説明

排気浄化装置

【課題】NOx及びスモークの排出を抑制し且つ触媒通過後の排気を好適に浄化させると共に、EGR通路における圧損を好適に低減させる。
【解決手段】排気浄化装置は、モータ(400)により駆動され且つ吸入空気を過給可能に構成されたモータ駆動過給器(217)を含む、内燃機関(200)の吸気系に相互に直列に配置された複数の吸気過給器と、内燃機関の排気系と接続され、該排気系から排気の一部をEGRガスとして吸気系に供給可能なEGR装置(300)を有する。EGR装置(300)は、EGR過給器(307)及び第1開閉弁(308)が設置された第1通路(311)と第2開閉弁(309)が設置された第2通路(312)とを含んでおり、EGR過給器の非稼動時、EGRガスの供給経路は、第1及び第2開閉弁の駆動制御により、上記第2通路を含み且つ上記第1通路を含まない第2経路に制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気を浄化可能な排気浄化装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、EGRガスを昇圧して吸気通路に還流するEGRガスコンプレッサを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された過給式エンジンのEGR装置(以下、「従来の技術」と称する)によれば、EGRガスコンプレッサと排気通路タービンとがクラッチを介して継脱自在に連結されるため、気筒への吸気量を十分に確保することによりスモークの発生や燃料消費の悪化を防止しながら、効率良くEGRを行うことが可能となり、エンジンの全運転領域で排気ガス中のNOxの排出量を低減することが可能になるとされている。
【0003】
尚、EGR手段とスーパーチャージャとを有する構成において還流排気ガスが該スーパーチャージャへ侵入することを防止する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、排気浄化用触媒が必要とする燃料添加が実行された場合に、流路切り替え手段によりEGRクーラをバイパスするバイパスラインを選択することによってEGRクーラの冷却性能の低下を防止するものも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
また、排気マニホールドとコンプレッサ吸入口の上流側とをEGR通路で接続することにより排気ガス及び吸気の逆流を防ぐ技術も開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
更に、エキゾーストマニホールドを分割し、その一部にEGR通路を形成する技術も提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0007】
更には、実際の還流排気量が目標還流排気量よりも少ない場合に駆動される機械式過給機を設けた排気還流装置も提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平11−62715号公報
【特許文献2】特開平8−319873号公報
【特許文献3】特開2006−233947号公報
【特許文献4】特開2004−245117号公報
【特許文献5】特開平9−151805号公報
【非特許文献1】実開平5−1843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の技術によれば、大量EGRによりNOx排出量の低減が図られるものの、その背反として、吸入空気量が低下することによりスモーク排出量が増加し易い。一方、そのような問題に対処すべく、新気量の確保を目的として、複数の過給器を相互に直列に配置することが周知である。
【0010】
ところが、複数の吸気過給器を相互に直列に配置する場合、排気域では同時に複数のタービンが仕事をするために、単一の過給器を採用する場合と較べて排気温度の低下を招く。このため、これら過給器の下流側に配置され得る触媒では、その温度上昇が妨げられ、排気の浄化効率自体が低下してしまう。即ち、従来の技術には、NOx及びスモークの排出量の低減を、排気の浄化に十分に貢献させ難いという技術的な問題点がある。
【0011】
また、EGRガスコンプレッサ等のEGRガスの過給手段は、EGRガスの過給が必要とされない場合には単なる流路抵抗体に過ぎず、EGR通路における圧力損失(以下、適宜「圧損」と称する)を増大させる要因となる。即ち、この種のEGR過給器を備える排気浄化装置には、EGR通路における圧力損失の増大によりEGR(排気を吸気系に還流させることを指す)の制御性が低下するという技術的問題点もある。
【0012】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、NOx及びスモークの排出を抑制し且つ触媒通過後の排気を好適に浄化させると共に、EGR通路における圧損を低下させ得る排気浄化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明に係る排気浄化装置は、モータにより駆動され且つ吸入空気を過給可能に構成されたモータ駆動過給器を含む、内燃機関の吸気系に相互に直列に配置された複数の吸気過給器と、前記内燃機関の排気系と接続され、該排気系から排気の一部をEGRガスとして前記吸気系に供給可能に構成されると共に相異なる第1通路及び第2通路を含んでなるEGR通路と、前記第1通路に設置され、稼動時に前記EGRガスを過給可能なEGR過給器と、前記EGR通路において前記第1通路及び前記第2通路の各々を開放及び閉鎖可能に設置され、前記EGR通路における前記EGRガスの供給経路を、(1)前記第1通路が開放され且つ前記第2通路が閉鎖された状態に対応する第1経路と、(2)前記第1通路が閉鎖され且つ前記第2通路が開放された状態に対応する第2経路との間で切り替え可能な切り替え手段とを具備することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る内燃機関は、一又は複数の気筒を有し、当該気筒の各々における燃焼室において、例えばガソリン、軽油或いは各種アルコール等の燃料が、或いは当該燃料と吸入空気との混合体である混合気が燃焼した際に発生する力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランクシャフト等の機械的な伝達経路を経る等して、動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念であり、例えば2サイクル或いは4サイクルレシプロエンジン等を意味する。
【0015】
本発明に係る排気浄化装置によれば、各々が相互に直列に配置された複数の吸気過給器によって、例えば吸気通路や吸気マニホールド等を含み得る吸気系を介して内燃機関に新気が供給される。このため、例えば単一の吸気過給器により過給を行う場合と較べて、比較的高い過給圧を得ることが可能である。尚、本発明に係る「吸気過給器」とは、外界から吸入される空気たる吸入空気の圧力を大気圧以上に高めた状態で供給する(即ち、過給する)ことが可能な装置であって、例えば、好適な一形態として、少なくとも一部が排気エネルギ(端的には排気圧)を利用した(即ち、排気圧に応じたタービンの回転駆動力の少なくとも一部をコンプレッサの回転駆動力として利用した)、所謂ターボチャージャ等として構成され得る。
【0016】
一方、燃焼室から排出され排気系を介して外界に導かれる排気は、排気系に適宜の設置態様を伴って設置され得る触媒装置等により浄化される。この触媒装置は、好適には触媒活性温度以上の温度領域において好適な排気浄化効果を発揮し得るが、その昇温には専ら排気の熱エネルギが利用される。即ち、燃焼室から排出される高温の排気が触媒装置を通過する過程で生じる熱交換等により、この排気の熱エネルギを触媒装置に供給し、触媒装置の昇温を促すといった構図である。
【0017】
ところが、排気浄化装置を構成する複数の吸気過給器の各々が、排気圧によりタービンを駆動する所謂ターボチャージャ等として構成される場合、吸気過給器の数量に応じて排気圧は低下する。従って、好適にはこれら複数のタービンの下流側に位置する触媒装置(一部のタービンに対し上流側に位置していてもよいが、その場合、タービンが十分に駆動され難くなり、過給器本来の過給動作に支障をきたす可能性がある)では、排気圧の低下に伴い単位時間当たりに供給される熱負荷が減少して、その昇温が阻害されることとなる。その結果、排気の浄化効率が低下して、例え燃焼室から排出される排気(所謂エンジン出ガス)のスモーク量或いはNOx量が低減され得るとしたところで、触媒装置下流側のガス(所謂、触媒出ガス)の浄化が必ずしも好適に進行しない、といった問題が生じ得る。
【0018】
そこで、本発明の排気浄化装置は、複数の吸気過給器の少なくとも一部としてモータ駆動過給器を備える構成となっている。本発明に係る「モータ駆動過給器」とは、例えば車載用バッテリ等の蓄電手段を電力供給源とするモータから、例えばモータ出力軸等の回転軸及び当該回転軸と直接的に、間接的に又は物理的、機械的、電気的若しくは磁気的な各種の条件が満たされた場合に限定的に連結される回転軸等を適宜介する等して駆動力が供給されることにより、吸入空気を過給可能に構成された装置であり、好適な一形態としては、例えば回転軸の回転により入り口側ガスを圧縮して出口側へ導くコンプレッサ等の流体圧縮手段である。
【0019】
このモータ駆動過給器が吸入空気の過給を行うにあたっては、排気圧の低下が生じることはないから、本発明に係る排気浄化装置においては、複数の吸気過給器により望ましい過給効果を得るに際して、触媒装置に供給される熱負荷の低下を抑制することが可能となる。従って、複数の吸気過給器全てを排気駆動する場合と較べて明らかに触媒装置の昇温が促進され、触媒装置での排気浄化効率の低下が抑制される。
【0020】
一方、本発明に係る排気浄化装置は、例えば排気ポート、排気マニホールド及び排気通路等を含み得る内燃機関の排気系と接続され、該排気系から排気の一部をEGRガスとして吸気系に供給可能な(尚、係るEGRガスの供給を、これ以降適宜「EGR」と称することとする)EGR通路を備えている。
【0021】
このEGR通路は、例えば、内燃機関の吸気系に、直接若しくは間接的に、又はEGRバルブ等、EGRガスの流量(以下、適宜「EGR量」とする)を制御可能な弁装置等の状態に応じて限定的に連通する構成となっており、EGR通路に導かれる、上記排気系に排出される排気の一部が、不活性のCO2を比較的大量に含むEGRガスとして吸気系に還流される構成となっている。当該EGRガスが、吸気系に供給される吸入空気と混合され気筒内に吸入される吸気を形成することによって、例えばNOx等の発生が少なくとも幾らかなり抑制される。
【0022】
ところで、先述したように複数の吸気過給器により比較的高い過給圧が実現され得る点に鑑みれば、EGR通路と排気系との分岐位置(例えば、エキマニの一部)における排気圧(所謂、エンジン背圧である)と、EGR通路と吸気系との合流位置(例えば、インマニの一部)における吸気圧との圧力偏差は小さくなり易い。このため、この圧力偏差を利用してEGRガスを吸気系に押し込む構成では、場合によっては十分なEGRガスを吸気系に還流させ難いといった事態が生じ得る。
【0023】
そこで、このEGR通路或いは内燃機関の排気系には、EGR過給器が備わっている。このEGR過給器は、例えば先述したモータ駆動過給器の駆動力源としてのモータ等から、例えば先述したモータ出力軸等の回転軸及び当該回転軸と直接的に、間接的に又は物理的、機械的、電気的若しくは磁気的な各種の条件が満たされた場合に限定的に連結される回転軸等を適宜介する等して駆動力が供給されることにより、EGRガスを過給することが可能に構成された装置であり、好適な一形態としては、例えば回転軸の回転により入り口側ガスを圧縮して出口側へ導くコンプレッサ等の流体圧縮手段である。このEGR過給器によりEGRガスが過給されることによって、上記圧力偏差が比較的小さいとしても、実践上十分な量のEGRガスを吸気系に供給することが可能となり得る。従って、このように複数の吸気過給器とEGR過給器とを有する本発明に係る排気浄化装置の構成によれば、スモーク及びNOx各々の発生量を同時に低減し得る。
【0024】
即ち、本発明に係る排気浄化装置によれば、NOx及びスモークの排出を抑制し且つ触媒装置通過後の排気を好適に浄化することが可能となるのである。
【0025】
尚、好適な一形態として、このEGR過給器は、先述したモータ駆動過給器と一軸配置されてもよい。ここで、「一軸配置」とは、実質的にその回転軸が共有されることを意味する。この際、EGR過給器とモータ駆動過給器とは、モータの回転に伴って同期回転可能或いは一体回転可能であるが、「実質的に」とあるように、EGR過給器、モータ駆動過給器及びモータ相互間の厳密な連結態様については何ら限定されない趣旨である。例えば、モータ出力軸が両者の回転軸を兼用していてもよいし、モータ出力軸が一方の回転軸を兼用し且つ他方の回転軸と各種の態様の下に(直接的、間接的又は限定的の別を問わない)連結されていてもよいし、或いは両者が個々に回転軸を有し且つ夫々モータ出力軸に各種の態様の下に連結されていてもよい。また、この場合、モータとEGR過給器との間には、例えば電磁クラッチ、機械クラッチ或いは流体クラッチ等の各種係合手段が介装され、モータとEGR過給器とが選択的に連結し得る構成とされていてもよい。この場合、EGRガスの過給を伴うことなく吸入空気の過給のみを行うことも可能となるため、比較的大量の新気を必要とする領域や、排気駆動型の吸気過給器が十分に稼動しない低回転領域等において効果的である。
【0026】
ところで、このようにEGR通路にEGR過給器を備えた構成においては、EGRガスの過給が必要とされない期間において、EGR過給器がEGR通路の流路抵抗を増加させ、EGR通路における圧損を増大させるといった新規な問題が発生し得る。係る圧損の増大は、EGRガスの安定供給を妨げ、EGRの制御性を低下させる要因となる。
【0027】
ここで、本発明に係るEGR通路は、相互いに異なる第1通路及び第2通路を含んで形成されており、EGR過給器は、この第1通路に設置されている。更に、本発明に係る排気浄化装置は、係る第1通路及び第2通路の各々を開放及び閉鎖可能に設置され、EGR通路におけるEGRガスの供給経路を、第1通路が開放され且つ第2通路が閉鎖された状態に対応する第1経路と、第1通路が閉鎖され且つ前記第2通路が開放された状態に対応する第2経路との間で切り替え可能な切り替え手段を有している。
【0028】
このため、本発明に係る排気浄化装置によれば、例えば、EGR過給器の稼動時に第1経路を選択し、またEGR過給器の非稼動時に第2経路を選択する等、EGR過給器がEGRガスの非稼動時にEGR通路における圧損を増大させる旨の技術的問題点を解決する各種の措置を講じることが可能となる。即ち、本発明に係る排気浄化装置によれば、NOx及びスモークの排出を抑制し且つ触媒通過後の排気を好適に浄化させると共に、EGR通路における圧損を低下させ、EGRの制御性を向上させることが可能となるのである。
【0029】
尚、第1通路及び第2通路の各々相互間の位置関係は特に限定されない。例えば、第2通路は、第1通路と共にEGR通路の然るべき分岐位置から分岐していてもよいし、相異なる位置において排気系から分岐していてもよい。また、EGR通路の然るべき合流位置で合流していてもよいし、相異なる位置において吸気系に合流していてもよい。或いは、第1及び第2通路は、相互いに共通部分を全く有さぬ、各々独立してEGRガスを吸気系に還流させることが可能な通路として構成されていてもよい。
【0030】
また、切り替え手段の構成は、各通路の開放及び閉鎖を伴ってEGRガスの供給経路を上記の如く切り替え可能である限りにおいて特に限定されない。例えば、切り替え手段は、好適な一形態として、第1通路及び第2通路各々に当該各々における流路断面積を二値的に、段階的に又は連続的に可変とし得るように設けられた一又は複数の弁体及び当該弁体を駆動する駆動装置を適宜に含み得る弁装置等として構成されていてもよい。或いは、第1及び第2通路が、EGR通路の然るべき分岐位置から合流する、或いは然るべき合流位置で合流する構成を採る場合には、切り替え手段とは、これら分岐位置又は合流位置に設けられた三方弁等の多方弁装置であってもよい。
【0031】
本発明に係る排気浄化装置の一の態様では、前記第1通路に設置され前記第1通路を開放及び閉鎖可能な第1開閉弁と、前記第2通路に設置され前記第2通路を開放及び閉鎖可能な第2開閉弁とを有する。
【0032】
この態様によれば、例えば電磁開閉弁或いは差圧弁等の形態を採り得る第1開閉弁により第1通路におけるEGRガスの供給量が二値的、段階的又は連続的に可変とされ、第1通路の開放及び閉鎖が可能となる。また例えば電磁開閉弁或いは差圧弁等の形態を採り得る第2開閉弁により第2通路におけるEGRガスの供給量が二値的、段階的又は連続的に可変とされ、第2通路の開放及び閉鎖が可能となる。従って、EGRガスの供給経路の切り替えを確実に且つ簡便に実現することが可能となる。
【0033】
本発明に係る排気浄化装置の他の態様では、前記EGR過給器の稼動状態に応じて前記供給経路が切り替わるように前記切り替え手段を制御する制御手段を更に具備する。
【0034】
この態様によれば、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る制御手段により、例えば各種のスイッチング回路、PWM制御回路或いはインバータ回路等を適宜に含み得る然るべき駆動系或いは駆動部材の制御等を介し、EGR過給器の稼動状態に応じてこの供給経路が切り替わるように切り替え手段が制御される。
【0035】
このため、EGR過給器の稼動時及び非稼動時の各々について、所望のEGR量を正確に得ることが可能となる。
【0036】
制御手段を備えた本発明に係る排気浄化装置の一の態様では、前記制御手段は、前記EGRガスが前記吸気系に供給されるEGR実行時における前記EGR過給器の稼動時において、前記供給経路が前記第1経路となるように前記切り替え手段を制御する。
【0037】
この態様によれば、EGR実行時におけるEGR過給器の稼動時に、EGRガスの供給経路が第1経路とされる。このため、EGR過給器によるEGRガスの過給効果が十分に発揮され、複数の過給器により比較的高い過給圧が得られている状況においても所望のEGR量を得ることが可能となる。即ち、EGRの制御性を向上させることが可能となる。
【0038】
ここで特に、EGRガスが単に第1通路を通過して吸気系に導かれるだけであっても、EGR過給器による過給の効果は少なからず担保されるが、この場合、第1通路の圧力が第2通路よりも高くなるから、EGRガスの一部が第2通路側へ漏洩してEGR通路の圧損が増大するといった懸念が必ずしも払拭されない。
【0039】
その点、本発明に係る切り替え手段の作用によれば、第1経路が選択された状態において、第2通路は閉鎖された状態となる。即ち、第2通路と吸気系との連通は実質的に遮断された状態となる。従って、EGR過給器によりEGRガスを過給するにあたって、過給されたEGRガスが第1経路を流れる途上でその一部が第2通路側に漏洩し、第2通路をEGRガスが逆流するといった事態は生じ難い。即ち、この態様によれば、EGRガスの過給がなされる期間におけるEGR通路の圧損も確実に低下させることが可能となる。
【0040】
制御手段を備えた本発明に係る排気浄化装置の他の態様では、前記制御手段は、前記EGRガスが前記吸気系に供給されるEGR実行時における前記EGR過給器の非稼動時において、前記供給経路が前記第2経路となるように前記切り替え手段を制御する。
【0041】
この態様によれば、EGR実行時におけるEGR過給器の非稼動時に、EGRガスの供給経路が第2経路とされる。このため、EGR過給器がEGR通路における圧損を増大させることはなく、EGRの制御性を向上させることが可能となる。
【0042】
制御手段を備えた本発明に係る排気浄化装置の他の態様では、前記制御手段は更に、前記第1通路と前記第2通路との間の圧力差に応じて前記切り替え手段を制御する。
【0043】
ここで、例えば、上述したEGR過給器の非稼動時の制御において、EGR過給器の稼動停止直後或いは停止後間もない期間においては、EGR通路の圧力は相応に高い状態にある。従って、このような状況で供給経路を第2経路に切り替えると、第2通路をEGRガスが逆流する可能性がある。
【0044】
その点、この態様によれば、制御手段により、EGR過給器の稼動状態に加えて更に第1通路及び第2通路相互間の圧力差に応じて切り替え手段が制御されるため、例えばEGR過給器の非稼動時ではあっても、第1経路の圧力が相応に高い期間においてEGRガスの供給経路の切り替えを遅延させ、供給経路切り替え時の圧損の発生を好適に防止することが可能となる。
【0045】
また、EGR過給器の稼動開始直後或いは開始後間もない期間においては、先に述べたようにEGR過給器が圧損を生じさせるため、第1通路の圧力は第2通路よりも低くなり易い。従って、このような状況で供給経路として第1経路を選択すると、第1通路へEGRガスが逆流する可能性がある。本態様によれば、このような状況において、例えば、第1通路の圧力がEGR過給器により第2通路よりも高くなるまで第2経路によるEGRを行って、第1通路の圧力が第2通路よりも高くなった後に供給経路を切り替えること等によって、供給経路切り替え時の圧損の発生を好適に防止することが可能となる。即ち、この態様によれば、EGR通路における圧損をより確実に低下させることが可能となり、極めて高い実践上の利益が提供される。
【0046】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
【0048】
<第1実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステム10の構成について説明する。ここに、図1は、エンジンシステム10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【0049】
図1において、エンジンシステム10は、図示せぬ車両に搭載され、ECU100、エンジン200、EGR装置300及びモータ400を備える。
【0050】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、エンジン200の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットである。ECU100は、本発明に係る「制御手段」の一例であり、ROMに格納される制御プログラムに従って、後述する切替弁駆動制御を実行することが可能に構成されている。
【0051】
エンジン200は、軽油を燃料とする、本発明に係る「内燃機関」の一例たる直列4気筒ディーゼルエンジンである。エンジン200の概略について説明すると、エンジン200は、シリンダブロック201に4本の気筒202が並列配置された構成を有している。そして、各気筒内において燃料を含む混合気が圧縮自着火した際に生じる熱エネルギが、不図示のピストンの往復運動を生じさせ、更にコネクティングロッドを介してピストンに連結されるクランクシャフト(いずれも不図示)の回転運動に変換される構成となっている。以下に、エンジン200の要部構成を、その動作の一部と共に説明する。
【0052】
尚、本実施形態に係るエンジン200は、気筒202が図1において紙面と垂直な方向に4本並列してなる直列4気筒ディーゼルエンジンであるが、個々の気筒202の構成は相互に等しいため、ここでは一の気筒202についてのみ説明することとする。
【0053】
気筒202内における混合気の燃焼に際し、外部から吸入された空気たる吸入空気は、各気筒について共通に設置された吸気マニホールド203に導かれた後、各気筒について独立に設けられた吸気ポート(不図示)に導かれ、吸気ポートと気筒内部とを連通可能に構成された不図示の吸気バルブの開弁時に気筒202内に吸入される。気筒202内には、筒内直噴型のインジェクタ204から燃料たる軽油が噴射される構成となっており、噴射された燃料が各気筒内部で、気筒内に吸入されたガス(以下、「吸気」と略称する)と混合され、上述した混合気となる。
【0054】
エンジン200において、燃料は、不図示の燃料タンクに貯留されている。この燃料タンクに貯留される燃料は、不図示のフィードポンプの作用により燃料タンクから汲み出され、不図示の低圧配管を介して高圧ポンプ(不図示)に圧送される構成となっている。高圧ポンプは、コモンレール205に対し、燃料を供給することが可能に構成されている。尚、高圧ポンプは、公知の各種態様を採り得、ここでは、その詳細については省略することとする。
【0055】
コモンレール205は、ECU100と電気的に接続され、上流側(即ち、高圧ポンプ側)から供給される高圧燃料をECU100により設定される目標レール圧まで蓄積することが可能に構成された、高圧貯留手段である。尚、コモンレール205には、レール圧を検出することが可能なレール圧センサ及びレール圧が上限値を超えないように蓄積される燃料量を制限するプレッシャリミッタ等が配設されるが、ここではその図示を省略することとする。前述したインジェクタ204は、気筒202毎に搭載されており、夫々が高圧デリバリ206を介してコモンレール205に接続されている。
【0056】
ここで、インジェクタ204の構成について補足すると、インジェクタ204は、ECU100から供給される指令に基づいて作動する電磁弁と、この電磁弁への通電時に燃料を噴射するノズル(いずれも不図示)とを備える。当該電磁弁は、コモンレール205の高圧燃料が印加される圧力室と、当該圧力室に接続された低圧側の低圧通路との間の連通状態を制御することが可能に構成されており、通電時に当該加圧室と低圧通路とを連通させると共に、通電停止時に当該加圧室と低圧通路とを相互に遮断する。
【0057】
一方、ノズルは、噴孔を開閉するニードルを内蔵し、圧力室の燃料圧力がニードルを閉弁方向(噴孔を閉じる方向)に付勢している。従って、電磁弁への通電により加圧室と低圧通路とが連通し、圧力室の燃料圧力が低下すると、ニードルがノズル内を上昇して開弁する(噴孔を開く)ことにより、コモンレール205より供給された高圧燃料を噴孔より噴射することが可能に構成される。また、電磁弁への通電停止により加圧室と低圧通路とが相互に遮断されて圧力室の燃料圧力が上昇すると、ニードルがノズル内を下降して閉弁することにより、噴射が終了する構成となっている。
【0058】
尚、燃料は、個々の気筒202において、インジェクタ204を介し、目標噴射量に相当する燃料が、燃焼室内の急激な温度上昇を防止するための少量のパイロット噴射と、目標噴射量とパイロット噴射量との差分に相当するメイン噴射とに分割して噴射される構成となっている。
【0059】
上述した混合気は、圧縮工程において自着火して燃焼し、燃焼済みガスとして、或いは一部未燃の混合気として、吸気バルブの開閉に連動して開閉する排気バルブ(不図示)の開弁時に排気ポート(不図示)を介して排気マニホールド207に導かれる構成となっている。この排気マニホールド207は、排気通路208に連通しており、排気の大部分は、この排気通路208に導かれる構成となっている。
【0060】
一方、排気通路208には、LP(Low Pressure:低圧)側タービンハウジング209に収容される形でLP側タービン210が設置されている。LP側タービン210は、排気通路208に導かれた排気の圧力により所定の回転軸を中心として回転可能に構成されている。このLP側タービン210の回転軸は、LP側コンプレッサハウジング211に収容される形で吸気通路213に設置されたLP側コンプレッサ212と共有されており、LP側タービン210が排圧により回転すると、LP側コンプレッサ212も当該回転軸を中心として回転する構成となっている。尚、吸気通路213は、吸気マニホールド203と共に本発明に係る「吸気系」の一例を構成している。LP側コンプレッサ212は、図示せぬクリーナを介して外界から吸気通路213に導かれた吸入空気を、その回転に伴う圧力により吸気マニホールド203に圧送する(即ち、過給する)ことが可能に構成された、本発明に係る「吸気過給器」の一例である。
【0061】
尚、LP側タービン210には、ノズルベーンの開度に応じてLP側タービン210を駆動する排気圧を調整可能なVN(Variable Nozzle:可変ノズル)214が設けられている。
【0062】
一方、吸気通路213においてLP側コンプレッサ212の下流側の分岐位置から分岐するHP(High Pressure:高圧)側吸気通路215(尚、HP側吸気通路215もまた、本発明に係る「吸気系」の一例である)には、HP側コンプレッサハウジング216に収容される形でHP側コンプレッサ217が設置されている。HP側コンプレッサ217は、HP側吸気通路215に導かれた吸入空気(即ち、LP側コンプレッサ212により過給された吸入空気)を更に過給することが可能に構成された、本発明に係る「吸気過給器」の他の一例であり、LP側コンプレッサ212と相互に直列に配置されている。尚、HP側コンプレッサ217により過給された吸入空気は、HP側吸気通路215の一部であるHP側コンプレッサ出口部218を介し、分岐位置下流側において再び吸気通路213に戻される構成となっている。このように、本実施形態に係るエンジン200では、LP側コンプレッサ212とHP側コンプレッサ217とにより、所謂2段過給がなされ得る構成となっている。
【0063】
HP側コンプレッサ出口部218と、LP側コンプレッサ212の出口であるLP側コンプレッサ出口部219(吸気通路213の一部であって、前述した分岐位置よりも下流側に設定される)とは、吸気切替弁220を介して接続されている。吸気切替弁220は、開度が全開開度と全閉開度の間で二値的に可変な弁体を備え、当該開度に応じて吸入空気の供給経路を切り替えることが可能に構成された、電磁開閉弁である。吸気切替弁220は、ECU100と電気的に接続されており、その開度は、然るべき駆動系を介してECU100により上位に制御される構成となっている。
【0064】
補足すると、この吸気切替弁220により、LP側コンプレッサ出口部219とHP側コンプレッサ出口部218との連通が遮断された状態(即ち、全閉開度に相当する状態)においては、LP側コンプレッサ212により過給された吸入空気は、その全量がHP側コンプレッサ217に供給される。また、この吸気切替弁220により、LP側コンプレッサ出口部219とHP側コンプレッサ出口部218とが連通せしめられた状態(即ち、全開開度に相当する状態)においては、後述するようにHP側コンプレッサ217が停止されることにより、LP側コンプレッサ212により過給された吸入空気は、HP側コンプレッサ217に殆ど供給されることなく(即ち、より流路抵抗の低いLP側コンプレッサ出口部219を通過して)下流側の吸気マニホールド203へ供給される。尚、吸気切替弁220は、その開度が連続的に可変な構造を有していてもよい。
【0065】
モータ400は、不図示のバッテリから供給される電力により回転駆動可能に構成されてなる、本発明に係る「モータ」の一例たるDCブラシレスモータであり、ロータを貫通する出力軸たるモータ軸401の一端部が、先に述べたHP側コンプレッサ217の回転軸に接続されている。このため、モータ軸401の回転速度に応じて、HP側コンプレッサ217の回転速度も変化し、HP側コンプレッサ217の過給圧が変化する。即ち、HP側コンプレッサ217は、本発明に係る「モータ駆動過給器」の一例である。
【0066】
モータ400は、不図示の駆動系がECU100と電気的に接続されており、その駆動状態がECU100により制御される構成となっている。即ち、HP側コンプレッサ217の過給状態は、ECU100により適宜調整可能となっている。
【0067】
吸気通路213には、吸入空気の量を調節可能なディーゼルスロットルバルブ221が配設されている。このディーゼルスロットルバルブ221は、ECU100と電気的に接続され且つECU100により上位に制御されるスロットルバルブモータ222から供給される駆動力により回転可能に構成された回転弁であり、ディーゼルスロットルバルブ221を境にした吸気通路213の上流部分と下流部分とをほぼ遮断する全閉位置から、ほぼ全面的に連通させる全開位置まで、その回転位置が連続的に制御される構成となっている。尚、エンジン200は、ディーゼルエンジンであり、その出力は、ガソリン等を燃料とするエンジンにおける空燃比制御(吸入空気量制御)と異なり、噴射量の増減制御を介してコントロールされる。従って、ディーゼルスロットルバルブ221は、エンジン200の動作期間において、基本的に全開位置(図示するディーゼルスロットルバルブ221の位置が全開位置に相当する)に制御される。尚、吸気通路213には、過給された吸入空気を冷却することが可能なインタークーラ(図示「I/C」)223が設置されている。
【0068】
また、吸気通路213には、インマニ圧力センサ224が設置されている。インマニ圧力センサ224は、吸気マニホールド203における吸気の圧力たるインマニ圧Pb(エンジン200全体としての過給圧と実質的に等価である)を検出することが可能に構成されたセンサである。インマニ圧力センサ224は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたインマニ圧Pbは、ECU100により一定又は不定のタイミングで参照される構成となっている。
【0069】
また、排気マニホールド207には、エキマニ圧力センサ225が設置されている。エキマニ圧力センサ225は、排気マニホールド207における排気の圧力たるエキマニ圧P4(所謂エンジン背圧である)を検出することが可能に構成されたセンサである。エキマニ圧力センサ225は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたエキマニ圧P4は、ECU100により一定又は不定のタイミングで参照される構成となっている。
【0070】
尚、排気通路208には、不図示のDPF(Diesel Particulate Filter)を含む触媒システムが設置されている。このDPFは、エンジン200から排出されるPMを捕集可能且つ浄化可能に構成された、所謂セラミックウォールフロー型のフィルタであり、担体表面に形成された無数の細孔部にPMを捕捉すると共に、所定の再生処理において、捕捉したPMを酸化燃焼させることにより排気の浄化を可能としている。補足すると、この触媒システムにおいて、このDPFの前段には、酸化触媒が設置されており、排気中のNOは、この酸化触媒により一旦酸化力の良好なNO2に酸化され、DPFにおけるPMの再生が促される構成となっている。また、この触媒システムには、例えばNSR(Nox Strage Reduction:NOx吸蔵還元)触媒等、他の触媒装置が備わっていてもよい。
【0071】
また、気筒202を収容するシリンダブロック201における、気筒202の外周部位には、LLC等の冷却水を循環供給するためのウォータジャケット(不図示)が設けられており、気筒202を含むエンジン200全体を冷却可能に構成されている。
【0072】
また、エンジンシステム10において、ECU100には、図示する以外にも、エンジン200の、或いはエンジン200が搭載される車両の運転条件を規定する各種の指標値が、各指標値について設置された各種のセンサ(不図示)を介して電気的に入力される構成となっている。例えば、ECU100は、エンジン200の機関回転速度NEをNEセンサから、またアクセルペダルの開度(即ち、アクセル開度)をアクセルポジションセンサから取得することが可能に構成されている。
【0073】
尚、本実施形態において、エンジン200はディーゼルエンジンとして構成されるが、本発明に係る内燃機関は、ガソリン或いはアルコールを燃料とするエンジンにも同様に適用可能である。更には、気筒配列も多種多様であってよい。
【0074】
次に、EGR装置300について説明する。EGR装置300は、EGR導入通路301、EGR通路302、EGRクーラ303、EGRクーラバイパス弁304、EGRバルブ305、EGRコンプレッサハウジング306、EGRコンプレッサ307、第1切替弁308、第2切替弁309、EGRコンプレッサ出口圧力センサ310、第1通路311及び第2通路312を備え、排気の一部をEGRガスとして吸気マニホールド203に循環させることが可能に構成されている。
【0075】
EGR導入通路301は、排気通路208と第1通路311とを連通させる管状部材であり、LP側タービンハウジング209よりも上流側において排気通路208から分岐する構成となっている。また、EGR導入通路301における排気通路208と反対側の端部は、EGRコンプレッサハウジング306に接続されており、EGR導入通路301は、その内部においてEGRコンプレッサハウジング306と連通する構成となっている。
【0076】
EGR通路302は、一端部が第1通路311に接続され、また他端部が吸気マニホールド203の上流側にある接続位置において吸気通路213に接続され、EGR導入通路301、第1通路311及び第2通路312と共に本発明に係る「EGR通路」の一例を構成する中空且つ金属製の管状部材である。
【0077】
EGRクーラ303は、EGR通路302に設けられたEGRガスの冷却装置である。EGRクーラ303は、外周部にエンジン200の冷却水配管が張り巡らされた構成を有し、EGR通路302に導かれEGRクーラ303を通過するEGRガスは、この冷却水との熱交換により冷却され、下流側(即ち、吸気通路213側)へ導かれる構成となっている。EGRクーラ303には、夫々が上述したウォータジャケットに連通するインレットパイプ及びアウトレットパイプ(いずれも不図示)が接続されており、冷却水は、当該インレットパイプから当該冷却水配管に流入し、当該アウトレットパイプを介して当該冷却水配管の外に排出される。排出された冷却水は、エンジン200の冷却水循環系に還流され、所定の経路を経て再びインレットパイプから供給される。
【0078】
EGR通路302には、EGRクーラ303の上流側及び下流側を連通させるバイパス通路(符合省略)が形成されている。EGRガスが、このバイパス通路に導かれた場合、EGRガスは、このバイパス通路によりバイパスされるEGR通路302の被バイパス区間に設置されたEGRクーラ303を通過することなく吸気系に還流する構成となっている。
【0079】
EGRクーラバイパス弁304は、EGR通路302において、EGRクーラ303の上流側(即ち、排気マニホールド側)端部付近に設置され(尚、このような構成は一例であり、下流側端部近傍であってもよい)、弁体の位置制御により、EGR通路302におけるEGRガスの供給経路を二値的に切り替えることが可能な弁装置である。EGRクーラバイパス弁304は、ECU100と電気的に接続されており、その弁体位置は、ECU100により上位に制御される構成となっている。
【0080】
より具体的には、EGRクーラバイパス弁304は、その弁体の位置が、上述した被バイパス区間へのEGRガスの流入を遮断してEGRガスをバイパス通路のみへ導くバイパス側弁体位置と、それとは逆にバイパス通路へのEGRガスの流入を遮断して、被バイパス区間のみにEGRガスを導くクーラ側弁体位置との間で二値的に且つ選択的に切り替えられる構成となっている。
【0081】
尚、バイパス通路及びEGRクーラバイパス弁304の構成は、ここで述べる形態に限定されない。例えば、EGRクーラバイパス弁304は、単数又は複数の弁体の開閉状態の段階的又は連続的な制御により、EGRクーラ303をバイパスするEGRガスの量を段階的又は連続的に変化させ得るように構成されていてもよい。
【0082】
EGRバルブ305は、先に述べた吸気通路213との接続位置よりも上流側においてEGR通路302に設置され、弁体の開閉状態の制御によりEGRガスの量(即ち、EGR量)を変化させることが可能に構成された電磁開閉弁である。EGRバルブ305は、ECU100と電気的に接続されており、その駆動状態はECU100により上位に制御される構成となっている。補足すると、EGR通路302に導かれたEGRガスは、先に述べたEGRクーラバイパス弁304の弁体位置が、上述した二種類の弁体位置のいずれであるにせよ、最終的には、このEGRバルブ305の開度(即ち、開弁の度合いであり、例えば、全開を100(%)、全閉を0(%)等として規格化された数値として表され得る)に応じた量が吸気マニホールド203に供給される。
【0083】
EGRコンプレッサ307は、EGRコンプレッサハウジング306に収容される形で設置された、本発明に係る「EGR過給器」の一例たる過給器である。EGRコンプレッサ307は、EGR導入通路301を介して導かれた排気の一部(即ちEGRガス)を、その回転軸の回転速度に応じて下流側に接続された第1通路311に圧送することが可能であり、このEGRガスの圧送によりEGRガスが過給される構成となっている。EGRコンプレッサ307の回転軸は、先述したモータ軸401の他端部に、後述する電磁クラッチ402を介して連結されている。即ち、EGRコンプレッサ307は、新気過給用のHP側コンプレッサ217と、その回転軸を実質的に共有しており、所謂一軸配置が実現されている。
【0084】
第1通路311は、一端部がEGRコンプレッサハウジング306に接続され、他端部がEGR通路302に接続された、中空且つ金属製の管状部材である。尚、第1通路311とEGR通路302とは相互に一体に形成されていてもよいし、溶接されていてもよいし、或いは然るべき連結部材(例えば、フランジ、ガスケット或いはカプラ等)により気密を保って連結されていてもよい。第1通路311は、EGR導入通路301と共に、本発明に係る「第1通路」の一例を構成している。
【0085】
第2通路312は、一端部が排気マニホールド207に接続され、他端部が、EGR通路302に接続されてなる、本発明に係る「第2通路」の一例たる中空且つ金属製の管状部材である。第2通路312は、排気マニホールド207に滞留する排気を、EGRガスとして、先述のEGRコンプレッサ307を経由することなく(即ち、バイパスして)EGR通路302に供給可能である。尚、第2通路312とEGR通路302とは相互に一体に形成されていてもよいし、溶接されていてもよいし、或いは然るべき連結部材(例えば、フランジ、ガスケット或いはカプラ等)により気密を保って連結されていてもよい。
【0086】
第1切替弁308は、全閉と全開との間で開閉状態を二値的に制御可能な弁体を備えた電磁開閉弁である。第1切替弁308は、第1通路311に設置されており、弁体の開閉状態に応じて第1通路311とEGR通路302との連通状態を二値的に変化させることが可能である。即ち、弁体が全開状態にある場合(即ち、本発明に係る「開放」の一例)には、第1通路311とEGR通路302とは連通し、弁体が全閉状態にある場合(即ち、本発明に係る「閉鎖」の一例)には、第1通路311とEGR通路302との連通は遮断される。なお、第1切替弁308は、本発明に係る「第1開閉弁」の一例である。
【0087】
第2切替弁309は、第1切替弁308と同様、全閉と全開との間で開閉状態を二値的に制御可能な弁体を備えた電磁開閉弁である。第2切替弁309は、第2通路312に設置されており、弁体の開閉状態に応じて第2通路312とEGR通路302との連通状態を二値的に変化させることが可能である。即ち、弁体が全開状態にある場合(即ち、本発明に係る「開放」の一例)には、第2通路312とEGR通路302とは連通し、弁体が全閉状態にある場合(即ち、本発明に係る「閉鎖」の一例)には、第2通路312とEGR通路302との連通は遮断される。尚、第2切替弁309は、本発明に係る「第2開閉弁」の一例である。
【0088】
このようなEGR装置300において、EGRガスは、第1切替弁308が開弁し且つ第2切替弁209が閉弁した状態において排気マニホールド207、EGR導入通路301、EGRコンプレッサ307、第1通路311及びEGR通路302を経由して吸気マニホールド203に導かれ、第1切替弁308が閉弁し且つ第2切替弁209が開弁した状態において排気マニホールド207、第2通路312及びEGR通路302を経由して吸気マニホールド203に導かれる。前者の経路(EGRコンプレッサ307を経由する経路)は、即ち、本発明に係る「第1経路」の一例であり、後者の経路(EGRコンプレッサ307をバイパスする経路)は、即ち、本発明に係る「第2経路」の一例である。尚、これ以降は適宜この「第1経路」及び「第2経路」なる呼称を採用することとする。
【0089】
EGRコンプレッサ出口圧力センサ310は、第1通路311に設置され、第1通路311におけるEGRガスの圧力たるコンプレッサ出口圧Pegrを検出することが可能に構成されたセンサである。EGRコンプレッサ出口圧力センサ310は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたコンプレッサ出口圧Pegrは、ECU100により一定又は不定のタイミングで参照される構成となっている。尚、第2通路312におけるEGRガスの圧力は、エキマニ圧力センサ225により検出されるエキマニ圧P4によって代替される。
【0090】
一方、エンジンシステム10は、電磁クラッチ402を備える。電磁クラッチ402は、相互に対向する金属製のクラッチ板(符号省略)を有し、不図示のソレノイド駆動装置に対する通電制御により電磁力を適宜に生じさせ、両クラッチ板を結合又は分離せしめる構造を有する、電磁駆動式のクラッチ装置である。電磁クラッチ402は、ECU100と電気的に接続されており、電磁クラッチ402の駆動状態(ここでは、ソレノイド駆動装置の通電状態)は、ECU100により上位に制御される構成となっている。
【0091】
ここで、モータ400の回転軸たるモータ軸401の両端部には、夫々HP側コンプレッサ217の回転軸及びEGRコンプレッサ307の回転軸が連結されている。上記クラッチ板は、このモータ軸401におけるEGRコンプレッサ307の回転軸と対向する端部と、EGRコンプレッサ307におけるモータ軸401と対向する端部とに夫々固定されている。従って、両クラッチ板が相互に結合した結合状態においては、モータ400とEGRコンプレッサ307とは、両軸体が結合された一体とみなし得る回転軸により一体に或いは同期して回転する。一方で、両クラッチ板が相互に分離した分離状態においては、EGRコンプレッサ307は、その回転駆動力を失うこととなり、停止する。
【0092】
<実施形態の動作>
エンジンシステム10では、LP側コンプレッサ212及びHP側コンプレッサ217を使用した吸入空気の二段過給が可能であり、比較的高い過給圧(インマニ圧Pbと実質的に等価である)を実現可能である。このため、スモークの排出を抑制しつつ動力性能が担保される。一方、このように過給圧を高め得る点に鑑みれば、インマニ圧Pbとエキマニ圧P4との偏差は、相対的に減少し易く、この圧力差を利用してEGRガスを吸気マニホールド203に導くのみの構成では、十分なEGR量が確保され難い。
【0093】
その点、エンジンシステム10にはEGRコンプレッサ307が備わっており、EGRガスの過給が可能となっている。このため、過給圧の上昇に伴うEGR量の低下を回避することが出来、EGR(EGRガスを吸気系に循環させることを指す)によるNOxの低減も好適に図られる。即ち、エンジンシステム10によれば、スモーク及びNOxの排出量を低減することが可能となる。
【0094】
また、HP側コンプレッサ217は、モータ400からの駆動力の供給を受けて作動するモータ駆動型の過給器であり、その駆動に排気のエネルギを要しない。このため、吸入空気の過給を行う過給器が全て排気駆動型である場合と較べて排気温度の低下が抑制されている。即ち、エンジンシステム10によれば、上記スモーク及びNOxの排出量を低下させる背反として触媒システムにおける排気の浄化効率が低下するといった事態を招来せずに済み、排気の好適な浄化を図ることができる。
【0095】
また、エンジンシステム10では、ECU100により実行される切替弁駆動制御により、EGRガスの供給経路における圧損が好適に低減される。ここで、図2を参照し、切替弁駆動制御の詳細について説明する。ここに、図2は、切替弁駆動制御のフローチャートである。
【0096】
図2において、ECU100は、例えばアクセル開度や機関回転速度等車両の各種運転条件が、予めEGRを実行すべきものとして定められたEGR領域に該当するか否かを判別する(ステップS101)。ステップS101に係る判別には、EGR制御に係る公知の各種態様を適用可能であるため、ここではその詳細を省略する。
【0097】
車両の運転条件がEGR領域に該当しない場合(ステップS101:NO)、ECU100は、処理を実質的に待機状態に維持すると共に、車両の運転条件がEGR領域に該当する場合(ステップS101:YES)、ECU100は更に、係る運転条件がEGRコンプレッサ307によるEGRガスの過給を要するものとして定められたEGR過給領域に該当するか否かを判別する(ステップS102)。尚、この種のEGR過給領域に係る判別も、公知の各種態様を適用可能であるため、ここではその説明を省略する。
【0098】
尚、エンジンシステム10においてEGRコンプレッサ307は、モータ400をその駆動力源としている。従って、EGRコンプレッサ307によりEGRガスの過給がなされる期間においては、必然的にHP側コンプレッサ217による吸入空気の過給も行われる。一方で、HP側コンプレッサ217による吸入空気の過給は、LP側タービン210が十分に駆動され難い(即ち、LP側コンプレッサ212による過給が不十分となり易い)低回転領域において顕著に必要とされ易い。従って、EGRコンプレッサ307によるEGRガスの過給は、定性的には、エンジン200の低回転領域において実行される。
【0099】
車両の運転条件がEGR過給領域に該当する場合(ステップS102:YES)、ECU100は、EGRコンプレッサ307が既に稼働中であるか否かを判別する(ステップS103)。ECU100は、EGRコンプレッサ307が非稼動状態にあれば(ステップS103:NO)、EGRコンプレッサ307を始動させ(ステップS104)、処理をステップS105に移行させる。また、ECU100は、EGRコンプレッサ307が既に稼動状態にあれば(ステップS103:YES)、そのまま処理をステップS105に移行させる。
【0100】
ステップS105においては、EGRコンプレッサ307が始動してからの経過時間Tpass1が基準値Aを超えたか否かが判別される(ステップS105)。尚、ECU100は、EGRコンプレッサ307の始動時に、内蔵タイマにより係る経過時間Tpass1の計測を開始するものとする。経過時間Tpass1が基準値Aに達さない場合(ステップS105:NO)、ECU100は、経過時間Tpass1が基準値Aに達するまで処理を待機状態に維持すると共に、経過時間Tpass1が基準値Aを超えた場合(ステップS105:YES)、ECU100は、第1切替弁308を開弁させ且つ第2切替弁309を閉弁させ、EGRガスの供給経路を先述の第1経路に制御する(ステップS106)。尚、基準値Aについては後述する。ステップS106が実行されると、処理はステップS101に戻される。
【0101】
一方、ステップS102において、車両の運転条件がEGRガスの過給領域に該当しない場合(ステップS102:NO)、ECU100は、EGRコンプレッサ307が既に非稼働状態であるか否かを判別する(ステップS107)。ECU100は、EGRコンプレッサ307が未だ稼動状態にあれば(ステップS107:NO)、EGRコンプレッサ307を停止させ(ステップS108)、処理をステップS109に移行させる。また、ECU100は、EGRコンプレッサ307が既に非稼動状態にあれば(ステップS107:YES)、そのまま処理をステップS109に移行させる。
【0102】
ステップS109においては、EGRコンプレッサ307が停止してからの経過時間Tpass2が基準値Bを超えたか否かが判別される(ステップS109)。尚、ECU100は、EGRコンプレッサ307の停止時に、内蔵タイマにより係る経過時間Tpass2の計測を開始するものとする。経過時間Tpass2が基準値Bに達さない場合(ステップS109:NO)、ECU100は、経過時間Tpass2が基準値Bに達するまで処理を待機状態に維持すると共に、経過時間Tpass2が基準値Bを超えた場合(ステップS109:YES)、ECU100は、第1切替弁308を閉弁させ且つ第2切替弁309を開弁させ、EGRガスの供給経路を先述の第2経路に制御する(ステップS110)。尚、基準値Bについては後述する。ステップS110が実行されると、処理はステップS101に戻される。切替弁駆動制御は、このようにして行われる。
【0103】
この切替弁駆動制御によれば、EGRコンプレッサ307によりEGRガスの過給がなされるに際し、EGRガスの供給経路が第1経路とされ、EGRコンプレッサ307により過給されたEGRガスが吸気マニホールド203に供給される。従って、インマニ圧Pbが過度に上昇したとしてもEGRガスの供給が阻害されることはなく、所望のEGR量を好適に維持することが可能となる。またこの際、第2通路312は、第2切替弁309により閉鎖されるため、高圧側の第1通路311から低圧側の第2通路312へEGRガスが逆流することによる圧損の発生が抑制される。
【0104】
一方、この切替弁駆動制御によれば、EGRコンプレッサ307によるEGRガスの過給が停止されるに際し、EGRガスの供給経路が第2経路とされ、排気マニホールド207から吸気マニホールド203へ、EGRコンプレッサ307を経由することなくEGRガスが供給される。従って、非稼動状態のEGRコンプレッサ307が流路抵抗となって、EGRガスの供給経路における圧損が増大する事態が防止される。またこの際、第1通路311は第1切替弁308により閉鎖されるため、高圧側の第2通路312(EGRガスの過給がなされない状態においては、排気直後の排気を供給することが可能な第2通路312の方が高圧となり易い)から低圧側の第1通路311へEGRガスが逆流することがなく、その点においても圧損の発生が防止される。即ち、本実施形態に係る切替弁駆動制御によれば、EGRの制御性が好適に担保されるのである。
【0105】
ここで、図3及び図4を参照して、上述した基準値A及び基準値Bについて説明する。ここに、図3は、EGRコンプレッサ307が非稼動状態から稼動した状態へ移行する際のEGR装置300の動作状態を説明するタイミングチャートであり、図4は、EGRコンプレッサ307が稼動した状態から非稼動状態へ移行する際のEGR装置300の動作状態を説明するタイミングチャートである。
【0106】
図3において、縦方向には、上段から順に、EGRコンプレッサ307の稼動状態、コンプレッサ出口圧Pegr、及び第1切替弁308及び第2切替弁309の動作状態が表されており、夫々において横軸には共通の時刻が表されている。
【0107】
図3において、時刻T1に上述したようにEGRコンプレッサ307が非稼動状態から始動されたとする。この時点のコンプレッサ出口圧Pegrは、エキマニ圧P4未満のPegr0である。ここで、EGRコンプレッサ307の始動直後の過渡期間に相当する、時刻T1と時刻T2とに挟まれた時間領域においては、EGRコンプレッサ307に起因する圧損の影響もあり、第1通路311の圧力たるコンプレッサ出口圧Pegrは、第2通路312の圧力たるエキマニ圧P4よりも低い状態となる。
【0108】
従って、この期間に第1切替弁308を開弁させると、第2通路312から第1通路311へのEGRガスの逆流が生じて圧損が増大する。また、場合によっては、EGRコンプレッサ307が所謂コンプレッササージ状態に陥る可能性がある。
【0109】
そこで、切替弁駆動制御においては、コンプレッサ出口圧Pegrが、エキマニ圧P4を超えた時点で第1切替弁311の開弁が許可される構成となっており、上述した基準値Aが、コンプレッサ出口圧Pegrがエキマニ圧P4を超えた旨に相当する時間値として予め適合により決定されているのである。即ち、図示するように、経過時間Tpass1が基準値Aを超えた時刻T2において第1切替弁308が開弁される。この時点における第1通路311の圧力は、少なくとも第2通路312と同等かそれ以上であり、EGRガスが逆流することはない。
【0110】
尚、本実施形態では、コンプレッサ出口圧Pegrが検出されない構成においても十分な効果が得られるように、時間適合値としての基準値Aが参照されているが、本実施形態に係るエンジンシステム10においては、エキマニ圧P4及びコンプレッサ出口圧Pegrが、各々に対応するセンサにより検出可能であるから、無論、このような時間適合値を使用せずとも、検出されたコンプレッサ出口圧Pegr及びエキマニ圧P4を指標値として切替弁の開閉状態が制御されてもよい。
【0111】
一方、第2切替弁309は、第1切替弁308の開弁に同期して閉弁してしまうとEGRガスの供給が遅滞する可能性があるため、第1切替弁308の開弁タイミングよりも時系列上後のタイミングで閉弁される。この第2切替弁309の閉弁タイミングは、第1切替弁308の開弁タイミングよりも制約が少ないが、EGRコンプレッサ307によるEGRガスの過給によりコンプレッサ出口圧Pegrが十分に上昇した状態では、コンプレッサ出口圧Pegrに対する第2通路312の圧力(エキマニ圧P4)及び吸気マニホールド203の圧力(吸気圧Pb)がいずれも十分に小さくなって、EGRガスが吸気マニホールド203側に指向的に供給される理由が消失し、EGRガスの一部は、第2通路312を逆流する形となって圧損が増大する。このため、コンプレッサ出口圧Pegrが、第2通路312へのEGRガスの逆流が実践上無視し得る程度の範囲で収まり得る限界値として適合により決定された、図示Pegr1(Pegr1>P4)まで上昇したと推定され得る時刻T3において、第2切替弁309は閉弁される。上述した切替弁駆動制御のうち、EGRコンプレッサ307の始動前後における部分は、詳細にはこのように実行され、EGRガスの過給を可及的に高効率に遂行しつつ、EGRの制御性が好適に担保される。
【0112】
尚、既に述べたように、本実施形態においては、コンプレッサ出口圧Pegrとエキマニ圧P4は夫々検出可能に構成されているから、実際のコンプレッサ出口圧Pegrが上記Pegr1に到達したことをもって第2切替弁309が閉弁されてもよい。
【0113】
図4において、縦方向には、上段から順に、EGRコンプレッサ307の稼動状態、コンプレッサ出口圧Pegr、及び第1切替弁308及び第2切替弁309の動作状態が表されており、夫々において横軸には共通の時刻が表されている。
【0114】
図4において、時刻T4にEGRコンプレッサ307が稼動した状態から停止されたとする。この時点のコンプレッサ出口圧Pegrを図示Pegr3とする。ここで、EGRコンプレッサ307の停止後に第1切替弁308を開弁状態に維持すると、折角過給したEGRガスが第1通路311に逆流して圧損の増大を招く。そのため、第1切替弁308は、時刻T4において速やかに閉弁される。
【0115】
一方、第2切替弁309は時刻T4において閉弁されているから、時刻T4において、EGR通路302へのEGRガスの供給は遮断された状態にある。従って、EGR量の不足を防止する観点からは、第2切替弁309を速やかに開弁させる必要がある。
【0116】
他方、EGRコンプレッサ307の停止時点及び停止直後の過渡期間においては、第1切替弁308により第1通路311が閉鎖されたことに起因して、コンプレッサ出口圧Pegrは一時的に上昇しており、その後、第1通路311に滞留するEGRガスが排気通路208側に導かれることにより、コンプレッサ出口圧Pegrは時間経過と共に徐々に減少傾向を辿る。
【0117】
然るに、第1切替弁308が閉弁された直後においては、未だコンプレッサ出口圧Pegrはエキマニ圧P4に対し十分に高く、この状態で第2切替弁309を開弁すると、第1通路311に滞留するEGRガスの一部が排気マニホールド207に逆流して、圧損が生じる。このため、ECU100は、コンプレッサ出口圧Pegrが、この種の逆流を招来しない程度に低い値として適合により決定されたPegr2(Pegr2<Pegr3であり、上述したPegr1と同等の値であってもよい)まで低下したと推定される時刻T5において第2切替弁309を開弁させる。上記切替弁駆動制御における基準値Bとは、この時刻T4と時刻T5との間の時間差に相当する適合値である。上述した切替弁駆動制御のうち、EGRコンプレッサ307の停止前後に係る部分は、詳細にはこのように実行され、EGRの制御性が好適に担保される。尚、この場合も、実際のコンプレッサ出口圧Pegr及びエキマニ圧P4を参照値としてより精細に第2切替弁309の開弁制御を実行してもよい。
【0118】
<第2実施形態>
本発明に係る「第1開閉弁」及び「第2開閉弁」の態様は、第1実施形態に係る第1切替弁308及び第2切替弁309に限定されない。このような趣旨に基づいた本発明の第2実施形態に係るエンジンシステム11ついて説明する。始めに、図5を参照し、エンジンシステム11の構成について説明する。ここに、図5は、エンジンシステム11の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
【0119】
図5において、エンジンシステム11は、EGR装置300に替えてEGR装置500を備える点において、第1実施形態に係るエンジンシステム10と相違している、EGR装置500は、第1切替弁308及び第2切替弁309に替えて、夫々第1切替弁501及び第2切替弁502を備える点において、EGR装置300と相違している。第1切替弁501及び第2切替弁502は、夫々差圧弁として構成されている。
【0120】
第1切替弁501は、コンプレッサ出口圧Pegrがエキマニ圧P4以下である圧力領域において全閉状態となり、コンプレッサ出口圧Pegrがエキマニ圧P4に対し設定圧ΔP以上に高圧になると全開状態となるように構成されている。
【0121】
第2切替弁502は、コンプレッサ出口圧Pegrがエキマニ圧P4以下である圧力領域において全開状態となり、コンプレッサ出口圧Pegrがエキマニ圧P4に対し設定圧ΔP以上に高圧になると全閉状態となるように構成されている。尚、これら差圧弁としての両切替弁は、上記設定圧ΔP未満の圧力領域においては、オリフィスのコンダクタンスにより、開閉状態が連続的に緩やかに切り替わる構成となっている。
【0122】
ここで、図6及び図7を参照し、係るEGR装置500の動作について説明する。ここに、図6は、EGRコンプレッサ307が非稼動状態から稼動した状態へ移行する際のEGR装置500の動作状態を説明するタイミングチャートであり、図7は、EGRコンプレッサ307が稼動した状態から非稼動状態へ移行する際のEGR装置500の動作状態を説明するタイミングチャートである。尚、これら各図において、図3及び図4と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
【0123】
図6において、時刻T2にコンプレッサ出口圧Pegrがエキマニ圧P4まで上昇すると、第1切替弁501及び第2切替弁502の弁体位置は夫々開弁側及び閉弁側に変化し始める。ここで、時刻T3においてコンプレッサ出口圧PegrがPegr1まで上昇した時点で、エキマニ圧P4とコンプレッサ出口圧Pegrとの偏差が上記設定圧ΔPとなったとする。この場合、時刻T3において、第1切替弁501及び第2切替弁502は夫々全開状態及び全閉状態となる。即ち、第1実施形態と同様に、実践上EGRは遅滞なく遂行される。
【0124】
図7において、時刻T5にコンプレッサ出口圧PegrがPegr2まで低下し、その時点のエキマニ圧P4との偏差が上記設定圧ΔPとなったとする。この場合、第1切替弁501及び第2切替弁502は、時刻T5において夫々閉弁側及び開弁側へ変化し始め、時刻T6においてコンプレッサ出口圧Pegrがエキマニ圧P4に等しくなると、夫々全閉状態及び全開状態となる。この場合、第1切替弁501の閉弁タイミングが第1実施形態と異なるものの、両切替弁が同一の設定圧に基づいて駆動するため、常に少なくとも一方の弁を開弁させておくことが可能となり、EGR量が不足するといった事態は生じない。また、設定圧を適切に定めておくことにより、EGRガスの逆流も防止することができる。即ち、実質的には第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0125】
何より、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に切替弁駆動制御を行う場合に、第1及び第2切替弁をECU100側でアクティブに駆動する必要が生じないため、ECU100側の負荷を軽減することが可能であり、圧損を抑制しEGRの制御性を向上させる旨の実践上の利益が簡便にして享受される。
【0126】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う排気浄化装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンシステムの構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【図2】図1のエンジンシステムにおいてECUにより実行される切替弁駆動制御のフローチャートである。
【図3】図2の切替弁駆動制御において、EGRコンプレッサが非稼動状態から稼動した状態へ移行する際のEGR装置の動作状態を説明するタイミングチャートである。
【図4】図2の切替弁駆動制御において、EGRコンプレッサが稼動した状態から非稼動状態へ移行する際のEGR装置の動作状態を説明するタイミングチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係るエンジンシステムの構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【図6】図5のエンジンシステムにおいて、EGRコンプレッサが非稼動状態から稼動した状態へ移行する際のEGR装置の動作状態を説明するタイミングチャートである。
【図7】図5のエンジンシステムにおいて、EGRコンプレッサが稼動した状態から非稼動状態へ移行する際のEGR装置の動作状態を説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0128】
10…エンジンシステム、100…ECU、200…エンジン、209…LP側タービンハウジング、210…LP側タービン、211…LP側コンプレッサハウジング、212…LP側コンプレッサ、216…HP側コンプレッサハウジング、217…HP側コンプレッサ、220…吸気切替弁、224…インマニ圧力センサ、225…エキマニ圧力センサ、300…EGR装置、301…EGR導入通路、302…EGR通路、303…EGRクーラ、304…EGRクーラバイパス弁、305…EGRバルブ、306…EGRコンプレッサハウジング、307…EGRコンプレッサ、308…第1切替弁、309…第2切替弁、310…EGRコンプレッサ出口圧力センサ、311…第1通路、312…第2通路、400…モータ、401…モータ軸、402…電磁クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより駆動され且つ吸入空気を過給可能に構成されたモータ駆動過給器を含む、内燃機関の吸気系に相互に直列に配置された複数の吸気過給器と、
前記内燃機関の排気系と接続され、該排気系から排気の一部をEGRガスとして前記吸気系に供給可能に構成されると共に相異なる第1通路及び第2通路を含んでなるEGR通路と、
前記第1通路に設置され、稼動時に前記EGRガスを過給可能なEGR過給器と、
前記EGR通路において前記第1通路及び前記第2通路の各々を開放及び閉鎖可能に設置され、前記EGR通路における前記EGRガスの供給経路を、(1)前記第1通路が開放され且つ前記第2通路が閉鎖された状態に対応する第1経路と、(2)前記第1通路が閉鎖され且つ前記第2通路が開放された状態に対応する第2経路との間で切り替え可能な切り替え手段と
を具備することを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
前記切り替え手段は、前記第1通路に設置され前記第1通路を開放及び閉鎖可能な第1開閉弁と、前記第2通路に設置され前記第2通路を開放及び閉鎖可能な第2開閉弁とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記EGR過給器の稼動状態に応じて前記供給経路が切り替わるように前記切り替え手段を制御する制御手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記EGRガスが前記吸気系に供給されるEGR実行時における前記EGR過給器の稼動時において、前記供給経路が前記第1経路となるように前記切り替え手段を制御する
ことを特徴とする請求項3に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記EGRガスが前記吸気系に供給されるEGR実行時における前記EGR過給器の非稼動時において、前記供給経路が前記第2経路となるように前記切り替え手段を制御する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の排気浄化装置。
【請求項6】
前記制御手段は更に、前記第1通路と前記第2通路との間の圧力差に応じて前記切り替え手段を制御する
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−121469(P2010−121469A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293650(P2008−293650)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】