説明

抗微生物性化合物と表面およびポリマーとの結合

本発明には、式Iで示される少なくとも1種の化合物と結合したシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーを含む抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーが記載されている。また、式Iで示される化合物を表面に結合させる方法およびその生成物も記載されている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗微生物性ポリマーに関する。とくに、本発明は、抗微生物性化合物と結合したシリコーンポリマー(たとえば、シラン、シロキサン、シリコーンゴムなど)に関する。本発明はさらに、表面への抗微生物性化合物の結合に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
フィンブロリド類(ハロゲン化5-メチレン-2(5H)-フラノン類)は、抗真菌性や抗微生物性をはじめとする広範にわたる重要な生物学的性質を備えている。これらの代謝産物は、紅藻類のDelisea fimbriata、Delisea elegans、およびDelisea pulchraから単離可能であり、さまざまな構造上関連のあるフラノン類(たとえば、フラノン環系上のハロゲンの置換度および置換位置、フラノン環中に存在するヘテロ原子のタイプ、ならびに側鎖の長さおよびフラノンカルボニル基に対する位置)は、合成により誘導可能である。ハロゲン化フラノン類は、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌の表現型をレギュレートし、処理表面上におけるそれらの定着および運動を妨害する(たとえば、PCT/AU95/00407、PCT/AU96/00167、PCT/AU99/00285、PCT/AU99/00284、PCT/AU00/01553、PCT/AU01/00296、PCT/AU01/00295、PCT/AU01/00407、PCT/AU01/00781、およびPCT/AU01/01621(それらの開示内容はその全体が相互参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい)。
【0003】
フィンブロリド類のラクタム類似体もまた、抗微生物性を備えていることが示されている(たとえば、PCT/AU03/01053(その開示内容はその全体が相互参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい)。
【0004】
多くのタイプの表面上の細菌性バイオフィルムは、望ましくない。そのような表面としては、たとえば、冷却水塔、家庭用品および工業用品の表面、パイプ、メンブレン、病院施設の表面、食品調理用品の表面、パッケージ、生物医学デバイス、および電子デバイスが挙げられる。現在、漂白剤、アンモニア、第四級アンモニウム塩、および強アルカリ性溶液のような化学殺生物剤は、そのようなバイオフィルムを除去するために使用されている。これらの化学殺生物剤は、環境に有害な影響を及ぼす可能性がある。したがって、天然由来の抗微生物性化合物またはその誘導体を使用することが、ますます望ましくかつ必要になってきている。
【0005】
本発明者らは、フラノン化合物などをシリコーンポリマー中に組み込みうることかつグラム陰性細菌およびグラム陽性細菌による生物学的損傷から広範にわたるデバイスおよび装置を保護すべくこれらのポリマーを使用しうることを見いだした。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
第1の態様において、本発明は、式I
【化1】

【0007】
〔式中、
R1およびR2は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルよりなる群から選択され、無置換型もしくは置換型、直鎖状もしくは分枝鎖状、疎水性、親水性、もしくは親フッ素性のいずれであってもよく;
R3およびR4は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アリール、またはアリールアルキルであり;かつ
Xは、OまたはNR2である〕
で示される少なくとも1種の化合物と結合した(associated with)抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーを提供する。
【0008】
好ましくは、R1、R2、R3、およびR4のうちの少なくとも1つは、ハロゲンである。より好ましくは、R1、R2、R3、およびR4のうちの少なくとも1つは、臭素である。式Iで示される化合物は、フラノンまたはラクタムでありうる。
【0009】
抗微生物性のオリゴマーまたはポリマーは、付加または縮合によるオリゴマー化または重合により生成可能である。シリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーは、線状ポリマー、架橋ポリマー、または環状ポリマーのいずれであってもよい。
【0010】
抗微生物性のオリゴマーまたはポリマーは、特定用途に依存して、たとえば広範にわたる鎖長および分子質量を有しうる油などの流体の形態をとりうる。そのような用途の例は、冷却用流体および誘電性流体、艶出しおよびワックス、剥離剤および消泡剤、ならびにペーパー処理およびテキスタイル処理である。
【0011】
それは、たとえば、ハードコーティング、フィルム、もしくはペイントに使用するためのまたはそのようなものとして使用するための樹脂形成性組成物でありうるかあるいはその一部分を形成しうる。それは、接着剤に使用するのに好適でありうる。
【0012】
本発明に係る抗微生物性のオリゴマーまたはポリマーは、低架橋ポリシロキサン網状構造を有するゲルの形態をとりうる。架橋度は、ゲルの所望の物理的性質を達成するように選択可能である。
【0013】
抗微生物性のオリゴマーまたはポリマーは、エラストマーまたはゴムでありうる。エラストマーまたはゴムは、広範囲に架橋可能である。本発明に係る抗細菌性のオリゴマーまたはポリマーは、硬化性または加硫性の組成物でありうるかまたはその一部分を形成しうる。シリコーンエラストマーは、高分子量線状ポリマーでありうる。これらは、いくつかの方法により、たとえば、遊離基架橋させて(たとえば、ベンゾイルペルオキシドを用いて)鎖間に架橋を形成することにより;シリルヒドリド基との反応を介して、ケイ素に結合されたビニル基を架橋させることにより;シラノールのような反応性末端基を有する線状もしくは分枝状のシロキサン鎖を架橋させてSi-O-Si架橋を生成させることにより;硬化可能である。これらの材料は、卓越した低温可撓性を有し、高温で安定であり、かつ耐候性および耐潤滑油性がある。それらは、ガスケットおよびシール、ワイヤーおよびケーブルの絶縁、ならびに熱ガス用および液体用の導管に使用可能である。それらはまた、外科用および補綴用のデバイスにも利用される。硬化性室温加硫性シリコーンエラストマーは、コーキング、シーリング、およびカプセル化に利用される。
【0014】
ポリマーまたはオリゴマーは、造形品の全体または一部分を形成しうる。たとえば、オリゴマーまたはポリマーを硬化させたり、キャストしたり、または押し出したりして、所望の形状またはデバイスを形成しうる。本発明に係る抗細菌性のオリゴマーまたはポリマーは、フィルムもしくはシートでありうるかまたはその少なくとも一部分を構成しうる。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、式III:
【化2】

【0016】
〔式中、
R1およびR2は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルよりなる群から選択され、無置換型もしくは置換型、直鎖状もしくは分枝鎖状、疎水性、親水性、もしくは親フッ素性のいずれであってもよく;
R3およびR4は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アリール、またはアリールアルキルであり;かつ
Xは、OまたはNR2である〕
で示される化合物を提供し、
ただし、式IIIで示される化合物は、少なくとも1個の-YC(O)NR7R5Si(OR6)3基{ここで、Yは、O、S、N、P、C(O)よりなる群から選択され;R5は、リンカーであり、好ましくは、置換型もしくは無置換型のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、アルケニル、またはこれらの基を含むリンカー(場合により、より多くのヘテロ原子のうちの1種(たとえば酸素)が介在していてもよい)、またはこれらの基を含む結合基であり;かつ各R6は、独立して、置換型もしくは無置換型のアルキル、シクロアルキル、アルケニルなどから選択され;かつR7は、Hまたはアルキルである}を有する。
【0017】
式IIIで示される化合物の調製方法、および式IIIで示される化合物をガラス表面、シリコーンゴム表面、または高分子表面のような表面に結合させる方法もまた、対象となる。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明の一実施形態では、抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーは、式I:
【化3】

【0019】
〔式中、
R1およびR2は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルであり、無置換型もしくは置換型、直鎖状もしくは分枝鎖状、親水性もしくは親フッ素性のいずれであってもよく;
R3およびR4は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アリール、またはアリールアルキルであり;かつ
Xは、OまたはNR2である〕
で示される化合物をブレンドしてまたは混合して含む。
【0020】
好ましくは、R1、R2、R3、およびR4のうちの少なくとも1つは、ハロゲンであり、最も好ましくは臭素である。
【0021】
シリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーは、線状ポリマーもしくは架橋ポリマーまたは環状ポリマーでありうる。シリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーの例としては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサメチルトリシクロシロキサン、デカメチルペンタシクロシロキサン、ドデカメチルヘキサシクロシロキサン、ジメチルポリシロキサンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
シリコーンを触媒および充填剤と混合して硬化させることにより成形法(液体射出成形、トランスファー成形、および圧縮成形を含む)または押出法でシリコーンゴムを作製しうることは当技術分野で公知である。本発明では、シリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーの製造時、フラノンをシリコーンまたは架橋剤または触媒と混合しうる。ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーでありうる。
【0023】
さらなる実施形態では、本発明は、式I:
【化4】

【0024】
〔式中、X、R1、R2、R3、およびR4は、先に記載したとおりである〕
で示される化合物をポリマーまたはオリゴマーに吸着してなる本発明の第1の態様のオリゴマーまたはポリマーを提供する。
【0025】
式Iで示される化合物は、式Iで示される化合物をポリマーに直接適用することによりシリコーンポリマーに吸着させうる。たとえば、表面の少なくとも一部分をポリマーから形成してなる材料またはデバイスは、デバイスの表面を化合物の溶液でディップコーティングするかまたはペインティングするかのいずれかにより処理しうる。デバイスまたは材料は、成形デバイス、押出デバイス、または集成デバイスでありうる。デバイスまたは材料の例としては、カテーテル、ドレン用および流体用のチューブ、シース、シャント、肺用デバイス、腹腔鏡デバイス、オクルーダー、耳栓、補聴器、シール/ストッパー/バルブ、セプタム、バルブ、コンタクトレンズ、整形外科用インプラント、メンブレン、パイプ、チューブ、タンクなどが挙げられる。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、式I
【化5】

【0027】
で示される化合物を少なくとも1種のシリコーンコモノマーまたはシリコーンオリゴマーおよび場合により少なくとも1種の他のモノマーと共重合させることにより生成される抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーを提供する。上記式中、
R1およびR2は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルであり、無置換型もしくは置換型、直鎖状もしくは分枝鎖状、親水性もしくは親フッ素性のいずれであってもよく;
R3およびR4は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アリール、またはアリールアルキルであり;かつ
Xは、OまたはNR2である。
【0028】
好ましくは、R1、R2、R3、およびR4のうちの少なくとも1つは、ハロゲンである。
【0029】
シリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーの例としては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサメチルトリシクロシロキサン、デカメチルペンタシクロシロキサン、ドデカメチルヘキサシクロシロキサン、ジメチルポリシロキサンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
好ましくは、式Iで示される化合物は、式II
【化6】

【0031】
〔式中、
R1、R2は、独立して、H、アルキル、アルコキシ、ポリエチレングリコール、オキソアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルから選択され、無置換型もしくは置換型、直鎖状もしくは分枝鎖状、疎水性、親水性、もしくは親フッ素性のいずれであってよく;
R4は、水素、ハロゲン(X=F、Cl、Br、またはI)であり;
R3は、水素またはハロゲンであり;かつ
Xは、OまたはNR2であり;かつ
Zは、独立して、R2、ハロゲン、OH、OOH、OC(O)R2、=O、アミン、アジド、チオール、メルカプトアルキル、メルカプトアルケニル、アルケニルオキシ、アリールオキシ、メルカプトアリール、アリールアルコキシ、メルカプトアリールアルキル、SC(O)R2、OS(O)2R2、NHC(O)R2、=NR2、NHR2、またはシリルオキシよりなる群から選択される〕
で示される化合物である。
【0032】
このほかのさらなる実施形態では、本発明は、シリコーンモノマーまたはシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーを、式I
【化7】

【0033】
〔式中、
R1およびR2は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルであり、無置換型もしくは置換型、直鎖状もしくは分枝鎖状、親水性もしくは親フッ素性のいずれであってもよく;
R3およびR4は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アリール、またはアリールアルキルであり;
Xは、OまたはNR2である〕
で示される化合物と、縮合重合させることにより生成される抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーを提供する。
【0034】
好ましくは、R1、R2、R3、およびR4のうちの少なくとも1つは、ハロゲンである。
【0035】
シリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーは、線状ポリマーもしくは架橋ポリマーまたは環状ポリマーでありうる。シリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーの例としては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサメチルトリシクロシロキサン、デカメチルペンタシクロシロキサン、ドデカメチルヘキサシクロシロキサン、ジメチルポリシロキサンが挙げられる。
【0036】
好ましくは、式Iで示される化合物は、式II;
【化8】

【0037】
〔式中、
R1、R2は、H、アルキル、アルコキシ、ポリエチレングリコール、オキソアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルであり、無置換型もしくは置換型、直鎖状もしくは分枝鎖状、疎水性、親水性、もしくは親フッ素性のいずれであってもよく;
R4は、水素、ハロゲン(X=F、Cl、Br、またはI)であり;
R3は、独立してまたは両方とも、水素またはハロゲンであり;
Xは、OまたはNR2であり;かつ
Zは、独立して、R2、ハロゲン、OH、OOH、OC(O)R2、=O、アミン、アジド、チオール、メルカプトアルキル、メルカプトアルケニル、アルケニルオキシ、アリールオキシ、メルカプトアリール、アリールアルコキシ、メルカプトアリールアルキル、SC(O)R2、OS(O)2R2、NHC(O)R2、=NR2、NHR2、またはシリルオキシよりなる群から選択される〕
で示される化合物である。
【0038】
このほかのさらなる実施形態では、本発明は、式I:
【化9】

【0039】
〔式中、
R1およびR2は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルであり、無置換型もしくは置換型、直鎖状もしくは分枝鎖状、親水性もしくは親フッ素性のいずれであってもよく;
R3およびR4は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アリール、またはアリールアルキルであり;かつ
Xは、OまたはNR2である〕
で示される化合物をシリコーンポリマーまたは少なくとも部分的にそれから形成されたデバイスに表面結合させることにより生成される抗微生物性シリコーンポリマーを提供する。
【0040】
好ましくは、R1、R2、R3、およびR4のうちの少なくとも1つは、ハロゲンである。
【0041】
化合物をポリマー表面に表面結合させるには化学的手段またはプラズマ活性化による表面の初期活性化が必要となりうることは当技術分野で公知である。本発明に使用されるシリコーンポリマーまたはデバイスは、場合により、化学処理またはプラズマ処理を施しうる。
【0042】
好ましくは、式Iで示される化合物は、式II
【化10】

【0043】
〔式中、
R1、R2は、H、アルキル、アルコキシ、ポリエチレングリコール、オキソアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルであり、無置換型もしくは置換型、直鎖状もしくは分枝鎖状、疎水性、親水性、もしくは親フッ素性のいずれであってもよく;
R4は、水素、ハロゲン(X=F、Cl、Br、またはI)であり;
R3は、独立してまたは両方とも、水素またはハロゲンであり;
Xは、OおよびNR2であり;かつ
Zは、独立して、R2、ハロゲン、OH、OOH、OC(O)R2、=O、アミン、アジド、チオール、メルカプトアルキル、メルカプトアルケニル、アルケニルオキシ、アリールオキシ、メルカプトアリール、アリールアルコキシ、メルカプトアリールアルキル、SC(O)R2、OS(O)2R2、NHC(O)R2、=NR2、NHR2、またはシリルオキシよりなる群から選択される〕
で示される。
【0044】
このほかのさらなる態様において、本発明は、本発明に係る抗微生物性のポリマーまたはオリゴマーから少なくとも部分的に形成された造形品またはデバイスを包含する。造形品またはデバイスは、所望の形状またはデバイスになるようにポリマーを硬化させるか、キャストするか、または押し出すことにより形成可能である。
【0045】
当業者には当然のことであろうが、式IおよびIIで示される化合物は、2種の異性体形で存在しうる。式IおよびIIで示される化合物は、いずれの特定の異性体にも限定されるものではなく、したがって、本発明は、式により定義される化合物のすべての異性体にまで拡張される。
【0046】
本発明はまた、本発明に係る抗微生物性のポリマーおよびオリゴマーの製造方法にまで拡張される。
【0047】
さらなる態様において、本発明は、式1で示されかつ少なくとも1個の-YC(O)NR7R5Si(OR6)3基{ここで、Yは、O、S、N、P、C(O)よりなる群から選択され;R5は、リンカーであり、好ましくは、置換型もしくは無置換型のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、アルケニル、またはこれらの基を含むリンカー(場合により、より多くのヘテロ原子のうちの1種(たとえば酸素)が介在していてもよい)、またはこれらの基を含む結合基であり;かつ各R6は、独立して、置換型もしくは無置換型のアルキル、シクロアルキル、アルケニルなどから選択され;かつR7は、Hまたはアルキルである}を有する式IIIで示される化合物を提供する。
【0048】
したがって、本発明は、式III:
【化11】

【0049】
〔式中、
R1およびR2は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルよりなる群から選択され、無置換型もしくは置換型、直鎖状もしくは分枝鎖状、疎水性、親水性、もしくは親フッ素性のいずれであってもよく;
R3およびR4は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アリール、またはアリールアルキルであり;かつ
Xは、OまたはNR2である〕
で示される化合物を提供し、
ただし、式IIIで示される化合物は、少なくとも1個の-YC(O)NR7R5Si(OR6)3基{ここで、Yは、O、S、N、P、C(O)よりなる群から選択され;R5は、リンカーであり、好ましくは、置換型もしくは無置換型のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、アルケニル、またはこれらの基を含むリンカー(場合により、より多くのヘテロ原子のうちの1種(たとえば酸素)が介在していてもよい)、またはこれらの基を含む結合基であり;かつ各R6は、独立して、置換型もしくは無置換型のアルキル、シクロアルキル、アルケニルなどから選択され;かつR7は、Hまたはアルキルである}を有する。
【0050】
好ましくは、R5はポリオキソアルキレンである。より好ましくは、R5は、分子量400〜4000のポリエチレングリコールである。
【0051】
好ましい実施形態では、R1またはR2は、親水性である。親水性置換基は、式IIIで示される化合物でコーティングされたデバイスが生理学的環境に挿入されたときに利点を提供する。
【0052】
他の好ましい実施形態では、R1またはR2は、疎水性である。疎水性置換基は、式IIIで示される化合物でコーティングされたデバイス(たとえば包帯)がたとえば創傷ケア用途に使用されたときに利点を提供する。
【0053】
このほかのさらなる好ましい実施形態では、R1またはR2は、親フッ素性である。親フッ素性側鎖を含む化合物は、それでコーティングされた表面に通気性を提供することが可能であり、式IIIで示される化合物でコーティングされたデバイスが特定の創傷ケア用途に使用されたときに利点を提供する。
【0054】
さらなる態様において、本発明は、-Y'-H(ここで、-Y'は、O、S、NH、COOよりなる群から選択される)から選択される少なくとも1個の基を有する式Iで示される化合物を、式OCNR7R5Si(OR6)3(ここで、R5およびR6は、先に定義したとおりである)で示される化合物と、反応させることを含む、式IIIで示される化合物の製造方法を提供する。
【0055】
好ましくは、-Y'H基は、ヒドロキシル基である。ヒドロキシル基を含む式Iで示される化合物は、PCT/AU99/00285に開示されているような当技術分野で公知の技術により合成可能である。図1は、式Iで示されるいくつかのフラノンおよびラクタムならびにそれらのヒドロキシル化誘導体を示している。本発明に使用するのに好適なさらなる化合物は、
【化12】

【0056】
を含む。
【0057】
このほかのさらなる態様において、本発明は、式IIIで示される化合物を表面に結合させる(associating)方法を提供する。該方法は、式IIIで示される化合物を表面に接触させる工程と、場合により化合物を硬化させる工程と、を含む。
【0058】
式IIIで示される化合物のシリルオキシ基と反応する基を生成させるように、表面を処理することが可能である。
【0059】
式IIIで示される化合物はまた、記載のごとくオリゴマーまたはポリマーと結合させることも可能である。オリゴマーまたはポリマーは、先に記載したような抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーでありうる。他の選択肢として、式IIIで示される化合物は、非シリコーンオリゴマーもしくは非シリコーンポリマー、表面、またはデバイスと結合させることも可能である。本発明はまた、式IIIで示される化合物と結合したオリゴマーまたはポリマーにまで拡張される。
【0060】
本発明に係る抗微生物性ポリマーは、シリコーンポリマーまたはシリコーンオリゴマーが使用される用途に利用される。シリコーンポリマーは、医薬に組み込まれたり;食品加工(たとえば、缶詰および調理済み食品)に使用されたり;広範にわたる医療用デバイスに使用されたり;パテやシーラントとして使用されたり;メンブレンパイプやチューブとして使用されたりする。シリコーンはまた、家庭用および個人用の製品、たとえば、洗浄溶剤、衛生工事材料(plumbing)、ハンドクリーム、毛髪用および皮膚用の製品、ならびに制汗剤にも使用される。
【0061】
本発明に係る抗微生物性のシリコーンポリマーおよびシリコーンオリゴマーは、次の用途に好適であるが、これらに限定されるものではない:シリコーン含浸電気絶縁テープ、シリコーンゴム、接着剤、シーラント、回路板コーティング用弾塑性樹脂、半導体デバイス用のポッティングコンパウンドおよび保護コンパウンド、誘電性コンパウンド、高純度のコーティング、ワニス、樹脂、特殊潤滑剤、光ファイバーコーティングおよび光ファイバーケーブル充填剤、ならびに半導体グレードのシリコンおよびシリコン源化学薬品、ウィンドシールド用およびキャノピー用のガスケットシーラント、レードーム作製用ゴム工具、光学用層間ラミネート、耐摩耗性のコーティング、接着剤、シールおよびガスケット、ならびに工具材料、建設用の接着剤/シーラント、グレージング用の接着剤/シーラントおよびエラストマー、シリコーンフォーム/ポリウレタンフォームのルーフコーティング、難燃性のフォームおよびシーラント、建築用のコーティングおよび撥水剤、コンクリート舗装用ジョイントシーラント、消泡剤、ベーキング用具のコーティング;食品加工用途の加工助剤;自動車用途、たとえば、耐熱性、耐油性、および耐燃料性のシリコーンゴム;一液型または二液型のシーラントおよび接着剤、特殊潤滑剤、ならびに騒音対策用、振動対策用、ハーシュネス対策用、および熱対策用の材料、自動車用艶出剤;シリコーンエラストマーを含む接着剤、接着剤、シーラント、誘電性コンパウンド、ワニス、多目的シリコーン流体、消泡剤、剥離剤、界面活性剤、メンテナンス用の潤滑剤、エラストマー、およびグリース;医療用途および医療製品、たとえば、医療グレードのチューブ、接着剤、脱泡剤、および流体;テキスタイル用途およびレザー用途、たとえば、防水処理剤および繊維用化学薬品;日曜大工による家屋の改修および修復に供されるシリコーン接着剤、シーラント、およびコーキング剤;ペイント用途およびコーティング用途、たとえば、高性能ペイント用、エナメル用、仕上げ剤用のシリコーン添加剤、ならびにプラスチック用の耐摩耗性コーティング;耐温度性および耐薬品性の印刷装置部品用のシリコーンゴムコンパウンド;プラスチック用途、たとえば、離型用添加剤、触媒改質剤、および高性能プラスチック用途向けの化学薬品;感圧接着剤、たとえば、テープ、ラベル、スタンプ、ステッカー、デカール、および食品包装材のバッキング用の剥離コーティング;感圧接着剤;パーソナルケアおよびハウスホールドケア、たとえば、界面活性剤、エマルジョン、流体、および粉末処理剤は、スキンローションおよびサンタンローション、制汗剤およびデオドラント、ヘアケア製品、シェービングクリーム、化粧品、糊、布処理剤、ランドリー製品、ヘアケア製品の重要な成分である;医薬用途、たとえば、医療グレードの流体、エマルジョン、消泡剤、接着剤、およびシリコーンゴムチューブ;医療用デバイス、たとえば、心臓弁、コンタクトレンズ、外科用器具、カテーテル、ドレン用および流体用のチューブ、シース、シャント、肺用デバイス、腹腔鏡デバイス、オクルーダー、耳栓、補聴器、シール/ストッパー/バルブ、セプタムなど、顎関節(顎)インプラント;小型関節整形外科(指)インプラント;大型関節製品(臀部、膝、肘)インプラント;長期埋植可能な避妊具;注入用シリコーン流体および特注シリコーンインプラント製品;洗浄用途、たとえば、トイレクリーナーおよび工業用洗浄剤、メンブレン、ウォーターフィルター、空調塔および冷却塔;歯科医術で使用される材料、たとえば、入れ歯および義歯。
【0062】
表面がシリコーンポリマーを含むかどうかにかかわらず、式IIIで示される化合物は、任意の表面に結合可能である。シリルオキシ基と反応する基が表面に含まれない状況では、たとえばプラズマ活性化技術などの当業者に公知の技術により、これらの基を発生させることが可能である。式IIIで示される化合物を結合させた表面は、次の用途に好適でありうるが、これらに限定されるものではない:医療用デバイス、たとえば、心臓弁、コンタクトレンズ、外科用器具、カテーテル、ドレン用および流体用のチューブ、シース、シャント、肺用デバイス、腹腔鏡デバイス、オクルーダー、耳栓、補聴器、シール/ストッパー/バルブ、セプタムなど、顎関節(顎)インプラント;小型関節整形外科(指)インプラント;大型関節製品(臀部、膝、肘)インプラント;長期埋植可能な避妊具;アルギン酸ビーズ。
【0063】
定義
「アルキル」という用語は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、第三級ブチルなどのような両方の直鎖状アルキル基を含むものとする。好ましくは、アルキル基は、1〜6個の炭素原子の低級アルキルである。アルキル基は、場合により、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルキニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ニトロ、アミノ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロヘテロシクリル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミン、アルキニルアミノ、アシル、アルケノイル、アルキノイル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロアミノ、ハロヘテロシクリル、アルキルスルフェニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アシルチオ、シリルオキシアルキル、リン含有基(たとえば、ホスホノおよびホスフィニル)から選択される1つ以上の基により置換されていてもよい。
【0064】
「アルコキシ」という用語は、直鎖状もしくは分枝状のアルキルオキシ、好ましくはC1〜10アルコキシを包含する。例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、およびさまざまなブトキシ異性体が挙げられる。
【0065】
「アルケニル」という用語は、直鎖状、分枝状、または単環式もしくは多環式のアルケンおよびポリエンから生成される基を包含する。置換基としては、先に定義したようなモノ不飽和もしくはポリ不飽和のアルキル基またはシクロアルキル基、好ましくはC2〜10アルケニルが挙げられる。アルケニルの例としては、ビニル、アリル、1-メチルビニル、ブテニル、イソ-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、シクロペンテニル、1-メチル-シクロペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、シクロヘキセニル、1-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、シクロオクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、1-デセニル、3-デセニル、1,3-ブタジエニル、1-4,ペンタジエニル、1,3-シクロペンタジエニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,3-シクロヘキサジエニル、1,4-シクロヘキサジエニル、1,3-シクロヘプタジエニル、1,3,5-シクロヘプタトリエニル、または1,3,5,7-シクロオクタテトラエニルが挙げられる。
【0066】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、好ましくは臭素またはフッ素を意味する。
【0067】
「ヘテロ原子」という用語は、O、N、またはSを意味する。
【0068】
単独で、または「アシルオキシ」、「アシルチオ」、「アシルアミノ」、もしくは「ジアシルアミノ」のような複合語中で、使用される「アシル」という用語は、脂肪族アシル基およびヘテロ環式環含有アシル基(ヘテロ環式アシルと呼ばれる)、好ましくはC1〜10アルカノイルを包含する。アシルの例としては、カルバモイル;直鎖状もしくは分枝状のアルカノイル、たとえば、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2-メチルプロパノイル、ペンタノイル、2,2-ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル;アルコキシカルボニル、たとえば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、t-ペンチルオキシカルボニル、またはヘプチルオキシカルボニル;シクロアルカンカルボニル、たとえば、シクロプロパンカルボニル、シクロブタンカルボニル、シクロペンタンカルボニル、またはシクロヘキサンカルボニル;アルカンスルホニル、たとえば、メタンスルホニルまたはエタンスルホニル;アルコキシスルホニル、たとえば、メトキシスルホニルまたはエトキシスルホニル;ヘテロシクロアルカンカルボニル;ヘテロシクリルアルカノイル、たとえば、ピロリジニルアセチル、ピロリジニルプロパノイル、ピロリジニルブタノイル、ピロリジニルペンタノイル、ピロリジニルヘキサノイル、またはチアゾリジニルアセチル;ヘテロシクリルアルケノイル、たとえば、ヘテロシクリルプロペノイル、ヘテロシクリルブテノイル、ヘテロシクリルペンテノイル、またはヘテロシクリルヘキセノイル;あるいはヘテロシクリルグリオキシロイル、たとえば、チアゾリジニルグリオキシロイルまたはピロリジニルグリオキシロイルが挙げられる。
【0069】
「置換型」という用語は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルキニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ニトロ、アミノ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロヘテロシクリル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミン、アルキニルアミノ、アシル、アルケノイル、アルキノイル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロアミノ、ハロヘテロシクリル、アルキルスルフェニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アシルチオ、リン含有基(たとえば、ホスホノおよびホスフィニル);-YC(O)NR5Si(OR6)3{ここで、Yは、O、S、N、P、C(O)よりなる群から選択され、R5は、たとえば、置換型もしくは無置換型のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、アルケニルでありうるリンカー基であり、場合により、より多くのヘテロ原子のうちの1種が介在していてもよく、かつ各R6は、独立して、置換型もしくは無置換型のアルキル、シクロアルキル、アルケニルなどから選択される}から選択される1つ以上の基による置換を包含する。
【0070】
「親フッ素性」という用語は、C4〜C10鎖長の高フッ素化アルキル基のような特定の基がペルフルオロアルカンおよびペルフルオロアルカンポリマーに対して有する高引力相互作用を示すために使用される。
【0071】
1種以上の他のモノマーは、任意の好適な重合性コポリマー、たとえば、アクリレートエステル、たとえば、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、もしくは置換型アリールのアクリレートまたはメタクリレート、クロトネート、置換型もしくは無置換型のアクリロニトリル、ビニルアルコールまたはビニルアセテート、スチレン、およびシロキサンでありうる。
【0072】
次に、以下の本発明の実施例を参照しながら本発明について説明するが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0073】
実施例1
有機溶媒中の3-(1'-ブロモオクトイル)-4-ブロモ-5-ブロモメチレン-2(5H)-フラノンの溶液にシリコーンポリマーまたはデバイスを浸漬することにより、吸着されたフラノンを有するシロキサンポリマーを調製する。
【0074】
実施例2
ポリ-ジメチルシロキサン(PDMS)と3-(1'-ヒドロキシドデシル)-5-ジブロモメチレン-2(5H)-フラノンとの混合物を加熱することにより、縮合シロキサンポリマーを合成する。
【0075】
実施例3
トルエン中のメチルメタクリレート(MMA)と3-(1'-アクリロイルオキシドデシル)-5-ジブロモメチレン-2(5H)-フラノンとポリ-ジメチルシロキサン(PDMS)と(AIBN)との混合物を70*Cで加熱することにより、共重合シロキサンポリマーを合成する。
【0076】
実施例4
白金触媒の存在下で3-(1'-アクリロイルオキシブチル)-4-ブロモ-5-ブロモメチレン-2(5H)-フラノンとポリ-ジメチルシロキサン(PDMS)との混合物を加熱することにより、架橋シロキサンポリマーを合成する。
【0077】
実施例5
トルエン中のスチレンと3-(1'-ブロモヘキシル)-4-ブロモ-5-ブロモメチレン-2(5H)-フラノンとポリ-ジメチルシロキサン(PDMS)と(AIBN)との混合物を70℃で加熱することにより、共重合シロキサンポリマーを合成する。
【0078】
実施例6 化合物IIIの一般的製造手順
無水ジクロロメタン中の等価量のフラノンアルコールとシリルオキシプロピルイソシアネートとの混合物を室温で3時間攪拌した。得られた溶液を濃縮してガラスまたは金属の表面にスピンコーティングした。摂氏120度で加熱することによりまたは室温で24時間にわたり、得られたフィルムを硬化させた。XPS分析によりフィルム表面上のフラノンの存在を確認した。
【化13】

【0079】
アルコール基は、分子中の任意の位置に存在させうる。たとえば、以下も可能である。
【化14】

【0080】
実施例7
次の一般的手順に従って、図1の化合物83、116、190、および144、ならびに以下に示される化合物135のおよびC6に、シリルオキシ誘導体を共有結合させることにより、ガラス表面(カテーテルおよびコンタクトレンズ)を表面改質した。
【化15】

【0081】
短いリンカーを用いる結合
ヒドロキシル基を含有するフラノン(たとえば、83、116、135、190、およびC6)を3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランと反応させて、末端トリエトキシシラン基を有するカルバメート連結フラノン/ラクタム中間体を得た。次に、スピンコーティングまたは延展のいずれかにより、この中間体を表面上にコーティングし、90℃でガラスを硬化させることにより、得られたフラノン/ラクタム層をシラン化させた。この過程で末端トリエトキシシラン基と表面ヒドロキシル基との反応が起こり(スキーム1)、フラノン/ラクタムが共有結合された。この技術は、表面ヒドロキシル基を保有する任意の表面に適用可能である。
【化16】

【0082】
ラクタム144を官能基化して対応するヒドロキシル類似体にした後、以上に概説したように表面に結合させた。
【0083】
PEGリンカーによる結合
リンカー基を存在させれば、フラノン/ラクタムは、生体材料の表面から大きく離れるので、一段と生物学的に利用しうるようになる可能性がある。さらに、好適なPEGリンカーを存在させれば、フラノン/ラクタム分子は、細胞膜を透過しうるようになるであろう。したがって、ポリエチレングリコールリンカーによりフラノン/ラクタムを同様に表面に結合させた。
【0084】
最初に、ポリエチレングリコール(MW400およびMW4000)の末端ヒドロキシル基のうちの1つを3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランと反応させて、一端に末端シラン基および他端にヒドロキシル基を有するPEG誘導体を得た。次に、第2のヒドロキシル基をビス-イソシアネートと反応させて、イソシアネート末端基とシラン末端基とを有するPEGを得た。次に、イソシアネート末端基をフラノン/ラクタムアルコールと反応させてカルバメート結合を形成し、末端シラン基を使用してフラノン/ラクタムを表面に共有結合させた。
【化17】

【0085】
コンタクトレンズ表面上への化合物の結合
すでに表面上にヒドロキシル基を有するコンタクトレンズを用いて、上述の手順を同様に吟味した。次に、得られたレンズをXPSにより分析し、結合処理の有効性を評価した。
【0086】
表面結合のためのフラノン/ラクタム類似体の合成
フラノン116と(3-イソシアナトプロピル)-トリエトキシシランとの反応
フラノン116(1.04g, 2.37mmol)および(3-イソシアナトプロピル)-トリエトキシシラン(1.5mL, 6mmol)を24時間にわたり85℃で一緒に攪拌した。真空中、50℃/0.2mmHgで、過剰のイソシアネート反応物を除去した。溶出液としてCH2Cl2/エチルアセテート(29:1)を用いて残渣をシリカゲルの短いプラグに通してフラッシュクロマトグラフィーにかけ、無色の油(0.50g, 100%)として1-(5,5-ジブロモメチレン-3-ドデシル-2(5H)フラノン)トリエトキシシリルプロピルカルバメートを得た。1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.63; 0.86; 1.22; 1.60; 1.66; 3.17; 3.81; 4.10; 4.79; 5.48; 7.39; 7.49. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 7.6; 14.0; 18.2; 22.6; 23.0; 24.5; 24.9; 25.0; 29.2; 29.5; 31.8; 35.5; 36.0; 43.4; 53.3; 58.4; 67.1; 67.6; 69.0; 80.3; 80.6; 81.0; 134.0; 134.5; 134.8; 136.7; 140.2; 149.3; 149.5; 155.2; 166.0; 166.6。
【0087】
1-ヘキサノールと(3-イソシアナトプロピル)-トリエトキシシランとの反応
1-ヘキサノール(2mL, 0.01mol)および(3-イソシアナトプロピル)-トリエトキシシラン(3.2g, 0.13mol)を24時間にわたり85℃で一緒に攪拌した。高真空(50℃/0.2mmHg)下で過剰のイソシアネートを除去し、さらなる精製を行うことなく無色のカルバメート誘導体(3.6g, 100%)を使用した。1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.62; 0.88; 1.22; 1.30; 3.16; 3.81; 4.03; 4.85. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 7.5; 13.9; 14.5; 18.1; 18.3; 22.4; 23.2; 25.4; 28.9; 31.4; 38.4; 43.3; 44.2; 47.2; 56.0; 58.3; 64.9; 68.3; 104.5; 156.8; 159.6。
【0088】
以下のシリル類似体を同様に調製した。
【0089】
フラノンC6シリル化合物
1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.60; 1.23; 1.62; 3.14; 3.73; 4.10; 5.47; 6.36. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 7.5; 13.8; 18.1; 22.3; 24.7; 31.1; 35.0; 43.4; 43.5; 53.3; 58.4; 67.1; 67.6; 68.6; 92.3; 93.0; 93.2; 131.1; 131.4; 134.5; 140.2; 149.7; 155.3; 163.8; 164.1; 166.6; 189.0。
【0090】
ラクタム190シリル化合物
1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.67; 0.93; 1.24; 1.42; 1.63; 1.84; 3.17; 3.68; 3.82; 4.10; 5.60; 7.21; 7.39. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 7.5; 13.6; 14.5; 18.1; 18.2; 18.3; 18.6; 23.1; 23.2; 35.4; 43.4; 53.3; 58.3; 58.4; 58.5; 67.3; 69.6; 78.2; 128.9; 131.6; 132.6; 134.6; 137.6; 139.7; 155.5; 156.6; 169.3; 170.8。
【0091】
フラノン83シリル化合物
1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.65; 0.88; 1.22; 1.64; 1.73; 3.16; 3.30; 4.10; 4.83; 7.39。
【0092】
13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 6.1; 12.3; 13.0; 16.6; 16.8; 20.8; 23.0; 29.7; 29.8; 31.2; 34.0; 41.7; 41.9; 56.8; 58.9; 67.5; 79.4; 133.3; 135.2; 147.8; 153.7; 155.1; 164.5。
【0093】
ラクタム144シリル化合物
1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.63; 0.94; 1.23; 1.39; 1.62; 1.87; 3.19; 3.70; 3.81; 5.23; 5.62; 7.05; 7.24. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 7.6; 13.7; 23.1; 35.4; 44.1; 58.4; 67.3; 69.5; 98.1; 125.9; 128.5; 131.8; 132.8; 137.5; 137.6; 139.8; 155.5; 169.7; 173.2。
【0094】
フラノン83のPEG(4000)-トリエチルトリエトキシシリルベンゼンカルバメート誘導体の調製
トルエン(10mL)中のPEG(4000)(8.0g, 2mmol)および(3-イソシアナトプロピル)-トリエトキシシラン(1g, 4mmol)を攪拌しながら85℃で5時間加熱し、続いて、ビス-(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(0.49g, 2mmol)を添加し、そして混合物を85℃で2時間攪拌した。次に、フラノン83(1.42g, 4mmol)を添加し、そして24時間にわたり85℃で混合物をさらに加熱した。混合物を室温まで冷却させて軽質石油(100mL)中に注ぎ、そして1時間攪拌した。沈殿を濾過して軽質石油で洗浄し、そして乾燥させて白色の粉末(8.52g)を得た。1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.57; 0.83; 1.27; 1.64; 2.56; 3.11; 3.36; 3.60; 3.70; 4.13; 4.51; 4.73; 5.00; 5.22; 7.46. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 7.5; 13.8; 18.1; 18.3; 22.3; 23.2; 24.6; 31.4; 32.9; 35.5; 58.0; 58.3; 61.6; 66.9; 69.5; 70.2; 71.0; 71.5; 72.4; 124.3; 134.0; 149.5; 170.0。
【0095】
ラクタム190のPEG(4000)-トリエチルトリエトキシシリルベンゼンカルバメート誘導体の調製
トルエン(7mL)中のPEG(4000)(4.0g, 1mmol)および(3-イソシアナトプロピル)-トリエトキシシラン(0.25g, 1mmol)を攪拌しながら85℃で5時間加熱し、続いて、ビス-(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(0.30g, 1mmol)を添加し、そして混合物を85℃で2時間攪拌した。次に、ラクタム190(0.40g, 1mmol)を添加し、そして24時間にわたり85℃で混合物をさらに加熱した。混合物を室温まで冷却させて軽質石油(100mL)中に注ぎ、そして1時間攪拌した。沈殿を濾過して軽質石油で洗浄し、そして乾燥させて白色の粉末(4.21 g, 85%)を得た。1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.58; 0.90; 1.19; 1.63; 1.68; 2.29; 3.13; 3.37; 3.60; 3.66; 3.78; 4.10; 4.19; 4.98; 5.22; 7.28; 7.43. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 7.5; 12.9; 13.6; 18.2; 18.3; 22.3; 23.2; 25.0; 28.4; 29.2; 29.5; 33.0; 38.9; 43.3; 55.2; 55.3; 58.2; 60.8; 61.6; 62.0; 63.3; 63.6; 69.6; 70.2; 71.0; 72.4; 79.2; 81.4; 84.2; 111.2; 112.5; 120.8; 121.2; 122.5; 123.1; 123.7; 128.2; 128.3; 132.3; 135.4; 146.0; 146.9; 156.3; 173.9。
【0096】
以下のPEG4000シリル化合物を同様に調製した。
【0097】
フラノンC6 PEG4000シリル化合物
1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.62; 0.88; 1.20; 1.65; 1.70; 2.19; 3.15; 3.63; 4.12; 4.42; 6.36. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 7.5; 18.1; 18.2; 23.2; 28.4; 33.0; 43.3; 55.1; 57.9; 58.2; 60.7; 61.5; 64.0; 70.2; 70.4; 72.4; 78.5; 120.7; 123.6; 125.8; 128.3; 128.5; 156.3。
【0098】
フラノン116 PEG4000シリル化合物
1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.60; 0.86; 1.23; 1.65; 1.70; 2.15; 3.10; 3.60; 4.17; 7.30; 7.48. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 7.5; 16.6; 23.2; 25.0; 29.2; 29.5; 35.5; 38.9; 43.3; 58.3; 60.0; 61.6; 62.5; 63.4; 63.6; 64.1; 66.2; 69.5; 70.2; 70.7; 72.4; 74.6; 81.0; 120.7; 122.5; 123.7; 128.3; 134.0; 198.1。
【0099】
フラノン135 PEG4000シリル化合物
1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.59; 0.86; 1.20; 1.67; 2.14; 2.45; 3.61; 3.69; 3.74; 4.11; 4.52; 7.47. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 13.9; 18.3; 22.5; 25.0; 28.9; 29.1; 31.6; 35.5; 55.3; 58.2; 67.1; 70.5; 72.4; 80.6; 123.1; 134.0; 139.9。
【0100】
ラクタム144 PEG4000シリル化合物
1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.59; 0.90; 1.19; 1.63; 1.68; 2.40; 3.13; 3.36; 3.56; 3.67; 3.78; 4.11; 4.17; 5.00; 5.20; 7.03; 7.24; 7.44. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 7.5; 18.2; 23.2; 29.3; 33.0; 28.3; 61.6; 70.5; 72.4; 120.8; 123.7; 125.9; 128.3; 128.5; 131.1; 178.2。
【0101】
フラノン83のPEG(400)-トリエチルシリル-トリエトキシベンゼンカルバメート誘導体の調製
トルエン(5mL)中のPEG(400)(1.0g, 2.5mmol)および(3-イソシアナトプロピル)-トリエトキシシラン(0.62g, 2.5mmol)を攪拌しながら85℃で5時間加熱し、続いて、ビス-(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(0.61g, 2.5mmol)を添加し、そして混合物を85℃で2時間攪拌した。次に、フラノン83(0.88g, 2.50mmol)を混合物に添加し、そして24時間にわたり85℃でさらに加熱した。混合物を室温まで冷却させてn-ヘキサン(2×100mL)で洗浄した。残渣をCH2Cl2(20mL)に溶解させ、そして減圧下で溶媒を除去して生成物を無色の油(1.73g, 56%)として得た。
【0102】
1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.89; 1.22; 1.66; 1.71; 2.34; 3.15; 3.65; 4.20; 4.54; 7.30; 7.48. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 13.9; 18.3; 21.7; 22.4; 24.7; 31.3; 35.5; 53.3; 58.3; 61.6; 67.2; 70.2; 70.5; 72.5; 80.8; 101.4; 123.2; 134.0; 149.5; 167.1; 173.0。
【0103】
ラクタム190のPEG(400)-トリエチルシリルトリエトキシベンゼンカルバメート誘導体の調製
トルエン(5mL)中のPEG(400)(1.0g, 2.5mmol)および(3-イソシアナトプロピル)-トリエトキシシラン(0.62g, 2.5mmol)を攪拌しながら85℃で5時間加熱し、続いて、ビス-(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(0.61g, 2.5mmol)を添加し、そして混合物を85℃で2時間攪拌した。次に、ラクタム190(1.0g, 2.50mmol)を混合物に添加し、そして24時間にわたり85℃でさらに加熱した。混合物を室温まで冷却させてn-ヘキサン(2×100mL)で洗浄した。残渣をCH2Cl2(20mL)に溶解させ、そして減圧下で溶媒を除去して生成物を無色の油(2.16g, 67%)として得た。
【0104】
1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.64; 0.97; 1.22; 1.66; 3.16; 3.60; 3.80; 4.17; 7.29; 7.31; 7.40. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 10.1; 11.5; 13.7; 18.2; 18.3; 18.5; 23.2; 37.8; 53.3; 55.2; 55.3; 58.3; 58.4; 61.6; 63.4; 67.3; 69.6; 70.3; 70.5; 72.4; 101.4; 120.8; 123.7; 125.8; 128.6; 128.9; 129.3; 131.6; 139.7; 172.9。
【0105】
フラノンC6のPEG(400)-トリエチルシリル-トリエトキシベンゼンカルバメート誘導体の調製
トルエン(7mL)中のPEG(400)(1.16g, 2.91mmol)および(3-イソシアナトプロピル)-トリエトキシシラン(0.72g, 2.91mmol)を攪拌しながら85℃で5時間加熱し、続いて、ビス-(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(0.71g, 2.91mmol)を添加し、そして混合物を85℃で2時間攪拌した。次に、フラノン83(1.03g, 2.91mmol)を混合物に添加し、そして24時間にわたり85℃でさらに加熱した。混合物を室温に冷却させて軽質石油(50mL)中に注ぎ、そして非溶解残留油を新たな軽質石油(50mL)で洗浄して無色の油(2.90g, 80%)を得た。
【0106】
1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ:0.56; 0.88; 1.17; 1.20; 1.61; 1.68; 3.60; 3.77; 4.17; 6.33; 7.23; 7.43. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 7.5; 13.8; 18.1; 18.3; 22.3; 23.1; 23.2; 24.6; 24.8; 24.9; 29.3; 31.3; 31.4; 33.0; 35.0; 35.5; 43.3; 53.3; 55.2; 58.1; 58.3; 61.6; 72.2; 72.4; 93.0; 120.8; 121.2; 122.5; 123.1; 125.2; 128.1; 128.3; 128.9; 129.4; 133.5; 145.7; 146.9; 147.2; 149.7; 149.8; 154.5; 156.3; 164.1; 165.0。
【0107】
以下のPEG400シリル化合物を同様に調製した。
【0108】
フラノン116 PEG400シリル化合物
1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.61; 0.88; 1.66; 1.71; 3.15; 3.64; 3.79; 4.19; 4.54; 4.86; 5.00; 7.47. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 7.5; 14.0; 18.3; 22.5; 23.2; 25.0; 28.4; 29.2; 29.4; 31.7; 35.5; 38.9; 43.3; 49.4; 49.5; 58.1; 58.3; 60.0; 61.6; 36.3; 63.6; 72.4; 91.5; 96.2; 101.3; 112.5; 120.7; 122.5; 123.6; 128.3; 134.0; 159.5; 173.1。
【0109】
ラクタム144 PEG400シリル化合物
1H n.m.r. (300 MHz, CDCl3) δ: 0.59; 0.98; 1.22; 1.66; 1.71; 2.23; 3.17; 3.64; 3.80; 4.20; 5.26; 7.06; 7.46. 13C n.m.r. (75.5 MHz, CDCl3) δ: 6.3; 13.7; 18.3; 18.5; 29.2; 29.4; 33.0; 37.9; 44.1; 53.3; 55.2; 55.3; 57.0; 58.3; 59.9; 61.7; 63.3; 67.3; 69.5; 70.3; 70.5; 72.5; 121.2; 123.1; 125.9; 127.1; 128.2; 128.5; 131.8; 139.5; 171.1。
【0110】
表面結合
ガラススライドに対する一般的手順
ガラススライド(顕微鏡カバースリップ)を浄剤溶液中で一晩前処理し、続いて、以下のクリーニング手順に従った。
【0111】
i)水で十分に濯ぎ、ii)水、エタノール、およびジクロロメタンを用いて30℃で5分間超音波処理し、iii)過酸化水素/アンモニア/水の1:1:1.5混合物を用いて60℃で25分間超音波処理し、iv)水/塩酸の6:1混合物を用いて25分間音波処理し、v)水で十分に濯ぎ、vi)メタノール、メタノール/トルエン(1:1))を用いてそれぞれ5分間超音波処理し、そしてオーブン中、118℃で乾燥させる。
【0112】
%w/vに基づいてフラノン/ラクタムの溶液を調製した。
【0113】
1000rpmで回転するスピンコーター上に取り付けられたガラススライドに1%フラノン/ラクタム(10mLのトルエン中0.1g)を10滴加え、続いて、2000rpmで回転させて過剰の溶液を除去した。この手順を3回反復した。スライドを95℃で一晩かけて硬化させ、続いて、トルエンで濯いで未反応フラノン/ラクタムを除去し、次に、乾燥キャビネット中で乾燥させて残留溶媒を除去した。
【0114】
ガラススライドの表面がフラノン/ラクタムで官能基化されたことがXPS分析から示唆された。
【0115】
コーティングされたガラススライドに対する選択されたXPSデータ
以下の表において:
GSはガラススライドを意味し;CATはカテーテルを意味し;Hはヘキサノール(対照)を意味し;Sは短いアルキルリンカーを意味し;P400はPEG400リンカーを意味し;P4000はPEG4000リンカーを意味し;83、190などは特定の化合物に対応する。
【表1】

【0116】
コンタクトレンズにコーティングを施すための一般的手順
市販のコンタクトレンズをMilli-Q水で濯いで緩衝化溶液(この中にコンタクトレンズが保存されていた)を除去し、次に、ペーパータオル上に置き、その後、コーティングを施した。
【0117】
Milli-Q水を溶媒として用いて%w/vに基づいてフラノン/ラクタムの溶液を調製した。短いリンカーの誘導体の場合、化合物を溶解させるために1:3エタノール:Milli-Q水混合液が必要であった。
【0118】
コンタクトレンズを個別に1mLの1%フラノン/ラクタム(10mLのMilli-Q水中0.1g)に浸漬して攪拌機上に48時間放置した。溶液をデカントし、そしてコンタクトレンズを50℃で48時間硬化させた。Milli-Q水(5mL)を各レンズに添加して5時間放置し、コンタクトレンズを再水和させた。コンタクトレンズを過剰のMilli-Q水で濯いで未反応のフラノン/ラクタムをすべて除去し、次に、緩衝塩類溶液中に保存した。
【0119】
コンタクトレンズの表面がフラノン/ラクタムで官能基化されたことがXPS分析から示唆された。
【0120】
スパッターコーティングされたカテーテルへのフラノンの結合
市販のカテーテル(シリコーンゴム)を5cmの長さにカットして中央でつなぎあわせ、次に、洗浄剤溶液中に一晩浸漬することにより前処理し、その後、Milli-Q水で濯ぎ、そして乾燥キャビネット中で乾燥させた。ヒドロキシル基でカテーテルの表面を官能基化するために、Bal-Tec SCD050スパッターコーターを用いて、アルゴンプラズマ(P=9.36W)下、10-1mbarで、カテーテルを120秒間処置した。プラズマコーティングされたカテーテルをMilli-Q水中のフラノン/ラクタムの1%w/v溶液に浸漬し、そして攪拌機上に48時間放置した。溶液をデカントしてカテーテルを95℃で一晩硬化させ、Milli-Q水で濯ぎ、そして乾燥キャビネット中で乾燥させた。
【0121】
カテーテルの表面がフラノン/ラクタムで官能基化されたことがXPS分析から示唆された。
【表2】

【0122】
細菌でチャレンジしたときにバイオフィルム形成を低減または防止する能力に関してガラスカバースリップを試験した。3つの試験系を使用した。第1は、短期間(24時間)バッチ式バイオフィルム系であり、第2は、{Hentzer et al., 2002, Microbiol. 148(1), 87-102}に記載されているような貫流フローセル系であった。バッチ式バイオフィルム系では、結合されたフラノンを有する改質ガラスカバースリップ(no.1 18×18mm)を固体担体としてのガラススライド上に取り付けた。各スライドは、1枚のフラノン含有カバースリップと1枚の対照カバースリップとを有していた。6枚までのスライドを大きな滅菌ガラスペトリ皿に入れた。Gfpを発現する緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa) PAO1の一晩培養物または黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の臨床単離物をペトリ皿中の新たな培地に接種した。培養物を振盪させながら25℃で24時間インキュベートした。スライドを滅菌PBSで3回濯いで緩く付着した細胞を除去し、そして蛍光顕微鏡法により視覚化した(最初に、Molecular Probes製のBacLight Live-Dead染色キットでS. aureus細胞を染色した)。画像解析で表面被覆率を求めることにより、バイオフィルム形成を定量化した。100%に設定された対照表面に対してバイオフィルム形成を規格化した。カテーテル片(約60mmの長さ)を表面改質し、滅菌培地をカテーテル片に通して7日間ポンプ移送することにより、P. aeruginosaまたはS. aureusによるバイオフィルム形成に関して試験した。カテーテルからバイオフィルムを取り出して全タンパク質濃度を決定することにより、バイオフィルム形成を定量化した。
【0123】
貫流フローセル系では、3つのチャネルフロー細胞を使用し、処理カバーガラスを上端に接合した(no.1、24×60mm)。したがって、各チャネルは、反復試験バイオフィルムに対応するものであった。Gfpを発現するP. aeruginosa PAO1の一晩培養物をフローセルに注入して付着させた。バイオフィルムを共焦点レーザー走査顕微鏡法により監視し、7〜9日間にわたり画像解析でバイオフィルムの深さおよび表面被覆率を決定することにより、画像を定量化した。フラノンの欠如した対照カバースリップに対するパーセントとして結果を表した。
【0124】
これらの試験系を用いて、本明細書に記載の結合ストラテジーが良好なバイオフィルム阻害を引き起こすことを実証した。たとえば、190PEG400処理では、24時間後、P. aeruginosaに対してバイオフィルムの約50%の減少を示した。116PEG4000処理では、P. aeruginosaに対してほとんどまたはまったく活性を示さなかった。
【0125】
S. aureusのバイオフィルムが83PEG400または83PEG4000のいずれかの表面上に形成された場合、全バイオフィルムは、それぞれ、対照の6%および13%に減少した。
【0126】
この活性は、表面上の細胞を死滅させることに基づくものではなく、クローン増殖によるコロニー形成を後続的に阻害することに基づく。表面上の生存細胞のパーセントと死滅細胞のパーセントとを比較したところ、フラノン処理表面上の生存細胞と死滅細胞との比に差異は見られなかった(図1)。
【0127】
フローセル系を用いて、フラノン含有表面上におけるP. aeruginosaのバイオフィルム形成を評価した。フラノン改質表面は試験期間にわたりP. aeruginosaによるバイオフィルム形成を阻害することがこれらのデータからわかる。たとえば、83PEG4000処理および116Sl処理では、7日間にわたり50%の平均バイオフィルム減少を示した。190PEG400処理では、5日目まで50%のバイオフィルム減少を示し、6日目に75%の減少を示したが、7日目では差異が見られなかったことから(データは示されていない)、表面処理が4日以降に破壊されたことが示唆される(図2)。116PEG400処理では、最大50%の阻害を示したが、この阻害は6日目で消失した(図2)。190PEG4000処理では、75%までのバイオフィルム形成阻害を示した。
【0128】
同様に、改質カテーテル上におけるP. aeruginosaおよびS. aureusによるバイオフィルム形成を監視した。190Sl処理および116Sl処理では、P. aeruginosaバイオフィルム形成が有意に低減され、一方、83PEG400では、3日目にバイオフィルム形成の減少を示したが、7日目には減少を示さなかった(データは示されていない)。化合物190PEG4000および83PEG4000では、7日目にS. aureusバイオフィルム形成が約50%減少したが、3日目では差異は見られなかった(図3)。
【0129】
本発明の特質をより明確に理解しうるように、次に、その好ましい形態について、以下の実施例を参照しながら説明する。ただし、これらに限定されるものではない。
【0130】
本明細書全体を通して、「comprise(含む)」という単語または「comprises」もしくは「comprising」のような変化形は、明示された要素、整数、もしくは工程または一群の要素、整数、もしくは工程を包含することを示唆するものと理解されるであろうが、他の要素、整数、もしくは工程または一群の要素、整数、もしくは工程をなんら除外するものではない。
【0131】
本明細書に挙げた刊行物はすべて、参照により本明細書に組み入れられるものとする。本明細書に含まれている文献、作用、材料、装置、物品などに関する考察はいずれも、単に本発明の置かれている状況を示すことを目的としているにすぎない。これらの事項のいずれかもしくはすべてが先行基礎技術の一部をなすことまたは本願の各請求の優先日の前に本発明に関連する分野の一般常識としてどこかに存在していたことを容認するものと解釈してはならない。
【0132】
当業者であればわかるであろうが、広義に記述された本発明の精神または範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示された本発明に、多数の変更および/または修正を加えることが可能である。したがって、本発明の実施形態は、いかなる点においても、例示的なものであって限定的なものではないとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に使用される化合物および対応するヒドロキシル化誘導体を示している。
【図2】図2は、流動条件下の本発明に係るフラノン処理表面上におけるP. aeruginosaによるバイオフィルム形成を示している。
【図3】図3は、本発明に係るフラノン処理カテーテル上におけるS. aureusによるバイオフィルム形成を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

〔式中、
R1およびR2は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルよりなる群から選択され、無置換型もしくは置換型、直鎖状もしくは分枝鎖状のいずれであってもよく;
R3およびR4は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アリール、またはアリールアルキルであり;かつ
Xは、OまたはNR2である〕
で示される少なくとも1種の化合物と結合したシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーを含む、抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマー。
【請求項2】
式Iで示される化合物のR1およびR2が、独立して、疎水性、親水性、もしくは親フッ素性である、請求項1に記載の抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマー。
【請求項3】
R1、R2、R3、およびR4のうちの少なくとも1つが、ハロゲンである、請求項1または請求項2に記載の抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマー。
【請求項4】
R1、R2、R3、およびR4のうちの少なくとも1つが、臭素である、請求項3に記載の抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマー。
【請求項5】
式Iで示される化合物が、前記シリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーとブレンドまたは混合されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマー。
【請求項6】
式Iで示される化合物が、前記シリコーンポリマーまたはシリコーンオリゴマーに吸着されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマー。
【請求項7】
式Iで示される化合物が、式Iで示される化合物を前記シリコーンポリマーまたはシリコーンオリゴマーに直接適用することにより前記シリコーンポリマーまたはシリコーンオリゴマーに吸着される、請求項6に記載の抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマー。
【請求項8】
式Iで示される化合物を、少なくとも1種のシリコーンコモノマーまたはシリコーンオリゴマーおよび場合により少なくとも1種の他のモノマーと共重合させることにより生成された、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマー。
【請求項9】
シリコーンモノマーまたはシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーと式Iで示される化合物との縮合重合により生成された、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマー。
【請求項10】
式Iで示される化合物を、シリコーンポリマーもしくはシリコーンオリゴマーまたは少なくとも部分的にそれから形成されたデバイスに表面結合させることにより生成された、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗微生物性のシリコーンポリマーまたはシリコーンオリゴマー。
【請求項11】
前記シリコンポリマーもしくはシリコンオリゴマーまたはデバイスが、化学処理されるかまたはプラズマ処理される、請求項10に記載の抗微生物性のポリマーまたはオリゴマー。
【請求項12】
式Iで示される化合物が、式II
【化2】

〔式中、
R1、R2は、独立して、H、アルキル、アルコキシ、ポリエチレングリコール、オキソアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルから選択され、無置換型もしくは置換型、直鎖状もしくは分枝鎖状のいずれであってもよく;
R4は、水素、ハロゲン(X=F、Cl、Br、またはI)であり;
R3は、水素またはハロゲンであり;かつ
Xは、OまたはNR2であり;かつ
Zは、独立して、R2、ハロゲン、OH、OOH、OC(O)R2、=O、アミン、アジド、チオール、メルカプトアルキル、メルカプトアルケニル、アルケニルオキシ、アリールオキシ、メルカプトアリール、アリールアルコキシ、メルカプトアリールアルキル、SC(O)R2、OS(O)2R2、NHC(O)R2、=NR2、NHR2、またはシリルオキシよりなる群から選択される〕
で示される化合物である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマー。
【請求項13】
式Iで示される化合物のR1およびR2が、独立して、疎水性、親水性、もしくは親フッ素性である、請求項12に記載の抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマー。
【請求項14】
前記シリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマーが、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサメチルトリシクロシロキサン、デカメチルペンタシクロシロキサン、ドデカメチルヘキサシクロシロキサン、およびジメチルポリシロキサンよりなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマー。
【請求項15】
式III:
【化3】

〔式中、
R1およびR2は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルよりなる群から選択され、無置換型もしくは置換型、直鎖状もしくは分枝鎖状のいずれであってもよく;
R3およびR4は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アリール、またはアリールアルキルであり;かつ
Xは、OまたはNR2である〕
で示される化合物であって、
少なくとも1個の-YC(O)NR7R5Si(OR6)3基{ここで、Yは、O、S、N、P、C(O)よりなる群から選択され;R5は、リンカーであり、好ましくは、置換型もしくは無置換型のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、アルケニル、またはこれらの基を含むリンカー(場合により、より多くのヘテロ原子のうちの1種(たとえば酸素)が介在していてもよい)、またはこれらの基を含む結合基であり;かつ各R6は、独立して、置換型もしくは無置換型のアルキル、シクロアルキル、アルケニルなどから選択され;かつR7は、Hまたはアルキルである}を有する、化合物。
【請求項16】
前記リンカーR5がポリオキソアルキレンである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
式Iで示される化合物のR1およびR2が、独立して、疎水性、親水性、もしくは親フッ素性である、請求項1に記載の抗微生物性のシリコーンオリゴマーまたはシリコーンポリマー。
【請求項18】
-Y'-H{ここで、-Y'は、O、S、NH、COOよりなる群から選択される}から選択される少なくとも1個の基を有する式Iで示される化合物と、式OCNR7R5Si(OR6)3{ここで、R5は、リンカーであり、好ましくは、置換型もしくは無置換型のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、アルケニル、またはこれらの基を含むリンカー(場合により、より多くのヘテロ原子のうちの1種(たとえば酸素)が介在していてもよい)、またはこれらの基を含む結合基であり、かつ各R6は、独立して、置換型もしくは無置換型のアルキル、シクロアルキル、アルケニルなどから選択され、かつR7は、Hまたはアルキルである}で示される化合物とを反応させる工程を含む、請求項15〜17のいずれか1項に記載の式IIIで示される化合物の製造方法。
【請求項19】
請求項15〜17のいずれか1項に記載の式IIIで示される化合物を表面に結合させる方法であって、式IIIで示される化合物を該表面に接触させる工程と、場合により該化合物を硬化させる工程とを含む、上記方法。
【請求項20】
式IIIで示される化合物を前記表面に接触させる工程の前に、前記表面を処理することで式IIIで示される化合物のシリルオキシ基と反応する基を生成させる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項15〜17のいずれか1項に記載の式IIIで示される化合物をポリマーまたはオリゴマーに結合させる方法であって;式IIIで示される化合物を表面に接触させる工程と、場合により該ポリマーまたはオリゴマーを硬化させる工程とを含む、上記方法。
【請求項22】
前記ポリマーまたはオリゴマーが、シリコーンポリマーまたはシリコーンオリゴマーである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項15〜17のいずれかに記載の式IIIで示される化合物と結合したポリマーまたはオリゴマー。
【請求項24】
前記ポリマーまたはオリゴマーが、シリコーンポリマーまたはシリコーンオリゴマーである、請求項23に記載のポリマーまたはオリゴマー。
【請求項25】
前記化合物が、式IV:
【化4】

〔式中、
R1、R2は、独立して、H、アルキル、アルコキシ、ポリエチレングリコール、オキソアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルであり、無置換型もしくは置換型、直鎖状もしくは分枝鎖状のいずれであってもよく;
R4は、水素、ハロゲン(X=F、Cl、Br、またはI)であり;
R3は、水素またはハロゲンであり;かつ
Xは、OおよびNR2であり;かつ
Zは、独立して、R2、ハロゲン、OH、OOH、OC(O)R2、=O、アミン、アジド、チオール、メルカプトアルキル、メルカプトアルケニル、アルケニルオキシ、アリールオキシ、メルカプトアリール、アリールアルコキシ、メルカプトアリールアルキル、SC(O)R2、OS(O)2R2、NHC(O)R2、=NR2、NHR2、またはシリルオキシよりなる群から選択される〕
で示され、
ただし、式IVで示される化合物は、少なくとも1個の-YC(O)NR7R5Si(OR6)3基{ここで、Yは、O、S、N、P、C(O)よりなる群から選択され;R5は、リンカーであり、好ましくは、置換型もしくは無置換型のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、アルケニル、またはこれらの基を含むリンカー(場合により、より多くのヘテロ原子のうちの1種(たとえば酸素)が介在していてもよい)、またはこれらの基を含む結合基であり;かつ各R6は、独立して、置換型もしくは無置換型のアルキル、シクロアルキル、アルケニルなどから選択され;かつR7は、Hまたはアルキルである}を有する、
請求項15〜17のいずれか1項に記載の式IIIで示される化合物。
【請求項26】
請求項15〜17のいずれか1項に記載の式IIIで示される化合物または請求項24に記載の式IVで示される化合物でコーティングされたデバイス。
【請求項27】
コンタクトレンズである、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
カテーテルである、請求項26に記載のデバイス。
【請求項29】
水処理に使用される分離膜である、請求項26に記載のデバイス。
【請求項30】
包帯である、請求項26に記載のデバイス。
【請求項31】
アルギン酸ビーズである、請求項26に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−520588(P2007−520588A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541756(P2006−541756)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001703
【国際公開番号】WO2005/053684
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(506188703)バイオシグナル リミテッド (3)
【Fターム(参考)】