説明

断熱構造およびそれに用いる木ネジ

【課題】 変形容易な材料からなる断熱材2を介して下木材1に板材3を木ネジ4により締結固定する断熱構造において、その締結時に断熱材2が圧縮変形することを防止する断熱構造およびそれに用いる木ネジの提供。
【解決手段】 木ネジ4として、先端側に先端部ネジ5を形成すると共に、頭部6の付根部に首部ネジ7を形成し、その中間にネジ無し部8を設ける。そして先端部ネジ5および首部ネジ7を同一方向の螺旋条に形成し、首部ネジ7の長さを先端部ネジ5のそれより短く且つ、首部ネジ7のネジピッチP2 を先端部ネジ5のネジピッチP1 より大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として外断熱の木造家屋における断熱構造およびそれに用いる木ネジに関する。
【背景技術】
【0002】
冬季における断熱材の結露を乾燥させる目的で、外断熱構造が提唱されている。即ち、室内を暖房している冬季においては、断熱材の外壁側に結露が生じる。
従来の木造構造ではそれを乾燥させる通気層をその外壁面に設けることが困難であるため、結露が断熱材の外側表面に長期間保持されることになり、木造家屋の耐久性を損なうおそれがあった。これを解決する方法として、図4,図5に示す外断熱構造が下記特許文献その他に提唱されている。これは柱または間柱である下木材1の外側に断熱材2を介して、通気用回り縁である板材3を上下方向に配置し、その板材3と下木材1との間を木ネジ4で締結固定する。そして、板材3に外壁材9を、図示しない釘等により止着させ、板材3をスペーサとして、外壁材9と断熱材2との間に空気流通空間10を図5の如く、上下方向に形成し、断熱材2の外側の結露水を空気流通空間10を流通する外気16により乾燥させるものである。即ち、外気16を土台13近傍の入口から空気流通空間10に導き、その内部を上昇させ、屋根15の内側等の出口からそれを排出する。そして空気流通空間10に露出する断熱材2の表面を乾燥させるものである。
【0003】
【特許文献1】特開2002−21209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の外断熱構造において、断熱材2は発泡スチロール等からなり、比較的変形が容易な材料から形成されている。そのため、木ネジ4によって断熱材2を挟持するように下木材1と板材3との間を締結固定すると、図4に示す如く、その締結部で断熱材2に凹部11が形成される。すると、各板材3表面が波打つことになり、その板材3に止着される外壁材9の表面が波打つ結果となる。そのため外壁材9の外表面の体裁を悪くする問題が生じることが本発明者の実験により明らかとなった。そこで、本発明は係る問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、支柱や間柱等の下木材(1) に、その締結により変形の容易な材料からなる断熱材(2) を介して回り縁等の板材(3) が木ネジ(4) により締結固定される断熱構造において、
その木ネジ(4) は、その先端側に先端部ネジ(5) が形成されると共に、頭部(6) の付根部に首部ネジ(7) が形成され、それらの中間にはネジ無し部(8) が形成され、
両ネジ(5) (7) は同一方向の螺旋条に形成され、首部ネジ(7) の長さが先端部ネジ(5) のそれより短く、首部ネジ(7) のネジピッチ(P2 )が先端部ネジ(5) のネジピッチ(P1 )より大きいことを特徴とする断熱構造である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、先端側に先端部ネジ(5) が形成されると共に、頭部(6) の付根部に首部ネジ(7) が形成され、それらの中間にはネジ無し部(8) が形成され、
両ネジ(5) (7) は同一方向の螺旋条に形成され、首部ネジ(7) の長さが先端部ネジ(5) のそれより短く、首部ネジ(7) のネジピッチ(P2 )が先端部ネジ(5) のネジピッチ
(P1 )より大きいことを特徴とする断熱構造用の木ネジである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の断熱構造に用いられる木ネジは、先端部ネジ5と首部ネジ7とを有し、首部ネジ7のネジピッチP2 が先端部ネジ5のネジピッチP1 より大きく形成されたものである。そのため、変形容易な断熱材2を介して下木材1に板材3を締結固定しても、断熱材2が変形することを可及的に防止できる。即ち、図2に示す如く木ネジ4を回転しつつ、下木材1,断熱材2,板材3にそれを締結するとき、先端部ネジ5が下木材1に達すると共に、板材3に首部ネジ7が達すると、相対的に板材3が断熱材2から一旦離反し、断熱材2に圧力を加えることなく、次いでそれに、板材3を接触させることができる。
【0008】
これは、図2において、例えば木ネジ4を一回転させ、下木材1,板材3内にそれを進入させたとき、木ネジ4に対し、下木材1が相対的に先端部ネジ5の1ピッチ分左方に移動し、板材3は首部ネジ7の1ピッチ分左方に移動することになる。首部ネジ7の1ピッチは、先端部ネジ5のそれよりも大きいため、板材3の方が下木材1より左方により大きく移動する。それにより板材3と下木材1とは互いに離反し、その結果、板材3と断熱材2とが離反し、断熱材2に圧力を加えることがない。
次いで、木ネジ4の軸方向への移動に伴い、板材3が断熱材2に圧力を加えることなく接触する。それによって板材3表面を平面状態に保ち、それが波打つことを防止できる。従って板材3が平坦に形成されることにより、その表面に取り付けられる外壁材9(図3参照)も波打つことなく、体裁の良い断熱構造および外壁構造を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。図1は本発明の断熱構造に用いられる木ネジ4の略図である。また、図2はその木ネジ4を用いて板材3を下木材1に、断熱材2を介して止着する各工程を順に示す説明図である。また、図3は本発明の断熱構造の要部断面図である。
【0010】
この断熱構造に用いられる木ネジ4は、図1に示す如く、その先端側に先端部ネジ5が形成されると共に、その頭部6の付根部に首部ネジ7が形成され、それらの中間にはネジ無し部8が形成されている。そして、先端部ネジ5,首部ネジ7は同一方向の螺旋条に形成され、首部ネジ7の長さが先端部ネジ5のそれよりも著しく短く形成されている。更に、首部ネジ7のネジピッチP2 が先端部ネジ5のネジピッチP1 より大きく形成されている。なお、先端部ネジ5および/または首部ネジ7は1条ネジであっても、2以上の多条ネジであってもよい。いずれにしても、先端部ネジ5のネジピッチP1 が首部ネジ7のネジピッチP2 よりも小である必要がある。このような木ネジ4は、線材を転造加工等の常法により製造できる。即ち、線材の頭部、首部、先端部および各ネジを公知の加工方法で製造することができる。このとき、各ネジのネジ山部の形成は、その谷部の材料が塑性変形により移動して造られる。
【0011】
(作用)
次に、このような木ネジ4を用いて、板材3を下木材1に断熱材2を介して止着する方法につき説明する。
先ず、図2(A)の如く、柱等の下木材1に断熱材2を介して回り縁である板材3を上下方向に位置して接触させる。この断熱材2は発泡スチロール等の比較的変形しやすい材料からなる。そこで、図示しない電動ドライバーの先端を木ネジ4の頭部6の端面の凹部に嵌着して、それを回転しつつ下木材1側に押し込む。すると、(B)の如く板材3,断熱材2を貫通し、木ネジ4の先端部ネジ5が下木材1に達する。
次いで、木ネジ4の首部ネジ7が板材3に達すると、木ネジ4の回転に伴って、板材3は断熱材2の表面から僅かに離反する。
【0012】
なお、図2(C)は説明を判りやすくするために、板材3と断熱材2との間隔を広くとったが、実際には両者の隙間は極めて僅かである。このように板材3と断熱材2とが離反する理由は次の通りである。
木ネジ4が一回転したとき図2において、下木材1は木ネジ4に対し、相対的に左方に先端部ネジ5のネジピッチP1 分だけ移動する。これに対し、板材3は首部ネジ7のネジピッチP2 分左方へ相対移動する。首部ネジ7のネジピッチP2 が先端部ネジ5のネジピッチP1 より大であるから、結局下木材1と板材3との離間距離が図2(B)よりも広がる。そのため、断熱材2と板材3とが離反する。
【0013】
次いで、木ネジ4を更に回転することにより、板材3と首部ネジ7との間の螺着部は少し空回りし、電動ドライバの回転抵抗を増し、(D)の如く、板材3の表面が断熱材2に接触して、さらに回転抵抗が増し、電動ドライバのトルクリミッタを介して、その回転を停止させる。即ち、木ネジ4の回転抵抗が設定された負荷トルク値に達し、電動ドライバの先端部の回転が停止する。
このようにすることにより、木ネジ4締結時に断熱材2を不必要に変形させることがない。
そこで、次に図3の如く、板材3に外壁材9を図示しない釘等の締結具で止着すれば、外断熱構造が完成する。このとき、断熱材2と外壁材9との間に空気流通空間10が上下方向に形成される。そしてこの空気流通空間10を図5の如く、外気16が下方から上方に流通し、断熱材2の表面の結露を乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の断熱構造に用いる木ネジ4の説明図。
【図2】同木ネジ4を用いて断熱構造を形成する各工程を示す説明図。
【図3】同断熱構造に外壁材9を止着した状態を示す断面図。
【図4】従来型断熱構造の説明図。
【図5】同断熱構造の縦断面図。
【符号の説明】
【0015】
1 下木材
2 断熱材
3 板材
4 木ネジ
5 先端部ネジ
6 頭部
7 首部ネジ
8 ネジ無し部
【0016】
9 外壁材
10 空気流通空間
11 凹部
12 基礎コンクリート
13 土台
14 けた
15 屋根
16 外気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱や間柱等の下木材(1) に、締結による変形が容易な材料からなる断熱材(2) を介して回り縁等の板材(3) が木ネジ(4) により締結固定される断熱構造において、
その木ネジ(4) は、その先端側に先端部ネジ(5) が形成されると共に、頭部(6) の付根部に首部ネジ(7) が形成され、それらの中間にはネジ無し部(8) が形成され、
両ネジ(5) (7) は同一方向の螺旋条に形成され、首部ネジ(7) の長さが先端部ネジ(5) のそれより短く、首部ネジ(7) のネジピッチ(P2 )が先端部ネジ(5) のネジピッチ(P1 )より大きいことを特徴とする断熱構造。
【請求項2】
先端側に先端部ネジ(5) が形成されると共に、頭部(6) の付根部に首部ネジ(7) が形成され、それらの中間にはネジ無し部(8) が形成され、
両ネジ(5) (7) は同一方向の螺旋条に形成され、首部ネジ(7) の長さが先端部ネジ(5) のそれより短く、首部ネジ(7) のネジピッチ(P2 )が先端部ネジ(5) のネジピッチ(P1 )より大きいことを特徴とする断熱構造用の木ネジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−38027(P2006−38027A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215850(P2004−215850)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(500167928)東日本パワーファスニング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】