第2の屈折光学系12の最も拡大側の正レンズL14の有効径は、本例では17.0mmである。さらに、第2の屈折光学系12の最大有効径は、正メニスカスレンズL9の有効径(本例では36.0mm)である。したがって、第2の屈折光学系12の最も拡大側のレンズL14の有効径は第1の屈折光学系11の最大有効径よりも小さく、さらに、第2の屈折光学系12の最大有効径は第1の屈折光学系11の最大有効径よりも小さい。したがって、第1の光学系10は全体として縮小側に対して拡大側のレンズ径が小さく、さらに、第2の屈折光学系12は縮小側に対して拡大側のレンズ径が小さくなっている。
【0044】
さらに、第1の光学系10は第1の屈折光学系11および第2の屈折光学系12を含み、第1の中間像31を介して光線をリレーするように構成されている。したがって、それぞれの屈折光学系11および12を鮮明な像がスクリーン9に投影されるように構成できる。すなわち、広角側から見ると、第1の反射面21aは台形歪みを発生させ、第1の反射面21aを非点収差などとともに台形歪みを補正するように設計することは困難である。したがって、第2の中間像32は台形歪みを含むものとし、第2の屈折光学系12でおもに台形歪みなどの調整を行った第1の中間像31として結像し、第1の屈折光学系11により像面湾曲や、非点収差、コマ収差などの収差を補正するようにしている。したがって、第1の光学系10および第2の光学系20を含む投射光学系1により鮮明で台形補正がされた像をスクリーン9に投影できる。
【0045】
このように、この投射光学系1は、第1の中間像31を挟んで第1の中間像31よりも縮小側(DMD5の側)の第1の屈折光学系11と、第1の中間像31よりも拡大側(ミラー21の側)の第2の屈折光学系12とを含む。このため、第1の屈折光学系11により第1の中間像31を結像させることにより、像面湾曲、非点収差およびコマ収差などの諸収差を補正でき、さらに、第2の屈折光学系12により第2の中間像32を結像させることにより、台形歪みの調整などの歪曲収差を補正できる。したがって、第1の中間像31を2つの屈折光学系11および12により挟む構成により、第1の屈折光学系11および第2の屈折光学系12のそれぞれを専用の光学系として設計できるので、設計の自由度を向上させやすい。
【0046】
第1の屈折光学系11の最も広角側の第1の中間像31の縮小側に配置された両凸の樹脂製の正メニスカスレンズL8は、パワーが弱く、両面S14およびS15は非球面である。このため、諸収差を良好に補正でき第1の中間像31のMTFの低下を抑制できる。また、第2の屈折光学系12の最も縮小側、すなわち第1の中間像31の拡大側に配置された、縮小側に凸の樹脂製の正メニスカスレンズL9の縮小側の面S16は、第1の光学系10の中で最も曲率半径が小さく(曲率が大きく)、広角側の面S17は、面S16に次いで曲率半径が小さい(曲率が大きい)。このため、第1の中間像31の台形歪みを調整し、台形歪みを含む第2の中間像32を結像させやすい。さらに、正メニスカスレンズL9の両面S16およびS17は非球面であるため、台形歪み(歪曲収差)以外の諸収差の補正も同時に行うことができる。したがって、第2の屈折光学系12の最もDMD5の側に樹脂製の正メニスカスレンズL9を配置する簡易な構成により、低コストで、台形歪み以外の諸収差を抑えた第2の中間像32を得ることができる。
【0047】
図3に、投射光学系1の第1の光学系10の各レンズのレンズデータを示している。図4に、投射光学系1の諸数値を示している。レンズデータにおいて、RiはDMD(ライトバルブ)5の側(縮小側)から順に並んだ各レンズ(各レンズ面)の曲率半径(mm)、diはDMD5の側から順に並んだ各レンズ面の間の距離(mm)、DiはDMD5の側から順に並んだ各レンズ面の有効径(mm)、ndはDMD5の側から順に並んだ各レンズの屈折率(d線)、νdはDMD5の側から順に並んだ各レンズのアッベ数(d線)を示している。図3において、Flatは平面を示している。図4(c)において、「En」は、「10のn乗」を意味し、たとえば、「E−06」は、「10の−6乗」を意味する。以降の実施形態においても同様である。本明細書において、第1の中間像31の位置は、光軸101上の第1の中間像31の光束の焦点位置を示している。また、第2の中間像32の位置は、第2の偏心絞りSt2から光軸101上の第2の中間像32の光学的距離d1と、第2の偏心絞りSt2から最周辺(最近辺)の第2の中間像32の光学的距離d2との差分の中点位置を示している。本例では、d1が58.20mm、d2が25.00mmであるため、第2の中間像32の位置は、第2の偏心絞りSt2から41.60mmの位置を示している。以降の実施形態においても同様である。
【0048】
図5に、投射光学系1の第1の中間像31および第2の中間像32の近傍の平面を横切る光束の様子をスポットダイアグラムにより示している。図5(a)に示すように、第1の中間像31の近傍では、DMD5により形成された画像が、第1の屈折光学系11により拡大された画像として上下左右を反転されている。さらに、図5(b)に示すように、第2の中間像32の近傍では、第1の中間像31が、第2の屈折光学系12により台形歪みのある画像として上下左右を反転されている。
【0049】
本例の投射光学系1の上述した条件(1)を与える式の値は、図4(b)に示すように、第1の光学系10の射出瞳と第1の反射面21aとの間の距離EXPが81.70mmであり、DMD5およびミラー21の間の距離dwが323.00mmであるため、以下のようになる。さらに、本例の投射光学系1の上述した条件(2)を与える式の値は、図4(b)に示すように、正レンズL14およびミラー21の間の距離dnが75.20mmであり、DMD5およびミラー21の間の距離dwが323.00mmであるため、以下のようになる。また、その他の条件(3)〜(5)は以下の通りである。なお、第1の光学系10の射出瞳の位置は、縮小側の第1の絞りSt1を第1の光学系10の絞りとした場合の射出瞳の位置を示している。
条件(1) EXP/dw=0.25
条件(2) dn/dw=0.23
条件(3) MD/ID=2.8
条件(4) LLD/ID=0.6
条件(5) STD2/MD=4.7
したがって、本例の投射光学系1は、条件(1)〜(5)を満たしている。
【0050】
したがって、第1の実施形態に係る投射光学系1は、14枚のレンズL1〜L14および1枚のミラー21の構成により、固定焦点でありながら最大画角(全画角)が66.67度、焦点距離が6.20と比較的広角で、F値が1.90と明るく鮮明な画像を投射できる、高性能な投射光学系1の一例である。
【0051】
なお、第1の屈折光学系11の負メニスカスレンズL5の両面S8およびS9と、第1の屈折光学系11の正メニスカスレンズL8の両面S14およびS15と、第2の屈折光学系12の正メニスカスレンズL9の両面S16およびS17と、第1の反射面21aとは回転対称非球面である。非球面は、Xを光軸方向の座標、Yを光軸と垂直方向の座標、光の進行方向を正、Rを近軸曲率半径とすると、図4(c)の係数K、A、B、C、D、EおよびFを用いて次式で表わされる。以降の実施形態においても同様である。
X=(1/R)Y/[1+{1−(1+K)(1/R)1/2
+AY+BY+CY+DY10+EY12+FY14
【0052】
第2の実施形態
図6に、第2の実施形態に係る投射光学系2を示している。この投射光学系2は、入射側が非テレセントリックのズーミング可能な投射光学系であり、DMD5の側(縮小側)から順に、複数のレンズを含む第1の光学系10と、第1の光学系10から出射された光を反射してスクリーン9に投影する第1の反射面21aを含む第2の光学系20とを有する。第1の光学系10は、13枚のレンズL11〜L13、L21〜L22およびL31〜L38を含み、第2の光学系20は、非球面の第1の反射面21aが形成されたミラー(凹面鏡)21を含む。
【0053】
本例の投射光学系2は、変倍を行うズームタイプの光学系であり、第1の光学系10は、DMD5の側から順に、正の屈折力を備えた第1のレンズ群(前群)G1と、正の屈折力を備えた第2のレンズ群(中群)G2と、正の屈折力を備えた第3のレンズ群(後群)G3とを含む。また、本例の第1の光学系10も、内部に結像された第1の中間像31を第1の光学系10よりも拡大側に第2の中間像32として結像する光学系であり、DMD5により形成された画像を第1の中間像31として結像させる正のパワーの第1の屈折光学系11と、第1の中間像31を第2の中間像32として結像させる正のパワーの第2の屈折光学系12とを含む。第1の中間像31は第3のレンズ群G3の内部に結像され、第1のレンズ群G1と、第2のレンズ群G2と、第3のレンズ群G3の最初(縮小側)のレンズL31とが第1の屈折光学系11を構成し、第3のレンズ群G3の他のレンズが第2の屈折光学系12を構成する。
【0054】
最もDMD5側(最も縮小側)の第1のレンズ群(前群)G1は、全体が正の屈折力を備えたレンズ群であり、DMD5の側から順に配置された、両凸の正レンズL11と、両凹の負レンズL12と、両凸の正レンズL13とから構成されている。正レンズL11の両面、すなわちDMD5の側の面S1およびミラー21の側の面S2は非球面である。正レンズL11のミラー21の側、すなわち正レンズL11および負レンズL12の間の空間には、第1の開口絞りSt1が配置されている。第1のレンズ群G1のDMD5の側には、1枚のガラス製のカバーガラスCGが配置されている。
【0055】
第2のレンズ群(中群)G2は、全体が正の屈折力を備えたレンズ群であり、2枚貼合の第1の接合レンズ(バルサムレンズ、ダブレット)LB1から構成されている。第1の接合レンズLB1は、DMD5の側から順に配置されたDMD5の側に凸の負メニスカスレンズL21と、DMD5の側に凸の正メニスカスレンズL22とから構成されている。
【0056】
最もミラー21側(拡大側)の第3のレンズ群(後群)G3は、全体が正の屈折力を備えたレンズ群であり、DMD5の側から順に配置された、DMD5の側に凸の樹脂製の正メニスカスレンズL31と、DMD5の側に凸の樹脂製の正メニスカスレンズL32と、ミラー21の側に凸の正メニスカスレンズL33と、3枚貼合の第2の接合レンズ(バルサムレンズ、トリプレット)LB2と、2枚貼合の第3の接合レンズ(バルサムレンズ、ダブレット)LB3とから構成されている。
【0057】
第2の接合レンズLB2は、DMD5の側から順に配置された、両凸の正レンズL34と、両凹の負レンズL35と、DMD5の側に凸の正メニスカスレンズL36とから構成されている。第3の接合レンズLB3は、DMD5の側から順に配置された両凸の正レンズL37と、両凹の負レンズL38とから構成されている。正メニスカスレンズL31の両面、すなわちDMD5の側の面S10およびミラー21の側の面S11は非球面である。さらに、正メニスカスレンズL32の両面、すなわちDMD5の側の面S12およびミラー21の側の面S13も非球面である。正メニスカスレンズL36のミラー21の側、すなわち正メニスカスレンズL36および正レンズL37の間の空間には、第2の開口絞りSt2が配置されている。
【0058】
本例の投射光学系2は、広角端から望遠端に変倍する際に、第1のレンズ群(前群)G1は縮小側(DMD5側)から拡大側(ミラー21側)へ動き、第2のレンズ群(中群)G2も縮小側から拡大側へ動き、第3のレンズ群(後群)G3は動かない。第1のレンズ群G1はバリエータとして移動することにより変倍し、第2のレンズ群G2はコンペンセータとして第1のレンズ群G1の動きを補償するように動き、リレーレンズである第3のレンズ群G3への入射光束が一定条件になるようにする。フォーカシングは、変倍の際に動かない第3のレンズ群G3内で行われるフローティングフォーカスまたはインナーフォーカスであり、第3のレンズ群G3に含まれる1つ以上のレンズを動かすことにより行われる。
【0059】
第1のレンズ群G1、第2のレンズ群G2およびレンズL31から構成される第1の屈折光学系11は、DMD5の側から順に配置された、正レンズL11と、第1の絞りSt1と、負レンズL12と、正レンズL13と、第1の接合レンズLB1と、正メニスカスレンズL31とを含み、第1の屈折光学系11の拡大側、すなわち第1の屈折光学系11および第2の屈折光学系12の間の空間Sp1に第1の中間像31が結像される。本例の第1の中間像31は、正メニスカスレンズL31から拡大側に空気間隔15.00mmを隔てて結像される。
【0060】
レンズL31を除いた第3のレンズ群G3により構成される第2の屈折光学系12は、DMD5の側から順に配置された、正メニスカスレンズL32と、正メニスカスレンズL33と、第2の接合レンズLB2と、第2の絞りSt2と、第3の接合レンズLB3とを含む。第2の屈折光学系12の拡大側、すなわち第2の屈折光学系12および第1の反射面21aの間の空間Sp2に第2の中間像32が結像される。本例の第2の中間像32は、第2の絞りSt2から拡大側に空気間隔37.40mmを隔てて結像される。
【0061】
この投射光学系2においても、第1の屈折光学系11が第1の光学系10の内部の空間Sp1に第1の中間像31を結像させ、第2の屈折光学系12が第1の光学系10よりも拡大側の空間Sp2に第2の中間像32を結像させている。入射側が非テレセントリックの投射光学系2においては、第1の屈折光学系11のパワーは、第2の屈折光学系12のパワーとほぼ同じ、または大きくなるようにデザインされており、本例の投射光学系2においては、第1の屈折光学系11のパワーが第2の屈折光学系12のパワーよりも大きい。この投射光学系2においても、第1の中間像31と第2の中間像32とは光軸101を挟んで反対側の領域101aおよび101bにそれぞれ形成され、第2の屈折光学系12を通過する光束は光軸101の周りに集中する。したがって、第2の屈折光学系12をコンパクトに形成できる。
【0062】
また、この投射光学系2においても、DMD5に形成される第1の像面の中心からスクリーン9の第2の像面の中心に至る光線110が第1の光学系10および第2の光学系20の共通する光軸101と3回交差してスクリーン9に至る。さらに、第1の中間像31を第1の光学系10の内部に結像させて、その第1の中間像31を第1の光学系10の拡大側に第2の中間像32として結像しているので、第2の中間像32を形成するための第2の絞りSt2を第1の光学系10の内部の拡大側に近い位置に配置できる。したがって、この投射光学系2においても、投射光学系1と同様に第1の光学系10の拡大側のレンズ径を小さくでき、第1の光学系10と第1の反射面21aとの空気間隔を短くできる。このため、コンパクトで広角化が可能な投射光学系2を提供できる。
【0063】
また、第1の屈折光学系11により像面湾曲、非点収差およびコマ収差などの諸収差を補正でき、さらに、第2の屈折光学系12により台形歪みなどの歪曲収差を補正できる。このため、高性能で変倍可能な投射光学系2を提供できる。
【0064】
第1の屈折光学系11の最も拡大側、すなわち第1の中間像31の直上流に配置された縮小側に凸の樹脂製の正メニスカスレンズL31は、本例では第1の光学系10の中で最もパワーが弱く、両面S10およびS11は非球面である。このため、正メニスカスレンズL31により諸収差を良好に調整でき、いっそう鮮明にDMD5により形成された画像を拡大させた第1の中間像31を結像できる。
【0065】
また、第1の屈折光学系11は、第1の中間像31を、像が光軸101から離れるほど、すなわち、像高が高くなるほど縮小側に傾斜し、正メニスカスレンズL32から遠くなるように結像している。さらに、第2の屈折光学系12は、最も縮小側、すなわち第1の中間像31の直下流に配置された縮小側に凸の樹脂製の正メニスカスレンズL32の両面S12およびS13は、曲率半径が小さい(曲率が大きい)。このため、第1の中間像31の台形歪みを調整しやすく、台形歪みのある第2の中間像32として結像させることができる。さらに、正メニスカスレンズL32の両面S12およびS13は非球面であるため、台形歪み(歪曲収差)以外の諸収差も良好に補正できる。さらに、正メニスカスレンズL32は、DMD5の側に凸で、両面S12およびS13の曲率半径が小さい(曲率が大きい)ため、第1の屈折光学系11から出射された光を広角に集光することができる。したがって、明るく、広画角の投射光学系2を提供できる。
【0066】
第1の屈折光学系11の最大有効径は正メニスカスレンズL31(本例では有効径54.0mm)で与えられ、正メニスカスレンズL31は第1の光学系10の最大有効径を備えている。第2の屈折光学系12の最も拡大側の負レンズL38の有効径は、本例では26.0mmであり、第1の屈折光学系11の最大有効径よりも小さい。さらに、第2の屈折光学系12の最大有効径は正メニスカスレンズL32(本例では有効径45.0mm)で与えられ、第1の屈折光学系11の最大有効径よりも小さい。このように、この投射光学系2も、第1の屈折光学系11がDMD5により形成された画像を第1の中間像31として結像させることにより、第1の中間像31よりも下流側の第2の屈折光学系12を小型化できる。
【0067】
さらに、第1の屈折光学系11は、第1の中間像31を第1の領域(一方の領域)101aに結像させ、第2の屈折光学系12は、第2の中間像32を第2の領域(他方の領域)101bに結像させているため、正メニスカスレンズL32の両面S12およびS13の使用領域を第1の領域101aに限定でき、ミラー21の使用領域を第2の領域101bに限定できる。
【0068】
さらに、第2の屈折光学系12は、歪みの少ない第1の中間像31を上下左右に反転させた第2の中間像32として結像させているため、散乱光(不要光)をカットしながら台形歪みのある第2の中間像32として結像させやすく、台形歪みが実質的にキャンセルされた鮮明でかつ拡大された画像をスクリーン9に投射可能な投射光学系2を提供できる。
【0069】
図7に、投射光学系2の第1の光学系10の各レンズのレンズデータを示している。図8に、投射光学系2の諸数値を示している。また、本例では、第2の絞りSt2から光軸101上の第2の中間像32の光学的距離d1が53.30mm、第2の絞りSt2から最周辺(最近辺)の第2の中間像32の光学的距離d2が21.40mmであるため、第2の中間像32の位置は、第2の絞りSt2から37.40mmの位置を示している。なお、ズーム間隔V1はカバーガラスCGと第1のレンズ群G1との空気間隔を示し、ズーム間隔V2は第1のレンズ群G1と第2のレンズ群G2との空気間隔を示し、ズーム間隔V3は第2のレンズ群G2と第3のレンズ群G3との空気間隔を示す。
【0070】
図9に、投射光学系2の第1の中間像31および第2の中間像32の近傍の光束の様子をスポットダイアグラムにより示している。第2の中間像32は台形歪みを含み、第1の中間像31は台形歪みが補正されていることがわかる。
【0071】
本例の投射光学系2の上述した条件(1)〜(5)は以下のようになる。
条件(1) EXP/dw=0.28
条件(2) dn/dw=0.25
条件(3) MD/ID=4.3
条件(4) LLD/ID=1.0
条件(5) STD2/MD=16.6
したがって、本例の投射光学系2も、条件(1)〜(5)を満たしている。
【0072】
このように、第2の実施形態に係る投射光学系2は、13枚のレンズL11〜L13、L21〜L22およびL31〜L38と、1枚のミラー21との構成により、F値が2.62と比較的明るく、ズーミングが可能で、最大画角(全画角)が75.34度、広角端における焦点距離が3.63と広角で鮮明な画像を投射できる、高性能で非テレセントリックな投射光学系である。
【0073】
第3の実施形態
図10に、第3の実施形態に係る投射光学系3を示している。この投射光学系3は、入射側がテレセントリックのズーミング可能な投射光学系であり、DMD5の側(縮小側)から順に、複数のレンズを含む第1の光学系10と、第1の光学系10から出射された光を反射して拡大側のスクリーン9に投影する第1の反射面21aを含む第2の光学系20とを有する。第1の光学系10は、16枚のレンズL11、L21〜L26、L31〜L32およびL41〜L47を含み、第2の光学系20は、非球面の第1の反射面21aを備えたミラー(凹面鏡)21を含む。
【0074】
本例の第1の光学系10は、変倍を行う光学系であり、DMD5の側から順に、正の屈折力を備えた第1のレンズ群G1と、正の屈折力を備えた第2のレンズ群(前群)G2と、正の屈折力を備えた第3のレンズ群(中群)G3と、正の屈折力を備えた第4のレンズ群(後群)G4とを含む。また、本例の第1の光学系10も、内部に結像された第1の中間像31を第1の光学系10よりも拡大側に第2の中間像32として結像する光学系であり、DMD5により形成された画像を第1の中間像31として結像させる負のパワーの第1の屈折光学系11と、第1の中間像31を第2の中間像32として結像させる正のパワーの第2の屈折光学系12とを含む。第1の中間像31は第4のレンズ群G4の内部に結像され、第1のレンズ群G1と、第2のレンズ群G2と、第3のレンズ群G3と、第4のレンズ群G4の最初(縮小側)のレンズL41とが第1の屈折光学系11を構成し、第4のレンズ群G4の他のレンズが第2の屈折光学系12を構成する。
【0075】
最もDMD5側(最も縮小側)の第1のレンズ群G1は、全体が正の屈折力を備えたレンズ群であり、拡大側に凸の正メニスカスレンズL11から構成されている。第1のレンズ群G1のDMD5の側には、DMD5の側から順に、1枚のガラス製のカバーガラスCGと、1枚のガラス製のTIRプリズムPrとが配置されており、DMD5からの投影光はテレセントリックまたはそれに近い状態で投射光学系3に入る。
【0076】
第2のレンズ群(前群)G2は、全体が正の屈折力を備えたレンズ群であり、DMD5の側から順に配置された、両凸の正レンズL21と、2枚貼合の第1の接合レンズ(バルサムレンズ、ダブレット)LB1と、2枚貼合の第2の接合レンズLB2と、拡大側に凸の正メニスカスレンズL26とから構成されている。第1の接合レンズLB1は、DMD5の側から順に配置された両凸の正レンズL22と、両凹の負レンズL23とから構成されている。第2の接合レンズLB2は、DMD5の側から順に配置された両凹の負レンズL24と、両凸の正レンズL25とから構成されている。正レンズL25の拡大側の面S10は非球面である。正レンズL25の拡大側、すなわち正レンズL25および正メニスカスレンズL26の間の空間には、第1の開口絞りSt1が配置されている。
【0077】
第3のレンズ群(中群)G3は、全体が正の屈折力を備えたレンズ群であり、DMD5の側から順に配置された、両凹の負レンズL31と、両凸の正レンズL32とから構成されている。
【0078】
最も拡大側の第4のレンズ群(後群)G4は、全体が正の屈折力を備えたレンズ群であり、DMD5の側から順に配置された、両凸の樹脂製の正メニスカスレンズL41と、DMD5の側に凸の樹脂製の正メニスカスレンズL42と、両凸の正レンズL43と、2枚貼合の第3の接合レンズLB3と、2枚貼合の第4の接合レンズLB4とから構成されている。第3の接合レンズLB3は、DMD5の側から順に配置された両凸の正レンズL44と、両凹の負レンズL45とから構成されている。第4の接合レンズLB4は、DMD5の側から順に配置された両凹の負レンズL46と、両凸の正レンズL47とから構成されている。正メニスカスレンズL41の両面、すなわち縮小側の面S17および拡大側の面S18は非球面である。さらに、正メニスカスレンズL42の両面S19およびS20も非球面である。第4のレンズ群G4の拡大側には、第2の開口絞りSt2が配置されている。
【0079】
本例の投射光学系3は、広角端から望遠端に変倍する際に、第1のレンズ群G1は動かず、第2のレンズ群(前群)G2は縮小側から拡大側へ動き、第3のレンズ群(中群)G3は第2のレンズ群G2の動きを補償するように拡大側から縮小側へ動き、リレーレンズである第4のレンズ群G4への入射光束が一定条件になるようにする。第4のレンズ群(後群)G4は動かない。フォーカシングは、変倍の際に動かない第4のレンズ群G4内で行われるフローティングフォーカスまたはインナーフォーカスであり、第4のレンズ群G4に含まれる1つ以上のレンズを動かすことにより行われる。
【0080】
第1から第3のレンズ群G1〜G3およびレンズL41から構成される第1の屈折光学系11は、全体が負の屈折力を備えたレンズ系であり、DMD5の側から順に配置された、正メニスカスレンズL11と、正レンズL21と、第1の接合レンズLB1と、第2の接合レンズLB2と、第1の絞りSt1と、正メニスカスレンズL26と、負レンズL31と、正レンズL32と、正メニスカスレンズL41とを含む。第1の屈折光学系11よりも拡大側、すなわち第1の屈折光学系11および第2の屈折光学系12の間の空間Sp1に第1の中間像31が結像される。本例の第1の中間像31は、正メニスカスレンズL41の拡大側に、正メニスカスレンズL41から距離1.00mmを隔てて結像される。
【0081】
第4のレンズ群G4の残りのレンズL42〜L47により構成される第2の屈折光学系12は、全体が正の屈折力を備えたレンズ系であり、DMD5の側から順に配置された、正メニスカスレンズL42と、正レンズL43と、第3の接合レンズLB3と、第4の接合レンズLB4と、第2の絞りSt2とを含む。第2の屈折光学系12よりも拡大側、すなわち第2の屈折光学系12および第1の反射面21aの間の空間Sp2に第2の中間像32が結像される。本例の第2の中間像32は、第2の開口絞りSt2の拡大側に、第2の開口絞りSt2から距離33.80mmを隔てて結像される。
【0082】
この投射光学系3においても、第1の屈折光学系11が第1の光学系10の内部の空間Sp1に第1の中間像31を結像させ、第2の屈折光学系12が第1の光学系10よりも拡大側の空間Sp2に第2の中間像32を結像させている。入射側がテレセントリックの投射光学系3においては、第1の屈折光学系11のパワーは第2の屈折光学系12のパワーよりも小さく、第1の中間像31と第2の中間像32とは非テレセントリックの投射光学系2より拡大側にシフトし、第1の中間像31と第2の中間像32とが光軸101を挟んで反対側の領域101aおよび101bにそれぞれ形成される。したがって、第2の屈折光学系12を通過する光束は光軸101の周りにさらに集中し、第2の屈折光学系12をいっそうコンパクトに形成できる。
【0083】
また、この投射光学系3においても、DMD5に形成される第1の像面の中心からスクリーン9の第2の像面の中心に至る光線110が第1の光学系10および第2の光学系20の共通する光軸101と3回交差してスクリーン9に至る。このため、光軸101の周りに回転対称なレンズにより第1の光学系10の拡大側、すなわち、第2の屈折光学系12を構成しても、光軸101の周りに回転対称の第1の反射面21aに反射された投影光との干渉を抑制でき、第1の反射面21aから、より光軸101に近い光線を射出できる。すなわち、回転対称の第1の反射面21aの光軸101に近い領域まで有効に利用でき、光軸101に対して仰角は小さく、画角が大きな像をスクリーン9に拡大投影できる。
【0084】
さらに、第1の中間像31を第1の光学系10の内部に結像させて、その第1の中間像31を第1の光学系10の拡大側に第2の中間像32として結像させているので、第2の中間像32を形成するための第2の絞りSt2を第1の光学系10よりも拡大側に配置できる。したがって、この投射光学系3においても、投射光学系1と同様に第1の光学系10の拡大側のレンズ径を小さくでき、第1の光学系10と第1の反射面21aとの空気間隔を短くできる。このため、コンパクトで広角化が可能な投射光学系3を提供できる。
【0085】
また、第1の屈折光学系11により像面湾曲、非点収差およびコマ収差などの諸収差を補正でき、さらに、第2の屈折光学系12により台形歪みなどの歪曲収差を補正できる、高性能で変倍可能な投射光学系3を提供できる。また、この第1の光学系10においても、第1の屈折光学系11の最も拡大側の両凸の樹脂製の正レンズL41の両面S17およびS18は非球面であり、DMD5により形成された画像を拡大させた第1の中間像31として鮮明に結像できるようになっている。また、第2の屈折光学系12の最も縮小側に配置された縮小側に凸の正メニスカスレンズL42の両面S19およびS20は曲率半径が小さく(曲率が大きく)、ミラー21の側の面S20は、面S19に次いで曲率半径が小さい(曲率が大きい)ため、縮小側に多少傾いて形成される第1の中間像31を台形歪みのある第2の中間像32として結像させやすい光学系となっている。
【0086】
また、この第1の屈折光学系11の正レンズL41は有効径49.0mmであり、第1の屈折光学系11および第1の光学系10の最大有効径を与えるレンズとなっている。第2の屈折光学系12の最も拡大側の正レンズL47の有効径は、本例では11.0mmであり、第1の屈折光学系11の最大有効径よりも小さい。さらに、第2の屈折光学系12の最大有効径を与える正メニスカスレンズL42の有効径は32.0mmであり、第1の屈折光学系11の最大有効径に対して第2の屈折光学系12の最大有効径は小さい。
【0087】
さらに、第2の屈折光学系12は、歪みの少ない第1の中間像31を上下左右に反転させた第2の中間像32として結像させているため、散乱光(不要光)をカットしながら台形歪みのある第2の中間像32として結像させやすく、台形歪みが実質的にキャンセルされた鮮明でかつ拡大された画像をスクリーン9に投射可能な投射光学系3を提供できる。
【0088】
図11に、投射光学系3の第1の光学系10の各レンズのレンズデータを示している。図12に、投射光学系3の諸数値を示している。また、本例では、第2の絞りSt2から光軸101上の第2の中間像32の光学的距離d1が59.00mm、第2の絞りSt2から最周辺(最近辺)の第2の中間像32の光学的距離d2が8.50mmであるため、第2の中間像32の位置は、第2の絞りSt2から33.80mmの位置を示している。なお、ズーム間隔V1〜V3は、それぞれ第1のレンズ群G1と第2のレンズ群G2と、第2のレンズ群G2と第3のレンズ群G3と、第3のレンズ群G3と第4のレンズ群G4との間の空気間隔を示す。図13に、投射光学系3の第1の中間像31および第2の中間像32の近傍の平面における光束の様子を示している。
【0089】
本例の投射光学系3の上述した条件(1)〜(5)は、以下のようになる。
条件(1) EXP/dw=0.34
条件(2) dn/dw=0.25
条件(3) MD/ID=3.8
条件(4) LLD/ID=0.4
条件(5) STD2/MD=9.2
したがって、本例の投射光学系3も、条件(1)〜(5)を満たしている。
【0090】
したがって、第3の実施形態に係る投射光学系3は、16枚のレンズL11、L21〜L26、L31〜L32およびL41〜L47と、1枚のミラー21との構成により、F値が2.43と比較的明るく、ズーミングが可能で、最大画角(全画角)が75.32度、広角端における焦点距離が3.46と広角で鮮明な画像を投射できる、高性能でテレセントリックな投射光学系である。
【0091】
なお、本発明はこれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に規定されたものを含む。上記に記載の光学系は一例であり、投射光学系に含まれるレンズの面および/または鏡面(反射面)は回転対称の球面または非球面であってもよく、非対称な面、たとえば、自由曲面であってもよい。さらに、第1の光学系に含まれるレンズの少なくとも何れかおよび/または第2の光学系に含まれる反射面は、光軸から偏心していてもよい。その場合、各光学系の光軸は主たる光学素子の光軸を含む。また、第1の光学系の光軸と第2の光学系の光軸は共通であってもよく、偏心(シフト)していてもよい。また、ライトバルブ5は、白色光源をダイクロイックフィルタ(ミラー)などにより3色に分離させる3板式の光変調器5であってもよく、光変調器5はLCD(液晶パネル)や、自発光型の有機ELなどであってもよい。また、第1の光学系10および第2の光学系20は光路を折り曲げるプリズムあるいはミラーをさらに備えていてもよい。たとえば、第1の反射面21aの縮小側および/または拡大側に1または複数のミラーまたはプリズムが配置されていてもよい。また、第2の光学系20の拡大側にさらに屈折光学系を備えていてもよい。
【0092】
本発明の態様の1つは、縮小側の第1の像面から拡大側の第2の像面へ投射する投射光学系である。この投射光学系は、複数のレンズを含む第1の光学系であって、縮小側から入射した光により第1の光学系の内部に結像される第1の中間像を第1の光学系よりも拡大側に第2の中間像として結像する第1の光学系と、第2の中間像よりも拡大側に位置する正の屈折力の第1の反射面を含む第2の光学系とを有する。第1の中間像を第1の光学系の内部に結像し、その第1の中間像を第1の光学系の拡大側に第2の中間像として結像することにより、第1の光学系の拡大側のレンズ径を小さくでき、第1の光学系をコンパクトにすることができる。さらに、第1の光学系の内部に第1の中間像を結像させることにより、第1の光学系の射出瞳を第1の反射面の側に近付けることができる。このため、第1の光学系から第1の反射面の空気間隔(光学的距離)を短くでき、第1の反射面を小型化できる。
【0093】
この投射光学系においては、第1の中間像、第2の中間像および第1の反射面で結像される像がそれぞれ反転する。したがって、第1の像面の中心から第2の像面の中心に至る光線が第1の光学系の光軸および第2の光学系の光軸の少なくともいずれかと少なくとも3回交差して第2の像面に至るように投射光学系をデザインできる。
【0094】
第1の像面の中心から第2の像面の中心に至る光線が第1の光学系の光軸および第2の光学系の光軸が共通の場合はその共通の光軸と、光軸がシフトしている場合はそれらの少なくともいずれかと3回交差して第2の像面に至る場合、第1の像面と第1の反射面との間では光線が光軸と2回交差する。したがって、第1の像面と第1の反射面とを光軸に対して同方向に配置できる。すなわち、第1の像面と第1の反射面とを光軸を含む第1の面に対して同方向に配置できる。このため、第1の像面を照明する照明光学系を第1の面に対し第1の反射面と同じ方向に配置することができ、第1の面に対し同じ方向のスペースを照明光学系と第1の反射面とで共有できる。このため、投射光学系および照明光学系を含めたプロジェクタを薄型にできる。
【0095】
第1の光学系は、第1の中間像を結像させる第1の屈折光学系と、第1の中間像を第2の中間像として結像させる第2の屈折光学系とを含むように構成できる。この場合、拡大側の第2の屈折光学系の最も拡大側のレンズの有効径は、縮小側の第1の屈折光学系の最大有効径よりも小さいことが好ましい。さらに、拡大側の第2の屈折光学系の最大有効径は、縮小側の第1の屈折光学系の最大有効径よりも小さいことがいっそう好ましい。第1の反射面に至る光線と、第1の反射面により反射される光線との干渉を抑制でき、コンパクトな投射光学系を提供できる。
【0096】
また、第1の屈折光学系は等倍または拡大光学系であることが望ましい。第1の中間像は縮小された像であってもよいが、第1の中間像を等倍または拡大することにより第1の屈折光学系よりも拡大側の光学系における倍率を相対的に抑制でき、収差補正が容易になる。したがって、第1の屈折光学系により像面湾曲、非点収差およびコマ収差などの諸収差を補正でき、さらに、第2の屈折光学系により台形歪みなどの歪曲収差を補正できる。
【0097】
また、この投射光学系は、第1の中間像および第2の中間像の間に配置された絞りを含むことが望ましい。第1の光学系の拡大側のサイズをコンパクトにでき、さらに、第1の光学系と第1の反射面との空気間隔を短縮できるので第1の反射面のサイズもコンパクトにできる。すなわち、第1の光学系の内部に第1の中間像を結像させて、第1の光学系を第1の屈折光学系と第2の屈折光学系とに分割することにより、第1の光学系の射出瞳を第1の反射面の側に近付けることができる。このため、第1の反射面を小型化できる。この場合、第1の像面と第1の中間像との間に配置された第1の絞りを第1の光学系の絞りとしたときの射出瞳および第1の反射面の光学的距離EXPと、第1の像面および第1の反射面の光学的距離dwとが以下の条件(1)を満たすことが望ましい。
0.1<EXP/dw<0.6 ・・・(1)
【0098】
さらに、第1の光学系の内部に第1の中間像を結像させて、第1の光学系を第1の屈折光学系と第2の屈折光学系とに分割することにより、第1の中間像および第2の中間像との間に第2の絞りを配置して光束を絞ることができる。このため、第1の光学系の拡大側のレンズサイズ、特に第2の屈折光学系の拡大側のレンズサイズを小型化することができる。第2の絞りは、第2の屈折光学系の内部に配置してもよい。第2の絞りは偏心絞りであることが好ましく、フレアやゴーストの原因となる散乱光を遮断できる。
【0099】
また、第1の光学系の拡大側のレンズサイズを小さくできるので、光軸を中心とした回転対称なレンズを用いても第1の反射面からの光線とレンズとの干渉を抑制でき、第1の光学系と第1の反射面との距離を確保するために第1の光学系の拡大側に負のパワーのレンズを配置しなくてもよい。したがって、第1の光学系の最も拡大側のレンズは正レンズあるいは正のメニスカスレンズであってもよく、さらに、接合レンズであってもよい。
【0100】
さらに、第1の光学系の最も拡大側のレンズおよび第1の反射面の光学的距離dnと、第1の像面および第1の反射面の光学的距離dwとが以下の条件(2)を満たすことが望ましい。
0.1<dn/dw<0.3 ・・・(2)
第1の光学系に含まれるレンズと第1の反射面との間の空間を小さくできるので、レンズおよび第1の反射面との間の投影光を射出するための開口部が小さくなる。したがって、いっそうコンパクトなプロジェクタを提供でき、開口部から侵入する要因によるレンズおよび反射面の損傷のリスクを低減できる。
【0101】
この投射光学系において、典型的には第1の中間像と第2の中間像とは光軸を挟んで反対側に結像される。第1の光学系は、第1の中間像の縮小側に1または複数の中間像が形成されるものであってもよい。また、第2の光学系は第1の反射面の前後に1または複数の反射面を含んでいてもよい。また、投射光学系は、第2の光学系の拡大側にさらに屈折光学系を含んでいてもよい。
【0102】
また、第1の光学系は変倍光学系であってもよい。第1の光学系は、縮小側から順に、正の屈折力を備えた前群と、正の屈折力を備えた中群と、正の屈折力を備えた後群とを含み、広角端から望遠端に変倍する際に、前群は縮小側から拡大側へ動き、中群は前群の動きを補償するように動き、後群は固定され、前記第1の中間像は後群の内部に結像されることが望ましい。中群により後群への入射光束を一定状態に補償でき、変倍中の第1の中間像の動きを抑制できる。したがって、第1の中間像および第2の中間像の位置をほとんど動かさずに第2の像面に投影される像をズームできる。
【0103】
また、広角端から望遠端に変倍する際に、前群の移動により主に第1の中間像の倍率を変更でき、中群の移動により像面湾曲、非点収差およびコマ収差などの諸収差を補正できる。このため、収差変動および第1の中間像の位置変動を抑えた変倍光学系を含む高解像の投写光学系を提供できる。
【0104】
本発明の他の態様の1つは、上記の投射光学系と、第1の像面に画像を形成する光変調器とを有するプロジェクタである。
【符号の説明】
【0105】
1、2、3 投射光学系
100 プロジェクタ(プロジェクタ装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮小側の第1の像面から拡大側の第2の像面へ投射する投射光学系であって、
複数のレンズを含む第1の光学系であって、縮小側から入射した光により当該第1の光学系の内部に結像される第1の中間像を当該第1の光学系よりも拡大側に第2の中間像として結像する第1の光学系と、
前記第2の中間像よりも拡大側に位置する正の屈折力の第1の反射面を含む第2の光学系とを有する、投射光学系。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の像面の中心から前記第2の像面の中心に至る光線が前記第1の光学系の光軸および前記第2の光学系の光軸の少なくともいずれかと少なくとも3回交差して前記第2の像面に至る、投射光学系。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1の像面と前記第1の反射面とは、光軸を含む第1の面に対して同方向に配置される、投射光学系。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1の像面と前記第1の中間像との間に配置された第1の絞りと、前記第1の中間像および前記第2の中間像との間に配置された第2の絞りとを含む、投射光学系。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2の絞りは偏心絞りである、投射光学系。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記第1の光学系の最も拡大側のレンズおよび前記第1の反射面の光学的距離dnと、前記第1の像面および前記第1の反射面の光学的距離dwとが以下の条件を満たす、投射光学系。
0.1<dn/dw<0.3
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記第1の中間像と前記第2の中間像とは光軸を挟んで反対側に結像される、投射光学系。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の投射光学系と、
前記第1の像面に画像を形成する光変調器とを有する、プロジェクタ。
【請求項9】
請求項8において、前記第1の像面を照明する照明光学系であって、光軸を含む第1の面に対して前記第1の反射面と同方向に配置された照明光学系をさらに有する、プロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−15853(P2013−15853A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−193661(P2012−193661)
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【分割の表示】特願2011−148942(P2011−148942)の分割
【原出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000227364)日東光学株式会社 (151)
【Fターム(参考)】