説明

攪拌装置及び分析装置

【課題】音波の吸収に起因した液体の温度上昇を抑制することが可能な攪拌装置及び分析装置を提供すること。
【解決手段】容器に保持された液体を音波によって攪拌する攪拌装置及び分析装置。攪拌装置20は、液体に照射する音波を発生させる表面弾性波素子24と、表面弾性波素子が照射する音波によって上昇する液体の温度を所定温度以下に制御する駆動制御部21とを備えている。駆動制御部21は、液体の熱に関する特性に応じて液体の温度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌装置及び分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置は、容器に保持した検体や試薬を含む液体を音波発生手段が発生した音波によって攪拌する攪拌装置を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−300651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、音波によって液体を攪拌する攪拌装置においては、照射した音波が液体に吸収されて液体の温度が上昇する。このとき、図24に示すように、単位時間当たりの液体温度の上昇率は、印加する電力の大きさに伴って増加する関係がある。この場合、液体が微量になる程、液体の熱容量が小さくなることから、液体の温度上昇が大きくなる。このため、この種の攪拌装置においては、検体や試薬が熱変質し易くなり、分析精度が不安定になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、音波の吸収に起因した液体の温度上昇を抑制することが可能な攪拌装置及び分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る攪拌装置は、容器に保持された液体を音波によって攪拌する攪拌装置において、前記液体に照射する音波を発生させる音波発生手段と、前記音波発生手段が照射する音波によって上昇する前記液体の温度を所定温度以下に制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記液体の熱に関する特性に応じて前記液体の温度を制御することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記液体の熱に関する特性は、前記液体の量,粘性,熱容量,比熱又は熱伝導率の少なくとも一つであることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記液体の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記温度検出手段の検出した前記液体の検出温度をもとに前記液体の温度を制御することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記音波発生手段を駆動する駆動信号の振幅又は印加時間を制御することによって前記液体の温度を制御することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記駆動信号の振幅の制御を振幅変調によって行うことを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記音波発生手段を複数有し、前記制御手段は、前記複数の音波発生手段を時分割に切り替えて駆動することを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記駆動信号のデューティ比を制御することを特徴とする。
【0014】
また、請求項9に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記デューティ比の制御は、前記液体の攪拌に必要な全消費電力が、前記音波発生手段を連続駆動した場合に必要な電力以下になるように行うことを特徴とする。
【0015】
また、請求項10に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記液体の温度が高い場合よりも低い場合に、当該液体に照射される前記音波の照射時間が短くなるように前記駆動信号のデューティ比を制御することを特徴とする。
【0016】
また、請求項11に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記液体の温度が高い場合よりも低い場合に、当該液体に照射される前記音波の単位時間当たりの照射強度が強くなるように前記駆動信号のデューティ比を制御することを特徴とする。
【0017】
また、請求項12に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記音波発生手段を駆動する駆動信号の周波数を前記液体に応じて設定することを特徴とする。
【0018】
また、請求項13に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記駆動信号の周波数を前記音波発生手段の中心周波数に設定することを特徴とする。
【0019】
また、請求項14に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記液体を冷却する冷却手段をさらに備え、前記制御手段は、前記冷却手段の作動を制御することにより、前記液体の温度を制御することを特徴とする。
【0020】
また、請求項15に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記音波発生手段は、表面弾性波素子であることを特徴とする。
【0021】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項16に係る分析装置は、複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する分析装置であって、前記攪拌装置を用いて検体と試薬との反応液を光学的に分析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる攪拌装置は、液体に照射する音波を発生させる音波発生手段と、音波発生手段が照射する音波によって上昇する液体の温度を所定温度以下に制御する制御手段とを備えており、分析装置は、前記攪拌装置を用いて検体と試薬との反応液を光学的に分析する。このため、本発明の攪拌装置及び分析装置は、音波の吸収に起因した液体の温度上昇を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施の形態1)
以下、本発明の攪拌装置及び分析装置にかかる実施の形態1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、攪拌装置を備えた自動分析装置の概略構成図である。図2は、図1に示す自動分析装置を構成するキュベットホイールのA部を拡大し、一部を断面にして示す斜視図である。図3は、反応容器を収容したキュベットホイールをホイール電極の位置で水平に切断した平面図である。図4は、攪拌装置の概略構成を反応容器の斜視図と共に示すブロック図である。
【0024】
自動分析装置1は、図1及び図2に示すように、試薬テーブル2,3、キュベットホイール4、検体容器移送機構8、分析光学系12、洗浄機構13、制御部15及び攪拌装置20を備えている。
【0025】
試薬テーブル2,3は、図1に示すように、それぞれ周方向に配置される複数の試薬容器2a,3aを保持し、駆動手段に回転されて試薬容器2a,3aを周方向に搬送する。
【0026】
キュベットホイール4は、図1に示すように、周方向に沿って設けた複数の仕切り板4aによって反応容器5を配置する複数のホルダ4bが周方向に形成され、駆動手段によって矢印で示す方向に回転されて反応容器5を搬送する。キュベットホイール4は、図2に示すように、各ホルダ4bの下部に対応する位置に半径方向に測光孔4cが形成され、測光孔4cの上部に設けた上下2つの挿通孔4dのそれぞれを利用してホイール電極4eが取り付けられている。ホイール電極4eは、図2及び図3に示すように、挿通孔4dから延出した一端が折り曲げられてキュベットホイール4の外面に当接し、挿通孔4dから延出した他端は同様に折り曲げられてホルダ4bの内面近傍に配置され、ホルダ4bに配置した反応容器5をばね力によって保持している。反応容器5は、近傍に設けた試薬分注機構6,7によって試薬テーブル2,3の試薬容器2a,3aから試薬が分注される。ここで、試薬分注機構6,7は、図1に示すように、それぞれ水平面内を矢印方向に回動するアーム6a,7aに試薬を分注するプローブ6b,7bが設けられ、洗浄水によってプローブ6b,7bを洗浄する洗浄手段を有している。
【0027】
一方、反応容器5は、後述する分析光学系12から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器5は、図2に示すように、検体や試薬を含む液体を保持する保持部5aを有する四角筒形状のキュベットであり、側壁5bに表面弾性波素子24が取り付けられると共に、表面弾性波素子24の一組の入力端子24dのそれぞれと接続される電極パッド5eが取り付けられている。反応容器5は、表面弾性波素子24を取り付けた部分に隣接する下部側の点線によって囲まれた部分が前記分析光を透過させる測光用の窓5cとして利用される。反応容器5は、表面弾性波素子24を仕切り板4a側に向けてホルダ4bにセットされる。これにより、反応容器5は、図3に示すように、各電極パッド5eが対応するホイール電極4eと接触する。ここで、電極パッド5eは、表面弾性波素子24と側壁5bとの間を跨いで一体的に設けられている。
【0028】
検体容器移送機構8は、図1に示すように、フィーダ9に配列した複数のラック10を矢印方向に沿って1つずつ移送する移送手段であり、ラック10を歩進させながら移送する。ラック10は、検体を収容した複数の検体容器10aを保持している。ここで、検体容器10aは、検体容器移送機構8によって移送されるラック10の歩進が停止するごとに、水平方向に回動するアーム11aとプローブ11bとを有する検体分注機構11によって検体が各反応容器5へ分注される。このため、検体分注機構11は、洗浄水によってプローブ11bを洗浄する洗浄手段を有している。
【0029】
分析光学系12は、試薬と検体とが反応した反応容器5内の液体試料を分析するための分析光(340〜800nm)を出射するもので、図1に示すように、発光部12a,分光部12b及び受光部12cを有している。発光部12aから出射された分析光は、反応容器5内の液体試料を透過し、分光部12bと対向する位置に設けた受光部12cによって受光される。受光部12cは、制御部15と接続されている。
【0030】
洗浄機構13は、ノズル13aによって反応容器5内の液体試料を吸引して排出した後、ノズル13aによって洗剤や洗浄水等の洗浄液等を繰り返し注入し、吸引することにより、分析光学系12による分析が終了した反応容器5を洗浄する。
【0031】
制御部15は、予め入力された動作プログラム等の情報を記憶して自動分析装置1及び攪拌装置20の各部の作動を制御すると共に、発光部12aの出射光量と受光部12cが受光した光量に基づく反応容器5内の液体試料の吸光度に基づいて検体の成分濃度等を分析する制御手段であり、例えば、マイクロコンピュータ等が使用される。制御部15は、図1に示すように、入力部16及び表示部17と接続されている。入力部16は、制御部15へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。入力部16は、攪拌装置20の表面弾性波素子24に入力する駆動信号の周波数を切り替える操作等にも使用される。表示部17は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0032】
攪拌装置20は、図4に示すように、駆動制御部21と表面弾性波素子24とを有している。駆動制御部21は、表面弾性波素子24の駆動を制御することにより、表面弾性波素子24が照射する音波によって上昇する検体や試薬を含む液体の温度を所定温度以下に制御する制御手段である。駆動制御部21は、キュベットホイール4の外周にキュベットホイール4と対向させて配置され(図1参照)、ハウジング21aに設けたブラシ状の接触子21b(図3参照)の他に、ハウジング21a内に信号発生器22と駆動制御回路23を備えている。接触子21bは、2つのホイール電極4eと対向するハウジング21aに設けられ、キュベットホイール4が停止すると対応するホイール電極4eと接触し、駆動制御部21と反応容器5の表面弾性波素子24とが電気的に接続される。従って、攪拌装置20は、キュベットホイール4の回転が停止する都度、駆動制御部21の接触子21bが接触するホイール電極4eが変わり、駆動される表面弾性波素子24、即ち、攪拌対象の反応容器5が変更される。
【0033】
ここで、駆動制御部21は、入力部16から制御部15を介して入力される液体の検査項目、入力部16から入力され、制御部15に記憶された液体の熱に関する特性等の情報に基づいて表面弾性波素子24の駆動条件を制御することにより、反応容器5が保持した検体や試薬を含む液体の温度を制御する。この場合、表面弾性波素子24の駆動条件としては、駆動制御部21が表面弾性波素子24に入力する駆動信号の振幅,周波数,印加時間(デューティ比)等がある。液体の熱に関する特性としては、液体の量,粘性,熱容量,比熱又は熱伝導率がある。駆動制御部21は、少なくともこれらの一つの特性に応じて反応容器5が保持した液体の温度を制御する。
【0034】
ここで、液体の熱に関する特性は、自動分析装置1のメーカー側が予め測定し、又は推定して工場出荷時に制御部15に記憶させる特性を含む他、工場出荷後にユーザー側で繰り返し実施される攪拌に先立つ予備攪拌測定の際に測定され、ユーザー側が独自に制御部15に記憶させた特性であってもよい。また、繰り返し攪拌を行う場合には、先行して行った攪拌の際に得られた液体の量,粘性,熱容量,比熱又は熱伝導率等の結果を、液体の熱に関する特性として利用してもよい。
【0035】
信号発生器22は、駆動制御回路23から入力される制御信号に基づいて発振周波数を変更可能な発振回路を有しており、数MHz〜数百MHz程度の高周波の駆動信号を表面弾性波素子24に入力する。駆動制御回路23は、メモリとタイマを内蔵した電子制御手段(ECU)が使用され、制御部15を介して入力部16から入力される制御信号に基づいて信号発生器22の作動を制御する。
【0036】
駆動制御回路23は、信号発生器22の作動を制御することにより表面弾性波素子24の駆動条件、例えば、表面弾性波素子24が発する音波の特性(周波数,強度(振幅),位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。また、駆動制御回路23は、内蔵したタイマに従って信号発生器22が発振する高周波信号の周波数を変化させることができる。
【0037】
表面弾性波素子24は、図4に示すように、圧電基板24aの表面に二方向性櫛歯状電極(IDT)からなる振動子24bが形成されている。振動子24bは、駆動制御部21から入力された駆動信号を音波(バルク波)に変換する発音部であり、振動子24bを構成する複数のフィンガーが圧電基板24aの長手方向に沿って配列されている。振動子24bは、入力端子24dとの間がバスバー24eによって接続されている。また、表面弾性波素子24は、一組の入力端子24dと単一の駆動制御部21との間がホイール電極4eに接触する接触子21bによって接続されている。表面弾性波素子24は、エポキシ樹脂等の音響整合層を介して反応容器5の側壁5bに取り付けられる。
【0038】
ここで、図4に示す表面弾性波素子24を含め、以下に説明する表面弾性波素子を示す図面は、構成の概略を示すことを主目的とするため、振動子を構成する複数のフィンガーの線幅又はピッチは必ずしも正確に描いていない。なお、電極パッド5eは、入力端子24d上に一体的に設けるか、入力端子24d自体が電極パッド5eであっても良い。
【0039】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転するキュベットホイール4によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器5に試薬分注機構6,7が試薬容器2a,3aから試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器5は、検体分注機構11によってラック10に保持された複数の検体容器10aから検体が順次分注される。そして、キュベットホイール4が停止する都度、接触子21bがホイール電極4eと接触し、駆動制御部21と反応容器5の表面弾性波素子24とが電気的に接続される。このため、反応容器5は、分注された試薬と検体が攪拌装置20によって順次攪拌されて反応する。
【0040】
自動分析装置1においては、通常、試薬の量に比べて検体の量が少なく、攪拌によって液体中に生ずる一連の流れによって反応容器5に分注された少量の検体が多量の試薬に引き込まれて検体と試薬との反応が促進される。このようにして検体と試薬が反応した反応液は、キュベットホイール4が再び回転したときに分析光学系12を通過し、図4に示すように、発光部12aから出射された光束LBが透過する。これにより、反応容器5内の試薬と検体の反応液は、受光部12cで側光され、制御部15によって成分濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器5は、洗浄機構13によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0041】
このとき、自動分析装置1は、予め入力部16から制御部15を介して入力された制御信号に基づき、キュベットホイール4の停止時に駆動制御部21が接触子21bから入力端子24dに駆動信号を入力する。これにより、表面弾性波素子24は、入力される駆動信号に応じて振動子24bが駆動され、音波(バルク波)を誘起する。誘起された音波(バルク波)は、音響整合層から反応容器5の側壁5b内へと伝搬し、図5に示すように、音響インピーダンスが近い液体L中へバルク波Wbが漏れ出してゆく。この結果、反応容器5内には、液体L中の振動子24bに対応する位置を起点として斜め上方と斜め下方に向かう2つの流れが生じ、分注された試薬と検体はこの2つの流れによって攪拌される。
【0042】
ここで、図6に示すように、表面弾性波素子24を駆動する駆動信号の中心周波数をf0、駆動信号の変調周期をT、駆動信号の振幅比をRA、駆動信号の印加時間としてデューティ比をRDとする。すると、攪拌装置20は、駆動制御部21によって表面弾性波素子24を駆動する駆動信号の振幅や印加時間(デューティ比)を種々に制御することができる。このとき、駆動信号の変調周波数fAMは、fAM=1/T(Hz)となる。
【0043】
この場合、例えば、振幅比RAは、図6に示すように、駆動信号の振幅を100%とした後、振幅0%、即ち、表面弾性波素子24に駆動信号を出力しない場合にはRA=100:0、駆動信号の振幅を100%とした後、振幅を50%とした場合にはRA=100:50となる。但し、振幅比RAは、振幅を0%とせず極めて低い振幅を有する駆動信号で振動子24bを駆動するような場合には、RA=100:0とならないときもある。また、デューティ比RDは、変調周期Tに対する駆動信号の印加時間tの比(=t/T)をいう。従って、図中振幅比RA=100:0の場合、t=T/2とすると、デューティ比はRD=50%となり、振幅比RA=100:50の場合には、t=Tより、デューティ比はRD=100%となる。ここで、振幅比RA=100:100で表面弾性波素子24を連続的に駆動した場合、デューティ比はRD=100%となるが、変調周期Tが無限となるため、振幅変調周波数fAM(=1/T)は0Hzとなる。
【0044】
このとき、攪拌装置20は、表面弾性波素子24を駆動する駆動信号に関し、駆動制御部21によって、例えば、振幅比RA=100:0、デューティ比50%の下に、振幅変調周波数fAMを種々の値に変更し、反応容器5が保持した液体の攪拌時間を測定したところ図7に示す結果が得られた。
【0045】
このとき使用した反応容器5は、内法が2×3×5(縦×横×高さ)mmであり、側壁5bの厚さが0.5mmであった。表面弾性波素子24は、振動子24bの中心周波数f0=97MHz、振動子24bを形成する櫛歯状電極の交差幅が2.15mm、対数が19対、隣接する電極指の間隔(=λ/2)が9.9μmであり、印加電力0.25Wの駆動信号で振動子24bを駆動した。そして、測定に当たっては、反応容器5に保持した蒸留水10μLに青色色素(エバンスブルー)液(比重>1)を1μL滴下して攪拌し、反応容器5内の色素液を伴った蒸留水をビデオ撮影して画像処理し、攪拌開始から色素液と蒸留水の色の分布が均一になるまでに要した時間(秒)を攪拌時間とした。
【0046】
図7に示す攪拌時間の測定結果から、表面弾性波素子24を駆動する駆動信号を増幅変調した場合、変調周波数fAMが5Hzより大きいと、表面弾性波素子24を連続的に駆動した場合に比べて攪拌時間が2倍以上に長くなった。これに対し、変調周波数fAMが2〜3Hzであると、攪拌時間は表面弾性波素子24を連続的に駆動した場合と略同じであった。従って、攪拌装置20は、最適な増幅変調制御の下に表面弾性波素子24を駆動すると、表面弾性波素子24の駆動時間を短縮し、攪拌に要するエネルギーを低減できることから、発生する音波の吸収に起因した液体の温度上昇も抑制することができる。
【0047】
このように、駆動信号を増幅変調制御して表面弾性波素子24を駆動する場合、駆動制御部21は、例えば、図8に示すように、信号発生器22が発振する駆動信号をスイッチSWで切り替えることによって複数の反応容器5A〜5Dのそれぞれの表面弾性波素子24を駆動するように構成する。ここで、攪拌装置20を搭載した自動分析装置1は、キュベットホイール4に4個以上の多数の反応容器5を配置しているが、ここでは図面表示の簡単のため、4つの反応容器5に基づいて説明する。
【0048】
このとき、駆動制御部21は、キュベットホイール4の停止時に、図9に示すように、各反応容器5A〜5Dの表面弾性波素子24を時分割で駆動し、振幅比RA=100:0、デューティ比50%の下に攪拌周期Tcで駆動する。これにより、各反応容器5A〜5Dは、時間tm1と時間tm2(=tm1/2)の2回攪拌され、例えば、反応容器5Aは、反応容器5Bが攪拌される時間tm1の信号停止中にスイッチSWが切り替えられ、表面弾性波素子24が駆動される。
【0049】
ここで、従来の攪拌装置は、キュベットホイール4の停止時に表面弾性波素子24を、図10に示すように、時間tm1の間連続して駆動することにより、反応容器5A〜5Dのそれぞれに保持された液体を攪拌している。このため、図10に示す従来の攪拌装置による攪拌の場合、攪拌時間はtm1であるのに対し、図9に示す駆動制御部21による攪拌の場合、各反応容器5A〜5Dの見掛け上の攪拌時間はtm1+tm2となる。従って、攪拌装置20は、駆動制御部21によって図9に示すように反応容器5A〜5Dの表面弾性波素子24を駆動する駆動信号を増幅変調制御して攪拌する場合、見掛け上の攪拌時間は従来の1.5倍となる。
【0050】
しかし、図9に示す増幅変調制御の場合、駆動制御部21は、反応容器5A〜5Dの表面弾性波素子24を振幅比RA=100:0、デューティ比RD=50%の下に駆動する。このため、攪拌装置20は、表面弾性波素子24の駆動時間が3/4・tm1となり、各反応容器5A〜5Dを攪拌する際の駆動時間が従来に比べて1/4削減される。この結果、攪拌装置20は、反応容器5A〜5Dの攪拌に要する音波のエネルギーを3/4に低減できるため、照射する音波の吸収に起因する液体の温度上昇も抑制することができる。
【0051】
(実施の形態2)
次に、本発明の攪拌装置及び分析装置にかかる実施の形態2について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1は、駆動制御部によって駆動信号の振幅又は印加時間、特に駆動信号の振幅を変調制御することにより、音波の吸収に起因する液体の温度上昇を抑制する場合について説明した。これに対し、実施の形態2は、液体の温度に応じて駆動制御部によってデューティ比を制御することにより、音波の吸収に起因する液体の温度上昇を抑制している。
【0052】
実施の形態2の自動分析装置30は、図11に示すように、温度検出装置14を備えることを除き、実施の形態1の自動分析装置1と構成が同じである。従って、実施の形態2の自動分析装置及び攪拌装置を含め、以下に説明する自動分析装置及び攪拌装置は、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を使用して説明する。
【0053】
温度検出装置14は、図11に示すように、キュベットホイール4外周の検体分注機構11と駆動制御部21との間に配置されている。温度検出装置14は、反応容器5に保持された試薬と検体とを含む液体の温度を反応容器5の上方から非接触で検出する赤外線温度センサであり、検出した液体の温度は温度情報信号として制御部15及び制御部15を介して駆動制御部21へ出力される。
【0054】
攪拌装置20は、キュベットホイール4の停止時に温度検出装置14から入力される液体の温度情報信号をもとに、駆動制御部21が接触子21bから入力端子24dに予め設定された所定デューティ比の駆動信号を入力する。これにより、表面弾性波素子24が駆動され、搬送されてくる反応容器5に保持された試薬と検体とを含む液体が攪拌される。このとき、表面弾性波素子24は、駆動信号の印加電力が0.3Wの場合、反応容器5に保持された液体を均一に攪拌するには、図12に示すように、駆動信号のデューティ比が100%の場合には時間t(100)を必要とする。
【0055】
このとき、駆動制御部21は、表面弾性波素子24が照射する音波によって上昇する液体の温度を所定温度以下に制御するため、例えば、デューティ比50%で表面弾性波素子24を時分割で駆動する場合、図12に示すように、表面弾性波素子24に時間t(50)の攪拌を3回(振幅変調周波数fAM=3Hz)行わせると共に、表面弾性波素子24への印加電力を0.6Wとすることで、全消費電力がデューティ比100%で連続駆動した場合と同じになるように駆動信号を制御している。そして、例えば、デューティ比33%で表面弾性波素子24を同様に駆動する場合には、駆動制御部21は、図12に示すように、表面弾性波素子24に時間t(33)の攪拌を3回行わせると共に、表面弾性波素子24への印加電力を0.91Wとすることで、全消費電力がデューティ比100%で連続駆動した場合と同じになるように駆動信号を制御している。
【0056】
同様に、駆動制御部21は、デューティ比25%の場合には、図12に示すように、例えば、時間t(25)の攪拌を3回行わせると共に、印加電力を1.2Wとし、デューティ比20%の場合には、例えば、時間t(20)の攪拌を3回行わせると共に、印加電力を1.5Wとすることで、全消費電力がデューティ比100%で連続駆動した場合と同じになるように駆動信号を制御している。この場合、全消費電力がデューティ比100%で連続駆動した場合よりも極端に少なくなると、攪拌効率が低下する。一方で、全消費電力が少ないほど、発熱を抑制できる利点がある。このため、100%以外のデューティ比で表面弾性波素子24を駆動する場合、駆動制御部21は、全消費電力をデューティ比100%で連続駆動した場合と同じとするか、全消費電力以下とすることが好ましい。
【0057】
【表1】

【0058】
このようにして駆動信号のデューティ比を制御する場合、予め、表1に示すデューティ比とデューティ比に対応した印加電力との関係を求め、駆動制御回路23に記憶させておく。そして、駆動制御部21は、温度検出装置14から入力される液体の温度情報をもとに駆動制御回路23がデューティ比と印加電力を決定し、対応する印加電力の駆動信号を表面弾性波素子24へ出力する。このとき、駆動制御回路23は、液体の温度が高い場合よりも低い場合に、液体に照射される音波の照射時間を短くし、又は音波の単位時間当たりの照射強度が強くなるように駆動信号のデューティ比を制御する。これにより、駆動制御部21は、液体の温度が低いときのように、液体の温度が多少上がっても問題がないような場合には、短時間で高パワーの音波を照射し、液体の温度が高い場合には、液体の温度が上がり過ぎないように制御している。
【0059】
このように、実施の形態2の攪拌装置20は、温度検出装置14から入力される液体の温度情報信号をもとに、駆動制御部21が液体を攪拌する際の駆動信号のデューティ比と印加電力とを決定し、液体を攪拌する。このため、実施の形態2の攪拌装置20は、実施の形態1の攪拌装置20に比べて液体の温度をより高精度に制御することができる。
【0060】
ここで、デューティ比20%、印加電力1.5Wで表面弾性波素子24に時間t(20)の攪拌を時分割で3回行わせた場合における液体の温度の変化を測定したところ、図13に実線で示す結果が得られた。この場合、デューティ比20%とした関係で駆動信号の印加電力がデューティ比100%の場合の5倍と大きいため、信号のオン直後に液体の温度は急峻に上昇するが、信号をオフすると液体の温度はすぐに下降する傾向を示した。
【0061】
比較のため、デューティ比100%、印加電力0.3Wで表面弾性波素子24に時間t(100)の間連続して攪拌させた場合における液体の温度の変化を同様に測定したところ、図13に点線で示す結果が得られた。デューティ比100%の場合は、デューティ比20%の場合に比べて駆動信号の印加電力が1/5と小さいため、信号のオン直後に液体の温度は上昇するが、デューティ比20%の場合に比べて温度上昇は小さい。しかしながら、連続して攪拌しているので、時間経過に伴って温度が緩やかに上昇する傾向を示した。
【0062】
従って、デューティ比20%で表面弾性波素子24を駆動すると、駆動信号のオン,オフの繰り返しにより、デューティ比100%で表面弾性波素子24を連続駆動する場合に比べて攪拌後における液体の温度上昇がΔTだけ抑えられた。
【0063】
そこで、デューティ比の相違による液体の温度上昇を調べるため、反応容器5に同量の蒸留水を分注し、キュベットホイール4の停止時に、デューティ比25,33,50,75,100%で表面弾性波素子24をそれぞれ駆動し、蒸留水の温度の上昇率(℃/秒)を測定した。この結果を、図14に示す。図14に示す結果から明らかなように、デューティ比と液体温度の上昇率との間には比例関係があり、デューティ比が小さい程、液体の温度上昇を抑制できることが分かった。このとき、反応容器5及び表面弾性波素子24は、図7に示す液体の攪拌時間の測定に用いたものと同じものを使用し、印加電力は表1と同じに設定し、振幅変調周波数を3Hzとして1回の攪拌周期の間に時分割で3回攪拌した。
【0064】
更に、図7に示す液体の攪拌時間の測定と同じ手法を使用してデューティ比の相違による液体の攪拌時間を測定し、その結果を図15に示した。この場合、振幅変調波形は方形波を用い、デューティ比は20,25,33,50,100%として表1の印加電力に設定し、振幅変調周波数は3Hz、即ち、1秒間に時分割で3回攪拌した。図15に示す結果から明らかなように、デューティ比100%で攪拌するよりも、デューティ比を小さくして表面弾性波素子24を駆動する印加電力を大きくした方が、攪拌時間を短縮することができる。特に、デューティ比を25%に設定すると攪拌時間を最短とすることができ、デューティ比100%の場合に比べて4割、攪拌時間を短縮することができる。
【0065】
(実施の形態3)
次に、本発明の攪拌装置及び分析装置にかかる実施の形態3について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態2は、温度検知装置が検知した液体の温度に応じて駆動制御部によってデューティ比を制御することにより、音波の吸収に起因する液体の温度上昇を抑制する場合について説明した。これに対し、実施の形態3は、冷却手段によって液体を冷却することにより、音波の吸収に起因する液体の温度上昇を抑制する場合について説明している。
【0066】
図16は、本発明の実施の形態3を説明する図であり、攪拌装置を備えた自動分析装置の概略構成図である。図17は、自動分析装置を構成するキュベットホイールの一部を断面にして拡大して示した図2に対応する斜視図である。図18は、反応容器を収容したキュベットホイールをホイール電極の位置で水平に切断した平面図である。図19は、攪拌装置の概略構成をキュベットホイール及び反応容器の断面図と共に示すブロック図である。
【0067】
実施の形態3の自動分析装置40は、図16に示すように、実施の形態1の自動分析装置1と主要部の構成が同じである。但し、自動分析装置40は、図17及び図18に示すように、キュベットホイール4の各ホルダ4b下部の周方向に隣り合う位置にペルチェ素子41を配置する凹部4fが形成され、凹部4fの奥に圧接部材42が配置されている。また、凹部4fは、上部にキュベットホイール4の上面に開口する換気孔4gが形成されている。
【0068】
ペルチェ素子41は、攪拌装置20の駆動制御回路23によって作動が制御され、表面弾性波素子24を介して反応容器5に保持された液体を冷却する冷却手段である。ペルチェ素子41は、圧接部材42が有する圧接ピン42aの先端に取り付けられている。ペルチェ素子41は、ホイール電極4eと同様にしてキュベットホイール4に設けた電極4hに接触する接触子21cによって攪拌装置20から駆動電力が供給される。ここで、電極4hとペルチェ素子41とは、電気配線によって接続されている。
【0069】
圧接部材42は、攪拌装置20の駆動制御回路23によって作動が制御され、表面弾性波素子24を介してペルチェ素子41を反応容器5に圧接する圧接手段である。圧接部材42は、例えば、ソレノイド等のアクチュエータが使用され、ホイール電極4eと同様にしてキュベットホイール4に設けた電極4iに接触する接触子21dによって攪拌装置20から駆動電力が供給される。ここで、電極4iと圧接部材42とは、電気配線によって接続されている。そして、圧接部材42は、各ホルダ4bに攪拌対象の液体を保持した反応容器5が配置されていない場合には、圧接ピン42aによってペルチェ素子41を凹部4f内に引き込んでいる。一方、圧接部材42は、各ホルダ4bに攪拌対象の液体を保持した反応容器5が配置されると、図18及び図19に示すように、圧接ピン42aを繰り出し、表面弾性波素子24を介してペルチェ素子41を反応容器5に圧接させる。
【0070】
自動分析装置40は、攪拌装置20がペルチェ素子41を備え、表面弾性波素子24への駆動信号の印加電力と反応容器5が保持した液体の温度上昇との関係が制御部15或いは駆動制御部21の駆動制御回路23に記憶されている。このため、自動分析装置40は、前記印加電力と液体の温度上昇との関係から攪拌装置20の駆動制御回路23によってペルチェ素子41の作動を制御することにより、表面弾性波素子24が照射する音波によって上昇する液体の温度を所定温度以下に制御することができる。
【0071】
このとき、攪拌装置20は、図8で説明したように、信号発生器22が発振する駆動信号をスイッチSWで切り替えることによって複数の反応容器5A〜5Dのそれぞれの表面弾性波素子24を駆動するように構成する。そして、図12で説明したように、予め記憶させておいたデューティ比とデューティ比に対応した印加電力との関係から、攪拌装置20は、図20に示すように、キュベットホイール4が停止した攪拌時間の間にスイッチを切り替えて反応容器5A〜5Dの表面弾性波素子24を順次駆動するようにしてもよい。このようにすると、図9,図10,図13〜図15を用いて説明したように、デューティ比100%で表面弾性波素子24を連続駆動する場合に比べて更に液体の温度上昇,消費電力を低減すると共に、攪拌時間を更に短縮することができる。
【0072】
(実施の形態4)
次に、本発明の攪拌装置及び分析装置にかかる実施の形態4について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態3は、冷却手段によって液体を冷却することにより、音波の吸収に起因する液体の温度上昇を抑制する場合について説明した。これに対し、実施の形態4は、駆動制御部によって表面弾性波素子を駆動する駆動信号の周波数を中心周波数に制御することにより、音波の吸収に起因する液体の温度上昇を抑制している。図21は、本発明の実施の形態4を説明する図であり、攪拌装置を備えた自動分析装置の概略構成図である。図22は、表面弾性波素子を駆動する駆動信号の周波数と反応容器が保持した液体温度の上昇率との関係を示す図である。図23は、表面弾性波素子を駆動する駆動信号の周波数と反応容器が保持した液体の攪拌時間との関係を示す図である。
【0073】
実施の形態4の自動分析装置50は、図21に示すように、実施の形態2の自動分析装置30及び攪拌装置20と構成が同じであるが、音波の吸収に起因する液体の温度上昇の抑制手法が異なっている。即ち、自動分析装置50は、駆動制御部21によって表面弾性波素子24を駆動する駆動信号の周波数を中心周波数に制御することにより、音波の吸収に起因する液体の温度上昇を抑制している。
【0074】
ここで、攪拌装置20の表面弾性波素子24を駆動する駆動信号の周波数と反応容器5が保持した液体温度の上昇率との関係を測定した。測定は、振動子24bの中心周波数が98MHzの表面弾性波素子24を使用し、駆動信号の周波数を90,92,94,96,97,98,100,102,104MHzとした。また、駆動制御部21によってデューティ比100%に制御して表面弾性波素子24を0.3Wで駆動し、液体の温度は温度検出装置14を用いて非接触で測定した。この測定結果を、図22示す。図22に示す結果から、液体温度の上昇率(℃/秒)は、中心周波数f0よりも周波数の小さい96MHzで最大となる上に凸の放物線形状を示し、96MHzと中心周波数f0との液体温度の上昇率の差ΔTは約0.15℃であった。
【0075】
一方、駆動信号の周波数と反応容器5が保持した液体の攪拌時間との関係を測定した。このとき、反応容器5及び表面弾性波素子24は、図7に示す液体の攪拌時間の測定に用いたものと同じものを使用し、駆動制御部21によってデューティ比100%に制御して表面弾性波素子24を0.3Wで駆動した。この測定結果を、図23示す。図23に示す結果から明らかなように、攪拌時間は、攪拌効率が最大となる中心周波数f0で最短となる下に凸の放物線形状の特性を示している。
【0076】
従って、図22,図23に示す結果を比較すると、反応容器5が保持した液体は、表面弾性波素子24の攪拌効率が最大となる中心周波数f0で発熱が最大にならず、発熱が最大になる周波数は若干低い周波数側にずれていることが分かる。このため、攪拌装置20は、表面弾性波素子24の駆動周波数を攪拌時間が最短となる中心周波数f0に設定すると、表面弾性波素子24が照射する音波の吸収に起因する液体の温度上昇を抑制することができる。
【0077】
但し、攪拌時間が最短となる表面弾性波素子24の駆動周波数は、攪拌対象となる液体によって異なる。このため、測定対象となる液体ごとに予め最適な駆動周波数を求めて制御部15又は駆動制御回路23に記憶させておき、駆動制御部21は、制御部15を介して入力部16から入力される分析項目ごとに表面弾性波素子24の駆動周波数を設定する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態1を説明する図であり、攪拌装置を備えた自動分析装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す自動分析装置を構成するキュベットホイールのA部を拡大し、一部を断面にして示す斜視図である。
【図3】反応容器を収容したキュベットホイールをホイール電極の位置で水平に切断した平面図である。
【図4】実施の形態1の攪拌装置の概略構成を反応容器の斜視図と共に示すブロック図である。
【図5】表面弾性波素子が液体に照射するバルク波によって液体が攪拌される様子を示す攪拌容器及び表面弾性波素子の断面図である。
【図6】表面弾性波素子を駆動する駆動信号の変調周期、振幅比及びデューティ比を説明する図である。
【図7】振幅変調周波数の相違による液体の攪拌時間の違いの測定結果を示す図である。
【図8】実施の形態1の攪拌装置において、増幅変調された駆動信号をスイッチで切り替えて複数の反応容器の表面弾性波素子を個々に駆動する構成の一例を示すブロック図である。
【図9】図8において、表面弾性波素子を時分割で駆動し、振幅比RA=100:0、デューティ比50%の下に駆動する際の、複数の反応容器の駆動信号を示す信号波形図である。
【図10】従来の攪拌装置における複数の反応容器の表面弾性波素子をデューティ比100%で駆動する際の信号波形図である。
【図11】本発明の実施の形態2を説明する図であり、攪拌装置及び温度検出装置を備えた自動分析装置の概略構成図である。
【図12】実施の形態2の攪拌装置における表面弾性波素子を駆動する駆動信号のデューティ比の違いによる、印加電力と印加時間との関係を示す波形図である。
【図13】実施の形態2の攪拌装置における表面弾性波素子を駆動する駆動信号のデューティ比の違いによる、時間と液体の温度との関係を示す温度変化図である。
【図14】デューティ比の相違による液体温度の上昇率を示す図である。
【図15】デューティ比の相違による液体の攪拌時間の測定結果を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態3を説明する図であり、攪拌装置を備えた自動分析装置の概略構成図である。
【図17】自動分析装置を構成するキュベットホイールの一部を断面にして拡大して示した図2に対応する斜視図である。
【図18】反応容器を収容したキュベットホイールをホイール電極の位置で水平に切断した平面図である。
【図19】攪拌装置の概略構成をキュベットホイール及び反応容器の断面図と共に示すブロック図である。
【図20】実施の形態3の攪拌装置における表面弾性波素子を駆動する駆動信号の印加電力と印加時間との関係を示す波形図である。
【図21】本発明の実施の形態4を説明する図であり、攪拌装置を備えた自動分析装置の概略構成図である。
【図22】表面弾性波素子を駆動する駆動信号の周波数と反応容器が保持した液体温度の上昇率との関係を示す図である。
【図23】表面弾性波素子を駆動する駆動信号の周波数と反応容器が保持した液体の攪拌時間との関係を示す図である。
【図24】音波によって液体を攪拌する従来の攪拌装置における表面弾性波素子を駆動する駆動信号の電力と反応容器が保持した液体温度の上昇率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1 自動分析装置
2,3 試薬テーブル
4 キュベットホイール
5 反応容器
6,7 試薬分注機構
8 検体容器移送機構
9 フィーダ
10 ラック
11 検体分注機構
12 分析光学系
13 洗浄機構
14 温度検出装置
15 制御部
16 入力部
17 表示部
20 攪拌装置
21 駆動制御部
22 信号発生器
23 駆動制御回路
24 表面弾性波素子
30,40 自動分析装置
41 ペルチェ素子
42 圧接部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に保持された液体を音波によって攪拌する攪拌装置において、
前記液体に照射する音波を発生させる音波発生手段と、
前記音波発生手段が照射する音波によって上昇する前記液体の温度を所定温度以下に制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする攪拌装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記液体の熱に関する特性に応じて前記液体の温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項3】
前記液体の熱に関する特性は、前記液体の量,粘性,熱容量,比熱又は熱伝導率の少なくとも一つであることを特徴とする請求項2に記載の攪拌装置。
【請求項4】
前記液体の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段の検出した前記液体の検出温度をもとに前記液体の温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記音波発生手段を駆動する駆動信号の振幅又は印加時間を制御することによって前記液体の温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記駆動信号の振幅の制御を振幅変調によって行うことを特徴とする請求項5に記載の攪拌装置。
【請求項7】
前記音波発生手段を複数有し、
前記制御手段は、前記複数の音波発生手段を時分割に切り替えて駆動することを特徴とする請求項6に記載の攪拌装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記駆動信号のデューティ比を制御することを特徴とする請求項6に記載の攪拌装置。
【請求項9】
前記デューティ比の制御は、前記液体の攪拌に必要な全消費電力が、前記音波発生手段を連続駆動した場合に必要な電力以下になるように行うことを特徴とする請求項8に記載の攪拌装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記液体の温度が高い場合よりも低い場合に、当該液体に照射される前記音波の照射時間が短くなるように前記駆動信号のデューティ比を制御することを特徴とする請求項9に記載の攪拌装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記液体の温度が高い場合よりも低い場合に、当該液体に照射される前記音波の単位時間当たりの照射強度が強くなるように前記駆動信号のデューティ比を制御することを特徴とする請求項9に記載の攪拌装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記音波発生手段を駆動する駆動信号の周波数を前記液体に応じて設定することを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記駆動信号の周波数を前記音波発生手段の中心周波数に設定することを特徴とする請求項12に記載の攪拌装置。
【請求項14】
前記液体を冷却する冷却手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記冷却手段の作動を制御することにより、前記液体の温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項15】
前記音波発生手段は、表面弾性波素子であることを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項16】
複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する分析装置であって、請求項1〜15のいずれか一つに記載の攪拌装置を用いて検体と試薬との反応液を光学的に分析することを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−248252(P2007−248252A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71660(P2006−71660)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】