説明

抗菌抗黴性樹脂組成物及びそれを用いた印刷物

【課題】
幅広い抗菌スペクトルを有し、安全性、抗菌抗黴効果の再現性および持続性に優れた抗菌抗黴性樹脂組成物、および抗菌抗黴剤粒子の分解による変色が生じない抗菌抗黴性塗工物とその製造方法を提供する。
【解決手段】
結晶性アルミノケイ酸塩またはその誘導体と銀イオンとが結合してなる抗菌抗黴剤粒子とバインダー樹脂とを含む抗菌抗黴性樹脂組成物を用いて基材の少なくとも片面に本発明の抗菌抗黴性樹脂組成物からなる塗工層を設けてなり、抗菌抗黴剤粒子の表面濃度が1×102 〜1×104 個/mm2である抗菌抗黴性塗工物、および抗菌抗黴剤粒子の分散液をワニスまたは樹脂エマルジョン中に添加してなるコーティング剤を、基材の少なくとも片面に塗工する上記抗菌抗黴性塗工物の製造方法により優れた抗菌抗黴性塗工物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌だけでなく酵母、黴に対しても広範な抗菌スペクトルを有し、安定した抗菌抗黴性を発揮する樹脂組成物、塗工物および抗菌抗黴性塗工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗菌抗黴性製品は、衣食住を初めとする生活関連資材のあらゆる産業関連分野において、非常に広範囲にわたって使用されている。抗菌抗黴性を機能として付加する方法としては、例えば塗工物に添加しウェットコーティングしたり、あるいは銀を蒸着やスパッタ等によってドライコーティングする方法などが採用されている。
【0003】
抗菌抗黴剤としては、無機系の抗菌剤、天然物より抽出した天然の抗菌剤、および有機系の抗黴剤が挙げられる。無機系の抗菌剤には、セラミック、シリカゲル、錯体、アパタイト、ヒドロキシアパタイト等の担体に銀イオンや銅イオンを担持させたものや、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄等の光触媒機能を有するものなどがある。これら抗菌剤は、効果が長期間に渡って持続し、耐熱性が高く、さらに安全性が高いなどの長所があるものの、塗料に添加した際に抗菌剤が変色したり、抗黴効果が小さいこと等が短所となっている。天然系の抗菌剤には、茶タンニン、ヒノキチオール、孟宗竹抽出物、辛子抽出物、キトサン等があり、食品、包装材等に添加され実用化された例があるが、色、臭味を有するものも多く、その効果の持続性に難点がある。
【0004】
抗黴剤としては、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−フルオロジクロロメチルチオ−フタールイミド、2,3,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N−トリクロロメチルチオ−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールカルバミン酸メチルエステル、10,10’−オキシビスフェノキシアルシン、2,3,5,6−テトラクロロ−4(メチルスルフォニル)ピリジン、2−ピリジンチオール−1−オキサイド亜鉛、N,N−ジメチル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド等が知られているが、毒性があり、溶出性であるために安全性及び持続性に問題がある物が多く、細菌に対して幅広い抗菌スペクトルを持たない。そこで、細菌、酵母、黴に対する幅広い抗菌スペクトルを得るために、抗菌剤と抗黴剤を混合することが試みられたが、抗菌抗黴効果の再現性、安全性はもちろんその効果の持続性に問題があった。
【0005】
特開平9―1952号公報には水で溶かした粉末状の抗菌剤を塗りつけることによって表紙等印刷物に抗菌処理する方法が提案されているが、抗菌剤を単に印刷物表面に塗り付けるだけでは、抗菌剤が単に印刷物表面に付着しているに過ぎないために擦られたり何らかの要因で抗菌剤が印刷物から容易に脱落し、その効果が十分であるとはいえない。また特開平11―77912号公報にはベンズイミダゾール系抗菌抗黴剤粒子とバインダー樹脂を含有する塗工層を有する抗菌抗黴性塗工物が提案されているが、抗菌抗黴性が不十分であったり、粒子径が大きいためにオフセット印刷で塗工した場合抗菌抗黴粒子の転移や塗工物の光沢劣化を生じさせたりする問題があった。
【特許文献1】特開平9―1952号公報
【特許文献2】特開平11―77912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、細菌、酵母、黴に対して幅広い抗菌スペクトルを有し、安全性、抗菌抗黴効果の再現性および持続性に優れた抗菌抗黴性組成物および抗菌抗黴剤粒子の分解による変色が生じない抗菌抗黴性塗工物とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は結晶性アルミノケイ酸塩またはその誘導体と銀イオンとが結合してなる抗菌抗黴剤粒子とバインダー樹脂とを含む抗菌抗黴性樹脂組成物を用いて基材の少なくとも片面に本発明の抗菌抗黴性樹脂組成物からなる塗工層を設けてなり、抗菌抗黴剤粒子の表面濃度が1×102 〜1×104 個/mm2である抗菌抗黴性塗工物、および抗菌抗黴剤粒子の分散液をワニスまたは樹脂エマルジョン中に添加してなるコーティング剤を、基材の少なくとも片面に塗工する上記抗菌抗黴性塗工物の製造方法により優れた抗菌抗黴性塗工物を得るに至った。
【0008】
即ち本発明は結晶性アルミノケイ酸塩またはその誘導体と銀イオンとが結合してなる抗菌抗黴剤粒子とバインダー樹脂を含有することを特徴とする抗菌抗黴性樹脂組成物に関する。
また本発明は、、結晶性アルミノケイ酸塩が一般式(1)で表され、その平均粒子径が0.1〜10μmであることを特徴とする上記抗菌抗黴性樹脂組成物に関する。
一般式(1)M2/nO・Na2O・Al2O・YSiO2・XH2O(M:銀、亜鉛イオン、X:モル分率で1〜15の数、Y:モル分率で2〜3の数)
また本発明は、基材の少なくとも片面に、上記抗菌抗黴性樹脂組成物からなる抗菌抗黴性塗工層を設けてなり、抗菌抗黴剤粒子の表面濃度が1×102 〜1×104 個/mm2 であることを特徴とする抗菌抗黴性塗工物に関する。
また本発明は、塗工層中の抗菌抗黴剤粒子の含有量が0.05〜10重量%であることを特徴とする上記抗菌抗黴性塗工物に関する。
また本発明は、抗菌抗黴剤粒子の分散液をワニスまたは水溶性樹脂または水溶性樹脂エマルジョン中に添加してなるコーティング剤を、基材の少なくとも片面に塗工することを特徴とする上記抗菌抗黴性樹脂組成物と抗菌抗黴性塗工物及び塗工物の製造方法に関する。
また本発明は、オフセット印刷機及びコーティング装置を備えるオフセット印刷機を使用してワニスまたは樹脂エマルジョンをインラインで塗工することを特徴とする上記抗菌性塗工物とその製造方法に関する。
更には、抗菌抗黴剤粒子が分解する前に、基材に塗工したコーティング剤を乾燥することを特徴とする上記抗菌抗黴性塗工物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、細菌だけでなく酵母、黴に対しても広範な抗菌スペクトルを有し、かつ安定した抗菌抗黴性を発揮する塗工物が得られるようになった
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の抗菌抗黴性樹脂組成物に含まれる抗菌抗黴性粒子としては結晶性アルミノケイ酸塩であり、一般式(1)で表される。
一般式(1)M2/nO・Na2O・Al2O・YSiO2・XH2O(M:銀、亜鉛イオン、X:モル分率で1〜15の数、Y:モル分率で2〜3の数)
【0011】
上記抗菌抗黴剤粒子の平均粒子径は、0.1〜10μm、さらには0.5〜7.5μmであることが好ましい。なお、抗菌抗黴剤粒子の平均粒子径は、レーザー回折法により測定したものである。抗菌抗黴剤の平均粒子径が0.1μm未満の場合には、抗菌剤が塗工物や成型物の表面より露出しにくくなるため抗菌効果が十分でなく、10μmを越える場合には、塗工物や成型物の表面のグロスが低下し、粗大粒子の突起を生じたりするため外観上好ましくない。
【0012】
本発明の抗菌抗黴性塗工物は、基材の少なくとも片面に、イミダゾールまたはその誘導体と銀イオンとが結合してなる抗菌抗黴剤粒子とバインダー樹脂とを含む抗菌抗黴性塗工層を設けてなるものである。抗菌抗黴性塗工層は、抗菌抗黴剤粒子と1種または2種以上のバインダー樹脂とを含むコーティング剤を塗工することにより設けられる。コーティング剤は、抗菌抗黴剤粒子をそのままワニスまたは水溶性樹脂または水溶性樹脂エマルジョンに添加し、攪拌して調製しても良いが、粗大粒子が存在すると塗工物表面に突起を生じ外観上好ましくないため、衝撃力、せん断力を加えることが可能な分散機で溶剤に分散した上で添加することが好ましい。分散機としては、例えば二本ロール、三本ロール、ニーダー、ボールミル、アトライター、サンドミル等が挙げられる。
【0013】
バインダー樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、飽和ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリイソブチレン、ポリアミド、石油樹脂、ロジン、セルロース及びその誘導体、しょ糖エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体、エチレン/酢酸ビニル系共重合体、α−オレフィン/無水マレイン酸系共重合体、スチレン/無水マレイン酸系共重合体等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂、さらにはエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ホスファゼン樹脂等の紫外線または電子線により硬化する樹脂も用いることができる。
【0014】
ワニスとしてより好ましい形態としては、ロジン変性フェノール樹脂、アルキド樹脂、石油樹脂のバインダー樹脂、亜麻仁油、大豆油、桐油、サフラワー油、パーム油、ごま油、オリーブ油、やし油、こめ油、綿実油、ひまわり油、コーン油、べに花油、なたね油などのバージン油、再生油、重合油などの植物油、原油を原料として精製された大気圧下での沸点範囲が210〜350℃の石油系溶剤及びまたは原油を原料として水素添加精製し芳香族成分を1重量%以下に制御した大気圧下での沸点範囲が210〜350℃の石油系溶剤、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノセカンダリーブチレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムオキサイドイソプロポキサイドトリマー、アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー、アルミニウムオキサイドステアレートトリマーなどの有機アルミニウム化合物などのゲル化剤から選択された物質を溶解反応させて25℃でのコーン&プレート粘度を50〜2000dPa・sに調整にしたものが好ましくより好ましくは100〜1000dPa・sである。更には必要に応じて、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸化合物、塩ビパウダー、疎水性シリカなどを0〜50重量%上記ワニスに混合・粉砕したものは機能性ワニスとして使用することにより塗工物にマット感などの美粧性を付与させる点でき好ましく使用できる。
【0015】
水溶性樹脂または水溶性樹脂エマルジョンとしては、バインダー樹脂としてアクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂などの水溶性樹脂、水溶性エマルジョンから選択される1乃至複数の樹脂を固形分として20〜60重量%含有するものが好ましく使用できる。
【0016】
これらのワニス、水溶性樹脂または水溶性樹脂エマルジョンに上記抗菌抗黴剤粒子を0.1〜20重量%含有させることが好ましい。
【0017】
抗菌抗黴剤粒子がその効果を発揮するためには、塗工物および樹脂成型物表面より抗菌抗黴剤粒子表面が露出していなければならず、具体的には、抗菌抗黴剤粒子の表面濃度が、1×102 〜1×104 個/mm2 でなければならない。なお、抗菌抗黴剤粒子の表面濃度は、走査型電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分光法(EDX)を組み合わせた、X線マイクロアナリシス(SEM/EDX)によるAg元素の電子顕微鏡写真観察により測定したものである。抗菌抗黴剤粒子の表面濃度が1×102 個/mm2 未満では、抗菌性能が不十分であり、1×104 個/mm2 より多いと抗菌抗黴性は十分であるが、表面が白濁し、グロスが低下したり、ヘイズが大きくなったりするため外観上好ましくない。また、抗菌抗黴剤粒子がその効果を発揮するためには塗工層中の抗菌抗黴剤粒子の含有量が0.05〜10重量%であることことが好ましい。
【0018】
本発明の抗菌抗黴性樹脂組成物は、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、凹版印刷、グラビア印刷方式、インラインコーター、オフラインコーターによって基材である紙、合成紙、加工紙、フィルムに印刷・塗工する。更にはオフセット印刷機又はコーター付オフセット印刷機で印刷・塗工することによって安価に1工程で印刷・塗工が完了することからより好ましい。
【0019】
また、抗菌抗黴剤粒子の変色は、銀錯体または金属塩から金属イオンが脱離しハロゲン化金属を生成したり、金属が樹脂または添加在中の窒素原子に配位するために起こると考えられ、溶剤中またはモノマー中で進行しやすい。そのため、抗菌抗黴剤粒子が分解する前に、基材に塗工したコーティング剤を乾燥することが好ましい。
【0020】
コーティング剤には、必要に応じて染料、顔料、界面活性剤、分散剤、ワックス、硬化剤等の添加剤を添加することができる。
【0021】
[実施例]
以下、実施例によって本発明の抗菌抗黴性樹脂組成物を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの記載実施例に限定されるものではない。尚、以下の記述において「部」は重量部「%」は重量%を示す。なお、抗菌抗黴剤粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計で測定した。また、塗工層の膜厚はフィルム断面のSEM写真より求め、樹脂成型物の膜厚はノギスで測定した。また、抗菌抗黴剤粒子の表面濃度は、フィルム表面のSEM写真を1000倍の倍率で観察後、同視野のEDXによるAg元素の面分析により行った。EDXによる一定面積におけるAgによる感光像をカウントすることで表面濃度を測定した。また、塗工層のヘイズは、ヘイズメーターで測定した。塗工層のヘイズは基材のヘイズ値を差し引いて求めた。目視観察により実用的なヘイズ値の範囲は30以下と判定した。
【0022】
ワニス及び水溶性樹脂・水溶性樹脂エマルジョンの調整
ワニス製造例:タマノール361(荒川化学製:ロジン変性フェノール樹脂)50部に対し、大豆油20部、AFソルベント5(日石三菱式会社製:インキ溶剤)30部、アルミキレート(川研ファインケミカル社製:ゲル化剤)1部を4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で200℃90分攪拌し反応溶解させ、コーン&プレート粘度800dPa・sのワニスを得た。
水性エマルジョンの製造例:4つ口フラスコ反応容器に、過硫酸アンモニウム(2.5部)、アニオン性反応性乳化剤(第一工業製薬製:アクアロンHS−10の25%水溶液)(8部)、28%アンモニア水(2部)、水(200部)を仕込んで窒素雰囲気下75℃で加熱した。ここに、アクリル酸−2−エチルヘキシル(70部)、αメチルスチレン(50部)、アクリル酸−n−ブチル(120部)、メタクリル酸メチル(130.0部)、ジアセトンアクリルアミド(30部)、アクリル酸(8部)、アニオン性反応性乳化剤(上記と同じもの)(32部)、ラウリルメルカプタン(1部)、及び水(170部)をホモミキサーで混合・乳化した乳化液を3時間かけて滴下した。乳化液の滴下が終了してから30分後に、28%アンモニア水(6.4部)を添加し、更に追加触媒として過硫酸アンモニウム(0.3部)を水(2部)に溶かした溶液を添加して、引き続き80℃で3時間反応させた。所定時間反応後、反応混合物を冷却して、固形分が51%の乳白色の水性分散液を得た。
【0023】
抗菌抗黴性樹脂組成物の調整
表1に示す配合に従い抗菌抗黴剤としてM2/nO・Na2O・Al2O・2.5SiO2・XH2O(M:銀、亜鉛イオンの混合物、X:3.2〜7.6)を用いて、ワニス及び水性樹脂組成物を得た。
尚、表中の配合は重量部を示す。

【0024】
【表1】

【0025】
塗工物
実施例1及び比較例1についてはRIテスター展色機を用いて特菱アート紙(三菱製紙製)にTKハイユニティ藍M(東洋インキ製造製)を全面ロール0.25ml展色したのち、実施例1及び比較例1のワニス組成物を同条件で0.3ml展色し塗工物を得た。
実施例2及び比較例2については、RIテスター展色機を用いて特菱アート紙(三菱製紙製)にTKハイユニティ藍M(東洋インキ製造製)を全面ロール0.25ml展色したのち、実施例2及び比較例2の水性樹脂エマルジョンをバーコーター#3を用いて塗工し100℃オーブンにて10秒間乾燥し塗工物を得た。
【0026】
実施例1〜2および比較例1〜2で得られた塗工物について、大腸菌(Escherichiacoli ATCC 8739)に対する抗菌性を下記の方法で試験した。結果を表2に示す。(1)作成塗工物を5cm×5cmの正方形に切り取って、紫外線により滅菌したものを試験試料とした。(2)試験菌液の調製細菌は、標準寒天培地に接種し、35℃、24時間培養後、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)を用い、菌液を作製した。酵母は、ポテトデキストロース寒天培地に接種し、C.albicansは35℃、24時間、R.rubraは25℃、72時間培養後、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)を用い、菌液を作製した。黴は、ポテトデキストロース寒天培地に接種し、25℃、7日〜10日培養後、tween80を0.05wt%添加した生理食塩水を用い、胞子懸濁液を作製した。菌数は、それぞれ105〜106CFU/mlになるように調製した。(3)試験菌液の接種調製した試験菌液0.3mlを試験試料に接種し、その上に被覆フィルムを被せた後、35℃、相対湿度90%以上の条件で24時間放置した。(4)生菌数の測定上記条件にて放置後、試験試料に接種した菌液を滅菌水で10倍希釈系列を作製した。これらの希釈液を細菌は、標準寒天培地に接種し、35℃、48時間培養した。酵母は、ポテトデキストロース寒天培地に接種し、C.albicansは35℃、24時間、R.rubraは25℃、72時間培養した。黴は、ポテトデキストロース寒天培地に接種し、25℃、1週間培養した。培養後、培地上に形成されたコロニーをカウントし、生菌数を算出した。
【0027】
【表2】

【0028】
通常、生菌数がブランク(比較例1、2)に比べて102CFU/ml減少すれば抗菌性があるとされるが、表2から明らかなように、本発明の塗工物は極めて強い抗菌性を示す。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性アルミノケイ酸塩またはその誘導体と銀イオンとが結合してなる抗菌抗黴剤粒子とバインダー樹脂を含有することを特徴とする抗菌抗黴性樹脂組成物。
【請求項2】
結晶性アルミノケイ酸塩が一般式(1)で表され、その平均粒子径が0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1記載の抗菌抗黴性樹脂組成物。
一般式(1)M2/nO・Na2O・Al2O・YSiO2・XH2O(M:銀、亜鉛イオン、Xモル分率で1〜15の数、Yはモル分率で2〜3の数)
【請求項3】
基材の少なくとも片面に、請求項1または2記載の抗菌抗黴性樹脂組成物からなる抗菌抗黴性塗工層を設けてなり、抗菌抗黴剤粒子の表面濃度が1×102 〜1×104 個/mm2 であることを特徴とする抗菌抗黴性塗工物。
【請求項4】
塗工層中の抗菌抗黴剤粒子の含有量が0.05〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の抗菌抗黴性塗工物。
【請求項5】
抗菌抗黴剤粒子の分散液をワニスまたは水溶性樹脂又は水溶性樹脂エマルジョン中に添加してなるコーティング剤を、基材の少なくとも片面に塗工することを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の抗菌抗黴性樹脂組成物と抗菌抗黴性塗工物及び塗工物の製造方法。
【請求項6】
オフセット印刷機及びコーティング装置を備えるオフセット印刷機を使用してワニスまたは樹脂エマルジョンをインラインで塗工することを特徴とする請求項5記載の抗菌性塗工物とその製造方法
【請求項7】
抗菌抗黴剤粒子が分解する前に、基材に塗工したコーティング剤を乾燥することを特徴とする請求項6記載の抗菌抗黴性塗工物の製造方法。















【公開番号】特開2006−206803(P2006−206803A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22875(P2005−22875)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】