説明

携帯機

【課題】無線通信に際して送信される電波の出力強度を効率的に向上させることが可能な携帯機を提供する。
【解決手段】電子キー2は、自身の外観の意匠性を満たすべく意匠面の一部に加飾金属8が設けられた非導電性材料からなるケース4と、前記ケース4の内部に設けられ自身がもつ固有の識別コードを通信対象に無線で送信する送信アンテナ11とを備えている。送信アンテナ11は、意匠面側から見て、加飾金属8,10のスリット9a,9bと反対側の第2短辺8b,10bの中央部近傍に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の通信対象との間で所定の無線通信を行う携帯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、車両や住宅等に設けられたロック装置等の通信対象との間で所定の無線通信を通じて同ロック装置の施錠・解錠を行う電子キーが採用されている。この電子キーのケースには、回路基板が収容されている。回路基板には、ロック装置に対応する識別コードが記憶され同識別コードの送信制御等を行う制御回路と、ロック装置との間で無線通信を行うための送信アンテナとが実装されている。制御回路は、送信アンテナを通じて識別コードをロック装置に送信する。ロック装置は、電子キーの送信アンテナから送信された電波に含まれる識別コードが自身に記憶されている識別コードと一致するか否かを判断し、一致したことを条件として施錠・解錠を行う。
【特許文献1】特開2002−322841
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、携帯性向上の観点から携帯機は依然として小型化及び薄型化の傾向にある。これに伴って、当該携帯機のケース内に設けられる送信アンテナの小型化も要求される。しかしながら、一般に、送信アンテナが小さくなると携帯機から出力される電波の強度が低下する。このため、携帯機の小型化を図りつつ無線通信に際して携帯機から送信される電波の出力強度を充分確保するためには、無線通信に際して送信アンテナから送信される電波の出力強度を効率的に向上させる必要がある。
【0004】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであって、無線通信に際して送信される電波の出力強度を効率的に向上させることが可能な携帯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、非導電性材料からなるケースと、前記ケースの内部に設けられ自身がもつ固有の識別コードを通信対象に無線で送信する送信アンテナとを備え、前記通信対象側で前記識別コードの照合が一致したことを条件として当該通信対象に対応する特定の機器を動作させる携帯機において、環状に設けられるとともにその周方向において分断された開ループ形状を有する金属部材を備え、前記送信アンテナを、前記金属部材の長手方向の中央部近傍に配置したことをその要旨とする。
【0006】
一般に、アンテナの近傍に金属があると、通信対象との間の無線通信に際してアンテナから送信される電波は、その金属の影響を受ける。従って、携帯機に金属部材を設け、通信対象との間の無線通信に際してこの金属部材を送信アンテナとして効果的に活用し、携帯機から送信される送信電波の出力強度を向上させることに本出願人は想到した。本発明によれば、金属部材の長手方向の中央部、即ち、通信対象との間の無線通信に際して金属部材に誘起される電圧に基づく電流分布が最も大きくなる腹となる位置の近傍に、金属部材への給電点となる送信アンテナが配置される。このため、電流分布が小さくなる金属部材の長手方向の端部近傍に送信アンテナを配置した場合と比較して、金属部材と送信アンテナとの結合が大きくなる。よって、通信対象との間の無線通信に際して、金属部材を、送信アンテナとして効果的に利用することが可能となり、携帯機の出力強度を効率的に向上させることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記金属部材は、当該携帯機の外観の意匠性を満たすべく前記ケースの意匠面に設けられる金属加飾部を構成する部材であることをその要旨とする。
本発明によれば、携帯機の外観の意匠性を満たすべくケースの意匠面に設けられる金属加飾部を送信アンテナとして利用することにより、他の金属部材を特別に設けなくても、携帯機の出力強度を効率的に向上させることができる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記ケースは、扁平形状に形成され、前記金属部材は、前記ケースの厚さ方向に沿った方向から見て、該ケースの縁に沿って延びる環状に設けられるとともにその周方向において分断された開ループ形状を有することをその要旨とする。
【0009】
本発明によれば、ケースは扁平形状に形成されているため、ケースの厚さ方向における外側面は、ケースの扁平方向における外側面よりも大きくなっている。従って、金属部材をケースの厚さ方向に沿った方向から見て該ケースの縁に沿って延びる環状に設けることにより、送信アンテナとしての金属部材の面積を大きく設定することができる。よって、通信対象との間の無線通信に際して、金属部材を、送信アンテナとしてより効果的に利用することが可能となり、携帯機の出力強度を効率的に向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無線通信に際して送信される電波の出力強度を効率的に向上させることが可能な携帯機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を、車両の電子キーシステムにおいて、ドア錠の開閉に使用される電子キーに具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
<電子キーシステムの概要>
図1に示すように、電子キーシステム1は、携帯機としての電子キー2と、車両に搭載された通信対象としての施解錠制御装置3とを備えている。ユーザが電子キー2を所持して車両の所定領域(通信エリア)に接近すると、電子キー2は施解錠制御装置3から送信されるリクエスト信号Srを受信する。このリクエスト信号SrはIDコードの送信を電子キー2に要求する旨の信号である。電子キー2は前記リクエスト信号Srを受信すると、予め記録された自身のIDコードを含むID信号Siを送信する。施解錠制御装置3は、電子キー2から送信されてきたID信号Siを受信すると、このID信号Siに含まれる電子キー2側のIDコードと予め記憶された車両側のIDコードとを照合し、両IDコードが一致したことを条件としてドア錠を解錠する。一方、ユーザが電子キー2を所持して車両から離間して前記所定領域外に移動すると、施解錠制御装置3は、電子キー2から送信されるID信号Siを受信不能となる。施解錠制御装置3は電子キー2側のID信号Siを受信不能になったことを条件として車両のドア錠を施錠する。このように、ユーザが車両に触れることなくドア錠の施解錠が行われる。
【0012】
<電子キー>
図2に示すように、電子キー2のケース4は、樹脂等の非導電性材料からなり、平面視(図2中、上から見た状態)において長方形を成す扁平形状に形成されている。図3に示すように、ケース4は、それぞれ開口部を有する箱体状に形成されたアッパーケース5とロアケース6とから成り、これらの開口側を突き合わせた状態で組み付けた際にできる内部の収納空間4aには、回路基板7が収納されている。回路基板7には、車両(正確には、施解錠制御装置3)との間で所定の無線通信等を行うための各種の電子部品が実装されている。
【0013】
アッパーケース5の表面5aの縁部には、段部5bが環状に凹設されている。段部5bには、電子キー2に高級感、即ち、貴金属製品に見られるような光輝意匠を持たせるためのアッパー側加飾金属8が取り付けられている。アッパー側加飾金属8は、アッパーケース5の段部5bに取り付けられることにより、中央部5cと面一となるように形成されている。アッパー側加飾金属8は、例えばアルミニウムや鉄等の金属材料から形成されており、その表面には光輝性を醸し出すためのメッキが施されている。アッパー側加飾金属8は、帯状の板がアッパーケース5の周縁に沿って延びる環状に設けられるとともにその周方向において分断された開ループ形状を有して形成されている。具体的には、アッパー側加飾金属8には、アッパー側加飾金属8を分断する長細い形状の1つのスリット9aが形成されている。スリット9aは、アッパー側加飾金属8の4辺のうち長さの短い第1短辺8a(図3中、奥側の辺)の中央部分に形成されている。
【0014】
また、アッパーケース5の表面5aの中央部5cには、電子キー2でのボタン操作で車両のドア錠を施錠する際に操作するロックスイッチ4bと、同じく電子キー2でのボタン操作で車両のドア錠を解錠する際に操作するアンロックスイッチ4cとが設けられている。
【0015】
図3に示すように、ロアケース6の表面6a(図4(b)参照)の縁部には、アッパーケース5と同様、段部6bが環状に凹設されており、該段部6bには、ロア側加飾金属10が取り付けられている。ロア側加飾金属10は、ロアケース6の段部6bに取り付けられることにより、中央部6c(図4(b)参照)と面一となるように形成されている。ロア側加飾金属10は、前記アッパー側加飾金属8と同様、例えばアルミニウムや鉄等の金属材料から形成されており、その表面には光輝性を醸し出すためのメッキが施されている。ロア側加飾金属10は、帯状の板がロアケース6の周縁に沿って延びる環状に設けられるとともにその周方向において分断された開ループ形状を有して形成されている。具体的には、ロア側加飾金属10には、前記アッパー側加飾金属8と同様、ロア側加飾金属10を分断する長細い形状の1つのスリット9bが形成されている。スリット9bは、ロア側加飾金属10の4辺のうち長さの短い第1短辺10a(図3中、奥側の辺)の中央部分に形成されている。アッパー側加飾金属8及びロア側加飾金属10は、ケース4(アッパーケース5及びロアケース6)の表面5a,6a側から見て完全に重なるように配置されている。なお、アッパー側加飾金属8及びロア側加飾金属10が金属部材としての金属加飾部に相当する。本実施形態の電子キー2は、アッパー側加飾金属(以下、加飾金属という)8が設けられた前記アッパーケース5の表面5aと、同じくロア側加飾金属(以下、加飾金属という)10が設けられたロアケース6の表面6aとが意匠面とされる。なお、前述したように、ケース4は扁平形状に形成されているため、ケース4の厚さ方向の外側面であるケース4(アッパケース5及びロアケース6)の表面5a,6aは、ケース4の扁平方向の外側面4dよりも大きくなっている。このため、ケース4の扁平方向の外側面4dに設ける場合と比較して、加飾金属8,10の面積を大きく設定することが可能となっている。
【0016】
図3に示すように、回路基板7は、長方形の平板状に形成されている。回路基板7のアッパーケース5側の面7aには、送信アンテナ11、受信回路(図示略)、制御回路(図示略)、送信回路(図示略)が実装されており、回路基板7のロアケース6側の面7bには、受信アンテナ(図示略)及び電源回路(図示略)が実装されている。前記受信回路は受信アンテナを介して受信された前記リクエスト信号Sr(図1参照)を復調し、その復調したリクエスト信号Srを制御回路へ送る。前記制御回路は前記復調されたリクエスト信号Srに対して応答するために予め記憶された自身のIDコードを含むID信号Si(図1参照)を送信回路に送る。送信回路は前記ID信号を変調して送信アンテナ11を介して送信する。また、前記制御回路は、ロックスイッチ4bが押し操作された事を検出すると、自身のIDコードと、解錠状態にある車両のドア錠を施錠状態にする旨の施錠要求とを乗せた施錠要求信号Sa(図1参照)を送信回路に送り、送信アンテナ11を介して送信する。また、制御回路は、アンロックスイッチ4cが押し操作された事を検出すると、自身固有のIDコードと、施錠状態にある車両のドア錠を解錠状態にする旨の解錠要求とを乗せた解錠要求信号Sb(図1参照)を送信回路に送り、送信アンテナ11を介して送信する。
【0017】
図4(a)及び図4(b)に示すように、送信アンテナ11は、回路基板7に対して直に金属板をアンテナ線(アンテナパターン)として印刷形成することで成るパターンアンテナで形成されている。送信アンテナ11は、回路基板7の長手方向一端側(図4(a)及び図4(b)中、下端側)に設けられている。前記回路基板7は、ケース4の表面5a,6a側から見て、前記加飾金属8,10のスリット9a,9bと反対側(図4(a)及び図4(b)において下側)の第2短辺8b,10b中央部、言い換えれば、環状の加飾金属8,10を直線状に展開した場合において、その展開した加飾金属8,10の長手方向(全長)の中央部近傍に送信アンテナ11が配置されるように、ケース4に収容されている。また、回路基板7は、ケース4の表面5a,6a側から見て、送信アンテナ11の全部が加飾金属8,10と重ならないように配置されている。なお、前述したように、ケース4は扁平形状に形成されているため、ケース4の厚さ方向の外側面であるケース4(アッパケース5及びロアケース6)の表面5a,6aは、ケース4の扁平方向の外側面4dよりも大きくなっている。このため、送信アンテナ11を、ケース4の表面5a,6a側から見て、全部が加飾金属8,10と重ならない位置に配置し易くなっている。また、ケース4の扁平方向の外側面4dに加飾金属8,10を設ける場合と比較して、加飾金属8,10の面積を大きく設定することができる。
【0018】
ところで、例えばアルミニウムや鉄等の金属材料から形成された加飾金属8,10が、例えば仮にケース4の表面5a,6aの縁に沿って一続きとなった部材形状、即ちケース4の表面5a,6a側から見て閉ループを成す形状をとる場合、電子キー2と車両(施解錠制御装置3)との間の無線通信を行う際に送信アンテナ11から送信された電波を加飾金属8,10が受けると、加飾金属8,10に渦電流(図4(a)参照)が流れる。加飾金属8,10に渦電流が流れると、該渦電流による磁束によって送信アンテナ11から送信される電波が打ち消され、アンテナ効率が低下してしまい、電子キー2と車両(施解錠制御装置3)との間の無線通信に悪影響を及ぼすことになり、これは無線通信性能確保の面から好ましくない。
【0019】
そこで、加飾金属8,10にスリット9a,9bを設けて、加飾金属8,10をケース4の表面5a,6aの縁に沿った方向において分断することにより、加飾金属8,10を、部材として一続きとならない分断形状、即ち開ループ形状としている。このような開ループ形状をとる加飾金属8,10は、仮に送信アンテナ11から送信された電波を受ける状況となっても自身に渦電流が発生し難くなる特性をもつ。従って、電子キー2の意匠性を確保すべく加飾金属8,10によって電子キー2に金属加飾を施しても、加飾金属8,10にスリット9a,9bを形成すれば、加飾金属8,10での渦電流の発生が抑制されて、電子キー2の充分な無線通信性能が確保される。
【0020】
ところで、このような電子キー2は、その携帯性の向上のため、より一層の小型化が望まれている。ここで、電子キー2の小型化を図るべくケース4をより小型のものにすると、該ケース4内における送信アンテナ11の収容スペースが狭くなり、送信アンテナ11を小さくする必要がある。しかしながら、通常、送信アンテナ11が小さくなるほど無線通信の際に電子キー2から送信される送信電波の出力強度が小さくなる。このため、電子キー2と施解錠制御装置3との間の通信性能を確保するために充分な送信電波の出力強度を得るためには、送信アンテナ11をある程度大きくする必要がある。このことは、電子キー2の小型化の妨げとなる。
【0021】
一方、光輝意匠の加飾には、例えばアルミニウムや鉄等の金属が用いられるため、施解錠制御装置3との間の無線通信に際して送信アンテナ11から送信される電波が加飾金属8,10の影響を受け、これにより、電子キー2から施解錠制御装置3に送信される送信電波の出力強度が変化する。具体的には、電子キー2と施解錠制御装置3との間の無線通信に際して送信アンテナ11から電波が送信されると、加飾金属8,10に誘導電流が生じて電波が放射される。即ち、送信アンテナ11と加飾金属8,10とが結合し、加飾金属8,10が送信アンテナとして機能する。
【0022】
ここで、電子キー2と施解錠制御装置3との間の無線通信に際して送信アンテナ11から送信される電波を受けた加飾金属8,10に誘起される電流分布を、図5(a)に示す。同図5(a)において、横軸は、加飾金属8,10を直線状に展開した場合における長手方向の位置を示し、縦軸は、加飾金属8,10に誘起される電圧に基づく電流の値を示す。また、図5(a),(b)において、直線状に展開した加飾金属8,10と環状の加飾金属8,10との対応する3箇所をアルファベットの「A」、「B」、「C」で示す。図5(a)に示されるように、加飾金属8,10に誘起される電流は、その両端の位置(図5(a)及び図5(b)において、A及びCで示す位置)で最も小さくなり、その中央(図5(a)及び図5(b)において、Bで示す位置)で最も大きくなる。従って、施解錠制御装置3との間の無線通信に際して加飾金属8,10に誘起される電圧に基づく電流分布が最も大きくなる腹となる位置、即ち加飾金属8,10の長手方向の中央部(図5(a)及び図5(b)においてBで示す位置)近傍に送信アンテナ11を配置することで、電子キー2と施解錠制御装置3との間の無線通信に際して、送信アンテナ11と加飾金属8,10との磁気的な結合が大きくなる。このため、本実施の形態では、加飾金属8,10の長手方向の中央部、即ち加飾金属8,10のスリット9a,9bと反対側の第2短辺8b,10bの中央部近傍に、加飾金属8,10への給電点となる送信アンテナ11を配置するようにしている。これにより、施解錠制御装置3との間の無線通信に際して、加飾金属8,10が送信アンテナとしても効果的に機能し、電子キー2から送信される送信電波の出力強度の向上が図られる。そして、例えば電子キー2の小型化を図るべくケース4に収容される送信アンテナ11をより小型のものにすることで送信アンテナ11自身の出力強度が小さくなってしまった場合でも、加飾金属8,10を送信アンテナとして効果的に利用することで、電子キー2と施解錠制御装置3との間の通信性能が確保される。
【0023】
次に、図6を参照して、ケース4の表面5a,6a側から見た送信アンテナ11の位置の違いによる電子キー2の利得の変化量について考察する。同図6は、図7(a)に示すように加飾金属8,10のスリット9a,9bと反対側の第2短辺8b,10bの中央部近傍に送信アンテナ11が配置された本実施の形態の電子キー2と、同図7(b)に示すように加飾金属8,10のスリット9a,9bが設けられた第1短辺8a,10aの中央部近傍に送信アンテナ11が配置された比較対象の電子キー20とについて、加飾金属8,10のスリット9a,9bの幅dに対する電子キー2,20の利得の変化量を、発明者がシミュレーションした結果をグラフとして示したものである。同図6のグラフにおいて、横軸は、加飾金属8,10のスリット9a,9bの幅(スリット幅)dを示し、縦軸は、電子キー2,20の利得の変化量を示す。なお、電子キー2,20の利得の変化量は、回路基板7単体の利得を基準にした、電子キー2,20の利得である。図6においては、本実施の形態の電子キー2(図7(a)参照)の利得の変化量を□印で示し、比較対象の電子キー20(図7(b)参照)の利得の変化量を●印で示している。なお、図7(a)及び図7(b)では、前記ロックスイッチ4b及びアンロックスイッチ4cを省略している。
【0024】
図6に示されるように、加飾金属8,10のスリット9a,9bの幅dの大きさ、即ち加飾金属8,10の形状を一致させた場合、本実施の形態の電子キー2の利得の変化量は、比較対象の電子キー20の利得の変化量よりも大きくなる。従って、加飾金属8,10の形状に関わらず、加飾金属8,10の長手方向の中央部となる第2短辺8b,10bの中央部近傍に送信アンテナ11を配置すれば(図7(a)参照)、加飾金属8,10の長手方向の端部となる第1短辺8a,10aの中央部近傍に送信アンテナ11を配置した場合(図7(b)参照)よりも、電子キー2の出力強度を向上させることができる。このため、例えば電子キー2の小型化を図るべくケース4に収容される送信アンテナ11をより小型のものにすることで送信アンテナ11自身の出力強度が小さくなってしまった場合でも、加飾金属8,10を送信アンテナとして効果的に利用することで、電子キー2と施解錠制御装置3との間の通信性能を確保するために充分な出力強度を得ることができる。よって、ケース4に収容される送信アンテナ11の小型化、ひいては電子キー2の小型化を図ることが可能となり、電子キー2の携帯性を向上させることができる。
【0025】
次に、上記実施の形態の作用効果を以下に記載する。
(1)加飾金属8,10の長手方向の中央部、即ち、施解錠制御装置3との間の無線通信に際して加飾金属8,10に誘起される電圧に基づく電流分布が最も大きくなる腹となる位置の近傍に、加飾金属8,10への給電点となる送信アンテナ11が配置される。このため、電流分布が小さくなる加飾金属8,10の長手方向の端部近傍に送信アンテナ11を配置した比較対象の電子キー20(図7(b)参照)と比較して、電子キー2における加飾金属8,10と送信アンテナ11との結合が大きくなる。よって、施解錠制御装置3との間の無線通信に際して、加飾金属8,10を、送信アンテナとして効果的(積極的)に利用することが可能となり、電子キー2の出力強度を効率的に向上させることができる。
【0026】
(2)また、加飾金属8,10を送信アンテナとして効果的(積極的)に利用することにより当該電子キー2の出力強度が向上する。このため、例えば電子キー2の小型化を図るべくケース4に収容される送信アンテナ11をより小型のものにすることで送信アンテナ11自身の出力強度が小さくなってしまった場合でも、加飾金属8,10を送信アンテナとして効果的に利用することで、電子キー2と施解錠制御装置3との間の通信性能を確保するために充分な出力強度を得ることができる。よって、ケース4に収容される送信アンテナ11の小型化、ひいては電子キー2の小型化を図ることが可能となり、電子キー2の携帯性を向上させることができる。
【0027】
(3)電子キー2の外観の意匠性を満たすべくケース4の表面5a,6aに設けられる加飾金属8,10を送信アンテナとして利用することにより、他の金属部材を特別に設けなくても、電子キー2の出力強度を効率的に向上させることができる。
【0028】
(4)ケース4は扁平形状に形成されているため、ケース4の厚さ方向における外側面は、ケース4の扁平方向における外側面よりも大きくなっている。従って、加飾金属8,10をケース4の厚さ方向に沿った方向から見て該ケース4の縁に沿って延びる環状に設けることにより、送信アンテナとしての加飾金属8,10の面積を大きく設定することができる。よって、施解錠制御装置3との間の無線通信に際して、加飾金属8,10を、送信アンテナとしてより効果的に利用することが可能となり、電子キー2の出力強度を効率的に向上させることができる。
【0029】
(5)電子キー2のケース4内に収容される送信アンテナ11は、ケース4の表面5a,6a側から見て、全部が加飾金属8,10と重ならないように配置される。ここで、送信アンテナ11において加飾金属8,10に重ならないように配置された部位から送信される電波は、加飾金属8,10の影響を受け難い。このため、本実施の形態のように、送信アンテナ11の全部が加飾金属8,10と重ならないように配置することにより、加飾金属8,10を設けることによるアンテナ効率の低下を極力回避することができる。
【0030】
(6)加飾金属8,10は、ケース4の表面5a,6a側から見て、当該表面5a,6aの縁に沿って延びる環状に設けられるとともにその周方向において分断された開ループ形状を有して形成されているため、例えば加飾金属8,10を直線状に設ける場合と比較して、送信アンテナ11と加飾金属8,10との結合を大きくすることができる。よって、施解錠制御装置3との間の無線通信に際して、加飾金属8,10を、送信アンテナとしてより効果的に利用することが可能となり、電子キー2の出力強度を効率的に向上させることができる。
【0031】
尚、本実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、金属部材としての加飾金属8,10を、ケース4の表面(意匠面)5a,6aに設けたが、このような態様に限定されない。例えば、図8に示すように、電子キー2aのケース30に閉ループ形状を有する金属部材31を埋設してもよい。また、上記実施の形態では、金属部材としての加飾金属8,10を帯状に形成したが、加飾金属8,10の断面形状は適宜変更可能であり、例えば断面円形状に形成してもよい。
【0032】
・上記実施の形態では、送信アンテナ11が加飾金属8,10と重ならないように配置したが、送信アンテナ11の一部が重なるように配置してもよい。
・上記実施の形態では、加飾金属8,10を、ケース4の表面5a,6aに当該ケース4の周縁に沿って略環形状を成すように形成したがこのような態様に限定されない。例えば、図9に示す電子キー2bのように、ケース40の表面に設ける各加飾金属41a,41b(41)に2つのスリット42,43を設け、それらをケース40の側縁に沿って直線状をなすように形成してもよい。なお、この場合、送信アンテナ11が各加飾金属41の長手方向の中央部近傍に配置されるよう、該送信アンテナ11をケース40の中央に配置する。
【0033】
・上記実施の形態では、各加飾金属8,10にそれぞれ1つずつスリット9a,9bを設けたが2つ以上のスリットを設けてもよい。
・上記実施の形態では、ケース4を、平面視において長方形を成す扁平形状に形成したが、このような態様に限定されず、例えば平面視において三角形や円形を成すように形成してもよい。また、上記実施の形態では、ケース4を、扁平形状に形成したが、例えばケースを立方体状に形成してもよい。
【0034】
・上記実施の形態では、ケース4の厚さ方向の外側面(表面5a,6a)を意匠面としたが、ケース4の扁平方向の外側面4dを意匠面としてもよい。また、上記実施の形態では、ケース4のアッパーケース5及びロアケース6の表面5a,6aに加飾金属8,10を設けたが、何れか一方のみに加飾金属を設けてもよい。
【0035】
・上記実施の形態では、電子キー2にロックスイッチ4b及びアンロックスイッチ4cを設け、これらの操作によりドアロックを施解錠可能としたが、省略してもよい。
・上記実施の形態では、電子キー2に、トランスポンダを搭載し、このトランスポンダと施解錠制御装置3との間でもID照合を行うようにしてもよい。
【0036】
・上記実施の形態では、電子キー2と施解錠制御装置3との間の無線通信によって、対応する機器としての車両のドア錠の施解錠が行われるようにしたが、電子キー2とエンジン制御装置との間の無線通信によって、対応する機器としてのエンジンの始動が許可されるようにしてもよい。なお、この場合、エンジン制御装置が本発明の通信対象に相当する。
【0037】
・上記実施の形態では、車両の電子キーシステム1において、ドア錠の開閉に使用される電子キーに具体化したが、住宅等の電子キーシステムに具体化してもよい。
・上記実施の形態では、電子キー2の小型化を図る場合に適用したが、このような場合に限定されず、電子キー2の仕様(要求される通信エリアの大きさ)などにより出力強度の向上が要求される場合に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】車両の電子キーシステムの概略構成図。
【図2】電子キーの外観形状を示す斜視図。
【図3】電子キーのケース構造を示す斜視図。
【図4】(a)電子キーを表側から見た平面図、(b)電子キーを裏側から見た平面図。
【図5】(a)加飾金属に誘起される電流の分布を示すグラフ、(b)電子キーの平面図。
【図6】送信アンテナの位置と、電子キーの利得の変化量との関係について、発明者によるシミュレーション結果を例示するグラフ。
【図7】(a)本実施の形態の電子キーにおける送信アンテナの位置を示す平面図、(b)比較対象の電子キーにおける送信アンテナの位置を示す平面図。
【図8】電子キーの別例を示す平面図。
【図9】電子キーの別例を示す平面図。
【符号の説明】
【0039】
2,2a,2b…携帯機としての電子キー、3…通信対象としての施解錠制御装置、4,30,40…ケース、5a,6a…意匠面としての表面、8,10…金属部材及び金属加飾部としての加飾金属、31,41…金属部材、11…送信アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性材料からなるケースと、該ケースの内部に設けられ自身がもつ固有の識別コードを通信対象に無線で送信する送信アンテナとを備え、前記通信対象側で前記識別コードの照合が一致したことを条件として当該通信対象に対応する特定の機器を動作させる携帯機において、
環状に設けられるとともにその周方向において分断された開ループ形状を有する金属部材を備え、
前記送信アンテナを、前記金属部材の長手方向の中央部近傍に配置したことを特徴とする携帯機。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯機において、
前記金属部材は、当該携帯機の外観の意匠性を満たすべく前記ケースの意匠面に設けられる金属加飾部を構成する部材であることを特徴とする携帯機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携帯機において、
前記ケースは、扁平形状に形成され、
前記金属部材は、前記ケースの厚さ方向に沿った方向から見て、該ケースの縁に沿って延びる環状に設けられるとともにその周方向において分断された開ループ形状を有することを特徴とする携帯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−278440(P2009−278440A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128437(P2008−128437)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】