検査制御装置、検査制御方法、検査システム、制御プログラム、および、記録媒体
【課題】生産環境の変動に応じて動的に検査ロジックを設定することにより検査精度を向上させる検査制御装置を実現する。
【解決手段】良不良の判別結果を示す最終検査結果を生成するのに検査モジュール20が用いるメイン検査ロジックL1を、複数の検査ロジックの中から選択する検査ロジック選択部34と、メイン検査ロジックL1の最終検査結果と、メイン検査ロジックL1と異なる検査ロジックを用いてワークの良不良を判別したときの評価用検査結果とに基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する検査ロジック評価部33とを備え、検査ロジック選択部34は、検査ロジック評価部33の評価結果に基づいて、メイン検査ロジックL1を選択する。
【解決手段】良不良の判別結果を示す最終検査結果を生成するのに検査モジュール20が用いるメイン検査ロジックL1を、複数の検査ロジックの中から選択する検査ロジック選択部34と、メイン検査ロジックL1の最終検査結果と、メイン検査ロジックL1と異なる検査ロジックを用いてワークの良不良を判別したときの評価用検査結果とに基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する検査ロジック評価部33とを備え、検査ロジック選択部34は、検査ロジック評価部33の評価結果に基づいて、メイン検査ロジックL1を選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産ラインにおける生産対象物(ワーク)の良・不良を判別する検査装置に関するものであり、特に、検査に必要な各種設定を自動で行う検査制御装置、検査制御方法、検査システム、制御プログラム、および、記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、生産ラインにおいて、ワークの良・不良の判別を検査装置により自動化することが可能となっている。このような検査装置では、一般に、(1)ワークの状態に関する情報を取得し、(2)ワークの状態を数値化した特徴量をどのように抽出するかを規定したルールに基づいて特徴量を抽出し、(3)あらかじめ設定された判別関数(閾値)に基づき上記特徴量を判別することによって、ワークの良・不良を判別する。
【0003】
具体的には、例えば、ワークを撮影した画像を用いてワークの良・不良を判別する画像処理機能を備えた検査装置では、画像処理アルゴリズム(ルール)を利用して、画像をあるパラメータ空間に写像し(特徴量の抽出)、良品・不良品を分離する閾値に基づいて、ワークの良・不良を判別する。
【0004】
したがって、検査装置がワークを良品と不良品とに正しく分離するためには、いかなるルールを採用するか、あるいは、上記閾値をいかに定めるかということ正しく選択することが欠くことのできない重要事項である。上述のように検査装置に設定される、上記ルールや上記閾値などを以下では検査ロジックと称する。すなわち、検査ロジックとは、検査装置の良・不良の判別方法を規定する、検査装置に対する制御情報のことである。
【0005】
つまり、検査ロジックの設定を誤ってしまうと、良品を不良品と判定したり、不良品を良品と判定したりする検査不良が生じてしまう。
【0006】
検査ロジックは、サンプルデータ(ワークの状態に関する情報)を収集し、統計的なデータに基づいて設定するのが一般的である。収集するデータ数(サンプル数)が多ければ多いほど、より精度の高い検査ロジックあるいは閾値を得られるということは言うまでもない。
【0007】
特許文献1には、大量のデータから判別関数(閾値)を設定する外観検査方法及び装置が開示されている。具体的には、取り込んだ検査対象の画像から、該検査対象の状態を示すコードデータを生成して、各カテゴリーに選別されたサンプルの検査対象のコードデータに基づいて判別関数を求める。
【0008】
特許文献2には、複数の判定値に基づいて良否判定を行って、目視検査と近い判定結果を得られた判定値(閾値)を選択し設定する物品の検査方法および装置が開示されている。
【0009】
一般的に検査装置の設定を行う生産初期には、サンプル数が少ないため、良・不良の判定を行うための閾値(判別関数/判定値)を初めから正しく設定することは不可能に近い。そのため、生産を重ねてサンプル数を増やし、適宜、現在設定されている判別関数の適否を判断してより適切な判別関数を再設定する必要がある。
【0010】
しかし、特許文献1の装置では、誤判定(検査不良)が発生しないと再設定の要否が判断できない。結局、判別関数の適否は、人、特に経験を積んだ熟練者が判断するしかない。
【0011】
また、特許文献2に開示されているように、複数の判定値の中から最適なものを選ぶとはいえ、生産現場の環境の変化(生産設備の消耗や入れ替え、作業者の入れ替わりや熟練度の向上、ワークの型の変更など)に伴って、判定値の再設定が必要となるのが現状である。
【0012】
しかし、特許文献2の装置では、初期設定時に最適な判定値を設定することは開示されているものの、ライン稼動後にその設定を見直すといったことは考慮されていない。
【0013】
そこで、ライン稼動後も検査装置の検査精度を維持するために、特許文献3には、RGBストライプ(BMストライプ)のパターン幅やピッチを検査する自動診断機能付きストライプパターン検査装置が開示されている。
【0014】
ストライプパターン検査装置は、標準ストライプパターンを定期的に検査し、検査精度を自動診断する。さらに、実際に検査したストライプパターンの検査値を傾向管理して得られた情報を、BMストライプパターンを形成する露光台へフィードバックして、露光光源の照度を自動制御する。これにより、作業者による定期校正、補正、調整作業を必要とせずとも、検査環境に検査精度を維持することができ、製造品質の維持管理が容易になる。
【特許文献1】特開平8−254501(1996年10月1日公開)
【特許文献2】特開2001−242086(2001年9月7日公開)
【特許文献3】特開平10−40815(1998年2月13日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記従来の構成では、以下の問題を生じる。
【0016】
特許文献3の装置では、検査環境(検査装置のカメラレンズや照明の状態など)の変動を矯正できるものの、生産環境、例えば、ワーク(検査対象物)の変動には対応できないという問題を生じる。
【0017】
つまり、標準ストライプパターンは常に「標準」であることが前提になっている。したがって、検査対象物が変動すると、その新しい検査対象物にとって「標準」である標準ストライプパターンに交換しなければ検査精度を維持することができない。結果として、検査ロジック(この場合、標準ストライプパターン)の再設定の要否や適切な検査ロジックの選定は人が行う必要がある。
【0018】
上記生産環境の変動としては、例えば、生産設備を調整したことで部品取り付け位置のずれ幅の平均が変わったり、部品のロットやベンダが変わったことで画像の特徴(色、写り方)が変化したりすることなどが想定される。
【0019】
なお、上記の問題点は、ワークの画像から、画像処理アルゴリズムを用いて良・不良を判別する、画像処理機能を備えた検査装置に限定して生じるものではなく、上述の検査ロジックに基づいて品質検査を行う検査装置であれば、同様に生じるものである。
【0020】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、生産環境の変動に応じて動的に検査ロジックを設定することにより検査精度を向上させる検査制御装置、検査制御方法、検査システム、制御プログラム、および、記録媒体を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る検査制御装置は、上記課題を解決するために、良不良の判別方法を規定する検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールを制御する検査制御装置において、上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを、複数の検査ロジックの中から選択する検査ロジック選択手段と、上記検査モジュールが上記メイン検査ロジックを用いて生成した、対象物の良不良の判別結果を示す最終検査結果と、該メイン検査ロジックと異なる検査ロジックを用いて対象物の良不良を判別した場合の判別結果を示す評価用検査結果とに基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する評価手段と、上記検査ロジック選択手段が選択した検査ロジックをメイン検査ロジックとして切り替える検査ロジック設定手段とを備え、上記検査ロジック選択手段は、上記評価手段が評価した評価結果に基づいて、上記メイン検査ロジックを選択することを特徴としている。
【0022】
本発明に係る検査制御方法は、上記課題を解決するために、良不良の判別方法を規定する検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールを制御する検査制御装置における検査制御方法であって、上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを、複数の検査ロジックの中から選択する選択ステップと、上記検査モジュールが上記メイン検査ロジックを用いて生成した、対象物の良不良の判別結果を示す最終検査結果と、該メイン検査ロジックと異なる検査ロジックを用いて対象物の良不良を判別した場合の判別結果を示す評価用検査結果とに基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する評価ステップと、上記検査ロジック選択手段が選択した検査ロジックをメイン検査ロジックとして切り替える切替ステップとを含み、上記選択ステップでは、上記評価ステップによる評価結果に基づいて、上記メイン検査ロジックを選択することを特徴としている。
【0023】
上記構成および方法によれば、検査モジュールは、良不良の判別方法を規定する制御情報としての検査ロジックのうち、検査ロジック設定手段がメイン検査ロジックとして設定した検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別し、その判別結果を最終検査結果として出力する。最終検査結果とは、実際の生産ラインにおいて、不良の対象物を特定するのに採用される最終結果である。つまり、メイン検査ロジックに基づく判別方法によって、対象物の実際の検査が実行される。
【0024】
一方、検査モジュールは、上記メイン検査ロジック以外の検査ロジックを用いて対象物の良不良を判別する。こうして、検査モジュールにより、上記検査ロジック(メイン検査ロジックを含む)ごとに判別結果が得られる。
【0025】
ここで、評価手段は、検査ロジックごとの上記判別結果を評価する。このように、上記判別結果は、評価手段が検査ロジックごとにその検査精度を評価するときに参照するため、評価用検査結果であるといえる。評価方法は、具体的には、上記検査モジュールより検査ロジックごとに得られる評価用検査結果を、上記メイン検査ロジックによる最終検査結果に基づき評価して、検査精度を表す評価値を上記検査ロジックごとに算出する。
【0026】
次に、検査ロジック選択手段は、各検査ロジックの評価値に基づいて、上記検査モジュールが最終検査結果を出力するのに用いるメイン検査ロジックを選択する。選択されたメイン検査ロジックは、上記検査ロジック設定手段によって上記検査モジュールに設定される。上述したとおり、上記検査モジュールは、検査ロジック設定手段がメイン検査ロジックとして設定した検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別し、最終検査結果を出力する。
【0027】
これにより、実際の生産ラインに流れている対象物の不良品を検出するのに採用する、検査モジュールのメイン検査ロジックは、常に、その評価値に基づいて検査ロジック選択手段によって最適なものが選択される。選択されたメイン検査ロジックは、上記検査ロジック設定手段によって、動的に設定される。
【0028】
したがって、例えば、生産環境の変動に伴って、すでに設定されているメイン検査ロジックの評価値よりも、他の検査ロジックの評価値の方が、検査精度が高いことを表していることが判明すれば、検査ロジック選択手段は、より検査精度が高いと評価された検査ロジックを、検査モジュールのメイン検査ロジックとして選択することができる。つまり、より高い検査精度を有する検査ロジックを、メイン検査ロジックとして検査モジュールに対して自動で動的に再設定し、検査精度を維持、あるいは、高めることができる。
【0029】
生産ラインが稼動すれば、生産環境の変動は避けられない。例えば、生産設備や検査設備の消耗・故障・入れ替えや、物理的環境の変化(温度や湿度など)、あるいは、生産作業に携わる作業者の熟練度の変動、作業者の入れ替えなどが考えられる。生産環境が変動すれば、既に設定された検査ロジックが、常に最適な(高い検査精度を維持する)検査ロジックであるとは限らなくなる。
【0030】
しかし、本発明の検査装置によれば、複数の検査ロジックのうち、評価値に基づいて常に最適なものをメイン検査ロジックとして特定することができるので、生産環境の変動に応じて動的に検査ロジックを設定することにより検査精度を向上させることが可能となる。
【0031】
本発明に係る検査制御装置では、上記検査ロジックは、対象物の状態を示す特徴量の計測方法と、上記特徴量を分離して良不良を判別するための閾値とを規定し、上記評価手段は、上記評価用検査結果に含まれる対象物ごとに計測された特徴量と、上記最終検査結果が示す対象物の良品数および不良品数とに基づく統計データを用いて、各検査ロジックの検査精度を表す評価値を算出することにより評価することが好ましい。
【0032】
上記構成によれば、上記評価手段は、上記評価用検査結果に含まれる、対象物ごとに計測された特徴量と、上記最終検査結果が示す対象物の良品数および不良品数とに基づく統計データを用いて、各検査ロジックの検査精度を表す評価値を算出する。ここで、上記特徴量とは、対象物の状態を数値化して示すものであり、閾値に基づいて分離することができ、これによって、対象物の良不良を判別できるようにする情報のことである。
【0033】
すなわち、上述した統計データには、メイン検査ロジックが良品(あるいは不良品)と判別した対象物に対する、他の検査ロジックが計測した特徴量に基づく分布が含まれる。このような統計データから、メイン検査ロジックが良品(あるいは不良品)と判別した対象物に対し、他の検査ロジックは、いかなる特徴量に基づいてどう判別を行ったのかという情報が得られる。つまり、メイン検査ロジックの検査結果を元にして、他の各検査ロジックの検査結果を分析し、評価することができる。
【0034】
さらに、上記評価手段は、上記対象物の良品の集合から得られる良品特徴量と、不良品の集合から得られる不良品特徴量との差分に基づき評価値を算出することにより検査ロジックを評価してもよい。
【0035】
上記構成によれば、各検査ロジックの検査精度を、当該検査ロジックにて計測される、良品(メイン検査ロジックが判別したもの)特徴量と不良品特徴量との差分によって算出する。
【0036】
良品特徴量と不良品特徴量との差分が大きいことは、当該検査ロジックにおいて、メイン検査ロジックと同じ良品と不良品との判別が、より安全に確実に実行されていることを意味する。したがって、良品特徴量と不良品特徴量との差分が大きいほど、検査精度が高いと評価することができる。
【0037】
なお、対象物の良品(不良品)の集合から得られる良品(不良品)特徴量を求める方法は特に限定されない。例えば、良品(不良品)の集合内の特徴量の平均値、中央値、最頻値、上限値、下限値などを良品(不良品)特徴量として用いればよい。
【0038】
さらに、上記評価手段は、上記対象物の特徴量が閾値より小さいと良品であると判別される場合に、上記不良品の集合の特徴量の下限値である不良品下限値と上記良品の集合の特徴量の上限値である良品上限値との差分に基づき評価値を算出し、上記対象物の特徴量が閾値より大きいと良品であると判別される場合に、上記良品の集合の特徴量の下限値である良品下限値と、上記不良品の集合の特徴量の上限値である不良品上限値との差分に基づき評価値を算出することにより検査ロジックを評価してもよい。
【0039】
これにより、各検査ロジックの検査精度をより正確に評価することができる。
【0040】
つまり、1つの閾値によって、全対象物の特徴量をメイン検査ロジックの最終検査結果と同じく良品と不良品とに切り分けたいとき、検査ロジック特徴量に基づく良品の集合と不良品の集合との距離は、大きければ大きいほどよく、少なくとも重ならないようにしなければならない。
【0041】
より具体的には、上記対象物の特徴量が閾値より小さいと良品であると判別される場合、不良品の集合で計測された特徴量のうち、最小の特徴量(不良下限値)から、良品の集合で計測された特徴量のうち、最大の特徴量(良品上限値)を差し引いた値(差分)は、大きければ大きいほどより安全に最終検査結果と同じく良不良を判別できていることとなる。一方、上記差分が0以下になると、良品の集合と、不良品の集合とを正しく切り分けられない(良品を不良品と判別したり、不良品を良品と判別したりする検査不良が発生する)可能性があると判断される。
【0042】
上記対象物の特徴量が閾値より大きいと良品であると判別される場合は、上述の場合とは逆に、良品下限値から不良品上限値を差し引いた値(差分)が大きいほど評価が高く、差分が0以下であれば、検査不良が発生するほど検査精度が低いと判断される。
【0043】
このように、上記差分が0以下になるような検査ロジックを高く評価しないようにすることで、検査不良を発生させるおそれのある低い検査精度の検査ロジックが選択されないようにすることができ、結果として、検査モジュールの検査精度を向上させることが可能となる。
【0044】
さらに、上記評価手段は、上記差分を上記良品特徴量の分散で除して得た商に基づき評価値を算出することにより検査ロジックを評価することが好ましい。
【0045】
これにより、異なる検査ロジック間で計測される特徴量の単位が互いに異なっている場合でも、検査精度の比較、評価を行うことが可能となる。例えば、面積を特徴量として判別を行う検査ロジックと、個数を特徴量として判別を行う検査ロジックとを、共通の尺度を用いて適正に評価することが可能となる。
【0046】
つまり、上記差分とは、良品の集合と不良品の集合との間の距離を示しており、距離の値が大きいほど、良品不良品を安全に切り分けられているとして、評価が高くなる。良品特徴量の分散とは、良品の集合のばらつきを示しており、ばらつきの値が大きいほど、特徴量の計測手順に信頼性がなく評価が低くなる。よって、距離を良品特徴量の分散で除して求めた商が大きければ大きいほど検査精度が高いとして、共通の尺度で各検査ロジックを比較することが可能となる。
【0047】
あるいは、上記評価手段は、上記対象物の良品の集合から得られる良品特徴量と上記閾値との差分、および、不良品の集合から得られる不良品特徴量と上記閾値との差分の少なくともいずれか一方に基づき評価値を算出することにより検査ロジックを評価してもよい。
【0048】
上記構成によれば、良品の集合と、不良品の集合との距離ではなく、両者の間にあると考えられる閾値との距離に基づいて評価値を算出する。これにより、閾値が適正に設定されている検査ロジックを評価することが可能となる。
【0049】
さらに、上記評価手段は、(1)上記良品特徴量と、不良品特徴量との差分を差分A、(2)上記不良品特徴量と上記閾値との差分を差分B、(3)上記良品特徴量と上記閾値との差分を差分Cとして、「評価式:|差分A−差分B/差分C|」に基づき評価値を算出することにより検査ロジックを評価してもよい。
【0050】
上記構成によれば、評価手段は、良品特徴量と閾値との距離(差分C)よりも、不良品特徴量と閾値との距離(差分B)に対して重みをかけて、差分Bの方が小さい場合(すなわち、不良品の集合の方が閾値に近い場合)には、特に評価が下がるような評価値を算出する。
【0051】
これにより、不良品を良品と判別してしまうような検査ロジックの評価は低く算出され、このような検査ロジックがメイン検査ロジックとして誤って選択されるという不都合を解消することができる。
【0052】
これは、良品を不良品と判別してしまう検査不良よりも、不良品を良品と判別してしまう検査不良(見逃し)の方が、深刻な事故となるという考えに基づいている。見逃しをしてしまうような検査ロジックがメイン検査ロジックとして誤って選択されるおそれがなくなる。結果として、検査モジュールの検査精度を向上させることが可能となる。
【0053】
なお、上述の評価式の場合、評価値の数値は小さいほど評価が高いことを意味する。
【0054】
さらに、上記評価手段は、上記最終検査結果においてメイン検査ロジックにて不良品と判別された対象物のうち、上記評価用検査結果において検査ロジックにて良品と判別された対象物数に基づいて、検査ロジックを評価してもよい。
【0055】
上記構成によれば、上記評価手段は、上述の見逃しの検査不良の発生件数に基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する。例えば、見逃し件数が0件の検査ロジックを高く評価したり、見逃し件数が多いものほど低く評価したりするなどして評価値を算出すればよい。
【0056】
これにより、見逃しをしてしまうような検査ロジックがメイン検査ロジックとして誤って選択されるおそれがなくなる。結果として、検査モジュールの検査精度を向上させることが可能となる。
【0057】
上記検査ロジック設定手段は、上記検査ロジック選択手段が上記評価手段が評価した評価結果に基づき新たに選択した検査ロジックと、上記検査モジュールが使用中のメイン検査ロジックとが異なる場合に、メイン検査ロジックを切り替えることが好ましい。
【0058】
これにより、検査モジュールに現時点で設定されている元のメイン検査ロジックよりも、適正なメイン検査ロジックが新たに選択されたときに、その新しいメイン検査ロジックを用いて検査モジュールが検査を実行できるようにメイン検査ロジックを切り替えることができる。
【0059】
さらに、上記検査ロジック設定手段は、上記評価手段が、上記検査モジュールが使用中のメイン検査ロジック以外の検査ロジックを当該メイン検査ロジックより高く評価した時にメイン検査ロジックを切り替えることをことが好ましい。
【0060】
これにより、常に、最も評価が高い検査ロジックをメイン検査ロジックに設定して検査を実行するよう検査モジュールを制御することができる。
【0061】
あるいは、上記検査ロジック設定手段は、上記評価結果に含まれる、上記検査モジュールが使用中のメイン検査ロジックの検査精度を表す評価値を監視し、該評価値の微分値に基づいて、メイン検査ロジック切り替えのタイミングを算出し、算出したタイミングにてメイン検査ロジックを切り替えてもよい。
【0062】
上記構成によれば、上記評価手段が算出する上記検査モジュールが使用中のメイン検査ロジックの評価値を監視して、該評価値の推移を記録し、求めた微分値に基づいてメイン検査ロジックの適正な切り替えのタイミングを算出する。
【0063】
これにより、メイン検査ロジックの評価値の低下の勢いを検知して、当該メイン検査ロジックが最適でなくなる時点をあらかじめ予測することができる。したがって、例えば、評評価の逆転が起こる前に、次点の(あるいは、最も評価値の上昇率が大きい)検査ロジックに前もって切り替えておくことなどが可能となる。
【0064】
結果として、検査不良を未然に防止し、検査モジュールの検査精度を向上させることが可能となる。
【0065】
本発明の検査制御装置は、上記構成に加えて、上記検査結果を表示するよう表示部を制御する表示制御手段と、表示された検査結果と同じ検査対象の対象物に対する、ユーザによる検査のユーザ検査結果の入力を受け付ける結果入力制御手段と、上記結果入力制御手段が受け付けたユーザ検査結果に基づき、上記表示制御手段が表示部に表示した検査結果を修正する検査結果修正手段とを備えていることが好ましい。
【0066】
上記構成によれば、表示制御手段は表示部を制御して、検査モジュールが検査ロジックを用いて行った対象物の良不良の判別結果を示す検査結果を表示する。これにより、ユーザは、検査モジュールの検査結果を目視確認することができる。
【0067】
そして、上記結果入力制御手段は、上記対象物に対する、ユーザが検査を行って得られた結果としてのユーザ検査結果の入力を受け付ける。
【0068】
最後に、上記検査結果修正手段は、上記表示制御手段が表示部に表示した検査結果が、上記結果入力制御手段が受け付けたユーザ検査結果と異なる場合、ユーザ検査結果に基づいて上記検査結果を修正する。
【0069】
これにより、ユーザが検査を行った結果と異なる検査結果が検査モジュールより出力された場合でも、ユーザが、自身が行った検査結果を反映して、検査結果を修正することが可能となる。そして、修正された検査結果に基づいて、各検査ロジックの評価が行われるので、より、正確に適正なメイン検査ロジックの選択・設定を実行することが可能となる。
【0070】
本発明の検査制御装置は、上記構成に加えて、各検査ロジックの統計データを用いて、検査ロジックの閾値を算出し、検査ロジックの閾値を決定する閾値調整手段を備えていることが好ましい。
【0071】
これにより、検査ロジックが規定する閾値を、当該検査ロジックに基づく検査結果に応じて、常に最適に保つことが可能となる。したがって、生産環境の変動があっても、当該検査ロジックの検査精度を向上させることができる。
【0072】
本発明に係る検査システムは、上記課題を解決するために、良不良の判別方法を規定する検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールと、良不良の判別結果を示す最終検査結果を生成するのに上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを選択する上述の検査制御装置とを含むことを特徴としている。
【0073】
これにより、検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールと、その制御を行う検査制御装置とを含んだ、生産環境の変動に応じて動的に検査ロジックを設定することにより検査精度を向上させる検査システムを構築することができる。
【0074】
なお、上記検査制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記検査制御装置をコンピュータにて実現させる検査制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0075】
本発明に係る検査制御装置は、以上のように、上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを、複数の検査ロジックの中から選択する検査ロジック選択手段と、上記検査モジュールが上記メイン検査ロジックを用いて生成した、対象物の良不良の判別結果を示す最終検査結果と、該メイン検査ロジックと異なる検査ロジックを用いて対象物の良不良を判別した場合の判別結果を示す評価用検査結果とに基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する評価手段と、上記検査ロジック選択手段が選択した検査ロジックをメイン検査ロジックとして切り替える検査ロジック設定手段とを備え、上記検査ロジック選択手段は、上記評価手段が評価した評価結果に基づいて、上記メイン検査ロジックを選択する。
【0076】
本発明に係る検査システムは、以上のように、良不良の判別方法を規定する検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールと、良不良の判別結果を示す最終検査結果を生成するのに上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを選択する、上述の検査制御装置とを含んでいる。
【0077】
本発明に係る検査制御方法は、以上のように、上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを、複数の検査ロジックの中から選択する選択ステップと、上記検査モジュールが上記メイン検査ロジックを用いて生成した、対象物の良不良の判別結果を示す最終検査結果と、該メイン検査ロジックと異なる検査ロジックを用いて対象物の良不良を判別した場合の判別結果を示す評価用検査結果とに基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する評価ステップと、上記検査ロジック選択手段が選択した検査ロジックをメイン検査ロジックとして切り替える切替ステップとを含み、上記選択ステップでは、上記評価ステップによる評価結果に基づいて、上記メイン検査ロジックを選択する。
【0078】
したがって、生産環境の変動に応じて動的に検査ロジックを設定することにより検査精度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
<実施形態1>
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すると以下の通りである。本実施形態では、一例として、ワーク(対象物)を撮影して取得したワーク画像を、画像処理アルゴリズムを用いて特徴量を抽出し、当該抽出した特徴量を閾値に基づいて判別することにより各ワークの良・不良を判定する検査システムに適用される検査制御装置について説明する。
【0080】
〔検査システムの概要〕
図2は、本発明の実施形態にかかる検査制御装置を適用した検査システムの概略構成を示すブロック図である。図2に示すとおり、検査システム100は、制御部1、通信部2、操作部3、表示部4、および、記録部40を備えた構成となっている。そして、生産ラインを流れるワークWを撮影してワーク画像を生成する撮像部Cと検査システム100とは、インターネットやLAN(local area network)などで実現される、無線もしくは有線の通信網を介して接続されている。
【0081】
通信部2は、撮像部Cから上記ワーク画像を受信するものである。通信部2が受信したワーク画像は、制御部1の入出力制御部10を介して検査モジュール20に供給される。
【0082】
操作部3は、ユーザが検査システム100を動作させるための指示信号を入力するものであり、例えば、検査システム100を遠隔操作するリモコンや、検査システム100自体に設けられた操作ボタン、あるいは、検査システム100に接続された、マウスやキーボードなどで構成されている。操作部3を用いてユーザにより入力された指示信号は、入出力制御部10を介して、制御部1の各部に送られる。これにより、ユーザは検査システム100を操作することが可能となる。
【0083】
表示部4は、記録部40に記録される、ワーク画像や検査結果などの各種データを出力するものであり、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、またはCRT(cathode-ray tube)ディスプレイなどの表示装置で構成される。これにより、ユーザは、必要に応じて撮像部Cが生成したワーク画像からワークの良不良を目視検査したり、あるいは、生産ラインに流れる各ワークの良不良の検査結果を確認したりすることが可能となる。
【0084】
なお、撮像部Cを検査システム100が内蔵していてもよい。この場合、撮像部Cと検査システム100とを接続する通信網を構築する必要がなくなり、また、通信部2が不要になる。
【0085】
制御部1は、検査システム100を統括制御するものであり、内部に、入出力制御部10、検査モジュール20、および、検査制御部30を有している。制御部1は、記録部40に記録されている各種プログラムを読み出して、本発明の検査システムの各部を制御し、検査または検査制御などの処理を行う。
【0086】
制御部1の検査モジュール20は、撮像部Cが生成するワーク画像を、設定された検査ロジックに基づき解析することにより、ワークWの良不良を判別するものである。検査ロジックとは、上述したとおり、検査モジュール20が実行する良不良の判別方法を規定する、検査モジュール20に対する制御情報のことである。本実施形態では、検査ロジックは、ワーク画像からワークWの特徴量を抽出するための方法を規定した画像処理アルゴリズムと、上記特徴量を良品と不良品とに分離するための閾値との組合せであるとする。画像アルゴリズムについての詳細は後述する。
【0087】
制御部1の検査制御部30は、検査ロジックを管理し、検査モジュール20が用いる検査ロジックの設定を行うものであり、検査モジュール20を制御するための検査制御装置200を構成している。検査制御装置200は、操作部3、表示部4、および、制御部1の入出力制御部10を含んでいてもよい。
【0088】
記録部40は、制御部1が実行する制御プログラム、OSプログラム、および、制御部1が検査または検査制御の処理を実行するときに読み出す各種データを記録するものであり、ハードディスクなどの不揮発性の記憶装置によって構成されるものである。記録部40に記録される上記各種データとしては、例えば、撮像部Cが生成したワーク画像や、検査モジュール20が出力する検査結果などが挙げられる。
【0089】
次に、生産環境の変動に応じて動的に検査ロジックを設定することにより検査精度を向上させることが可能な検査システム100における制御部1および記録部40の詳細について説明する。
【0090】
〔検査システムの詳細〕
図1は、本発明の実施形態にかかる検査制御装置を適用した検査システムの要部構成を示すブロック図である。図1に示すとおり、制御部1の入出力制御部10は、内部に、画像入力制御部11、操作受付部(結果入力制御手段)12、および、表示制御部(表示制御手段)13を有する。検査モジュール20は、内部に、少なくとも1つのメイン検査部21、および、少なくとも1つのサブ検査部22を有する。検査制御部30は、内部に、検査ロジック管理部31、統計処理部32、検査ロジック評価部(評価手段)33、および、検査ロジック選択部(検査ロジック選択手段/検査ロジック設定手段)34を有する。記録部40は、ワーク情報記録部41、検査結果記録部42、統計データ記録部43、評価値記録部44、および、検査ロジック記録部45を含んでいる。
【0091】
画像入力制御部11は、撮像部Cが生成したワーク画像を、通信部2を介して受け付けるものである。画像入力制御部11が受け付けたワーク画像は、記録部40のワーク情報記録部41に記録される。
【0092】
操作受付部12は、操作部3を用いてユーザにより入力された指示信号を受け付けるものである。操作受付部12が受け付けた指示信号は、制御部1に供給され、当該指示信号が指示する処理を実行する制御部1の各部に伝達される。
【0093】
表示制御部13は、記録部40に記録される各種データを表示するよう表示部4を制御するものである。上記各種データとは、例えば、ワーク情報記録部41に記録されるワーク画像、検査結果記録部42に記録される、検査モジュール20が出力した検査結果、統計データ記録部43に記録される統計データ、評価値記録部44に記録される検査ロジックの評価値、および、検査ロジック記録部45に記録される検査ロジックなどが挙げられる。各記録部に記録される各種データの詳細については後述する。
【0094】
ユーザは、操作部3を操作することによって、表示制御部13に対して、確認したいデータを表示するよう指示を入力することができ、所望のデータを閲覧することが可能となる。また、表示制御部13は、表示されたデータを操作によって変更したり、修正したりできるようにGUI(graphical user interface)画面を表示部4に表示する制御を行ってもよい。
【0095】
検査モジュール20は、検査ロジック記録部45に記録されている検査ロジックを用いて、ワークの良不良を判別するものである。より具体的には、(1)ワークを撮影したワーク画像を取得し、(2)検査ロジックに含まれる画像アルゴリズムに基づいて、ワークの特徴量を抽出し、(3)検査ロジックに含まれる閾値に基づき上記特徴量を分離して、当該ワークの良・不良を判別する。検査モジュール20は、メイン検査部21と、サブ検査部22とから構成されている。
【0096】
メイン検査部21は、良不良の判別結果を示す最終の検査結果を出力するためのメイン検査ロジックL1を用いてワークの検査を行うものである。メイン検査部21が出力した検査結果が、当該生産ラインの各ワークを良品・不良品を定める最終検査結果として採用される。
【0097】
よって、メイン検査部21が出力した検査結果によって不良品として特定されたワークは、生産ラインから除外されたり、アラームを出力してユーザに不良品の存在を知らせたりして、不良品と判別されたワークが、良品の最終品として誤って排出されることがないよう適切な措置が講じられる。
【0098】
サブ検査部22は、検査ロジック記録部45に記録されている複数の検査ロジックのうち、上記メイン検査ロジック以外の検査ロジックL2(L3・・・)を用いて、ワークの検査を行うものである。サブ検査部22が出力した検査結果は、検査制御部30が検査ロジックの検査精度の評価を行うのに用いられる。
【0099】
メイン検査部21およびサブ検査部22が出力する検査結果は、検査結果記録部42に記録される。また、メイン検査部21が出力する検査結果を含め、各検査部が各検査ロジックに基づいて出力した各検査結果は、評価用検査結果として、検査制御部30によって、検査結果記録部42から必要に応じて読み出される。
【0100】
したがって、以下では、検査ロジックの評価のために検査モジュール20が出力する検査結果を評価用検査結果、生産ラインの各ワークを良品・不良品を検査するために実際に採用される検査結果を最終検査結果と称して区別する。特に区別する必要がない場合は、単に検査結果と称する。よって、メイン検査部21が出力する検査結果は、評価用検査結果として検査制御装置200によって読み出されるとともに、最終検査結果として採用され出力される。
【0101】
本実施形態では、検査ロジックと検査部とが1対1に対応しており、最終検査結果を出力する1つのメイン検査部21が、検査ロジック記録部45に記録される複数の検査ロジックのうち常に1つ定められるメイン検査ロジックL1(図1では検査ロジックA)を用いて最終検査結果を出力するものとする。また、各サブ検査部22(サブ検査部22a、サブ検査部22b・・・)は、それぞれ、メイン検査ロジックとは異なる検査ロジックL2、L3・・・(図1では、検査ロジックB、C・・・)を用いて、それぞれの評価用検査結果を出力するものとする。
【0102】
なお、検査モジュール20の構成は上記に限定されない。メイン検査部21およびサブ検査部22は、それぞれ少なくとも1つあればよく、メイン検査部21を複数設けてもよいし、サブ検査部22を1つ設けてもよい。なお、メイン検査部21を複数設ける場合は、各メイン検査部21が出力する検査結果からどのように最終検査結果を得るのかを定めたルール(複合判定論理式)を各メイン検査部21の組合せ(メイン検査ロジックの組合せ)ごとに関連付けて記録しておけばよい。
【0103】
検査制御部30は、検査ロジックを管理し、検査モジュール20が用いる各検査ロジックの評価に基づいて、メイン検査ロジックを選択するものである。より具体的には、(1)統計処理部32が、検査ロジックごとの検査結果を読み出して、メイン検査ロジックの最終検査結果を基準に統計処理を行い、(2)検査ロジック評価部33が、統計処理部32の出力する統計データに基づいて、各検査ロジックの検査精度を示す評価値を算出し、(3)検査ロジック選択部34が、上記評価値に基づいて、メイン検査ロジックとすべき最適な検査ロジックを選択する。検査ロジック選択部34は、選択した検査ロジックをメイン検査ロジックとして検査モジュール20のメイン検査部21に設定する。
【0104】
検査ロジック管理部31は、検査ロジック記録部45に記録されている検査ロジックを管理するものである。具体的には、ユーザの指示に応じて、検査ロジックを新規に追加、更新、削除したり、ユーザが入力する条件に応じて、条件を満たす検査ロジックを検査ロジック記録部45から抽出してユーザに提示したり、ユーザが指定する検査ロジックをメイン検査ロジックとしてメイン検査部21に設定するよう検査ロジック選択部34を制御したりする。
【0105】
ワーク情報記録部41は、生産ラインを流れるワークを撮像部Cが撮影することにより生成したワーク画像を記録するものである。本実施形態では、生産ラインを流れるワークに対して、ワークを個々に識別するためのワークIDが付与されている。ワーク情報記録部41には、上記ワーク画像をワークIDに対応付けて記録しているものとする。
【0106】
検査結果記録部42は、メイン検査部21が、設定されているメイン検査ロジックを用いて、上記ワーク画像に対して良不良を判別した結果(最終検査結果)、および、サブ検査部22が、それぞれに設定されている他の検査ロジックを用いて、ワークの良不良を判別した結果(評価用検査結果)を記録するものである。
【0107】
検査結果記録部42には、ワークIDに対応付けて、メイン検査部21が判別した良不良の最終検査結果が記録される。当該判別結果がどのメイン検査ロジックを用いて得られた結果であるのかが明確になるよう、検査ロジックごとに付与されるロジックIDも関連付けて記録する。
【0108】
また、ワークIDと、検査モジュール20内の各検査部に設定されている検査ロジックのロジックIDとの組合せごとに、メイン検査部21および各サブ検査部22が判別した良不良の評価用検査結果が記録される。さらに、評価用検査結果には、良不良の判別結果のみならず、検査ロジックの画像処理アルゴリズムにしたがってワーク画像から抽出された特徴量を上記組合せに関連付けて記録する。
【0109】
統計データ記録部43は、各検査部の検査ロジックごとの評価用検査結果に基づいて、統計処理部32が統計処理を行って作成した統計データを記録するものである。具体的には、例えば、ある検査ロジックによる良品(あるいは不良品)の集合おける、特徴量の上限および/または下限を、検査ロジックごとに記録する。また、ある検査ロジックにおけるワークの特徴量をある区間ごとに分けて区間ごとに求めた度数を記録する。
【0110】
これらの統計データは、ユーザに評価用検査結果を提示するために、例えば、ヒストグラムとして加工される。
【0111】
なお、統計処理部32が作成する統計データは、上述の例に限定されず、各検査ロジックの評価用検査結果から統計的に求められるあらゆるデータ(平均値、中央値、分散、上限値と下限値との差分など)を含んでいてもよい。
【0112】
評価値記録部44は、上記統計データから、検査ロジック評価部33が検査ロジックごとに算出した評価値を記録するものである。検査ロジック評価部33によって、メイン検査ロジックの検査結果を基準として算出された評価値は、ロジックIDに関連付けて記録される。
【0113】
検査ロジック記録部45は、検査モジュール20の各検査部がワークの検査に用いる検査ロジックを記録するものである。検査ロジックは、ロジックIDにより管理されており、ロジックIDに、画像処理アルゴリズムと閾値とが関連付けて記録されている。
【0114】
画像処理アルゴリズムとは、検査モジュール20が、撮像部Cから取得したワーク画像からワークの特徴量を抽出する方法を定めたものである。例えば、ワーク画像から特定の検査対象となる領域を絞り込むための手順や、ワーク画像から特徴量としての数値を算出するための計算式などが画像処理アルゴリズムに含まれる。
【0115】
また画像処理アルゴリズムには、上記計算式や手順をより具体的に規定するためのパラメータが用意されている。
【0116】
したがって、画像処理アルゴリズムのパラメータや上記閾値に、さまざまな実際の値を設定することにより、ひとつの検査ロジックの雛型から、さまざまな画像処理アルゴリズムと閾値とからなる検査ロジックを完成させることが可能となる。
【0117】
以下では、検査ロジックについて具体例を挙げて説明する。
【0118】
(画像処理アルゴリズム1−2値重心面積)
「2値重心面積」の画像処理アルゴリズムは、ワーク画像を2値化して、白または黒の画素の面積に基づいて特徴量を抽出するアルゴリズムである。
【0119】
図3は、2値重心面積画像処理アルゴリズムに基づいて画像処理されたワーク画像を示す図であり、ワークとして、錠剤・カプセル剤などを包装するPTP(Press Through Package)シートを撮影したものである。図3(a)は、良品(PTPシートに錠剤が6つ過不足なく梱包された状態)の見本を示している。図3(b)は、不良品(錠剤が不足している状態)の見本を示している。
【0120】
まず、白い錠剤を6つ梱包したPTPシート(ワーク)を撮影してワーク画像を取得する。2値重心面積画像処理アルゴリズムでは、撮像部Cから取り込んだ256階調の濃淡がついた画像を、画像の濃度差に応じて白または黒の画素に変換する手順が規定されている。白い錠剤が梱包されている部分だけが白くなるように画像処理が行われる。そして、2値重心面積画像処理アルゴリズムでは、2値化した画像から白画素部分の面積(特徴量)を計測する手順が定められている。
【0121】
このように、特徴量としての白画素部分の面積が計測されると、検査ロジックにおいて当該画像処理アルゴリズムに対応する閾値と対比することができ、図3(b)に示すように、白画素の面積が閾値以下である場合に錠剤の不足を検知することが可能となる。
【0122】
なお、白画素部分を特定する画像アルゴリズムと、白画素部分の配置を把握して位置を確認する画像処理アルゴリズムとを用いれば、重心位置が正しいか否かなどの検査を行うことも可能である。
【0123】
また、生産するPTPシートに梱包される錠剤に変動があって錠剤の色が白以外の別の色である場合、何色に着目するか、どう2値化を行うか、などのパラメータを変更するだけでよい。あるいは、錠剤の大きさに変動がある場合には、面積の閾値を調整すればよい。
【0124】
(画像処理アルゴリズム2−キズ汚れ)
「キズ汚れ」の画像処理アルゴリズムは、ワーク画像内に計測領域を特定し、計測領域内の濃度の変化に基づいて特徴量を抽出するアルゴリズムである。これにより、ワークの欠陥を検出することが可能となる。
【0125】
図4は、キズ汚れ画像処理アルゴリズムに基づいて画像処理されたワーク画像を示す図である。
【0126】
キズ汚れ画像処理アルゴリズムでは、取得したワーク画像の計測領域Rを特定する手順、および、その計測領域内の濃度(明るさ)のばらつきを特徴量として抽出する手順が規定されている。
【0127】
そして明るさのばらつきの閾値と対比してキズ・汚れなどの欠陥部分Bの有無を検査することができる。
【0128】
このような画像処理アルゴリズムは、無地のワークに対するキズや汚れ、あるいは、部品欠けやバリなどの外観検査に適している。
【0129】
また、キズ汚れ画像処理アルゴリズムにおいても、検出したい欠陥の性質(色・形・大きさなど)に応じて、パラメータ(計測領域や濃度のばらつきの求め方を特定する値)を適宜調節することで、さまざまな画像処理アルゴリズムを提供することができる。
【0130】
なお、画像処理アルゴリズムは、上述した例に限定されず、ワーク画像から画像処理を行うなどして特徴量を抽出する手順を定める情報であればなんでもよい。
【0131】
〔検査システムのフロー概略〕
次に、図5に基づいて、上述した検査モジュール20、検査制御部30の各部が行う、検査および検査制御の処理の流れの概略を説明する。図5は、検査システム100における、検査モジュール20および検査制御部30の処理の流れを示すフローチャートである。
【0132】
(1)初期設定
初期設定ステップS1では、検査ロジック管理部31が生産ライン稼動前に、実際の良不良判別に用いるメイン検査ロジックを、検査ロジック記録部45から選択してメイン検査部21に設定する。
【0133】
具体的には、ユーザが、初期ティーチングのためのサンプル画像や検査内容を入力し、検査ロジック管理部31が、検査ロジックの候補を抽出する。そして、ユーザが検査ロジック候補を評価し、その中で最適なものをメインの検査ロジックとし、その他をサブの検査ロジックとする。ユーザがメイン検査ロジックを選択(あるいは、作成)する。
【0134】
(2)検査
検査ステップS2では、検査モジュール20のメイン検査部21およびサブ検査部22が設定された各検査ロジックで検査を行い、良品・不良品を判別する。検査ロジックに基づく、特徴量や判別結果を検査結果として検査結果記録部42に保存する。
【0135】
(3)統計処理
統計処理ステップS4では、統計処理部32が、検査ロジックごとの各検査結果を検査結果記録部42から読み出し、統計的な処理を行う。
【0136】
(4)検査ロジック評価
評価ステップS5では、検査ロジック評価部33が、S4で得られる統計データに基づいて、各検査ロジックの評価値を算出する。
【0137】
(5)検査ロジック選択
検査ロジック選択部34は、メイン検査ロジックとして最適な検査ロジックを選択する。具体的には、各検査ロジックの評価値を比較し、現在のメイン検査ロジックが、他の検査ロジックと比較して最適であるかどうかを判定する(S6)。現在のメイン検査ロジックが候補の中で最適でないと判定した場合は(S6においてNO)、候補の中で最適と判定した検査ロジックを、新しいメイン検査ロジックとして選択し、メイン検査部21に設定する。
【0138】
なお、図5のステップS3に示すとおり、検査結果を評価するための処理を実行するタイミングか否かを判定するステップを挿入してもよい。図1に示すタイミング監視部35は、検査システム100のあらゆる状態を監視して、所定の状態を検知した場合に、検査ロジックの評価ための処理を、検査制御部30の各部(ここでは、統計処理部32)が開始するよう制御するものである。
【0139】
具体的には、例えば、検査ロジック評価のための、一連の処理の実行時間を監視して、1時間に1回評価するように設定がされている場合、タイミング監視部35は、最後に処理が実行されてから1時間経過した時点を検知して、統計処理部32が処理を開始するよう制御する。
【0140】
なお、評価の処理を実行するタイミングは、上述した例(所定時間ごとに評価する構成)に限定されない。例えば、検査モジュール20が、ワーク1つを検査するごとに毎回評価を行う構成としてもよいし、ワークを所定数検査するごとに評価を行う構成としてもよい。
【0141】
以下、図1に示す検査システム100における検査および検査制御の処理の流れについてより詳細に説明する。
【0142】
〔検査システムのフロー詳細〕
(1)初期設定
初期設定とは、生産ラインを稼動する前に、当該ラインで生産対象となるワークの良不良を検査するためのメイン検査ロジックを選択し、メイン検査部21に設定する作業のことである。メイン検査ロジックの設定は、検査ロジック管理部31が実行する。検査ロジック管理部31は、ユーザから入力される条件や指示に応じて、メイン検査ロジックを選択し、メイン検査部21に設定する。あるいは、検査ロジック選択部34が選択する検査ロジックをメイン検査ロジックとして設定してもよい。
【0143】
図6は、検査システム100における、初期設定の処理の流れを示すフローチャートである。
【0144】
まず、検査ロジック管理部31は入出力制御部10を介して、サンプル画像の入力を受け付けて、ワークのサンプル画像を取得する(S101)。サンプル画像は、実際の生産ラインを流れるワークと同じものを撮影したものである。あるいは、過去に生産され、検査されたときに得たワーク画像をサンプル画像としてもよい。いずれにしてもサンプル画像は、検査に用いるワーク画像と同じように撮影されたものを準備して、これから実際に生産されるワークのワーク画像の見本として取り扱う。
【0145】
サンプル画像は、可能な限り多数、また、想定し得るあらゆるパターン(特に不良品のパターン)を準備することが好ましい。このようにすれば、精度の高いティーチングを行って、生産ラインが不安定になりがちな稼動初期においても精度の高いメイン検査ロジックを用いて検査を実行することができる。
【0146】
次に、稼動する生産ラインにおいて実施する検査についての情報を取得する(S102)。具体的には、ユーザがどのような検査を行いたいのか検査の内容を入力したものを受け付けることが考えられる。検査の内容としては、ワークの向きを検査する向き検査、ワークの有無、当該工程で組みつけられているべき部品の有無などを検査する有無検査、ワークのキズや汚れを確かめる検査、などが挙げられる。
【0147】
例えば、ユーザが汚れの検査を行うことを入力した場合、検査ロジック管理部31は、汚れを検出するのに適した画像アルゴリズムによる検査ロジックを検査ロジック記録部45から抽出する。
【0148】
あるいは、画像のどの部分(領域)について上記画像アルゴリズムによる解析を行うべきかをユーザが指定したものを受け付けることも考えられる。例えば、ワークのエッジ部分についての検査を行いたい場合は、ユーザが検査すべき領域としてワークのエッジ部分が網羅されるように領域を指定すれば、検査ロジック管理部31は、当該領域を分析するような検査ロジックを選択、あるいは、追加することができる。
【0149】
次に、入力された1または複数のサンプル画像が、良品の見本であるのか、不良品の見本であるのかを示す情報をサンプル画像ごとに取得する(ティーチング)(S103)。なお、S101にてサンプル画像を入力するときに、当該サンプル画像に良不良の判別結果を示す情報を含めて入力してもよい。
【0150】
なお、検査ロジック管理部31は、入力したサンプル画像が不良品の見本であると判定した場合は(S104においてNO)、サンプル画像のどの領域が不良箇所であるのかなどの、サンプル画像の不良箇所を特定する情報をユーザから取得してもよい(S105)。このように、不良品についての情報を多数取得することで、より適切な検査ロジックを選択、作成することができる。
【0151】
続いて、上述の各ステップにて取得した情報に基づいて、場合によっては、知識ベースや過去の事例などを参照し、検査ロジック管理部31は、画像アルゴリズムを推論する(S106)。そして、推論した画像処理アルゴリズムから検査ロジックの雛型を生成して検査ロジック記録部45に記録する(S107)。検査ロジック記録部45に記録した検査ロジックの雛型は、表示制御部13(図1)を介して、表示部4に表示するようにしてもよい(S108)。これにより、ユーザが入力した情報に基づいてどのような検査ロジックの雛型が完成したのかをユーザが確認することが可能となり、あとは、この雛型に特徴量や閾値を関連付けて設定したり、微調整したりするだけで検査ロジックを完成させることができる。
【0152】
検査ロジックの雛型を確認したユーザによって、検査ロジックの追加や、一部変更の操作が行われた場合は(S109においてYES)、検査ロジック管理部31をその指示信号を操作受付部12を介して受け付けて、指示信号に応じて検査ロジックの雛型を新規に追加したり、一部を修正したりする(S110)。
【0153】
次に、作成した検査ロジックごとに、ティーチングなどの処理によって取得した情報に基づいて、ワークの良不良を分離するための特徴量と閾値とを算出する(S110)。これにより、検査ロジックの雛型から、あらゆる特徴量と閾値とを関連付けられた検査ロジックを複数完成させて検査ロジック記録部45に記録しておくことが可能となる。ここで、2つ以上の特徴量を用いて良不良を判別したい場合(複合判定を実行する場合)は、その複合判定の論理式も作成してもよい。
【0154】
最後に、検査ロジック選択部34は、S111にて作成した各検査ロジック(メイン検査ロジックの候補)に対して行われた評価に基づいて、最も評価の高い検査ロジックを初期のメイン検査ロジックとして選択する(S112)。検査ロジック選択部34により選択されたメイン検査ロジックを検査ロジック管理部31が設定し、初期設定が完了する。
【0155】
この初期設定のための各検査ロジックの評価については、生産ライン稼動後に検査ロジック評価部33が実行する評価値算出の手順と同様の方法で行えばよい。本稼動での評価方法と異なる点は、実際生産ラインを流れているワーク画像に基づく評価ではなく、入力されたサンプル画像を検査した場合を仮定して仮想の検査結果について評価を行う点である。検査ロジックの評価方法の詳細については後述する。
【0156】
また、上述の説明では、検査ロジック選択部34が評価の高い検査ロジックを初期のメイン検査ロジックとして選択する構成としたが、これに限定されない。例えば、S111にて算出された特徴量に基づいて、統計処理部32が作成したヒストグラムを検査ロジックごとにユーザに提示する構成とし、ユーザにヒストグラムを確認させて初期メイン検査ロジックに適したものを選ばせる構成とすることも可能である。
【0157】
なお、生産ライン稼動前の初期メイン検査ロジックの設定は、検査制御装置200の各部(図1)を用いて行わずともよく、ユーザが過去の経験から、初期の時点で最適を判断するメイン検査ロジックを候補の検査ロジックから選択したり、新たに検査ロジックを作成(検査内容、特徴量、閾値などを入力)したりして、初期設定を完了させる構成でもよい。あるいは、あらかじめ完成している検査ロジックの中からユーザがメイン検査ロジックを選択してメイン検査部21に設定する構成でも構わない。
【0158】
以上は、生産ライン稼動前に設定する初期のメイン検査ロジックの設定手順である。生産ライン稼動前に設定するメイン検査ロジックは、過去の経験からどのように精細に評価して(あるいは、熟練者の判断により)、正しいメイン検査ロジックを選択したとしても、実際の生産ライン稼動後もその初期のメイン検査ロジックがそのままずっと最適なメイン検査ロジックであり続けることは不可能に近い。なぜなら、上述したさまざまな生産環境の変動が想定され、その変動に応じて常に最適なメイン検査ロジックというのは変わっていくものだからである。
【0159】
そこで以下では、初期設定後、本稼動中の生産ラインで検査モジュール20が実行する検査において、生産環境の変動に応じて常に最適なメイン検査ロジックを選択することにより、高い検査精度を維持するための、検査制御装置200の処理の流れについて、より詳細に説明する。
【0160】
生産ライン稼動中に最適な検査ロジックを評価し動的に再設定するために、検査制御装置200は、検査モジュール20が実際にラインを流れるワークに対して行った検査の結果として出力される評価用検査結果を利用する。そこで、まず、検査モジュール20における検査の処理の流れと、検査結果記録部42に記録される検査結果について詳細に説明する。
【0161】
(2)検査
図7は、検査システム100における検査の処理の流れを示すフローチャートである。
【0162】
まず、撮像部Cは、ワークが検査のためのラインに搬入されたタイミングで、ユーザによる操作により、あるいは、検査システム100から撮像命令信号を受信する(S201)。撮像命令信号を受信した撮像部Cは、搬入されたワークを撮影して、ワーク画像を生成する(S202)。このとき、撮影したワークのワークIDをワーク画像のデータに埋め込んでもよい。撮像部Cからワーク画像を受信した画像入力制御部11(図1)は、受信したワーク画像をワークIDと関連付けてワーク情報記録部41に記録する(S203)。
【0163】
続いて、画像入力制御部11を介して新しいワーク画像が取得されると(S204においてYES)、検査モジュール20の各検査部(メイン検査部21、サブ検査部22)は、あらかじめ設定されている検査ロジックを用いて当該ワークの検査を実行する。
【0164】
例えば、上記検査ロジックに含まれる画像処理アルゴリズムが規定する重心位置の特定方法に基づいてワーク画像の座標系を修正し(S205)、同じくアルゴリズムが規定する計測領域の特定方法に基づいて検査対象領域を特定する(S206)。そして、画像処理アルゴリズムに基づいて、特定した領域の解析(画像処理)を実行し(S207)、解析結果に基づいて特徴量を計測する(S208)。例えば、濃淡画像を2値化して、所定色の画素の面積を計測したり、特定した領域の明るさのばらつきを計測したりすることなどが想定される。
【0165】
次に、S205〜S208にて画像処理アルゴリズムに基づきワーク画像から抽出した特徴量を、上記検査ロジックに含まれる閾値と比較する(S209)。そして、上記特徴量が閾値を超えたと判定した場合は(S209においてYES)、当該ワーク画像のワークを良品と判別する(S210)。一方、閾値以下であると判定した場合は(S209においてNO)、上記ワークを不良品と判別する(S211)。そして、この検査結果、および、抽出した特徴量をワークIDに関連付けて検査結果記録部42に記録する(S212)。
【0166】
このようにして、1つの検査ロジックについての検査結果が記録されると、残りの検査ロジックについても同様の処理を行い(S213においてYESの場合、S205に戻る)、すべての検査ロジックについて検査結果を記録し終えたら(S213においてNO)、メイン検査ロジックに基づく検査結果を最終検査結果として出力し(S214)、検査を終了する。
【0167】
なお、上述の説明では、S209において、特徴量が閾値を超えた場合に、ワークを良品と判別する構成としているが、これに限定されず、例えば、特徴量が大きいと不良品となる場合は、閾値を下回る場合に良品と判別する構成とすることもできる。
【0168】
図8は、検査結果記録部42に記録される検査結果の例を示す図である。本実施形態では、図8に示すとおり、検査結果記録部42に記録される検査結果のデータは、メイン検査ロジックによる最終検査結果を記録するテーブル81と、検査モジュール20の各検査部が用いた各検査ロジックの、評価用検査結果を記録するテーブル82〜84・・・とから構成されている。テーブル82、83、84は、それぞれ、検査ロジック記録部45に記録される検査ロジックA、B、Cに基づき出力された評価用検査結果のテーブルである。
【0169】
メイン検査ロジックに基づく最終検査結果を記録するテーブル81には、少なくとも、ワークID(C11)と、それに関連付けられたワークごとの良不良の判別結果(すなわち、最終検査結果(C12))と、その最終検査結果は、どの検査ロジックをメイン検査ロジックとして得られた結果であるのかを示すメイン検査ロジックのロジックID(S13)とが記録されている。
【0170】
テーブル81のデータ構造は上記に限定されず、図8に示すとおり必要に応じて、ワークのロットNO.(C14)、検査日時(C15)、検査で用いてワーク画像(C16)などの情報を関連付けて記録してもよい。また、当該ワークの検査を並行して実行したときにサブ検査部22により用いられたサブの検査ロジックのロジックID(C17)を関連付けて記録しておいてもよい。これにより、最終検査結果と、他の検査ロジックでの評価用検査結果との紐付けが可能となり、メイン検査ロジックと検査ロジックとで検査結果の比較を行うことができる。
【0171】
なお、採用されたメイン検査ロジックが複数(メイン検査部21が複数)ある場合は、複合判定論理式(C18)を記録しておくことが好ましい。これにより、複数のメイン検査ロジックそれぞれの検査結果との紐付けが可能となり、論理式に基づいて集約した各メイン検査ロジックの検査結果から1つの最終検査結果(C12)を求めることが可能となる。図8に示す例では、メイン検査ロジックは、検査ロジックAおよび検査ロジックBの2つが設定され、論理式は、最終検査結果を上記各検査ロジックの論理積から採るよう規定しているので、メイン検査ロジックAと、メイン検査ロジックBとの両方において、良品と判別されたワークのみ、最終的に良品として判別される。
【0172】
テーブル82〜84・・・のそれぞれには、少なくとも、ワークID(C21)と、それに関連付けられた、特徴量(C22)と、評価用検査結果(C23)とが記録されている。
【0173】
テーブル82〜84・・・のデータ構造は上記に限定されず、図8に示すとおり必要に応じて、当該検査ロジックの画像処理アルゴリズムにおけるパラメータ(C24)、閾値(C25)などをワークごとに記録しておいてもよい。また、これらの情報は、検査ロジックのロジックIDごとに検査ロジック記録部45に記録されているので、C24、C25の代わりに当該検査ロジックのロジックIDを記録して、検査ロジック記録部45との紐付けを行うデータ構造としてもよい。
【0174】
上述したとおり、検査結果記録部42に記録されたすべての検査ロジックの検査結果は、評価用検査結果として、次の統計処理にて、必要に応じて読み出される。
【0175】
(3)統計処理
図9は、検査システム100における統計処理の流れを示すフローチャートである。統計処理部32(図1)は、タイミング監視部35の制御に基づき、各検査ロジックを評価すべきタイミングとなった場合に、統計処理を開始する。
【0176】
統計処理部32は、検査結果記録部42から、評価すべき検査ロジック(例えば、検査ロジックA)の評価用検査結果(図8に示すテーブル82)を取得する(S301)。ここで、取得したテーブル82(検査ロジックA)の統計処理をこれまでに行ったことがあるかどうかを判定し、初めて統計処理を行う場合は(S302においてYES)、統計データの準備を行う。より具体的には、テーブル82のR1〜R3において、ワークごとの特徴量および閾値に基づいて、良品の区間と不良品の区間とを設定し、さらに、特徴量を所定の区間ごとに分類する(S303)。
【0177】
続いて、未追加処理のワークの検査結果(例えば、レコードR1の、ワークID0001の検査結果「OK」)を評価用検査結果(テーブル82)から取得する(S304)。統計処理部32は、取得したレコードの検査結果を判定し、検査結果が良品であった場合は(S305においてYES)、当該レコード(ワーク)の度数を、特徴量が属する良品の区間に1つ追加する。反対に、検査結果が不良品であった場合は(S305においてNO)、ワークの度数を、該当する不良品の区間に1つ追加する(S307)。
【0178】
そして、未追加処理の検査結果がまだ残っている場合は(例えば、テーブル82のレコードR2とR3)(S308においてYES)、S304に戻り、度数追加の処理を繰り返す。一方、1つの検査ロジックにおいてすべてのワークの検査結果について追加処理が完了した場合は(S308においてNO)、当該検査ロジックの統計処理を終了する。
【0179】
そこで、未処理の検査ロジック(例えば、検査ロジックBや検査ロジックC)が残っている場合は(S309においてYES)、S301に戻り、未処理の検査ロジックの評価用検査結果(例えば、検査ロジックBのテーブル83)を取得して、以降の処理を繰り返す。
【0180】
すべての検査ロジックの評価用検査結果について、統計処理を終え、統計データを作成した場合は(S309においてNO)、上述の統計データを統計データ記録部43に記録する(S310)。
【0181】
図10は、統計処理部32に入出力されるデータを模式的に示す図である。ここでは、統計処理部32によって出力され、統計データ記録部43に記録される統計データをヒストグラムで表す。図10に示す例では、検査結果記録部42に記録される、ワークXについての検査結果レコード85(各検査ロジックの検査結果および特徴量と、最終検査結果とを含む)に基づいて、統計処理部32が統計処理を実行し、出力した統計データ90を統計データ記録部43に記録している。
【0182】
統計データ90は、検査ロジックごとに作成されたヒストグラム91〜93・・・を含み、ヒストグラム91〜93は、それぞれ、検査ロジックA〜Cの検査結果を統計処理したものを表している。
【0183】
各ヒストグラムは、縦軸が度数、横軸が特徴量を表しており、閾値94を境界に、閾値94以下の区間に属するブロックを良品、閾値94を越える区間に属するブロックを不良品であると、各検査ロジックが判別したことを示している。
【0184】
また、ワークの度数を示す棒グラフの色分けは、最終検査結果86に基づく良品と不良品の区分を示している。したがって、網点が施された棒グラフは、メイン検査ロジック(ここでは、検査ロジックAとする)で良品と判別されたものを、斜線が施された棒グラフは、メイン検査ロジックで不良品と判別されたものを示している。
【0185】
ここで、検査結果レコード85が新たに追加されると、統計処理部32は、各検査ロジックの検査結果および特徴量に基づいて、各ヒストグラムの適切な区間に検査結果レコード85のワークXの度数を1追加する。より詳細には、検査ロジックAのヒストグラム91においては、検査ロジックA特徴量10の区間に、最終検査結果86が良品(網点)の度数1のブロックが追加される。検査ロジックBのヒストグラム92においては、検査ロジックB特徴量20の区間に、網点の度数1のブロックが追加される。検査ロジックCのヒストグラム93においては、検査ロジックC特徴量30の区間に、網点の度数1のブロックが追加される。
【0186】
以上のとおり、統計処理部32により生成され、統計データ記録部43に記録された統計データは、次の検査ロジックの評価処理にて、検査ロジック評価部33により必要に応じて読み出される。
【0187】
なお、上記統計データは、必ずしも、図10に示すようなヒストグラムとして記録されていなくてもよく、検査ロジック評価部33が検査ロジックの評価を実行するのに必要な情報を取り出せる状態であればどのようなデータ構造でもよい。例えば、図11に示すとおり、検査ロジックごとに、各種データ(最終検査結果の良・不良品別の特徴量の上限値/下限値、平均値、分散、中央値、最頻値など)を関連付けたテーブル構造を有する統計データを統計データ記録部43に記録しておいてもよい。
【0188】
ただし、統計データを、表示部4に表示してユーザに提示する場合は、ヒストグラムとして出力することが好ましい。図10に示すようなヒストグラムを提示すれば、ユーザは、各検査ロジックが、ワークの良不良をどのように判別し、また、その検査結果が、最終検査結果とどのようにずれが生じているのかを、容易に目視確認することが可能となる。
【0189】
ここで、上述の例では、ヒストグラムの棒グラフの色分けは、最終検査結果86に基づいて行う構成としたが、これに限定されない。検査ロジックごとにヒストグラムを生成する場合に、各検査ロジックの良不良の検査結果に応じて色分けを行って出力してもよい。これにより、ユーザは、各検査ロジックで、良品・不良品の度数を一目で確認することができる。なお、複合判定により最終検査結果86が決定される構成の場合には、図12に示すように、採用する複数のメイン検査ロジックの特徴量を用いて統計データを作成すればよい。
【0190】
また、良不良の検査結果がすべての検査ロジックで一致しないと統計処理部32が判定した場合には、統計処理部32は、そのような検査結果レコード85を統計データとして追加しないように構成することも可能である。
【0191】
(4)検査ロジック評価
図13は、検査システム100における検査ロジック評価処理の流れを示すフローチャートである。検査ロジック評価部33(図1)は、統計処理部32が統計データを統計データ記録部43に記録すると、当該統計データを用いて、評価処理を開始する。
【0192】
検査ロジック評価部33は、統計データ記録部43から、各検査ロジックの統計データを取得し(S401)、当該統計データから評価値を算出するのに用いる評価式を、評価式を記録する記録部(例えば、評価式を評価値記録部44に記録しておいてもよい。)から取得する(S402)。なお、評価式が複数記録されている場合は、ユーザがその都度選択してもよいし、あらかじめどの評価式を採用するかを設定しておいてもよい。また、ユーザが採用する評価式を直接入力できる構成としてもよい。
【0193】
次に、検査ロジック評価部33は、取得した評価式にしたがって、統計データから各検査ロジックの評価値を算出する(S403)。評価値算出処理の詳細は後述する。すべての検査ロジックについて評価値の算出を終えると、検査ロジック評価部33は、算出した評価値を検査ロジックごとに評価値記録部44に記録する(S404)。
【0194】
図14(a)は、評価値記録部44に記録される検査ロジックの評価値の例を示す図である。図14(a)に示すとおり、検査ロジック評価部33が検査ロジックごとに算出した評価値は、ロジックIDに関連付けて記録される。ここで、検査システム100に複数の評価式が記録されている場合は、どの評価式を用いて求めた評価値なのかを判別できるよう、評価式を特定する情報(例えば、評価式ID)も関連付けて記録することが好ましい。
【0195】
図14(b)は、評価値算出に用いられる評価式の例を示す図である。図14(b)に示すとおり、各評価式は、評価式を一意に識別するための識別情報(評価式ID)によって管理されている。このように、評価式IDにより、評価値と評価式との紐付けが行えるので、例えば、図14(a)に示す各検査ロジックの評価値は、「式1」、すなわち、「不良品の下限値−良品の上限値」により算出された値であることが分かる。
【0196】
なお、上述の説明では、始めに採用する評価式を選択し、選択した評価式に基づいて評価値を算出する構成としたが、これに限定されない。例えば、記録されている全評価式に基づいて、それぞれの評価値を算出し、最終的な評価値を選択する(あるいは、複数の評価値から最終的に1つの評価値を算出する)構成としてもよい。
【0197】
次に、図13のS403に示す評価値算出処理の詳細について、図14(b)の「式1」の評価式を採用した場合を例に挙げて説明する。
【0198】
まず、検査ロジック評価部33は、1つの検査ロジックにつき、統計データ(例えば、図11)の中から、A:良品の上限値(特徴量)を取得する(S41)。次に、B:不良品の下限値を取得する(S42)。最後に、評価式(式1:不良品の下限値−良品の上限値)にしたがって、取得した値の差分(ここでは、B−A)を算出し、これを評価値とする(S43)。ここで「良品」「不良品」とは、メイン検査ロジックによる最終検査結果が示す「良品」「不良品」のことを示している。
【0199】
上述の評価値算出方法によれば、特徴量が大きいと不良品となる場合に、特徴量に基づいて、良品と不良品とを正しく切り分けられている検査ロジックを高く評価することができる。すなわち、不良品の最小の特徴量と良品の最大の特徴量との距離(上述の「B−A」)が長ければ長いほど、その検査ロジックは良品と不良品とを安全に正しく切り分けられていると考えることができる。
【0200】
なお、上述の例とは反対に、特徴量が小さいと不良品となる場合は、図14(b)の「式4:良品の下限値−不良品の上限値」を採用し、良品の最小の特徴量と不良品の最大の特徴量との距離を求めそれを評価値として出力すればよい。
【0201】
ここで、評価値の算出方法は、上記に限定されない。本発明の検査システム100では、統計データの各種情報を用いてあらゆる評価方法を採用することができる。
【0202】
図15(a)〜(f)は、評価値算出方法の他の例を、統計データ(ヒストグラム)により示す図である。
【0203】
図15(a)に示す例は、上述した例と同じく、良品の集合と不良品の集合との距離dに基づいて評価値を算出する方法を示している。距離dの値が大きいほど、良品と不良品とを正しく安全に切り分けられていることを意味しており、評価が高くなる。
【0204】
図15(b)に示す例は、良品の集合における特徴量の平均値Gμと不良品の集合の平均値Bμとの距離dに基づいて評価値を算出する方法を示している。距離dの値が大きいほど、良品と不良品とを正しく安全に切り分けられていることを意味しており、評価が高くなる。
【0205】
図15(c)に示す例は、良品の特徴量の分散Gσ、および/または、不良品の特徴量の分散Bσに基づいて評価値を算出する方法を示している。分散が大きいということは、計測した特徴量が、良品(不良品)の集合の中でばらついており、その特徴量の計測手順の信頼性が低いことを意味している。したがって、分散の値が小さい検査ロジックほど、評価が高くなる。
【0206】
図15(d)に示す例は、良品の集合と不良品の集合との距離dの微分値(距離dが狭まる速さ)に基づいて評価値を算出する方法を示している。距離dは上述したとおり、大きいほど評価が高く、距離dの微分値が大きいほど(距離dが狭まる勢いが大きいほど)、評価が低くなる。つまり、図15(d)に示すとおり、距離d1と距離d2の差分が小さい方が評価が高い。
【0207】
図15(e)に示す例は、良品の集合と検査ロジックの閾値との距離d1と、不良品の集合と検査ロジックの閾値との距離d2との差分に基づいて評価値を算出する方法を示している。距離d1と距離d2との差分が大きいということは、良品・不良品のどちらか一方の集合だけが閾値近くにあることになる。一方の集合のみが閾値に近づいていると、例えば、不良品の集合が閾値付近にあるとすると、それは、不良品を良品と判別してしまうという検査不良発生の可能性が大きいことを意味する。したがって、距離d1と距離d2とは等しいことが理想であり、距離d1と距離d2との差分が小さければ小さいほど、評価が高くなる。
【0208】
さらに、距離d2(不良品と閾値との距離)に重みをかけて、距離d2の方が小さい場合(すなわち、不良品の集合の方が閾値に寄っている場合)には、特に評価が下がるような評価値を算出するよう検査ロジック評価部33を構成してもよい。これは、良品を不良品と判別してしまう検査不良よりも、不良品を良品と判別してしまう検査不良(見逃し)の方が、深刻な事故となるという考えに基づいている。これにより、見逃しをしてしまうような検査ロジックがメイン検査ロジックとして誤って選択されるという不都合を解消することができる。
【0209】
評価式の具体例を示すと、図14(b)の「式3:|(不良品の下限値−良品の上限値)−(不良品の下限値−閾値)/(閾値−良品上限値)|」となる。この場合、評価値の数値は小さいほど評価が高いことを意味する。
【0210】
あるいは他の評価方法では、メイン検査ロジックが不良品と判別したワークのうち、当該検査ロジックが良品と判別してしまったワークの個数(見逃しの個数)に基づいて、評価値を算出してもよい。この場合、見逃しの個数が多いほど評価が低くなる。
【0211】
図16は、閾値の位置による評価値の推移を示すグラフである。縦軸は、上記式3に基づいて算出された評価値(上述したとおり小さいほど評価が高い)を、横軸は、閾値の位置を示している。閾値の位置とは、図15(e)の良品上限値Pと不良品下限値Qとの間で、閾値はいずれの値を示しているかを意味している。すなわち、良品上限値Pから閾値までの距離d1と、閾値から不良品下限値Qまでの距離d2を示す。
【0212】
横軸の左端0は、良品上限値Pを、右端0.9は、不良品下限値Qを示しており、閾値が不良品下限値Qに近づけば近づくほど(右に行けば行くほど)、評価値が急激に大きくなり、評価が下がることが分かる。評価値が大きくなる度合いは、閾値が良品上限値Pに近づくときの度合いよりも大きくなっている。これにより、見逃しをしてしまうような検査ロジックがメイン検査ロジックとして誤って選択されないようにすることができる。
【0213】
図15(f)に示す例は、統計データの理想的な状態を示す、モデル統計データと比較してその類似度に基づいて評価値を算出する方法を示している。例えば、統計データがヒストグラムである場合、モデル統計データとしてのモデルヒストグラム95をあらかじめ用意し、モデルヒストグラム95と実際のヒストグラムとの形状を比較してパターンマッチングを行い、類似度を算出する。モデルヒストグラム95と形状が類似しているほど、理想の検査結果を出力できる検査ロジックであることを意味し、評価が高くなる。
【0214】
以上のとおり、検査ロジック評価部33により算出され、評価値記録部44に記録された評価値は、次の検査ロジックの選択処理にて、検査ロジック選択部34により必要に応じて読み出される。
【0215】
(5)検査ロジック選択
図17は、検査システム100における検査ロジック選択処理の流れを示すフローチャートである。検査ロジック選択部34(図1)は、検査ロジック評価部33が各検査ロジックの評価値を評価値記録部44に記録すると、当該評価値を用いて検査ロジック選択処理を開始する。
【0216】
検査ロジック選択部34は、評価値記録部44から、各検査ロジックの評価値を取得する(S501)。次に、取得した評価値に基づいて、最も評価が高い(メイン検査ロジックとして最適な)検査ロジックを特定する(S502)。
【0217】
続いて、検査ロジック選択部34は、S502にて特定した特定検査ロジックが、現在メイン検査部21(図1)に設定されているメイン検査ロジック(例えば、検査ロジックA(図1))と一致するか否かを判定する(S503)。検査ロジック選択部34は、特定検査ロジックが検査ロジックAであると判定すれば、検査ロジックを切り替える必要がないので、そのまま検査ロジックAを採用する(S504)。一方、検査ロジック選択部34は、特定検査ロジックが検査ロジックAと異なると判定すれば、上記特定検査ロジックをメイン検査ロジックとして新たに選択し(S505)、メイン検査部21のメイン検査ロジックL1を、検査ロジックAから上記特定検査ロジックへと切り替える(S506)。
【0218】
<実施形態2>
上述の実施形態で説明したとおり、本発明の検査制御装置200(図1)の構成、および、検査制御方法(図5のS4〜S7)によれば、最新の検査結果を評価して常に最適な検査ロジックを選択し、生産ライン稼動中でも動的に切り替えることができるので、生産環境の変動に応じて動的に検査ロジックを設定することにより、検査システム100(検査モジュール20)の検査精度を向上させることが可能となる。
【0219】
次に、具体例を用いて、本発明の検査制御装置200により実現される、検査ロジックの切替処理とその効果についてより詳細に説明する。本実施形態では、本発明の検査システム100を、ワークとしての白紙の上に発生する汚れを検査する検査システムとする。検査システム100の検査ロジック記録部45には、2つの検査ロジック、すなわち、上述の2値重心面積画像処理アルゴリズムと閾値=300(面積)とを採用した第1検査ロジックと、キズ汚れ画像処理アルゴリズムと閾値=150(欠陥度)とを採用した第2検査ロジックとがあらかじめ記録されている。
【0220】
図18は、汚れ検査で検査システム100が用いるのワークのサンプル画像を示す図である。図18に示すとおり、撮像部Cは、生産ラインを流れるワーク50の撮影範囲Rを撮影し、ワーク画像51(52)を生成する。生成されたワーク画像51(52)は、画像入力制御部11を介してワーク情報記録部41に記録される。ワーク画像51は、良品であるワークを撮影したものを示し、ワーク画像52は、汚れが付着した不良品である(として検知されるべき)ワークを示している。本実施形態では、検査ロジック管理部31が初期設定を実行するためにワーク画像51のような良品のサンプル画像を、ワーク画像52のような不良品のサンプル画像があらかじめ入力されている。
【0221】
なお、本実施形態では、図19に示すとおり、生産環境の変動の例として、生産数が多くなるにつれて、生産ラインが安定し(作業者の熟練度の向上や生産設備が安定してきたことなどに起因する)、ワーク(白紙)に付着する汚れの大きさが少しずつ小さくなっていく状況が発生するものとする。
【0222】
〔初期設定時のメイン検査ロジックの選択〕
図20は、検査ロジック管理部31が行う初期設定の手順を示す図である。生産ラインを稼動する前に、検査制御装置200の検査ロジック管理部31は、まず、検査モジュール20の各検査部に設定する検査ロジックを設定する。本実施形態では、初期設定のための検査ロジックの評価は、生産ライン稼動後の評価方法と同様である。すなわち、検査ロジック評価部33が各検査ロジックの評価を、サンプル画像を用いて行い、検査ロジック選択部34がメイン検査ロジックを選択する。検査ロジック管理部31は、検査ロジック選択部34の選択にしたがって、初期のメイン検査ロジックをメイン検査部21に設定する。
【0223】
検査ロジック評価部33は、図20に示すとおり、取得したワーク(白紙)のサンプル画像に対する、上記第1検査ロジックの検査結果の統計データ53と、第2検査ロジックの検査結果の統計データ54とを取得する。そして、評価値の算出方法として、図14(b)に示す「式2:(不良品の下限値−良品の上限値)/(良品の上限値−良品の下限値)」を採用し、上記2つの検査ロジックそれぞれについて評価値を算出する。
【0224】
式2に基づき評価値を算出すると、
第1検査ロジックの評価値:(764−23)/(23−1)=33.681818
第2検査ロジックの評価値:(255−50)/(50−28)=9.318181
となり、検査ロジック選択部34は、評価の高い第1検査ロジック(2値重心面積画像処理アルゴリズムを含む)を初期のメイン検査ロジックとして選択する。
【0225】
ここで、上記式2の「不良品の下限値−良品の上限値」は、良品の集合と不良品の集合との距離を示しており、距離の値が大きいほど評価が高くなる。
【0226】
一方、「良品の上限値−良品の下限値」は、良品のばらつきを示している。良品のばらつきが大きいときは、画像処理アルゴリズムにおいて、パラメータが適切でない、特徴量の計測手順が適切でないことなどが原因として考えられる。よって、ばらつきの値が大きいほど評価が低くなる。
【0227】
以上のように、距離をばらつきで除すことにより求めた評価値を用いれば、上述の例のように全く異なる画像処理アルゴリズムにより、単位の異なる特徴量が計測される検査ロジック同士でも、容易に検査精度を比較し評価することが可能となる。
【0228】
〔生産ライン稼動後の生産個数、および、検査結果の統計の推移〕
図21は、生産個数、および、2値重心面積画像処理アルゴリズムを採用した第1検査ロジックによる検査結果の統計の推移を示す図である。
【0229】
図21に示すとおり、生産個数が50個、100個・・・と増加するにつれ、不良品と判定されるワークも増加し、計測される特徴量の下限値(不良品下限値Q)も下降して閾値に(および、良品の集合に)近づいていく。生産個数が150個に到達した時点では、不良品下限値Qは、閾値にまで到達する。この時点でこのまま第1検査ロジックを採用しつづけた場合、ワークを200個生産した時点では、不良品下限値Qが閾値を割ってしまい、したがって、不良品を良品であると誤って判別する検査不良が発生することになる。
【0230】
図22は、生産個数、および、キズ汚れ画像処理アルゴリズムを採用した第2検査ロジックによる検査結果の統計の推移を示す図である。
【0231】
図22に示すとおり、良品の集合のばらつきは、第1検査ロジックに比べて大きいものの、生産個数が増加しても、不良品下限値Qと閾値との距離は安定している。したがって、第2検査ロジックは、生産個数の増加にかかわらず、検査精度が安定していることが分かる。
【0232】
〔評価値の推移〕
図23は、生産個数の増加に伴う、各検査ロジックの評価値の推移を示すグラフである。縦軸は、評価値を示しており、この評価値は上述の式2にしたがって算出されたものである。横軸は、生産個数を示している。図21で示したとおり、生産個数の増加に伴って、不良品の集合と良品の集合との距離が短くなる第1検査ロジックでは、生産個数が増加するほど評価値が下降する(評価が下がる)。一方、図22で示したとおり、生産個数の増加にかかわらず良品の集合や閾値との距離が安定している第2検査ロジックでは、評価値はほぼ一定である。
【0233】
図23のグラフから、検査システム100が一定の検査精度を維持するためには、T2の時点で、メイン検査ロジックが、第1検査ロジックから第2検査ロジックへと切り替えられなければならないことが分かる。
【0234】
検査制御装置200の検査ロジック選択部34は、検査ロジック評価部33が算出した評価値に基づき、評価値が逆転したことを検知して、メイン検査ロジックを第1検査ロジックから第2検査ロジックへと切り替える。
【0235】
なお、メイン検査ロジック切替のタイミングは、T2のような評価値が逆転した時点に限定されない。例えば、ある一定期間(例えば、図23のT0からT1まで)の評価値の推移を記録しておき、各評価値の微分値(評価値の低下の勢い)を参照し、評価値が逆転する時点を予測して、適切な切替のタイミングを計算するよう検査ロジック選択部34を構成することもできる。あるいは、メイン検査ロジックの評価値の微分値に基づいて、ある一定以上の勢いで評価値が低下するときに、適切なメイン検査ロジックに切り替える処理を開始するよう検査ロジック選択部34を構成することもできる。
【0236】
上記構成によれば、検査ロジック評価部33は、あらかじめ定められた評価式(例えば、式2)に基づいて、メイン検査ロジックによる最終検査結果を基準として、メイン検査ロジックとしての第1検査ロジックおよびサブの検査ロジックとしての第2検査ロジックの評価値を算出する。評価値は生産個数が150個になった時点で逆転し、それを検知した検査ロジック選択部34は、図24に示すとおり、生産個数が150個に到達した時点で、第2検査ロジックが最適な検査ロジックであるとして、メイン検査ロジックを第1検査ロジックから第2検査ロジックに切り替える。
【0237】
これにより、検査不良を回避することが可能となる。すなわち、150個に到達した時点を過ぎても、メイン検査ロジックを切り替えずにそのまま第1検査ロジックを採用し続けた場合は、生産個数が200個に到達した時点で見逃しの検査不良が発生していた。しかし、メイン検査ロジックを第2検査ロジックに切り替えることにより、検査システム100の検査モジュール20は、生産個数が200個に到達した時点でも正しく良不良の判別を行うことが可能となる(図24)。
【0238】
本発明の検査制御装置200は上述した各実施形態に限定されない。検査制御装置200は、さらに、検査制御部30(図1)の内部に、閾値調整部(閾値調整手段)36、および/または、統計データ修正部(検査結果修正手段)37を備えていてもよい。
【0239】
図25は、本発明の検査制御装置200における検査制御部30の詳細な構成を示すブロック図である。なお、ここでは図示しないが、検査制御部30は、図1に示した検査制御部30の各部を備えているものとする。また、それらの機能の説明は繰り返さない。
【0240】
<閾値調整機能>
閾値調整部36は、統計データ記録部43に記録される検査ロジックごとの統計データに基づいて、当該検査ロジックの最適な閾値を算出し、調整するものである。閾値調整部36は、統計処理部32により、ある検査ロジックの統計データが新たに作成されたり、更新されたりすると、統計データ記録部43から当該統計データを読み出して、最適な閾値を算出する。
【0241】
ここで、算出した閾値が、上記検査ロジックの現在の閾値と異なる場合は、算出した新たな閾値を、上記検査ロジックの閾値として新たに設定し、検査ロジック記録部45に記録されている当該検査ロジックの閾値を更新する。
【0242】
なお、このとき、検査ロジック記録部45に記録されている元の検査ロジックを更新せずに、元の検査ロジックから閾値だけを変えた新しい検査ロジックを生成し、検査ロジック記録部45に追加するようにしてもよい。
【0243】
これにより、検査ロジックを常に最適な状態に保ち、検査精度を向上させることができる。特に、画像処理アルゴリズムそのものを変える必要がなく、閾値の微調整のみで検査ロジックの検査精度を向上させる場合に、最適な検査ロジックを得るまでのプロセスを短縮することができるので、有効である。
【0244】
なお、最適な閾値を算出する方法は、特に限定されないが、例えば、良品の上限値と不良品の下限値との中間値(良品の方が、特徴量が小さい場合)を最適な閾値として算出することなどが考えられる。
【0245】
図26(a)および(b)は、閾値調整部36の閾値調整処理の内容を示す図である。図26(a)に示すヒストグラムは、ある検査ロジックに基づいてあるワークの検査結果55が出力され、当該ワークの特徴量に基づいて、ある区間の度数が1追加される状態を示している。ここでH1は、上記検査ロジックの閾値を示す。
【0246】
ここで、区間B1に検査結果55が追加された場合、良品の集合と不良品の集合との距離D1は、D1のまま変動がない。よって、閾値調整部36は、中間値も変動がないことを認識し、閾値の更新を行わない。
【0247】
一方、区間B2に検査結果55が追加された場合、距離D1は、距離D2へと変動する。したがって、閾値調整部36は、良品の上限値の変動に伴って、図26(b)に示すとおり、新たな中間値(H2)を算出し、このH2の値を新たに閾値として設定し、検査ロジックを更新する。
【0248】
なお、上述の説明では、閾値を算出しなおして再設定するタイミングとして、ワークの検査結果が出力されるタイミングとしたが、これに限定されない。例えば、図26(a)の区間B2に度数が追加された場合のように、良品(不良品)の集合の上限値(下限値)が変動したときに、閾値の再計算を行うようにしてもよい。あるいは、良品の集合の中間値、平均値、最頻値などが変化したときに再計算してもよいし、または、検査結果が所定回数出力されるごとに再計算してもよい。
【0249】
さらに、上述の説明では、閾値調整部36が新たな閾値を算出した場合に自動で閾値を更新する構成としたが、これに限定されず、中間値が変動したことをユーザに通知して、新たな閾値に更新するか否かを問合せ、更新を指示する信号を受け付けてから閾値を更新する構成としてもよい。
【0250】
<検査不良修正機能>
統計データ修正部37は、統計データ記録部43に記録される各検査ロジックの統計データを修正するものである。具体的には、ユーザが操作部3(図1)を用いて入力する検査結果を操作受付部12を介して受け付けて、当該検査結果を上記統計データに反映する。あるいは、あらかじめ記録されているユーザが目視検査した場合の検査結果と比較して、ユーザの検査結果と異なる統計データを、ユーザの検査結果に合わせて修正する。
【0251】
この場合、修正したい統計データを、オフラインで(読み出しできないようにロックして)修正を実行するよう統計データ修正部37を構成することが好ましい。これにより、修正完了後の状態で、検査ロジック評価部33の評価を受けることができるので、修正内容を評価処理に正しく反映させることが可能となる。
【0252】
図27は、統計データ修正部37の統計データ修正処理の内容を示す図である。H1は、当該検査ロジックの閾値であるとする。表示制御部13は、ヒストグラム61を、表示部4を介してユーザに提示する。これにより、ユーザは、あるワークにおいて不良品と判別された検査結果56を目視確認し、それが良品であると判別した自身の目視検査の検査結果と異なっていることを確認する。統計データ修正部37は、ユーザにより操作受付部12を介して、検査結果56を不良品から良品の検査結果に変更する指示を受け付け、統計データ記録部43に記録される統計データを指示どおりに修正する(ヒストグラム62)。
【0253】
ここで、良品の上限値が変動したことにより、上述の閾値調整部36が、閾値を再計算し(ヒストグラム63)、当該検査ロジックの閾値をH1からH2へと更新する処理を実行してもよい(ヒストグラム64)。
【0254】
上述した方法で、各検査ロジックの統計データが修正され、閾値が更新された後、検査ロジック評価部33が評価値を算出することにより、より正確な評価を実行し、より適切なメイン検査ロジックを選択することが可能となる。
【0255】
上述の各実施形態では、本発明の検査制御装置200と検査モジュール20とを備えた検査システム100を、1台のコンピュータにて構築した場合について説明した。しかし、本発明の検査システムは上記構成に限定されない。例えば、検査モジュール20と検査制御装置200とをそれぞれ別のコンピュータにて実現し、検査モジュール20と検査制御装置200とを互いに通信可能なように接続した検査システムを構築してもよい。
【0256】
<実施形態3>
図28は、本発明の他の実施形態にかかる検査システムの概略構成を示す図である。図28に示すとおり、検査システム300は、メイン検査ロジックに基づいて検査を実行するメイン検査部21を備えた少なくとも1つの検査装置220と、メイン検査ロジック以外の検査ロジックに基づいて検査を実行するサブ検査部22を備えた少なくとも1つの検査装置231(検査装置232)と、各検査装置の検査ロジックの設定を行う検査制御装置200とを含んでいる。検査ロジックと検査装置とは1対1に対応しており、各検査装置が検査モジュール20を構成している。
【0257】
なお、図28の各構成要素に付された符号は、図1の各構成要素に付された符号に対応しており、同じ符号は、同じ構成要素を示している。したがって、上述の各実施形態ですでに説明した構成要素についての説明は繰り返さない。
【0258】
各検査装置は自身に設定されている検査ロジックを用いて検査を実行し、検査結果を検査結果記録部42に記録する。検査制御装置200は、検査結果記録部42の検査結果を取得して、統計処理、評価処理を実行して、最適な検査ロジックを選択する。選択された検査ロジックは、通信網を介して、検査ロジック選択部34により、検査装置220に対して設定される。あるいは、検査ロジック選択部34が送信する検査ロジック切替の指示を検査装置220が受信して、指示に基づき自身検査ロジックを切り替える構成としてもよい。
【0259】
<実施形態4>
図29は、本発明の他の実施形態にかかる検査システムの概略構成を示す図である。図29に示すとおり、検査システム400は、検査装置240と、検査装置240の検査ロジックの設定を行う検査制御装置200とを含んでいる。検査装置240は、内部に、メイン検査ロジックに基づいて検査を実行する少なくとも1つのメイン検査部21と、メイン検査ロジック以外の検査ロジックに基づいて検査を実行する少なくとも1つのサブ検査部22とを備えており、各検査部が検査モジュール20を構成している。検査ロジックと検査装置240内の検査部とは1対1に対応しており、検査モジュール20を1台のコンピュータで実現している点が、上述の検査システム300と異なる点である。
【0260】
検査装置240の各検査部は自身に設定されている検査ロジックを用いて検査を実行し、それぞれの検査結果を検査結果記録部42に記録する。検査制御装置200は、算出した評価値に基づいて最適な検査ロジックを選択し、各検査部の検査ロジックを設定する。あるいは、検査制御装置200が送信する検査ロジック切替の指示を検査装置240が受信して、指示に基づき、検査モジュール20の各検査部の検査ロジックを切り替える構成としてもよい。
【0261】
図30は、検査システム300または検査システム400における検査モジュールおよび検査制御部の処理の流れを示すフローチャートである。図30に示すとおり、検査の処理は、検査モジュール20により、評価の処理は、検査制御装置200によりそれぞれ実行されている。検査モジュール20は検査結果を検査制御装置200に送信し(S12)、検査制御装置200は、評価すべきタイミングを判断して(S13)、上記検査結果から各検査ロジックの検査精度を評価する(S14、S15)。検査制御装置200は、現在の検査モジュール20の検査ロジックが適切でないと判断した場合に(S16においてNO)、メイン検査ロジックを切り替えるよう指示信号を検査モジュール20に送信する(S17)。検査モジュール20は、S17にて送信される指示信号に応じて、メイン検査ロジック切り替えの指示を受信した場合に(S18においてYES)、検査ロジックを切り替えて(S19)、検査の処理を続行する。
【0262】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0263】
最後に、検査制御装置200の各ブロック、特に統計処理部32、検査ロジック評価部33、および、検査ロジック選択部34は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0264】
すなわち、検査制御装置200は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである検査制御装置200の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記検査制御装置200に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0265】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0266】
また、検査制御装置200を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0267】
本発明の検査制御装置は、生産環境の変動に応じて動的に検査ロジックを設定することができるので、生産ラインにおけるワークの良・不良を検査装置によって自動判別する検査システムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0268】
【図1】本発明の実施形態にかかる検査制御装置を適用した検査システムの要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる検査制御装置を適用した検査システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】2値重心面積画像処理アルゴリズムに基づいて画像処理されたワーク画像を示す図である。
【図4】キズ汚れ画像処理アルゴリズムに基づいて画像処理されたワーク画像を示す図である。
【図5】検査システムにおける、検査モジュールおよび検査制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】検査システムにおける、初期設定の処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】検査システムにおける、検査の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】検査結果記録部に記録される検査結果の例を示す図である。
【図9】検査システムおける、統計処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】統計処理部に入出力されるデータを模式的に示す図である。
【図11】統計データ記録部に記録される統計データの他の例を示す図である。
【図12】統計データ記録部に記録される複合判定の場合の統計データの例を示す図である。
【図13】検査システムにおける、検査ロジック評価処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】(a)は、評価値記録部に記録される検査ロジックの評価値の例を示す図であり、(b)は、評価値算出する際に検査ロジック評価部が参照する評価式の例を示す図である。
【図15】(a)〜(f)は、評価値算出方法の他の例を、統計データ(ヒストグラム)により示す図である。
【図16】閾値の位置による評価値の推移を示すグラフである。
【図17】検査システムにおける、検査ロジック選択処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】汚れ検査で検査システムが用いるのワークのサンプル画像を示す図である。
【図19】汚れ検査で起こる、生産環境の変動の例を示す図である。
【図20】検査ロジック管理部が行う初期設定の手順を示す図である。
【図21】生産個数、および、2値重心面積画像処理アルゴリズムを採用した検査ロジックによる検査結果の統計の推移を示す図である。
【図22】生産個数、および、キズ汚れ画像処理アルゴリズムを採用した検査ロジックによる検査結果の統計の推移を示す図である。
【図23】生産個数の増加に伴う、各検査ロジックの評価値の推移を示すグラフである。
【図24】検査ロジック選択部が行う検査ロジック切替の結果を示す図である。
【図25】本発明の検査制御装置における検査制御部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図26】(a)および(b)は、閾値調整部の閾値調整処理の内容を示す図である。
【図27】統計データ修正部の統計データ修正処理の内容を示す図である。
【図28】本発明の他の実施形態にかかる検査システムの概略構成を示すブロック図である。
【図29】本発明の他の実施形態にかかる検査システムの概略構成を示すブロック図である。
【図30】本発明の他の実施形態にかかる検査システムにおける、検査モジュールおよび検査制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0269】
1 制御部
2 通信部
3 操作部
4 表示部
10 入出力制御部
11 画像入力制御部
12 操作受付部(結果入力制御手段)
13 表示制御部(表示制御手段)
20 検査モジュール
21 メイン検査部
22 サブ検査部
30 検査制御部
31 検査ロジック管理部
32 統計処理部
33 検査ロジック評価部(評価手段)
34 検査ロジック選択部(検査ロジック選択手段/検査ロジック設定手段)
35 タイミング監視部
36 閾値調整部(閾値調整手段)
37 統計データ修正部(検査結果修正手段)
40 記録部
41 ワーク情報記録部
42 検査結果記録部
43 統計データ記録部
44 評価値記録部
45 検査ロジック記録部
100 検査システム
200 検査制御装置
300 検査システム
400 検査システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産ラインにおける生産対象物(ワーク)の良・不良を判別する検査装置に関するものであり、特に、検査に必要な各種設定を自動で行う検査制御装置、検査制御方法、検査システム、制御プログラム、および、記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、生産ラインにおいて、ワークの良・不良の判別を検査装置により自動化することが可能となっている。このような検査装置では、一般に、(1)ワークの状態に関する情報を取得し、(2)ワークの状態を数値化した特徴量をどのように抽出するかを規定したルールに基づいて特徴量を抽出し、(3)あらかじめ設定された判別関数(閾値)に基づき上記特徴量を判別することによって、ワークの良・不良を判別する。
【0003】
具体的には、例えば、ワークを撮影した画像を用いてワークの良・不良を判別する画像処理機能を備えた検査装置では、画像処理アルゴリズム(ルール)を利用して、画像をあるパラメータ空間に写像し(特徴量の抽出)、良品・不良品を分離する閾値に基づいて、ワークの良・不良を判別する。
【0004】
したがって、検査装置がワークを良品と不良品とに正しく分離するためには、いかなるルールを採用するか、あるいは、上記閾値をいかに定めるかということ正しく選択することが欠くことのできない重要事項である。上述のように検査装置に設定される、上記ルールや上記閾値などを以下では検査ロジックと称する。すなわち、検査ロジックとは、検査装置の良・不良の判別方法を規定する、検査装置に対する制御情報のことである。
【0005】
つまり、検査ロジックの設定を誤ってしまうと、良品を不良品と判定したり、不良品を良品と判定したりする検査不良が生じてしまう。
【0006】
検査ロジックは、サンプルデータ(ワークの状態に関する情報)を収集し、統計的なデータに基づいて設定するのが一般的である。収集するデータ数(サンプル数)が多ければ多いほど、より精度の高い検査ロジックあるいは閾値を得られるということは言うまでもない。
【0007】
特許文献1には、大量のデータから判別関数(閾値)を設定する外観検査方法及び装置が開示されている。具体的には、取り込んだ検査対象の画像から、該検査対象の状態を示すコードデータを生成して、各カテゴリーに選別されたサンプルの検査対象のコードデータに基づいて判別関数を求める。
【0008】
特許文献2には、複数の判定値に基づいて良否判定を行って、目視検査と近い判定結果を得られた判定値(閾値)を選択し設定する物品の検査方法および装置が開示されている。
【0009】
一般的に検査装置の設定を行う生産初期には、サンプル数が少ないため、良・不良の判定を行うための閾値(判別関数/判定値)を初めから正しく設定することは不可能に近い。そのため、生産を重ねてサンプル数を増やし、適宜、現在設定されている判別関数の適否を判断してより適切な判別関数を再設定する必要がある。
【0010】
しかし、特許文献1の装置では、誤判定(検査不良)が発生しないと再設定の要否が判断できない。結局、判別関数の適否は、人、特に経験を積んだ熟練者が判断するしかない。
【0011】
また、特許文献2に開示されているように、複数の判定値の中から最適なものを選ぶとはいえ、生産現場の環境の変化(生産設備の消耗や入れ替え、作業者の入れ替わりや熟練度の向上、ワークの型の変更など)に伴って、判定値の再設定が必要となるのが現状である。
【0012】
しかし、特許文献2の装置では、初期設定時に最適な判定値を設定することは開示されているものの、ライン稼動後にその設定を見直すといったことは考慮されていない。
【0013】
そこで、ライン稼動後も検査装置の検査精度を維持するために、特許文献3には、RGBストライプ(BMストライプ)のパターン幅やピッチを検査する自動診断機能付きストライプパターン検査装置が開示されている。
【0014】
ストライプパターン検査装置は、標準ストライプパターンを定期的に検査し、検査精度を自動診断する。さらに、実際に検査したストライプパターンの検査値を傾向管理して得られた情報を、BMストライプパターンを形成する露光台へフィードバックして、露光光源の照度を自動制御する。これにより、作業者による定期校正、補正、調整作業を必要とせずとも、検査環境に検査精度を維持することができ、製造品質の維持管理が容易になる。
【特許文献1】特開平8−254501(1996年10月1日公開)
【特許文献2】特開2001−242086(2001年9月7日公開)
【特許文献3】特開平10−40815(1998年2月13日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記従来の構成では、以下の問題を生じる。
【0016】
特許文献3の装置では、検査環境(検査装置のカメラレンズや照明の状態など)の変動を矯正できるものの、生産環境、例えば、ワーク(検査対象物)の変動には対応できないという問題を生じる。
【0017】
つまり、標準ストライプパターンは常に「標準」であることが前提になっている。したがって、検査対象物が変動すると、その新しい検査対象物にとって「標準」である標準ストライプパターンに交換しなければ検査精度を維持することができない。結果として、検査ロジック(この場合、標準ストライプパターン)の再設定の要否や適切な検査ロジックの選定は人が行う必要がある。
【0018】
上記生産環境の変動としては、例えば、生産設備を調整したことで部品取り付け位置のずれ幅の平均が変わったり、部品のロットやベンダが変わったことで画像の特徴(色、写り方)が変化したりすることなどが想定される。
【0019】
なお、上記の問題点は、ワークの画像から、画像処理アルゴリズムを用いて良・不良を判別する、画像処理機能を備えた検査装置に限定して生じるものではなく、上述の検査ロジックに基づいて品質検査を行う検査装置であれば、同様に生じるものである。
【0020】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、生産環境の変動に応じて動的に検査ロジックを設定することにより検査精度を向上させる検査制御装置、検査制御方法、検査システム、制御プログラム、および、記録媒体を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る検査制御装置は、上記課題を解決するために、良不良の判別方法を規定する検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールを制御する検査制御装置において、上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを、複数の検査ロジックの中から選択する検査ロジック選択手段と、上記検査モジュールが上記メイン検査ロジックを用いて生成した、対象物の良不良の判別結果を示す最終検査結果と、該メイン検査ロジックと異なる検査ロジックを用いて対象物の良不良を判別した場合の判別結果を示す評価用検査結果とに基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する評価手段と、上記検査ロジック選択手段が選択した検査ロジックをメイン検査ロジックとして切り替える検査ロジック設定手段とを備え、上記検査ロジック選択手段は、上記評価手段が評価した評価結果に基づいて、上記メイン検査ロジックを選択することを特徴としている。
【0022】
本発明に係る検査制御方法は、上記課題を解決するために、良不良の判別方法を規定する検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールを制御する検査制御装置における検査制御方法であって、上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを、複数の検査ロジックの中から選択する選択ステップと、上記検査モジュールが上記メイン検査ロジックを用いて生成した、対象物の良不良の判別結果を示す最終検査結果と、該メイン検査ロジックと異なる検査ロジックを用いて対象物の良不良を判別した場合の判別結果を示す評価用検査結果とに基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する評価ステップと、上記検査ロジック選択手段が選択した検査ロジックをメイン検査ロジックとして切り替える切替ステップとを含み、上記選択ステップでは、上記評価ステップによる評価結果に基づいて、上記メイン検査ロジックを選択することを特徴としている。
【0023】
上記構成および方法によれば、検査モジュールは、良不良の判別方法を規定する制御情報としての検査ロジックのうち、検査ロジック設定手段がメイン検査ロジックとして設定した検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別し、その判別結果を最終検査結果として出力する。最終検査結果とは、実際の生産ラインにおいて、不良の対象物を特定するのに採用される最終結果である。つまり、メイン検査ロジックに基づく判別方法によって、対象物の実際の検査が実行される。
【0024】
一方、検査モジュールは、上記メイン検査ロジック以外の検査ロジックを用いて対象物の良不良を判別する。こうして、検査モジュールにより、上記検査ロジック(メイン検査ロジックを含む)ごとに判別結果が得られる。
【0025】
ここで、評価手段は、検査ロジックごとの上記判別結果を評価する。このように、上記判別結果は、評価手段が検査ロジックごとにその検査精度を評価するときに参照するため、評価用検査結果であるといえる。評価方法は、具体的には、上記検査モジュールより検査ロジックごとに得られる評価用検査結果を、上記メイン検査ロジックによる最終検査結果に基づき評価して、検査精度を表す評価値を上記検査ロジックごとに算出する。
【0026】
次に、検査ロジック選択手段は、各検査ロジックの評価値に基づいて、上記検査モジュールが最終検査結果を出力するのに用いるメイン検査ロジックを選択する。選択されたメイン検査ロジックは、上記検査ロジック設定手段によって上記検査モジュールに設定される。上述したとおり、上記検査モジュールは、検査ロジック設定手段がメイン検査ロジックとして設定した検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別し、最終検査結果を出力する。
【0027】
これにより、実際の生産ラインに流れている対象物の不良品を検出するのに採用する、検査モジュールのメイン検査ロジックは、常に、その評価値に基づいて検査ロジック選択手段によって最適なものが選択される。選択されたメイン検査ロジックは、上記検査ロジック設定手段によって、動的に設定される。
【0028】
したがって、例えば、生産環境の変動に伴って、すでに設定されているメイン検査ロジックの評価値よりも、他の検査ロジックの評価値の方が、検査精度が高いことを表していることが判明すれば、検査ロジック選択手段は、より検査精度が高いと評価された検査ロジックを、検査モジュールのメイン検査ロジックとして選択することができる。つまり、より高い検査精度を有する検査ロジックを、メイン検査ロジックとして検査モジュールに対して自動で動的に再設定し、検査精度を維持、あるいは、高めることができる。
【0029】
生産ラインが稼動すれば、生産環境の変動は避けられない。例えば、生産設備や検査設備の消耗・故障・入れ替えや、物理的環境の変化(温度や湿度など)、あるいは、生産作業に携わる作業者の熟練度の変動、作業者の入れ替えなどが考えられる。生産環境が変動すれば、既に設定された検査ロジックが、常に最適な(高い検査精度を維持する)検査ロジックであるとは限らなくなる。
【0030】
しかし、本発明の検査装置によれば、複数の検査ロジックのうち、評価値に基づいて常に最適なものをメイン検査ロジックとして特定することができるので、生産環境の変動に応じて動的に検査ロジックを設定することにより検査精度を向上させることが可能となる。
【0031】
本発明に係る検査制御装置では、上記検査ロジックは、対象物の状態を示す特徴量の計測方法と、上記特徴量を分離して良不良を判別するための閾値とを規定し、上記評価手段は、上記評価用検査結果に含まれる対象物ごとに計測された特徴量と、上記最終検査結果が示す対象物の良品数および不良品数とに基づく統計データを用いて、各検査ロジックの検査精度を表す評価値を算出することにより評価することが好ましい。
【0032】
上記構成によれば、上記評価手段は、上記評価用検査結果に含まれる、対象物ごとに計測された特徴量と、上記最終検査結果が示す対象物の良品数および不良品数とに基づく統計データを用いて、各検査ロジックの検査精度を表す評価値を算出する。ここで、上記特徴量とは、対象物の状態を数値化して示すものであり、閾値に基づいて分離することができ、これによって、対象物の良不良を判別できるようにする情報のことである。
【0033】
すなわち、上述した統計データには、メイン検査ロジックが良品(あるいは不良品)と判別した対象物に対する、他の検査ロジックが計測した特徴量に基づく分布が含まれる。このような統計データから、メイン検査ロジックが良品(あるいは不良品)と判別した対象物に対し、他の検査ロジックは、いかなる特徴量に基づいてどう判別を行ったのかという情報が得られる。つまり、メイン検査ロジックの検査結果を元にして、他の各検査ロジックの検査結果を分析し、評価することができる。
【0034】
さらに、上記評価手段は、上記対象物の良品の集合から得られる良品特徴量と、不良品の集合から得られる不良品特徴量との差分に基づき評価値を算出することにより検査ロジックを評価してもよい。
【0035】
上記構成によれば、各検査ロジックの検査精度を、当該検査ロジックにて計測される、良品(メイン検査ロジックが判別したもの)特徴量と不良品特徴量との差分によって算出する。
【0036】
良品特徴量と不良品特徴量との差分が大きいことは、当該検査ロジックにおいて、メイン検査ロジックと同じ良品と不良品との判別が、より安全に確実に実行されていることを意味する。したがって、良品特徴量と不良品特徴量との差分が大きいほど、検査精度が高いと評価することができる。
【0037】
なお、対象物の良品(不良品)の集合から得られる良品(不良品)特徴量を求める方法は特に限定されない。例えば、良品(不良品)の集合内の特徴量の平均値、中央値、最頻値、上限値、下限値などを良品(不良品)特徴量として用いればよい。
【0038】
さらに、上記評価手段は、上記対象物の特徴量が閾値より小さいと良品であると判別される場合に、上記不良品の集合の特徴量の下限値である不良品下限値と上記良品の集合の特徴量の上限値である良品上限値との差分に基づき評価値を算出し、上記対象物の特徴量が閾値より大きいと良品であると判別される場合に、上記良品の集合の特徴量の下限値である良品下限値と、上記不良品の集合の特徴量の上限値である不良品上限値との差分に基づき評価値を算出することにより検査ロジックを評価してもよい。
【0039】
これにより、各検査ロジックの検査精度をより正確に評価することができる。
【0040】
つまり、1つの閾値によって、全対象物の特徴量をメイン検査ロジックの最終検査結果と同じく良品と不良品とに切り分けたいとき、検査ロジック特徴量に基づく良品の集合と不良品の集合との距離は、大きければ大きいほどよく、少なくとも重ならないようにしなければならない。
【0041】
より具体的には、上記対象物の特徴量が閾値より小さいと良品であると判別される場合、不良品の集合で計測された特徴量のうち、最小の特徴量(不良下限値)から、良品の集合で計測された特徴量のうち、最大の特徴量(良品上限値)を差し引いた値(差分)は、大きければ大きいほどより安全に最終検査結果と同じく良不良を判別できていることとなる。一方、上記差分が0以下になると、良品の集合と、不良品の集合とを正しく切り分けられない(良品を不良品と判別したり、不良品を良品と判別したりする検査不良が発生する)可能性があると判断される。
【0042】
上記対象物の特徴量が閾値より大きいと良品であると判別される場合は、上述の場合とは逆に、良品下限値から不良品上限値を差し引いた値(差分)が大きいほど評価が高く、差分が0以下であれば、検査不良が発生するほど検査精度が低いと判断される。
【0043】
このように、上記差分が0以下になるような検査ロジックを高く評価しないようにすることで、検査不良を発生させるおそれのある低い検査精度の検査ロジックが選択されないようにすることができ、結果として、検査モジュールの検査精度を向上させることが可能となる。
【0044】
さらに、上記評価手段は、上記差分を上記良品特徴量の分散で除して得た商に基づき評価値を算出することにより検査ロジックを評価することが好ましい。
【0045】
これにより、異なる検査ロジック間で計測される特徴量の単位が互いに異なっている場合でも、検査精度の比較、評価を行うことが可能となる。例えば、面積を特徴量として判別を行う検査ロジックと、個数を特徴量として判別を行う検査ロジックとを、共通の尺度を用いて適正に評価することが可能となる。
【0046】
つまり、上記差分とは、良品の集合と不良品の集合との間の距離を示しており、距離の値が大きいほど、良品不良品を安全に切り分けられているとして、評価が高くなる。良品特徴量の分散とは、良品の集合のばらつきを示しており、ばらつきの値が大きいほど、特徴量の計測手順に信頼性がなく評価が低くなる。よって、距離を良品特徴量の分散で除して求めた商が大きければ大きいほど検査精度が高いとして、共通の尺度で各検査ロジックを比較することが可能となる。
【0047】
あるいは、上記評価手段は、上記対象物の良品の集合から得られる良品特徴量と上記閾値との差分、および、不良品の集合から得られる不良品特徴量と上記閾値との差分の少なくともいずれか一方に基づき評価値を算出することにより検査ロジックを評価してもよい。
【0048】
上記構成によれば、良品の集合と、不良品の集合との距離ではなく、両者の間にあると考えられる閾値との距離に基づいて評価値を算出する。これにより、閾値が適正に設定されている検査ロジックを評価することが可能となる。
【0049】
さらに、上記評価手段は、(1)上記良品特徴量と、不良品特徴量との差分を差分A、(2)上記不良品特徴量と上記閾値との差分を差分B、(3)上記良品特徴量と上記閾値との差分を差分Cとして、「評価式:|差分A−差分B/差分C|」に基づき評価値を算出することにより検査ロジックを評価してもよい。
【0050】
上記構成によれば、評価手段は、良品特徴量と閾値との距離(差分C)よりも、不良品特徴量と閾値との距離(差分B)に対して重みをかけて、差分Bの方が小さい場合(すなわち、不良品の集合の方が閾値に近い場合)には、特に評価が下がるような評価値を算出する。
【0051】
これにより、不良品を良品と判別してしまうような検査ロジックの評価は低く算出され、このような検査ロジックがメイン検査ロジックとして誤って選択されるという不都合を解消することができる。
【0052】
これは、良品を不良品と判別してしまう検査不良よりも、不良品を良品と判別してしまう検査不良(見逃し)の方が、深刻な事故となるという考えに基づいている。見逃しをしてしまうような検査ロジックがメイン検査ロジックとして誤って選択されるおそれがなくなる。結果として、検査モジュールの検査精度を向上させることが可能となる。
【0053】
なお、上述の評価式の場合、評価値の数値は小さいほど評価が高いことを意味する。
【0054】
さらに、上記評価手段は、上記最終検査結果においてメイン検査ロジックにて不良品と判別された対象物のうち、上記評価用検査結果において検査ロジックにて良品と判別された対象物数に基づいて、検査ロジックを評価してもよい。
【0055】
上記構成によれば、上記評価手段は、上述の見逃しの検査不良の発生件数に基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する。例えば、見逃し件数が0件の検査ロジックを高く評価したり、見逃し件数が多いものほど低く評価したりするなどして評価値を算出すればよい。
【0056】
これにより、見逃しをしてしまうような検査ロジックがメイン検査ロジックとして誤って選択されるおそれがなくなる。結果として、検査モジュールの検査精度を向上させることが可能となる。
【0057】
上記検査ロジック設定手段は、上記検査ロジック選択手段が上記評価手段が評価した評価結果に基づき新たに選択した検査ロジックと、上記検査モジュールが使用中のメイン検査ロジックとが異なる場合に、メイン検査ロジックを切り替えることが好ましい。
【0058】
これにより、検査モジュールに現時点で設定されている元のメイン検査ロジックよりも、適正なメイン検査ロジックが新たに選択されたときに、その新しいメイン検査ロジックを用いて検査モジュールが検査を実行できるようにメイン検査ロジックを切り替えることができる。
【0059】
さらに、上記検査ロジック設定手段は、上記評価手段が、上記検査モジュールが使用中のメイン検査ロジック以外の検査ロジックを当該メイン検査ロジックより高く評価した時にメイン検査ロジックを切り替えることをことが好ましい。
【0060】
これにより、常に、最も評価が高い検査ロジックをメイン検査ロジックに設定して検査を実行するよう検査モジュールを制御することができる。
【0061】
あるいは、上記検査ロジック設定手段は、上記評価結果に含まれる、上記検査モジュールが使用中のメイン検査ロジックの検査精度を表す評価値を監視し、該評価値の微分値に基づいて、メイン検査ロジック切り替えのタイミングを算出し、算出したタイミングにてメイン検査ロジックを切り替えてもよい。
【0062】
上記構成によれば、上記評価手段が算出する上記検査モジュールが使用中のメイン検査ロジックの評価値を監視して、該評価値の推移を記録し、求めた微分値に基づいてメイン検査ロジックの適正な切り替えのタイミングを算出する。
【0063】
これにより、メイン検査ロジックの評価値の低下の勢いを検知して、当該メイン検査ロジックが最適でなくなる時点をあらかじめ予測することができる。したがって、例えば、評評価の逆転が起こる前に、次点の(あるいは、最も評価値の上昇率が大きい)検査ロジックに前もって切り替えておくことなどが可能となる。
【0064】
結果として、検査不良を未然に防止し、検査モジュールの検査精度を向上させることが可能となる。
【0065】
本発明の検査制御装置は、上記構成に加えて、上記検査結果を表示するよう表示部を制御する表示制御手段と、表示された検査結果と同じ検査対象の対象物に対する、ユーザによる検査のユーザ検査結果の入力を受け付ける結果入力制御手段と、上記結果入力制御手段が受け付けたユーザ検査結果に基づき、上記表示制御手段が表示部に表示した検査結果を修正する検査結果修正手段とを備えていることが好ましい。
【0066】
上記構成によれば、表示制御手段は表示部を制御して、検査モジュールが検査ロジックを用いて行った対象物の良不良の判別結果を示す検査結果を表示する。これにより、ユーザは、検査モジュールの検査結果を目視確認することができる。
【0067】
そして、上記結果入力制御手段は、上記対象物に対する、ユーザが検査を行って得られた結果としてのユーザ検査結果の入力を受け付ける。
【0068】
最後に、上記検査結果修正手段は、上記表示制御手段が表示部に表示した検査結果が、上記結果入力制御手段が受け付けたユーザ検査結果と異なる場合、ユーザ検査結果に基づいて上記検査結果を修正する。
【0069】
これにより、ユーザが検査を行った結果と異なる検査結果が検査モジュールより出力された場合でも、ユーザが、自身が行った検査結果を反映して、検査結果を修正することが可能となる。そして、修正された検査結果に基づいて、各検査ロジックの評価が行われるので、より、正確に適正なメイン検査ロジックの選択・設定を実行することが可能となる。
【0070】
本発明の検査制御装置は、上記構成に加えて、各検査ロジックの統計データを用いて、検査ロジックの閾値を算出し、検査ロジックの閾値を決定する閾値調整手段を備えていることが好ましい。
【0071】
これにより、検査ロジックが規定する閾値を、当該検査ロジックに基づく検査結果に応じて、常に最適に保つことが可能となる。したがって、生産環境の変動があっても、当該検査ロジックの検査精度を向上させることができる。
【0072】
本発明に係る検査システムは、上記課題を解決するために、良不良の判別方法を規定する検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールと、良不良の判別結果を示す最終検査結果を生成するのに上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを選択する上述の検査制御装置とを含むことを特徴としている。
【0073】
これにより、検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールと、その制御を行う検査制御装置とを含んだ、生産環境の変動に応じて動的に検査ロジックを設定することにより検査精度を向上させる検査システムを構築することができる。
【0074】
なお、上記検査制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記検査制御装置をコンピュータにて実現させる検査制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0075】
本発明に係る検査制御装置は、以上のように、上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを、複数の検査ロジックの中から選択する検査ロジック選択手段と、上記検査モジュールが上記メイン検査ロジックを用いて生成した、対象物の良不良の判別結果を示す最終検査結果と、該メイン検査ロジックと異なる検査ロジックを用いて対象物の良不良を判別した場合の判別結果を示す評価用検査結果とに基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する評価手段と、上記検査ロジック選択手段が選択した検査ロジックをメイン検査ロジックとして切り替える検査ロジック設定手段とを備え、上記検査ロジック選択手段は、上記評価手段が評価した評価結果に基づいて、上記メイン検査ロジックを選択する。
【0076】
本発明に係る検査システムは、以上のように、良不良の判別方法を規定する検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールと、良不良の判別結果を示す最終検査結果を生成するのに上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを選択する、上述の検査制御装置とを含んでいる。
【0077】
本発明に係る検査制御方法は、以上のように、上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを、複数の検査ロジックの中から選択する選択ステップと、上記検査モジュールが上記メイン検査ロジックを用いて生成した、対象物の良不良の判別結果を示す最終検査結果と、該メイン検査ロジックと異なる検査ロジックを用いて対象物の良不良を判別した場合の判別結果を示す評価用検査結果とに基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する評価ステップと、上記検査ロジック選択手段が選択した検査ロジックをメイン検査ロジックとして切り替える切替ステップとを含み、上記選択ステップでは、上記評価ステップによる評価結果に基づいて、上記メイン検査ロジックを選択する。
【0078】
したがって、生産環境の変動に応じて動的に検査ロジックを設定することにより検査精度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
<実施形態1>
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すると以下の通りである。本実施形態では、一例として、ワーク(対象物)を撮影して取得したワーク画像を、画像処理アルゴリズムを用いて特徴量を抽出し、当該抽出した特徴量を閾値に基づいて判別することにより各ワークの良・不良を判定する検査システムに適用される検査制御装置について説明する。
【0080】
〔検査システムの概要〕
図2は、本発明の実施形態にかかる検査制御装置を適用した検査システムの概略構成を示すブロック図である。図2に示すとおり、検査システム100は、制御部1、通信部2、操作部3、表示部4、および、記録部40を備えた構成となっている。そして、生産ラインを流れるワークWを撮影してワーク画像を生成する撮像部Cと検査システム100とは、インターネットやLAN(local area network)などで実現される、無線もしくは有線の通信網を介して接続されている。
【0081】
通信部2は、撮像部Cから上記ワーク画像を受信するものである。通信部2が受信したワーク画像は、制御部1の入出力制御部10を介して検査モジュール20に供給される。
【0082】
操作部3は、ユーザが検査システム100を動作させるための指示信号を入力するものであり、例えば、検査システム100を遠隔操作するリモコンや、検査システム100自体に設けられた操作ボタン、あるいは、検査システム100に接続された、マウスやキーボードなどで構成されている。操作部3を用いてユーザにより入力された指示信号は、入出力制御部10を介して、制御部1の各部に送られる。これにより、ユーザは検査システム100を操作することが可能となる。
【0083】
表示部4は、記録部40に記録される、ワーク画像や検査結果などの各種データを出力するものであり、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、またはCRT(cathode-ray tube)ディスプレイなどの表示装置で構成される。これにより、ユーザは、必要に応じて撮像部Cが生成したワーク画像からワークの良不良を目視検査したり、あるいは、生産ラインに流れる各ワークの良不良の検査結果を確認したりすることが可能となる。
【0084】
なお、撮像部Cを検査システム100が内蔵していてもよい。この場合、撮像部Cと検査システム100とを接続する通信網を構築する必要がなくなり、また、通信部2が不要になる。
【0085】
制御部1は、検査システム100を統括制御するものであり、内部に、入出力制御部10、検査モジュール20、および、検査制御部30を有している。制御部1は、記録部40に記録されている各種プログラムを読み出して、本発明の検査システムの各部を制御し、検査または検査制御などの処理を行う。
【0086】
制御部1の検査モジュール20は、撮像部Cが生成するワーク画像を、設定された検査ロジックに基づき解析することにより、ワークWの良不良を判別するものである。検査ロジックとは、上述したとおり、検査モジュール20が実行する良不良の判別方法を規定する、検査モジュール20に対する制御情報のことである。本実施形態では、検査ロジックは、ワーク画像からワークWの特徴量を抽出するための方法を規定した画像処理アルゴリズムと、上記特徴量を良品と不良品とに分離するための閾値との組合せであるとする。画像アルゴリズムについての詳細は後述する。
【0087】
制御部1の検査制御部30は、検査ロジックを管理し、検査モジュール20が用いる検査ロジックの設定を行うものであり、検査モジュール20を制御するための検査制御装置200を構成している。検査制御装置200は、操作部3、表示部4、および、制御部1の入出力制御部10を含んでいてもよい。
【0088】
記録部40は、制御部1が実行する制御プログラム、OSプログラム、および、制御部1が検査または検査制御の処理を実行するときに読み出す各種データを記録するものであり、ハードディスクなどの不揮発性の記憶装置によって構成されるものである。記録部40に記録される上記各種データとしては、例えば、撮像部Cが生成したワーク画像や、検査モジュール20が出力する検査結果などが挙げられる。
【0089】
次に、生産環境の変動に応じて動的に検査ロジックを設定することにより検査精度を向上させることが可能な検査システム100における制御部1および記録部40の詳細について説明する。
【0090】
〔検査システムの詳細〕
図1は、本発明の実施形態にかかる検査制御装置を適用した検査システムの要部構成を示すブロック図である。図1に示すとおり、制御部1の入出力制御部10は、内部に、画像入力制御部11、操作受付部(結果入力制御手段)12、および、表示制御部(表示制御手段)13を有する。検査モジュール20は、内部に、少なくとも1つのメイン検査部21、および、少なくとも1つのサブ検査部22を有する。検査制御部30は、内部に、検査ロジック管理部31、統計処理部32、検査ロジック評価部(評価手段)33、および、検査ロジック選択部(検査ロジック選択手段/検査ロジック設定手段)34を有する。記録部40は、ワーク情報記録部41、検査結果記録部42、統計データ記録部43、評価値記録部44、および、検査ロジック記録部45を含んでいる。
【0091】
画像入力制御部11は、撮像部Cが生成したワーク画像を、通信部2を介して受け付けるものである。画像入力制御部11が受け付けたワーク画像は、記録部40のワーク情報記録部41に記録される。
【0092】
操作受付部12は、操作部3を用いてユーザにより入力された指示信号を受け付けるものである。操作受付部12が受け付けた指示信号は、制御部1に供給され、当該指示信号が指示する処理を実行する制御部1の各部に伝達される。
【0093】
表示制御部13は、記録部40に記録される各種データを表示するよう表示部4を制御するものである。上記各種データとは、例えば、ワーク情報記録部41に記録されるワーク画像、検査結果記録部42に記録される、検査モジュール20が出力した検査結果、統計データ記録部43に記録される統計データ、評価値記録部44に記録される検査ロジックの評価値、および、検査ロジック記録部45に記録される検査ロジックなどが挙げられる。各記録部に記録される各種データの詳細については後述する。
【0094】
ユーザは、操作部3を操作することによって、表示制御部13に対して、確認したいデータを表示するよう指示を入力することができ、所望のデータを閲覧することが可能となる。また、表示制御部13は、表示されたデータを操作によって変更したり、修正したりできるようにGUI(graphical user interface)画面を表示部4に表示する制御を行ってもよい。
【0095】
検査モジュール20は、検査ロジック記録部45に記録されている検査ロジックを用いて、ワークの良不良を判別するものである。より具体的には、(1)ワークを撮影したワーク画像を取得し、(2)検査ロジックに含まれる画像アルゴリズムに基づいて、ワークの特徴量を抽出し、(3)検査ロジックに含まれる閾値に基づき上記特徴量を分離して、当該ワークの良・不良を判別する。検査モジュール20は、メイン検査部21と、サブ検査部22とから構成されている。
【0096】
メイン検査部21は、良不良の判別結果を示す最終の検査結果を出力するためのメイン検査ロジックL1を用いてワークの検査を行うものである。メイン検査部21が出力した検査結果が、当該生産ラインの各ワークを良品・不良品を定める最終検査結果として採用される。
【0097】
よって、メイン検査部21が出力した検査結果によって不良品として特定されたワークは、生産ラインから除外されたり、アラームを出力してユーザに不良品の存在を知らせたりして、不良品と判別されたワークが、良品の最終品として誤って排出されることがないよう適切な措置が講じられる。
【0098】
サブ検査部22は、検査ロジック記録部45に記録されている複数の検査ロジックのうち、上記メイン検査ロジック以外の検査ロジックL2(L3・・・)を用いて、ワークの検査を行うものである。サブ検査部22が出力した検査結果は、検査制御部30が検査ロジックの検査精度の評価を行うのに用いられる。
【0099】
メイン検査部21およびサブ検査部22が出力する検査結果は、検査結果記録部42に記録される。また、メイン検査部21が出力する検査結果を含め、各検査部が各検査ロジックに基づいて出力した各検査結果は、評価用検査結果として、検査制御部30によって、検査結果記録部42から必要に応じて読み出される。
【0100】
したがって、以下では、検査ロジックの評価のために検査モジュール20が出力する検査結果を評価用検査結果、生産ラインの各ワークを良品・不良品を検査するために実際に採用される検査結果を最終検査結果と称して区別する。特に区別する必要がない場合は、単に検査結果と称する。よって、メイン検査部21が出力する検査結果は、評価用検査結果として検査制御装置200によって読み出されるとともに、最終検査結果として採用され出力される。
【0101】
本実施形態では、検査ロジックと検査部とが1対1に対応しており、最終検査結果を出力する1つのメイン検査部21が、検査ロジック記録部45に記録される複数の検査ロジックのうち常に1つ定められるメイン検査ロジックL1(図1では検査ロジックA)を用いて最終検査結果を出力するものとする。また、各サブ検査部22(サブ検査部22a、サブ検査部22b・・・)は、それぞれ、メイン検査ロジックとは異なる検査ロジックL2、L3・・・(図1では、検査ロジックB、C・・・)を用いて、それぞれの評価用検査結果を出力するものとする。
【0102】
なお、検査モジュール20の構成は上記に限定されない。メイン検査部21およびサブ検査部22は、それぞれ少なくとも1つあればよく、メイン検査部21を複数設けてもよいし、サブ検査部22を1つ設けてもよい。なお、メイン検査部21を複数設ける場合は、各メイン検査部21が出力する検査結果からどのように最終検査結果を得るのかを定めたルール(複合判定論理式)を各メイン検査部21の組合せ(メイン検査ロジックの組合せ)ごとに関連付けて記録しておけばよい。
【0103】
検査制御部30は、検査ロジックを管理し、検査モジュール20が用いる各検査ロジックの評価に基づいて、メイン検査ロジックを選択するものである。より具体的には、(1)統計処理部32が、検査ロジックごとの検査結果を読み出して、メイン検査ロジックの最終検査結果を基準に統計処理を行い、(2)検査ロジック評価部33が、統計処理部32の出力する統計データに基づいて、各検査ロジックの検査精度を示す評価値を算出し、(3)検査ロジック選択部34が、上記評価値に基づいて、メイン検査ロジックとすべき最適な検査ロジックを選択する。検査ロジック選択部34は、選択した検査ロジックをメイン検査ロジックとして検査モジュール20のメイン検査部21に設定する。
【0104】
検査ロジック管理部31は、検査ロジック記録部45に記録されている検査ロジックを管理するものである。具体的には、ユーザの指示に応じて、検査ロジックを新規に追加、更新、削除したり、ユーザが入力する条件に応じて、条件を満たす検査ロジックを検査ロジック記録部45から抽出してユーザに提示したり、ユーザが指定する検査ロジックをメイン検査ロジックとしてメイン検査部21に設定するよう検査ロジック選択部34を制御したりする。
【0105】
ワーク情報記録部41は、生産ラインを流れるワークを撮像部Cが撮影することにより生成したワーク画像を記録するものである。本実施形態では、生産ラインを流れるワークに対して、ワークを個々に識別するためのワークIDが付与されている。ワーク情報記録部41には、上記ワーク画像をワークIDに対応付けて記録しているものとする。
【0106】
検査結果記録部42は、メイン検査部21が、設定されているメイン検査ロジックを用いて、上記ワーク画像に対して良不良を判別した結果(最終検査結果)、および、サブ検査部22が、それぞれに設定されている他の検査ロジックを用いて、ワークの良不良を判別した結果(評価用検査結果)を記録するものである。
【0107】
検査結果記録部42には、ワークIDに対応付けて、メイン検査部21が判別した良不良の最終検査結果が記録される。当該判別結果がどのメイン検査ロジックを用いて得られた結果であるのかが明確になるよう、検査ロジックごとに付与されるロジックIDも関連付けて記録する。
【0108】
また、ワークIDと、検査モジュール20内の各検査部に設定されている検査ロジックのロジックIDとの組合せごとに、メイン検査部21および各サブ検査部22が判別した良不良の評価用検査結果が記録される。さらに、評価用検査結果には、良不良の判別結果のみならず、検査ロジックの画像処理アルゴリズムにしたがってワーク画像から抽出された特徴量を上記組合せに関連付けて記録する。
【0109】
統計データ記録部43は、各検査部の検査ロジックごとの評価用検査結果に基づいて、統計処理部32が統計処理を行って作成した統計データを記録するものである。具体的には、例えば、ある検査ロジックによる良品(あるいは不良品)の集合おける、特徴量の上限および/または下限を、検査ロジックごとに記録する。また、ある検査ロジックにおけるワークの特徴量をある区間ごとに分けて区間ごとに求めた度数を記録する。
【0110】
これらの統計データは、ユーザに評価用検査結果を提示するために、例えば、ヒストグラムとして加工される。
【0111】
なお、統計処理部32が作成する統計データは、上述の例に限定されず、各検査ロジックの評価用検査結果から統計的に求められるあらゆるデータ(平均値、中央値、分散、上限値と下限値との差分など)を含んでいてもよい。
【0112】
評価値記録部44は、上記統計データから、検査ロジック評価部33が検査ロジックごとに算出した評価値を記録するものである。検査ロジック評価部33によって、メイン検査ロジックの検査結果を基準として算出された評価値は、ロジックIDに関連付けて記録される。
【0113】
検査ロジック記録部45は、検査モジュール20の各検査部がワークの検査に用いる検査ロジックを記録するものである。検査ロジックは、ロジックIDにより管理されており、ロジックIDに、画像処理アルゴリズムと閾値とが関連付けて記録されている。
【0114】
画像処理アルゴリズムとは、検査モジュール20が、撮像部Cから取得したワーク画像からワークの特徴量を抽出する方法を定めたものである。例えば、ワーク画像から特定の検査対象となる領域を絞り込むための手順や、ワーク画像から特徴量としての数値を算出するための計算式などが画像処理アルゴリズムに含まれる。
【0115】
また画像処理アルゴリズムには、上記計算式や手順をより具体的に規定するためのパラメータが用意されている。
【0116】
したがって、画像処理アルゴリズムのパラメータや上記閾値に、さまざまな実際の値を設定することにより、ひとつの検査ロジックの雛型から、さまざまな画像処理アルゴリズムと閾値とからなる検査ロジックを完成させることが可能となる。
【0117】
以下では、検査ロジックについて具体例を挙げて説明する。
【0118】
(画像処理アルゴリズム1−2値重心面積)
「2値重心面積」の画像処理アルゴリズムは、ワーク画像を2値化して、白または黒の画素の面積に基づいて特徴量を抽出するアルゴリズムである。
【0119】
図3は、2値重心面積画像処理アルゴリズムに基づいて画像処理されたワーク画像を示す図であり、ワークとして、錠剤・カプセル剤などを包装するPTP(Press Through Package)シートを撮影したものである。図3(a)は、良品(PTPシートに錠剤が6つ過不足なく梱包された状態)の見本を示している。図3(b)は、不良品(錠剤が不足している状態)の見本を示している。
【0120】
まず、白い錠剤を6つ梱包したPTPシート(ワーク)を撮影してワーク画像を取得する。2値重心面積画像処理アルゴリズムでは、撮像部Cから取り込んだ256階調の濃淡がついた画像を、画像の濃度差に応じて白または黒の画素に変換する手順が規定されている。白い錠剤が梱包されている部分だけが白くなるように画像処理が行われる。そして、2値重心面積画像処理アルゴリズムでは、2値化した画像から白画素部分の面積(特徴量)を計測する手順が定められている。
【0121】
このように、特徴量としての白画素部分の面積が計測されると、検査ロジックにおいて当該画像処理アルゴリズムに対応する閾値と対比することができ、図3(b)に示すように、白画素の面積が閾値以下である場合に錠剤の不足を検知することが可能となる。
【0122】
なお、白画素部分を特定する画像アルゴリズムと、白画素部分の配置を把握して位置を確認する画像処理アルゴリズムとを用いれば、重心位置が正しいか否かなどの検査を行うことも可能である。
【0123】
また、生産するPTPシートに梱包される錠剤に変動があって錠剤の色が白以外の別の色である場合、何色に着目するか、どう2値化を行うか、などのパラメータを変更するだけでよい。あるいは、錠剤の大きさに変動がある場合には、面積の閾値を調整すればよい。
【0124】
(画像処理アルゴリズム2−キズ汚れ)
「キズ汚れ」の画像処理アルゴリズムは、ワーク画像内に計測領域を特定し、計測領域内の濃度の変化に基づいて特徴量を抽出するアルゴリズムである。これにより、ワークの欠陥を検出することが可能となる。
【0125】
図4は、キズ汚れ画像処理アルゴリズムに基づいて画像処理されたワーク画像を示す図である。
【0126】
キズ汚れ画像処理アルゴリズムでは、取得したワーク画像の計測領域Rを特定する手順、および、その計測領域内の濃度(明るさ)のばらつきを特徴量として抽出する手順が規定されている。
【0127】
そして明るさのばらつきの閾値と対比してキズ・汚れなどの欠陥部分Bの有無を検査することができる。
【0128】
このような画像処理アルゴリズムは、無地のワークに対するキズや汚れ、あるいは、部品欠けやバリなどの外観検査に適している。
【0129】
また、キズ汚れ画像処理アルゴリズムにおいても、検出したい欠陥の性質(色・形・大きさなど)に応じて、パラメータ(計測領域や濃度のばらつきの求め方を特定する値)を適宜調節することで、さまざまな画像処理アルゴリズムを提供することができる。
【0130】
なお、画像処理アルゴリズムは、上述した例に限定されず、ワーク画像から画像処理を行うなどして特徴量を抽出する手順を定める情報であればなんでもよい。
【0131】
〔検査システムのフロー概略〕
次に、図5に基づいて、上述した検査モジュール20、検査制御部30の各部が行う、検査および検査制御の処理の流れの概略を説明する。図5は、検査システム100における、検査モジュール20および検査制御部30の処理の流れを示すフローチャートである。
【0132】
(1)初期設定
初期設定ステップS1では、検査ロジック管理部31が生産ライン稼動前に、実際の良不良判別に用いるメイン検査ロジックを、検査ロジック記録部45から選択してメイン検査部21に設定する。
【0133】
具体的には、ユーザが、初期ティーチングのためのサンプル画像や検査内容を入力し、検査ロジック管理部31が、検査ロジックの候補を抽出する。そして、ユーザが検査ロジック候補を評価し、その中で最適なものをメインの検査ロジックとし、その他をサブの検査ロジックとする。ユーザがメイン検査ロジックを選択(あるいは、作成)する。
【0134】
(2)検査
検査ステップS2では、検査モジュール20のメイン検査部21およびサブ検査部22が設定された各検査ロジックで検査を行い、良品・不良品を判別する。検査ロジックに基づく、特徴量や判別結果を検査結果として検査結果記録部42に保存する。
【0135】
(3)統計処理
統計処理ステップS4では、統計処理部32が、検査ロジックごとの各検査結果を検査結果記録部42から読み出し、統計的な処理を行う。
【0136】
(4)検査ロジック評価
評価ステップS5では、検査ロジック評価部33が、S4で得られる統計データに基づいて、各検査ロジックの評価値を算出する。
【0137】
(5)検査ロジック選択
検査ロジック選択部34は、メイン検査ロジックとして最適な検査ロジックを選択する。具体的には、各検査ロジックの評価値を比較し、現在のメイン検査ロジックが、他の検査ロジックと比較して最適であるかどうかを判定する(S6)。現在のメイン検査ロジックが候補の中で最適でないと判定した場合は(S6においてNO)、候補の中で最適と判定した検査ロジックを、新しいメイン検査ロジックとして選択し、メイン検査部21に設定する。
【0138】
なお、図5のステップS3に示すとおり、検査結果を評価するための処理を実行するタイミングか否かを判定するステップを挿入してもよい。図1に示すタイミング監視部35は、検査システム100のあらゆる状態を監視して、所定の状態を検知した場合に、検査ロジックの評価ための処理を、検査制御部30の各部(ここでは、統計処理部32)が開始するよう制御するものである。
【0139】
具体的には、例えば、検査ロジック評価のための、一連の処理の実行時間を監視して、1時間に1回評価するように設定がされている場合、タイミング監視部35は、最後に処理が実行されてから1時間経過した時点を検知して、統計処理部32が処理を開始するよう制御する。
【0140】
なお、評価の処理を実行するタイミングは、上述した例(所定時間ごとに評価する構成)に限定されない。例えば、検査モジュール20が、ワーク1つを検査するごとに毎回評価を行う構成としてもよいし、ワークを所定数検査するごとに評価を行う構成としてもよい。
【0141】
以下、図1に示す検査システム100における検査および検査制御の処理の流れについてより詳細に説明する。
【0142】
〔検査システムのフロー詳細〕
(1)初期設定
初期設定とは、生産ラインを稼動する前に、当該ラインで生産対象となるワークの良不良を検査するためのメイン検査ロジックを選択し、メイン検査部21に設定する作業のことである。メイン検査ロジックの設定は、検査ロジック管理部31が実行する。検査ロジック管理部31は、ユーザから入力される条件や指示に応じて、メイン検査ロジックを選択し、メイン検査部21に設定する。あるいは、検査ロジック選択部34が選択する検査ロジックをメイン検査ロジックとして設定してもよい。
【0143】
図6は、検査システム100における、初期設定の処理の流れを示すフローチャートである。
【0144】
まず、検査ロジック管理部31は入出力制御部10を介して、サンプル画像の入力を受け付けて、ワークのサンプル画像を取得する(S101)。サンプル画像は、実際の生産ラインを流れるワークと同じものを撮影したものである。あるいは、過去に生産され、検査されたときに得たワーク画像をサンプル画像としてもよい。いずれにしてもサンプル画像は、検査に用いるワーク画像と同じように撮影されたものを準備して、これから実際に生産されるワークのワーク画像の見本として取り扱う。
【0145】
サンプル画像は、可能な限り多数、また、想定し得るあらゆるパターン(特に不良品のパターン)を準備することが好ましい。このようにすれば、精度の高いティーチングを行って、生産ラインが不安定になりがちな稼動初期においても精度の高いメイン検査ロジックを用いて検査を実行することができる。
【0146】
次に、稼動する生産ラインにおいて実施する検査についての情報を取得する(S102)。具体的には、ユーザがどのような検査を行いたいのか検査の内容を入力したものを受け付けることが考えられる。検査の内容としては、ワークの向きを検査する向き検査、ワークの有無、当該工程で組みつけられているべき部品の有無などを検査する有無検査、ワークのキズや汚れを確かめる検査、などが挙げられる。
【0147】
例えば、ユーザが汚れの検査を行うことを入力した場合、検査ロジック管理部31は、汚れを検出するのに適した画像アルゴリズムによる検査ロジックを検査ロジック記録部45から抽出する。
【0148】
あるいは、画像のどの部分(領域)について上記画像アルゴリズムによる解析を行うべきかをユーザが指定したものを受け付けることも考えられる。例えば、ワークのエッジ部分についての検査を行いたい場合は、ユーザが検査すべき領域としてワークのエッジ部分が網羅されるように領域を指定すれば、検査ロジック管理部31は、当該領域を分析するような検査ロジックを選択、あるいは、追加することができる。
【0149】
次に、入力された1または複数のサンプル画像が、良品の見本であるのか、不良品の見本であるのかを示す情報をサンプル画像ごとに取得する(ティーチング)(S103)。なお、S101にてサンプル画像を入力するときに、当該サンプル画像に良不良の判別結果を示す情報を含めて入力してもよい。
【0150】
なお、検査ロジック管理部31は、入力したサンプル画像が不良品の見本であると判定した場合は(S104においてNO)、サンプル画像のどの領域が不良箇所であるのかなどの、サンプル画像の不良箇所を特定する情報をユーザから取得してもよい(S105)。このように、不良品についての情報を多数取得することで、より適切な検査ロジックを選択、作成することができる。
【0151】
続いて、上述の各ステップにて取得した情報に基づいて、場合によっては、知識ベースや過去の事例などを参照し、検査ロジック管理部31は、画像アルゴリズムを推論する(S106)。そして、推論した画像処理アルゴリズムから検査ロジックの雛型を生成して検査ロジック記録部45に記録する(S107)。検査ロジック記録部45に記録した検査ロジックの雛型は、表示制御部13(図1)を介して、表示部4に表示するようにしてもよい(S108)。これにより、ユーザが入力した情報に基づいてどのような検査ロジックの雛型が完成したのかをユーザが確認することが可能となり、あとは、この雛型に特徴量や閾値を関連付けて設定したり、微調整したりするだけで検査ロジックを完成させることができる。
【0152】
検査ロジックの雛型を確認したユーザによって、検査ロジックの追加や、一部変更の操作が行われた場合は(S109においてYES)、検査ロジック管理部31をその指示信号を操作受付部12を介して受け付けて、指示信号に応じて検査ロジックの雛型を新規に追加したり、一部を修正したりする(S110)。
【0153】
次に、作成した検査ロジックごとに、ティーチングなどの処理によって取得した情報に基づいて、ワークの良不良を分離するための特徴量と閾値とを算出する(S110)。これにより、検査ロジックの雛型から、あらゆる特徴量と閾値とを関連付けられた検査ロジックを複数完成させて検査ロジック記録部45に記録しておくことが可能となる。ここで、2つ以上の特徴量を用いて良不良を判別したい場合(複合判定を実行する場合)は、その複合判定の論理式も作成してもよい。
【0154】
最後に、検査ロジック選択部34は、S111にて作成した各検査ロジック(メイン検査ロジックの候補)に対して行われた評価に基づいて、最も評価の高い検査ロジックを初期のメイン検査ロジックとして選択する(S112)。検査ロジック選択部34により選択されたメイン検査ロジックを検査ロジック管理部31が設定し、初期設定が完了する。
【0155】
この初期設定のための各検査ロジックの評価については、生産ライン稼動後に検査ロジック評価部33が実行する評価値算出の手順と同様の方法で行えばよい。本稼動での評価方法と異なる点は、実際生産ラインを流れているワーク画像に基づく評価ではなく、入力されたサンプル画像を検査した場合を仮定して仮想の検査結果について評価を行う点である。検査ロジックの評価方法の詳細については後述する。
【0156】
また、上述の説明では、検査ロジック選択部34が評価の高い検査ロジックを初期のメイン検査ロジックとして選択する構成としたが、これに限定されない。例えば、S111にて算出された特徴量に基づいて、統計処理部32が作成したヒストグラムを検査ロジックごとにユーザに提示する構成とし、ユーザにヒストグラムを確認させて初期メイン検査ロジックに適したものを選ばせる構成とすることも可能である。
【0157】
なお、生産ライン稼動前の初期メイン検査ロジックの設定は、検査制御装置200の各部(図1)を用いて行わずともよく、ユーザが過去の経験から、初期の時点で最適を判断するメイン検査ロジックを候補の検査ロジックから選択したり、新たに検査ロジックを作成(検査内容、特徴量、閾値などを入力)したりして、初期設定を完了させる構成でもよい。あるいは、あらかじめ完成している検査ロジックの中からユーザがメイン検査ロジックを選択してメイン検査部21に設定する構成でも構わない。
【0158】
以上は、生産ライン稼動前に設定する初期のメイン検査ロジックの設定手順である。生産ライン稼動前に設定するメイン検査ロジックは、過去の経験からどのように精細に評価して(あるいは、熟練者の判断により)、正しいメイン検査ロジックを選択したとしても、実際の生産ライン稼動後もその初期のメイン検査ロジックがそのままずっと最適なメイン検査ロジックであり続けることは不可能に近い。なぜなら、上述したさまざまな生産環境の変動が想定され、その変動に応じて常に最適なメイン検査ロジックというのは変わっていくものだからである。
【0159】
そこで以下では、初期設定後、本稼動中の生産ラインで検査モジュール20が実行する検査において、生産環境の変動に応じて常に最適なメイン検査ロジックを選択することにより、高い検査精度を維持するための、検査制御装置200の処理の流れについて、より詳細に説明する。
【0160】
生産ライン稼動中に最適な検査ロジックを評価し動的に再設定するために、検査制御装置200は、検査モジュール20が実際にラインを流れるワークに対して行った検査の結果として出力される評価用検査結果を利用する。そこで、まず、検査モジュール20における検査の処理の流れと、検査結果記録部42に記録される検査結果について詳細に説明する。
【0161】
(2)検査
図7は、検査システム100における検査の処理の流れを示すフローチャートである。
【0162】
まず、撮像部Cは、ワークが検査のためのラインに搬入されたタイミングで、ユーザによる操作により、あるいは、検査システム100から撮像命令信号を受信する(S201)。撮像命令信号を受信した撮像部Cは、搬入されたワークを撮影して、ワーク画像を生成する(S202)。このとき、撮影したワークのワークIDをワーク画像のデータに埋め込んでもよい。撮像部Cからワーク画像を受信した画像入力制御部11(図1)は、受信したワーク画像をワークIDと関連付けてワーク情報記録部41に記録する(S203)。
【0163】
続いて、画像入力制御部11を介して新しいワーク画像が取得されると(S204においてYES)、検査モジュール20の各検査部(メイン検査部21、サブ検査部22)は、あらかじめ設定されている検査ロジックを用いて当該ワークの検査を実行する。
【0164】
例えば、上記検査ロジックに含まれる画像処理アルゴリズムが規定する重心位置の特定方法に基づいてワーク画像の座標系を修正し(S205)、同じくアルゴリズムが規定する計測領域の特定方法に基づいて検査対象領域を特定する(S206)。そして、画像処理アルゴリズムに基づいて、特定した領域の解析(画像処理)を実行し(S207)、解析結果に基づいて特徴量を計測する(S208)。例えば、濃淡画像を2値化して、所定色の画素の面積を計測したり、特定した領域の明るさのばらつきを計測したりすることなどが想定される。
【0165】
次に、S205〜S208にて画像処理アルゴリズムに基づきワーク画像から抽出した特徴量を、上記検査ロジックに含まれる閾値と比較する(S209)。そして、上記特徴量が閾値を超えたと判定した場合は(S209においてYES)、当該ワーク画像のワークを良品と判別する(S210)。一方、閾値以下であると判定した場合は(S209においてNO)、上記ワークを不良品と判別する(S211)。そして、この検査結果、および、抽出した特徴量をワークIDに関連付けて検査結果記録部42に記録する(S212)。
【0166】
このようにして、1つの検査ロジックについての検査結果が記録されると、残りの検査ロジックについても同様の処理を行い(S213においてYESの場合、S205に戻る)、すべての検査ロジックについて検査結果を記録し終えたら(S213においてNO)、メイン検査ロジックに基づく検査結果を最終検査結果として出力し(S214)、検査を終了する。
【0167】
なお、上述の説明では、S209において、特徴量が閾値を超えた場合に、ワークを良品と判別する構成としているが、これに限定されず、例えば、特徴量が大きいと不良品となる場合は、閾値を下回る場合に良品と判別する構成とすることもできる。
【0168】
図8は、検査結果記録部42に記録される検査結果の例を示す図である。本実施形態では、図8に示すとおり、検査結果記録部42に記録される検査結果のデータは、メイン検査ロジックによる最終検査結果を記録するテーブル81と、検査モジュール20の各検査部が用いた各検査ロジックの、評価用検査結果を記録するテーブル82〜84・・・とから構成されている。テーブル82、83、84は、それぞれ、検査ロジック記録部45に記録される検査ロジックA、B、Cに基づき出力された評価用検査結果のテーブルである。
【0169】
メイン検査ロジックに基づく最終検査結果を記録するテーブル81には、少なくとも、ワークID(C11)と、それに関連付けられたワークごとの良不良の判別結果(すなわち、最終検査結果(C12))と、その最終検査結果は、どの検査ロジックをメイン検査ロジックとして得られた結果であるのかを示すメイン検査ロジックのロジックID(S13)とが記録されている。
【0170】
テーブル81のデータ構造は上記に限定されず、図8に示すとおり必要に応じて、ワークのロットNO.(C14)、検査日時(C15)、検査で用いてワーク画像(C16)などの情報を関連付けて記録してもよい。また、当該ワークの検査を並行して実行したときにサブ検査部22により用いられたサブの検査ロジックのロジックID(C17)を関連付けて記録しておいてもよい。これにより、最終検査結果と、他の検査ロジックでの評価用検査結果との紐付けが可能となり、メイン検査ロジックと検査ロジックとで検査結果の比較を行うことができる。
【0171】
なお、採用されたメイン検査ロジックが複数(メイン検査部21が複数)ある場合は、複合判定論理式(C18)を記録しておくことが好ましい。これにより、複数のメイン検査ロジックそれぞれの検査結果との紐付けが可能となり、論理式に基づいて集約した各メイン検査ロジックの検査結果から1つの最終検査結果(C12)を求めることが可能となる。図8に示す例では、メイン検査ロジックは、検査ロジックAおよび検査ロジックBの2つが設定され、論理式は、最終検査結果を上記各検査ロジックの論理積から採るよう規定しているので、メイン検査ロジックAと、メイン検査ロジックBとの両方において、良品と判別されたワークのみ、最終的に良品として判別される。
【0172】
テーブル82〜84・・・のそれぞれには、少なくとも、ワークID(C21)と、それに関連付けられた、特徴量(C22)と、評価用検査結果(C23)とが記録されている。
【0173】
テーブル82〜84・・・のデータ構造は上記に限定されず、図8に示すとおり必要に応じて、当該検査ロジックの画像処理アルゴリズムにおけるパラメータ(C24)、閾値(C25)などをワークごとに記録しておいてもよい。また、これらの情報は、検査ロジックのロジックIDごとに検査ロジック記録部45に記録されているので、C24、C25の代わりに当該検査ロジックのロジックIDを記録して、検査ロジック記録部45との紐付けを行うデータ構造としてもよい。
【0174】
上述したとおり、検査結果記録部42に記録されたすべての検査ロジックの検査結果は、評価用検査結果として、次の統計処理にて、必要に応じて読み出される。
【0175】
(3)統計処理
図9は、検査システム100における統計処理の流れを示すフローチャートである。統計処理部32(図1)は、タイミング監視部35の制御に基づき、各検査ロジックを評価すべきタイミングとなった場合に、統計処理を開始する。
【0176】
統計処理部32は、検査結果記録部42から、評価すべき検査ロジック(例えば、検査ロジックA)の評価用検査結果(図8に示すテーブル82)を取得する(S301)。ここで、取得したテーブル82(検査ロジックA)の統計処理をこれまでに行ったことがあるかどうかを判定し、初めて統計処理を行う場合は(S302においてYES)、統計データの準備を行う。より具体的には、テーブル82のR1〜R3において、ワークごとの特徴量および閾値に基づいて、良品の区間と不良品の区間とを設定し、さらに、特徴量を所定の区間ごとに分類する(S303)。
【0177】
続いて、未追加処理のワークの検査結果(例えば、レコードR1の、ワークID0001の検査結果「OK」)を評価用検査結果(テーブル82)から取得する(S304)。統計処理部32は、取得したレコードの検査結果を判定し、検査結果が良品であった場合は(S305においてYES)、当該レコード(ワーク)の度数を、特徴量が属する良品の区間に1つ追加する。反対に、検査結果が不良品であった場合は(S305においてNO)、ワークの度数を、該当する不良品の区間に1つ追加する(S307)。
【0178】
そして、未追加処理の検査結果がまだ残っている場合は(例えば、テーブル82のレコードR2とR3)(S308においてYES)、S304に戻り、度数追加の処理を繰り返す。一方、1つの検査ロジックにおいてすべてのワークの検査結果について追加処理が完了した場合は(S308においてNO)、当該検査ロジックの統計処理を終了する。
【0179】
そこで、未処理の検査ロジック(例えば、検査ロジックBや検査ロジックC)が残っている場合は(S309においてYES)、S301に戻り、未処理の検査ロジックの評価用検査結果(例えば、検査ロジックBのテーブル83)を取得して、以降の処理を繰り返す。
【0180】
すべての検査ロジックの評価用検査結果について、統計処理を終え、統計データを作成した場合は(S309においてNO)、上述の統計データを統計データ記録部43に記録する(S310)。
【0181】
図10は、統計処理部32に入出力されるデータを模式的に示す図である。ここでは、統計処理部32によって出力され、統計データ記録部43に記録される統計データをヒストグラムで表す。図10に示す例では、検査結果記録部42に記録される、ワークXについての検査結果レコード85(各検査ロジックの検査結果および特徴量と、最終検査結果とを含む)に基づいて、統計処理部32が統計処理を実行し、出力した統計データ90を統計データ記録部43に記録している。
【0182】
統計データ90は、検査ロジックごとに作成されたヒストグラム91〜93・・・を含み、ヒストグラム91〜93は、それぞれ、検査ロジックA〜Cの検査結果を統計処理したものを表している。
【0183】
各ヒストグラムは、縦軸が度数、横軸が特徴量を表しており、閾値94を境界に、閾値94以下の区間に属するブロックを良品、閾値94を越える区間に属するブロックを不良品であると、各検査ロジックが判別したことを示している。
【0184】
また、ワークの度数を示す棒グラフの色分けは、最終検査結果86に基づく良品と不良品の区分を示している。したがって、網点が施された棒グラフは、メイン検査ロジック(ここでは、検査ロジックAとする)で良品と判別されたものを、斜線が施された棒グラフは、メイン検査ロジックで不良品と判別されたものを示している。
【0185】
ここで、検査結果レコード85が新たに追加されると、統計処理部32は、各検査ロジックの検査結果および特徴量に基づいて、各ヒストグラムの適切な区間に検査結果レコード85のワークXの度数を1追加する。より詳細には、検査ロジックAのヒストグラム91においては、検査ロジックA特徴量10の区間に、最終検査結果86が良品(網点)の度数1のブロックが追加される。検査ロジックBのヒストグラム92においては、検査ロジックB特徴量20の区間に、網点の度数1のブロックが追加される。検査ロジックCのヒストグラム93においては、検査ロジックC特徴量30の区間に、網点の度数1のブロックが追加される。
【0186】
以上のとおり、統計処理部32により生成され、統計データ記録部43に記録された統計データは、次の検査ロジックの評価処理にて、検査ロジック評価部33により必要に応じて読み出される。
【0187】
なお、上記統計データは、必ずしも、図10に示すようなヒストグラムとして記録されていなくてもよく、検査ロジック評価部33が検査ロジックの評価を実行するのに必要な情報を取り出せる状態であればどのようなデータ構造でもよい。例えば、図11に示すとおり、検査ロジックごとに、各種データ(最終検査結果の良・不良品別の特徴量の上限値/下限値、平均値、分散、中央値、最頻値など)を関連付けたテーブル構造を有する統計データを統計データ記録部43に記録しておいてもよい。
【0188】
ただし、統計データを、表示部4に表示してユーザに提示する場合は、ヒストグラムとして出力することが好ましい。図10に示すようなヒストグラムを提示すれば、ユーザは、各検査ロジックが、ワークの良不良をどのように判別し、また、その検査結果が、最終検査結果とどのようにずれが生じているのかを、容易に目視確認することが可能となる。
【0189】
ここで、上述の例では、ヒストグラムの棒グラフの色分けは、最終検査結果86に基づいて行う構成としたが、これに限定されない。検査ロジックごとにヒストグラムを生成する場合に、各検査ロジックの良不良の検査結果に応じて色分けを行って出力してもよい。これにより、ユーザは、各検査ロジックで、良品・不良品の度数を一目で確認することができる。なお、複合判定により最終検査結果86が決定される構成の場合には、図12に示すように、採用する複数のメイン検査ロジックの特徴量を用いて統計データを作成すればよい。
【0190】
また、良不良の検査結果がすべての検査ロジックで一致しないと統計処理部32が判定した場合には、統計処理部32は、そのような検査結果レコード85を統計データとして追加しないように構成することも可能である。
【0191】
(4)検査ロジック評価
図13は、検査システム100における検査ロジック評価処理の流れを示すフローチャートである。検査ロジック評価部33(図1)は、統計処理部32が統計データを統計データ記録部43に記録すると、当該統計データを用いて、評価処理を開始する。
【0192】
検査ロジック評価部33は、統計データ記録部43から、各検査ロジックの統計データを取得し(S401)、当該統計データから評価値を算出するのに用いる評価式を、評価式を記録する記録部(例えば、評価式を評価値記録部44に記録しておいてもよい。)から取得する(S402)。なお、評価式が複数記録されている場合は、ユーザがその都度選択してもよいし、あらかじめどの評価式を採用するかを設定しておいてもよい。また、ユーザが採用する評価式を直接入力できる構成としてもよい。
【0193】
次に、検査ロジック評価部33は、取得した評価式にしたがって、統計データから各検査ロジックの評価値を算出する(S403)。評価値算出処理の詳細は後述する。すべての検査ロジックについて評価値の算出を終えると、検査ロジック評価部33は、算出した評価値を検査ロジックごとに評価値記録部44に記録する(S404)。
【0194】
図14(a)は、評価値記録部44に記録される検査ロジックの評価値の例を示す図である。図14(a)に示すとおり、検査ロジック評価部33が検査ロジックごとに算出した評価値は、ロジックIDに関連付けて記録される。ここで、検査システム100に複数の評価式が記録されている場合は、どの評価式を用いて求めた評価値なのかを判別できるよう、評価式を特定する情報(例えば、評価式ID)も関連付けて記録することが好ましい。
【0195】
図14(b)は、評価値算出に用いられる評価式の例を示す図である。図14(b)に示すとおり、各評価式は、評価式を一意に識別するための識別情報(評価式ID)によって管理されている。このように、評価式IDにより、評価値と評価式との紐付けが行えるので、例えば、図14(a)に示す各検査ロジックの評価値は、「式1」、すなわち、「不良品の下限値−良品の上限値」により算出された値であることが分かる。
【0196】
なお、上述の説明では、始めに採用する評価式を選択し、選択した評価式に基づいて評価値を算出する構成としたが、これに限定されない。例えば、記録されている全評価式に基づいて、それぞれの評価値を算出し、最終的な評価値を選択する(あるいは、複数の評価値から最終的に1つの評価値を算出する)構成としてもよい。
【0197】
次に、図13のS403に示す評価値算出処理の詳細について、図14(b)の「式1」の評価式を採用した場合を例に挙げて説明する。
【0198】
まず、検査ロジック評価部33は、1つの検査ロジックにつき、統計データ(例えば、図11)の中から、A:良品の上限値(特徴量)を取得する(S41)。次に、B:不良品の下限値を取得する(S42)。最後に、評価式(式1:不良品の下限値−良品の上限値)にしたがって、取得した値の差分(ここでは、B−A)を算出し、これを評価値とする(S43)。ここで「良品」「不良品」とは、メイン検査ロジックによる最終検査結果が示す「良品」「不良品」のことを示している。
【0199】
上述の評価値算出方法によれば、特徴量が大きいと不良品となる場合に、特徴量に基づいて、良品と不良品とを正しく切り分けられている検査ロジックを高く評価することができる。すなわち、不良品の最小の特徴量と良品の最大の特徴量との距離(上述の「B−A」)が長ければ長いほど、その検査ロジックは良品と不良品とを安全に正しく切り分けられていると考えることができる。
【0200】
なお、上述の例とは反対に、特徴量が小さいと不良品となる場合は、図14(b)の「式4:良品の下限値−不良品の上限値」を採用し、良品の最小の特徴量と不良品の最大の特徴量との距離を求めそれを評価値として出力すればよい。
【0201】
ここで、評価値の算出方法は、上記に限定されない。本発明の検査システム100では、統計データの各種情報を用いてあらゆる評価方法を採用することができる。
【0202】
図15(a)〜(f)は、評価値算出方法の他の例を、統計データ(ヒストグラム)により示す図である。
【0203】
図15(a)に示す例は、上述した例と同じく、良品の集合と不良品の集合との距離dに基づいて評価値を算出する方法を示している。距離dの値が大きいほど、良品と不良品とを正しく安全に切り分けられていることを意味しており、評価が高くなる。
【0204】
図15(b)に示す例は、良品の集合における特徴量の平均値Gμと不良品の集合の平均値Bμとの距離dに基づいて評価値を算出する方法を示している。距離dの値が大きいほど、良品と不良品とを正しく安全に切り分けられていることを意味しており、評価が高くなる。
【0205】
図15(c)に示す例は、良品の特徴量の分散Gσ、および/または、不良品の特徴量の分散Bσに基づいて評価値を算出する方法を示している。分散が大きいということは、計測した特徴量が、良品(不良品)の集合の中でばらついており、その特徴量の計測手順の信頼性が低いことを意味している。したがって、分散の値が小さい検査ロジックほど、評価が高くなる。
【0206】
図15(d)に示す例は、良品の集合と不良品の集合との距離dの微分値(距離dが狭まる速さ)に基づいて評価値を算出する方法を示している。距離dは上述したとおり、大きいほど評価が高く、距離dの微分値が大きいほど(距離dが狭まる勢いが大きいほど)、評価が低くなる。つまり、図15(d)に示すとおり、距離d1と距離d2の差分が小さい方が評価が高い。
【0207】
図15(e)に示す例は、良品の集合と検査ロジックの閾値との距離d1と、不良品の集合と検査ロジックの閾値との距離d2との差分に基づいて評価値を算出する方法を示している。距離d1と距離d2との差分が大きいということは、良品・不良品のどちらか一方の集合だけが閾値近くにあることになる。一方の集合のみが閾値に近づいていると、例えば、不良品の集合が閾値付近にあるとすると、それは、不良品を良品と判別してしまうという検査不良発生の可能性が大きいことを意味する。したがって、距離d1と距離d2とは等しいことが理想であり、距離d1と距離d2との差分が小さければ小さいほど、評価が高くなる。
【0208】
さらに、距離d2(不良品と閾値との距離)に重みをかけて、距離d2の方が小さい場合(すなわち、不良品の集合の方が閾値に寄っている場合)には、特に評価が下がるような評価値を算出するよう検査ロジック評価部33を構成してもよい。これは、良品を不良品と判別してしまう検査不良よりも、不良品を良品と判別してしまう検査不良(見逃し)の方が、深刻な事故となるという考えに基づいている。これにより、見逃しをしてしまうような検査ロジックがメイン検査ロジックとして誤って選択されるという不都合を解消することができる。
【0209】
評価式の具体例を示すと、図14(b)の「式3:|(不良品の下限値−良品の上限値)−(不良品の下限値−閾値)/(閾値−良品上限値)|」となる。この場合、評価値の数値は小さいほど評価が高いことを意味する。
【0210】
あるいは他の評価方法では、メイン検査ロジックが不良品と判別したワークのうち、当該検査ロジックが良品と判別してしまったワークの個数(見逃しの個数)に基づいて、評価値を算出してもよい。この場合、見逃しの個数が多いほど評価が低くなる。
【0211】
図16は、閾値の位置による評価値の推移を示すグラフである。縦軸は、上記式3に基づいて算出された評価値(上述したとおり小さいほど評価が高い)を、横軸は、閾値の位置を示している。閾値の位置とは、図15(e)の良品上限値Pと不良品下限値Qとの間で、閾値はいずれの値を示しているかを意味している。すなわち、良品上限値Pから閾値までの距離d1と、閾値から不良品下限値Qまでの距離d2を示す。
【0212】
横軸の左端0は、良品上限値Pを、右端0.9は、不良品下限値Qを示しており、閾値が不良品下限値Qに近づけば近づくほど(右に行けば行くほど)、評価値が急激に大きくなり、評価が下がることが分かる。評価値が大きくなる度合いは、閾値が良品上限値Pに近づくときの度合いよりも大きくなっている。これにより、見逃しをしてしまうような検査ロジックがメイン検査ロジックとして誤って選択されないようにすることができる。
【0213】
図15(f)に示す例は、統計データの理想的な状態を示す、モデル統計データと比較してその類似度に基づいて評価値を算出する方法を示している。例えば、統計データがヒストグラムである場合、モデル統計データとしてのモデルヒストグラム95をあらかじめ用意し、モデルヒストグラム95と実際のヒストグラムとの形状を比較してパターンマッチングを行い、類似度を算出する。モデルヒストグラム95と形状が類似しているほど、理想の検査結果を出力できる検査ロジックであることを意味し、評価が高くなる。
【0214】
以上のとおり、検査ロジック評価部33により算出され、評価値記録部44に記録された評価値は、次の検査ロジックの選択処理にて、検査ロジック選択部34により必要に応じて読み出される。
【0215】
(5)検査ロジック選択
図17は、検査システム100における検査ロジック選択処理の流れを示すフローチャートである。検査ロジック選択部34(図1)は、検査ロジック評価部33が各検査ロジックの評価値を評価値記録部44に記録すると、当該評価値を用いて検査ロジック選択処理を開始する。
【0216】
検査ロジック選択部34は、評価値記録部44から、各検査ロジックの評価値を取得する(S501)。次に、取得した評価値に基づいて、最も評価が高い(メイン検査ロジックとして最適な)検査ロジックを特定する(S502)。
【0217】
続いて、検査ロジック選択部34は、S502にて特定した特定検査ロジックが、現在メイン検査部21(図1)に設定されているメイン検査ロジック(例えば、検査ロジックA(図1))と一致するか否かを判定する(S503)。検査ロジック選択部34は、特定検査ロジックが検査ロジックAであると判定すれば、検査ロジックを切り替える必要がないので、そのまま検査ロジックAを採用する(S504)。一方、検査ロジック選択部34は、特定検査ロジックが検査ロジックAと異なると判定すれば、上記特定検査ロジックをメイン検査ロジックとして新たに選択し(S505)、メイン検査部21のメイン検査ロジックL1を、検査ロジックAから上記特定検査ロジックへと切り替える(S506)。
【0218】
<実施形態2>
上述の実施形態で説明したとおり、本発明の検査制御装置200(図1)の構成、および、検査制御方法(図5のS4〜S7)によれば、最新の検査結果を評価して常に最適な検査ロジックを選択し、生産ライン稼動中でも動的に切り替えることができるので、生産環境の変動に応じて動的に検査ロジックを設定することにより、検査システム100(検査モジュール20)の検査精度を向上させることが可能となる。
【0219】
次に、具体例を用いて、本発明の検査制御装置200により実現される、検査ロジックの切替処理とその効果についてより詳細に説明する。本実施形態では、本発明の検査システム100を、ワークとしての白紙の上に発生する汚れを検査する検査システムとする。検査システム100の検査ロジック記録部45には、2つの検査ロジック、すなわち、上述の2値重心面積画像処理アルゴリズムと閾値=300(面積)とを採用した第1検査ロジックと、キズ汚れ画像処理アルゴリズムと閾値=150(欠陥度)とを採用した第2検査ロジックとがあらかじめ記録されている。
【0220】
図18は、汚れ検査で検査システム100が用いるのワークのサンプル画像を示す図である。図18に示すとおり、撮像部Cは、生産ラインを流れるワーク50の撮影範囲Rを撮影し、ワーク画像51(52)を生成する。生成されたワーク画像51(52)は、画像入力制御部11を介してワーク情報記録部41に記録される。ワーク画像51は、良品であるワークを撮影したものを示し、ワーク画像52は、汚れが付着した不良品である(として検知されるべき)ワークを示している。本実施形態では、検査ロジック管理部31が初期設定を実行するためにワーク画像51のような良品のサンプル画像を、ワーク画像52のような不良品のサンプル画像があらかじめ入力されている。
【0221】
なお、本実施形態では、図19に示すとおり、生産環境の変動の例として、生産数が多くなるにつれて、生産ラインが安定し(作業者の熟練度の向上や生産設備が安定してきたことなどに起因する)、ワーク(白紙)に付着する汚れの大きさが少しずつ小さくなっていく状況が発生するものとする。
【0222】
〔初期設定時のメイン検査ロジックの選択〕
図20は、検査ロジック管理部31が行う初期設定の手順を示す図である。生産ラインを稼動する前に、検査制御装置200の検査ロジック管理部31は、まず、検査モジュール20の各検査部に設定する検査ロジックを設定する。本実施形態では、初期設定のための検査ロジックの評価は、生産ライン稼動後の評価方法と同様である。すなわち、検査ロジック評価部33が各検査ロジックの評価を、サンプル画像を用いて行い、検査ロジック選択部34がメイン検査ロジックを選択する。検査ロジック管理部31は、検査ロジック選択部34の選択にしたがって、初期のメイン検査ロジックをメイン検査部21に設定する。
【0223】
検査ロジック評価部33は、図20に示すとおり、取得したワーク(白紙)のサンプル画像に対する、上記第1検査ロジックの検査結果の統計データ53と、第2検査ロジックの検査結果の統計データ54とを取得する。そして、評価値の算出方法として、図14(b)に示す「式2:(不良品の下限値−良品の上限値)/(良品の上限値−良品の下限値)」を採用し、上記2つの検査ロジックそれぞれについて評価値を算出する。
【0224】
式2に基づき評価値を算出すると、
第1検査ロジックの評価値:(764−23)/(23−1)=33.681818
第2検査ロジックの評価値:(255−50)/(50−28)=9.318181
となり、検査ロジック選択部34は、評価の高い第1検査ロジック(2値重心面積画像処理アルゴリズムを含む)を初期のメイン検査ロジックとして選択する。
【0225】
ここで、上記式2の「不良品の下限値−良品の上限値」は、良品の集合と不良品の集合との距離を示しており、距離の値が大きいほど評価が高くなる。
【0226】
一方、「良品の上限値−良品の下限値」は、良品のばらつきを示している。良品のばらつきが大きいときは、画像処理アルゴリズムにおいて、パラメータが適切でない、特徴量の計測手順が適切でないことなどが原因として考えられる。よって、ばらつきの値が大きいほど評価が低くなる。
【0227】
以上のように、距離をばらつきで除すことにより求めた評価値を用いれば、上述の例のように全く異なる画像処理アルゴリズムにより、単位の異なる特徴量が計測される検査ロジック同士でも、容易に検査精度を比較し評価することが可能となる。
【0228】
〔生産ライン稼動後の生産個数、および、検査結果の統計の推移〕
図21は、生産個数、および、2値重心面積画像処理アルゴリズムを採用した第1検査ロジックによる検査結果の統計の推移を示す図である。
【0229】
図21に示すとおり、生産個数が50個、100個・・・と増加するにつれ、不良品と判定されるワークも増加し、計測される特徴量の下限値(不良品下限値Q)も下降して閾値に(および、良品の集合に)近づいていく。生産個数が150個に到達した時点では、不良品下限値Qは、閾値にまで到達する。この時点でこのまま第1検査ロジックを採用しつづけた場合、ワークを200個生産した時点では、不良品下限値Qが閾値を割ってしまい、したがって、不良品を良品であると誤って判別する検査不良が発生することになる。
【0230】
図22は、生産個数、および、キズ汚れ画像処理アルゴリズムを採用した第2検査ロジックによる検査結果の統計の推移を示す図である。
【0231】
図22に示すとおり、良品の集合のばらつきは、第1検査ロジックに比べて大きいものの、生産個数が増加しても、不良品下限値Qと閾値との距離は安定している。したがって、第2検査ロジックは、生産個数の増加にかかわらず、検査精度が安定していることが分かる。
【0232】
〔評価値の推移〕
図23は、生産個数の増加に伴う、各検査ロジックの評価値の推移を示すグラフである。縦軸は、評価値を示しており、この評価値は上述の式2にしたがって算出されたものである。横軸は、生産個数を示している。図21で示したとおり、生産個数の増加に伴って、不良品の集合と良品の集合との距離が短くなる第1検査ロジックでは、生産個数が増加するほど評価値が下降する(評価が下がる)。一方、図22で示したとおり、生産個数の増加にかかわらず良品の集合や閾値との距離が安定している第2検査ロジックでは、評価値はほぼ一定である。
【0233】
図23のグラフから、検査システム100が一定の検査精度を維持するためには、T2の時点で、メイン検査ロジックが、第1検査ロジックから第2検査ロジックへと切り替えられなければならないことが分かる。
【0234】
検査制御装置200の検査ロジック選択部34は、検査ロジック評価部33が算出した評価値に基づき、評価値が逆転したことを検知して、メイン検査ロジックを第1検査ロジックから第2検査ロジックへと切り替える。
【0235】
なお、メイン検査ロジック切替のタイミングは、T2のような評価値が逆転した時点に限定されない。例えば、ある一定期間(例えば、図23のT0からT1まで)の評価値の推移を記録しておき、各評価値の微分値(評価値の低下の勢い)を参照し、評価値が逆転する時点を予測して、適切な切替のタイミングを計算するよう検査ロジック選択部34を構成することもできる。あるいは、メイン検査ロジックの評価値の微分値に基づいて、ある一定以上の勢いで評価値が低下するときに、適切なメイン検査ロジックに切り替える処理を開始するよう検査ロジック選択部34を構成することもできる。
【0236】
上記構成によれば、検査ロジック評価部33は、あらかじめ定められた評価式(例えば、式2)に基づいて、メイン検査ロジックによる最終検査結果を基準として、メイン検査ロジックとしての第1検査ロジックおよびサブの検査ロジックとしての第2検査ロジックの評価値を算出する。評価値は生産個数が150個になった時点で逆転し、それを検知した検査ロジック選択部34は、図24に示すとおり、生産個数が150個に到達した時点で、第2検査ロジックが最適な検査ロジックであるとして、メイン検査ロジックを第1検査ロジックから第2検査ロジックに切り替える。
【0237】
これにより、検査不良を回避することが可能となる。すなわち、150個に到達した時点を過ぎても、メイン検査ロジックを切り替えずにそのまま第1検査ロジックを採用し続けた場合は、生産個数が200個に到達した時点で見逃しの検査不良が発生していた。しかし、メイン検査ロジックを第2検査ロジックに切り替えることにより、検査システム100の検査モジュール20は、生産個数が200個に到達した時点でも正しく良不良の判別を行うことが可能となる(図24)。
【0238】
本発明の検査制御装置200は上述した各実施形態に限定されない。検査制御装置200は、さらに、検査制御部30(図1)の内部に、閾値調整部(閾値調整手段)36、および/または、統計データ修正部(検査結果修正手段)37を備えていてもよい。
【0239】
図25は、本発明の検査制御装置200における検査制御部30の詳細な構成を示すブロック図である。なお、ここでは図示しないが、検査制御部30は、図1に示した検査制御部30の各部を備えているものとする。また、それらの機能の説明は繰り返さない。
【0240】
<閾値調整機能>
閾値調整部36は、統計データ記録部43に記録される検査ロジックごとの統計データに基づいて、当該検査ロジックの最適な閾値を算出し、調整するものである。閾値調整部36は、統計処理部32により、ある検査ロジックの統計データが新たに作成されたり、更新されたりすると、統計データ記録部43から当該統計データを読み出して、最適な閾値を算出する。
【0241】
ここで、算出した閾値が、上記検査ロジックの現在の閾値と異なる場合は、算出した新たな閾値を、上記検査ロジックの閾値として新たに設定し、検査ロジック記録部45に記録されている当該検査ロジックの閾値を更新する。
【0242】
なお、このとき、検査ロジック記録部45に記録されている元の検査ロジックを更新せずに、元の検査ロジックから閾値だけを変えた新しい検査ロジックを生成し、検査ロジック記録部45に追加するようにしてもよい。
【0243】
これにより、検査ロジックを常に最適な状態に保ち、検査精度を向上させることができる。特に、画像処理アルゴリズムそのものを変える必要がなく、閾値の微調整のみで検査ロジックの検査精度を向上させる場合に、最適な検査ロジックを得るまでのプロセスを短縮することができるので、有効である。
【0244】
なお、最適な閾値を算出する方法は、特に限定されないが、例えば、良品の上限値と不良品の下限値との中間値(良品の方が、特徴量が小さい場合)を最適な閾値として算出することなどが考えられる。
【0245】
図26(a)および(b)は、閾値調整部36の閾値調整処理の内容を示す図である。図26(a)に示すヒストグラムは、ある検査ロジックに基づいてあるワークの検査結果55が出力され、当該ワークの特徴量に基づいて、ある区間の度数が1追加される状態を示している。ここでH1は、上記検査ロジックの閾値を示す。
【0246】
ここで、区間B1に検査結果55が追加された場合、良品の集合と不良品の集合との距離D1は、D1のまま変動がない。よって、閾値調整部36は、中間値も変動がないことを認識し、閾値の更新を行わない。
【0247】
一方、区間B2に検査結果55が追加された場合、距離D1は、距離D2へと変動する。したがって、閾値調整部36は、良品の上限値の変動に伴って、図26(b)に示すとおり、新たな中間値(H2)を算出し、このH2の値を新たに閾値として設定し、検査ロジックを更新する。
【0248】
なお、上述の説明では、閾値を算出しなおして再設定するタイミングとして、ワークの検査結果が出力されるタイミングとしたが、これに限定されない。例えば、図26(a)の区間B2に度数が追加された場合のように、良品(不良品)の集合の上限値(下限値)が変動したときに、閾値の再計算を行うようにしてもよい。あるいは、良品の集合の中間値、平均値、最頻値などが変化したときに再計算してもよいし、または、検査結果が所定回数出力されるごとに再計算してもよい。
【0249】
さらに、上述の説明では、閾値調整部36が新たな閾値を算出した場合に自動で閾値を更新する構成としたが、これに限定されず、中間値が変動したことをユーザに通知して、新たな閾値に更新するか否かを問合せ、更新を指示する信号を受け付けてから閾値を更新する構成としてもよい。
【0250】
<検査不良修正機能>
統計データ修正部37は、統計データ記録部43に記録される各検査ロジックの統計データを修正するものである。具体的には、ユーザが操作部3(図1)を用いて入力する検査結果を操作受付部12を介して受け付けて、当該検査結果を上記統計データに反映する。あるいは、あらかじめ記録されているユーザが目視検査した場合の検査結果と比較して、ユーザの検査結果と異なる統計データを、ユーザの検査結果に合わせて修正する。
【0251】
この場合、修正したい統計データを、オフラインで(読み出しできないようにロックして)修正を実行するよう統計データ修正部37を構成することが好ましい。これにより、修正完了後の状態で、検査ロジック評価部33の評価を受けることができるので、修正内容を評価処理に正しく反映させることが可能となる。
【0252】
図27は、統計データ修正部37の統計データ修正処理の内容を示す図である。H1は、当該検査ロジックの閾値であるとする。表示制御部13は、ヒストグラム61を、表示部4を介してユーザに提示する。これにより、ユーザは、あるワークにおいて不良品と判別された検査結果56を目視確認し、それが良品であると判別した自身の目視検査の検査結果と異なっていることを確認する。統計データ修正部37は、ユーザにより操作受付部12を介して、検査結果56を不良品から良品の検査結果に変更する指示を受け付け、統計データ記録部43に記録される統計データを指示どおりに修正する(ヒストグラム62)。
【0253】
ここで、良品の上限値が変動したことにより、上述の閾値調整部36が、閾値を再計算し(ヒストグラム63)、当該検査ロジックの閾値をH1からH2へと更新する処理を実行してもよい(ヒストグラム64)。
【0254】
上述した方法で、各検査ロジックの統計データが修正され、閾値が更新された後、検査ロジック評価部33が評価値を算出することにより、より正確な評価を実行し、より適切なメイン検査ロジックを選択することが可能となる。
【0255】
上述の各実施形態では、本発明の検査制御装置200と検査モジュール20とを備えた検査システム100を、1台のコンピュータにて構築した場合について説明した。しかし、本発明の検査システムは上記構成に限定されない。例えば、検査モジュール20と検査制御装置200とをそれぞれ別のコンピュータにて実現し、検査モジュール20と検査制御装置200とを互いに通信可能なように接続した検査システムを構築してもよい。
【0256】
<実施形態3>
図28は、本発明の他の実施形態にかかる検査システムの概略構成を示す図である。図28に示すとおり、検査システム300は、メイン検査ロジックに基づいて検査を実行するメイン検査部21を備えた少なくとも1つの検査装置220と、メイン検査ロジック以外の検査ロジックに基づいて検査を実行するサブ検査部22を備えた少なくとも1つの検査装置231(検査装置232)と、各検査装置の検査ロジックの設定を行う検査制御装置200とを含んでいる。検査ロジックと検査装置とは1対1に対応しており、各検査装置が検査モジュール20を構成している。
【0257】
なお、図28の各構成要素に付された符号は、図1の各構成要素に付された符号に対応しており、同じ符号は、同じ構成要素を示している。したがって、上述の各実施形態ですでに説明した構成要素についての説明は繰り返さない。
【0258】
各検査装置は自身に設定されている検査ロジックを用いて検査を実行し、検査結果を検査結果記録部42に記録する。検査制御装置200は、検査結果記録部42の検査結果を取得して、統計処理、評価処理を実行して、最適な検査ロジックを選択する。選択された検査ロジックは、通信網を介して、検査ロジック選択部34により、検査装置220に対して設定される。あるいは、検査ロジック選択部34が送信する検査ロジック切替の指示を検査装置220が受信して、指示に基づき自身検査ロジックを切り替える構成としてもよい。
【0259】
<実施形態4>
図29は、本発明の他の実施形態にかかる検査システムの概略構成を示す図である。図29に示すとおり、検査システム400は、検査装置240と、検査装置240の検査ロジックの設定を行う検査制御装置200とを含んでいる。検査装置240は、内部に、メイン検査ロジックに基づいて検査を実行する少なくとも1つのメイン検査部21と、メイン検査ロジック以外の検査ロジックに基づいて検査を実行する少なくとも1つのサブ検査部22とを備えており、各検査部が検査モジュール20を構成している。検査ロジックと検査装置240内の検査部とは1対1に対応しており、検査モジュール20を1台のコンピュータで実現している点が、上述の検査システム300と異なる点である。
【0260】
検査装置240の各検査部は自身に設定されている検査ロジックを用いて検査を実行し、それぞれの検査結果を検査結果記録部42に記録する。検査制御装置200は、算出した評価値に基づいて最適な検査ロジックを選択し、各検査部の検査ロジックを設定する。あるいは、検査制御装置200が送信する検査ロジック切替の指示を検査装置240が受信して、指示に基づき、検査モジュール20の各検査部の検査ロジックを切り替える構成としてもよい。
【0261】
図30は、検査システム300または検査システム400における検査モジュールおよび検査制御部の処理の流れを示すフローチャートである。図30に示すとおり、検査の処理は、検査モジュール20により、評価の処理は、検査制御装置200によりそれぞれ実行されている。検査モジュール20は検査結果を検査制御装置200に送信し(S12)、検査制御装置200は、評価すべきタイミングを判断して(S13)、上記検査結果から各検査ロジックの検査精度を評価する(S14、S15)。検査制御装置200は、現在の検査モジュール20の検査ロジックが適切でないと判断した場合に(S16においてNO)、メイン検査ロジックを切り替えるよう指示信号を検査モジュール20に送信する(S17)。検査モジュール20は、S17にて送信される指示信号に応じて、メイン検査ロジック切り替えの指示を受信した場合に(S18においてYES)、検査ロジックを切り替えて(S19)、検査の処理を続行する。
【0262】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0263】
最後に、検査制御装置200の各ブロック、特に統計処理部32、検査ロジック評価部33、および、検査ロジック選択部34は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0264】
すなわち、検査制御装置200は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである検査制御装置200の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記検査制御装置200に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0265】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0266】
また、検査制御装置200を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0267】
本発明の検査制御装置は、生産環境の変動に応じて動的に検査ロジックを設定することができるので、生産ラインにおけるワークの良・不良を検査装置によって自動判別する検査システムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0268】
【図1】本発明の実施形態にかかる検査制御装置を適用した検査システムの要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる検査制御装置を適用した検査システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】2値重心面積画像処理アルゴリズムに基づいて画像処理されたワーク画像を示す図である。
【図4】キズ汚れ画像処理アルゴリズムに基づいて画像処理されたワーク画像を示す図である。
【図5】検査システムにおける、検査モジュールおよび検査制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】検査システムにおける、初期設定の処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】検査システムにおける、検査の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】検査結果記録部に記録される検査結果の例を示す図である。
【図9】検査システムおける、統計処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】統計処理部に入出力されるデータを模式的に示す図である。
【図11】統計データ記録部に記録される統計データの他の例を示す図である。
【図12】統計データ記録部に記録される複合判定の場合の統計データの例を示す図である。
【図13】検査システムにおける、検査ロジック評価処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】(a)は、評価値記録部に記録される検査ロジックの評価値の例を示す図であり、(b)は、評価値算出する際に検査ロジック評価部が参照する評価式の例を示す図である。
【図15】(a)〜(f)は、評価値算出方法の他の例を、統計データ(ヒストグラム)により示す図である。
【図16】閾値の位置による評価値の推移を示すグラフである。
【図17】検査システムにおける、検査ロジック選択処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】汚れ検査で検査システムが用いるのワークのサンプル画像を示す図である。
【図19】汚れ検査で起こる、生産環境の変動の例を示す図である。
【図20】検査ロジック管理部が行う初期設定の手順を示す図である。
【図21】生産個数、および、2値重心面積画像処理アルゴリズムを採用した検査ロジックによる検査結果の統計の推移を示す図である。
【図22】生産個数、および、キズ汚れ画像処理アルゴリズムを採用した検査ロジックによる検査結果の統計の推移を示す図である。
【図23】生産個数の増加に伴う、各検査ロジックの評価値の推移を示すグラフである。
【図24】検査ロジック選択部が行う検査ロジック切替の結果を示す図である。
【図25】本発明の検査制御装置における検査制御部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図26】(a)および(b)は、閾値調整部の閾値調整処理の内容を示す図である。
【図27】統計データ修正部の統計データ修正処理の内容を示す図である。
【図28】本発明の他の実施形態にかかる検査システムの概略構成を示すブロック図である。
【図29】本発明の他の実施形態にかかる検査システムの概略構成を示すブロック図である。
【図30】本発明の他の実施形態にかかる検査システムにおける、検査モジュールおよび検査制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0269】
1 制御部
2 通信部
3 操作部
4 表示部
10 入出力制御部
11 画像入力制御部
12 操作受付部(結果入力制御手段)
13 表示制御部(表示制御手段)
20 検査モジュール
21 メイン検査部
22 サブ検査部
30 検査制御部
31 検査ロジック管理部
32 統計処理部
33 検査ロジック評価部(評価手段)
34 検査ロジック選択部(検査ロジック選択手段/検査ロジック設定手段)
35 タイミング監視部
36 閾値調整部(閾値調整手段)
37 統計データ修正部(検査結果修正手段)
40 記録部
41 ワーク情報記録部
42 検査結果記録部
43 統計データ記録部
44 評価値記録部
45 検査ロジック記録部
100 検査システム
200 検査制御装置
300 検査システム
400 検査システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
良不良の判別方法を規定する検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールを制御する検査制御装置において、
上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを、複数の検査ロジックの中から選択する検査ロジック選択手段と、
上記検査モジュールが上記メイン検査ロジックを用いて生成した、対象物の良不良の判別結果を示す最終検査結果と、該メイン検査ロジックと異なる検査ロジックを用いて対象物の良不良を判別した場合の判別結果を示す評価用検査結果とに基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する評価手段と、
上記検査ロジック選択手段が選択した検査ロジックをメイン検査ロジックとして切り替える検査ロジック設定手段とを備え、
上記検査ロジック選択手段は、上記評価手段が評価した評価結果に基づいて、上記メイン検査ロジックを選択することを特徴とする検査制御装置。
【請求項2】
上記検査ロジックは、対象物の状態を示す特徴量の計測方法と、上記特徴量を分離して良不良を判別するための閾値とを規定し、
上記評価手段は、
上記評価用検査結果に含まれる対象物ごとに計測された特徴量と、上記最終検査結果が示す対象物の良品数および不良品数とに基づく統計データを用いて、各検査ロジックの検査精度を表す評価値を算出することにより評価することを特徴とする請求項1に記載の検査制御装置。
【請求項3】
上記評価手段は、
上記対象物の良品の集合から得られる良品特徴量と、不良品の集合から得られる不良品特徴量との差分に基づき評価値を算出することにより評価することを特徴とする請求項2に記載の検査制御装置。
【請求項4】
上記評価手段は、
上記対象物の特徴量が閾値より小さいと良品であると判別される場合に、上記不良品の集合の特徴量の下限値である不良品下限値と上記良品の集合の特徴量の上限値である良品上限値との差分に基づき評価値を算出し、
上記対象物の特徴量が閾値より大きいと良品であると判別される場合に、上記良品の集合の特徴量の下限値である良品下限値と、上記不良品の集合の特徴量の上限値である不良品上限値との差分に基づき評価値を算出することにより評価することを特徴とする請求項3に記載の検査制御装置。
【請求項5】
上記評価手段は、
上記差分を上記良品特徴量の分散で除して得た商に基づき評価値を算出することにより評価することを特徴とする請求項3または4に記載の検査制御装置。
【請求項6】
上記評価手段は、
上記対象物の良品の集合から得られる良品特徴量と上記閾値との差分、および、不良品の集合から得られる不良品特徴量と上記閾値との差分の少なくともいずれか一方に基づき評価値を算出することにより評価することを特徴とする請求項2に記載の検査制御装置。
【請求項7】
上記評価手段は、
上記良品特徴量と、不良品特徴量との差分を差分A
上記不良品特徴量と上記閾値との差分を差分B
上記良品特徴量と上記閾値との差分を差分C
として、評価式、
|差分A−差分B/差分C|
に基づき評価値を算出することにより評価することを特徴とする請求項6に記載の検査制御装置。
【請求項8】
上記評価手段は、
上記最終検査結果においてメイン検査ロジックにて不良品と判別された対象物のうち、上記評価用検査結果において検査ロジックにて良品と判別された対象物数に基づいて、検査ロジックを評価することを特徴とする請求項1に記載の検査制御装置。
【請求項9】
上記検査ロジック設定手段は、
上記検査ロジック選択手段が上記評価手段が評価した評価結果に基づき新たに選択した検査ロジックと、上記検査モジュールが使用中のメイン検査ロジックとが異なる場合に、
メイン検査ロジックを切り替えることを特徴とする請求項1に記載の検査制御装置。
【請求項10】
上記検査ロジック設定手段は、
上記評価手段が、上記検査モジュールが使用中のメイン検査ロジック以外の検査ロジックを当該メイン検査ロジックより高く評価した時にメイン検査ロジックを切り替えることを特徴とする請求項9に記載の検査制御装置。
【請求項11】
上記検査ロジック設定手段は、
上記評価結果に含まれる、上記検査モジュールが使用中のメイン検査ロジックの検査精度を表す評価値を監視し、該評価値の微分値に基づいて、メイン検査ロジック切り替えのタイミングを算出し、算出したタイミングにてメイン検査ロジックを切り替えることを特徴とする請求項9に記載の検査制御装置。
【請求項12】
上記検査結果を表示するよう表示部を制御する表示制御手段と、
表示された検査結果と同じ検査対象の対象物に対する、ユーザによる検査のユーザ検査結果の入力を受け付ける結果入力制御手段と、
上記結果入力制御手段が受け付けたユーザ検査結果に基づき、上記表示制御手段が表示部に表示した検査結果を修正する検査結果修正手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の検査制御装置。
【請求項13】
各検査ロジックの統計データを用いて、検査ロジックの閾値を算出し、検査ロジックの閾値を決定する閾値調整手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の検査制御装置。
【請求項14】
良不良の判別方法を規定する検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールと、
良不良の判別結果を示す最終検査結果を生成するのに上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを選択する、請求項1から13のいずれか1項に記載の検査制御装置とを含むことを特徴とする検査システム。
【請求項15】
良不良の判別方法を規定する検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールを制御する検査制御装置における検査制御方法であって、
上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを、複数の検査ロジックの中から選択する選択ステップと、
上記検査モジュールが上記メイン検査ロジックを用いて生成した、対象物の良不良の判別結果を示す最終検査結果と、該メイン検査ロジックと異なる検査ロジックを用いて対象物の良不良を判別した場合の判別結果を示す評価用検査結果とに基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する評価ステップと、
上記検査ロジック選択手段が選択した検査ロジックをメイン検査ロジックとして切り替える切替ステップとを含み、
上記選択ステップでは、上記評価ステップによる評価結果に基づいて、上記メイン検査ロジックを選択することを特徴とする検査制御方法。
【請求項16】
コンピュータを、請求項1から13のいずれか1項に記載の検査制御装置の各手段として機能させるための検査制御装置の制御プログラム。
【請求項17】
請求項16に記載の検査制御装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
良不良の判別方法を規定する検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールを制御する検査制御装置において、
上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを、複数の検査ロジックの中から選択する検査ロジック選択手段と、
上記検査モジュールが上記メイン検査ロジックを用いて生成した、対象物の良不良の判別結果を示す最終検査結果と、該メイン検査ロジックと異なる検査ロジックを用いて対象物の良不良を判別した場合の判別結果を示す評価用検査結果とに基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する評価手段と、
上記検査ロジック選択手段が選択した検査ロジックをメイン検査ロジックとして切り替える検査ロジック設定手段とを備え、
上記検査ロジック選択手段は、上記評価手段が評価した評価結果に基づいて、上記メイン検査ロジックを選択することを特徴とする検査制御装置。
【請求項2】
上記検査ロジックは、対象物の状態を示す特徴量の計測方法と、上記特徴量を分離して良不良を判別するための閾値とを規定し、
上記評価手段は、
上記評価用検査結果に含まれる対象物ごとに計測された特徴量と、上記最終検査結果が示す対象物の良品数および不良品数とに基づく統計データを用いて、各検査ロジックの検査精度を表す評価値を算出することにより評価することを特徴とする請求項1に記載の検査制御装置。
【請求項3】
上記評価手段は、
上記対象物の良品の集合から得られる良品特徴量と、不良品の集合から得られる不良品特徴量との差分に基づき評価値を算出することにより評価することを特徴とする請求項2に記載の検査制御装置。
【請求項4】
上記評価手段は、
上記対象物の特徴量が閾値より小さいと良品であると判別される場合に、上記不良品の集合の特徴量の下限値である不良品下限値と上記良品の集合の特徴量の上限値である良品上限値との差分に基づき評価値を算出し、
上記対象物の特徴量が閾値より大きいと良品であると判別される場合に、上記良品の集合の特徴量の下限値である良品下限値と、上記不良品の集合の特徴量の上限値である不良品上限値との差分に基づき評価値を算出することにより評価することを特徴とする請求項3に記載の検査制御装置。
【請求項5】
上記評価手段は、
上記差分を上記良品特徴量の分散で除して得た商に基づき評価値を算出することにより評価することを特徴とする請求項3または4に記載の検査制御装置。
【請求項6】
上記評価手段は、
上記対象物の良品の集合から得られる良品特徴量と上記閾値との差分、および、不良品の集合から得られる不良品特徴量と上記閾値との差分の少なくともいずれか一方に基づき評価値を算出することにより評価することを特徴とする請求項2に記載の検査制御装置。
【請求項7】
上記評価手段は、
上記良品特徴量と、不良品特徴量との差分を差分A
上記不良品特徴量と上記閾値との差分を差分B
上記良品特徴量と上記閾値との差分を差分C
として、評価式、
|差分A−差分B/差分C|
に基づき評価値を算出することにより評価することを特徴とする請求項6に記載の検査制御装置。
【請求項8】
上記評価手段は、
上記最終検査結果においてメイン検査ロジックにて不良品と判別された対象物のうち、上記評価用検査結果において検査ロジックにて良品と判別された対象物数に基づいて、検査ロジックを評価することを特徴とする請求項1に記載の検査制御装置。
【請求項9】
上記検査ロジック設定手段は、
上記検査ロジック選択手段が上記評価手段が評価した評価結果に基づき新たに選択した検査ロジックと、上記検査モジュールが使用中のメイン検査ロジックとが異なる場合に、
メイン検査ロジックを切り替えることを特徴とする請求項1に記載の検査制御装置。
【請求項10】
上記検査ロジック設定手段は、
上記評価手段が、上記検査モジュールが使用中のメイン検査ロジック以外の検査ロジックを当該メイン検査ロジックより高く評価した時にメイン検査ロジックを切り替えることを特徴とする請求項9に記載の検査制御装置。
【請求項11】
上記検査ロジック設定手段は、
上記評価結果に含まれる、上記検査モジュールが使用中のメイン検査ロジックの検査精度を表す評価値を監視し、該評価値の微分値に基づいて、メイン検査ロジック切り替えのタイミングを算出し、算出したタイミングにてメイン検査ロジックを切り替えることを特徴とする請求項9に記載の検査制御装置。
【請求項12】
上記検査結果を表示するよう表示部を制御する表示制御手段と、
表示された検査結果と同じ検査対象の対象物に対する、ユーザによる検査のユーザ検査結果の入力を受け付ける結果入力制御手段と、
上記結果入力制御手段が受け付けたユーザ検査結果に基づき、上記表示制御手段が表示部に表示した検査結果を修正する検査結果修正手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の検査制御装置。
【請求項13】
各検査ロジックの統計データを用いて、検査ロジックの閾値を算出し、検査ロジックの閾値を決定する閾値調整手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の検査制御装置。
【請求項14】
良不良の判別方法を規定する検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールと、
良不良の判別結果を示す最終検査結果を生成するのに上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを選択する、請求項1から13のいずれか1項に記載の検査制御装置とを含むことを特徴とする検査システム。
【請求項15】
良不良の判別方法を規定する検査ロジックを用いて、対象物の良不良を判別する検査モジュールを制御する検査制御装置における検査制御方法であって、
上記検査モジュールが用いるメイン検査ロジックを、複数の検査ロジックの中から選択する選択ステップと、
上記検査モジュールが上記メイン検査ロジックを用いて生成した、対象物の良不良の判別結果を示す最終検査結果と、該メイン検査ロジックと異なる検査ロジックを用いて対象物の良不良を判別した場合の判別結果を示す評価用検査結果とに基づいて、各検査ロジックの検査精度を評価する評価ステップと、
上記検査ロジック選択手段が選択した検査ロジックをメイン検査ロジックとして切り替える切替ステップとを含み、
上記選択ステップでは、上記評価ステップによる評価結果に基づいて、上記メイン検査ロジックを選択することを特徴とする検査制御方法。
【請求項16】
コンピュータを、請求項1から13のいずれか1項に記載の検査制御装置の各手段として機能させるための検査制御装置の制御プログラム。
【請求項17】
請求項16に記載の検査制御装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図3】
【図4】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2007−327848(P2007−327848A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159086(P2006−159086)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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