説明

摩擦伝動構造、摩擦クラッチ、デフ・ロック装置

【課題】摩擦面間の相対回転速度を摩擦係合させる2部材間の相対回転速度よりも低くすることを可能とする。
【解決手段】相対回転可能なアウター・プレート111及びインナー・プレート113にそれぞれ備えられた摩擦面間に、回転自在なフローティング・プレート109を介設し、理論的にはアウター・プレート111及びインナー・プレート113の摩擦面とフローティング・プレート109との間の相対回転速度をアウター・プレート111及びインナー・プレート113の相対回転速度の1/2にすることができ、摩擦面間の相対回転速度をアウター・プレート111及びインナー・プレート113間の相対回転速度よりも低くすることができることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦伝動構造、摩擦クラッチ、デフ・ロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されている摩擦クラッチがある。この摩擦クラッチは、外周側のケースと内周側のシャフトからなる一対の回転部材間に係合する多板のメイン・クラッチを締結制御するものである。
【0003】
この摩擦クラッチでは、電磁石が励磁されるとアーマチャが吸引されパイロット・クラッチが締結調整される。このパイロット・クラッチの締結調整によりカム機構が働いてスラスト力に変換され、メイン・クラッチに所定の締結力を付与する。
【0004】
しかし、パイロット・クラッチの摩擦面間の相対回転速度を、相互に摩擦係合するアウター・プレート及びインナー・プレート間の相対回転速度よりも低くすることができないという問題があった。
【0005】
このため、潤滑オイルの粘性が高い低温時に前記パイロット・クラッチの潤滑オイルによる粘性抵抗を低くすることができず、大きなドラグトルクが発生するため、低粘度の潤滑オイルの使用や油面高さの低下を必要としていた。
【0006】
また、高速回転時にはパイロット・クラッチの摩擦面間の相対回転速度が速く、粘性抵抗によりパイロット・クラッチが作動する可能性があり、高速回転の使用に限界があった。
【0007】
さらに、摩擦面間の相対回転速度が速く、摩耗に対しても不利であるという問題があり、このような問題は、上記構造に限らず、ブレーキ摩擦面間においても同様であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−76699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、摩擦面間の相対回転速度を、摩擦係合する2部材間の相対回転速度よりも低くすることができなかった点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、摩擦面間の相対回転速度を、摩擦係合する2部材間の相対回転速度よりも低くすることを可能とするため、相対回転可能な一対の部材にそれぞれ備えられた摩擦面の摩擦係合を行わせる摩擦伝動構造であって、前記摩擦面間に、回転自在なフローティング・プレートを介設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は、相対回転可能な一対の部材にそれぞれ備えられた摩擦面の摩擦係合を行わせる摩擦伝動構造であって、前記摩擦面間に、回転自在なフローティング・プレートを介設した。
【0012】
このため、理論的には摩擦面とフローティング・プレートとの間の相対回転速度を、一対の部材の相対回転速度より低くすることができ、摩擦面間の相対回転速度を、一対の部材間の相対回転速度よりも低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】減速駆動装置の断面図である。(実施例1)
【図2】要部拡大断面図である。(実施例1)
【図3】減速駆動装置のである。(実施例2)
【図4】デフ・ロック装置に係り、上半部がデフ・ロック解除状態、下半部がデフ・ロック状態を示す断面図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0014】
摩擦面間の相対回転速度を、摩擦係合する2部材間の相対回転速度よりも低くすることを可能にするという目的を、フローティング・プレートにより実現した。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1の摩擦伝動構造を適用した減速駆動装置の断面図である。
【0016】
図1のように、減速駆動装置1は、駆動源として電動モーター或いはモーター・ジェネレータ3を備え、車体側に支持され固定側であるキャリヤ・ケース5に、複数段の減速ギヤ組である第1,第2の減速機構7,9と、摩擦クラッチ11、リヤ・デファレンシャル装置13とを備えている。
【0017】
本発明実施例の特徴は、摩擦クラッチ11に、後述するフローティング・プレートを設けたことにあるが、その前提構成である減速駆動装置1について全体的に説明する。
【0018】
キャリヤ・ケース5は、モーター・ジェネレータ3、第1,第2の減速機構7,9、摩擦クラッチ11、及びリヤ・デファレンシャル装置13を支持するものであり、ケース本体部15及びケース・カバー部17の合わせ構造となっている。ケース本体部15及びケース・カバー部17は、ボルト19によって締結結合されている。
【0019】
キャリヤ・ケース5の入力部側には、ケース本体部15に貫通部20が設けられ、貫通部20の外周囲に取付フランジ21が設けられている。取付フランジ21にモーター・ジェネレータ3が取り付けられ、ボルトによって締結固定されている。貫通部20には、シール部材23が装着されている。
【0020】
キャリヤ・ケース5の出力部側左右には、ボス部27,29が設けられている。ボス部27,29には、シール部材31,33が装着されている。
【0021】
第1,第2の減速機構7,9は、モーター・ジェネレータ3の駆動力を減速して出力するもので、第1の減速機構7は、複数段の減速ギヤ組の前段を構成し、キャリヤ・ケース5の入力部側に支持されている。
【0022】
第1の減速機構7は、第1の小径ギヤ35及び第1の大径ギヤ37によって構成されている。
【0023】
第1の小径ギヤ35は、入力軸39に一体に設けられている。入力軸39は、ベアリング41,43によりキャリヤ・ケース5に回転自在に支持されている。入力軸39の一端に、モーター・ジェネレータ3の出力軸が結合され、入力軸39の端部外周にシール部材23が接している。
【0024】
第1の大径ギヤ37は中間軸45に圧入支持されている。中間軸45の一端側はボール・ベアリング47によってケース・カバー部17に支時され、他端側はニードル・ベアリング49によってケース本体部5に支時されている。中間軸45の一端側とケース・カバー部17との間にはオイル・シール51が配置され、外部へのオイル漏れを防止している。中間軸45の端部は、ケース・カバー部17外へ突出し、回転検出用のギヤ53が取り付けられている。
【0025】
第2減速機構9は、互いに噛み合った第2の小径ギヤ55と第2の大径ギヤ57とから構成されている。第2の小径ギヤ55は、中間軸45に一体形成され、第2の大径ギヤ57は、リヤ・デフ31のアウター・デフ・ケース59の端部に溶接されている。
【0026】
モーター・ジェネレータ3の出力トルクは、第1,第2減速機構7,9によって後輪の走行回転数域まで減速され、トルクが増幅されてリヤ・デフ13のアウター・デフ・ケース59を回転させるようになっている。
【0027】
摩擦クラッチ11は、アウター・デフ・ケース59、インナー・デフ・ケース61、多板式のメイン・クラッチ63、締結機構としてのボール・カム65、プレッシャー・プレート67、カム・リング69、多板式のパイロット・クラッチ71、リターン・スプリング73、アーマチャ75、電磁石77により構成されている。
【0028】
アウター・デフ・ケース59の第2の大径ギヤ57は、ボール・ベアリング79,81によってインナー・デフ・ケース61上に支承されている。アウター・デフ・ケース59は、第2の大径ギヤ57によるトルク伝達だけを行い、部材の支持機能から開放されたフローティング構造になっている。
【0029】
インナー・デフ・ケース61は、一端のボス部83がボール・ベアリング85によってケース・カバー部17に支承され、他端のボス部87がボール・ベアリング89と電磁石77のコア91とを介してケース本体部5に支持されている。コア91はケース本体部5に固定されている。
【0030】
ボス部87の外周には、磁性材料で形成されたローター93が配置され、スナップ・リング95によって軸方向に位置決められている。ローター93には、非磁性部93aが形成されている。
【0031】
前記メイン・クラッチ63は、アウター・デフ・ケース59とインナー・デフ・ケース61との間に配置されている。メイン・クラッチ63のアウター・プレートは、アウター・デフ・ケース59の内周にスプライン係合し、同インナー・プレートは、インナー・デフ・ケース61の外周にスプライン係合している。
【0032】
パイロット・クラッチ71は、本実施例の摩擦伝動構造としてアウター・デフ・ケース59とカム・リング69との間に配置されている。パイロット・クラッチ71の後述するアウター・プレートはアウター・デフ・ケース59の内周にスプライン係合し、同インナー・プレートはカム・リング69の外周にスプライン係合している。アウター・プレート及びインナー・プレートには、径方向中間部に非磁性部を構成する周方向の長孔が形成されている。
【0033】
ボール・カム65は押圧部材としてのプレッシャー・プレート67とカム・リング69との間に形成されている。プレッシャー・プレート67はインナー・デフ・ケース61の外周に軸方向移動自在にスプライン係合し、ボール・カム65のカムスラスト力を受けてメイン・クラッチ63を押圧する。
【0034】
カム・リング69とローター93との間には、スラスト・ベアリング97が配置されている。スラスト・ベアリング97は、ボール・カム65のカム反力を受けると共に、カム・リング69とローター93との間の相対回転を許容する。
【0035】
プレッシャー・プレート67とインナー・デフ・ケース61との間には、リターン・スプリング73が配置されている。プレッシャー・プレート67は、リターン・スプリング73によりメイン・クラッチ63の連結解除方向に付勢されている。
【0036】
アーマチャ75はリング状に形成されており、プレッシャー・プレート67とパイロット・クラッチ71との間に軸方向移動自在に配置されている。
【0037】
電磁石77のリード線はグロメットを介してケース本体部5の外部に引き出され、コネクターによってバッテリー37側に接続されている。
【0038】
電磁石77のコア91とローター93との間には適度なエアギャップが形成されており、このエアギャップ、ローター93、パイロット・クラッチ71、アーマチャ75によって電磁石77の磁路が構成されている。電磁石77を通電制御すると磁路上に磁束ループが形成される。
【0039】
リヤ・デフ13の差動機構は、ピニオン・シャフト101、ピニオン・ギヤ103、出力側のサイド・ギヤ105,107から構成されている。
【0040】
サイド・ギヤ105,107は左右のアクスル・シャフトにそれぞれスプライン係合されている。
[トルク伝達]
モーター・ジェネレータ3の出力は、入力軸39から第1,第2減速機構7,9を介してアウター・デフ・ケース59に伝達される。このアウター・デフ・ケース59から摩擦クラッチ11を介してインナー・デフ・ケース61に伝達される。
【0041】
インナー・デフ・ケース61の回転はピニオン・シャフト101からピニオン・ギヤ103を介して各サイド・ギヤ105,107に配分され、さらにアクスル・シャフトから左右の後輪に伝達される。
【0042】
悪路などで後輪の間に駆動抵抗差が生じると、モーター・ジェネレータ3の駆動力はピニオン・ギヤ103の自転によって左右の後輪に差動配分される。
【0043】
前記摩擦クラッチ11の締結制御は、例えば次のような電磁石77の通電制御により行われる。
【0044】
コントローラは、各種センサーによって検知した路面状態、車両の発進、加速、旋回のような走行条件及び操舵条件などに応じて、電磁石77の通電制御を行う。
【0045】
電磁石77の通電制御は、モーター・ジェネレータ3の動作コントロールと共に行われ、電磁石77の通電停止は、モーター・ジェネレータ3を駆動停止させるときに行われる。
【0046】
電磁石77が励磁されると、上記の磁束ループによってアーマチャ75が吸引され、ローター93との間でパイロット・クラッチ71を締結し、パイロット・トルクを発生させる。パイロット・トルクが発生すると、パイロット・クラッチ71によってアウター・デフ・ケース59に連結されたカム・リング69と、インナー・デフ・ケース61側のプレッシャー・プレート67とを介してボール・カム65にモーター・ジェネレータ3側からの伝達トルクが作用する。ボール・カム65は、前記伝達トルクを増幅しながらカムスラスト力に変換し、プレッシャー・プレート67を移動させてメイン・クラッチ63を締結させる。
【0047】
こうして摩擦クラッチ11が連結されると、第2の大径ギヤ57に伝達されたモーター・ジェネレータ3のトルクがアウター・デフ・ケース59からインナー・デフ・ケース61に伝達され、その回転は差動機構によって左右の後輪に配分され、車両が四輪駆動状態になる。
【0048】
このとき、電磁石77の励磁電流を制御すると、パイロット・クラッチ71の滑り率が変化してボール・カム65のカムスラスト力が変わり、後輪側への伝達トルクが制御される。このような伝達トルクの制御を、例えば、旋回時に行うと旋回性と車体の安定性とを大きく向上させることができる。
【0049】
前記電磁石77の励磁を停止すると、パイロット・クラッチ71が開放されてボール・カム65のカムスラスト力が消失し、リターン・スプリング73の付勢力によってプレッシャー・プレート67が戻り、メイン・クラッチ63が開放されて摩擦クラッチ11の連結が解除され、車両は前輪駆動での二輪駆動状態になる。
【0050】
前記摩擦クラッチ11の締結解除操作は、上記のようにモーター・ジェネレータ3の停止操作と同時に行われるから、二輪駆動状態では、アウター・デフ・ケース59と減速機構7,9とモーター・ジェネレータ3とが後輪の連れ回りから切り離され、機械的に回されることが防止される。
【0051】
従って、減速機構7,9、モーター・ジェネレータ3及びそのベアリング、バッテリー、レギュレータなどの集積回路の回路素子が後輪の連れ回りによる悪影響から保護され、耐久性が向上する。
[フローティング・プレート]
図2は、要部拡大断面図である。
【0052】
図2のように、摩擦クラッチであるパイロット・クラッチ71の各摩擦面間に、回転自在なフローティング・プレート109が各1枚ずつ介設されている。摩擦面は、対回転自在な一対の部材であるアウター・プレート111、インナー・プレート113に形成されている。
【0053】
フローティング・プレート109は、スチールなどの磁性体で形成され、アウター・デフ・ケース59及びインナー・デフ・ケース61の何れにも係合していない。このフローティング・プレート109には、径方向の中間部に、非磁性部を構成する周方向の長孔が形成されている。
【0054】
そして、アウター・プレート111及びインナー・プレート113が相対回転するときには、フローティング・プレート109に対して相対回転することになり、理論的にはアウター・プレート111及びインナー・プレート113とフローティング・プレート109との間の相対回転速度をアウター・プレート111及びインナー・プレート113間の相対回転速度に対して1/2にすることができる。
[実施例の効果]
本願発明の実施例では、相対回転可能なアウター・プレート111及びインナー・プレート113にそれぞれ備えられた摩擦面間に、回転自在なフローティング・プレート109を介設した。
【0055】
理論的にはアウター・プレート111及びインナー・プレート113の摩擦面とフローティング・プレート109との間の相対回転速度をアウター・プレート111及びインナー・プレート113の相対回転速度の1/2(複数枚のフローティング・プレート109を介設することで1/2を下回る)にすることができ、摩擦面間の相対回転速度をアウター・プレート111及びインナー・プレート113間の相対回転速度よりも低くすることができる。
【0056】
このため、潤滑オイルとして低粘度オイルではなく、通常粘度のオイルを使用しても、或いは油面高さを低下させなくてもよい。すなわち、摩擦面間の相対回転速度を低くすることができることより潤滑オイルの粘性が高い低温時でもパイロット・クラッチ71の潤滑オイルによる粘性抵抗を低くすることができ、ドラグトルク発生を抑制することができる。
【0057】
油面高さの影響を受け難くすることができるため、レイアウトの要件を緩和することができる。
【0058】
また、高速回転時でもパイロット・クラッチ71の摩擦面間の相対回転速度を従来より低くすることが可能であり、粘性抵抗によりパイロット・クラッチ71が作動する可能性を抑え、使用できる高速回転の限界を高めることができる。
【0059】
さらに、摩擦面間の相対回転速度を実質的に低くすることができ、摩耗に対しても有利となる。
【実施例2】
【0060】
図3は、本発明の実施例2に係り、減速駆動装置の断面図である。なお、基本的な構成は実施例1と同様であり、同一又は対応した構成部分には同符号を付し又は同符号にAを付して重複した説明は省略する。
【0061】
本実施例の減速駆動装置1Aは、摩擦クラッチ11Aを油圧駆動としたものである。
【0062】
ケース本体部15Aには、シリンダ部115が形成され、ピストン117が配置されている。ケース本体部15Aには、シリンダ部115に連通する油路119が形成されている。
【0063】
パイロット・クラッチ71は、アウター・デフ・ケース59に回転方向及び軸方向に係合する受圧プレート121で受けられている。
【0064】
カム・リング69は、スラスト・ベアリング97を介し支持プレート123で軸方向に受けられ、支持プレート123とピストン117との間にはリターン・スプリング125が介設されている。
【0065】
本実施例でも、パイロット・クラッチ71のアウター・プレート111及びインナー・プレート113にそれぞれ備えられた摩擦面間に、回転自在なフローティング・プレート109が介設されている。
【0066】
そして、油路119からシリンダ部115内に油圧を供給することによりピストン117がパイロット・クラッチ71側へ移動し、パイロット・クラッチ71が受圧プレート121に対して締結される。
【0067】
油圧の供給がなくなるとピストン117は、リターン・スプリング125の付勢力により元位置に復帰する。
【0068】
したがって、本実施例でもアウター・プレート111及びインナー・プレート113の摩擦面とフローティング・プレート109との間の相対回転速度を理論的にはアウター・プレート111及びインナー・プレート113の相対回転速度の1/2にすることができ、実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
【実施例3】
【0069】
図4は、本発明の実施例3のデフ・ロック装置に係り、上半部がデフ・ロック解除状態、下半部がデフ・ロック状態を示す断面図である。なお、基本的な構成は実施例1と同様であり、同一又は対応した構成部分には同符号を付し又は同符号にBを付して重複した説明は省略する。
【0070】
本実施例の摩擦伝動構造は、デファレンシャル装置13Bのデフ・ロック装置として適用され、相対回転可能な一対の部材である電磁石125とアーマチャ127とにそれぞれ備えられた摩擦面の摩擦係合を行わせるものである。
【0071】
本実施例では、これら電磁石125とアーマチャ127との間に1枚のフローティング・プレート109Bが設けられている。
【0072】
電磁石125は、固定側に支持され、内周面はデフ・ケース61Bのボス部外周に支持された受け部材129の外周面にブッシュ131を介して受けられている。アーマチャ127は、ボール・カム65Bのカム・リング69Bに係合している。
【0073】
プレッシャー・プレート67Bの内周側には、ロック・ピン133の一端が対向配置され、ロック・ピン133の他端は、サイド・ギヤ105Bの凹部105Baに対して係脱する構成となっている。
【0074】
ロック・ピン133の一端部には、周溝135が形成され、ばね受けプレート137の内周側が係合している。
【0075】
プレッシャー・プレート67Bの外周側でばね受けプレート137には、リターン・スプリング139の端部が対向配置され、このリターン・スプリング139は、周方向複数配置され、デフ・ケース61Bの孔61Baに収容されている。
【0076】
ボール・カム65B、プレッシャー・プレート67B、カム・リング69B、電磁石125、アーマチャ127は、本実施例において締結機構を構成する。
【0077】
そして、電磁石125への通電によりアーマチャ127が吸引され、摩擦係合する。
【0078】
この摩擦係合によりカム・リング69Bが回転規制を受け、ボール・カム65Bの作用により受け部材129に対してプレッシャー・プレート67Bがロック・ピン133側へスラスト力を受ける。
【0079】
このスラスト力でロック・ピン133がリターン・スプリング139の付勢力に抗して移動し、サイド・ギヤ105Bの凹部105Baに係合する。
【0080】
この係合によりサイド・ギヤ105Bがデフ・ケース61Bに対して相対回転不能となりデフ・ロック状態となる。
【0081】
電磁石125への通電が解除されると電磁石125に対するアーマチャ127の吸引が解除され、リターン・スプリング139の付勢力によりばね受けプレート137及びプレッシャー・プレート67Bが押し戻される。
【0082】
ばね受けプレート137の押し戻しによりロック・ピン133の凹部105Baに対する係合がなくなり、デフ・ロックは解除される。
【0083】
電磁石125への通電が解除されると電磁石125とアーマチャ127とが相対回転する。このときの相対回転数は、実施例1と同様にフローティング・プレート109Bにより理論的に1/2にすることができる。
【0084】
したがって、本実施例でも実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
[その他]
摩擦伝動構造としては、ブレーキとして構成することもできる。また、フローティング・プレート109は、摩擦クラッチの内外プレート内に複数枚重ね合わせて設けることができ、この場合の摩擦クラッチの相対回転速度は、さらに低く抑えることができる。
【符号の説明】
【0085】
59 アウター・デフ・ケース(外回転部材)
61 インナー・デフ・ケース(内回転部材)
63 メイン・クラッチ
65,65B ボール・カム
67,67B プレッシャー・プレート(押圧部材、締結機構)
69,69B カム・リング(締結機構)
71 パイロット・クラッチ(摩擦伝動構造、締結機構)
75,127 アーマチャ(締結機構)
77,125 電磁石(締結機構)
109,109B フローティング・プレート
111 アウター・プレート(相対回転可能な部材)
113 インナー・プレート(相対回転可能な部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対回転可能な一対の部材にそれぞれ備えられた摩擦面の摩擦係合を行わせる摩擦伝動構造であって、
前記摩擦面間に、回転自在なフローティング・プレートを介設した、
ことを特徴とする摩擦伝動構造。
【請求項2】
請求項1記載の摩擦伝動構造であって、
前記摩擦面は、前記相対回転自在な一対の部材間に介設された摩擦クラッチに備えられたものである、
ことを特徴とする摩擦伝動構造。
【請求項3】
相対回転可能な内外回転部材間に介設された多板のメイン・クラッチと、
前記メイン・クラッチを押圧して前記内外回転部材間のトルク伝達を制御する押圧部材と、
前記押圧部材と前記内外回転部材の一方との間に介設されパイロット・クラッチの締結による摩擦面の摩擦係合に起因して前記押圧部材を押圧動作させる締結機構とよりなる摩擦クラッチであって、
前記パイロット・クラッチの摩擦面間に、回転自在なフローティング・プレートを介設した、
ことを特徴とする摩擦クラッチ。
【請求項4】
相対回転可能な回転部材間に介設され回転部材間をロック可能なロック部材と、
前記ロック部材を押圧して前記回転部材間の相対回転をロックする押圧部材と、
前記押圧部材と固定側との間に介設され締結による摩擦面の摩擦係合に起因して前記押圧部材を押圧動作させる締結機構とよりなるデフ・ロック装置であって、
前記摩擦面間に、回転自在なフローティング・プレートを介設した、
ことを特徴とするデフ・ロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−256933(P2011−256933A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131439(P2010−131439)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000225050)GKNドライブラインジャパン株式会社 (409)
【Fターム(参考)】