説明

撮像素子、電子機器、並びに、情報処理装置

【課題】より容易により多様な光電変換出力を得ることができるようにする。
【解決手段】本開示の撮像素子は、入射光を光電変換する光電変換素子が形成される光電変換素子層と、前記光電変換素子層の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、前記光電変換素子層および前記配線層に積層され、他の光電変換素子を有する支持基板とを備える。本開示は撮像素子、電子機器、並びに、情報処理装置に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像素子、電子機器、並びに、情報処理装置に関し、特に、より容易により多様な光電変換出力を得ることができるようにした撮像素子、電子機器、並びに、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線は、シリコン(Si)への侵入長が長いので、近赤外の光を利用した高感度センサを作る場合、シリコン中での光路長を長くする必要がある。また、光が入射するシリコン表面から深い位置で光電変換が起こるため、光電変換した電子を貯めるためのポテンシャルも深い位置まで形成する必要がある。
【0003】
従来、深い位置にポテンシャルを形成するためには、超高エネルギーのイオンインプランテーション(イオン注入)が必要となり、開発や製造のコストが増大する恐れがあった。また、それに応じたレジストの開発も必要になり、開発の難易度がさらに上がってしまう恐れがあった。
【0004】
そこで、シリコン基板表面の表面側と裏面側からイオン注入を行うことで、赤外光が光電変換した電子を十分に貯めることが可能な深いフォトダイオードを形成する方法((超高エネルギーのイオン注入を必要としない方法)が考えられた(例えば特許文献1参照)。
【0005】
この方法の場合、まず、シリコン基板の表面側からイオン注入を行うことにより、シリコン基板表面に可視光に対応したイメージセンサと同程度の深さにフォトダイオードを形成する。その後シリコン基板を裏返してシリコン基板裏面の研磨を行う。そして、その裏面側からイオン注入を行うことにより、シリコン基板裏面に可視光に対応したイメージセンサと同程度の深さにフォトダイオードを形成する。このように製造することにより、深さ方向に対して、最大2倍の深さを持った光電変換領域を、超高エネルギーのイオン注入を行わずに形成する。
【0006】
なお、裏返されたシリコン基板は、必要な膜厚まで研磨され、イオン注入された後、研磨後のシリコンの厚さを支持するための支持基板と接合される。そして、シリコン基板の裏面側からイオン注入された不純物が高温の活性化処理により活性化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−192483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、単に長波長域の光電変換効率を向上させるためのものであり、1画素において複数の光電変換出力を得ることはできず、多様な用途への利用は困難であった。また、特許文献1に記載の方法の場合、その製造においては、シリコン基板と支持基板との接合が破壊されないように、シリコン基板の裏面側からイオン注入された不純物を活性化させる活性化処理を行う必要があった。そのため、短時間で熱処理を行うことができ、接合界面に熱的な影響を与えないレーザーアニール等の処理を行う特殊な設備が必要であった。そのため、製造コストが増大する恐れがあった。
【0009】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、1画素において、入射光の互いに異なる複数の波長域成分の光電変換結果を得ることができるようにし、より容易により多様な光電変換出力を得ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一側面は、入射光を光電変換する光電変換素子が形成される光電変換素子層と、前記光電変換素子層の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、前記光電変換素子層および前記配線層に積層され、他の光電変換素子を有する支持基板とを備える撮像素子である。
【0011】
前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、入射光の互いに異なる波長域成分を光電変換することができる。
【0012】
前記光電変換素子層の光電変換素子が可視光の波長域成分を光電変換し、前記支持基板の光電変換素子が近赤外光の波長域成分を光電変換することができる。
【0013】
前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、厚さが互いに異なるようにすることができる。
【0014】
前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、入射光を光電変換して蓄積した電荷を、互いに同一のタイミングで出力することができる。
【0015】
前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、入射光を光電変換して蓄積した電荷を、互いに異なるタイミングで出力することができる。
【0016】
前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、入射光を光電変換して蓄積した電荷を出力することにより、前記光電変換素子層において得られる画像と前記支持基板において得られる画像とが合成された合成画像を出力することができる。
【0017】
前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、入射光を光電変換して電荷を蓄積する電荷蓄積時間が、互いに異なるようにすることができる。
【0018】
前記配線層の前記配線は、前記配線層の一方の側から他方の側に透過する入射光の光路が確保されるように配置されるようにすることができる。
【0019】
前記配線層の前記光路に、周囲よりも光の屈折率の大きな素材よりなる導波路が形成されるようにすることができる。
【0020】
前記配線層の前記光路に、光吸収体が形成されるようにすることができる。
【0021】
前記支持基板は、前記支持基板の光電変換素子の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記支持基板の光電変換素子から電荷を読み出すための配線をさらに有し、前記配線層の配線の外部端子と、前記支持基板の配線の外部端子とが貫通ビアにより互いに接続されるようにすることができる。
【0022】
前記光電変換素子層の光電変換素子から電荷が読み出され、前記光電変換素子の光電変換素子の電荷が所定の閾値を超えた場合、前記支持基板の光電変換素子から電荷が読み出されるようにすることができる。
【0023】
前記光電変換素子が有機光電変換膜を有するようにすることができる。
【0024】
白色カラーフィルタをさらに備え、前記光電変換素子層の光電変換素子において、前記白色カラーフィルタを透過した前記入射光の白色成分を光電変換し、前記支持基板の光電変換素子において、前記入射光の他の色成分を光電変換するようにすることができる。
【0025】
前記光電変換素子において光電変換された赤外光を用いて、対象物までの奥行き情報を求めることができる。
【0026】
前記光電変換素子層の光電変換素子および前記支持基板の光電変換素子において光電変換された前記入射光のデータを、個別に出力するか、合算して出力するかを制御することができる。
【0027】
前記支持基板は、前記支持基板の光電変換素子が形成される光電変換素子層と、前記支持基板の光電変換素子層の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記支持基板の光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、前記支持基板の光電変換素子層および前記支持基板の配線層に積層され、さらに他の光電変換素子を有する支持基板とを有するようにすることができる。
【0028】
本開示の他の側面は、入射光を光電変換する光電変換素子が形成される光電変換素子層と、前記光電変換素子層の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、前記光電変換素子層および前記配線層に積層され、他の光電変換素子を有する支持基板とを備え、被写体を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の光電変換素子において得られた信号を用いて情報処理を行う情報処理部とを備える電子機器である。
【0029】
本開示のさらに他の側面は、入射光を光電変換する光電変換素子が形成される光電変換素子層と、前記光電変換素子層の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、前記光電変換素子層および前記配線層に積層され、他の光電変換素子を有する支持基板とを備える撮像素子と、前記撮像素子の光電変換素子において得られた複数の波長帯の信号を用いて、解析を行う信号処理部とを備える情報処理装置である。
【0030】
本開示の一側面においては、入射光を光電変換する光電変換素子が形成される光電変換素子層と、光電変換素子層の、入射光の入射面とは反対の側に形成される、光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、光電変換素子層および配線層に積層され、他の光電変換素子を有する支持基板とが備えられる。
【0031】
本開示の他の側面においては、入射光を光電変換する光電変換素子が形成される光電変換素子層と、光電変換素子層の、入射光の入射面とは反対の側に形成される、光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、光電変換素子層および配線層に積層され、他の光電変換素子を有する支持基板とが備えられ、被写体を撮像する撮像素子と、撮像素子の光電変換素子において得られた信号を用いて情報処理を行う情報処理部とが備えられる。
【0032】
本開示のさらに他の側面においては、入射光を光電変換する光電変換素子が形成される光電変換素子層と、光電変換素子層の、入射光の入射面とは反対の側に形成される、光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、光電変換素子層および配線層に積層され、他の光電変換素子を有する支持基板とを備える撮像素子と、撮像素子の光電変換素子において得られた複数の波長帯の信号を用いて、解析を行う信号処理部とを備える情報処理装置である。
【発明の効果】
【0033】
本開示によれば、入射光を光電変換することができる。特に、より容易により多様な光電変換出力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来のCMOSイメージセンサの主な構成例を示す図である。
【図2】本技術のCMOSイメージセンサの主な構成例を示す図である。
【図3】本技術の製造装置の主な構成例を示すブロック図である。
【図4】製造処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図5】本技術のCMOSイメージセンサの他の構成例を示す図である。
【図6】瞳補正の例を説明する図である。
【図7】本技術のCMOSイメージセンサのさらに他の構成例を示す図である。
【図8】本技術のCMOSイメージセンサのさらに他の構成例を示す図である。
【図9】本技術のCMOSイメージセンサのさらに他の構成例を示す図である。
【図10】本技術のCMOSイメージセンサのさらに他の構成例を示す図である。
【図11】撮像装置の主な構成例を示すブロック図である。
【図12】本技術のCMOSイメージセンサのさらに他の構成例を示す図である。
【図13】本技術の製造装置の他の構成例を示すブロック図である。
【図14】支持基板製造処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図15】支持基板製造処理の様子を説明する図である。
【図16】製造処理の流れの他の例を説明するフローチャートである。
【図17】製造処理の様子を説明する図である。
【図18】本技術の製造装置の、さらに他の構成例を示すブロック図である。
【図19】製造処理の流れの、さらに他の例を説明するフローチャートである。
【図20】製造処理の様子を説明する図である。
【図21】本技術のCMOSイメージセンサのさらに他の構成例を示す図である。
【図22】信号読み出しの様子の例を示す図である。
【図23】画素配置の例を示す図である。
【図24】下層の構成例を示す図である。
【図25】画素配置の他の例を示す図である。
【図26】フォトダイオード形成位置の例を示す図である。
【図27】本技術の撮像装置の主な構成例を示すブロック図である。
【図28】医療機器への応用例を示す図である。
【図29】ToFへの応用例を示す図である。
【図30】撮像モジュールへの応用例を示す図である。
【図31】撮像処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図32】画素配置のさらに他の例を示す図である。
【図33】本技術の撮像装置の他の構成例を示すブロック図である。
【図34】サンプリング間隔の例を説明する図である。
【図35】電極接続の構成例を示す図である。
【図36】画素配置のさらに他の例を示す図である。
【図37】制御処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図38】携帯通信端末への応用例を示す図である。
【図39】電子機器への応用例を示す図である。
【図40】撮像装置への応用例を示す図である。
【図41】電子機器への応用例を示す図である。
【図42】制御処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図43】撮像装置への応用例を示す図である。
【図44】入力インタフェースへの応用例を示す図である。
【図45】電子機器への応用例を示すブロック図である。
【図46】入射光の反射の様子の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本技術を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(撮像素子:裏面型+表面型)
2.第2の実施の形態(製造装置および方法)
3.第3の実施の形態(応用例1:導波路)
4.第4の実施の形態(応用例2:瞳補正)
5.第5の実施の形態(応用例3:PDピッチ変更)
6.第6の実施の形態(応用例4:可視光+可視光)
7.第7の実施の形態(応用例5:裏面型+裏面型)
8.第8の実施の形態(撮像装置)
9.第9の実施の形態(各種応用例)
【0036】
<1.第1の実施の形態>
[従来撮像素子]
まず、従来の撮像素子の構成例について説明する。図1は、従来のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサの主な構成例を示す図である。図1に示されるCMOSイメージセンサ10は、CMOSを用いた、単位セルごとに増幅器を持つ、裏面照射型のイメージセンサである。
【0037】
図1においては、CMOSイメージセンサ10の縦方向(積層方向)の構造の概略(断面の概略図)が示されている。図1に示されるように、CMOSイメージセンサ10は、画素毎に集光レンズ11、カラーフィルタ12、およびフォトダイオード(Photo Diode)15を有する。
【0038】
図1においては、CMOSイメージセンサ10の有効画素領域として4画素が示されている。この4画素の構成として、半導体基板14にフォトダイオード15−1乃至フォトダイオード15−4が形成されている。各フォトダイオードを互いに区別して説明する必要が無い場合、単にフォトダイオード15と称する。
【0039】
フォトダイオード15−1に対して集光レンズ11−1およびカラーフィルタ12−1が設けられている。フォトダイオード15−2に対して集光レンズ11−2およびカラーフィルタ12−2が設けられている。フォトダイオード15−3に対して集光レンズ11−3およびカラーフィルタ12−3が設けられている。フォトダイオード15−4に対して集光レンズ11−4およびカラーフィルタ12−4が設けられている。各集光レンズを互いに区別して説明する必要が無い場合、単に集光レンズ11と称する。また、各カラーフィルタを互いに区別して説明する必要が無い場合、単にカラーフィルタ12と称する。
【0040】
図1に示されるように、半導体基板14の光入射面である裏面側に絶縁膜13が形成され、その上に、カラーフィルタ12および集光レンズ11が形成される。
【0041】
また、半導体基板14の光入射面に対向する表面側には、配線層16、パッシベーション膜19、および支持基板20が形成される。配線層16には、配線17および配線層間膜18が形成される。
【0042】
なお、CMOSイメージセンサ10の有効画素領域でない領域の配線層には、CMOSイメージセンサ10の外部の回路と接続するためのパッド21が形成される。
【0043】
このような構成のCMOSイメージセンサ10に対して、例えば、可視光31が集光レンズ11−2に入射すると、その可視光31は、集光レンズ11−2、カラーフィルタ12−2、および絶縁膜13を透過し、フォトダイオード15−2において効率よく光電変換される。
【0044】
これに対して近赤外光32は、可視光31に比べて波長が長いため、シリコン(半導体基板14)への侵入長が可視光31よりも長く、可視光31よりも深い位置で光電変換させた電子を集めるポテンシャル分布が必要になる。
【0045】
しかしながら、図1に示されるCMOSイメージセンサ10のように裏面照射型の場合、一般的に、混色の発生を抑制するために、半導体基板14の膜厚を2μm乃至3μm程度に薄膜化する必要がある。そのため、フォトダイオード15−4は、集光レンズ11―4、カラーフィルタ12−4、および絶縁膜13を透過して入射された近赤外光32を効率よく光電変換することができない恐れがあった。すなわち、裏面照射型のCMOSイメージセンサ10では、近赤外光32に対する十分な感度を得ることが困難であった。
【0046】
そこで、特に長波長域の感度を向上させるために、特許文献1に記載の方法が考えられた。しかしながら、この方法では、1画素において複数の光電変換出力を得ることはできず、多様な用途への利用は困難であった。また、特許文献1に記載の方法の場合、半導体基板の両面からイオンインプランテーション(イオン注入)を行うが、短時間で熱処理を行うレーザーアニール等の処理を行う特殊な設備が必要であった。また混色が発生する恐れがあった。
【0047】
なお、表面照射型のイメージセンサの場合、シリコン基板を厚くすることが可能であるが、近赤外光が効率よく光電変換される程深い位置にポテンシャルを形成するためには、超高エネルギーのイオン注入が必要であった。
【0048】
[本技術の撮像素子]
そこで、本開示においては、1画素内において、例えば上述した可視光と近赤外光のような、入射光の互いに異なる複数の波長域成分を光電変換することができる撮像素子について説明する。
【0049】
図2は、本技術を適用したCMOSイメージセンサの構成例を示す図である。図2に示されるCMOSイメージセンサ100は、図1のCMOSイメージセンサ10と同様の、CMOSを用いたイメージセンサである。
【0050】
図2においては、CMOSイメージセンサ100の縦方向(積層方向)の構造の概略(断面の概略図)が示されている。図2に示されるように、CMOSイメージセンサ100には、光が、図中、略上から下に向かって入射する。CMOSイメージセンサ100は、その入射光の進行方向に対して多層構造を有する。つまり、CMOSイメージセンサ100に入射された光は、各層を透過するように進行する。
【0051】
図2においては、CMOSイメージセンサ100の有効画素領域として4画素が示されている。すなわち、この4画素の構成として、半導体基板114にフォトダイオード115−1乃至フォトダイオード115−4が形成される。また、フォトダイオード115−1の画素の構成として、集光レンズ111−1およびカラーフィルタ112−1が形成される。さらに、フォトダイオード115−2の画素の構成として、集光レンズ111−2およびカラーフィルタ112−2が形成される。また、フォトダイオード115−3の画素の構成として、集光レンズ111−3およびカラーフィルタ112−3が形成される。さらに、フォトダイオード115−4の画素の構成として、集光レンズ111−4およびカラーフィルタ112−4が形成される。
【0052】
各フォトダイオードを互いに区別して説明する必要が無い場合、単にフォトダイオード115と称する。また、各集光レンズを互いに区別して説明する必要が無い場合、単に集光レンズ111と称する。さらに、各カラーフィルタを互いに区別して説明する必要が無い場合、単にカラーフィルタ112と称する。
【0053】
CMOSイメージセンサ100の、図中、パッシベーション膜119より上側の層は、図1のCMOSイメージセンサ10と同様の構成を有する。すなわち、図中上から、集光レンズ111、カラーフィルタ112、絶縁膜113、半導体基板114(フォトダイオード115を含む)、配線層116(配線117および配線層間膜118を含む)、およびパッシベーション膜119が形成される。
【0054】
集光レンズ111は、撮像面に入射した光を、対応するフォトダイオード115に集めることにより、フォトダイオード115の量子効率を向上させる。
【0055】
カラーフィルタ112は、対応する集光レンズ111を介して入射された入射光を透過させることにより、対応するフォトダイオード115に、入射光の所定の波長(色)域の成分を入射させる。各カラーフィルタ112が透過させる波長(色)域は任意であり、可視光であってもよいし、赤外線や紫外線であってもよい。また、カラーフィルタ112は、全て同一の波長(色)域を透過させるフィルタであっても良いし、例えばRGBや、可視光と赤外光等のように、互いに異なる波長(色)域を透過させる複数種類のフィルタであってもよい。
【0056】
カラーフィルタ112が複数種類のフィルタよりなる場合、各波長(色)域のフィルタは、例えばベイヤ配列等の所定の順に並べられるようにしてもよい。例えば、図2においてカラーフィルタ112−1およびカラーフィルタ112−3が赤(R)を透過させるフィルタであり、カラーフィルタ112−2およびカラーフィルタ112−4が緑(G(Gr))を透過させるフィルタであるようにしてもよい。また、例えば、図2においてカラーフィルタ112−1およびカラーフィルタ112−3が緑(G(Gb))を透過させるフィルタであり、カラーフィルタ112−2およびカラーフィルタ112−4が青(B)を透過させるフィルタであるようにしてもよい。
【0057】
半導体基板114に形成されるフォトダイオード115は、図1の場合と同様に、主に可視光の波長域成分を効率よく光電変換する。すなわち、フォトダイオード115は、入射光に含まれる可視光の波長域成分に対して適切な深さに、光電変換した電子を貯めるためのポテンシャル分布が形成される。例えば、可視光141は、集光レンズ111−2、カラーフィルタ112−2、および絶縁膜113を透過し、フォトダイオード115−2において効率よく光電変換される。
【0058】
なお半導体基板114の膜厚は任意である。例えば、混色の発生を抑制するために2μm乃至3μm程度に形成されるようにしてもよい。
【0059】
配線層116の配線117は、例えばアルミニウム(AL)や同(Cu)により形成される。なお、図2において配線117として1つのみ示しているが、図2の配線層116内のグレーの四角は、全て配線117である。図2の例の配線層116においては、配線117が4層構造となっているが、配線の層数は任意である。
【0060】
ところで、CMOSイメージセンサ100は、図1のCMOSイメージセンサ10の場合と異なり、図2に示されるように、パッシベーション膜119の図中下側に、さらに、配線層120、半導体基板123、および支持基板125を有する。
【0061】
配線層120は、基本的に、配線層116と同様の層である。配線層120には、配線121および配線層間膜122が形成される。なお、図2においては、配線121として1つのみ示しているが、図2の配線層120内のグレーの四角は、全て配線121である。図2の例の配線層120においては、配線121が2層構造となっているが、配線の層数は任意である。
【0062】
配線層116の、CMOSイメージセンサ100の有効画素領域で無い領域には、配線層116の回路の外部電極としてパッド132が形成される。配線層120の、CMOSイメージセンサ10の有効画素領域で無い領域には、配線層120の回路の外部電極としてパッド133が形成される。また、パッド132とパッド133は、TSV(Through-Silicon Via)131(所謂、貫通ビア)により接続される。すなわち、配線層116の回路と配線層120の回路とが接続されている。なお、このTSV131の数は任意である。また、図示は省略するが、配線層116および配線層120の、CMOSイメージセンサ100の有効画素領域で無い領域には、パッド132やパッド133のようにTSV131により互いに接続される電極以外の、CMOSイメージセンサ100の外部の回路と接続されるためのパッド(外部電極)が形成される。
【0063】
半導体基板123は、基本的に、半導体基板114と同様の層である。半導体基板123には、フォトダイオード115−1の画素の構成としてフォトダイオード124−1が形成される。また、半導体基板123には、フォトダイオード115−2の画素の構成としてフォトダイオード124−2が形成される。さらに、半導体基板123には、フォトダイオード115−3の画素の構成としてフォトダイオード124−3が形成される。また、半導体基板123には、フォトダイオード115−4の画素の構成としてフォトダイオード124−4が形成される。フォトダイオード124−1乃至フォトダイオード124−4を互いに区別して説明する必要が無い場合、単にフォトダイオード124と称する。
【0064】
フォトダイオード115を透過した入射光(フォトダイオード115において光電変換されなかった入射光)は、配線層116、パッシベーション膜119、および配線層120を介して、半導体基板123(フォトダイオード124)に入射される。配線層116および配線層120において、配線117および配線121は、この入射光の光路が確保されるように配置される。例えば、図2に示されるように、半導体基板114の斜線部分で示される部分(フォトダイオード115が形成されていない部分)の下の部分(換言するに、半導体基板123の斜線部分で示される部分(フォトダイオード124が形成されていない部分)の上の部分)にのみ、配線117および配線121が配置されるようにしてもよい。換言するに、このような配置により、配線117および配線121を光路の周囲の遮光壁として利用することができる。つまり、入射光が配線117および配線121によって反射されやすくなるので、光路の外部に入射光が漏れ出すことを抑制することができる。したがって、光電変換の効率を向上させることができるとともに、混色の発生を抑制することができる。
【0065】
フォトダイオード124は、近赤外光の波長域成分を光電変換するのに適切な位置(深さ)に設けられ、フォトダイオード115において光電変換されずにフォトダイオード124に入射された入射光に含まれる近赤外光の波長域成分を効率よく光電変換する。例えば、近赤外光142は、集光レンズ111−4、カラーフィルタ112−4、絶縁膜113、フォトダイオード115−4、配線層116、パッシベーション膜119、および配線層120を透過し、フォトダイオード124−4において効率よく光電変換される。
【0066】
以上のように、CMOSイメージセンサ100は、入射光の進行方向に対して多層構造を有し、配線層(配線層116および配線層120)を挟む2層のフォトダイオード(光電変換素子)の層(半導体基板114および半導体基板123)を有する。
【0067】
このような構成とすることにより、CMOSイメージセンサ100は、1画素において、フォトダイオード115およびフォトダイオード124により、例えば、可視光と近赤外光との両方の波長域成分(すなわち、互いに異なる複数の波長域成分)を効率良く光電変換することができる。換言するに、フォトダイオード115とフォトダイオード124との間に、配線層(配線層116および配線層120)を挟むことにより、設定が容易なこれらの配線層の厚さによって、フォトダイオード124の深さを容易に設定することができる。つまり、より容易に、任意の複数の波長域の光電変換の効率を向上させることができる。
【0068】
CMOSイメージセンサ100は、一部若しくは全部の画素がこのように構成される。したがって、CMOSイメージセンサ100は、画素数および画素サイズを低減させずに、すなわち、画質の低減を抑制しながら、(高画質な)可視光の画像を得ることができるとともに、(高画質な)近赤外光の画像を得ることができる。少なくとも、CMOSイメージセンサ100は、図1のCMOSイメージセンサ10と同程度の画質の可視光の画像を得ることができ、さらに、近赤外光の画像も得ることができる。
【0069】
なお、CMOSイメージセンサ100は、2段のフォトダイオード(フォトダイオード115およびフォトダイオード124)を用いて、可視光の画像と近赤外光の画像を得る。したがって、CMOSイメージセンサ100は、可視光の画像と近赤外光の画像を同時に得ることができる(互いに同タイミングの画像を得ることができる)。例えば、赤外光の画像を用いて画像補正方法を決定し、その画像補正方法を用いて可視光の画像を補正する等、両者の画像を用いて処理を行う場合のように、この赤外光の画像と可視光の画像が同タイミングの画像であるのが望ましい場合も考えられる。もちろん、両者の画像のタイミングが互いに異なる方が望ましい場合も考えられるが、CMOSイメージセンサ100は、可視光の画像と近赤外光の画像を互いに異なるタイミングに取得するようにすることもできる。
【0070】
また、CMOSイメージセンサ100は、フォトダイオード115において得られた画像と、フォトダイオード124において得られた画像とを合成することにより、高画質な赤外光画像を得ることができる。すなわち、実効的な光路長を伸ばした近赤外センサを実現することができる。
【0071】
なお、配線117および配線121の少なくとも一部が、フォトダイオード115およびフォトダイオード124のうち少なくともいずれか一方から電荷を読み出すための回路の配線であるようにしてもよい。例えば、配線層116の配線117の少なくとも一部がフォトダイオード115から電荷を読み出すための回路の配線であり、配線層120の配線121の少なくとも一部がフォトダイオード124から電荷を読み出すための回路の配線であり、これらの回路が互いに独立しているものとしてもよい。
【0072】
この場合、図2において、集光レンズ111乃至パッシベーション膜119の各層は、裏面照射型のCMOSイメージセンサを形成し、配線層120乃至支持基板125の各層は、表面照射型のCMOSイメージセンサを形成する。この裏面照射型のCMOSイメージセンサと、表面照射型のCMOSイメージセンサとは、互いに独立している。すなわち、この場合、CMOSイメージセンサ100は、互いに独立した2つのCMOSイメージセンサが重畳され、接続されている。
【0073】
この場合のCMOSイメージセンサ100は、裏面照射型のCMOSイメージセンサにより入射光の可視光の波長域成分を光電変換して高画質な可視光の画像を得ることができる。また、CMOSイメージセンサ100は、表面照射型のCMOSイメージセンサにより入射光の近赤外光の波長域成分を光電変換して高画質な近赤外光の画像を得ることができる。
【0074】
また、CMOSイメージセンサ100の構成として重畳されたこれらのCMOSイメージセンサは、互いに独立して動作させることができる。したがって、CMOSイメージセンサ100は、例えば、可視光の画像と近赤外光の画像を同時に得る(互いに同タイミングの画像を得る)ようにすることも、可視光の画像と近赤外光の画像を互いに異なるタイミングに取得するようにすることも、容易に行うことができる。また、その切り替え制御も容易に行うことができる。
【0075】
例えば、可視光の画像と近赤外光の画像を同時に得る場合、フォトダイオード115が入射光を光電変換して蓄積した電荷の出力と、フォトダイオード124が入射光を光電変換して蓄積した電荷の出力とを互いに同じタイミングで行うようにすればよい。また、例えば、可視光の画像と近赤外光の画像を互いに異なるタイミングに取得する場合、フォトダイオード115に蓄積された電荷の出力と、フォトダイオード124に蓄積された電荷の出力とを互いに異なるタイミングで行うようにすればよい。
【0076】
つまり、CMOSイメージセンサ100は、より容易により多様な光電変換出力を得ることができる。
【0077】
<2.第2の実施の形態>
[製造装置]
上述したように、図2のCMOSイメージセンサ100は、集光レンズ111乃至パッシベーション膜119の各層が、裏面照射型のCMOSイメージセンサを形成しているようにし、配線層120乃至支持基板125の各層が、表面照射型のCMOSイメージセンサを形成しているようにすることができる。
【0078】
これらのCMOSイメージセンサが互いに独立しているものとすると、CMOSイメージセンサ100は、裏面照射型のCMOSイメージセンサと表面照射型のCMOSイメージセンサとをそれぞれ生成し、生成した裏面照射型のCMOSイメージセンサの表面側に、表面照射型のCMOSイメージセンサを重畳し、TSV131により両者を接続することにより生成することができる。
【0079】
図3は、本技術を適用した製造装置の主な構成例を示すブロック図である。図3に示される製造装置200は、CMOSイメージセンサ100を製造する装置である。
【0080】
図3に示されるように、製造装置200は、制御部201、裏面照射型イメージセンサ製造部202、表面照射型イメージセンサ製造部203、および組み立て部204を有する。また、製造装置200は、入力部211、出力部212、記憶部213、通信部214、およびドライブ215を有する。
【0081】
制御部201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等を有し、その他の各部を制御し、CMOSイメージセンサ100の製造に関する処理を行う。例えば、制御部201のCPUは、ROMに記憶されているプログラムに従って各種の処理を実行する。また、CPUは、記憶部213からRAMにロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAMにはまた、CPUが各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0082】
制御部201には、キーボード、マウス、タッチパネルなどよりなる入力部211が接続されている。制御部201にはまた、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイやLCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部212も接続されている。制御部201にはさらに、フラッシュメモリ等SSD(Solid State Drive)やハードディスクなどよりなる記憶部213も接続されている。制御部201にはまた、有線LAN(Local Area Network)や無線LANのインタフェースやモデムなどよりなる通信部214も接続されている。通信部214は、インターネットを含むネットワークを介しての通信処理を行う。
【0083】
制御部201にはさらに、必要に応じてドライブ215が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア221がそのドライブ215に適宜装着される。そして、そのドライブ215を介してリムーバブルメディア221から読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部213にインストールされる。
【0084】
裏面照射型イメージセンサ製造部202は、制御部201の制御に従って、裏面照射型のCMOSイメージセンサを製造する。つまり、裏面照射型イメージセンサ製造部202は、CMOSイメージセンサ100の集光レンズ111乃至パッシベーション膜119を生成する。この製造方法は任意である。例えば、裏面照射型イメージセンサ製造部202は、従来と同様の方法で裏面照射型のCMOSイメージセンサを製造する。
【0085】
表面照射型イメージセンサ製造部203は、制御部201の制御に従って、表面照射型のCMOSイメージセンサを製造する。つまり、表面照射型イメージセンサ製造部203は、CMOSイメージセンサ100の配線層120乃至支持基板125を生成する。この製造方法は任意である。例えば、表面照射型イメージセンサ製造部203は、従来と同様の方法で表面照射型のCMOSイメージセンサを製造する。
【0086】
組み立て部204は、制御部201の制御に従って、CMOSイメージセンサ100を組み立てる。つまり、組み立て部204は、裏面照射型イメージセンサ製造部202により製造された裏面照射型のCMOSイメージセンサと、表面照射型イメージセンサ製造部203により製造された表面照射型のCMOSイメージセンサとを接続する。より具体的には、組み立て部204は、裏面照射型のCMOSイメージセンサの表面側に、表面照射型のCMOSイメージセンサを重畳し、互いのパッドをTSV131により接続する。
【0087】
[製造方法の流れ]
図4のフローチャートを参照して、製造処理の流れの例を説明する。
【0088】
製造装置200がCMOSイメージセンサ100を製造する際、制御部201は、製造処理を実行する。
【0089】
製造処理が開始されると、制御部201は、ステップS101において、裏面照射型イメージセンサ製造部202を制御し、裏面照射型のCMOSイメージセンサを製造させる。
【0090】
ステップS102において、制御部201は、表面照射型イメージセンサ製造部203を制御し、表面照射型のCMOSイメージセンサを製造させる。
【0091】
ステップS103において、制御部201は、組み立て部204を制御し、CMOSイメージセンサ100を組み立てる。より具体的には、組み立て部204は、制御部201の制御に従って、ステップS101の処理により製造させた裏面照射型のCMOSイメージセンサの表面側に、ステップS102の処理により製造させた表面照射型のCMOSイメージセンサを重畳する。さらに、組み立て部204は、制御部201の制御に従って、それらのパッドを貫通ビア(TSV)で接続する。
【0092】
ステップS103の処理を終了すると、制御部201は、製造処理を終了する。
【0093】
以上のように製造することにより、製造装置200は、超高エネルギーのイオン注入やレーザーアニール等の特殊な処理や設備を必要とせずに、より容易にCMOSイメージセンサ100を製造することができる。つまり、より容易により多様な光電変換出力を得る撮像素子を、より容易に実現することができる。
【0094】
<3.第3の実施の形態>
[撮像素子]
なお、CMOSイメージセンサ100は、フォトダイオード115を透過した光の多くが配線層116および配線層120(の各配線間)を透過し、フォトダイオード124に到達するようになされていればよい。つまり、配線層116の各配線117、および、配線層120の各配線121の位置は、フォトダイオード115からフォトダイオード124までの入射光の光路が確保されている限り、任意である。例えば、配線117や配線121が、フォトダイオード115の下や、フォトダイオード124の上に配置されてもよい。
【0095】
また、例えば、配線層116に導波路を設けるようにしてもよい。図5は、その場合のCMOSイメージセンサ100の主な構成例を示す図である。図5に示される例の場合、CMOSイメージセンサ100の配線層116の、フォトダイオード115−1の略下の部分に、導波路251−1が形成されている。また、配線層116の、フォトダイオード115−2の略下の部分に導波路251−2が形成されている。さらに、配線層116の、フォトダイオード115−3の略下の部分に導波路251−3が形成されている。また、配線層116の、フォトダイオード115−4の下の部分に導波路251−4が形成されている。導波路251−1乃至導波路251−4を互いに区別して説明する必要が無い場合、単に導波路251と称する。
【0096】
導波路251は、例えば周囲よりも光の屈折率の大きな素材よりなる所定の導波路材料よりなる。なお、その他の構成は、図2の場合と同様である。
【0097】
導波路251の生成は、裏面照射型のCMOSイメージセンサの生成において行われる。例えば、まず、配線層116の、フォトダイオード115の略下の部分(配線117の間)に、図中下から上に向かって穴が形成される。次に、その穴を含む、裏面照射型のCMOSイメージセンサの表面側(図中、下側の面)からパッシベーション膜119が形成される。そして、配線層116の各穴に導波路251が形成される。
【0098】
図5に示されるように、フォトダイオード115を透過した入射光は、この導波路251を介してフォトダイオード124に到達する。したがって、この場合、CMOSイメージセンサ100は、導波路251の導波路効果により、入射光に含まれる近赤外光の波長域成分である近赤外光142をより効率よくフォトダイオード124に供給することができる。つまり、フォトダイオード124の感度を向上させることができる。
【0099】
なお、導波路は、配線層120に形成するようにしてもよい。また、配線層116および配線層120の両方に導波路を形成するようにしてもよい。いずれの場合も上述したように、フォトダイオード124の感度を向上させることができる。また、導波路素材は任意である。
【0100】
本実施の形態において説明したCMOSイメージセンサ100も、第2の実施の形態において説明したのと同様の方法により製造することができる。つまり、制御部201が、裏面照射型イメージセンサ製造部202を制御し、裏面照射型のCMOSイメージセンサを製造させる際に(ステップS101)、上述したような導波路を配線層116に形成させるようにすればよい。導波路は、従来と同様の方法により形成することができる。
【0101】
なお、導波路を配線層120に設ける場合、制御部201は、表面照射型イメージセンサ製造部203を制御し、表面照射型のCMOSイメージセンサを製造させる際に(ステップS102)、上述したような導波路を配線層120に形成させるようにすればよい。この場合も、導波路は、従来と同様の方法により形成することができる。
【0102】
なお、導波路を配線層116および配線層120の両方に設ける場合、制御部201は、裏面照射型イメージセンサ製造部202および表面照射型イメージセンサ製造部203の両方を制御し、それぞれの配線層に導波路を形成させるようにすればよい。
【0103】
すなわち、本実施の形態の場合も、製造装置200は、より容易にCMOSイメージセンサ100を製造することができる。
【0104】
<4.第4の実施の形態>
[撮像素子]
また、各画素の構成の位置は、上述した例に限らない。例えば、入射光の入射角等に応じた位置補正(瞳補正)を行うようにしてもよい。
【0105】
一般的に撮像素子に入射する入射光は、例えばレンズ等の影響を受け、中央付近の画素に対しては略直角に入射するものの、周辺部の画素に対しては、中心方向に向かって所定の角度(入射角θ)で入射する。
【0106】
図2や図5のCMOSイメージセンサ100の場合、入射光の光路は、図中縦方向に形成されている。すなわち、この光路は、略直角に入射する入射光に対して最適化されているが、所定の角度をもって入射する光に対しては最適とは限らず、フォトダイオード115やフォトダイオード124への集光率が低減する可能性が考えられる。
【0107】
そこで、図6に示されるように、各画素の各構成の位置を、このような入射光の入射角θに応じて補正する(適切な位置に配置する)ようにしてもよい。
【0108】
図6は、入射光の入射角θを考慮して各画素の構成を配置したCMOSイメージセンサを光が入射する側から見たときの様子の概略を示す図である。
【0109】
図6に示されるように、CMOSイメージセンサ100の各画素310において、各画素のマイクロレンズであるレンズ320は、入射光の入射角θに応じて、センサ受光部310Aに対して中央よりに設けられている。
【0110】
図7に、この場合のCMOSイメージセンサ100の、図2や図5と同様の断面を示す。図7に示されるように、各画素において、集光レンズ111およびカラーフィルタ112は、フォトダイオード115に対して、入射角θに応じて中央寄りに配置される。実際には、図6に示されるように、2次元配列における中央寄りに配置される。
【0111】
以上のように配置することにより、集光レンズ111からフォトダイオード115までの光路が、垂直方向に対して、入射角θに応じた角度で傾斜する。したがって、この場合、入射光に対して光路が適切に設定されるので、フォトダイオード115の集光率の低減を抑制することができる。
【0112】
なお、配線117の各層も、図7に示される例のように、近赤外光の入射角θに応じて傾斜するように配置されるようにしてもよい。つまり、配線117は、入射角θに応じて、フォトダイオード115よりも外側に(中央の逆側寄りに)配置されるようにしてもよい。
【0113】
さらに、配線121の各層も、図7に示される例のように、近赤外光の入射角θに応じて傾斜するように配置されるようにしてもよい。つまり、配線121は、入射角θに応じて、配線117よりもさらに外側に(中央の逆側寄りに)配置されるようにしてもよい。
【0114】
さらに、フォトダイオード124も、図7に示される例のように、近赤外光の入射角θに応じて、配線121よりもさらに外側に(中央の逆側寄りに)配置されるようにしてもよい。
【0115】
以上のように配置することにより、フォトダイオード115からフォトダイオード124までの光路が、垂直方向に対して、入射角θに応じた角度で傾斜する。したがって、この場合、入射光に対して光路が適切に設定されるので、フォトダイオード124の集光率の低減を抑制することができる。
【0116】
本実施の形態において説明したCMOSイメージセンサ100も、第2の実施の形態において説明したのと同様の方法により製造することができる。つまり、制御部201が、裏面照射型イメージセンサ製造部202および表面照射型イメージセンサ製造部203の両方を制御し、各CMOSイメージセンサを製造させる際に(ステップS101およびステップS102)、各層を上述したような瞳補正を行うような配置にさせるようにすればよい。
【0117】
すなわち、本実施の形態の場合も、製造装置200は、より容易にCMOSイメージセンサ100を製造することができる。
【0118】
<5.第5の実施の形態>
[撮像素子]
フォトダイオードの大きさ、形状、および間隔は任意であり、例えば、図8に示される例のように、フォトダイオード115とフォトダイオード124とで、それらの内、少なくとも1つが互いに異なっていても良い。
【0119】
図8の例の場合、半導体基板123には、フォトダイオード115の2つ分の大きさの、フォトダイオード351−1およびフォトダイオード351−2が形成される。つまり、フォトダイオード351−1は、半導体基板1の、フォトダイオード115−1およびフォトダイオード115−2の下側に形成され、フォトダイオード115−1およびフォトダイオード115−2に対応する。つまり、フォトダイオード351−1は、フォトダイオード115−1若しくはフォトダイオード115−2を透過した入射光の近赤外光の波長域成分を光電変換する。
【0120】
これに対して、フォトダイオード351−2は、半導体基板1の、フォトダイオード115−3およびフォトダイオード115−4の下側に形成され、フォトダイオード115−3およびフォトダイオード115−4に対応する。つまり、フォトダイオード351−2は、フォトダイオード115−3若しくはフォトダイオード115−4を透過した入射光の近赤外光の波長域成分を光電変換する。なお、フォトダイオード351−1およびフォトダイオード351−2を互いに区別して説明する必要が無い場合、単に、フォトダイオード351と称する。
【0121】
なお、このような場合、配線層116における配線117の配置間隔と、配線層120における配線121の配線間隔とが互いに異なっていても良い。図8の例の場合、配線117は、フォトダイオード115の配置間隔に応じて、半導体基板114のフォトダイオード115でない部分の下側に形成される。これに対して、配線121は、フォトダイオード351の配置間隔に応じて、半導体基板123のフォトダイオード351でない部分の上側に形成される。
【0122】
なお、配線117および配線121の配置位置は、図8の例に限らず、任意である。例えば、配線117の配置位置を、配線121に合わせて、半導体基板123のフォトダイオード351でない部分の上側に形成されるようにしてもよい。また、配線121の配置位置を、配線117に合わせて、半導体基板114のフォトダイオード115でない部分の下側に形成されるようにしてもよい。
【0123】
このようにすることにより、CMOSイメージセンサ100は、可視光の画像と近赤外光の画像とで解像度を互いに独立に設定することができる。例えば、CMOSイメージセンサ100は、互いに解像度が異なる可視光の画像と近赤外光の画像とを得ることができる。
【0124】
なお、図8の例においては、フォトダイオードの図中横方向の大きさが層毎に異なる様子が示されているが、これに限らず、各層のフォトダイオードの大きさ、形状、および間隔の内、少なくとも1つが、層毎に異なるようにしても良い。
【0125】
本実施の形態において説明したCMOSイメージセンサ100も、第2の実施の形態において説明したのと同様の方法により製造することができる。つまり、裏面照射型イメージセンサ製造部202および表面照射型イメージセンサ製造部203は、互いに独立してCMOSイメージセンサを製造するので、フォトダイオードの大きさ、形状、および間隔は、互いに独立に設定することができる。
【0126】
すなわち、本実施の形態の場合も、製造装置200は、より容易にCMOSイメージセンサ100を製造することができる。
【0127】
<6.第6の実施の形態>
[撮像素子]
以上においては、可視光と近赤外光の画像が得られるように説明したが、各フォトダイオードの厚さは任意である。つまり、各フォトダイオードで光電変換される波長域は任意であり、CMOSイメージセンサ100は、入射光のシリコンへの侵入長に応じて各フォトダイオードのポテンシャル分布の深さを設定することにより、任意の波長域の画像を得ることができる。
【0128】
例えば、図9に示される例のように、CMOSイメージセンサ100が、波長域が互いに異なる2つの可視光の画像を得るようにしてもよい。図9の例の場合、図2の半導体基板114の代わりに、半導体基板360が形成されている。半導体基板360には、フォトダイオード361−1乃至フォトダイオード361−4が形成されている。つまり、フォトダイオード361−1乃至フォトダイオード361−4は、フォトダイオード115−1乃至フォトダイオード115−4にそれぞれ対応する。フォトダイオード361−1乃至フォトダイオード361−4を互いに区別して説明する必要が無い場合、単にフォトダイオード361と称する。これ以外の構成は図2と同様である。
【0129】
半導体基板360は、その厚さが、図2の半導体基板114よりも薄く形成される(例えば1μm等)。このようにすることにより、フォトダイオード361は、入射光に含まれる可視光の短波長域成分(可視光381)を光電変換することができる。また、フォトダイオード361が薄く形成されることにより、フォトダイオード124の深さも浅くなる。したがって、この場合、フォトダイオード124は、近赤外光ではなく、入射光に含まれる可視光の長波長域成分(可視光382)を光電変換することができる。例えば、CMOSイメージセンサ100は、色毎に異なる層のフォトダイオードにおいて画像化することもできる。
【0130】
このように、CMOSイメージセンサ100は、複数層のフォトダイオードを有し、それぞれにおいて光電変換を行う。したがって、各フォトダイオードの層において光電変換される波長域成分をそれぞれ設定すれば良い。上述したように、各フォトダイオードの厚さは、任意であるので、層毎に互いに独立して設定することができる。例えば、フォトダイオードの厚さを層毎に異なるようにすることもできるし、全層のフォトダイオードの厚さを統一するようにすることもできる。つまり、各フォトダイオードにおいて光電変換される波長域成分の設定は、より容易かつより自由に行うことができる。
【0131】
なお、上述したように、CMOSイメージセンサ100は、フォトダイオード361の厚さによって、フォトダイオード361が光電変換する波長域成分だけでなくフォトダイオード124が光電変換する波長域成分も制御することができる。
【0132】
本実施の形態において説明したCMOSイメージセンサ100も、第2の実施の形態において説明したのと同様の方法により製造することができる。つまり、裏面照射型イメージセンサ製造部202および表面照射型イメージセンサ製造部203は、互いに独立してCMOSイメージセンサを製造するので、フォトダイオードの層の厚さは、互いに独立に設定することができる。
【0133】
すなわち、本実施の形態の場合も、製造装置200は、より容易にCMOSイメージセンサ100を製造することができる。
【0134】
<7.第7の実施の形態>
[撮像素子]
以上においては、裏面照射型のCMOSイメージセンサの表面側に表面照射型のCMOSイメージセンサを重畳するように説明したが、これに限らず、例えば、図10に示されるように、表面照射型のCMOSイメージセンサの代わりに裏面照射型のCMOSイメージセンサを重畳するようにしてもよい。
【0135】
図10に示されるCMOSイメージセンサ400は、上述したCMOSイメージセンサ100と同様の集光レンズ111乃至パッシベーション膜119を有する。CMOSイメージセンサ400は、配線層120乃至支持基板125の代わりに、半導体基板411および配線層413を有する。
【0136】
半導体基板411には、フォトダイオード115−1乃至フォトダイオード115−4の各画素に対応して、フォトダイオード412−1乃至フォトダイオード412−4をが形成される。フォトダイオード412−1乃至フォトダイオード412−4を互いに区別して説明する必要が無い場合、単にフォトダイオード412と称する。
【0137】
フォトダイオード412は、フォトダイオード124と同様に、フォトダイオード115と異なる波長域成分を光電変換する。より具体的には、フォトダイオード412は、フォトダイオード115よりも長い波長域を光電変換する。例えば、フォトダイオード115が可視光の波長域成分を光電変換するのに対して、フォトダイオード412は、近赤外光の波長域成分を光電変換する。また、例えば、フォトダイオード115が可視光の短波長域成分を光電変換するのに対して、フォトダイオード412は、可視光の長波長域成分を光電変換する。
【0138】
CMOSイメージセンサ400の場合、配線層413が半導体基板411の図中下側に形成される。つまり、CMOSイメージセンサ400は、裏面照射型のCMOSイメージセンサの表面側に裏面照射型のCMOSイメージセンサが形成されている。
【0139】
配線層413は、基本的に上述した配線層116や配線層120と同様であり、任意の層数の配線414および配線層間膜415を有する。ただし、配線層413は、フォトダイオード412の下側に位置するので、光路を設ける必要がない。したがって、配線414は任意の位置に配置することができる。つまり、配線414は、より容易にレイアウトを行うことができる。
【0140】
配線層116や配線層120の場合と同様に、配線層413の有効画素領域でない領域には、外部端子であるパッド423が設けられる。このパッド423は、TSV421により、配線層116のパッド132に接続される。
【0141】
このように、CMOSイメージセンサ400は、CMOSイメージセンサ100の場合と同様に、より容易により多様な光電変換出力を得ることができる。
【0142】
なお、CMOSイメージセンサ400の場合、入射光は、配線層413を介さずに奥側のフォトダイオード(フォトダイオード412)に到達することができる。したがって、CMOSイメージセンサ400は、CMOSイメージセンサ100のように表面照射型のCMOSイメージセンサを重畳させる場合よりも、フォトダイオード412の感度をより向上させることができる。
【0143】
本実施の形態において説明したCMOSイメージセンサ100も、第2の実施の形態において説明したのと、基本的に同様の方法により製造することができる。ただし、この場合、制御部201は、ステップS102の処理において、表面照射型イメージセンサ製造部203を制御する代わりに、裏面照射型イメージセンサ製造部202を制御し、裏面照射型のCMOSイメージセンサを製造させる。この裏面照射型のCMOSイメージセンサも、ステップS101の場合と同様に、従来と同様の方法により製造することができる。それ以外の処理は、第2の実施の形態において説明したのと同様に行うことができる。
【0144】
すなわち、本実施の形態の場合も、製造装置200は、より容易にCMOSイメージセンサ100を製造することができる。
【0145】
なお、各実施の形態において説明したCMOSイメージセンサの製造方法は、上述したように、いずれも大きな違いは無い。したがって、製造装置200は、上述した各種製造方法の中であれば、製造方法の切り替えを、特殊な装置を新たに用意したり、特殊な工程を新たに設けたりする必要なく、容易に行うことができる。つまり、製造装置200は、より多様なCMOSイメージセンサをより容易に製造することができる。
【0146】
以上においては、本技術をCMOSイメージセンサに適用する場合について説明したが、本技術は、CMOSイメージセンサに限らず、フォトダイオード等の光電変換素子を用いるイメージセンサであればどのようなイメージセンサにも適用することができる。例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサにも適用することができる。
【0147】
また、以上においては、配線層を挟む2層のフォトダイオードの層を有する場合について説明したが、フォトダイオードは、3層以上であってもよい。つまり、3層以上のフォトダイオードの層が、それぞれの間に配線層を挟んで形成されるようにしてもよい。換言するに、裏面照射型若しくは表面照射型のCMOSイメージセンサを3つ以上重畳し、互いのパッドを貫通ビアによって接続するようにしてもよい。
【0148】
このようにフォトダイオードの層を3層以上形成する場合も、フォトダイオードの各層は、互いに異なる波長域の画像を得ることができる。つまり、この場合のCMOSイメージセンサは、互いに異なる波長域の画像を、3つ以上得ることができる。つまり、CMOSイメージセンサは、より容易により多様な光電変換出力を得ることができる。
【0149】
なお、各層のフォトダイオードの電荷蓄積時間は、互いに独立して設定することができる。つまり、各層のフォトダイオードは、容易に、電荷蓄積時間が互いに異なるように駆動させることができる。したがって、例えば、フォトダイオードの一方の層の電荷蓄積時間を、他方の層の電荷蓄積時間よりも長くするように設定することもできる。このように、電荷蓄積時間が互いに異なる複数の画像を得て、それらを合成することにより、CMOSイメージセンサは、1層のフォトダイオードにより得られる画像よりも高いダイナミックレンジの画像を得ることができる。
【0150】
以上のように、CMOSイメージセンサ100は、入射光の互いに異なる波長域成分を、各フォトダイオードの層において光電変換することができる。
【0151】
<8.第8の実施の形態>
[撮像装置]
図11は、本技術を適用した撮像装置の構成例を示す図である。図11に示される撮像装置600は、被写体を撮像し、その被写体の画像を電気信号として出力する装置である。
【0152】
図11に示されるように撮像装置600は、レンズ部611、CMOSセンサ612、A/D変換部613、A/D変換器613、操作部614、制御部615、画像処理部616、表示部617、コーデック処理部618、および記録部619を有する。
【0153】
レンズ部611は、被写体までの焦点を調整し、焦点が合った位置からの光を集光し、CMOSセンサ612に供給する。
【0154】
CMOSセンサ612は、上述で説明した構造を有する固体撮像素子であり、有効画素領域内に、混色検出画素が設けられている。
【0155】
A/D変換器613は、CMOSセンサ612から、所定のタイミングで供給された画素毎の電圧信号を、デジタルの画像信号(以下、適宜、画素信号ともいう)に変換し、所定のタイミングで順次、画像処理部616に供給する。
【0156】
操作部614は、例えば、ジョグダイヤル(商標)、キー、ボタン、またはタッチパネル等により構成され、ユーザによる操作入力を受け、その操作入力に対応する信号を制御部615に供給する。
【0157】
制御部615は、操作部614により入力されたユーザの操作入力に対応する信号に基づいて、レンズ部611、CMOSセンサ612、A/D変換器613、画像処理部616、表示部617、コーデック処理部618、および記録部619の駆動を制御し、各部に撮像に関する処理を行わせる。
【0158】
画像処理部616は、A/D変換器613から供給された画像信号に対して、例えば、上述した混色補正や、黒レベル補正、ホワイトバランス調整、デモザイク処理、マトリックス処理、ガンマ補正、およびYC変換等の各種画像処理を施す。画像処理部616は、画像処理を施した画像信号を表示部617およびコーデック処理部618に供給する。
【0159】
表示部617は、例えば、液晶ディスプレイ等として構成され、画像処理部616からの画像信号に基づいて、被写体の画像を表示する。
【0160】
コーデック処理部618は、画像処理部616からの画像信号に対して、所定の方式の符号化処理を施し、符号化処理の結果得られた画像データを記録部619に供給する。
【0161】
記録部619は、コーデック処理部618からの画像データを記録する。記録部619に記録された画像データは、必要に応じて画像処理部616に読み出されることで、表示部617に供給され、対応する画像が表示される。
【0162】
なお、本技術を適用した固体撮像素子や画像処理部を備える撮像装置は、上述した構成に限らず、他の構成であってもよい。
【0163】
<9.第9の実施の形態>
[一般的なイメージセンサ]
一般的なイメージセンサ(例えば特開2010−232595号公報、特開2010−41034号公報、および特開2008−103368号公報等)においては、シリコン(Si)基板に形成できるフォトダイオード深さには限りがある。これは、フォトダイオード形成プロセスにおけるインプラントによる制約や、光電変換後の電荷の転送性能、もしくは隣接画素との電気的混色などといった要素から決まっており、3μm程度の深さになることが多かった。しかしながら、近年、赤外感度の需要が高まっている。シリコン(Si)が吸収可能な光には波長依存があり、3μmの深さがあっても光の半分程度しか吸収することができず、赤外を十分に高感度化することができない恐れがあった。
【0164】
そこで、2つの撮像素子を重ね合わせる手法が提案されている(例えば特開2008−227250号公報参照)。しかしながら、単に2つの撮像素子を貼り合わせるだけは、撮像素子間に距離(スペーサなど)が生じ、距離やスペーサなどの挿入物によって感度をロスする恐れがあった。上面と下面のフォトダイオードの両方を高感度にするには、上面のフォトダイオードと下面のフォトダイオードの両方が可能な限りオンチップレンズ(OCL)に近い位置にあることが望ましい。
【0165】
より具体的に説明すると、特開2008−227250号公報に記載された複合型固体撮像素子は、既に完成された固体撮像素子同士を接合する。各固体撮像素子は非常に薄いので、各固体撮像素子が形成されるウエハは割れやすい。そのためウエハが割れないようにしながらこれらを接合するためには専用の特別な装置が必要になるので、その製造が困難になり、コストが増大する恐れがある。また、十分な歩留まりを得ることが困難になる恐れがある。
【0166】
そこで、一般的な方法を用いて接合するのが望ましいが、その接合において、各ウエハが割れないようにするためには、各ウエハの厚さを数百um以上の厚さにする必要がある。そのため、接合する各固体撮像素子に支持基板を設ける必要がある。例えば、図2の例の場合、図中下側の撮像素子の構成には、支持基板が設けられているが、上側の撮像素子の構成には、支持基板が設けられていない。
【0167】
このような上側の撮像素子の構成に対しては、特開2008−227250号公報に記載の方法の場合、支持基板の代わりにスペーサが設けられている。このように、支持基板、若しくは、それに代わる構成を接合する撮像素子間に設ける必要があった。
【0168】
しかしながら、この場合、その支持基板(若しくはそれに代わる構成)によって、1画素において重畳されるフォトダイオード間の距離が長くなり過ぎてしまう恐れがある。そのため、光入射側からみて遠い方のフォトダイオード(図2の例の場合、フォトダイオード124)において所望の波長域を光電変換することが困難になる恐れがあった。また、入射光がそのフォトダイオードまで届き難くなり、感度が不要に低減する恐れがあった。
【0169】
その他の例として、US2009/0294813 A1やUS2009/0200589 A1などがある。前者の文献では、表面照射型イメージセンサに、フォトダイオードを有する他の基板を接合させる方法が提案されている。しかしながら、上述したように、上面と下面のフォトダイオードの両方を高感度にするには、上面のフォトダイオードと下面のフォトダイオードの両方が可能な限りオンチップレンズ(OCL)に近い位置にあることが望ましい。つまり、上面フォトダイオードは、裏面照射型イメージセンサ(例えば特開2008−103368号公報)で形成されていることが望ましい。また、この文献では、表面照射に対して仮の支持基板を接合(例えばFig3)し、さらに他の工程でそれを除去する(例えばFig6)という複雑な工程となっており工程としても煩雑で無駄が多かった。
【0170】
次に、後者の文献に記載された技術においては、同一シリコン(Si)基板に2つの受光部が形成され、上面と下面の個別の読み出しが困難である他、下面はIR光にしか対応できず制約が多かった。
【0171】
上述した赤外光は、近年、TOFと呼ばれる距離計測手法などでも利用されている(例えば特開2012−49547号公報参照)。また、米国特許US2010/0118123 A1などに記載の投影法により距離計測する手法などもある。このような技術においてはさらなる距離計測精度の向上や、外光による影響に対する耐性の向上などが求められている。
【0172】
また、近赤外波長などは、医療分野でも用いられ始めており、解析精度の向上などが期待されている波長領域でもある。しかしながら、上述したように赤外感度の低さなどが弊害となっている。さらに、従来は1画素で1波長の解析であったため、複数波長の情報からヘモグロビンの解析を行うような手法(例えば特許2932644号など)においては、複数波長の光を照射するか、複数の近赤外画素を使用する必要があり、撮像素子、装置の微細化の弊害となっていた。
【0173】
また、今後、カプセル内視鏡などへの応用を考えると、さらなる小型化、高精度化が望まれる。また、微小分子やDNAの光学特性を解析する場合、1画素内に分子サイズが収まるため、ベイヤ配列のように複数画素を用いるようなとき、画素毎に配置される分子の数や構造が異なってしまい、正確な解析の妨げとなる恐れがあった。
【0174】
また、赤外以外の光も考慮し、RGBなどの色を1画素で得る縦型分光構造も提案されている。例えば、特開2011−29453号公報等において提案されている。これは単一シリコン(Si)基板内にフォトダイオードを複数設ける手法である。そのため、シリコン(Si)表面側のフォトダイオード、シリコン(Si)奥側のフォトダイオードで個別に読み出しゲート電極を設ける必要があった。しかもシリコン(Si)奥側のフォトダイオードから読み出す為に、フォトダイオードと同程度の深さまでシリコン(Si)をエッチングした上でゲート電極を配置する必要があった(例えば特開2011−29453号公報の図16)。このため、ゲート面積分だけ光電変換を行うフォトダイオード面積が縮小してしまい、飽和電子数や感度に対して悪影響を及ぼし、さらにはゲート電極を配置する上でシリコンを彫り込むエッチングによってシリコン(Si)基板にダメージが入ることによる暗電流、白点などの発生が懸念された。
【0175】
また、その縦型分光において、複数のフォトダイオードの波長成分を左右できるのは、フォトダイオードの深さやインプラによるポテンシャル形成のみであり、分光の制御性は高くなかった。
【0176】
[実施例1]
そこで、図12に示されるように、裏面照射型のCMOSイメージセンサにおいて、支持基板層にもフォトダイオードを設ける構造とする。
【0177】
図12に示されるCMOSイメージセンサ1000は、撮像素子の一態様であり、図10に示されるCMOSイメージセンサ400と基本的に同様の構成を有する。つまり、図12に示されるように、CMOSイメージセンサ1000は、上層である撮像機能を有する構成1001と、下層である支持基板1002の2層構造を有する。
【0178】
撮像機能を有する構成1001は、一般的な裏面照射型のCMOSイメージセンサと同様の構成を有する。つまり、フォトダイオード1021、配線層1022、電極1023、およびパッシベーション膜1024等が積層される。また、この撮像機能を有する構成1001の図中上面側には、絶縁膜1025、カラーフィルタ1026、およびオンチップレンズ1027等が積層される。さらに、撮像機能を有する構成1001には、図中上面側から電極1023に接続される貫通電極1028が形成される。
【0179】
一般的なCMOSイメージセンサの場合、下層である支持基板1002は、シリコン(Si)基板のみにより形成されるが、このCMOSイメージセンサ1000の場合、支持基板1002にもフォトダイオード1031が形成される。つまり、この支持基板1002は、撮像機能を有する構成1011および支持基板1012により形成される。
【0180】
撮像機能を有する構成1011は、積層されるフォトダイオード1031、配線層1032、電極1033、およびパッシベーション膜1034を有する。パッシベーション膜1034の図中下面側に。シリコン(Si)基板よりなる支持基板1012が積層される。さらに、図中上面側から支持基板1002の電極1033に接続される貫通電極1035が形成される。
【0181】
つまり、CMOSイメージセンサ1000は、2層の裏面照射CMOSイメージセンサ(撮像機能を有する構成)を有する。したがって、CMOSイメージセンサ1000は、上層のフォトダイオード1021だけでなく、下層のフォトダイオード1031においても入射光を光電変換する。これにより、CMOSイメージセンサ100は、より多様な光電変換を行うことができ、その適用範囲(応用範囲)を拡張することができる。
【0182】
例えば、この構造を用いることで、受光面に対して上層のフォトダイード1021では従来通り、裏面照射型の高感度特性を活かすことができ、さらに追加で配置する下層のフォトダイオード1031では、上層とは異なる光学特性の出力を得ることが可能となる。支持基板1002とフォトダイオード1021との距離は、配線層分の厚さしかないため、光学的なロスも少なく、両フォトダイオードにおいて高感度の特性を得ることができる。
さらに、従来の裏面照射型イメージセンサでは、フォトダイオードを透過した光がその下の配線層の配線にあたり、その光が反射することで、隣接するフォトダイオードに混色することがあったが、CMOSイメージセンサ1000の場合、入射光をより下層まで導くことができるので、上層のフォトダイオード1021における混色の発生を抑制することができる。
【0183】
CMOSイメージセンサ1000は、図12に示されるように、同一画素(レイアウト上の座標が同じという意味)の中に2つのフォトダイオードを有する。CMOSイメージセンサ1000は、これらのフォトダイオードのそれぞれに、互いに独立な配線層を有することができる。つまり、CMOSイメージセンサ1000は、各層のフォトダイオードを、互いに独立して駆動させたり、読み出したりすることができる。
【0184】
また、CMOSイメージセンサ1000は、例えば特開2011−29453号公報に記載されているような縦型分光構造のイメージセンサと異なり、各層のフォトダイオードを用途に応じてそれぞれ最適化することができる。したがって、例えば、シリコン(Si)をエッチングして、フォトダイオード真横に転送ゲートを設ける等の構成を増大させる必要がなく、フォトダイオードを大きく形成することができる。したがって、CMOSイメージセンサ1000は、上述した縦型分光構造のイメージセンサよりも、飽和電子数を増大させることができ、また、感度を向上させることができる。さらに、フォトダイオード横をエッチングなどで掘り込む必要がないためプラズマダメージや欠陥による、暗電流、白点の発生を抑制することができる。
【0185】
そして、この結果、解像度を落とすことなく複数の分光を同一画素から得られ、さらに高い赤外感度が得られたりする効果や、上述したように上面フォトダイオードに対する混色(配線からの反射)の発生を抑制することができる。
【0186】
なお、以上のように、単に、完成された固体撮像素子を接合するのではなく、通常の裏面照射型のCMOSイメージセンサ1000の支持基板1002に、フォトダイオード1021とは別のフォトダイオード1031を設けるようにすることにより、後述するように、通常の裏面照射型CMOSイメージセンサの製造方法を利用して、容易に、図12の例に示される構成を実現(製造)することができる。
【0187】
換言するに、図12に示されるように、CMOSイメージセンサ1000は、上側と下側の2つの撮像素子の構成を有するが、その間に、支持基板やスペーサ等の構成を設ける必要がなく、フォトダイオード1021とフォトダイオード1031との距離を短くすることができる。つまり、フォトダイオード1031の感度や受光帯域の設計を、配線層1022等の厚さによって、容易に行うことができる。
【0188】
また、CMOSイメージセンサ1000は、一部若しくは全部の画素がこのように構成されるので、画素数および画素サイズを低減させずに、すなわち、画質の低減を抑制しながら、1画素において入射光の互いに異なる複数の波長域を光電変換することができる。つまり、CMOSイメージセンサ1000は、より容易により多様な光電変換出力を得ることができる。
【0189】
なお、フォトダイオード1021とフォトダイオード1031の入射光進行方向(図中縦方向)の厚さは、任意である。例えば、フォトダイオード1021とフォトダイオード1031とでその厚さが同一であっても良いし、互いに異なるようにしても良い。光電変換する帯域に応じて各フォトダイオードの厚さを設計するようにしてもよい。
【0190】
[製造装置]
次に、以上のようなCMOSイメージセンサ1000を製造する製造装置について説明する。
【0191】
図13は、CMOSイメージセンサ1000の製造装置の主な構成例を示すブロック図である。図13に示される製造装置1200は、制御部1201および製造部1202を有する。
【0192】
制御部1201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等を有し、製造部1202の各部を制御し、CMOSイメージセンサ1000の製造に関する制御処理を行う。例えば、制御部1201のCPUは、ROMに記憶されているプログラムに従って各種の処理を実行する。また、そのCPUは、記憶部1213からRAMにロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAMにはまた、CPUが各種の処理を実行するにあたって必要なデータなども適宜記憶される。
【0193】
製造部1202は、制御部1201に制御されて、CMOSイメージセンサ1000の製造に関する処理を行う。製造部1202は、支持基板製造部1231、撮像機能を有する構成製造部1232、表面処理部1233、接合部1234、姿勢反転部1235、研磨部1236、上層形成部1237、および電極形成部1238を有する。
【0194】
これらの支持基板製造部1231乃至電極形成部1238は、制御部1201に制御され、後述するように、CMOSイメージセンサ1000を製造する各工程の処理を行う。
【0195】
製造装置1200は、入力部1211、出力部1212、記憶部1213、通信部1214、およびドライブ1215を有する。
【0196】
入力部1211は、キーボード、マウス、タッチパネル、および外部入力端子などよりなり、ユーザ指示や外部からの情報の入力を受け付け、制御部1201に供給する。出力部1212は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイやLCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイ、スピーカ、並びに外部出力端子などよりなり、制御部1201から供給される各種情報を画像、音声、若しくは、アナログ信号やデジタルデータとして出力する。
【0197】
記憶部1213は、フラッシュメモリ等SSD(Solid State Drive)やハードディスクなどよりなり、制御部1201から供給される情報を記憶したり、制御部1201からの要求に従って、記憶している情報を読み出して供給したりする。
【0198】
通信部1214は、例えば、有線LAN(Local Area Network)や無線LANのインタフェースやモデムなどよりなり、インターネットを含むネットワークを介して、外部の装置との通信処理を行う。例えば、通信部1214は、制御部1201から供給される情報を通信相手に送信したり、通信相手から受信した情報を制御部1201に供給したりする。
【0199】
ドライブ1215は、必要に応じて制御部1201に接続される。そして、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア1221がそのドライブ1215に適宜装着される。そして、そのドライブ1215を介してリムーバブルメディア1221から読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部1213にインストールされる。
【0200】
[支持基板製造処理の流れ]
支持基板製造部1231は、支持基板製造処理を実行し、支持基板1002を製造する。図14のフローチャートを参照して、支持基板製造部1231により実行される支持基板製造処理の流れの例を説明する。なお、適宜、図15を参照して説明する。図15は、支持基板製造処理の各工程の様子を説明する図である。
【0201】
支持基板製造処理が開始されると、支持基板製造部1231は、ステップS1201において、制御部1201に制御されて、外部より供給されたシリコン基板フォトダイオード1031、トランジスタ(図示せず)、配線層1032、および電極1033を形成する(図15A)。なお、ここでは、裏面照射型の構造を形成するように説明するが、支持基板側は"表面照射"、"裏面照射"のいずれでも選択可能である。例えば、表面照射型イメージセンサであれば特開2010−41034号公報に掲載のものがある。また、例えば、裏面照射型イメージセンサであれば特開2008−103368号公報に掲載のものがある。
【0202】
ステップS1202において、支持基板製造部1231は、制御部1201に制御されて、表面を保護するパッシベーション膜1034(例えばSINやSiO2など)を形成し、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)などで平坦化を行う(図15B)。
【0203】
ステップS1203において、支持基板製造部1231は、制御部1201に制御されて、以上のように製造された撮像機能を有する構成1011に、支持基板1012を、プラズマ接合や接着剤などを用いて接合する(図15C)。
【0204】
ステップS1204において、支持基板製造部1231は、制御部1201に制御されて、以上のように製造された支持基板1002を裏返す(図15D)。
【0205】
ステップS1205において、支持基板製造部1231は、制御部1201に制御されて、裏返した支持基板1002の図中上面を、CMPやバックグラインド、エッチングなどいずれかの手法、もしくはその組み合わせでフォトダイオード1031付近まで研磨する(図15E)。つまり、この支持基板1002は、通常の裏面照射型イメージセンサに、カラーフィルタやオンチップレンズ(OCL)がついていないものに相当する。つまり、支持基板1002は、通常の裏面照射型イメージセンサと同様の方法により容易に製造することができる。
【0206】
[製造処理の流れ]
製造部1202の撮像機能を有する構成製造部1232乃至電極形成部1238は、製造処理を実行し、以上のように生成された支持基板1002を用いてCMOSイメージセンサ1000を製造する。図16のフローチャートを参照して、撮像機能を有する構成製造部1232乃至電極形成部1238により実行される製造処理の流れの例を説明する。なお、適宜、図17を参照して説明する。図17は、製造処理の各工程の様子を説明する図である。
【0207】
製造処理が開始されると、撮像機能を有する構成製造部1232は、ステップS1221において、制御部1201に制御されて、通常のシリコン基板にフォトダイオード1021、トランジスタ(図示せず)、配線層1022、および電極1023を形成する(図17A)。
【0208】
ステップS1222において、表面処理部1233は、制御部1201に制御されて、このように形成された撮像機能を有する構成1001の図17A中上側の表面を保護するパッシベーション膜1024(例えばSINやSiO2など)を形成し、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)などで平坦化を行う。(図17B)。
【0209】
ステップS1223において、接合部1234は、制御部1201に制御されて、パッシベーション膜1024が形成された撮像機能を有する構成1001に、支持基板1002をプラズマ接合や接着剤などを用いて接合する(図17C)。図17Cに示されるように、この時点において、撮像機能を有する構成1001には支持基板は設けられていないが、そのフォトダイオード1021が形成されるシリコン基板は、まだ、研磨されておらず、厚い状態である。したがって、撮像機能を有する構成1001が形成されるウエハは、十分に厚さを確保することができるので、接合の際に割れる恐れは非常に少ない。したがって、接合部1234は、容易に、撮像機能を有する構成1001と支持基板1002とを接合することができる。
【0210】
ステップS1224において、姿勢反転部1235は、制御部1201に制御されて、以上のように接合された撮像機能を有する構成1001および支持基板1002を裏返す(図17D)。
【0211】
ステップS1225において、研磨部1236は、制御部1201に制御されて、裏返した撮像機能を有する構成1001の図中上面を、CMPやバックグラインド、エッチングなどいずれかの手法、もしくはその組み合わせでフォトダイオード1021付近まで研磨する(図17E)。
【0212】
ステップS1226において、上層形成部1237は、制御部1201に制御されて、研磨された上面に、絶縁膜1025、カラーフィルタ1026、およびオンチップレンズ(OCL)1027を形成する(図17F)。
【0213】
ステップS1227において、電極形成部1238は、制御部1201に制御されて、電極1023を図中上面側に引き出す貫通電極1028と、電極1033を図中上面側に引き出す貫通電極1035とを形成する(図17G)。
【0214】
以上の処理によりCMOSイメージセンサ1000が製造される。なお、配線を有する支持基板の接合方法などプロセスフローは、例えば、特開2011−204915号公報に開示されている。
【0215】
以上のように、製造装置1200は、一般的な1層のCMOSイメージセンサの製造行程を利用して、容易に複数層のCMOSイメージセンサ1000を製造することができる。
【0216】
[実施例2]
本技術の特徴として、フォトダイオード間に別の膜(酸化膜やその他配線層など)が存在しうる。これは、上層のフォトダイオード1021から、下層のフォトダイオード1031に流入する光を制御するのにも活用することができるのが特徴である。フォトダイオード1031に可能な限り多くの光を流入させたければ、配線層1022には光伝搬路(例えば導波路)を設けて光学的なロスを低減させるのがよい。逆に、フォトダイオード1031に流入する光を低減させたければ、配線層1022の配線(例えばCuやAl、W)などによって一部を遮光するようにしても良い。また、フォトダイオード1031に流入する波長を制御する場合、特定波長を多く吸収する構造物を配置するようにしても良い(例えばPoly-Siは短波長側を吸収できる。もしくはカラーフィルタなどのような光吸収体であっても良い)。
【0217】
[製造装置]
次に、このような場合のCMOSイメージセンサ1000を製造する製造装置について説明する。
【0218】
図18は、このような場合のCMOSイメージセンサ1000の製造装置の主な構成例を示すブロック図である。図18に示される製造装置1300は、図13の製造装置1200と基本的に同様の装置であり、制御部1301および製造部1302を有する。
【0219】
制御部1301は、制御部1201と同様の処理部であり、製造部1302の動作を制御する。製造部1302は、製造部1202の場合と同様に、制御部1301に制御されて、CMOSイメージセンサ1000の製造に関する処理を行う。
【0220】
製造部1302は、支持基板製造部1331、撮像機能を有する構成製造部1332、光路形成部1333、表面処理部1334、接合部1335、姿勢反転部1336、研磨部1337、上層形成部1338、および電極形成部1339を有する。
【0221】
支持基板製造部1331は、支持基板製造部1231と同様の処理部である。撮像機能を有する構成製造部1332は、撮像機能を有する構成製造部1232と同様の処理部である。表面処理部1334は、表面処理部1233と同様の処理部である。接合部1335は、接合部1234と同様の処理部である。姿勢反転部1336は、姿勢反転部1235と同様の処理部である。研磨部1337は、研磨部1236と同様の処理部である。上層形成部1338は、上層形成部1237と同様の処理部である。電極形成部1339は、電極形成部1238と同様の処理部である。
【0222】
また、製造装置1300は、入力部1311、出力部1312、記憶部1313、通信部1314、およびドライブ1315を有する。これらは、入力部1211乃至ドライブ1215と同様の処理部である。ドライブ1315には、リムーバブルメディア1221と同様のリムーバブルメディア1321が適宜装着される。
【0223】
[製造処理の流れ]
支持基板製造部1331は、制御部1301に制御されて、支持基板製造部1231と同様の支持基板製造処理(図14)を実行し、支持基板1002を製造する。
【0224】
製造部1302の撮像機能を有する構成製造部1332乃至電極形成部1339は、製造処理を実行し、以上のように生成された支持基板1002を用いてCMOSイメージセンサ1000を製造する。図19のフローチャートを参照して、撮像機能を有する構成製造部1332乃至電極形成部1339により実行される製造処理の流れの例を説明する。なお、適宜、図20を参照して説明する。図20は、製造処理の各工程の様子を説明する図である。
【0225】
製造処理が開始されると、撮像機能を有する構成製造部1332は、ステップS1301において、制御部1301に制御されて、ステップS1221の場合と同様に、通常のシリコン基板にフォトダイオード1021、トランジスタ(図示せず)、配線層1022、および電極1023を形成する(図20A)。
【0226】
ステップS1302において、光路形成部1333は、制御部1301に制御されて、配線層1022の、導波路、もしくは光吸収体を挿入したい箇所(光路)に該当する部分(例えば図20Bのエッチング部1341)をエッチングする(図20B)。
【0227】
ステップS1303において、光路形成部1333は、制御部1301に制御されて、導波路(高屈折率材料)、もしくは光吸収体(カラーフィルタや、Poly-Siなど吸収率に波長依存のあるもの)(図20Cの埋め込み材1342)をALD(Atomic Layer Deposition)もしくはCVD(Chemical Vapor Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)、塗布などの方法でエッチング部1341に埋め込む(図20C)。ここでの例として、ALDで成膜させた窒化シリコンSIN(屈折率1.8〜2程度)とする。SINは屈折率が、周辺の配線層(酸化膜であれば屈折率1.5以下)に比べて高く、集光特性が良い。また、無機膜であるため、その後の製造工程での熱や圧力を仮にかけたとしても耐性があるのが特徴である。但し、埋め込む膜は有機膜であっても良い。
【0228】
ステップS1304において、光路形成部1333は、制御部1301に制御されて、埋め込み材1342(導波路材若しくは光吸収体)の画素間等の不要な部分(図20Dのエッチング部1343)を、エッチングにより除去する(図20D)
【0229】
例えば、SINは屈折率が高いため、隣接画素と接続されていると混色を招く可能性もある。そこで、光路形成部1333は、上述したように画素間のエッチング部1343を除去する。これにより、この埋め込み材1342(例えばSIN)を介して光が隣接画素に伝搬するのを抑制することができる。なお、必要でない場合、この処理は省略することができる。
【0230】
ステップS1305乃至ステップS1310の各処理は、制御部1301により制御される表面処理部1334乃至電極形成部1339により、図16のステップS1222乃至ステップS1227の各処理と同様に実行される(図20E乃至図20K)。
【0231】
このように製造処理を実行することにより、製造装置1300は、配線層1022に導波路(若しくは光吸収体)が設けられた撮像機能を有する構成1351を製造することができる。つまり、製造装置1300は、撮像機能を有する構成1351を有するCMOSイメージセンサ1000を製造することができる。
【0232】
[実施例3]
なお、同様にして、フォトダイオードを3層以上にすることも可能である。フォトダイオード3層構造の場合のCMOSイメージセンサの構成例を図21に示す。図21に示されるCMOSイメージセンサ1400は、上層1401、中層1402、および下層1403よりなる。上層1401乃至下層1403は、それぞれ、フォトダイオードを有することができる。つまり、1画素内に、最大3つのフォトダイオードが形成される。
【0233】
このCMOSイメージセンサ1400は、上述したCMOSイメージセンサ1000と比較して、撮像機能を有する構成が1層分増えただけであるので、上述したCMOSイメージセンサ1000の製造方法を利用して製造することができる。
【0234】
つまり、図14のフローチャートを参照して説明した支持基板製造処理のステップS1203において、撮像機能を有する構成1011にシリコン基板よりなる支持基板1012を接合したが、この処理において、図16のステップS1223の処理の場合と同様に、撮像機能を有する構成1011に、撮像機能を有する構成を含む支持基板を接合するようにすればよい。
【0235】
このように、再帰的に処理を繰り返すことで、3層以上の互いに異なるシリコン層に形成されたフォトダイオードを得ることができる。フォトダイオードを含むシリコン(Si)の各膜厚を制御することで、各層のフォトダイオードが受光(光電変換)する波長を制御することができる。例えば、各フォトダイオードが、上から順に青、緑、赤色を受光するようにすることもできる(Si吸収率が各色で異なるため)。また、赤外領域の受光に大変有用で、高感度化を実現することができる。
【0236】
なお、各層の画素サイズは必ずしも同じでなくても良い。
【0237】
以下において、駆動/信号処理としての実施例について説明する。
【0238】
[実施例4]
なお、以上のように複数積層される各フォトダイオードに対して、互いに独立した配線層を設けるようにしてもよい。このようにすることにより、各フォトダイオードの駆動の自由度を向上させることができる。例えば、図22Aに示される2層のCMOSイメージセンサ1000の場合、フォトダイオード1021において得られた信号値、および、フォトダイオード1031において得られた信号値は、図22Bに示されるように、それぞれ個別に出力させることもできるし、図22Cに示されるように、両者を合成して出力させることもできる。
【0239】
図22Cに示されるように、上下のフォトダイオードの信号値を合成して出力する場合、受光感度を向上させることができるので高感度モードとして使用することができる。例えば赤外光のように、1つのフォトダイオードだけでは十分に光電変換できないような光に対しても、高出力を得ることができる。
【0240】
また、例えば、シリコン(Si)の光吸収係数は短波長側の方が高く、光の入射面に対して、上面の方がより多く短波長の光を吸収する。つまり、上層のフォトダイオード1021と下層のフォトダイオード1031とでは、分光特性が異なる。より具体的には、下層のフォトダイオード1031は、図22Bに示されるように、上層のフォトダイオード1021よりも長波長側にピークを持つ分光特性となる(短波長側は上層のフォトダイオード1021で吸収されやすいため)。
【0241】
図22Bの例では、オンチップレンズ下に緑色カラーフィルタが設けられている。そのため、上層のフォトダイオード1021に入射される光は緑色である。フォトダイオード1021中を伝搬するにつれて短波長側が特に吸収されるため、下層のフォトダイオード1031に入射する光は、上層よりも長波長にシフトしている。
【0242】
したがって、上層のフォトダイオード1021の信号値と下層のフォトダイオード1031の信号値とを合成せずに出力することにより、1画素において複数の波長の光の信号値を得ることができる。
【0243】
なお、実施例2で上述したように、フォトダイオード間に波長依存のある光吸収体を挿入すると、さらに波長制御をおこなうこともできる。
【0244】
信号処理において、1画素から複数の分光を持つデータを得ることはメリットが大きい。例えば、上面フォトダイオードにおいて可視光を光電変換させ、下面フォトダイオードにおいて近赤外光を光電変換させるようにしてもよい。色配置の一例を図23に示す。まず、図23Aにおいては、カラーフィルタとして、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)が設けられる。上面フォトダイオード(PD)1501は、カラーフィルタを透過した波長域(色)成分を光電変換する。下面フォトダイオード1502は、上面フォトダイオード1501で吸収されなかった成分のみが入射するため、上面フォトダイオード1501よりも長波長域成分を光電変換する。図23Aの例では、赤色(R)フィルタに対応する画素の上面フォトダイオード1501では、赤色(R)成分が光電変換され、同画素の下面フォトダイオード1502では、赤外(近赤外を含む)(IR)成分が光電変換される。また、緑色(G)フィルタに対応する画素の上面フォトダイオード1501では、緑色(G)成分が光電変換され、同画素の下面フォトダイオード1502では赤色(R')成分が光電変換される。
【0245】
なお、青色(B)フィルタに対応する画素の上面フォトダイオード1501では、青色(B)成分が光電変換され、同画素の下には、フォトダイオードを設けないものとしている。上面フォトダイオード1501に短波長である青色成分しか入射しなかった場合、下面フォトダイオード1502に入射する光の成分がほとんど無いからである。
【0246】
下面フォトダイオード1502を設ける代わりに、例えば図24Bに示されるように、フォトダイオード間により多くの配線を設けるようにしても良い。また、下面フォトダイオード1502(の一部の画素)を、例えば図23Bに示されるように、OPB(オプティカルブラック)として用いるようにしても良い。この場合、図24Cに示されるように、例えば、光を透過しない素材よりなる遮光膜1511等を用いて意図的に完全遮光することで、フォトダイオード1031を、OPBとして用いることができる。OPBが画素領域内にあることで、位置ごと黒レベルや、混色量の推定に用いることが可能となる。
【0247】
さらに、別のレイアウト例を図25に示す。図25Aでは、カラーフィルタとして、赤色(R)、緑色(G)、および白色(W)が設けられる。赤色(R)フィルタに対応する画素の上面フォトダイオード1531では、赤色(R)成分が光電変換され、同画素の下面のフォトダイオード1532では、赤外(近赤外を含む)(IR)成分が光電変換される。また、白色(全色透過)(W)フィルタに対応する画素の上面フォトダイオード1531では、白色(W)成分(すなわち全成分)が光電変換され、同画素の下面フォトダイオード1532では、上面フォトダイオード1531において光電変換しきれなかった入射光の内、下面フォトダイオード1532まで届く長波長の、赤外光(IR')成分、若しくは、赤色(R')成分が光電変換される。なお、緑色(G)フィルタに対応する画素の上面フォトダイオード1531では、緑色(G)成分が光電変換され、同画素の下面フォトダイオード1532では、赤色(R'')成分が光電変換される。
【0248】
この例の特徴として、上面が同じ色のフォトダイオード(図25Aの例では白色)であっても、下面フォトダイオードで受光する色を変化させることができる(図25Aの例では、赤色と赤外)。これは、実施例2で述べた光吸収体になどによって波長を制御するか、もしくは図26の例のように、フォトダイオードの形成位置を変えることにより制御するようにしてもよい(オンチップレンズから離れてシリコン(Si)位置が深くなるほど長波長成分が支配的となってくる)。
【0249】
なお、白色(W)のカラーフィルタを含むカラーフィルタにおける色の配置パターンは、任意であり、図25Aの例に限らない。また、カラーフィルタの色数は任意であり、例えば4色以上であってもよい。例えば、図25Bに示されるように、カラーフィルタとして、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、および白色(W)が設けられるようにしてもよい。この場合、上面フォトダイオード1533においては、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、および白色(W)成分が、それぞれの画素において光電変換される。
【0250】
これに対して、下面フォトダイオード1534で光電変換される成分は、上面フォトダイオード1533において光電変換される成分よりも長波長域であればよい。例えば、図25Bに示されるように、カラーフィルタの色に関わらず、全ての画素において、下面フォトダイオード1534では、赤外(IR)成分が光電変換されるようにしてもよい。以上のような下面フォトダイオードが光電変換する帯域の制御は、その下面フォトダイオードが形成される深さ方向の位置や厚さ等により行っても良いが、上面フォトダイオードとの間(例えば配線層)に設けられる光吸収体により行ってもよい。
【0251】
これらフォトダイオードから得られた信号は、上述したように個別に読み出し、合算しても良いし、合算せずにそのまま信号処理に用いても良い。また、フォトダイオード1021の電荷読み出しタイミングと、フォトダイオード1031の電荷読み出しタイミングは、同一であっても良いし、互いに異なるようにしてもよい。
【0252】
なお、本技術の撮像素子を実施可能なブロック図の例を図27に示した。図27に示される撮像装置1600は、被写体を撮像し、被写体の画像を電気信号(画像データ)として出力する。図27に示されるように、撮像装置1600は、レンズ系1601、撮像素子1602、A/D変換部1603、クランプ部1604、デモザイク部1605、リニアマトリックス部1606、ガンマ補正部1607、輝度クロマ信号生成部1608、およびビデオインタフェース(IF)1609を有する。
【0253】
このような撮像素子1602に、本技術を適用したCMOSイメージセンサ(例えば、CMOSイメージセンサ1000や1400等)を適用することで、1画素で縦方向に複数の分光を持つ特性を高感度で得ることができる。
【0254】
A/D変換部1603は、撮像素子1602において光電変換された被写体の画像のアナログ信号をデジタル値へ変換する。クランプ部1604は、A/D変換部1603から供給される被写体の画像のデジタルデータ(画像データ)の黒レベルを減算する。デモザイク部1605は、クランプ部1604から供給される画像データについて、必要に応じて色信号を補完する。リニアマトリックス部1606は、デモザイク部1605から供給される画像データについて、必要に応じてリニアマトリックスをかけて色再現などを向上させる。ガンマ補正部1607は、リニアマトリックス部1606から供給される画像データについて、輝度表現を自然にするガンマ補正処理を行う。輝度クロマ信号生成部1608は、ガンマ補正部1607から供給される画像データから、輝度信号およびクロマ信号を生成する。ビデオインタフェース1609は、輝度クロマ信号生成部1608から供給される輝度信号およびクロマ信号を出力する。
【0255】
[実施例5]
次に実施例4で述べたように個別に信号を取り出す場合の、取り出した後の信号処理における活用、応用例を記載する。
【0256】
1.色再現性の向上
例えば、RGBを上面フォトダイオードで取り出し、下面ではさらに別の波長帯の色を取り出すとする。この場合、信号処理に用いることの出来る分光(色)の種類が増えることになる。例えば、RGBに加えてエメラルドを用いる等、画作りに使用できる分光(色)が増やすことにより、色再現性を向上させることができる。同一画素に複数色を持たせるため、解像度を落とすことなく、色再現性の向上を実現することができる。
【0257】
つまり、使用できる画素が増えるということは、図27の撮像装置1600において、撮像素子1602からの入力が増えることになる。したがって、リニアマトリックス部1606において使用することができる係数が増えるので、色再現性を向上することができる。
【0258】
例えば、受光(光電変換)する波長成分がR,G,Bのみの場合、リニアマトリックス部1606は、以下の式(1)のようなModeAのリニアマトリックスしか加えることができない(左辺がリニアマトリックス後の値、右辺が計算式)。
【0259】
【数1】

・・・(1)
【0260】
これに対して、例えば、R,G,Bだけでなくエメラルド色(E)も受光(光電変換)するようにすると、リニアマトリックス部1606は、以下の式(2)に示されるようなModeBのリニアマトリックスを加えることができる。
【0261】
【数2】

・・・(2)
【0262】
つまり、使用することができる係数が増える。これにより、より自由度の高いリニアマトリックス後出力が得られ、これにより色再現性の向上が期待できる。
【0263】
2.光源推定精度の向上(撮像装置)
カメラなどの撮像機器において、撮影時の周辺の照明(蛍光灯や白熱電球、白色LEDなど)を推定して、照明に応じた画作り(例えば色ターゲットを変えるなど)を実施する手法が広く用いられている。しかし、白色LED(Light Emitting Diode)などのように新しい光源が増えてきたことで、その光源が何であるかを推定するのが難しくなってきていた。
【0264】
そこで、上述したCMOSイメージセンサ1000において、RGBを上面フォトダイオード1021で光電変換して取り出し、下面のフォトダイオード1031ではさらに別の波長帯の色成分を光電変換して取り出すようにする。この場合、上面のフォトダイオード1021において得られた信号値だけで光源が推定しきれない場合、下面のフォトダイオード1031において得られた信号値も用いて光源を推定することができる。これにより、光源推定の精度を高めることができる。
【0265】
例えば、従来、光源推定をR/G、B/Gの出力比で実施していたとする。仮に光源出力分光の異なる光源1と光源2があったとしても、R/G、B/Gが異なる値になるとは限らない。出力は、光の波長毎に出るわけではなく、センサの分光特性と光源の掛け算などで決まる積分的な要素であるため、積分値が一緒になれば、各波長における出力が異なっていても判別ができなくなる。しかしながら、本技術では、下面フォトダイオードでも新たな分光特性を得ることができるため、例えば上面でR/G、B/Gが同等の値であっても、下面でR/IRの特性は異なってくる可能性があり、光源推定の精度を高めることができる。同一画素に複数色を持たせるため、解像度を落とすことなく、これを実現することができる。
【0266】
3.医療機器などへの応用
近赤外波長などは医療分野でも用いられ始めており、解析精度の向上などが期待されている波長領域でもある。これに対して、上述したように赤外感度の低さなどが弊害となっている。
【0267】
例えば、複数波長の情報からヘモグロビンの解析を行うような手法がある。例えば、特許番号2932644号においては、ヘモグロビンの酸素化−脱酸素化に伴う吸光度変化とチトクロムオキシダーゼの酸化還元状態変化に伴う吸光度変化がともに生ずる近赤外領域において、2組の異なる波長群の光を生体組織に照射して各波長での吸光度変化を測定し、各波長群について吸光度変化が全てヘモグロビンの酸素化−脱酸素化に依存すると仮定し、吸光係数として各波長での酸素化型ヘモグロビンの吸光係数及び脱酸素化型ヘモグロビンの吸光係数のみを用いてヘモグロビン量変動を算出し、これら2組の波長群のヘモグロビン量変動算出値の差からチトクロムオキシダーゼの変動量を算出する手法が提案されている。
【0268】
このような手法において、従来は1画素で1波長の解析であったため、複数波長の光を照射するか、複数の近赤外画素を使用する必要があり、撮像素子、装置の微細化の弊害となっていた。
【0269】
本技術を適用することで、図28のような医療機器(ヘルスケア装置、カプセル内視鏡、DNAチップなど)において、単一光で複数波長成分の出力を単一画素で得ることができる。
【0270】
図28Aに示されるヘルスケア装置1620は、撮像装置1621および解析装置1622よりなる。撮像装置1621は、検体である人体1631(例えば指等)を撮像し、上述したように複数波長光の信号を検出し、解析装置1622は、その信号から例えばヘモグロビンの解析等、医療に関する所定の解析を行う。
【0271】
また、図28Bに示されるカプセル内視鏡1640は、被験者等がこれを飲み込み、体内において人体の様子を撮像する小型の装置である。カプセル内視鏡1640は、撮像装置1641を内蔵する。
【0272】
これらの装置の撮像装置として、本技術を適用した撮像装置1600(図27)を用いる。これにより、高解像度を維持したまま、波長依存取得を同時に行うことが可能となる。波長依存を取得することで前述したようなヘモグロビンの解析など、ヘルスケア、病理解析に使用することが可能となる。
【0273】
また、単一画素に分子サイズが収まってしまうような分子やDNAの光学特性解析においても、1画素で複数の光学特性を得ることができる本技術は、光学特性をより正確に取得することができる(同一分子を同一画素で複数分光することができる)。
【0274】
4.ToFへの応用
赤外光などを使って奥行き情報を得るToF(Time of Flight)の手法がある(例えば特開2012−49547号公報参照)。このような手法に本技術を適用することにより、精度を向上させることができる。
【0275】
図29に示される電子機器1650は、互いに異なる波長の赤外光を照射する赤外光照射部1651および赤外光照射部1652を有する。このように互いに異なる複数の波長の赤外光を計測対象物1661に照射することにより、外光(ノイズ源1662)の影響により一方の波長帯には多くのノイズがのり、計測できなかった場合であっても、他方の波長帯の出力を得ることにより、距離計測をより確実に行うことができる。
【0276】
このような電子機器1650の撮像素子1653として、本技術を適用することにより、1画素で複数の赤外光をサンプリングすることができるため、解像度を落とすことなく精度向上が期待できる。
【0277】
5.IRカットフィルタレス化
赤外(IR)光の受光、コストメリット、低背化などの目的でIRカットフィルタを無くしたりするようなケースも考えられる。また、モジュール内のメカによりIRカットフィルタ(IRCF)の挿入ON/OFFを切り替えても良い。図30Aに示されるレイアウトでは、上面PD1671でIRを含むRGB出力を得て、下面PD1672では残ったIR成分が出力される。つまり、上面PD1671の出力から下面PD1672の出力を差し引くことで、IR成分を低減、もしくは除去することができる。除去する際に、個別の出力に補正係数をかけて演算しても良いし、他の色の赤外情報なども用いてリニアマトリックスのような演算を行っても良い。
【0278】
また、図30Bに示されるように、撮像素子としてCMOSイメージセンサ1000を適用する撮像モジュール1680が、IRカットフィルタ(IRCF)1683の挿入をメカで制御することができる構成を有するとする。この撮像モジュール1680には、集光レンズ1681を介して光が入射される。
【0279】
IRカットフィルタ1683挿入時は、この入射光の赤外成分がカットされる。したがって、下面フォトダイオードには上面のRGBで吸収し切れなかった光成分が光電変換される。この時は、上面PDの出力と下面PDの出力とを合成して使用してもよい。
【0280】
これに対して、IRカットフィルタ無しの場合、上面PDと下面PDの両方に赤外成分が入射し、なおかつ下面フォトダイオードには赤外の割合がより多くなる。そのため、上述したように上面PDの信号から下面PDの出力を差し引いて使用するようにしても良い。このように、IRカットフィルタ1683の状態に応じて制御方法を変えることが可能である。
【0281】
[実施例6]
上面PDと下面PDでは、波長ピークが異なるだけでなく、出力も異なる。同じ電荷蓄積時間、同じフォトダイオード設計の場合、下面フォトダイオードの方が上面フォトダイオードよりも出力が低くなる。これは、上面フォトダイオードで吸収されきれなかった光のみが下面フォトダイオードに入射するためである。これを利用し、上面フォトダイオードが飽和した際は、下面フォトダイオードの値を用いて画作りを行っても良い。つまり、まず、上面フォトダイオードから電荷を読み出すようにし、上面フォトダイオードが飽和した(例えば所定の閾値を超えた)際に、下面フォトダイオードから電荷を読み出すようにしてもよい。この時、図22Bの例で示したように分光の波長ピークが異なるため、上面PD使用時と下面PD使用時では、それぞれでリニアマトリックスの係数を変えることが望ましい。
【0282】
図31にリニアマトリックス選択の際のフロー例を示した。
【0283】
ステップS1601において、リニアマトリックス部1606は、上面PD出力を取得し、その値から、上面PD出力が飽和しているか否かを判定し、その判定結果に基づいて上面PDを用いるか下面PDを用いるかを判別する。
【0284】
上面PD出力が飽和していると判定された場合、処理は、ステップS1602に進む。
【0285】
ステップS1602において、リニアマトリックス部1606は、下面PD出力を読み出させ、その出力から生成された画像データをデモザイク部1605から取得する。ステップS1602の処理が終了すると、処理はステップS1604に進む。
【0286】
また、ステップS1601において、上面PD出力が飽和していないと判定された場合、処理は、ステップS1603に進む。ステップS1603において、リニアマトリックス部1606は、上面PD出力を読み出させ、その出力から生成された画像データをデモザイク部1605から取得する。ステップS1603の処理が終了すると、処理はステップS1604に進む。
【0287】
ステップS1604において、リニアマトリックス部1606は、他の色が上面か下面のどちらを使っているかを判別する。
【0288】
ステップS1605において、リニアマトリックス部1606は、その判別結果にしたがって、リニアマトリックスを選択する。リニアマトリックスは、前提となる画素の分光特性の組み合わせ次第で最適値が異なるためである。
【0289】
リニアマトリックス部1606は、画像データに、選択したリニアマトリックスをかけて色再現などを向上させ、ガンマ補正を行わせた後、輝度信号と色差信号を生成させ、ステップS1606において、ビデオインタフェース(IF)1609から出力させる。
【0290】
また、上面と下面の感度差を自由に制御したい場合、実施例2に記載したように、光吸収体や配線層による遮光などで入射光を制御しても良いし、電荷蓄積時間を個別制御して光電変換される量を制御しても良い。もしくは、色別の感度差の補正を蓄積時間でおこなってもよい(上面PDに入射する光が短波長である程、下面PDの出力が減るため、これを波長依存のないように蓄積時間で調整する)。
【0291】
この例を図32に示す。図32の例の場合、上面PD1671においては、RGBの各色の蓄積時間は互いに同一(蓄積時間R’=G'=B’)であるが、下面PD1692においては、R',G',B'のそれぞれの蓄積時間が互いに異なる(蓄積時間R’<G'<B’)時間に設定されている。
【0292】
このようにすることで、例えば上面フォトダイオード1671に対して、下面のフォトダイオード1692の感度(光量差/蓄積時間差)を例えば1/16にすることができる。そうすると、上面で飽和に達していても、下面はその16倍の光(OnChipLensに入射する光)を受光することができる。つまり、ダイナミックレンジが16倍に拡大する。
【0293】
信号処理で、読み出し時に上面フォトダイオード1671が飽和に達していれば、下面フォトダイオード1672を用いる選択をする。上面フォトダイオード1671の信号とと下面フォトダイオード1672の信号を組み合わせても色成分や輝度成分が変わらないように、光量差、感度差をゲインやリニアマトリックスを変えて調整するようにしてもよい。
【0294】
なお、光量差の倍率は上記手法により、任意に設定できるものである。なお、HDRを実施する際の撮像装置の主な構成例を図33に示す。
【0295】
図33に示される撮像装置1700は、被写体を撮像し、被写体の画像を電気信号(画像データ)として出力する。図33に示されるように、撮像装置1700は、レンズ系1701、撮像素子1702、A/D変換部1703、クランプ部1704、メモリ部1705、倍率演算部(HDR演算部)1706、上面/下面合成部1707、デモザイク部1708、リニアマトリックス部1709、ガンマ補正部1710、輝度クロマ信号生成部1711、およビデオインタフェース(IF)1712を有する。
【0296】
つまり、撮像装置1600(図27)と比較して、撮像装置1700は、撮像装置1600のレンズ系1601乃至ビデオインタフェース(IF)1609のそれぞれに対応するレンズ系1701乃至クランプ部1704、並びに、デモザイク部1708乃至ビデオインタフェース(IF)1712に加え、メモリ部1705、倍率演算部1706、および上面/下面合成部1707を有する。
【0297】
メモリ部1705は、上面PD出力と下面PD出力をそれぞれ記憶する。倍率演算部1706は、下面PDの出力データに、下面PDと上面PDとの間の感度差分のゲインを乗算する。上面/下面合成部1707は、上面PDの出力データと、ゲインを乗算した下面PDの出力データとを合成する。ここでの処理は、例えば、図31で述べた上面PD出力が飽和していれば下面PD出力を使うなどの選択肢が考えられる。
【0298】
飽和でなくとも、閾値や他色画素に基準(閾値)を設けて選択するようにしても良い。その後、デモザイク部1708が色信号を必要に応じて補完し、リニアマトリックス部1709が、リニアマトリックスを加える。ここで加えるリニアマトリックスは、上面、下面のどちらのPDを各色に対してどのように使用しているかに応じて変化させるのが望ましい(上面と下面で分光特性が異なるため)。つまり、図31で述べたフローでリニアマトリックスを選択する。
【0299】
リニアマトリックス部1709は、全て上面PD(R,G,B)の画素が用いられれば、上述した式(1)のModeAのリニアマトリックスを適用し、例えばGのみ下面PDの画素(G ')が用いられれば、以下の式(3)に示されるようにリニアマトリックスの値をModeCに変化させる。
【0300】
【数3】

・・・(3)
【0301】
[実施例7]
上記でも述べた赤外光などを使って奥行き情報を得るToF(Time of Flight)の手法(例えば特開2012−49547号公報参照)を組み合わせることで、精度が高まる効果も得られる。
【0302】
例えば、図29に示される例において、発光波長を1波長にしても精度を高めることができる。1波長の波長帯のLEDを被写体に向けて照射し、その際の反射する光の位相差を捕らえて距離を計測するのがToFであるが、ToFでは発光強度を時系列に変えて照射し、被写体に当たった光が撮像素子に入射した時の位相状態から距離を判別している。図34に示されるように、受光上下PD(PD1,PD2)でシャッタタイミングを変えることで、時系列でのサンプリング回数を増やすことができ、解像度を維持したまま精度を向上させることが可能となる。また、サンプリング回数が増えれば、動被写体の判別にも有用である。
【0303】
これは、ToFの手法に限らず、他の奥行き判別手法においても精度を向上させることが可能で、例えば米国特許「US 2010/0118123 A1」のように、赤外光を投影するような距離検出システムにおいても適用することができる。つまり、光源の波長種類を増やし、外光の影響を受けにくくし、同一画素に設けられた複数のフォトダイオードを用いて、それらを個別に受光する。この際、一方の波長帯に外光によるノイズ源があっても、他方で測位することができる。また、フォトダイオード毎に転送ゲートや配線層を持つ本技術では個別にシャッタータイミングを変えることができるため、サンプリングタイミングをズラして、1画素で複数タイミングの情報を得ることにより、動被写体にも強くなり、これを解像度を維持したまま実現することができる。
【0304】
[実施例8]
上面フォトダイオードと下面フォトダイオードは、例えば図35Aに示されるように、異なる配線層を有することができるが、駆動のための配線層を共有しても良い。例えば、上面フォトダイオードの駆動の際に、支持基板側の配線層を用いても良い。これは、特開2011−204915号公報などにある方法である。こうすることで、上面フォトダイオードと下面フォトダイオード間の配線層を薄くすることができ、下面フォトダイオードに光学的なロスが少ない状態で光を入射させることが可能となる。
【0305】
配線の接続方法は、例えば図35Bに示されるように、特開2011−204915号公報の方式を用いても良いし、青色カラーフィルタ下の下面フォトダイオードは前述したように感度が期待できないため、この色を接続用電極取り出し部として用いても良い(例えば図35C)。画素領域内で電極を共有するため、チップサイズを小さくすることができる。さらに、例えば図35Dのように、素子分離領域を電極取り出し部として用いても良い。この場合、画素の光路周辺にコンタクトや電極が配置されるため、隣接画素からの混色のバリヤともなり、混色改善に寄与することができる。
【0306】
[実施例9]
図12に示されるCMOSイメージセンサ1000の構造において、カラーフィルタ1026を例えば有機光電変換膜に変更しても良い。例えば、緑色の成分を有機光電変換膜で光電変換して取り出す。有機光電変換膜を抜けた光は、青と赤の成分になる。青と赤は波長帯が離れているため、上面フォトダイオードと下面フォトダイオードで個別に分離しやすくなる。分光が色毎に分離しやすくなることで、高色再現を実現することができる。また、特開2011−29453号公報に記載のようにフォトダイオード横に読み出し電極などを配置しないため、フォトダイオード面積を大きくすることができ、飽和電子数や感度を向上させることができる。さらに、ゲート電極を配置する上でシリコンを彫り込む必要がないため、エッチングによってSi基板にダメージが入ることによる暗電流、白点などの発生を防ぐことができる。
【0307】
以下に、電子機器としての実施例について説明する。
【0308】
[実施例10]
近赤外波長などは医療分野でも用いられ始めており、解析精度の向上などが期待されている波長領域でもある。その一方、前述したように赤外感度の低さなどが弊害となっている。さらに、従来は1画素で1波長の解析であったため、複数波長の情報からヘモグロビンの解析を行うような手法(例えば特許番号2932644号に記載の方法等)においては、複数波長の光を照射するか、複数の近赤外画素を使用する必要があり、撮像素子、装置の微細化の弊害となっていた。
【0309】
本技術を適用することで、図28に示されるような医療機器(ヘルスケア機器、カプセル内視鏡、DNAチップ等)において、単一光で複数波長成分の出力を単一画素で得ることが出来る。つまり、高解像度を維持したまま、波長依存取得を同時に行うことが可能となる。波長依存を取得することで前述したようなヘモグロビンの解析など、ヘルスケア、病理解析に使用することが可能となる。
【0310】
また、単一画素に分子サイズが収まってしまうような分子やDNAの光学特性解析においても、1画素で複数の光学特性を得ることができる本技術は、光学特性をより正確に取得することができる(同一分子を同一画素で複数分光することができる)。
【0311】
[実施例11]
図36には図21で示したフォトダイオード3層構造のCMOSイメージセンサ1400における色配置例を示した。この撮像素子は、図30Bで示したIRカットフィルタ挿入/非挿入が可動なものに組み込むようにしても良い。図36の配列例では、上面PD1731では通常通り、RGBを受光し、中面PD1732および下面PD1733でIR光を受光する設計としている。このような構造のCMOSイメージセンサ1400を図33の撮像装置1700の撮像素子1702に適用することができる。その場合、メモリ部1705は、上面PD1731の出力、中面PD1732の出力、および下面PD1733の出力の各データを記憶する。また、上面/下面合成部1707は、その上面PD1731の出力、中面PD1732の出力、および下面PD1733の出力の各データの合成を行う。また、上面/下面合成部1707は、その合成の為に必要な、他の処理部で実行される処理の制御も行う。このような撮像装置1700(図33)において、例えば、赤外光により奥行き情報を得たい場合、図37の信号処理フロー例に従い処理を行う。
【0312】
処理が開始されると、上面/下面合成部1707は、ステップS1701において、撮像素子1072(CMOSイメージセンサ1400)の上面PD1731のRGBの出力を得て、被写体(被検出対象)がどういった外光下に置かれているかを推定する。
【0313】
ステップS1702において上面/下面合成部1707は、ステップS1701の推定結果を用いて、図示せぬIR光照射部から被写体に向けて照射するIR光を決定する。ここで照射するIR光は、図29のような電子機器1650から被写体に向けて照射されるものである。例えば、外光が強い際はこの強度を上げたり、周辺光源の色温度に応じて図29中の各赤外光の割合を変えたりすることができる。
【0314】
ステップS1703において、撮像素子1702は、ステップS1703において照射された最適なIR光で被写体を撮影し、中面PD1732および下面PD1733でIRを受光する。
【0315】
ステップS1704において、上面/下面合成部1707は、中面PD1732と下面PD1733のそれぞれにおいて受光した光の強度を個別にメモリ部1705から読み出し、それぞれの値が信頼できる値かどうかを判断する(例えば、外光によるノイズが多くないかなどを判定する)。その結果、中面PD1732の出力および下面PD1733の出力の両方が信頼できると判定された場合、処理はステップS1705に進む。
【0316】
ステップS1705において、上面/下面合成部1707は、その信頼できる中面PD1732の出力および下面PD1733の出力を合成する。
【0317】
また、ステップS1704において、中面PD1732の出力および下面PD1733の出力の両方を信頼することは困難であると判定された場合、処理はステップS1706に進む。
【0318】
ステップS1706において、上面/下面合成部1707は、中面PD1732の値は信頼できるか否かを判定する。信頼できると判定された場合、処理はステップS1707に進む。ステップS1707において、上面/下面合成部1707は、メモリ部1705から中面PD1732の画素値のみを読み出し、出力する。
【0319】
さらに、ステップS1706において、中面PD1732の出力を信頼することは困難であると判定された場合、処理はステップS1708に進む。
【0320】
ステップS1708において、上面/下面合成部1707は、下面PD1733の値は信頼できるか否かを判定する。信頼できると判定された場合、処理はステップS1709に進む。ステップS1709において、上面/下面合成部1707は、メモリ部1705から下面PD1733の画素値のみを読み出し、出力する。
【0321】
また、ステップS1708において、下面PD1733の出力を信頼することは困難であると判定された場合、処理はステップS1702に戻る。
【0322】
もちろん、上記手段に限らず合算読み出しなど、多くの使用例が想定される。こういった撮像素子を電子機器に埋め込むことで、奥行き情報取得の精度を上げることが出来る。もちろん、奥行き情報に限らず、色再現やダイナミックレンジなど、前述した効果を得る目的で使用しても良い。
【0323】
使用できる電子機器の例としては、例えば前述した医療機器や、図38のような携帯通信端末(スマートフォン)1800、図39のような白杖1820、図40のようなカメラ1830、図41のようなカメラの設置台1840、図28のようなシステムユニット1860など多くの用途が考えられる。
【0324】
[実施例12]
本技術の撮像素子は、前述したように図38に示されるような携帯通信端末1800に組み込むことができる。例えば、図36の構造を用いて、上面RGBで色や陰などから被写体を判別し(例えば手かどうか)、撮像素子1801の中面、下面のIR受光部で奥行き情報を得る。こうすることで、人体1810(例えば手)を近づけた時は、通話音量(電話使用時)を上げ、人体1810(例えば手)を離した時は、通話音量を下げる、手を振ったときは通話を切るなど、動作に応じて個々の操作内容を組み込むことができる。実施例11で述べたように、外光に応じて適切なIR光を照射することもできるので、精度良く判別が可能となる。
【0325】
[実施例13]
本技術の撮像素子は、特開2010−158472号公報に記載されているように、図39のような白杖1820にも組み込むことができる(撮像装置1821)。撮像装置1821において得られた撮像画像から、色と奥行き情報を個別に判別できることで、足下の物体が何かを瞬時に判別し、杖1820のバイブレーションや音などで危険を伝えることができる。実施例11で述べたように、外光に応じて適切なIR光を照射することもできるので、精度良く判別が可能となる。また、点字ブロック自体が特定の赤外波長で発光していて、それを本技術の撮像素子で受光しても良い。この場合、従来のような凹凸式の点字ブロックもなくすことも可能となる。
【0326】
[実施例14]
本技術の撮像素子は、前述したように図40に示されるようなカメラ1830(電子機器)にも用いることができる。この例のカメラ1830は、被写体に対して正面側に撮像部1831と正面ディスプレイ1832を有している。なお、背面側にもディスプレイが設けられていてもよい。
【0327】
カメラ1830から離れた場所から自分撮りをする際に、正面ディスプレイ1832に映った自分を確認しながら撮影することができる。この際、本技術の撮像素子を適用することで、例えば、ズームイン、ズームアウトを自分自身の動作により実施することができる(これ以外の動作であっても良い)。同様に、例えば図41Aに示されるように、カメラ1830と接続された設置台1840に本技術の撮像素子を組み込んでも良い。この場合も同様に、設置台1840に設けられた撮像素子1841により、被写体の動きが検出され、カメラにズームイン、ズームアウトの命令を出す。また、カメラ1830に指示するだけでなく、被写体の動作に応じて設置台1840の可動部を動かすようにしても良い。例えば、設置台1840の可動部が動くことにより、カメラ1830の水平方向や垂直方向の向きを変えるようにしてもよい。例えば、図41Bに示されるように、設置台1840の可動部が動くことにより、カメラ1830が回転するようにしてもい。また、例えば、図41Cに示されるように、設置台1840の可動部が動くことにより、カメラ1830が上を向いたり下を向いたりするようにしてもよい。
【0328】
これらを実施する場合の信号処理フロー例を図42に示した。図40の例を用いて説明する。
【0329】
処理が開始されると、ステップS1801において撮像部1831は、RGBデータを取得する。ステップS1802において撮像部1831は、撮像領域内に人がいるかどうかを判別する。人がいる場合、処理は、ステップS1803に進む。
【0330】
ステップS1803において、撮像部1831は、IRデータを取得するように命令(同時にIR発光させても良い)する。ステップS1804において、撮像部1831は、奥行き情報を算出する。
【0331】
ステップS1805において、撮像部1831は、人の手が垂直に上げられているか、否かを判定する。手が垂直に上げられていると判定された場合、処理は、ステップS1806に進む。
【0332】
ステップS1806において、カメラ1830は、手が垂直に上げられたことに対応する処理である操作1を実行する。
【0333】
また、手が垂直に上げられていないと判定された場合、処理は、ステップS1807に進む。
【0334】
ステップS1807において、撮像部1831は、手の方が顔より前にあるか否かを判定する。手の方が顔より前に有ると判定された場合、処理はステップS1808に進む。
【0335】
ステップS1808において、カメラ1830は、手の方が顔より前にあることに対応する処理である操作2を実行する。
【0336】
さらに、手の方が顔より前に無いと判定された場合、処理は、ステップS1809に進む。
【0337】
ステップS1809において、カメラ1830は、手の方が顔より前にないことに対応する処理である操作3を実行する。
【0338】
この操作1乃至操作3は、例えば、ズーム動作やシャッタの駆動などである。
【0339】
そして、図30の例の場合、上記操作の中でシャッタが切られる際、IRカットフィルタ1683が挿入される。そして、本技術の最上面のフォトダイオードは裏面照射と同等の高い感度特性が得られるため、高画質の静止画、動画映像を得ることが可能となる。もちろん、前述したようにHDRや高色再現、光源推定精度向上などの用途で用いても良い。また、カメラは図43に示されるような3板式のものなど複数板のものであっても良い。つまり、図43に示される撮像装置は、本技術を適用した撮像素子1851乃至撮像素子1853を有する。この場合、前段でR,G,Bに分光した後に撮像素子に入射させるため、撮像素子1851乃至撮像素子1853にはカラーフィルタが無くても良い。上記同様、HDRや高色再現、光源推定精度向上などの用途で用いることができる。
【0340】
[実施例15]
本技術の撮像素子は、前述したように図44のような特表2011−507129号公報に記載のゲーム機器であるシステムユニット1860(もしくはテレビ受像機1862)にも用いることができる。このシステムユニット1860は、例えば、カメラ1861により得られた画像により、被写体の物体、形状、動作の判別を行うことで、特定のアクションを指示として受け付け、その指示に応じた処理を行い、その処理結果に応じた映像をディスプレイ(テレビ受像機1862など)に表示する。
【0341】
本技術の撮像素子を用いることで、上述したように奥行き情報をより精度良く得ることができ、図34を使って説明したように上下のPDでシャッタータイミングを変えることで、データ取得タイミングが実質2倍にすることができるため、動被写体にも強いものとなり、激しい動作を伴うようなゲームに対しても好適である。もちろん、同じタイミングで読み出し、合算値を出力として用いても良い。また、図37のフローで説明したように、被写体のおかれている光源環境を推定した上で、IR光を決定し、さらに取得したデータから、上面(もしくは中面)、下面のどのPDの値を使うかを決めても良い。これらにより、精度の高い検出が可能となる。
【0342】
なお、この電子機器のブロック図例を図45に示す。
【0343】
図45は、本技術の一実施形態による、ユーザ定義コントローラを作成するために動的3次元オブジェクトマッピングを使用可能なコンピュータシステムである、ソニー(登録商標)プレイステーション(登録商標)3エンターテイメントデバイスの全体的なシステムアーキテクチャを模式的に示す。システムユニット1860は、例えばソニー(登録商標)プレイステーション(登録商標)3エンターテイメントデバイス等のゲーム機器本体である。システムユニット1860に接続可能なさまざまな周辺機器を備える。システムユニット1860は、Cellプロセッサ1901、Rambus(登録商標)ダイナミックランダムアクセスメモリ(XDRAM)ユニット1902、専用のビデオランダムアクセスメモリ(VRAM)ユニット1908を有するReality Synthesizerグラフィックユニット(RSX)1903、およびI/Oブリッジ1904を備える。また、システムユニット1860は、I/Oブリッジ1904を介してアクセス可能な、ディスク1941および着脱可能なスロットインハードディスクドライブ(HDD)1905から読み出すためのブルーレイ(登録商標)ディスクBD−ROM(登録商標)光ディスクリーダ1907も備える。任意選択で、システムユニット1860は、同様にI/Oブリッジ1904を介してアクセス可能な、コンパクトフラッシュ(登録商標)メモリカード、メモリースティック(登録商標)メモリカードなどを読み出すためのメモリカードリーダ1906も備える。
【0344】
また、I/Oブリッジ1904は、6つのユニバーサルシリアルバス(USB)2.0ポート1912、ギガビットイーサネット(登録商標)ポート1911、IEEE 802.11b/g無線ネットワーク(Wi−Fi)ポート1910、および最大7つのブルートゥース接続に対応可能なブルートゥース(登録商標)無線リンクポート1909にも接続している。
【0345】
動作時に、I/Oブリッジ1904は、1つ以上のゲームコントローラ1951からのデータを含む、全ての無線、USB、およびイーサネット(登録商標)のデータを処理する。例えば、ユーザがゲームをプレイ中に、I/Oブリッジ1904はブルートゥースリンクを介してゲームコントローラ1951からデータを受信して、これをCellプロセッサ1901に転送し、Cellプロセッサ1901が適宜ゲームの現在の状態を更新する。
【0346】
また、無線、USB、およびイーサネット(登録商標)の各ポートを介して、ゲームコントローラ1951のほかに、他の周辺機器1961も接続することが可能となる。このような周辺機器1961には、例えば、リモコン1952、キーボード1953、マウス1954、ソニープレイステーションポータブル(登録商標)エンターテイメントデバイスなどのポータブルエンターテイメントデバイス1955、EyeToy(登録商標)ビデオカメラ1956などのビデオカメラ(本技術の撮像素子適用部)(例えば、図44のカメラ1861)、マイクロフォンヘッドセット1957などがある。このため、これらの周辺機器は、原則としてシステムユニット1860に無線で接続されうる。例えば、ポータブルエンターテイメントデバイス1955はWi−Fiアドホック接続を介してし、マイクロフォンヘッドセット1957はブルートゥースリンクを介して通信しうる。
【0347】
これらのインタフェースを提供することにより、プレイステーション3デバイスは、デジタルビデオレコーダ(DVR)、セットトップボックス、デジタルカメラ、ポータブルメディアプレーヤ、VoIP電話、携帯電話、プリンタ、およびスキャナなどの他の周辺機器と場合によっては互換となりうる。
【0348】
更に、USBポート1912を介して旧式メモリカードリーダ1931をシステムユニットに接続することができ、プレイステーション(登録商標)デバイスまたはプレイステーション2(登録商標)で用いられていたタイプのメモリカードの読み出しが可能となる。
【0349】
本実施形態では、ゲームコントローラ1951は、ブルートゥースリンクを介してシステムユニット1860と無線通信するように動作可能である。しかし、その代わりに、ゲームコントローラ1951が、USBポートに接続されてもよく、これにより、ゲームコントローラ1951のバッテリに充電するための電力も供給する。ゲームコントローラは、1つ以上のアナログジョイスティックおよび従来の制御ボタンを有するほか、各軸の並進運動および回転に対応する6自由度の移動を感知する。したがって、従来のボタンまたはジョイスティックコマンドのほかに、またはこれらの代わりに、ゲームコントローラのユーザが行ったジェスチャおよび移動が、ゲームへの入力として変換されうる。任意選択で、プレイステーションポータブルデバイスなどの他の無線対応の周辺機器をコントローラとして使用することができる。プレイステーションポータブルデバイスの場合、追加のゲーム情報または制御情報(例えば制御命令またはライブの数)が、当該デバイスの画面に提示されうる。ほかの代替的または補助的な制御装置が使用されてもよく、これには、ダンスマット(図示せず)、ライトガン(図示せず)、ハンドルおよびペダル(図示せず)、あるいは、即答クイズゲームのための1つまたは複数の大型のボタン(これも図示なし)などの特注品のコントローラなどがある。
【0350】
また、リモコン1952も、ブルートゥースリンクを介してシステムユニット1860と無線通信するように動作可能である。リモコン1952は、ブルーレイディスクBDROMリーダ1907の操作、およびディスクの内容の閲覧のために適した制御を備える。
【0351】
ブルーレイディスクBD−ROMリーダ1907は、従来の記録済みCD、記録可能CD、およびいわゆるスーパーオーディオCDのほか、プレイステーションデバイスおよびプレイステーション2デバイスと互換のCD−ROMを読み出すように動作可能である。また、リーダ1907は、従来の記録済みDVDおよび記録可能DVDのほか、プレイステーション2デバイスおよびプレイステーション3デバイスと互換のDVD−ROMを読み出すように動作可能である。更に、リーダ1907は、従来の記録済みブルーレイディスクおよび記録可能ブルーレイディスクのほか、プレイステーション3デバイスと互換のBD−ROMを読み出すように動作可能である。
【0352】
システムユニット1860は、Reality Synthesizerグラフィックユニット1903を介して、プレイステーション3デバイスによって生成またはデコードされた音声およびビデオを、音声コネクタおよびビデオコネクタ経由で、ディスプレイ1921および1つ以上のスピーカ1922を備えた表示および音声出力装置1862(モニタまたはテレビ受像機など)に提供するように動作可能である。音声コネクタは、従来のアナログ出力およびデジタル出力を備える一方、ビデオコネクタは、コンポーネントビデオ、S−ビデオ、コンポジットビデオ、および1つ以上の高品位マルチメディアインタフェース(HDMI)の出力などを種々備えうる。したがって、ビデオ出力は、PALまたはNTSC、あるいは720p、1080iまたは1080pの高解像度などのフォーマットであってもよい。
【0353】
音声処理(生成、デコードなど)はCellプロセッサ1901によって実行される。プレイステーション3デバイスのオペレーティングシステムは、ドルビー(登録商標)5.1サラウンドサウンド、ドルビー(登録商標)シアターサラウンド(DTS)、およびブルーレイディスクからの7.1サラウンドサウンドのデコードに対応している。
【0354】
本実施形態では、ビデオカメラ1956は、1つの撮像素子(本技術)、LEDインジケータ、およびハードウェアベースのリアルタイムデータ圧縮およびエンコード装置を備え、圧縮ビデオデータが、システムユニット1860によるデコードのために、イントラ画像ベースのMPEG(motion picture expert group)標準などの適切なフォーマットで送信されるようになる。カメラのLEDインジケータは、例えば不利な照明条件を示す適切な制御データをシステムユニット1860から受け取ると、発光するように配置されている。ビデオカメラ1956の実施形態は、USB、ブルートゥースまたはWi−Fiの通信ポートを介して、システムユニット1860にさまざまな方法で接続しうる。
【0355】
ビデオカメラの実施形態は、1つ以上の関連するマイクロフォンを備えており、音声データを送信することができる。ビデオカメラの実施形態では、撮像素子(本技術)は、高解像度のビデオキャプチャに適した分解能を備えうる。使用時に、ビデオカメラによってキャプチャされた画像が、例えば、ゲーム内に取り込まれるか、またはゲームの制御入力として解釈されうる。
【0356】
このブロック図では表示デバイス1921とシステムユニット1860などを個別のデバイスと表記しているが、これらの機能の一部、もしくは全てが表示デバイス内に組み込まれていても良く、その時、大きさも持ち運び可能なサイズの携帯端末であっても良い。
【0357】
以上に説明したような本技術を用いることで、1画素で複数の分光を持つフォトダイオードが得られ、出力として複数の色成分を持つ出力を得ることができる。また、積層構造を2層化だけでなく3層以上にすることもできるため、赤外光の受光に対しても効果が大きい。さらに、裏面照射型イメージセンサのプロセスをベースとしているため、オンチップレンズ側のフォトダイオード(上面)は高感度であり、なおかつ配線層だけの膜厚だけしかフォトダイオードが離れていないため、下面フォトダイオードも高感度にすることが可能である。
【0358】
また、フォトダイオード間に任意の物質を形成することも容易であり、例えば周辺配線部よりも屈折率の高い物質を形成すれば、導波路としての役割を果たし、下面フォトダイオードの高感度化を実現できる。その一方で波長成分や入射光量を制限したい場合は、特定波長、もしくは全ての波長を吸収、反射する膜を形成すれば良い。こうすることで、下面フォトダイオードの分光特性を制御することが可能となる。もちろん、フォトダイオード位置を調整することで分光形状を制御しても良い。こういった制御性の向上は、下記3に述べる個別読み出しの際に活用できる。また、上面と下面を加算して高感度モードとして用いることも可能で、その切り替えにより、1つの電子機器で多様な操作が可能になる。
【0359】
さらに、上面と下面フォトダイオード、及びその配線層やトランジスタは、この2つが接合されるまで個別に作製できるため、各々に最適化されたプロセスを適用することができるようになる。また、個別駆動も容易であり、上面と下面のフォトダイオードから個別に信号を取り出すことができるし、個別にシャッタータイミングや、電荷蓄積時間を変化させることも可能である。これにより、色再現性の向上、HDR、光源推定精度向上、奥行き情報取得精度向上、ヘモグロビンなどの解析によるヘルスケア、病理診断などが、それぞれ高解像度のまま実現できる。こういった技術は、カメラモジュール、カメラ、スマートフォン向けカメラ、内視鏡、カプセル内視鏡などの撮像素子を搭載する電子機器、医療機器に組み込むことで、それぞれの機器の小型化、もしくは高精度化、もしくはその両方が実現できる。
【0360】
また、これまでに述べた効果に加え、これまでの上面PDだけで信号を出す場合でもメリットがある。図46Aに示したように、従来の裏面照射型イメージセンサでは、フォトダイオードを透過した光が配線層にあたり、その光が反射することで、隣接するフォトダイオードに混色することがあった。本技術を適用することで、図46Bに示されるように、光をより下層まで導くことができ、上面のフォトダイオードに反射した光が入射するのを低減することが可能となる。つまり、下面フォトダイオードを駆動させない場合でも、こういった二次的な効果が得られる。
【0361】
以上に説明した各装置は、それぞれ、上述した以外の構成を含むようにしてももちろんよい。また、1つの装置としてだけでなく、複数の装置よりなるシステムとして構成されるようにしてもよい。
【0362】
上述した一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0363】
この記録媒体は、例えば、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを配信するために配布される、プログラムが記録されているリムーバブルメディアにより構成される。このリムーバブルメディアには、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)や光ディスク(CD-ROMやDVDを含む)が含まれる。さらに、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)や半導体メモリ等も含まれる。また、上述した記録媒体は、このようなリムーバブルメディアだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに配信される、プログラムが記録されている制御部のROMや、記憶部に含まれるハードディスクなどにより構成されるようにしてもよい。
【0364】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0365】
また、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0366】
また、本明細書において、システムとは、複数のデバイス(装置)により構成される装置全体を表すものである。
【0367】
また、以上において、1つの装置(または処理部)として説明した構成が、複数の装置(または処理部)として構成されるようにしてもよい。逆に、以上において複数の装置(または処理部)として説明した構成が、まとめて1つの装置(または処理部)として構成されるようにしてもよい。また、各装置(または各処理部)の構成に上述した以外の構成が付加されるようにしてももちろんよい。さらに、システム全体としての構成や動作が実質的に同じであれば、ある装置(または処理部)の構成の一部が他の装置(または他の処理部)の構成に含まれるようにしてもよい。つまり、本開示の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0368】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1) 入射光を光電変換する光電変換素子が形成される光電変換素子層と、
前記光電変換素子層の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、
前記光電変換素子層および前記配線層に積層され、他の光電変換素子を有する支持基板と
を備える撮像素子。
(2) 前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、入射光の互いに異なる波長域成分を光電変換する
前記(1)に記載の撮像素子。
(3) 前記光電変換素子層の光電変換素子が可視光の波長域成分を光電変換し、前記支持基板の光電変換素子が近赤外光の波長域成分を光電変換する
前記(2)に記載の撮像素子。
(4) 前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、厚さが互いに異なる
前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の撮像素子。
(5) 前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、入射光を光電変換して蓄積した電荷を、互いに同一のタイミングで出力する
前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の撮像素子。
(6) 前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、入射光を光電変換して蓄積した電荷を、互いに異なるタイミングで出力する
前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の撮像素子。
(7) 前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、入射光を光電変換して蓄積した電荷を出力することにより、前記光電変換素子層において得られる画像と前記支持基板において得られる画像とが合成された合成画像を出力する
前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の撮像素子。
(8) 前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、入射光を光電変換して電荷を蓄積する電荷蓄積時間が、互いに異なる
前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の撮像素子。
(9) 前記配線層の前記配線は、前記配線層の一方の側から他方の側に透過する入射光の光路が確保されるように配置される
前記(1)乃至(8)のいずれかに記載の撮像素子。
(10) 前記配線層の前記光路に、周囲よりも光の屈折率の大きな素材よりなる導波路が形成される
前記(9)に記載の撮像素子。
(11) (前記入射光が入射される側の前記撮像機能を有する構成の)前記配線層の前記光路に、光吸収体が形成される
前記(9)または(10)に記載の撮像素子。
(12) 前記支持基板は、前記支持基板の光電変換素子の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記支持基板の光電変換素子から電荷を読み出すための配線をさらに有し、
前記配線層の配線の外部端子と、前記支持基板の配線の外部端子とが貫通ビアにより互いに接続される
前記(1)乃至(11)のいずれかに記載の撮像素子。
(13) 前記光電変換素子層の光電変換素子から電荷が読み出され、前記光電変換素子の光電変換素子の電荷が所定の閾値を超えた場合、前記支持基板の光電変換素子から電荷が読み出される
前記(1)乃至(12)のいずれかに記載の撮像素子。
(14) 前記光電変換素子が有機光電変換膜を有する
前記(1)乃至(13)のいずれかに記載の撮像素子。
(15) 白色カラーフィルタをさらに備え、
前記光電変換素子層の光電変換素子において、前記白色カラーフィルタを透過した前記入射光の白色成分を光電変換し、前記支持基板の光電変換素子において、前記入射光の他の色成分を光電変換する
前記(1)乃至(14)のいずれかに記載の撮像素子。
(16) 前記光電変換素子において光電変換された赤外光を用いて、対象物までの奥行き情報を求める
前記(1)乃至(15)のいずれかに記載の撮像素子。
(17) 前記光電変換素子層の光電変換素子および前記支持基板の光電変換素子において光電変換された前記入射光のデータを、個別に出力するか、合算して出力するかを制御する
前記(1)乃至(16)のいずれかに記載の撮像素子。
(18) 前記支持基板は、
前記支持基板の光電変換素子が形成される光電変換素子層と、
前記支持基板の光電変換素子層の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記支持基板の光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、
前記支持基板の光電変換素子層および前記支持基板の配線層に積層され、さらに他の光電変換素子を有する支持基板と
を有する前記(1)乃至(17)のいずれかに記載の撮像素子。
(19) 入射光を光電変換する光電変換素子が形成される光電変換素子層と、
前記光電変換素子層の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、
前記光電変換素子層および前記配線層に積層され、他の光電変換素子を有する支持基板と
を備え、被写体を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子の光電変換素子において得られた信号を用いて情報処理を行う情報処理部と
を備える電子機器。
(20) 入射光を光電変換する光電変換素子が形成される光電変換素子層と、
前記光電変換素子層の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、
前記光電変換素子層および前記配線層に積層され、他の光電変換素子を有する支持基板と
を備える撮像素子と、
前記撮像素子の光電変換素子において得られた複数の波長帯の信号を用いて、解析を行う信号処理部と
を備える情報処理装置。
【符号の説明】
【0369】
100 CMOSイメージセンサ, 111 集光レンズ, 112 カラーフィルタ, 113 絶縁膜, 114 半導体基板, 115 フォトダイオード, 116 配線層, 117 配線, 118 配線層間膜, 119 パッシベーション膜, 120 配線層, 121 配線, 122 配線層間膜, 123 半導体基板, 124 フォトダイオード, 125 支持基板, 131 TSV, 200 製造装置, 201 制御部, 202 裏面照射型イメージセンサ製造部, 203 表面照射型イメージセンサ製造部, 204 組み立て部, 251 導波路, 351 フォトダイオード, 360 半導体基板, 361 フォトダイオード, 400 CMOSイメージセンサ, 411 半導体基板, 412 フォトダイオード, 413 配線層, 600 撮像装置, CMOSイメージセンサ, 1002 支持基板, 1021 フォトダイオード, 1031, フォトダイオード, 1200 製造装置, 1300 製造装置, 1400 CMOSイメージセンサ, 1600 撮像装置, 1700 撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を光電変換する光電変換素子が形成される光電変換素子層と、
前記光電変換素子層の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、
前記光電変換素子層および前記配線層に積層され、他の光電変換素子を有する支持基板と
を備える撮像素子。
【請求項2】
前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、入射光の互いに異なる波長域成分を光電変換する
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記光電変換素子層の光電変換素子が可視光の波長域成分を光電変換し、前記支持基板の光電変換素子が近赤外光の波長域成分を光電変換する
請求項2に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、厚さが互いに異なる
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、入射光を光電変換して蓄積した電荷を、互いに同一のタイミングで出力する
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、入射光を光電変換して蓄積した電荷を、互いに異なるタイミングで出力する
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項7】
前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、入射光を光電変換して蓄積した電荷を出力することにより、前記光電変換素子層において得られる画像と前記支持基板において得られる画像とが合成された合成画像を出力する
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項8】
前記光電変換素子層の光電変換素子、および、前記支持基板の光電変換素子は、入射光を光電変換して電荷を蓄積する電荷蓄積時間が、互いに異なる
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項9】
前記配線層の前記配線は、前記配線層の一方の側から他方の側に透過する入射光の光路が確保されるように配置される
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項10】
前記配線層の前記光路に、周囲よりも光の屈折率の大きな素材よりなる導波路が形成される
請求項9に記載の撮像素子。
【請求項11】
前記配線層の前記光路に、光吸収体が形成される
請求項9に記載の撮像素子。
【請求項12】
前記支持基板は、前記支持基板の光電変換素子の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記支持基板の光電変換素子から電荷を読み出すための配線をさらに有し、
前記配線層の配線の外部端子と、前記支持基板の配線の外部端子とが貫通ビアにより互いに接続される
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項13】
前記光電変換素子層の光電変換素子から電荷が読み出され、前記光電変換素子の光電変換素子の電荷が所定の閾値を超えた場合、前記支持基板の光電変換素子から電荷が読み出される
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項14】
前記光電変換素子が有機光電変換膜を有する
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項15】
白色カラーフィルタをさらに備え、
前記光電変換素子層の光電変換素子において、前記白色カラーフィルタを透過した前記入射光の白色成分を光電変換し、前記支持基板の光電変換素子において、前記入射光の他の色成分を光電変換する
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項16】
前記光電変換素子において光電変換された赤外光を用いて、対象物までの奥行き情報を求める
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項17】
前記光電変換素子層の光電変換素子および前記支持基板の光電変換素子において光電変換された前記入射光のデータを、個別に出力するか、合算して出力するかを制御する
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項18】
前記支持基板は、
前記支持基板の光電変換素子が形成される光電変換素子層と、
前記支持基板の光電変換素子層の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記支持基板の光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、
前記支持基板の光電変換素子層および前記支持基板の配線層に積層され、さらに他の光電変換素子を有する支持基板と
を有する請求項1に記載の撮像素子。
【請求項19】
入射光を光電変換する光電変換素子が形成される光電変換素子層と、
前記光電変換素子層の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、
前記光電変換素子層および前記配線層に積層され、他の光電変換素子を有する支持基板と
を備え、被写体を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子の光電変換素子において得られた信号を用いて情報処理を行う情報処理部と
を備える電子機器。
【請求項20】
入射光を光電変換する光電変換素子が形成される光電変換素子層と、
前記光電変換素子層の、前記入射光の入射面とは反対の側に形成される、前記光電変換素子から電荷を読み出すための配線が形成される配線層と、
前記光電変換素子層および前記配線層に積層され、他の光電変換素子を有する支持基板と
を備える撮像素子と、
前記撮像素子の光電変換素子において得られた複数の波長帯の信号を用いて、解析を行う信号処理部と
を備える情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2013−70030(P2013−70030A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−163678(P2012−163678)
【出願日】平成24年7月24日(2012.7.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.HDMI
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】