説明

有機電子素子用電極、有機トランジスタ素子

【課題】有機半導体に対する接触抵抗を低減した有機電子素子用電極、及びこれを利用した有機トランジスタ素子を提供することを課題とする。
【解決手段】金属層24Aと、金属層24Aの表面の少なくとも一部に付着したカーボンナノチューブ24Bと、を有する有機電子素子用電極、及び当該電極を、ソース電極18、及びドレイン電極20として適用した有機トランジスタ素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子素子用電極、及び有機トランジスタ素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブについては、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、「炭素6員環を有する有機材料と接触するためのカーボンナノチューブと、当該カーボンナノチューブの一部と接触する金属とからなる、有機材料用の端子」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−356530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、有機半導体に対する接触抵抗を低減した有機電子素子用電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
金属層と、
前記金属層の表面の少なくとも一部に付着したカーボンナノチューブと、
を有する有機電子素子用電極。
【0006】
請求項2に係る発明は、
金属層と前記金属層の表面の少なくとも一部に付着したカーボンナノチューブとを有するソース電極と、
前記ソース電極と間隔を持って配置されるドレイン電極であって、金属層と前記金属層の表面の少なくとも一部に付着したカーボンナノチューブとを有するドレイン電極と、
前記ソース電極及びドレイン電極の前記カーボンナノチューブとそれぞれ接触するようにして、前記ソース電極及びドレイン電極を接続して配置されるチャネル層であって、有機半導体を含んで構成されたチャネル層と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極間に流れる電流を制御するためのゲート電極と、
前記チャネル層と前記ゲート電極とを絶縁するためのゲート絶縁層と、
を備える有機トランジスタ素子。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、金属層の表面にカーボンナノチューブが付着していない場合に比べ、有機半導体に対する接触抵抗を低減した有機電子素子用電極を提供できる。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、ソース電極・ドレイン電極として、表面にカーボンナノチューブが付着していない金属層を適用した場合に比べ、駆動電圧が低減した有機トランジスタ素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る有機トランジスタ素子を示す概略断面図である。
【図2】本実施形態に係る有機トランジスタ素子の製造方法を示す工程図である。
【図3】他の本実施形態に係る有機トランジスタ素子を示す概略断面図である。
【図4】実施例1で作製した有機トランジスタ素子の他の一例を示す概略断面図である。
【図5】実施例1で作製した有機トランジスタ素子の出力特性(その1)を示す図である。
【図6】実施例1で作製した有機トランジスタ素子の出力特性(その2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る有機トランジスタ素子を示す概略断面図である。
【0012】
本実施形態に係る有機トランジスタ素子10は、例えば、図1に示すように、基板12上に、ゲート電極14が設けられ、このゲート電極14の設けられた基板12上にゲート絶縁層16が設けられている。このゲート絶縁層16上には、ソース電極18及びドレイン電極20が間隔を隔てて設けられており、これらのソース電極18及びドレイン電極20の間には、例えば、有機半導体を含んで構成されたチャネル層22が設けられている。
【0013】
チャネル層22は、ソース電極18及びドレイン電極20の一部をそれぞれ覆うようにして双方に接すると共に、これらのソース電極18及びドレイン電極20を導通するように設けられている。ゲート電極14は、ゲート絶縁層16によってソース電極18及びドレイン電極20に対して絶縁されている。
【0014】
ゲート絶縁層16がゲート電極14上に設けられることによって、ゲート電極14がソース電極18及びドレイン電極20の双方から絶縁された状態となる。すなわち、ゲート絶縁層16を設けることによって、ゲート電極14に電圧を印加することでソース電極18及びドレイン電極20間に流れる電流が制御される。
【0015】
なお、ソース電極18及びドレイン電極20は、電極14に電圧が印加されることで、ソース電極18とドレイン電極20との間に有機半導体を含んで構成されたチャネル層22を介して電流が流れる位置に設けられていればよい。
ゲート電極14に印加する電圧の電圧値を調整することで、ソース電極18とドレイン電極20との間(その間のチャネル層22)に流れる電流が制御される。
【0016】
本実施形態に係る有機トランジスタ素子10における各要素について詳細に説明する。
【0017】
−ソース電極・ドレイン電極−
ソース電極18・ドレイン電極20は、金属層24Aと、金属層24Aの表面の少なくとも一部に付着したカーボンナノチューブ24Bと、で構成されている。
【0018】
金属層24Aについて説明する。
金属層24Aは、金属により構成され、導電性が発現している層であればよい。中でも金属層24Aは、金属粒子が集合(凝集)した状態で、溶融し、互いの粒子同士が結着(つまり融着)して形成された層であることが好ましい。言い換えれば、金属層24Aは、金属粒子が粒子形状を維持せず、互いの粒子同士が結着(つまり融着)して、導電性が発現した導電層であることが好ましい。このような金属層表面は、金属の蒸着又はスパッタリングにより形成された金属層に比べ、金属粒子の形状に起因する凹凸が大きくなる。
【0019】
金属層24Aを構成する金属粒子としては、例えば、粒径(最大径)10nm以下の粒子であって、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、白金(Pt)等の金属材料の粒子が挙げられる。
【0020】
金属層24Aの厚さは、例えば、0.1μm以上1.0μm以下の範囲内であることがよい。
【0021】
カーボンナノチューブ24Bについて説明する。
カーボンナノチューブ24Bは、例えば、ソース電極18・ドレイン電極20を構成する金属層24Aの表面のうち、下層となるゲート絶縁層16と対向する面(厚み方向に対向する面のうち、下層となるゲート絶縁層16側とは反対側の面)に付着している。
具体的には、例えば、カーボンナノチューブ24Bは、金属層24Aの表面に存在する微小な凹凸の凹部に埋め込まれるように付着している。無論、カーボンナノチューブ24Bは、金属層24Aの表面に存在する微小な凹凸の凸部に付着してもよく、金属層24Aの表面に層状に付着していてもよい。
【0022】
なお、カーボンナノチューブ24Bの付着領域は、ソース電極18・ドレイン電極20(それを構成する金属層24A)における、チャネル層22と接触する領域に付着していればよく、金属層24Aの表面全面であっても、側面のみに付着していてもよい。
【0023】
カーボンナノチューブ24Bは、例えば、単層カーボンナノチューブ、二層以上の多層カーボンナノチューブが挙げられる。
【0024】
カーボンナノチューブとしては、例えば、単層カーボンナノチューブの変種である、カーボンナノホーン(一方の端部から他方の端部まで連続的に拡径しているホーン型のもの)、カーボンナノコイル(全体としてスパイラル状をしているコイル型のもの)、カーボンナノビーズ(中心にチューブを有し、これがアモルファスカーボン等からなる球状のビーズを貫通した形状のもの)、カップスタック型ナノチューブ、カーボンナノホーンやアモルファスカーボンで外周を覆われたカーボンナノチューブ等、厳密にチューブ形状をしていないものも挙げられる。
また、カーボンナノチューブ24Bとしては、カーボンナノチューブ中に金属等が内包されている金属内包ナノチューブ、フラーレン又は金属内包フラーレンがカーボンナノチューブ中に内包されるピーポッドナノチューブ等、何らかの物質をカーボンナノチューブ中に内包したカーボンナノチューブも挙げられる。
【0025】
これら、カーボンナノチューブ24Bとしては、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0026】
一方、カーボンナノチューブ24Bは、複数のカーボンナノチューブ24Bが相互に非接触の状態で、金属層24Aの表面に付着していてもよいが、複数のカーボンナノチューブ24Bが相互に接触して、互いに電気的接続をした状態のカーボンナノチューブ構造体として、金属層24Aの表面に付着していてもよい。
【0027】
ここで、カーボンナノチューブ構造体について説明する。なお、本説明において、カーボンナノチューブの符号は省略する。
カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブ同士が非結合状態で相互に接触して、互いに電気的接続をした状態で構成されていてもよいが、カーボンナノチューブ同士が化学結合により互いが電気的に接続されたネットワーク構造を形成していることが、カーボンナノチューブ自体の電気伝導性や機械的強度、及び電極強度を向上させる観点からよい。
【0028】
このようなカーボンナノチューブ構造体として、具体的には、例えば、官能基で修飾したカーボンナノチューブを用い、当該官能基間を化学結合させて相互に網目構造を構成する架橋カーボンナノチューブ構造体が挙げられる。
【0029】
架橋カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブの官能基間を化学結合させた架橋部位を有することになるが、この架橋部位としては、架橋剤により複数の官能基間を架橋した第1の構造、複数の官能基同士を化学結合により形成された第2の構造が好適に挙げられる。
【0030】
第1の構造は、官能基の架橋反応後に残存する残基同士を、架橋剤の架橋反応後に残存する残基である連結基で連結した架橋構造となる。
【0031】
架橋剤は、その特性として架橋剤同士が重合反応をするような性質(自己重合性)を有するよりも、非自己重合性を有することがよい。
架橋剤が非自己重合性を有すると、カーボンナノチューブ相互の間隔を、使用した架橋剤の残基のサイズに制御され易く、目的とするカーボンナノチューブのネットワーク構造が得られ易くなる。さらに、架橋剤の残基のサイズを小さくすれば、電気的にも物理的にも近接した状態に、カーボンナノチューブ相互の間隔を狭められ、構造体中のカーボンナノチューブが密化した構造体が得られ易くなる。
【0032】
なの、「自己重合性」とは、架橋剤同士が、水分等他の成分の存在の下、あるいは他の成分の存在なしに、相互に重合反応を生じ得る性質をいい、「非自己重合性」とは、そのような性質を有しないことを言う。
【0033】
ここで、架橋剤として非自己重合性のものを選択すれば、カーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位が、主として同一の架橋構造となり易い。また、連結基としては、例えば、炭化水素を骨格とするものがよく、その炭素数としては2個以上10個以下とすることがよい。この炭素数を少なくすることで、架橋部位の長さが短くなり、カーボンナノチューブ相互の間隙をカーボンナノチューブ自体の長さと比較して近接し、実質的にカーボンナノチューブのみから構成される網目構造の架橋カーボンナノチューブ構造体が得られ易くなる。
【0034】
第1の構造において、カーボンナノチューブに修飾させる官能基としては、例えば、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換又は未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2及びNCOを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの基を選択することがよくその場合、架橋剤として、選択された前記官能基と架橋反応を起こし得るものを選択する。
【0035】
また、架橋剤としては、例えば、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミド及びポリイソシアネートが挙げられ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの架橋剤を選択することがよく、その場合、前記官能基として、選択された前記架橋剤と架橋反応を起こし得るものを選択する。
【0036】
カーボンナノチューブに修飾させる官能基として例示された群、及び、架橋剤として例示された群より、それぞれ少なくとも1つの官能基及び架橋剤を、相互に架橋反応を起こし得る組み合わせとなるように選択することがよい。
【0037】
第1の構造において、カーボンナノチューブに修飾させる官能基としては、−COOR(Rは、置換又は未置換の炭化水素基)が特に好適である。カーボンナノチューブにカルボキシル基を導入することは、比較的容易であり、しかも得られる物質(カーボンナノチューブカルボン酸)は、反応性に富むため、その後エステル化して官能基を−COOR(Rは、置換又は未置換の炭化水素基)とすることは比較的容易である。この官能基は架橋反応しやすく、塗布膜形成に適している。
【0038】
また、当該好適な官能基に対応する架橋剤として、ポリオールがよい。ポリオールは、−COOR(Rは、置換又は未置換の炭化水素基)との反応により硬化し、容易に強固な架橋体を形成する。ポリオールの中でも、グリセリンやエチレングリコールがよい。これは。上記官能基との反応性が富むと共に、それ自体生分解性を有し、環境に対する負荷が小さいからである。
【0039】
第1の構造において、架橋部位は、官能基が−COOR(Rは、置換又は未置換の炭化水素基)であり、架橋剤としてエチレングリコールを用いた場合、−COO(CH22OCO−となり、架橋剤としてグリセリンを用いた場合、OH基2つが架橋に寄与すれば−COOCH2CHOHCH2OCO−あるいは−COOCH2CH(OCO−)CH2OHとなり、OH基3つが架橋に寄与すれば−COOCH2CH(OCO−)CH2OCO−となる。架橋部位の化学構造は上記4つからなる群より選ばれるいずれかの化学構造であっても構わない。
【0040】
一方、第2の構造は、複数のカーボンナノチューブの官能基同士を化学結合により形成されている構造であるが、この化学結合を生ずる反応は脱水縮合、置換反応、付加反応及び酸化反応のいずれかであることがよい。
【0041】
第2の構造を有する架橋カーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブに結合された同官能基同士を化学結合により架橋部位を形成して網目状の構造体を形成しているため、結合させる官能基によってカーボンナノチューブ間を結合させる架橋部位のサイズが一定となり易い。カーボンナノチューブは安定な化学構造であるため、修飾させようとした官能基以外の官能基等が結合する可能性は低く、この官能基同士を化学結合させた場合は、目的とした構造の架橋部位となり易く、架橋カーボンナノチューブ構造体を均質なものとし易い。
【0042】
第2の構造は官能基同士の化学結合であることから、官能基間を架橋剤により架橋した場合に比べて、カーボンナノチューブ間の架橋部位の長さを短くなり、架橋カーボンナノチューブ構造体が密となり易い。
【0043】
第2の構造において、官能基同士の化学結合としては、縮合反応では、−COOCO−、−O−、−NHCO−、−COO−及びNCH−から選ばれる一つ、置換反応では−NH−、−S−及びO−から選ばれる少なくとも一つ、付加反応では−NHCOO−、酸化反応では、−S−S−であることがよい。
【0044】
また、反応前にカーボンナノチューブに修飾(結合)させる官能基としては、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換又は未置換の炭化水素基)、−X、−COX(Xはハロゲン原子)、−SH、−CHO、−OSO2CH3、−OSO2(C64)CH3−NH2及びNCOを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの基を選択することがよい。
【0045】
これらの中でも、カーボンナノチューブに修飾(結合)させる官能基としては、−COOHが特によい。カーボンナノチューブにカルボキシル基を導入することは、比較的容易である。しかも得られる物質(カーボンナノチューブカルボン酸)は、反応性に富み、N−エチル−N'−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等の脱水縮合剤を利用することで、容易に縮合反応を起し、層形成に適する。
【0046】
このように、第1の構造、及び第2の構造のいずれの架橋部位を有する架橋カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブが複数の架橋部位を介して網目構造の状態となっているので、単なるカーボンナノチューブ同士が偶発的に接触しているカーボンナノチューブ構造体に比べ、カーボンナノチューブ自体の電気伝導性や機械的強度、及び電極強度が向上する。
【0047】
ソース電極18・ドレイン電極20の厚みは、例えば、0.1μm以上1.0μm以下の範囲内であることがよい。
【0048】
−ゲート電極−
ゲート電極14は、例えば、導電層で構成されており、具体的には、例えば、導電材料を含んで構成される。
導電材料としては、例えば、金属、金属酸化物、導電性高分子等が挙げられる。
金属としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、タンタル、インジウム、パラジウム、リチウム、カルシウムおよびこれらの合金が挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛等が挙げられる。
導電性高分子としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール、ポリピリジン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。
【0049】
ゲート電極14の層さは、例えば、0.1μm以上1.0μm以下の範囲内であることがよい。
【0050】
−チャネル層−
チャネル層22は、例えば、有機半導体を含んで構成される。
有機半導体としては、例えば低分子有機半導体材料(例えば、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、フタロシアニン、ペリレン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、スチルベン、アリールビニル、ピラゾリン、トリフェニルアミン、トリアリールアミン、オリゴチオフェン、フタロシアニン、又はこれらの誘導体等)、高分子有機半導体材料(例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ポリアリールアミン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂、フルオレン−ブチオフェン共重合体、フルオレン−アリールアミン共重合体、又はこれらの誘導体等)等が挙げられるが、これに限るものではない。
【0051】
チャネル層22の厚みは、例えば、50nm以上1μm以下の範囲内であることがよい。
【0052】
−ゲート絶縁層16−
ゲート絶縁層16は、例えば、絶縁層で構成されており、具体的には、例えば、絶縁性樹脂を含んで構成される。
絶縁性樹脂としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート等の縮合樹脂や、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミドのようなビニル重合体等が挙げられる。また、それらの前駆体を用いてもよい。
これらの絶縁性樹脂の中でも、例えば、ポリイミド、ポリエステル、エポキシ樹脂がよく、好ましくはポリイミドである。
絶縁性樹脂は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
ゲート絶縁層16の厚さは、例えば、0.1μm以上4μm以下の範囲内であることがよい。
【0054】
−基板−
基板12としては、絶縁性(体積抵抗で1012Ωcm以上、以下これに準ずる)を有し、その上に作製されるゲート電極14、ゲート絶縁層16、ソース電極18、ドレイン電極20、及び有機半導体を含んで構成されたチャネル層22等を支持可能な材料から構成されていればよい。
【0055】
基板12としては、具体的には、ガラス、シリコンウェハ、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリススチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンブタジエン共重合体、塩化ビニルデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、又はシリコン樹脂等のプラスチック基板等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0056】
なお、本実施形態に係る有機トランジスタ素子10の構成の場合、導電性を持つ基板12をゲート電極14を兼ねて適用してもよい。
【0057】
−有機トランジスタ素子の製造方法−
以下、本実施形態に係る有機トランジスタ素子10の製造方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る有機トランジスタ素子の製造方法を示す工程図である。
【0058】
まず、図2(A)に示すように、基板12を用意する。
【0059】
次に、図2(B)に示すように、この基板12上にゲート電極14を形成する。
ゲート電極14の形成方法としては、例えば、上記電極材料を蒸着法、スパッタ法によりパターニングして成膜する方法、上記電極材料を含む溶液を各種塗布法(インクジェット法、ディスペンサー法、スピンコート法、マイクロシリンジにより滴下する方法、スクリーン印刷法等)等を利用してパターニングして成膜する方法が挙げられるが、これらの方法に限られない。
【0060】
次に、図2(C)に示すように、ゲート電極14の形成された基板12上に、ゲート電極14及び基板12の表面を覆うように、ゲート絶縁層16を形成する。
ゲート絶縁層16を形成する方法としては。例えば、上記電極材料を蒸着法、スパッタ法によりパターニングして成膜する方法、上記電極材料を含む溶液を各種塗布法(インクジェット法、ディスペンサー法、スピンコート法、マイクロシリンジにより滴下する方法等)等を利用してパターニングして成膜する方法が挙げられるが、これらの方法に限られない。
【0061】
次に、図2(D)に示すように、ゲート絶縁層16上に、ソース電極18及びドレイン電極20を、間隔を隔てて形成する。
具体的には、例えば、まず、上記金属粒子を含む溶液(以下、金属インクと称する)を各種塗布法(インクジェット法、ディスペンサー法、スピンコート法、マイクロシリンジにより滴下する方法、スクリーン印刷法等)等を利用してパターニングして成膜し、金属粒子層を形成する。この金属粒子層は、金属粒子が集合(凝集)した層である。
そして、金属粒子層に対して、オーブン、フラッシュランプ、レーザ等により加熱し、金属粒子層を構成する金属粒子を溶融させ、互いの金属粒子同士を結着(融着)させ、金属層24Aを形成する。
【0062】
次に、形成した金属層24Aの表面にカーボンナノチューブ24Bを付着する。
具体的には、例えば、各種塗布法(インクジェット法、ディスペンサー法、スピンコート法、マイクロシリンジにより滴下する方法)等を利用して、カーボンナノチューブ24Bを含む溶液(以下、カーボンナノチューブインクと称する)を、金属層24Aの表面に塗布する。
そして、カーボンナノチューブインクを金属層24A表面に塗布(吐出や滴下)した後、加熱(例えば100℃程度)して乾燥することで、溶媒を除去し、金属層24A表面にカーボンナノチューブ24Bが残存して付着することとなる。
なお、官能基修飾されたカーボンナノチューブを適用する場合(架橋カーボンナノチューブ構造体を形成する場合)、例えば、100℃以上200℃以上に加熱して、架橋反応を進行させることがよい。
【0063】
これら操作を経て、金属層24Aと金属層24Aの表面に付着したカーボンナノチューブ24Bとで、それぞれ構成されるソース電極18及びドレイン電極20が形成される。
【0064】
ここで、金属層24Aを形成するための金属インクは、金属粒子を粒径(最大径)10nm以下で溶媒に分散したもの(所謂、ナノメタルインク)が挙げられる。また、金属層24Aの形成にスクリーン印刷法を利用する場合、金属インクにはバインダー樹脂を含ませてもよい。
【0065】
金属インクに含まれる上記金属粒子の濃度は、後述する粘度条件を満たす範囲内の濃度であればよく、溶媒の粘度によって異なるが、例えば、金属インク溶液100質量部に対して、5質量部以上70質量部以下の範囲内であることが好ましく、5質量部以上60質量部以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0066】
金属インクにおいて、上記金属粒子を分散させるための溶媒としては、例えば、エステル類(例えば酢酸ブチル、又は酢酸エチル等)、アルコール類(例えばイソプロピルアルコール、又はエチルアルコール等)、脂環式化合物(例えばトルエン等)、直鎖アルカン類(例えばデカン、ドデカン、テトラデカン等)、又は有機溶剤(例えばメチルエチルケトン、又はアセトン等)等が挙げられる。
【0067】
金属インクに含まれる溶媒の沸点は、110℃以上であることが好ましく、160℃以上であることが更に好ましい。この条件を満たす溶媒であるという観点から、上記溶媒の中のデカン、ドデカン、又はテトラデカン等が金属インクの溶媒として好適に挙げられる。
【0068】
金属インクの粘度は、2mPa・s以上30mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上15mPa・s以下であることが更に好ましい。この粘度は、例えば、用いる溶媒の種類や、含有する金属材料の濃度等を調整することで調整すればよい。
【0069】
なお、この金属インクの粘度は、ソリッドステート式粘度計(Vectron社製、商品名ViSmart)を使用し、23℃、55%RHの環境下における試料の粘度を算出した。
【0070】
一方、カーボンナノチューブ24Bを金属層24Aの表面に付着させるためのカーボンナノチューブインクは、例えば、カーボンナノチューブとカーボンナノチューブを分散する分散媒を少なくとも含んで構成される。
分散媒としては、例えば、水、アルコール系溶媒、又はこれらの混合溶媒等が挙げられる。
但し、架橋剤が液状物(例えば、グリセリン、エチレングリコール等のポリオール)の場合、これを分散媒としてもよい。
【0071】
カーボンナノチューブインクは、カーボンナノチューブと分散媒の他、架橋剤等その他の添加剤を含んでもよい。
架橋剤以外のその他の添加剤としては、例えば、溶剤、粘度調整剤、分散剤、架橋促進剤等が挙げられる。
【0072】
溶剤は、架橋剤のみでは塗布適性が十分で無い場合に添加する。
溶剤としては、特に制限は無く、架橋剤の種類に応じて選択すればよい。溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、トルエン、ベンゼン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等の有機溶剤や水、酸水溶液、アルカリ水溶液等が挙げられる。
溶剤の添加量としては、塗布適性を考慮して設定すればよいが、特に制限は無い。
【0073】
粘度調整剤も、架橋剤のみでは塗布適性が十分で無い場合に添加する。
粘度調整剤としては、特に制限は無く、架橋剤の種類に応じて選択すればよい。粘度調整剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、トルエン、ベンゼン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、THF等が挙げられる。
これら粘度調整剤の中には、その添加量によっては溶剤としての機能を有するものがあるが、両者を明確に区別することに意義は無い。
粘度調整剤の添加量としては、塗布適性を考慮して設定すればよいが、特に制限は無い。
【0074】
分散剤は、カーボンナノチューブインク中でのカーボンナノチューブないし架橋剤の分散安定性を保持するために添加するものであり、従来公知の各種界面活性剤、水溶性有機溶剤、水、酸水溶液やアルカリ水溶液等が挙げられる。ただし、カーボンナノチューブインクの成分は、それ自体分散安定性が高いため、分散剤は必ずしも必要ではない。また、カーボンナノチューブ24Bを金属層24Aの表面に付着させた後は、分散剤等の不純物が含まれないことが好まれる場合が多く、その場合には勿論、分散剤は、添加しないか、極力少ない量で添加する。
【0075】
カーボンナノチューブインクにおける、カーボンナノチューブ濃度は、例えば、1質量%以上50質量%以下であることがよく、好ましくは5質量%以上20質量%以下である。
【0076】
カーボンナノチューブインクの粘度は、付着性(又は成膜性)、インクの吐出(滴下)特性の観点から、例えば、2cps以上30cps以下(好ましくは10cps以上12cps以下)であることがよく、表面張力は10dyn/cm以上60dyn/cm以下(好ましくは28dyn/cm以上33dyn/cm以下)であることがよい。
【0077】
カーボンナノチューブインクは、例えば、分散媒(又は分散媒となる架橋剤)に、カーボンナノチューブと共に、必要に応じて、その他添加剤を添加した後、分散器(例えば超音波分散器)により分散させることで得られる。
【0078】
次に、図2(E)に示すように、ソース電極18及びドレイン電極20の間のゲート絶縁層16上であって、ソース電極18及びドレイン電極20と接触するようにチャネル層22を形成する。
チャネル層22を形成する方法としては、例えば、上記半導体を蒸着法、スパッタ法によりパターニングして成膜する方法、上記半導体を含む溶液を各種塗布法(インクジェット法、ディスペンサー法、スピンコート法、マイクロシリンジにより滴下する方法、スクリーン印刷等)等を利用してパターニングして成膜する方法が挙げられるが、これらの方法に限られない。
【0079】
これら工程を経て、本実施形態に係る有機トランジスタ素子10が製造される。
【0080】
以上説明した本実施形態に係る有機トランジスタ素子10では、金属層24Aと金属層24Aの表面の少なくとも一部に付着したカーボンナノチューブ24Bとで構成される有機電子素子用電極を、ソース電極18及びドレイン電極20として適用している。
【0081】
ここで、金属材料で構成された電極と有機半導体で構成された有機半導体層とを接触させ、電気的に接続した場合、接触抵抗が大きく、電極に印加した電圧の大部分が消費されてしまう。これは、金属材料と有機半導体とのエネルギー準位差が大きいためであると考えられる。
【0082】
一方、カーボンナノチューブ24Bは、金属材料と有機半導体との中間のエネルギー準位を持つ材料であることから、カーボンナノチューブ24Bが金属材料と有機半導体との間に介在すると、見かけ上、金属材料と有機半導体との間のエネルギー準位差が小さくなるものと考えられる。
【0083】
また、金属層24Aの表面は微小な凹凸を有していることから、付着させたカーボンナノチューブ24Bが固定され易く、カーボンナノチューブ24Bが付着した領域において有機半導体が接触したとき、金属層24Aと有機半導体との間に介在した状態になると考えられる。
また、金属層24Aの表面に微小な凹凸を有することから、有機半導体との接触面積も増えるものと考えられる。
【0084】
以上から、金属層24Aと金属層24Aの表面の少なくとも一部に付着したカーボンナノチューブ24Bとで構成される有機電子素子用電極は、有機半導体に対する接触抵抗が低減されると考えられる。
【0085】
なお、カーボンナノチューブ単独で構成された有機電子素子用電極(以下、カーボンナノチューブ電極と称する)も知られているものの、カーボンナノチューブは、抵抗率が10−5Ωcm以上10−4Ωcm以下程度と、金属材料の抵抗率10−6程度に比べ、1桁から2桁抵抗率が大きい。このため、カーボンナノチューブ電極では電圧降下が生じることが多く、この点で、上記構成の有機電子素子用電極では電界降下が生じ難く有利である。
加えて、カーボンナノチューブ電極は、通常、カーボンナノチューブを含む溶液を塗布(滴下)することで形成するが、被形成面の表面エネルギーの違いからか、その電極のパターニングが困難である。これに対して、上記構成の有機電子素子用電極では、金属層24A自体のパターニングが容易であり、これにカーボンナノチューブ24Bを付着させることから、この点でも有利である。
【0086】
そして、上記構成の本有機電子素子用電極をソース電極18及びドレイン電極20として適用すると、有機半導体を含んで構成されたチャネル層22との接触抵抗が低減される、これにより、キャリアの注入効率が向上する。
その結果、本実施形態に係る有機トランジスタ素子10では、駆動電圧が低減される。
【0087】
なお、本実施形態に係る有機トランジスタ素子10の構成は、上記に限られず、他の構成の有機トランジスタ素子であってもよい。
他の一例である本実施形態に係るトランジスタ素子102としては、例えば、図3に示すように、基板12上にソース電極18及びドレイン電極20が離間した位置に設けられると共に、ソース電極18及びドレイン電極20を被覆するようにチャネル層22が設けられ、そして、このチャネル層22上に、ゲート絶縁層16、ゲート電極14がこの順に設けられた形態が挙げられる。
【0088】
また、本実施形態に係るトランジスタ素子10において、ソース電極18及びドレイン電極20として適用した、金属層24Aと金属層24Aの表面の少なくとも一部に付着したカーボンナノチューブ24Bとで構成される有機電子素子用電極、例えば、有機電界発光素子、太陽電池、有機トランジスタからなるドライバー、IC、不揮発性メモリ等、本有機電子素子用電極と有機半導体(例えば、電荷輸送性材料等の有機半導体で構成された有機半導体層)とが接触し、電気的に接続される構成を持つ有機電子素子(有機電子デバイス)の電極として適用し得る。
これらの有機電子素子においても、電極の有機半導体に対する接触抵抗が低減され、素子機能が向上されると考えられる。
【実施例】
【0089】
本実施形態に係る有機トランジスタ素子(有機電子素子用電極)の効果を確かめるために実施した実施例について説明する。
【0090】
−実施例1−
以下に示すようにして、図4に示す層構成の有機トランジスタ素子103を作製した。
まず、基板12としてガラス基板を準備し、ガラス基板上に、Agナノメタルインク(アルバックマテリアル株式会社製、「L−Ag1TeH」、粒径(最大径):3nm7nm、溶媒:テトラデカン)を用いて、インクジェット法により、幅 80um、厚み200nmのAg粒子層を形成した。
そして、オーブンにより、ガラス基板上に形成した2つのAg粒子層を加熱し、層全体のAg粒子を融着させて、Ag粒子の融着層を形成した。
これをゲート電極14とした。
【0091】
次に、基板12上に形成したゲート電極14を覆うようにして、京セラケミカル「CT4000」をスピンコートにより塗布して、大気中150℃で60分間乾燥した後、300℃で60分間加熱し、ゲート絶縁層16を形成した。
【0092】
次に、ゲート絶縁層16上に、Agナノメタルインク(アルバックマテリアル株式会社製、「L−Ag1TeH」、粒径(最大径):3nm〜7nm、溶媒:テトラデカン)を用いて、インクジェット法により、厚み200umのAg粒子層を離間させて2つ形成した。
そして、オーブンにより、シリコン基板のゲート絶縁層(シリコン熱酸化膜)上に形成した2つのAg粒子層を加熱し、層全体のAg粒子を融着させて、2つのAg粒子の融着層(金属層24A)を形成した。
【0093】
次に、2つのAg粒子の融着層(金属層24A)のうち、一方の層上に、それぞれカーボンナノチューブインクを滴下し、ホットプレート(100℃、10分)で乾燥させ、2つのAg粒子の融着層の表面にカーボンナノチューブ24Bを付着させた。
なお、カーボンナノチューブインクは以下の方法で調製した。
まず、グリセリン(関東化学製)と1−ブタノール(アルドリッチ社製)を、質量比で1:4で混合、攪拌した。その後、この溶液に多層カーボンナノチューブ(アルドリッチ製)を10mg/mlの割合で混合した。そして、その混合溶液を超音波ホモジナイザー(VibraCell、Sonics&Materials Inc製)で5分間、攪拌して、カーボンナノチューブインクを調製した。
【0094】
これら操作により、Ag粒子の融着層(金属層24A)の表面にカーボンナノチューブ24Bが付着した電極(以下、「CNT付きAg電極」と称する)と、Ag粒子の融着層(カーボンナノチューブが付着していないAg粒子の融着層:金属層24A)からなる電極(以下、「Ag電極」と称する)と、の2つの電極を形成した。
なお、これら2つの電極は、ソース電極18・ドレイン電極20として機能する電極であり、ソース電極18−ドレイン電極20間のチャネル長が20μm、チャネル幅が500μmとなるように形成した。
【0095】
次に、有機半導体としてTIPS−ペンタセン(6,13−bis(triisopropyl−silylethynyl) pentacene)をトルエンに3質量%溶解させた溶液を、CNT付きAg電極とAg電極との間(ソース電極・ドレイン電極間)に0.1ml滴下し、その後、60℃で30分間、真空乾燥して、CNT付きAg電極とAg電極との間隙と共に、当該電極の対向する端部を覆うようにして、チャネル層22を形成した。
【0096】
以上の工程を経て、試験例の有機トランジスタ素子103を作製した(図4参照)。
【0097】
(評価)
−有機トランジスタ素子のFET特性−
試験例1の有機トランジスタ素子のFET特性(Field Effect Transistor特性)を、半導体パラメータアナライザ(アジレントテクノロジー製4156B)を用いて、大気中で測定した。
【0098】
具体的には、CTN付きAg電極をソース電極とし、Ag電極をドレイン電極とし、CNT付きAg電極をグランド(接地)した状態で、Ag電極にドレイン電圧Vdrain、ゲート電極にゲート電圧Vgate(−40Vから10V刻みで20Vまで)を印加して、目的とするドレイン電圧Vdrainにおいて、ドレイン電極−ソース電極間に流れる電流(Ids)を調べた(出力特性(その1):図5)。
一方、CTN付きAg電極をドレイン電極とし、Ag電極をソース電極とし、Ag電極をグランド(接地)した状態で、CNT付きAg電極にドレイン電圧Vdrain、ゲート電極にゲート電圧Vgate(−40Vから10V刻みで20Vまで)を印加して、目的とするドレイン電圧Vdrainにおいて、ドレイン電極−ソース電極間に流れる電流(Ids)を調べた(出力特性(その2):図6)。
【0099】
本出力特性の結果から、例えば、CNT付きAg電極をグランド(接地)した状態で、Ag電極にドレイン電圧Vdrain(−40V)、ゲート電極にゲート電圧Vgate(−40V)を印加したとき、ドレイン電極−ソース電極間に流れる電流(Ids)が約0.03μm流れたのに対して(出力特性(その1):図5)、CNT付きAg電極をグランド(接地)した状態で、Ag電極にドレイン電圧Vdrain(−40V)、ゲート電極にゲート電圧Vgate(−40V)を印加したとき、ドレイン電極−ソース電極間に流れる電流(Ids)が約0.11μA流れたことがわかり、当該電流(Ids)が改善されていることがわかる(出力特性(その2):図6)。
【0100】
これにより、CNT付きAg電極は、Ag電極に比べ、有機半導体に対する接触抵抗が低減されていることがわかり、また、電圧降下も生じず、有機トランジスタ素子の駆動電圧低減に寄与することもわかる。
【符号の説明】
【0101】
10 有機トランジスタ素子
12 基板
14 ゲート電極
16 ゲート絶縁層
18 ソース電極
20 ドレイン電極
22 チャネル層
24A 金属層
24B カーボンナノチューブ
102有機トランジスタ素子
103有機トランジスタ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と、
前記金属層の表面の少なくとも一部に付着したカーボンナノチューブと、
を有する有機電子素子用電極。
【請求項2】
金属層と前記金属層の表面の少なくとも一部に付着したカーボンナノチューブとを有するソース電極と、
前記ソース電極と間隔を持って配置されるドレイン電極であって、金属層と前記金属層の表面の少なくとも一部に付着したカーボンナノチューブとを有するドレイン電極と、
前記ソース電極及びドレイン電極の前記カーボンナノチューブとそれぞれ接触するようにして、前記ソース電極及びドレイン電極を接続して配置されるチャネル層であって、有機半導体を含んで構成されたチャネル層と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極間に流れる電流を制御するためのゲート電極と、
前記チャネル層と前記ゲート電極とを絶縁するためのゲート絶縁層と、
を備える有機トランジスタ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−182364(P2012−182364A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45105(P2011−45105)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】