説明

放電分解炉の構造

【課題】 アーク放電量が多く、処理量の大幅な増大を図ることができる放電分解炉の構造を提供する。
【解決手段】 路本体内の通路部23に、放電電極棒A1〜A4と、回転手段により回転する電通棒B1〜B6と、加重棒C1〜C3とから構成される上段の放電部30と、放電電極棒A5〜A7と、回転する電通棒B7〜B10と、加重棒C4、C5とから構成される下段の放電部31を設け、放電電極棒と電通棒との間、電通棒相互の間および電通棒と加重棒との間にそれぞれ発生したアーク放電のエネルギによる放電熱により処理対象物を熱化学分解する。従って、処理量がかなり多くなり、しかも、容量の増大を図れ、より処理量の増大を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を焼却した後の焼却灰、飛灰、下水道汚泥、汚染土壌、医療廃棄物、アスベストなどの処理対象物をアーク放電エネルギによる火花高熱により分子レベルまでに熱化学分解する放電分解炉の構造に関し、特に、炉の内部要素の形態、形状、配置などを工夫した放電分解炉の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭生活、農林水産業、自動車関連、各種製造業、食品加工業、土木建設業などの各種分野の産業活動、工業活動、商業活動、文化活動などに伴って排出される廃棄物や各種の鉱工業資源を、分子レベルまで熱化学分解することによって純粋物質を抽出して、廃棄物の再資源化や、鉱工業資源により高純度の物質を生産するアーク放電などの放電エネルギによる物質の減量化、無害化処理方法が、近年注目されている。
例えば、従来、特許文献1に示すように、ダイオキシン類や一酸化炭素を排出させず、物質残渣の減量化、重金属の分子分解などにおいての無公害の排ガスを排気可能で、地球温暖化にも影響を与えず、特に、最終処理物である焼却灰などの燃え灰の減量化や無害化、土壌汚染物質の無害化処理に有効な放電エネルギによる物質の無残渣処理方法およびその装置が知られている。
【0003】
このものは、例えば、投入された焼却灰などの処理物質を、一次と2次の2基の放電分解炉で放電エネルギによる高温により分子レベルまでに熱化学分解し、この熱化学分解で発生したガス中の一酸化炭素をガスバーナで燃焼し、次に、燃焼後のガスをサイクロンで集塵した後、冷却機で冷却し、さらに、ガス中の物質を吸着槽の吸着剤で吸着して、物質が吸着された後のガスを送風ブロアが介装されたダクトから排出するようにしたものである。
【特許文献1】特開2005−58820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記放電分解炉は、例えば、酸化雰囲気(大気状態)で放電電極に電圧を印加して通電すると、この電極間に配設されたカーボンなどからなる抵抗体の間よりアーク放電を発し、このアーク放電エネルギによる火花高熱が発生されるものであり、特許文献1の図4に示すように、黒鉛または炭化珪素からなる球状の抵抗体が、カーボングラファイトの熱緩衝材の床の上に放電電極の間に所定の間隔を介して、複数層にそれぞれ並列して配置されており、抵抗体の層を挟んで、棒状の放電電極が設置され、放電電極の間に抵抗体が配置された構成となっている。
【0005】
しかしながら、このような従来の放電分解炉は、抵抗体同士が接触し、この接触部分にアーク放電が起こるため、抵抗体は次第に外周面が消耗するが、抵抗体同士は接触部分が常に同じであるため、一部分だけ消耗する片減状態となり、アーク放電量が次第に減少し、炉の温度が低下するし、抵抗体の交換もよぎなくされる。
【0006】
さらに、処理対象物を上から落下させる構成であるが、抵抗体同士が接触して隙間が小さく、球状の抵抗体が多数接触して敷き詰められているため、処理対象物が下へと流れ難く、停滞してしまうため、炉としては、処理量がかなり低く、物質の無残渣処理装置全体の処理量にも影響を及ぼす。
しかも、抵抗体と放電電極との距離に限界があるため、抵抗体の設置個数の増加を図れず、炉の容量を増大できず、処理量の増大を図れないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためなされたものであり、炉の内部の構成要素の形態、形状、配置などを改善することにより、アーク放電量が多く、雰囲気などの温度が高く、しかも、断電性および断熱性に優れ、処理量の大幅な増大などを図ることができる放電分解炉の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するため、請求項1に係る放電分解炉の構造は、炉本体内に形成された通路部の上部に処理対象物の投入口を、下部に排出口を設ける一方、複数本の丸棒状の放電電極棒と、該放電電極棒と接触し、互いに接触または近接するように並列され、かつ、回転手段により回転される複数本の丸棒状の電通棒と、該電通棒に載置されて、当該電通棒に加重する丸棒状の加重棒と、を備えた放電部を前記通路部に該通路部を塞ぐように略水平方向に設け、前記放電電極棒と電通棒との間、該電通棒相互の間および電通棒と加重棒との間にそれぞれ発生したアーク放電のエネルギによる放電熱により処理対象物を熱化学分解することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る放電分解炉の構造は、前記放電部を前記通路部の上下方向に複数段にわたりそれぞれ間隔をもって配設したことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る放電分解炉の構造は、前記通路部の水平断面積が上部から下部に行くに従って小さくなるように形成すると共に、前記複数段の放電部における放電電極棒、電通棒および加重棒の設置本数を上段部から下段部に行くに従って少なく設定したことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る放電分解炉の構造は、前記回転手段は、モータと該モータの回転駆動力を前記電通棒に伝達する動力伝達機構とを備えて構成されることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る放電分解炉の構造は、前記電通棒の両端部に、通電端子接続側の端部と前記回転手段側の端部にそれぞれ連結される回転軸を、断電性および断熱性を有する構造としたことを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る放電分解炉の構造は、前記断電性および断熱性を有する構造の回転軸を、互いに所定の間隔をもって同芯に対向して配設された2本のシャフトと、該対向部分が位置するシャフト周りをこれを覆うように空間部をもって設けられた外筒と、前記シャフト間の間隔部分を含む該シャフトと外筒との間の空間部に充填された耐火体と、から構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明の放電分解炉の構造によれば、放電電極棒と電通棒との間、電通棒相互の間および電通棒と加重棒の間にそれぞれアーク放電が起こり、放電部分の電通棒表面で高温になるが、電通棒が回転しているため、アーク放電が次々に起こり電通棒表面が全周に亘って高温になり、電通棒表面に接触した処理対象物を熱化学分解することができるので、処理能力を向上することができる。
また、電通棒が丸棒状であるため、電通棒を密に敷き詰める必要がなくコストを削減できると共に、放電電極棒、電通棒および加重棒の寿命を向上することができる。
さらに、電通棒が回転しているため、処理対象物、特に、分解し難い土壌、石、炭素、陶器片などが下へと流れ易くなり、停滞するおそれがないので、分解炉として、処理能力が更に向上し、例えば、物質の無害化処理装置に適用した場合には、装置全体の処理能力の大幅な増大を図ることができる。
しかも、電通棒が丸棒状であるため、電通棒の設置個数の増加を図っても、放電電極棒からの電通棒への通電量が充分得られ、炉の容量の増大を図れ、より処理量の増大を図ることができる。
また、電通棒に加重する加重棒を設けているので、電通棒表面が消耗した場合には、加重棒が電通棒に加重し、該電通棒が極めて微少であるが、放電電極棒の方へ移動し、該放電電極棒と電通棒との接触状態を維持し、アーク放電量を長期にわたり維持することができ、電通棒の寿命を向上することができる。
【0015】
請求項2に係る発明の放電分解炉の構造によれば、放電電極棒、電通棒および加重棒を全て丸棒状に形成することで各段の放電部間の間隔に障壁がない構成となるため、全ての処理対象物が万遍なく熱分解され、上段の放電部から下段の放電部に至った処理対象物が種々の方向に流れて、上段の放電部で熱化学分解されなかったものが、より効果的に下段の放電部で熱化学分解され、処理能力を大幅に向上することができる。
【0016】
請求項3に係る発明の放電分解炉の構造によれば、下段の放電部での残渣量は大幅に少ないため、通路部の水平断面積が上部から下部に行くに従って小さくなるように形成しても問題はなく、複数段の放電部における放電電極棒、電通棒および加重棒の設置本数を上段から下段に行くに従って少なく設定することで、下段の放電部の放電電極棒、電通棒および加重棒の設置本数を少なくすることができる結果、コストダウンを図ることができる。
【0017】
請求項4に係る発明の放電分解炉の構造によれば、簡単に回転手段を形成できると共に、回転動作の信頼性を向上することができる。
【0018】
請求項5に係る発明の放電分解炉の構造によれば、電通棒からの高電流や高温の熱が放電電極棒への通電端子接続側や回転手段に伝達されることがなく、これらの高電流や高温の熱による悪影響を阻止することができる。
【0019】
請求項6に係る発明の放電分解炉の構造によれば、断電性および断熱性を有する構造の回転軸を、簡単に形成できると共に、その信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施の形態を詳述する。
図13は、本発明に係る放電分解炉の構造の実施形態を採用した物質の無害化処理装置の概略的なシステム図である。
【0021】
この装置は、放電分解炉としての1号炉1および2号炉2と、熱化学分解により発生したガス中の一酸化炭素を燃焼させるためのガスバーナ(LPG噴射部)3と、第1煙道4と、第2煙道(LPG補助噴射部)5と、第3煙道6と、燃焼後のガスの集塵を行う炭素粒子回収サイクロン(ガスを冷却するための直接水シャワー部)7および冷却機(温度降下・間接シャワー部)8と、炭素粒子回収サイクロン7および冷却機8に冷却水を循環供給する循環冷却水プール槽9と、バブフィルタ10と、複数の吸着槽を直列接続した2つのグループをさらに並列させた構成で、吸着槽の吸着剤でガス中の物質を吸着させる吸着装置11と、を備えている。また、前記1号炉1には、これと2号炉2の後述する放電電極棒に通電を行うための発電機又は電力供給源と制御盤12と第1のトランス13および第2のトランス14とが接続される。さらに、吸着装置11には、物質を吸着した後のガスを排出するための吸引ファン15を介装した排気管16が接続される。
なお、放電分解炉を1号炉1と、これに直列接続される2号炉2とに分けて設けて2段接続にしたのは、より確実の物質の分子化を行うためである。
【0022】
図1〜図11は、前記1号炉1の構成を示す図である。これらの図において、炉本体21は方形体形状にされ、上部と下部に後述する投入口28と排出口29が形成され、底部には残渣の回収口21Aが形成され、また、排出口29と2号炉2とを繋ぐ連通路21Bが形成される。外壁21Cの内部には、耐熱石盤22により形成された通路部23が設けられ、この耐熱石盤22の側部にはそれぞれ鉄板蓋24が間隔を介して配設される。さらに、耐熱石盤22の上部と下部には、それぞれアングル25を介して設置された耐火レンガ26、27からなる処理対象物の投入口28と排出口29とが形成されている。前記通路部23は、上側が大きく、下側が小さい略角錐形状をなしており、上段(1段目)と下段(2段目)に離間して2段の放電部30、31が設けられている。
【0023】
上段の放電部30は、丸棒状の放電電極棒A1〜A4と、後述する回転手段により回転する丸棒状の電通棒B1〜B6と、これの電通棒B1〜B6に加重する丸棒状の加重棒C1〜C3とから構成されている。この場合、放電電極棒A1〜A4は、横方向に離間して並列して4本配設され、隣り合う放電電極棒A1,A2、A2,A3、A3,A4間の下側位置には、横方向に離間して並列して2本づつの電通棒B1,B2、B3,B4、B5,B6がそれぞれ配設される。そして、隣り合う放電電極棒A1,A2、A2,A3、A3,A4間における一方の電通棒B1、B3、B5は放電電極棒A1、A2、A3の外周面にそれぞれ接触され、他方の電通棒B2、B4、B6は放電電極棒A2、A3、A4の外周面にそれぞれ接触されている。また、隣り合う放電電極棒A1,A2、A2,A3、A3,A4間の上側位置であって、並列する2本づつの電通棒B1,B2、B3,B4、B5,B6の上側の境部位置には、加重棒C1、C2、C3がそれぞれ配設されており、これら電通棒B1〜B6に接触して加重している。
【0024】
一方、下段の放電部31は、放電電極棒A5〜A7と、後述する回転手段により回転する電通棒B7〜B10と、これらの電通棒B7〜B10に加重する加重棒C4、C5とから構成されている。この場合、放電電極棒A5〜A7は、横方向に離間して並列して3本配設され、隣り合う放電電極棒A5,A6、A6,A7間の下側位置には、横方向に離間して並列して2本づつの電通棒B7,B8、B9,B10がそれぞれ配設される。そして、隣り合う放電電極棒A5,A6、A6,A7間における一方の電通棒B7、B9は放電電極棒A5、A6の外周面にそれぞれ接触され、他方の電通棒B8、B10は放電電極棒A6、A7の外周面にそれぞれ接触されている。また、隣り合う放電電極棒A5,A6、A6,A7間の上側位置であって、並列する2本づつの電通棒B7,B8、B9,B10の上側の境部位置には、加重棒C4、C5がそれぞれ配設されており、これら電通棒B7〜B10に接触して加重している。
【0025】
これらの放電電極棒A1〜A7、電通棒B1〜B10および加重棒C1〜C5は、それぞれカーボンから構成される。
【0026】
前記放電電極棒A1〜A7それぞれの片方の端部は、鉄板蓋24から突出して、通電端子部32がそれぞれ接続される。
各電通棒B1〜B10は後述する回転手段によって回転駆動され、その両側端部にはそれぞれ断電・断熱回転軸F1〜F20が取り付けられている。
【0027】
ここで、前記断電・断熱回転軸F1〜F20は電通棒B1〜B10の回転軸であるが、回転軸を通じて高電気が流れない断電性と、高い温度が伝わらない断熱性とを持つ必要があるため、次のように構成されている。
すなわち、図7は、電通棒B1の後述する回転手段側の端部に取り付けた断電・断熱回転軸F7を全ての断電・断熱回転軸F1〜F20の構成として示したものである。図において、断電・断熱回転軸F7は、互いに所定の間隔をもって同芯に対向して配設されたステンレスなどの芯金となる2本のシャフト40、41と、該対向部分が位置するシャフト40、41周りをこれを覆うように空間部をもって設けられた外筒42と、前記シャフト40、41間の間隔部分を含む該シャフト40、41と外筒42との間の空間部に充填された耐火体43と、シャフト40、41にそれぞれ打ち込まれた抜け止め・回り止めの根枷44と、から構成される。
【0028】
この場合、両方のシャフト40、41の芯出し精度を高めるため、1例として、次のように断電・断熱回転軸F1〜F20を製作すると良い。
すなわち、図8に示すように、例えば、所定長さの電線管50に一本の丸棒状のシャフト51を挿通する。このシャフト51には、それぞれ抜け止め・回り止めの根枷52を打ち込んでおく。そして、シャフト51を挿通してから、耐火セメントと耐火レンガ粉末とを混ぜ合わせた流動物(耐火体)53を電線管50内に流し込んで固める。そして、できたものを図の鎖線の如く中央から切断して2本の分割体を設け、これらをそれぞれ別の電線管に互いに所定の間隔をもって対向して挿通配設し、別の電線管と2本の分割体をねじ部材などで固定した後、別の電線管に設けた窓から耐火セメントと耐火レンガ粉末とを混ぜ合わせた流動物を2本の分割体同士の間隔部分に流し込んで固める。
【0029】
なお、断電・断熱回転軸F1〜F20としては、2種類設けられており、一方の種類は、通電端子部32接続側の断電・断熱回転軸であり、図示しないが、シャフトの一端部に電通棒B1〜B10を取り付けるためのおねじ部が形成されている。他方の種類は、回転手段側の断電・断熱回転軸であり、図7に示すように、シャフト40の一端部に電通棒B1〜B10を取り付けるためのおねじ部45が形成され、シャフト41の一端部に回転手段における後述するスプロケットを取り付けるためのキー溝46が形成されている。これらのおねじ部やキー溝は、断電・断熱回転軸製作前の前記シャフトに予め設けておくと良い(図8参照)。
【0030】
従って、通電端子部接続側の断電・断熱回転軸F1〜F6、F13〜F16は、それぞれ鉄板蓋24と耐熱石盤22との間に配設され、それぞれの一端部が耐熱石盤22を貫通してその電通棒B1〜B10の一端部がねじ結合され、他端部が図示しないベアリングを介して鉄板蓋24に回転自由に支持される。回転手段側の断電・断熱回転軸F7〜F12、F17〜F20は、それぞれ鉄板蓋24と耐熱石盤22との間に配設され、それぞれの一端部が耐熱石盤22を貫通して電通棒B1〜B10の他端部がねじ結合され、他端部が図示しないベアリングを介して鉄板蓋24に回転自由に支持される。
【0031】
この場合、後述するが、確実な分子分解工程が得られるように、下段の放電部31の電通棒B7〜B10の方が上段の放電部30の電通棒B1〜B6よりも若干回転速度が遅く設定されている。
【0032】
次に、電通棒B1〜B10を回転する回転手段としては、図2、図3および図5に示すように、モータ60と該モータ60の回転駆動力を各電通棒B1〜B10に伝達するスプロケット61およびチェーン62からなる動力伝達機構とを備えて構成される。
【0033】
上段の放電部30においては、モータ60の回転駆動軸にスプロケット61を取り付け、断電・断熱回転軸F8〜F12には2つのスプロケット61、61を取り付け、断電・断熱回転軸F7には1つのスプロケット61を取り付ける。そして、モータ60の回転駆動軸のスプロケット61と断電・断熱回転軸F12の鉄板蓋24からの突出端部に取り付けられたスプロケット61とをチェーン62で連結すると共に、隣接する断電・断熱回転軸F12,F11、F11,F10、F10,F9、F9,F8、F8,F7の鉄板蓋24からの突出端部に取り付けられたスプロケット61同士をチェーン62で連結して、モータ60の回転駆動力が全ての断電・断熱回転軸F8〜F12に伝達され、電通棒B1〜B6が回転されるようにする。
【0034】
また、下段の放電部30においては、モータ60の回転駆動軸にスプロケット61を取り付け、断電・断熱回転軸F18〜F20には2つのスプロケット61、61を取り付け、断電・断熱回転軸F17には1つのスプロケット61を取り付ける。そして、モータ60の回転駆動軸のスプロケット61と断電・断熱回転軸F20の鉄板蓋24からの突出端部に取り付けられたスプロケット61とをチェーン62で連結すると共に、隣接する断電・断熱回転軸F20,F19、F19,F18、F18,F17の鉄板蓋24からの突出端部に取り付けられたスプロケット61同士をチェーン62で連結して、モータ60の回転駆動力が全ての断電・断熱回転軸F17〜F20に伝達され、電通棒B7〜B10が回転されるようにする。
【0035】
次に、2号炉2の内部にも上段の放電部70および下段の放電部71が配設され、図12に示すようになっている。
すなわち、図において、上段の放電部70は、横方向に離間して並列する3本の放電電極棒A1〜A3と、これらの間に配設され、それぞれ放電電極棒A1〜A3と接触し、かつ、互いに接触する2本の電通棒B1,B2および3本の電通棒B3,B4,B5と、隣接する、放電電極棒A1と電通棒B1、放電電極棒A2と電通棒B2、放電電極棒A2と電通棒B3、放電電極棒A3と電通棒B5のそれぞれの上部の境部と、隣接する電通棒B1,B2、B3,B4、B4,B5のそれぞれ上部の境部とに、それぞれ載置される7本の加重棒C1〜C7と、を備えている。
【0036】
上段の放電部60における回転手段としては、モータの回転駆動軸に取り付けられるスプロケットEに2つのスプロケットDを噛み合わせ、このスプロケットD、Dの一方に電通棒B2に取り付けられるスプロケットD2を噛み合わせると共に、該スプロケットD2に電通棒B1に取り付けられるスプロケットD1を噛み合わせる。また、他方のスプロケットDに電通棒B3に取り付けられるスプロケットD3を噛み合わせると共に、該スプロケットD3に電通棒B4に取り付けられるスプロケットD4を噛み合わせ、該スプロケットD4に電通棒B5に取り付けられるスプロケットD5を噛み合わせる。
【0037】
従って、モータを回転駆動すれば、全ての電通棒B1〜B5が回転する。
下段の放電部71は、上段の放電部70と同じ配列の放電電極棒A1〜A3、電通棒B1〜B5並びに同じ構成の回転手段を備えると共に、電通棒B1〜B5に載置される複数本の加重棒Cの列を2段にわたり備えている。
【0038】
かかる2号炉2は、普段は上記したように、1号炉1が稼働していて、煙道として機能するが、医療廃棄物などの固形物を処理するときに、バッチ式にて処理物を投入して稼働するか、場合によっては、他の1000°C前後の完全燃焼できない排煙を導入して、分子分解処理する。この場合、1号炉1における放電電極棒、電通棒および加重棒の使用済の残り屑のカーボンで、下段の放電部71における加重棒Cを形成して、無駄がないようにしている。
なお、かかる2号炉2の構成は、本発明に係る放電分解炉の構造の他の実施形態に相当するものである。
【0039】
次に、図13に示した物質の無害化処理装置による処理方法を述べつつ、本発明の放電分解炉としての1号炉1の作用について説明する。
例えば、1号炉1のみを稼働し、2号炉2は煙道として機能させる場合、焼却灰などは、ホッパ、コンベア、昇降機などにより、1号炉1へと搬送されて、その上部の投入口28から投入される。
【0040】
1号炉1に、例えば、酸化雰囲気(大気状態)で上段の放電部30と下段の放電部31共に放電電極棒A1〜A7に電圧を印加して通電すると、上段の放電部30においては、放電電極棒A1〜A4(電通棒B1〜B6と接触しているため、回転するときもある)と回転手段により回転駆動される電通棒B1〜B6間、電通棒B1〜B6同士および加重棒C1〜C3と電通棒B1〜B6間よりそれぞれ間断なくアーク放電を発し、このアーク放電エネルギによる高火花高熱が発生される。下段の放電部31においても、放電電極棒A5〜A7と電通棒B7〜B10間、電通棒B7〜B10同士および加重棒C4、C5と電通棒B7〜B10間よりそれぞれ間断なくアーク放電を発し、このアーク放電エネルギによる高火花高熱が発生される。
【0041】
投入された焼却灰は、上段の放電部30において、前記アーク放電に直接接触し、または高温に熱せられた電通棒B1〜B6などの表面に接触し、放電エネルギの放電高熱により熱化学分解され分子化され、この分子化されたものと、分子化されなかった残渣(例えば、土壌、石、炭素、陶器の破片など)は、上記の間を通って、下方に流れ、下段の放電部31において、アーク放電エネルギの高熱により、上段の放電部30で分子化が不十分であり、残渣に付着した重金属などが完全に分子化され、無害化された状態で底部の回収口21Aより回収され、それ以外の分子化された物質はガスとして次段のガスバーナ3に供給される。
【0042】
ガスバーナ3では、LPGを噴射されて一酸化炭素が燃焼される。ガスバーナ3で一酸化炭素を燃焼されたガスは、第1煙道4、第2煙道5および第3煙道6を通って次段の炭素粒子回収サイクロン7に供給される。なお、ガスは第2煙道5を通る間に補助的に燃焼される。
【0043】
炭素粒子回収サイクロン7では、循環冷却水プール槽9から供給される冷却水シャワーをガスが直接浴びながら遠心力により集塵を行うと同時に、電通棒B1〜B10を構成するカーボンの飛び散った粒子もこの過程で集塵を行う。汚水となった冷却水は濾過され、清水となって循環冷却水プール9へと戻る。塵を除去され、ある程度冷却されたガスが、次段の冷却機8供給される。
【0044】
冷却機8においては、ガスが細い多数のパイプを通過する間に、上から循環冷却水プール9から供給される強力な冷却水シャワーが噴射されて、一気に冷却される。この場合、例えば、ガス温度は800°Cから100°C以下に引き下げられる。なお、冷却水はポンプなどにより循環冷却水プール9より循環供給される。冷却されたガスは、次段の吸着装置11に供給される。
【0045】
吸着装置11では、1号炉1のアーク放電エネルギによる高温で分子レベルまで熱化学分解されたガス中の物質が吸着される。
すなわち、吸着装置11で物質の純粋物質の、例えば、資源である、鉄、銀、金、アルミニウム、珪素などが吸着され、残りの成分の概ね水素ガスが送出される。
その際の排出は温風程度であると共に煙も臭いも一切ない。
【0046】
吸着装置11の吸着剤は、活性炭、ゼオライト、硫酸ナトリウムなどで構成された非常に径の小さな多数の孔を持った多孔体で、その孔の径よりも大きな径を持った物質の分子の流通を阻止して、分子化された物質を吸着する。
そして、吸着装置11の吸着剤交換処理量100t位で、吸着装置11の手前側の吸着槽の2基を取り外し、吸着槽を吸着物質と共に最終処理場に廃棄する。また、空になった装置槽に新しい吸着剤を入れて、今度は吸着装置11の最後尾に装填する。
【0047】
なお、吸着物質を大量に蓄え、これを加熱して、吸着物質の溶出温度の差を利用して、純粋物質、例えば、鉄、銀、金、アルミニウム、珪素などの資源を回収しても良い。 吸着装置11において、物質を吸着された残りのガス成分は、ダクト16から送風ブロア15により排ガスとして排出される。
【0048】
このような物質の無害化処理装置における1号炉(放電分解炉)1は、上述したように、上段の放電部30と下段の放電部31共に、放電電極棒A1〜A7と電通棒B1〜B10間、電通棒B1〜B10同士および加重棒C1〜C5と電通棒B1〜B10間よりそれぞれ間断なくアーク放電を発し、このアーク放電エネルギによる高火花高熱が発生されるが、電通棒B1〜B10が回転しているため、アーク放電が炉面一杯に次々と起こり、しかも、下段の放電部31の方が、電通棒B7〜B10の回転速度が若干遅いため、緩やかに、処理対象物を熱分解化学することができる。また、電通棒B1〜B10が回転しているため、処理対象物、特に、分解し難い土壌、石、炭素、陶器片などが下へと流れ易くなって停滞するおそれがなく、処理時間が速くなり、処理量の増加を図ることができるため、物質の無害化処理装置自体の処理量の増大を図ることができる。
【0049】
さらに、電通棒B1〜B10が丸棒状であるため、電通棒B1〜B10の設置個数の増加を図っても、放電電極棒A1〜A7からの電通棒B1〜B10への放電流が十分得られ、炉の容量の増大を図れ、より処理量の増大を図ることができる。
また、電通棒B1〜B10に加重する加重棒C1〜C5を設けているので、電通棒B1〜B10表面が消耗した場合には、加重棒C1〜C5が電通棒B1〜B10に加重し、該電通棒B1〜B10が極めて微少であるが、放電電極棒A1〜A7の方へ移動し、該放電電極棒A1〜A7と電通棒B1〜B10との接触状態を維持し、アーク放電量を長期にわたり維持することができ、電通棒B1〜B10の寿命を向上することができる。
【0050】
さらに、放電電極棒A1〜A7、電通棒B1〜B10および加重棒C1〜C5全てカーボンから構成して、材料の共通化を図るようにしたから、製作費用を低減することができ、コスト的に有利である。
【0051】
さらに、回転手段を、モータ60と、スプロケット61およびチェーン62などの動力伝達機構とを備えて構成したから、簡単に回転手段を形成できると共に、回転動作の信頼性を向上することができる。
【0052】
さらに、電通棒B1〜B10を回転駆動するべく、該電通棒B1〜B10の両端部に連結される回転軸に、断電・断熱回転軸F1〜F20を採用するようにした結果、電通棒B1〜B10から発せられる高電流および高温の熱がモータ60、スプロケット61およびチェーン62並びに放電電極棒A1〜A7への通電端子接続部分へと伝達されることがなく、これらの高電流および高温の熱による悪影響を阻止することができる。
【0053】
しかも、上記の断電・断熱回転軸F1〜F20は、互いに所定の間隔をもって同芯に対向して配設された2本のシャフト40、41を外筒42で覆い、このシャフト40、41と外筒42との間に耐火体43を充填した構成であるから、形成が容易であると共に、間隔をもって同芯に対向して配設された2本のシャフト40、41によって、万全な断電性が得られると共に、充填された耐火体43によって、万全な断熱性が得られ、その信頼形を向上することができる。
【0054】
また、放電電極棒A1〜A7、電通棒B1〜B10および加重棒C1〜C5を備えた放電部30、31を、上下の2段にわたり配設した結果、次のような特徴がある。
すなわち、上段の放電部30で殆どの処理対象物は分子化されるが、上段の放電部30において早く落下して処理が不十分であった残渣の再度にわたる分解・熱処理を下段の放電部31で行うことで、1つの炉で2回の処理が行え、処理能力を高めることができる。
【0055】
この場合、下段の放電部31での残渣量は大幅に少ないため、本構成のように、通路部23は、上側が大きく、下側が小さい略角錐形状にしてもなんら問題はなく、下段の放電部31の放電電極棒A5〜A7、電通棒B7〜B10および加重棒C4、C5の設置本数が少なくすることができる結果、コストダウンを図ることができる。
【0056】
なお、本発明の放電分解炉にて処理することができる物質は、焼却灰、汚泥類に限らず油泥類(硫酸ピッチ、廃塗料、タンクスラッジ、写真廃液など)、ばいじん類(飛灰など)、廃酸、廃アルカリ、燃え殻(重油燃料灰、フライアッシュなど)、廃プラスチック、感染性使用済医療機器類および消耗品類、動物糞尿および解体残渣等で、特に注目は飛灰の無害化処理に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
放電分解炉として、処理量がかなり多くなり、物質の無害化処理装置に適用した場合には、装置全体の処理量の大幅な増大を図ることができる。特に、最終処理場における燃え殻、灰などを、本放電分解炉を適用した無害化処理装置により無害化することができるのは勿論のこと、例えば、残渣の60〜70%近くは分子分解して減量化することができ、各自治体などの最終処分場に有効的に採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明に係る放電分解炉の構造の一実施形態である1号炉の内部の構成を示す概略的な正面図である。
【図2】図2は、同上の1号炉の概略的な平面図である。
【図3】図3は、図1中、a矢視の概略的な平面図である。その概略的な平面図である。
【図4】図4は、図2中、b矢視の概略的な正面図である。
【図5】図5は、図2中、c矢視の概略的な正面図である。
【図6】図6は、同上の1号炉の側面断面図である。
【図7】図7は、同上の1号炉におけるの断電・断熱回転軸の構成を示す側面図である。
【図8】図8は、同上の断電・断熱回転軸の製作方法を示す断面図である。
【図9】図9は、同上の1号炉および2号炉の外観を示す正面図である。
【図10】図10は、同上の1号炉の左側面図である。
【図11】図11は、その右側面図である。
【図12】図12は、本発明に係る放電分解炉の構造の他の実施形態である2号炉の内部の構成を示す概略的な正面図である。
【図13】図13は、同上の実施形態を物質の無害化処理装置に適用した例のシステム図である。
【符号の説明】
【0059】
1 1号炉
21 炉本体
23 通路部
28 投入口
29 排出口
30 上段の放電部
A1〜A4 放電電極棒
B1〜B6 電通棒
C1〜C3 加重棒
31 下段の放電部
A5〜A7 放電電極棒
B7〜B10 電通棒
C4、C5 加重棒
F1〜F20 断電・断熱回転軸
60 モータ
61 スプロケット
62 チェーン
2 2号炉
70 上段の放電部
71 下段の放電部
A1〜A3 放電電極棒
B1、B2 電通棒
C 加重棒
C1〜C7 加重棒
D スプロケット
D2 スプロケット
D3 スプロケット
D4 スプロケット
D5 スプロケット
E スプロケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉本体内に形成された通路部の上部に処理対象物の投入口を、下部に排出口を設ける一方、複数本の丸棒状の放電電極棒と、該放電電極棒と接触し、互いに接触または近接するように並列され、かつ、回転手段により回転される複数本の丸棒状の電通棒と、該電通棒に載置されて、当該電通棒に加重する丸棒状の加重棒と、を備えた放電部を前記通路部に該通路部を塞ぐように略水平方向に設け、前記放電電極棒と電通棒との間、該電通棒相互の間および電通棒と加重棒との間にそれぞれ発生したアーク放電のエネルギによる放電熱により処理対象物を熱化学分解することを特徴とする放電分解炉の構造。
【請求項2】
前記放電部を前記通路部の上下方向に複数段にわたりそれぞれ間隔をもって配設したことを特徴とする請求項1記載の放電分解炉の構造。
【請求項3】
前記通路部の水平断面積が上部から下部に行くに従って小さくなるように形成すると共に、前記複数段の放電部における放電電極棒、電通棒および加重棒の設置本数を上段部から下段部に行くに従って少なく設定したことを特徴とする請求項2記載の放電分解炉の構造。
【請求項4】
前記回転手段は、モータと該モータの回転駆動力を前記電通棒に伝達する動力伝達機構とを備えて構成されることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1つに記載の放電分解炉の構造。
【請求項5】
前記電通棒の両端部に、通電端子接続側の端部と前記回転手段側の端部にそれぞれ連結される回転軸を、断電性および断熱性を有する構造としたことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の放電分解炉の構造。
【請求項6】
前記断電性および断熱性を有する構造の回転軸を、互いに所定の間隔をもって同芯に対向して配設された2本のシャフトと、該対向部分が位置するシャフト周りをこれを覆うように空間部をもって設けられた外筒と、前記シャフト間の間隔部分を含む該シャフトと外筒との間の空間部に充填された耐火体と、から構成したことを特徴とする請求項5記載の放電分解炉の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−161844(P2008−161844A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356834(P2006−356834)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【出願人】(507004808)
【Fターム(参考)】