説明

新規な化合物

式I:
【化1】


[式中、Xは水素、ハロ、-CN、-CONH2、-CON(C1-6アルキル)H、-CON(C1-6アルキル)2及び複素環式基から選択され;R1はC1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルから選択され;ここで、Yが-C1-6アルキルである場合、Zは-OHであり、Mは-C(O)-、-CH(ORa)-、-N(Ra)-及び-S(O)r-から選択され、ここでRaは水素又はC1-6アルキルであり、そしてrは0、1又は2であり、R2はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択され、R2はハロ、-NO2、-CN、-OH、-CF3、-OCF3、-NH2及び/又は-CONH2で置換され;又は、Yが-C1-6アルコキシである場合、Zは-C1-6アルコキシであり、Mは単結合であり、R2はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択される]の化合物、又はその医薬として許容し得る塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離酸及び/又は遊離塩基、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは塩の溶媒和物としての新規な式Iの化合物に関する。本発明はまた、治療におけるこのような化合物の使用、及びまたこのような化合物を含有する医薬製剤に関する。本発明はさらに、式Iの化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抑制性グリシン受容体(GlyR)は、cys-ループ状リガンド依存性イオンチャネルファミリーに属するイオンチャネルである。これらは、アニオン透過性の孔を形成する2種の膜貫通サブユニット(α及びβ)からなる五量体構造である。該サブユニットは、4つの膜貫通ドメインと大きな細胞外N-末端を有する。
【0003】
4つの異なるαサブユニット(α1(Pfeiffer, F, H Betz. Brain Research 226, 273-9. 1981);(Pfeifferら Journal of Biological Chemistry 257, 9389-93. 1982)、α2 (Beckerら EMBO Journal 7, 3717-26. 1988);(Akagi, H, K Hirai, F Hishinuma. FEBS Letters. 281, 160-6. 1991;Kuhse, J, V Schmieden, H Betz, 1990a, Neuron, v. 5, p. 867-73)、α3 (Kuhse, J, V Schmieden, H Betz, 1990b, J Biol Chem, v. 265, p. 22317-20)、α4 (Harveyら, European Journal of Neuroscience 12, 994-1001. 2000))及び1つのβサブユニット(Pfeiffer及びBetz, 1981)、(Pfeifferら., 1982)が同定されている。α4を除く全てのサブユニットは、ヒトにおいて存在すると考えられる。優勢な受容体アイソフォームはα1-及びβ-サブユニットからなり、化学量論では3α2βと考えられる。組み換え系において、ホモオリゴマーのα-サブユニット(ホモメリックGlyR α1)は、天然受容体のものと類似の機能特性を持ち、有効に機能する。
【0004】
GlyRは、脊髄及び脳幹において主にシナプス後膜に位置する (Rajendra, S, J W Lynch, P R Schofield. Pharmacology & Therapeutics 73, 121-46. 1997);(Laube, B, G Maksay, R Schemm, H Betz. Trends in Pharmacological Sciences 23, 519-527. 2002)。後角中のグリシン作動性ニューロンは、有髄の低閾値機械的侵害受容性の一次(Aβ)求心神経からの主要な入力を受け取る。アゴニストの結合により、チャネルの急速な開口が誘発され、細胞質へのCl-の流入が可能になる。その後のシナプス後膜の過分極は、細胞の静止電位を安定させ、したがってニューロン発火を抑制する。この抑制調節の消失は、末梢及び中枢神経損傷後に起こりかねないため、Aβ-線維と疼痛シグナル経路の間のシナプス結合を促進する惧れがあり、それによりこの入力を疼痛とミスコードする結果となることが示唆されている。これは、特異的なグリシン受容体アンタゴニストであるストリキニーネの脊髄投与により、動物において実験的にモデル化されている。(Sorkin, LS, S Puig. Pain 68, 283-92. 1996);(Sherman, SE, C W Loomis. Pain 56, 17-29. 1994);(Sherman, SE, C W Loomis. Canadian Journal of Physiology & Pharmacology 73, 1698-705. 1995;Sherman, SE, C W Loomis. Pain 66, 321-330. 1996);(Yaksh, TL, 1989, Pain, v. 37, p. 111-23);(Beyer, C, C Banas, P Gomora, B R Komisaruk. Pharmacology, Biochemistry & Behavior 29, 73-8. 1988);(Onaka, M, T Minami, I Nishihara, S Ito. Anesthesiology 84, 1215-22. 1996);
【0005】
さらに、GlyR α3の欠損マウスは、PGE2脊髄注射又は末梢性の炎症により誘発される疼痛過敏化において低下を示すことが明らかにされている。GlyR α3欠損マウスはまた、PGE2誘導性のグリシン作動性神経伝達抑制を欠く(Harvey, RJ, U B Depner, H Wassle, S Ahmadi, C Heindl, H Reinold, T G Smart, K Harvey , B Schutz, OM Abo-Salem, A Zimmer, P Poisbeau, H Welzl, D P Wolfer, H Betz, H U Zeilhofer, U Muller. Science 304, 884-887. 2004)。
【0006】
GlyRの正のモジュレーター又はアゴニストは、抑制性の障害(impaired inhibitory tone)を伴うあらゆる身体状態において、特に神経因性又は炎症性疼痛症候群、例えば痛みを伴う糖尿病性神経障害、外傷後神経痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、関節炎、リウマチ様疾患、線維筋痛、神経根障害を伴う腰痛及び術後疼痛において鎮痛薬として治療的に有益であり得る。さらに、アンギナ、腎疝痛又は胆石疝痛、月経、偏頭痛及び痛風、発作(stroke)、頭部外傷、酸素欠乏障害及び虚血性傷害、低血糖、心血管疾患及びがんを含む種々の身体状態と関係がある疼痛においても有益であり得る。GlyRアゴニスト又は正のモジュレーターはまた、抗けいれん薬及び筋弛緩薬として、並びに抗炎症薬としても使用することができる。
【0007】
グリシン受容体はまた先体反応(AR)にも関与しており、そしてGlyRの活性化は、ARの発生に必須であると考えられている。したがって、GlyRアゴニスト又は正のモジュレーターは妊孕性増強剤(fertility enhancer)又は男性用避妊薬として有用であり得る。グリシン受容体は、聴覚路及び網膜においても発現している。したがって、GlyRの正のモジュレーター又はアゴニストは、聴神経障害、例えば耳鳴及び眼科的障害、例えば網膜症、糖尿病性網膜症及び緑内障の治療において使用することができる(Lynch, JW. Physiol. Rev. 84, 1051-1095. 2004)。
【0008】
グリシン受容体サブユニットはまた側坐核においても同定されており、またGlyR選択的化合物は精神疾患に有効であることが示唆されており、該精神疾患において、中脳辺縁系のドーパミン系が、例えばアルコール症、薬物嗜癖及び精神病に関与している(Molander, A, B Soderpalm. Alcoholism:Clinical and Experimental Research 29, 17-26. 2005)。
【0009】
プロスタグランジン及びロイコトリエンは、アラキドン酸(AA)経路の一部として、3種の酵素:シクロオキシゲナーゼ-1、シクロオキシゲナーゼ-2 (COX-1及びCOX-2)及び5-リポキシゲナーゼ(5-LOX)の活性により産生される。COX-1はAAを例えばPGD2、PGE2、PGF2及びPGI2(プロスタサイクリン)のようなプロスタグランジン、並びにTXA2のようなトロンボキサンに変換する。COX-2はAAをより狭い範囲のプロスタグランジン、特にPGE2及びPGI2に変換する。5-LOXは他の酵素と一緒に、AAをロイコトリエン(LTB4、LTC4、LTD4及びLTE4)に変換する。AA経路からの生成物は、腎臓の恒常性、胃の保護、血管の恒常性及び病態生理学過程、例えば疼痛及び炎症を含むヒトの生理機能において重要な役割を果たす。PGE2及びPGI2は種々の生理学的及び病態生理学的効果を有する。例えば、これらは血管拡張及び血管透過性に対して効力を有する。
【0010】
シクロオキシゲナーゼの阻害剤は、5-リポキシゲナーゼの阻害性を有するため、抗炎症薬として開発されている。COX/LOX二重阻害剤は炎症関連疾患、例えば関節リウマチ及び変形性関節症、並びに神経系の疾患(pneumological diseases)の評価のために臨床にある。これらはまた、関節硬化症及び発作においても使用することができる。さらにこれらは血圧降下薬として使用することができる(Simmons, DL, Botting Regina M., T Hla. Pharmacol Rev 56, 387-487. 2004)、(Bertolini, A, A Ottani, Sandrini M. Current Medicinal Chemistry 9, 1033-1043. 2002)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、新規なGlyRの正のモジュレーター及び/又はアゴニストを提供することであり、これらは場合によりCOX及び/又はLOX阻害剤ともなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、式Iの化合物又はその医薬として許容し得る塩を提供する:
【化1】

[式中、
Xは水素、ハロ、-CN、-CONH2、-CON(C1-6アルキル)H、-CON(C1-6アルキル)2及び複素環式基から選択され;
R1はC1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルから選択され;
ここで、
Yが-C1-6アルキルである場合、
Zは-OHであり、
Mは-C(O)-、-CH(ORa)-、-N(Ra)-及び-S(O)r-から選択され、ここでRaは水素又はC1-6アルキルであり、そしてrは0、1又は2であり、
R2はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択され、
R2はハロ、-NO2、-CN、-OH、-CF3、-OCF3、-NH2及び/又は-CONH2で置換され;
又は、
Yが-C1-6アルコキシである場合、
Zは-C1-6アルコキシであり、
Mは結合であり、
R2はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択される]。
【0013】
本発明の別の側面において、治療において使用するための、以下の式Iの化合物、又はその医薬として許容し得る塩が提供される:
【化2】

[式中、
Xは水素、ハロ、-CN、-CONH2、-CON(C1-6アルキル)H、-CON(C1-6アルキル)2及び複素環式基から選択され;
R1はC1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルから選択され;
ここで、
Yが-C1-6アルキルである場合、
Zは-OHであり、
Mは-C(O)-、-CH(ORa)-、-N(Ra)-及び-S(O)r-から選択され、ここでRaは水素又はC1-6アルキルであり、そしてrは0、1又は2であり、
R2はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択され、
R2はハロ、-NO2、-CN、-OH、-CF3、-OCF3、-NH2及び/又は-CONH2で置換され;
又は、
Yが-C1-6アルコキシである場合、
Zは-C1-6アルコキシであり、
Mは結合であり、
R2はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択される]。
【0014】
本発明のさらなる側面において、神経因性又は炎症性疼痛症候群、例えば痛みを伴う糖尿病性神経障害、外傷後神経痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、関節炎、リウマチ様疾患、線維筋痛、神経根障害を伴う腰痛及び術後疼痛;アンギナ、腎疝痛又は胆石疝痛、月経、偏頭痛及び痛風、発作、頭部外傷、酸素欠乏障害及び虚血性傷害、低血糖、心血管疾患及び/又はがんと関係がある疼痛;聴神経障害、例えば耳鳴;眼科的障害、例えば網膜症、糖尿病性網膜症又は緑内障;及び/又は精神疾患、例えばアルコール中毒、薬物嗜癖及び精神病の治療のための、式Iの化合物又はその医薬として許容し得る塩が提供される。
【0015】
本発明のさらなる側面において、特に、神経因性又は炎症性疼痛症候群、例えば痛みを伴う糖尿病性神経障害、外傷後神経痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、関節炎、リウマチ様疾患、線維筋痛、神経根障害を伴う腰痛及び術後疼痛;アンギナ、腎疝痛又は胆石疝痛、月経、偏頭痛及び痛風、発作、頭部外傷、酸素欠乏障害及び虚血性傷害、低血糖、心血管疾患及び/又はがん;聴神経障害、例えば耳鳴;眼科的障害、例えば網膜症、糖尿病性網膜症又は緑内障;及び/又は精神疾患、例えばアルコール症、薬物嗜癖及び精神病の治療のための、治療有効量の式Iの化合物を1又はそれ以上の医薬として許容し得る賦形剤、添加剤及び/又は不活性担体と共に含有する医薬組成物が提供される。
【0016】
本発明の別の側面は、神経因性又は炎症性疼痛症候群、例えば痛みを伴う糖尿病性神経障害、外傷後神経痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、関節炎、リウマチ様疾患、線維筋痛、神経根障害を伴う腰痛及び術後疼痛;アンギナ、腎疝痛又は胆石疝痛、月経、偏頭痛及び痛風、発作、頭部外傷、酸素欠乏障害及び虚血性傷害、低血糖、心血管疾患及び/又はがんと関係がある疼痛;聴神経障害、例えば耳鳴;眼科的障害、例えば網膜症、糖尿病性網膜症又は緑内障;及び/又は精神疾患、例えばアルコール中毒、薬物嗜癖及び精神病の治療のための医薬の製造における、式Iの化合物の使用に関する。
【0017】
本発明のさらなる側面において、治療の必要なヒトを含む哺乳動物に、治療有効量の式Iの化合物を投与することを含む、神経因性又は炎症性疼痛症候群、例えば痛みを伴う糖尿病性神経障害、外傷後神経痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、関節炎、リウマチ様疾患、線維筋痛、神経根障害を伴う腰痛及び術後疼痛;アンギナ、腎疝痛又は胆石疝痛、月経、偏頭痛及び痛風、発作、頭部外傷、酸素欠乏障害及び虚血性傷害、低血糖、心血管疾患及び/又はがんと関係がある疼痛;聴神経障害、例えば耳鳴;眼科的障害、例えば網膜症、糖尿病性網膜症又は緑内障;及び/又は精神疾患、例えばアルコール症、薬物嗜癖及び精神病の治療方法が提供される。
【0018】
本発明のさらに別の側面において、式Iの化合物の製造方法が提供される。
本発明のこれらの側面及びその他の側面は、本明細書において以下により詳細に説明される。
【0019】
発明の詳細な説明
本明細書及び特許請求の範囲において、本発明を説明するために使用される種々の用語の定義を以下に挙げる。
疑念を回避するために、本明細書において、基が「上記で定義された」、「上述の」又は「上記」により修飾されている場合、該基は、最初に記載され、そして最も広い定義、並びにその基についての他の定義のそれぞれ及び全てを包含するものと解すべきである。
【0020】
この明細書において特に記載のない限り、この明細書で用いられる命名法は一般に、Nomenclature of Organic Chemistry, Sections A, B, C, D, E, F及びH, Pergamon Press, Oxford, 1979に記載される例及び規則に従い、この文献は、その例示された化学構造名及び化学構造の命名規則について参照により本明細書に加入される。
【0021】
単独で又は接頭辞として使用される用語「Cm-n」又は「Cm-n基」は、m〜n個の炭素原子を有する任意の基を指す。
疑念を回避するために、本明細書において、「C1-6」は1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する炭素基を意味するものと解すべきである。
下付き文字が整数0(ゼロ)である場合、該下付き文字が指す基は、その基が存在しないことを意味する。
【0022】
本明細書において特に記載のない限り、用語「ヘテロ原子」は、炭素又は水素ではない原子を指す。ヘテロ原子の例としては、窒素、酸素及び硫黄が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「アルキル」は、直鎖状及び分枝鎖状のアルキル基の双方を包含する。用語「C1-6アルキル」は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味し、そしてメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、t-ペンチル、neo-ペンチル、n-ヘキシル、i-ヘキシル又はt-ヘキシルであってよい。
【0024】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「アルコキシ」は直鎖状又は分枝鎖状のアルコキシ基の双方を包含する。C1-6アルコキシはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、i-ペントキシ、t-ペントキシ、neo-ペントキシ、n-ヘキソキシ、i-ヘキソキシ又はt-ヘキソキシであり得るが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードである。
【0026】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「アリール」は5〜10個の炭素原子を含有する芳香族の単環式系及び二環式系の双方を包含する;二環式系の場合、少なくとも1つの環は芳香族性のものであり、他方の環は、芳香族であっても、部分的に水素化されていてもよい。用語「アリール」の非限定的な例は、フェニル、ナフチル、インデニル及びテトラリニルである。
【0027】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「アルキルアリール」は、1又はそれ以上のアルキル基が懸垂したアリール基を意味する。用語「アルキルアリール」の非限定的な例は、ベンジル、エチルナフチル、プロピルインデニル及びブチルテトラリニルである。
【0028】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「ヘテロアリール」は、1〜4個の炭素原子が1〜4個のヘテロ原子により置き換えられた上述のアリール基を包含し、該へテロ原子は、同一であっても異なっていてもよく、酸素、硫黄及び窒素から互いに独立して選択される。用語「ヘテロアリール」の非限定的な例は、フリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、チアゾリル又はチエニルである。
【0029】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「シクロアルキル」は、3〜10個の炭素原子を含有する単環式及び多環式系の双方を包含し、該系は飽和型であっても部分飽和型であってもよいが、芳香族性は有さず、そして多環式系の場合、1又はそれ以上の環は、一緒になって縮合していても、連結を形成していてもよいものと解すべきである。用語「C3-6シクロアルキル」は、3〜6個の炭素原子を含有するシクロアルキル基を意味し、そしてシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルであってよい。
【0030】
本明細書において、特に記載のない限り、「複素環式基」は、4〜12個の原子を含有する飽和型、部分飽和型又は不飽和型の、単環式又は二環式の環であり、ここで少なくとも1つの原子は窒素、硫黄又は酸素から選択され、これは特に記載のない限り、炭素結合式であっても、窒素結合式であってもよく、ここで-CH2-基は、場合により-C(O)-により置き換えられてもよく、及び環硫黄原子は場合により酸化されてS-オキシドを形成してもよい。用語「複素環式基」の非限定的な例は、モルホリノ、ピペリジル、ピリジル、ピラニル、ピロリル、イソチアゾリル、インドリル、キノリル、チエニル、1,3-ベンゾジオキソリル、チアジアゾリル、ピペラジニル、チアゾリジニル、ピロリジニル、チオモルホリノ、ピロリニル、ホモピペラジニル、3,5-ジオキサピペリジニル、テトラヒドロピラニル、イミダゾリル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、イソオキサゾリル、4-ピリドン、1-イソキノロン、2-ピロリドン及び4-チアゾリドンである。
【0031】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「ヘテロシクロアルキル」は、1〜4個の炭素原子が1〜4個のヘテロ原子により置き換えられた上述のシクロアルキル基を包含する。用語「ヘテロシクロアルキル」の非限定的な例は、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピランである。
【0032】
本発明の1つの側面は、Xが水素、ハロ、-CN、-CONH2及び複素環式基から独立して選択され得る式Iの化合物に関する。特定の側面において、Xは水素、-Br、-CN、-CONH2及びテトラゾリルから独立して選択され得る。
【0033】
本発明の1つの側面によれば、R1はC3-4アルキルである。
【0034】
本発明の1つの側面によれば、Zは-OHであり、Mは-C(O)-であり、R2はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択され、R2はハロ、-NO2、-CN、-OH、-CF3、-OCF3、-NH2及び/又は-CONH2で置換され、そしてYは-C1-6アルキルである。
【0035】
本発明の1つの側面は、R2がアリールである式Iの化合物に関する。特定の側面において、R2はフェニル、ナフチル、シクロヘキシル、メチルベンジル及びキノキサリニルから独立して選択され得る。
【0036】
本発明の1つの側面において、Zは-OHであり、Mは-C(O)-、-CH(ORa)-、-N(Ra)-及び-S(O)r-から選択され、ここでRaは水素又はC1-6アルキルであり、そしてrは0、1又は2であり、R2はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択され、R2はハロ、特にクロロで置換され、そしてYは-C1-6アルキルである。
【0037】
本発明の1つの側面において、Xは水素、-Br、-CN、-CONH2及びテトラゾリルから選択され;Yは-CH3であり;R1はC3-4アルキルであり;Mは-C(O)-であり;R2はフェニル、ナフチル、シクロヘキシル、メチルベンジル及びキノキサリニルから選択され;R2はクロロで置換され;そして、Zは-OHである。
【0038】
本発明の1つの側面において、Xは水素、-Br、-CN、-CONH2及びテトラゾリルから選択され;Yは-OCH3であり;R1はC3-4アルキルであり;Mは結合であり;R2はフェニル、ナフチル、シクロヘキシル、メチルベンジル及びキノキサリニルから選択され;そして、Zは-OCH3である。
【0039】
本発明のさらに別の側面において、以下の化合物が提供される:
(4-クロロフェニル)[4-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチル-3-(1H-テトラゾール-5-イル)フェニル]メタノン、
(4-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチルフェニル)(キノキサリン-2-イル)メタノン、
3-(4-クロロベンゾイル)-6-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチルベンズアミド、
3-(4-クロロベンゾイル)-6-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチルベンゾニトリル、
3,5-ジ-tert-ブチル-2,6-ジメトキシベンズアミド、及び
1,5-ジ-tert-ブチル-2,4-ジメトキシベンゼン。
【0040】
本発明の化合物の医薬として許容し得る好適な塩は、例えば無機酸又は有機酸の酸付加塩である。さらに、本発明の化合物の医薬として許容し得る好適な塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又は生理学的に許容し得るカチオンを与える有機塩基との塩である。
【0041】
式Iのいくつかの化合物は、キラル中心及び/又は幾何異性中心(E-及びZ-異性体)を有し得、そして本発明はこのような全ての光学異性体、ジアステレオ異性体及び幾何異性体を包含するものと解すべきである。
【0042】
本発明は、上述の式Iの化合物の使用、及びその塩の使用に関する。医薬組成物において使用するための塩は、医薬として許容し得る塩であるが、その他の塩も式Iの化合物の製造において有用であり得る。
【0043】
本発明は、式Iの化合物のありとあらゆる互変異性形態に関するものと解すべきである。
【0044】
医薬組成物
本発明の1つの側面によれば、活性成分として治療有効量の式Iの化合物、又はその塩、溶媒和物若しくは溶媒和された塩を、1又はそれ以上の医薬として許容し得る賦形剤、添加剤及び/又は不活性担体と共に含有する医薬組成物を提供する。
【0045】
該組成物は、例えば錠剤、丸薬、シロップ、粉末、顆粒又はカプセルのような経口投与に好適な形態、滅菌溶液、懸濁液又は乳濁液のような非経口注射(例えば静脈内、皮下、筋肉内、血管内又は輸液)に好適な形態、例えば軟膏、パッチ又はクリームとしての局所投与に好適な形態、又は例えば坐薬のような直腸投与に好適な形態であってもよい。
【0046】
一般に、上記組成物は、従来の方法で、1又はそれ以上の従来の添加剤、医薬として許容し得る賦形剤及び/又は不活性担体を用いて調製することができる。
【0047】
ヒトを含む哺乳動物の治療において好適な式Iの化合物の日用量は、経口投与で約0.01〜250mg/kg体重であり、そして非経口投与で約0.001〜250 mg/kg体重である。活性成分の典型的な日用量は広範囲で変化し、そして種々の因子、例えば関連する適応症、治療される疾患の重症度、投与経路、患者の年齢、体重及び性別、並びに使用される特定の化合物に依存することになり、そして医師によって決定され得る。
【0048】
医学的用途
本発明の化合物は、神経因性又は炎症性疼痛症候群、例えば痛みを伴う糖尿病性神経障害、外傷後神経痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、関節炎、リウマチ様疾患、線維筋痛、神経根障害を伴う腰痛及び術後疼痛;アンギナ、腎疝痛又は胆石疝痛、月経、偏頭痛及び痛風、発作、頭部外傷、酸素欠乏障害及び虚血性傷害、低血糖、心血管疾患及び/又はがんと関係がある疼痛;聴神経障害、例えば耳鳴;眼科的障害、例えば網膜症、糖尿病性網膜症又は緑内障;及び/又は精神疾患、例えばアルコール症、薬物嗜癖及び精神病の治療において有用であると考えられる。
【0049】
本発明は、治療において使用するための、上記で定義された式Iの化合物に関する。
本発明は、神経因性又は炎症性疼痛症候群、例えば痛みを伴う糖尿病性神経障害、外傷後神経痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、関節炎、リウマチ様疾患、線維筋痛、神経根障害を伴う腰痛及び術後疼痛;アンギナ、腎疝痛又は胆石疝痛、月経、偏頭痛及び痛風、発作、頭部外傷、酸素欠乏障害及び虚血性傷害、低血糖、心血管疾患及び/又はがんと関係がある疼痛;聴神経障害、例えば耳鳴;眼科的障害、例えば網膜症、糖尿病性網膜症又は緑内障;及び/又は精神疾患、例えばアルコール症、薬物嗜癖及び精神病の治療において使用するための、上記で定義された式Iの化合物に関する。
【0050】
本発明はまた、神経因性又は炎症性疼痛症候群、例えば痛みを伴う糖尿病性神経障害、外傷後神経痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、関節炎、リウマチ様疾患、線維筋痛、神経根障害を伴う腰痛及び術後疼痛;アンギナ、腎疝痛又は胆石疝痛、月経、偏頭痛及び痛風、発作、頭部外傷、酸素欠乏障害及び虚血性傷害、低血糖、心血管疾患及び/又はがんと関係がある疼痛;聴神経障害、例えば耳鳴;眼科的障害、例えば網膜症、糖尿病性網膜症又は緑内障;及び/又は精神疾患、例えばアルコール中毒、薬物嗜癖及び精神病の治療のための医薬の製造における、上記で定義された式Iの化合物の使用に関する。
【0051】
本発明の1つの実施態様は、急性及び慢性の神経因性疼痛の治療における式Iの化合物の使用に関する。
本発明はまた、神経因性又は炎症性疼痛症候群、例えば痛みを伴う糖尿病性神経障害、外傷後神経痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、関節炎、リウマチ様疾患、線維筋痛、神経根障害を伴う腰痛及び術後疼痛;アンギナ、腎疝痛又は胆石疝痛、月経、偏頭痛及び痛風、発作、頭部外傷、酸素欠乏障害及び虚血性傷害、低血糖、心血管疾患及び/又はがんと関係がある疼痛;聴神経障害、例えば耳鳴;眼科的障害、例えば網膜症、糖尿病性網膜症又は緑内障;及び/又は精神疾患、例えばアルコール症、薬物嗜癖及び精神病の治療方法を提供する。
【0052】
本発明の別の実施態様は、急性及び慢性の神経因性疼痛のための医薬の製造のための、式Iの化合物の使用に関する。
【0053】
特定の障害の治療的又は予防的処置に要する用量は、治療される宿主、投与経路及び治療される病気の重症度に応じて必然的に変化する。
【0054】
本明細書において、用語「療法」及び「治療」は、特にそれに反する記載のない限り「防止」及び/又は「予防」を含む。用語「治療の」及び「治療上」はそれに応じて解釈されるべきである。
【0055】
非医学的用途
治療用医薬における使用に加えて、式Iの化合物又はその塩、溶媒和物若しくは溶媒和された塩は、神経因性又は炎症性疼痛症候群、例えば痛みを伴う糖尿病性神経障害、外傷後神経痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、関節炎、リウマチ様疾患、線維筋痛、神経根障害を伴う腰痛及び術後疼痛;アンギナ、腎疝痛又は胆石疝痛、月経、偏頭痛及び痛風、発作、頭部外傷、酸素欠乏障害及び虚血性傷害、低血糖、心血管疾患及び/又はがんと関係がある疼痛;聴神経障害、例えば耳鳴;眼科的障害、例えば網膜症、糖尿病性網膜症又は緑内障;及び/又は精神疾患、例えばアルコール症、薬物嗜癖及び精神病の効果の評価について、インビトロ及びインビボ試験系の開発及び標準化における薬理学的ツールとしても有用である。
【0056】
製造方法
本発明の別の側面は、式Iの化合物又はその塩、溶媒和物若しくは溶媒和された塩の製造方法を提供する。本発明における化合物の製造方法は、以下に記載される。
このような方法に関する以下の記載の全体において、当然ながら、適切な場合には、有機合成技術分野の当業者であれば容易に理解するような手法で、適切な保護基を種々の反応体及び中間体に加え、その後それらから除去する。このような保護基を使用するための従来の方法及び適切な保護基の例は、例えばT.W. Green, P.G.M. Wutsの「Protective Groups in Organic Synthesis」、Wiley-Interscience、ニューヨーク(1999年)に記載されている。また、化学操作による基又は置換基の、別の基又は置換基への変換は、最終生成物に向う合成経路における任意の中間体又は最終生成物に対して行うことができ、ここで、可能な変換の種類は、その工程においてその分子により担持される他の官能基が、該変換において用いられる条件又は試薬に対して固有の不適合性を有する場合にのみ限定されることも当然である。このような固有の不適合性、並びに適切な変換及び適切な順番で合成工程を実施することによって該不適合性を回避する方法は、有機合成技術分野の当業者であれば容易に理解されよう。変換の例を以下に記載するが、記載された変換が、例示した一般的な基又は置換基にのみ限定されるものではないことは当然である。
【0057】
他の適切な変換についての参照及び説明は、「Comprehensive Organic Transformations - A Guide to Functional Group Preparations」 R. C. Larock, VHC Publishers, Inc. (1989年)において記載されている。他の適切な反応についての参照及び説明は、有機化学の教科書、例えば「Advanced Organic Chemistry」、第4版、McGraw Hill (1992年3月)、又は「Organic Synthesis」、Smith, McGraw Hill, (1994年)に記載されている。中間体及び最終生成物の精製技術としては、例えばストレート相(straight phase)及び逆相のカラム又は回転板上のクロマトグラフィー、再結晶、蒸留、及び液-液又は固-液抽出が挙げられ、これらは当業者であれば容易に理解されよう。置換基及び基は、異なる定義付けをされる場合を除き、式Iにおいて定義されるものである。用語「室温」及び「周囲温度」は、特に記載のない限り、16〜25℃の温度を意味する。
【0058】
最終生成物の製造
式Iの化合物[式中、X、Y、Z、R1及びR2は、特に明記しない限り式Iにおいて定義されたとおりである]の製造方法は、以下からなる:
【0059】
a)
【化3】

i)式(II)の化合物の式(III)の化合物との反応。式中、Wはハロゲン、例えばCl、Br又はFであるか、又は適切な脱離基、例えばトリフルオロメタンスルホニルオキシ、4-トルエンスルホニルオキシ、アルキルカルボニルオキシ又はヒドロキシである。
この反応は、適切な溶媒、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、ニトロメタン中で、そして有利にはルイス酸、例えばAlCl3、AlBr3、Al(OR)3、BF3、BCl3、BBr3、ZnCl2、FeCl3、FeBr3の存在下で行われる;
又は
【化4】

ii)式(II)の化合物の、式(IV)の化合物との反応。式中、nは0、1又は2であり、oは0、1又は2であり、そしてWはハロゲン、例えばCl、Br又はFである。
n=0又は1である場合、第一の工程から得られた生成物は、酸化剤、例えばm-クロロ過安息香酸、過酸化水素、NaIO4、KMnO4、PhICl2又はt-BuOClで処理することにより酸化することができる。
この反応は、適切な溶媒、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、THF、DMF中で、場合により例えばAlCl3、AlBr3、Al(OR)3、BF3、BCl3、BBr3、ZnCl2、FeCl3又はFeBr3のようなルイス酸の存在下で、そしてn=0である場合は、有利には例えばピリジン、ルチジン、トリエチルアミン又はヒューニッヒ(Huenig)塩基のような塩基の存在下で、−10℃〜還流温度で行われる。
【0060】
b)
【化5】

式(V)の化合物の、式(VI)の有機金属試薬[式中、Halはハロゲン、例えばBr又はIであるか;又はスルホニルオキシ基、例えばメタンスルホニルオキシ、4-トルエンスルホニルオキシ又はトリフルオロメタンスルホニルオキシであり、Xは非プロトン性官能基又は保護された官能基、例えばCNであり、そしてMetは、適切な金属基、例えば銅、リチウムである]、有機ホウ素試薬、例えば-B(OH)2、-B(OPri)2又は-B(Et)2との反応。この反応は、一酸化炭素の存在下又は乾燥窒素雰囲気下で、そして金属触媒、例えばパラジウム又はニッケル、例えば[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)-パラジウム(0)、パラジウム(II)クロリド、パラジウム(II)ブロミド、ニッケル(II)クロリド、ニッケル(II)ブロミド又はビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)クロリドの存在下で、そして場合によりさらなるリガンド、例えばジ-tert-ブチルホスフィノペンタフェニルフェロセン又は2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシビフェニルの存在下で、適切な不活性溶媒又は希釈剤、例えばテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、メタノール又はエタノールの存在下で行われる。HalがBrである場合、添加剤としてヨウ化カリウムを好ましく使用することができる。反応は、好ましくは、適切な塩基、例えば炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム、フッ化カリウム、リン酸カリウム、ピリジン、4-ジメチルアミノ-ピリジン、トリエチルアミン又はモルホリンの存在下で、そして都合よくは、例えば10〜250℃、好ましくは60〜120℃の温度で実施される。一酸化炭素の存在下で反応を行うことにより、Mがカルボニル基である化合物が得られ、一方、一酸化炭素の非存在下で反応を行うことにより、Mが単結合である化合物が得られる。
【0061】
c)
【化6】

場合により保護された式(V)の化合物の、式(VII)のアミンとの反応。式中、Halはハロゲン、例えばBr又はIであるか;又はスルホニルオキシ基、例えばメタンスルホニルオキシ、4-トルエンスルホニルオキシ又はトリフルオロメタンスルホニルオキシであり、Xは非プロトン性官能基又は保護された官能基、例えばCNである。この反応は、金属触媒、例えばパラジウム又はニッケル、例えばビス(ジベンジリデンアセトン)白金(0)、[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)-パラジウム(0)、パラジウム(II)クロリド、パラジウム(II)ブロミド、ニッケル(II)クロリド、ニッケル(II)ブロミド又はビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)クロリドの存在下で、そして場合によりさらなるリガンド、例えばジ-tert-ブチルホスフィノペンタフェニルフェロセン又は2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシビフェニルの存在下で、適切な不活性溶媒又は希釈剤、例えばテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、メタノール又はエタノールの存在下で行われる。HalがBrである場合、ヨウ化カリウムを場合により添加剤として使用することができる。反応は、好ましくは適切な塩基、例えば炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム、フッ化カリウム、リン酸カリウム、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン又はモルホリンの存在下で、そして都合よくは、例えば10〜250℃、好ましくは60〜120℃の温度で行われる。
【0062】
d)
【化7】

式(VIII)の化合物を、適切な溶媒、例えばDMF、DMA、DMSO、NMP、DMPU、トルエン、キシレン、テトラクロロエタン中、30℃〜還流温度で加熱することにより反応させて、式(IX)の化合物が得られる。
【0063】
e)
【化8】

場合により保護された式(V)の化合物の、式(X)のメルカプタンとの反応。式中、Halはハロゲン、例えばBr又はI;又はスルホニルオキシ基、例えばメタンスルホニルオキシ 4-トルエンスルホニルオキシ又はトリフルオロメタンスルホニルオキシであり、Xは非プロトン性官能基又は保護された官能基、例えばCNであり、そしてProtは水素又は適切な保護基、例えばメチル又はベンジルである。この反応は、金属触媒、例えばCu(I)誘導体、例えばCuCl、CuBr、CuI、Cu(OCF3)の存在下で、そして適切な塩基、例えばアルカリ炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又は炭酸セシウムの存在下で、適切な溶媒又は溶媒混合物中、例えばC1-6ジオールとC1-6アルコールの混合物、例えばエチレン又はプロピレングリコールと1-プロパノール、2-プロパノール又はtert-ブタノールの混合物中、不活性雰囲気中で30℃〜還流温度で加熱することにより行って、式(XI)の化合物が得られる。
第一の工程から得られた生成物を、次いで場合により酸化剤、例えばm-クロロ過安息香酸、過酸化水素、NaIO4、KMnO4、PhICl2又はt-BuOClで処理することにより酸化して、スルホキシド又はスルホンを得ることができる。
【0064】
f)
【化9】

場合により保護された式(XII)の化合物の、適切なシアン化合物求核試薬、例えばCuCNとの反応。式中、Halはハロゲン、例えばBr又はI;又はスルホニルオキシ基、例えばメタンスルホニルオキシ 4-トルエンスルホニルオキシ又はトリフルオロメタンスルホニルオキシである。この反応は、適切な溶媒、例えばDMF、DMA、NMP又はDMSO中、50℃〜還流温度で、不活性雰囲気下で行うことにより、式(XIII)の化合物が得られる。
【0065】
g)
【化10】

場合により保護された式(XIII)の化合物を、適切なアジド試薬、例えばトリメチルシリルアジドと、触媒、例えば酸化n-ジブチルスズの存在下、適切な溶媒、例えばトルエン又はキシレン中、50℃〜還流温度で、不活性雰囲気下で反応させることにより、式(XIV)の化合物が得られる。
【0066】
i)
【化11】

式(XVI)の化合物[式中、M、R1、R2、Y及びZは、上記化合物(I)において定義したとおりであり、R3及びR4は水素、C1-6アルキルである]を、適切なハロゲン化試薬、例えばチオニルクロリド、チオニルブロミド、ホスホリルクロリド又はオキサリルクロリドと、有利には少量の触媒、例えばDMFを含有する適切な溶媒、例えばトルエン又はジクロロメタン中、周囲温度〜還流温度で反応させ、次いで例えば水、メタノール、ジエチルエーテル中のアミン又はアンモニア溶液で処理することにより、式(XVII)の化合物が得られる。
【0067】
中間体の製造
【化12】

場合により保護された式(XV)の化合物を、適切な塩基、例えばn-ブチルリチウム、金属ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム若しくは炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム若しくは炭酸水素セシウム、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム若しくは水酸化セシウム、及び二酸化炭素と、適切な溶媒、例えばヘキサン、ペンタン、DMF、DMA、NMP又はピリジン中で、−78℃〜還流温度で、場合により不活性雰囲気中で反応させることにより、式(XVI)の化合物が得られる。
【実施例】
【0068】
ここで、本発明を、以下の非限定的実施例により詳細に説明する。全ての出発物質は、商業的に入手可能であるか又は文献において既に記載されている。
実施例1
3-(4-クロロベンゾイル)-6-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチルベンゾニトリル
シアン化銅(I)(71mg、0.8mmol)を、アルゴン雰囲気下の無水DMF (2mL)中の(4-クロロフェニル)(4-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチルフェニル)メタノン(150mg、0.4mmol)の溶液に加えた。反応混合物を4時間還流し、そして70℃に冷却した。塩化鉄(III)(260mg、1.6mmol)を加え、そして混合物を30分間撹拌した。NaHSO4の0.2M溶液を加え、そして水相を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを蒸発させ、物質をDMF (1ml)中に再溶解し、そしてC8-カラム上の分取HPLCにより、溶離剤として酢酸アンモニウムバッファー/アセトニトリルをグラジエントを用いて精製した。生成物を含有する画分をプールし、水/アセトニトリルから2回共蒸発させ(coevaporated)、水中に溶解し、次いで凍結乾燥させて生成物を固形物質(75mg)として得た。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 7.71 (d, 2 H), 7.47 (d, 2 H), 7.36 (s, 1 H), 6.61 (s, 1 H), 3.20 -3.38 (m, 1 H), 2.47 (s, 3 H), 1.22 (d, 6 H). マススペクトル:M-H+ 312
【0069】
実施例2
(4-クロロフェニル)[4-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチル-3-(1H-テトラゾール-5-イル)フェニル]メタノン
トリメチルシリルアジド(52μL、0.4mmol)を、トルエン(2mL)中の3-(4-クロロベンゾイル)-6-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチルベンゾニトリル(40mg、0.13mmol)及び酸化ジ-n-ブチルスズ(IV)(10mg、0.04mmol)の溶液に加えた。反応容器をアルゴンでフラッシュし、密封し、そして100℃で4日間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、そして粗製混合物を、酢酸エチル/ヘプタンのグラジエントを用いて、シリカゲル上で精製した。表題化合物1.6mg(収率3%)、並びに3-(4-クロロベンゾイル)-6-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチルベンズアミド(実施例3、以下参照) を単離した。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 7.80 (d, 2 H), 7.48 (d, 2 H), 7.30 (s, 1 H), 3.38 -3.55 (m, 1 H), 2.58 (s, 3 H), 1.22 (d, 3 H). マススペクトル:M-H+ 355
【0070】
実施例3
3-(4-クロロベンゾイル)-6-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチルベンズアミド
実施例2の(4-クロロフェニル)[4-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチル-3-(1H-テトラゾール-5-イル)フェニル]メタノンの精製中に、3-(4-クロロベンゾイル)-6-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチルベンズアミド3.6mg(収率8%)を単離した。
1H NMR (400 MHz、クロロホルム-d) δ ppm 7.74 (d、2 H)、7.46 (d、2 H)、7.22 (s、1 H)、5.94 -6.23 (m、1 H)、3.27 -3.45 (m、1 H)、2.51 (s、3 H)、1.19 (d、6 H).
マススペクトル:M-H+ 330
【0071】
実施例4
1,5-ジ-tert-ブチル-2,4-ジメトキシベンゼン
NaOH (9mL、2M 水溶液)を、ジクロロメタン(30mL)中の4,6-ジ-tert-ブチルベンゼン-1,3-ジオール(1g、4.5mmol)、硫酸水素テトラメチルアンモニウム(0.15g、0.45mmol)及び硫酸ジメチル (1.1g、9mmol)に加えた。溶液を30分間還流した。有機相を分離し、ブラインで抽出し、MgSO4上で乾燥させ、そして溶媒を蒸発させた。粗生成物を、溶離剤としてエーテル/ヘプタン(比率1:4)を用いて、フラッシュクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を固体0.92g (収率82%)として得た。
マススペクトル:m/z M+H+ 250
【0072】
実施例5
3,5-ジ-tert-ブチル-2,6-ジメトキシベンズアミド
トルエン(1mL)中の3,5-ジ-tert-ブチル-2,6-ジメトキシ安息香酸(100mg、0.34mmol)、チオニルクロリド(161mg、2.4mmol)及びDMF (1滴)の混合物を、75℃で4時間加熱した。溶媒を除去し、そしてDCMを加えた。NH4OH (5mL、水溶液)を加え、そして15分間撹拌した。相を分離し、水相をDCM(3回)で抽出し、有機相を合一し、そして水で洗浄した。有機相をMgSO4上で乾燥させ、そして溶媒を蒸発させて表題生成物88mg(収率88%)を得た。
1H NMR (400 MHz、CDCl3) δ ppm 7.22 (s、1 H)、3.82 (s、6 H)、1.33 (s、18 H).
マススペクトル:m/z M+H+ 294.
【0073】
薬理学
インビトロモデル
hGlyRα1電気生理学
ヒトGlyRα1ホモマーを安定して発現するL(tk)-トランスフェクト細胞を、37℃(5% CO2)で、10%加熱不活化したウシ胎仔血清、100 IU/ml ペニシリン/ストレプトマイシン (GibcoBRL)を補充した改変イーグル培地 + Earles + L-グルタミン (MEM;GibcoBRL)を含有する組織フラスコ (Costar)中でインキュベートした。穏やかにトリプシン処理して、細胞を週に2回分離(split)した。細胞を分離し、そして50 mm細胞培養皿に、実験24〜48時間前播種した。
【0074】
グリシン受容体が媒介する全細胞の電流を、電圧固定条件下で記録した。ホウケイ酸ガラスピペット(GC150-10、Clark Electromedical Instruments)を用いた。細胞培養皿をインセットで、記録チャンバー体積0.6mlとした。チャンバーを、細胞外溶液(下記参照)約1.5ml/分で連続的に潅流した。試験化合物を、DAD-12 表面潅流系 (Adams & List Associates, Ltd, Westbury, NY;USA)により送達した。シグナルを、Axopatch 200A増幅器、Digidataインターフェイス及びpClampソフトウェア(全てAxon Instruments, Foster City, CA製)を用いて記録した。直列抵抗補償は用いなかった。全ての実験を、室温で行った。
【0075】
細胞外溶液は、以下を含有する(単位mM):NaCl 137、KCl 5.0、CaCl2 1.0、MgCl2 1.2、HEPES 10、グルコース 10、NaOHでpH 7.4に調整。細胞内溶液は、以下を含有する(単位mM):KCl 140、NaCl 3.0、MgCl2 1.2、EGTA 1.0、HEPES 10、KOHでpH 7.2に調整。
グリシン(Sigma)ストック溶液を細胞外溶液中に毎日新しく調製した。試験化合物を、DMSO中に溶解して、濃度20mMとし、細胞外溶液中に希釈して最終濃度とした。最初に10秒間、グリシンの対照濃度40μMを適用することにより、濃度反応曲線を得た。次いで、最低濃度の試験化合物を単独で10秒間適用し、次いで、グリシン40μMを10秒間、同時適用した。この順番を、各細胞について試験化合物の4種類の濃度で繰り返した。濃度を変える際に、化合物の洗い流しは行わなかった。
【0076】
生データを、pClampソフトウェアを用いて分析した。ピーク電流を測定し、対照グリシン電流に対して標準化した。濃度-反応の関係を、Origin 6.1 (OriginLab(R) Corporation、Northampton、MA)を用いてプロットした。
【0077】
本発明の化合物の典型的なIC50値は、約0.1〜約1,000,000 nMであった。他のIC50値は、約1〜約100,000 nMであった。更なるIC50値は約10nM〜約30,000nMであった。
【0078】
インビボモデル
ラットにおける完全フロインドアジュバント(FCA)誘発関節炎
動物
FCA注射の時点で体重150〜300gの雄Sprague Dawleyラット(B&K Universal AB, Uppsala, Sweden)を用いた。ラットは、削りくずの床敷の透明Macrolon(R) IVケージ中に、最大6匹飼育した。飼育及び試験領域は、明暗サイクル (12:12時間)、温度(21±2℃)及び湿度(40〜80%)の自動制御を有する。
【0079】
実験手順
イソフルラン麻酔下で、40μlのFCA (1mg/mL)を、ラットの背側から、左脛足根骨(足首)関節中に注射した。注射により、局所的炎症が引き起こされ、そして動物は体重が減少し、肢にすがり、保護していた。実験を行う前、FCA注射後、動物を48時間ホームケージ中に戻した。関節炎誘発の48時間後及び試験化合物の動態に応じた測定時間で、ラットをプレキシガラス製チャンバー中に入れ、そして下側から5分間ビデオで録画した。次いで、ラットが注射された肢にかけようとした加重を以下のようにスコア付けした。0:正常な肢の位置、1:歩行中に肢を使用するが、つま先は離れない、2:顕著な跛行、3:肢が床に接触しない。
【0080】
物質の投与
ラットに、試験物質の動態特性に応じて、経口で、皮下に又は腹腔内に注射した。投与からビデオ録画までの時間もまた、試験化合物の動態に依存する。
【0081】
神経因性疼痛モデル-改変Chungモデル
動物
体重約100〜150gの雄Sprague-Dawley (Hsd:SD)ラット(Charles River、St Constant、Canada)を、手術用に注文した。ラットを温度制御された部屋(22±1.5℃、湿度30-80%、12時間明暗サイクル)中に、1郡7〜9匹で収容した。ラットを、使用前に少なくとも1日、動物施設中で順化させた。明相サイクル中に実験を行い、部屋は300ルクスの強度で照明した。動物には、自由に食物及び水を摂取させた。
【0082】
実験手順-改変脊髄神経結紮損傷モデル(改変SNL又は改変Chungモデルとも呼ばれる)(Ch
ungら. 2004)
ケタミン及びキシラジン麻酔下で、だいたい下部腰椎(L3)レベルから仙骨(S2)レベルまで背側正中線切開を行い、筋肉を露出させた。左傍脊柱筋群を分離し、そしてL4棘突起レベル(spinous level)から仙骨S1レベルまでを除去した。次いで、骨、L6横突起を除去して、L5脊髄神経にアクセスし易いようにした。左側のL5及びL6脊髄神経を慎重に分離し、そして4-0の絹糸で硬く結紮し、一方、L4を、ガラスフックを用いて約10回「軽く刺した(tickled)」。切開部を、適切な縫合材料を用いて層状に閉じた。術後10日まで、ラットを回復させて、その時点で試験を開始することができた。
【0083】
試験手順
ラットを、グリッド床上に置き、そして小さな動物ケージを逆にしてかぶせた。触覚機械刺激に対するラットの閾値(gで測定)を決定するために、「アップ・ダウン」法(Chaplanら. (1994))において徐々に剛性が増加する一連のモノフィラメントで、処置した肢に触ることにより、ベースライン測定値を決定した。
触覚性機械刺激に対するラットの閾値を決定した後で、実験を開始する前に、ラットを均質化された群に無作為化した。5gより高い機械性閾値を有するラットを、試験から除外した。
【0084】
物質の投与
試験物質の動態プロフィルに応じて、ラットに、経口、皮下又は腹腔内に注射した。投与からビデオ録画までの時間もまた、試験化合物の動態に依存した。
【0085】
略語のリスト
HEPES = 4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸
EGTA = エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
Xは水素、ハロ、-CN、-CONH2、-CON(C1-6アルキル)H、-CON(C1-6アルキル)2及び複素環式基から選択され;
R1はC1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルから選択され;
ここで、
Yが-C1-6アルキルである場合、
Zは-OHであり、
Mは-C(O)-、-CH(ORa)-、-N(Ra)-及び-S(O)r-から選択され、ここでRaは水素又はC1-6アルキルであり、そしてrは0、1又は2であり、
R2はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択され、
R2はハロ、-NO2、-CN、-OH、-CF3、-OCF3、-NH2及び/又は-CONH2で置換され;
又は、
Yが-C1-6アルコキシである場合、
Zは-C1-6アルコキシであり、
Mは結合であり、
R2はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択される]
の化合物、又はその医薬として許容し得る塩。
【請求項2】
Xが水素、ハロ、-CN、-CONH2及び複素環式基から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが水素、-Br、-CN、-CONH2及びテトラゾリルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R1がC3-4アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Zが-OHであり、
Mが-C(O)-であり、
R2がC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択され、
R2はハロ、-NO2、-CN、-OH、-CF3、-OCF3、-NH2及び/又は-CONH2で置換され、そして
Yが-C1-6アルキルである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R2がアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
R2がフェニル、ナフチル、シクロヘキシル、メチルベンジル及びキノキサリニルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
Zが-OHであり、
Mが-C(O)-、-CH(ORa)-、-N(Ra)-及び-S(O)r-から選択され、ここでRaが水素又はC1-6アルキルであり、そしてrが0、1又は2であり、
R2がC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択され、
R2はハロで置換され、そして
Yが-C1-6アルキルである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
R2がクロロで置換される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Xが水素、-Br、-CN、-CONH2及びテトラゾリルから選択され;
Yが-CH3であり;
R1がC3-4アルキルであり;
Mが-C(O)-であり;
R2はフェニル、ナフチル、シクロヘキシル、メチルベンジル及びキノキサリニルから選択され、
R2はクロロで置換され;そして
Zは-OHである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
Xは水素、-Br、-CN、-CONH2及びテトラゾリルから選択され;
Yは-OCH3であり;
R1はC3-4アルキルであり;
Mは結合であり;
R2はフェニル、ナフチル、シクロヘキシル、メチルベンジル及びキノキサリニルから選択され;そして
Zは-OCH3である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
以下の化合物:
(4-クロロフェニル)[4-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチル-3-(1H-テトラゾール-5-イル)フェニル]メタノン、
(4-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチルフェニル)(キノキサリン-2-イル)メタノン、
3-(4-クロロベンゾイル)-6-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチルベンズアミド、
3-(4-クロロベンゾイル)-6-ヒドロキシ-5-イソプロピル-2-メチルベンゾニトリル、
3,5-ジ-tert-ブチル-2,6-ジメトキシベンズアミド、及び
1,5-ジ-tert-ブチル-2,4-ジメトキシベンゼン
からなる群より選択される化合物。
【請求項13】
治療において使用するための、式I:
【化2】

[式中、
Xは水素、ハロ、-CN、-CONH2、-CON(C1-6アルキル)H、-CON(C1-6アルキル)2及び複素環式基から選択され;
R1はC1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルから選択され;
ここで、
Yが-C1-6アルキルである場合、
Zは-OHであり、
Mは-C(O)-、-CH(ORa)-、-N(Ra)-及び-S(O)r-から選択され、ここでRaは水素又はC1-6アルキルであり、そしてrは0、1又は2であり、
R2はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択され、
R2はハロ、-NO2、-CN、-OH、-CF3、-OCF3、-NH2及び/又は-CONH2で置換され;
又は、
Yが-C1-6アルコキシである場合、
Zは-C1-6アルコキシであり、
Mは結合であり、
R2はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択される]
の化合物、又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項14】
Xが水素、ハロ、-CN、-CONH2及び複素環式基から選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Xが水素、-Br、-CN、-CONH2及びテトラゾリルから選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
R1がC3-4アルキルである、請求項13に記載の化合物。
【請求項17】
Zは-OHであり、
Mは-C(O)-であり、
R2はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択され、
R2はハロ、-NO2、-CN、-OH、-CF3、-OCF3、-NH2及び/又は-CONH2で置換され、そして
Yは-C1-6アルキルである、
請求項13に記載の化合物。
【請求項18】
R2がアリールである、請求項13に記載の化合物。
【請求項19】
R2がフェニル、ナフチル、シクロヘキシル、メチルベンジル及びキノキサリニルから選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項20】
Zは-OHであり、
Mは-C(O)-、-CH(ORa)-、-N(Ra)-及び-S(O)r-から選択され、ここで、Raは水素又はC1-6アルキルであり、そしてrは0、1又は2であり、
R2はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール及びヘテロアリールから選択され、
R2はハロで置換され、そして
Yは-C1-6アルキルである、
請求項13に記載の化合物。
【請求項21】
R2がクロロで置換される、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
Xは水素、-Br、-CN、-CONH2及びテトラゾリルから選択され;
Yは-CH3であり;
R1はC3-4アルキルであり;
Mは-C(O)-であり;
R2はフェニル、ナフチル、シクロヘキシル、メチルベンジル及びキノキサリニルから選択され、
R2はクロロで置換され;そして
Zは-OHである、
請求項13に記載の化合物。
【請求項23】
Xは水素、-Br、-CN、-CONH2及びテトラゾリルから選択され;
Yは-OCH3であり;
R1はC3-4アルキルであり;
Mは結合であり;
R2はフェニル、ナフチル、シクロヘキシル、メチルベンジル及びキノキサリニルから選択され;そして
Zは-OCH3である、
請求項13に記載の化合物。
【請求項24】
痛みを伴う糖尿病性神経障害、外傷後神経痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、関節炎、リウマチ様疾患、線維筋痛、神経根障害を伴う腰痛及び術後疼痛のような神経因性又は炎症性疼痛症候群;アンギナ、腎疝痛又は胆石疝痛、月経、偏頭痛及び痛風、発作、頭部外傷、酸素欠乏障害及び虚血性傷害、低血糖、心血管疾患及び/又はがんと関係がある疼痛;耳鳴のような聴神経障害;網膜症、糖尿病性網膜症又は緑内障のような眼科的障害;及び/又はアルコール症、薬物嗜癖及び精神病のような精神疾患の治療において使用するための、請求項13〜23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
活性成分として治療有効量の請求項13〜23のいずれか1項に記載の化合物を、1又はそれ以上の医薬として許容し得る賦形剤、添加剤及び/又は不活性担体と共に含有する医薬組成物。
【請求項26】
痛みを伴う糖尿病性神経障害、外傷後神経痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、関節炎、リウマチ様疾患、線維筋痛、神経根障害を伴う腰痛及び術後疼痛のような神経因性又は炎症性疼痛症候群;アンギナ、腎疝痛又は胆石疝痛、月経、偏頭痛及び痛風、発作、頭部外傷、酸素欠乏障害及び虚血性傷害、低血糖、心血管疾患及び/又はがんと関係がある疼痛;耳鳴のような聴神経障害;網膜症、糖尿病性網膜症又は緑内障のような眼科的障害;及び/又はアルコール症、薬物嗜癖及び精神病のような精神疾患の治療において使用するための、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
痛みを伴う糖尿病性神経障害、外傷後神経痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、関節炎、リウマチ様疾患、線維筋痛、神経根障害を伴う腰痛及び術後疼痛のような神経因性又は炎症性疼痛症候群;アンギナ、腎疝痛又は胆石疝痛、月経、偏頭痛及び痛風、発作、頭部外傷、酸素欠乏障害及び虚血性傷害、低血糖、心血管疾患及び/又はがんと関係がある疼痛;耳鳴のような聴神経障害;網膜症、糖尿病性網膜症又は緑内障のような眼科的障害;及び/又はアルコール症、薬物嗜癖及び精神病のような精神疾患の治療用医薬の製造における、請求項13〜23のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項28】
治療の必要なヒトを含む哺乳動物に、治療有効量の請求項13〜23のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、痛みを伴う糖尿病性神経障害、外傷後神経痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、関節炎、リウマチ様疾患、線維筋痛、神経根障害を伴う腰痛及び術後疼痛のような神経因性又は炎症性疼痛症候群;アンギナ、腎疝痛又は胆石疝痛、月経、偏頭痛及び痛風、発作、頭部外傷、酸素欠乏障害及び虚血性傷害、低血糖、心血管疾患及び/又はがんと関係がある疼痛;耳鳴のような聴神経障害;網膜症、糖尿病性網膜症又は緑内障のような眼科的障害;及び/又はアルコール症、薬物嗜癖及び精神病のような精神疾患の治療方法。
【請求項29】
急性及び慢性の神経因性疼痛の治療において使用される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
a)式(II):
【化3】

の化合物を、
i)式(III):
【化4】

[式中、Wはハロゲン又は適切な脱離基である]の化合物と、適切な溶媒中で反応させるか、又は
ii)式(IV):
【化5】

[式中、Wはハロゲンであり、そしてnは0、1又は2である]の化合物と、適切な溶媒中で反応させ、場合により、nが0又は1である場合は、次いで酸化剤で処理する、
又は
b)式(V):
【化6】

[式中、Halはハロゲン又はスルホニルオキシ基であり、そしてXは非プロトン性官能基又は保護された官能基である]の化合物を、
i)式(VI):
【化7】

[式中、Metは適切な金属基である]の有機金属試薬又は有機ホウ素試薬と、一酸化炭素の存在下又は乾燥窒素雰囲気下で、そして金属触媒の存在下で反応させるか、又は
ii)式(VII):
【化8】

のアミンと、金属触媒の存在下で、そして適切な不活性溶媒又は希釈剤の存在下で反応させるか、又は
iii)式(X):
【化9】

のメルカプタンと、金属触媒の存在下で、そして適切な塩基の存在下で反応させ、場合により、次いで酸化剤で処理することにより酸化してスルホキシド又はスルホンを得る、
c)式(VIII):
【化10】

の化合物を、適切な溶媒中、30℃〜還流温度で加熱することにより反応させる、
又は
d)式(XII):
【化11】

[式中、Halはハロゲン又はスルホニルオキシ基である]の化合物を、適切なシアン化求核試薬と、適切な溶媒中、50℃〜還流温度で、不活性雰囲気下で反応させる、
又は
e)式(XIII):
【化12】

の化合物を、適切なアジド試薬と、触媒の存在下で、適切な溶媒中、50℃〜還流温度で、不活性雰囲気下で反応させる、
又は
f)式(XVI):
【化13】

の酸を、適切なハロゲン化試薬と、適切な溶媒中、周囲温度〜還流温度で反応させ、次いでアミン又はアンモニア溶液で処理し、
そして、その後、場合により、
i)式Iの化合物を、式Iの別の化合物に変換し;そして/又は、
ii)全ての保護基を除去し;そして/又は
iii)医薬として許容し得る塩を形成する
ことを含む、X、Y、Z、R1及びR2が、特に明記しない限り、式Iにおいて定義されたとおりである式Iの化合物の製造方法。

【公表番号】特表2008−543741(P2008−543741A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511082(P2008−511082)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000548
【国際公開番号】WO2006/121391
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】