説明

振れ測定装置、現像ローラの選別方法及び振れ測定方法

【課題】回転体の回転軸受け部の外径の変動と、回転体の測定部の外径の変動と、測定時の測定開始時点からの回転角度とを同時に計測し演算処理を活用することにより、高精度な振れ測定を行うことができ、振れによる悪影響を容易に評価可能にする。
【解決手段】胴部1bとジャーナル部1aとを有する現像ローラ1の振れを測定する装置に関する。現像ローラ1のジャーナル部1aをチャックするエアーチャック26と、現像ローラ1をエアーチャック26を介して回転させるためのモータ23及びギヤ23aと、現像ローラ1の回転角度を検出するロータリエンコード24と、胴部1bの外周の測定基準からの変化量情報及びジャーナル部1aの外周の測定基準からの変化量情報に基づいて、振れ量を演算処理するコンピュータ25とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体と回転軸とを有する回転体の振れを測定する装置に関し、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の乾式トナーを使用した電子写真方式の画像形成装置のうち現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ、定着ローラ等の精密ローラの振れを測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置の現像剤担持体の表面(現像スリーブ)は低速の場合を除き、溝加工またはサンドブラスト加工等の荒らし加工を施している。これは高速で回転する現像スリーブ上で現像剤がスリップし停滞、画像濃度の低下の発生を防止するためである。
【0003】
図14は現像ローラ及びユニット構造を示す図である。図14に示すように、現像ローラ1は内側に磁場発生手段3を持ち、外側に回転自在な現像スリーブ2を両端のフランジ(図示せず)にて固定してあり、現像装置上に軸受(図示せず)を介して固定してある。現像スリーブ2は現像剤規制部材である剤規制ブレード8及び感光体ドラム9と近接しており、現像スリーブ2に振れがあると剤規制ブレード8もしくは感光体ドラム9とのギャップが現像スリーブ2の回転周期で変動することになり、現像剤量のムラや現像能力のムラを生じてしまい結果として画像上に現像スリーブピッチのムラを生じてしまう。従って高画質を得るためには現像スリーブ2の振れ精度を高くする必要がある。なお、図14中、符号4は円筒状マグネット、符号5はマグネットブロック、符号6は磁束密度分布、符号7は攪拌ローラをそれぞれ示す。
【0004】
一方、上記のような高精度のローラ形状を測定する方法としてはテコ式ダイヤルゲージのような接触式の変位計とレーザ又はLEDを応用した非接触の変位計があるが、求められる精度が10μ以下となってきているため、非接触方式が主流となっている。
【0005】
この非接触方式の変位計を用いたものとして、特開平10−132552に示される振れの測定方法が現在広く用いられている。この従来の測定方法では、図15に示すように、ワークである感光体ドラム9のジャーナル部9aをVブロック10で受け、駆動ローラ(フリクションローラ)等により、ジャーナル部9a(もしくはジャーナル受け部)を回転させ、透過型レーザ測長機11により透過型のレーザを感光体ドラム9の被測定部にセットし、感光体ドラム9を連続的に数回転させた時のレーザ測定値の変動を振れ値として読込むものである。
【特許文献1】特開平10−132552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この方式では、以下の問題があった。第1に、ワーク受け部が回転する機構の場合、ワーク受け部振れの成分が、ワーク測定部の振れの測定値に含まれてしまう。従ってこの方法でワークを選別した場合、本来は良品であるワークを不良品判定してしまうので、ワークの生産性を低下することにつながるという問題があった。
【0007】
第2に、ワーク受け部が回転しない場合、ワーク受け部とワークジャーナル部とのこすれにより、ワークジャーナル部にキズを付けてしまうという問題があった。
【0008】
第3に、ワークの回転位相に対しての変動を測定することができないため、形状精度を“振れ”でしか表すことができず、真円度・同軸度といった要素に分解していないので、画像上のピッチムラなどに形状精度のどの要素が影響しているのか判らない。従ってこの方法でワークを選別した場合、本来は良品(画像上への影響度少ない)であるワークを不良品判定してしまうので、ワークの生産性を低下することにつながるという問題があった。
【0009】
特に、近年、注目されるようになってきた「トナー及び磁性粒子からなる二成分現像剤を用いて像担持体に形成された潜像を現像する高機能現像装置」(SLIC現像装置)は、二成分現像装置における画像上の問題を解決するものであるが、このSLIC現像装置に搭載される現像ローラ(マグネットローラ)においては、(イ)現像極の半値幅が20°以下(従来の2成分現像では約50°)であること、及び、(ロ)磁束密度が120〜140mT(従来の2成分現像は80〜120mT)であること、とされているので、SLIC現像装置では、振れの精度が厳しく、振れを測定する装置の精度を上げることが要望されていた。
【0010】
そこで、本発明は上記の問題点に対し、回転体の回転軸受け部の外径の変動と、回転体の測定部の外径の変動と、測定時の測定開始時点からの回転角度とを同時に計測し演算処理を活用することにより、高精度な振れ測定を行うことができ、振れによる悪影響を容易に評価可能にする振れ測定装置、現像ローラの選別方法及び振れ測定方法測定方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、本体と回転軸とを有する回転体の振れを測定する装置であって、前記回転体の回転軸をチャックするチャック機構と、前記回転体を前記チャック機構を介して回転させるための回転駆動機構と、前記回転体の回転角度を検出する角度検出機構と、前記本体の外周の測定基準からの変化量情報及び前記回転軸の外周の測定基準からの変化量情報に基づいて、振れ量を演算処理する演算処理装置とを備えていることを特徴とする振れ測定装置である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記振れ量の演算処理は、前記回転軸の外周の測定基準からの変化量に基づいて、前記回転軸の中心を求め、前記本体の外周の測定基準からの変化量と前記回転軸の中心の変化量との差を求めることを特徴とする請求項1に記載の振れ測定装置である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記本体の外周の測定基準からの変化量を前記本体の軸方向に異なる複数箇所で測定し、この測定値に基づいて真直度を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振れ測定装置である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記本体の任意の回転角度で、前記回転軸両端における外径をそれぞれ測定し、前記回転軸両端における外径の測定値情報と、前記本体の外径の測定値情報とから同軸度を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振れ測定装置である。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記本体の多数の回転角度で前記本体の外径をそれぞれ測定し、各回転角度における測定された外径の中点をそれぞれ求め、該外径の中点と外径表面との距離の最大値と最小値との差を真円度とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振れ測定装置である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、前記回転体が、プロセスカートリッジ又は電子写真装置に用いられる現像ローラであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の振れ測定装置である。
【0017】
請求項7に記載の発明は、前記プロセスカートリッジ又は電子写真装置に用いられる現像ローラを製造する際に、請求項6に記載の振れ測定装置を用いて測定された振れ量に応じて選別することを特徴とする現像ローラの選別方法である。
【0018】
請求項8に記載の発明は、本体と回転軸とを有する回転体の振れを測定する方法であって、前記本体の外周の測定基準からの変化量を検出する第1の変化量検出工程と、前記回転軸の外周の測定基準からの変化量を検出する第2の変化量検出工程と、前記第2の変化量検出工程により検出された変化量情報に基づいて、前記回転軸の中心を求める工程と、前記回転軸の中心を求める工程により求められた回転軸の中心の情報と第1の変化量検出工程により検出された変化量情報とから、前記本体の外周の測定基準からの変化量と前記回転軸の中心の変化量との差を求めることを特徴とする振れ測定方法である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1又は2に係る発明によれば、回転体の測定基準部分(回転軸)の振れ成分を除くことが可能となり、被測定部の振れの測定精度を向上させることができる。請求項3に係る発明によれば、回転体の真直度を算出することが可能である。請求項4に係る発明によれば、回転体の同軸度を算出することが可能である。請求項5に係る発明によれば、回転体の真円度を算出することが可能である。請求項6に係る発明によれば、画像形成装置で画像確認を行わなくてもムラの無い画像の得られる現像ローラを得ることができる。請求項7に係る発明によれば、画像形成装置で画像確認を行わなくてもムラの無い画像の得られる現像ローラを得ることができるため、現像ローラ及び画像形成装置の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係る一実施形態の振れ測定装置を示す概略図、図2は回転体の振れの測定原理を示す図であり、(A)は(B)図のA点における外径の測定点を示す図、(B)は変形を誇張して示した回転体を示す図、(C)は各点における中心の軌跡を示す図である。
【0021】
本発明における、ワークの振れの測定原理を図2に示す。図2(B)では、ワークである回転体の変形を誇張して示しているが、この変形による振れをジャーナル部1aの測定点A、胴部の測定点n、ジャーナル部1aの測定点Bを示している。図2(A)では、図2(B)の測定点Aにおけるジャーナル部1aの外径を変位測定器で測定する状態を示している。図2(C)では、左から、ジャーナル部1aの測定点Aにおける中心aの軌跡、胴部1bの測定点nにおける中心の軌跡、ジャーナル部1aの測定点Bにおける中心bの軌跡をそれぞれ示している。
【0022】
図2(B)に示すように、測定しようとしている「振れ」は、一方のジャーナル部1aの測定点Aと他方のジャーナル部1aの測定点Bを基準面としたときの、任意の胴部測定点の振れである。この振れは、図2(C)に示すように、空間上のジャーナル部1aの測定点Aの中心aとジャーナル部1aの測定点Bの中心bとを結んだ直線上の点Dと、任意の測定点nにおける胴部の中心Eとの差=Fである。
【0023】
従って、ジャーナル部1aの測定点Aの中心a、ジャーナル部1aの測定点Bの中心b及び任意の測定点nにおける胴部の中心Eのそれぞれの空間上の座標(X、Y、Z)がわかれば、Fが算出できる。
【0024】
今、ジャーナル部1aの測定点Aの中心a、ジャーナル部1aの測定点Bの中心b及び任意の測定点nにおける胴部の中心Eの測定手段(変位測定器)として、透過型の非接触式変位センサを図2(A)の様な方向にセットして測定する場合、ワークを回転させ、任意の回転角度θ°における、
ジャーナル部1aの測定点Aの外径の測定値L1、L1′を測定しその中点をA点における中心aと、
ジャーナル部1aの測定点Bの外径の測定値L2・L2′を測定しその中点をB点における中心bと、
任意の胴部測定点nの外径L3・L3′を測定しその中点をn点における中心Eと、
を回転角度0°〜360°まで、測定する。
【0025】
この時、中心aの変位と回転角度との軌跡は、図3の様になる。同様にして、中心bの変位と回転角度との軌跡は、図4の様になり、中心Eの変位と回転角度との軌跡は、図5の様になる。
【0026】
従って、ワークが回転することにより、中心a、中心b及び胴部測定点nの空間上の軌跡が、図2に示すようになっているとすると、図3に示すように、中心aの変位yが最大の時(回転角度θ1)の中心aの空間上の座標は、(x、y、z)=(0,0,za)となる。
【0027】
この時、中心b及び中心Eは、変位が最大の時の回転角度がθ2(図4参照)、θ3(図5参照)と異なるので、中心bの空間上の座標は、(x、y、z)=(0,zb2,zb1)、中心Eの空間上の座標は、(x、y、z)=(0,ze2,ze1)となり、
zb2=zb1×sin(θ1−θ2)
ze2=ze1×sin(θ1−θ3)
となる。
【0028】
従って、中心aの空間上の座標(x、y、z)=(0,0,za)と中心bの空間上の座標(x、y、z)=(Xb,zb2,zb1)とを結ぶ空間上の直線と、中心Eの空間上の座標(x、y、z)=(Xn,ze2,ze1)との距離が、測定点nにおける中心のずれ量となる。
Xb:中心aを0としたときの、中心aから中心bまでの、軸方向の距離
Xn:中心aを0としたときの、中心aから測定点の中心Eまでの、軸方向の距離
従って、測定点nにおける、見かけ上の振れの測定値から、中心のずれ量を差し引いた値が、測定点nにおける、ワークの本来の振れの値となる。
【0029】
ワークの回転位相(角度)を把握するためには、回転部材とワークとのスリップを防ぐ必要がある。そこで、ワークは両端の回転部材によりチャックし、回転部材が回転することにより連れ回り、回転する。変位センサは、ワーク中心に向いて配置され一定時間毎にデータ取り込みを行う。変位センサの種類は接触式の変位センサを用いることもできるが回転時の運動によって測定誤差が生じてしまう可能性があるため、レーザ光などを用いた非接触の透過型の変位センサを用いることが好ましい。
【0030】
このような原理を用いた振れ測定装置は、図1に示すように、チャック機構と、回転駆動機構と、角度検出機構と、変化量検出機構と、軸方向駆動及び位置検知手段と、A/D変換器(図示せず)と、演算処理装置とを備えている。
【0031】
チャック機構は、ワークの受け部を構成するものであり、本実施形態では、三爪のエアーチャック26により構成され、ワークを回動自在に水平に保持する。回転駆動機構は、エアーチャック26にギヤ23aを介して連結されるモータ23から構成されている。前記角度検出機構は、回転角度を検知するロータリエンコード24から構成されている。
【0032】
前記変化量検出機構は、ワークのジャーナル部1aの外径を測定するジャーナル部用の振れ補正用センサ22と、ワークの本体(胴部)の被測定部の外径を測定する胴部用の外径測定用センサ21とから構成されている。外径測定用センサ21と振れ補正用センサ22とは共に、透過型のセンサを用いている。
【0033】
軸方向駆動及び位置検知手段は、一軸アクチュエータ28から構成され、一軸アクチュエータ28上に取り付けられ、矢印方向に移動自在なスライドベース30を有し、このスライドベース30上に外径測定センサ21が固定されている。したがって、外径測定用センサ21は、一軸アクチュエータ28により、ワークの軸方向に駆動されるとともに、軸方向の位置が検知される。一軸アクチュエータ28として、本実施形態では、日本精工社製の「メガスラストモータ(型式:YA11084903+EMLYA1CF3)」を用いた。
【0034】
A/D変換器(図示せず)は、アナログ量をデジタル量に変換するためのものであり、アナログ情報量をコンピュータ25で演算処理するための入力インターフェース装置として使用される。演算処理装置は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ25から構成されている。なお、図1中、符号29はロータリジョイント、符号31はガイドレール、符号32はストッパである。
【0035】
図6は本発明に係る一実施形態の振れ測定装置の動作フローを示す図である。ステップS1では、現像ローラ1を仮受け台に水平にセットする。次に、ステップS2では、現像ローラ1のジャーナル部1aをエアーチャック26で保持する。次に、ステップS3では、仮受け台を下降させる。次に、ステップS4では、胴部測定用レーザ変位計である外径測定用センサ21を一軸アクチュエータ28を介して、現像ローラ1の胴部1bの測定位置に移動する。次に、ステップS5では、モータ23及びギヤ23aを介して現像ローラ1を回転し、現像ローラ1の回転に同期してデータを取り込む。取り込まれたデータはステップS8にて、後述する演算フローにて演算される。次に、ステップS6では、仮受け台を上昇させて現像ローラ1を支持する。次に、ステップS7では、エアーチャック26を解放する。
【0036】
図7は本発明に係る一実施形態の振れ測定装置の演算フローを示す図である。ステップS81では、データを取り込む。ステップS82では、各角度毎の、ジャーナル部1aの測定点Aにおける外径の測定値L1、L1′の中点を中心a、ジャーナル部1aの測定点Bにおける外径の測定値L2、L2′の中点を中心b、任意の測定点nにおける胴部1bの外径の測定値L3、L3′の中点を中心Eとする。ステップS83では、ジャーナル部1aの測定点Aにおける中心a、ジャーナル部1aの測定点Bにおける中心b、任意の測定点nにおける胴部の中心Eの空間座標を計算する。ステップS84では、中心a、中心bを通る直線を求める。ステップS85では、ステップS84で求めた直線と中心Eとから中心のずれ量を計算する。ステップS86では、見かけ上の振れの測定値から中心のずれ量を差し引く。
【0037】
測定対象の現像ローラ1としては、本実施形態では、胴部外径φ25のものを用い、10°ピッチで測定を行った。測定して得られた生データ及び、前述の測定原理に基づき胴部測定値を補正したデータを図8に示す。
【0038】
上記の現像ローラ1において3次元測定機により測定した振れの値を重ねてプロットすると、図8に示すような関係が見られた。この結果から補正により、ジャーナル部1aの振れ成分が、胴部振れの測定値から除去されることが確認された。
【0039】
真直度・同軸度・真円度を測定する場合の実施例を以下に示す。「真直度」は、任意の回転角度θ°において、胴部の測定を少なくとも2点以上測定し、ジャーナル部の振れを補正した各胴部測定点の外径の測定値L3n−F・L3′n−Fを求め、その差の最大値G=(max|L3n−F|)−(min|L3n−F|)
(n=1〜k:各胴部測定点)
を計算する。
【0040】
「同軸度」は、任意の回転角度θ°において、両側のジャーナル部1aの測定点A及び測定点Bにおける外径を測定し、ジャーナル部1aの測定点Aの外径の測定値L1・L1′を測定しその中点を測定点Aにおける中心aとし、ジャーナル部1aの測定点Bの外径の測定値L2・L2′を測定しその中点を測定点Bにおける中心bとし、胴部1bの任意の測定点nの外径L3・L3′を測定しその中点を測定点nにおける中心Eとし、これらを回転角度0°〜360°まで、測定する。
【0041】
この時、中心aの空間上の座標(x、y、z)=(0,0,za)と中心bの空間上の座標(x、y、z)=(0,zb2,zb1)とを結ぶ空間上の直線と、中心Eの空間上の座標(x、y、z)=(0,ze2,ze1)との距離を計算する。この距離の最大値が同軸度となる。
【0042】
「真円度」は、任意の回転角度θ°における、胴部1bの任意の測定点nの外径L3・L3′を測定しその中点を測定点nにおける中心Eを回転角度0°〜360°まで、測定する。
【0043】
L3/2の各回転角度におけるL3/2の値の差の最大値を計算する。上述したように、同様に、現像ローラ1の測定を行い、上記の計算を行った。以上の各測定値が、回転角度毎にわかるため、現像ローラ1の形状を把握することができ、画像上のピッチムラなどに形状精度のどの要素が影響しているのかがわかる。
【0044】
図9は本発明の他の実施形態に係る、回転体の振れの測定原理を示す図であり、(A)は(B)図のA点における外径の測定点を示す図、(B)は変形を誇張して示した回転体を示す図、(C)は胴部の測定位置nにおける軌跡を示す図である。本実施形態においては、ハードウエア構成は、図1に示したように、最初の一実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0045】
測定しようとしている「振れ」は、上述した一実施形態と同様に、ジャーナル部1aの測定点Aと測定点Bを基準面としたときの、任意の胴部測定位置の振れである。
【0046】
これは、空間上のジャーナル部1aの測定点Aの中心aとジャーナル部1aの測定点Bの中心bとを結んだ直線上の点Dと、任意の測定点nにおける胴部1bの表面の中心Eとの距離Fの最大値−最小値である。
【0047】
従って、各回転角度における、ジャーナル部1aの測定点Aの中心a・ジャーナル部1aの測定点Bの中心b・任意の測定点nでの胴部の表面の中心Eの空間上の座標(X、Y、Z)がわかれば、Fが算出できる。
【0048】
今、ジャーナル部1aの測定点Aの中心a・ジャーナル部1aの測定点Bの中心b・任意の測定点nにおける胴部1bの中心Eの測定手段として、透過型の非接触式変位センサを図9の様な方向にセットして、測定する場合、現像ローラ1を回転させ、任意の回転角度θ°における、
ジャーナル部1aの測定点Aの外径の測定値L1・L1′を測定しその中点を測定点Aにおける中心a、
ジャーナル部1aの測定点Bの外径の測定値L2・L2′を測定しその中点を測定点Bにおける中心b、
胴部1bの任意の測定点nの外径の測定値L3・L3′を測定しその上面を測定点nにおける表面E、
とし、回転角度0°〜360°まで測定する。
【0049】
この時、中心aの変位と回転角度との軌跡は、図3の様になる。同様にして、中心bの変位と回転角度との軌跡は、図4の様になる。表面の中心Eの変位と回転角度との軌跡は、図5の様になる。
【0050】
最初の一実施形態と同様に、現像ローラ1が回転することにより、中心a・中心b・胴部1bの測定点nの空間上の軌跡が、図9の様になっているとすると、
中心aの変位yが最大の時(回転角度θ1)の中心aの空間上の座標は、(x、y、z)=(0,0,za)となる。
【0051】
この時、中心aは、zaだけ偏芯しながら回転していると考えると、各回転角度における、中心aの空間上の座標は、(x、y、z)=(0,Yaθ,zaθ)、
zaθ=zacos(θ1−θ) θ:回転角度、
Yaθ=zasin(θ1−θ) θ:回転角度、
と算出される。(図10)
【0052】
また、中心aの変位yが最大の時(回転角度θ1)、中心bは、変位が最大の時の回転角度がθ2と異なるので、中心bの空間上の座標は、(x、y、z)=(0,Yb1,zb1)、
Yb1=zb2×sin(θ1−θ2)
となる。(図11)
【0053】
中心bも、中心aと同様に、zb1だけ偏芯しながら回転していると考えると、各回転角度における、中心bの空間上の座標は、(x、y、z)=(Xb,Ybθ,zbθ)、
zbθ=zb2cos(θ2−θ) θ:回転角度、
Ybθ=zb2sin(θ2−θ) θ:回転角度、
と算出される。
【0054】
従って、測定点nにおける、中心aの空間上の座標(x、y、z)=(0,Yaθ,zaθ)と中心bの空間上の座標(x、y、z)=(Xb,Ybθ,zbθ)とを結ぶ直線上の、測定点nにおける、空間上の座標(x、y、z)=(Xn,Ynθ,znθ)は、空間上の直線の方程式より、
(Xn−0)/(Xb−0)=(Ynθ−Yaθ)/(Ybθ−Yaθ)=(znθ−zaθ)/(zbθ−zaθ)から、
Ynθ=Yaθ+(Ybθ−Yaθ)*(Xn/Xb)、
znθ=zaθ+(zbθ−zaθ)*(Xn/Xb)、
と算出される。
【0055】
また、図12に示すように、測定点nにおける、外形は、ローラ外周面の上面と下面との中点をローラ中心とすると、各回転角度毎の、ローラ外周面の上面とローラ中心との距離を、ローラ中心を中心に、プロットした形で表される。
【0056】
この外形形状を持った現像ローラ1における、中心aと中心bとを結ぶ直線上の、測定点nにおける、空間上の座標(=現像ローラの回転中心)とローラ外周面の座標との距離の最大値−最小値が、振れの値となる。
【0057】
ローラ外周面の座標は、Y−Z平面上において、回転角度θ°の時、ローラ外周面の上面と中心との距離=Lθとすると、
(Y,Z)=(Lθcos(π/2−θ3)、Lθsin(π/2−θ3))
となるので、
振れの値は、Fmax−Fmin:F=√((Y2−Ynθ2)+(Z2−znθ2))
で表される。
【0058】
図13は本発明に係る他の実施形態の振れ測定装置の演算フローを示す図である。なお、動作フローは最初の一実施形態と同様であるので、省略する。図13に示すように、ステップS91では、データ取り込み:za、θ、ローラ外周面の上面と中心の測定値を取り込む。次に、ステップS92では、データの移動平均化処理を行う。次に、ステップS93では、回転角度θ1、回転角度θ2、ローラ外周面の上面と中心との距離=Lθを計算する。次に、ステップS94では、各回転角度における、中心aの空間上の座標、(x、y、z)=(0,Yaθ,zaθ)を計算する。
zaθ=zacos(θ1−θ) θ:回転角度
Yaθ=zasin(θ1−θ) θ:回転角度
【0059】
次に、ステップS95では、中心bの空間上の座標、(x、y、z)=(Xb,Ybθ,zbθ)を計算する。
zbθ=zb2cos(θ2−θ) θ:回転角度
Ybθ=zb2sin(θ2−θ) θ:回転角度
【0060】
次に、ステップS96では、測定点nにおける、中心aの空間上の座標と中心bの空間上の座標とを結ぶ直線上の、空間上の座標(x、y、z)=(Xn,Ynθ,znθ)を計算する。
Ynθ=Yaθ+(Ybθ−Yaθ)*(Xn/Xb)
znθ=zaθ+(zbθ−zaθ)*(Xn/Xb)
【0061】
次に、ステップS97では、ローラ外周面の座標計算を行う。
(Y,Z)=(Lθcos(π/2−θ3)、Lθsin(π/2−θ3))
【0062】
次に、ステップS98では、振れの値=Fmax−Fmin:F=√((Y2−Ynθ2)+(Z2−znθ2))を計算する。
【0063】
本実施形態においても、一実施形態と同様に、対象ワークとしては胴部外径φ25のものを用い、10°ピッチで測定を行った。測定して得られた生データ及び、前述の測定原理に基づき胴部測定値を補正したデータは図8と同様の傾向を有する結果であった。この結果から補正により、ジャーナル部の振れ成分が、胴部振れの測定値から除去されることが確認された。
【0064】
上述したように、本発明に係る振れ測定装置によれば、ムラのない画像が得られる電子写真装置を提供することができる。また、円筒形状のワークの胴部の振れを精度良く測定することができる。また、円筒形状のワークの形状プロファイルから真直度といった形状パラメータを計算することを可能にすることができる。さらに、濃度ムラの無い画像が得られる現像ローラを容易に選別するための選別方法を提供することができる。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではいずれもワークとして、現像ローラの場合について説明したが、帯電ローラ、転写ローラ、定着ローラ等の精密ローラの振れの測定にも適用できる。また、これらのローラ以外にも、回転軸を有する回転体の振れの測定にも適用できる。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る一実施形態の振れ測定装置を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る、回転体の振れの測定原理を示す図であり、(A)は(B)図のA点における外径の測定点を示す図、(B)は変形を誇張して示した回転体を示す図、(C)は各点における中心の軌跡を示す図である。
【図3】中心aの変位と回転角度との軌跡を示す図である。
【図4】中心bの変位と回転角度との軌跡を示す図である。
【図5】中心Eの変位と回転角度との軌跡を示す図である。
【図6】本発明に係る一実施形態の振れ測定装置の動作フローを示す図である。
【図7】本発明に係る一実施形態の振れ測定装置の演算フローを示す図である。
【図8】胴部測定値を補正したデータを示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る、回転体の振れの測定原理を示す図であり、(A)は(B)図のA点における外径の測定点を示す図、(B)は変形を誇張して示した回転体を示す図、(C)は胴部の測定位置nにおける軌跡を示す図である。
【図10】本発明に係る他の実施形態の振れ測定装置に係る中心Aの偏心を説明するための図である。
【図11】中心bの空間上の座標を示す図である。
【図12】回転体外周面の上面と中心との距離と、中心の偏心量との和を各回転角度毎に360°プロットした軌跡を示す図である。
【図13】本発明に係る他の実施形態の振れ測定装置の演算フローを示す図である。
【図14】現像ローラ及びユニット構造を示す図である。
【図15】従来の振れ測定装置の概略図である。
【符号の説明】
【0067】
1 現像ローラ(回転体)
2 現像スリーブ
3 磁場発生手段
4 円筒状マグネット
5 マグネットブロック
6 磁束密度分布
7 攪拌ローラ
8 剤規制ブレード
9 感光体ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と回転軸とを有する回転体の振れを測定する装置であって、前記回転体の回転軸をチャックするチャック機構と、前記回転体を前記チャック機構を介して回転させるための回転駆動機構と、前記回転体の回転角度を検出する角度検出機構と、前記本体の外周の測定基準からの変化量情報及び前記回転軸の外周の測定基準からの変化量情報に基づいて、振れ量を演算処理する演算処理装置とを備えていることを特徴とする振れ測定装置。
【請求項2】
前記振れ量の演算処理は、前記回転軸の外周の測定基準からの変化量に基づいて、前記回転軸の中心を求め、前記本体の外周の測定基準からの変化量と前記回転軸の中心の変化量との差を求めることを特徴とする請求項1に記載の振れ測定装置。
【請求項3】
前記本体の外周の測定基準からの変化量を前記本体の軸方向に異なる複数箇所で測定し、この測定値に基づいて真直度を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振れ測定装置。
【請求項4】
前記本体の任意の回転角度で、前記回転軸両端における外径をそれぞれ測定し、前記回転軸両端における外径の測定値情報と、前記本体の外径の測定値情報とから同軸度を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振れ測定装置。
【請求項5】
前記本体の多数の回転角度で前記本体の外径をそれぞれ測定し、各回転角度における測定された外径の中点をそれぞれ求め、該外径の中点と外径表面との距離の最大値と最小値との差を真円度とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振れ測定装置。
【請求項6】
前記回転体が、プロセスカートリッジ又は電子写真装置に用いられる現像ローラであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の振れ測定装置。
【請求項7】
前記プロセスカートリッジ又は電子写真装置に用いられる現像ローラを製造する際に、請求項6に記載の振れ測定装置を用いて測定された振れ量に応じて選別することを特徴とする現像ローラの選別方法。
【請求項8】
本体と回転軸とを有する回転体の振れを測定する方法であって、
前記本体の外周の測定基準からの変化量を検出する第1の変化量検出工程と、
前記回転軸の外周の測定基準からの変化量を検出する第2の変化量検出工程と、
前記第2の変化量検出工程により検出された変化量情報に基づいて、前記回転軸の中心を求める工程と、
前記回転軸の中心を求める工程により求められた回転軸の中心の情報と第1の変化量検出工程により検出された変化量情報とから、前記本体の外周の測定基準からの変化量と前記回転軸の中心の変化量との差を求めることを特徴とする振れ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−17510(P2006−17510A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193686(P2004−193686)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】