説明

新規な水溶性ポリマー及びそれを含有する化粧料又は皮膚外用剤

【課題】低湿度の条件下でも保水性を維持し、高湿度の条件下でもベタつきを感じさせず、粘性がなく又はほとんどなく、他の成分の感触、官能に影響を与えることのない化粧料又は皮膚外用剤用水溶性ポリマーを提供すること。
【解決手段】以下の式(1)


で表される繰返し単位の1種又は2種以上からなり、重量平均分子量(Mw)が5,000〜150,000であり、温度30℃、相対湿度60%における当該ポリマーの50重量%水溶液の6時間放置後の重量減少率が25重量%以下である化粧料又は皮膚外用剤用水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な水溶性ポリマー及びそれを含有する化粧料又は皮膚外用剤に関し、更に詳細には、新規な保水特性を有する水溶性のポリ(メタ)アクリル酸アミド及びそれを含有する化粧料又は皮膚外用剤に関する。
【0002】
一般に皮膚の乾燥は、皮膚分泌物の量、特に皮脂分泌量の減退により、角層のバリア機能が低下し、経表皮性水分損失が大きくなったときにおこる。皮膚が乾燥状態になると皮膚のつやは低下し、小じわが目だつなどの弊害がでてくる。従って、皮膚の水分量を維持させることは重要な課題であり、そのため皮膚水分量を維持するための保湿剤に関する様々な研究が行われている。グリセリン、1,3−ブチレングリコール等の水溶性多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ソーダ、乳酸ソーダ等の有機酸塩類、キチン等の多糖類などを用いて角層内に存在する水分との水和効果を高める方法などが見い出されているが、これらの保湿剤としての効果は一過性のものが多く、皮膚の水分量を高める作用には優れるものの、その持続性には未だ課題が残っている。
【0003】
一方、多くの化合物が、保湿剤としての役割も果たすとともに、粘性を付与する等により、使用性や外観の安定性などのレオロジーを改善するために用いられている。例えば、増粘性や曳糸性を有することを特徴とする水溶性のヒアルロン酸や、疎水基を有し油性基材にも配合できるアセチルヒアルロン酸(例えば、特許文献1参照)のほか、細胞膜の構成に注目したホスファチジルコリンの極性基と同一の構造を有する2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成単位とし被膜形成能に優れるといわれるポリマー物質(リピジュア)(例えば、特許文献2参照)や、側鎖α−カルボキシル基と親水性アミノ酸のアミノ基とがアミド結合してなる、保湿性を有するアミノ酸修飾γ−ポリグルタミン酸(例えば、特許文献3参照)等のポリマーが提案されている。
【0004】
また、(メタ)アクリルアミド誘導体として、N−アルキル又はN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミドの単独または共重合体を、例えば、分子中に二個以上の二重結合を有する架橋性モノマーと共重合することで水に不溶化してなる、調湿用樹脂(例えば、特許文献4参照)や水性ゲル用樹脂(例えば、特許文献5参照)や(メタ)アクリルアミド誘導の重合体を含む水の分離保持剤(例えば、特許文献6参照)や水蒸気の吸収、放出剤(例えば、特許文献7参照)が提案されているほか、ジアルキルアクリルアミドとイオン性アクリルアミド誘導体等の水溶性エチレン性不飽和モノマーを分散層に溶解し、分散相中にラジカル重合して得られるミクロゲルからなる増粘剤(例えば、特許文献8参照)や、水性中に分散した油性相を含む水中油型ナノエマルジョンであって、中性のアクリル酸ホモポリマーを含む組成物(例えば、特許文献9参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3557044号公報
【特許文献2】特許2832119号公報
【特許文献3】特開2007−297559号公報
【特許文献4】特開昭60−250013号公報
【特許文献5】特開昭60−250019号公報
【特許文献6】特開昭60−90010号公報
【特許文献7】特開昭61−263639号公報
【特許文献8】特開2005−298831号公報
【特許文献9】特開2002−68935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の保湿剤は、高湿度下で吸湿性が高くなる保湿剤はベタつきを感じさせ、逆に低湿度下では、水分子を放出してしまい保水性が維持されないことが多く、水溶性ポリマーであっても粘性とともに曳糸性等他の望ましくない特性を付与する場合があり、さらに粘性を付与することで、化粧料の他の成分の感触、官能に影響を与えることがあった。本発明の課題は、低湿度の条件下でも保水性を維持し、高湿度の条件下でもベタつきを感じさせず、粘性がなく又はほとんどなく、他の成分の感触、官能に影響を与えることのない化粧料又は皮膚外用剤用水溶性ポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、保湿効果が高く、低湿度の条件下でも保水性を維持し、かつ高湿度下で吸湿性が低くべたつきの少ない保湿剤として提案されているテアニン(特許3543478号)のアセトアミド部分に着目し、モノエチルアセトアミドについて保湿剤として使用できるかどうか検討したところ、揮発性を有し、保湿剤として化粧品に配合することは困難であることを確認した。しかし、モノエチルアセトアミドは水分子と相互作用することが判明したので、ポリマーの骨格部分として(メタ)アクリル酸を選択し、導入基としてアミド化合物を選択し、架橋剤を用いずに重合させたところ、得られた水溶性ポリマーは、優れた保水性を示すと共に、粘性が非常に低く、化粧料に配合した場合に他の成分の感触・官能に影響を与えずに十分な保湿性を実感させることができることを見出し、本発明を完成した。
また、発明者らは、本発明の水溶性ポリマーをリン脂質、特にそれから形成されるリポソームと共存させることにより、リン脂質又はリポソーム単独の場合に比べて保湿効果が向上することも見出した。
【0008】
すなわち本発明は、
[1]以下の式(1)
【0009】
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示す)で表される繰返し単位の1種又は2種以上からなり、重量平均分子量(Mw)が5,000〜150,000であり、温度30℃、相対湿度60%における当該ポリマーの50重量%水溶液の6時間放置後の重量減少率が25重量%以下である化粧料又は皮膚外用剤用水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー、
[2]さらに、温度30℃において相対湿度を60%から40%に下げたときの当該ポリマーの50質量%水溶液の質量減少率が3質量%未満であることを特徴とする上記[1]記載の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー、
[3]さらに、温度30℃において相対湿度を40%から60%に上げたときの当該ポリマーの50質量%水溶液の質量増加率が3質量%未満であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー、及び
[4]水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーがポリN,N−ジエチルアクリルアミドであることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーに関する。
【0010】
又、本発明は、
[5](A)上記[1]〜[4]のいずれかに記載の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー、及び(B)リン脂質を含有することを特徴とするリポソーム含有水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー組成物、
[6]さらに、(C)コレステロール、コレステロール誘導体、フィトステロール及びフィトステロール誘導体からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[5]記載のリポソーム含有水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー組成物、及び、
[7]さらに、(D)グリセリン及び1,3−ブチレングリコールからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[5]又は[6]記載のリポソーム含有水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー組成物に関する。
【0011】
さらに、本発明は、
[8]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の水溶性(メタ)アクリルアミドホモポリマーを含有する化粧料又は皮膚外用剤、及び、
[9]上記[5]〜[7]のいずれかに記載のリポソーム含有組成物を含むことを特徴とする化粧料又は皮膚外用剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーは、温度30℃、相対湿度60%における当該ポリマーの50質量%水溶液の6時間放置後の質量減少率が25質量%未満であり、又、温度30℃において相対湿度を60%から40%に下げたときの当該ポリマーの50質量%水溶液の質量減少率が3質量%未満で、さらに温度30℃において相対湿度を40%から60%に上げたときの当該ポリマーの50質量%水溶液の質量増加率が3質量%未満と、保水性に優れている。このような特性を有する水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーを使用することにより、特開2002−68935号に記載の方法と比較して、水性相中に分散した油性相を含む水中油型のナノエマルジョンにすることなく、配合した化粧料等に保湿性を付与することができ、しかも他の成分の感触、官能に影響を与えることが少ない。
【0013】
さらに、リン脂質を共存させた場合は、特に、リン脂質がリポソームを形成する場合には、本発明の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーがリポソームの経時安定性の向上に寄与し、それにより、角質貯留性が高まり、リン脂質及び本発明の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーの肌への経時的保湿効果を飛躍的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明品6,7、比較品6〜8についての、連用による肌水分量の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
((メタ)アクリルアミドポリマー)
本発明の(メタ)アクリルアミドポリマーは、式(1)で表される繰り返し単位の1種又は2種以上からなるホモポリマー又はコポリマーであり、架橋構造を有しない 。
式(1)中のRは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1から3のアルキル基、Rは、炭素数1から3の、アルキル基又は1若しくは2以上のヒドロキシ基で置換されたアルキル基を表す。炭素数1から3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基を例示することができる。また、炭素数1から3のヒドロキシアルキル基としては、−CHOH基、−CHCHOH基、−CH(OH)CH基、−CHCHCHOH基、−CHCH(OH)CH基、−CH(OH)CHCH基、−CH(OH)基、−CH(OH)CHOH基、−CHCH(OH)CHOH基、−CHC(OH)CH基、−CH(OH)CH(OH)CHOH等を例示することができる。
【0016】
上記式(1)で表される繰返し単位に対応する単量体としては、具体的には、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジn−プロピルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−3−ヒドロキシn−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−エチル−N−2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアクリルアミド系重合性モノマー、又は、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−シメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジn−プロピルメタクリルアミド、N,N−ジイソプロピルメタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−3−ヒドロキシn−プロピルメタクリルアミド、N−メチル−N−エチルメタクリルアミド、N−メチル−
N−n−プロピルメタクリルアミド、N−メチル−N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−エチル−N−2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド系重合性モノマーを挙げることができ、これらは、架橋剤を用いずに1種又は2種以上の単量体で重合することにより本発明で用いられる(メタ)アクリルアミドポリマーを作製することができる。
【0017】
本発明において用いられる上記単量体を重合することにより作製することができるアクリルアミドポリマー又はメタクリルアミドポリマーとしては、ポリN−メチルアクリルアミド、ポリN−エチルアクリルアミド、ポリN−n−プロピルアクリルアミド、ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリN,N−ジメチルアクリルアミド、ポリN,N−ジエチルアクリルアミド、ポリN,N−ジn−プロピルアクリルアミド、ポリN,N−ジイソプロピルアクリルアミド、ポリN−ヒドロキシメチルアクリルアミド、ポリN−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ポリN−ヒドロキシプロピルアクリルアミド、ポリN−メチル−N−エチルアクリルアミド、ポリN−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリN−メチル−N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、ポリN−エチル−N−2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアクリルアミドホモポリマー、ポリN−メチルメタクリルアミド、ポリN−エチルメタクリルアミド、ポリN−n−プロピルメタクリルアミド、ポリN−イソプロピルメタクリルアミド、ポリN,N−ジメチルメタクリルアミド、ポリN,N−ジエチルメタクリルアミド、ポリN,N−ジn−プロピルメタクリルアミド、ポリN,N−ジイソプロピルメタクリルアミド、ポリN−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、ポリN−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ポリN−ヒドロキシn−プロピルメタクリルアミド、ポリN−メチル−N−エチルメタクリルアミド、ポリN−メチル−N−n−プロピルメタクリルアミド、ポリN−メチル−N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、ポリN−エチル−N−2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド等のメタクリルアミドホモポリマー、(N−メチルアクリルアミド/N−エチルアクリルアミド)コポリマー、(N−メチルアクリルアミド/N,N−ジn−プロピルアクリルアミド)コポリマー,(N−メチルメタクリルアミド/N−エチルメタクリルアミド)コポリマー、(N−メチルメタクリルアミド/N,N−ジn−プロピルメタクリルアミド)コポリマー等を挙げることができるが、アクリルアミドホモポリマーが高分子組成物の膜の柔軟性や肌への親和性により優れる点で好ましく、ポリN,N−ジエチルアクリルアミド、ポリN−エチルアクリルアミド、ポリN,N−ジメチルアクリルアミドが、保水性が特に良好である点でより好ましい。
【0018】
本発明の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーの重量平均分子量としては、本発明の目的とする効果を奏する限り特に制限されないが、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、直鎖ポリスチレン標準品で作成した校正曲線及び屈折率検出器を使用する液体ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、5,000〜150,000であることが好ましく、10,000〜100,000の範囲であることがより好ましい。
【0019】
本発明における水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーは、上記化学構造を有すると共に、次の特徴を有する。
(1)水及びエタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、プロピレングルコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコールに可溶である。
(2)温度30℃、相対湿度60%における当該ポリマーの50質量%水溶液の6時間放置後の質量減少率が25質量%未満、好ましくは20質量%未満であり、温度30℃において相対湿度を60%から40%に下げたときの6時間後の当該ポリマーの50質量%水溶液の質量減少率が3質量%未満、好ましくは2質量%未満である。さらに温度30℃において相対湿度を40%から60%に上げたときの当該ポリマーの50質量%水溶液の質量増加率が3質量%未満、好ましくは1質量%未満である。
【0020】
本発明において、上記質量変化率(質量増加率・質量減少率)は、次のようにして算出する。
(1)「温度30℃、相対湿度60%における当該ポリマーの50質量%水溶液の6時間放置後の質量減少率」は、本発明の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーの50質量%水溶液からなるサンプルを調製し、質量測定後これを温度30℃、湿度60%の恒温恒湿槽に入れて6時間放置した後再び質量を測定し、質量の減少量を算出することにより求められる。
(2)「温度30℃において相対湿度を60%から40%に下げたときの当該ポリマーの50%水溶液の質量減少率」は、本発明の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーの50質量%水溶液からなるサンプルを調製し、これを温度30℃、湿度60%の恒温恒湿槽に入れて48時間経てから質量を測定し、次いでサンプルを温度30℃、湿度40%の恒温恒湿槽に移して、6時間後の質量を測定し、質量の増加量を算出することにより求められる。
(3)「温度30℃において相対湿度を40%から60%に上げたときの当該ポリマーの50質量%水溶液の質量増加率」は、本発明の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーの50質量%水溶液からなるサンプルを調製し、これを温度30℃、湿度60%の恒温恒湿槽に入れて48時間経た後にサンプルを温度30℃、湿度40%の恒温恒湿槽に移して、24時間後の質量を測定し、次いでサンプルを温度30℃、湿度60%の恒温恒湿槽に移し、6時間後の質量を測定し、質量の増加量を算出することにより求められる。
【0021】
(製造方法)
上記式(1)で表される繰返し単位に相当するアクリルアミド又はメタクリルアミド重合性単量体を製造する方法としては、公知の方法を含め特に制限されないが、例えば、当該のアミンをアセトニトリルに溶解し、トリエチルアミンを適宜添加後冷却し、0℃を維持しながら、アクリル酸クロライド若しくはメタクリル酸クロライドを撹拌下でゆっくり滴下し、攪拌後減圧濃縮等する方法等の化学的方法など公知の方法を含めた合成方法を挙げることができ、生成物を再結晶やカラムクロマトグラフィー等の公知の方法を含めた精製手段で精製してもよい。また、上記アクリルアミド又はメタクリルアミド重合性単量体を用いてアクリルアミドポリマー又はメタクリルアミドポリマーを製造する方法としては、上記アクリルアミド又はメタクリルアミド重合性の単量体(モノマー)の1種類を用いて上記特徴を有する本発明の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーを製造することができる限り特に制限はないが、例えば、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法等を挙げることができ、中でも過酸化物、アゾ化合物等のラジカル発生剤を利用したラジカル重合法を好適に示すことができ、かかるラジカル発生剤の使用量は、モノマーの総量に対して、0.01〜10質量%好ましくは0.1〜8質量%である。また、上記ラジカル重合法としては、公知の、塊重合、乳化重合、溶液重合等のいずれも可能であるが、本発明における水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーを得る製造方法においては溶液重合が好ましく、該溶液重合を行う方法としては、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、温度を50〜100℃、好ましくは65〜75℃として重合反応を行う方法を挙げることができる。また、上記溶液重合を行う場合における有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類や、ジオキサン等のエーテル類や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類や、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素類などを例示することができる。また、本発明の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーを製造する今ひとつの方法としては、ポリアクリル酸とアルキルアミンを反応させ、アミドを形成させる方法をとることもできるがこれらに制限されない。
【0022】
(化粧料・皮膚外用剤)
本発明の化粧料・皮膚外用剤は、上記式(1)で表される繰返し単位を有するアクリルアミドポリマー又はメタクリルアミドポリマー(以下、「(メタ)アクリルアミドポリマー」ともいう。)を含有しており、(メタ)アクリルアミドポリマーは、対応する単量体であるアクリルアミド系重合性モノマー又はメタクリルアミド系重合性モノマーを重合することにより製造することができるアクリルアミド系又はメタクリルアミド系のポリマーであれば特に制限されず、前記ポリマーの1種又は2種以上を化粧料又は皮膚外用剤に配合することができる。
【0023】
本発明における水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーは、化粧料や皮膚外用剤の他、様々な用途に使用することができるが、化粧料や皮膚外用剤に使用することが好ましく、化粧料に配合することがより好ましい。本発明における化粧料としては、化粧水、クリーム、乳液、美容液等の基礎化粧料や、シャンプー、リンス、トリートメント等の頭髪化粧料や、リキッドファンデーション、下地乳液等のメイクアップ化粧料や、日焼け止め化粧料等の化粧料(医薬部外品を含む)を例示することができ、皮膚外用剤としては、リニメント剤、ローション剤、軟膏剤等の外用医薬品を例示することができる。
【0024】
本発明における水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーの、本発明の化粧料や皮膚外用剤への配合割合としては、本発明の効果が奏される限り特に制限されないが、通常、化粧料や皮膚外用剤全体に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、1種又は2種以上を適宜組み合わせて配合してもよい。
【0025】
本発明の化粧料や皮膚外用剤には、上記水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーとともに、化粧料や皮膚外用剤に一般に用いられる成分、例えば、以下に示す油性成分、界面活性剤、アルコール類、保湿剤、ゲル化剤、粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、pH調整剤、美肌用成分、香料等の1種又は2種以上を、上記水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーの効果を損なわない範囲で適宜組み合わせて配合してもよい。
【0026】
上記油性成分(油剤)としては、常化粧料に用いられる油剤であれば特に限定されず、動物油、植物油、合成油等の起源及び固形油、半固形油、液体油、揮発製油等の性状を問わず、例えば炭化水素油、エステル油類、グリセライド油類、シリコーン油類、高級アルコール類、脂肪酸類、ラノリン誘導体類、ロウ類、硬化油類、フッ素系油類等を挙げることができ、これらの油剤は、肌にエモリエント感を与えることができる。上記界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができる。
【0027】
上記アルコール類としては、例えばエタノール、イソプロパノール等の低級アルコールや、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール等の多価アルコールや、ソルビトール、マルトース、キシリトール、マルチトール等の糖アルコールや、コレステロール、シトステロール、フィトステロール、ラノステロール等のステロール類などを挙げることができる。上記保湿剤としては、例えば、尿素、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ピロリドンカルボン酸塩等を挙げることができる。
【0028】
上記ゲル化剤としては、皮膚外用剤又は化粧料に一般に用いられる水性ゲル化剤又は油性ゲル化剤であれば特に制限されず、例えば、水性ゲル化剤としては、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、キャロブガム、グァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード(マルメロ等由来の)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ等由来の)、アルゲコロイド、トラントガム、ローカストビーンガム等の植物系高分子や、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子や、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子や、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子や、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系高分子や、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子や、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のビニル系高分子や、ポリエチレングリコール、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド共重合体、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の無機系ゲル化剤増粘剤などを挙げることができ、油性ゲル化剤としては、アルミニウムステアレート、マグネシウムステアレート、ジンクミリステート等の金属セッケンや、N−ラウロイル−L−グルタミン酸、α,γ−ジ−n−ブチルアミン等のアミノ酸誘導体や、デキストリンパルミチン酸エステル、デキストリンステアリン酸エステル、デキストリン2−エチルヘキサン酸パルミチン酸混合エステル等のデキストリン誘導体や、脂肪酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステルや、モノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトール等のソルビトールのベンジリデン誘導体や、ジメチルベンジルドデシルアンモニウムモンモリロナイトクレー、ジメチルジオクタデシルアンモニウムモンモリロナイトクレー等の有機変性粘土鉱物などを挙げることができる。
【0029】
上記粉体としては、例えば、無機粉体、有機粉体、金属石鹸粉末、有色顔料、パール顔料、金属粉末、タール色素、天然色素等を挙げることができ、その粒子形状(球状、針状、板状等)や、粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)や、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わない。これらの粉体はそのまま使用してもよいが、2種以上の粉体を複合化したものを用いてもよく、油剤、シリコーン化合物、フッ素化合物等で表面処理を施してもよい。
【0030】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤や、アントラニル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤や、サリチル酸メチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤や、パラメトキシケイ皮酸オクチル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤や、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤や、ウロカニン酸エチル等のウロカニン酸系紫外線吸収剤などを挙げることができる。防腐剤や抗菌剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、イソプロピルメチルフェノール等を挙げることができる。
【0031】
上記酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン等を挙げることができる。pH調整剤としては、例えば、乳酸、乳酸塩、クエン酸、クエン酸塩、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等を挙げることができる。
【0032】
上記美肌用成分としては、例えば、アルブチン、グルタチオン、ユキノシタ抽出物等の美白剤や、ロイヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等の細胞賦活剤・肌荒れ改善剤や、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノール等の血行促進剤や、酸化亜鉛、タンニン酸等の皮膚収斂剤や、イオウ、チアントロール等の抗脂漏剤などを挙げることができる。
【0033】
本発明の化粧料や皮膚外用剤の剤型としては特に限定されないが、水性、水中油型、油中水型等を挙げることができる。また、本発明の化粧料や皮膚外用剤の形態としては、クリーム状、ゲル状、液状を挙げることができ、本発明の効果が最も奏されるのは、化粧水、クリーム、乳液、美容液等の基礎化粧料やシャンプー、リンス、トリートメント等の頭髪化粧料や、リキッドファンデーション、下地乳液などである。
【0034】
(リポソーム含有水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー組成物)
また、本発明の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーは、リン脂質と併用することにより保湿効果を向上することができるが、特にリン脂質から形成されるリポソームを共存させることにより、保湿効果を一層向上させることができる。
リン脂質の二分子膜からなる閉鎖小胞であるリポソームは生体膜モデルとして研究に用いられるとともに、古くから薬剤を内包してデリバリーするマイクロカプセルとして医薬品や化粧品に応用されてきた。特に化粧品分野においては、リポソームを皮膚に塗布したとき、リポソームが長時間角層に留まる性質を有することから高い保湿効果が得られる。
【0035】
本発明のリポソーム含有水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー組成物は、精製水などの水系の液に、本発明の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーと、少なくともリン脂質を含有し、好ましくは、さらに、コレステロール、コレステロール誘導体、フィトステロール及びフィトステロール誘導体からなる群から選ばれる1種又は2種以上、及び/又は、グリセリン及び1,3−ブチレングリコールからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有する組成物である。
【0036】
リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン等の天然リン脂質、ジオレオイルホスファチジルコリンなどの合成リン脂質、または天然由来のリン脂質の不飽和炭素鎖を水素により飽和とした水素添加リン脂質、その他大腸菌等の微生物から抽出されるリン脂質等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
この中で、水素添加大豆リン脂質、水素添加卵黄リン脂質、水素添加ホスファチジルコリン、水素添加ホスファチジルセリンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0037】
コレステロール又はコレステロール誘導体体としては、例えば、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、コレステロール、コレスタノール、デヒドロコレステロール、ラノリン脂肪酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、リシノール酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
フィトステロール又はフィトステロール誘導としては、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、エルゴステロール、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
本発明のリポソーム含有水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー組成物は、本発明の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーを共存させる以外は、公知のリポソーム含有水分散液の製法に従って製造することができ、例えば、バンガム法、pH勾配法、凍結融解法、逆相蒸発法、メカノケミカル法、超臨界二酸化炭素法、フィルムローディング法等、公知の方法により製造することができる(特開平8−183726号公報など参照)。
【0040】
組成物中の各成分の配合量は、用途に応じて適宜設定可能であるが、以下の範囲が好ましい。本発明の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーは0.01〜10質量%、さらに好ましくは、0.1〜5質量%である。リン脂質は、0.005〜10質量%、さらに好ましくは0.01〜5質量%である。この範囲外であると、リポソームを形成したときの経時安定性が好ましくない。コレステロール、コレステロール誘導体、フィトステロール又はフィトステロール誘導体は、必ずしも必要ではないが、使用する場合は、0.01〜10質量%、好ましくは、0.05〜5質量%である。グリセリン又は1,3−ブチレングリコールは、必ずしも必要ではないが、使用する場合は、1〜50質量%、好ましくは5〜40質量%である。
【0041】
以下に実施例を挙げて、本発明を説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0042】
(参考例)
[N−エチルアクリルアミドの合成]
エチルアミン(NH(CHCH):45.1)15gをアセトニトリル250mLに溶解し、トリエチルアミン(N(CHCH)3:77.2)26gを添加し、0℃に冷却した。0℃を維持しながら、これにアクリル酸クロライド(CHCHCOCl:90.51)30gを撹拌下でゆっくり滴下した。滴下終了後、冷却を解除し、液温が室温と同じになったところで、撹拌を中止し、減圧濃縮を行った。濃縮物に精製水200mLと塩化ナトリウム20gを添加し、1N塩酸でpH6.5に調整し、酢酸エチルで分配した。酢酸エチル分配後の水層は、更に塩化ナトリウム10gを添加し、酢酸エチルで分配した。酢酸エチル分配物を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮を行い、約25.5gの粗反応物を得た。この粗反応物をカラムクロマトグラフィー(担持体:ODSシリカゲル、展開溶媒:水:メタノール(9:1))で展開後、精製し、N−エチルアクリルアミド(CHCHCONH(CHCH):99.15)22.8g(収率約69%)を得た。得られたN−エチルアクリルアミドの元素分析値は、炭素60.58%、水素9.15%、窒素14.13%、酸素16.14%(計算残分)、(理論値:炭素60.58%、水素9.151%、窒素14.129%、酸素16.139%)、H−NMR(重クロロホルム溶液中)では、δ=6.7(1H、b)、6.2(2H、m)、5.6(1H、dd)、3.3(2H、qq)、1.1(3H、m)を示した。また、C−NMR(重クロロホルム溶液中)では、δ=165.6(166.7)、131.1(131.1)、125.7(128.9)、34.3(34.1)、14.5(15.0)であった。(括弧内数値は理論値)質量分析では、m/e=99.07(M+)のピーク(理論値:99.13)を観察した。
【0043】
1)ポリマーの合成
(実施例1)
[N−エチルアクリルアミドホモポリマーの合成]
還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコ(以下、単に「フラスコ」ともいう。)にN−エチルアクリルアミド10g及びトルエン30gを添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、70℃まで加温し、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNとする)0.5gを添加して1時間還流し重合させた。反応後、析出した固形分を分取し、メタノールに溶解後、酢酸エチルを注入して沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥してN−エチルアクリルアミドホモポリマー8.12g(収率81.2%)を得た。GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は61,900であった。このN−エチルアクリルアミドホモポリマーは水に透明に溶解し、粘稠な溶液となった。
【0044】
(実施例2)
[N−エチルアクリルアミドホモポリマーの合成]
フラスコに、N−エチルアクリルアミド5g及び酢酸エチル45gを添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、70℃まで加温し、AIBNを0.25g添加して1時間還流し重合させた。反応後、析出した固形分を分取し、メタノールに溶解後、酢酸エチルを注入して沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥してN−エチルアクリルアミドホモポリマー3.4g(収率68%)を得た。GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は83,200であった。このN−エチルアクリルアミドホモポリマーは水に透明に溶解し、粘稠な溶液となった。
【0045】
(実施例3)
[N−エチルアクリルアミドホモポリマーの合成]
フラスコに、N−エチルアクリルアミド7.5g及びトルエン42.5gを添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、70℃まで加温し、AIBNを0.375g添加して15分還流し重合させた。反応後、析出した固形分を分取し、エタノールに溶解後、ヘキサンを注入して沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥してN−エチルアクリルアミドホモポリマー5.56g(収率74%)を得た。GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は51,600であった。このN−エチルアクリルアミドホモポリマーは水に透明に溶解し、粘稠な溶液となった 。
【0046】
(実施例4)
[N−エチルアクリルアミドホモポリマーの合成]
フラスコに、N−エチルアクリルアミド5g及びトルエン45gを添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、70℃まで加温し、AIBNを0.15g添加して30分還流し重合させた。反応後、析出した固形分を分取し、メタノールに溶解後、酢酸エチルを注入して沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥してN−エチルアクリルアミドホモポリマー3.61g(収率72.2%)を得た。GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は11,900であった。このN−エチルアクリルアミドホモポリマーは水に透明に溶解し、粘稠な溶液となった。
【0047】
(実施例5)
[N−エチルアクリルアミドホモポリマーの合成]
フラスコに、N−エチルアクリルアミド5g及びメチルイソブチルケトン45gを添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、70℃まで加温し、AIBNを0.25g添加して5時間還流し重合させた。反応後、析出した固形分を分取し、メタノールに溶解後、酢酸エチルを注入して沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥してN−エチルアクリルアミドホモポリマー3.57g(収率71.4%)を得た。GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は20,700であった。このN−エチルアクリルアミドホモポリマーは水に透明に溶解し、粘稠な溶液となった。
【0048】
(実施例6)
[N,N−ジメチルアクリルアミドホモポリマーの合成]
フラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド10g及びトルエン90gを添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、70℃まで加温し、AIBNを0.3g添加して2時間還流し重合させた。反応後、エバポレーターにて反応溶液を濃縮後、ヘキサンを注入して沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥してN,N−ジメチルアクリルアミドホモポリマー8.42g(収率84.2%)を得た。GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は28,400であった。このN,N−ジメチルアクリルアミドホモポリマーは水に透明に溶解し、粘稠な溶液となった。
【0049】
(実施例7)
[N,N−ジエチルアクリルアミドホモポリマーの合成]
フラスコに、N,N−ジエチルアクリルアミド(株式会社興人社製)10g及びトルエン90gを添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、70℃まで加温し、AIBNを0.3g添加して2時間還流し重合させた。反応後、エバポレーターにて反応溶液を濃縮後、ヘキサンを注入して沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥してN,N−ジエチルアクリルアミドホモポリマー8.03g(収率80.3%)を得た。GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は40,600であった。N,N−ジエチルアクリルアミドホモポリマーは水に透明に溶解し、粘稠な溶液となった。
【0050】
(実施例8)
[N−イソプロピルアクリルアミドホモポリマーの合成]
フラスコに、N−イソプロピルアクリルアミド10g及びトルエン90gを添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、70℃まで加温し、AIBNを0.3g添加して3時間還流し重合させた。反応後、エバポレーターにて溶媒を留去してN−イソプロピルアクリルアミドホモポリマー6.77g(収率67.7%)を得た。GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は54,100であった。このN−イソプロピルアクリルアミドホモポリマーは水に透明に溶解し、粘稠な溶液となった。
【0051】
(実施例9)
[N−ヒドロキシエチルアクリルアミドホモポリマーの合成]
フラスコに、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(株式会社興人社製)10g及びメチルイソブチルケトン90gを添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、70℃まで加温し、AIBNを0.3g添加して2時間還流し重合させた。反応後、析出した固形分を分取し、エタノールに溶解後、ヘキサンを注入して沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥してN−ヒドロキシエチルアクリルアミドホモポリマー9.04g(収率90.4%)を得た。GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は37,800であった。N−ヒドロキシエチルアクリルアミドホモポリマーは水に溶解し、粘稠な溶液となった。
【0052】
(実施例10)
[N−エチルアクリルアミドホモポリマーの合成]
内容量500mLのガラスライニング耐圧反応容器に、ポリアクリル酸(和光純薬工業社製 分子量5000)7.2g、蒸留テトラヒドロフラン100mL、活性化処理を行ったモレキュラーシーブ(3A 1/8)20gを投入し、気体導入バルブを設置した。気体導入バルブよりエチルアミンガス(東京化成工業社製)を全体質量が5g増加するまで圧入し、密閉した。その後、反応容器自体を振とうさせながら105℃に加温し、6時間反応させた。反応後、常温に戻し、圧力を解除後、モレキュラーシーブを濾別し、約半量になるまで減圧濃縮した後、酢酸エチルを注入して沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥してN−エチルアクリルアミドホモポリマー8.85g(収率89.4%)を得た。GPCによるポリスチレン換算による重量平均分子量は、6,800であった。このN−エチルアクリルアミドホモポリマーは水に透明に溶解し、粘稠な溶液となった。
【0053】
(実施例11)
[N−エチルアクリルアミドホモポリマーの合成]
還流冷却器、温度計及び攪拌装置を取り付けた500mLの三つ口のセパラブルフラスコ(以下、単に「フラスコ」ともいう。)に、ポリアクリル酸(和光純薬工業社製 分子量25000)7.2g、蒸留テトラヒドロフラン150mL、活性化処理を行ったモレキュラーシーブ(3A 1/8)10gを投入し、加温してポリアクリル酸をテトラヒドロフランに溶解した後、1,3−ジエチル尿素(東京化成工業社製)6gを添加し、テトラヒドロフランの沸点で24時間還流した。冷後、モレキュラーシーブを濾別し、約半量になるまで減圧濃縮した後、酢酸エチルを注入して沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥してN−エチルアクリルアミドホモポリマー7.98g(収率80.1%)を得た。GPCによるポリスチレン換算による重量平均分子量は、34,000であった。このN−エチルアクリルアミドホモポリマーは水に透明に溶解し、粘稠な溶液となった。
【0054】
2)評価試験
[保水性評価1(質量減少試験)]
上記実施例1〜9で作製された本発明の水溶性ホモポリマーと、比較例としてグリセリン、PCAナトリウム、乳酸ナトリウム、セリン、グルタミン、また、ポジティブコントロールとしてテアニンについても、それぞれ50質量%水溶液を調製し、これを試験サンプルとして、温度30℃、相対湿度60%に設定した恒温恒湿槽に6時間放置して質量変化を測定することにより保水性を評価した。ここで得られた結果を表1に示す。
【0055】
[結果]
保水性が高いといわれているグリセリン、PCAナトリウム、乳酸ナトリウム、セリン、グルタミンは温度30℃、相対湿度60%の条件下では急速に水分蒸散が生じていることが示された。これに対して実施例1〜9で作製されたポリマーは、質量変化率が小さく、優れた保水性を有し、化粧料に配合した場合に保湿性を付与することができると推定される。
【0056】
[保水性評価2(湿度依存性試験)]
上記各実施例1〜9で作製された、ポリN−エチルアクリルアミド、ポリN,N−ジメチルアクリルアミド、ポリN,N−ジエチルアクリルアミド、ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリN−ヒドロキシエチルアクリルアミド各1gを、それぞれ直径25mm高さ10mmの容器中の精製水1gに添加し、各ポリマーの50質量%水溶液サンプルを調製し、質量測定後、温度30℃、相対湿度60%の恒温恒湿槽に移し、48時間後の質量を測定した。サンプルを相対湿度40%の恒温恒湿槽に移し6時間後の質量を測定することで質量変化率の評価をした。さらに各ポリマーの50質量%水溶液サンプルを温度30℃、相対湿度60%の恒温恒湿槽に移し、6時間後の質量を測定して、それぞれの質量変化率から保水性を評価した。また、比較化合物としてグリセリン、PCAナトリウム、乳酸ナトリウム、セリン、グルタミン、また、ポジティブコントロールとしてテアニンについても、各ポリマーの50質量%水溶液サンプルを同様の方法で、保水性を評価した。
【0057】
【表1】

【0058】
[結果]
相対湿度を60%から40%に変化させたときの質量変化率については、実施例1〜9で作製したポリマーの50質量%水溶液サンプルは、多くても1.4%以下の減少で、グリセリン、及び乳酸ナトリウムは、2%以上の減少を示し、化粧料に配合した場合、湿度によるレオロジーの変化がもたらされることが推察された。さらに各ポリマーの50質量%水溶液サンプルを、相対湿度を40%から60%に変化させたときの、6時間後の質量変化率については、実施例1〜9で作製したポリマーの50質量%水溶液サンプルは、−1.0〜0.2%の増加範囲内におさまり、高湿度条件下においても、ほとんど吸湿性をしめさず、化粧料等に配合した場合でもベタつきをもたらすことがないと推察されたのに対し、グリセリン、PCAナトリウム及び乳酸ナトリウムは、いずれも1.5%以上の質量増加を示し、特に高湿度の条件下では水分を取り込み、かかる吸湿性により化粧料等に配合した場合ベタつきを感じさせるであろうことが推察された。
【0059】
[粘性評価]
実施例1のポリN-エチルアクリルアミド10質量%溶液を調製し、30℃恒温槽に24時間放置したものを単一円筒回転式粘度計(芝浦システム社製)を用いて、3号ローターで1分間に6回転、1分後の粘度値の条件で測定した。
[結果]
シャバシャバで全く粘性がない状態であり測定することができなかった。
【0060】
[化粧水官能評価]
実施例1と実施例3で作製したポリマーを用いて表2に示す処方により化粧水を作製し、官能評価を行った。(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)コポリマー、カルボキシビニルポリマーを用いること以外は上記同様に化粧水を作製し、比較のために官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
[結果]
実施例1と実施例3で作製したポリマーを用いた化粧水は、肌なじみ、しっとり感、べたつきのなさ、均一な伸び広がりのいずれにおいてもすぐれていたのに対し、比較例のポリマーは、いずれにおいても劣っていた。
【0063】
(処方)
[化粧水]
以下に示した成分1〜7をそれぞれの割合で常温にて撹拌しながら混合溶解し、化粧水を調製した 。
(成分) (質量%)
1. エタノール 10.0
2. ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1
3. 香料 適量
4. N−エチルアクリルアミドホモポリマー(実施例1) 0.5
5. 1,3−ブチレングリコール 15.0
6. 防腐剤 0.1
7. 精製水 残量
上記処方により調製した化粧水はべたつきのないみずみずしい使用感を有し、保湿感にも優れていた。
【0064】
[保湿美容液−1]
以下に示した成分1〜6、成分7〜15をそれぞれの割合で撹拌混合し、80℃に加熱する。前者に後者を滴下・撹拌し乳化する。続いて、冷却し、保湿美容液を調製した。
(成分) (質量%)
1. ショ糖脂肪酸エステル 0.6
2. モノステアリン酸グリセリル 0.1
3. モノステアリン酸ポリエチレングリコール 0.1
4. バチルアルコール 0.1
5. 流動パラフィン 4.5
6. トリオクタン酸グリセリル 1.5
7. N−エチルアクリルアミドホモポリマー(実施例3) 1.0
8. 1,3−ブチレングリコール 6.0
9. グリセリン 2.0
10.エタノール 13.0
11.カルボキシビニルポリマー 0.1
12.水酸化ナトリウム 0.01
13.防腐剤 0.1
14.香料 適量
15.精製水 残量
上記処方により調製した保湿美容液はべたつきのないみずみずしい使用感を有し、保湿感にも優れていた。
【0065】
[乳液]
以下に示した成分1〜4、成分5〜12をそれぞれの割合で撹拌混合し、80℃に加熱する。前者に後者を滴下・撹拌し乳化する。続いて、冷却し、乳液を調製した。
(成分) (質量%)
1. スクワラン 5.0
2. セタノール 1.0
3. ポリエキシエチレンソルビタンモノオレエート(20E.O.)2.0
4. セスキオレイン酸ソルビタン 0.8
5. グリセリン 5.0
6. 1,3−ブチレングリコール 10.0
7. N−エチルアクリルアミドホモポリマー(実施例5) 1.0
8. カルボキシビニルポリマー 0.2
9. 水酸化カリウム 0.1
10.防腐剤 0.1
11.香料 適量
12.精製水 残量
上記処方により調製した乳液はべたつきのないみずみずしい使用感を有し、保湿感にも優れていた。
【0066】
[クリームパック]
以下に示した成分1〜4、成分5〜12をそれぞれの割合で撹拌混合し、80℃に加熱する。前者に後者を滴下・撹拌し乳化する。続いて、冷却し、クリームパックを調製した。
(成分) (質量%)
1. ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(20EO、4PO)
0.8
2. モノステアリン酸ジグリセリル 0.2
3. トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 1.0
4. メドゥホーム油 1.0
5. グリセリン 5.0
6. 1,3−ブチレングリコール 3.0
7. N−エチルアクリルアミドホモポリマー(実施例1) 1.0
8. 水酸化ナトリウム 0.28
9. ヒドロキシエチルセルロース 0.3
10.アスコルビン酸2−グルコシド 2.0
11.防腐剤 0.1
12.精製水 残量
上記処方により調製したクリームパックはべたつきのないみずみずしい使用感を有し、使用後の保湿感にも優れていた。
【0067】
[含浸マスク]
以下に示した成分1〜9をそれぞれの割合で撹拌混合し水性組成物を得た。この水性組成物を、不織布(目、鼻、口部分に穴や切り込みのある略顔形)に不織布質量の10倍程度含浸させて含浸マスクを調製した。
(成分) (質量%)
1. ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 0.1
2. 防腐剤 0.1
3. アルコール 5.0
4. ジプロピレングリコール 7.0
5. グリセリン 3.0
6. N−エチルアクリルアミドホモポリマー(実施例4) 0.5
7. リン酸1水素2ナトリウム 0.1
8. リン酸2水素1ナトリウム 0.1
9. 精製水 残量
上記処方により調製した含浸マスクはべたつきのないみずみずしい使用感を有し、マスク除去後の保湿感にも優れていた。
【0068】
[おしろい]
タルク97部にN−エチルアクリルアミドホモポリマー3部、エタノールを室温で混合し、その後80℃まで加熱し、減圧下においてエタノールを回収する。冷却後、ハンマーミルにて粉砕し、N−エチルアクリルアミドホモポリマー3wt%処理タルクを得た。下記に示した成分1〜9をそれぞれの割合で撹拌混合し、ハンマーミルにて粉砕し、おしろいを調製した。
(成分) (質量%)
1. N−エチルアクリルアミドホモポリマー(実施例1)3wt%処理タルク
70.0
2. シリコン処理セリサイト 残量
3. パーフルオロアルキルポリエーテル処理雲母チタン 5.0
4. ステアリン酸マグネシウム 2.0
5. グンジョウ 0.2
6. ベンガラ 0.1
7. 防腐剤 0.1
8. 無水珪酸 5.0
9. 香料 適量
上記処方により調製したおしろいは使用中の保湿感に優れていた。
【0069】
[パウダーファンデーション]
以下に示した成分1〜11と成分12〜16をそれぞれの割合で混合する。前者に後者を滴下・混合し、ハンマーミルにて粉砕し、型に加圧プレスして成型するしパウダーファンデーションを調製した。
(成分) (質量%)
1. 酸化チタン 10.0
2. 酸化亜鉛 5.0
3. マイカ 20.0
4. セリサイト 残量
5. タルク 20.0
6. 無水珪酸 2.0
7. ベンガラ 0.5
8. 黄酸化鉄 2.0
9. 黒酸化鉄 0.3
10.雲母チタン 5.0
11.ポリスチレン 3.0
12.防腐剤 0.1
13.N−エチルアクリルアミドホモポリマー(実施例1) 1.0
14.トリオクタン酸グリセリル 1.0
15.ジメチルポリシロキサン 1.0
16.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 3.0
上記処方により調製したパウダーファンデーションは使用中の保湿感に優れていた。
【0070】
[リキッドファンデーション]
以下に示した成分1〜8、成分9〜13をそれぞれの割合で撹拌混合し、80℃に加熱する。前者に後者を添加混合する。続いて、冷却し、リキッドファンデーションを調製した。
(成分) (質量%)
1. スクワラン 10.0
2. デカメチルシクロペンタシロキサン 20.0
3. ポリオキシエチレン変性ジメチルポリシロキサン 5.0
4. タルク 5.0
5. ベンガラ 0.5
6. 黄酸化鉄 1.0
7. 黒酸化鉄 0.1
8. 酸化チタン 10.0
9. プロピレングリコール 10.0
10.N−エチルアクリルアミドホモポリマー(実施例1) 1.0
11.防腐剤 0.1
12.香料 適量
13.精製水 残量
上記処方により調製したリキッドファンデーションは使用中の保湿感に優れていた。
【0071】
[口紅]
以下に示した成分1〜16をそれぞれの割合で加えてローラー処理にて分散する。高温で型に流し込み、冷却し成型したものを容器に充填して口紅を調製した。
(成分) (質量%)
1. カルナウバワックス 10.0
2. 重質流動イソパラフィン 20.0
3. α−オレフィンオリゴマー 20.0
4. 流動パラフィン 25.0
5. トリイソステアリン酸ジグリセリル 残量
6. イソオクタン酸セチル 5.0
7. オゾケライトワックス 1.0
8. 水添ロジン酸ペンタエリトリット 1.0
9.(エチレン/プロピレン)コポリマー 0.1
10.N−エチルアクリルアミドホモポリマー(実施例1) 0.5
11.赤色202号 0.3
12.黄色4号アルミニウムレーキ 0.7
13.酸化チタン 0.5
14.酸化鉄被覆雲母チタン 3.0
15.ジブチルヒドロキシトルエン 0.01
16.防腐剤 0.1
上記処方により調製した口紅は使用中の保湿感に優れていた。
【0072】
[クレンジングシート]
以下に示した成分1〜3、成分4〜8をそれぞれの割合で撹拌混合し、80℃に加熱する。前者に後者を滴下・撹拌し乳化し、その後成分9〜11を添加し、撹拌混合し、乳液組成物を得た。この乳液組成物を、不織布に不織布質量の10倍程度含浸させてクレンジングシートを調製した。
(成分) (質量%)
1. 水素添加大豆リン脂質 1.0
2. フィトステロール 0.1
3. グリセリン 5.0
4. ジプロピレングリコール 5.0
5. N−エチルアクリルアミドホモポリマー(実施例1) 0.5
6. ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 2.0
7. 流動パラフィン 5.0
8. 軽質流動パラフィン 0.5
9. 防腐剤 0.1
10.エタノール 10.0
11.精製水 残量
上記処方により調製したクレンジングシートはべたつきのないみずみずしい使用感を有し、使用後の保湿感にも優れていた。
【0073】
[保湿美容液―2]
表3に示した成分を以下の処方により保湿美容液を調製した。
(本発明品1〜4、比較品1〜4)
A;成分1〜4を80℃で均一に溶解する。
B;成分5〜11を80℃で均一に溶解する。
C;AにBを滴下・混合し乳化する。
【0074】
(本発明品5、比較品5)<リポソーム含有組成物>
A;成分1〜4を80℃で均一に溶解する。
B;成分5〜11を80℃で均一に溶解する。
C;AにBを滴下・混合しディスパーズミルで微細乳化する。
【0075】
表3に示すとおり、微細化することで得たリポソーム組成物は塗布時のべたつき感が少なく、経時での保湿感が優れたものであった。
【0076】
【表3】

【0077】
評価は、以下の方法により行った。
(評価方法)
本発明品1〜5、比較品1〜5について、20名による専門パネルにより使用テストを行い、サンプルを肌に塗布した時の『べたつき感』に関して下記の基準で評価を行い、その平均点で判定した。
(評価項目)
a.べたつき感のなさ
(絶対評価基準)
(評点) : (評価)
6 : 全然べたつき感がない
5 : べたつき感がない
4 : ややべたつき感がない
3 : 普通
2 : ややべたつき感がある
1 : べたつき感がある
0 : 非常にべたつき感がある
(判定基準)
(判定) : (評点の平均点)
◎ : 5点を超える (非常に良好)
○ : 3.5点を超える5点以下(良好)
△ : 1.5点を超える3点以下(やや不良)
× : 1.5点以下 (不良)
【0078】
(評価方法)
本発明品1〜5、比較品1〜5について、20名による専門パネルにより使用テストを行い、サンプルを肌に塗布した時の『しっとり感』に関して下記の基準で評価を行い、その平均点で判定した。
(評価項目)
b.しっとり感
(絶対評価基準)
(評点) : (評価)
6 : 非常にしっとり感を感じる
5 : しっとり感を感じる
4 : ややしっとり感を感じる
3 : 普通
2 : ややしっとり感を感じない
1 : しっとり感を感じない
0 : 全然しっとり感を感じない
(判定基準)
(判定) : (評点の平均点)
◎ : 5点を超える (非常に良好)
○ : 3.5点を超える5点以下(良好)
△ : 1.5点を超える3点以下(やや不良)
× : 1.5点以下 (不良)
【0079】
(評価方法)
本発明品1〜5、比較品1〜5について、20名による専門パネルにより使用テストを行い、サンプルを肌に塗布し、6時間後の『経時での保湿感』に関して下記の基準で評価を行い、その平均点で判定した。
(評価項目)
c.経時での保湿感
(絶対評価基準)
(評点) : (評価)
6 : 非常に保湿感を感じる
5 : 保湿感を感じる
4 : やや保湿感を感じる
3 : 普通
2 : やや保湿感を感じない
1 : 保湿感を感じない
0 : 全然保湿感を感じない
(判定基準)
(判定) : (評点の平均点)
◎ : 5点を超える (非常に良好)
○ : 3.5点を超える5点以下(良好)
△ : 1.5点を超える3点以下(やや不良)
× : 1.5点以下 (不良)
【0080】
[保湿美容液―3]
以下の表4に示した成分を以下の処方により保湿美容液を調製した。
(本発明品6、比較品6,7)<リポソーム含有組成物>
A;成分1〜4を80℃で均一に溶解する。
B;成分5〜6を80℃で均一に溶解する。
C;AにBを滴下・混合しディスパーズミルで微細乳化する。
D;成分7〜9を室温で均一に溶解し、Cに添加混合する。
【0081】
(本発明品7、比較品8)
A;成分7〜9を室温で均一に溶解する。
【0082】
【表4】

【0083】
(評価方法)
本発明品6,7、比較品6〜8について、連用(朝晩1日2回使用)による肌水分量の測定を行った。パネルの前腕内側を洗顔石鹸で洗浄後、湿度、温度を一定にした環境で20分馴化を行った後、近赤外分光計(Spectrum 400 PerkinElmer社製)で反射測定を行い、1900nmの水のピークの高さで水分量を検出した。使用前(0日)の肌水分量の値を100%とし、使用後の肌水分量をプロットした。結果を図1に示す。
【0084】
[結果]
本発明の水溶性ポリマーのサンプルを肌に塗布したときの保水性について、保水性効果が着目されている素材であるテアニンと同様な保水性を示した。また、本発明の水溶性ポリマーは、リポソーム含有化粧料に配合することにより、相乗的に保湿性を付与することができるものであった 。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示す)で表される繰返し単位の1種又は2種以上からなり、重量平均分子量(Mw)が5,000〜150,000であり、温度30℃、相対湿度60%における当該ポリマーの50質量%水溶液の6時間放置後の質量減少率が25質量%以下である化粧料又は皮膚外用剤用水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー。
【請求項2】
さらに、温度30℃において相対湿度を60%から40%に下げたときの当該ポリマーの50質量%水溶液の質量減少率が3質量%未満であることを特徴とする請求項1記載の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー。
【請求項3】
さらに、温度30℃において相対湿度を40%から60%に上げたときの当該ポリマーの50質量%水溶液の質量増加率が3質量%未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー。
【請求項4】
水溶性(メタ)アクリルアミドポリマーがポリN,N−ジエチルアクリルアミドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー。
【請求項5】
(A)請求項1〜4のいずれかに記載の水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー、及び、(B)リン脂質を含有することを特徴とするリポソーム含有水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー組成物。
【請求項6】
さらに、(C)コレステロール、コレステロール誘導体、フィトステロール及びフィトステロール誘導体からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項5記載のリポソーム含有水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー組成物。
【請求項7】
さらに、(D)グリセリン及び1,3−ブチレングリコールからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項5又は6記載のリポソーム含有水溶性(メタ)アクリルアミドポリマー組成物。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の水溶性(メタ)アクリルアミドホモポリマーを含有する化粧料又は皮膚外用剤。
【請求項9】
請求項5〜7のいずれかに記載のリポソーム含有組成物を含むことを特徴とする化粧料又は皮膚外用剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−196048(P2010−196048A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18923(P2010−18923)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】