説明

振動片、振動子、発振器及び電子機器

【課題】Q値の低下を抑制可能な振動片、この振動片を備えた、振動子、発振器及び電子機器の提供。
【解決手段】水晶振動片1は、基部10と、基部10からY軸方向に延びる振動腕11a,11b,11cと、を備え、各振動腕は、平面視において、Y軸方向と直交するX軸方向に腕幅Wを有し、且つ、各振動腕の主面10aに、主面10aと直交するZ軸方向に各振動腕を振動させる励振電極12a,12b,12cが設けられ、各励振電極からは、基部10に向けて配線13a,13b,13cが引き出され、各配線は、X軸方向の幅W2が各励振電極のX軸方向の幅W1よりも狭い幅狭領域13a1,13b1,13c1を有し、各幅狭領域のY軸方向における範囲Xは、各振動腕と基部10との境界を基点として、各振動腕のY軸方向の全長をLとしたとき、基点から基部10側へ少なくとも0.1L以内であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動片、この振動片を備えた、振動子、発振器及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動片としては、第1方向へ向けて配置された第1面を有し、第1方向と交差する第2方向に沿って配列された3個の腕部(以下、振動腕という)と、この振動腕の各々の第1面上に1個ずつ設けられた圧電体素子(励振部)と、振動腕の一端を連結する基部と、を備えた音叉型振動子(以下、振動片という)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−5022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、振動片は、小型化の進展によりQ値(振動の状態を現す無次元数であって、この値が大きいほど振動が安定であることを意味する)の低下の抑制が課題となっている。
上記特許文献1の振動片は、振動腕が上記第1面と直交する方向(第3方向)に屈曲振動する振動形態(面外振動モード)の構成となっており、中央の振動腕と両側の振動腕との振動方向を互いに逆方向(逆相)にして、両者の振動のバランスを取ることにより、Q値の低下の抑制(換言すれば、Q値の向上)を図るというものである。
【0005】
しかしながら、上記振動片は、実施の形態において振動腕の励振部から基部側に延びる配線部分の第2方向の幅が、励振部の第2方向の幅と同一になるように形成されている。
発明者らの解析によれば、上記振動片は、配線部分の第2方向の幅が、励振部の第2方向の幅と同一になるように形成されている構成によって、Q値の低下が助長されている虞がある(解析結果の詳細は後述する)。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる振動片は、基部と、前記基部から第1方向に延びる振動腕と、を備え、前記振動腕は、平面視において、前記第1方向と直交する第2方向に腕幅を有し、且つ、前記第1方向と前記第2方向とで特定される平面に沿った前記振動腕の主面の少なくとも一方に、前記主面と直交する第3方向に前記振動腕を振動させる励振部が設けられ、前記励振部からは、前記基部に向けて配線が引き出され、前記配線は、前記第2方向の幅が前記励振部の前記第2方向の幅よりも狭い幅狭領域を有し、前記幅狭領域の前記第1方向における範囲は、前記振動腕と前記基部との境界を基点として、前記振動腕の前記第1方向の全長をLとしたとき、前記基点から前記基部側へ少なくとも0.1L以内であることを特徴とする。
【0008】
これによれば、振動片は、励振部から基部に向けて配線が引き出され、配線は第2方向の幅が励振電極の第2方向の幅よりも狭い幅狭領域を有し、幅狭領域の第1方向の範囲が、振動腕と基部との境界を基点として、振動腕の全長をLとしたとき、基点から基部側へ少なくとも0.1L以内である。
発明者らの、シミュレーションや実験による解析結果などから得た知見によれば、振動片は、配線の幅狭領域の第1方向の範囲が、上記範囲内であることにより、配線に幅狭領域を有しない従来構成と比較して、Q値の低下を抑制することができる(解析結果の詳細は後述する)。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる振動片において、前記励振部は、前記主面側に設けられた第1電極と、前記第1電極の上方に設けられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた圧電体と、を備えたことが好ましい。
【0010】
これによれば、振動片は、励振部が第1電極と、第1電極の上方に設けられた第2電極と、両電極間に設けられた圧電体と、を備えたことから、励振部自体の伸縮によって振動腕を振動させることができる。
従って、振動片は、基材(構成の基本となる材料)に必ずしも圧電材料を用いる必要がないことから、基材の選択肢が広がり、例えば、シリコンなどの半導体材料を基材として用いることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる振動片において、前記励振部及び前記配線の少なくとも一方が、前記第2方向に並ぶように分割され、分割された前記励振部及び前記配線のそれぞれは、前記振動腕の前記第1方向に延びる一対の辺または前記一対の辺の延長線のそれぞれに近接するように分散配置されていることが好ましい。
【0012】
これによれば、振動片は、励振部及び配線の少なくとも一方が分割され、分割された励振部及び配線のそれぞれが、振動腕の第1方向に延びる一対の辺または一対の辺の延長線のそれぞれに近接するように分散配置されている。
このことから、振動片は、振動腕の振動に伴い発生する応力が他の部分より大きい、振動腕の第1方向に沿った中心部分または基部における上記中心部分の第1方向に沿った延長部分に、励振部または配線が殆ど設けられていないことになる。
従って、振動片は、振動腕に励振部及び配線が設けられることによる応力増加を緩和して、振動腕を効率的に振動させることにより、Q値の低下を抑制することができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる振動片において、前記振動腕の前記第2方向の前記腕幅をW、前記励振部の前記第2方向の幅をW1としたとき、0.3≦W1/W<1.0であることが好ましい。
【0014】
これによれば、振動片は、振動腕の第2方向の腕幅をW、励振部の第2方向の電極幅をW1としたとき、0.3≦W1/W<1.0であることから、励振部による振動腕の効率的な振動によって発熱量(温度差)が減少し、熱弾性損失(屈曲振動する振動片の圧縮部(温度が高くなる)と伸張部(温度が低くなる)との間で発生する熱伝導(温度平衡化現象)により生じる振動エネルギーの損失)が抑制され、上記範囲外の振動片よりもQ値を向上させることができる。
なお、上記範囲は、発明者らがシミュレーションや実験による解析結果などから得た知見に基づいて設定したものである。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる振動片において、前記基部は、前記第3方向の厚さが異なる肉薄部と肉厚部とを有し、前記肉薄部が前記振動腕と接続されていることが好ましい。
【0016】
これによれば、振動片は、基部が第3方向の厚さが異なる肉薄部と肉厚部とを有し、肉薄部が振動腕と接続されていることから、振動腕の振動に伴い生じる応力が、振動腕の根元部に集中することなく肉薄部にも分散することによって緩和される。
この結果、振動片は、振動腕を効率的に振動させることが可能となることから、Q値の低下を抑制することができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかる振動片において、前記振動腕を複数備えたことが好ましい。
【0018】
これによれば、振動片は、振動腕を複数備えたことから、例えば、隣り合う振動腕の振動方向を互いに逆方向(逆相)にすることによって、力学的にバランスのとれた振動とすることができる。
この結果、振動片は、振動腕から基部への振動漏れが低減され、Q値の低下を抑制することができる(換言すれば、Q値を向上させることができる)。
【0019】
[適用例7]本適用例にかかる振動子は、上記適用例のいずれかに記載の振動片と、前記振動片を収容したパッケージと、を備えたことを特徴とする。
【0020】
これによれば、振動子は、上記適用例のいずれかに記載の振動片と、振動片を収容したパッケージと、を備えたことから、上記適用例のいずれかに記載の効果を奏する振動子を提供することができる。
【0021】
[適用例8]本適用例にかかる発振器は、上記適用例のいずれかに記載の振動片と、前記振動片を発振させる発振回路と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
これによれば、発振器は、上記適用例のいずれかに記載の振動片と、振動片を発振させる発振回路と、を備えたことから、上記適用例のいずれかに記載の効果を奏する発振器を提供することができる。
【0023】
[適用例9]本適用例にかかる電子機器は、上記適用例のいずれかに記載の振動片を備えたことを特徴とする。
【0024】
これによれば、電子機器は、上記適用例のいずれかに記載の振動片を備えたことから、上記適用例のいずれかに記載の効果を奏する電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態の水晶振動片の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線での断面図。
【図2】図1(a)のB−B線での断面図及び各励振電極の配線図。
【図3】水晶振動片のQ値と電極の形成位置との関係を示すグラフ。
【図4】水晶振動片のQ値と励振電極のX軸方向の電極幅W1/振動腕のX軸方向の腕幅Wとの関係を示すグラフ。
【図5】Q値を10000以上にする場合の水晶振動片の抵抗値とW1/Wとの関係を示すグラフ。
【図6】変形例1の水晶振動片の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線での断面図、(c)は(a)のD−D線での断面図。
【図7】変形例2の水晶振動片の概略構成を示す模式平面図。
【図8】変形例3の水晶振動片の概略構成を示す模式平面図。
【図9】第2実施形態の水晶振動子の概略構成を示す模式図であり、(a)はリッド(蓋体)側から俯瞰した平面図、(b)は(a)のE−E線での断面図。
【図10】第3実施形態の水晶発振器の概略構成を示す模式図であり、(a)はリッド側から俯瞰した平面図、(b)は(a)のE−E線での断面図。
【図11】第4実施形態の携帯電話を示す模式斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
(第1実施形態)
最初に、振動片の一例として、基材に水晶を用いた水晶振動片について説明する。
図1は、第1実施形態の水晶振動片の概略構成を示す模式図である。図1(a)は、平面図、図1(b)は、図1(a)のA−A線での断面図である。なお、各配線は関係部分を除き省略してあり、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
【0028】
図1に示すように、水晶振動片1は、基部10と、基部10から第1方向としての水晶結晶軸のY軸方向に延びる3本の振動腕11a,11b,11cと、を備えている。
基部10は、パッケージなどの外部部材に固定されることから、所定の剛性(強度)を確保するために、振動腕11a,11b,11cよりも厚く形成された肉厚部10cと、振動腕11a,11b,11cと略等しい厚さの肉薄部10dとを有し、肉厚部10cよりも厚さが薄い肉薄部10dが振動腕11a,11b,11cと接続されている。
【0029】
振動腕11a,11b,11cは、略角柱状に形成され、平面視において、Y軸方向と直交する第2方向としての水晶結晶軸のX軸方向に腕幅Wを有している。
振動腕11a,11b,11cは、Y軸方向とX軸方向とで特定される平面に沿った主面10a,10bの少なくとも一方に(ここでは主面10aに)、主面10aと直交する第3方向としての水晶結晶軸のZ軸方向(図1(b)の矢印方向)に振動腕11a,11b,11cを屈曲振動(面外振動:主面10aに沿わない方向の振動)させる励振部としての励振電極12a,12b,12cが設けられている。
【0030】
励振電極12a,12b,12cからは、基部10に向けて配線13a,13b,13cが引き出されている。
配線13a,13b,13cは、X軸方向の幅W2が励振電極12a,12b,12cのX軸方向の幅W1よりも狭い幅狭領域13a1,13b1,13c1を有している(W1>W2)。
幅狭領域13a1,13b1,13c1のY軸方向における範囲Xは、振動腕11a,11b,11cと基部10(肉薄部10d)との境界を基点として、振動腕11a,11b,11cのY軸方向の全長をLとしたとき、基点から基部10側へ少なくとも0.1L以内に設定されている。
具体的には、例えば、振動腕11a,11b,11cの全長Lが300μmの場合、幅狭領域13a1,13b1,13c1のY軸方向における範囲Xは、少なくとも30μm以内となる。
【0031】
水晶振動片1は、振動腕11a,11b,11cのX軸方向の腕幅Wと励振電極12a,12b,12cのX軸方向の幅W1との関係が、0.3≦W1/W<1.0となるように構成されている。
【0032】
励振電極12a,12b,12cは、主面10a側に設けられた第1電極12a1,12b1,12c1と、第1電極12a1,12b1,12c1の上方に設けられた第2電極12a2,12b2,12c2と、第1電極12a1,12b1,12c1と第2電極12a2,12b2,12c2との間に設けられた圧電体14と、第2電極12a2,12b2,12c2と圧電体14との間に設けられた絶縁体15と、を備えた積層構造となっている。
なお、絶縁体15は、配線13a,13b,13c部分における各第1電極(12a1など)と各第2電極(12a2など)との間にも設けられている。
【0033】
励振電極12a,12b,12cの第1電極12a1,12b1,12c1、第2電極12a2,12b2,12c2には、例えば、Cr、Au、Ti/Au、ITOなどの導電性の高い金属の膜が用いられ、圧電体14には、例えば、ZnO、AlN、PZTなどの圧電性の高い圧電材料の膜が用いられ、絶縁体15には、例えば、SiO2などの絶縁性の高い絶縁材料の膜が用いられている。
なお、励振電極12a,12b,12cは、振動腕11a,11b,11cと基部10との境界部分(基点)から振動腕11a,11b,11cの先端側に延びるように設けられているのが好ましい。
【0034】
ここで、水晶振動片1の動作について説明する。
図2は、図1(a)のB−B線での断面図及び各励振電極の配線図である。
図2に示すように、水晶振動片1の励振電極12a,12b,12cは、第1電極12a1,12b1,12c1と第2電極12a2,12b2,12c2とが交差配線によって交流電源に接続され、駆動電圧としての交番電圧が印加されるようになっている。
【0035】
具体的には、振動腕11aの第1電極12a1と、振動腕11bの第2電極12b2と、振動腕11cの第1電極12c1と、が同電位になるように接続され、振動腕11aの第2電極12a2と、振動腕11bの第1電極12b1と、振動腕11cの第2電極12c2と、が同電位になるように接続されている。
【0036】
この状態で、第1電極12a1,12b1,12c1と第2電極12a2,12b2,12c2との間に交番電圧を印加すると、第1電極12a1,12b1,12c1と第2電極12a2,12b2,12c2との間に電界が発生し、逆圧電効果により、圧電体14に歪みが生じ、圧電体14がY軸方向に伸縮する。
水晶振動片1は、上記交差配線によって励振電極12a,12cと励振電極12bとに発生する電界の方向を互いに逆方向にして、圧電体14の伸縮が、振動腕11a,11cと振動腕11bとの間で逆になるように構成されている。具体的には、振動腕11a,11cの圧電体14が伸張したとき、振動腕11bの圧電体14が収縮し、振動腕11a,11cの圧電体14が収縮したとき、振動腕11bの圧電体14が伸張するように構成されている。
【0037】
このような圧電体14の伸縮によって、水晶振動片1は、交番電圧が一方の電位のときに振動腕11a,11b,11cが実線矢印の方向に屈曲し、交番電圧が他方の電位のときに振動腕11a,11b,11cが破線矢印の方向に屈曲する。
これを繰り返すことで、水晶振動片1は、振動腕11a,11b,11cがZ軸方向に屈曲振動(面外振動)をすることになる。この際、隣り合う振動腕(ここでは、11aと11b、11bと11c)は、互いに逆方向に(逆相で)屈曲振動する。
【0038】
上述したように、第1実施形態の水晶振動片1は、振動腕11a,11b,11cがZ軸方向(厚さ方向)に屈曲振動する振動形態であって、励振電極12a,12b,12cから基部10に向けて配線13a,13b,13cが引き出されている。
そして、水晶振動片1は、配線13a,13b,13cが、X軸方向の幅W2が励振電極12a,12b,12cのX軸方向の幅W1よりも狭い幅狭領域13a1,13b1,13c1を有している。
そして、水晶振動片1は、幅狭領域13a1,13b1,13c1のY軸方向の範囲Xが、振動腕11a,11b,11cと基部10との境界を基点として、振動腕11a,11b,11cの全長をLとしたとき、基点から基部10側へ少なくとも0.1L以内に設定されている。
【0039】
この構成とすることで、水晶振動片1は、発明者らのシミュレーションや実験による解析結果などから得た知見によれば、配線13a,13b,13cの幅狭領域13a1,13b1,13c1のY軸方向の範囲Xが、上記範囲内であることによって、配線に幅狭領域を有しない従来構成と比較して、Q値の低下を抑制することができる。
【0040】
上記に関してグラフを用いて説明する。
図3は、水晶振動片のQ値と電極の形成位置との関係を示すグラフである。
図3の横軸は、振動腕のY軸方向の全長をLとしたときの、基点から電極までの距離を表し、基点から振動腕側を+○Lで表し、基点から基部側を−○Lで表す。図3の縦軸は、Q値を表す。
なお、図3のグラフは、発明者らのシミュレーションや実験による解析結果に基づいて作成されたものである。
なお、上記電極は、従来品においては振動腕の腕幅Wと同じ幅で形成され、本実施形態品においては、従来品の電極の幅より狭い幅で形成されているという設定である。
【0041】
図3に示すように、従来品は、電極の形成位置が基部に近づくに連れてQ値が低下し、このQ値の低下が、電極が基部に入り込んだ状態である−0.1L程度まで続き(例えば、−0.1LにおけるQ値:約5500)、その後、Q値が向上に転じている。
一方、本実施形態品は、電極の形成位置が0.3L〜―0.2Lの範囲、少なくとも0〜−0.1Lの範囲において、従来品よりQ値の低下が抑制されていることが分かる(例えば、−0.1LにおけるQ値:約6000)。
これにより、水晶振動片1は、配線13a,13b,13cの幅狭領域13a1,13b1,13c1の、Y軸方向における範囲Xの設定の妥当性が裏付けられたといえる。
【0042】
また、水晶振動片1は、振動腕11a,11b,11cのX軸方向の腕幅をW、励振電極12a,12b,12cのX軸方向の幅をW1としたとき、0.3≦W1/W<1.0であることから、励振電極12a,12b,12cによる振動腕11a,11b,11cの効率的な振動によって発熱量(温度差)が減少し、熱弾性損失が抑制され、上記範囲外の振動片よりもQ値を向上させることができる。
なお、上記範囲は、発明者らがシミュレーションや実験による解析結果などから得た知見に基づいて設定したものである。
【0043】
上記に関してグラフを用いて説明する。
図4は、水晶振動片のQ値と、励振電極のX軸方向の電極幅W1/振動腕のX軸方向の腕幅Wとの関係を示すグラフである。
なお、図4においては、横軸がW1/Wを表し、縦軸が、W1/W=1のときのQ値を1として、Q値の変化を指数で表している。
【0044】
図4に示すように、W1/Wについては、0.1以上〜1未満の範囲において、1から0.3強まで減少するに連れてQ値が漸増し、0.3強から0.1にかけてQ値が急増している。
しかしながら、W1/Wが0.1以上〜0.3未満の範囲においては、通常の駆動電力下での励振電極12a,12b,12cに生じる電界が、圧電体14の伸縮によって振動腕11a,11b,11cを安定して振動させ得る電界強度に達しない虞があることから、この範囲を除外することが好ましい。
【0045】
この点に関して具体例を挙げると、図5は、Q値を10000以上にする場合の水晶振動片の抵抗値とW1/Wとの関係を示すグラフである。
図5に示すように、例えば、Q値を実用上十分な値である10000以上にするためには、水晶振動片の抵抗値を100kΩ以下にして、振動腕11a,11b,11cを安定して振動させ得る電界強度を得る必要がある。
図5によれば、これを満たすW1/Wの範囲は、0.3以上であることが分かる。
従って、W1/Wについては、0.3以上〜1.0未満が実用上の好適な範囲となる。
【0046】
これらの結果から、第1実施形態の水晶振動片1は、0.3≦W1/W<1.0となるように構成されていることによって、励振電極12a,12b,12cによる振動腕11a,11b,11cの効率的な振動で発熱量が減少し、熱弾性損失が抑制され、実用上において、上記範囲外の水晶振動片よりもQ値を向上させ得ることが、裏付けられたといえる。
【0047】
また、水晶振動片1は、励振電極12a,12b,12cが第1電極12a1,12b1,12c1と、第1電極12a1,12b1,12c1に対向して設けられた第2電極12a2,12b2,12c2と、両電極間に設けられた圧電体14と、を備えたことから、励振電極12a,12b,12c自体の伸縮によって振動腕11a,11b,11cを振動させることができる。
従って、水晶振動片1は、基材に必ずしも水晶などの圧電材料を用いる必要がないことから、基材の選択肢が広がり、例えば、シリコンなどの半導体材料を基材として用いることができる。
【0048】
また、水晶振動片1は、基部10がZ軸方向の厚さが異なる肉厚部10cと肉薄部10dとを有し、肉厚部10cよりも厚さが薄い肉薄部10dが振動腕11a,11b,11cと接続されていることから、振動腕11a,11b,11cの振動に伴い生じる応力が、振動腕11a,11b,11cの根元部に集中することなく肉薄部10dにも分散することによって緩和される。
この結果、水晶振動片1は、振動腕11a,11b,11cを効率的に振動させることが可能となることから、Q値の低下を抑制することができる。
【0049】
また、水晶振動片1は、振動腕を複数(振動腕11a,11b,11cの3本)備えたことから、例えば、隣り合う振動腕(11aと11b、11bと11c)の振動方向を互いに逆方向とすることによって、力学的にバランスのとれた屈曲振動とすることができる。
これにより、水晶振動片1は、振動腕11a,11b,11cから基部10への振動漏れが低減され、Q値を向上させることができる(換言すれば、Q値の低下を抑制することができる)。
なお、水晶振動片1は、励振電極12a,12b,12cの幅W1が、振動腕11a,11b,11cの腕幅Wと略等しくなる構成としてもよい。
【0050】
次に、上記第1実施形態の変形例について説明する。
(変形例1)
図6は、変形例1の水晶振動片の概略構成を示す模式図である。図6(a)は、平面図、図6(b)は、図6(a)のC−C線での断面図であり、図6(c)は、図6(a)のD−D線での断面図である。なお、各配線は関係部分を除き省略してあり、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
なお、上記第1実施形態との共通部分には同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0051】
図6(a)に示すように、水晶振動片2は、振動腕11a,11b,11cの励振電極12a,12b,12c(図1参照)が、X軸方向に並ぶようにそれぞれ2分割され、励振電極12a(1),12a(2),12b(1),12b(2),12c(1),12c(2)となっている。
そして、水晶振動片2は、分割された各励振電極が、振動腕11a,11b,11cのY軸方向に延びる一対の辺(長手方向の2辺)のそれぞれに近接するように分散配置されている。
【0052】
具体的には、振動腕11aの長手方向の一方の辺に近接して励振電極12a(1)が配置され、他方の辺に近接して励振電極12a(2)が配置され、振動腕11bの一方の辺に近接して励振電極12b(1)が配置され、他方の辺に近接して励振電極12b(2)が配置され、振動腕11cの一方の辺に近接して励振電極12c(1)が配置され、他方の辺に近接して励振電極12c(2)が配置されている。
【0053】
なお、本変形例1において、各励振電極のX軸方向の幅W1(1)、W1(2)は、上記第1実施形態の各励振電極が2分割された状態であることから、上記第1実施形態で述べた0.3≦W1/W<1.0の関係については、0.3≦(W1(1)+W1(2))/W<1.0と読み替えるものとする。
【0054】
2分割された各励振電極の各第1電極、各第2電極は、第1電極12a(1)1,12a(2)1,12b(1)1,12b(2)1,12c(1)1,12c(2)1、第2電極12a(1)2,12a(2)2,12b(1)2,12b(2)2,12c(1)2,12c(2)2となっている。
上記各励振電極における分割された第1電極同士(例えば、12a(1)1,12a(2)1)、第2電極同士(例えば、12a(1)2,12a(2)2)は、図示しない箇所で互いに接続されている。
【0055】
2分割された各励振電極から引き出された配線13a(1),13a(2),13b(1),13b(2),13c(1),13c(2)は、上記各励振電極と同様に、振動腕11a,11b,11cのY軸方向に延びる一対の辺の延長線(長手方向の2辺の延長線)のそれぞれに近接するように分散配置されている。
また、各配線は、第1実施形態と同様に、幅狭領域13a1(1),13a1(2),13b1(1),13b1(2),13c1(1),13c1(2)を有しており、各励振電極のX軸方向の幅W1(1)、W1(2)と、各幅狭領域のX軸方向の幅W2(1)、W2(2)とは、W1(1)>W2(1)、W1(2)>W2(2)の関係にある。
なお、水晶振動片2の動作に関しては、基本的に上記実施形態と同様なので説明を省略する。
【0056】
上述したように、水晶振動片2は、各励振電極及び各配線が分割され、分割された励振電極(12a(1)など)及び配線(13a(1)など)のそれぞれが、振動腕11a,11b,11cのY軸方向に延びる一対の辺及び一対の辺の延長線のそれぞれに近接するように分散配置されている。
このことから、水晶振動片2は、振動腕11a,11b,11cの振動に伴い発生する応力が他の部分より大きい、振動腕11a,11b,11cのY軸方向に沿った中心部分または基部10における上記中心部分のY軸方向に沿った延長部分に、励振電極または配線が設けられていないことになる。
この結果、水晶振動片2は、振動腕11a,11b,11cの上記中心部分などに各励振電極及び各配線を設けることによる応力増加を緩和して、振動腕11a,11b,11cを効率的に振動させることによって、Q値の低下を抑制することができる。
【0057】
なお、水晶振動片2は、分割された各励振電極が、振動腕11a,11b,11cのY軸方向に延びる一対の辺及び一対の辺の延長線から離れて配置されていてもよく、3分割以上に分割されていてもよい。
【0058】
(変形例2)
図7は、変形例2の水晶振動片の概略構成を示す模式平面図である。なお、各配線は関係部分を除き省略してあり、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
なお、上記第1実施形態及び変形例1との共通部分には同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第1実施形態及び変形例1と異なる部分を中心に説明する。
【0059】
図7に示すように、変形例2の水晶振動片3は、各励振電極のみが変形例1と同様に2分割され、振動腕11a,11b,11cの根元部で、2分割された各励振電極(12a(1),12a(2)など)同士がつながれ、そこから各配線(13aなど)が第1実施形態と同様に基部10に引き出されている。
なお、各配線の各幅狭領域(13a1など)のX軸方向の幅W2は、分割された各励振電極のX軸方向の幅W1(1)、W1(2)よりも狭いこと(W1(1)>W2、W1(2)>W2)が好ましいが、分割された各励振電極のX軸方向の幅W1(1)、W1(2)の和よりも狭い構成((W1(1)+W1(2))>W2)としてもよい。
【0060】
これによれば、水晶振動片3は、各励振電極を2分割して振動腕11a,11b,11cのY軸方向に延びる一対の辺のそれぞれに近接するように分散配置したことから、変形例1と同様の効果を奏することができる。
なお、水晶振動片3は、分割された各励振電極(12a(1),12a(2)など)が、振動腕11a,11b,11cのY軸方向に延びる一対の辺から離れて配置されていてもよく、3分割以上に分割されていてもよい。
【0061】
(変形例3)
図8は、変形例3の水晶振動片の概略構成を示す模式平面図である。なお、各配線は関係部分を除き省略してあり、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
なお、上記第1実施形態及び変形例1との共通部分には同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第1実施形態及び変形例1と異なる部分を中心に説明する。
【0062】
図8に示すように、変形例3の水晶振動片4は、各配線のみが変形例1と同様に2分割されている。
2分割された各配線(13a(1),13a(2)など)は、振動腕11a,11b,11cのY軸方向に延びる一対の辺の延長線(長手方向の2辺の延長線)のそれぞれに近接するように分散配置されている。
そして、各配線の各幅狭領域(13a1(1),13a1(2)など)のX軸方向の幅W2(1)、W2(2)は、各励振電極のX軸方向の幅W1よりも狭くなっている(W1>W2(1)、W1>W2(2))。なお、2分割された各配線同士(13a(1),13a(2)など)は、図示しない箇所で互いに接続されている。
【0063】
これによれば、水晶振動片4は、各配線を2分割して振動腕11a,11b,11cのY軸方向に延びる一対の辺の延長線のそれぞれに近接するように分散配置したことから、変形例1と同様の効果を奏することができる。
なお、水晶振動片4は、各配線が3分割以上に分割されていてもよい。
【0064】
(第2実施形態)
次に、上記第1実施形態及び各変形例で述べた水晶振動片(振動片)を備えた振動子としての水晶振動子について説明する。
図9は、第2実施形態の水晶振動子の概略構成を示す模式図である。図9(a)は、リッド(蓋体)側から俯瞰した平面図であり、図9(b)は、図9(a)のE−E線での断面図である。なお、平面図では、リッドを省略してある。また、各配線は関係部分を除き省略してあり、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
なお、上記第1実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0065】
図9に示すように、水晶振動子5は、上記第1実施形態及び各変形例で述べた水晶振動片のいずれか(ここでは、水晶振動片1)と、水晶振動片1を収納したパッケージ20と、を備えている。
【0066】
パッケージ20は、平面形状が略矩形で凹部を有したパッケージベース21と、パッケージベース21を覆う平面形状が略矩形で平板状のリッド22と、を有し、略直方体形状に形成されている。
パッケージベース21には、セラミックグリーンシートを成形して積層し焼成した酸化アルミニウム質焼結体、水晶、ガラス、シリコンなどが用いられている。
リッド22には、パッケージベース21と同材料、または、コバール、42アロイ、ステンレス鋼などの金属が用いられている。
【0067】
パッケージベース21には、内底面(凹部の内側の底面)23に、内部端子24,25が設けられている。
内部端子24,25は、水晶振動片1の基部10に設けられた接続電極18a,18bの近傍となる位置に略矩形状に形成されている。接続電極18a,18bは、図示しない配線により、水晶振動片1の各励振電極(12bなど)の第1電極(12b1など)及び第2電極(12b2など)に接続されている。
例えば、図2の配線において、交流電源の一方側の配線が接続電極18aに接続され、他方側の配線が接続電極18bに接続される。
【0068】
パッケージベース21の外底面(内底面23の反対側の面、外側の底面)26には、電子機器などの外部部材に実装される際に用いられる一対の外部端子27,28が形成されている。
外部端子27,28は、図示しない内部配線によって内部端子24,25と接続されている。例えば、外部端子27は、内部端子24と接続され、外部端子28は、内部端子25と接続されている。
内部端子24,25及び外部端子27,28は、W(タングステン)などのメタライズ層にNi、Auなどの各被膜をメッキなどの方法により積層した金属膜からなる。
【0069】
水晶振動子5は、水晶振動片1の基部10の肉厚部10cが、エポキシ系、シリコーン系、ポリイミド系などの接着剤30を介して、パッケージベース21の内底面23に固定されている。
そして、水晶振動子5は、水晶振動片1の接続電極18a,18bが、Au、Alなどの金属ワイヤー31により内部端子24,25と接続されている。
水晶振動子5は、水晶振動片1がパッケージベース21の内部端子24,25と接続された状態で、パッケージベース21がリッド22により覆われ、パッケージベース21とリッド22とがシームリング、低融点ガラス、接着剤などの接合部材29で接合されることにより、パッケージ20の内部が気密に封止されている。
なお、パッケージ20の内部は、減圧状態(真空度の高い状態)または窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが充填された状態となっている。
【0070】
なお、パッケージは、平板状のパッケージベースと凹部を有するリッドなどから構成されていてもよい。また、パッケージは、パッケージベース及びリッドの両方に凹部を有していてもよい。
【0071】
水晶振動子5は、外部端子27,28、内部端子24,25、金属ワイヤー31、接続電極18a,18bを経由して励振電極(12bなど)に印加される駆動信号(交番電圧)によって、水晶振動片1の各振動腕(11bなど)が所定の周波数(例えば、約32kHz)で、厚さ方向(図9(b)の矢印方向)に発振(共振)する。
【0072】
上述したように、第2実施形態の水晶振動子5は、水晶振動片1を備えたことから、上記第1実施形態に記載された効果を奏する振動子(例えば、Q値の低下が抑制された振動子)を提供することができる。
なお、水晶振動子5は、水晶振動片1に代えて各変形例の水晶振動片(2など)を備えた場合においても、上記と同様の効果及び各変形例特有の効果を奏する振動子を提供することができる。
【0073】
(第3実施形態)
次に、上記第1実施形態及び各変形例で述べた水晶振動片(振動片)を備えた発振器としての水晶発振器について説明する。
図10は、第3実施形態の水晶発振器の概略構成を示す模式図である。図10(a)は、リッド側から俯瞰した平面図であり、図10(b)は、図10(a)のE−E線での断面図である。なお、平面図では、リッド及び一部の構成要素を省略してある。また、各配線は関係部分を除き省略してあり、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
なお、上記第1実施形態及び第2実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第1実施形態及び第2実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0074】
図10に示すように、水晶発振器6は、上記第1実施形態及び各変形例で述べた水晶振動片のいずれか(ここでは、水晶振動片1)と、水晶振動片1を発振させる発振回路としてのICチップ40と、水晶振動片1及びICチップ40を収納したパッケージ20と、を備えている。
【0075】
パッケージベース21の内底面23には、内部接続端子23aが設けられている。
発振回路を内蔵するICチップ40は、パッケージベース21の内底面23に、図示しない接着剤などを用いて固定されている。
ICチップ40は、図示しない接続パッドが、Au、Alなどの金属ワイヤー41により内部接続端子23aと接続されている。
【0076】
内部接続端子23aは、W(タングステン)などのメタライズ層にNi、Auなどの各被膜をメッキなどにより積層した金属膜からなり、図示しない内部配線を経由して、パッケージ20の外部端子27,28、内部端子24,25などに接続されている。
なお、ICチップ40の接続パッドと内部接続端子23aとの接続には、金属ワイヤー41を用いたワイヤーボンディングによる接続方法以外に、ICチップ40を反転させてのフリップチップ実装による接続方法などを用いてもよい。
【0077】
水晶発振器6は、ICチップ40から内部接続端子23a、内部端子24,25、金属ワイヤー31、接続電極18a,18b、各配線(13bなど)を経由して各励振電極(12bなど)に印加される駆動信号によって、水晶振動片1の各振動腕(11bなど)が所定の周波数(例えば、約32kHz)で発振(共振)する。
そして、水晶発振器6は、この発振に伴って生じる発振信号をICチップ40、内部接続端子23a、外部端子27,28などを経由して外部に出力する。
【0078】
上述したように、第3実施形態の水晶発振器6は、水晶振動片1を備えたことから、上記第1実施形態に記載された効果を奏する発振器(例えば、Q値の低下が抑制された発振器)を提供することができる。
なお、水晶発振器6は、水晶振動片1に代えて各変形例の水晶振動片(2など)を備えた場合においても、上記と同様の効果及び各変形例特有の効果を奏する発振器を提供することができる。
また、水晶発振器6は、ICチップ40をパッケージ20に内蔵ではなく、外付けした構成のモジュール構造(例えば、1つの基板上に水晶振動子及びICチップが個別に搭載されている構造)としてもよい。
【0079】
(第4実施形態)
次に、上記第1実施形態及び各変形例で述べた水晶振動片(振動片)を備えた電子機器としての携帯電話について説明する。
図11は、第4実施形態の携帯電話を示す模式斜視図である。
図11に示す携帯電話700は、上記第1実施形態及び各変形例で述べた水晶振動片のいずれか(例えば、水晶振動片1)を、基準クロック発振源などとして備え、更に液晶表示装置701、複数の操作ボタン702、受話口703、及び送話口704を備えて構成されている。
【0080】
上述した各水晶振動片(1など)は、上記携帯電話に限らず、電子ブック、パーソナルコンピューター、テレビ、デジタルスチールカメラ、ビデオカメラ、ビデオレコーダー、ナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器などの基準クロック発振源などとして好適に用いることができ、いずれの場合にも上記各実施形態及び各変形例で説明した効果を奏する電子機器を提供することができる。
【0081】
なお、振動片の基材としての水晶には、水晶の原石などから所定の角度で切り出された、例えば、Zカット板、Xカット板などを用いることができる。なお、Zカット板を用いた場合には、その特性によりエッチング加工が容易となり、Xカット板を用いた場合には、その特性により温度−周波数特性が良好となる。
また、振動片の基材としては、水晶に限定するものではなく、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li247)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電材料、またはシリコンなどの半導体材料であってもよい。
また、振動片の振動腕の数は、3本に限定するものではなく、1本または2本でもよく、n本(nは4以上の自然数)でもよい。
なお、振動片は、基部の肉厚部をなくして全体を肉薄部とし、基部の厚さを振動腕と同じ厚さにしてもよい。これによれば、振動片は、平板状となることから、製造が容易となる。
【符号の説明】
【0082】
1,2,3,4…振動片としての水晶振動片、5…振動子としての水晶振動子、6…発振器としての水晶発振器、10…基部、10a,10b…主面、10c…肉厚部、10d…肉薄部、11a,11b,11c…振動腕、12a,12b,12c,12a(1),12a(2),12b(1),12b(2),12c(1),12c(2)…励振電極、12a1,12b1,12c1,12a(1)1,12a(2)1,12b(1)1,12b(2)1,12c(1)1,12c(2)1…第1電極、12a2,12b2,12c2,12a(1)2,12a(2)2,12b(1)2,12b(2)2,12c(1)2,12c(2)2…第2電極、13a,13b,13c,13a(1),13a(2),13b(1),13b(2),13c(1),13c(2)…配線、13a1,13b1,13c1,13a1(1),13a1(2),13b1(1),13b1(2),13c1(1),13c1(2)…幅狭領域、14…圧電体、15…絶縁体、18a,18b…接続電極、20…パッケージ、21…パッケージベース、22…リッド、23…内底面、23a…内部接続端子、24,25…内部端子、26…外底面、27,28…外部端子、29…接合部材、30…接着剤、31…金属ワイヤー、40…発振回路としてのICチップ、41…金属ワイヤー、700…携帯電話、701…液晶表示装置、702…操作ボタン、703…受話口、704…送話口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部から第1方向に延びる振動腕と、を備え、
前記振動腕は、平面視において、前記第1方向と直交する第2方向に腕幅を有し、且つ、前記第1方向と前記第2方向とで特定される平面に沿った前記振動腕の主面の少なくとも一方に、前記主面と直交する第3方向に前記振動腕を振動させる励振部が設けられ、
前記励振部からは、前記基部に向けて配線が引き出され、
前記配線は、前記第2方向の幅が前記励振部の前記第2方向の幅よりも狭い幅狭領域を有し、
前記幅狭領域の前記第1方向における範囲は、前記振動腕と前記基部との境界を基点として、前記振動腕の前記第1方向の全長をLとしたとき、
前記基点から前記基部側へ少なくとも0.1L以内であることを特徴とする振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の振動片において、前記励振部は、前記主面側に設けられた第1電極と、
前記第1電極の上方に設けられた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた圧電体と、
を備えたことを特徴とする振動片。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の振動片において、前記励振部及び前記配線の少なくとも一方が、前記第2方向に並ぶように分割され、
分割された前記励振部及び前記配線のそれぞれは、前記振動腕の前記第1方向に延びる一対の辺または前記一対の辺の延長線のそれぞれに近接するように分散配置されていることを特徴とする振動片。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の振動片において、前記振動腕の前記第2方向の前記腕幅をW、前記励振部の前記第2方向の幅をW1としたとき、
0.3≦W1/W<1.0であることを特徴とする振動片。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の振動片において、前記基部は、前記第3方向の厚さが異なる肉薄部と肉厚部とを有し、
前記肉薄部が前記振動腕と接続されていることを特徴とする振動片。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の振動片において、前記振動腕を複数備えたことを特徴とする振動片。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の振動片と、
前記振動片を収容したパッケージと、
を備えたことを特徴とする振動子。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の振動片と、
前記振動片を発振させる発振回路と、
を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項9】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の振動片を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−199603(P2012−199603A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60458(P2011−60458)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】