説明

携帯端末及びその管理システム及び携帯端末の位置データの補正方法、及び補正プログラム

【課題】相対位置データで補正された現在位置データに含まれる累積誤差による精度低下を防止し、携帯端末における現在位置データの精度低下に伴う不都合の発生を防止することができる携帯端末及び管理システムを提供する。
【解決手段】音を取得する集音手段1−3bと、携帯端末1Aの絶対位置を検出する絶対位置検出手段1−1と、携帯端末の相対位置を検出する相対位置検出手段1−2と、集音手段1−3bで取得した音を音声と認識する音声認識手段1−3と、相対位置検出手段1−2で検出した相対位置データで補完された現在位置データを補正する現在位置データ補正手段1−6と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末及びその管理する管理システムに関し、特に、予め定められたエリア内で作業をする作業者が携帯する携帯端末及び、それらの携帯端末を介して作業者を管理することに適した管理システム及び携帯端末の位置データの補正方法、及び補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数の作業者が従事する作業場所においては、作業者を管理する管理担当者を置き、各作業者の作業状態を把握している。従来、管理担当者の負担を軽減すべく、作業者自身が、実行中の作業内容を入力するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されたシステムでは、表示画面に作業者が行うべき業務が表示され、作業者は表示された業務を実行し、次の作業に移る毎にポインティングデバイスを操作して、実行中の作業の変更を入力するようになっている。
【0003】
また、特許文献2には複数の作業者の作業状態を、作業者に複雑な操作を強いることなく、確実に記録することが可能な以下に記載の如き業務管理システムが記載されている。
【0004】
すなわち、業務エリア内で作業者が発する音声を取得する集音装置と、前記集音装置が取得した音声を認識して文字データを生成する音声認識装置と、前記音声認識装置により生成された文字データから得られる情報と、この文字データに対応する音声を前記集音装置により取得した時刻を示す情報とを対応づけて、前記作業者毎に履歴記憶装置に記憶させる記憶制御装置と、を備えたことを特徴とする業務管理システムが記載されている。
【0005】
この構成によれば、業務エリア内で作業者が発した音声から得た情報と、この音声を取得した時刻とが対応づけて記憶されるので、業務エリアにおける作業者の音声について正確な記録を行える。これにより、作業者が音声によって報告を行った場合に、この音声に基づいて文字データを生成して作業状態に関する情報を記録できる。また、作業者が顧客や他の作業者へ向けて発した音声を取得して、この音声に関するデータを取得することで、作業者が何ら意識しなくても作業状態を記録できる。このように、作業者に作業状態を記録するための特別な操作や作業を強いることなく、作業状態を確実に記録できる。
【0006】
また、上記特許文献2には業務管理システムの構成要素として、以下の端末装置及び業務管理装置が記載されている。
【0007】
図8は、特許文献2に記載の従来の端末装置20の機能的構成を示すブロック図である。図8に示すように、端末装置20は、端末装置20の各部を制御する制御部201と、制御部201により処理されるプログラムやデータ等を揮発的または不揮発的に記憶するメモリー203とを備える。制御部201は、音声認識ミドルウェア202を内部に記憶しており、この音声認識ミドルウェア202を実行することで、マイク24によって集音された従業員の音声をテキストデータに変換する機能を備える。また、制御部201は、メモリー203に記憶されたファームウェア204を読み出して実行することにより、端末装置20の各部を制御する。
【0008】
端末装置20は、制御部201の制御のもとに、テキストデータとして入力された情報から音声信号を生成する音声発生LSI205と、音声発生LSI205により生成された音声信号を増幅するアンプ部206とを備え、アンプ部206により増幅された音声信号は本体部21が備えるイヤホン23に入力され、イヤホン23から従業員の耳に向けて音声が出力される。
【0009】
また、端末装置20は、マイク24から出力された音声信号を増幅するアンプ部207と、アンプ部207により増幅されたアナログ音声信号をデジタル音声データに変換するA/Dコンバータ208とを備えている。A/Dコンバータ208は変換後のデジタル音声データを制御部201に出力し、制御部201は、音声認識ミドルウェア202の機能によって、入力されたデジタル音声データをテキストデータに変換する。
【0010】
ここで、音声発生LSI205は、入力されたテキストデータを同じ言語の音声信号に変換する機能を備える。具体的には、音声発生LSI205は、日本語のテキストデータが入力された場合に、このテキストデータをもとに、内蔵する音声合成辞書データを参照して音声合成を行い、日本語の音声信号を生成する。また、音声発生LSI205に、中国語、英語、フランス語等の各種言語の音声合成辞書データを持たせた構成とすれば、音声発生LSI205によって、上記言語のテキストデータに基づいて、その同じ言語の音声信号を生成することができる。
【0011】
この場合、図9に記載の業務管理装置30は無線通信ユニット32を介して中国語や英語のテキストデータを送信し、図8に記載の端末装置20は無線LANアンテナ215を介して、このテキストデータを受信して、音声信号を生成することにより、日本語以外の言語の音声を出力することも可能となる。例えば、日本語以外の言語を母語とする従業員がいた場合、この従業員に対して、イヤホン23から、母語の音声を出力して指示や連絡を行うことができる。
【0012】
音声認識ミドルウェア202を実行する制御部201は、マイク24から出力された音声信号について、予め設定された言語(例えば、日本語)の音素解析等の処理を実行して音声認識を行い、上記設定された言語(例えば、日本語)のテキストデータを生成して出力する。
ここで、日本語以外の言語に係る音素解析用のデータを予め備えておくことにより、音声認識ミドルウェア202を多言語に対応可能なものとすれば、音声認識ミドルウェア202を実行する制御部201により、中国語や英語等の多言語の音声信号を認識して、その同じ言語のテキストデータを生成して出力することも可能である。
【0013】
端末装置20は、業務管理装置30を含む無線LANを構成するための機能部として、無線LANベースバンド部211、無線LAN変復調部213、および無線LAN_RF部214を備えている。無線LANベースバンド部211は、制御部201から入力される情報を含むパケットを生成し、無線LAN変復調部213は、無線LANベースバンド部211により生成されたパケットを変調して無線LAN_RF部214に出力し、無線LAN_RF部214は、無線LAN変復調部213により生成された変調信号を、無線LANアンテナ215を介して無線送信する。
【0014】
ここで、無線LANベースバンド部211は、端末装置20に固有のMAC(Media Access Control)アドレスを記憶したMACアドレスメモリー212を備えており、無線LANベースバンド部211により生成されるパケットには、MACアドレスメモリー212に記憶されたMACアドレスが含まれる。このMACアドレスは、上述した無線LANにおける通信制御において複数の端末装置20を識別する目的で使用される。
【0015】
さらに、無線LAN_RF部214は、無線LANアンテナ215を介して受信した無線信号から変調信号を抽出して無線LAN変復調部213に出力し、無線LAN変復調部213は、この変調信号を復調してパケットを生成し、無線LANベースバンド部211は、無線LAN変復調部213により生成されたパケットに含まれる情報を制御部201に出力する。
図8に示す各部は、本体部21に内蔵されたバッテリー216から駆動電源の供給を受けて動作する。
【0016】
図8に示すように構成される端末装置20は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により、以下の機能を実現する。
無線通信機能:端末装置20は、制御部201によって、無線LANベースバンド部211、MACアドレスメモリー212、無線LAN変復調部213、無線LAN_RF部214および無線LANアンテナ215を制御することにより、業務管理装置30を含む無線LANを構成し、MACアドレス等の端末装置20を個体識別するための情報や、テキストデータ等を送受信する無線通信機能を実現する。
【0017】
音声出力機能:端末装置20は、制御部201によって音声発生LSI205およびアンプ部206を制御し、アンプ部206からイヤホン23に音声信号を出力することにより、イヤホン23から音声を出力する音声出力機能を実現する。
【0018】
音声認識機能:端末装置20は、制御部201によってアンプ部207、A/Dコンバータ208を制御するとともに、制御部201により音声認識ミドルウェア202を実行することによって、マイク24が集音した従業員の音声をテキストデータに変換して出力する音声認識機能を実現する。
【0019】
図9は、業務管理装置30の機能的構成を示すブロック図である。
図9に示すように、業務管理装置30は、業務管理装置30の各部を制御する制御部301と、制御部301により処理されるプログラムやデータ等を揮発的または不揮発的に記憶するメモリー302とを備える。制御部301には、ディスプレイ31により各種画面を表示させる表示処理部303、無線通信ユニット32を介して各種データを送受信するネットワークインターフェイス部304、制御部301が実行するプログラム等を記憶する記憶部305、業務管理装置30に外部の装置を接続するための入出力インターフェイス部306、および、業務管理装置30外部のキー入力装置307が接続される。
【0020】
表示処理部303は、制御部301の制御に従って、ディスプレイ31に各種画面を表示するための映像信号を生成してディスプレイ31へ出力する。ディスプレイ31は、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(液晶表示)パネル等の表示画面を備え、表示処理部303から入力される映像信号に基づいて各種の画像や文字からなる画面を表示する。
【0021】
記憶部305は、磁気的または光学的に情報の記録・読取が可能な記録媒体または半導体記憶素子を用いた記憶装置であり、制御部301が実行する各種プログラムや、これらプログラムに係るデータ等を不揮発的に記憶する。
【0022】
ネットワークインターフェイス部304は、無線通信ユニット32に接続され、制御部301の制御により、無線通信ユニット32を介して端末装置20との間で各種データを送受信する。
無線通信ユニット32は、業務エリアとしての遊技場において、端末装置20と共に無線LANを構成する装置であり、無線LANの規格に準拠した通信を実行するためのアンテナ、RF部、変復調部、ベースバンド部等を内蔵している。
【0023】
入出力インターフェイス部306は、業務管理装置30に外部の装置を接続するためのインターフェイスであり、プリンタ33、および、記憶装置40が接続される。制御部301は、入出力インターフェイス部306を介して記憶装置40を制御することにより、記憶装置40内のデータベースに対し、データの格納、検索、抽出、更新、削除等の各種処理を実行する。また、制御部301は、入出力インターフェイス部306を介してプリンタ33を制御し、プリンタ33によって各種帳票を印刷出力させる。
【0024】
また、キー入力装置307は、数字を含む文字キーや各種機能が割り当てられた機能キーを備えた装置であり、オペレータにより操作されたキーに対応する操作信号を生成して、制御部301に出力する。
【0025】
図9に示すように構成される業務管理装置30は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により、以下の機能を実現する。
無線通信機能:業務管理装置30は、制御部301によってネットワークインターフェイス部304を制御することにより、無線通信ユニット32と協働して、端末装置20との間で端末装置20を個体識別するための情報やテキストデータ等を送受信する無線通信機能を実現する。
【0026】
スケジュール管理機能:業務管理装置30は、制御部301の機能により、キー入力装置307により入力されたスケジュールのデータを記憶部305に記憶する。このスケジュールのデータは、日付毎、および、従業員毎に入力され、記憶部305に記憶される。そして、制御部301は、例えばキー入力装置307の操作によってスケジュールの出力が指示された場合には、表示処理部303を制御してディスプレイ31にスケジュールを表示させ、さらに、入出力インターフェイス部306を介してプリンタ33を制御して、指定された従業員の指定された日付に係るスケジュールを、帳票として印刷出力する。
【0027】
データベース管理機能:業務管理装置30は、制御部301によって、入出力インターフェイス部306を介して記憶装置40内のデータベースにアクセスし、記憶装置40内のデータベースに対し、データの格納、検索、抽出、更新、削除等の各種処理を実行する。
履歴記憶制御機能:業務管理装置30は、制御部301によって、端末装置20から無線通信ユニット32を介して受信したテキストデータと、端末装置20を識別するためのデータとに基づいて、端末装置20を装着している従業員の作業履歴に係る情報を取得し、この情報に基づいて、記憶装置40内のデータを更新する。
【0028】
履歴出力機能:業務管理装置30は、制御部301によって入出力インターフェイス部306を介して記憶装置40内のデータを参照し、記憶装置40が記憶するデータベース内の履歴データを、帳票形式でプリンタ33により印刷出力させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開平7−325870号公報
【特許文献2】特開2008−293168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
上記のように従来の特許文献2に記載の端末装置には、端末装置の位置(即ち、当該端末装置を所持する作業者の位置)を検出する手段として、特許文献2の明細書の段落(0057)には、「これらの各種装置に加えて遊技場内の通路や壁等に、位置検出用の無線通信タグを設置し、この無線通信タグを端末装置20によって検出して位置を特定してもよい。この場合、端末装置20は、テキストデータとともに位置を示す情報を業務管理装置30へ無線送信することとなり、業務管理装置30は、従業員の位置を特定する必要がなく、無線送信されたテキストデータと位置情報を作業履歴データベース41に記憶させればよい。この場合、無線通信タグとしては、例えば、900MHz帯或いは2.45GHz帯の周波数を利用するRFID(Radio Frequency Identification)タグを用いることができる。」旨の記載がなされている。
【0031】
このような、「通路や壁等に、位置検出用の無線通信タグ(例えば、RFIDタグ)を設置し、この無線通信タグを端末装置20によって検出して位置を特定する」方式では検出できる位置データは当該端末装置の存在する絶対位置データに限られるのが現状である。
【0032】
しかし、近年の端末装置の用途の拡がりに応じて、端末装置の存在する絶対位置データのみでなく、端末装置の相対位置データ(端末装置が、所定の時間(時刻毎に)どの方向に、どのような速度、歩数で移動しているか)の取得が望まれていたが、端末装置の相対位置データを容易に取得できる端末装置は実現できてはいなかった。
【0033】
上記のような課題を解決するため、既に出願人は以下の如き携帯端末及びその管理システムについて出願している。
図5及び図6を用いて出願人が先に出願している携帯端末及びその管理システムのハードウェア構成について説明する。
以下の説明では、携帯端末及びその管理システムが、飲食店で種々の作業を行う少なくとも1名の作業員(店員)の保持する携帯端末と前記携帯端末(作業員)を管理する管理サーバーに適用された場合を想定して説明する。
【0034】
図5の1は少なくとも1名の作業員が保持する携帯端末であって、各作業員の頭部にセットされたマイクロフォンとスピーカーとを含むヘッドセットと対になって使用される。
前記携帯端末とヘッドセットとの間の通信は、有線でも無線でも良い。
【0035】
図5の携帯端末1には、絶対位置検出部1−1と、相対位置検出部1−2と、音声認識部1−3と、後述の管理サーバーとの間で通信を行う通信部(図5では無線LAN通信部)1−4と、それらを制御する制御部(メインCPU)1−5と、図示しない電源(電池)が含まれている。
【0036】
また、2は管理サーバー(プロセスコントローラー)であって、前記少なくとも1名の作業員の保持する携帯端末1と通信部(図5では無線LAN通信部1−4)を介して接続され、携帯端末1を介して当該携帯端末1を保持する作業員の管理若しくは作業に対する指示を与える等の本発明の全体的な管理を実行する。
また、管理サーバーの記憶部には、管理システムの適用分野に応じたデータベース(図5では、飲食店の管理であるので、飲食店のフロア地図データ等)が予め格納されている。
【0037】
また、3は携帯端末1の絶対位置検出部1−1と対をなす絶対位置検出部(RFIDタグ等の固定部)であって、図5では、飲食店のフロアに配置された(少なくとも1つ以上又は)複数のテーブルに配置されている。
RFIDタグ(絶対位置検出部)3には、近距離通信専用CPUを含む送受信部3−1とアンテナ3−2及び電池(固定部であるので必ずしも電池である必要はなく、商用電源でも良い。)が含まれている。
【0038】
次に、図5の携帯端末1の構成を詳細に説明する。
図5の携帯端末1に設けられた絶対位置検出部1−1は、飲食店のフロアに配置された複数のテーブルに配置されている絶対位置検出部であるRFIDタグ3からアンテナ3−2を介して送信された近距離通信用の電波を絶対位置検出部1−1のアンテナ1−1aで受信して近距離通信専用CPU1−1bで処理して、当該携帯端末1の存在する絶対位置を算出する。
【0039】
携帯端末1における通信に使用可能な近距離通信としては、上記RFIDによる近距離通信以外にも、「Bluetooth」(10m〜100m),「ZigBee」(10m〜70m),「Wibree」(10m),「UWB」(10m)等がある。
【0040】
絶対位置検出部1−1の近距離通信専用CPU1−1bでは、フロアに配置された複数のアンテナ3−2から送信される電波を受信することによって、各アンテナ3−2の位置は予め定められているので、複数のアンテナ3−2から受信した電波の位相差等から、携帯端末1の存在する絶対位置の算出が可能である。
【0041】
図5の相対位置検出部1−2には、相対位置検出センサーとして、3軸ジャイロセンサー1−2a、3軸加速度センサー1−2b、気圧センサー1−2c、地磁気センサー1−2dが設けられている。
図5の携帯端末1では、上記の4種類の相対位置検出センサーが設けられているが、携帯端末1及びその管理システムの適用分野に応じて、必ずしも4種類の相対位置検出センサーが必要とは限らず、前記4種類のセンサーの内のいずれか数種類若しくは、前記4種類とは別の相対位置検出センサーを設けることも可能である。
【0042】
相対位置検出センサー1−2a〜1−2dで検出された相対位置データは、位置検出CPU1−2eで処理されて、当該携帯端末1及び管理システムが適用される用途に応じて、所定の時間(時刻毎に)どの方向に、どのような速度、歩数で移動しているのかという相対位置データが算出される。
この相対位置データの算出には、メモリー(ROM,RAM)1−2fに予め格納された相対位置演算用のプログラムが利用され、演算結果は、必要に応じて当該メモリーに格納される。
【0043】
位置検出CPU1−2eで算出された、所定の時間(時刻毎に)どの方向に、どのような速度、歩数で移動しているのかという相対位置データをメインCPU1−5に送信する。
【0044】
1−4は無線LAN通信部であって、管理サーバー(プロセスコントローラー)2の無線LAN通信と対をなしている。管理サーバー2は、無線LAN通信によって作業指示のデータを携帯端末1のメインCPU1−5に送る。メインCPU1−5は、当該携帯端末1を保持する作業員の頭部にセットされたマイクロフォンとスピーカーとを含むヘッドセットを介して作業に対する指示を作業員に伝える。
【0045】
1−3は上記携帯端末1に特有の音声認識部(モジュール)であって、主として携帯端末1を保持する作業員の頭部にセットされたマイクロフォンから作業員の発する音声を認識する。
【0046】
音声認識部(モジュール)1−3の詳細については、図6を用いて以下に詳述する。
図6は、音声認識・発生部(モジュール)1−3を携帯端末1の他の部分である位置検出部(絶対位置検出部,相対位置検出部)1−1,1−2と制御部(メインCPU)1−5の、音声認識及び音声発生に関係する部分の機能構成を示した図である。
【0047】
図6の音声認識部(モジュール)1−3は少なくとも1名の作業者が保持する携帯端末1の音声認識・発生部(モジュール)であって、作業員の頭部にセットされたヘッドセットのマイクロフォン1−6bとスピーカー1−6aとの間が有線若しくは無線で通信可能に接続されている。
【0048】
音声認識・発生部(モジュール)は、音声認識・音声発生の専用ICで構成され、作業者の発する音声を作業者の頭部にセットされたヘッドセットのマイクロフォンで取得・認識(音声入力判別)してデジタルデータに変換(テキストデータ又はコードデータ等)して、制御部(メインCPU)に送出する。
また、制御部(メインCPU)から送出された作業者に対する指示等のデジタルデータ(テキストデータ又はコードデータ等)を音声データに変換(音声変換)して作業者の頭部にセットされたヘッドセットのスピーカーから送出する。
【0049】
前記音声入力判別及び音声変換には、無条件での変換(判別)を実現するためには、大きなデータベースと処理時間を要するが、本発明では、位置検出部による検出データを参照して、当該携帯端末1が存在する位置(場所)での使用される可能性のある用語に絞ったデータベースを使用することによって処理時間の短縮を図っている。
即ち、携帯端末1の存在する場所が異なった場合には、変換に使用するデータベースを変更することができる。
【0050】
次に、上記携帯端末1及び管理サーバー2による位置検出に基づくデータ処理手順の例を図7のフローチャートを用いて以下に説明する。
まず、相対位置検出部1−2を構成する相対位置検出センサーである3軸ジャイロセンサー1−2a、3軸加速度センサー1−2b、気圧センサー1−2c、地磁気センサー1−2dの各検出出力を、位置検出CPU1−2eに送信する(ステップS1)。
【0051】
次いで、位置検出CPU1−2eは、全てのセンサーの検出出力の内、各センサーの特性及び管理サーバー2が適用された用途等を考慮してメインCPU1−5に選択されたセンサー検出出力を送信する(ステップS2)。
次いで、メインCPU1−5は、3軸ジャイロセンサーの検出出力と、3軸加速度センサーの検出出力から移動距離を積分して算出する(ステップS3)。
【0052】
メインCPU1−5は、3軸ジャイロセンサーの検出出力と、3軸加速度センサーの検出出力から歩数及び歩数に応じた移動距離を算出する(ステップS4)。
次いで、メインCPU1−5は、3軸ジャイロセンサーの検出出力から作業者の移動方向(向き)を算出する(ステップS5)。
【0053】
次いで、絶対位置検出部1−1のアンテナ1−1aで受信した複数の受信電波の処理を近距離通信専用CPUで実行して得た携帯端末1の絶対位置データをメインCPU1−5に送信する(ステップS6)。
次いで、マイクロフォン1−6bで取得した音声を音声認識モジュール1−3でデジタルデータに変換(認識)し、その変換結果(認識結果)をメインCPU1−5に送信する(ステップS7)。
【0054】
次いで、メインCPU1−5では、受信した絶対位置データを、メインCPU1−5で算出した、歩数、移動距離、端末の向き等のデータで補正をして、作業者(携帯端末)の向きを含むフロアにおける現在位置として算出し、前記作業者の音声認識結果データを作業者の補正された現在位置データと対応付けて、無線LAN1−4を介して管理サーバー2に送信する(ステップS8)。
【0055】
なお、ステップS3〜S5において算出した移動距離、歩数、移動方向等の相対位置データ、ステップS6において算出した絶対位置データは、データそのものを音声認識結果データと共に管理サーバー2に送信することもできる。ここでは、相対位置データを、主として絶対位置データを補正するために利用しているが、管理システムの適用分野に応じて管理サーバー2において他の用途のために利用することもできるからである。
次いで、管理サーバー2は、無線LANを介して受信した、作業者の音声認識結果データ及び作業者の補正された現在位置データに基づいて、予め蓄積された作業場所毎の作業者の作業に関する音声のデータベースに基づいて作業者の作業内容を特定する(ステップS9)。
【0056】
次いで、管理サーバー2は、特定された作業内容を基に、次に作業者に与える指示データを作成して無線LANを介して作業者端末に送信する(ステップS10)。
次いで、作業者端末1は、無線LANを介して受信した指示データを音声発生ICで音声に変換してスピーカーを介して音声で作業者に伝える(ステップS11)。
【0057】
このように、上記携帯端末1では、3軸ジャイロセンサーや3軸加速度センサー等によって得られる、歩数、移動距離、端末の向き等の微小な単位時間毎の相対変位量データを経過時間分だけ積算して経過時間分の相対位置データを算出する。その算出した相対位置データで、絶対位置検出部1−1の検出した絶対位置データを補正することで、携帯端末1の向きを含むフロアにおける現在位置を算出している。このため、携帯端末1で算出される現在位置データは、時間の経過とともに累積した誤差(累積誤差)を含むものとなる。その結果、長時間経過すると累積誤差が大きくなり、現在位置データの精度が低下することがあった。
【0058】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、相対位置データで補正された現在位置データに含まれる累積誤差による精度低下を防止し、携帯端末における現在位置データの精度低下に伴う不都合の発生を防止することができる携帯端末及び管理システムを提供すること、更には、携帯端末の現在位置データの補正方法、及び補正プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0059】
上記課題を解決することのできる本発明は、携帯端末であって、前記携帯端末の絶対位置を検出する絶対位置検出手段と、前記携帯端末の相対位置を検出する相対位置検出手段と、前記絶対位置を基準に前記相対位置で補完した現在位置データまたは前記相対位置を補正する現在位置データ補正手段と、を備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、携帯端末が補完した現在位置データまたは相対位置は、現在位置データ補正手段よる補正処理によって補正される。即ち、携帯端末が規定位置に移動した時に、その時に算出している現在位置データが、その規定位置における正確な位置データに書き換えられることになり、または積分などにより相対位置による補完で生じていた相対位置の累積誤差が解消された状態に戻すことができる。
従って、携帯端末の取得する現在位置データや相対位置データの精度低下に伴う不都合の発生を防止することができる。
【0060】
また上記課題を解決することのできる本発明は、音を取得する集音手段と前記集音手段で取得した音を音声と認識する音声認識手段とを備えた上記に記載の携帯端末を、1つ以上管理するサーバーを有し、前記音声認識手段は、取得した音を音声データとして認識しデジタルデータで出力する音−デジタルデータ変換手段を備え、前記デジタルデータと共に、少なくとも前記相対位置検出手段で検出した相対位置データを含むデータを前記サーバーへ出力する管理システムであって、
更に、前記サーバーの管理エリア内の規定位置に設置され、前記規定位置に前記携帯端末が位置したときに検知信号を前記サーバーに送信する検知信号送信手段を備え、
前記検知信号送信手段から前記検知信号を受信した前記サーバーは、前記規定位置に存在している携帯端末の前記現在位置データ補正手段に前記規定位置に基づいた補正処理を実行させることを特徴とする。
上記構成によれば、携帯端末の保有者が管理エリア内の規定位置を通過するとき、検知信号送信手段が検知してサーバーに知らせることにより、サーバーを介して、その携帯端末内の現在位置データ補正手段が作動して当該携帯端末内の現在位置データまたは相対位置が、累積誤差のない規定位置の位置データまたは当該位置データに基づき累積誤差のない相対位置に自動的に補正される。従って、携帯端末の現在位置データや相対位置の累積誤差を除去するための特別なメンテナンス操作が不要で、負担をかけずに、携帯端末における現在位置データや相対位置の精度維持を実現することができる。
【0061】
また本発明において、前記検知信号送信手段は、重量検出センサーを備え、所定の重量を検出した際に、前記検知信号を前記サーバーに送信することを特徴とする。
上記構成によれば、例えばシート状のものであり、検知信号送信手段を備えたシートの上に、携帯端末の保有者が乗るだけで、携帯端末が規定位置に存在していることを示す検知信号をサーバーに送信することができる。例えば、管理エリア内における保有者の動線上で、一定の経過時間以内に前記保有者が通過することが確実となる通路部分等に検知信号送信手段としてのシートを敷設しておけば、一定の経過時間内に、現在位置データ補正手段による補正を確実に実施することが可能になり、各携帯端末における現在位置データの精度な常時維持することが可能になる。
【0062】
また本発明において、前記サーバーは前記検知信号を受信すると、管理下の携帯端末に現在位置データを送信するよう要求し、前記携帯端末から受信した現在位置データに基づいて、前記規定位置に最も近い携帯端末を特定し、前記規定位置に最も近い携帯端末の前記現在位置データ補正手段を対象に前記規定位置の位置データにより補正させることを特徴とする。
上記構成によれば、サーバーの管理下にある携帯端末の現在位置データを取得することによって、最も規定位置に近い携帯端末を特定することができる。このため、誤って規定位置から遠いところに位置する携帯端末の現在位置データを、規定位置の位置データに補正してしまうことを防止することができる。
【0063】
また上記課題を解決することのできる本発明は、サーバーと少なくとも1台の携帯端末とからなる管理システムにおける携帯端末の現在位置データの補正方法であって、
前記サーバーの管理エリア内の規定位置に設置された検知信号送信手段が前記規定位置に前記携帯端末が存在することを検知して検知信号を前記サーバーに送信する送信ステップと、前記サーバーから管理下の携帯端末に現在位置データの送信を要求する要求ステップと、前記携帯端末から前記現在位置データを受信する受信ステップと、前記携帯端末から受信した現在位置データに基づいて、前記規定位置に最も近い携帯端末を特定する端末特定ステップと、特定された携帯端末の現在位置データを前記規定位置の位置データに補正させる補正実行ステップと、を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、携帯端末の保有者が管理エリア内の規定位置に存在することが検出された場合は、検知信号送信手段が検知信号をサーバーに送信する。この検知信号をトリガーとして現在位置データの補正処理は自動的に実行される。したがって、携帯端末内の現在位置データは、累積誤差のない規定位置の位置データに自動的に補正され、携帯端末の保有者に負担をかけずに、携帯端末における現在位置データの精度維持を実現することができる。
【0064】
また本発明において、前記相対位置は、携帯端末に搭載された検出センサーの単位時間毎の検出値を積分して得た相対位置データであることを特徴とする。
上記構成によれば、現在位置データの補完に使用される相対位置データは、微小な単位時間毎の検出値を積分するため、単位時間毎の相対変位量に含まれる微小な誤差分が一緒に積分されて累積誤差となって含まれている。本発明によれば、累積誤差を含んだ現在位置データは、規定位置の位置データに補正されるため、各携帯端末は、現在位置データを高精度な状態に維持することができる。このため、携帯端末における現在位置データの精度低下に伴う不都合の発生を防止することができる。
【0065】
また上記課題を解決することのできる本発明は、上記に記載の各ステップを前記サーバーの制御部に実行させることを特徴とする携帯端末の現在位置データの補正プログラムである。
上記構成によれば、サーバーの制御部に実行させることで上記に記載の現在位置データの補正方法が実施可能になるため、上記に記載の携帯端末の現在位置データの補正方法の普及・利用を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る携帯端末及び管理サーバーを備えた管理システムの一実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した管理システムの使用状況を示す概略図である。
【図3】図1に示した管理システムで管理する飲食店のフロアの平面図である。
【図4】図1に示した管理システムにおける現在位置データの補正方法を示すフローチャートである。
【図5】本出願人が先に出願した管理システムの概略構成を示すブロック図である。
【図6】図5の携帯端末における音声認識モジュールの詳細な構成を示すブロックである。
【図7】図5の管理システムにおけるデータ処理手順を示すフローチャートである。
【図8】従来の携帯端末装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図9】図8に示した携帯端末装置を介して業務管理を行う業務管理装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、本発明に係る携帯端末及びその管理システム及び携帯端末の現在位置データの補正方法、及び補正プログラムの好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0068】
図1は、本発明に係る管理システムの一実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の管理システム10は、例えば飲食店等において種々の作業を行う作業者の業務管理等を行うもので、1個以上の携帯端末1Aと、これらの携帯端末1Aを管理する管理サーバー2Aと、携帯端末1Aにおける絶対位置検出のために管理サーバー2Aの管理エリア内の適所に配置される1個以上の固定の絶対位置検出用タグ3とから構成されている。
【0069】
絶対位置検出用タグ3には、固有の識別情報(ID)が付与されている。絶対位置検出用タグ3は、携帯端末1Aとの間で相互に通信可能に構成され、携帯端末1Aからの要求に応じて、自己に付与されているIDを含むID情報を携帯端末1Aに対して送信する。
携帯端末1Aと、絶対位置検出用タグ3とは、例えば900MHz帯或いは2.45GHz帯の周波数を利用するRFID(Radio Frequency Identification)の通信方式に従ってID情報等の各種情報を送受信する。例えば、図3に示すように、管理サーバー2Aの管理エリアである飲食店のフロアF1内に設置されている第1〜第5の5個のテーブルT1〜T5に固定装備されており、各テーブルの一定距離内の携帯端末1AへID情報データを送信する。
【0070】
図1に示すように、携帯端末1Aの内部構成は、主として絶対位置検出部1−1、相対位置検出部1−2、音声認識モジュール1−3、無線LAN通信部1−4、メインCPU1−5及び現在位置データ補正手段1−6を備える。
【0071】
絶対位置検出部1−1は、RFIDタグリーダーアンテナ1−1aを備えており、このRFIDタグリーダーアンテナ1−1aを介して、携帯端末1Aから所定距離以内に位置する絶対位置検出用タグ3との間で通信を実行する。近距離通信専用CPU1−1bは、具体的には店舗フロアに配置された絶対位置検出用タグ3から送信された近距離通信用の電波を解析し、各表示端末や各位置検出用タグに固有のIDを当該携帯端末1Aが存在する絶対位置として取得する。取得したIDはメインCPU1−5へ送信する。
なお、本発明に使用可能な近距離通信としては、上記RFIDによる近距離通信以外にも、「Bluetooth」(10m〜100m)、[ZigBee](10m〜70m)、[Wibree](10m)、[UWB](10m)等がある。
【0072】
相対位置検出部1−2は、相対位置検出センサーとして、3軸ジャイロセンサー1−2a(角速度センサー)、3軸加速度センサー1−2bが設けられている。本実施形態の携帯端末1Aには、2種類の相対位置検出センサーが設けられているが、作業管理システム1の適用分野に応じて、2種類の相対位置検出センサーとは別のGPS等のような位置検出手段を使用することも可能である。位置検出CPU1−2eは、3軸ジャイロセンサー1−2a、3軸加速度センサー1−2bが検出した相対位置データを各データ特性に応じて最適化する。最適化された相対位置データは、メインCPU1−5へ送信される。
RAMやROMを備えるメモリー1−2fには、相対位置データ演算用のプログラムが格納されている。位置検出CPU1−2eはROMに記憶されている演算用のプログラムをRAM上に読み出し、相対位置の演算処理を実行する。演算結果は必要に応じてメモリー1−2fに格納される。
【0073】
音声認識モジュール1−3には、管理サーバー2から出力される音声信号に基づいて音声を出力する不図示のスピーカーと、作業者が発した音声を集音する集音手段1−3b(マイク)と、が接続されている。
また音声認識モジュール1−3は、音−デジタルデータ変換手段1−3aを備え、作業者の発する声を作業者の頭部にセットされたヘッドセットの集音手段1−3b(マイク)から集音した音声データをデジタルデータに変換(テキストデータ又はコードデータ等)して、メインCPU1−5へ送信する。
また、音−デジタルデータ変換手段1−3aは、メインCPU1−5から送信されたデジタルデータ(テキストデータ又はコードデータ等)を音声データに変換して作業者の頭部にセットされたヘッドセットのスピーカーから送出することができる。音声認識モジュール1−3は不図示のROMに記憶されている演算用のプログラムをRAM上に読み出し、音声認識及び音声発生のための演算処理を実行する。
【0074】
無線LAN通信部1−4は、上述したように管理サーバー2Aとの間で無線通信を実行する。
【0075】
メインCPU1−5は、3軸加速度センサー1−2bから得られた加速度データを2回積分演算することで携帯端末1Aを携帯している作業者の移動距離を算出する(以降積分モデルと呼ぶ)。もしくは、3軸加速度センサー1−2bから得られた加速度データの強度を測定し、作業者の歩行の有無を判別することで作業者の歩数による移動距離を算出する方法を用いることもできる(以降歩行モデルと呼ぶ)。さらにメインCPU1−5は、3軸ジャイロセンサー1−2aから得られた角速度データを1回積分することによって携帯端末1Aの向き、すなわち作業者の向きを算出する。そして、積分モデルもしくは、歩行モデルにより算出された歩行者の移動距離と、端末の向き及び近距離通信用CPU1−1bから受信した絶対位置データに基づいて、携帯端末1Aの現在位置データと作業者が向いている方向を算出する。
算出された携帯端末1Aの現在位置データ及び作業者の向いている方向は、無線LAN通信部1−4を介して、管理サーバー2Aへ送信される。
【0076】
また、メインCPU1−5は、音声認識モジュール1−3を制御し、音−デジタルデータ変換手段1−3aから受信したデジタルデータを、無線LAN通信部1−4を介して管理サーバー2Aへ送信する。
【0077】
現在位置データ補正手段1−6は、管理サーバー2Aからの指示に基づいて、携帯端末1A上の現在位置データを、管理サーバー2Aの管理エリア内に予め規定した規定位置の位置データに補正する。本実施の形態の場合、規定位置とは、図2に示すように、検知信号送信手段としての重量検出センサー付きシート4を設置した位置である。
【0078】
図2では、管理サーバー2Aの管理エリア内に、3個の携帯端末1Aα,1Aβ,1Aγが存在する場合を示していて、重量検出センサー付きシート4上に携帯端末1Aαを保有する作業者9が立っている状態を示している。
【0079】
重量検出センサー付きシート4は、携帯端末1Aを保有する作業者9による踏下等によって一定以上の荷重がかかるとそれを検出する重量検出センサーを内蔵している。作業者9に踏下されると、携帯端末1Aがシート上(規定位置上)に存在することを検知した旨の検知信号を、管理サーバー2Aに接続されたケーブル4aを介して管理サーバー2Aに送信する。
本実施形態の場合、重量検出センサー付きシート4からの検知信号の送信は、通信ケーブル4aにより行う有線式であるが、無線式であっても良い。
【0080】
管理サーバー2Aは、コンピューターにインストールされている業務管理用のプログラムを実行することにより、管理エリア内に存在する各携帯端末1Aと情報の送受信を行って、所定の業務管理を遂行する。
【0081】
管理サーバー2Aは、図1に示すように、複数の携帯端末1Aと無線通信によりデータの送受を可能にする無線LAN通信部2−1と、当該管理サーバー2Aの管理エリアとなる図3のフロアF1の各部の位置データ(座標データ)が記録された地図データ2−2と、不図示の記録部にインストールされている管理プログラムを実行して複数の携帯端末1Aとのデータの送受や、作業指示等を実行する制御部2−3とを備えている。
【0082】
管理サーバー2Aの制御部2−3は、検知信号送信手段である重量検出センサー付きシート4から検知信号を受信すると、管理下の全ての携帯端末1Aに現在位置データを送信するよう指示する。そして全ての携帯端末1Aから現在位置データを受信すると、受信した現在位置データに基づいて、最も規定位置に近い携帯端末1Aを特定する。最も規定位置に近い携帯端末における現在位置データを、現在位置データ補正手段1−6によって補正させる。
すなわち管理サーバー2Aは、最も規定位置に近い携帯端末1Aに対して、規定位置の位置データを送信し、規定位置の位置データを受信した携帯端末1Aの現在位置データ補正手段1−6が、その位置データで自らが保持する現在位置データを補正する。
【0083】
図3に示すように、この例では飲食店のフロア上の3箇所に、第1〜第3の3個の携帯端末1Aα,1Aβ,1Aγが、それぞれ作業者に保有された状態で存在している状況を示している。管理サーバー2Aの管理エリアとなるフロアには、検知信号送信手段である重量検出センサー付きシート4が、設置されている。
【0084】
この重量検出センサー付きシート4の設置箇所は、管理サーバー2Aの管理エリア内における各作業者が作業中に踏下しやすい場所に設置されている。
図3の例では、調理場前に料理置き場5−1が設定されており、料理置き場5−1の前のフロア床部分が、重量検出センサー付きシート4を設置する規定位置に選定されている。
【0085】
重量検出センサー付きシート4が設置された規定位置4−1の絶対位置データである位置座標は(x,y)=(200,250)である。図3の例では、重量検出センサー付きシート4からの検知信号を受ける管理サーバー2Aは、調理場の横の部屋に設置されている。
また、図3のフロア上では、第1の携帯端末1Aαは重量検出センサー付きシート4の付近(x,y)=(200,230)に、第2の携帯端末1AβはテーブルT4の付近(x,y)=(100,100)に、第3の携帯端末1Aγは出入口5−2付近(x,y)=(200,10)に位置している。
【0086】
次に、図3に示した状況で、管理サーバー2Aの制御部2−3が、管理下の携帯端末1Aα,1Aβ,1Aγの現在位置データを補正する方法を、図4に基づいて説明する。
各携帯端末1Aα,1Aβ,1Aγは、電源スイッチが投入されて使用が開始されると(ステップS101)、最寄りのテーブルに固定装備されている絶対位置用タグ3から絶対位置データを取得して、絶対位置検出部1−1絶対位置データを設定する(ステップS102)。
【0087】
注文を取る等の通常の業務に移行してからは(ステップS103)、各携帯端末の相対位置検出手段1−2が各携帯端末の保有者の移動方向及び移動量等に基づいて相対位置データが算出され、時間経過に応じて逐次、相対位置データによる現在位置データの補完がなされる。
【0088】
本実施形態の相対位置検出手段1−2の検出する相対位置データは、微小な単位時間毎の検出値(相対変位量)を積分するため、単位時間毎の相対変位量に含まれる微小な誤差分も蓄積され累積誤差となる。そのため、時間が経過するに従って、実際に携帯端末が存在している位置と、相対位置データにより補完された現在位置データとの間にズレが発生する場合が生じる(ステップS104)。
【0089】
例えば、携帯端末1Aαが認識している座標が(x,y)=(200,210)でも、実際に携帯端末1Aαが位置している座標は(x,y)=(200,230)である場合のようにズレが生じる。また、携帯端末1Aβが認識している座標が(x,y)=(100,110)でも、実際に携帯端末1Aαが位置している座標は(x,y)=(100,100)である場合もある。逆に、携帯端末1Aγのように認識している座標(x,y)=(200,10)と、実際に携帯端末1Aγが位置している座標(x,y)=(200,10)との間にズレがなく一致している場合もある。
【0090】
実際に携帯端末が存在している位置と、相対位置データにより補完した現在位置データとの間にズレが発生していても、各携帯端末自体は、そのことは認識できず、保有者が重量検出センサー付きシート4を踏下しない限り、その後も、各携帯端末は通常の業務処理に継続利用される(ステップS106)。
【0091】
通常業務中に、携帯端末を保有している作業者の一人が、重量検出センサー付きシート4を踏下すると、重量検出センサー付きシート4より検知信号が管理サーバー2Aへ送信される(送信ステップS111)が実行される。
送信ステップS111は、携帯端末1Aが規定位置(位置座標(x,y)=(200,250))上に存在していることを示す検知信号を、管理サーバー2Aに送信する処理である。
図4では、第1の携帯端末1Aαの保有者9が重量検出センサー付きシート4を踏下したことを示している。
【0092】
管理サーバー2Aは、重量検出センサー付きシート4からの検知信号の有無を判定しており、重量検出センサー付きシート4からの検知信号を受けた管理サーバー2Aは(ステップS201:Yes)、管理下の全ての携帯端末1Aに相対位置検出データで補完された現在位置データの送信を要求する(要求ステップS202)。
この要求指示に応じて、各携帯端末は相対位置データで補完済みの現在位置データを端末固有のIDと共に管理サーバー2Aに送信する(ステップS121)。これに応じて、管理サーバー2Aは、管理下の全ての携帯端末1Aα,1Aβ,1Aγから相対位置データで補完された現在位置データを受信する(受信ステップS203)。
【0093】
管理サーバー2Aは、全ての携帯端末1Aα,1Aβ,1Aγから受信した相対位置データで補完された現在位置データに基づいて、規定位置4−1から最も近い携帯端末1Aαを特定する(端末特定ステップS204)。次いで、特定された携帯端末1Aαに対して規定位置4−1の絶対位置データ(絶対位置座標(x,y)=(200,250))を送信し(ステップS205)、特定された携帯端末1Aαの現在位置データを規定位置4−1の絶対位置データに補正させる。
【0094】
各携帯端末の現在位置データ補正手段1−6は、管理サーバー2Aから規定位置の位置データを受けると、現在位置データをその規定位置の位置データに更新し(補正実行ステップS131)、補正処理を終了する(ステップS141)。
【0095】
規定位置4−1である重量検出センサー付きシート4から離れている携帯端末1Aβ,1Aγは、管理サーバー2Aから規定位置の位置データを受けることがなく、現在位置データ補正手段1−6による補正処理は行わずに(ステップS151)、通常業務を継続する。
【0096】
以上に説明した一実施の形態の携帯端末1Aでは、移動時には、絶対位置検出手段1−1で検出した絶対位置データを相対位置検出手段1−2の検出する相対位置データで補完することで、現在位置データを逐次取得する。
その場合に、現在位置データの補完に使用される相対位置データは、微小な単位時間毎の相対変位量データを経過時間分だけ積算するため、単位時間毎の相対変位量に含まれる微小な誤差分も積算されて累積誤差となって含まれる。従って、時間経過に伴って相対位置データによる補完が重ねられた現在位置データは、累積誤差の影響が大きくなり、位置精度が低下する虞がある。
【0097】
しかし、上記実施形態では、第1の携帯端末1Aαが取得した現在位置データは、当該第1の携帯端末1Aαが規定位置に移動した時に、ステップS131に示す現在位置データ補正手段1−6よる補正処理によって、規定位置4−1の位置データに補正される。
【0098】
即ち、携帯端末1Aαが規定位置4−1に移動した時に、その時に取得している現在位置データが、その規定位置における正確な位置データに書き換えられることになり、相対位置データによる補完で生じていた累積誤差が解消された状態に戻る。
【0099】
更に、本実施形態の管理システム10の構成では、検知信号送信手段として、踏下された時に検知信号の出力を行う重量検出センサー付きシート4を採用したため、各携帯端末1Aα,1Aβ,1Aγの保有者が、シート4の上に乗るだけで、携帯端末が規定位置に存在していることを示す検知信号を管理サーバー2Aに送信することができる。特に本実施形態では、管理エリア内における作業者の動線上で、一定の経過時間以内に保有者が通過することが確実となる通路部分等にシート4を敷設しているため、一定の経過時間内に、現在位置データ補正手段1−6による補正を確実に実施することが可能となる。
【0100】
なお、上記実施の形態の管理システム10では、管理サーバー2Aは、重量検出センサー付きシート4からの検知信号を受信すると、管理下の全ての携帯端末1Aに現在位置データを送信するよう要求し、受信した全ての携帯端末1Aα,1Aβ,1Aγからの現在位置データに基づいて、規定位置から最も近い携帯端末の現在位置データを補正した。しかしながら、補正対象となる携帯端末を1台に限定しなくてもよい。例えば、規定位置の近傍に存在している携帯端末が複数存在した場合は、その複数の携帯端末における現在位置データを規定位置の正確な位置データに補正させることもできる。
また、上述の説明では、規定位置4−1の位置情報に基づき現在位置データを書き換えて補正していたが、規定位置4−1の位置情報に基づき相対位置データのみを書き換えて補正することも可能である。また、現在位置データと相対位置データを共に正確な位置データに書き換え補正してもよい。相対位置データによる補完で生じていた累積誤差が解消され、また、相対位置データに基づく現在位置データも累積誤差が解消され正確な位置データの状態に戻ることができる。相対位置データと現在位置データの少なくとも一方が補正されればよい。
【符号の説明】
【0101】
1A:携帯端末、1−1:絶対位置検出部、1−2:相対位置検出手段、1−2a:3軸ジャイロセンサー、1−2b:3軸加速度センサー、1−2e:位置検出CPU、1−3:音声認識モジュール、1−4:無線LAN通信部、1−5:メインCPU、1−6:現在位置データ補正手段、2A:管理サーバー、2−1:無線LAN通信部、2−2:地図データ、2−3:制御部、3:RFIDタグ(絶対位置検出部)、4:検知信号送信手段(重量検出センサー付きシート)、9:携帯端末の保有者(作業者)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末であって、
前記携帯端末の絶対位置を検出する絶対位置検出手段と、
前記携帯端末の相対位置を検出する相対位置検出手段と、
前記絶対位置を基準に前記相対位置で補完した現在位置データまたは前記相対位置を補正する現在位置データ補正手段と、を備えたことを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記請求項1に記載の携帯端末を1つ以上管理するサーバーを有し、
少なくとも前記相対位置検出手段で検出した相対位置データを含むデータを前記サーバーへ出力する管理システムであって、
更に、前記サーバーの管理エリア内の規定位置に設置され、前記規定位置に前記携帯端末が位置したときに検知信号を前記サーバーに送信する検知信号送信手段を備え、
前記検知信号送信手段から前記検知信号を受信した前記サーバーは、前記規定位置に存在している携帯端末の前記現在位置データ補正手段に前記規定位置に基づいた補正処理を実行させることを特徴とする管理システム。
【請求項3】
前記検知信号送信手段は、重量検出センサーを備え、所定の重量を検出した際に、前記検知信号を前記サーバーに送信することを特徴とする請求項2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記サーバーは前記検知信号を受信すると、管理下の携帯端末に現在位置データを送信するよう要求し、前記携帯端末から受信した現在位置データに基づいて、前記規定位置に最も近い携帯端末を特定し、前記規定位置に最も近い携帯端末の前記現在位置データ補正手段を対象に前記規定位置の位置データにより補正させることを特徴とする請求項3に記載の管理システム。
【請求項5】
サーバーと少なくとも1台の携帯端末とからなる管理システムにおける携帯端末の現在位置データの補正方法であって、
前記サーバーの管理エリア内の規定位置に設置された検知信号送信手段が前記規定位置に前記携帯端末が存在することを検出して検知信号を前記サーバーに送信する送信ステップと、
前記サーバーから管理下の携帯端末に相対位置検出データで補完された現在位置データの送信を要求する要求ステップと、
管理下の全ての携帯端末から前記現在位置データを受信する受信ステップと、
前記携帯端末から受信した現在位置データに基づいて、前記規定位置に最も近い携帯端末を特定する端末特定ステップと、
前記特定された携帯端末の現在位置データを前記規定位置の位置データに補正させる補正実行ステップと、を含むことを特徴とする携帯端末の現在位置データの補正方法。
【請求項6】
前記相対位置は、携帯端末に搭載された検出センサーの単位時間毎の検出値を積分して得た相対位置データであることを特徴とする請求項5に記載の携帯端末の現在位置データの補正方法。
【請求項7】
前記請求項5に記載の各ステップを前記サーバーの制御部に実行させることを特徴とする携帯端末の現在位置データの補正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−273134(P2010−273134A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123513(P2009−123513)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】