説明

新規共重合ポリマー、新規共重合ポリマーを含有する組成物、積層体、表面金属膜材料の作製方法、表面金属膜材料、金属パターン材料の作製方法、及び金属パターン材料

【課題】めっき触媒等の金属に対して充分な吸着性を有し、吸水性が低く、重合性に優れ、且つアルカリ水溶液による加水分解を抑制しうる新規共重合ポリマーの提供。
【解決手段】下記式(1)で表されるユニット、及び、下記式(2)で表されるユニットを含むポリマー。式(1)及び式(2)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Rは、無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を表し、V及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規共重合ポリマー、該新規共重合ポリマーを含有する組成物、該組成物を用いた積層体、表面金属膜材料の作製方法及びそれにより得られた表面金属膜材料、金属パターン材料の作製方法及びそれにより得られた金属パターン材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光硬化性樹脂組成物は、その優れた特徴から表面処理材料、レジスト材料、印刷版用材料、コーティング材料、光造形用材料などに使用されている。
光硬化性樹脂組成物の中でもラジカル重合で硬化する材料としては、一般的に、バインダー、多官能モノマー、光重合開始剤から構成される。この際に、光硬化感度を向上させる手法として、重合性基を有するバインダーを用いる方法がある。
【0003】
一方、表面処理材料、特に、めっき膜を形成するための表面処理材料は、めっき触媒を吸着させる機能が必要となる。一般的に、めっき触媒に対する吸着性基としては、カルボン酸基、水酸基、エーテル基などが知られているが、これらの官能基は親水性が高く、水分やイオン等を保持しやすくなるため、形成されためっき膜の温・湿度依存性や、形状の変化に影響を与えるといった懸念があった。
この懸念に対し、めっき触媒に対する吸着性と疎水性を両立する官能基としてシアノ基を用いる方法が考えられている。
【0004】
そのようなシアノ基と重合性基とを有するポリマーとしては、以下のモノマーを用いてアニオン重合で合成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
CH=C(CN)COOROOCCH=CH(R1は低級アルキレン基を表す。)
この合成方法では、アニオン重合が微量の水分で進行してしまい、ハンドリングが難しいという問題点がある。
【0005】
また、めっき膜を形成した表面処理材料を用いて金属パターンを作製することなどを考慮すると、該表面処理材料の形成に用いるポリマーなどの樹脂材料には、更にアルカリ水溶液による加水分解や高圧高湿熱下の加水分解に対する耐性も求められる。しかしながら、めっき触媒に対する吸着性と疎水性を両立し、且つアルカリ水溶液による加水分解の抑制をも兼ね備えた樹脂材料は、未だ提供されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−106372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の状況に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
本発明の第1の目的は、めっき触媒等の金属に対して充分な吸着性を有し、吸水性が低く、重合性に優れ、且つアルカリ水溶液による加水分解を抑制しうる新規共重合ポリマー、それを含有する組成物、及び積層体を提供することにある。
本発明の第2の目的は、金属膜と基板との密着性に優れた表面金属膜材料、及びその作製方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、金属パターンの非形成領域の絶縁信頼性に優れた金属パターン材料、及びその作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題に鑑みて鋭意検討した結果、以下に示す手段により前記目的を達成しうることを見出した。
【0009】
即ち、本発明の新規共重合ポリマーは、下記式(1)で表されるユニット、及び、下記式(2)で表されるユニットを含むポリマーである。
【0010】
【化1】

【0011】
式(1)及び式(2)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Rは、無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を表し、V及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0012】
本発明の組成物は、本発明のポリマーと、ポリマーを溶解しうる溶剤と、を含有する組成物である。
本発明に組成物における前記ポリマーの濃度は、2質量%〜50質量%であることが好ましい。
【0013】
本発明の積層体は、本発明の組成物を、樹脂基材上に塗布してなる積層体である。
【0014】
本発明の表面金属膜材料の作製方法は、基板上に、本発明のポリマーを含有する組成物を用いてポリマー層を形成する工程と、
該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、
該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、
を有することを特徴とする表面金属膜材料の作製方法である。
また、本発明の表面金属膜材料の作製方法において形成されるポリマー層中のポリマーは、前記基板と直接化学結合していることが好ましい。
【0015】
本発明の表面金属膜材料は、本発明の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料である。
【0016】
本発明の金属パターン材料の作製方法は、本発明の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料のめっき膜をパターン状にエッチングする工程を有することを特徴とする金属パターン材料の作製方法である。
【0017】
本発明の金属パターン材料は、本発明の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、めっき触媒等の金属に対して充分な吸着性を有し、吸水性が低く、重合性に優れ、且つアルカリ水溶液による加水分解や高圧高湿熱下の加水分解を抑制しうる新規共重合ポリマー、それを含有する組成物、及び積層体を提供することができる。
本発明によれば、本発明の新規共重合ポリマーを含有する組成物を用いることにより、金属膜と基板との密着性に優れた表面金属膜材料、及びその作製方法を提供することができる。
本発明によれば、本発明の表面金属膜材料を用いたことにより、金属パターンの非形成領域の絶縁信頼性に優れた金属パターン材料、及びその作製方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
[新規共重合ポリマー]
本発明の新規共重合ポリマーは、下記式(1)で表されるユニット、及び、下記式(2)で表されるユニットを含む共重合体であることを特徴とする。以下、本発明のポリマーを、適宜、「シアノ基含有重合性ポリマー」と称して、詳細に説明する。
【0020】
【化2】

【0021】
式(1)及び式(2)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Rは、無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を表し、V及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0022】
〜Rが、置換若しくは無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、Rとしては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0023】
は、無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基を表し、Rが、無置換のアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す場合は、これらの基は枝分かれ構造を有していてもよい。
【0024】
の構造は、本発明のポリマー1g中に含まれる重合性基の量及びシアノ基の量が変化し、これは本発明のポリマーが奏する前述の効果に影響を来す。かかる観点からは、Rで表される置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基の総炭素数は、以下に示す範囲であることが好ましい。
が、無置換のアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す場合、これらの置換基は、総炭素数が1〜16であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、更に好ましくは1〜6である。
がアリール基を表す場合、該アリール基は、総炭素数が6〜14であることが好ましく、より好ましくは6〜10である。
【0025】
本発明のポリマーにおける優れた特徴の一つである加水分解抑制能の向上は、本発明のポリマーにおける式(2)で表されるユニット中にアミド結合が含まれることにより奏されるものと推測される。その一方で、ポリマー中におけるアミド結合の存在は、本発明のポリマーに求められる他の特徴である低吸水性を低下させる方向に作用しうるが、本発明のポリマーにおいては、Rで表される置換基をアミド結合に有することにより、Rがアミド結合を外部から遮蔽して疎水化するように機能しうると推測される。これにより、本発明のポリマーは、ポリマー中にアミド結合を有しつつも優れた低吸水性を発揮するものと推測される。
このRで表される各置換基が奏するアミド結合に対する疎水化機能は、より炭素数が少ない構造によりアミド結合を遮蔽しうることが好ましいことから、Rとしては分岐鎖構造を有する置換基であることが好ましい。
【0026】
で表される置換基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、s−ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ノナイル基、デカニル基、エチレン基、アリル基、アセチレン基、フェニル基、等が挙げられる。
【0027】
で表される置換基としては、より炭素数の少ない構造によりアミド結合を遮蔽するという観点からは、総炭素数3〜6の分岐構造のアルキル基、及び総炭素数6〜8のアリール基が好ましく、これらの中でも、Rとしては、t−ブチル基、シクロヘキシル基、又はフェニル基が好ましい。
【0028】
V及びZが、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す場合、該二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。
置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたものが好ましい。
置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニル基、若しくは、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたフェニル基が好ましい。
中でも、−(CH−(nは1〜3の整数)が好ましく、更に好ましくは−CH−である。
【0029】
は、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、中でも、総炭素数1〜9であるものが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
の構造として、より具体的には、下記式(1−1)、又は、式(1−2)で表される構造であることが好ましい。
【0030】
【化3】

【0031】
式(1−1)及び式(1−2)中、R及びRは、夫々独立して、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる群より選択される2つ以上の原子を用いて形成される2価の有機基であり、好ましくは、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基が挙げられる。
【0032】
また、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、Lは総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
で表される有機基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0033】
また、L中のシアノ基との連結部位としては、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、この二価の有機基が総炭素数1〜10であることが好ましい。
また、別の好ましい態様としては、L中のシアノ基との連結部位が、芳香族基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、該二価の有機基が、総炭素数6〜15であることが好ましい。
【0034】
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(1)で表されるユニットが、下記式(3)で表されるユニットであることが好ましい。
【0035】
【化4】

【0036】
式(3)中、R及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、Zは、単結合、置換若しくは無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Wは、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0037】
式(3)におけるR及びRは、前記式(1)におけるR及びRと同義であり、好ましい例も同様である。
【0038】
式(3)におけるZは、前記式(1)におけるZと同義であり、好ましい例も同様である。
また、式(3)におけるLも、前記式(1)におけるLと同義であり、好ましい例も同様である。
【0039】
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(3)で表されるユニットが
、下記式(4)で表されるユニットであることが好ましい。
【0040】
【化5】

【0041】
式(4)中、R及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、V及びWは、夫々独立して、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0042】
式(4)におけるR及びRは、前記式(1)におけるR及びRと同義であり、好ましい例も同様である。
【0043】
式(4)におけるLは、前記式(1)におけるLと同義であり、好ましい例も同様である。
【0044】
前記式(3)及び式(4)において、Wは、酸素原子であることが好ましい。
また、前記式(3)及び式(4)において、Lは、無置換のアルキレン基、或いは、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、これら中でも、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0045】
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーは、前記式(1)で表されるユニット(以下、適宜、「重合性基含有ユニット」と称する。)と、前記式(2)で表されるユニット(以下、適宜、「シアノ基含有ユニット」と称する。)を含んで構成されるものであり、重合性基とシアノ基を有する特定の構造とを側鎖に有するポリマーである。
このシアノ基含有重合性ポリマーは、例えば、以下のように合成することができる。
【0046】
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーを合成する際の重合反応の種類としては、ラジカル重合で行なう。
【0047】
合成方法としては、i)シアノ基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)シアノ基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)シアノ基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。好ましいのは、合成適性の観点から、ii)シアノ基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)シアノ基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
【0048】
前記i)の合成方法で用いられるシアノ基を有するモノマーとしては、N−メチル−2−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−1−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−3−シアノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−p−シアノ−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−2−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−1−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−3−シアノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−p−シアノ−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル−2−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル−1−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル−3−シアノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル−p−シアノ−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−nブチル−2−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−nブチル−1−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−nブチル−3−シアノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−nブチル−p−シアノ−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−tブチル−2−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−tブチル−1−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−tブチル−3−シアノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−tブチル−p−シアノ−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル−2−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル−1−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル−3−シアノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル−p−シアノ−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル−2−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル−1−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル−3−シアノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル−p−シアノ−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−ナフチル−2−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ナフチル−1−シアノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ナフチル−3−シアノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ナフチル−p−シアノ−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−tブチル−4−シアノブチル(メタ)アクリルアミド、N−tブチル−5−シアノペンチル(メタ)アクリルアミド、N−tブチル−6−シアノヘキシル(メタ)アクリルアミド、などが挙げられる。
【0049】
前記i)の合成方法で用いられる重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレートや、以下の化合物などが挙げられる。
【0050】
【化6】

【0051】
前記ii)の合成方法で用いられる二重結合前駆体を有するモノマーとしては、下記式(a)で表される化合物などが挙げられる。
【0052】
【化7】

【0053】
上記式(a)中、Aは重合性基を有する有機団、R〜Rは、夫々独立して、水素原子又は1価の有機基、B及びCは脱離反応により除去される脱離基であり、ここでいう脱離反応とは、塩基の作用によりCが引き抜かれ、Bが脱離するものである。Bはアニオンとして、Cはカチオンとして脱離するものが好ましい。
式(a)で表される化合物としては、具体的には以下の化合物を挙げることができる。
【0054】
【化8】

【0055】
【化9】

【0056】
また、前記ii)の合成方法において、二重結合前駆体を二重結合に変換するには、下記に示すように、B、Cで表される脱離基を脱離反応により除去する方法、つまり、塩基の作用によりCを引き抜き、Bが脱離する反応を使用する。
【0057】
【化10】

【0058】
上記の脱離反応において用いられる塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩、有機アミ化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。アルカリ金属類の水素化物、水酸化物、又は炭酸塩の好ましい例としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。有機アミン化合物の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−エチルジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルエチルアミン、Schiff塩基などが挙げられる。金属アルコキシド化合物の好ましい例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。これらの塩基は、1種或いは2種以上の混合であってもよい。
【0059】
また、前記脱離反応において、塩基を付与(添加)する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独或いは2種以上混合してもよい。
【0060】
使用される塩基の量は、化合物中の特定官能基(B、Cで表される脱離基)の量に対して、当量以下であってもよく、また、当量以上であってもよい。また、過剰の塩基を使用した場合、脱離反応後、余剰の塩基を除去する目的で酸などを添加することも好ましい形態である。
【0061】
前記iii)の合成方法において用いられるシアノ基を有するポリマーは、前記i)の合成方法で用いられるシアノ基を有するモノマーと、二重結合導入のための反応性基を有するモノマーと、をラジカル重合することにより合成される。
二重結合導入のための反応性基を有するモノマーとしては、反応性基としてカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、又はイソシアネート基を有するモノマーが挙げられる。
【0062】
カルボキシル基含有のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、安息香酸ビニル、東亞合成製のアロニクスM−5300、M−5400、M−5600、三菱レーション製のアクリルエステルPA、HH、共栄社化学製のライトアクリレート HOA−HH、新中村化学製のNKエステルSA、A−SAなどが挙げられる。
水酸基含有のモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1−(メタ)アクリロイル−3−ヒドロキシ−アダマンタン、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(2−ヒドロキシエチル)−(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシメチル−4−(メタ)アクリロイルメチル−シクロヘキサン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、東亞合成(株)製のアロニクスM−554、M−154、M−555、M−155、M−158、日本油脂(株)製のブレンマーPE−200、PE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、70PEP−350B、55PET800、以下の構造を有するラクトン変性アクリレートが使用できる。
CH=CRCOOCHCH[OC(=O)C10OH
(R=H又はMe、n=1〜5)
【0063】
エポキシ基を有するモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、ダイセル化学製のサイクロマーA、Mなどが使用できる。
イソシアネート基を有するモノマーとしては、昭和電工製のカレンズAOI、MOIが使用できる。
なお、iii)の合成方法において用いられるシアノ基を有するポリマーは、更に第3の共重合成分を含んでいてもよい。
【0064】
前記iii)の合成方法において、シアノ基を有するポリマーと反応させる重合性基を有するモノマーとしては、シアノ基を有するポリマー中の反応性基の種類によって異なるが、以下の組合せの官能基を有するモノマーを使用することができる。
即ち、(ポリマーの反応性基、モノマーの官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(カルボキシル基、ハロゲン化ベンジル)、(水酸基、カルボキシル基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(水酸基、ハロゲン化ベンジル)(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルボキシル基)、(エポキシ基、カルボキシル基)等を挙げることができる。
具体的には以下のモノマーを使用することができる。
【0065】
【化11】

【0066】
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーにおいて、前記式(1)、式(3)、又は式(4)におけるLがウレタン結合を有する二価の有機基である構造の場合には、以下に示す合成方法(本発明のポリマーの合成方法)で合成することが好ましい。
【0067】
本発明のポリマーの合成方法は、少なくとも溶媒中で、側鎖にヒドロキシル基を有するポリマー、及び、イソシアネート基と重合性基とを有する化合物を用い、該ヒドロキシル基に該イソシアネート基を付加させることによりL中のウレタン結合を形成することが好ましい。
【0068】
ここで、本発明のポリマーの合成方法に用いられる側鎖にヒドロキシル基を有するポリマーとしては、前記i)の合成方法で用いられるシアノ基を有するモノマーと、以下に示す挙げるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、の共重合体が好ましい。
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1−(メタ)アクリロイル−3−ヒドロキシ−アダマンタン、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−(ヒドロキシメチル)−(メタ)アクリレート、2−(ヒドロキシメチル)−(メタ)アクリレートのメチルエステル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシメチル−4−(メタ)アクリロイルメチル−シクロヘキサン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−アクリロイロキシプロピルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、1−メチル−2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルフタル酸、東亞合成(株)製のアロニクスM−554、M−154、M−555、M−155、M−158、日本油脂(株)製のブレンマーPE−200、PE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、70PEP−350B、55PET800、以下の構造を有するラクトン変性アクリレートが使用できる。
CH=CRCOOCHCH[OC(=O)C10OH (R=H又はMe、n=1〜5)
なお、本発明のポリマーの合成方法に用いられる側鎖にヒドロキシル基を有するポリマーは、更に第3の共重合成分を含んでいてもよい。
【0069】
上述のような側鎖にヒドロキシル基を有するポリマーの中でも、高分子量体のポリマーを合成する観点から、原料として、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを合成する際に副生する2官能アクリレートを除去した原料を用いて合成したポリマーを使用することが好ましい。精製の方法としては、蒸留、カラム精製が好ましい。更に好ましくは、下記(1)〜(4)の工程を順次経ることで得られたヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを用いて合成されたものであることが好ましい。
(1)ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、該ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを合成する際に副生する2官能アクリレートと、を含む混合物を、水に溶解する工程
(2)得られた水溶液に、水と分離する第1の有機溶剤を加えた後、該第1の有機溶剤と前記2官能アクリレートとを含む層を水層から分離する工程
(3)前記水層に、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートよりも水溶解性の高い化合物を溶解する工程
(4)前記水層に第2の有機溶剤を加えて、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを抽出した後、濃縮する工程
【0070】
前記(1)の工程において用いられる混合物は、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、該ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを合成する際に副生する不純物である2官能アクリレートと、を含んでおり、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの一般的な市販品に相当する。
前記(1)の工程では、この市販品(混合物)を水に溶解して、水溶液を得る。
【0071】
前記(2)の工程では、(1)の工程で得られた水溶液に対し、水と分離する第1の有機溶剤を加える。ここで用いられる、第1の有機溶剤としては、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。
その後、水溶液(水層)から、この第1の有機溶剤と2官能アクリレートとを含む層(油層)を分離する。
【0072】
前記(3)の工程では、(2)の工程で油層と分離された水層に、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートよりも水溶解性の高い化合物を溶解する。
ここで用いられるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートよりも水溶解性の高い化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属塩、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などの無機塩等が用いられる。
【0073】
前記(4)の工程では、水層に第2の有機溶剤を加えて、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを抽出した後、濃縮する。
ここで用いられる第2の有機溶剤としては、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。この第2の有機溶剤は、前述の第1の有機溶剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
(4)の工程における濃縮には、無水硫酸マグネシウムによる乾燥や、減圧留去等が用いられる。
【0074】
前記(1)〜(4)の工程を順次経ることで得られたヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを含む単離物は、その全質量中に2官能アクリレートを0.1質量%以下の範囲で含むことが好ましい。つまり、前記(1)〜(4)の工程を経ることで、混合物から不純物である2官能アクリレートが除去され、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートが精製される。
2官能アクリレートの含有量のより好ましい範囲は、単離物の全質量中に0.05質量%以下であり、少なければ少ないほどよい。
このように精製されたヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを用いることで、不純物である2官能アクリレートが重合反応に影響を及ぼし難くなるため、重量平均分子量が20000以上のシアノ基含有重合性ポリマーを合成することができる。
【0075】
前記(1)の工程において用いられるヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、前述の本発明のポリマーの合成方法に用いられる側鎖にヒドロキシル基を有するポリマーを合成する際に用いられるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとして挙げられたものを用いることができる。中でも、イソシアネートへの反応性の観点から、第1級水酸基を有するモノマーが好ましく、更には、ポリマーの単位重量当たりの重合性基比率を高める観点から、分子量が100〜250のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートが好ましい。
【0076】
また、本発明のポリマーの合成方法に用いられるイソシアネート基と重合性基とを有する化合物としては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズAOI、昭和電工(株)製)、2−メタクリルオキシイソシアネート(カレンズMOI、昭和電工(株)製)等が挙げられる。
【0077】
また、本発明のポリマーの合成方法に用いられる溶媒としては、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、1,2,3−トリアセトキシ−プロパン、シクロヘキサノン、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノン、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、アセチルアセトン、アセトフェノン、トリアセチン、1,4−ジオキサン、ジメチルカーボネート等が挙げられる。
【0078】
以上のようにして合成された本発明のシアノ基含有重合性ポリマーは、共重合成分全体に対し、重合性基含有ユニット、シアノ基含有ユニットの割合が以下の範囲であることが好ましい。
即ち、重合性基含有ユニットが、共重合成分全体に対し5mol%〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5mol%〜40mol%である。5mol%以下では反応性(硬化性、重合性)が落ち、50mol%以上では合成の際にゲル化しやすく合成しにくい。
また、シアノ基含有ユニットは、めっき触媒等に対する吸着性の観点から、共重合成分全体に対し5mol%〜95mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10mol%〜95mol%である。
【0079】
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーは、シアノ基含有ユニット、重合性基含有ユニット以外に、他のユニットを含んでいてもよい。この他のユニットを形成するために用いられるモノマーとしては、本発明の効果を損なわないものであれば、いかなるモノマーも使用することができる。
【0080】
ただし、前述のように重合性基をポリマーに反応させて導入する場合は、100%導入することが困難な際には少量の反応性部分が残ってしまうことから、これが第3のユニットとなる可能性もある。
【0081】
他のユニットを形成するために用いられるモノマーとしては、具体的には、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの無置換(メタ)アクリル酸エステル類、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、3,3,3−トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレートなどのハロゲン置換(メタ)アクリル酸エステル類、2−(メタ)アクリルロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアンモニウム基置換(メタ)アクリル酸エステル類、ブチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、2−エチルヘキシルアクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、スチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸、p−ビニルベンジルアンモニウムクロライドなどのスチレン類、N−ビニルカルバゾール、酢酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル化合物類や、その他にジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルチオ−エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが使用できる。
また、下記式(b)で表されるアクリルアミド誘導体や、下記式(c)で表されるシアノ基含有モノマーも使用できる。これらのモノマーを使用することで吸着性を落とさずに物性を制御できる。前者を用いることで、疎水性を付与でき、後者を用いることで、硬化膜を柔軟化することができる。
【0082】
【化12】

【0083】
式(b)中、Rは式(1)におけるRと同義である。Lは式(2)におけるLと同義である。Rは、ハロゲン原子、シロキシ構造で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は−L−CNで表される基を表す。ここで、Lは、炭素数4以上の2価の有機基を表す。
式(c)中、Rは式(1)におけるRと同義である。Lは式(2)におけるLと同義である。
また、シアノ基含有重合性ポリマーが、式(b)で表されるアクリルアミド誘導体又は式(c)で表されるシアノ基含有モノマーに由来するユニットを有する場合、重合性に対する影響と親疎水性のバランスの観点から、共重合成分全体に対し5mol%〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10mol%〜30mol%である。
【0084】
また、他のユニットを形成するために用いられるモノマーとしては、前記したシアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマーに、更に、フッ素原子を有する置換基(例えば、フッ化アルキル基、フッ化アリール基、等)、又はSi−O−Si結合を有する置換基を導入したものも用いることができる。
【0085】
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーの重量平均分子量は、1000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは2000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーの重量平均分子量は、20000以上であることが好ましい。
また、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーの重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0086】
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。なお、これらの具体例の重量平均分子量は、いずれも、3000〜100000の範囲である。
【0087】
【化13】

【0088】
【化14】

【0089】
【化15】

【0090】
【化16】

【0091】
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーは、重合性基と相互作用性基(シアノ基)の他に、極性基を有していてもよい。
【0092】
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーは、例えば、pH12のアルカリ性溶液に添加し、1時間攪拌したときの重合性基部位の分解が50%以下である場合は、該ポリマーに対して高アルカリ性溶液による洗浄を行うことができる。
【0093】
<使用態様>
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーは、シアノ基を有するユニットと、重合性基を有するユニットとの共重合体であるため、ユニットの比を変化させることで、めっき触媒等の金属に対する吸着性と、重合性(反応性)とを制御し、更にアルカリ加水分解も抑制することができる。
このような本発明のシアノ基含有重合性ポリマーは、光硬化性樹脂組成物の他、成型材料、コーティング材料、表面改質材料、基板用材料として電子分野、機械分野、食品分野、建築分野、自動車分野において用いることができる。
【0094】
種々の用途の中でも、疎水性であるにも関わらず、めっき触媒に対する吸着性と重合性に優れる点から、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーは、めっき膜を形成するための表面処理材料として用いられることが好ましい。
例えば、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーを、表面グラフト重合法などを用い、所望の基材上に直接化学結合させることで、基材との密着性が高く、めっき触媒に対する吸着性に優れ、更に、吸水性の少ないポリマー層を形成することができる。このポリマー層上にめっき触媒を付与し、その後、めっき処理を施すことで形成されためっき膜は、ポリマー層との密着性が優れるといった効果と共に、ポリマー層が水分やイオン等を保持し難いため、温・湿度依存性や、形状の変化が見られないといった効果も有する。
さらに、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーの適用形態によっては、例えば、金属パターンを形成する際のエッチング工程などにおいて、アルカリ性の水溶液が使用されることがあるが、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーを用いてなるポリマー層は、吸水性の少なさは維持しつつも、アルカリ加水分解が抑制されるといった効果も有する。
特に、このめっき膜が形成された基材を、電気配線等の製造に用いる際には、配線間の絶縁信頼性に優れるといった効果も奏する。
なお、めっき膜が形成された基材には、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、又はPET樹脂を含有する樹脂基材を用いることが好ましい。
【0095】
シアノ基含有重合性ポリマーは、溶剤などの他の成分と混合して組成物として使用することができる(本発明の組成物)。
その場合、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーの組成物中の含有量としては、2質量%〜50質量%の範囲が好ましく、5質量%〜30質量%の範囲がより好ましい。
【0096】
本発明の組成物に使用する溶剤は、該ポリマーが溶解可能ならば特に制限はない。また、溶剤には、更に、界面活性剤を添加してもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンの如きアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルの如きニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルの如きエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの如きカーボネート系溶剤、この他にも、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。
この中でも、シアノ基含有重合性ポリマーを用いた組成物とする場合には、アミド系、ケトン系、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤が好ましく、具体的には、アセトン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネートが好ましい。
また、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーを含有する組成物を塗布液として用いる場合には、取り扱い安さから沸点が50〜150℃の溶剤を用いることが好ましい。
なお、これらの溶剤は単一で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0097】
−水溶性有機溶剤−
本発明の組成物においては、溶剤として水を使用することもできる。なお、乾燥時の引火性を考えると溶剤として水と水溶性有機溶剤とを併用することが好ましく、その際の有機溶剤の含有量は、全溶剤に対して、0.1質量%〜40質量%であることが好ましい。ここで、水溶性有機溶剤とは、上記の含有量の範囲において水と溶解しうるものを意味する。このような性質を有している有機溶剤であれば、特に限定されず、組成物の溶剤として用いることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミン系溶媒、チオール系溶媒、ハロゲン系溶媒などが好ましく用いられる。
【0098】
ケトン系溶媒としては、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、γ−ブチロラクトン、ヒドロキシアセトンなどが挙げられる。エステル系溶媒としては、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどが挙げられる。
【0099】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、3−アセチル−1−プロパノール、2−(アリルオキシ)エタノール、2−アミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、(±)−2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−ジメチルアミノエタノール、2,3−エポキシ−1−プロパノール、エチレングリコール、2−フルオロエタノール、ジアセトンアルコール、2−メチルシクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、グリセリン、2,2’,2”−ニトリロトリエタノール、2−ピリジンメタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノール、2,3−ブタンジオール、2−ブトキシエタノール、2,2’−チオジエタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、ジグリセリン、2,2’−メチルイミノジエタノール、1,2−ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0100】
エーテル系溶媒としては、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル、1、2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール、2−エトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−イソブトキシエタノール、2−(2−イソブトキシエトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシ酢酸、2−メトキシエタノールなどが挙げられる。
【0101】
グリコール系溶媒としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。
アミン系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
チオール系溶媒としては、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノールなどが挙げられる。
ハロゲン系溶媒としては、3−ブロモベンジルアルコール、2−クロロエタノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオールなどが挙げられる。
【0102】
その他にも、水溶性有機溶媒として、下記表1に記載の溶媒も使用することができる。
【0103】
【表1】

【0104】
本発明における水溶性有機溶剤の沸点は蒸散のし易さの観点から、70℃〜150℃が好ましく、70℃〜110℃がより好ましい。このような水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール(沸点:78℃)、イソプロピルアルコール(沸点:82℃)、n−プロピルアルコール(沸点:97℃)などが好ましく挙げられる。
【0105】
また、上述のように、水と水溶性有機溶剤の混合液を用いる場合、作業のし易さの観点から、その引火点としては30℃以上のものが好ましく、40℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。
なお、本発明における引火点は、JIS−K2265に準拠するダク密閉式によって得られた測定値を意味する。
【0106】
−水−
本発明の組成物に使用される水は、不純物を含まないことが好ましく、RO水や脱イオン水、蒸留水、精製水などが好ましく、脱イオン水や蒸留水がより好ましい。
【0107】
また、本発明の組成物を樹脂基材上に塗布して積層体(本発明の積層体)を作製する場合、基材の吸溶媒率が5〜25%となる溶剤を選択することができる。この吸溶媒率は、基材を溶剤中に浸漬し、1000分後に引き上げた場合の質量の変化から求めることができる。
また、本発明の組成物を基材上に塗布する場合、基材の膨潤率が10〜45%となる溶剤を選択してもよい。この膨潤率は、基材を溶剤中に浸漬し、1000分後に引き上げた場合の厚さの変化から求めることができる。
【0108】
必要に応じて組成物に添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0109】
また、本発明の組成物には、必要に応じて可塑剤を添加することもできる。使用できる可塑剤としては、一般的な可塑剤が使用でき、フタル酸エステル類(ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジブチルエステル、ジ−2−エチルヘキシルエステル、ジノルマルオクチルエステル、ジイソノニルエステル、ジノニルエステル、ジイソデシルエステル、ブチルベンジルエステル)、アジピン酸エステル類(ジオクチルエステル、ジイソノニルエステル)、アゼラインサンジオクチル、セバシンサンエステル類(ジブチルエステル、ジオクチルエステル)リン酸トリクレシル、アセチルクエン酸トリブチル、エポキシ化大豆油、トリメリット酸トリオクチル、塩素化パラフィンやジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンのような高沸点溶媒も使用することができる。
【0110】
本発明の組成物には、必要に応じて、重合禁止剤を添加することもできる。使用できる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ジターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン類、p−メトキシフェノール、フェノールなどのフェノール類、ベンゾキノン類、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシ フリーラジカル)、4−ヒドロキシTEMPOなどのフリーラジカル類、フェノチアジン類、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン、そのアルミニウム塩などのニトロソアミン類、カテコール類を使用することができる。
【0111】
また、本発明の組成物には、必要に応じて、硬化剤及び/又は硬化促進剤を添加することができる。硬化剤及び硬化促進剤としては、公知のものを用いることができる。
【0112】
また、本発明の組成物には、更に、ゴム成分(例えば、CTBN)、難燃化剤(例えば、りん系難燃化剤)、希釈剤やチキソトロピー化剤、顔料、消泡剤、レべリング剤、カップリング剤などを添加してもよい。
【0113】
本発明の組成物のごとく、シアノ基含有重合性ポリマーと各種の添加剤を適宜混合した組成物を用いることで、該シアノ基含有重合性ポリマーにエネルギーを付与して形成される後述するポリマー層などの硬化物の物性、例えば、熱膨張係数、ガラス転移温度、ヤング率、ポアソン比、破断応力、降伏応力、熱分解温度などを最適に設定することができる。特に、破断応力、降伏応力、熱分解温度については、より高い方が好ましい。
本発明の組成物により得られた硬化物は、温度サイクル試験や熱経時試験、リフロー試験などで熱耐久性を測定することができる。
【0114】
本発明の組成物を用いて積層体を形成する際に用いられる基材としては、寸度的に安定な板状物が好ましく、必要な可撓性、強度、耐久性等を満たせばいずれのものも使用でき、使用目的に応じて適宜選択される。
具体的には、例えば、ポリイミド樹脂、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、エポキシ樹脂、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などを成型したものや、シリコーン基板、紙、プラスチックがラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙若しくはプラスチックフィルム等を挙げることができる。
なお、前述のように、基材上にシアノ基含有重合性ポリマーを用いてめっき膜を形成し、このめっき膜をプリント配線板の作製に適用する場合には、基材として絶縁性樹脂からなるものを用いることが好ましい。
【0115】
[表面金属膜材料の作製方法、金属パターン材料の作製方法]
本発明の表面金属膜材料の作製方法は、(a1)基板上に、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーを直接化学結合させて、ポリマー層を形成する工程と、(a2)該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(a3)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
【0116】
また、本発明の金属パターン材料の作製方法は、(a4)本発明の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料のめっき膜をパターン状にエッチングする工程を有することを特徴とする。
つまり、金属パターン材料の作製方法は、前述の表面金属膜材料の作製方法における(a1)、(a2)、(a3)工程を行った後、形成されためっき膜をパターン状にエッチングする工程〔(a4)工程〕を行うものである。
【0117】
以下、本発明の表面金属膜材料の作製方法における(a1)〜(a3)の各工程について説明する。
【0118】
〔(a1)工程〕
本発明の表面金属膜材料の作製方法における(a1)工程では、基板上に、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーを含有する組成物を用いてポリマー層を形成する。形成されたポリマー層中のポリマーは、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーに由来するポリマーであり、基板と直接化学結合していることが好ましい態様である。
【0119】
(a1)工程は、基板上に、前述した本発明の組成物を付与することにより行われることが好ましい。
また、(a1)工程が、(a1−1)基材上に、重合開始剤を含有する、又は重合開始可能な官能基を有する重合開始層が形成された基板を作製する工程、及び(a1−2)該重合開始層に、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーを含有する組成物を用いてポリマー層を形成する工程であることも好ましい態様である。
また、上記(a1−2)工程は、前記重合開始層上に、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーを含有する組成物を接触させた後、エネルギーを付与することにより、前記基板表面全体(重合開始層表面全体)に、当該ポリマー直接結合させてなるポリマー層を形成する工程であることが好ましい。
【0120】
(表面グラフト)
基板上におけるポリマー層の形成は、一般的な表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いる。グラフト重合とは、高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって重合を開始する別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法である。特に、活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には、表面グラフト重合と呼ばれる。
【0121】
本発明に適用される表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、p135には表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695には、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法が記載されている。
光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
【0122】
本発明におけるポリマー層を形成する際には、上記の表面グラフト法以外にも、高分子化合物鎖の末端に、トリアルコキシシリル基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などの反応性官能基を付与し、これと基板表面に存在する官能基とのカップリング反応により結合させる方法を適用することもできる。
これらの方法の中でも、より多くのグラフトポリマーを生成する観点からは、光グラフト重合法、特に、UV光による光グラフト重合法を用いてポリマー層を形成することが好ましい。
【0123】
〔基板〕
本発明における「基板」とは、その表面が、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基を有するポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有するものであり、基板自体がこのような表面特性を有するものであってもよく、また、該基材上に別途中間層(例えば、後述する重合開始層)を設け、該中間層がこのような特性を有するものであってもよい。
【0124】
(基材、基板)
本発明に使用される基材は、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ樹脂、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基材としては、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂が好ましい。
なお、これらの基材表面が、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基を有するポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有している場合には、その基材そのものを基板として用いてもよい。
【0125】
本発明における基板として、特開2005−281350号公報の段落番号[0028]〜[0088]に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドを含む基材を用いることもできる。
【0126】
また、本発明の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、以下に示す、絶縁性樹脂を含んだ基板、具体的には、絶縁性樹脂からなる基板、又は、絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板を用いることが好ましい。
【0127】
絶縁性樹脂からなる基板、絶縁性樹脂からなる層を得る場合には、公知の絶縁性樹脂組成物が用いられる。この絶縁性樹脂組成物には、主たる樹脂に加え、目的に応じて種々の添加物を併用することができる。例えば、絶縁層の強度を高める目的で、多官能のアクリレートモノマーを添加する、絶縁体層の強度を高め、電気特性を改良する目的で、無機、若しくは有機の粒子を添加する、などの手段をとることもできる。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
【0128】
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、シクロオレフィン系樹脂、これらの樹脂の共重合体等が挙げられる。
【0129】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
その他の熱可塑性樹脂としては、1,2−ビス(ビニルフェニレン)エタン樹脂(1,2−Bis(vinylphenyl)ethane)、若しくはこれとポリフェニレンエーテル樹脂との変性樹脂(天羽悟ら、Journal of Applied Polymer Science Vol.92,1252-1258(2004)に記載)、液晶性ポリマー(具体的には、クラレ製のベクスターなど)、フッ素樹脂(PTFE)などが挙げられる。
【0130】
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これはそれぞれの欠点を補いより優れた効果を発現する目的で行われる。例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)などの熱可塑性樹脂は熱に対しての耐性が低いため、熱硬化性樹脂などとのアロイ化が行われている。たとえば、PPEとエポキシ、トリアリルイソシアネートとのアロイ化、或いは重合性官能基を導入したPPE樹脂とそのほかの熱硬化性樹脂とのアロイ化として使用される。またシアネートエステルは熱硬化性の中ではもっとも誘電特性の優れる樹脂であるが、それ単独で使用されることは少なく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、熱可塑性樹脂などの変性樹脂として使用される。これらの詳細に関しては、“電子技術”2002/9号、P35に記載されている。また、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂を含み、熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂及び/又はポリエーテルスルフォン(PES)を含むものも誘電特性を改善するために使用される。
【0131】
絶縁性樹脂組成物には、架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物のようなもの、具体的には、アクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、特に多官能のものが好ましい。そのほか、重合性の二重結合を有する化合物として、熱硬化性樹脂、若しくは熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等に、メタクリル酸やアクリル酸等を用い、樹脂の一部を(メタ)アクリル化反応させた樹脂を用いてもよい。
【0132】
絶縁性樹脂組成物には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
【0133】
更に、この絶縁性樹脂組成物には必要に応じて一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種又は二種以上配合してもよい。中でも、充填材としてはシリカを用いることが好ましい。
また、更に、この絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を一種又は二種以上添加してもよい。
【0134】
これらの材料を絶縁性樹脂組成物に添加する場合は、いずれも、樹脂に対して、1〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは10〜80質量%の範囲で添加される。この添加量が、1質量%未満である場合は、上記の特性を強化する効果がなく、また、200質量%を超えると場合には、樹脂特有の強度などの特性が低下する。
【0135】
このような用途に用いる場合の基板として、具体的には、1GHzにおける誘電率(比誘電率)が3.5以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。また、1GHzにおける誘電正接が0.01以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。
絶縁性樹脂の誘電率及び誘電正接は、常法により測定することができる。例えば、「第18回エレクトロニクス実装学会学術講演大会要旨集」、2004年、p189、に記載の方法に基づき、空洞共振器摂動法(例えば、極薄シート用εr、tanδ測定器、キーコム株式会社製)を用いて測定することができる。
このように、本発明においては誘電率や誘電正接の観点から絶縁樹脂材料を選択することも有用である。誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.01以下の絶縁性樹脂としては、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビス(ビスフェニレン)エタン樹脂などが挙げられ、更にそれらの変性樹脂も含まれる。
【0136】
本発明に用いられる基板は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等への用途を考慮すると、表面凹凸が500nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、最も好ましくは20nm以下である。この基板の表面凹凸(中間層や重合開始層が設けられている場合はその層の表面凹凸)が小さくなるほど、得られた金属パターン材料を配線等に適用した場合に、高周波送電時の電気損失が少なくなり好ましい。
【0137】
本発明においては、基板が板状物、例えば、樹脂フィルム(プラスチックフィルム)であれば、その両面に(a1)工程を施すことで、樹脂フィルムの両面にポリマー層を形成することができる。
このように樹脂フィルム(基板)の両面にポリマー層が形成された場合には、更に、後述する(a2)工程、及び(a3)工程を行うことで、両面に金属膜が形成された表面金属膜材料を得ることができる。
【0138】
本発明において、基板表面に活性種を与え、それを起点としてグラフトポリマーを生成させる表面グラフト重合法を用いる場合、グラフトポリマーの生成に際しては、基材上に、重合開始剤を含有する、又は重合開始可能な官能基を有する重合開始層を形成した基板を用いることが好ましい。この基板を用いることで、活性点を効率よく発生させ、より多くのグラフトポリマーを生成させることができる。
以下、本発明における重合開始層について説明する。なお、基材が板状物であれば、その両面に重合開始層を形成してもよい。
【0139】
(重合開始層)
本発明における重合開始層としては、高分子化合物と重合開始剤とを含む層や、重合性化合物と重合開始剤とを含む層、重合開始可能な官能基を有する層が挙げられる。
本発明における重合開始層は、必要な成分を、溶解可能な溶媒に溶解し、塗布などの方法で基材表面に設け、加熱又は光照射により硬膜することで、形成することができる。
【0140】
本発明における重合開始層に用いられる化合物としては、基材との密着性が良好であり、且つ、活性光線照射などのエネルギー付与により、活性種を発生するものであれば特に制限なく用いることができる。具体的には、多官能モノマーや分子内に重合性基を有する疎水性ポリマーと重合開始剤とを混合したもの、熱架橋ポリマーと重合開始剤とを混合したもの、が用いることができる。
【0141】
重合開始層の形成に用いられる各種化合物の詳細、及び重合開始層の形成方法に関する事項としては、特開2007−154306号公報の段落番号[0042]〜[0048]に記載される事項を、本発明における重合開始層にも同様に適用することができる。なお、重合開始層に用いうる化合物のうち、前記熱架橋ポリマーとしては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等を用いることができる。
【0142】
また、上記の重合性化合物及び重合開始剤を含有する重合開始層以外に、特開2004−161995公報に記載の重合開始基が側鎖にペンダントしてなるポリマーを用いた重合開始層も好ましい。そのような重合開始層に用いられる各種の化合物、並びに重合開始層の形成方法に関する事項としては、特開2007−154306号公報の段落番号[0049]〜[0061]に記載される事項を、本発明においても同様に適用することができる。
【0143】
更に、本発明において、前述のような、絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板を用いる場合、この絶縁性樹脂からなる層中に、公知の重合開始剤を含有させて、絶縁性の重合開始層とすることが好ましい。この絶縁性の重合開始層中に含有させる重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば、前述の、熱重合開始剤、光重合開始剤(ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤)や、特開平9−77891号、特開平10−45927号に記載の活性カルボニル基を側鎖に有する高分子化合物、更には、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマー(重合開始ポリマー)などを用いることができる。
絶縁性の重合開始層中に含有させる重合開始剤の量は、一般的には、絶縁層中に固形分で0.1〜50質量%程度であることが好ましく、1.0〜30.0質量%程度であることがより好ましい。
【0144】
(グラフトポリマーの生成)
(a1)工程におけるグラフトポリマーの生成態様としては、前述した如く、基板表面に存在する官能基と、高分子化合物がその末端又は側鎖に有する反応性官能基とのカップリング反応を利用する方法や、光グラフト重合法を用いることができる。
本発明においては、基材上に重合開始層が形成された基板を用い、該重合開始層上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基(相互作用性基)を有し、且つ、該重合開始層と直接化学結合したポリマーからなるポリマー層を形成する態様〔(a1−2)工程〕が好ましい。更に好ましくは、重合開始層上に、重合性基及び相互作用性基を有するポリマーを接触させた後、エネルギーを付与することにより、前記基板表面全体(重合開始層表面全体)に当該ポリマーを直接化学結合させる態様である。即ち、重合性基及び相互作用性基を有する化合物を含有する組成物を、重合開始層表面に接触させながら、当該重合開始層表面に生成する活性種により直接結合させるものである。
【0145】
上記接触は、重合開始層が形成された基板を、本発明の組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、後述するように、本発明の組成物からなる層を基板表面(重合開始層表面)に、塗布法により形成することが好ましい。
【0146】
本発明におけるポリマー層を形成するためには、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーを含有してなる本発明の組成物を用いればよい。
本発明のシアノ基含有重合性ポリマー、及びそれを含有する本発明の組成物の詳細は、先に説明した通りである。
【0147】
本発明の組成物を基板と接触させる場合、その塗布量は、めっき触媒又はその前駆体との充分な相互作用形成性の観点からは、固形分換算で、0.1g/m〜10g/mが好ましく、特に0.5g/m〜5g/mが好ましい。
なお、(a1)工程においてポリマー層を形成するに際しては、塗布と乾燥との間に、20〜40℃で0.5時間〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
【0148】
(エネルギーの付与)
基板表面へのエネルギー付与方法としては、例えば、加熱や露光等の輻射線照射を用いることができる。例えば、UVランプ、可視光線などによる光照射、ホットプレートなどでの加熱等が可能である。光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
エネルギー付与に要する時間としては、目的とするグラフトポリマーの生成量及び光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
【0149】
なお、エネルギーの付与を露光にて行う場合、その露光パワーは、グラフト重合を容易に進行させるため、また、生成されたグラフトポリマーの分解を抑制するため、10mJ/cm〜5000mJ/cmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、50mJ/cm〜3000mJ/cmの範囲である。
また、重合性基及び相互作用性基を有する化合物として、平均分子量2万以上、重合度200量体以上のポリマーを使用すると、低エネルギーの露光でグラフト重合が容易に進行するため、生成したグラフトポリマーの分解を更に抑制することができる。
【0150】
以上説明した(a1)工程により、基板上には、相互作用性基を有するグラフトポリマーからなるポリマー層(グラフトポリマー層)を形成することができる。
【0151】
得られたポリマー層が、例えば、pH12のアルカリ性溶液に添加し、1時間攪拌したときの重合性基部位の分解が50%以下である場合は、該ポリマー層に対して高アルカリ性溶液による洗浄を行うことができる。
【0152】
〔(a2)工程〕
(a2)工程では、上記(a1)工程において形成されたポリマー層に、めっき触媒又はその前駆体を付与する。本工程においては、ポリマー層を構成するグラフトポリマーが有するシアノ基(相互作用性基)が、その機能に応じて、付与されためっき触媒又はその前駆体を付着(吸着)する。
ここで、めっき触媒又はその前駆体としては、後述する(a3)めっき工程における、めっきの触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒又はその前駆体は、(a3)めっき工程におけるめっきの種類により決定される。
なお、ここで、本工程において用いられるめっき触媒又はその前駆体は、無電解めっき触媒又はその前駆体であることが好ましい。
【0153】
(無電解めっき触媒)
本発明において用いられる無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができ、具体的には、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられ、具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Pdが特に好ましい。
この無電解めっき触媒は、金属コロイドとして用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができる。
【0154】
(無電解めっき触媒前駆体)
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、ポリマー層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0155】
実際には、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩を用いてポリマー層上に付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCl、M2/n(SO)、M3/n(PO)Pd(OAc)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、及び触媒能の点で、Pdイオンが好ましい。
【0156】
無電解めっき触媒である金属、或いは、無電解めっき前駆体である金属塩をポリマー層に付与する方法としては、金属を適当な分散媒に分散した分散液、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液又は溶液をポリマー層上に塗布するか、或いは、その分散液又は溶液中にポリマー層が形成された基板を浸漬すればよい。
また、(a1)工程において、表面グラフト重合法を用いる場合、基板上に、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーを含有する組成物を接触させるが、この組成物中に、無電解めっき触媒又はその前駆体を添加する方法を用いてもよい。本発明のシアノ基含有重合性ポリマーと、無電解めっき触媒又はその前駆体と、を含有する組成物を、基板上に接触させて、表面グラフト重合法を適用することにより、シアノ基(相互作用性基)を有し、且つ、基板と直接化学結合したポリマーと、めっき触媒又はその前駆体と、を含有するポリマー層を形成することができる。なお、この方法を用いれば、本発明における(a1))工程と(a2)工程とが1工程で行えることになる。
【0157】
上記のように無電解めっき触媒又はその前駆体を接触させることで、ポリマー層中のシアノ基(相互作用性基)に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、又は、孤立電子対による配位結合による相互作用を利用して、無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
このような吸着を充分に行なわせるという観点からは、分散液、溶液、組成物中の金属濃度、又は溶液中の金属イオン濃度は、0.001〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0158】
無電解めっき触媒を含む溶液に使用できる溶媒としては、本発明の組成物に使用する溶剤として前記したものと同様のものを使用することができる。
【0159】
(その他の触媒)
本発明において、後述の(a3)工程において、ポリマー層に対して、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、特に、相互作用性基(シアノ基)に対する吸着(付着)性、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
【0160】
以上説明した(a2)工程を経ることで、ポリマー層中の相互作用性基(シアノ基)とめっき触媒又はその前駆体との間に相互作用を形成することができる。
【0161】
〔(a3)工程〕
(a3)工程では、無電解めっき触媒又はその前駆体が付与されたポリマー層に対し、めっきを行うことで、めっき膜が形成される。形成されためっき膜は、優れた導電性、密着性を有する。
本工程において行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、前記(a2)工程において、ポリマー層との間に相互作用を形成しためっき触媒又はその前駆体の機能によって、選択することができる。
つまり、本工程では、めっき触媒又はその前駆体が付与されたポリマー層に対し、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
中でも、本発明においては、ポリマー層中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっきについて説明する。
【0162】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体がポリマー層に吸着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、0.1%〜50%、好ましくは1%〜30%がよい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ヂメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
【0163】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
【0164】
このめっき浴に用いられる溶剤には、吸水性が低く、疎水性の高いポリマー層に対して、親和性の高い有機溶剤を含有させることが好ましい。有機溶剤の種類の選択や、含有量は、ポリマー層の物性に応じて調製すればよい。特に、ポリマー層の飽和吸水率が大きければ大きいほど、有機溶剤の含有率を小さくすることが好ましい。具体的には、以下の通りである。
即ち、ポリマー層の飽和吸水率が0.01〜0.5質量%の場合、めっき浴の全溶剤中の有機溶剤の含有量は20〜80%であることが好ましく、同飽和吸水率が0.5〜5質量%の場合、めっき浴の全溶剤中の有機溶剤の含有量は10〜80%であることが好ましく、同飽和吸水率が5〜10質量%の場合、めっき浴の全溶剤中の有機溶剤の含有量は0〜60%であることが好ましく、同飽和吸水率が10〜20質量%の場合、めっき浴の全溶剤中の有機溶剤の含有量は0〜45%であることが好ましい。
めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水と混和可能な溶媒である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0165】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0166】
このようにして形成される無電解めっきによるめっき膜の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0167】
以上のようにして得られた無電解めっきによるめっき膜は、SEMによる断面観察により、ポリマー層中に無電解めっき触媒やめっき金属からなる微粒子がぎっしりと分散しており、更にポリマー層上にめっき金属が析出していることが確認された。基板とめっき膜との界面は、ポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基板(有機成分)と無機物(触媒金属又はめっき金属)との界面が平滑(例えば、凹凸差が500nm以下)であっても、密着性が良好となる。
【0168】
(電気めっき)
本工程おいては、(a2)工程において付与されためっき触媒又はその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒又はその前駆体が付与されたポリマー層に対して、電気めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、本発明の金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
【0169】
本発明における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0170】
また、電気めっきにより得られる金属膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる金属濃度、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0171】
本発明において、前述のめっき触媒、めっき触媒前駆体に由来する金属や金属塩、及び/又は、無電解めっきにより、ポリマー層中に析出した金属が、該層中でフラクタル状の微細構造体として形成されていることによって、金属膜とポリマー層との密着性を更に向上させることができる。
ポリマー層中に存在する金属量は、基板断面を金属顕微鏡にて写真撮影したとき、ポリマー層の最表面から深さ0.5μmまでの領域に占める金属の割合が5〜50面積%であり、ポリマー層と金属界面の算術平均粗さRa(JIS B0633−2001)が0.05μm〜0.5μmである場合に、更に強い密着力が発現される。
【0172】
[表面金属膜材料]
本発明の表面金属膜材料の作製方法の各工程を経ることで、本発明の表面金属膜材料を得ることができる。
本発明の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料は、高温高湿下であっても、金属膜の密着力の変動が少ないといった効果を有する。この表面金属膜材料は、例えば、電磁波防止膜、コーティング膜、2層CCL(Copper Clad Laminate)材料、電気配線用材料等の種々の用途に適用することができる。
【0173】
本発明の金属パターン材料の作製方法は、(a1)〜(a3)の工程を経て得られた本発明の表面金属膜材料のめっき膜をパターン状にエッチングする工程を有する。
この(a4)エッチング工程について以下に説明する。
【0174】
〔(a4)工程〕
(a4)工程では、上記(a3)工程で形成されためっき膜(金属膜)をパターン状にエッチングする。即ち、本工程では、基板表面全体に形成されためっき膜の不要部分をエッチングで取り除くことで、所望の金属パターンを形成することができる。
この金属パターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法、セミアディティブ法が用いられる。
【0175】
サブトラクティブ法とは、形成されためっき膜上にドライフィルムレジスト層を設けパターン露光、現像により金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとしてエッチング液でめっき膜を除去し、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジストとしては如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。作業の操作上、湿式エッチングが装置などが簡便で好ましい。エッチング液として、例えば、塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
【0176】
また、セミアディティブ法とは、形成されためっき膜上にドライフィルムレジスト層を設け、パターン露光、現像により非金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジソトパターンをマスクとして電気めっきを行い、ドライフィルムレジソトパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、めっき膜をパターン状に除去することで、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジソト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電気めっき手法としては前記記載の手法が使用できる。
【0177】
以上の(a1)〜(a4)工程を経ることにより、所望の金属パターンを有する金属パターン材料が作製される。
【0178】
一方、(a1)の工程で得られるポリマー層をパターン状に形成し、パターン状のポリマー層に対し(a2)、及び(a3)工程を行うことで、金属パターン材料を作製することもできる(フルアディティブ工法)。
(a1)の工程で得られるポリマー層をパターン状に形成する方法としては、具体的には、ポリマー層を形成する際に付与されるエネルギーをパターン状とすればよく、また、エネルギーを付与しない部分を現像で除去することでパターン状のポリマー層を形成することができる。
なお、現像方法としては、重合性基及び相互作用性基(シアノ基)を有する化合物などのポリマー層を形成するために用いられる材料を溶解しうる溶剤に浸漬することで行われる。浸漬する時間は1分〜30分が好ましい。
また、(a1)で形成されるポリマー層は、グラビア印刷法、インクジェット法、マスクを用いたスプレーコート法など公知の塗布方法で直接パターニングした後、エネルギー付与し、その後、現像することで形成してもよい。
パターン形成したポリマー層上にめっき膜を形成するための(a2)、及び(a3)工程は、前述の方法と同じである。
【0179】
[金属パターン材料]
本発明の金属パターン材料は、前述の本発明の金属パターン材料の作製方法により得られたものである。
得られた金属パターン材料を構成するポリマー層は、前述のように、吸水性が低く、疎水性が高いため、このポリマー層の露出部(金属パターンの非形成領域)は、絶縁信頼性に優れる。
【0180】
本発明の金属パターン材料は、表面の凹凸が500nm以下(より好ましくは100nm以下)の基板上の全面又は局所的に、金属膜(めっき膜)を設けたものであることが好ましい。また、基板と金属パターンとの密着性が0.2kN/m以上であることが好ましい。即ち、基板表面が平滑でありながら、基板と金属パターンとの密着性に優れることを特徴とする。
【0181】
なお、基板表面の凹凸は、基板を基板表面に対して垂直に切断し、その断面をSEMにより観察することにより測定した値である。
より詳細には、JIS B 0601に準じて測定したRz、即ち、「指定面における、最大から5番目までの山頂のZデータの平均値と、最小から5番目までの谷底の平均値との差」で、500nm以下であることが好ましい。
また、基板と金属膜との密着性の値は、金属膜(金属パターン)の表面に、銅板(厚さ:0.1mm)をエポキシ系接着剤(アラルダイト、チバガイギー製)で接着し、140℃で4時間乾燥した後、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行うか、又は、金属膜自体の端部を直接剥ぎ取り、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行って得られた値である。
【0182】
本発明の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料は、例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の種々の用途に適用することができる。
【実施例】
【0183】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
【0184】
[実施例1]
<合成例:シアノ基含有重合性ポリマーAの合成>
300mlの三口フラスコに、ターシャリーブチルアミン(市販品、アルドリッチ社製)73g、水7.3gを入れ、45℃まで加熱した。そこへ、アクリロニトリル(市販品、和光純薬製)53gを滴下した。滴下終了後、3時間反応させた後、減圧蒸留にてN−ターシャリーブチル−シアノエチルアミンを81g得た。
次に、1000mlの三口フラスコに、N−ターシャリーブチル−シアノエチルアミン80g、酢酸エチル500gを入れ、5℃まで冷却した。そこへ、アクリロイルクロライド(市販品、東京化成工業(株)製)43gを滴下した。滴下終了後、室温に戻し3時間反応させた。その後、反応物を酢酸エチルで抽出し、重曹水、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで1晩乾燥させた。その後、エバポレーションにより粗生成物をえてイソプロピルアルコールにて再結晶しN−ターシャリーブチル−シアノエチルアクリルアミドを44g得た。
次に、300mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート22gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(市販品、東京化成工業(株)製)3.72g、N−ターシャリーブチル−シアノエチルアクリルアミド23.08g、及びV−65(和光純薬製)0.397gのジメチルカーボネート22g溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、TEMPO(東京化成工業(株)製)0.093g、U−600(日東化成工業(株)製)0.277g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)8.4g、及びジメチルカーボネート8.4gを加え、45℃、6時間反応を行った。その後、反応液に、水を1.1g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン=1/3で再沈を行い、固形物を取り出し、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーAを10g得た。
【0185】
シアノ基含有重合性ポリマーAの構造の同定は、NMR(ブルカー製 400MHz)を用いてポリマーをd−DMSOに溶解させ50℃に加温した状態でH−NMRで確認した。分子量の測定方法は、ポリマーをNMPに溶解させ、東ソー(株)製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて分子量の測定を行った。なお、分子量はポリスチレン換算で計算した。シアノ基含有重合性ポリマーAの重量平均分子量は、2.3万であった。シアノ基含有重合性ポリマーAは、下記に示すユニットを有する。
【化17】



【0186】
[実施例2]
<合成例:シアノ基含有重合性ポリマーBの合成>
1000mlの三口フラスコに、N−シアノエチル−アニリン 90g、酢酸エチル500gを入れ、5℃まで冷却した。そこへ、アクリロイルクロライド(市販品、東京化成製)42gを滴下した。滴下終了後、室温に戻し3時間反応させた。その後、酢酸エチルで抽出し、重曹水、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで1晩乾燥させた。その後、エバポレーションにより粗生成物をえてカラムクロマトグラフィーにて精製しN−フェニル−シアノエチルアクリルアミドを50g得た。
次に、300mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート22gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(市販品、東京化成工業(株)製)3.72g、N−フェニル−シアノエチルアクリルアミド25.6g、及びV−65(和光純薬製)0.397gのジメチルカーボネート22g溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、TEMPO(東京化成工業(株)製)0.097g、U−600(日東化成工業(株)製)0.29g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)8.8g、及びジメチルカーボネート8.8gを加え、45℃、6時間反応を行った。その後、反応液に水を1.1g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン=3/1で再沈を行い、固形物を取り出し、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーBを12g得た。
【0187】
シアノ基含有重合性ポリマーBの構造の同定は、NMR(ブルカー製 400MHz)を用いてポリマーをd−DMSOに溶解させ50℃に加温した状態でH−NMRで確認した。分子量の測定方法は、ポリマーをNMPに溶解させ、東ソー(株)製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて分子量の測定を行った。なお、分子量はポリスチレン換算で計算した。シアノ基含有重合性ポリマーBの重量平均分子量は、3.9万であった。シアノ基含有重合性ポリマーBは、下記に示すユニットを有する。
【化18】

【0188】
[実施例3]
<合成例:シアノ基含有重合性ポリマーCの合成>
1000mlの三口フラスコに、N−メチル−シアノエチルアミン 30g、酢酸エチル500gを入れ、5℃まで冷却した。そこへ、アクリロイルクロライド(市販品、東京化成製)42gを滴下した。滴下終了後、室温に戻し3時間反応させた。その後、酢酸エチルで抽出し、重曹水、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで1晩乾燥させた。その後、エバポレーションにより粗生成物をえてカラムクロマトグラフィーにて精製しN−メチル−シアノエチルアクリルアミドを15g得た。
次に、300mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート22gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(市販品、東京化成工業(株)製)3.72g、N−メチル−シアノエチルアクリルアミド17.7g、及びV−65(和光純薬製)0.397gのジメチルカーボネート22g溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
【0189】
上記の反応溶液に、TEMPO(東京化成工業(株)製)0.097g、U−600(日東化成工業(株)製)0.29g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)8.8g、及びジメチルカーボネート8.8gを加え、45℃、6時間反応を行った。その後、反応液に水を1.1g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン=3/1で再沈を行い、固形物を取り出し、本発明のニトリル基含有重合性ポリマーCを8g得た。
【0190】
シアノ基含有重合性ポリマーCの構造の同定は、NMR(ブルカー製 400MHz)を用いてポリマーをd−DMSOに溶解させ50℃に加温した状態でH−NMRで確認した。分子量の測定方法は、ポリマーをNMPに溶解させ、東ソー(株)製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて分子量の測定を行った。なお、分子量はポリスチレン換算で計算した。シアノ基含有重合性ポリマーCの重量平均分子量は、2.5万であった。シアノ基含有重合性ポリマーCは、下記に示すユニットを有する。
【化19】

【0191】
[実施例4]
<合成例:シアノ基含有重合性ポリマーDの合成>
1000mlの三口フラスコに、ターシャリーブチルアミン(市販品、アルドリッチ社製)247g、4−ブロモブチロニトリル100g(市販品、和光純薬製)、ヨウ素ナトリウム10.1g(市販品、和光純薬製)を入れ、45℃まで加熱し、8時間反応させた後、室温でさらに12h反応させた。その後、析出した固体をろ過で取り除き、酢酸エチルで洗浄後、ろ液をエバポレーションにより濃縮し、粗生成物のN−ターシャリーブチル−シアノプロピルアミンを81g得た。
次に、1000mlの三口フラスコに、アクリロイルクロライド(市販品、東京化成工業(株)製)43g、酢酸エチル200gを入れ、5℃まで冷却した。そこへ、N−ターシャリーブチル−シアノプロピルアミン80g、トリエチルアミン58g(市販品、和光純薬製)の酢酸エチル200g溶液を滴下した。滴下終了後、室温に戻し3時間反応させた。その後、反応物を酢酸エチルで抽出し、重曹水、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後濾過、濾液をエバポレーターで濃縮した。濃縮した濾液をシリカゲルカラム(展開溶液:Hexane/ethylacetate=3/1)を用いて精製した。N−ターシャリーブチル−シアノプロピルアクリルアミドを70g得た。
【0192】
次に、300mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート15.4gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(市販品、東京化成工業(株)製)4.18g、N−ターシャリーブチル−シアノプロピルアクリルアミド16.32g、及びV−65(和光純薬製)0.238gのジメチルカーボネート15.4g溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、ジメチルカーボネート7gを加え、室温まで反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、TEMPO(東京化成工業(株)製)0.097g、U−600(日東化成工業(株)製)0.289g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)8.8g、及びアセトニトリル8.8gを加え、45℃で6時間反応を行った。その後、反応液に、水を1.1g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン=1/2で再沈を行い、固形物を取り出し、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーDを15g得た。
【0193】
シアノ基含有重合性ポリマーDの構造の同定は、NMR(ブルカー製 400MHz)を用いてポリマーをd−DMSOに溶解させ50℃に加温した状態でH−NMRで確認した。分子量の測定方法は、ポリマーをNMPに溶解させ、東ソー(株)製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて分子量の測定を行った。なお、分子量はポリスチレン換算で計算した。シアノ基含有重合性ポリマーDの重量平均分子量は、5.1万であった。シアノ基含有重合性ポリマーDは、下記に示すユニットを有する。
【化20】

【0194】
[実施例5]
<合成例:シアノ基含有重合性ポリマーEの合成>
300mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート15.4gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(市販品、東京化成工業(株)製)2.79g、N−ターシャリーブチル−シアノプロピルアクリルアミド16.09g、2−シアノエチルアクリレート1.65g及びV−65(和光純薬製)0.357gのジメチルカーボネート15.4g溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、ジメチルカーボネート7gを加え、室温まで反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、TEMPO(東京化成工業(株)製)0.075g、U−600(日東化成工業(株)製)0.223g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)6.8g、及びアセトニトリル6.8gを加え、45℃で6時間反応を行った。その後、反応液に、水を0.9g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン=1/2で再沈を行い、固形物を取り出し、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーEを14g得た。
【0195】
シアノ基含有重合性ポリマーEの構造の同定は、NMR(ブルカー製 400MHz)を用いてポリマーをd−DMSOに溶解させ50℃に加温した状態でH−NMRで確認した。分子量の測定方法は、ポリマーをNMPに溶解させ、東ソー(株)製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて分子量の測定を行った。なお、分子量はポリスチレン換算で計算した。シアノ基含有重合性ポリマーEの重量平均分子量は、7.2万であった。シアノ基含有重合性ポリマーEは、下記に示すユニットを有する。
【化21】

【0196】
[実施例6]
<合成例:シアノ基含有重合性ポリマーFの合成>
300mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート14.1gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(市販品、東京化成工業(株)製)2.79g、N−ターシャリーブチル−シアノプロピルアクリルアミド15.39g、2−シアノエチルアクリレート0.60g及びV−65(和光純薬製)0.357gのジメチルカーボネート14.1g溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、ジメチルカーボネート7gを加え、室温まで反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、TEMPO(東京化成工業(株)製)0.075g、U−600(日東化成工業(株)製)0.223g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)6.8g、及びアセトニトリル6.8gを加え、45℃で6時間反応を行った。その後、反応液に、水を0.9g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン=1/2で再沈を行い、固形物を取り出し、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーFを13g得た。
【0197】
シアノ基含有重合性ポリマーFの構造の同定は、NMR(ブルカー製 400MHz)を用いてポリマーをd−DMSOに溶解させ50℃に加温した状態でH−NMRで確認した。分子量の測定方法は、ポリマーをNMPに溶解させ、東ソー(株)製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて分子量の測定を行った。なお、分子量はポリスチレン換算で計算した。シアノ基含有重合性ポリマーFの重量平均分子量は、5.5万であった。シアノ基含有重合性ポリマーFは、下記に示すユニットを有する。
【化22】

【0198】
[実施例7]
<合成例:シアノ基含有重合性ポリマーGの合成>
300mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート14.7gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(市販品、東京化成工業(株)製)5.57g、N−ターシャリーブチル−シアノプロピルアクリルアミド13.99g、及びV−65(和光純薬製)0.357gのジメチルカーボネート14.7g溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、ジメチルカーボネート7gを加え、室温まで反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、TEMPO(東京化成工業(株)製)0.070g、U−600(日東化成工業(株)製)0.208g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)6.3g、及びアセトニトリル6.3gを加え、45℃で6時間反応を行った。その後、反応液に、水を0.8g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン=1/4で再沈を行い、固形物を取り出し、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーGを14g得た。
【0199】
シアノ基含有重合性ポリマーGの構造の同定は、NMR(ブルカー製 400MHz)を用いてポリマーをd−DMSOに溶解させ50℃に加温した状態でH−NMRで確認した。分子量の測定方法は、ポリマーをNMPに溶解させ、東ソー(株)製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて分子量の測定を行った。なお、分子量はポリスチレン換算で計算した。シアノ基含有重合性ポリマーGの重量平均分子量は、4.5万であった。シアノ基含有重合性ポリマーGは、下記に示すユニットを有する。
【化23】

【0200】
[比較例1]
<比較ポリマーAの合成>
300mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド24gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(市販品、東京化成製)6.1g、2−シアノエチルアクリルアミド26g、及びV−65(和光純薬製)0.517gのN,N−ジメチルアセトアミド22g溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、TEMPO(東京化成製)0.144g、U−600(日東化成製)0.43g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)12.9g、及びN,N−ジメチルアセトアミド12.9gを加え、45℃、6時間反応を行った。その後、反応液に水を1.7g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル/ヘキサン=1/1で再沈を行い、固形物を取り出し、比較ポリマーAを15g得た。
【0201】
比較ポリマーAの構造の同定は、NMR(ブルカー製 400MHz)を用いてポリマーをd−DMSOに溶解させ50℃に加温した状態で1H−NMRで確認した。分子量の測定方法は、ポリマーをNMPに溶解させ、東ソー(株)製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて分子量の測定を行った。なお、分子量はポリスチレン換算で計算した。比較ポリマーAの分子量は、2.8万であった。比較ポリマーAは、下記に示すユニットを有する。
【化24】

【0202】
<吸水性評価>
実施例1〜7にて合成したシアノ基含有重合性ポリマーA〜G、及び比較例1にて合成した比較ポリマーAを用い、吸水性評価を行った。
吸水性評価は、以下のようにして作製した8種類のポリマーのモデル膜を、85℃85RH%の雰囲気下に3日間放置し、吸水率(%)を測定することにより行った。
評価対象のモデル膜は、各ポリマーを、溶剤(アセトン9g)に0.78g溶解して調製した溶液を用い、これを直径10cmのテフロン(登録商標)シャーレにキャストし、1週間室温放置した後、減圧乾燥することにより作製した。モデル膜の膜厚は、各々、約100μmであった。
なお、吸水率(%)は、精密天秤を用いて測定したモデル膜の重量変化に基づいて算出した。
【0203】
吸水性評価の結果は、以下の通りである。
<ポリマーの種類> <吸水率>
シアノ基含有重合性ポリマーA 0.1質量%以下
シアノ基含有重合性ポリマーB 1.4質量%
シアノ基含有重合性ポリマーC 5.2質量%
シアノ基含有重合性ポリマーD 0.1質量%以下
シアノ基含有重合性ポリマーE 1.0質量%
シアノ基含有重合性ポリマーF 0.1質量%以下
シアノ基含有重合性ポリマーG 4.5質量%
比較ポリマーA 9.8質量%
【0204】
上記の結果に示されるように、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーA〜Gは、比較ポリマーAとの対比において、吸水性がより低いものであることが確認された。
【0205】
[実施例8]
<基板の作製>
ガラスエポキシ基板上に、電気的絶縁層として味の素ファインテクノ社製エポキシ系絶縁膜GX−13(膜厚45μm)を、加熱、加圧して、真空ラミネーターにより0.2MPaの圧力で100℃〜110℃の条件により接着して、基材Aを得た。
次いで、基材Aの上に、下記組成の重合開始剤を含有する絶縁性組成物を厚さ3μmになるようにスピンコート法で塗布し、30℃にて1時間放置して溶剤を除去した後、140℃で30分乾燥して重合開始層(絶縁性の重合開始層)を形成した。
【0206】
(重合開始剤を含有する絶縁性組成物)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量176、ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート825)5g、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂のMEKワニス(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライトLA−7052、不揮発分62%、不揮発分のフェノール性水酸基当量120)2g、フェノキシ樹脂MEKワニス(東都化成(株)製、YP−50EK35、不揮発分35%)10.7g、重合開始剤として2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン2.3g、MEK5.3g、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.053gを混合し、攪拌して完全に溶解させて重合開始剤を含有する絶縁性組成物を得た。
【0207】
上記により重合開始層を形成した後、180℃で30分間硬化処理を実施した。これにより、基板A1を得た。この基板A1の表面凹凸(Rz)は0.2μmであった。
【0208】
<ポリマー層の形成>
(塗布溶液の調製)
前述の合成例で得られた本発明のシアノ基含有重合性ポリマーA 10.5質量部、アセトン73.3質量部、メタノール33.9質量部、及びN,Nジメチルアセトアミド4.8質量部を混合攪拌し、塗布溶液を調製した。
【0209】
(露光)
調製した塗布溶液を、前記基板A1の重合開始層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて30分乾燥した後、(株)三永電機製作所製のUV露光機(型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、1.5mW/cmの照射パワー(ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、660秒間照射させて、基板A1の重合開始層の全面で、シアノ基含有重合性ポリマーAを反応させた。
【0210】
その後、攪拌した状態のアセトン中に、ポリマー層が形成された基板を5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。
これにより、ポリマー層を有する基板A2を得た。
【0211】
<めっき触媒の付与>
ポリマー層を有する基板A2を、Pdの1%アセトン溶液に、30分間浸漬した後、アセトンに浸漬して洗浄した。
続いて、1%ジメチルアミノボラン−水/メタノール(水/メタノール=1/3)混合溶液を触媒活性化液(還元液)として用い、この溶液中に、ポリマー層を有する基板A2を15分浸漬させた後、アセトンに浸漬し洗浄を行った。
【0212】
<無電解めっき>
めっき触媒が付与されたポリマー層を有する基板A2に対し、下記組成の無電解めっき浴を用い、60℃で5分間、無電解めっきを行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは0.3μmであった。
【0213】
(無電解めっき浴の組成)
・蒸留水 859g
・メタノール 850g
・硫酸銅 18.1g
・エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム塩 54.0g
・ポリオキシエチレングリコール(分子量1000) 0.18g
・2,2’ビピリジル 1.8mg
・10%エチレンジアミン水溶液 7.1g
・37%ホルムアルデヒド水溶液 9.8g
以上の組成のめっき浴のpHは、水酸化ナトリウム及び硫酸で12.5(60℃)に調整した。
【0214】
<電気めっき>
続いて、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電気銅めっき浴を用い、3A/dmの条件で、電気めっきを20分間行った。その後、120℃、1時間、べーク処理を行った。得られた電気銅めっき膜の厚みは18μmであった。
【0215】
(電気めっき浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0216】
<金属膜の密着性評価>
得られためっき膜に対して、引張試験機(島津製、オートグラフ)を用いて、5mm幅について、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.5kN/mmであった。
【0217】
<金属パターンの形成、及び絶縁信頼性試験>
得られためっき膜表面に、金属パターン(配線パターン)として残すべき領域にエッチングレジストを形成し、レジストのない領域のめっき膜を、FeCl/HClからなるエッチング液により除去した。その後、エッチングレジストを3%NaOH液からなるアルカリ剥離液にて除去し、ライン・アンド・スペース=110μm/90μmの線間絶縁信頼性を測定するための櫛形配線(金属パターン材料)を形成した。
この櫛形配線を、ESPEC製HAST試験機(AMI−150S−25)にて、125℃−85%相対湿度(未飽和)、印加電圧10V、2気圧下で200時間放置したところ、配線間の絶縁不良は見られなかった。
【0218】
[実施例9]
<ポリマー層の形成>
(塗布溶液の調製)
前述の合成例で得られた本発明のシアノ基含有重合性ポリマーE 10.5質量部、アセトン73.3質量部、メタノール33.9質量部、及びN,Nジメチルアセトアミド4.8質量部を混合攪拌し、塗布溶液を調製した。
【0219】
(露光)
調製した塗布溶液を、前記基板A1の重合開始層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて30分乾燥した後、(株)三永電機製作所製のUV露光機(型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、1.5mW/cmの照射パワー(ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、660秒間照射させて、基板A1の重合開始層の全面で、シアノ基含有重合性ポリマーEを反応させた。
【0220】
その後、攪拌した状態のアセトン中に、ポリマー層が形成された基板を5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。これにより、ポリマー層を有する基板A3を得た。
【0221】
<めっき触媒の付与>
ポリマー層を有する基板A3を、Pdの1%アセトン溶液に、30分間浸漬した後、アセトンに浸漬して洗浄した。
続いて、1%ジメチルアミノボラン−水/メタノール(水/メタノール=1/3)混合溶液を触媒活性化液(還元液)として用い、この溶液中に、ポリマー層を有する基板A3を15分浸漬させた後、アセトンに浸漬し洗浄を行った。
【0222】
<無電解めっき>
めっき触媒が付与されたポリマー層を有する基板A3に対し、実施例8で用いたものと同様の無電解めっき浴を用い、60℃で3分間、無電解めっきを行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは0.4μmであった。
【0223】
<電気めっき>
続いて、無電解銅めっき膜を給電層として、実施例8で用いたものと同様の電気銅めっき浴を用い、3A/dmの条件で、電気めっきを20分間行った。その後、120℃、1時間、べーク処理を行った。得られた電気銅めっき膜の厚みは19μmであった。
【0224】
<金属膜の密着性評価>
得られためっき膜に対して、引張試験機(島津製、オートグラフ)を用いて、5mm幅について、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.7kN/mmであった。実施例8と比較して膜が柔軟性になり、密着力が向上したことがわかる。
【0225】
<金属パターンの形成、及び絶縁信頼性試験>
得られためっき膜表面に、金属パターン(配線パターン)として残すべき領域にエッチングレジストを形成し、レジストのない領域のめっき膜を、FeCl/HClからなるエッチング液により除去した。その後、エッチングレジストを3%NaOH液からなるアルカリ剥離液にて除去し、ライン・アンド・スペース=110μm/90μmの線間絶縁信頼性を測定するための櫛形配線(金属パターン材料)を形成した。
この櫛形配線を、ESPEC製HAST試験機(AMI−150S−25)にて、125℃−85%相対湿度(未飽和)、印加電圧10V、2気圧下で200時間放置したところ、配線間の絶縁不良は見られなかった。
【0226】
[実施例10]
<ポリマー層の形成>
(塗布溶液の調製)
前述の合成例で得られた本発明のシアノ基含有重合性ポリマーF 10.5質量部、アセトン73.3質量部、メタノール33.9質量部、及びN,Nジメチルアセトアミド4.8質量部を混合攪拌し、塗布溶液を調製した。
【0227】
(露光)
調製した塗布溶液を、前記基板A1の重合開始層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて30分乾燥した後、(株)三永電機製作所製のUV露光機(型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、1.5mW/cmの照射パワー(ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、660秒間照射させて、基板A1の重合開始層の全面で、シアノ基含有重合性ポリマーFを反応させた。
【0228】
その後、攪拌した状態のアセトン中に、ポリマー層が形成された基板を5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。これにより、ポリマー層を有する基板A4を得た。
【0229】
<めっき触媒の付与>
ポリマー層を有する基板A4を、Pdの1%アセトン溶液に、30分間浸漬した後、アセトンに浸漬して洗浄した。
続いて、1%ジメチルアミノボラン−水/メタノール(水/メタノール=1/3)混合溶液を触媒活性化液(還元液)として用い、この溶液中に、ポリマー層を有する基板A4を15分浸漬させた後、アセトンに浸漬し洗浄を行った。
【0230】
<無電解めっき>
めっき触媒が付与されたポリマー層を有する基板A4に対し、実施例8で用いたもの同様の無電解めっき浴を用い、60℃で5分間、無電解めっきを行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは0.3μmであった。
【0231】
<電気めっき>
続いて、無電解銅めっき膜を給電層として、実施例8で用いたもの同様の電気銅めっき浴を用い、3A/dmの条件で、電気めっきを20分間行った。その後、120℃、1時間、べーク処理を行った。得られた電気銅めっき膜の厚みは18μmであった。
【0232】
<金属膜の密着性評価>
得られためっき膜に対して、引張試験機(島津製、オートグラフ)を用いて、5mm幅について、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.5kN/mmであった。
【0233】
<金属パターンの形成、及び絶縁信頼性試験>
得られためっき膜表面に、金属パターン(配線パターン)として残すべき領域にエッチングレジストを形成し、レジストのない領域のめっき膜を、FeCl/HClからなるエッチング液により除去した。その後、エッチングレジストを3%NaOH液からなるアルカリ剥離液にて除去し、ライン・アンド・スペース=110μm/90μmの線間絶縁信頼性を測定するための櫛形配線(金属パターン材料)を形成した。
この櫛形配線を、ESPEC製HAST試験機(AMI−150S−25)にて、125℃−85%相対湿度(未飽和)、印加電圧10V、2気圧下で200時間放置したところ、配線間の絶縁不良は見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるユニット、及び、下記式(2)で表されるユニットを含むポリマー。
【化1】


(式(1)及び式(2)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Rは、無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を表し、V及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載のポリマーと、該ポリマーを溶解しうる溶剤と、を含有する組成物。
【請求項3】
前記ポリマーの濃度が、2質量%〜50質量%である請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の組成物を、樹脂基材上に塗布してなる積層体。
【請求項5】
基板上に、請求項1に記載のポリマーを含有する組成物を用いてポリマー層を形成する工程と、
該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、
該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、
を有する表面金属膜材料の作製方法。
【請求項6】
前記ポリマー層中のポリマーが、前記基板と直接化学結合していることを特徴とする請求項5に記載の表面金属膜材料の作製方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料のめっき膜をパターン状にエッチングする工程を有する金属パターン材料の作製方法。
【請求項9】
請求項8に記載の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料。

【公開番号】特開2010−254971(P2010−254971A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73465(P2010−73465)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】