説明

放射線撮像装置

【課題】結合後の欠損画素である結合欠損画素を適正に監視することができる放射線撮像装置を提供することを目的とする。
【解決手段】結合(ビニング)の対象となる行列方向に隣接する複数の画素のいずれかの画素において欠損画素が含まれている場合には、ビニング処理後(結合後)のビニング画素(結合画素)をビニング欠損画素(結合欠損画素)としてビニング欠損画素検出部23は処理する。そのビニング欠損画素の検出後に、検出されたビニング欠損画素のデータバスラインの読み出し方向の下流側に隣接するビニング画素の欠損判断を優先的にビニング欠損画素検出部23は行うことで、ビニング処理後(結合後)の欠損画素であるビニング欠損画素(結合欠損画素)を適正に監視することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療分野や、非破壊検査,RI(Radio isotope)検査,および光学検査などの工業分野や、原子力分野などに用いられる放射線撮像装置に係り、特に、欠損画素を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を例に採ると、放射線撮像装置において画像処理は、フラットパネル型放射線検出器(FPD)などに代表される放射線検出手段で検出された放射線に基づいて行われる。上述したFPDは、感応膜が基板上に積層されて構成されており、その感応膜に入射した放射線を検出して、検出された放射線を電荷に変換して、2次元アレイ状に配置されたキャパシタに電荷を蓄積する。蓄積された電荷はスイッチング素子をONすることで読み出されて、電気信号として画像処理部に送り込まれて画像処理が行われる。したがって、キャパシタやスイッチング素子を構成する検出素子ごとに蓄積される電荷の量にバラツキがあり、それによって検出素子ごとの電気信号に基づく画素値についてもバラツキがある。
【0003】
特に、検出素子として機能しない場合には、画素値が極端に大きくなって画像上で白く浮き出る、あるいは画素値が極端に小さくなって画像上で黒くなる。検出素子の感度が高い場合には、放射線が入射していない状態でも暗電流が発生して画素値が大きくなる。逆に、検出素子の感度が低い、あるいは検出素子にゴミなどが付着した場合には、画素値が小さくなる。このような値を有する画素は『欠損画素』と呼ばれている。
【0004】
欠損画素を補間する手法として、欠損画素に隣接する複数個の画素から中央値の画素で欠損画素を置換するメディアンフィルタ処理や、隣接する画素に基づいて画素を補間する補間処理などがある(例えば、特許文献1参照)。また、欠損画素を検出して補間する一連の操作(この操作を、以下、『欠損登録』とも呼ぶ)は、所定の期間(例えば1ヵ月)ごとに行われる。近年ではキャリブレーションを利用して欠損登録が、従来よりも短い期間(例えば1日)で行われる(例えば、特許文献2参照)。ここで、キャリブレーションは、バラツキをなくすために、例えば検出素子ごとの増幅器(アンプ)のゲインをそれぞれ調節して出力側をそろえるものである。
【0005】
また、複数の画素(例えば縦横2×2の画素)を1つにまとめて結合(「ビニング」とも呼ぶ)する場合には、結合後(ビニング処理後)の画素である結合画素(以下、適宜「ビニング画素」という)について欠損画素を検出して、ビニングのサイズ(例えば縦横2×2の画素、縦横4×4の画素など)ごとに欠損画素の情報を有した画像(「欠損マップ」とも呼ばれる)を保持する。そして、補間する場合には、同じビニングのサイズ同士で、補間対象となる画像を欠損マップに合わせて補間を行う。したがって、例えば縦横2×2の画素をビニングする場合には、縦横2×2の画素からビニングされた欠損マップを保持するとともに、縦横4×4の画素をビニングする場合には、縦横4×4の画素からビニングされた欠損マップを保持する。そして、補間対象となる画像が例えば縦横2×2の画素からビニングされた画像の場合には、同じビニングのサイズである縦横2×2の画素からビニングされた欠損マップに基づいて補間を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−301883号公報(第2−9頁、図2,5,7)
【特許文献2】特開2005−270552号公報(第3−8頁、図5−8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、欠損画素については常に変化し、欠損画素であった(と思われた)画素が正常な画素であった場合には、欠損マップに基づいて補間を行うと過補正になり、逆に欠損画素でなかった画素が欠損画素となった場合には、補間を行うべきであるのに補間が行われずに正常な画像が得られないという問題がある。そこで、欠損画素を時間的に監視するという技術も数多く提案されている。一方で、欠損画素を時間的に単に監視するだけでなく、欠損画素の位置情報に基づいて監視することも望まれる。特に、上述のビニング処理においては、欠損画素を適正に監視することが望まれる。
【0008】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、結合後の欠損画素である結合欠損画素を適正に監視することができる放射線撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意研究した結果、次のような知見を得た。
すなわち、フラットパネル型X線検出器(FPD)において、列方向の各画素に接続された共通のデータライン(データバスライン)であって、ビニング処理後(結合後)の欠損画素である結合欠損画素(以下、適宜「ビニング欠損画素」という)のデータラインの読み出し方向の下流側に隣接して欠損が、結合画素(ビニング画素)に新たに現れることを経験的に見出した。このような欠損が新たに現れることについては、現時点では解明されていないが、共通するデータラインに流れる電流に起因すると考えられる。
【0010】
このような知見に基づくこの発明は、次のような構成をとる。
すなわち、この発明に係る放射線撮像装置は、放射線を検出する検出素子を画素として2次元マトリックス状で配列し、行方向の各画素に接続された共通の駆動ラインと、列方向の各画素に接続された共通のデータラインを有し、各行毎に前記駆動ラインを駆動することにより、前記データラインから各画素のデータを読み出す放射線撮像装置において、
各画素において検出された放射線のデータに基づき動作不良の画素を欠損画素として検出する欠損画素検出手段と、
行列方向に隣接する複数の画素から得られるデータを結合しこれを結合画素からのデータとする結合手段と、
結合画素のいずれかの画素において欠損画素が含まれている場合、その結合画素を結合欠損画素として処理する結合欠損画素検出手段を備え、
前記結合欠損画素検出手段は、前記結合欠損画素の検出後に、検出された結合欠損画素のデータラインの読み出し方向の下流側に隣接する結合画素の欠損判断を優先的に行うことを特徴とするものである。
【0011】
[作用・効果]行列方向に隣接する複数の画素から得られるデータを結合しこれを結合画素からのデータとして処理(すなわちビニング処理)し、結合画素のいずれかの画素において欠損画素が含まれている場合、その結合画素を結合欠損画素として処理する場合に、結合欠損画素のデータラインの読み出し方向の下流側に隣接して欠損が、結合画素に新たに現れることを経験的に見出したことを上で述べた。そこで、この発明に係る放射線撮像装置によれば、結合欠損画素検出手段は、結合欠損画素の検出後に、検出された結合欠損画素のデータラインの読み出し方向の下流側に隣接する結合画素の欠損判断を優先的に行うことで、結合後の欠損画素である結合欠損画素を適正に監視することができる。ここで、「欠損判断を優先的に行う」とは、いかなる判断条件にも関わらず、結合欠損画素のデータラインの読み出し方向の下流側に隣接する結合画素について、欠損の有無の判断を先に行う意味であることに留意されたい。
【0012】
また、上述した発明とは別の発明に係る放射線撮像装置は、放射線を検出する検出素子を画素として2次元マトリックス状で配列し、行方向の各画素に接続された共通の駆動ラインと、列方向の各画素に接続された共通のデータラインを有し、各行毎に前記駆動ラインを駆動することにより、前記データラインから各画素のデータを読み出す放射線撮像装置において、
各画素において検出された放射線のデータに基づき動作不良の画素を欠損画素として検出する欠損画素検出手段と、
行列方向に隣接する複数の画素から得られるデータを結合しこれを結合画素からのデータとする結合手段と、
結合画素のいずれかの画素において欠損画素が含まれている場合、その結合画素を結合欠損画素として処理する結合欠損画素検出手段を備え、
前記結合欠損画素検出手段は、前記結合欠損画素の検出後に、検出された結合欠損画素のデータラインの読み出し方向の下流側に隣接する結合画素を結合欠損画素として処理することを特徴とするものである。
【0013】
この発明に係る放射線撮像装置によれば、結合欠損画素検出手段は、結合欠損画素の検出後に、検出された結合欠損画素のデータラインの読み出し方向の下流側に隣接する結合画素を結合欠損画素として処理することで、結合後の欠損画素である結合欠損画素を適正に監視することができる。前者の発明の場合には、欠損判断によっては必ずしも結合欠損画素となるとは限らないが、この(後者の)発明の場合には、欠損判断を行わずに、隣接する結合画素を結合欠損画素として必ず処理することに前者の発明と相違がある。
【0014】
上述したこれらの発明において、結合欠損画素検出手段で処理された結合欠損画素の補間を行う欠損画素補間手段を備えるのが好ましい。放射線検出手段で検出された放射線に基づいて、欠損画素補間手段で結合欠損画素の補間を行って画像処理を行うことで、被検体の撮像を行う。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る放射線撮像装置によれば、結合欠損画素検出手段は、結合欠損画素の検出後に、検出された結合欠損画素のデータラインの読み出し方向の下流側に隣接する結合画素の欠損判断を優先的に行う、あるいは当該隣接する結合画素を結合欠損画素として処理することで、結合後の欠損画素である結合欠損画素を適正に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例に係るX線診断装置のブロック図である。
【図2】X線診断装置に用いられている画像処理部の具体的構成を示したブロック図である。
【図3】X線診断装置に用いられる側面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路である。
【図4】平面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路である。
【図5】一連の画像処理を示すフローチャートである。
【図6】ビニング処理の説明に供する画像の模式図であり、(a)はビニング処理前の画像の模式図、(b)はビニング処理後の画像の模式図である。
【図7】ビニング欠損画素(結合欠損画素)検出の説明に供する画像の模式図であり、(a)は欠損画素検出部で検出されたビニング欠損画素(結合欠損画素)の画像の模式図、(b)は検出されたビニング欠損画素(結合欠損画素)のデータバスラインの読み出し方向の下流側に隣接したビニング画素(結合画素)がビニング欠損画素(結合欠損画素)のときの画像の模式図、(c)は(a)および(b)を合成した画像の模式図である。
【実施例】
【0017】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係るX線診断装置のブロック図であり、図2は、X線診断装置に用いられている画像処理部の具体的構成を示したブロック図であり、図3は、X線診断装置に用いられる側面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路であり、図4は、平面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路である。本実施例では、放射線検出手段としてフラットパネル型X線検出器(以下、適宜「FPD」という)を例に採るとともに、放射線撮像装置としてX線診断装置を例に採って説明する。
【0018】
本実施例に係るX線診断装置は、図1に示すように、被検体Mを載置する天板1と、その被検体Mに向けてX線を照射するX線管2と、被検体Mを透過したX線を検出するFPD3とを備えている。FPD3は、放射線検出手段に相当する。
【0019】
X線診断装置は、他に、天板1の昇降および水平移動を制御する天板制御部4や、FPD3の走査を制御するFPD制御部5や、X線管2の管電圧や管電流を発生させる高電圧発生部6を有するX線管制御部7や、FPD3から電荷信号であるX線検出信号をディジタル化して取り出すA/D変換器8や、A/D変換器8から出力されたX線検出信号に基づいて種々の処理を行う他に後述するビニング処理やビニング欠損画素(結合欠損画素)の検出、さらには欠損画素の検出・補間といった欠損登録を行う画像処理部9や、これらの各構成部を統括するコントローラ10や、処理された画像などを記憶するメモリ部11や、オペレータが入力設定を行う入力部12や、処理された画像などを表示するモニタ13などを備えている。
【0020】
天板制御部4は、天板1を水平移動させて被検体Mを撮像位置にまで収容したり、昇降よび水平移動させて被検体Mを所望の位置に設定したり、水平移動させながら撮像を行ったり、撮像終了後に水平移動させて撮像位置から退避させる制御などを行う。FPD制御部5は、FPD3を水平移動させたり、被検体Mの体軸の軸心周りに回転移動させることによる走査に関する制御などを行う。高電圧発生部6は、X線を照射させるための管電圧や管電流を発生してX線管2に与え、X線管制御部7は、X線管2を水平移動させたり、被検体Mの体軸の軸心周りに回転移動させるによる走査に関する制御や、X線管3側のコリメータ(図示省略)の照視野の設定の制御などを行う。なお、X線管2やFPD3の走査の際には、X線管2から照射されたX線をFPD3が検出できるようにX線管2およびFPD3が互いに対向しながらそれぞれの移動を行う。
【0021】
A/D変換器8は、FPD3から出力された電荷信号をアナログからディジタルに変換して、ディジタル化したX線検出信号を出力する。コントローラ10は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されており、メモリ部11は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体などで構成されている。メモリ部11は、ビニング処理前の欠損マップを書き込んで記憶するビニング処理前欠損マップメモリ部11Aや、ビニング欠損画素検出部23での欠損判断を行うために予め定められた所定値(しきい値)を記憶するしきい値メモリ部11Bとを備えている。また、入力部12は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。X線診断装置では、被検体Mを透過したX線をFPD3が検出して、検出されたX線に基づいて画像処理部9で画像処理を行うことで被検体Mの撮像を行う。
【0022】
図2に示すように、画像処理部9は、検出されたX線に基づく画素について欠損画素を検出する欠損画素検出部21と、複数の画素を1つにまとめて結合するビニング処理を行うビニング処理部22と、そのビニング処理部22による結合後(ビニング処理後)の欠損画素である結合欠損画素(ビニング欠損画素)を検出するビニング欠損画素検出部23と、ビニング欠損画素検出部23で処理された結合欠損画素(ビニング欠損画素)の補間を行う欠損画素補間部24とを備えて構成されている。これらの構成を備えることで画像処理部9は、欠損画素の検出および補間の一連の操作である欠損登録を行うとともに、ビニング処理やビニング欠損画素(結合欠損画素)の検出も行う。欠損画素検出部21は、この発明における欠損画素検出手段に相当し、ビニング処理部22は、この発明における画素結合手段に相当し、ビニング欠損画素検出部23は、この発明における結合欠損画素検出手段に相当し、欠損画素補間部24は、この発明における欠損画素補間手段に相当する。
【0023】
欠損画素検出部21は、分離回路や比較器などで構成されており、分離回路でX線検出信号に基づく画素値をキャパシタやスイッチング素子32を構成する検出素子ごとに空間的に展開して、展開された画素値を比較することで、最大値あるいは最小値の画素が動作不良の画素として、その動作不良の画素を欠損画素として検出する。なお、欠損画素検出部21は、上述の構成に限定されず、ローパスフィルタ(LPF)と減算器とで欠損画素検出部21を構成し、空間的に展開された画素の信号のうち、高周波成分である急峻な画素の信号以外の低周波成分のみをローバスフィルタで通過させ、低周波成分と全体の信号とを減算器で減算して急峻な画素を検出することで、急峻な画素、すなわち最大値あるいは最小値の画素を検出してもよい。
【0024】
ビニング処理部22は、加算器や除算器などで構成されており、X線検出信号に基づく画素値において、結合(ビニング)の対象となる行列方向に隣接する複数の画素の画素値を加算器で加算する。このように加算された画素値をビニング処理された画素であるビニング画素(結合画素)の画素値とする。このように、加算された画素値をビニング画素の画素値としてもよいし、加算された画素値から、除算器で結合(ビニング)の対象となる行列方向に隣接する複数の画素数で除算することで、加算平均(相加平均)を求め、加算平均された画素値をビニング画素の画素値としてもよい。
【0025】
また、欠損画素は、上述した欠損画素検出部21で検出された画素だけに限定されずに、ビニング処理部22によるビニング画素で欠損を検出したビニング欠損画素(結合欠損画素)や、そのビニング欠損画素のデータバスライン39(図3、図4を参照)の読み出し方向の下流側に隣接して欠損が、ビニング画素に新たに現れた場合も含む。そこで、かかる欠損が新たに出現した隣接のビニング画素もビニング欠損画素として処理するために、欠損画素検出部21、ビニング処理部22の後段に上述したビニング欠損画素検出部23を備える。ビニング欠損画素検出部23については図5のフローで後述する。
【0026】
欠損画素補間部24は、例えばメディアンフィルタなどで構成されており、複数個の画素(本実施例のようにビニング処理の場合には複数個のビニング画素)からメディアンフィルタで中央値の画素を検出して、その検出された中央値の画素で欠損画素を置換することで欠損画素を補間する。
【0027】
FPD3は、図3に示すように、ガラス基板31と、ガラス基板31上に形成された薄膜トランジスタTFTとから構成されている。薄膜トランジスタTFTについては、図3、図4に示すように、縦・横式2次元マトリクス状配列でスイッチング素子32が多数個(例えば、1024個×1024個)形成されており、キャリア収集電極33ごとにスイッチング素子32が互いに分離形成されている。すなわち、FPD3は、2次元アレイ放射線検出器でもある。スイッチング素子32は、この発明における検出素子に相当する。
【0028】
図3に示すようにキャリア収集電極33の上にはX線感応型半導体34が積層形成されており、図3、図4に示すようにキャリア収集電極33は、スイッチング素子32のソースSに接続されている。ゲートドライバ35からは複数本のゲートバスライン36が接続されているとともに、各ゲートバスライン36はスイッチング素子32のゲートGに接続されている。一方、図4に示すように、電荷信号を収集して1つに出力するマルチプレクサ37には増幅器38を介して複数本のデータバスライン39が接続されているとともに、図3、図4に示すように各データバスライン39はスイッチング素子32のドレインDに接続されている。
【0029】
図示を省略する共通電極にバイアス電圧を印加した状態で、ゲートバスライン36の電圧を印加(または0Vに)することでスイッチング素子32のゲートがONされて、キャリア収集電極33は、検出面側で入射したX線からX線感応型半導体34を介して変換された電荷信号(キャリア)を、スイッチング素子32のソースSとドレインDとを介してデータバスライン39に読み出す。なお、スイッチング素子32がONされるまでは、電荷信号はキャパシタ(図示省略)で暫定的に蓄積されて記憶される。各データバスライン39に読み出された電荷信号を増幅器38で増幅して、マルチプレクサ37で1つの電荷信号にまとめて出力する。出力された電荷信号をA/D変換器8でディジタル化してX線検出信号として出力する。ゲートバスライン36は、この発明における駆動ラインに相当し、データバスライン39は、この発明におけるデータラインに相当する。
【0030】
以上をまとめると、FPD3は、X線を検出する検出素子であるスイッチング素子32を画素として2次元マトリックス状で配列し、行方向の各画素に接続された共通の駆動ラインであるゲートバスライン36と、列方向の各画素に接続された共通のデータライン39を有している。そして、各行毎にゲートバスライン36を駆動することにより、データバスライン39から各画素のデータである電荷信号を読み出す。
【0031】
次に、本実施例装置における一連の画像処理について、図5のフローチャート、図6の模式図および図7の模式図を参照して説明する。図5は、一連の画像処理を示すフローチャートであり、図6は、ビニング処理の説明に供する画像の模式図であり、図7は、ビニング欠損画素(結合欠損画素)検出の説明に供する画像の模式図である。
【0032】
(ステップS1)欠損マップの取得
ビニング処理部22でのビニング処理を行うために、ビニング処理前の欠損マップを取得する。ビニング処理前の欠損マップとしては、X線を照射しない非照射状態で取得された画像に基づいて作成してもよいし、一定強度のX線照射状態で取得された画像に基づいて作成してもよい。また、非照射・照射状態に関係なく、キャリブレーションで得られたデータに基づいて、ビニング処理前の欠損マップを作成してもよい。
【0033】
非照射状態で取得された画像に基づいて、ビニング処理前の欠損マップを作成する場合を例に採って説明すると、X線を照射しない非照射状態でFPD3が電荷信号を出力してA/D変換器8でディジタル化した後に、画素値として画像処理部9に送り込む。かかる非照射状態でFPD3が電荷信号を出力して、出力された電荷信号(ディジタル化ではX線検出信号)に基づく画素値について欠損画素検出部21は欠損画素を検出する。このビニング処理前の欠損マップを、メモリ部11のビニング処理前欠損マップメモリ部11Aに書き込んで一旦記憶する。
【0034】
(ステップS2)ビニング処理
一方、欠損マップにおいて結合(ビニング)の対象となる行列方向に隣接する複数の画素の画素値の加算を画像処理部9のビニング処理部22は求める。そのために、ビニング処理前欠損マップメモリ部11Aに記憶されたビニング処理前の欠損マップを読み出して、その欠損マップに基づいてビニング処理部22は求める。例えば、図6(a)に示すように、縦横2×2の画素(黒枠の太字で図示)を1つにまとめて結合して、図6(b)に示すようにビニング処理を行う場合には、縦横2×2の合計4個の画素における画素値の加算を求める。同様に、縦横4×4の画素を1つにまとめて結合してビニング処理を行う場合には、縦横4×4の合計16個の画素における画素値の加算を求める。このように加算された画素値をビニング画素の画素値とする。図6中のハッチングで示した部分は欠損画素(図6(b)の場合にはビニング欠損画素)を示す。ビニングの対象となる縦横2×2の画素を例に採って説明すると、縦横2×2の画素のいずれかの画素において欠損画素が含まれている場合には、その縦横2×2の画素が結合されたビニング画素をビニング欠損画素(結合欠損画素)としてビニング欠損画素検出部23は処理する。
【0035】
各々のビニングのサイズ(縦横2×2の画素をビニングする2×2ビニングモード、縦横4×4の画素をビニングする4×4ビニングモードなど)に合わせて、ビニング処理後の欠損マップを作成する。各々のビニングのサイズに合わせて作成されたビニング処理後の欠損マップについては、ステップS3での欠損判断を行うので、ビニング処理前の欠損マップと相違し、メモリ部11には書き込まない。
【0036】
(ステップS3)欠損判断
ステップS2において、ビニング処理部22でビニング処理を行い、ビニング欠損画素検出部23でビニング欠損画素を検出したときに、そのビニング欠損画素のデータバスライン39の読み出し方向の下流側に隣接して欠損が、ビニング画素に新たに現れる。そこで、ステップS2で処理されたビニング欠損画素のデータバスライン39の読み出し方向の下流側に隣接するビニング画素の欠損判断を優先的に行う。上述したように、「欠損判断を優先的に行う」とは、いかなる判断条件にも関わらず、ビニング欠損画素(結合欠損画素)のデータバスライン39の読み出し方向の下流側に隣接するビニング画素(結合画素)について、欠損の有無の判断を先に行う意味である。
【0037】
欠損判断を行うためには、ビニング欠損画素検出部23を下記のように構成すればよい。すなわち、ビニング欠損画素検出部23は、比較器などで構成されており、メモリ部11のしきい値メモリ部11Bに記憶され予め定められた所定値(しきい値)と、加算して得られた隣接するビニング画素の画素値とを比較器で比較することで、欠損判断を行う。ステップS2で処理された当該ビニング欠損画素のデータバスライン39の読み出し方向の下流側に隣接したビニング画素の画素値が、欠損とならない正常な上限のしきい値と下限のしきい値との間にある場合には、正常な画素とし、逆に上限のしきい値よりも高い、あるいは下限のしきい値よりも低い場合には、その隣接したビニング画素が動作不良の画素として、図7(b)に示すように、その動作不良の画素をビニング欠損画素としてビニング欠損画素検出部23は処理する。このようにして、隣接したビニング画素が上限のしきい値と下限のしきい値との間にあるか否かを判断することで、当該ビニング画素の欠損判断を優先的に行う。
【0038】
なお、ステップS2で最初に得られたビニング欠損画素の欠損判断では、ビニング画素(欠損画素)のいずれかの画素において欠損画素が含まれている場合、そのビニング画素をビニング欠損画素(結合欠損画素)として処理していたのに対して、このステップS3での当該隣接するビニング画素の欠損判断では、予め定められたしきい値との比較で行っていることに留意されたい。
【0039】
ステップS3での欠損判断は上述のしきい値に限定されない。ビニング欠損画素検出部23を、欠損画素検出部21と同様に、分離回路や比較器などで構成し、空間的に展開された画素値を比較することで、隣接するビニング画素が最大値あるいは最小値の場合には、その最大値あるいは最小値の画素が動作不良の画素として、その動作不良の画素をビニング欠損画素として処理してもよい。
【0040】
このような欠損判断が行われた画像から、図7(c)に示すように、欠損マップを補正する。具体的には、図7(a)の欠損マップと、図7(b)の欠損マップとを、図7(c)に示すように合成することで、欠損マップを補正する。図6と同様に、図7中のハッチングで示した部分は欠損画素(ここではビニング欠損画素)を示す。ステップS1での欠損マップの取得と同様に、ビニング処理前の欠損マップも含めて、各々のビニングのサイズに合わせて補正された欠損マップを、メモリ部11に書き込んで一旦記憶する。
【0041】
本実施例では、ビニング欠損画素検出部23は、当該ビニング画素の欠損判断を優先的に行ったが、これに限定されない。当該ビニング画素をビニング欠損画素(結合欠損画素)として処理してもよい。実施例の場合には、欠損判断によっては必ずしもビニング欠損画素(結合欠損画素)となるとは限らないが、当該ビニング画素をビニング欠損画素として処理する場合には、欠損判断を行わずに、当該隣接するビニング画素をビニング欠損画素として必ず処理することに実施例の場合と相違がある。
【0042】
なお、時間的な経過にしたがって、データバスライン39の読み出し方向の下流側に、検出されたビニング欠損画素に隣接するビニング画素、そのビニング画素にさらに隣接するビニング画素、…と、次々に隣接する各ビニング画素に新たな欠損が出現した場合には、各ビニング画素の欠損判断を優先的に行ってもよいし、あるいは各ビニング画素をビニング欠損画素として処理してもよい。
【0043】
(ステップS4)画像を取得したか?
欠損画素補間部24での補間対象となる画像を取得したか否かを判定する。もし、補間対象となる画像を取得していない場合には、補間対象となる画像を取得するまでステップS4をループして待機する。また、補間対象となる画像を取得した場合には、次のステップS5に進む。
【0044】
補間対象となる画像を取得するには、以下のようにして行われる。すなわち、X線管2から被検体Mに向けてX線を照射し、被検体Mを透過したX線をフラットパネル型X線検出器(FPD)3が検出することで電荷信号を出力してA/D変換器8でディジタル化した後に、画素値として画像処理部9に送り込む。
【0045】
(ステップS5)欠損画素の補間
補間対象となる画像をステップS4で取得したら、ステップS2においてビニング欠損画素検出部23で検出されたビニング欠損画素、またはステップS3においてビニング欠損画素検出部23で処理されたビニング欠損画素の補間を欠損画素補間部24は行う。
【0046】
隣接したビニング画素においてステップS3での欠損判断で欠損がないと判断した場合には、ステップS2においてビニング欠損画素検出部23で検出されたビニング欠損画素を有した欠損マップ(図7(a)を参照)を、補間対象となる画像のビニングのサイズに合わせてメモリ部11から読み出して、その欠損マップに基づいて補間対象となる画像での欠損画素の補間を行う。
【0047】
隣接したビニング画素においてステップS3での欠損判断で欠損があると判断した場合には、ステップS2においてビニング欠損画素検出部23で検出されたビニング欠損画素およびステップS3においてビニング欠損画素検出部23で処理されたビニング欠損画素が合成された欠損マップ(図7(c)を参照)を、補間対象となる画像のビニングのサイズに合わせてメモリ部11から読み出して、その欠損マップに基づいて補間対象となる画像での欠損画素の補間を行う。そして、一連の処理を終了する。
【0048】
上述したように行列方向に隣接する複数の画素から得られるデータを結合しこれを結合画素からのデータとして処理(すなわちビニング処理)し、ビニング画素(結合画素)のいずれかの画素において欠損画素が含まれている場合、その結合画素を結合欠損画素として処理する場合に、ビニング欠損画素のデータバスライン39の読み出し方向の下流側に隣接して欠損が、ビニング画素(結合画素)に新たに現れることを経験的に見出した。そこで、以上のように構成された本実施例装置によれば、ビニング欠損画素検出部23は、結合欠損画素の検出後に、検出されたビニング欠損画素のデータバスライン39の読み出し方向の下流側に隣接するビニング画素の欠損判断を優先的に行うことで、ビニング処理後(結合後)の欠損画素であるビニング欠損画素(結合欠損画素)を適正に監視することができる。
【0049】
そして、ビニング欠損画素検出部23で処理されたビニング欠損画素の補間を行う欠損画素補間部24を備えている。FPD(フラットパネル型X線検出器)3で検出されたX線に基づいて、欠損画素補間部24で欠損画素の補間を行って画像処理を行うことで、被検体の撮像を行う。
【0050】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0051】
(1)上述した実施例では、図1に示すようなX線診断装置を例に採って説明したが、この発明は、例えばC型アームに配設されたX線診断装置にも適用してもよい。また、この発明は、X線CT装置にも適用してもよい。
【0052】
(2)上述した実施例では、フラットパネル型X線検出器(FPD)3を例に採って説明したが、画素を区画する2次元マトリクス状で配列された検出素子から構成されるX線検出器であれば、この発明は適用することができる。
【0053】
(3)上述した実施例では、X線を検出するX線検出器を例に採って説明したが、この発明は、ECT(Emission Computed Tomography)装置のように放射性同位元素(RI)を投与された被検体から放射されるγ線を検出するγ線検出器に例示されるように、放射線を検出する放射線検出器であれば特に限定されない。同様に、この発明は、上述したECT装置に例示されるように、放射線を検出して撮像を行う装置であれば特に限定されない。
【0054】
(4)上述した実施例では、FPD3は、放射線(実施例ではX線)感応型の半導体を備え、入射した放射線を放射線感応型の半導体で直接的に電荷信号に変換する直接変換型の検出器であったが、放射線感応型の替わりに光感応型の半導体を備えるとともにシンチレータを備え、入射した放射線をシンチレータで光に変換し、変換された光を光感応型の半導体で電荷信号に変換する間接変換型の検出器であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
3 … フラットパネル型X線検出器(FPD)
21 … 欠損画素検出部
22 … ビニング処理部
23 … ビニング欠損画素検出部
24 … 欠損画素補間部
36 … ゲートバスライン
39 … データバスライン
d … 検出素子
M … 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出する検出素子を画素として2次元マトリックス状で配列し、行方向の各画素に接続された共通の駆動ラインと、列方向の各画素に接続された共通のデータラインを有し、各行毎に前記駆動ラインを駆動することにより、前記データラインから各画素のデータを読み出す放射線撮像装置において、
各画素において検出された放射線のデータに基づき動作不良の画素を欠損画素として検出する欠損画素検出手段と、
行列方向に隣接する複数の画素から得られるデータを結合しこれを結合画素からのデータとする結合手段と、
結合画素のいずれかの画素において欠損画素が含まれている場合、その結合画素を結合欠損画素として処理する結合欠損画素検出手段を備え、
前記結合欠損画素検出手段は、前記結合欠損画素の検出後に、検出された結合欠損画素のデータラインの読み出し方向の下流側に隣接する結合画素の欠損判断を優先的に行うことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
放射線を検出する検出素子を画素として2次元マトリックス状で配列し、行方向の各画素に接続された共通の駆動ラインと、列方向の各画素に接続された共通のデータラインを有し、各行毎に前記駆動ラインを駆動することにより、前記データラインから各画素のデータを読み出す放射線撮像装置において、
各画素において検出された放射線のデータに基づき動作不良の画素を欠損画素として検出する欠損画素検出手段と、
行列方向に隣接する複数の画素から得られるデータを結合しこれを結合画素からのデータとする結合手段と、
結合画素のいずれかの画素において欠損画素が含まれている場合、その結合画素を結合欠損画素として処理する結合欠損画素検出手段を備え、
前記結合欠損画素検出手段は、前記結合欠損画素の検出後に、検出された結合欠損画素のデータラインの読み出し方向の下流側に隣接する結合画素を結合欠損画素として処理することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線撮像装置において、前記結合欠損画素検出手段で処理された結合欠損画素の補間を行う欠損画素補間手段を備えることを特徴とする放射線撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−13180(P2011−13180A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159764(P2009−159764)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】