説明

検査装置および方法

【目的】欠陥候補クラスタ画像の形状傾向に応じて検査レベルを異ならせる。
【構成】カメラによって読取られて得られた印刷物の画像を表す被検査画像データと,メモリに記憶されている基準画像を表す基準画像データとに基づいて画素ごとの差がとられ,その後2値化されて2値画像データが得られる。2値画像データがラベリング処理されて欠陥候補クラスタ画像を構成する差分画素が特定される。欠陥候補クラスタ画像のそれぞれについて外接矩形の大きさに対する割合(面積比率)が算出される。面積比率が大きい場合(ステップ21でYES ),その欠陥候補クラスタ画像は点状の形状を持ち,面積比率が小さい場合(ステップ21でNO),その欠陥候補クラスタ画像は線状の形状を持つと判断される。点状および線状の形状ごとに異なるしきい値が用られて,欠陥候補クラスタ画像が検査される(ステップ22,23)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,検査対象物から得られた検査画像に対して画像処理を行い,検査対象物の良否を判定する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物の良否を判定する検査装置として,目視ではなく,検査対象物の表面をカメラを用いて読取ることによって得られた被検査画像データと,あらかじめ用意される基準画像データとを比較するものがある。
【0003】
特許文献1には,印刷物から得られた被検査画像と基準画像の各画素ごとに輝度差を算出し,これを適当な閾値を用いて2値化することによって基本画像と被検査画像との間の異なる部分(欠陥部位)を抽出することが記載されている。抽出された欠陥部位が一定面積以上を占めているかどうかが判断され,欠陥部位が一定面積以上を占めている場合に,その被検査画像に対応する印刷物は不良品であると判定される。
【特許文献1】特開平8−323963号公報
【0004】
しかしながら,欠陥部位の面積のみで一律に印刷物が良品であるか不良品であるかを判定すると,不良品と判定する必要のないものについて不良品と判定されること,または不良品と判定すべきものを良品と判定してしまうことがある。
【0005】
たとえば,印刷物上に線状の汚れが存在するとする。線状の汚れは,印刷物を視認する看者の注目が集まりやすく,たとえ印刷物に占めている割合が小さくても,その存在は印刷の品質上好ましくない。
【0006】
これに対し,印刷物上に存在する汚れが点状であれば,点状の汚れについては線状の汚れほど問題とされない。
【0007】
検査レベルを厳しくする(良品および不良品の判定に用いられる上述の一定面積を小さくする)ことによって,点状の汚れおよび線状の汚れのいずれについても,厳しく検査することができるが,上述のように,汚れの形状が点状であり不良品と判定する必要のない程度の大きさであったとしても不良品と判定されてしまう。逆に検査レベルを緩やかにすると,線状の汚れが含まれている印刷物を良品と判定するおそれがある。
【発明の開示】
【0008】
この発明は,汚れ等の形状に応じて検査レベルを異ならせることを目的とする。
【0009】
この発明による検査装置(欠陥検出装置と言ってもよい)は,基準画像を表す基準画像データを記憶する第1のメモリ,検査対象物を読取ることによって得られる被検査画像を表す被検査画像データを記憶する第2のメモリ,上記第1のメモリに記憶された基準画像データと第2のメモリに記憶された被検査画像データとを画素ごとに比較して差を求め,求めた差を2値化処理することにより2値画像データを生成する2値画像データ生成手段,上記2値画像データ生成手段によって生成された2値画像データをラベリングして,欠陥候補クラスタ画像を検出する欠陥候補クラスタ画像検出手段,上記欠陥候補クラスタ画像検出手段によって検出された欠陥候補クラスタ画像の形状傾向を判断する形状傾向判断手段,および上記形状傾向判断手段によって判断された上記欠陥候補クラスタ画像の形状傾向に応じたしきい値を用いて,上記欠陥候補クラスタ画像を欠陥画像として取り扱うべきかどうかを判定する判定手段を備えたものである。基準画像データを記憶する第1のメモリと被検査画像データを記憶する第2のメモリは同じものであっても異なるものであってもよい。同じメモリを用いる場合には,メモリの異なる領域がそれぞれ第1のメモリおよび第2のメモリとして用いられる。
【0010】
この発明による検査方法(欠陥検出方法)は,検査対象物を読取ることによって得られる被検査画像を表す被検査画像データをメモリに記憶し,上記メモリに記憶された被検査画像データとあらかじめ登録された基準画像を表す基準画像データとを画素ごとに比較して差を求め,求めた差を2値化処理することにより2値画像データを生成し,生成した2値画像データをラベリングして欠陥候補クラスタ画像を検出し,上記欠陥候補クラスタ画像の形状傾向を判断し,上記欠陥候補クラスタ画像の形状傾向に応じたしきい値を用いて,上記欠陥候補クラスタ画像を欠陥画像として取り扱うべきかどうかを判定するものである。
【0011】
この発明によると,2値化処理およびラベリング処理によって得られる欠陥候補クラスタ画像の形状傾向が判断され,形状傾向に応じたしきい値が用いられて欠陥候補クラスタ画像に対する検査が行われる。欠陥候補クラスタ画像の形状傾向に応じてしきい値を異ならせることができる。したがって,欠陥候補クラスタ画像の形状傾向に応じた検査レベル(判定の厳しさ,緩やかさ)によって,欠陥候補クラスタ画像ごとの検査を実行することができる。
【0012】
欠陥候補クラスタ画像の形状傾向の判断では,たとえば,欠陥候補クラスタ画像が,存在がほとんど許容されない形状傾向を持つものであるか否か,または多少の存在は許容される形状傾向を持つものであるか否かが判断(区別)される。一実施態様では,欠陥候補クラスタ画像が線状の形状であるか,または線状の形状でないかが区別される。欠陥候補クラスタ画像が点状の形状であるか,または点状の形状でないかを区別してもよい。線状の形状を持つ汚れ等は,たとえ小さいものであっても印刷の品質上その存在は許容できないので,欠陥候補クラスタ画像が線状の形状を持つと判断された場合には,比較的厳しい検査レベル(しきい値)によってその欠陥候補クラスタ画像が検査される。他方,欠陥候補クラスタ画像が点状の形状であることが判断された場合には,比較的緩い検査レベル(しきい値)によって欠陥候補クラスタ画像を検査すればよい。このように,印刷の品質の観点から,欠陥候補クラスタ画像の形状傾向は判断または区別することができる。
【0013】
一実施態様では,少なくとも1つの欠陥画像の存在が判定された場合には,上記検査対象物に欠陥があると判定される。検査対象物に欠陥がある判定されると,たとえば,その検査対象物は製造ライン,検査ライン等から取り除かれる。
【0014】
好ましくは,上記形状傾向判断手段は,上記欠陥候補クラスタ画像に外接する所定形状,たとえば矩形,円形,ひし形等の形状の領域を設定する外接領域設定手段を備え,上記外接領域設定手段によって設定された外接領域の大きさと,上記外接領域の内部に存在する上記欠陥候補クラスタ画像の大きさとの比率に基づいて,欠陥候補クラスタ画像の形状傾向を判断する。たとえば,欠陥候補クラスタ画像が点状の形状であれば外接領域に対する欠陥候補クラスタ画像の大きさの比率は大きくなり,欠陥候補クラスタ画像が線状の形状であれば外接領域に対する欠陥候補クラスタ画像の大きさの比率は小さくなるので,この比率に基づいて欠陥候補クラスタ画像の形状傾向(点状であるか,線状であるか等)を判断(区別)することができる。
【0015】
さらに好ましくは,ラベリング処理された2値画像を所定形状の探索領域によって走査する(たとえば,ラスタ走査する)ことにより,上記探索領域内に複数の欠陥候補クラスタ画像が入るかどうかを判断する探索手段,および上記探索領域に入った複数の欠陥候補クラスタ画像を統合する統合手段が備えられる。たとえば,線状の汚れ等の画像を構成する複数の画素が2値化処理において分断されると,そのそれぞれが独立した欠陥候補クラスタ画像として認識されてしまい,線状の欠陥候補クラスタ画像として認識されるべき欠陥候補クラスタ画像が点状の欠陥候補クラスタ画像として認識されてしまうおそれがある。分断された複数の欠陥候補クラスタ画像が統合手段によって統合されるので,線状の形状傾向を持つと判断されるべき欠陥候補クラスタ画像が,点状の形状傾向を持つと判断されてしまうのを防止することができる。
【実施例】
【0016】
図1は,検査システムの一部を概略的に示すものである。
【0017】
検査システムは,検査対象物,たとえば印刷物をカメラによって読取り,得られた印刷物の画像データに基づいて印刷物を検査するシステムである。検査は,画像処理,すなわち,検査対象の印刷物から得られた画像データとあらかじめ取得された基準画像データとを比較し,その結果が所定の条件を満たすかどうかを判定すること等により行われる。検査システムでは,印刷物における印刷上の欠陥,たとえば,汚れ,抜けなど,の存在の有無が判定される。
【0018】
検査システムにおいて,印刷物Sは搬送装置(図示略)によって搬送路上を搬送される。搬送路の上方にはカメラ2および線状照明光源3が固定的に設けられている。カメラ2はCCDラインセンサを含み,CCDラインセンサが搬送路の搬送方向に直交する方向を走査方向とするように固定されている。搬送路上を搬送される印刷物Sの絵柄等が,所定位置においてカメラ2によって読取られる。線状照明光源3は搬送路の幅方向(搬送方向に直交する方向)にのび,搬送路上のカメラ2による読取り位置をその全体にわたって照明する。
【0019】
カメラ2によって得られた画像データは検査装置1に入力する。図2は検査装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【0020】
検査装置1は,カメラ2からの画像データ(以下,被検査画像データという)を用いて被検査画像(印刷物)の良否を判定する良否判定装置4,被検査画像データと比較される基準画像データを記憶した記憶装置5,基準画像データおよび被検査画像データ等が一時的に記憶されるメモリ6,しきい値の設定等に用いられる入力装置7,および良否判定結果等を表示する表示装置8を備えている。良否判定装置4は汎用性のあるコンピュータ装置であってもよい。この場合には,コンピュータ装置を良否判定装置4として動作させるためのプログラムおよびデータが記憶装置5に記憶される。記憶装置5から読み出されたプログラムおよびデータが実行されることによって,コンピュータ装置が良否判定装置4として機能(動作)する。
【0021】
図3および図4は,良否判定装置4において行われる良否判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0022】
記憶装置5に記憶されている基準画像を表すカラーの基準画像データがメモリ6に読込まれる。カメラ2によって読取られた被検査画像i(i=1,2,・・・)を表すカラーの被検査画像データが良否判定装置4に与えられてメモリ6に記憶される。基準画像データおよび被検査画像データが用いられて,以下に説明する検査(良否判定処理)が行われる。
【0023】
基準画像と被検査画像iの差の算出処理が行われる(ステップ11)。この処理では,基準画像と被検査画像iが,画素ごとに,かつR成分,G成分およびB成分のそれぞれごとに比較されて差が算出され,その後RGB成分ごとの差を表すデータが合成される。照明のむらを無くすために,さらにMAXフィルタを用いてMAX処理を行ってもよい。
【0024】
画素ごとの差を表すデータに対して,所定のしきい値を用いて2値化処理(しきい値処理)が行われる(ステップ12)。2値化処理に用いるしきい値は固定値であってもよいし,特開平8−323963号公報に記載されているように,被検査画像に応じて変動する値であってもよい。また,2値化処理に用いられるしきい値は検査(検出)すべき欠陥の種類(汚れ,欠けなど)に応じて異ならせてもよい。2値化処理によって,たとえば基準画像と被検査画像との間にしきい値以上の明るさの差が存在する画素(以下,差分画素という)を「1」,基準画像と被検査画像との間にしきい値以上の明るさの差がない画素を「0」とする2値画像データが得られる。
【0025】
2値画像データによって表される2値画像に含まれる差分画素の数と,あらかじめ記憶装置5に記憶されている欠陥候補判定画素数とが比較される(ステップ13)。差分画素数が欠陥候補判定画素数よりも多い場合,すなわち,被検査画像iに存在する差分画素数が所定値よりも多い場合に,被検査画像iは欠陥候補画像であると判定されて,次の処理に進む。他方,差分画素数が欠陥候補判定画素数以下であれば,被検査画像iに欠陥(汚れ等)はないと判定されて次の被検査画像i+1についての処理に進む(ステップ13でNO,ステップ14)。差分画素数と比較される欠陥判定画素数も,検査すべき欠陥の種類(汚れ,欠けなど)に応じて異ならせることができる。
【0026】
被検査画像iが欠陥候補画像であるかどうかは,上述のように,被検査画像iから得られる2値画像に含まれる差分画素の数に応じて判定される(ステップ13)。しかしながら,差分画素の数が少なくても画像全体(印刷物全体)としては良品と判定するのは好ましくない場合もある。差分画素の数が多くても,画像全体(印刷物全体)としては不良品と判定する必要のないものも存在する。
【0027】
印刷物上に線状の汚れが存在し,このため被検査画像に含まれる差分画素のかたまり(集合)が線状の形状を持つものであるとする。線状の汚れは,印刷物を視認する看者の注目が集まりやすく,たとえ印刷物に占めている割合が小さくても,その存在は印刷の品質上,好ましくない。
【0028】
これに対し,印刷物上にインクたれ,インク飛び等によって生じた点状の汚れが存在し,このため被検査画像に含まれる差分画素のかたまりが点状の形状を持つものであるとする。点状の汚れについては上述の線状の汚れほどは問題とされない。
【0029】
検査装置1は,以下に説明するように,欠陥候補画像に対して,そこに含まれる差分画素の集合(クラスタ,かたまり)の形状を判断(区別)して,その形状に応じたしきい値に基づいて差分画素の集合を対象にした良否判定を行うことによって,欠陥候補画像に欠陥が含まれるかどうか(印刷物を良品とするか,不良品とするか)をさらに判定する。
【0030】
欠陥候補画像と判定された被検査画像iから得られた2値画像データに対して,判定精度を高めるために,孤立差分画素(8方向または4方向に隣接する画素に差分画素が存在しない差分画素)の除去が行われる(ステップ15)。孤立差分画素が見つかった場合,孤立差分画素(たとえば,2値画像上の黒画素)を,差分がない画素(2値画像上の白画素)に変更する画像処理が行われる。
【0031】
次にラベリング処理が行われる(ステップ14)。図5に示すように,8方向(4方向でもよい)に隣接している複数の差分画素に同じラベル(符号,番号等)が属性として付与され,同じラベルが付与された差分画素の集合がグループ化またはクラスタリングされる。同じラベルが付与された差分画素の集合を,以下,欠陥候補クラスタ画像という。
【0032】
欠陥候補クラスタ画像のそれぞれについて,外接矩形が設定される(ステップ17)。
【0033】
図6(A),(B)は欠陥候補クラスタ画像に設定される外接矩形の例を示している。外接矩形は,欠陥候補クラスタ画像を構成する差分画素の中で,最小のX座標をもつ画素のX座標をXmin ,最大のX座標をもつ画素のX座標をXmax ,最小のY座標をもつ画素のY座標をYmin および最大のY座標をもつ画素のY座標をYmax としたときに,座標(Xmin ,Ymax ),座標(Xmax ,Ymin )で表される2点を対角にもつ矩形である。
【0034】
図6(A)を参照して,欠陥候補クラスタ画像NG1の形状が点状の形状であれば,外接矩形R1を占める欠陥候補クラスタ画像NG1の割合は大きい。他方,図6(B)を参照して,欠陥候補クラスタ画像NG2の形状が線状の形状であれば,外接矩形R2を占める欠陥候補クラスタ画像NG2の割合は小さい。後述するように,外接矩形を占める欠陥候補クラスタ画像の割合に応じて,欠陥候補クラスタ画像の形状が,点状の形状であるか,または線状の形状であるか(点状の形状でないか)が判別される。
【0035】
外接矩形に対する欠陥候補クラスタ画像の割合(以下,面積比率という)が算出される(ステップ18)。面積比率は次式によって算出される。
【0036】
面積比率=欠陥候補クラスタ画像の面積/(外接矩形の幅Wまたは高さHのうちいずれか長い方の長さ)2
【0037】
ここで,欠陥候補クラスタ画像の面積は,欠陥候補クラスタ画像を構成する差分画素の数に基づいて算出される。
【0038】
上記の算出式において,欠陥候補クラスタ画像の面積を除算する値に外接矩形の面積を用いていないのは,図7の上段に示すように,欠陥候補クラスタ画像NG3の形状が線状であるにもかかわらず,それが直線状であって,かつ横軸(X軸)または縦軸(Y軸)に平行であったとすると,欠陥候補クラスタ画像NG3の面積が外接矩形の面積とほぼ一致してしまい,面積比率が大きくなってしまうからである。上述の算出式を用いることによって,図7の下段に示すように,欠陥候補クラスタ画像NG3の形状が直線状であり,かつ横軸(X軸)または縦軸(Y軸)に平行であったとしても,外接矩形R3が大きくなるので,面積比率を小さい値とすることができる。
【0039】
2値画像中に複数の欠陥候補クラスタ画像が含まれている場合には,複数の欠陥候補クラスタ画像のそれぞれについて,上述の面積比率が算出される。
【0040】
次に,周辺サーチ処理が行われる(ステップ19)。
【0041】
上述した2値化処理において細長い線状の汚れ等が複数に分裂し,この結果,ラベリング処理によって分裂した欠陥候補クラスタ画像のそれぞれに異なるラベルが付与されることがある。この場合,線状と判断されるべき欠陥候補クラスタ画像が,点状と判断されてしまう可能性が生じる。周辺サーチ処理はこれを避けるための処理である。
【0042】
図8(A)を参照して,周辺サーチ処理では,所定の大きさの矩形のサーチ・エリアSAによってラベリング処理後の2値画像データが走査される。サーチ・エリアSAに,複数の,たとえば2つの欠陥候補クラスタ画像が入った場合(すなわち,2つの欠陥候補クラスタ画像が所定距離よりも近い位置に存在する場合),その2つの欠陥候補クラスタ画像のそれぞれについて算出された面積比率は破棄される。2つの欠陥候補クラスタ画像が一つに統合されて,統合後の欠陥候補クラスタ画像に対して再度面積比率が算出される。図8(A),(B)に示す例の場合,番号2で示す欠陥候補クラスタ画像(以下,欠陥候補クラスタ画像2という)と,番号3で示す欠陥候補クラスタ画像(以下,欠陥候補クラスタ画像3という)のそれぞれについて算出された面積比率が破棄され,欠陥候補クラスタ画像2および欠陥候補クラスタ画像3が一つの欠陥候補クラスタ画像4に統合されて,この欠陥候補クラスタ画像4について面積比率が算出されることになる。これにより,線状と判断されるべき欠陥候補クラスタ画像が,点状と判断される可能性を低くすることができる。
【0043】
もちろん,周辺サーチ処理(ステップ19)を先に行い,その後に面積比率の算出(ステップ18)を行ってもよいのは言うまでもない。
【0044】
欠陥候補クラスタ画像j(j=1,2,・・・)およびその面積比率がメモリに読込まれる(ステップ20)。欠陥候補クラスタ画像jの面積比率が比較的大きい,たとえば,0.785 以上の場合(ステップ21でYES ),その面積比率をもつ欠陥候補クラスタ画像jは点状の形状を持つと判断される。これに対し,面積比率が0.785 より小さいときは(ステップ21でNO),その面積比率をもつ欠陥候補クラスタ画像jは線状の形状を持つ(点状の形状を持たない)と判断される。欠陥候補クラスタ画像jが点状の形状を持つかまたは線状の形状を持つかの判断に用いられる面積比率の比較値(上述の0.785 )は,入力装置7を用いて調整することができ,0.785 以外の数値とすることができるのは言うまでもない。
【0045】
点状の形状を持つ欠陥候補クラスタ画像j,および線状の形状を持つ欠陥候補クラスタ画像jのそれぞれについて,異なるしきい値(欠陥判定画素数)が用いられて,欠陥候補クラスタ画像jに対する欠陥判定が行われる(ステップ22,23)。上述したように,汚れ等の形状が点状である場合には,線状である場合ほどは問題とされないので,点状の形状を持つ欠陥候補クラスタ画像jに対しては欠陥判定画素数として比較的大きい数が用いられる(すなわち,比較的緩い検査レベルが設定される)。点状の形状を持つ欠陥候補クラスタ画像jを構成する差分画素数と,点状用の欠陥判定画素数とが比較され,差分画素数が点状用の欠陥判定画素数よりも多い場合に,その欠陥候補クラスタ画像jは点状の欠陥画像である(印刷物に点状欠陥が存在する)と判定される(ステップ22でYES ,ステップ24)。
【0046】
これに対し,線状の汚れ等は,上述したように,印刷物を視認する看者の注目が集まりやすく,たとえ線状の汚れが印刷物を占めている割合が小さくても,その存在は印刷の品質上好ましくない。このため線状の形状を持つ欠陥候補クラスタ画像jに対しては,欠陥判定画素数として小さい値が用いられる(すなわち,比較的厳しい検査レベルが設定される)。線状の形状を持つ欠陥候補クラスタ画像jを構成する差分画素の数と,線状用の欠陥判定画素数とが比較され,差分画素数が線状用の欠陥判定画素数よりも多い場合に,その欠陥候補クラスタ画像jは線状の欠陥画像である(印刷物に線状欠陥が存在する)と判定される(ステップ23でYES ,ステップ25)。
【0047】
欠陥候補クラスタ画像jの画素数と比較される点状用の欠陥判定画素数および線状用の欠陥判定画素数(ステップ22,23)も,検出すべき欠陥の種類(汚れ,欠けなど)に応じて異ならせることができる。
【0048】
欠陥候補クラスタ画像jが点状の欠陥画像であること,または欠陥候補クラスタ画像jが線状の欠陥画像であることが判定された場合には,その欠陥候補クラスタ画像jを含む被検査画像iに欠陥が存在すると判定され,被検査画像iに対応する印刷物は不良品として扱われることになる。被検査画像iに対する処理が終了し,被検査画像iに対応する印刷物は検査ラインから除去される。次の被検査画像i+1に対する処理に進む(ステップ28でNO,ステップ29)。
【0049】
欠陥候補クラスタ画像jが点状の欠陥画像でも,線状の欠陥画像でもないと判定されると(ステップ22でNO,ステップ23でNO),被検査画像iに含まれる他の欠陥候補クラスタ画像j+1に対する処理に進む(ステップ26でNO,ステップ27)。
【0050】
被検査画像iに含まれるすべての欠陥候補クラスタ画像jが,点状の欠陥画像でも線状の欠陥画像でもないと判定されると(ステップ26でYES ),被検査画像iに対応する印刷物は良品として扱われることになる。次の被検査画像i+1についての処理に進む(ステップ28でNO,ステップ29)。すべて被検査画像iについての処理が終了すると(ステップ28でYES ),良否判定処理が終了する。
【0051】
上述した実施例では,欠陥候補クラスタ画像jに規定される外接領域の形状として矩形を例にしている(図6(A),(B),図7参照)。円形,ひし形等の他の形状を,外接領域の形状に採用してもよい。たとえば,外接領域の形状に円形を用いる場合には,欠陥候補クラスタ画像jの重心位置を算出し,算出された重心位置を中心としかつ重心位置から最も遠い差分画素までの距離を半径とする外接円が用いられる。差分面積比率は,欠陥候補クラスタ画像の面積を外接円の面積で除算することによって算出される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】検査システムの一部を概略的に示す斜視図である。
【図2】検査システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】良否判定装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】良否判定装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】ラベリング処理された2値化画像を示す。
【図6】(A),(B)は欠陥候補クラスタ画像に設定される外接矩形を示す。
【図7】欠陥候補クラスタ画像に設定される外接矩形を示す。
【図8】(A)は周辺サーチ処理の様子を,(B)は周辺サーチ処理によって欠陥候補クラスタ画像が統合された様子を,それぞれ示す。
【符号の説明】
【0053】
1 検査装置
2 カメラ
4 良否判定装置
5 記憶装置
6 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準画像を表す基準画像データを記憶する第1のメモリ,
検査対象物を読取ることによって得られる被検査画像を表す被検査画像データを記憶する第2のメモリ,
上記第1のメモリに記憶された基準画像データと第2のメモリに記憶された被検査画像データとを画素ごとに比較して差を求め,求めた差を2値化処理することにより2値画像データを生成する2値画像データ生成手段,
上記2値画像データ生成手段によって生成された2値画像データをラベリングして,欠陥候補クラスタ画像を検出する欠陥候補クラスタ画像検出手段,
上記欠陥候補クラスタ画像検出手段によって検出された欠陥候補クラスタ画像の形状傾向を判断する形状傾向判断手段,および
上記形状傾向判断手段によって判断された上記欠陥候補クラスタ画像の形状傾向に応じたしきい値を用いて,上記欠陥候補クラスタ画像を欠陥画像として取り扱うべきかどうかを判定する判定手段,
を備えた検査装置。
【請求項2】
上記判定手段は,少なくとも1つの欠陥画像があれば上記検査対象物に欠陥があると判定する,
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
上記形状傾向判断手段は,上記欠陥候補クラスタ画像に外接する所定形状の領域を設定する外接領域設定手段を備え,上記外接領域設定手段によって設定された外接領域の大きさと,上記外接領域内に存在する欠陥候補クラスタ画像の大きさとの比率に基づいて,欠陥候補クラスタ画像の形状傾向を判断するものである,請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
ラベリング処理された2値画像を所定形状の探索領域によって走査することにより,上記探索領域内に複数の欠陥候補クラスタ画像が入るかどうかを判断する探索手段,および
上記探索領域に入った複数の欠陥候補クラスタ画像を統合する統合手段を備えた,
請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
検査対象物を読取ることによって得られる被検査画像を表す被検査画像データをメモリに記憶し,
上記メモリに記憶された被検査画像データとあらかじめ登録された基準画像を表す基準画像データとを画素ごとに比較して差を求め,求めた差を2値化処理することにより2値画像データを生成し,
生成した2値画像データをラベリングして欠陥候補クラスタ画像を検出し,
上記欠陥候補クラスタ画像の形状傾向を判断し,
上記欠陥候補クラスタ画像の形状傾向に応じたしきい値を用いて,上記欠陥候補クラスタ画像を欠陥画像として取り扱うべきかどうかを判定する,
検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−63388(P2009−63388A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230881(P2007−230881)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】