説明

撮像素子の製造方法、及び、撮像素子

【課題】
単板式の積層型の撮像素子に含まれる有機光電変換膜の劣化を抑制することにより、量子効率の改善を図った撮像素子の製造方法、及び、撮像素子を提供することを課題とする。
【解決手段】
撮像素子の製造方法は、基板の上に第1波長の光に感度を有する第1受光部を形成する工程と、前記第1受光部の上に紫外線を吸収する第1紫外線吸収部を形成する工程と、前記第1紫外線吸収部の上に第2波長の光に感度を有する第2受光部を形成する工程と、前記第2受光部の上に紫外線を吸収する第2紫外線吸収部を形成する工程と、前記第2紫外線吸収部の上に第3波長の光に感度を有する第3受光部を形成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を電気信号に変換する撮像素子の製造方法、及び、撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高解像度と高感度が要求される放送用TVカメラでは、レンズを通してカメラに入射された光を色分解プリズムで青・緑・赤の光の3原色に分けた後、3枚の撮像素子で受光する、3板カラー撮像方式が用いられている。
【0003】
しかしながら、色分解プリズムと3枚の撮像素子を含むためにカメラのサイズが大きくなり、レンズを含めたカメラ全体の小型軽量化が困難となる。
【0004】
撮像素子の小型軽量化を実現するためには、色分解プリズムが必要なく、撮像素子が1枚で済む単板式の撮像素子が望まれる。
【0005】
小型軽量化を実現した撮像素子として、1枚の撮像素子の画素上に3色、もしくは4色の微小なカラーフィルタをモザイク状に配置した単板式のカラー撮像素子があり、家庭用のビデオカメラやデジタルカメラでは、この単板式が主流になっている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
単板式の撮像素子における代表的な色配列としては、赤、緑、青の色フィルターを用いたベイヤー配列がある。しかし、3板式の撮像素子と比較すると、赤、緑、青のいずれか1色のみで1画素を形成しているため解像度が悪く、加えて所望の色以外の入射光はカラーフィルタに吸収されてしまうため、光の利用効率も低い。
【0007】
ベイヤー配列等で問題となる低い解像度は、光の進入方向に3層のフォトダイオードを積層した光電変換部を形成することで改善することができる(例えば、特許文献1参照)。これは、シリコン基板内部への光の進入深さが波長ごとに異なることを利用したものである。すなわち、光照射面から最も浅い位置にあるシリコンフォトダイオードで青色を検知し、中間のシリコンフォトダイオードで緑色を検知し、最も深い位置にあるシリコンフォトダイオードで赤色を検知する。
【0008】
しかしながら、このように受光部にシリコンフォトダイオードを用いた構成では、青色検知用のフォトダイオードにおいても緑色、赤色を一定の割合で吸収しているため、色分解特性が不十分となる。
【0009】
さらに、信号読み出し部が受光面と同一平面状に形成されるため、受光面に対する受光部の比率(開口率)が100%に至らず、光の利用効率も十分ではない。
【0010】
以上の課題を解決すべく、波長選択性を有する光電変換膜を積層することにより、すなわち、光の3原色のうち青のみに光感度を有する光電変換膜と、緑のみに光感度を有する光電変換膜と、赤のみに光感度を有する光電変換膜を積層することで、光の利用効率が高く高解像度な単板式の積層型の撮像素子を構築することが提案されている(例えば、特許文献2、3、4参照)。
【0011】
例えば、有機材料は特定の波長域のみを吸収するといった特徴を有するものが多く、青、緑、赤の3原色それぞれに吸収を持つように分子設計を行なうことにより、それぞれの材料で構成される膜を積層することで単板式の積層型の撮像素子を構築することができる。この方式を用いると、原理的に3板式の撮像素子と同等の色分解特性及び光の利用効率が得られる。
【0012】
単板式の積層型の撮像素子は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)で構成される信号読み出し部と、有機光電変換膜で構成される光電変換層とを交互に積み重ねた構造を有するが、有機光電変換膜は耐熱性が低いため、TFTとしては、低温(特に室温)で形成可能な半導体層(具体的には有機半導体層や酸化物を含む半導体層)を備えるTFTを用いている。
【0013】
図1は、従来の積層型の撮像素子の模式的に示す図である。図1に示すように、従来の撮像素子は、ガラス基板等で構成される基板1上に、受光部4、層間絶縁膜2、受光部5、層間絶縁膜3、受光部6が順に積層された構造を有する。
【0014】
受光部4、受光部5、及び受光部6は、それぞれ、信号読み出し部、有機光電変換膜、及び有機光電変換膜に電圧を印加する対向電極を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「イメージセンサの基礎と応用」、木内雄二著、日刊工業新聞社 1991年12月25日出版、p.145
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5965875明細書
【特許文献2】特開2002−217474号公報
【特許文献3】特開2005−051115号公報
【特許文献4】特開2009−071057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
TFTで構成される信号読み出し部の製造工程は、金属製の複数のマスクを利用し、TFTの回路を形成するために必要な所望の部分への成膜を、マスクを交換しながら行うマスク成膜法や、フォトレジスト膜を用いたフォトリソグラフィー法等を用いることができる。これらの中でも、現在の撮像素子では画素サイズの微細化が進んでいることから、微細加工が容易なフォトリソグラフィー法を用いる必要がある。
【0018】
フォトリソグラフィー法は、一般的に、(1)金属薄膜形成、(2)フォトレジスト膜の塗布とプリベーク、(3)露光、(4)現像、(5)ポストベーク、(6)エッチング、(7)レジスト除去、の(1)〜(7)の製造工程により、種々の金属を微細加工する。
【0019】
フォトリソグラフィー法の露光過程では、フォトマスクを通してフォトレジスト膜に光を照射することで、部分的にフォトレジスト膜を感光させるが、感光パターンが微細になるほど短波長の光を使用する必要があるため、水銀灯(波長365nmのi線)やエキシマレーザー(波長248nm、193nm)等の紫外線を用いる。
【0020】
ところで、有機光電変換膜は紫外線の吸収により化学変化を起こし、劣化することが知られている。露光の際にはフォトレジスト膜を完全に感光させる必要があるため、出力の大きい紫外線を照射する。
【0021】
このとき、フォトレジスト膜で吸収しきれなかった紫外線は、フォトレジスト膜を透過し、積層型における下層の受光部の有機光電変換膜に入射するため、単板式の積層型の撮像素子の作製過程において、有機光電変換膜を劣化させてしまうという問題があった。
【0022】
そこで、本発明は、単板式の積層型の撮像素子に含まれる有機光電変換膜の劣化を抑制することにより、量子効率の改善を図った撮像素子の製造方法、及び、撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一局面の撮像素子の製造方法は、基板の上に第1波長の光に感度を有する第1受光部を形成する工程と、前記第1受光部の上に紫外線を吸収する第1紫外線吸収部を形成する工程と、前記第1紫外線吸収部の上に第2波長の光に感度を有する第2受光部を形成する工程と、前記第2受光部の上に紫外線を吸収する第2紫外線吸収部を形成する工程と、前記第2紫外線吸収部の上に第3波長の光に感度を有する第3受光部を形成する工程とを含む。
【0024】
また、前記第1受光部、前記第2受光部、及び前記第3受光部を形成する工程は、それぞれ、光電変換によって生成される電気信号を読み出すための信号読み出し部を、フォトリソグラフィー法を用いて形成する工程と、前記信号読み出し部の上に、光を電気信号に変換する光電変換部を形成する工程とを有してもよい。
【0025】
本発明の他の局面の撮像素子の製造方法は、基板の上に第1波長の光に感度を有する第1受光部を形成する工程、前記第1受光部の上に紫外線を吸収する紫外線吸収部を形成する工程、及び、前記紫外線吸収部の上に第2波長及び第3波長の光に感度を有する第2受光部を形成する工程、又は、基板の上に第1波長及び第2波長の光に感度を有する第1受光部を形成する工程、記第1受光部の上に紫外線を吸収する紫外線吸収部を形成する工程、及び、前記紫外線吸収部の上に第3波長の光に感度を有する第2受光部を形成する工程、を含む。
【0026】
また、前記第2受光部を形成する工程は、光電変換によって生成される電気信号を読み出すための信号読み出し部を、フォトリソグラフィー法を用いて形成する工程と、前記信号読み出し部の上に、光を電気信号に変換する光電変換部を形成する工程とを有してもよい。
【0027】
本発明の一局面の撮像素子は、基板の上に形成され、第1波長の光に感度を有する第1受光部と、前記第1受光部の上に形成され、紫外線を吸収する第1紫外線吸収部と、前記第1紫外線吸収部の上に形成され、第2波長の光に感度を有する第2受光部と、前記第2受光部の上に形成され、紫外線を吸収する第2紫外線吸収部と、前記第2紫外線吸収部の上に形成され、第3波長の光に感度を有する第3受光部とを含む。
【0028】
また、前記第1受光部、前記第2受光部、及び前記第3受光部は、それぞれ、光を電気信号に変換する光電変換部と、フォトリソグラフィー法を用いて形成され、前記光電変換部における光電変換によって生成される電気信号を読み出すための信号読み出し部とを有してもよい。
【0029】
また、基板の上に形成され、第1波長の光に感度を有する第1受光部、前記第1受光部の上に形成され、紫外線を吸収する紫外線吸収部、及び、前記紫外線吸収部の上に形成され、第2波長及び第3波長の光に感度を有する第2受光部、又は、基板の上に形成され、第1波長及び第2波長の光に感度を有する第1受光部、前記第1受光部の上に形成され、紫外線を吸収する紫外線吸収部、及び、前記紫外線吸収部の上に形成され、第3波長の光に感度を有する第2受光部、を含む。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、単板式の積層型の撮像素子に含まれる有機光電変換膜の劣化を抑制した撮像素子の製造方法、及び、撮像素子を提供できるという特有の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来の積層型の撮像素子の模式的に示す図である。
【図2】実施の形態1の撮像素子の断面構造を示す図である。
【図3】実施の形態1の撮像素子10の受光部4の1画素に対応する領域の断面構造を示す図である。
【図4】実施の形態1の撮像素子10の信号読み出し部11における画素電極46の配列と駆動回路を示す図である。
【図5】実施の形態1の撮像素子10の層間絶縁膜2の表面を平坦化する工程を示す図である。
【図6】実施の形態2の撮像素子20の断面構造を示す図である。
【図7】実施の形態2の撮像素子20における受光部4Aの光電変換部12Aにおける有機材料膜の配置と、受光部5の光電変換部22における有機材料膜の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の撮像素子の製造方法、及び、撮像素子を適用した実施の形態について説明する。
【0033】
[実施の形態1]
図2は、実施の形態1の撮像素子の断面構造を示す図である。
【0034】
撮像素子10は、基板1、受光部4、紫外線吸収部14、層間絶縁膜2、受光部5、紫外線吸収部24、層間絶縁膜3、及び受光部6を含む。
【0035】
受光部4、紫外線吸収部14、層間絶縁膜2、受光部5、紫外線吸収部24、層間絶縁膜3、及び受光部6は、基板1の上にこの順で積層されている。受光部4と受光部5との間には、紫外光吸収部14と層間絶縁膜2が形成され、受光部5と受光部6との間には紫外光吸収部24と層間絶縁膜3が形成されている。
【0036】
受光部4は、第1受光部の一例であり、信号読み出し部11、光電変換部12、及び対向電極13を含む。受光部5は、第2受光部の一例であり、信号読み出し部21、光電変換部22、及び対向電極23を含む。受光部6は、第3受光部の一例であり、信号読み出し部31、光電変換部32、及び対向電極33を含む。
【0037】
基板1は、ガラスに代表される透明性基板を用いることが好適である。図1には対向電極33側から(図中上側から)光(光像)を照射する場合を示すが、これとは逆に光(光像)を基板1側から照射する場合は、透明性基板であることが必須であり、ガラス基板以外であれば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート等の樹脂製の透明基板を用いてもよい。
【0038】
また、図1のように、基板1とは反対側にある対向電極33側から光(光像)を照射する場合には、基板1は必ずしも透明性基板である必要はなく、シリコン等の金属基板や半導体基板でもよい。基板1の厚さは、一例として、0.1mmから1mm程度が良い。
【0039】
受光部4は、上述のように、第1受光部の一例であり、信号読み出し部11、光電変換部12、及び対向電極13を含む。ここで、受光部4の具体的な構成について、図3を用いて説明する。
【0040】
図3は、実施の形態1の撮像素子10の受光部4の1画素に対応する領域の断面構造を示す図である。
【0041】
受光部4は、基板1上に形成される、信号読み出し部11、光電変換部12、及び対向電極13を含む。信号読み出し部11は、TFTが好適であり、ゲート電極41、ゲート絶縁膜42、半導体層43、ソース電極44、ドレイン電極45、画素電極46、コンタクトホール46A、及び絶縁層47を有する。
【0042】
ゲート電極41の上部にはゲート絶縁膜42が形成され、ゲート絶縁膜42は半導体層43によって覆われている。半導体層43の上部には、ソース電極44、ドレイン電極45、及び絶縁層47が形成されている。絶縁層47の上部には、コンタクトホール46Aと画素電極46が形成されている。画素電極46は、コンタクトホール46Aを介してドレイン電極45に接続されている。
【0043】
信号読み出し部11の画素電極46の上には光電変換部12、及び対向電極13が順次形成されている。
【0044】
このようなTFTで構成される信号読み出し部11は、図3に矢印で示すように、1つの画素電極46に対応する領域が1画素となる。画素は平面視でマトリクス状に配列される。
【0045】
ゲート電極41には、例えば、アルミニウム、バナジウム、金、銀、白金、鉄、コバルト、炭素、ニッケル、タングステン、パラジウム、マグネシウム、カルシウム、スズ、鉛、チタン、モリブデン、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン等の金属、及びこれらの合金等の各種金属を用いることができるが、TFTの光の透過率(開口率)を高めたい場合には、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(TO)等の透明電極を用いてもよい。
【0046】
ゲート絶縁膜42には、例えば、酸化ケイ素(SiO)や酸化窒素(SiN)等の無機材料製の薄膜や、ポリイミド等の有機材料製の薄膜を用いることができる。
【0047】
半導体層43は、半導体層43に到達した光を透過することに加えて、可視域の光吸収による半導体層43のスイッチングの応答性の変化を防ぐことを実現するために、約3.0eV以上のバンドギャップを有する材料を用いることが望ましい。
【0048】
このような半導体層43を実現する半導体材料としては、酸化亜鉛(ZnO)やアモルファス酸化物半導体(インジウム・ガリウム・酸化亜鉛)等を用いることができる。また、光透過とスイッチングの応答性の変化防止とを実現できる有機材料製の半導体を用いてもよい。
【0049】
ソース電極44及びドレイン電極45には、各種金属を用いることができるが、TFTの光の透過率(開口率)を高めたい場合には、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(TO)等の透明電極を用いることが望ましい。
【0050】
画素電極46は、光透過性が要求されるため、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(TO)等の透明電極を用いるとよい。なお、画素電極46とドレイン電極45を接続するためのコンタクトホール46Aも、画素電極46と同様にンジウムスズ酸化物(ITO)、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(TO)等の透明電極材料で作製すればよい。
【0051】
絶縁膜47は、酸化ケイ素(SiO)や酸化窒素(SiN)等の無機膜や、ポリイミド等の有機膜を用いることができる。信号読み出し部11の微細化を実現するためには、フォトリソグラフィー法を用いて形成することが好適である。信号読み出し部11の厚さは、例えば、0.1〜1μmの間の厚さに設定すればよい。
【0052】
なお、図3には、受光部4の構造を示したが、受光部5、6の構造も同様である。このため、以下では、受光部5、6の信号読み出し部21、31がそれぞれ、ゲート電極41、ゲート絶縁膜42、半導体層43、ソース電極44、ドレイン電極45、画素電極46、コンタクトホール46A及び絶縁層47を有するものとして説明を行う。
【0053】
次に、図4を用いて、信号読み出し部11における画素電極46の配列と駆動回路について説明する。
【0054】
図4は、実施の形態1の撮像素子10の信号読み出し部11における画素電極46の配列と駆動回路を示す図である。
【0055】
信号読み出し部11の駆動回路は、水平走査制御回路50、垂直走査制御回路51、水平走査線52、及び垂直走査線53を含む。
【0056】
水平走査線52は水平走査制御回路50に、垂直走査線53は垂直走査制御回路51にそれぞれ接続されている。
【0057】
水平走査線52は、図4において縦方向に形成されており、水平並びに(図4において横方向に並べて)複数本が配列されている。水平走査線52は、水平走査制御回路50によって時系列的に選択的に駆動され、信号読み出し線として機能する。
【0058】
垂直走査線53は、図4において横方向に形成されており、垂直並びに(図4において縦方向に並べて)複数本が配列されている。垂直走査線53は、垂直走査制御回路51によって時系列的に選択的に駆動され、選択線として機能する。
【0059】
水平走査線52はソース電極44(図3参照)に接続され、垂直走査線53はゲート電極41(図3参照)に接続されている。
【0060】
なお、水平走査制御回路50及び垂直走査制御回路51は、撮像素子10の外部に設置されてもよいし、基板1上に設置されてもよい。
【0061】
水平走査線52及び垂直走査線53は、アルミニウム、バナジウム、金、銀、白金、鉄、コバルト、炭素、ニッケル、タングステン、パラジウム、マグネシウム、カルシウム、スズ、鉛、チタン、モリブデン、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン等の金属及びそれらの合金等各種金属を用いることができるが、TFTの光の透過率(開口率)を高めたい場合には、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(TO)等の透明電極を用いることが望ましい。
【0062】
次に、図2を参照して光電変換部12、対向電極13、紫外線吸収部14、層間絶縁膜2、受光部5(信号読み出し部21、光電変換部22、対向電極23)、及び受光部6(信号読み出し部31、光電変換部32、対向電極33)について説明する。
【0063】
光電変換部12、22、32としては、有機光電変換膜を用いることが好適である。そして、光入射側に位置する光電変換部32を構成する有機光電変換材料に求められる条件としては、光の3原色のうちの1つの光に感度があり、他の2つの光には感度が無く、かつそれら2つの光を透過することが必要である。
【0064】
すなわち、光電変換部32が青色の光を検出する場合、光電変換部32は青色の光に感度があり、緑色と赤色の光には感度が無く、緑色と赤色は透過する必要がある。また光電変換部32が緑色の光を検出する場合、光電変換部32は緑色の光に感度があり、青色と赤色の光には感度が無く、青色と赤色を透過する必要がある。また、光電変換部32が赤色の光を検出する場合、光電変換部32は赤色の光に感度があり、青色と緑色の光には感度が無く、青色と緑色を透過する必要がある。
【0065】
次に、受光部4を例に説明する。
【0066】
青色の光のみに感度を有し、緑色と赤色の光を透過する有機材料としては、クマリン誘導体が挙げられる。緑色の光のみに感度を有し、青色と赤色の光を透過する有機材料としてはキナクリドン誘導体が挙げられる。赤色の光のみに感度を有し、青色と緑色の光を透過する有機材料としては、フタロシアニン誘導体が一例として挙げられる。
【0067】
しかしながら、これら以外にも、アクリジン、クマリン、キナクリドン、シアニン、スクエアリリウム、オキサジン、キサンテントリフェニルアミン、ベンジジン、ピラゾリン、スチリルアミン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、カルバゾール、ポリシラン、チオフェン、ポリアミン、オキサジアゾール、トリアゾール、トリアジン、キノキサリン、フェナンスロリン、フラーレン、アルミニウムキノリン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾール、ポリチオール、ポリピロール、ポリチオフェン及びこれらの誘導体等を単独で、もしくは、これらに代表される有機材料を2種類以上混合又は積層することで、青色、緑色、もしくは赤色の光のみに感度を有する光電変換膜を形成することができる。
【0068】
さらに、光電変換膜12における暗電流(光非照射時で観測される電流)の低減や、光電変換膜12の量子効率向上のために、電子輸送材料、正孔輸送材料、電子ブロッキング材料、正孔ブロッキング材料等を上記材料に混合又は積層することで、光電変換膜12を形成することも可能である。なお、これは、光電変換膜22、32についても同様である。
【0069】
なお、有機光電変換膜の膜厚は、一例として、50nmから1μmの間が好適であるが、光吸収極大波長での吸収率として、90%以上、すなわち、吸光度A(A=−log(透過率))にして1.0以上を有することが望ましい。
【0070】
対向電極13は、光透過性が要求されるため、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(TO)等の透明電極を用いるとよい。
【0071】
また、対向電極13の材料はこれらに限られず、アルミニウム、バナジウム、金、銀、白金、鉄、コバルト、炭素、ニッケル、タングステン、パラジウム、マグネシウム、カルシウム、スズ、鉛、チタン、モリブデン、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン等の金属、又はこれらの金属の合金を用いて半透明電極を形成してもよい。対向電極13の厚さは、例えば、膜厚20nm〜80nm程度に設定すればよい。
【0072】
また、対向電極13の材料としては、ポリアセチレン系、ポリアニリン系、ポリピロール系、ポリチオフェン系に代表される導電性高分子を用いることもできる。これらの材料を用いる場合は、対向電極13の膜厚は、例えば、1nm〜100nmの間に設定すればよい。
【0073】
紫外線吸収部14は、受光部4を作製した後に、受光部5の信号読み出し部21を作製する際にフォトリソグラフィーで用いられる紫外線のうち、層間絶縁膜2を透過した成分を吸収するための層であり、可視光の透過性が高い一方、紫外線の透過率が低いことが要求される。紫外線吸収部14は、層間絶縁膜2を透過した紫外光を吸収することにより、光電変換部12を保護するために設けられている。
【0074】
紫外線吸収部14としては、具体的には、例えば、信号読み出し部21の作製時にフォトリソグラフィーで用いられる紫外線の波長における透過率が1%以下であり、望ましくは0.1%以下、さらに望ましくは0.01%以下である材料を選択すればよい。
【0075】
紫外線吸収部14の材料の一例としては、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化セリウム、酸化亜鉛やアモルファス酸化物(インジウム・ガリウム・酸化亜鉛)等に代表される無機系材料、ポリシランやポリビニルカルバゾール、各種アクリル樹脂等の有機系材料等、さらに透明な有機あるいは無機ポリマー中に有機または無機の紫外線吸収剤を分散した薄膜等がある。紫外線吸収部14の膜厚は、上述の透過率を実現できる厚さに調整すればよいが、例えば、0.1〜0.5μmの間に設定すればよい。
【0076】
層間絶縁膜2としては、絶縁性を有するとともに、可視光透過性を有する材料がよく、封止膜としての性質を併せ持つものが好適である。一例として、酸化ケイ素、酸化窒素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、チッ化ケイ素、チッ化アルミニウム等の無機材料、ポリイミドやポリパラキシレンビニレン等の有機材料等が挙げられる。
【0077】
層間絶縁膜2の厚さは、例えば、0.5〜1μmに設定すればよいが、層間絶縁膜2には、基板1と同等の表面の平坦性が要求される。
【0078】
層間絶縁膜2には、受光部4を構成する信号読み出し部11の凹凸(図3参照)を反映した凹凸が生じる可能性がある。このため、凹凸が存在する層間絶縁膜2の表面上に受光部5を作製すると、受光部5の信号読み出し部21の構造に影響が生じ、信号読み出し部21を構成するTFTの形成不良等に繋がる可能性がある。
【0079】
そこで、層間絶縁膜2の表面に十分な平坦性が確保できない場合には、層間絶縁膜2を構成する絶縁材料の絶縁膜を層間絶縁膜2として必要な厚さよりも厚く形成した後に、絶縁膜の表面を平坦化する加工を行うことで、層間絶縁膜2の表面に基板1と同等の平坦性を持たせることができる。
【0080】
次に、図5を用いて、層間絶縁膜2の表面を平坦化するための研磨工程について説明する。
【0081】
図5は、実施の形態1の撮像素子10の層間絶縁膜2の表面を平坦化する工程を示す図である。なお、図5には、図3と同様に、撮像素子10の1画素に対応する部分の断面を示す。
【0082】
平坦化の手法としては、種々の方法を用いることができるが、化学機械平坦化手法(CMP:Chemical Mechanical Polishing)が好適である。
【0083】
図5(A)に示すように、紫外線吸収部14の上に、層間絶縁膜2を構成する絶縁材料の絶縁膜2Aを作製する。このとき、紫外線吸収部14の表面の凹凸の最大の高低差H以上の厚さになるまで、絶縁膜2Aを成膜する。
【0084】
そして、次に、図5(B)に示すように、絶縁膜2Aの表面に対してCMPによる研磨を行い、平坦化を行う。このとき、層間絶縁膜2として必要な絶縁性を保てる膜厚まで絶縁膜2Aを研磨すればよい。
【0085】
このようにして、表面に凹凸のある紫外線吸収部14の上に、表面が平坦な層間絶縁膜2を形成することができ、層間絶縁膜2の表面に、基板1と同等の平坦性を持たせるができる。層間絶縁膜2の厚さは、例えば、0.5〜1μmに設定すればよい。
【0086】
そして、図5(C)に示すように、層間絶縁膜2の平坦化処理を行った後に、層間絶縁膜2の上に信号読み出し部21を形成すればよい。
【0087】
なお、層間絶縁膜2の表面の平坦化処理は、CMPのような加工以外の手法で行うこともできる。例えば、凹凸が存在する層間絶縁膜2の表面上に、平坦化層(図示せず)を設けることで基板1と同等の平坦性を持たせることも可能である。
【0088】
平坦化層を作製する工程としては、スピンコート法やディッピング法、バーコート法等に代表される塗布成膜法が望ましく、アルコキシシランやハロゲノシランの加水分解反応生成物から成る塗布液による酸化ケイ素膜や、各種樹脂系膜を形成することができる。この平坦化層の厚さは、例えば、0.5〜1μmとする。
【0089】
層間絶縁膜2の上に信号読み出し部21を作製した後は、受光部4の信号読み出し部11の上に光電変換部12及び対向電極13を作製した場合と同様に、信号読み出し部21の上に光電変換部22及び対向電極23を作製すればよい。
【0090】
受光部5の構成は、受光部4の構成と同様であるが、受光部5を構成する信号読み出し部21、光電変換部22、及び対向電極23のうちの光電変換部22については、光の3原色のうち光電変換部12が感度を有する光とは異なる色の光に感度を有し、光電変換部12が感度を有する色の光は透過する必要がある。
【0091】
すなわち、光電変換部12が青色の光を検出する場合は、光電変換部22に緑色の光または赤色の光に感度があっても、青色の光を透過する必要がある。
【0092】
また、光電変換部12が緑色の光を検出する場合は、光電変換部22に青色の光または赤色の光に感度があっても、緑色の光を透過する必要がある。
【0093】
また、光電変換部12が赤色の光を検出する場合は、光電変換部22に青色の光または緑色の光に感度があっても、赤色の光を透過する必要がある。
【0094】
受光部5の上に作製する紫外線吸収部24の構成は、受光部4の上に形成する紫外線吸収部14と同様である。紫外線吸収部24は、信号読み出し部31を作製するためのフォトリソグラフィー法による露光を行う際に、層間絶縁膜3を透過した光を吸収することにより、光電変換部22を保護するために設けられている。
【0095】
また、紫外線吸収部24の上に作製する層間絶縁膜3の構成は、紫外線吸収部14の上に形成する層間絶縁膜2と同様である。層間絶縁膜3は、絶縁性を有するとともに、可視光透過性を有する材料がよく、封止膜としての性質を併せ持つものが好適である。層間絶縁膜3には、層間絶縁膜2と同様に、基板1と同等の表面の平坦性が要求される。
【0096】
このように、紫外線吸収部24及び層間絶縁膜3は、紫外線吸収部14及び層間絶縁膜2と同様であるが、紫外線吸収部14と紫外線吸収部24とで材料又は厚さを別々に設定してもよく、層間絶縁膜2と層間絶縁膜3とで材料又は厚さを別々に設定してもよい。
【0097】
層間絶縁膜3の表面の平坦化処理を行った後には、層間絶縁膜3の上に受光部6を作製すればよい。受光部6の構成は、受光部4の構成と同様であるが、光電変換部32については、光の3原色のうち光電変換部12及び22とは異なる色の光に感度があり、その他の色の光を透過する必要がある。
【0098】
すなわち、光電変換膜12及び22の2種類の膜で青色と緑色の光を検出する場合は、光電変換部32は赤色の光に感度があり、青色と緑色の光を透過する必要がある。また、光電変換膜12及び22の2種類の膜で青色と赤色の光を検出する場合は、光電変換部32は緑色の光に感度があり、青色と赤色の光を透過する必要がある。また、光電変換膜12及び22の2種類の膜で緑色と赤色の光を検出する場合は、光電変換部32は青色の光に感度があり、緑色と赤色の光を透過する必要がある。
【0099】
また、対向電極33については、図2に示すように対向電極33側から光を入射させる場合は、透明電極を用いることが望ましいが、基板1側から光を入射する場合には、透明電極の代わりに、アルミニウム、バナジウム、金、銀、白金、鉄、コバルト、炭素、ニッケル、タングステン、パラジウム、マグネシウム、カルシウム、スズ、鉛、チタン、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン等の金属製の電極、又はこれらの金属の合金製の電極を用いることができる。また、ポリアセチレン系、ポリアニリン系、ポリピロール系、ポリチオフェン系に代表される導電性高分子を用いてもよい。
【0100】
なお、対向電極33の上に紫外線吸収部を施設する必要はないが、撮像素子として使用する際に、入射光から紫外線をカットする必要がある場合は、紫外線吸収部14及び24と同様の紫外線吸収部を設けてもよい。
【0101】
また、撮像素子10の全体の封止膜として、対向電極33の上に層間絶縁膜2及び3と同様の層間絶縁膜を設けてもよい。なお、この場合、対向電極33の上に作製する層間絶縁膜を必ずしも平坦化する必要はない。
【0102】
次に、各層の厚さについて説明する。
【0103】
上述の通り、積層型の撮像素子10は、青、緑、赤の各色用の受光部4、5、6が光の入射方向(図2中において上下方向)に重なって配列されているため、受光部4、5、6の全体の厚さが厚くなると、受光部4、5、6の間でレンズの焦点がずれてしまう。
【0104】
そこで、使用するレンズの前後片方の焦点深度をδとしたときに、受光部4から受光部6に至るまでの厚さ、厳密には、信号読み出し部11と光電変換部l2の界面から、光電変換部32と対向電極33に至るまでの厚さ(信号読み出し部11の下端から光電変換部32の上端までの厚さ)が2δの範囲内に収まるように、信号読み出し部11、21、31、光電変換部12、22、32、紫外線吸収部14、24、層間絶縁膜2、3の各々の厚さを規定すればよい。
【0105】
レンズと焦点深度δの関係は、次式(1)で定まる。
【0106】
δ=±Fε ・・・(1)
ここで、Fはレンズの絞り値である。εは、許容錯乱円という許される焦点ハズレ(ぼけ)となる円の直径を表す。すなわち、レンズの絞りを開ける(F値が小さくなる)ほど、また、許容錯乱円の大きさが小さくなるほど焦点深度δの値は小さくなることが分かる。
【0107】
ここで、許容錯乱円εの大きさを1画素分の大きさまで許容すると、1画素のピッチ(サイズ)をXとしたとき、レンズの絞り値(F値)をF2.0として、許容される信号読み出し部11の下端から光電変換部32の上端までの厚さdは、
d=2δ=4X ・・・(2)
となる。さらにεを1画素の半分まで許容すると、
d=2X ・・・(3)
となる。さらにεを1画素の1/4まで許容すると、
d=X ・・・(4)
となる。
【0108】
ここで、許容錯乱円の直径εは画素ピッチの1/2程度以下であることが望ましく、かつ、式(3)を成立させること(すなわち、画素ピッチの2倍の値までに、信号読み出し部11の下端から光電変換部32の上端までの厚さdを抑えること)で、ボケのない画像を得ることができる。
【0109】
このように説明した厚さdを用いて、信号読み出し部11の下端から光電変換部32の上端までの厚さdを計算すると、全て最も大きい値をとった場合に、dは8.3μmとなり、最も小さい値をとった場合には、1.56μmとなる。なお、層間絶縁膜2、3の表面を平坦化する代わりに平坦化層を挿入した場合には、dは10.3μmとなる。
【0110】
放送用ハイビジョンカメラに搭載されている撮像素子の画素ピッチは5μmであるため、この場合に許容できる信号読み出し部11の下端から光電変換部32の上端までの厚さdは10μm、同様に民生用コンパクトデジタルカメラの画素ピッチを1.5μmと仮定すれば、この場合に許容できる信号読み出し部11の下端から光電変換部32の上端までの厚さdは3μmとなる。
【0111】
以上のことを勘案して各層の膜厚を調整することにより、焦点深度の問題は解決されることがわかる。
【0112】
以上のような撮像素子10において、対向電極13、23、33に正電圧を印加した状態で、図2中の上方から光が入射すると、光電変換部12、22、32で光電変換によって電子−正孔対が発生する。このとき、電子は対向電極13、23、33に移動し、正孔は信号読み出し部11、21、31に移動する。これにより、被写体の像を得ることができる。対向電極13、23、33に負電圧を印加した状態で、図2中の上方から光が入射すると、電子が信号読み出し部11、21、31に移動し、正孔が対向電極13、23、33に移動する。
【0113】
次に、以下に実施例1と比較例1、2を用いて実施の形態1の撮像素子10について詳細に説明する。
【0114】
[実施例1]
基板1として、厚さ0.7mmのガラス製の透明基板を用意し、基板1の表面上にITO薄膜をDCマグネトロンスパッタ法により形成した。その後、フォトリソグラフィーを用いた加工によりゲート電極41(厚さ50nm)を形成した。
【0115】
フォトリソグラフィーには、光源として波長248nmのフッ化クリプトン(KrF)エキシマレーザーを用いた。照射時間は7.0秒とした(以下、フォトリソグラフィーの条件は全て同じとする)。
【0116】
次に、酸化窒素膜で構成されるゲート絶縁膜42(厚さ150nm)をプラズマCVD法により成膜し、フォトリソグラフィー法によって加工した後に、半導体層43として酸化亜鉛層(厚さ50nm)をマスクを用いたDCマグネトロンスパッタ法により成膜した。
【0117】
次に、半導体層43の上にDCマグネトロンスパッタ法でITO膜を成膜し、フォトリソグラフィーを用いた加工によりソース電極44とドレイン45電極(ともに厚さ30nm)を形成した。その後、酸化窒素膜で構成される絶縁膜47(厚さ200nm)をプラズマCVD法により成膜し、後に画素電極46とドレイン電極45を接続させるためのコンタクトホール46Aをフォトリソグラフィーにより形成した。
【0118】
さらに、マスクを用いたDCマグネトロンスパッタ法により、絶縁膜47の上にITOを成膜し、画素電極46(厚さ50nm)を形成した。ITOを成膜することで、画素電極46とドレイン電極45はコンタクトホール46Aを介して接続される。
【0119】
以上の製造工程により、信号読み出し部11を形成することができる。
【0120】
以上のようにして作製した信号読み出し部11の上に、電子輸送層としてAlqを30nmの厚さで成膜し、電子輸送層の上に赤色の光に感度のある光電変換層として亜鉛フタロシアニンを120nmの厚さで成膜することで、光電変換部12を形成した。光電変換部12に含まれる電子輸送層と光電変換層は、真空蒸着法によって成膜した。
【0121】
次に、光電変換部12の上に、対向電極13としてITOを対向スパッタ法により10nmの厚さで成膜することで、受光部4を形成した。
【0122】
さらに、受光部4の上に、紫外線吸収部14として酸化亜鉛を0.5μmの厚さで堆積した。膜厚0.5μmの酸化亜鉛膜における波長248nmの分光透過率は、0.01%以下であることを透過型分光光度計により確認した。
【0123】
次に、紫外線吸収部14の上に絶縁膜2A(図5(A)参照)として酸化窒素膜をプラズマCVD法により1.5μm堆積した後に、CMP法により平坦化処理を行うことで、最終的に厚さ0.8μmの層間絶縁膜2(図5(B)参照)を形成した。
【0124】
次に、層間絶縁膜2上に受光部5を作製した。受光部5の信号読み出し部21は、受光部4の信号読み出し部11と同様の方法で作製した。ゲート電極41、ゲート絶縁膜42、ソース電極44、ドレイン電極45、及びコンタクトホール46Aの形成にフォトリソグラフィーを使用した。
【0125】
以上により、受光部4の上に受光部5の信号読み出し部21までを形成することで、実施例1の撮像素子を形成した。
【0126】
[比較例1]
比較のために、実施例1と同様の作製手法を用い、紫外線吸収部14を形成せずに、受光部5の信号読み出し部21まで形成した撮像素子を作製した。
【0127】
すなわち、実施例1の撮像素子と比較例1の撮像素子の違いは、紫外線吸収部14の有無であり、比較例1の撮像素子は、紫外線吸収部14が形成されていない状態で、信号読み出し部21を作製するためのフォトリソグラフィーが行われたことになる。
【0128】
[比較例2]
実施例1と同様の作製手法を用い、受光部4までを形成した後に、紫外線吸収部14を形成せずに、層間絶縁膜2までを形成した比較例2の撮像素子を作製した。
【0129】
比較例2の撮像素子には、受光部5の信号読み出し部21は形成されていないため、比較例2の撮像素子では、受光部4を形成した後に、フォトリソグラフィーは行われていないことになる。
【0130】
すなわち、比較例2の撮像素子は、フォトリソグラフィーによる光電変換部12の膜質の劣化が生じていないリファレンス用の撮像素子である。
【0131】
ここで、表1を用いて、実施例1、比較例1、比較例2の撮像素子の量子効率について説明する。
【0132】
表1は、実施例1、比較例1、比較例2の3つの撮像素子に、基板1側から波長650nm、出力50μW/cmの単色光を照射したときに、受光部4の信号読み出し部11で得られる光出力電流を基に計算した量子効率(受光部4から出力された光電子数/照射光子数の百分率表示)を示す。
【0133】
受光部4の対向電極13に印加した電圧は、実施例1、比較例1、比較例2のいずれの撮像素子においても、すべて4.5Vとした。
【0134】
【表1】

表1から分かるように、受光部4を形成した後にフォトリソグラフィーを行わなかった比較例2の撮像素子と比べて、紫外線吸収部14を作製した後にフォトリソグラフィーを行った実施例1の撮像素子では、殆ど量子効率の低下が見られなかった。
【0135】
これに対して、紫外線吸収部14を形成せずにフォトリソグラフィーを施した比較例1の撮像素子では、量子効率の大幅な減少がみられ、紫外線吸収部14の効果が明らかとなった。
【0136】
以上より、基板1の上に、受光部4、紫外線吸収部14、層間絶縁膜2、受光部5、紫外線吸収部24、層間絶縁膜3、及び受光部6を順次形成した実施の形態1の撮像素子10では、受光部5の信号読み出し部21を作製する際のフォトリソグラフィー法による工程における紫外線を紫外線吸収部14で吸収し、受光部4の光電変換部12の膜質の劣化を抑制することができる。
【0137】
また、受光部6の信号読み出し部31を作製する際のフォトリソグラフィー法による工程における紫外線を紫外線吸収部24で吸収し、受光部5の光電変換部22の膜質の劣化を抑制することができる。
【0138】
このため、実施の形態1によれば、実施例1の撮像素子と同様に、信号読み出し部21、31を作製する際に紫外線吸収部14、24でフォトリソフィーの露光による紫外線を吸収することにより、光電変換膜12、22の劣化を抑制し、量子効率が非常に高い撮像素子10を作製することができる。
【0139】
なお、以上では、撮像素子10が紫外線吸収部14と層間絶縁膜2を含む形態について説明したが、紫外線を吸収できる材料であって、かつ、絶縁性を有する材料を用いることにより、紫外線吸収部14と層間絶縁膜2を合わせた1つの層にしてもよい。
【0140】
同様に、紫外線を吸収できる材料であって、かつ、絶縁性を有する材料を用いることにより、紫外線吸収部24と層間絶縁膜3を合わせた1つの層にしてもよい。
【0141】
また、以上では、紫外線吸収部14の上に層間絶縁膜2を作製する形態について説明したが、作製する順番は逆であってもよく、層間絶縁膜2の上に紫外線吸収部14を作製してもよい。同様に、層間絶縁膜3の上に紫外線吸収部24を作製してもよい。
【0142】
また、以上では、光電変換部12、22、32の各々が光の3原色に対して有する感度は、互いに異なれば順番は不問であることとしたが、光の入射側から順に、緑色、赤色、青色の光の感度を有するように受光部4、5、6を並べてもよい。この場合は、光の入射側に最も近い位置に緑色の光の感度を有する受光部を配設でき、3原色のうち緑色は輝度情報に最も近いため、解像度を向上させることができる。
【0143】
[実施の形態2]
実施の形態2の撮像装置は、2つの受光部を積層した積層型の撮像素子である点が、3つの受光部を積層した実施の系形態1の積層型の撮像素子と異なる。
【0144】
実施の形態1の撮像素子10(図2参照)は、3つの受光部4、5、6がそれぞれ光の3原色のうちの1色の光に対して感度を有するように構成されている。
【0145】
これに対して、実施の形態2の撮像装置は、2つの受光部のうちのいずれか一方が光の3原色のうちの2色の光に対して感度を有し、いずれか他方の受光部が光の3原色のうちの残りの1色の光に対して感度を有するように構成されている。
【0146】
図6は、実施の形態2の撮像素子20の断面構造を示す図である。実施の形態2の撮像素子20は、断面構造においては、図2に示す実施の形態1の撮像素子10から受光部6を取り除いた構成と同様である。このため、実施の形態1の撮像素子10に含まれる構成要素と同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0147】
撮像素子20は、基板1、受光部4A、紫外線吸収部14、層間絶縁膜2、及び受光部5を含む。なお、一例として、図6中、上方から光が撮像素子20に入射するものとする。
【0148】
受光部4A、紫外線吸収部14、層間絶縁膜2、及び受光部5は、基板1の上にこの順で積層されている。受光部4Aと受光部5との間には、紫外光吸収部14と層間絶縁膜2が形成されている。
【0149】
受光部4Aは、一の受光部の一例であり、信号読み出し部11、光電変換部12A、及び対向電極13を含む。受光部5は、他の受光部の一例であり、信号読み出し部21、光電変換部22、及び対向電極23を含む。
【0150】
受光部4Aは、2色の光に感度を有する。このような受光部4Aは、例えば、光電変換部12Aに光の3原色のうちの1色の光に感度を有する有機材料と、他の1色の光に感度を有する有機材料とを、例えば、画素毎に配列するように形成すればよい。
【0151】
また、受光部5の光電変換部22は、光の3原色のうちの残りの1色の光に感度を有する有機材料で形成すればよい。
【0152】
次に、図7を用いて、受光部4Aの光電変換部12Aにおける有機材料膜の配置と、受光部5の光電変換部22における有機材料膜の配置について説明する。
【0153】
図7は、実施の形態2の撮像素子20における受光部4Aの光電変換部12Aにおける有機材料膜の配置と、受光部5の光電変換部22における有機材料膜の配置を示す図である。
【0154】
ここで、実施の形態2の撮像素子20では、光の入射側にある受光部5の光電変換部22は、光の3原色のうちの緑色の光に感度を有するものとする。このため、光電変換部22は、図7(A)に示すように、緑色(G(Green))の有機材料膜が配設される。説明の便宜上、図7(A)には画素毎に緑色の有機材料膜が配列されているように示すが、光電変換部22のすべての画素に対応する領域は、緑色の有機材料で一体的に形成される。
【0155】
また、光の入射方向における下流側にある受光部4Aの光電変換部12Aは、光の3原色のうちの赤色(R(Red))の光に感度を有する有機材料膜、又は、青色(B(Blue))の光に感度を有する有機材料膜が画素毎に形成されており、赤色の光に感度を有する有機材料膜と青色の光に感度を有する有機材料膜とは千鳥状に配列されている。
【0156】
図7(B)に示すように画素毎に赤色(R(Red))の光に感度を有する有機材料膜と、青色(B(Blue))の光に感度を有する有機材料膜とを形成する手法としては、例えば、マスクを用いた成膜、インクジェットによる印刷等の手法が挙げられる。
【0157】
このように、2層の受光部を重ねた積層型の撮像素子20において、一方の受光部4Aの光電変換部12Aが光の3原色のうちの2色の光に対して感度を有し、他方の受光部5の光電変換部22が光の3原色のうちの残りの1色の光に対して感度を有するように構成することにより、実施の形態1の撮像素子と同様に、解像度の高い撮像素子20を実現することができる。
【0158】
また、実施の形態2の撮像素子20は、受光部4Aの上に紫外線吸収部14が形成されているため、受光部5の信号読み出し部21を作製するためのフォトリソグラフィー法による露光を行っても、受光部4Aの光電変換部12Aが紫外線によって劣化することを抑制することができる。
【0159】
このため、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、量子効率が非常に高い撮像素子20を作製することができる。
【0160】
なお、図6には、光の入射方向において下流側にある受光部4Aの光電変換部12Aが2色の光に対して感度を有する形態について説明するが、これとは逆に、光の入射方向において上流側にある受光部5の光電変換部22が光の3原色のうちの2色の光に対して感度を有するように構成してもよい。
【0161】
以上、本発明の例示的な実施の形態の撮像素子の製造方法、及び、撮像素子について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0162】
1 基板
2、3 層間絶縁膜
4、4A、5、6 受光部
11、21、31 信号読み出し部
12、22、32 光電変換部
13、23、33 対向電極
14、24 紫外光吸収部
10、20 撮像素子
41 ゲート電極
42 ゲート絶縁膜
43 半導体層
44 ソース電極
45 ドレイン電極
46 画素電極
46A コンタクトホール
47 絶縁層
50 水平走査制御回路
51 垂直動作制御回路
52 水平走査線
53 垂直走査線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に第1波長の光に感度を有する第1受光部を形成する工程と、
前記第1受光部の上に紫外線を吸収する第1紫外線吸収部を形成する工程と、
前記第1紫外線吸収部の上に第2波長の光に感度を有する第2受光部を形成する工程と、
前記第2受光部の上に紫外線を吸収する第2紫外線吸収部を形成する工程と、
前記第2紫外線吸収部の上に第3波長の光に感度を有する第3受光部を形成する工程と
を含む、撮像素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1受光部、前記第2受光部、及び前記第3受光部を形成する工程は、それぞれ、
光電変換によって生成される電気信号を読み出すための信号読み出し部を、フォトリソグラフィー法を用いて形成する工程と、
前記信号読み出し部の上に、光を電気信号に変換する光電変換部を形成する工程と
を有する、請求項1記載の撮像素子の製造方法。
【請求項3】
基板の上に第1波長の光に感度を有する第1受光部を形成する工程、
前記第1受光部の上に紫外線を吸収する紫外線吸収部を形成する工程、及び
前記紫外線吸収部の上に第2波長及び第3波長の光に感度を有する第2受光部を形成する工程、
又は、
基板の上に第1波長及び第2波長の光に感度を有する第1受光部を形成する工程、
前記第1受光部の上に紫外線を吸収する紫外線吸収部を形成する工程、及び
前記紫外線吸収部の上に第3波長の光に感度を有する第2受光部を形成する工程、
を含む、撮像素子の製造方法。
【請求項4】
前記第2受光部を形成する工程は、光電変換によって生成される電気信号を読み出すための信号読み出し部を、フォトリソグラフィー法を用いて形成する工程と、
前記信号読み出し部の上に、光を電気信号に変換する光電変換部を形成する工程と
を有する、請求項3記載の撮像素子の製造方法。
【請求項5】
基板の上に形成され、第1波長の光に感度を有する第1受光部と、
前記第1受光部の上に形成され、紫外線を吸収する第1紫外線吸収部と、
前記第1紫外線吸収部の上に形成され、第2波長の光に感度を有する第2受光部と、
前記第2受光部の上に形成され、紫外線を吸収する第2紫外線吸収部と、
前記第2紫外線吸収部の上に形成され、第3波長の光に感度を有する第3受光部と
を含む、撮像素子。
【請求項6】
前記第1受光部、前記第2受光部、及び前記第3受光部は、それぞれ、
光を電気信号に変換する光電変換部と、
フォトリソグラフィー法を用いて形成され、前記光電変換部における光電変換によって生成される電気信号を読み出すための信号読み出し部と
を有する、請求項5記載の撮像素子。
【請求項7】
基板の上に形成され、第1波長の光に感度を有する第1受光部、
前記第1受光部の上に形成され、紫外線を吸収する紫外線吸収部、及び
前記紫外線吸収部の上に形成され、第2波長及び第3波長の光に感度を有する第2受光部、
又は、
基板の上に形成され、第1波長及び第2波長の光に感度を有する第1受光部、
前記第1受光部の上に形成され、紫外線を吸収する紫外線吸収部、及び
前記紫外線吸収部の上に形成され、第3波長の光に感度を有する第2受光部、
を含む、撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−160619(P2012−160619A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20120(P2011−20120)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】