説明

摺動部材およびその製造方法

【課題】大幅な低フリクション化を図ることができるのはもちろんのこと、量産化が可能となるとともに、製造コストを低減することができる摺動部材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】部材1,2間への高面圧の印加によって、局所的固体接触が摺動界面で起こり、摺動部材の摺動面で微視的摩耗が生じる。摺動部材1の潤滑膜11には、炭素系分子12が、単体あるいはその単体の集合体として含有されている。炭素系分子12が、上記微視的摩耗によって、潤滑膜11から露出し、その一部がそこから遊離し、摺動界面に供給される。そのような炭素系分子12は、転動可能な中空構造を有するから、摺動界面で分子レベルのボールベアリングとして作用する。この場合、炭素系分子が少なくとも一つ存在すると、存在しない場合と比較して、局所的フリクションを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手部材と摺動する摺動面を有する摺動部材およびその製造方法に係り、特に、相手部材とのフリクションの低減のための摺動面の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
摺動部材の分野では、自動車のエンジン等のように相手部材との間に潤滑油が介在する環境下において、相手部材とのフリクションの低減化や耐摩耗性の向上が図られており、それらを実現するために、ボールベアリングが用いられることが多い。
【0003】
ところが、たとえばエンジン内部における多くの摺動部にボールベアリングを適用した場合、軽量化が困難となり、設置スペースが狭くなるため、ボールベアリングの使用の代わりに、PTFE〔テフロン(登録商標)〕や二硫化モリブデンからなる潤滑膜を摺動面に被覆している。このようにして固体潤滑特性の向上が図られることが多いが、その効果は、ボールベアリングの効果には及ばない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のような背景から、摺動面でのフリクションの大幅な低減化のために、種々の技術が提案されている。たとえば特許文献1の技術は、ナノメータスケールの構造物への適用を目的として、2枚のグラファイト基板の互いの摺動面にフラーレンあるいはカーボンナノチューブを蒸着し、グラファイト基板の間に配置されたそれら分子を、分子ベアリングとして作用させることを提案している。
【0005】
しかしながら、この技術では、フリクションのゼロ化という高効果が期待されるものの、2枚のグラファイトの摺動面にフラーレンやカーボンナノチューブを、蒸着法により正確に配置する必要がある。このため、その製造が難しく、量産化への適用が非常に困難であり、しかも、その製造コストは、自動車部品に見合ったものではない。
【0006】
【特許文献1】特開2003−62799号公報
【0007】
したがって、本発明は、大幅な低フリクション化を図ることができるのはもちろんのこと、量産化を可能とするとともに、製造コストを低減することができる摺動部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の摺動部材は、相手部材と摺動する摺動面に潤滑膜が形成され、潤滑膜には、転動可能な中空構造を有する炭素系分子が、単体あるいはその単体の集合体として含有されていることを特徴としている。
【0009】
本発明の摺動部材では、部材間への高面圧の印加により局所的固体接触が摺動界面で起こったとき、摺動部材の摺動面で微視的摩耗が生じる。ここで、摺動部材の摺動面に形成された潤滑膜には、転動可能な中空構造を有する炭素系分子が、単体あるいはその単体の集合体として含有されている。したがって、炭素系分子は、上記微視的摩耗によって、潤滑膜から露出し、その一部がそこから遊離することにより、摺動界面に供給される。そのような炭素系分子は、転動可能な中空構造を有するから、摺動界面で分子レベルのボールベアリングとして作用する。
【0010】
この場合、炭素系分子が少なくとも一つ存在すると、存在しない場合と比較して、局所的フリクションを低減することができるので、摺動界面で大幅な低フリクション化を図ることができる。その結果、フリクションによるエネルギ損失の低減を図ることができるので、摺動部材が適用される自動車のエンジン等の内燃機関の燃費改善を図ることができる。また、摺動部材の摺動面の潤滑膜に転動可能な中空構造を有する炭素系分子を含有させるという簡単な構成によって上記効果を得ることができるので、 量産化が可能となるとともに、製造コストを低減することができる。
【0011】
本発明の摺動部材は種々の構成を用いることができる。たとえば、潤滑膜は、DLC膜であることが好適である。この態様では、DLCは、その材質自体のフリクションが低く、硬度が高く(耐磨耗性が良好)、化学的安定性が高く(耐食性が良好)、凝着性が弱い(耐焼付き性が良好)であるから、摺動特性が良好となる。しかも、DLCは無害な炭素と水素を主成分としてから環境調和性を満足することができ、原料(炭化水素ガスまたはグラファイト)の存在量が多くて安定的である。
【0012】
炭素系分子としては、フラーレン、カーボンナノチューブ、アダマンタン、フラーレンの水素化合物、カーボンナノチューブの水素化合物、および、アダマンタンの水素化合物の少なくとも1つを用いることができる。フラーレンとしては、C60フラーレンを用いることができる。
【0013】
本発明の摺動部材を、たとえばエンジンに適用する場合、摺動部材としてシリンダボアあるいはピストンに用いることができる。摺動部材としてシリンダボアを用いる場合、相手部材はピストンであり、摺動部材としてピストンを用いる場合、相手部材はシリンダボアである。また、摺動部材だけでなく相手部材にも、本発明の潤滑膜を適用してもよい。
【0014】
本発明の摺動部材の製造方法は、潤滑膜の原材料へのプラズマ処理によって、相手部材と摺動する摺動面に潤滑膜を形成する潤滑膜形成工程を含み、潤滑膜形成工程では、転動可能な中空構造を有する炭素系分子、および、炭素系分子を水素化したものの少なくとも一方を含有する炭素系分子ガスを、原材料のプラズマに導入し、炭素系分子ガスをイオン化し、潤滑膜の原材料の摺動面への堆積時、イオン化された炭素系分子ガスを潤滑膜中に取り込ませて分子化することを特徴としている。
【0015】
本発明の摺動部材の製造方法は、本発明の摺動部材と同様な効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の摺動部材あるいはその製造方法によれば、相手部材との微視的摩耗によって、転動可能な中空構造を有する炭素系分子が潤滑膜から摺動界面に供給され、そこで分子レベルのボールベアリングとして作用する。これにより、大幅な低フリクション化を図ることができるのはもちろんのこと、量産化が可能となるとともに、製造コストを低減することができる等の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(1)摺動部材の基本構成
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る一実施形態の摺動部材1の概略構成を表す側断面図である。摺動部材1は本体部10を備え、本体部10の表面に潤滑膜11が形成されている。潤滑膜11の内部には、転動可能な中空構造を有する炭素系分子12が分散して含有されている。
【0018】
潤滑膜11は、たとえばダイヤモンド・ライク・カーボン(Diamond-Like Carbon(DLC))からなるDLC膜であり、その膜厚はたとえば3μmである。潤滑膜11としては、DLC膜に限定されず、種々の変形が可能である。たとえば、CrNや、TiCN、TiAlN等からなるドライコーティング膜、あるいは、Ni等のめっき膜でもよい。
【0019】
DLCは、その材質自体のフリクションが低く、硬度が高く(耐磨耗性が良好)、化学的安定性が高く(耐食性が良好)、凝着性が弱い(耐焼付き性が良好)。しかも、DLCは無害な炭素と水素を主成分としてから環境調和性を満足することができ、原料(炭化水素ガスまたはグラファイト)の存在量が多くて安定的である。具体的には、上記他の材質と比較した場合、DLCは、同等の耐食性を有するCrNより、フリクションが低い。また、DLCは、上記いずれの特性においても、Niめっきより優れている。
【0020】
このようにDLCは、上記他の材質と比較して、潤滑膜として種々のメリットがあるから、好適である。また、炭素系分子12としてフラーレンを用いた場合、DLC膜の表面が摺動時のエネルギによりグラファイト化した際、DLC膜は、フラーレンとの接触点においてナノスケールのギア(ナノギア)として作用し、低フリクション化に寄与する。
【0021】
炭素系分子12では、その一部が、潤滑膜11の相手部材(図示略)との局所的固体接触時に、潤滑膜11から摺動面へ遊離して、そこで分子ベアリングとして作用する。また、炭素系分子12は、図6(A)に示すように分子単体で存在していてもよく、あるいは、図6(B)に示すように、その分子が複数からなる集合体で存在していてもよい。なお、図6では、図示の便宜のため、炭素系分子12の分子を単純化して示している。
【0022】
潤滑膜11中に含有される炭素系分子12としては、多数個の炭素原子によって合成される炭素の同素体で、外部からの荷重に対する転がり方向に異方性を持たない球形状分子分子(たとえばC60フラーレン)あるいはその水素化合物が最も望ましい。また、閉構造の擬似球形体(たとえばC70、C74、C76等の高次フラーレン、アダマンタン(Adamantane、C1016)、あるいは、それらの水素化合物)でもよい。さらに、それらと比較してフリクション性能が劣るが、少なくとも一方向に円形断面を持つ分子(たとえばカーボンナノチューブ)あるいはその水素化合物でもよい。
【0023】
具体的には、C60フラーレンは、直径0.7nm程度の球状をなし、高硬度を有するから、その球形状は、高荷重条件下でも維持される。また、炭素系分子12の上記遊離は、潤滑膜11表面における極一部によるものであるから、潤滑膜11と相手部材との間の潤滑油中への堆積が防止されるとともに、装置内のフィルタを潤滑油が通過する時、炭素系分子12によるその目詰まりが防止される。
【0024】
炭素系分子12は、転動容易性の観点から、上記のようにC60フラーレンのように球形状をなすのが望ましいが、C70フラーレン等の高次フラーレンや、カーボンナノチューブ、アダマンタン(Adamantane)等を用いる場合、転動動作を起こし(転動可能性を有すること)、かつ転動方向の直径が数nm以下と非常に小さいものであればよい。それら材質を用いる場合、転動方向の直径が上記値よりも大きくなると、転動動作が困難となる。アダマンタンを用いる場合、アダマンタンはフラーレンよりも小さいから、フラーレンが入り込むことが困難な摺動界面のクリアランスにも入り込むことができ、これにより摺動特性が良好となる。
【0025】
炭素系分子12が球形状をなさない場合(たとえば、カーボンナノチューブのように円柱状をなす場合)、潤滑膜11の表面(摺動面)からの遊離時にカーボンナノチューブが摺動方向に転動し易いことが望ましい。これを実現するために、潤滑膜11の形成時にカーボンナノチューブを予め配向させておくことが好適である。
【0026】
炭素系分子12は、以上のような構成とする場合、転動可能性およびナノスケールのサイズを有することが、分子ベアリングとしての機能を発揮するために重要である。
【0027】
(2)摺動部材の製造方法
本発明の一実施形態に係る摺動部材1の製造方法について説明する。摺動部材1の製造方法では、プラズマ処理によって、潤滑膜11の原材料からなる原材料へのプラズマ処理によって、本体部10の表面(摺動面)に潤滑膜11を形成する(潤滑膜形成工程)。
【0028】
このような潤滑膜形成工程では、炭素系分子、および、炭素系分子を水素化したものの少なくとも一方を含有する炭素系分子ガスを原材料のプラズマに導入すると、炭素系分子ガスは、脱水素化されてイオン化する。原材料のプラズマが本体部10の表面に衝突することより、そこに堆積して潤滑膜11が形成される。このとき、イオン化された炭素系分子ガスも本体部10の表面に衝突することより、潤滑膜11に取り込まれて、その内部で炭素を受け取って分子化する。
【0029】
なお、この場合、電圧が印加された本体部10への高速衝突では、イオン化された炭素系分子は、衝突によって急激にエネルギを失う。このとき、イオン化された炭素系分子および水素イオンは安定化しようとすることから、イオン化された炭素系分子は、水素イオンを受け取り、その結果、炭素系分子中で水素化フラーレンとして存在するものもある。
【0030】
以上のようにして、摺動部材1の本体部10の表面に、潤滑膜11が形成され、潤滑膜11内部には炭素系分子12が分散した状態となる。このようなプラズマ処理を用いた潤滑膜形成工程の具体的手法として、次のようなCVD法あるいはPVD法がある。
【0031】
CVD法を用いる場合について説明する。まず、CVD装置の真空炉内に摺動部材1の本体部10をセットする。次いで、真空炉の真空度をたとえば10−2〜10−3Pa程度に、温度をたとえば50〜150℃程度に調整した後、本体部10にDCパルス電圧を負荷する。
【0032】
続いて、還元性ガス(たとえばアルゴンガス)を導入し、プラズマ化すると、イオンボンバードメント効果により本体部10の表面の清浄性が向上する。次いで、潤滑膜11の原料ガス(DLC膜形成の場合、炭化水素ガス(たとえばブタンやアセチレン等)、および、一部が水素化された炭素分子ボール(たとえばフラーレン)を真空炉内に導入する。
【0033】
この場合、ガス流入量、圧力、温度、バイアスの電圧値、パルスDuty値(矩形波の1周期とHighパルス側の幅の比率)は、最適なプラズマ状態を継続できる範囲に常時調整される。これにより、本体部10の表面上に潤滑膜11が形成され、潤滑膜11内部には炭素系分子12が分散した状態となる。
【0034】
PVD法を用いる場合について説明する。まず、PVD装置の真空炉内に摺動部材1の本体部10をセットする。次いで、真空炉内の真空度をたとえば10−2〜10−3Pa程度、温度をたとえば50〜150℃程度に調整した後、本体部10にDCパルス電圧を負荷する。
【0035】
続いて、真空炉内に還元性ガス(たとえばアルゴンガス)を導入し、それをプラズマ化すると、イオンボンバードメント効果により本体部10の表面の清浄性が向上する。次に、真空炉内に設置された潤滑膜11の固体材料(たとえばグラファイト)をアーク放電や電子線照射等の手法によりプラズマ化すると同時に、一部が水素化された炭素系分子(たとえばフラーレン)を導入してプラズマ化する。すると、本体部10の表面上に潤滑膜11が形成され、潤滑膜11内部には炭素系分子12が分散した状態となる。
【0036】
(3)摺動部材の動作
摺動部材1の動作について、図2,3を参照して説明する。図2は、相手部材2と摺動する摺動部材1の摺動界面近傍の状態を表し、(A)は摺動界面に潤滑油3が介在する流体潤滑状態、(B)は摺動界面で局所的固体接触が起こった境界潤滑状態の概略構成を表す側断面図である。図3は、図2(B)で局所的固体接触が起こった箇所(点Pで示される箇所)の部分拡大図である。
【0037】
図2(A)に示す流体潤滑状態では、部材1,2間に潤滑油3が介在しており、潤滑膜11中に存在している炭素系分子12は、摺動部材1の摺動には寄与しない。一方、部材1,2間への高面圧の印加によって、図2(B)に示す境界潤滑状態となったとき、局所的固体接触が摺動界面で起こり、摺動部材の摺動面で微視的摩耗が生じる。
【0038】
ここで、摺動部材1の潤滑膜11には、転動可能な中空構造を有する炭素系分子12が、単体あるいはその単体の集合体として含有されている。したがって、上記微視的摩耗によって、炭素系分子12が潤滑膜11から露出し、その一部がそこから遊離することにより、摺動界面に供給される。そのような炭素系分子12は、転動可能な中空構造を有するから、図3に示すように、摺動界面で分子レベルのボールベアリングとして作用する。この場合、炭素系分子12が少なくとも一つ存在すると、存在しない場合と比較して、局所的フリクションを低減することができる。特に、この場合、炭素系分子12は、潤滑油3の中を移動することができるから、必要な箇所に入り込むことができ、これにより、その低減効果を効果的に得ることができる。
【0039】
以上のことから本実施形態では、摺動界面で大幅な低フリクション化を図ることができるので、フリクションによるエネルギ損失の低減を図ることができ、その結果、摺動部材1が適用される自動車のエンジン等の内燃機関の燃費改善を図ることができる。また、摺動部材1の潤滑膜11に転動可能な中空構造を有する炭素系分子12を含有させるという簡単な構成によって上記効果を得ることができるので、 量産化が可能となるとともに、製造コストを低減することができる。
【0040】
(4)摺動部材の適用例
摺動部材の具体的な適用例について図4,5を参照して説明する。図4は、摺動部材1の具体的な適用例としてのシリンダボア101を用いた内燃機関100(たとえばエンジン)の概略構成の一部を表す図である。図5は、内燃機関100において局所的固体接触が起こった箇所(点Qで示される箇所)の部分拡大図である。内燃機関100では、ピストン102がシリンダボア101の内部において、その内周面(摺動面)に沿って摺動する。ピストン102は、下部に形成されたスカート部(図示略)、上部に形成されたランド部131、および、ランド131部間の溝に設けられたリング部132を有する。
【0041】
シリンダボア101が摺動部材1に対応し、シリンダブロック110の一部が本体部10に対応し、ピストンリング132が相手部材に対応している。シリンダボア101の内周面には、潤滑膜111が形成され、潤滑膜111の内部に転動可能な構造を有する炭素系分子112が分散して含有されている。潤滑膜111および炭素系分子112は、潤滑膜11および炭素系分子12に対応し、それらと同様な構成を有している。
【0042】
このような内燃機関100では、次のような態様を用いると、摺動部材1による上記効果を効果的に得ることができる。たとえば、図5に示すように、炭素系分子112の直径d(たとえばフラーレンのように球形状の場合はその直径、たとえばナノチューブのように円柱状の場合は円形状底面の直径)が、潤滑油103の最小油膜厚tよりも小さく設定する態様は、気密性の観点から好適である。また、ピストン102は、シリンダボア101に対する上下方向への摺動時に回転するから、カーボンナノチューブを用いる態様では、その摺動に従ってカーボンナノチューブの配向方向が摺動方向に揃ってくる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る一実施形態の摺動部材の概略構成を表す側断面図である。
【図2】相手部材と摺動する図1の摺動部材の摺動界面近傍の状態を表し、(A)は摺動界面に潤滑油が介在する流体潤滑状態、(B)は摺動界面で局所的固体接触が起こった境界潤滑状態の概略構成を表す側断面図である。
【図3】図2(B)で局所的固体接触が起こった箇所(点Pで示される箇所)の部分拡大図である。
【図4】図1の摺動部材の具体的な適用例としてのシリンダボアを用いた内燃機関の概略構成の一部を表す図である。
【図5】図4で局所的固体接触が起こった箇所(点Qで示される箇所)の部分拡大図である。
【図6】(A),(B)は、潤滑膜中での炭素系分子の存在形態を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1…摺動部材、2…相手部材、12,112…炭素系分子、101…シリンダボア(摺動部材)、102…ピストン(相手部材)、132…リング部(相手部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手部材と摺動する摺動面に潤滑膜が形成され、
前記潤滑膜には、転動可能な中空構造を有する炭素系分子が、単体あるいはその単体の集合体として含有されていることを特徴とする摺動部材。
【請求項2】
前記潤滑膜は、DLC膜であることを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
【請求項3】
前記炭素系分子は、フラーレン、カーボンナノチューブ、アダマンタン、フラーレンの水素化合物、カーボンナノチューブの水素化合物、および、アダマンタンの水素化合物の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の摺動部材。
【請求項4】
前記フラーレンは、C60フラーレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の摺動部材。
【請求項5】
潤滑膜の原材料へのプラズマ処理によって、相手部材と摺動する摺動面に前記潤滑膜を形成する潤滑膜形成工程を含み、
前記潤滑膜形成工程では、
転動可能な中空構造を有する炭素系分子、および、前記炭素系分子を水素化したものの少なくとも一方を含有する炭素系分子ガスを、前記原材料のプラズマに導入し、
前記炭素系分子ガスをイオン化し、
前記潤滑膜の原材料の前記摺動面への堆積時、前記イオン化された炭素系分子ガスを前記潤滑膜中に取り込ませて分子化することを特徴とする摺動部材の製造方法。
【請求項6】
前記潤滑膜は、DLC膜であることを特徴とする請求項5に記載の摺動部材の製造方法。
【請求項7】
前記炭素系分子は、フラーレン、カーボンナノチューブ、アダマンタン、フラーレンの水素化合物、カーボンナノチューブの水素化合物、および、アダマンタンの水素化合物の少なくとも1つであることを特徴とする請求項5または6に記載の摺動部材の製造方法。
【請求項8】
前記フラーレンは、C60フラーレンであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の摺動部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−120806(P2010−120806A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295399(P2008−295399)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】